(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534689(P2017-534689A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】ざ瘡の予防および治療のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20171027BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20171027BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20171027BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20171027BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20171027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20171027BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20171027BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20171027BHJP
A61P 17/12 20060101ALI20171027BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20171027BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20171027BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20171027BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
A61K45/00
A61Q19/10
A61P17/10
A61P17/00 101
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P31/04
A61P37/04
A61P17/00
A61P17/12
A61P17/16
A61P17/18
A61K45/06
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-545866(P2017-545866)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月14日
(86)【国際出願番号】US2015061581
(87)【国際公開番号】WO2016081724
(87)【国際公開日】20160526
(31)【優先権主張番号】62/082,019
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516251853
【氏名又は名称】アヴァディム・テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】517177235
【氏名又は名称】ウッディ,スティーヴン・ティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ウッディ,スティーヴン・ティー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC26
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4C076FF34
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4C084ZB352
4C084ZC372
4C084ZC412
(57)【要約】
複数の種類のざ瘡を治療し予防するためのシステムは、溶液を皮膚に塗布して、皮膚の自然の酸性外套を4.0から6.5に維持するのを支援し、水分輸送特性を保存し、特殊化した脂質含量を維持することにより、皮膚を正常に機能させ、ざ瘡および関連する細菌感染によって引き起こされた皮膚の創傷を治癒させるのを支援することを含む。方法ステップは、界面活性剤が内部に組み込まれた製剤をクレンジング剤として皮膚に塗布し、水で濯ぐステップ、界面活性剤を含むまたは含まない溶液を塗布し、溶液を空気乾燥させるステップ、塗布および空気乾燥させることを1日を通して繰り返すステップ、クレンジングおよび濯ぎのステップを繰り返し、就寝前に溶液を塗布し、空気乾燥させるステップの1つまたは複数を含む。方法ステップの1つまたは複数は、長期間にわたり連続的に、典型的には毎日繰り返してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚でのざ瘡の発生率および重症度を低減するためのシステムであって、前記皮膚の領域に、抗生剤不含の弱酸性の防腐性溶液を、塗布領域内のざ瘡の事例を低減または排除するのに十分な期間にわたって塗布して、皮膚残屑および皮脂を弛めて除去することにより前記皮膚をクレンジングし、その間は前記塗布領域内で長期間にわたって脂質成分が保存されかつ正常な最外弱酸性皮膚pHが維持されており、その後、前記溶液を塗布して前記皮膚を酸性pHに維持し、前記皮膚の治癒を促進し、それによって、健康なヒトの皮膚を特徴付ける皮膚機能を回復させ、ざ瘡の発生率および重症度を低減することによるシステム。
【請求項2】
前記溶液が、界面活性剤を含有する両性イオン性クレンジング剤であり、実質的な自然に生ずる脂質を除去しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記溶液を前記塗布領域に、ざ瘡の発生率および重症度を低減するのに十分な日数の期間にわたり、24時間で複数回、塗布するステップを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記溶液が、約4.0から6.5のpHを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記溶液が、約4.5から5.5のpHを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ざ瘡が、ざ瘡を引き起こす細菌によって炎症を起こした病変を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記溶液が、前記溶液が塗布される前記領域のpHを、1回の塗布当たり最長3から6時間の長時間にわたって4.5から