(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534792(P2017-534792A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】ポゴ効果を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
F02K 9/56 20060101AFI20171027BHJP
【FI】
F02K9/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-517255(P2017-517255)
(86)(22)【出願日】2015年9月21日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月29日
(86)【国際出願番号】FR2015052520
(87)【国際公開番号】WO2016051047
(87)【国際公開日】20160407
(31)【優先権主張番号】1459254
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517002546
【氏名又は名称】エアバス・サフラン・ローンチャーズ・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル・ゴニデック,セルジュ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トゥータン,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ケルニリ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】クラッスー,オリビエ
(57)【要約】
本発明は、反動によって推進される輸送手段の分野に関し、より詳細にはそのような輸送手段(1)内でポゴ効果を抑制する方法に関する。輸送手段(1)の反動推進エンジン(2)に供給するための供給システム(4)は、異なる体積の気体にそれぞれが対応する複数の所定の動作液位から選択が行われることを可能にする液圧アキュムレータ(8)を含む。この方法では、第1の参照基準が現在の液位によって満たされない場合、液圧アキュムレータ(8)は、好ましくは、第1の参照基準が満たされ、かつ遷移中に現在の機械的共振振動数と交差する流体共振振動数がない代替液位の中から選択された代替液位に遷移するように命令される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの反動推進エンジン(2)と、前記エンジン(2)に少なくとも1種の液体推進剤を供給する供給システム(4)とを有する輸送手段(1)上でポゴ効果を抑制する方法であって、前記供給システムは、液圧アキュムレータ(8)内の異なる体積の気体にそれぞれが対応する複数の所定の動作液位から選択を行うことができる液圧アキュムレータ(8)を備え、方法は、
前記所定の液位のうち前記アキュムレータ(8)の現在の液位で、前記供給システム(4)の流体共振モードの組の各モードについて、現在の流体共振振動数を計算するステップと、
現在の液位に代わる選択肢である所定の液位の各液位で、前記供給システム(4)の流体共振モードの前記組の各モードについて、代替の流体共振振動数を計算するステップと、
前記輸送手段の構造の機械的共振モードの組の各モードについて、現在の流体共振振動数各々と、現在の機械的共振振動数との間の現在の差を計算するステップと、第1の参照基準が現在の差すべてによっては満たされない場合、
各代替液位について、各代替の流体共振振動数と各現在の機械的共振振動数との差の組を計算するステップと、前記第1の参照基準が、複数の代替液位の差の組それぞれによって満たされる場合、
液圧アキュムレータ(8)に、現在の液位から、第1の参照基準が満たされ、かつ遷移中に現在の機械的共振振動数のいずれかと交差する流体共振振動数がない前記代替液位の中から選択された代替液位に遷移するように命令するステップとを含む、方法。
【請求項2】
液圧アキュムレータ(8)が、遷移中にどの流体共振振動数も現在の機械的共振振動数のどれとも交差することなく、現在の液位から、第1の参照基準が満たされる代替液位の中の複数の代替液位のいずれかに移ることができる場合は、第1の参照基準が満たされ、かつ遷移が振動数の交差を全く伴わず、かつ対応する差の組の関数として計算される比較パラメータが最大値を呈する代替液位の中から選択された代替液位へと前記遷移が命令される、請求項1に記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項3】
第1の参照基準が満たされ、かつ遷移が振動数の交差を全く伴わないであろう代替液位のうち、複数の代替液位が、前記比較パラメータに同じ最大値を呈する場合、第1の参照基準が満たされ、遷移が振動数の交差を全く伴わず、かつ比較パラメータに同じ最大値を呈する代替液位のうち、所定の順序において最大の順位を持つ代替液位へと、前記遷移が命令される、請求項2に記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項4】
第1の参照基準が現在の差すべてによっては満たされず、単一の代替液位についての差のすべてによって満たされる場合、液圧アキュムレータ(8)が、第1の参照基準を完全に満たす唯一の代替液位に遷移するように命令される、請求項1から3のいずれかに記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項5】
前記第1の参照基準が、各差の組の差それぞれが所定の閾値より大きいことである、請求項1から4のいずれかに記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項6】
