特表2017-534705(P2017-534705A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-534705付加重合に基づく固定用合成モルタル系の硬化剤組成物、前記組成物の使用及び製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534705(P2017-534705A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】付加重合に基づく固定用合成モルタル系の硬化剤組成物、前記組成物の使用及び製造
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20171027BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20171027BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20171027BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20171027BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20171027BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20171027BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171027BHJP
   C09J 1/00 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08G18/61
   C08G18/38 093
   C09J175/04
   C09J163/00
   C09J183/04
   C09J11/06
   C09J1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-515058(P2017-515058)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2015001813
(87)【国際公開番号】WO2016041625
(87)【国際公開日】20160324
(31)【優先権主張番号】102014013695.7
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102015111484.4
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514271866
【氏名又は名称】フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン グリューン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュレンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァイネルト
【テーマコード(参考)】
4J034
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA12
4J034CA32
4J034CD15
4J034DM01
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC71
4J034RA08
4J034RA10
4J036AC02
4J036AD08
4J036AF01
4J036DA05
4J036DC16
4J036FA05
4J036FB16
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA13
4J040EC001
4J040EF051
4J040EF281
4J040EK031
4J040JB02
4J040JB04
4J040NA12
(57)【要約】
アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための、付加重合によって硬化可能な固定用合成モルタル系の硬化剤組成物であって、ここで、硬化剤組成物は、1分子当たり平均して少なくとも1個の又は好ましくは2個以上の、イソシアネート基又はエポキシ基との付加反応において反応性の1個以上の(第二級若しくは第一級)アミノ基及び/又はチオール基を有する有機基と、1分子当たり平均して少なくとも1個以上の加水分解性基とを有するオリゴマーシロキサンを含み、そのほかに1種以上の更なる通常の添加剤を含んでいてよい前記硬化剤組成物、この硬化剤組成物を含む固定用合成モルタル系、アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するためのこれらの固定用合成モルタル系の使用並びに前記固定用合成モルタル系及び前記硬化剤組成物の製造方法及び使用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための、付加重合によって硬化可能な固定用合成モルタル系の硬化剤組成物であって、ここで、硬化剤組成物は、1分子当たり平均して少なくとも1個の、イソシアネート基又はエポキシ基との付加反応において反応性の1個以上の第二級及び/若しくは第一級アミノ基並びに/又はチオール基を有する有機基と、1分子当たり平均して1個以上の加水分解性基とを有するオリゴマーシロキサンを含み、そのほかに1種以上の更なる通常の添加剤を含んでいてよい、前記硬化剤組成物。
【請求項2】
オリゴマーシロキサンが、アミノ基及び/又はチオール基で官能化されたシロキサンオリゴマーであって、該シロキサンオリゴマーは、オリゴマー1分子当たり少なくとも2個以上のアミノ基及び/又はチオール基と、ケイ素に結合した少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の加水分解性基とを有し、かつ鎖状、環状、架橋した及び場合により空間架橋した構造から選択される少なくとも1つの構造を形成するSi−O架橋した構造要素を有することを特徴とする、請求項1記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
オリゴマーシロキサンが、一般式(I)
【化1】
の理想化された形の少なくとも1つの構造を含み、ここで、
構造要素は、アルコキシシランから誘導され、かつ
A及びBは、それぞれ互いに無関係に、少なくとも1個の(第一級若しくは第二級)アミノ基及び/又はチオール基を含む(好ましくはC1〜C7−)アルキル基を意味する;
Yは、OR5及び/若しくはR5を表し、又は架橋した及び場合により空間架橋した構造では、互いに無関係に、OR5、R5若しくはO0.5を意味し、好ましくは、Yは、OR5である;
基R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ単独でかつ互いに無関係に、置換されていない又は置換された−場合によりヘテロ原子を有する−線状、分枝状又は環状の炭素原子1〜20個を有するアルキル基を意味する;
並びにa、b、c、d、e及びfは、1個の構造単位に対して、互いに無関係に、整数を意味し、ここで、
aは、互いに無関係に、0又は1又は2である;
bは、1以上である;
cは、0以上である;
dは、互いに無関係に、0又は1又は2である;
eは、互いに無関係に、1又は2である;及び
fは、0以上であり、好ましくは1以上である;
ただし、b+c+fは、2以上であり、例えば2.001以上である、請求項1又は2記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
オリゴマーシロキサンが、請求項3で挙げられる式(I)の構造要素を含み、式中、A及びBが、3−アミノプロピル、3−アミノプロピル−メチル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチル、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピル、N−シクロヘキシルアミノメチル、N−フェニルアミノメチル、N−シクロヘキシルアミノメチル、N−シクロヘキシルアミノメチル−メチル、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル及び/又は3−メルカプトプロピルを意味し、それ以外の符号は、請求項3で挙げられる意味を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の硬化剤組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の硬化剤組成物と、硬化可能なエポキシ系及び/又はイソシアネート系反応性合成樹脂とを含む、付加重合によって硬化可能な固定用合成モルタル系。
