特表2017-535601(P2017-535601A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-535601腎癌の処置に使用するためのアピリモド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-535601(P2017-535601A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】腎癌の処置に使用するためのアピリモド
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20171102BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20171102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20171102BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20171102BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20171102BHJP
   C07K 16/32 20060101ALN20171102BHJP
【FI】
   A61K31/5377
   A61P35/04
   A61P35/00
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K31/44
   A61K31/4178
   A61K31/439
   A61K31/404
   A61K31/519
   A61K39/395 T
   A61P13/12
   C07K16/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2017-543329(P2017-543329)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月3日
(86)【国際出願番号】US2015059512
(87)【国際公開番号】WO2016073877
(87)【国際公開日】20160512
(31)【優先権主張番号】62/077,127
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516104157
【氏名又は名称】ラム・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】ビーハリー,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル,ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ランドレット,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ベケット,ポール
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,クリス
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ティエン
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ,ジョナサン・エム
(72)【発明者】
【氏名】リチェンステイン,ヘンリ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC17
4C086BC38
4C086BC42
4C086BC73
4C086CB09
4C086CB16
4C086CB17
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC20
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、アピリモドで腎癌を処置するための方法、ならびに関連の組成物および方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎癌を伴う対象において腎癌を処置するための組成物であって、療法有効量のアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩を含む、前記組成物。
【請求項2】
アピリモドがアピリモド・ジメシレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種類の追加の有効薬剤を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種類の追加の有効薬剤が、療法剤もしくは非療法剤、または療法剤と非療法剤の組合わせである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種類の追加の有効薬剤が、プロテインキナーゼ阻害剤、PD−1/PD−L1経路阻害剤、チェックポイント阻害剤、白金ベースの抗新生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
療法剤がプロテインキナーゼ阻害剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
プロテインキナーゼ阻害剤が、パゾパニブもしくはソラフェニブまたはその組合わせである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
療法剤がPD−1/PD−L1経路阻害剤である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
療法剤が、ペンブロリズマブ(Keytruda(商標))、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(MK−3475)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
さらに、アピリモドの1以上の副作用を改善するために選択された非療法剤を含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種類の追加の有効薬剤が非療法剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
非療法剤が、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドルセトロンおよびパロノセトロンからなる群から選択される、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
非療法剤が、ピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、対象の癌細胞におけるPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量のアピリモド・ジメシレートを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
腎癌が標準治療に対して難治性であるかまたは転移性である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
腎癌が、淡明細胞腎癌、移行上皮癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺癌、膨大細胞腫、および血管筋脂肪腫から選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が経口または静脈内投与に適した形態である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
処置の必要がある対象において腎癌を処置するための方法であって、アピリモドまたはその医薬的に許容できる塩を含む療法有効量の組成物を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
アピリモドがアピリモド・ジメシレートである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
療法有効量のアピリモドが、対象の腎癌細胞におけるPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
腎癌細胞の増殖を阻害するための方法であって、癌細胞をその細胞の増殖を阻害するのに有効な量のアピリモドまたはその医薬的に許容できる塩と接触させることを含む、前記方法。
【請求項22】
腎癌細胞の生存を阻害するための方法であって、癌細胞をその癌細胞におけるPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量のアピリモドまたはその医薬的に許容できる塩と接触させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[01] 本出願は、U.S. Pat. App. Ser. No. 62/077,127, 2014年11月7日出願に基づく優先権を主張し、その内容を完全に本明細書に援用する。
【0002】
開示の分野
[02] 本開示は、アピリモド(apilimod)を含む組成物、およびそれを腎癌の処置のために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[03] アピリモド(STA−5326とも呼ばれる,以下、“アピリモド”)はIL−12およびIL−23の有効な転写阻害剤として認識されている。たとえば、Wada et al. Blood 109 (2007): 1156-1164を参照。IL−12およびIL−23は、免疫細胞、たとえばB細胞およびマクロファージが抗原刺激に応答して正常に産生する炎症性サイトカインである。慢性炎症を特徴とする自己免疫障害および他の障害は、一部はこれらのサイトカインの不適正な産生を特徴とする。免疫細胞において、アピリモドによるIL−12/IL−23転写の選択的阻害はホスファチジルイノシトール−3−ホスフェート 5−キナーゼ(PIKfyve)へのアピリモドの直接結合により仲介されることが最近示された。たとえば、Cai et al. Chemistry and Biol. 20 (2013):912-921を参照。PIKfyveは、自然免疫に重要なToll様受容体シグナル伝達において役割を果たす。
【0004】
[04] アピリモドは、免疫調節剤およびIL−12/IL−23の特異的阻害剤としてのそれの活性に基づいて、自己免疫性および炎症性の疾患および障害を治療するのに有用なものとして提唱された。たとえば、US 6,858,606および6,660,733を参照(IL−12またはIL−23の過剰産生を特徴とする疾患および障害、たとえば関節リウマチ、敗血症、クローン病、多発性硬化症、乾癬、またはインスリン依存性糖尿病を治療するのに有用とされるアピリモドを含めた一群のピリミジン化合物を記載)。同様に、アピリモドは、c−RelまたはIL−12/23を阻害するそれの活性に基づいて、特定の癌、特にこれらのサイトカインが異常な細胞増殖役割を促進する役割を果たすと考えられる癌に有用であると示唆された。たとえば、WO 2006/128129、およびBaird et al., Frontiers in Oncology 3:1 (それぞれ2013)を参照。
【0005】
[05] アピリモドの3つの臨床試験はそれぞれ、自己免疫疾患および炎症性疾患におけるそれの潜在有効性に注目した。それらの試験は、乾癬、関節リウマチ、およびクローン病を伴う患者において実施された。乾癬を伴う患者におけるオープンラベル臨床試験は、アピリモドの経口投与がTH1−およびTH17−仲介炎症性疾患の治療のためのIL−12/IL−23合成阻害を支持する免疫調節活性を示すと結論づけた。Wada et al., PLosOne 7:e35069 (April 2012)。しかし、関節リウマチ、およびクローン病における対照付き試験の結果は、アピリモドによるIL−12/IL−23阻害が臨床改善になるという考えをこれらの適応症のいずれにおいても支持しなかった。関節リウマチを伴う患者におけるアピリモドのランダム化二重盲検プラセボ対照付き第II相臨床試験において、アピリモドは滑膜IL−12およびIL−23発現を変化させることができなかった。Krauz et al., Arthritis & Rheumatism 64:1750-1755 (2012)。著者らは、“結果は、アピリモドによるIL−12/IL−23阻害がRAにおける確固たる臨床改善を誘導できるという見解を支持しない”と結論づけた。同様に、活動性クローン病の治療についてのアピリモドのランダム化二重盲検プラセボ対照付き試験は、アピリモドは良好に耐容されたけれどもプラセボを上回る有効性を示さないと結論づけた。Sands et al Inflamm Bowel Dis. 2010 Jul;16(7):1209-18。
【0006】