5.5で維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記溶液が、両性イオン性界面活性剤を含む単一のクレンジング剤であり、前記皮膚をクレンジングするのに塗布され、次いで水で濯ぎ落とされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記溶液を塗布して前記皮膚を酸性pHに維持し、前記皮膚の治癒を促進する前記ステップでは、前記溶液が、界面活性剤を含まず、皮膚残屑および皮脂を弛めて除去することにより前記皮膚をクレンジングする前記ステップの直後に塗布され、その間は前記塗布領域内で長期間にわたって脂質成分が保存されかつ正常な最外弱酸性皮膚pHが維持されており、その後、毎日、最大8回塗布される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記溶液が、界面活性剤を含まず、1日当たり最大3回、1日を通して連続的に再度塗布し、再度塗布するごとに乾燥する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
酸性溶液を前記皮膚の表面に塗布して、皮膚残屑および皮脂を弛めて除去することにより前記皮膚をクレンジングする前記ステップが、前記皮膚を濯ぐことをさらに含み、24時間で少なくとも1回または2回実現される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記酸性溶液を塗布し、前記皮膚を酸性pHで維持する前記ステップが、前記皮膚をクレンジングした後に、前記溶液を前記皮膚に塗布し、前記溶液を前記皮膚上にて空気乾燥させることを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記溶液を前記皮膚に塗布し、前記溶液を前記皮膚上にて空気乾燥させる前記ステップが、最初の単一クレンジングステップ後に1日当たり3から8回実現され、この方法がさらに、酸性溶液を前記皮膚の表面に塗布して、皮膚残屑および皮脂を弛めて除去することにより前記皮膚をクレンジングする最終ステップを就寝前に含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記酸性溶液が、前記皮膚をクレンジングするための少なくとも1種の界面活性剤を含む水性組成物を含み、全ての実施形態で、少なくとも1種の抗炎症剤と、少なくとも1種の細胞成長促進剤と、少なくとも1種の速効性抗菌剤と、免疫系増強剤、吸収促進剤、保湿剤および皮膚軟化剤、フリーラジカル捕捉剤、ならびに治癒促進剤からなる群から選択される少なくとも1種の異なる成分とを含む水性組成物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記酸性溶液が、抗菌活性を有する合成のカチオン性ポリペプチドの混合物を含む水性組成物を含み、前記合成のカチオン性ポリペプチドの10重量%が、合成のカチオン性ポリペプチドではない少なくとも1種の医薬品として許容されるポリマーを含み、それぞれが全水性体積に対して少なくとも約100μg/mLで存在し、それぞれが水中で相互に混和性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
ヒトの皮膚でのざ瘡疾患の発生率および重症度を低減するための方法であって、
a.酸性溶液を前記皮膚の表面に塗布して、皮膚残屑および皮脂を弛めて除去することにより前記皮膚をクレンジングするステップであり、前記溶液が、界面活性剤を含み、約4.0から6.0のpHを有し、個々の細胞の規則的な落屑を促進し、特殊化した脂質成分を保存し、正常な最外弱酸性皮膚pHを長期間にわたり維持するステップ、
b.その後、界面活性剤が存在しない状態で、約4.0から6.0のpHを有する酸性溶液を前記皮膚の表面に塗布し、前記溶液を空気乾燥させて、前記皮膚の障壁機能を回復させ、治癒を促進し、細菌感染の可能性を低減するステップ、
c.ステップ(b)を、1日当たり3から8回繰り返すステップ、および
d.ステップ(a)を繰り返すステップ
による方法。
【請求項17】
ステップ(a)が起床時に行われ、ステップ(b)がステップ(a)の終了直後に行われ、ステップ(c)が24時間を通して繰り返され、ステップ(d)が就寝時に行われ、ステップ(a)から(d)までが1から4週間にわたって毎日繰り返される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる、2014年11月19日に出願され、Method for the Prevention and Treatment of Acneと題された、Woodyの米国仮出願第62/082,019号の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、ざ瘡の予防および治療の分野に関し、より詳細には、様々なざ瘡感染症の出現および重症度を低減するのに使用される方法および製剤を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ざ瘡は、皮脂腺のしばしば慢性的な炎症性疾患であり、地球上で最も一般的な皮膚疾患の1つで少なくとも6億5千万人が冒されている。12から24歳の間のアメリカ人の5名のうち4名が、少なくとも1種または複数の種類のざ瘡を発症し、科学者および皮膚病学者はその原因を解明し治療法を開発するために依然奮闘している。米国皮膚病学会によれば、複数の種類のざ瘡があり、その重症度は、黒色面皰、白色面皰、およびニキビを含めた見苦しく厄介な一般的面皰から、丘疹、結節、および嚢胞の細菌感染症を含む可能性があるより深刻な問題にまで及ぶ。
【0004】
皮脂腺は、典型的には顔、頭皮、および背中に位置し、毛髪および皮膚を潤滑させかつ皮膚の障壁機能を改善する皮脂と呼ばれる油状または蝋状の物質を分泌する。面皰は、基本的なざ瘡病変であり、皮脂、および壊死した皮膚細胞を含めた皮膚残屑が、毛包に詰まったときに生ずる。黒色面皰は、毛穴が開いて毛穴の中の油が空気に曝され、酸化し、黒くなったときに生ずる。黒色面皰は、そのサイズが様々であり、黒色または灰色の斑点として皮膚の表面に現れる。毛包の開放が皮脂および壊死した皮膚細胞によって遮断されるために空気に曝されない白色面皰は、皮膚の表面に白色隆起として現れる。化粧品業界には、黒色面皰および白色面皰を摘出し除去するためのいくつかの救済策があるが、それでもしばしば再発する。
【0005】
別のタイプのざ瘡には、炎症を起こし赤くなった面皰である丘疹が含まれる。膿疱は、より重篤に感染したタイプの炎症性ニキビである。膿疱は、通常、白色または黄色の膿で満たされた炎症性隆起によって特徴付けられる。重度のざ瘡の種類には、膿で満たされかつ腫れ物に似た大きい病変である、嚢胞を含めてもよい。これらのより深刻なタイプのざ瘡は、永続的な瘢痕化をもたらし醜くさえする可能性がある。
