(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534863(P2017-534863A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】受動的な一体型遮断弁
(51)【国際特許分類】
G21D 1/00 20060101AFI20171027BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
G21D1/00 L
G21C15/18 T
G21D1/00 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-518484(P2017-518484)
(86)(22)【出願日】2015年10月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月6日
(86)【国際出願番号】US2015054430
(87)【国際公開番号】WO2016085573
(87)【国際公開日】20160602
(31)【優先権主張番号】62/060,791
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515251090
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー エムパワー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マロイ、ザ サード、ジョン ディー.
(57)【要約】
弁アセンブリは、原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部に接続されるフランジを含む。弁は、このフランジの内部に配置されるか、フランジから容器貫通部に向かって突出する。この弁は、弁座および可動弁部材を含み、可動弁部材は、原子炉圧力容器内の圧力によって可動弁部材が弁座に対して付勢されて弁が閉弁されるような位置に設けられる。弁アセンブリは、流入口を有するプレナムをさらに含み、流入口を介してプレナムが加圧されると、可動弁部材に圧力がかかることによって、可動弁部材が前記弁座から離れるように付勢されて弁が開弁される。プレナムは、その一部が可動弁部材の面によって画成されてもよい。弁アセンブリは、弁アクチュエータを含まないことが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部に接続するように構成された弁アセンブリであって、
前記容器貫通部に接続するように構成されたフランジと、
前記フランジの内部に配置される、あるいは前記フランジが前記容器貫通部に接続されたときに前記フランジから前記容器貫通部内に突出するように配置される弁本体と、
弁座および可動弁部材を備え、前記弁本体の内部に配置される弁であって、前記原子炉圧力容器内の圧力によって前記可動弁部材が前記弁座に対して付勢されることにより前記弁が閉弁されるような位置に前記可動弁部材が設けられる弁と、
前記弁本体と前記可動弁部材との間に画成され、流入口を有するプレナムであって、前記流入口を介して前記プレナムが加圧されることによって、前記可動弁部材が前記弁座から離れるように付勢されて前記弁が開弁されるように構成されたプレナムと
を備える弁アセンブリ。
【請求項2】
前記弁本体が、前記フランジの内部に配置され、かつ、(i)前記フランジと一体的に形成される、あるいは(ii)前記フランジとは別体として前記フランジの内部に装着される、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項3】
前記弁本体が、前記フランジに装着され、かつ、前記フランジが前記容器貫通部に接続されたときに前記容器貫通部内に突出するように配置される、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項4】
前記プレナムが、前記可動弁部材の周囲に配置される複数のプレナム領域を備え、
前記可動弁部材が、前記プレナム領域内にそれぞれ延出する突起部を含む、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項5】
前記複数のプレナム領域が、前記可動弁部材の周囲に配置されかつ前記可動弁部材の移動方向に沿って延在する複数のスロットを備え、
前記可動弁部材の前記突起部が、それぞれ前記スロット内に延出する、請求項4に記載の弁アセンブリ。
【請求項6】
弁アクチュエータを含まない、請求項1に記載の弁アセンブリ。
【請求項7】
原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部を保護するシステムであって、
前記容器貫通部に接続するフランジと、前記フランジの内部に配置される、あるいは前記フランジが前記容器貫通部に接続されたときに前記フランジから前記容器貫通部内に突出するように配置される弁本体と、弁座および可動弁部材を備え、前記弁本体の内部に配置される弁であって、前記原子炉圧力容器内の圧力によって前記可動弁部材が前記弁座に対して付勢されることにより前記弁が閉弁されるような位置に前記可動弁部材が設けられる弁と、前記弁本体と前記可動弁部材との間に画成され、流入口を有するプレナムであって、前記流入口を介して前記プレナムが加圧されることによって、前記可動弁部材が前記弁座から離れるように付勢されて前記弁が開弁されるように構成されたプレナムとを備える弁アセンブリと、