【請求項6】
硬化剤組成物の割合が、10〜80質量%、例えば25〜70質量%であることを特徴とする、請求項5記載の固定用合成モルタル系。
【請求項7】
硬化可能なエポキシ系反応性合成樹脂が含まれていることを特徴とする、請求項5又は6記載の固定用合成モルタル系。
【請求項8】
硬化可能なエポキシ系反応性合成樹脂が、グリシジル化合物をベースとするエポキシ成分、例えば、グリシジル基の平均官能価1.5以上、特に2以上、例えば2〜10を有し、任意に更なるグリシジルエーテル(類)を反応性希釈剤として含んでいてよいエポキシ成分から選択されており、好ましくは、少なくとも1種の多価アルコール若しくはフェノール、例えばノボラック、ビスフェノールF若しくはビスフェノールAのポリ(ジを含む)グリシジルエーテル、又はかかるエポキシドの混合物であり、これらは、例えば、相応の多価アルコールとエピクロロヒドリンとの反応によって得ることができ、例えば、トリメチロールプロパン−トリグリシジルエーテル、ノボラック−エポキシ樹脂、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン樹脂及び/又はビスフェノールF−エピクロロヒドリン樹脂であることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の固定用合成モルタル系。
【請求項9】
硬化可能なイソシアネート系反応性合成樹脂が含まれていることを特徴とする、請求項5又は6記載の固定用合成モルタル系。
【請求項10】
硬化可能なイソシアネート系反応性合成樹脂が、ポリウレタン化学及び/又はポリ尿素化学において通常用いられるモノマー及び/若しくはオリゴマー及び/若しくはポリマーの、例えば多核のモノイソシアネート、ジイソシアネート又はポリイソシアネート及びイソシアネートプレポリマーから、特に、アリールジイソシアネート又はアリールポリイソシアネート、脂肪族、環式脂肪族若しくは前述のものとは異なる芳香族ジイソシアネート又はポリイソシアネート、とりわけジイソシアネート、トリイソシアネート又はテトライソシアネートから、特に、2個以上のイソシアナト基を有するプレポリマー、好ましくは、ジイソシアネート又はポリイソシアネートから出発して、そのつど二官能性以上のアルコール、アミン若しくはアミノアルコール、又はそれらの2種以上の混合物との反応によって生じるプレポリマーから選択されており、ここで、そのつど二官能性以上のアルコール若しくはアミノアルコールの代わりに又はこれに加えて、それらのチオ類似体も存在していてよく、ここで、イソシアネートは、少なくとも部分的に互いに反応することによってビウレット基、アロファネート基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基及び/又はウレトンイミン基として存在するイソシアネート基を有する樹脂の形態で少なくとも部分的に存在していてもよいことを特徴とする、請求項5、6又は9記載の固定用合成モルタル系。
【請求項11】
硬化剤組成物のほかに、更なる硬化剤、特に、
− ジアミン又はポリアミン、例えば、特に、脂肪族、複素脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族及び芳香族のジアミン又はポリアミン、アミドアミン、アミン付加物、ポリエーテルジアミン又はポリフェニル/ポリメチレン−ポリアミン、マンニッヒ塩基(単独で又は1種以上の更なるジアミン又はポリアミンとの混合物として)、ポリアミド;
− ジチオール又はポリチオール、例えば、モノオール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール及び/若しくは他のポリオールと、チオール末端基及び/若しくはエステル基を含むチオールとからのエトキシ化及び/又はプロポキシ化されたアルコール
から選択される硬化剤が含まれていてよいことを特徴とする、請求項5から10までのいずれか1項記載の固定用合成モルタル系。
【請求項12】
好ましくはキットの形態としての多成分系、特に二成分系であることを特徴とする、請求項5から11までのいずれか1項記載の固定用合成モルタル系。
【請求項13】
アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための、請求項5から12までのいずれか1項記載の固定用合成モルタル系の使用。
【請求項14】
アンカーエレメントを孔又は隙間に固定するプロセス又は方法において、請求項5から12までのいずれか1項記載の固定用合成モルタル系及びアンカー手段を連続して、特に、まず固定用合成モルタル系を、次いでアンカー手段を、又は少なくともほぼ同時に基材中の孔又は隙間に導入する、前記プロセス又は方法。
【請求項15】
請求項5から12までのいずれか1項記載の固定用合成モルタル系を製造するための、請求項1から4までのいずれか1項記載の硬化剤組成物の使用において、特に、硬化剤組成物と、付加硬化によって硬化可能な、特にエポキシ系及び/又はイソシアネート系の反応性合成樹脂とを、多成分系、特に二成分系の成分の構成要素として準備することを特徴とする前記使用、又は前記固定用合成モルタル系の硬化剤系としての前記硬化剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための、付加重合によって硬化する(又は使用前に「硬化可能な」)固定用合成モルタル系(Befestigungskustmoertelsysteme)のための(使用における)硬化剤組成物、特にエポキシ系及び/又はポリウレタン系の硬化剤組成物、この硬化剤組成物を含む固定用合成モルタル系、アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するためのこれらの固定用合成モルタル系の使用並びに固定用合成モルタル系及び硬化剤組成物の製造方法及び使用方法並びに下記で読み取られる本発明の対象に関する。
【0002】
とりわけ良く適している固定用合成モルタル系は、エポキシド(例えば、特にグリシジル化合物からなる)をベースとするものと、適切な硬化剤である。例えば、FIS EM 390 S(登録商標)(fischerwerke GmbH & Co.KG,ヴァルダハタール,ドイツ)が、アンカーエレメントをモルタルで接合するための、成分Aとしてかかるエポキシ樹脂、更なる成分Bとしてかかる硬化剤としてのアミン、そのほかに各成分中でそのつど更なる構成成分をベースとする、市場で確立された非常に大きな成果を収めている二成分型注入モルタル系の例である。
【0003】
付加重合に基づく他の公知の系は、ポリウレタン及び/又はポリ尿素をベースとするものである。
【0004】
なかでも、コーティング系での接着促進剤として又は腐食防止剤としてモノマーシラン
(例えばグリシジルシラン及び/又はアミノシラン)を用いることが知られている(例えば米国特許出願公開第2006/0135656号明細書(US 2006/0135656 A1)を参照されたい)。
【0005】
しかしながら、加水分解可能な(例えばケイ素に結合したアルコキシ)基を有するモノマーシランは、使用中に加水分解において大量の揮発性有機化合物(VOC)、例えばアルコールを放出するという欠点を有している。
【0006】
そのほかに、固定用合成モルタル系の領域では、エポキシ樹脂をベースとする固定用合成モルタルについても製造元への新たな制約が見受けられ、これによれば、例えば健康及び/又は環境のリスクを減らすために、特にある一定の低分子量化合物が回避されなければならない。対応する法規則又は基本条件が、例えば、欧州において化学品−又は「REACH」規則(規則(EG)No.1907/2006)によって定められている。例えば、REACHに準拠したポリマーの定義を満たす、かかる硬化剤成分及びエポキシ成分を使用すること、すなわち、樹脂及び有利には出発物質の時点で、個々の分子種が50質量%を超えて存在せず、同時に鎖の50質量%超が少なくとも3n+1の共有結合したモノマー単位から構成されているように分子量分布を示すことが好ましくあり得る。
【0007】