[06] 哺乳類ラパマイシン標的(mammalian target of rapamycin)(mTOR)経路は、細胞成長、細胞増殖、代謝、タンパク質合成、およびオートファジーを含めた多数の生理的機能に関与する重要な細胞シグナル伝達経路である(La Plante et al Cell 2012, (149 (2), pp.274-293)。mTORは、アミノ酸、ストレス、酸素、エネルギー、および成長因子のレベルを伝達する細胞内と細胞外の情報(cue)を統合するキナーゼであり、これらの環境情報に対する細胞応答を調節する。癌、肥満症、糖尿病、および神経変性を含めた広範な障害および疾患においてmTOR脱調節が示唆されている。これらの疾患のうちあるものを治療するための薬物ターゲットとして、mTOR経路の特定の成分が探査された。しかし、療法効果はたとえばある種の癌の治療に限定され、あるmTOR阻害剤は代謝に対する有害作用をもつことが示された。結節性硬化症複合体腫瘍抑制遺伝子(tuberous sclerosis complex tumor suppressor gene)TSC1およびTSC2はmTORの負の調節物質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 6,858,606
【特許文献2】US 6,660,733
【特許文献3】WO 2006/128129
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wada et al. Blood 109 (2007): 1156-1164
【非特許文献2】Cai et al. Chemistry and Biol. 20 (2013):912-921
【非特許文献3】Baird et al., Frontiers in Oncology 3:1 (2013)
【非特許文献4】Wada et al., PLosOne 7:e35069 (April 2012)
【非特許文献5】Krauz et al., Arthritis & Rheumatism 64:1750-1755 (2012)
【非特許文献6】Sands et al Inflamm Bowel Dis. 2010 Jul;16(7):1209-18
【非特許文献7】La Plante et al Cell 2012, (149 (2), pp.274-293
【発明の概要】
【0009】
[07] 本開示は、一部は、アピリモドがTSCヌル細胞(TSC null cell)に対して細胞毒性の高い薬剤であるという予想外の知見に基づく。これらの細胞において、mTOR経路は構成性活性である。mTOR経路は多数の癌で活性化され、100を超える癌細胞系のさらなるスクリーニングにおいてアピリモドは腎細胞癌を含めた多様な癌に由来する細胞系で抗増殖活性を示した。さらに、癌細胞系におけるアピリモドの細胞毒性は、アピリモドの免疫調節活性に基づいて予想されたアピリモドのIL−12/23産生阻害よりむしろ、細胞内トラフィッキング(trafficking)の阻害、ならびに対応するアポトーシスおよび/またはオートファジーの増大によるものであった。さらに、450種類を超えるキナーゼのスクリーニングにより、PIKfyveがアピリモドに対する唯一の高親和性結合ターゲット(Kd=75pM)として同定された。本開示は、癌である腎細胞癌の処置におけるアピリモドの療法使用のための新規方法を提供する。
【0010】
[08] 一側面において、本開示は、腎癌を伴う対象において腎癌を処置するための組成物であって、療法有効量のアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩を含む組成物を提供する。一態様において、アピリモドはアピリモド・ジメシレートである。複数の態様において、組成物は経口投与または静脈内投与に適した形態である。複数の態様において、組成物はさらに少なくとも1種類の追加の有効薬剤を含み、それは療法剤もしくは非療法剤、または療法剤と非療法剤の組合わせから選択される。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、プロテインキナーゼ阻害剤、白金ベースの抗新生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。複数の態様において、療法剤はプロテインキナーゼ阻害剤である。複数の態様において、プロテインキナーゼ阻害剤はパゾパニブ(pazopanib)もしくはソラフェニブ(sorafenib)またはその組合わせである。複数の態様において、組成物はさらにアピリモドの1以上の副作用を改善するために選択された非療法剤を含む。複数の態様において、非療法剤はオンダンセトロン(ondansetron)、グラニセトロン(granisetron)、ドルセトロン(dolsetron)およびパロノセトロン(palonosetron)からなる群から選択される。複数の態様において、非療法剤はピンドロール(pindolol)およびリスペリドン(risperidone)からなる群から選択される。
【0011】
[09] 複数の態様において、組成物は対象の癌細胞においてPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量のアピリモド・ジメシレートを含む。腎癌は、ある態様において標準治療に対して難治性であるかまたは転移性である可能性がある。複数の態様において腎癌は、淡明細胞腎癌(clear cell renal carcinoma)、移行上皮癌(transitional cell carcinoma)、ウィルムス腫瘍(Wilms tumor)(腎芽細胞腫(nephroblastoma))、腎肉腫(renal sarcoma)、および良性(非癌性)腎腫瘍(benign (non-cancerous) kidney tumor)、腎腺癌(renal adenoma)、膨大細胞腫(oncocytoma)、および血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)から選択される。
【0012】
[10] 一側面において、本開示は処置の必要がある対象において腎癌を処置するための方法であって、療法有効量のアピリモドまたはアピリモドを含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供し、その際、アピリモドはアピリモドそのもの(すなわち、アピリモド遊離塩基)、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体である。一態様において、アピリモドはアピリモド遊離塩基またはアピリモド・ジメシレートである。
【0013】
[11] 複数の態様において、本方法はさらに、少なくとも1種類の追加の有効薬剤を対象に投与することを含む。少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、療法剤または非療法剤であってもよい。少なくとも1種類の追加の有効薬剤をアピリモドとの単一剤形で、またはアピリモドとは別個の剤形で投与することができる。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、プロテインキナーゼ阻害剤、白金ベースの抗新生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、PD−1/PDL−1経路阻害剤、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。複数の態様において、療法剤はプロテインキナーゼ阻害剤である。複数の態様において、プロテインキナーゼ阻害剤はパゾパニブもしくはソラフェニブまたはその組合わせである。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、スニチニブ(sunitinib)(Sutent(登録商標))、テムシロリムス(temsirolimus)(Torisel(登録商標))、エベロリムス(everolimus)(Afinitor(登録商標))、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin(登録商標))、パゾバニブ(pazopanib)(Votrient(登録商標))、アキシチニブ(axitinib)(Inlya(登録商標))、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。複数の態様において、療法剤はPD−1/PDL−1経路阻害剤である。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤は、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)(Keytruda)、アベルマブ(avelumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)(MPDL3280A)、ニボルマブ(nivolumab)(BMS−936558)、ピジリズマブ(pidilizumab)(MK−3475)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0014】
[12] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤はアピリモドの1以上の副作用を改善するために選択された非療法剤である。一態様において、非療法剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドルセトロンおよびパロノセトロンからなる群から選択される。複数の態様において、非療法剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。一態様において、アピリモド組成物の剤形は経口剤形である。他の態様において、アピリモド組成物の剤形は静脈内投与に適した剤形であり、投与は単回注射または点滴バッグによる。
【0015】
[13] 一態様において、対象はヒト癌患者である。一態様において、アピリモドによる処置を必要とするヒト癌患者は、その癌が標準化学療法計画に対して抵抗性である者である。一態様において、アピリモドによる処置を必要とするヒト癌患者は、その癌が標準化学療法計画による処置の後に再発した者である。一態様において、癌は腎癌である。一態様において、腎癌は移行上皮癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺癌、膨大細胞腫、および血管筋脂肪腫である。一態様において、腎癌は淡明細胞腎細胞癌である。
【0016】
[14] 一態様において、標準化学療法計画はイブルチニブ(ibrutinib)、リツキシマブ(rituximab)、ドキソルビシン(doxorubicin)、プレドニゾロン、ビンクリスチン(vincristine)、ベルケード(velcade)、シクロホスファミド、デキサメタゾン(dexamethasone)およびエベロリムスからなる群から選択される。
【0017】
[15] 一態様において、本方法は、アピリモドおよび腎癌の処置のための化学療法計画を含む併用療法を用いて腎癌を処置する方法である。複数の態様において、化学療法計画はPD−1/PDL−1経路阻害剤を含む。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(MK−3475)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0018】
[16] 他の態様において、本方法は、アピリモドおよび腎癌の処置のための免疫療法計画を含む併用療法を用いて腎癌を処置する方法である。一態様において、免疫療法計画はインターロイキン−2(IL−2)計画またはアルファ−インターフェロン計画である。一態様において、免疫療法計画はPD−1/PDL−1経路阻害剤を含む。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(MK−3475)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0019】
[17] ある態様において、本方法は、アピリモドおよび腎癌の処置のためのプロテインキナーゼ阻害剤計画を含む併用療法を用いて腎癌を処置する方法である。一態様において、プロテインキナーゼ阻害剤計画はソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、レンバチニブ(lenvatinib)、エベロリムスである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】[18] 図1:TSC2欠損細胞はアピリモドに対して高感受性である(IC50=20nM)。
図2A】[19] 図2A:IC50が500nM未満である細胞系のパーセント。
図2B】[20] 図2B:正常な肺線維芽細胞は、10マイクロモル濃度という高いアピリモド濃度でアピリモド誘発細胞毒性に対して感受性ではない。
図3】[21] 図3:アピリモドは用量依存性でオートファジーを誘発する。
図4】[22] 図4:CT−689を0.1μM濃度で最適化捕獲条件下に適用した有意捕獲ヒット数のボルケーノプロット(Volcano plot)。