前記弁アセンブリの前記プレナムの前記流入口に接続する流体ラインを備える弁アセンブリ制御ラインと、
前記弁アセンブリ制御ラインに配置されるパイロット弁と
を備えるシステム。
【請求項8】
前記原子炉圧力容器に補給冷却水を供給する補給ラインを含む原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(RCIPS)をさらに備え、
前記弁アセンブリ制御ラインが、前記補給ラインに接続される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記弁アセンブリが、前記原子炉圧力容器から排出冷却水を取り出す前記RCIPSの排出ラインに接続される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部に接続するように構成された弁アセンブリであって、
前記容器貫通部に接続するように構成されたフランジと、
前記フランジの内部に配置される、あるいは前記フランジが前記容器貫通部に接続されたときに前記フランジから前記容器貫通部内に突出するように配置される弁であって、弁座および可動弁部材を含み、前記原子炉圧力容器内の圧力によって前記可動弁部材が前記弁座に対して付勢されることにより前記弁が閉弁されるような位置に前記可動弁部材が設けられる弁と、
を備える弁アセンブリであって、
流入口を有するプレナムであって、前記流入口を介して前記プレナムが加圧されると、前記可動弁部材に圧力がかかることによって、前記可動弁部材が前記弁座から離れるように付勢されて前記弁が開弁されるように構成されたプレナムをさらに含む弁アセンブリ。
【請求項11】
前記フランジが、中空通路によって接続されるとともに離間した第1および第2フランジリップを含むスプールフランジであり、
前記弁が、前記スプールフランジの内部に配置される、請求項10に記載の弁アセンブリ。
【請求項12】
前記フランジに装着される円筒状弁本体をさらに備え、
前記円筒状弁本体が前記弁を収容し、
前記円筒状弁本体が、前記原子炉圧力容器の壁面を貫通する円筒状ボアを備える容器貫通部に前記フランジが接続されたときに、前記容器貫通部に同軸状に挿入できる大きさになっている、
請求項10に記載の弁アセンブリ。
【請求項13】
前記プレナムが、前記可動弁部材の周囲に配置される複数のプレナム領域を備え、
前記可動弁部材が、前記プレナム領域内にそれぞれ延出する突起部を含み、
前記流入口を介して前記プレナム領域が加圧されると、前記突起部に圧力がかかることによって、前記可動弁部材が前記弁座から離れるように付勢されて前記弁が開弁される、請求項10に記載の弁アセンブリ。
【請求項14】
前記複数のプレナム領域が、前記可動弁部材の周囲にされかつ前記可動弁部材の移動方向に沿って延在する複数のスロットを備え、
前記可動弁部材の前記突起部が、それぞれ前記スロット内に延出する、請求項13に記載の弁アセンブリ。
【請求項15】
前記プレナムは、その一部が前記可動弁部材の面によって画成される、請求項10に記載の弁アセンブリ。
【請求項16】
弁アクチュエータを含まない、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項17】
容器貫通部を有する原子炉圧力容器と、核分裂性物質を含むとともに前記原子炉圧力容器の下部に収容される原子炉炉心とを備える原子炉と、
前記容器貫通部に接続されたフランジと、前記フランジの内部に配置される、あるいは前記フランジが前記容器貫通部に接続されたときに前記フランジから前記容器貫通部内に突出するように配置される弁であって、弁座および可動弁部材を含み、前記原子炉圧力容器内の圧力によって前記可動弁部材が前記弁座に対して付勢されることにより前記弁が閉弁されるような位置に前記可動弁部材が設けられる弁と、流入口を有するプレナムであって、前記流入口を介して前記プレナムが加圧されると、前記可動弁部材に圧力がかかることによって、前記可動弁部材が前記弁座から離れるように付勢されて前記弁が開弁されるように構成されたプレナムとを含む弁アセンブリと、
前記弁アセンブリの前記プレナムの前記流入口に接続された流体ラインを備える弁アセンブリ制御ラインと、
前記弁アセンブリ制御ラインに配置されるパイロット弁と
を備えるシステム。
【請求項18】
前記原子炉圧力容器から排出冷却水を取り出すために前記弁アセンブリを介して前記容器貫通部に接続された排出ラインを含む原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(RCIPS)をさらに備える請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記RCIPSが、前記原子炉圧力容器に補給冷却水を供給する補給ラインをさらに含み、