既述の法規制により、固定領域におけるエポキシ樹脂用の硬化剤組成物の調製時に、より大きな制約なしに使用することができるアミンはますます少量になってきている。残留するアミンでは、完成品に求められている所望の特性(高い接着応力、高いスランプ値(Auszugswerte)、速硬化性、高い耐熱特性、低温硬化性、湿式基材(例えば湿式コンクリート)において用いるための水非感受性、耐化学性など)を調節するための余地を不十分にしか確保できないことが多い。
【0008】
それゆえ、特に、適切な接着応力を得ること、あるいはまた、その他に挙げられる特性の1つ以上を、新規の成分、特に硬化剤としての新規のアミン成分を提供することによって改善することが、目標として追い求められ続けている。
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明の一般的な実施態様では、固定用合成モルタル系を、例えば、2成分型−又はさらに3成分型の固定用キットの形態で、加水分解−及び縮合反応によってオリゴマー化されているシロキサンとともに提案している。オリゴマー化及びこれに伴う1分子当たりの官能価の増大(例えばアミノ基)によって、架橋性が高まるばかりでなく−特にアミノシランの場合にはその塩基性(早くも塩基性触媒作用する)に基づき−粒状の、空間架橋した及びなかでも網目の細かい硬質Si−O構造が形成され、それによって、例えば、架橋後に得られる固定用合成モルタル系の架橋密度及びガラス転移温度が上昇し得る。
【0010】
好ましくは、硬化剤組成物及び/又はオリゴマー化されたシロキサンは、「REACH」に従った上記のポリマーの定義を満たす。それによって、ある一定の場合に、危険な特性(例えば、刺激作用及びエッチング作用、揮発性、皮膚吸収性、環境危険性)の低減ひいてはより低い有害性(Kennzeichnung)を達成することができる。オリゴマー化は、パッケージ前あるいはまた(例えばカートリッジに)パッケージ後に、又は前後で行ってよい。特に、前者の場合には、VOC含量も減らされ、それによってガスを発生して放出する有機化合物を減らすことができる。さらに好ましくは、「REACH」に準拠した他の慣用のポリマーアミン硬化剤(例えばマンニッヒ塩基、ブッヘラー付加体、マイケル付加体、付加生成物など)と比較して、オリゴマー化されたシロキサンは、傾向的により低い粘度を示し得る。特別な及び更なる利点が、異なるシラン(例えばアミノシランとチオシラン)の縮合によって可能なエポキシ系及び/又はイソシアネート系合成樹脂との反応の内部硬化促進から得られる。
【0011】
個々の具体的なケースでは、本発明は、このことを踏まえて、以下の(本発明による)実施形態(実施態様)に関する。
【0012】
本発明の第1の実施態様は、アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための、付加重合に基づく固定用合成モルタル系、特に、エポキシ系及び/又はイソシアネート系の反応性合成樹脂をベースとするモルタル系の硬化剤組成物に関し、ここで、硬化剤組成物は、1分子当たり平均して少なくとも1個の又は好ましくは2個以上の、イソシアネート基又はエポキシ基との付加反応において反応性の1個以上の(第二級若しくは好ましくは第一級)アミノ基及び/又はチオール基(−SH)を有する有機基と、1分子当たり平均して少なくとも1個の又は好ましくは2個以上の加水分解性基とを有するオリゴマーシロキサンを含み、そのほかに1種以上の更なる通常の添加剤を含んでいてよい。
【0013】
本発明の更なる実施態様は、アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための固定用合成モルタル系に関し、これは、エポキシ系及び/又はイソシアネート系の反応性合成樹脂並びに硬化剤組成物を含み、ここで、硬化剤組成物は、1分子当たり平均して1個より多い、好ましくは2個以上の、イソシアネート基又はエポキシ基との付加反応において反応性の1個以上の(第二級若しくは好ましくは第一級)アミノ基及び/又はチオール基を有する有機基と、1分子当たり平均して1個の又は好ましくは2個以上の加水分解性基とを有するオリゴマーシロキサンを含み、そのほかに1種以上の更なる通常の添加剤を含んでいてよい。
【0014】
更なる実施態様では、本発明は、アンカー手段を孔又は隙間にモルタルで接合するための、上記又は下記の固定用合成モルタル系の使用に関する。
【0015】
本発明のさらに別の実施態様では、アンカーエレメントを孔又は隙間に固定するプロセス又は方法において、前述及び後述の本発明による固定用合成モルタル系及びアンカー手段を連続して、特に、まず固定用合成モルタル系を、次いでアンカー手段を、並びに/又は(少なくともほぼ)同時に基材中の孔又は隙間に導入する前記プロセス又は方法に関する。
【0016】
本発明の更なる実施態様は、本発明による固定用合成モルタル系の、特に(i)本発明による上記又は下記の硬化剤組成物の製造下での、特に、さらに(ii)本発明による前述又は後述の硬化剤組成物の使用下での製造に関する。
【0017】
本発明のさらに別の対象は、上記及び下記で定義される本発明による固定用合成モルタル系を製造するための、前で及び後で定義される本発明による硬化剤組成物の使用において、特に、硬化剤組成物と、付加硬化によって硬化可能な、特にエポキシ系及び/又はイソシアネート系の反応性合成樹脂とを、多成分系、特に二成分系の成分の構成要素として準備することを特徴とする前記使用に関する。前で及び後で定義される固定用合成モルタル系における硬化剤としての本発明による硬化剤組成物の使用も本発明の対象をなす。
【0018】
意想外にも、硬化剤組成物中でのシロキサン添加剤の比較的高い割合だけでなく、(硬化剤としての使用に関して)本発明による固定用合成モルタル系におけるオリゴマーシロキサンの硬化剤としての単独での使用も可能であることがわかった。それにオリゴマーシロキサンによって、この説明による試みによって完全に縛られることを望むものではないが、孔又は隙間における湿った基材表面に対する改善された接触(形状結合及び/又は素材結合であれ)が可能となり得る。
【0019】
意想外にも、通常のスレッドロッドを使用した、引張領域、つまり、ひび割れしたコンクリート中での性能に関する本発明による固定用合成モルタル系の特に良好な特性も明らかになった。他の機械的特性、例えば、最大破断伸び率及び引張弾性率に良い影響を及ぼし得る。
【0020】
硬化された材料は、有利には、0.5GPa超、有利には1GPa超の引張弾性率、1MPa超、有利には5MPa超の引張強度、及び10%未満、有利には5%未満、特に2%未満の破断伸び率(3つのすべてのパラメーターは、DIN EN ISO527に従って測定)並びに5MPa超、有利には10MPa超、特に50MPa超又は80MPa超の圧縮強度(DIN EN ISO604に従って測定)を有する、高強度で可撓性がほとんどない固形体である。
【0021】
破断伸び率は、より正確にはDIN EN ISO527−1に準拠して、ダンベル形試験片タイプ1BA(DIN EN ISO527−2に従う)により、室温で7日間貯蔵した後に測定する。
【0022】
最後に、European Organisation for Technical Approvals(欧州技術認証機構)(EOTA)(2001)のガイドライン:ETAG No.001 Ausgabe November 2006,Leitlinie fuer die europaeische technische Zulassung fuer Metallduebel zur Verankerung im Beton,Teil 5:Verbundduebel, Februar 2008(ETAG No.001,November 2006 edition, Guideline for Technical Approval of Metal Anchors for Use in Concrete, Part 5: Bonded Anchors, February 2008)による方法に従っても、シロキサンを添加していない相応の固定用合成モルタル系と比べて、ひび割れしたコンクリート中での高められた性能を見出すことができる。
【0023】
更なる(例示的に本明細書中に開示される固定用合成モルタル系とは異なるものについても共通した)一般的に適用可能な測定法が、実施例において見出される。
【0024】
前述及び後述の定義によって、上記及び下記の記載では、1個、複数個又はすべての使用される広範な特徴、用語又は記号は、それぞれより具体的に挙げられる特徴、用語又は記号によって置き換えられることができ、これにより、本発明の有利な実施形態がもたらされる。
