(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-535462(P2017-535462A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】農業用複合延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20171102BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20171102BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B27/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-543867(P2017-543867)
(86)(22)【出願日】2015年10月17日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月9日
(86)【国際出願番号】CN2015092143
(87)【国際公開番号】WO2016074553
(87)【国際公開日】20160519
(31)【優先権主張番号】201410631836.1
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517161452
【氏名又は名称】蘇州莫立克新型材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】黄 斌
(72)【発明者】
【氏名】孫 坤
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
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4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07C
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4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明には、農業用複合延伸フィルムが開示されている。斯かる複合延伸フィルムは、二層の延伸フィルムをそれらの主延伸方向が互いに交差するように接着剤で熱間圧延または紫外線硬化により複合して形成される。本発明による複合延伸フィルムは、同じ厚みの従来の単層農業用フィルムに比べて、横方向と縦方向の引張強さ及び引張強さのみならず、横方向と縦方向の引裂強さ及び引裂強さも著しく向上するため、より薄い厚みを以て農業用に要求される性能をを満たすことで使用コストを削減することができる。とりわけ、本発明によるポリエステル複合延伸フィルムは更に高い透過率、小さい透過率変化、より良い保温性能及びより良い湿度調節性能有する特徴がある。特に、分解可能なポリエステルを原材料して生産する場合は、更に省エネルギーと環境保全の深い意義に繋がる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二層の延伸フィルムをそれらの主延伸方向が互いに交差するように接着剤で熱間圧延または紫外線硬化により複合して形成されることを特徴とする農業用複合延伸フィルム。
【請求項2】
前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が30〜150度の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項3】
前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が60〜120度の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項4】
前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が90度の角度をなすことを特徴とする請求項3に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項5】
前記延伸フィルムが非対称延伸フィルムであり、一軸延伸フィルムと非対称二軸延伸フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項6】
前記非対称延伸フィルムの主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が(1.2:1)〜(4:1)にあることを特徴とする請求項5に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項7】
前記非対称延伸フィルムが平膜法で生産されることを特徴とする請求項5に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項8】