【0006】
ざ瘡の事例の出現が高くかつ深刻な結果の可能性があると想定して、ざ瘡の突発を低減し撲滅するための薬物療法および方法が開発されてきた。薬物療法は、以下の3つの方法に焦点を当ててきた。1)例えばクリームおよびゲルを含めた、局所送達賦形剤中に過酸化ベンゾイルまたはサリチル酸を典型的には含有する店頭薬。2)ビタミンA誘導体をベースにし、かつ化合物、即ちビタミンAのカルボン酸であるトレチノイン、タザロテンのカルボン酸のプロドラッグであるタザロテン、および別の局所レチノイドであるアダパレンを含んでいてもよい、局所レチノイドの処方箋薬。3)とりわけテトラサイクリンおよびエリスロマイシンを含む経口または局所の処方抗生剤。これらの化合物のほとんどはざ瘡の発生率を低減することが可能でありかついくつかはざ瘡の出現の重症度も低減し得るが、それら化合物のそれぞれは、皮膚への悪影響を含めた望ましくない副作用をもたらす可能性がある。
【0007】
サリチル酸および過酸化ベンゾイルは、皮膚を乾燥させ、皮膚の高度に分化した最外層である角質層の剥離および刺激を引き起こす可能性がある。さらにより深刻なのは、食品医薬品局(FDA)が最近、活性成分である過酸化ベンゾイルまたはサリチル酸を含有するあるざ瘡製品の潜在的な危険性を消費者および健康管理専門家に知らせるために、薬物安全性情報(Drug Safety Communication)(DSC)を発布したことである。FDAは、過酸化ベンゾイルおよびサリチル酸が、稀な、しかし深刻で潜在的に生命を脅かすアレルギー反応または重篤な刺激を引き起こす可能性があることを警告した。FDAの警告は、これら店頭(OTC)製品に関連したアレルギーおよび過敏症に関する有害反応について消費者と製造業者との両方から報告を受けた監督官庁によって、速やかになされた。報告は、咽喉絞扼感、息切れ、喘鳴、低血圧、失神、または虚脱の事例を含有する。
【0008】
局所OTC製品の副作用は通常、副作用が非常に重篤になった場合には使用者がその施用を止めて医師に連絡するようにという警告も含めて、それらのラベルに列挙されるが、FDAはそのDSCに、過酸化ベンゾイルおよびサリチル酸を含有するざ瘡製品のラベル上には非常に重篤なアレルギー反応の可能性についての言及が現在のところはないことを記載した。
【0009】
ざ瘡の治療に使用される処方局所薬物療法は、典型的には局所OTC薬物療法よりも非常に強力であり、皮膚の乾燥、剥がれ、および発赤という非常に深刻な事例も引き起こす可能性がある。一部のOTCは日焼けに対する感受性を増大させるので、日焼け止めが必要になる可能性がある。タザロテンを含有するざ瘡を治療するための処方局所薬物療法は、深刻な先天性欠損を引き起こす可能性がある。女性は、タザロテンを含有する薬物が処方されている間は子供を産むことをさけるように、警告がなされている。
【0010】
処方抗生剤は、ざ瘡を治療するのに使用することができる。しかしとりわけ、抗生剤が過剰使用されて、抗生剤に対する耐性が増大するという懸念が存在し、このことは細菌が抗生剤に対して耐性を示すようになるため、ざ瘡を引き起こす細菌の死滅または制御に抗生剤がそれほど有効ではないことを意味する。
【0011】
概して、多くの機能の複合器官である最外層の角質層を含めた皮膚に、悪影響を及ぼす治療は、改善する必要があると認識される。例えば、Marks,R.は「The Stratum Corneum Barrier:The Final Frontier」、2004年刊、the American Society for Nutritional Sciences、2017Sから2021S頁までにおいて、健康な角質層は、体内および体外での水の移動を制約しかつ化学薬剤の浸透を妨げるときにその多重障壁機能が非常に効率的であると述べている。損傷した角質層は、経表皮水損失によって1日当たり最大6リットルの水を失う可能性があると言われ、化学薬剤および病原体の進入を許す可能性がある。
【0012】
表皮の外層の形成は、「角質化」としばしば呼ばれる複雑なプロセスである。角質化は、とりわけ、内側から最外角質層への水の損失およびpHの低減と、角質細胞と呼ばれる薄い重なり合った角細胞の発生と、化学耐性が高い特殊化架橋タンパク質と、水障壁特性をもたらす特殊化無極性脂質とによって特徴付けられる。個々の角質化細胞の規則的な落屑の過程で表面から脱落することになる角質細胞の、外に向かう一定の運動は、病原体が足場を得ることができないようにするビルトインメカニズム(built−in mechanism)と言われる。角質細胞同士の結合力が応力下で増大し細胞がまとまって落屑するときのような、落屑の障害は、湿疹および乾癬の場合のような鱗屑によってしばしば特徴付けられる。
【0013】
角質層の角質化および落屑の過程を妨げる治療は、水および化学物質の障壁機能、鱗屑の促進、発赤、および掻痒を含めた角質層の機能に必然的にダメージを与え、柔軟性を低下させる。
【0014】
Ali,S.M.およびYosipovitch,G.は、「Skin pH:From Basic Science to Basic Skin Care」、2013年1月16日刊、Vol.93、Acta Dermato Venereologica、261から267頁において、一般に、ざ瘡を含めた皮膚疾患の管理に際し、皮膚の酸性pHを損なわない石けんおよびクリームの使用を治療計画の一部とするべきであり、かつ理想的なクレンジング剤は、健康な皮膚と同様に4.5から6.5の間のpHを有するとしている。アルカリ性石けんの頻繁な使用は刺激を引き起こすと言われており、論文では、障壁機能が不完全であるときに障壁機能を回復するために、酸性外套に適合性のある薬剤を使用することによって酸性環境を保存しまたは回復することが望ましいことが開示されている。しかし、特定の代替のクレンジング剤または治療薬は、任意の特定の皮膚疾患用に推奨されておらず、尋常性ざ瘡における角質層透過障壁の先天的な障害を確認するデータはほとんどない。Del Rosso,J.Q.およびLevin,Jacqueline、「The Clinical Relevance of Maintaining the Functional Integrity of the Stratum Corneum in both Healthy and Disease−affected Skin」、2011年9月刊、the Journal of Clinical Aesthetic Dermatology、Vol.4、9号、22から42頁を参照されたい。
【0015】