【0025】
質量の値がパーセント(質量%)で表されている箇所では、これらは、特に明記されていない限り、固定用合成モルタル系の反応物質及び添加物(つまり、混合後に硬化されるべき材料中に存在するパッケージングされていない構成要素及び他の考えられ得る部分、例えばスタティックミキサーなど)の全質量を基準としている。
【0026】
1分子当たり(シロキサンオリゴマーのみに対して)平均して1個より多い、例えば2個以上の、イソシアネート基又はエポキシ基との付加反応において反応性の1個以上の(第二級若しくは好ましくは第一級)アミノ基及び/又はチオール基を有する有機基と、オリゴマー1分子当たり平均して1個以上の加水分解性基とを有するオリゴマーシロキサンを含み、オリゴマー1分子当たり平均して1個又は好ましくは複数個の加水分解性基を有するオリゴマーシロキサンは、アミノ基及び/又はチオール基で官能化されたシロキサンオリゴマーであり、該シロキサンオリゴマーは、オリゴマー1分子につき少なくとも1個(好ましくは2個以上)のアミノ基及び/又はチオール基、並びにケイ素に結合した少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の加水分解性基を有する。該オリゴマーシロキサンは、鎖状、環状、架橋した及び場合により空間架橋した構造から選択される少なくとも1つの構造を形成するSi−O架橋した構造要素を有し、かつ該オリゴマーシロキサンは、好ましくは、一般式
【化1】
の理想化された形の少なくとも1つの構造を含み、ここで、構造要素は、アルコキシシランから誘導され、かつ
A及びBは、それぞれ互いに無関係に、少なくとも1個の(第一級若しくは第二級)アミノ基及び/又はチオール基を含む(好ましくはC1〜C7−)アルキル基を意味する;
Yは、OR5及び/若しくはR5を表し、又は架橋した及び場合により空間架橋した構造では、互いに無関係に、OR5、R5若しくはO0.5を意味し、好ましくは、Yは、OR5である;
基R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ単独でかつ互いに無関係に、置換されていない又はさらに置換された−場合によりさらにヘテロ原子を有する−線状、分枝状又は環状の炭素原子1〜20個を有するアルキル基を意味する;
並びにa、b、c、d、e及びfは、1個の構造単位に対して、互いに無関係に、整数を意味し、ここで、
aは、互いに無関係に、0又は1又は2である;
bは、1以上である;
cは、0以上である;
dは、互いに無関係に、0又は1又は2である;
eは、互いに無関係に、1又は2である;及び
fは、0以上であり、例えば(オリゴマー分子のみに対して)1以上である;
ただし、b+c+fは、2以上であり、例えば2.001以上である。
【0027】
ケイ素の4価の共有原子価によって範囲が定められる。
【0028】
ここで、(A1)が−[(R1O){2-(a+e)}(R2aSi(A)eO]b-(b>1)であり及び/又は(A2)が−[Si(B)e(R4d(OR3{2-(d+e}O]f-(f>1)であり及び/又は(A3)が−[Si(Y)2O]c-(c>1)である2個以上の構造要素が存在する場合、前述の構成要素は−式Iに示されているように−それぞれ連続して配置されている必要はなく、ランダムに分布していてもよい(例えば、単に例示的なものであって、制限するものではないが、A1−A1−A3−A1 A2−A1−A3が挙げられる)。
【0029】
特に有利には、本発明により用いられるオリゴマーシロキサンは、一般式(IA)
【化2】
の理想化された(ランダム平均の)形の少なくとも1つの構造を有する1種以上の化合物を含み、ここで、
更なる有利な実施形態では、1分子当たりのすべての基R1は、同じであってよい;
異なる基R1を有する式(IA)の2種以上の化合物の混合物も可能である;
並びにA基は、同じ又は別の分子中の別のA基とは無関係に、上で定義される種々の官能基(アミノ基若しくはチオ基又は両方の基)及び異なる官能価を有していてよく、
式(IA)中の化合物において、R1、R2、a及びeは、式Iの構造について上で定義したとおりであり、かつ平均してbは、2000以上である。
【0030】
さらに、本発明により使用されるオリゴマーシロキサンは、追加的に、トリアルキルシラン基、例えばトリメチルシラン基又はトリエチルシラン基を、例えばアルコキシトリアルキルシランを使用して製造することによって有していてもよく、これにより、オリゴマー化度を調節することが可能になる:アルコキシトリアルキルシランは、例えばある一定の時点で加えられて、連鎖停止を起こすことができる。
【0031】
「含む」又は「包含する」は、挙げられた成分又は特徴のほかに、さらに他のものが存在していてもよいことを意味し、つまり、その使用において列挙される成分又は特徴の網羅的なリストを意味する「からなる」とは対照的に、非網羅的なリストを表す。
【0032】
付加語の「さらに」が言及されている箇所では、これは、この付加語なしの特徴がより有利である得ることを意味する。
【0033】
Siに結合した加水分解性基は、特に、ハロゲン、例えばクロロ、アシルオキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ(=アリールアルキルオキシ)及び特にアルコキシからなる群から選択されている基を意味する。特に有利なのは、メトキシ又はエトキシである。
【0034】
[メ]エトキシは、メトキシ、エトキシ又は(混合物として)メトキシ及びエトキシを表す。
【0035】
イソシアネート基又はエポキシ基と付加反応において反応性の(第二級若しくは好ましくは第一級)アミノ基及び/又はチオール基を有する有機基は、好ましくは、基本構造中に1〜20個の炭素原子、好ましくは2〜10個、特に1〜7個の炭素原子を有する有機基であり、該基は、芳香族、脂環式又は脂肪族(この場合アルキル)であってよく、かつ1個以上の(例えば1〜3個の)チオール基、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基(例えばR−NH−、式中、Rは、(特にC1〜C7−)アルキル、フェニル−C1〜C7−アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキル−C1〜C7−アルキルである)を官能基として有する。特に有利なのは、複数個の又は特に1個のこのようなチオール基、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を有するアミノ−(特にC1〜C7−)アルキル又はメルカプト(特にC1〜C7−)アルキルである。このような有利な基の例は、3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピル、N−シクロヘキシルアミノメチル、N−フェニルアミノメチル、N−シクロヘキシルアミノメチル、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル及び3−メルカプトプロピルである。
【0036】
これらのオリゴマーシロキサンを製造するための有利な出発物質は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジ[メ]エトキシシラン、3−アミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ[メ]エトキシシラン、フェニルアミノメチルトリ[メ]エトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン若しくは3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリ[メ]エトキシシラン、又はそれらの2種以上の組合せ物を包含する。
【0037】
式IVの有利な出発物質として、以下のものが挙げられる:シロキサンオリゴマー中でD構造単位、T構造単位及びQ構造単位を形成するすべてのシラン。かかるシロキサン構造の名称のより正確な命名に関しては、「Roempp Chemielexikon」における見出し語:Silicone(シリコーン)を参照されたい。
【0038】