前記延伸フィルムがポリエチレン、またはポリプロピレン、またはポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項9】
前記延伸フィルムがPETまた変性PETからなることを特徴とする請求項8に記載の農業用複合延伸フィルム。
【請求項10】
前記延伸フィルムが分解可能な変性PETからなることを特徴とする請求項9に記載の農業用複合延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用複合延伸フィルムに関し、高分子材料技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、軽質、安価、高性能、使用・運輸されやすさなどの利点を持つため、現在、中国の施設農業に用いられた被覆材の中に使用面積が最も広いものとなっている。中国で今使われた農業用フィルムは、その原材料によってポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムの3種類に分けられる。一般的には、単層フィルムの厚みが0.1〜0.2mm、二層インフレーションフィルムの厚みが0.2mm程度である。PVCフィルムは、高温と低温での機械的性質が劣り、環境に優しくないため、次第に使用されなくなっている。PEフィルムはEVAフィルムと同じくらいの光透過性を有しているが、老化耐性と保温性が低いため、使用時に複数回の霧滴防止処理を必要とする。EVAフィルムは、光透過性、耐候性、保温性、柔軟・靭性、流滴性の各方面においてPVCフィルムとPEフィルムより優れているものの、霧滴防止性が安定しておらず、光透過性がせいぜい82%程度である上に減衰し速く、赤外線遮断性、即ち保温性も良好ではない。さらに、上述した全ての農業用フィルムは、耐引裂性が現段階でまだ不十分な問題があり、その使用可能寿命が影響され、農業生産コストを引き揚げている。
【0003】
研究・分析には、ポリエステルフィルム(主にPETフィルム)が良好な物理性能、化学性能、耐久性能などを有し、温室の保温性、光透過性、無滴性、使用可能年数の大幅向上、温室の光・温度環境の改善、エネルギー消費の大幅軽減、エネルギーの節約、環境汚染の低減ができると示唆されているが、従来のポリエステルフィルムは依然として耐引裂性が不十分な問題があるため、その使用コストが高められ、農業用施設への普及と応用が制限されている。
【0004】
そのほか、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルム、二軸延伸ポリエステル(BOPET)フィルムなどの一軸または二軸延伸フィルムは、高分子主鎖が延伸時に秩序高く配向することによって高い光透過性を有し、包装業界で広く使用されているものの、耐引裂性が良くないため、施設農業、特に農業用温室フィルムに適用することができない。
【0005】
中国の施設園芸産業と透明被覆材の持続的発展につれ、連棟温室、単棟温室、太陽光温室などに広く適用でき且つ高保温性、高光透過性、防塵性、防霧滴性、長使用寿命、良好な耐引張・引裂性を持つ多機能農業用フィルムを開発することが目下の急務となっている。近代化農業に環境に優しく実用的で安全な新規生産手段を提供するために、斯かるフィルムには、更に低生産コスト性、省エネルギー性及び再生・再利用性が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点及び市場ニーズに鑑みてなされたものであり、その目的は、従来農業用フィルムの耐引裂性が不十分な問題の解決、延伸プロセスで作製されたBOPEフィルム、BOPPフィルム、BOPETフィルムなどの様々なフィルムの耐引裂性の向上、農業用施設に耐引張・引裂性が良く、使用可能寿命が長く、そして使用コストが低い農業用フィルムの提供ができる農業用複合延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の内容は以下に示すとおりである:
二層の延伸フィルムをそれらの主延伸方向が互いに交差するように接着剤で熱間圧延または紫外線硬化により複合して形成される農業用複合延伸フィルムである。
【0008】
好ましい実施態様として、前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が30〜150度の角度をなす。
【0009】
より好ましい実施態様として、前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が60〜120度の角度をなす。
【0010】
更に好ましい実施態様として、前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が90度の角度をなす。
【0011】
好ましい実施態様として、前記延伸フィルムが非対称延伸フィルムであり、一軸延伸フィルムと非対称二軸延伸フィルムを含む。
【0012】
より好ましい実施態様として、前記非対称延伸フィルムが平膜法で生産される。
【0013】