上述の広く行き渡った治療および製品に関連した欠点を有さないまたは少なくとも低減する、1つまたは複数の種類のざ瘡の発生率および重症度を低減するための特定の代替方法および製品を開発することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、皮膚の器官におけるざ瘡の発生の頻度および重症度を治療し低減するための、方法および製剤を含めたシステムの改善に関する。本発明のシステムは、高pHと皮膚下層を曝すことなく、個々の細胞の規則的な落屑を促進し、特殊化した脂質成分を保存し、かつ正常な最外弱酸性皮膚pHを長期間にわたって維持しながら、壊死した皮膚細胞の皮膚、皮膚残屑、および過剰な皮脂を効果的にクレンジングし剥奪させる。経時的なシステムのステップの実施は、皮膚の自然に生ずる酸性外套を維持しまたは回復させ、細菌の増殖を低減し、皮膚の自然防御資源を促進し、既存のざ瘡病変の治癒を促進し、新しいざ瘡病変の重症度を排除しまたは少なくとも低減する。システムは、有用な治療物質の3つの異なる能力、即ち、皮膚の角質層を損傷することなく抗菌特性を促進すること、既存のざ瘡創傷の治癒を促進すること、および新しいざ瘡病変の形成が排除されるように阻害ゾーンを創出することによって、これらの結果を得る。これらの機能のそれぞれは、クレンジングに使用するときに抗生剤不含、抗菌性、弱酸性、および両性イオン性になるように配合された単一溶液によって発揮することができ、本発明は、これらのパラメーターを満たす溶液が従来技術の用具に関連した問題がない状態でざ瘡に対して顕著な有効性を有する、という驚くべき認識に一部基づく。
【0017】
本発明のシステムは通常、24時間で、1)以下に記述される適切な物質で皮膚をクレンジングし、皮膚を水で濯ぎ、皮膚を乾燥する方法ステップと、2)物質を皮膚に塗布し、物質を空気乾燥させ、皮膚上に残す方法ステップと、3)ステップ(2)を、皮膚に物質を塗布する選択された間隔で繰り返し、物質を皮膚に接着させたままにする方法ステップと、4)ステップ(1)を繰り返す方法ステップとを含む。例えば特定の実施形態では、ステップ(1)は、起床時の朝に実現され、ステップ(2)は、ステップ(1)の直後に実現され、ステップ(3)は、ステップ(2)の後に、1日を通して3から6時間の選択された間隔で繰り返され、ステップ(4)は、就寝時の夜に実現される。当然ながら、それぞれの計画に応じて、ステップ(1)、(2)、および(3)を夜に行ってもよく、ステップ(4)を翌朝に行ってもよい。場合によっては、ステップ(1)および(4)のみで十分なことがある。代替の実施形態では、ステップは、ざ瘡を予防しまたはざ瘡が生ずる場合にはその可能性および重症度を低減することが望まれる限り、繰り返してもよく、またはステップは、皮膚の状態を改善する必要がある限り、ざ瘡病変に直接塗布してもよい。
【0018】
従来技術との明らかな区別において、本発明のシステムの実施に際して皮膚に塗布する物質は、典型的には有害な副作用をもたらさない。従来技術の化合物の多くは、ざ瘡の発生率および重症度を低減することが可能と考えられるが、これらの化合物は、後続の感染症に実際に寄与し得る1つまたは別の方法で、皮膚に損傷を与える傾向もあり、ざ瘡の再発が促進される。これら従来の化合物が皮膚に損傷を与えるある特定の方法は、皮膚の最外層でありかつ高度に分化した複雑な層である角質層に、損傷を与えることによる。多くの抗ざ瘡局所クリーム、ゲル、およびスプレー中の成分は、皮膚を乾燥させ、剥がれまたは発赤を引き起こし、外套に損傷を及ぼし、またはその他の手法で皮膚のpHを、細菌の増殖を促進し得る塩基性レベルまで上昇させることが報告されている。
【0019】
本発明の実施に際して皮膚に塗布される物質は、典型的には、液体溶液となり、ゲル、フォーム、またはクリーム中に分散されてもよく、そのため、約4.5から5.5の弱酸性pHが長期間にわたって促進され、抗菌性でありまたは少なくとも防腐性であり、有益な脂質を除去せず、したがってざ瘡創傷の感染または炎症の機会を低減しながら皮膚の完全性が保存される。物質は、任意の都合良い賦形剤を介して塗布してもよい。例えば物質は、通常、液体またはフォームクレンジング溶液として朝および夜に塗布してもよく、典型的にはクレンジング用に組み込まれた界面活性剤を有する液体またはフォームであり、スプレー中の成分として塗布してもよく、スプレーはしばしば、いくらか収斂品質を有する化粧水を組み込む。スプレーは、界面活性剤を組み込んでも組み込まなくてもよい。
【0020】
溶液が、適切に酸性のpHのものであるだけでは十分ではない。対照的に、使用される溶液は、全てが典型的には抗生剤不含、両性イオン性、抗菌性、または少なくとも防腐性となり、全体として4.0から6.0の弱酸性pHのものである。界面活性剤は通常、皮膚から有益な脂質が除去されるのを回避するために、クレンジング用に含まれる。収斂「化粧水」は、皮膚上での噴霧および乾燥方法ステップに含まれてもよく、界面活性剤を含んでも含まなくてもよい。石けんは、通常含まれない。
【0021】
弱酸性状態で角質層のpHを維持することに加え、本発明により使用される溶液の抗生剤不含、両性イオン性、抗菌性、または少なくとも防腐性の性質と組み合わせて、本発明の方法は、それ自体では皮膚から脂質または水分を除去しない化合物を溶液中に用いてもよく、そのため皮膚は、正常な機能を維持することが可能になり、壊死した皮膚細胞の落屑を妨げない。典型的なクレンジング剤および従来技術のざ瘡治療薬は、皮膚から水分および脂質を失わせると考えられる。最初に皮膚を乾燥させるが、長期にわたる水分および脂質の損失は、皮脂の生成を増大させ、ざ瘡状態を時間と共に悪化させる可能性がある。皮膚上に塩基性環境を発生させる従来技術の製品および治療薬は、細菌増殖を促進することによって細菌感染に寄与すると考えられ、角質層障壁および水分輸送機能に損傷を与える可能性がある。
【0022】
本発明の実施方法で使用されるクレンジング溶液およびスプレーのpHは、酸性であり、塗布時に痛みがあるほど低くすべきでも、感染が促進されるほど高くすべきでもない。好ましい適切なpH範囲は、細菌の増殖の結果として本質的により塩基性になり得る感染したざ瘡病変に塗布したときであっても、長期間にわたって溶液が皮膚上で適切な酸性pHを維持しまたは発生させる能力を有する、約4.5から5.5である。溶液は、創傷適合性があり、ざ瘡に関連した創傷および病変を刺激せず、創傷治癒を支援する。溶液は、自然に生ずる保護脂質が皮膚から除去されないように、好ましくは両性イオン性であり、皮膚は水和状態のままになるが、過剰な油、特に皮脂を除去することが可能である。溶液は、かならずそうである必要はないが抗菌性または少なくとも防腐性であってもよく、典型的には抗生剤不含である。溶液は、ざ瘡細菌が成長できない阻害ゾーンを創出することによって、ざ瘡叢が低減された場合であっても健康な皮膚に関連した叢のバランスを維持することが可能であることが、特に有用である。阻害ゾーンは、細菌増殖を阻害するためのより低いpHだけではなく、細菌感染を除外するための規則的な落屑と、皮膚の柔軟性および完全性を保存するための正常な水分蒸散も含む、複雑な現象である。溶液は、ざ瘡感染によって創出された創傷の治癒を支援するために、表皮を通して、少なくとも真皮の深層に至るまで、容易に吸収されることも望ましい。