前記補給ラインが、前記補給ラインからの補給冷却水で前記弁アセンブリの前記プレナムを加圧するように、前記弁アセンブリ制御ラインにも接続されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記原子炉炉心を収容する前記原子炉圧力容器の下部が配置される原子炉キャビティを含む放射線収容構造物をさらに備え、
前記弁アセンブリが、前記パイロット弁よりも前記原子炉キャビティの近くに位置する、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記弁アセンブリが、前記原子炉キャビティの内部に配置され、
前記パイロット弁が、前記原子炉キャビティの外部に配置される、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー省によって与えられた契約番号第DE−0000583号の米国政府支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
以下は、原子炉技術、原子力技術、原子炉安全性技術、およびこれらの関連技術に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の原子力発電所は、一般的に、沸騰水型原子炉(BWR)設計または加圧水型原子炉(PWR)設計の軽水炉である。このような原子炉では、核分裂性物質(通常、核分裂性ウラン235(
235U)を濃縮したUO
2などのウラン化合物)を備えた原子炉炉心が、原子炉圧力容器内に動作圧力・動作温度で収容された冷却材(浄化水)の中に設置される。核分裂性ウラン235の核分裂を伴う核分裂連鎖反応により、原子炉炉心内部で熱が発生し、その熱が冷却材に伝達される。BWR構造では、この熱によって冷却材はそのまま蒸気に変換され、タービンの駆動に使用される。PWR構造では、一次冷却材は、液体(例えばサブクール液体)のままとされ、二次冷却材を蒸気発生器において蒸気に変換して、その二次冷却材の蒸気がタービンの駆動に用いられる。従来のPWR構造では、蒸気発生器は、原子炉を収容する原子炉圧力容器の外に設けられるコンポーネントである。所謂一体型PWR構造では、蒸気発生器は、原子炉圧力容器の内部に一体的に、原子炉炉心とともに(通常は原子炉炉心の上に)位置する。一体型PWR構造には、一次冷却材を運ぶための大径の容器貫通部の数を低減できるという利点がある。考え得るいくつかのPWR構造おいて、容器貫通部は、一次冷却材の排出ラインおよび補給ライン、並びに緊急炉心冷却(Emergency Core Cooling:ECC)接続部に限定され得る。
【0004】
原子炉を安全に運転するためには、環境への放射性物質の放出を防止しなくてはならない。このためには、一般的に鋼鉄および/または鉄筋コンクリートで建築された放射線格納構造物によって原子炉を包囲することと、冗長性を有する安全システムによって、原子炉が設計範囲外の動作を行った場合に修正を行うこととが知られている。様々な事象の一つとして、冷却材喪失事故(Loss Of Coolant Accident:(LOCA))がある。LOCAでは、原子炉圧力容器の破損部、より典型的には原子炉圧力容器にその貫通部において接続する大径パイプの破損部から、原子炉の冷却材が漏出する。容器貫通部とそれに一番近いパイプ弁との間にLOCA破損部が生じると、そのパイプ弁が閉弁された後も原子炉冷却材の喪失が続いてしまうため、特に問題である。解決策として、容器貫通部に一体型遮断弁(Integral Isolation Valve:IIV)を設けることが知られている。IIVは、圧力容器に接続するフランジに組み込まれる弁を備える。IIVは容器貫通部に直接一体化されるため、IIVを閉弁することによって、LOCA破損部からの原子炉冷却材の喪失を確実に食い止められる。このようなIIV構造は、例えば、Malloy IIIらによる2013年10月7日公開の特許文献1や、Malloy IIIらによる2013年11月7日公開の特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第2013/0272478A1号公報
【特許文献2】米国特許出願第2013/0294567A1号公報
【0006】
補給ラインを保護するIIVは、原子炉からの冷却材の流出を防止するように配設された1つの逆止弁(または、冗長化が得られるように、直列の2つの逆止弁)として構成することができる。補給冷却材が原子炉容器に流れ込む補給ラインには、逆止弁が適している。他方で、難しいのは、排出ラインを保護するIIVである。これは、排出冷却材は原子炉の外部に流れ出るため、逆止弁構造では、通常の排出動作を妨げてしまうからである。このため、排出ライン用のIIV構造では、一般的にモータ駆動の弁が使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で例示されるいくつかの実施例において、弁アセンブリは、原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部に接続するように構成される。