より好ましい実施態様として、前記非対称延伸フィルムの主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が(1.2:1)〜(4:1)にある。
【0014】
更に好ましい実施態様として、前記非対称延伸フィルムの主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が(1.4:1)〜(3.5:1)にある。
【0015】
本発明による延伸フィルムは、高い光透過性と保温性を有しそして農業に適用できる様々な従来延伸フィルム用原材料、例えばPE、PP、PO、EVA、ポリエステルなど、より好ましくポリエステル、更に好ましくPETまたは変性PETを用いて作製することができる。分解可能な変性PET(例えば、US8530612B2、US8722847、CN200980135154.9、CN201210380279.1、US13/968938、US14/244936、CN201210370366.6などの特許に開示された分解可能な変性PET)をその原材料として使用する場合には、更に省エネルギーと環境保全の深い意義に繋がる。
【0016】
本発明における非対称延伸とは、二軸延伸の場合、一つの方向(縦または横)における延伸倍率がもう一つの方向における延伸倍率より大きいことをいう。非対称延伸の極端例は一軸延伸であり、すなわち、一つの方向のみにおいて延伸を行い、もう一方の方向において延伸を完全にしないことである。非対称延伸の場合には、延伸倍率が大きい方が主延伸方向であり、延伸倍率が小さい方が副次的延伸方向である。一軸延伸の場合には、延伸が行われる方向が主延伸方向であり、延伸が行われない方向が副次的延伸方向である。
【0017】
本発明における平膜法とは、押出機から押し出されたペレットをTダイを用いてシートを流延し、それを急冷してから加熱ロールにて延伸温度までに加熱して同時または逐次に延伸し、最後に成型を行う方法を言う。同時延伸とは、縦と横両方向ともにおいて同時に延伸を行うことをいい、逐次延伸とは一つの方向において延伸を行ってから、もう一方の方向において延伸を行うことをいう。本発明は同時延伸か逐次延伸かによって得た延伸フィルムに限定されず、そして毎層の延伸フィルムの厚みには限定がなく、特定の用途に応じて設計してよい。
【0018】
本発明における熱間圧延または紫外線硬化による複合に用いられる接着剤は、溶媒を含有するまたは含有しない従来のフィルム接着用接着剤であり、溶媒を含有しない二成分ポリウレタン系接着剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
従来技術に対して、本発明は以下とおりの著しい進歩性を示す:
本発明による農業用複合延伸フィルムは、同じ厚みの従来単層農業用フィルム(例えば、EVAフィルム、PEフィルム、POフィルム)に比べて、横方向と縦方向の引張強さ及び引張強さのみならず、横方向と縦方向の引裂強さ及び引裂強さも著しく向上するため、より薄い厚みを以て農業用に要求される性能を満たすことで使用コストの削減ができる。ポリエステル材料を使って斯かる複合延伸フィルムを形成する場合は、更に、透過率が高く、透過率の時間変化率が小さく、農作物の生長周期を短縮すること或いは1ムー当たりの収量を上げることができ、農作物の品質を高め、より良い保温性能、機械的性能、紫外線遮断性能、防塵性能及びより長い使用可能寿命を有するなどの利点がある。とりわけ、分解可能なポリエステルを原材料して作製する場合は、更に省エネルギーと環境保全の深い意義に繋がる。その他、本発明による農業用複合延伸フィルムは構造が簡単で大規模生産化にされやすい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例により本発明の内容をもっと詳しく完全に説明する。
【0021】
各実施例において、下記のとおりに平膜法を利用して延伸PETフィルム試料を作製した。まずは、多層押出機(南京創博機械設備有限公司製)にてPET樹脂から厚み140〜560mmの流延シートを形成した。次いで、流延シートをフィルム引張試験機(ブルックナー社製)にて掴み具で把持した状態で115℃に昇温し、予め設定されたプログラム(延伸倍率)に従い延伸を実行した。延伸されたPETフィルムを空気中にて素早く冷却することで成型した。
【0022】
各実施例において、CH-9002A-20多機能引張試験機(蘇州宝?通測定設備有限公司製)を使って下記のとおりに引張性能に関する測定を実行した。試料を大きさ1.0〜2.6cm(巾)×15〜25cm(長さ)の引張試験用標準試験片に裁断し、試験片の両側(間隔100mm)を互いに100mm離れて設置された掴み具で把持した状態で、自動プログラムの制御の下で設定条件に従い引張試験及びデータ収集を行った。
【0023】
各実施例において、CH-9002A-20多機能引張試験機(蘇州宝?通測定設備有限公司製)を使って下記のとおりに耐引裂性に関する測定を実行した。測定すべき引裂方向に沿ってフィルム試料に20mm程度のスリットを切り入れ、掴み具でスリットの両側を把持し、自動プログラムの制御の下引裂測定並びデータ収集を行った。