オリゴマーシロキサンに追加して、本発明による固定用合成モルタル系は(例えば適切な粘度を調節するために)、モノマーシラン添加物も(少なくとも部分的に)反応性希釈剤として含んでいてよい。モノマーシランは、例えば、特に、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジ[メ]エトキシシラン、3−アミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ[メ]エトキシシラン、フェニルアミノメチルトリ[メ]エトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリ[メ]エトキシシラン若しくは3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリ[メ]エトキシシラン、及び/又はテトラアルコキシシラン、例えばテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン若しくはテトラプロポキシシラン又はアルコキシポリシリケート、例えばエチルポリシリケート若しくはプロピルポリシリケートからなる群;又はそれらの2種以上の混合物から選択されていてよく、かつ反応しなかった出発物質であってもよい。
【0039】
シロキサン(特に本発明によるオリゴマーシロキサン)は、例えば、固定用合成モルタル系全体を基準として、(最大で)50質量%まで、特に0.001〜50質量%、例えば0.01〜30質量%、例えば0.1質量%以上、例えば0.5〜20質量%若しくは〜15質量%、1質量%以上、例えば2〜20質量%若しくは〜10質量%、又は3質量%以上、例えば3〜20質量%若しくは〜6質量%の質量割合で定められていてよい。
【0040】
第二級アミノ基は、例えば、式Q−NH−の基であって、式中、Qは、C1〜C7−アルキル(特にメチル、エチル若しくはプロピル)、C3〜C7−シクロアルキル(特にシクロヘキシル)又はC6〜C12−アリール(特にフェニル)から選択される置換されていない又は置換された基を意味する。置換基として、アミノ基、チオ基又はヒドロキシ基が存在していてよい。
【0041】
ヘテロ原子が言及されている箇所では(例えば1〜20個の鎖原子若しくは3〜20個の環原子を有していてよい複素脂肪族又は複素環式脂肪族化合物の場合も)、好ましくは、互いに無関係に、O、S及びNから選択されている1〜3個のヘテロ原子に関わる。
【0042】
付加重合に基づく固定用合成モルタル系は、まず第一に、エポキシド及び/又はイソシアネートをベースとする反応性合成樹脂である。
【0043】
本発明による固定用合成モルタルの使用において又は本発明による固定用合成モルタル中での使用において使用可能なエポキシ系反応性合成樹脂は、好ましくはグリシジル化合物をベースとするエポキシ成分、例えば、グリシジル基の平均官能価1.5以上、特に2以上、例えば2〜10を有し、任意に更なるグリシジルエーテル(類)を反応性希釈剤として含んでいてよいエポキシ成分を含む。エポキシ成分のエポキシドは、好ましくは、少なくとも1種の多価アルコール若しくはフェノール、例えばノボラック、ビスフェノールF若しくはビスフェノールAのポリ(ジを含む)グリシジルエーテル、又はかかるエポキシドの混合物であり、これらは、例えば、相応の多価アルコールとエピクロロヒドリンとの反応によって得ることができる。例は、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン−トリグリシジルエーテル、ノボラック−エポキシ樹脂、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン樹脂及び/又はビスフェノールF−エピクロロヒドリン樹脂であって、例えば≦2000の平均分子量を有する。エポキシ樹脂は、例えば、120〜2000、好ましくは150〜400、例えば特に155〜195、例えば165〜185のエポキシ当量を有していてよい。注入合成モルタル系の反応物質及び添加剤の全量におけるエポキシ成分の割合は、好ましくは、5〜100質量%未満、特に10〜80質量%、10〜70質量%又は10〜60質量%である。かかるエポキシ成分の2種以上の混合物も可能である。適切なエポキシ樹脂、反応性希釈剤及び硬化剤は、Lee H及びNeville Kの基本文献「Handbook of Epoxy Resins」(New.York: McGraw−Hill),1982にも見出される(これらの化合物を、本明細書中に参照によって組み込む)。
【0044】
更なる内容成分の重要な例は、硬化促進剤(Beschleuniger)、反応性希釈剤、チキソトロープ剤、充填剤及び更なる添加剤から選択される1種以上のものである。
【0045】
硬化促進剤として、例えば、tert−アミン、例えばイミダゾール又はtert−アミノフェノール、例えばトリス−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール、オルガノホスフィン又はルイス塩基若しくはルイス酸、例えばリン酸エステル、又はそれらの2種以上の混合物が、成分の1つ又は(特に多成分系の場合には)複数に、有利にはそのつど硬化剤成分中に、例えば、0.001〜15質量%の質量割合で含まれていてよい。
【0046】
チキソトロープ剤として、慣用のレオロジー助剤、例えば熱分解シリカを用いることができる。それらは、例えば、0.001〜50質量%、例えば1〜20質量%の質量割合で添加されることができる。
【0047】
充填剤として、慣用の充填剤、特にセメント(例えばポルトランドセメント又は高アルミナセメント)、白亜、砂、石英砂、石英粉など(それらは粉末として、粒状又は成形体の形で添加されていてよい)、又はその他の、例えば国際公開第02/079341号(WO 02/079341)及び国際公開第02/079293号(WO 02/079293)に挙げられているもの(これに関して該文献を本明細書中に参照によって組み込む)、又はそれらの混合物が使用され、ここで、充填剤は、さらに又は特にシラン化されていてもよく、例えば、アミノシラン若しくはエポキシシランで処理された石英粉、例えばQuarzwerke GmbH社のSilbond AST又はEST(登録商標)として、アミノシラン若しくはグリシジルシランで処理されたシリカ、例えばHoffmann Mineral社のAktisil AM若しくはEM(登録商標)、又はアミノシラン若しくはグリシジルシランで処理された熱分解シリカとして使用される。充填剤は、例えば本発明による多成分キットの1つ又は複数の成分に、例えば相応の2成分キットの一方の又は双方の成分に存在していてよい;充填剤の割合は、好ましくは0〜90質量%、例えば10〜90質量%である。追加的に又は選択的に、水硬性充填剤、例えば石膏、生石灰又はセメント(例えばアルミナセメント若しくはポルトランドセメント)、水ガラス又は活性水酸化アルミニウム、又はそれらの2種以上が添加されることができる。
【0048】
更なる添加剤、例えば可塑剤、非反応性の希釈剤、又は柔軟剤、レオロジー助剤、例えばチキソトロープ剤、例えば、熱分解シリカ、帯電防止剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、例えばフタル酸エステル若しくはセバシン酸エステル、例えば成分の混合をより制御し易くするのに該成分を異なる色に染めるための着色剤、例えば染料若しくは特に顔料など、又はそれらの2種以上の混合物が添加されていてよい。
【0049】
この種の更なる添加剤は、好ましくは、全体として、計0〜90質量%、例えば0〜40質量%の質量割合で添加されていてよいか又は存在していてよい。
【0050】
エポキシドの定義の箇所で挙げた化合物の特定のもの、例えば、芳香族基含有エポキシドより低い粘度を有するトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル又はヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、反応性希釈剤としても、例えば、0.1〜90質量%、例えば0.5質量〜75質量%又は1〜40質量%の質量割合で用いられることができる。異なる分子構造及び特に異なる官能価のかかる反応性希釈剤の2種以上の混合物も可能である。
【0051】