【0023】
このように本発明は、ざ瘡を予防し治療するための方法ステップおよび製剤を含む、容易に実現されるシステムであって、起床時に上述の溶液で皮膚をクレンジングし、クレンジングされた皮膚を水で濯ぐステップと、すぐに、典型的にはスプレー化粧水の形態の溶液を皮膚に塗布し、その化粧水を、空気に接触させて皮膚上で乾燥させるステップと、この直前のステップを、1日当たり少なくとも1回または2回から最大約8回繰り返すステップと、就寝時に上述の溶液で皮膚をクレンジングし、クレンジングした皮膚を水で濯ぐステップとを含むシステムを提供する。任意選択で、溶液を噴霧し、その後、就寝に向けて空気乾燥してもよく、これらの順序の全体は、所望の結果を実証するために、翌日、ある期間にわたって繰り返してもよい。
【0024】
上述のパラメーターを満足させかつ液体、スプレー液体、およびフォームとして利用可能な、本発明の方法ステップの実施に際して使用される適切な溶液は、Avadim Technologies,Inc.、Asheville、North Carolinaから入手可能なTHERAWORX(登録商標)というブランドのスキンクレンジング剤である。THERAWORX(登録商標)および類似のスキンクレンジング剤は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,358,516号に記載されている。
【0025】
本発明について一般的な観点から記述してきたが、次に添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】以下の詳細な説明に記述される本発明の実施に際して使用される方法ステップの実施形態を、概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明について、以後、より十分に、本発明の概念の全てではないが一部を例示する添付の
図1を参照しながら、十分に記述する。確かに本発明は、多くの異なる形で具体化されてもよく、本明細書に記述される特定の実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろこの開示で提供される実施形態は、適用可能な法的要件を満足させるものである。
【0028】
図1のステップ番号40である、本発明の方法の実施の第1のステップでは、pHが約4.5から5.5のスキンクレンジング溶液を、皮膚のある領域に塗布する。ステップ40は、クレンジング溶液を皮膚に擦り込むことを含む。選択された皮膚領域は、ざ瘡病変を予防することを望むと考えられる場所であってもよく、またはざ瘡のない状態に回復することが望まれもしくはざ瘡病変が少なくとも実質的に低減された、ざ瘡がある皮膚であってもよい。クレンジング剤は、汚れ、壊死した皮膚細胞、過剰な皮脂、およびとりわけ尋常性ざ瘡(Acne vulgaris)およびざ瘡菌(Propionibacterium acnes)を含む皮膚上に見出される多くのタイプの細菌を含めた、細胞残屑を除去するように作用する。典型的には、クレンジング剤は、ゲル、フォーム、クリーム、または液体などの標準的な方法で送達されることになるが、これらのタイプのみに限定するものではない。健康な皮膚は、4.0から6.5に及ぶ僅かに酸性のpHを有する。クレンジング溶液は、好みに応じて4.0から6.5のpHで生成できることに留意することは重要である。皮膚によって維持される酸性環境は、細菌およびその他の叢の皮膚上での増殖を阻害するのを助ける。感染した病変の治癒を促進するため、約4.0から4.5または5.0のいくらか低いpHが最初に選択されてもよい。
【0029】
皮膚の健康を維持するには、皮膚の自然に生ずる酸性外套を破壊することなく、規則的にクレンジングすることが重要である。酸性外套は、角質層の完全性に極めて重要であり、健康な角質層の重要な構成要素は、皮膚の正常なpH範囲を維持することである。皮膚の酸性外套を損傷することなくまたは有害な刺激物を皮膚に導入することなく、しかしそれでも抗菌特性を有している、皮膚をクレンジングすることのできるクレンジング剤が好ましい。クレンジング剤は、水分輸送を制御するのにまたは塩基性pHを促進するのに皮膚によって使用される角質層からの細胞の正常な落屑または複合脂質の除去を、妨げないことも重要である。
【0030】
皮膚上に置かれた製品は、皮膚のpHに直接影響を及ぼす可能性がある。例えば、典型的にはpHが7.0よりも高い完全なアルカリ性である多くの従来技術のクレンジング剤が、ざ瘡病変にまたはきれいな皮膚に直接塗布されると、これらのクレンジング剤は、皮膚から、細菌の増殖を防止するのを助けるその酸性層を除去する。皮膚を保護するこの酸性層がないと、一部の種類のざ瘡の原因となる細菌が繁殖する可能性がある。以下に詳述されるような溶液によるクレンジングは、皮膚の自然な酸性障壁の回復および維持を開始する。
【0031】
患部に、ステップ40でクレンジング剤を塗布した後、後続のステップ45に示すようにクレンジング剤を水で濯ぐべきである。クレンジング溶液は、溶液の除去を支援するために、水を皮膚に直接当ててまたは水に浸した清潔な布を使用して濯いでもよい。クレンジング溶液の除去は、この溶液がクレンジングプロセス中に毛穴および皮膚表面から追い出した、弛んだ細胞残屑および過剰な皮脂を除去するのも支援する。しかし、水による濯ぎはpHを7.0に追い遣り、したがって、濯ぎはクレンジングにおける重要な最後のステップであるが、溶液を、おそらくは化粧水として、好ましくはスプレーによって、通常は界面活性剤がない状態で再度塗布し、皮膚上で乾燥させるべきである。
【0032】
皮膚またはその脂質もしくはタンパク質の自然のpHを乱すことなく、あるいはその他の手法で皮膚の完全性に悪影響を及ぼすことなく、皮膚を完全にクレンジングした後、ざ瘡病変を示すまたはざ瘡病変を起こし易い皮膚上のpHを低下させて、治癒プロセスを促進しかつ皮膚を正常な機能に回復させることが重要である。感染した皮膚は、細菌増殖を促進する、より塩基性のpHを典型的には示し、そのpHを酸性レベルに低減することによって創傷の酸素化が改善され、既存のざ瘡創傷を治癒させ、新しいざ瘡部位の形成を低減しまたはなくすことも可能になる。皮膚の機能が回復した後、正しいpHでの溶液の連続塗布によって、皮膚の障壁機能は無傷のままに保たれる。