図5】[23] 図5:アピリモドは高親和性でPIKfyveに結合する(Kd=75pM)。
図6】[24] 図6:腎淡明細胞癌細胞系769−PにおけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=44nM(n=2)。
図7】[25] 図7:腎淡明細胞癌細胞系RCC−MFにおけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=8nM(n=2)。
図8】[26] 図8:腎淡明細胞癌細胞系RCC−ERにおけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=9nM(n=2)。
図9】[27] 図9:腎淡明細胞癌細胞系RCC−FG2におけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=32nM(n=2)。
図10】[28] 図10:腎淡明細胞癌細胞系RCC−JFにおけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=60nM(n=2)。
図11】[29] 図11:腎淡明細胞癌細胞系786−OにおけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=71nM(n=2)。
図12】[30] 図12:腎淡明細胞癌細胞系A704におけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=11nM(n=2)。
図13】[31] 図13:腎淡明細胞癌細胞系RCC−JWにおけるLAM−002の抗増殖活性,平均IC50=27nM(n=2)。
図14】[32] 図14:RCC−ER細胞におけるLAM−002+ソラフェニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(combination index)(CI)値の決定。
図15】[33] 図15:RCC−FG2細胞におけるLAM−002+ソラフェニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)の決定。
図16】[34] 図16:RCC−MF細胞におけるLAM−002+ソラフェニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)値の決定。
図17】[35] 図17:769−P細胞におけるLAM−002+ソラフェニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)値の決定。
図18】[36] 図18:RCC−ER細胞におけるLAM−002+パゾパニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)の値決定。
図19】[37] 図19:RCC−FG2細胞におけるLAM−002+パゾパニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)値の決定。
図20】[38] 図20:RCC−MF細胞におけるLAM−002+パゾパニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)値の決定。
図21】[39] 図21:769−P細胞におけるLAM−002+パゾパニブの組合わせ(5日間のアッセイ)。A,細胞生存率(%)を示す棒グラフ;B,ED50、ED75およびED90における組合わせ指数(CI)値の決定。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[40] 本開示は、下記のような処置を必要とする対象、好ましくはヒト対象において、腎癌を処置するためのアピリモドの使用に関連する組成物および方法を提供する。本開示は、一般に、リンパ由来および非リンパ由来の両範囲の癌細胞、たとえば腎癌に対する、アピリモドの予想外の細胞毒性、すなわちアピリモドの既知の免疫調節活性およびIL−12/23阻害活性に明らかには関連しない、あるいはそれらから予測できない活性の知見に基づく、アピリモドの新規使用に関する。
【0022】
[41] さらに、本開示は、アピリモドおよび少なくとも1種類の追加の療法剤を用いる併用療法に基づく、癌処置に対する新規療法を提供する。本明細書に記載する併用療法は、たとえば他の抗癌剤と併用した場合に相乗効果をもたらすことが示されたアピリモドの特異な細胞毒性を利用する。
【0023】
[42] 本明細書中で用いる用語“アピリモド”は、アピリモドそのもの(すなわち、アピリモド遊離塩基)を表わすことができ、あるいは後記のようにアピリモドの医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログまたは誘導体を含むことができる。アピリモドの構造を式Iに示す。
【0024】
【化1】
【0025】
[43] アピリモドの化学名は、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン(IUPAC名:(E)−4−(6−(2−(3−メチルベンジリデン)ヒドラジニル)−2−(2−(ピリジン−2−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)モルホリン)であり、CAS番号は541550−19−0である。
【0026】
[44] アピリモドは、たとえばU.S. Patent No. 7,923,557および7,863,270、ならびにWO 2006/128129に記載された方法に従って製造できる。
[45] 本明細書中で用いる用語“医薬的に許容できる塩”は、たとえばアピリモドの酸性基および塩基性基から形成される塩である。具体的な塩類には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クロリド、ブロミド、ヨージド、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(たとえば、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))。
【0027】
[46] 用語“医薬的に許容できる塩”は、酸性官能基、たとえばカルボン酸官能基をもつアピリモド組成物と医薬的に許容できる無機塩基または有機塩基から製造される塩をも表わす。
【0028】
[47] 用語“医薬的に許容できる塩”は、塩基性官能基、たとえばアミノ官能基をもつアピリモドと医薬的に許容できる無機酸または有機酸から製造される塩をも表わす。
[48] 本明細書に記載する化合物の塩類は、親化合物から、一般的な化学的方法、たとえば下記に記載された方法により合成できる:Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Hemrich Stalil (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, August 2002。一般に、そのような塩類は、親化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)と適宜な酸を水中もしくは有機溶媒中、または両者の混合物中で反応させることにより製造できる。
【0029】
[49] 本明細書に記載する化合物のある塩形を、当業者に周知の方法により遊離塩基に、また所望により他の塩形に変換できる。たとえば、遊離塩基はアミン固定相を収容したカラム(たとえば、Strata−NHカラム)に塩溶液を通すことにより形成できる。あるいは、水中の塩溶液を炭酸水素ナトリウムで処理して塩を分解し、遊離塩基を析出させることができる。次いでその遊離塩基を常法により他の酸と結合させることができる。
【0030】
[50] 本明細書中で用いる用語“多型”は、本開示の化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)またはその複合体の固体結晶形態を意味する。同一化合物の異なる多型は異なる物理的、化学的および/または分光分析特性を示す可能性がある。異なる物理的特性には、安定性(たとえば、熱または光に対するもの)、圧縮適性および密度(配合および製品製造において重要)、および溶解速度(それは生物学的利用能に影響を及ぼす可能性がある)が含まれるが、これらに限定されない。安定性の相異は下記の変化から生じる可能性がある:化学反応性(たとえば、酸化較差;それによって、剤形はある多型から構成される場合に他の多型から構成される場合より急速に変色する)もしくは機械的特性(たとえば、動態力学的に好ましい多型がより熱力学的に安定な多型に変換するのに伴なって、錠剤は貯蔵に際して崩壊する)または両者(たとえば、ある多型の錠剤は高湿度ではより分解しやすい)。多型の異なる物理的特性は、それらの加工に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、ある多型は、たとえばそれの粒子の形状または粒度分布のため、他の多型より溶媒和物を形成する傾向がより大きく、あるいは濾過または洗浄して不純物を除くのがより困難である可能性がある。
【0031】
[51] 本明細書中で用いる用語“水和物”は、本開示の化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)またはその塩が、さらに非共有結合分子間力により結合した化学量論的量または非−化学量論的量の水を含むものを意味する。
【0032】
[52] 本明細書中で用いる用語“包接化合物”は、空間(たとえば、チャネル)を含む結晶格子の形態の本開示の化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)またはその塩が、内部にトラップされたゲスト分子(たとえば、溶媒または水)をもつものを意味する。
【0033】
[53] 本明細書中で用いる用語“プロドラッグ”は、本明細書に記載する化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)の誘導体であって、生物学的条件下で(インビトロまたはインビボで)加水分解、酸化または他の様式で反応して本開示の化合物を供給できるものを意味する。プロドラッグは生物学的条件下でのそのような反応に際して初めて活性になる場合があり、あるいはそれらはそれらの未反応形態で活性をもつ場合がある。本開示において考慮されるプロドラッグの例には、本明細書に記載する化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)のアナログまたは誘導体であって、生加水分解性(biohydrolyzable)部分、たとえば生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェートアナログが含まれるが、これらに限定されない。プロドラッグの他の例には、本明細書に開示するいずれかの式の化合物の誘導体であって、−NO、−NO、−ONO、または−ONO部分を含むものが含まれる。プロドラッグは、一般に、周知の方法、たとえばBurger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff ed., 5th ed)に記載されたものを用いて製造できる。
【0034】
[54] 本明細書中で用いる用語“溶媒和物”または“医薬的に許容できる溶媒和物”は、本明細書に記載する化合物の1つ(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)への1個以上の溶媒分子の会合から形成された溶媒和物である。溶媒和物という用語には、水和物(たとえば、半−水和物、1水和物、2水和物、3水和物、4水和物など)が含まれる。
【0035】
[55] 本明細書中で用いる用語“アナログ”は、構造的には他と類似するけれども組成においてわずかに異なる化学物質を表わす(1個の原子が異なる元素の原子により置き換えられた場合、または特定の官能基が存在する場合、または1つの官能基が他の官能基により置き換えられた場合のように)。よって、アナログは、機能および外観においては基準化合物と類似または同等であるけれども構造または由来においてはそうでない化合物である。本明細書中で用いる用語“誘導体”は、共通のコア構造をもち、本明細書に記載する種々の基で置換された化合物を表わす。
【0036】
処置方法
[56] 本開示は、療法有効量のアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を対象に投与することにより、処置の必要がある対象において腎癌を処置するための方法を提供する。
一態様において、腎癌は腎細胞癌(renal cell carcinoma)(RCC)である。一態様において、腎細胞癌は、淡明細胞腎細胞癌、乳頭状腎細胞癌(papillary renal cell carcinoma)、色素嫌性腎細胞癌(chromophobe renal cell carcinoma)、他の稀少タイプの腎細胞癌(たとえば、集合管RCC、多房性嚢胞(multilocular cystic)RCC、髄様癌(medullary carcinoma)、粘液管状および紡錘細胞癌(mucinous tubular and spindle cell carcinoma)、神経芽腫随伴(neuroblastoma-associated)RCC、未分類の腎細胞癌)、および転移性RCCからなる群から選択される。一態様において、腎癌は移行上皮癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺癌、膨大細胞腫、および血管筋脂肪腫からなる群から選択される。