硬化剤は、本発明によるオリゴマーシロキサンのみか又はエポキシド硬化のために通常よく用いられる少なくとも1種の化合物(重付加における反応相手)を追加的に含む。ここで「硬化剤」との用語は、好ましくは、充填剤添加及び/又は更なる添加剤、増粘剤及び/又は更なる添加物、例えば染料などを有するか又は有さない、エポキシド硬化のために通常よく用いられる少なくとも1種の化合物、言い換えれば、すべてそろった硬化剤成分を意味する。硬化剤は、別個の成分として及び/又は(特に保護された形で、すなわち、例えばマイクロカプセル化された形で)反応樹脂配合物(硬化可能な成分、すなわち、マイクロカプセルのシェルが破れた後にエポキシ系反応性合成樹脂と混ざり合った後に重合によって硬化する成分として)中にも組み込まれていてよい。慣用の添加剤、例えば充填剤(特に上で定義したようなもの)及び/又は(特にペースト又はエマルジョンを製造するために)溶媒、例えばベンジルアルコールが添加されていてよい。ここでも同様に、(例えば残留)含水分が排除されているとは限らない。この場合も、更なる添加剤/添加物が、例えばガス、又は特に気体状態の物質及び/若しくは物質混合物として貯蔵中に出て行く可能性がある。本発明による多成分系の硬化剤成分の更なる添加剤又は添加物質は、例えば、硬化剤成分を基準として、計0.001又は0.01〜70質量%、例えば1〜40質量%の質量割合で添加されることができる。
【0052】
所望される場合、本発明により使用されるオリゴマーシロキサンに加えてエポキシド硬化のために通常よく用いられている化合物(重付加における反応相手として作用する)は、特に、アミノ基、イミノ基、及びメルカプト基、例えば相応のアミン基(有利には)、チオール基、若しくはアミノチオール基、又はそれらの混合物、例えばLee H及びNeville K,「Handbook of Epoxy Resins」(New York:McGraw−Hill),1982に挙げられているもの(これに関して該文献を本明細書中に参照によって組み込む)、例えばその中で挙げられているジアミン若しくはポリアミン、及び/又はジチオール若しくはポリチオールから選択される2個以上の基を有するものである。好ましくは、エポキシド硬化のために通常よく用いられる化合物は、ゴム変性物(例えばアミノ官能化されたブタジエンポリマー又はブタジエン−アクリロニトリルポリマー)を有さない。
【0053】
エポキシド硬化のために(一般的に)通常よく用いられる(追加的な)化合物には、例えば、本発明の1つの実施形態では、
− ジアミン又はポリアミン、例えば、特に、脂肪族(例えばエチレンジアミン)、複素脂肪族(例えば4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン)、環式脂肪族(例えば1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)、環式複素脂肪族(例えばアミノエチルピペラジン)、芳香脂肪族(例えばm−キシリレンジアミン)及び芳香族のジアミン又はポリアミン、アミドアミン、アミン付加物、ポリエーテルジアミン又はポリフェニル/ポリメチレン−ポリアミン、マンニッヒ塩基(特に刊行物の欧州特許0645408号明細書(EP 0645408B1)及び国際公開第2005/090433号(WO 2005/090433)、とりわけ第3頁,最終行〜第6頁,第2段落に開示されており(例えばその実施例1又は特に実施例2)、これに関して該刊行物を本明細書中に参照によって組み込み、単独で又は1種以上の更なるジアミン又はポリアミンとの混合物として)、まだ公開されていない独国特許出願公開第102013113465.3号明細書(DE102013113465.3)及び欧州特許出願公開第0824124号明細書(EP 0824124A1)に記載のアミン、ポリアミドなど;
− ジチオール又はポリチオール、例えば、モノオール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール及び/若しくは他のポリオールと、チオール末端基(例えばCognis社のCapcure 3−800)及び/若しくはエステル基を含むチオールとからのエトキシ化及び/又はプロポキシ化されたアルコールが包含される。例えば、α−メルカプトアセテート又はβ−メルカプトプロピオネートと、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール又は他のポリオールとのエステルであってよい。
【0054】
上述のエポキシド硬化のために通常よく用いられる化合物の2種以上の混合物も使用することができるか又は含まれていてよい。
【0055】
エポキシド硬化のために通常よく用いられる追加的な又は補足的な化合物は、存在する場合、好ましくは、固定用合成モルタル系の硬化されるべき材料の反応物質及び添加剤の全質量を基準として、95質量%まで、好ましくは2〜70質量%の量で定められる。
【0056】
硬化剤成分を基準として、これらの化合物の割合は、本発明の可能な有利な実施形態では、1〜95質量%、例えば3〜90質量%、例えば4〜95質量%、5〜90質量%又は10〜80質量%であるか、又は存在していない(0質量%)。
【0057】
本発明による固定用合成モルタル系の使用又は本発明による固定用合成モルタル系中での使用においてさらに使用可能なイソシアネート系反応性合成樹脂は、ポリウレタン化学及び/又はポリ尿素化学において通常用いられる(モノマー及び/若しくはオリゴマー及び/若しくはポリマー(例えば多核))モノイソシアネート、ジイソシアネート又はポリイソシアネート及びイソシアネートプレポリマーから選択されている。
【0058】
適切なイソシアネートに数えられるのは、特に、アリールジイソシアネート又はアリールポリイソシアネート、例えばTDI(トルエンジイソシアネート、例えばトルエン−2,4−ジイソシアネート若しくはトルエン−2,6−ジイソシアネート)、ジイソシアナトジフェニルメタン、好ましくはMDI又は特にPMDI(特に(工業用)MDIの製品であって、MDI中の2個のビフェニレン単位に加えて更なるフェニレン基及び/又はフェニレンイソシアネート基が存在しており、これにより、分子量の増大、より高い粘度及び好ましくは低い蒸気圧ひいては健康負荷低減が可能となる)、4,4’−イソプロピリデン−ジフェニルイソシアネート、2,4,4’−トリイソシアナト−ジフェニルメタン及びキシレン−1,3−ジイソシアネート又はキシレン−1,4−ジイソシアネートである。
【0059】
さらに、ジイソシアネート又はポリイソシアネートは、脂肪族、環式脂肪族又は上述の若しくは既述したものとは異なる芳香族ジイソシアネート又はポリイソシアネート、とりわけジイソシアネート、トリイソシアネート若しくはテトライソシアネート、特にヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート若しくは1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート;又は粗ポリイソシアネート;又は2個以上のイソシアナト基を有するプレポリマー;又は上述のジイソシアネート若しくはポリイソシアネートの2種以上の混合物。特に有利なのは、2〜5のNCO平均官能価を有するイソシアネートである。
【0060】
最後に挙げた2個以上のイソシアナト基を有するプレポリマーは、特に、ジイソシアネート又はポリイソシアネート、特にプレポリマー自体を除く直前の段落に挙げたジイソシアネート又はポリイソシアネートから出発して、そのつど二官能性以上のアルコール(ジオール若しくはポリオール)、アミン、アミノアルコール、チオール、アミノチオアルコール、アミノチオール又はアミノ基、チオ基及びヒドロキシ基を有するアルカン、又はそれらの2種以上の混合物との反応によって生じるものである。ポリイソシアネート−プレポリマーの例は、国際公開第02/079341号(WO 02/079341A)に見出される。
【0061】
イソシアネートは、部分的に又は完全に、少なくとも部分的に互いに反応することによってビウレット基、アロファネート基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基及び/又はウレトンイミン基として存在するイソシアネート基を有する樹脂の形態で存在していてもよい。
【0062】
モノマー及び/若しくはオリゴマー及び/若しくはポリマー(例えば多核)ジイソシアネート又はポリイソシアネートの割合は、例えば、本発明の可能な有利な実施形態では、90質量%まで、例えば10〜90質量%、例えば30〜70質量%である。
【0063】
例えばポリウレタン、ポリ尿素及びポリウレタン/ポリ尿素−混合ポリマーにとって必要な硬化剤、すなわち、ポリオール、ポリアミン、ポリメルカプタン及びポリアミノアルコール又は上のプレポリマーの箇所で硬化剤として挙げた別の化合物若しくはイソシアネート自体は知られており、例えば、これらは、上のプレポリマーの形成の箇所で又は国際公開第02/079431号(WO 02/079341)及び国際公開第02/079293号(WO 02/079293)の中で挙げられる二価以上のアルコール、メルカプタン、アミンなど、若しくはジイソシアネート又はポリイソシアネートに相当しており、そのため、これに関して、該出願を本明細書中に参照によって組み込む。