【0033】
ステップ45におけるように濯ぎが終了し、皮膚が完全にクレンジングされた後、皮膚を典型的にはタオルで乾燥させる。その後、次のステップ50によれば、溶液を、ステップ40で予めクレンジングされた領域に直接噴霧して、pHを低下させることによって治癒を促進してもよい。例えば、穏やかな収斂物質を含む「化粧水」を、この目的で使用してもよい。化粧水は、皮膚に直接スプレーすることによって、またはコットンパッドに化粧水を飽和させ次いでその化粧水で皮膚の表面を拭くことによって、ステップ50で皮膚に塗布することができる。化粧水を塗布したら、ステップ55のように空気乾燥させるべきであり、皮膚から濯ぎ落とすべきではない。これは化粧水溶液が、ステップ40で使用したクレンジング溶液と同様に約4.5から5.5のpH、あるいは約4.0から6.5のpHを有するからである。クレンジング、濯ぎ、および化粧水の組合せは、溶液を塗布した領域の皮膚のpHを4.5から5.5の値で、この1回の塗布で最長3から6時間の長期間にわたり維持するのを支援し、それによって皮膚の酸性外套が維持され、細菌の増殖を制限する阻害ゾーンを創出するのを助ける。特定の製剤および感染の重症度に応じて、溶液のpHは約4.0から6.5に拡大することができる。本発明の方法における製剤の使用は、皮膚が正常な含水量および弱酸性pHを実現し維持するのを支援し、正常な皮脂生成および皮膚残屑の剥奪が可能になる。
【0034】
ステップ50および55は、pHを維持するために、細菌の増殖と闘うために、および正常な皮膚機能を促進するために、典型的には毎日最大3から5回またはさらに最大8回、ステップ60に示されるように望みに応じて繰り返してもよい。皮膚のpHは、通常、1日のうちで一人ひとり変わることになる。就寝時に、ステップ40および45を繰り返し、ステップ40から65までを上述のように繰り返すときは、その直後に、最初の順序であるステップ50および55を翌日までに含んでいてよい。
【0035】
このように本発明の実施は、1つには皮膚のクレンジングを通してざ瘡部位のpHを調節し、皮膚を回復させ、皮膚を保護することによって、ざ瘡病変の創傷治癒を促進する。
【0036】
本発明の一実施形態では、クレンジング溶液は、ステップ40で起床時に塗布し、ステップ45で水で濯ぎ落とし、ステップ50でスプレーを介して化粧水溶液を塗布し、ステップ55でスプレーされた化粧水を空気乾燥させる。ステップ50の化粧水を塗布する手順は、ステップ55のスプレーおよび空気乾燥を介して、ステップ60で毎日3または4回まで、またはさらに頻繁に繰り返すことができる。次いで1日が終わる前に、クレンジングおよび濯ぎステップ40および45を任意選択で繰り返してもよい。その直後に、ステップ50で化粧水溶液またはその他の溶液の塗布物を皮膚にスプレーし、ステップ55のように乾燥させると、再び起床するまで皮膚上に製品が残ったままになる。起床時に、ステップ40から65までを上述のように、毎日、ざ瘡病変を治療しまたは予防するのに十分な時間繰り返す。
【0037】
代替の実施形態では、皮膚を、ステップ40および45で1日1回だけ溶液でクレンジングし濯ぐことができ、ステップ50および55で就寝前に少なくとも1回溶液を塗布して空気乾燥させることができる。典型的には、1日の最初のクレンジングと、1日の終わりの溶液の塗布および乾燥との間の時間中、溶液は、複数回、少なくとも3回または4回塗布しかつ乾燥させることになる。各実施形態によれば、毎日のように連続使用することによって領域を治療することが可能になり、それによって4.5から5.5の最適なpHレベルが実現され、細菌増殖が阻害され、細胞残屑および過剰な皮脂が除去され、皮膚の正常な機能が回復する。
【0038】
次に皮膚の酸性外套の考察に戻ると、酸性外套の有効性を維持することによって良好な皮膚の健康状態が促進される。損傷を受けた酸性外套は、乾燥肌、鱗状の肌、油の過剰生成、敏感肌、ざ瘡など、いくつかの皮膚の病訴をもたらす可能性がある。皮膚の自然のpHを促さない製品は、酸性外套の分解に寄与する可能性があり、それによってざ瘡が発症し得る可能性が増大し、関連する病変および創傷を引き起こす。酸性外套が損傷を受けると、その修復に最長14から17時間を要する可能性があり、この時間中に細菌がより有効に増殖すると予測することができる。このように皮膚のpHは、ざ瘡を効果的に治療する重要な構成要素である。皮膚のpHを維持するための、本発明の実施およびその方法に常に忠実であることは、顔および身体におけるざ瘡の事例の出現および重症度を、低減し予防するのに推奨される。
【0039】
皮膚は、人体の最大器官であり、3つの主要な層、即ち最外層である表皮と、毛包、毛穴、皮脂腺、汗腺、および結合組織を含む中間層である真皮と、絶縁脂肪層を含む下皮とから構成される。最外層、角質層(SC)は、これらの層に損傷を引き起こす可能性がある、温度および湿度などの条件、ならびに様々な衛生品、化粧品、およびその他のパーソナルケア用品に曝される。生じた損傷は、しばしばSCの乾燥を引き起こし、それがSCに亀裂を引き起こし、皮膚細胞の正常な遮蔽に干渉し、損傷した細胞の自然治癒を妨げる可能性がある。SCは、壊死した皮膚細胞を含み、下層組織を感染、脱水、化学物質、および擦過から保護する重要な障壁層を形成する。しかし、壊死した皮膚細胞および細胞残屑が首尾良く落屑せずに毛穴内に捕獲された場合、結果としてざ瘡創傷になる。細菌は、詰まった毛穴の嫌気性環境で増殖することができ、その結果、創傷が感染する。
【0040】
ざ瘡の治療に関連して使用される溶液は、ざ瘡を引き起こす可能性のある多くのタイプの細菌に対処する抗菌特性を任意選択で有することに加え、その構成要素が酸性pHであり含水量を持続させる皮膚の障壁機能を、典型的には保存すべきである。本発明の方法の実施に際して使用されるスキンケア溶液の酸性pHは、自然の感染していない皮膚の範囲である4.0程度の低さから6.5程度の高さまで変えることができる。溶液は、自然に生ずる保護脂質が皮膚から除去されないように、好ましくは両性イオン性であり、したがって皮膚を水和させたままにすることが可能である。溶液は、必ずしも必要ではないが抗菌性または少なくとも防腐性であってもよく、典型的には、抗生剤不含であり、細菌株における耐性の一因となる抗生剤の使用を必要としない。溶液は、叢の量がいくらか低減した場合であっても、健康な皮膚に関連した叢のバランスを維持することが可能であることが特に有用である。溶液は、表皮を通して容易に吸収され、少なくとも、感染物質の進入点をもたらし得る微小な擦過傷を創出することなく、真皮の深層まで吸収されることも望ましい。