前記第1の参照基準が、現在の液位であれ、代替液位であれ、どの液位によっても満たされず、代替液位の組について第2の参照基準が満たされる場合、第2の参照基準が満たされ、かつ対応する差の組の関数として計算される比較パラメータが最大値を呈するすべての代替液位から選択された代替液位に遷移するように、液圧アキュムレータ(8)に命令するステップを含む、請求項1から5のいずれかに記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項7】
前記第1および第2の参照基準のどちらもが、現在の液位であれ、代替液位であれ、どの液位についても満たされない場合は、少なくとも2つの現在の液位と代替液位との間の交互の遷移が命令される、請求項5に記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項8】
前記第2の参照基準が、前記差の組の差それぞれが所定の閾値より大きいことである、請求項1から7のいずれか一項に記載のポゴ効果を抑制する方法。
【請求項9】
前記第1の参照基準が複数の代替液位の差の組それぞれについて満たされる場合、液圧アキュムレータ(8)が現在の液位から、第1の参照基準が満たされる前記代替液位の中から選択された代替液位に遷移する間、どの流体共振振動数も現在の機械的共振振動数のいずれとも交差しないことが、
流体共振モードの前記組の各モードについて、現在の液位の流体共振振動数と、選択された代替液位の流体共振振動数とから、最小の流体共振振動数および最大の流体共振振動数を判定するステップと、
流体共振モードの前記組の各モードについて、最小の流体共振振動数および最大の流体共振振動数を、機械的共振モードの前記組の機械的共振モードそれぞれの現在の機械的共振振動数と比較するステップであって、前記流体共振モードおよび機械的共振モードの中で、最小の流体共振振動数が機械的共振振動数より小さく、かつ最大の流体共振振動数が機械的共振振動数より大きいものが存在しない場合には、選択された代替液位への遷移中に、いずれかの流体共振振動数がいずれかの現在の機械的共振振動数と交差する可能性はない、比較するステップと
を行うことによって判定される、請求項1から8のいずれかに記載のポゴ効果を抑制する方法
【請求項10】
反動推進エンジン(2)と、
前記エンジン(2)に少なくとも1種の液体推進剤を供給する供給システム(4)であって、液圧アキュムレータ(8)内の異なる体積の気体にそれぞれが対応する複数の所定の動作液位から選択が行われることを可能にする液圧アキュムレータ(8)、および、請求項1から9のいずれかに記載のポゴ効果抑制方法を行うように構成された制御ユニット(30)、を備えた供給システム(4)と
を少なくとも備える、輸送手段(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の液体推進剤が供給される少なくとも1つの反動推進エンジンによって推進される輸送手段中でのポゴ効果を抑制する方法に関する。用語「反動推進エンジン」は、これに関連して、特にロケットエンジンを包含するものとして使用され、用語「輸送手段」は、あらゆる有人または無人の輸送手段、特に宇宙船発射装置を包含するものとして使用される。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙の分野、より具体的には液体推進剤ロケットの分野では、「ポゴ(pogo)」効果とは、反動推進エンジンの供給回路の中の液体推進剤が、反動推進エンジンによって推進されている輸送手段の機械的振動と共振するようになることを意味する。エンジンからの推力は、推進剤が供給回路によって送り出される速度と共に変動し得るため、そのように共振状態になると、高速に逸脱する振動が発生する可能性があり、したがって誘導の困難が生じ、実際に、ペイロード、さらには輸送手段が完全に失われるところまで至り得る損失が生じる可能性がある。用語「ポゴ効果」は頭字語に由来するのではなく、ポゴスティック、すなわちバネのついた棒でできた玩具に由来し、これは、この効果によってロケット内で生じる激しい縦方向の振動を技術者に思い起こさせるような形ではずむ。したがって、液体推進剤ロケットの開発の当初から、ポゴ効果を抑制するための措置を講じることが最も重要であることが分かっていた。本明細書の説明の関連では、用語「抑制する」は、完全な抑制と部分的な低減の両方を包含するものと理解すべきである。
【0003】
ポゴ効果を補正するためのシステムは、2つの主要な異なるタイプが当業者に知られており、それは受動型システムと能動型システムである。受動型システムでは、ロケットの機械的共振振動数と一致することができないように流体共振振動数を変化させる。流体共振振動数は減衰されることも可能である。例として、これは、推進剤供給回路の中に液圧アキュムレータを設置することによって行われることができる。そのような液圧アキュムレータは、詳細には、供給回路と連通した気体および液体を含んでいる加圧された体積によって形成される。そして、液圧アキュムレータは質量−バネ−ダンパ(mass−spring−damper)系として働き、この系では、質量はアキュムレータ中の液体の質量である。バネは気体によって形成され、減衰は、制約された導管を介してアキュムレータに出入りする液体の粘度から生じる。等価の電気回路では、そのような液圧アキュムレータは一定容量のコンデンサに相当する。そのようなアキュムレータの圧縮率および減衰パラメータは実質的に一定であるか、または少なくとも制御可能でない。それに対して、能動型システムでは、供給回路の中で、その回路内で測定される振動に対抗する反対方向の圧力−流量振動が作り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/156615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それでも、受動型システムと能動型システムはともに欠点がある。受動型システムは、それが設計された対象の振動数の前後の狭い帯域の外側にあるモードは減衰しないため、機械的共振振動数に大きな度合いの変動性を呈するロケットには適さない。ロケットの飛行の予測される動的挙動と実際の動的挙動に差がある場合には、受動型システムはそれら自体を補正することができない。能動型システムでは、効果が局所的にしか有効でない危険性が伴い、他の場所では、局所的にしろ、大域的にしろ、負の効果を生じる可能性がある。