【0037】
[57] 本開示はまた、癌の処置のための併用療法を含む方法を提供する。本明細書中で用いる“併用療法(combination therapy)”または“共療法(co-therapy)”は、アピリモドと追加の有効薬剤との共作用からの有益な効果を得ることを意図した特定の処置計画の一部として、療法有効量のアピリモドを投与することを含む。少なくとも1種類の追加薬剤は、療法剤または非療法剤であってもよい。組合わせの有益な効果には療法化合物の組合わせから生じる薬物動態的または薬力学的な共作用が含まれるが、これらに限定されない。組合わせの有益な効果は、組合わせ中の他の薬剤に関連する毒性、副作用または有害事象の緩和にも関係する可能性がある。“併用療法”は、意図または予測しなかった有益な効果を偶発的または恣意的に生じる2種類以上のこれらの療法化合物を別個の単剤療法計画の一部として投与することを含まないものとする。
【0038】
[58] 少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、療法剤、たとえば抗癌剤もしくは癌化学療法剤、または非療法剤、およびその組合わせであってもよい。療法剤に関して、組合わせの有益な効果には療法有効化合物の組合わせから生じる薬物動態的または薬力学的な共作用が含まれるが、これらに限定されない。非療法剤に関して、組合わせの有益な効果は組合わせ中の療法有効化合物に関連する毒性、副作用、または有害事象の緩和に関係する可能性がある。
【0039】
[59] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は、アピリモド組成物の1以上の副作用、すなわち吐き気、嘔吐、頭痛、めまい(dizziness)、立ちくらみ(lightheadedness)、眠気(drowsiness)およびストレスのいずれかから選択される1以上の副作用を緩和する非療法剤である。この態様の一側面において、非療法剤はセロトニン受容体(5−ヒドロキシトリプタミン受容体または5−HT受容体としても知られる)のアンタゴニストである。一側面において、非療法剤は5−HTまたは5−HT1a受容体のアンタゴニストである。一側面において、非療法剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン(dolasetron)およびパロノセトロンからなる群から選択される。他の側面において、非療法剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0040】
[60] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は療法剤である。一態様において、療法剤は後記に‘併用療法’でより詳細に記載する抗癌剤である。
[61] 併用療法に関して、アピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体の投与は、1種類以上の追加の有効薬剤と同時またはそれの投与後であってもよい。他の態様において、併用療法の異なる成分の投与は異なる頻度であってもよい。1種類以上の追加薬剤を、本開示の化合物の投与の前(たとえば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前、または12週間前)、それと同時、またはその後(たとえば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後、または12週間後)に投与することができる。
【0041】
[62] より詳細に本明細書に記載するように、1種類以上の追加の有効薬剤をアピリモドとの共投与のために単一剤形中に配合することができる。1種類以上の追加の有効薬剤を、アピリモドを含む剤形とは別個に投与することができる。アピリモドを含む剤形とは別個に追加の有効薬剤を投与する場合、それはアピリモドと同一または異なる投与経路によるものであってよい。
【0042】
[63] 好ましくは、アピリモドを含む組成物を1種類以上の追加薬剤と組み合わせて投与することにより、処置される対象において相乗的応答が得られる。これに関して、用語“相乗的”は、組合わせの有効性がいずれかの単剤療法のみの相加効果より有効であることを表わす。本開示による併用療法の相乗効果によって、組合わせ中の少なくとも1種類の薬剤を、その組合わせ以外のそれの用量および/または頻度と比較してより低い投与量および/またはより少ない投与頻度で使用できる。組合わせのさらに他の有益な効果は、組合わせ中のいずれかの療法を単独で使用すること(単剤療法とも呼ばれる)に関連する有害または目的外の副作用が回避または低減されることに現われる可能性がある。
【0043】
[64] “併用療法”は、本開示の化合物を1以上の非薬物療法(たとえば、外科処置または放射線処置)とのさらなる組合わせで投与することをも含む。併用療法がさらに非薬物処置を含む場合、療法用化合物と非薬物処置の組合わせの共作用からの有益な効果が達成される限り、非薬物処置はいずれか適切な時点で実施できる。たとえば、適切な場合、療法用化合物の投与から非薬物処置を時間的におそらく数日または数週間すら離した場合にもなお、有益な効果が達成される。
【0044】
[65] 非薬物処置は、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、抗エストロゲン療法、遺伝子療法、外科処置(たとえば、根治的腎切除、部分腎切除、腹腔鏡およびロボット式の外科処置)、高周波切除、および凍結切除から選択できる。たとえば、非薬物療法は卵巣摘除(たとえば、体内のエストロゲンのレベルを低減するために)、胸郭穿刺術(thoracentesis)(たとえば、胸腔から体液を排除するために)、穿刺術(paracentesis)(たとえば、腹腔から体液を排除するために)、血管筋脂肪腫を摘除または縮小するための外科処置、肺移植(および、移植による感染を阻止するために場合により抗生物質と共に)、または酸素療法(たとえば、両鼻孔に配置される2つの細いプラスチックチューブまたはプロング(prong)を含む鼻カニューレによる、鼻と口にフィットするフェイスマスクによる、あるいは首の前部を通して気管に挿入された細いチューブ(経気管酸素療法とも呼ばれる)による)から選択できる。
【0045】
[66] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、立ちくらみ、眠気およびストレスのいずれかから選択されるアピリモドの1以上の副作用を緩和する薬剤である。この態様の一側面において、追加薬剤はセロトニン受容体(5−ヒドロキシトリプタミン受容体または5−HT受容体としても知られる)のアンタゴニストである。一側面において、追加薬剤は5−HTまたは5−HT1a受容体のアンタゴニストである。一側面において、薬剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロンおよびパロノセトロンからなる群から選択される。他の側面において、薬剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0046】
[67] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は抗癌剤である。一態様において、抗癌剤はタキソール(taxol)、ビンクリスチン、ドキソルビシン、テムシロリムス、カルボプラチン(carboplatin)、オファツムマブ(ofatumumab)、リツキシマブ、およびその組合わせから選択される。
【0047】
[68] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は、クロラムブシル(chlorambucil)、イホスファミド(ifosphamide)、ドキソルビシン、メサラジン(mesalazine)、サリドマイド(thalidomide)、レナリドミド(lenalidomide)、テムシロリムス、エベロリムス、フルダラビン(fludarabine)、フォスタマチニブ(fostamatinib)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、オファツムマブ、リツキシマブ、デキサメタゾン(dexamethasone)、プレゾニゾン(prednisone)、CAL−101、イブリツモマブ(ibritumomab)、トシツモマブ(tositumomab)、ボルテゾミブ(bortezomib)、ペントスタチン(pentostatin)、エンドスタチン(endostatin)、またはその組合わせから選択される。
【0048】
[69] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は、Afinitor(エベロリムス)、アルデスロイキン(Aldesleukin)、Avastin(ベバシズマブ)、アキシチニブ、ベバシズマブ、エベロリムス、IL−2(アルデスロイキン)、Inlyta(アキシチニブ)、インターロイキン−2(アルデスロイキン)、Nexavar(トシル酸ソラフェニブ)、塩酸パゾパニブ、Proleukin(アルデスロイキン)、トシル酸ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ(Sunitinib Malate)、Sutent(リンゴ酸スニチニブ)、テムシロリムス、Torisel(テムシロリムス)、Votrient(塩酸パゾパニブ)、またはその組合わせから選択される。
【0049】
[70] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は標的療法を指向し、その際、処置は癌の特異的な遺伝子、タンパク質、または癌の増殖および生存に寄与する組織環境をターゲットとする。このタイプの処置は、癌細胞の増殖および拡散を遮断し、一方で健康な細胞に対する損傷を制限する。
【0050】
[71] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は抗−血管新生療法を指向し、その際、処置は新たな血管を作成するプロセスである血管新生を停止させることに注目する。腫瘍は血管により送達される栄養素を増殖および拡散のために必要とするので、抗−血管新生療法の目標は腫瘍を“餓死”させることである。抗−血管新生薬の1つであるベバシズマブ(Avastin)は、転移性腎癌を伴う者の腫瘍増殖速度を低下させることが示された。ベバシズマブはインターフェロンとの組合わせで腫瘍の増殖および拡散速度を低下させる。
【0051】
[72] 一態様において、少なくとも1種類の追加薬剤は免疫療法(生物学的療法とも呼ばれる)を指向し、癌と戦うために身体の自然防御を追加免疫するようにデザインされる。それは、免疫系を改善、ターゲティングまたは再建するために身体によりまたは実験室で作られた物質を使用する。たとえば、インターロイキン−2(IL−2)は、AM0010およびインターロイキン−15と同様に、腎癌を処置するために用いられている薬物である。それらは白血球により産生されるサイトカインと呼ばれる細胞性ホルモンであり、腫瘍細胞の破壊を含めた免疫系の機能に重要である。アルファ−インターフェロンは、拡散した腎癌を処置するために用いられる他のタイプの免疫療法である。インターフェロンは癌細胞の表面のタンパク質を変化させ、それらの増殖速度を低下させると思われる。進行した腎癌を伴う患者についてIL−2およびアルファ−インターフェロンを化学療法と組み合わせた多くの併用療法がIL−2またはインターフェロン単独より有効である。
【0052】
[73] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加薬剤はPD−1/PDL−1経路阻害剤である。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(Keytruda)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(MK−3475)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0053】
[74] 他の例は、チェックポイント阻害剤と呼ばれる化合物である。これらの化合物による処置は、免疫応答に対するチェックおよびバランスとして作用する分子をターゲティングすることにより作動する。これらの処置は、これらの阻害分子をブロックすることにより、あるいは刺激分子を活性化することにより、既存の抗癌免疫応答を解放または増強するようにデザインされる。種々の抗体は、PD−1、抗−CD27、B7−H3、KIR、LAG−3、4−1BB/CD137、およびGITRを含む。代表的薬剤には、ペンブロリズマブ(Keytruda,MK−3475,PD−1抗体)、MPDL3280A(PD−L1抗体)、バルリルマブ(varlilumab)(CDX−1127,抗−CD27抗体)、MGA217(B7−H3をターゲティングする抗体)、リリルマブ(lirilumab)(KIR抗体)、BMS−986016(LAG−3抗体)、ウレルマブ(urelumab)(4−1BB/CD137抗体)、TRX518(GITR抗体)、およびMK−4166(GITR抗体)が含まれる。