弁アセンブリは、容器貫通部に接続するように構成されたフランジと、フランジの内部に配置される、あるいはフランジが容器貫通部に接続されたときに容器貫通部内に突出するように配置される弁本体と、弁座および可動弁部材を備え、弁本体の内部に配置される弁であって、原子炉圧力容器内の圧力によって可動弁部材が弁座に対して付勢されることにより弁が閉弁されるような位置に可動弁部材が設けられる弁と、弁本体と可動弁部材との間に画成され、流入口を有するプレナムであって、流入口を介してプレナムが加圧されることによって、可動弁部材が弁座から離れるように付勢されて弁が開弁されるように構成されたプレナムとを備える。弁本体がフランジの内部に配置される実施例では、この弁本体は、フランジと一体的に形成されるか、フランジとは別体としてフランジの内部に装着されてよい。プレナムは、可動弁部材の周囲に配置される複数のプレナム領域を備え、可動弁部材は、プレナム領域内にそれぞれ延出する突起部を含んでもよい。プレナム領域は、可動弁部材の周囲に配置されかつ可動弁部材の移動方向に沿って延在する複数のスロットであってよい。弁アセンブリは、弁アクチュエータを含まないことが好ましい。
【0008】
本明細書で例示されるいくつかの実施例において、原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部を保護するシステムは、フランジが容器貫通部に接続された、直前の段落に記載の弁アセンブリと、弁アセンブリのプレナムの流入口に接続する流体ラインを備える弁アセンブリ制御ラインと、弁アセンブリ制御ラインに配置されるパイロット弁とを含む。このシステムは、原子炉圧力容器に補給冷却水を供給する補給ラインを含む原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(RCIPS)をさらに含んでもよく、弁アセンブリ制御ラインが、補給ラインに接続され得る。このような実施例において、弁アセンブリは、原子炉圧力容器から排出冷却水を取り出すために、RCIPSの排出ラインに接続されてもよい。
【0009】
本明細書で例示されるいくつかの実施例において、弁アセンブリは、原子炉の原子炉圧力容器の容器貫通部に接続するように構成される。弁アセンブリは、容器貫通部に接続するように構成されたフランジと、フランジの内部に配置される、あるいはフランジが容器貫通部に接続されたときに容器貫通部内に突出するように配置される弁とを備える。この弁は、弁座および可動弁部材を含み、可動弁部材は、原子炉圧力容器内の圧力によって可動弁部材が弁座に対して付勢されることにより弁が閉弁されるような位置に設けられる。弁は、流入口を有するプレナムをさらに含む。流入口を介してプレナムが加圧されると、可動弁部材に圧力がかかることによって、可動弁部材が弁座から離れるように付勢されて弁が開弁される。例示の一構成では、フランジは、中空通路によって接続されるとともに離間した第1および第2フランジリップを含むスプールフランジであり、弁は、このスプールフランジの内部に配置される。いくつかの実施例では、弁アセンブリは、フランジに装着される円筒状弁本体をさらに備え、この円筒状弁本体は、弁を収容し、原子炉圧力容器の壁面を貫通する円筒状ボアを備える容器貫通部にフランジが接続されたときに、容器貫通部に同軸状に挿入できる大きさになっている。弁アセンブリは、弁アクチュエータを含まないことが好ましい。
【0010】
本明細書で例示されるいくつかの実施例におけるシステムは、容器貫通部を有する原子炉圧力容器と、核分裂性物質を含むとともに原子炉圧力容器の下部に収容される原子炉炉心とを備える原子炉と、フランジが容器貫通部に接続された、直前の段落に記載の弁アセンブリと、弁アセンブリのプレナムの流入口に接続された流体ラインを備える弁アセンブリ制御ラインと、弁アセンブリ制御ラインに配置されるパイロット弁とを備える。このシステムは、原子炉圧力容器から排出冷却水を取り出すために弁アセンブリを介して容器貫通部に接続された排出ラインを含む原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(RCIPS)をさらに備えてもよい。RCIPSは、原子炉圧力容器に補給冷却水を供給する補給ラインをさらに含んでもよく、補給ラインは、補給ラインからの補給冷却水で弁アセンブリのプレナムを加圧するように、弁アセンブリ制御ラインにも接続されている。このシステムは、原子炉炉心を収容する原子炉圧力容器の下部が配置される原子炉キャビティを含む放射線収容構造物をさらに備えてもよく、弁アセンブリは、パイロット弁よりも原子炉キャビティの近くに位置する。例えば、弁アセンブリは原子炉キャビティの内部に配置され、パイロット弁は原子炉キャビティの外部に配置されてよい。
【0011】