【0006】
これらの欠点を回避するために、国際公開第2012/156615号は、ポゴ効果を抑制するための様々なデバイスおよび方法を開示しており、それらにより、輸送手段の飛行全体を通じて流体共振振動数を機械的共振振動数から一定距離に保つために、供給システム内で流体共振振動数を変動させることができる。詳細には、この従来文献は、反動推進エンジンに少なくとも1種の推進剤を供給するためのシステム内で液圧アキュムレータを使用することを開示し、このアキュムレータは、液圧アキュムレータ内の異なる体積の気体にそれぞれが対応する複数の所定の動作液位から選択することを可能にする。類似する電気回路では、そのような電気アキュムレータは、決められた複数のレベルの中から変動させることが可能な容量のコンデンサに相当する。しかし、その文献に開示される方法では、ある状況下で、機械的共振振動数から十分に離れていない第1の液位から、機械的共振振動数からは十分に遠いものの、機械的共振振動数を描く曲線の反対側に位置する第2の液位に移る時に、少なくとも1つの流体共振振動数が機械的共振振動数と短い時間交差する可能性がある。そのような過渡的で急速な共振振動数間の一致は、通常は共振につながることはないが、それでも回避されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、これらの欠点を改善しようとするものである。本発明は、過渡的なものにすぎなくとも、流体共振振動数と機械的共振振動数との交差を大幅に回避しながら、より効果的な方式でポゴ効果を抑制することを可能にする方法を提案しようとするものである。
【0008】
一実装では、この目的は、以下のステップ:
− 前記所定の液位のうち前記アキュムレータの現在の液位で、前記供給システムの流体共振モードの組の各モードについて、現在の流体共振振動数を計算するステップと、
− 現在の液位に代わる選択肢である所定の液位の各液位で、前記供給システムの流体共振モードの前記組の各モードについて、代替の流体共振振動数を計算するステップと、
− 前記輸送手段の構造の機械的共振モードの組の各モードについて、現在の流体共振振動数各々と、現在の機械的共振振動数との間の現在の差を計算するステップと
第1の参照基準が現在の差すべてによっては満たされない場合は、各代替液位について、各代替の流体共振振動数と各現在の機械的共振振動数との差の組が計算され、前記第1の参照基準が、複数の代替液位の差の組それぞれによって満たされる場合、液圧アキュムレータは、現在の液位から、第1の参照基準が満たされ、かつ遷移中に現在の機械的共振振動数のいずれかと交差する流体共振振動数がない前記代替液位の中から選択された代替液位に遷移するように命令される、ことによって達成される。
【0009】
本明細書の関連では、用語「組」は、複数だけでなく、単一の要素を含む組も包含するものと広く理解されるべきである。
【0010】
これらの機構を使用すると、液圧アキュムレータが、第1の参照基準を満たし、かつ振動数の交差を全く伴わずに到達されることが可能な代替液位を少なくとも1つ提供する場合は、その液位が選択されることになり、それにより、たとえ小さい危険性であっても、共振に至るいくらかの危険性を呈する一切の交差を回避する。
【0011】
ある状況では、第1の参照基準が、振動数の交差を全く伴わずに到達されることが可能な複数の代替液位の差の組それぞれによって満たされることが判明する場合もある。そのような状況下では、前記遷移は、第1の参照基準が満たされ、かつ遷移が振動数の交差を全く伴わず、かつ対応する差の組の関数として計算される比較パラメータが最大値を呈する代替液位の中から選択された代替液位へと命令されてよく、したがって、遷移が行われる代替液位の選択で追加的な最適化を行えるようにする。例として、この比較パラメータは、前記差の組の中で最小の差、前記差の組の合計、または、実際に、成分が前記差の組から構成されたベクトルの絶対値であってよい。
【0012】
この第1の比較パラメータでも、振動数の交差を全く伴わずに到達されることができ、かつ比較パラメータが同じ最大値を呈する複数の代替液位の差の組それぞれによって、第1の参照基準が満たされることが判明することがある。そのような状況下では、所定の優先順位も使用することにより、第1の参照基準が満たされ、かつ遷移が振動数の交差を全く伴わず、かつ比較パラメータに同じ最大値を呈する代替液位の中から、所定の順序において最大の順位を持つ代替液位への遷移を命令することによってそれらの代替液位を区別することがなお可能である。
【0013】
それに代えて、第1の参照基準が現在の差の組によっては満たされず、1つのみの代替液位についての差の組によって満たされることが判明する場合もある。そのような状況下では、第1の参照基準を完全に満たす唯一の代替液位に遷移するように、液圧アキュムレータに命令することが可能である。
【0014】
前記第1の参照基準は、各差の組の差それぞれが所定の閾値より大きいことであってよい。前記第1の参照基準が、現在の液位であれ、代替液位であれ、どの液位についても満たされず、より制約の緩い第2の参照基準が代替液位の組について満たされることが判明する場合もある。そのような状況下では、第2の参照基準が満たされ、かつ対応する差の組の関数として計算される比較パラメータが最大値を呈する代替液位の組から選択された代替液位に遷移するように、液圧アキュムレータに命令することが可能である。上述の状況と同様に、この比較パラメータは、例えば、前記差の組の中で最小の差、前記差の組の合計、または、実際に、前記差の組から構成された成分で構成されたベクトルの絶対値であってよい。