【0024】
実施例1
一層の延伸PETフィルムの片面に接着剤(例えば、研泰社製のTS9002AまたはTS9002BまたはTS9002C接着剤)を均一に塗り、溶媒が蒸発した後、それにもう一層の延伸PETフィルムを第2層目の延伸PETフィルムの主延伸方向(延伸倍率の大きい方向)が第1層目の延伸PETフィルムの主延伸方向と90度の角度をなすように被せた。こうして得た複合フィルムを60〜85℃のロールにて熱間圧延し(具体的な熱間圧延温度が使用された接着剤による)してから、完全に硬化したまで室温に放置した。
【0025】
表1には、本実施例の方法によって主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が互いに異なる延伸フィルムから形成された複合フィルムの耐引裂性を比較した結果を示す。
【0026】
【表1】
表1から分かるように、本発明の方法によって得た全ての複合延伸PETフィルムの引裂強さは同じ厚みの単層二軸延伸PETフィルムに比べて著しく向上した。試料の引裂強さが厚みの増加につれて大きくなる傾向があるものの、厚み150μmの単層二軸延伸PETフィルムの引裂強さがただ19.86N/mmであったことに対して、本発明によって得た厚み100μmの複合延伸PETフィルム(主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が2.7であった場合)の引裂強さが337.27N/mmにも達し、耐引裂性に著しい向上が得た。しかも、非対称性が高ければ高いほど、スリット引裂強さが大きくなる傾向があった。主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が(1.4:1)〜(3.5:1)にあった場合、スリット引裂強さが240〜340N/mmにもなった。しかしながら、主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が4であった場合、厚みを150μmに増やしたとしても、引裂強さが減少する傾向があった。
【0027】
実施例2
一層の延伸PETフィルムの片面に接着剤(例えば、ヘンケル社製の6062Aまたは7725B接着剤)を均一に塗り、それにもう一層の延伸フィルムを第2層目の延伸PETフィルムの主延伸方向(延伸倍率の大きい方向)が第1層目の延伸PETフィルムの主延伸方向と90度の角度をなすように被せた。こうして得た複合フィルムを60〜85度のロールにて熱間圧延し(具体的な熱間圧延温度が使用された接着剤によった)してから、完全に硬化したまで室温に放置した。
【0028】
表2には、本実施例の方法によって主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が互いに異なる延伸フィルムから形成された複合フィルムの耐引裂性を比較した結果を示す。
【0029】
【表2】
表2から分かるように、本発明の方法によって得た全ての複合延伸PETフィルムの引裂強さは同じ厚みの単層二軸延伸PETフィルムに比べて著しく向上した。試料の引裂強さが厚みの増加につれて大きくなる傾向があるものの、厚み150μmの単層二軸延伸PETフィルムの引裂強さがただ19.86N/mmであったに対して、本発明によって得た厚み100μmの複合延伸PETフィルム(主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が3.5であった場合)の引裂強さが609.79N/mmにも達し、耐引裂性に著しい向上が得た。しかも、非対称性が高ければ高いほど、スリット引裂強さが大きくなる傾向があった。主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が(2:1)〜(3.5:1)にあった場合、スリット引裂強さが340〜610N/mmにもなった。しかしながら、主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が4であった場合、厚みを150μmに増やしたとしても、引裂強さが減少する傾向があった。
【0030】
表1と表2とを比べれば分かるように、熱間圧延による複合に溶媒を含有した接着剤を使用する場合、その溶媒が延伸フィルムの分子の配向・配列度を低下させて引裂強さを弱める可能性がある。
【0031】
実施例3
実施例2に参照して、同時延伸から得た非対称二軸延伸PETフィルムと逐次延伸から得た非対称二軸延伸PETフィルムをそれぞれ複合して耐引裂性を比較した。
【0033】
【表3】
表3の試験結果から分かるように、同時延伸フィルムからなる複合フィルムのスリット引裂強さが逐次延伸フィルムからなる複合フィルムのスリット引裂強さよりやや大きかったが、その向上幅が顕著ではなかった。
【0034】
実施例4:引張性能の比較