本発明は、様々な要素および要素の配置や様々な作業工程および作業工程の順番の形態を取り得る。図面は、単に好ましい実施例を説明するためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示は以下の図面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、原子炉と、原子炉キャビティを含み原子炉を包囲する放射線格納構造体の一部とを、本開示の一体型遮断弁(IIV)によって保護される補給ラインおよび排出ラインを有する原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(RCIPS)とともに示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の排出ラインを保護するIIVが、(排出冷却材が流れるように)開位置にある場合の例示的実施例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2のIIVが、(排出ラインを介して原子炉から冷却材が漏出するのを防ぐ)閉位置にある場合を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の排出ラインを保護するIIVの他の例示的実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
モータで駆動される既存の排出ライン用一体型遮断弁(IIV)構造には、欠点があるということを本明細書では認識している。IIVを駆動するモータは、排出ラインのパイプ破損部を孤立させるためには、迅速に反応して作動しなくてはならない。また、モータは、原子炉の近傍のスペースを占有し、また、IIV近傍の領域において、原子炉の断熱の妨げになり得る。さらに、モータは、原子炉容器近辺における高温・高放射線量存在下においても頑強で信頼性のあるものでなければならない。
【0014】
本開示におけるIIV構造では、IIVフランジ内部に装着されるか、フランジから容器貫通部内に突出する弁の可動弁部材が、原子炉圧力容器内の圧力によって弁座に対して付勢されることにより弁が閉弁されるような位置に設けられる。開示のIIV構造はさらに、流入口を有するプレナムを含む。プレナムが流体によって加圧されることによって、プレナム内の圧力により可動弁部材が弁座から離れるように付勢されて弁が開弁される。ある適切な構造において、プレナムは、可動弁部材が移動する方向と平行に延びるスロットなどの複数のプレナム領域を備え、可動弁部材は、このスロット内にそれぞれ延出する突起を含む。プレナムのスロット内の加圧流体が、これらの突起に対して押し当てられると、可動弁部材が弁座から離れて弁が開弁するようになっている。
【0015】
これらのIIV構造は、プレナム内の圧力が十分に高く、プレナム内の圧力による開弁させる力が原子炉圧力容器内の圧力による閉弁させる力よりも大きい間は、開弁する。したがって、IIVは、以下の2つの条件のいずれかが満たされると閉弁する。(1)プレナムの圧力が、除去されるか、開弁状態を維持できないレベルにまで下げられる。(2)圧力容器内の圧力が、プレナムの圧力に打ち勝って閉弁させるほど上昇する(これは容器過圧状態であり、その他の専用の圧力逃がし弁および/または緊急炉心冷却(ECC)システムが作動する)。プレナム内の圧力は、プレナムに流体を送り込む制御ライン上の任意箇所に設けられる遠隔パイロット弁によって制御できる。プレナムの圧力が低下すると、フェイルセーフによってIIVが閉弁するため、制御ラインの破損によっては、冷却材喪失事故(LOCA)は起り得ない。
【0016】
制御ラインへの加圧流体源がなくなった場合にも、IIVは閉弁してフェイルセーフ動作をする。本開示のいくつかの実施例において、加圧流体源とは、原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(Reactor Coolant Inventory and Purification System:RCIPS)の補給ラインである。IIVの制御ラインをRCIPSの補給ラインに接続することで、放射線格納構造物内に既存する加圧源を便宜的に利用できる。このような構成によって、補給ラインの減圧を引き起こすRCIPS故障モード時には、IIVは確実に閉弁する。制御ラインへの流体源として補給ラインを利用する他の利点として、プレナムに漏洩があり、プレナムからの流体がIIVのフローストリームに漏れ出てしまったとしても、浄化された冷却水がこのフローストリームに加わるだけであるということがある。
【0017】
本明細書で例示される実施例では、開示のIIV構造は、代表的な適用例である、RCIPSの排出ラインの保護に採用されるものとして提示される。しかし、開示のIIV構造は、圧力容器外へ冷却水を送り出す容器貫通部の保護の目的にも適切に適用可能であることが理解されよう。また、開示のIIV構造は、圧力容器内へ冷却材を送り込む補給ラインなどの容器貫通部の保護に用いることも考えられるが、このような用途には、より簡素な逆止弁を採用したIIV構造の方がコスト効率がよいかもしれない。
【実施例】
【0018】