【0015】
前記第2の参照基準は、前記差の組の差それぞれが、所定の閾値より大きいことであってよく、所定の閾値は、第1の基準に対応する閾値の何分の1かとすることができる。最後に、前記第1および第2の参照基準のどちらもが、現在の液位であれ、代替液位であれ、どの液位によっても満たされないことが判明することもある。そのような状況下では、少なくとも2つの現在の液位と代替液位との間の交互の遷移が命令されてよく、それにより、同じ流体共振振動数と機械的共振振動数とのペアの間が長すぎる時間にわたって近接することを回避し、そのような近接は共振現象につながる可能性がある。
【0016】
前記第1の参照基準が複数の代替液位の差の組それぞれについて満たされる場合は、まず、流体共振モードの前記組の各モードについて、現在の容量の流体共振振動数と、選択された代替液位の流体共振振動数とから、最小の流体共振振動数および最大の流体共振振動数を判定し、次いで、流体共振モードの前記組の各モードについて、最小の流体共振振動数および最大の流体共振振動数を、機械的共振モードの前記組の機械的共振モードそれぞれの現在の機械的共振振動数と比較することにより、液圧アキュムレータが現在の液位から、第1の参照基準が満たされる前記代替液位の中から選択された代替液位に遷移する間、どの流体共振振動数も現在の機械的共振振動数のいずれとも交差しないことを判定することが可能であり、前記流体共振モードおよび機械的共振モードの中で、最小の流体共振振動数が機械的共振振動数より小さく、かつ最大の流体共振振動数が機械的共振振動数より大きいものが存在しない場合には、選択された代替液位への遷移中に、いずれかの流体共振振動数がいずれかの現在の機械的共振振動数と交差する可能性はない。
【0017】
本開示はまた輸送手段にも関し、この輸送手段は、反動推進エンジンと、前記エンジンに少なくとも1種の液体推進剤を供給する供給システムであって、液圧アキュムレータ内の異なる体積の気体にそれぞれが対応する複数の所定の動作液位から選択が行われることを可能にする液圧アキュムレータ、および、上述のポゴ効果を抑制する方法を行うように構成された制御ユニット、を備えた供給システムと、を少なくとも備える。さらに、制御ユニットは、プログラム可能な制御ユニットであってよく、本開示は、したがって、ポゴ効果を抑制するこの方法を行うためのコンピュータプログラムと、データを処理するための電子ユニットにより読み取り可能な方式でそのようなプログラムを含むデータ記憶媒体と、その方法を行うようにプログラムされた電子データプロセッサユニットと、にも関する。用語「データ記憶媒体」は、光学媒体、磁気媒体、および/または電子媒体を含む、コンピュータ可読形態でデータを保持することが可能な、任意の形態のランダムアクセスメモリまたは読出し専用メモリ(RAMまたはROM)を包含するものとして使用される。
【0018】
本発明は、非制限的な例として与えられる実施形態についての以下の詳細な説明を読むと、よく理解することができ、その利点が明らかになる。説明では添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態における液体推進剤供給システムを備えたロケットエンジン輸送手段を示す、流体回路と電気回路の間の類似性に基づく図である。
【
図2A】
図1のシステムの供給回路と並列に設置された、可変の気体体積の液圧アキュムレータの断面図である。
【
図2B】
図1のシステムの供給回路と並列に設置された、可変の気体体積の液圧アキュムレータの断面図である。
【
図3A】
図2の液圧アキュムレータが複数の液位を通るのに従って
図1の供給システム内でどのように気体の体積および流体共振振動数が変動するかを示すグラフである。
【
図3B】
図2の液圧アキュムレータが複数の液位を通るのに従って
図1の供給システム内でどのように気体の体積および流体共振振動数が変動するかを示すグラフである。
【
図4】前記液位の1つから別の液位に遷移する時の流体共振振動数の機械的共振振動数との交差を示すプロットである。
【
図5】液圧アキュムレータの制御ユニットの機能図である。
【
図6】振動数の交差を検出するアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図7】ポゴ効果を抑制する方法を支配するアルゴリズムの第1の部分および第2の部分をそれぞれ示すフローチャートである。
【
図8】ポゴ効果を抑制する方法を支配するアルゴリズムの第1の部分および第2の部分をそれぞれ示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示される輸送手段1は、燃焼室および収束−発散ノズルを備えた反動推進エンジン2を有する。輸送手段1は、化学的に互いと反応し、反動推進エンジン2に供給される2種類の液体推進剤それぞれのための供給システム3、4も有する。第1の供給システム3は一部のみが示されている。流体で満たされると、供給システム3および4のそれぞれは、抵抗5、インダクタ6、およびコンデンサ7からなる電気回路としてモデル化できる動的システムに相当し、動的システムは、通常、それぞれが各自の流体共振振動数fhにある複数の流体共振モードを呈する。
【0021】
第2の供給回路4の少なくとも1つの共振振動数を変動させるために、この回路は、第2の供給回路4と並列に、可変である気体の体積を持ち、したがって同じく可変の圧縮率を持つ液圧アキュムレータ8を含む。
図2aおよび