厚みが全て100μmである従来の単層農業用EVAフィルム、単層PEフィルムと単層POフィルム、及び主延伸倍率3倍、厚み約50μmのPETフィルムを本発明によって2層複合して得た複合フィルム(総厚みが同じく100μm)に対して、縦横両方向における最大引張力、引張強さと破断伸び率を測定し比較した。詳しい測定結果は表4に示す。
【0035】
【表4】
表4に示された測定結果から分かるように、同じ厚みを有する従来の単層農業用フィルム(例えば、EVAフィルム、PEフィルム、POフィルム)に比べ、本発明農業用複合延伸フィルムは、縦横両方向において耐引張性能の著しい向上を遂げた。
【0036】
実施例5:耐引裂性の比較
厚みが全て100μmである従来の単層農業用EVAフィルム、単層PEフィルムと単層POフィルム、従来の単層二軸延伸PETフィルム、及び主延伸倍率3倍、厚み約50μmのPETフィルムを本発明によって2層複合して得た複合フィルム(総厚みが同じく100μm)に対して、縦横両方向における引裂力と引裂強さを測定し比較した。詳しい測定結果は表5に示す。
【0037】
【表5】
表5に示された測定結果から分かるように、同じ厚みを有する従来の単層農業用フィルム(例えば、EVAフィルム、PEフィルム、POフィルム)及び従来の単層二軸延伸PETフィルムに比べ、本発明農業用複合延伸フィルムは、縦横両方向において耐引裂性の著しい向上を遂げた。
【0038】
実施例6:光透過性の比較
試験試料:実施例2から得た厚み100μmの複合延伸PETフィルム(主延伸倍率と副次的延伸倍率との比が3.5);
比較試料:厚み90μmの従来の単層EVA温室フィルム。
分光測光器(日本国島津製作所社製UV−3150、測定波長範囲:190〜3200nm)を使って上述した試験試料と比較試料の380〜760nmの可視域における光透過率、使用3ヶ月後の光透過率、及び水洗浄後の光透過率を測定した。測定結果は表6に示す。
【0039】
【表6】
表6に示された測定結果から分かるように、本発明複合延伸PETフィルムは従来の単層EVA温室フィルムより厚いにもかかわらず、より高い光透過性を示したうえ、使用中(3ヶ月以内)に吸着した埃の量もより少なかった(使用中に透過率が低下する主な原因はそれに付着した埃にあるから)。
【0040】
実施例7:保温性能の比較
試験温室(本発明実施例2から得た厚み100μm、主延伸倍率/副次的延伸倍率=3.5の複合延伸PETフィルムを使用)と比較温室(厚み90μmの従来単層EVAフィルムを使用)を作製した。各温室に一つの温湿度計測器を設置し、様々の天気条件(晴れ、薄曇り、曇り・霧、雨・雪の4種類)及び各時間帯(冬で昼が夜より短い現象に従い、一日を時間帯I:午後17時〜夜0時と、時間帯II:夜0時〜朝7時と、時間帯III:朝7時〜午前11時と、時間帯IV:午前11時〜午後17時との4つの時間帯に分け)における温室の内部温度のデータを採取した。統計法(アメリカSAS社製JMP10分析ソフトウェア)を利用して採集された温度データを分析することによって、本発明複合延伸PETフィルムと従来の単層EVA温室フィルムとの保温性能の差を評価した。
【0041】
晴れの天気の下での各時間帯における試験温室と比較温室との温度差を単因子分析により比較した結果は以下のとおりである。
【0042】
【表7】
この結果から分かるように、晴れの天気の下で、時間帯I、II、IIIにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より高く、時間帯IVにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より低かった。
【0043】
薄曇りの天気の下での各時間帯における試験温室と比較温室との温度差を単因子分析により比較した結果は以下のとおりである。
【0044】
【表8】
この結果から分かるように、薄曇りの天気の下で同じく、時間帯I、II、IIIにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より高く、時間帯IVにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より低かった。
【0045】
曇り・霧の天気の下での各時間帯における試験温室と比較温室との温度差を単因子分析により比較した結果は以下のとおりである。
【0046】
【表9】
この結果から分かるように、曇り・霧の天気の下で同じく、時間帯I、II、IIIにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より高く、時間帯IVにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より低かった。
【0047】
雨・雪の天気の下での各時間帯における試験温室と比較温室との温度差を単因子分析により比較した結果は以下のとおりである。
【0048】
【表10】
この結果から分かるように、雨・雪の天気の下で、前記4つの時間帯の全てにおいて試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より高かった。