図1を参照し、原子炉10は、原子炉圧力容器12を備える。原子炉圧力容器12は、核分裂性物質を含む原子炉炉心14などの、様々なコンポーネントを収容する。原子炉炉心14は、圧力容器12内の下部に収容されて実際には外から見えないため、圧力容器12の下部における原子炉炉心14の位置は、想像線で図示されている。一般的な商業用軽水炉構造では、原子炉炉心14は、ウランの核分裂性ウラン235同位体を濃縮した二酸化ウラン(ウラン濃度は、商業用原子炉では通常5%以下だが、これより高い濃度も考えられる)を収容する燃料棒を備える。これら燃料棒は通常、垂直方向に、スペーサ格子コンポーネントによって互いから離間して配列されている(詳細は不図示)。原子炉10の通常運転時、原子炉圧力容器12は、(一次)冷却水で満たされている。この冷却水は、原子炉炉心14内の核連鎖反応により発生する熱エネルギーによって、設計の動作圧力・温度に保たれている。原子炉炉心14は、冷却水をヒートシンクを介して循環させることにより放熱してバランスを保っている。ヒートシンク放熱のメカニズムとしては、例えば、加圧水型原子炉(PWR)構造の場合は蒸気発生器であり、沸騰水型原子炉(BWR)の場合は、圧力容器内の冷却材を直接沸騰させて、その蒸気をパイプで送給してタービンを駆動させる。例示のPWR構造は、蒸気発生器(
図1では不図示)が圧力容器12内に配置された一体型PWR構造であるが、より標準的なPWR構造では、蒸気発生器は大径配管により圧力容器と接続される外部コンポーネントである。圧力容器12は、中央ライザなどの冷却材循環制御器、制御棒およびそれらの駆動機構(圧力容器外部に位置していてもよい)、圧力制御のために圧力容器12の上部に設けられる内部加圧器内の発熱体およびスパージャ(適切な配管により接続された外部加圧器であってもよい)などの、
図1に示さないその他のコンポーネントを収容してもよい。例示のPWR10では、外部原子炉冷却材ポンプ(Reactor Coolant Pump:RCP)ユニットを備えて、このRCPのモータ16が原子炉圧力容器12の上端付近外側に位置しているが、その他の内部または外部RCP構成や、原子炉炉心で発生する熱によって冷却材循環が駆動される所謂自然循環式原子炉も考えらえる。BWRの場合、圧力容器は、適切な蒸気操作コンポーネント(乾燥器など)を収容してもよい。これらは単なる一例に過ぎず、開示のIIV構造は、加圧冷却材を含むものであれば、実質的にいかなるタイプの原子炉にも適切に適用可能であることを理解されたい。さらなる例として、開示のIIV構造を、冷却材が重水(すなわちジュウテリウム)で、原子炉炉心が、ウラン235が通常より低濃度、あるいは濃縮されていない(天然存在度である約0.7%)である二酸化ウランを含む、重水炉において使用することも考えられる。
【0019】
引き続き
図1を参照して、原子炉10は、通常鋼鉄または鉄筋コンクリート製で、原子炉10を包囲する構造物である放射線格納構造体20の中に収容される。
図1においては、説明のため、放射線格納構造体20の下部のみが破線で図示されている。例示の放射線格納構造体20は、原子炉炉心14を収容する原子炉圧力容器12の下部が配置される原子炉キャビティ22を含む。冷却材喪失事故(LOCA)や、その他の原子炉炉心14を過剰に発熱させるような事象が発生した際には、格納構造体20内に位置する燃料取替用水タンク(Refueling Water Storage Tank(RWST,不図示))の水で原子炉キャビティ22を満たして冷却を助けることができる。一般的に、中性子遮蔽体を含む放射線遮蔽体が原子炉炉心の周囲に設けられるものの、原子炉10の通常運転時、原子炉炉心14によって発生した中性子は、通常、原子炉炉心14を収容する原子炉圧力容器12の下部の外側にも密集している。これにより、圧力容器12と原子炉キャビティ22の壁面との間は比較的に高放射線環境となり、放射線量は、原子炉キャビティ22の最上部から上方に離れるにつれて減少する。
【0020】
原子炉10の通常運転時、圧力容器12の冷却水インベントリの調整が行われる。このために、原子炉冷却材インベントリ・浄化システム(RCIPS)30は、原子炉圧力容器12の外部に、浄化原子炉冷却材インベントリ32を含む。補給ライン34は、圧力容器12に注入されるのに十分な圧力の浄化済補給冷却水の源を提供する。圧力容器12の冷却材は運転原子炉圧力P
reactorに維持されるので、補給ライン34は、適切なポンプ機構(不図示)により、原子炉圧力P
reactorより高い圧力水頭P
make−upを適切に与え、補給冷却水が内部圧力P
reactorに反して圧力容器12に注入されるようにする。補給弁36により、原子炉圧力容器12への補給ライン用容器貫通部を介した浄化済補給冷却水の送給が制御される。補給ライン用容器貫通部は、オプションとして、一体型遮断弁(IIV)38で保護される。補給ライン34は原子炉圧力容器12に補給冷却水を送り込むので、補給ラインIIV38は、原子炉圧力容器12への流入を可能にするとともに、原子炉圧力容器12からの流出を遮断する逆止弁として適切に構成され得る。補給ラインIIV38は、モータなどの弁アクチュエータを含まない受動的な逆止弁であるため、高放射線・高温環境である、図示のような原子炉キャビティ22の内部や、原子炉キャビティ上部付近に設置できるという利点がある。
【0021】