【0041】
このように、皮膚に損傷を及ぼすことのない、健康な皮膚の場合と同様のpHレベルを促進し、水分および脂質を保存して皮脂生成および細胞残屑の落屑を含めた皮膚機能を回復させる、それほど不快ではない抗菌性または防腐性化合物を使用することが望ましい。クレンジングおよび化粧水は、様々なスキンケア溶液を使用して、本発明の方法ステップにより実現することができる。本発明を実施するのに効果的なあるスキンケア水溶液は、Avadim Technologies,Inc.、Asheville、North Carolinaから入手可能なTHERAWORX(登録商標)ブランドのスキンクレンジグ剤である。THERAWORX(登録商標)および同様のスキンクレンジング剤は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,358,516号に記載されている。
【0042】
米国特許第6,358,516号に教示されるような、保湿剤および皮膚軟化剤と治癒を促進するための薬剤が、望ましい。本発明の実施に有用なスキンケアおよびクレンジング剤は、とりわけ以下の成分を含んでいてもよい。
(a)クレンジング機能のための少なくとも1種の界面活性剤。
(b)少なくとも1種の抗炎症剤。
(c)少なくとも1種の消泡剤。
(d)少なくとも1種の細胞成長促進剤。
(e)少なくとも1種の即効性抗菌剤であり、前記成分のそれぞれが皮膚に適合性があり、前記組成物のその他の成分とは異なるもの。かつ少なくとも1種の異なる成分は、下記の群から選択される。
(f)免疫系増強剤であり、少なくとも1種の免疫系増強剤がアロエ(aloe vera)、ベータグルカン、コロイド状の銀、またはアラントインであるもの。
(g)吸収促進剤であり、少なくとも1種の吸収促進剤がベータグルカン、アロエ、またはコロイド状の銀であるもの。
(h)保湿剤および皮膚軟化剤であり、少なくとも1種の保湿剤または皮膚軟化剤が、アロエ、ビタミンE、またはコカミドプロピルであるもの。
(i)フリーラジカル捕捉剤であり、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤がビオフラボノイド、ポリフェノール化合物、グレープフルーツ由来の第4級化合物、ベータグルカン、アラントイン、ビタミンE、ピクノジェノール、またはブドウの種の抽出物であるもの。および
(j)治癒促進剤であり、前記成分が、皮膚に塗布されると素早く空気乾燥しかつ1ステップの塗布で皮膚をクレンジングし療法上整え治療する、安定した非濯ぎ放射線滅菌可能な組成物を形成するように選択され、少なくとも1種の治癒促進剤が、アロエ、アラントイン、またはベータグルカンであるもの。
【0043】
化合物を2つの異なるカテゴリーで述べる場合、その化合物は製剤において両方の機能を発揮し、各機能は、化合物が存在するときに発揮されることを理解すべきである。
【0044】
本発明のステップ40で使用するのに適切であるようなクレンジング剤には、例えばコカミドプロピルベタイン、アルキルポリグルコシド、ラウリルグルコシド、およびこれらの組合せを含めた、酸または塩基のいずれかとして振る舞う能力を有する界面活性剤である両性界面活性剤であるがこれらに限定することのない石けんなどの界面活性剤が含まれる。
【0045】
赤くなった皮膚は、感染およびその他の皮膚の問題の最初の徴候であり、皮膚が、その自然資源を、成長およびその他の正常な機能から予防および修復に向け直したことを示す。発赤が低減しまたはなくなると、より健康な新しい皮膚の成長を増大させることができる。抗炎症剤は、アロエ、アラントイン、コカミドプロピルベタイン、ベータグルカン、およびこれらの組合せを含むがこれらに限定することのない、皮膚の発赤を低減することが公知の薬剤を、クレンジング中に効果的であることが示される量で含む。皮膚に適合性のある消泡剤には、シリコーンをベースにした消泡剤、ジメチコンコポリオール、および同様のものが含まれる。
【0046】
好ましい組合せおよび濃度で存在する場合、成長促進剤は、新しい皮膚の成長を促進または刺激し、以前に観察されたよりも著しい大きさの規模で治癒を促進する。細胞成長を刺激しまたは促進する薬剤には、アロエ、アラントイン(グリオシルジウレイド;5−ウレイドヒダントイン)、ベータグルカン、Citricidal(登録商標)などのポリフェノール化合物、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。Citricidal(登録商標)および同様の化合物は、広範な種類の細菌に効果的であることが実証されてきた。これらの化合物は、グリセリンを含めた不活性成分と一緒に、グレープフルーツまたはその他のビオフラボノイドから誘導された第4級部分を含有する。
【0047】
皮膚の免疫系を強化しかつ/または刺激し、かつ/または二次免疫系を提供するのを助ける薬剤には、アロエ、ベータグルカン、コロイド状の銀、アラントイン、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。好ましい量で溶液組成物中に存在する場合、これらの薬剤は、治癒を促進し、ざ瘡などの感染の発生率も低減するのを助ける。これらの物質のいくつかは、皮膚の自然な障壁機能を強化し得る。これらの基準を満たしかつ本発明のシステムおよび方法で使用することもできる溶液は、必ずしも同等の結果でなくてもよいが、溶液が防腐性、弱酸性、および抗生剤不含であり、かつクレンジング機能のために両性イオン性界面活性剤が脂質の除去を回避するのに用いられるという程度まで、その内容が参照により本明細書に組み込まれるWO2013/142374として2013年9月26日に公開された国際特許出願No.PCT/US2013/032535に記載されている。溶液は、抗菌活性を有する合成のカチオン性ポリペプチドの水性混合物であり、合成およびカチオン性ポリペプチドの10重量%は、合成のカチオン性ポリペプチドではない少なくとも1種の医薬品として許容されるポリマーを含み、それぞれは全水性体積に対して少なくとも約100μg/mLで存在し、それぞれは水中で相互に混和性である。
【0048】
コロイド状の銀、Citricidal(登録商標)、ベータグルカン、アロエ、および同様の成分は、感染を低減し治癒を促進するのを助けるために、既存の免疫系を促進および/または刺激する。コロイド状の銀およびCitricidal(登録商標)は、その作業負荷を低減することによって自然の免疫系を支持し、Citricidal(登録商標)は、まだ明らかではないメカニズムによって治癒を促進することも考えられる。
【0049】