【0054】
[75] 他の例は、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘発し、免疫系を助成してこれらの抗原を保有する癌細胞を攻撃するようにデザインされた、癌ワクチンである。代表的薬剤は、AGS−003、DCVax、およびNY−ESO−1である。
【0055】
[76] 他の例は、免疫系の抗癌応答を改善することを目標として、免疫細胞を患者から取り出し、遺伝子修飾して、あるいは化学物質で処理して、それらの活性を増強し、次いで患者に再導入するものである。
【0056】
[77] 本明細書に記載する方法に関して、対象に投与するアピリモドの量は療法有効量である。用語“療法有効量”は、処置される疾患もしくは障害を処置し、その症状を軽減し、重症度を低減し、もしくは期間を短縮し、または他の療法の療法効果を増強もしくは改善するのに十分な量、あるいは対象において検出可能な効果を示すのに十分な量を表わす。一態様において、アピリモド組成物の療法有効量は、PIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量である。
【0057】
[78] アピリモドの療法有効量は、約0.001mg/kgから約1000mg/kgまで、約0.01mg/kgから約100mg/kgまで、約10mg/kgから約250mg/kgまで、約0.1mg/kgから約15mg/kgまでの範囲;または範囲の下限が0.001mg/kg〜900mg/kgのいずれかの量であり、範囲の上限が0.1mg/kg〜1000mg/kgのいずれかの量であるいずれかの範囲であってもよい(たとえば、0.005mg/kg〜200mg/kg、0.5mg/kg〜20mg/kg)。当業者に認識されるように、有効量は処置される疾患、投与経路、賦形剤の使用、および他の療法処置との共使用、たとえば他の薬剤の使用の可能性によっても変動するであろう。たとえば、U.S. Patent No. 7,863,270を参照;本明細書に援用する。
【0058】
[79] より具体的な側面において、アピリモドを30〜1000mg/日(たとえば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、または300mg/日)、少なくとも1週間(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、36、48、またはそれ以上の週間)の投与計画で投与する。好ましくは、アピリモドを100〜1000mg/日、4または16週間の投与計画で投与する。あるいは、または続いて、アピリモドを100mg〜300mg、1日2回、8週間または所望により52週間の投与計画で投与する。あるいは、または続いて、アピリモド組成物を50mg〜1000mg、1日2回、8週間または所望により52週間の投与計画で投与する。
【0059】
[80] 有効量のアピリモド組成物を、1日1回、1日2〜5回、最大で1日2回、または最大で1日3回、または最大で1日8回、投与することができる。一態様において、アピリモド組成物を、1日3回、1日2回、1日1回、14日間のオン(投薬)(1日4回、1日3回、または1日2回、または1日1回)と7日間のオフ(休薬)で3週間のサイクル、最大で5または7日間のオン(1日4回、1日3回、または1日2回、または1日1回)と14〜16日間のオフで3週間のサイクル、あるいは2日に1回、または1週間に1回、または2週間に1回、または3週間に1回、投与する。
【0060】
[81] 本明細書に記載する方法によれば、“処置の必要がある対象”は腎癌を伴う対象、または一般の集団と比較して腎癌を発症するリスクが高い対象である。処置の必要がある対象は、現在利用できる癌療法に対して“不応性”または“難治性”の対象である可能性がある。これに関して、用語“不応性”および“難治性”は、療法に対する対象の応答がその疾患または障害に関連する1以上の症状を軽減するために臨床的に適切でないことを表わす。本明細書に記載する方法の一側面において、処置の必要がある対象は、その癌が標準療法に対して難治性であるかあるいはその癌が標準処置後に再発した癌を伴う対象である。
【0061】
[82] “対象(subject)”は哺乳類を含む。哺乳類は、たとえばいずれかの哺乳類、たとえばヒト、霊長類、脊椎動物、鳥類、マウス、ラット、ニワトリ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであってもよい。用語“患者”はヒト対象を表わす。
【0062】
[83] 本開示は、本明細書に記載する腎癌の処置のための単剤療法をも提供する。本明細書中で用いる“単剤療法”は、単一の有効化合物または療法用化合物を処置の必要がある対象に投与することを表わす。
【0063】
[84] 本明細書中で用いる“処置(treatment)”、“処置すること(treating)”または“処置する(treat)”は、疾患、状態または障害に対処する目的のための患者の管理およびケアを表わし、疾患、状態または障害の症状または合併症を軽減するために、あるいは疾患、状態または障害を排除するために、アピリモドを投与することを含む。
【0064】
[85] 本明細書中で用いる“防止(prevention)”、“防止すること(preventing)”または“防止する(prevent)”は、疾患、状態または障害の症状または合併症の発症を軽減または排除することを表わし、疾患、状態または障害の症状の発症、発現または再発を低減するためにアピリモドを投与することを含む。
【0065】
[86] 一態様において、アピリモドの投与は処置される癌の症状または合併症の排除をもたらすが、癌の排除は要求されない。一態様において、症状の重症度が低減する。癌に関して、そのような症状には重症度または進行の臨床マーカーを含めることができ、それには腫瘍が増殖因子を分泌する、細胞外マトリックスを分解する、血管形成する、近位組織への接着を喪失する、または転移する程度、ならびに転移の数が含まれる。
【0066】
[87] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍のサイズの低減を生じることができる。腫瘍サイズの低減は“腫瘍退縮”とも呼ぶことができる。好ましくは、処置後に腫瘍サイズが処置前のそれのサイズと比較して5%以上、低減する;より好ましくは、腫瘍サイズが10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上またはそれ以上、低減する。腫瘍のサイズはいずれか再現性のある測定手段で測定できる。腫瘍のサイズは腫瘍の直径として測定できる。
【0067】
[88] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍体積の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に腫瘍体積が処置前のそれのサイズと比較して5%以上、低減する;より好ましくは、腫瘍体積が10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上またはそれ以上、低減する。腫瘍体積はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。
【0068】
[89] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍の数の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に腫瘍数が処置前の数と比較して5%以上、低減する;より好ましくは、腫瘍数が10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上またはそれ以上、低減する。腫瘍の数はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。腫瘍の数は肉眼または特定倍率で見える腫瘍を計数することにより測定できる。好ましくは、特定倍率は2×、3×、4×、5×、10×、または50×である。
【0069】
[90] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、原発腫瘍部位から離れた他の組織または臓器における転移病巣の数の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に転移病巣の数が処置前の数と比較して5%以上、低減する;より好ましくは、転移病巣の数が10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上またはそれ以上、低減する。転移病巣の数はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。転移病巣の数は肉眼または特定倍率で見える転移病巣を計数することにより測定できる。好ましくは、特定倍率は2×、3×、4×、5×、10×、または50×である。
【0070】
[91] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、キャリヤーのみを投与された集団と比較して処置した対象集団の平均生存時間の拡大を生じることができる。好ましくは、平均生存時間は30日より多く;より好ましくは60日より多く;より好ましくは90日より多く;最も好ましくは120日より多く、拡大する。ある集団の平均生存時間の拡大はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。ある集団の平均生存時間の拡大は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の平均生存長さを計算することにより測定できる。ある集団の平均生存時間の拡大は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置の完了後の平均生存長さを計算することによっても測定できる。
【0071】
[92] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、非処置集団と比較して処置した対象集団の平均生存時間の拡大を生じることができる。好ましくは、平均生存時間は30日より多く;より好ましくは60日より多く;より好ましくは90日より多く;最も好ましくは120日より多く、拡大する。ある集団の平均生存時間の拡大はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。ある集団の平均生存時間の拡大は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の平均生存長さを計算することにより測定できる。ある集団の平均生存時間の拡大は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置の完了後の平均生存長さを計算することによっても測定できる。
【0072】
[93] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、アピリモドではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して処置した対象集団の平均生存時間の拡大を生じることができる。好ましくは、平均生存時間は30日より多く;より好ましくは60日より多く;より好ましくは90日より多く;最も好ましくは120日より多く、拡大する。ある集団の平均生存時間の拡大はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。ある集団の平均生存時間の拡大は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の平均生存長さを計算することにより測定できる。ある集団の平均生存時間の拡大は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置の完了後の平均生存長さを計算することによっても測定できる。
【0073】