RCIPS30は、さらに、原子炉圧力容器12から排出ライン用容器貫通部を介して排出冷却水を取り出す排出ライン44を含む。排出弁46により、原子炉圧力容器12からの排出冷却水の排出が制御される。排出ライン用容器貫通部は、オプションとして、一体型遮断弁(IIV)50で保護される。排出ライン44は原子炉圧力容器12から排出冷却水を取り出すので、排出ラインIIV50は、逆止弁として構成されると通常の排出動作を妨げてしまうため、逆止弁としては構成できない。このため、従来は、排出用IIVとして能動的な弁を用いていた。しかし、先に述べたように、この方法には問題がある。能動的な弁の場合、それを駆動するモータなどの作動装置は、破損などが生じた場合に迅速に反応し動作して排出ライン44を孤立させなければならない。また、モータなどの弁アクチュエータは、原子炉10近傍のスペースを取ってしまい、原子炉の断熱を妨げかねない。さらに、排出ラインが原子炉キャビティの内部や上部付近に位置する例では、モータなどの弁アクチュエータは、高温・高放射線量のこの領域でも使用可能なほど頑強で信頼性のあるものでなければならない。
【0022】
開示の実施例では、排出用IIV50としての弁アセンブリ50は、通常は原子炉圧力容器12内の圧力P
reactorによって閉弁していて、弁アセンブリ制御ライン52を介して弁アセンブリ50内のプレナムに圧力がかかると開弁する。制御ライン52上のパイロット弁54は、この圧力を逃がすことにより、弁アセンブリ50を閉弁させることができる。
図1に示した例では、弁アセンブリ制御ライン52は、補給ライン34に接続されて、プレナムにその圧力を与える。
【0023】
図2および
図3に、開状態(
図2)および閉状態(
図3)の弁アセンブリ50の例示的実施例を示す。
図2および
図3に例示する弁アセンブリ50は、フランジ64内に配置された可動弁部材60および弁座62を含む。例示の実施例のフランジ64は、中空の通路70によって接続されるとともに離間した第1および第2フランジリップを含むスプールフランジであり、可動弁部材60と弁座62とを含む弁が、このスプールフランジ64内に配置される。第1フランジリップ66は、第1フランジリップ66を圧力容器12の排出ライン用貫通部に密閉状態で固定させるための、ボアホール72などの締結機能を含む。第2フランジリップ68は、第2フランジリップ68を弁アセンブリ制御ライン52のカップリング(不図示)に密閉状態で固定させるための、ボアホール74などの締結機能を含む。よって、第1フランジリップ66は原子炉圧力容器側76に面し、第2フランジリップ68は制御ライン側78に面する。
図2と
図3との比較により、可動弁部材が、
図2および
図3に示される移動方向Tに沿って移動することが分かる。
【0024】
弁アセンブリ50は、さらに、複数のプレナム80を含む。この例におけるプレナム80はプレナムスロット80としての形状を有し、可動弁部材60の周囲に、可動弁部材60の移動方向Tに沿って配置される。可動弁部材60は、スロット80内に延出する複数の突起を含む。弁部材60は、プレナムスロット80を、囲うように画成する。この画成は、
図2および
図3の例では、スロット80と平行に延びる横延長部84を突起部82に設けることによって達成される。したがって、
図2および
図3の例では、各プレナムスロット80は、スプールフランジ64の中空通路70の内面の一部を含む壁面と、可動弁部材60の突起部82および横延長部84とによって画成される。すなわち、プレナムスロット80は、(スプールフランジ64と一体的である)弁本体と可動弁部材60との間に画成される。プレナムスロット80は、弁アセンブリ制御ライン52に接続される少なくとも1つの流入口86を有する。
【0025】
図2に、弁アセンプリ50の開位置を示す。弁の開状態を維持するには、制御ライン52から、流入口86を介してプレナム80に加圧90が行われる。
図1を再び短く参照して、補給ライン34が加圧されているとき、パイロット弁54を開弁するとプレナム加圧90が行われる。可動弁部材60は、原子炉圧力P
reactorと可動弁部材60を移動方向Tに投影した場合の可動弁部材60の面積とを乗じた値と等しい(
図2に向かって右側に働く)力を受け、この力によって弁座62に対して付勢されて、弁を閉弁させる。この力に反して弁アセンブリ50を
図2に示す開位置に維持するためには、プレナム加圧90によって突起部82にかかる(
図2に向かって左に働く)力が、原子炉圧力P
reactorによる閉弁させる力に打ち勝つほど大きくなくてはならない。補給ライン34の圧力は、(補給弁36の開弁時に)原子炉圧力容器12に補給冷却材を送り込むために、原子炉圧力P
reactorに打ち勝つほど高いため、開弁状態を維持させるのに十分な力は簡単に得ることができる。可動弁部材60の開位置への移動(つまり、
図2に向かって左方向への移動)は、突起部82がプレナムスロット80の(左)端に接触すると止まる。可動弁部材60が、流入口86を介してプレナム80にかけられる圧力によって
図2のこの最左位置に保持されると、冷却材フローFが可動弁部材60の開口部および弁座62の開口部を流れる。この冷却材フローFは排出ライン44に流れ込む排出フローである。なお、排出フローFは、(1)一体型遮断弁アセンブリ50が
図2に示す開位置にあり、かつ(2)排出フローFがRCIPS30に流入できるように、排出弁46が開弁しているときにのみ流れる。原子炉の通常運転時、プレナム加圧90は、パイロット弁54を開弁したままにすることにより維持され、排出動作は、実際は排出弁46によって制御される。プレナム80がきちんと密封されていれば、プレナムの初期加圧のとき(つまり、パイロット弁54が最初に開弁されるとき)以外は、流入口86には実質全く流体が流れ込まない。実際には、可動弁部材60の突起部82および横延長部84によるプレナム80の密封は、完全でない可能性がある。このような場合には、制御ライン52には少量の冷却材の漏洩があり得るが、