図2bに示されるこのアキュムレータ8はタンク9を備え、タンク9は、一方の側に、加圧された気体をタンクに供給する点10と、反対側に、第2の供給回路4の導管15への接続11とを備える。点10と接続11との間の種々の異なる液位で、浸漬管12a−12dがタンク9を導管15に接続している。各浸漬管12a−12dは、タンク9と導管15との間に置かれた弁14a−14dを含む。弁14a−14dはすべて、それらを開閉させるために制御ユニット30に接続されている。弁14a−14dを開閉することは、
図2aおよび
図2bに示されるように、タンク9内の液体の液位、したがって気体17の体積を変化させる役割を果たす。
図2aでは、最も短い浸漬管12aの弁14aが開かれており、一方、その他の浸漬管12b−12dの弁14b−14dは閉じられている。したがって、液体の自由表面は、浸漬管12aの入口の液位で安定し、気体17の体積、したがってその圧縮率は、比較的制限された状態を保つ。それに対して、
図2bでは、浸漬管12aの弁14aが閉じられており、次の浸漬管12bの弁14bが開いている。したがって、液体の自由表面は、より低い浸漬管12bの入口の液位で安定し、気体17の体積、したがって圧縮率は、それに応じて増大する。他の弁14cおよび14dを開くことにより、連続した液位ずつ液圧アキュムレータ8の「容量」をさらに増すことが可能である。
【0022】
輸送手段1の構造は、特に、機械的共振振動数fmにそれぞれが関連する複数の機械的共振モードで振動する可能性がある。飛行時には、特に燃焼室2への供給に使用される推進剤タンクが徐々に空になるために、それらの機械的共振振動数は時間と共に変動する。ポゴ効果を回避するために流体共振振動数fhと機械的共振振動数fmとが当初は互いからかなり離れている場合でも、ある状況下では、流体共振振動数が変わらないと仮定すると、機械的共振振動数fmの変動によって機械的共振振動数fmが流体共振振動数fhに近づき、それによりこのポゴ効果を引き起こすことがある。
【0023】
4つの浸漬管14a−14dにより、アキュムレータ8内の異なる体積の気体にそれぞれが対応する4つの所定の液位の組の中から1つの動作液位を選択することが可能になるため、また、それらの浸漬管により、この組の中の液位の任意の1つから別の液位に移ることが可能になるため、したがって、輸送手段1のロケットエンジンが動作している間でも、第2の供給回路4の様々な流体共振モードの流体共振振動数fhを適合することが可能になり、それにより、流体共振振動数fhのいずれか1つが、輸送手段1の構造の機械的共振モードの時間変化する機械的共振振動数fmと一致することを回避する。
図3Aは、アキュムレータ8内の気体の体積Vが、アキュムレータ8内の液体の自由表面の液位に関して、複数の連続した液位を通過する際にどのように変化するかを示す。
図3Bは、流体共振振動数fh(単位:ヘルツ)が、どのように第2の供給回路4の第1の3つの流体共振モードに対応して変動するかを示す。アキュムレータ8の「容量」のレベルが増大するのと同時に、それぞれの流体共振振動数fhのレベルが同じように低下することを見て取ることができる。
【0024】
ある状況では、流体共振振動数fhと機械的共振振動数fmとの間の距離を増大させることを目的とする遷移として、液圧アキュムレータ8が、現在の液位から所定の液位の組のうちの代替液位に遷移する時に、
図4の交差した線によって示されるように、流体共振振動数fhの少なくとも1つが、機械的共振振動数fmの少なくとも1つと瞬間的に交差する可能性がある。そのような流体共振振動数と機械的共振振動数との間の一致は過渡的なものに過ぎず、ポゴ効果が引き起こされる危険を制限するが、一般には、そのような交差は一切回避することが適切である。
【0025】
制御ユニット30は、詳細には、ポゴ効果を抑制する方法を行うように構成された、かつ/またはプログラムされたデータプロセッサユニットを有することができる。詳細には、制御ユニット30は、方法を行うための一連の命令、すなわちプログラムを記憶したRAMまたはROMを有することができる。
図5は制御ユニット30の機能図であり、相互接続された機能モジュールの組として制御ユニット30を示している。
【0026】
したがって、この制御ユニット30は、センサ31によって供給される物理パラメータ、および/または輸送手段1の少なくとも1つのモデルによって推定される物理パラメータに基づいて、流体共振モードおよび機械的共振モードの組の共振モードごとに、以下の計算を行うための第1の計算モジュールF1を備える:
− N個の流体共振モードの組にある各共振モードnについての、現在の液位に対応する、すなわちアキュムレータ8内の現在の気体の体積での、供給システム4の流体共振振動数fh(0,n)、
− P個の機械的共振モードの組の各共振モードpについての、輸送手段1の構造の現在の機械的共振振動数fm(p)、
− N個の流体共振モードの組のうち同じ共振モードnについての、他の利用可能な液位の各液位xに対応する、すなわち所定の液位の組にあるアキュムレータ8内の代替液位各々についての、供給システム4の流体共振振動数fh(x,n)。
任意で、第1の計算モジュールF1は、それら振動数それぞれの不確定性範囲も計算してよい。
【0027】
制御ユニット30は、第1の計算モジュールF1によって計算された値に基づいて液位の変更を命令する決定モジュールF2も有する。
図5に示されるように、この決定モジュールF2は、さらに複数の他の機能モジュールからなることができ、それらのモジュールには、各現在の流体共振振動数fh(0,n)と各現在の機械的共振振動数fm(p)との間の差DIFF(0,n,p)を計算する第2の計算モジュールF21、各代替流体共振振動数fh(x,n)と各現在の機械的共振振動数fm(p)との間の差DIFF(x,n,p)を計算する第3の計算モジュールF22、振動数の交差を検出するモジュールF24、現在の液位の変化を検出するモジュールF25、および液位を選択するモジュールF26が含まれる。各流体共振モードnおよび各機械的共振モードpについて、現在の差DIFF(0,n,p)および代替の差DIFF(x,n,p)を計算するために、第2および第3の計算モジュールF21およびF22は、場合によっては第1の計算モジュールF1によって供給される不確定性範囲を考慮に入れることができる。