[94] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、キャリヤーのみを投与された集団と比較して処置した対象集団の死亡率の低減を生じることができる。本明細書に記載する方法に従った障害、疾患または状態の処置は、非処置集団と比較して処置した対象集団の死亡率の低減を生じることができる。本明細書に記載する方法に従った障害、疾患または状態の処置は、アピリモドではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して処置した対象集団の死亡率の低減を生じることができる。好ましくは、死亡率は2%より大きく;より好ましくは5%より大きく;より好ましくは10%より大きく;最も好ましくは25%より大きく、低減する。処置した対象の集団の死亡率の低減はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。ある集団の死亡率の低減は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することにより測定できる。ある集団の死亡率の低減は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置の完了後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することによっても測定できる。
【0074】
[95] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍増殖速度の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に腫瘍増殖速度が処置前の数と比較して少なくとも5%低減する;より好ましくは、腫瘍増殖速度が少なくとも10%低減する;より好ましくは、少なくとも20%低減する;より好ましくは、少なくとも30%低減する;より好ましくは、少なくとも40%低減する;より好ましくは、少なくとも50%低減する;よりさらに好ましくは、少なくとも50%低減する;最も好ましくは、少なくとも75%低減する。腫瘍増殖速度はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。腫瘍増殖速度は単位時間当たりの腫瘍直径の変化により測定できる。一態様において、処置後に腫瘍増殖速度はほぼゼロの可能性があり、同じサイズを維持している、たとえば腫瘍増殖が停止したと判定される。
【0075】
[96] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍の再増殖の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に腫瘍の再増殖は5%未満である;より好ましくは、腫瘍の再増殖は10%未満;より好ましくは20%未満;より好ましくは30%未満;より好ましくは40%未満;より好ましくは50%未満;よりさらに好ましくは50%未満;最も好ましくは75%未満である。腫瘍の再増殖はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。腫瘍の再増殖は、たとえば処置に伴って生じた、それ以前の腫瘍縮小の後の腫瘍直径の増大を測定することにより測定される。腫瘍の再増殖の低減は、処置を停止した後に腫瘍が再発しないことが指標となる。
【0076】
[97] 本明細書に記載する方法に従った細胞増殖性障害の処置または防止は、細胞増殖速度の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に細胞増殖速度が少なくとも5%;より好ましくは少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;よりさらに好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%低減する。細胞増殖速度はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。細胞増殖速度は、たとえば組織試料における単位時間当たりの分裂している細胞の数を測定することにより測定される。
【0077】
[98] 本明細書に記載する方法に従った増殖している細胞増殖性障害の処置または防止は、増殖している細胞の割合の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に増殖している細胞の割合が少なくとも5%;より好ましくは少なくとも10%;より好ましくは、少なくとも20%;より好ましくは、少なくとも30%;より好ましくは、少なくとも40%;より好ましくは、少なくとも50%;よりさらに好ましくは、少なくとも50%;最も好ましくは、少なくとも75%低減する。増殖している細胞の割合はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。増殖している細胞の割合は、たとえば組織試料において分裂していない細胞の数に対する分裂している細胞の数を定量することにより測定される。増殖している細胞の割合は分裂指数に等しい可能性がある。
【0078】
[99] 本明細書に記載する方法に従った細胞増殖性障害の処置または防止は、細胞増殖の領域または帯域のサイズの低減を生じることができる。好ましくは、処置後に細胞増殖の領域または帯域のサイズが処置前のそれのサイズと比較して少なくとも5%低減する;より好ましくは、少なくとも10%低減する;より好ましくは、少なくとも20%低減する;より好ましくは、少なくとも30%低減する;より好ましくは、少なくとも40%低減する;より好ましくは、少なくとも50%低減する;よりさらに好ましくは、少なくとも50%低減する;最も好ましくは、少なくとも75%低減する。細胞増殖の領域または帯域のサイズはいずれか再現性のある測定手段で測定できる。細胞増殖の領域または帯域のサイズは、細胞増殖の領域または帯域の直径または幅として測定できる。
【0079】
[100] 本明細書に記載する方法に従った細胞増殖性障害の処置または防止は、異常な外観または形態をもつ細胞の数または割合の低減を生じることができる。好ましくは、処置後に異常な形態をもつ細胞の数が処置前のそれのサイズと比較して少なくとも5%低減する;より好ましくは、少なくとも10%低減する;より好ましくは、少なくとも20%低減する;より好ましくは、少なくとも30%低減する;より好ましくは、少なくとも40%低減する;より好ましくは、少なくとも50%低減する;よりさらに好ましくは、少なくとも50%低減する;最も好ましくは、少なくとも75%低減する。異常な細胞外観または形態はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。異常な細胞形態は、たとえば倒立型組織培養顕微鏡を用いる顕微鏡検査により測定できる。異常な細胞形態は核多形成(nuclear pleiomorphism)の形態をとる可能性がある。
【0080】
[101] 本明細書中で用いる用語“選択的に”は、ある集団において他の集団より高い頻度で起きる傾向があることを意味する。比較される集団は細胞集団であってもよい。好ましくは、アピリモドは正常細胞と比較して過剰に増殖している細胞または異常に増殖している細胞に選択的に作用する。本明細書中で用いる“正常細胞”は、“細胞増殖性障害”の一部として分類できない細胞である。正常細胞は、不都合な状態または疾患の発現をもたらす可能性のある、無制御な増殖もしくは異常な増殖または両者を示さない。好ましくは、正常細胞は正常に機能している細胞周期チェックポイント制御機序を備えている。好ましくは、アピリモドは、ある分子ターゲット(たとえば、ターゲットキナーゼ)を調節するけれども他の分子ターゲット(たとえば、非ターゲットキナーゼ)を有意には調節しないように選択的に作用する。本開示はまた、酵素、たとえばキナーゼの活性を選択的に阻害する方法を提供する。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて2倍より多い頻度で起きれば、それは集団Bと対比して集団Aにおいて選択的に起きる。ある事象が集団Aにおいて5倍より多い頻度で起きれば、それは選択的に起きる。ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて10倍より多い頻度;より好ましくは50倍より多い頻度;よりさらに好ましくは100倍より多い頻度;最も好ましくは1000倍より多い頻度で起きれば、それは集団Aにおいて選択的に起きる。たとえば、罹患している細胞または過剰に増殖している細胞において正常細胞と比較して2倍より多い頻度で細胞死が起きれば、それは罹患している細胞または過剰に増殖している細胞において選択的に起きると言われるであろう。
【0081】
医薬組成物および配合物
[102] 本開示は、少なくとも1種類の医薬的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと共に、ある量のアピリモド、またはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログもしくは誘導体を含む医薬組成物を提供し、その際、その量は腎癌の処置のために有効であり、および/または癌を伴う対象の癌細胞におけるPIKfyveを阻害するのに有効である。
【0082】
[103] 一態様において、アピリモドは遊離塩基である。一態様において、アピリモドはアピリモド・ジメシレートである。
[104] 一態様において、アピリモドを少なくとも1種類の追加の有効薬剤と単一剤形中で組み合わせる。一態様において、組成物はさらに抗酸化剤を含む。
【0083】
[105] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、コルチコステロイド、およびその組合わせからなる群から選択される。一態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤はイブルチニブ、リツキシマブ、ドキソルビシン、プレドニゾロン、ビンクリスチン、ベルケード、およびエベロリムス、ならびにその組合わせからなる群から選択される療法剤である。一態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤はシクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(hydroxydaunorubicin)(ドキソルビシンまたはAdriamycin(商標)とも呼ばれる)、ビンクリスチン(Oncovin(商標)とも呼ばれる)、プレドニゾン、プレドニゾロン、およびその組合わせから選択される療法剤である。
【0084】
[106] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、アピリモドの1以上の副作用を改善するために選択された非療法剤である。一態様において、非療法剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロンおよびパロノセトロンからなる群から選択される。一態様において、非療法剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0085】
[107] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、PD−1/PD−L1阻害剤である。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(Keytruda)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(MK−3475)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0086】
[108] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の有効薬剤は、mTOR経路の阻害剤、TKI阻害剤、PI3K阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、SRC阻害剤、VEGF阻害剤、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase)(JAK)阻害剤、Raf阻害剤、Erk阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗−有糸分裂剤、多剤耐性排出阻害剤(multi-drug resistance efflux inhibitor)、抗生物質、およびサイトカインから選択される。一態様において、第2療法剤は療法用サイトカインである。一態様において、第2療法剤はインターロイキン−2である。他の態様において、第2療法剤はチロシンキナーゼ阻害剤(たとえば、エベロリムス、ベバシズマブ)から選択される。
【0087】
[109] 複数の態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシン(rapamycin)(シロリムス(sirolimus)とも呼ばれる)、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス(ridaforolimus)、ウミロリムス(umirolimus)、ゾタロリムス(zotarolimus)、AZD8055、INK128、WYE−132、Torin−1、ピラゾロピリミジンアナログPP242、PP30、PP487、PP121、KU0063794、KU−BMCL−200908069−1、Wyeth−BMCL−200910075−9b、INK−128、XL388、AZD8055、P2281、およびP529からなる群から選択される。たとえば、Liu et al. Drug Disc. Today Ther. Strateg., 6(2): 47-55 (2009)を参照。