【0064】
イソシアネート系合成樹脂の成分は、慣用の予備硬化促進剤により予め硬化促進されていてよい。
【0065】
更なる添加剤、例えば充填剤、添加物、硬化促進剤、チキソトロープ助剤など−例えば上でエポキシ樹脂の箇所で定義したもの−が、これらについて定義した量で含有されていてよい。
【0066】
硬化剤(エポキシドの場合もイソシアネートの場合も)は、10〜80質量%、例えば25〜70質量%の割合で存在していてよい。
【0067】
「エポキシ系反応性合成樹脂」又は「イソシアネート系反応性合成樹脂」とは、特に、本発明による固定用合成モルタル系が、これまでに挙げた構成成分のほかに、更なる慣用の構成成分(例えば添加剤又は他の上記及び下記に挙げた構成成分)も含んでいてよいことを意味する。これらの更なる構成成分は、例えば、計80質量%まで、好ましくは0.01〜65質量%の量で存在していてよい。「〜系(〜をベースとする)」と明示されていない箇所でも、このような慣用の構成成分が一緒に含まれている。
【0068】
孔又は隙間とは、固い(特にすでにそれ自体仕上がった)素地(基材)、特に石積み又はコンクリート、場合により、ひび割れした基材、例えばひび割れしたコンクリートにおいて存在し、かつ少なくとも一方の側から届く孔又は隙間、例えば、ドリル孔、又はさらに無機モルタル若しくはプラスター材料で(例えばセメント又は石膏で)モルタル接合した際に残った空間領域などを意味する。
【0069】
本発明の特別な好ましい実施形態では、硬化可能な成分と、それに関連する硬化剤(硬化剤成分)とは、互いに切り離されて二成分系又は多成分系として保管され、その後に、所望される現場(例えば、孔又は隙間、例えばドリル孔にて又はその中で)互いに混合される。
【0070】
この場合、本発明による固定用合成モルタル系は、多成分系(多成分キット)として準備され、それ自体も使用される。
【0071】
多成分キットとは、特に、重付加によって硬化可能な(=少なくとも1種の(そのつど適切な)硬化剤の添加後に硬化する)1種以上の反応性合成樹脂、まず第一にエポキシド及び/又はイソシアネートをベースとする反応性合成樹脂を含む成分(A)と、上記及び下記で定義されるようなそのつど関連する硬化剤を含む成分(B)とを有する二成分又は(さらに)多成分キット(好ましくは二成分キット)(ここで、更なる添加剤が、成分の一方又は両方に準備されていてよい)、好ましくは2チャンバー装置又はマルチチャンバー装置を意味し、該装置中、互いに反応性の成分(A)及び(B)及び場合により更なる別個の成分は、それらの構成成分が貯蔵中に(特に硬化時に)互いに反応することができないように含まれており、好ましくは、それらの構成成分が使用前に互いに接触しないように含まれており、しかしながら、該多成分キットは、成分(A)及び(B)及び場合により更なる成分を、所望される箇所での固定のために、例えば孔の直前で若しくは孔内で、そこで硬化反応が起こり得るように混合し、必要であれば導入することを可能にする。成分が(例えば、孔又は隙間、例えばドリル孔内にアンカーエレメントを打ち込む際に)破壊可能な隔壁又は一体型の別個に破壊可能な容器によって互いに分けて配置されている、例えばプラスチック製、セラミック製又は特にガラス製のカプセル(Patronen)、例えば、入れ子式のカプセルとして、例えばアンプルも適している;並びに特に(同様にとりわけ有利である)、チャンバー内に上記及び下記に挙げられる組成物を有する本発明による固定用合成モルタルの複数の又は好ましくは2つの成分(特に(A)及び(B))が利用前の貯蔵のために含まれている多成分カートリッジ(Kartuschen)又は特に二成分カートリッジも適しており、その際、好ましくは、スタティックミキサーも相応のキットに属する。
【0072】
特に、成分A対成分Bの質量比が、99:1〜1:99、99:1〜50:50、99:1〜60:40又は99:1〜70:30である二成分系が重要である。
【0073】
したがって、本発明による固定用合成モルタル系(好ましくは固定用合成モルタルキット)は、好ましくは二成分系又は多成分系(多成分キット)として準備されていてよく、使用されることもできる。二成分系は、一方の成分を、例えばカプセル化された形態で他方の成分において含むものであってもよい。
【0074】
所望される使用現場での本発明による固定用合成モルタル系の使用は、関連した(混合前に反応抑制して隔離された)成分の混合によって、特に孔付近及び/若しくは孔の直前で、又は(例えば特にスタティックミキサーを備えたカートリッジが使用される場合には)孔又は隙間、例えばドリル孔の直前及び/又は(特に相応のカプセル若しくはアンプルが破壊される場合には)孔又は隙間、例えばドリル孔の内部で行われる。
【0075】
「モルタルで接合する(Einmoerteln)」とは、特に、金属(例えばアンダーカットアンカー、スレッドロッド、ネジ、ドリルアンカー、ボルト)製のアンカー手段、又はさらに他の材料、例えばプラスチック若しくは木材からなるアンカー手段を、固い(好ましくはすでにそれ自体仕上がった)基材、例えばコンクリート又は石積みにおいて、特に、該基材が人工的に組み立てられた建築物の構成要素、なかでも石積み、天井、壁、床、板、柱など(例えばコンクリート、自然石からなるもの、中実ブロック又は多孔ブロックからなる石積み、さらにプラスチック又は木材からなるもの)である限り、特に孔、例えばドリル孔において(素材結合及び/又は形状結合により)固定することを意味する。次いで、これらのアンカー手段によって、例えば、手すり、カバー部材、例えばプレート、ファサード部材又はその他の建築部材を固定することができる。
【0076】
「それらの2種以上の混合物」と言及している箇所では、これは、特に、有利なものとして強調されている上述の構成成分の少なくとも1種と、1種以上の他の、特に1種以上の、同様に有利なものとして特徴付けられている構成成分との混合物を含む。
【0077】
「それ自体仕上がった」とは、特に、基材が、可能な表面変性(例えばコーティング、例えば、しっくい塗り又は塗装)などを除き、すでに仕上がっており(例えば建築用石材又は石積みとして)、接着剤により初めて同時に仕上げられるものではなく、かつ該接着剤からならない。換言すると:接着剤は、この場合、それ自体すでに仕上がった基材ではない。
【0078】
アンカー手段(類)の打ち込みは、好ましくは、早くも短時間で、好ましくは30分以内で、本発明による固定用モルタルの成分の混合後に行われる。注釈:アンカー手段が固定されることになる所望の場所の上での又は中での成分の混合及び導入により、実質的に並行して及び/又は僅かな時間のずれで進行する、硬化を生じる種々の反応が開始する。
本発明の特定の実施形態は、特許請求の範囲及び要約書に記載される変形例にも関し、それゆえ、特許請求の範囲及び要約書を、本明細書中に参照によって組み込む。
【0079】
本発明により使用可能なオリゴマーシロキサンは、自体公知の方法に従って又はこれと同じように製造することができる。
【0080】
あるいはまた、該オリゴマーシロキサンは、パッケージングされた本発明による固定用合成モルタル系の貯蔵中及び/又は本発明による合成モルタル系の一成分、例えば成分Bを製造するための構成成分の混合中に、in situで(例えば出発シランを含有する成分中での所定量の)水の存在下に製造することができるか又は生じ得る。
【0081】
シロキサンオリゴマーの合成は、例えば、独国特許出願公開第102011086862号明細書(DE 102011086862 A1)中での規定と同じように、例えば、式II
【化3】
[式中、R1、R2、a、A及びeは、上で式Iの化合物について定義したとおりである]
の1種以上の化合物を、式III
【化4】
[式中、R3、R4、d、B及びeは、上で式Iの化合物について定義したとおりである]
(ここで、式II及びIIIの化合物は、同じであるか又は互いに異なっていてよい)
の化合物
及び所望される場合(式I中のcが1以上となる場合)式IV
【化5】
[式中、YはOR5及び/又はR5を表し、ここで、R5は、上で式Iの化合物について定義したとおりである]
の化合物と、水対アルコキシシランのアルコキシ基の規定のモル比の水をともなって−式Iで表されるように−加水分解性アルコキシ基(例えばR1O及び/又はR3O)が残るように反応させることによって行われる。
【0082】
アルコキシ基の所望の飽和を調節するために必要とされる水の一般的な量は、例えば(式(IV)の化合物が無い場合は)次式に従って計算することができる:
n(水)=[n(式IIの分子)×(4−(a+e))+n(式IIIの分子)×(4−(d+e))]×所望の飽和率(%)/100×0.5
(nは、それぞれモル量(mol)に相当する;最後の0.5は、式II及びIIIの出発物質の加水分解性(例えばアルコキシ)基のモル数の半分のモル数の水が添加されなければならないことを意味する。なぜなら、1モル当たりの式II又は式IIIの化合物の加水分解性基若しくは(アルコキシ)基の加水分解後にそこから1モルの水が消費され、かつシラノール基(加水分解されたアルコキシ基)の縮合に際して式II及び/又は式IIIのシラノール基2モルにつき、そのとき再び1モルの水が解離されるからである)
【0083】
本発明の可能な有利な実施形態では、(平均的に見て)b+c+fは、2000以上、例えば2000〜70000であり、これはとりわけ低粘性のシロキサンオリゴマーを生む。
【0084】
非常に有利な特別な実施形態では、シロキサンオリゴマーは、式(IA)
【化6】
に従ったアミノプロピルトリメトキシシラン及び/又はアミノプロピルトリエトキシシランから構成されており、ここで、30000>bは、2000又は特に2000超である。
【0085】
本発明の更なる可能な特に有利な実施形態では、シロキサンオリゴマーが(平均的に見て)50%超である場合、式I中でb+c+fは、2以上、有利には>3、特に有利には>4であり、ここで、同時にオリゴマー混合物の個々の種類は、>50%の割合を有する。さらに、式I中で(再び平均的に見て)b+c+fが、<70、特に<50、極めて有利には<30であることが好ましい。
【0086】
更なる可能な非常に有利な特別な実施形態では、式IAの構造要素を有するシロキサンオリゴマーは、(複数の)出発物質としてのアミノプロピルトリメトキシシラン及び/又はアミノプロピルトリエトキシシランから、シロキサンオリゴマーが(平均的に見て)50%超である場合、bが2000以上、有利には>3、特に有利には>4となるように構成されており、ここで、同時にオリゴマー混合物の個々の種類は、>50%の割合を有する。さらに、(再び平均的に見て)bが、<70、特に<50、極めて有利には<10である場合に好ましい。
【0087】
例示的に、次のように行うことができる:反応フラスコに、式II、III及び場合によりIVの(複数の)シランを装入し、引き続き、予め触媒及び溶媒と混合した水を、室温及び常圧でゆっくりと計量供給する。溶液(水/触媒/溶媒)を完全に添加した後、混合物を沸点まで加熱して、およそ4〜6時間、緩やかに還流させながら保持する。引き続き、大部分の溶媒及び触媒を常圧下で留去する。その後、100mbarまでの真空をかけながら溶媒及び触媒の残分を除去する。得られた残液がシロキサンオリゴマーである。
【0088】
次の実施例を、本発明の説明のために用いるが、これらは、本発明の範囲を制限するものではない。
【0089】
実施例1:アルコキシ基が45%飽和した3−アミノプロピルシロキサンオリゴマーの合成
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasilan(登録商標)AMMO;Evonik Industries GmbH,エッセン,ドイツ)150gを、反応フラスコに装入した。メタノール(溶媒)75gを、水10.00g及び37%のHCl(触媒)0.20gと混ぜて、滴下漏斗に移した。室温及び常圧で、滴下漏斗から3−アミノプロピルトリメトキシシランにゆっくりと撹拌しながら滴下した。添加を終えた後、油浴を80〜100℃に加熱することで、メタノールが還流下で沸騰した。4〜6時間後、メタノールを実質的に留去した。その後、100mbarまで圧力がゆっくり低下するように真空をかけながら、メタノール及びHClの残分を除去した。100mbarに達した後、これをさらに15分間保持した。得られた残液は、少なくともなお55%の加水分解可能な残留メトキシ基を有する3−アミノプロピルシロキサンオリゴマーであった。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1に従って製造したシロキサンオリゴマーは、3.0の平均重合度を有する(簡略化した計算、単に説明のために用いる):
n(AMMO)/[n(AMMO)−n(水)]=0.837モル/[0.837モル−0.565モル]=3.07
n(水):n(AMMO)×3×所望の飽和率(%)/100×0.5
【0092】
VOC計算+低減率−実施例1に基づく:
ケースa:モノマーAMMOの使用
実施例1で、150gのAMMOを用いる:
【表2】
【0093】
これにしたがって、VCO含有率が計算される:
m(MeOHAMMO)/m(AMMO)×100=VOC(%)
モノマーAMMOを用いた場合、VOC含有率(モノマー)は、53.61%〜54%である(四捨五入)。
【0094】
ケースb:実施例1に記載のオリゴマー化されたAMMOの使用
実施例1で、150gのAMMOを、水10.17gでオリゴマー化する:
【表3】
【0095】
結果:
オリゴマー中で結合したメタノール(m(MeOHオリゴマー)):
m(MeOHオリゴマー)=m(MeOHAMMO)−m(MeOHOUT)=44.23g
質量m(オリゴマー)=m(AMMO)−m(MeOHOUT)+m(水)=123.98g
【0096】
これにしたがって、VOC含有率(オリゴマー)が計算される:
m(MeOHオリゴマー)=m(オリゴマー)×100=35.68%〜36%(四捨五入)
【0097】
これは、次のVOC低減率に相当する:
[VOC含有率(モノマー)−VOC含有率(オリゴマー)]/VOC含有率(モノマー)×100=33.46%
【0098】
実施例2:アルコキシ基が40%飽和した3−アミノプロピル−/メルカプトプロピルシロキサンコオリゴマーの合成
Dynasilan(登録商標)AMMO 60g及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Dynasilan(登録商標)MTMO;Evonik Industries GmbH,エッセン,ドイツ)60gを、反応フラスコに装入した。メタノール(溶媒)60gを、水6.79g及び37%のHCl(触媒)0.16gと混ぜて、滴下漏斗に移した。室温及び常圧で、この混合物を、滴下漏斗から3−アミノプロピルトリメトキシシラン−/メルカプトプロピルトリメトキシシランの混合物にゆっくりと撹拌しながら滴下した。添加を終えた後、油浴を80〜100℃に加熱することで、メタノールが還流下で沸騰した。4〜6時間後、メタノールを実質的に留去した。その後、100mbarまで圧力がゆっくり低下するように真空をかけながら、メタノール及びHClの残分を除去した。100mbarに達した後、これをさらに15分間保持した。得られた残液は、少なくともなお60%の加水分解可能な残留メトキシ基を有する3−アミノプロピル−/メルカプトプロピルシロキサンコオリゴマーであった。
【0099】
【表4】
【0100】
実施例2に従って製造したシロキサンコオリゴマーは、2.5の平均重合度を有する(簡略化した計算、単に説明のために用いる):
(n(AMMO)+n(MTMO))/[(n(AMMO)+n(MTMO))−n(水)]=0.640モル/[0.640モル−0.384モル]=2.50
n(水):n(AMMO)×n(MTMO))×3×所望の飽和率(%)/100×0.5
【0101】
実施例3:オリゴマー硬化剤をベースとする固定用合成モルタル系
【表5】
【0102】
成分Aは、75,000mPa・sの粘度を有する(ブルックフィールド スピンドル7 23℃)。
【0103】
【表6】
【0104】
成分Bは、55,000mPa・sの粘度を有する(ブルックフィールド スピンドル7 23℃)。
【0105】
成分を、スタティックミキサーを備えた市販の2チャンバーカートリッジを用いて、「欧州技術認証機構」(EOTA)(2001)のガイドライン:ETAG No.001,November 2006 edition, Guideline for Technical Approval of Metal Anchors for Use in Concrete, Part 5: Bonded Anchors, February 2008の中で5.1.2.1(b)に記載された条件と同じように接着破壊試験(Adhaesionsversagentest)に供する。72mmのアンカー深さでのM12ボルトの5回の試験からの接着破壊荷重の平均値は、90.5kNである。
【国際調査報告】