【0028】
振動数交差検出モジュールF24は、液圧アキュムレータ8の現在の液位から様々な代替液位へのすべての可能な遷移のうち、どの遷移が、流体振動数fhのいずれかが機械的振動数fmのいずれかと交差するのを回避するかを判定するように設計される。この目的のために、この振動数交差検出モジュールF24では、
図6のフローチャートによって説明される以下のアルゴリズムが行われる:
このアルゴリズムが開始されたS600後、対応するステップS601およびS602で、カウンタxおよびnがそれぞれ値1に初期化される。
【0029】
ステップS603で、同じ流体共振モードnについて、現在の流体共振振動数fh(0,n)が、代替の流体共振振動数fh(x,n)と比較される。現在の流体共振振動数fh(0,n)が代替の流体共振振動数fh(x,n)より大きい場合は、ステップS604で、現在の流体共振振動数fh(0,n)が高い振動数fhmaxとして記憶され、代替の流体共振振動数fh(x,n)が低い振動数fhminとして記憶される。しかし、現在の流体共振振動数fh(0,n)が代替の流体共振振動数fh(x,n)より大きくない場合は、ステップS605で、現在の流体共振振動数fh(0,n)が低い振動数fhminとして記憶され、代替の流体共振振動数fh(x,n)が高い振動数fhmaxとして記憶される。
【0030】
そのようにして低い振動数fhminおよび高い振動数fhmaxが記憶されると、ステップS606で、カウンタpが値1で初期化される。その後、ステップS607で、現在の機械的共振振動数fm(p)が高い振動数fhmax未満であり、かつ低い振動数fhminより大きいかどうかを判定するために、現在の機械的共振振動数fm(p)が、前記低い振動数fhminおよび高い振動数fhmaxと比較される。該当しない場合、ステップS608で、カウンタpの値が、その最大値P、すなわちアルゴリズムによって考慮に入れられる必要がある機械的共振モードの数Pと比較される。この値Pに達していない場合は、ステップS609でカウンタpに1単位が足され、方法は、次の機械的共振モードの機械的共振振動数を低い振動数fhminおよび高い振動数fhmaxと比較するために、ループしてステップS607に戻る。そうでなく、カウンタpの最大値Pに達している場合は、ステップS610で、カウンタnが、その最大値N、すなわちアルゴリズムによって考慮に入れられるべき流体共振モードの数Nと比較される。この値Nに達していない場合は、ステップS611でカウンタnに1単位が足され、方法は、次の流体共振モードについての低い振動数および高い振動数を判定し、次いでそれらを機械的共振振動数と比較するために、ループしてステップS603に戻る。そうでなく、ステップS607の比較でN個の流体共振モードのいずれについても、またP個の機械的共振モードのいずれについても肯定の結果が得られることなく、カウンタnの最大値Nに実際に達している場合は、ステップS612でバイナリ信号CRITX(x)に対して値ゼロが記憶され、したがって、代替液位xが振動数の交差を全く伴わずに現在の液位から到達可能であることを示す。
【0031】
さらに、ステップS607で、現在の機械的共振振動数fm(p)と前記低い振動数fhminおよび高い振動数fhmaxとの比較で肯定の結果が得られた場合は、ステップS613で、カウンタnおよびpに対応するループを継続することなく、バイナリ信号CRITX(x)に対して値1が直接記憶される。
【0032】
ステップS612またはステップS613のいずれかの後に、ステップS614でカウンタxの値がその最大値Xと比較される。これにより、X個の代替液位それぞれが検証されたかどうかを判定する。検証されていない場合は、ステップS615でカウンタXの値に1単位が足され、方法は、カウンタxを初期化するステップS602に戻る。そうでなく、カウンタxで最大値Xに実際に達している場合は、振動数の交差を検出するアルゴリズムが終了S616で停止される。
【0033】
現在の液位の変化を検出するモジュールF25は、液位間の遷移が現在起こっているかどうかを検出するように構成され、遷移が起こっていない場合は値ゼロを持つバイナリ信号CRITTを生成し、そのような遷移が実際に起こっている場合は値1を持つバイナリ信号CRITTを生成する。この目的のために、モジュールF25は、例えば、示されるように、同じ流体共振モードnについての、モジュールF1によって計算される現在の流体共振振動数fhの値(0,n)と、液位選択モジュールF26によって現在選択されている液位に対応する流体共振振動数fhc(n)との間の比較に依拠することができる。すると、信号CRITTの値は、同じ流体共振モードnについての、現在の流体共振振動数fh(0,n)の値と、現在選択されている液位に対応する流体共振振動数fhc(n)の値との差が不確定性の閾値を超える時には、ゼロから1になり、それらの差が再度不確定性の閾値以下、または遷移の開始からの時間閾値が超過されると、すぐにゼロに戻る。しかし、それに代えて、液位変化のそのような過渡的な状態は、例えば、現在の流体共振振動数fh(0,n)の時間勾配に基づくか、弁14a−14dもしくはそれらの制御信号を観察する、または実際にアキュムレータ8内の液体の液位を観察するなど、他のやり方で判定されてもよい。
【0034】
液位選択モジュールF26は、液位の変化を検出するモジュールF25によって送信される信号CRITTと、振動数の交差を検出するモジュールF24によって送信される信号CRITX(x)と、第2および第3の計算モジュールF21およびF22によって計算される現在の差および代替の差DIFF(0,n,p)およびDIFF(x,n,p)とに基づいて、
図7および