【0049】
各種天気下の早朝時間帯における試験温室と比較温室との温度差を単因子分析により比較した結果は以下のとおりである。
【0050】
【表11】
この結果から分かるように、早朝時間帯において、どの天気の下であっても、試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より2〜4℃(晴れの天気の場合、平均的に3.8℃)高かった。
【0051】
各種天気下の午後時間帯における試験温室と比較温室との温度差を単因子分析により比較した結果は以下のとおりである。
【0052】
【表12】
この結果から分かるように、午後時間帯において、雨・雪を除く他全ての天気、特に晴れの天気の下で、試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より低かった。それに対して、雨・雪の天気において、試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より高かった。
晴れの天気の下での午後時間帯における各温室の内部温度の比較分析結果は以下のとおりである。
【0053】
【表13】
この結果から分かるように、晴れの天気の下での午後時間帯において、試験温室の内部温度が比較温室の内部温度より平均的に約3.7℃低かった。しかしながら、この時間帯の平均温度が20℃程度であるため、試験温室内の植物生長に影響を与えないばかりか、むしろ温室を開けて熱を逃すのに要する回数を減らす可能性がある。
【0054】
上述した実験結果を総合的に考慮すれば分かるように、本発明複合延伸PETフィルムを使用した試験温室の内部温度は、1日の24時間のうち、午後以外の全ての時間、特に午前において従来の単層EVAフィルムを使用した比較温室の内部温度より高く、その温度差の平均値が4℃であった。一方、午後のうちの凡そ4〜5時間の時間帯において、従来の単層EVAフィルムを使用した比較温室の内部温度は、試験温室の内部温度より平均的に3〜4℃、最大10数℃高くて過熱現象を起こし、温室を開けて熱を逸散させることを必要とした。このような大幅昇温が試験温室で発生しなかった。前記現象は、天気が晴れの時に起こりやすかったが、雨・雪の時に起こらなかった。しかしながら、天気が雨・雪の時には、試験温室の内部温度が時間帯を問わずに従来の単層EVAフィルムを使用した比較温室の内部温度より高かった。これは、更に、本発明複合延伸PETフィルムがEVAフィルムより優れた保温性能を有し農業用フィルムとして非常に好適に用いられることができることを証明した。
【0055】
実施例8:湿度調節性能の比較
試験温室(本発明実施例2から得た厚み100μm、主延伸倍率/副次的延伸倍率=3.5の複合延伸PETフィルムを使用)と比較温室(厚み90μmの従来の単層EVAフィルムを使用)を作製した。各温室に一つの温湿度計測器を設置し、様々の天気(晴れ、薄曇り、曇り・霧、雨・雪の4種類)における温室内の湿度のデータを採取した。統計法(アメリカSAS社製JMP10分析ソフトウェア)を利用して採集された湿度データを分析することによって、本発明複合延伸PETフィルムと従来の単層EVA温室フィルムとの湿度調節性能の差を評価した。
【0056】
雨・雪の天気における試験温室と比較温室の湿度の比較分析結果は以下のとおりである。
【0057】
【表14】
この結果から分かるように、雨・雪の天気において、試験温室と比較温室の湿度に大差がなかった。
【0058】
曇り・霧の天気における試験温室と比較温室の湿度の比較分析結果は以下のとおりである。
【0059】
【表15】
この結果から分かるように、曇り・霧の天気において、試験温室と比較温室の湿度に大差がなかった。
【0060】
薄曇りの天気における試験温室と比較温室の湿度の比較分析結果は以下のとおりである。
【0061】
【表16】
この結果から分かるように、薄曇りの天気において、試験温室内の湿度が比較温室内の湿度より平均的に6%低かった。
【0062】
晴れの天気における試験温室と比較温室の湿度の比較分析結果は以下のとおりである。
【0063】
【表17】
この結果から分かるように、晴れの天気において、試験温室内の湿度が比較温室内の湿度より平均的に8%低かった。
【0064】
上述した実験結果を総合的に考慮すれば分かるように、試験温室内の湿度は、晴れと薄曇りの天気において比較温室の湿度よりかなり低く、曇り、霧、雨、雪の天気において比較温室の湿度とに大差がなかった。これは、更に、本発明複合延伸PETフィルムが従来の単層EVAフィルムより優れた湿度調節性能を有し農業用フィルムとして非常に好適に用いられることができることを証明した。
【0065】
最後に、ここで留意すべきなのは、上記実施例は単なる本発明の内容をより詳しく説明するつもりのもので、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。当業者が本発明の上述内容の基づいてなし得た非本質的な改良と調整がすべて本発明の保護範囲に属する。
【国際調査報告】