【0088】
[110] 複数の態様において、mTOR阻害剤は、trans−4−[4−アミノ−5−(7−メトキシ−1H−インドール−2−イル)イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル]シクロヘキサンカルボン酸(OSI−027としても知られる)、ならびにそのいずれかの塩類、溶媒和物、水和物、および他の物理的形態(結晶質または非晶質)である。参照:US 2007/0112005。OSI−027はUS 2007/0112005に従って製造でき、それを本明細書に援用する。一態様において、mTOR阻害剤はOXA−01である。たとえば、WO 2013152342 A1を参照。
【0089】
[111] 複数の態様において、PI3K阻害剤は、GS−1101(イデラリシブ(Idelalisib))、GDC0941(ピクチリシブ(Pictilisib))、LY294002、BKM120(ブパルリシブ(Buparlisib))、PI−103、TGX−221、IC−87114、XL 147、ZSTK474、BYL719、AS−605240、PIK−75、3−メチルアデニン、A66、PIK−93、PIK−90、AZD6482、IPI−145(ドゥベリシブ(Duvelisib))、TG100−115、AS−252424、PIK294、AS−604850、GSK2636771、BAY 80−6946(コパンリシブ(Copanlisib))、CH5132799、CAY10505、PIK−293、TG100713、CZC24832およびHS−173からなる群から選択される。
【0090】
[112] 複数の態様において、二重PI3K/mTOR阻害剤は、GDC−094、WAY−001、WYE−354、WAY−600、WYE−687、Wyeth−BMCL−200910075−16b、Wyeth−BMCL−200910096−27、KU0063794およびKUBMCL−200908069−5、NVP−BEZ235、XL−765、PF−04691502、GDC−0980(アピトリシブ(Apitolisib))、GSK1059615、PF−05212384、BGT226、PKI−402、VS−558ならびにGSK2126458からなる群から選択される。たとえば、Liu et al. Drug Disc. Today Ther. Strateg., 6(2): 47-55 (2009)を参照, 本明細書に援用する。
【0091】
[113] 複数の態様において、mTOR経路阻害剤は、mTOR経路のタンパク質(またはタンパク質をコードする核酸)に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ロックト核酸、またはアプタマー)である。たとえば、そのポリペプチドまたは核酸は下記のものを阻害する:mTOR複合体1(mTOR Complex 1)(mTORC1)、mTORの調節関連タンパク質(regulatory-associated protein of mTOR)(Raptor)、哺乳類致死性SEC13タンパク質8(mammalian lethal with SEC13 protein 8)(MLST8)、40kDaのプロリンリッチAkt基質(proline-rich Akt substrate of 40 kDa)(PRAS40)、DEPドメイン含有mTOR相互作用タンパク質(DEP domain-containing mTOR-interacting protein)(DEPTOR)、mTOR複合体2(mTOR Complex 2)(mTORC2)、mTORのラパマイシン非感受性コンパニオン(rapamycin-insensitive companion of mTOR)(RICTOR)、Gタンパク質ベータサブユニット様(G protein beta subunit-like)(GβL)、哺乳類ストレス活性化プロテインキナーゼ相互作用タンパク質1(mammalian stress-activated protein kinase interacting protein 1)(mSIN1)、パキシリン(paxillin)、RhoA、Ras関連C3ボツリヌス毒素基質1(Ras-related C3 botulinum toxin substrate 1)(Rac1)、細胞分裂制御タンパク質42ホモログ(Cell division control protein 42 homolog)(Cdc42)、プロテインキナーゼCα(protein kinase C α)(PKCα)、セリン/トレオニンプロテインキナーゼAkt、ホスホイノシチド3−キナーゼ(phosphoinositide 3-kinase)(PI3K)、p70S6K、Ras、および/または真核細胞翻訳開始因子4E(eIF4E)−結合タンパク質(eukaryotic translation initiation factor 4E (eIF4E)-binding proteins)(4EBP類)、あるいはこれらのタンパク質のうちの1つをコードする核酸。
【0092】
[114] 複数の態様において、SRC阻害剤は、ボスチニブ(bosutinib)、サラカチニブ(saracatinib)、ダサチニブ(dasatinib)、ポナチニブ(ponatinib)、KX2−391、XL−228、TG100435/TG100855、およびDCC2036からなる群から選択される。たとえば、Puls et al. Oncologist. 2011 May; 16(5): 566-578を参照。一態様において、SRC阻害剤は、SRCタンパク質またはSRCタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ロックト核酸、またはアプタマー)である。
【0093】
[115] 複数の態様において、VEGF阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、パゾパニブ(pazopanib)、アキシチニブ、ソラフェニブ(sorafenib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、レンバチニブ(lenvatinib)、およびモテサニブ(motesanib)から選択される。一態様において、VEGF阻害剤は、VEGFタンパク質、VEGF受容体タンパク質、またはこれらのタンパク質のうちの1つをコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ(morpholino)、ロックト核酸、またはアプタマー)である。たとえば、VEGF阻害剤は可溶性VEGF受容体(たとえば、可溶性VEGF−C/D受容体(sVEGFR−3))である。
【0094】
[116] 複数の態様において、JAK阻害剤は、ファシチニブ(facitinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、バリシチニブ(baricitinib)、CYT387(CAS番号1056634−68−4)、レスタウルチニブ(lestaurtinib)、パクリチニブ(pacritinib)、およびTG101348(CAS番号936091−26−8)から選択される。一態様において、JAK阻害剤は、JAK(たとえば、JAK1、JAK2、JAK3、またはTYK2)またはJAKタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)である。
【0095】
[117] 複数の態様において、Raf阻害剤は、PLX4032(ベムラフェニブ(vemurafenib))、ソラフェニブ、PLX−4720、GSK2118436(ダブラフェニブ(dabrafenib))、GDC−0879、RAF265、AZ 628、NVP−BHG712、SB90885、ZM 336372、GW5074、TAK−632、CEP−32496およびLGX818(エンコラフェニブ(Encorafenib))から選択される。一態様において、Raf阻害剤は、Raf(たとえば、A−Raf、B−Raf、C−Raf)またはRafタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)である。一態様において、MEK阻害剤は、AZD6244(セルメチニブ(Selumetinib))、PD0325901、GSK1120212(トラメチニブ(Trametinib))、U0126−EtOH、PD184352、RDEA119(ラファメチニブ(Rafametinib))、PD98059、BIX 02189、MEK162(ビニメチニブ(Binimetinib))、AS−703026(ピマセルチブ(Pimasertib))、SL−327、BIX02188、AZD8330、TAK−733およびPD318088から選択される。一態様において、MEK阻害剤は、MEK(たとえば、MEK−1、MEK−2)またはMEKタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)である。
【0096】
[118] 複数の態様において、Akt阻害剤は、MK−2206、KRX−0401(ペリホシン(perifosine))、GSK690693、GDC−0068(イパタセルチブ(Ipatasertib))、AZD5363、CCT128930、A−674563、PHT−427から選択される。一態様において、Akt阻害剤は、Akt(たとえば、Akt−1、Akt−2、Akt−3)またはAktタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)である。
【0097】
[119] 複数の態様において、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、LB42708またはティピファルニブ(tipifarnib)から選択される。一態様において、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼまたはファルネシルトランスフェラーゼタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)である。一態様において、ヒストン調節型阻害剤(histone modulating inhibitor)は、アナカルジン酸(anacardic acid)、C646、MG149(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)、GSK J4 Hcl(ヒストンデメチラーゼ)、GSK343(EZH2に対して活性)、BIX 01294(ヒストンメチルトランスフェラーゼ)、MK0683(ボリノスタット(Vorinostat))、MS275(エンチノスタット(Entinostat))、LBH589(パノビノスタット(Panobinostat))、トリコスタチン(Trichostatin)A、MGCD0103(モセチノスタット(Mocetinostat))、タスキニモド(Tasquinimod)、TMP269、ネクスチュラスタット(Nexturastat)A、RG2833、PDX101(ベリノスタット(Belinostat))から選択される。
【0098】
[120] 複数の態様において、抗−有糸分裂剤は、グリセオフルビン(Griseofulvin)、酒石酸ビノレルビン(vinorelbine tartrate)、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン(vinblastine)、エポチロン(Epothilone)A、エポチロンB、ABT−751、CYT997(レキシブリン(Lexibulin))、酒石酸ビンフルニン(vinflunine tartrate)、フォスブレタブリン(Fosbretabulin)、GSK461364、ON−01910(リゴセルチブ(Rigosertib))、Ro3280、BI2536、NMS−P937、BI 6727(ボラセルチブ(Volasertib))、HMN−214およびMLN0905から選択される。
【0099】
[121] 複数の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、ボトリエント(Votrient)、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カルフィルゾミブ(Carfilzomib)、クリゾチニブ(Crizotinib)、ダブラフェニブ、ダサチニブ(Dasatinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、イブルチニブ、イマチニブ(Imatinib)、ラパチニブ(Lapatinib)、ニロチニブ(Nilotinib)、ペガプタニブ(Pegaptanib)、ポナチニブ、レゴラチニブ、ルクソリチニブ(Ruxolitinib)、ソラフェニブ、スニチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ(Vandetanib)、ベムラフェニブ、およびビスモデギブ(Vismodegib)から選択される。