図8に示されるアルゴリズムを使用して、X個の代替液位の中から動作液位を選択し、液圧アキュムレータ8をこの代替液位に遷移させるように構成される。このアルゴリズムが開始されるとS700、最初にステップS701で第1の参照基準が現在の液位によってすでに満たされていないかどうかが検証される。示される実装では、この第1の参照基準は、現在の流体共振振動数fh(0,n)の組と機械的共振振動数fm(p)の組との間の距離D(0)が、第1の閾値Dmin1より大きいことである。例として、この距離D(0)は、差DIFF(0,n,p)のうち最も小さいものとして計算されてよい。現在の液位がこの第1の参照基準を満たす場合は、液位の遷移は必要とされず、完了ステップS702に進むことによってアルゴリズムが直ちに中断される。しかしながら、現在の液位がこの第1の参照基準を満たさない場合は、ステップS703で、進行中の液位遷移を示す信号CRITTの値が1に等しくないかどうかが検証される。信号CRITTが進行中の遷移があることを実際に示す場合も、完了S702に進むことによってアルゴリズムが中断される。対して、バイナリ信号CRITTの値がゼロである場合は、方法は初期化ステップS704に進み、ここで、カウンタi、j、およびkが値ゼロで初期化され、パラメータDMAXの値が距離D(0)の値で初期化され、カウンタxが1の値で初期化される。その後、ステップS705で、第1の参照基準が代替液位xによって満たされるかどうか、すなわち、距離D(0)と同じようにして、ただし液位xに対応する代替の差Δf(x,n,p)に基づいて計算される距離D(x)が、第1の閾値Dmin1より大きいかどうかが検証される。
【0035】
この第1の参照基準が代替液位xによって満たされない場合は、ステップS706で、ゼロの値がバイナリ信号CRIT1(x)に与えられ、その後、ステップS707で、液位xが少なくとも、より制約の緩い第2の参照基準を満たすかどうかを検証する。示される実装では、この第2の参照基準は、距離D(x)の値が少なくとも、第1の閾値より小さい第2の閾値Dmin2より大きいことである。しかし、この第2の参照基準には代替の基準が想定されてもよい。この第2の参照基準が代替液位xによってもまだ満たされない場合は、ゼロの値がバイナリ信号CRIT2(x)に与えられ、方法はステップS709に進んで、ステップS709でカウンタxの値が代替液位の数Xにすでに等しいかどうかが検証される。まだ等しくない場合は、ステップS710でカウンタxに1単位が足され、方法はループしてステップS705に戻る。それに代えて、第2の参照基準がステップS707で実際に満たされている場合は、ステップS711で、液位xについて信号CRIT2(x)に値1が代入され、カウンタjに1単位が足される。その後、ステップS712で、カウンタkがまだゼロであるかどうか、および距離D(x)がパラメータDMAXに代入された値より大きいかどうかが検証される。それら2つの条件が満たされる場合は、ステップS713で、液位xについての距離D(x)の値がこのパラメータDMAXに代入され、その後ステップS709に行く。それ以外の場合、方法は直接ステップS709に行く。
【0036】
ステップS705で第1の参照基準が実際に代替液位xによって満たされる場合は、ステップS714で、信号CRIT1(x)に1の値が代入され、カウンタiに1単位が足される。その後、ステップS715で、信号CRITX(x)の値が使用されて、振動数の交差を伴わずに代替液位xへの遷移が可能であることを検証する。信号CRITX(x)の値がゼロでない場合は、代替液位xへの遷移が少なくとも1回の振動数の交差を伴うことを意味し、方法は上述のステップS712に行く。そうでなく、ステップS715で信号CRITX(x)の値が実際にゼロであることが検証される場合は、代替液位xへの遷移が振動数の交差を伴わずに実際に可能であることを意味し、ステップS716で、カウンタkの値がまだゼロに等しいか、または距離D(x)が比較パラメータDMAXの値より大きいかどうかが検証される。これら2つの条件の少なくとも1つが満たされ、したがって、代替液位xが、振動数の交差を伴わずに遷移が実行可能な第1の液位か、または、振動数の交差を伴わずに遷移が実行可能であることがすでに検証されている距離のうち最も大きい距離D(x)を当座の間呈する液位のどちらかであることを示す場合は、ステップS717で、距離D(x)の値がパラメータDMAXに代入され、その後ステップS718に行き、そこでカウンタkに1単位が足され、その後方法は上記のステップS709に行く。それに対して、ステップS716で検証される条件がどれも満たされない場合は、方法はステップS717を経由することなく直接ステップS718に行く。
【0037】
したがって、ステップS705とS709の間の各ループで、代替液位xが条件CRITX(x)=0を満たし、それによって振動数の交差を伴わずに遷移が可能である場合は、第1の比較基準が満たされ、かつカウンタkの値がゼロであるか、または距離D(x)の値がパラメータDMAXの前の値より大きければ、ステップS716で対応する距離D(x)の値がパラメータDMAXに代入される。一方、代替液位xが条件CRITX(x)=0を満たさない場合は、第1の参照基準または少なくとも第2の参照基準が満たされ、対応する距離D(x)の値がパラメータDMAXの前の値より大きく、かつ、カウンタkがまだゼロである(これは、条件CRITX(x)=0を満たした代替のパラメータxがまだないことを意味する)、のでない限り、ステップS713で、対応する距離D(x)の値はパラメータDMAXに代入されない。
【0038】
その結果、アルゴリズムのこの第1の部分の終了時に、ステップS709の条件が最終的に満たされ、したがってX個の代替液位がすべて考慮されている時、パラメータDMAXの値は、第1の参照基準を(したがって第2の参照基準も)満たすとともに条件CRITX(x)=0も満たす代替液位(それらの液位はしたがって振動数が交差されることなくアクセス可能である)の組にある距離D(x)うち最も大きいものの値か、または、代替液位の中に第1の参照基準および条件CRITX(x)=0を満たすものがない場合は、現在の液位に対応する距離D(0)と、第1および第2の参照基準の少なくとも一方を満たす代替液位の組にある距離D(x)との中で最も大きいものの値、のどちらかに対応する。