ベータ−1抽出物または酵母誘導体としても公知のD−グルコースポリマーであるベータグルカンは、フリーラジカル捕捉活性も示す非特異的免疫刺激物質である。ベータグルカンは、身体の免疫系T細胞を刺激し、マンノプロテインおよび多糖、例えばアロエは、T細胞の有効性を支援する。マンノプロテインは、糖タンパク質であり、酵母およびオオムギの細胞壁中のベータグルカンに連結されたグリコプロテインである。マンノプロテインは、免疫細胞の構造的完全性、敏捷性、および数を直接増大させる。即効性の皮膚に適合性ある抗菌剤は、細菌、ウイルス、酵母、および真菌の少なくとも1種または全てに対して有効であり、皮膚のクレンジング中および乾燥時に皮膚の表面および内部の細菌だけでなくウイルス、酵母、および真菌も含めた感染性生物を死滅させるのに有効な量で、コロイド状の銀、Citricidal(登録商標)、ピクノジェノール、ブドウの種の抽出物、抗生剤、およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されないものを含む。
【0050】
皮膚は、広く様々な微生物を内部に抱え、これらのいくつかはおそらくは有害であるがその他は有益である。理想的には、この正常な細菌叢は、クレンジングによって破壊されない。しかし、皮膚上に存在する細菌および真菌の蓄積を低減するクレンジング剤は、皮膚感染症の発生率を低減するのを助ける。選択される1種または複数の抗菌剤は、細菌および同様の微生物に対して作用するように、即効性である。クレンジング中および急速空気乾燥中の1種または複数の抗菌剤の作用は、壊死した角層または表皮の表面に移送されたものまたはその内部で生きているものに加えて、生きている基底細胞層および皮膚の真皮に存在する、ウイルス、細菌、真菌、および酵母を、実質的に死滅させる。この作用は、小さな断裂であろうと微細な擦過傷であろうと、皮膚の破断部に進入する細菌、ウイルス、および同様の感染性微生物に起因した感染症の出現または重症度を低減する役割をする。
【0051】
コロイド状の銀およびCitricidal(登録商標)などの抗菌剤のいくつかは、正常な叢に適合性があり、真皮に浸透することが可能であり、有用な抗菌特性ももたらす。コロイド状の銀は、身体のT細胞に類似した手法で、細菌などの単一細胞微生物を、それらの細胞壁に浸透することによって死滅させる。したがってこれらの生物は、多くのその他の抗菌剤で変異するように、耐性株に変異することができない。しかし、コロイド状の銀の効力は限られており、好ましくは本発明による組成物を処方する際にその他の抗菌剤を補わなければならない。さらに、コロイド状の銀は、好ましくは真皮を透過するのに十分小さい粒子(約0.005〜0.02ミクロン、より好ましくは約0.01〜0.1ミクロン)と共に処方される。
【0052】
適合性ある保湿剤および皮膚軟化剤には、アロエ、アラントイン、ビタミンE(トコフェロール)、ベータグルカン、コカミドプロピルベタイン、およびこれらの組合せが含まれるがこれらに限定するものではない。これらの薬剤は、毛穴を詰まらせることなく、壊死した角層、表皮、および/または真皮に、自然に再び水分を与える。組成物中の保湿剤および皮膚軟化剤は、乾燥を予防し、弾性を増大させ、皮膚断裂の発生率を低減し、かつ皮脂腺の活性を補って毛穴を詰まらせることなく油を再び生成するように、皮膚表面(即ち、真皮)に、自然に再び水分を与えるよう作用する。保湿剤および/または皮膚軟化剤の過剰使用は、皮膚の吹き出物、炎症、およびざ瘡の主な原因であり、したがって、より長く続く保護障壁をもたらすために保湿剤および/または皮膚軟化剤の量を単に増加させることにより、皮膚の問題を促進する可能性がある。したがって、これらの成分の量は、望ましくない作用を最小限に抑えるように制御される。
【0053】
フリーラジカルを捕捉しかつ皮膚を解毒するのを助ける薬剤には、Citricidal(登録商標)、ベータグルカン、アラントイン、ビタミンE、ピクノジェノール、ブドウの種の抽出物、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。新しい皮膚の成長および皮膚の治癒を促進および/または刺激する薬剤には、アロエ、アラントイン、Citricidal(登録商標)、ベータグルカン、医薬品、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。生体適合性の保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、同様の薬剤、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。生体適合性の香料には、天然のオレンジ、レモン、ラベンダー、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。その他の有益な薬剤には、ビタミンおよびビタミン前駆体(ビタミンA、カロテン、クリプトキサンチン、レチノール、3−デヒドロレチノール、ビタミンC(アブソルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)など)を含有するもの、ハーブ(カモミール、ラベンダー、朝鮮人参、銀杏など)、抗酸化剤、コラーゲン、pH調整剤、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。組成物の各成分は、組成物の全重量に対するパーセンテージとして、所望の結果を実現するのに単独でまたはその他の成分と相乗的に有効な量で存在する。
【0054】
上述の本発明の方法を具体化するために、THERAWORXスキンクレンジング剤を、in vitroでざ瘡菌に塗布し、有機物を死滅させるTheraworx製剤の有効性を、様々な時間間隔の後で測定した。結果は、製剤に15分間曝露した後の、ミリリットル当たりのコロニー形成単位(「CFU/ml」)によって測定された生存可能な細菌細胞の数は、10単位未満まで低減したことを実証する。生存可能なざ瘡菌の全対数減少値は4.839であった。対数減少値が6.0である状態は、滅菌状態と見なされる。このように、ざ瘡の治療では、塗布したときの製剤は、ほぼ滅菌状態を提供すると予測することができる。以下の表は、試験の結果を示す。
【表1】
【0055】
様々な溶液を考え出し、様々な賦形剤で送達して、本発明の目的、即ちざ瘡が予防されるようにまたはその出現の発生率および重症度が低減するように、皮膚をクレンジングし、回復し、保護することを達成してもよいことを理解すべきである。これらの溶液は、クレンジングのための界面活性剤を含み、酸性であり、本発明の方法で塗布したときに皮膚の酸性状態を維持し、ざ瘡の予防および治療の段階のそれぞれの全体を通してpHを調節することが可能である。
【国際調査報告】