図4に例示するように、補給ライン34が加圧流体を提供する場合は、この少量の漏洩の流れは、主の排出フローFと一緒になり、また、RCIPS30からの浄化済冷却水を含むため、問題ではない。
【0026】
図3を参照して、一体型遮断弁アセンブリ50の閉位置について説明する。弁を閉弁するには、プレナム加圧90を解除する。これにより、原子炉圧力P
reactorによって与えられる力(例示では右方向)に反する力(例示では左方向)が働かなくなる。反発する力を失った原子炉圧力P
reactorによる(例示では右方向の)力によって、可動弁要素60は、
図3に示すように弁座62に当接するまで弁座62に向かって移動し、弁を閉弁させる。これは、パイロット弁54の閉弁などよってプレナム加圧90が完全に解除されたときや、プレナム加圧90による開弁させる力が、原子炉圧力P
reactorによる閉弁させる力を下回ったときに起こる。後者のケースは、RCIPSの補給ライン34が十分に低下した場合や、原子炉の過圧状態によって原子炉圧力P
reactorが十分に上昇した場合に起こり得る。
【0027】
図4に、排出用一体型遮断弁アセンブリの他の例示的実施例を、弁アセンブリ150として示す。
図4の実施例で使用する、フランジ164に装着される弁本体152は、フランジ164が圧力容器12の容器貫通部に接続されると、フランジ164から容器貫通部内部に突出する。冗長化のため、弁アセンブリ150は、2つの可動弁部材160と2つの嵌め合い弁座162とを含む。説明のため、
図4において左側に示す弁(弁座162に当接して最右位置にある可動弁部材160)は閉位置にあり、
図4において右側に示す弁(弁座162から離れて最左位置にある可動弁部材160)は開位置にある。これらの弁の大部分は弁本体152内に位置するが、右側の弁の弁座162はフランジ164内に位置する。この弁はプレナムスロット180を含み、可動弁部材160の延長部182が、プレナムスロット180内に延出する。しかし、
図4の実施例では、
図2および
図3の実施例における横延長部84を設けず、代わりに、可動弁部材160を円筒状の要素として構成し、その外面が(突起部180と協働して)プレナムスロット180を密封するようにして、横延長部84の機能を果たさせている。言い換えると、プレナムスロット180は、弁本体152と可動弁部材160との間に画成される。パイロット弁54を開弁したときに一体型遮断弁150が開位置にとどまるように、また、パイロット弁54を閉弁したときに一体型遮断弁150が閉弁するように、流入口186が弁アセンブリ制御ライン52(
図1参照)に適切に接続される。開位置における矢印FFは、一体型遮断弁アセンブリ150を流れる排出冷却材フローを表す。
【0028】
上記の例示的実施例はスプールフランジを用いたが、開示の一体型遮断弁アセンブリは、その他の種類のフランジを用いて構成することもできる。例えば、スプールフランジの代わりに、原子炉圧力容器12の容器貫通部にボルト締めされるフランジリップを一端側に有し、制御ライン52に接続されるニップルなどのパイプカップリングを他端側に有する片側フランジを使用してもよい。
図1に例示した実施例では、RCIPSの補給ライン34をプレナム80,180加圧用の加圧流体源として使用した。これは上述したような利点があるが、他の加圧流体源を上記目的に使うことも考えらえる。他の変形としては、プレナムスロットの代わりに可動弁要素に溝を形成して、可動弁要素の突起部を可動弁本体内に凹状に形成することが考えらえる。
【0029】
一体型遮断弁アセンブリ50,150は、弁アクチュエータを含まないのが好ましい。遮断弁アセンブリ50,150は、弁アクチュエータを用いず、パイロット弁54の作用で遠隔に操作される。パイロット弁54は、能動的な弁であり得るが、原子炉10の高温・高放射線環境から離れた位置に設けることができる。パイロット弁54の放射線被曝を抑制するために、弁アセンプリ50は、パイロット弁54よりも原子炉キャビティ22の近くに置かれる。
図1の例では、弁アセンブリ50,150は原子炉キャビティ22の内部に配置され、パイロット弁54は原子炉キャビティ22の外部に配置される。
【0030】
好ましい実施例を含む例示的実施例を説明した。本発明および方法の適用方法と原理を説明するために具体的な実施例を示してその詳細を説明したが、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の原理から逸脱しない範囲で、本発明をその他の方法で実施できることを理解されたい。本発明のいくつかの実施例において、本発明のある機能を、対応する他の機能を用いずとも有利に使用できる場合がある。よって、このような変更や実施例も、以下に示す請求の範囲に適切に含まれる。先の詳細説明を読み理解した者が、変形や変更を思い付くのは当然であろう。本開示は、添付の請求の範囲やその同等物の範囲内である変形や変更も全て包括するものであると解釈されたい。
【国際調査報告】