【0039】
ステップ選択モジュールF26によって行われるアルゴリズムの第2の部分が
図8に示される。ステップS709で、X個の代替液位のうち最後の液位がすでに到達されていることが判明した場合、ステップS801およびS802でカウンタiの状態が検証される。それらのステップS801およびS802で、それぞれカウンタiの値がゼロより大きいか、または1より大きいことが判明し、したがって複数の代替液位が第1の参照基準を満たすことを示す場合は、ステップS803およびS804でカウンタkの状態が検証される。それらのステップS803およびS804で、それぞれカウンタkの値がゼロより大きいか、または1より大きいことが判明し、第1の参照基準を満たす代替液位のうち複数の代替液位が、振動数の交差を伴わずに到達されることが可能であることを示す場合は、ステップS805で、信号CRITX(x)の値がゼロである2つ以上の代替液位xについて、距離D(x)の値がパラメータDMAXの値と等しいかどうかが検証される。等しい場合は、ステップS806で、ステップ選択モジュールF26が、D(x)=DMAXかつCRITX(x)=0である複数の代替液位xの中から、所定の順序において最も高い順位を持つ液位を選択し、次いで、選択された液位への遷移を命令し、その後ステップS807でアルゴリズムが完了される。それに対し、ステップS805で、信号CRITX(x)の値がゼロである代替液位のうち1つのみの代替液位xについて、距離D(x)の値が、パラメータDMAXに代入された値と等しいことが判明した場合、または、ステップS804で、カウンタkの値が1より大きくない(これは、条件CRITX(x)=0、したがってD(x)=DMAXも満たす代替液位xが1つしかないことを意味する)ことが判明した場合は、ステップS807の完了にその後進むために、ステップS808で、モジュールF26は次いで、条件D(x)=DMAXおよびCRITX(x)=0の両方を満たす唯一の代替液位xへの遷移を命令する。
【0040】
さらに、ステップS802で、カウンタiの値が1より大きくないことが判明し、第1の参照基準を満たす代替液位xが1つしかないことを意味する場合は、ステップS809で、モジュールF26は次いで、その条件CRITX1(x)=1を満たす唯一の代替液位xへの遷移を命令し、その後ステップS807の完了に進む。
【0041】
比較パラメータ、すなわち示される実装における距離D(x)、および代替液位xの所定の順序は、振動数の交差を伴わずにアクセス可能な液位がない時に、第1または第2の参照基準を満たす複数の代替液位xの中から決定するためにも使用されることができる。したがって、ステップS802で、カウンタiの値が1より大きいことが判明し、複数の代替液位xが第1の参照基準を満たすことを意味するものの、ステップS803でカウンタkの値がゼロのままであったことが判明し、それらの代替液位xの中で振動数の交差を伴わずに到達可能なものがないことを示す場合は、方法はステップS810に行き、そこで、パラメータDMAXに代入されている距離と等しい距離D(x)を呈する代替液位xが2つ以上あるかどうかが検証される。2つ以上ある場合は、ステップS811で、モジュールF26は次いで、パラメータDMAXの値に等しい距離D(x)を持ち、最も順位が高い代替液位xに遷移するようにアキュムレータ8に命令し、その後ステップS807の完了に進む。2つ以上ない場合は、ステップS812で、モジュールF26は次いで、したがって距離D(x)の値がパラメータDMAXの値に等しい唯一の代替液位xに遷移するようにアキュムレータ8に命令し、その後方法はステップS807の完了に進む。ステップS810は次の場合にも到達され、すなわち、ステップS801でカウンタiの値がゼロのままであったことが判明し、これは第1の参照基準を満たす代替液位xがないことを意味し、それによって第1の低下動作モードに至り、次いで続くステップS813で、カウンタjの値がゼロでないことが判明し、これは少なくとも1つの代替液位xが第2の参照基準を満たすことを意味し、次いでステップS814で、現在の液位に対応する距離D(0)が、代替液位xのうち距離D(x)の中で最も大きいものに対応するパラメータDMAXの値未満であることが判明した場合、も到達される。
【0042】
しかし、ステップS814で、このアルゴリズムの第1の部分の後に、現在の液位に対応する距離D(0)がパラメータDMAXの値より小さくないことが判明した場合、または、ステップS813で、カウンタjの値がゼロのままであったことが判明し、その結果第2の参照基準を満たす代替液位さえなく、次いでステップS815で現在の液位がこの第2の参照基準を実際に満たす場合は、モジュールF26は、液位の遷移は一切命令せずに、ステップS807のアルゴリズムの完了に直接行く。
【0043】
最後に、ステップS815で、現在の液位も第2の参照基準を満たさないことが判明した場合は、モジュールF26は第2の低下動作モードに移され、このモードでは、ステップS816で、流体共振振動数と機械的共振振動数が互いに近いにも関わらず、ポゴ効果が引き起こされるのを引き続き回避することを試みて、少なくとも2つの異なる液位を交互に高速に取る遷移を命令する。
【0044】
本発明は、特定の実装に関して説明されるが、特許請求の範囲によって定義される本発明の全体的な範囲を超えずにそれらの実装に様々な改変および変更がなされ得ることは明らかである。また、述べられる様々な実装の個々の特徴は、追加的な実装では組み合わせられてよい。したがって、説明および図面は、制約的ではなく例示的な意味で解釈されるべきである。
【国際調査報告】