【0100】
[122] 一態様において、ポリエーテル系抗生物質は、モネンシンナトリウム(sodium monensin)、ニゲリシン(nigericin)、バリノマイシン(valinomycin)、サリノマイシン(salinomycin)から選択される。
【0101】
[123] “医薬組成物”は、本明細書に記載する化合物を、対象に投与するのに適した医薬的に許容できる形態で含有する配合物である。本明細書中で用いる句“医薬的に許容できる”は、堅実な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当なリスク・ベネフィット比に相応して、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、物質、組成物、キャリヤー、および/または剤形を表わす。
【0102】
[124] “医薬的に許容できる賦形剤”は、医薬組成物を調製するのに有用な、一般的に安全、無毒性であり、かつ生物学的にも他の点でも不都合でない賦形剤を意味し、動物医療用にもヒトの医療用にも許容できる賦形剤を含む。医薬的に許容できる賦形剤の例には、限定ではなく、無菌の液体である水、緩衝塩類、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油類、界面活性剤、懸濁化剤、炭水化物(たとえば、グルコース、ラクトース、スクロースまたはデキストラン)、抗酸化剤(たとえば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート化剤、低分子量タンパク質、またはその適切な混合物が含まれる。
【0103】
[125] 医薬組成物はバルクまたは単位剤形で供給できる。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、医薬組成物を単位剤形で配合することが特に有利である。本明細書中で用いる用語“単位剤形”は、処置される対象のための単位投与量として適した物理的に分離した単位を表わす;各単位は、目的とする療法効果を生じるように計算された前決定量の有効化合物を必要な医薬用キャリヤーと共に含有する。本開示の単位剤形についての詳細は、有効化合物の独自の特性および達成すべき特定の療法効果によって支配され、それらに直接依存する。単位剤形は、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣丸、錠剤、カプセル剤、IVバッグ、またはエアゾールインヘラーにおける1回の圧出であってもよい。
【0104】
[126] 療法適用に際して、投与量は、選択した投与量に影響を及ぼす他の要因のうち、特に薬剤、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床状態、ならびにその療法を施す臨床医または専門医の経験および判断に応じて変動する。一般に、用量は療法有効量であるべきである。投与量はmg/kg/日の測定単位で提示できる(その用量は患者の体重kg、体表面積m、および年齢に合わせることができる)。医薬組成物の有効量は、臨床医または資格をもつ他の観察者が認めるような客観的に同定できる改善をもたらすものである。たとえば、障害、疾患または状態の症状の軽減。本明細書中で用いる用語“有効投与量”は、対象または細胞において目的とする生物学的効果を生じる医薬組成物の量を表わす。
【0105】
[127] たとえば、単位剤形は1ナノグラム〜2ミリグラム、もしくは0.1ミリグラム〜2グラム;または10ミリグラムから1グラムまで、または50ミリグラムから500ミリグラムまで、または1マイクログラムから20ミリグラムまで;または1マイクログラムから10ミリグラムまで;または0.1ミリグラムから2ミリグラムまでを含むことができる。
【0106】
[128] 医薬組成物は、いずれか希望する経路(たとえば、肺、吸入、鼻内、経口、口腔、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜腔内、クモ膜下、経皮、経粘膜、直腸など)による投与のためのいずれか適切な形態をとることができる(たとえば、液体、エアゾール剤、液剤、吸入剤、ミスト剤(mist)、スプレー剤;または固体、散剤、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、パッチ剤など)。たとえば、本開示の医薬組成物は、吸入または吹入によるエアゾール投与(口または鼻を通した)のための水溶液または粉末の形態;経口投与のための錠剤またはカプセル剤の形態;直接注射によるかまたは静脈内注入用の無菌注入液への添加によるいずれかの投与に適した無菌水性液剤または分散液剤の形態;あるいは経皮または経粘膜投与のためのローション剤、クリーム剤、発泡製剤、パッチ剤、懸濁液剤、液剤、または坐剤の形態であってもよい。
【0107】
[129] 医薬組成物は経口用として許容できる剤形の形態であってもよく、それにはカプセル剤、錠剤、口腔剤形、トローチ剤、ロゼンジ、および乳剤、水性懸濁液剤、分散液剤または液剤の形態の経口液体が含まれるが、これらに限定されない。カプセル剤は、本開示の化合物と、不活性な増量剤および/または希釈剤、たとえば医薬的に許容できるデンプン(たとえば、トウモロコシ、バレイショまたはタピオカのデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末状のセルロース、たとえば結晶質および微結晶質セルロース、穀粉、ゼラチン、ガムなどとの混合物を収容することができる。経口用錠剤の場合、慣用されるキャリヤーには、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムも添加できる。カプセル剤の形態での経口投与のために、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁液剤および/また乳剤を経口投与する場合、乳化剤および/または懸濁化剤と混和した油相に本開示の化合物を懸濁または溶解することができる。所望により、ある甘味料および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0108】
[130] 医薬組成物は錠剤の形態であってもよい。錠剤は、単位量の本開示の化合物を、不活性な希釈剤またはキャリヤー、たとえば糖または糖アルコール、たとえばラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトールと一緒に含むことができる。錠剤はさらに非糖由来の希釈剤、たとえば炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはセルロースもしくはその誘導体、たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン、たとえばトウモロコシデンプンを含むことができる。錠剤はさらに、結合剤および造粒剤、たとえばポリビニルピロリドン、崩壊剤(たとえば膨潤性の架橋ポリマー、たとえば架橋カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(たとえば、ステアレート)、保存剤(たとえば、パラベン類)、抗酸化剤(たとえば、BHT)、緩衝剤(たとえば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤、たとえばシトレート/バイカーボネート混合物を含むことができる。
【0109】
[131] 錠剤はコーティング錠であってもよい。コーティングは、保護膜コーティング(たとえば、ろうまたはワニス)、または有効薬剤の放出を制御するためにデザインされた、たとえば遅延放出(摂取後の前決定した遅滞時間後に有効薬剤を放出)もしくは胃腸管内の特定位置での放出のためのコーティングであってもよい。後者は、たとえば腸溶膜コーティング、たとえば商品名Eudragit(登録商標)で販売されているものを用いて達成できる。
【0110】
[132] 錠剤配合物は一般的な圧縮法、湿式造粒法または乾式造粒法により調製でき、医薬的に許容できる希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤を使用し、それにはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アラビアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉末糖が含まれるが、これらに限定されない。好ましい表面改質剤には、非イオンおよびアニオン表面改質剤が含まれる。表面改質剤の代表例には、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール(cetomacrogol)系乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
[133] 医薬組成物はハードまたはソフトゼラチンカプセル剤の形態であってもよい。この配合によれば、本開示の化合物は固体、半固体または液体の形態であってもよい。
[134] 医薬組成物は、非経口投与に適した無菌の水性液剤または分散液剤であってもよい。本明細書中で用いる非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、クモ膜下、病巣内および頭蓋内への注射法または注入法を含む。
【0112】
[135] 医薬組成物は、直接注射によるかまたは静脈内注入用の無菌注入液への添加による投与のいずれかに適した、無菌の水性液剤または分散液剤の形態であってもよく、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、その適切な混合物、または1種類以上の植物油を含有する溶媒または分散媒を含む。遊離塩基または医薬的に許容できる塩としての本開示の化合物の液剤または懸濁液剤は、適切に界面活性剤と混合した水中に調製できる。適切な界面活性剤の例を後記に挙げる。分散液剤も、たとえばグリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中におけるそれの混合物中に調製できる。
【0113】
[136] 本開示の方法に使用するための医薬組成物は、配合物中に存在するいずれかのキャリヤーまたは希釈剤(たとえば、ラクトースまたはマンニトール)のほかに、さらに1種類以上の添加剤を含むことができる。この1種類以上の添加剤は、1種類以上の界面活性剤を含むかまたはそれからなることができる。界面活性剤は一般に1以上の長い脂肪族鎖、たとえば脂肪酸をもち、それによりそれらは細胞の脂質構造中へ直接挿入されて薬物の透過および吸収を増強することができる。界面活性剤の相対的な親水性および疎水性を特徴づけるために一般に用いられる経験的パラメーターは、親水性−疎水性バランス(“HLB”値)である。より低いHLB値をもつ界面活性剤はより疎水性であって油中においてより大きな溶解度をもち、一方、より高いHLB値をもつ界面活性剤はより親水性であって水溶液中においてより大きな溶解度をもつ。よって、親水性界面活性剤は一般に約10より大きいHLB値をもつ化合物であるとみなされ、疎水性界面活性剤は一般に約10より小さいHLB値をもつものである。しかし、多くの界面活性剤についてHLB値はHLB値を決定するために選択する経験的方法に応じて約8HLB単位も異なる可能性があるので、これらのHLB値は指標にすぎない。
【0114】
[137] 本開示の組成物中に使用する界面活性剤には、下記のものが含まれる:ポリエチレングリコール(PEG)−脂肪酸ならびにPEG−脂肪酸モノおよびジエステル、PEGグリセロールエステル、アルコール−油エステル交換生成物、ポリグリセリル脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステロールおよびステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖およびそれの誘導体、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、脂溶性ビタミンおよびそれらの塩類、水溶性ビタミンおよびそれらの両親媒性誘導体、アミノ酸およびそれらの塩類、ならびに有機酸およびそれらのエステルおよび無水物。
【0115】
[138] 本開示はまた、本開示の方法に使用するための医薬組成物を含むパッケージングおよびキットを提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、および注射器からなる群から選択される1以上の容器を含むことができる。キットはさらに、本開示の疾患、状態または障害を治療および/または防止する際に使用するための1以上の指示、1以上の注射器、1以上のアプリケーター、または本開示の医薬組成物を再構成するのに適した無菌溶液を含むことができる。
【0116】
[139] 本明細書中で用いるすべてのパーセントおよび比率は、別に指示しない限り、重量による。本開示の他の特徴および利点は種々の例から明らかである。提示した例は、本開示を実施するのに有用な種々の成分および方法を示す。それらの例は特許請求の範囲に示す開示を限定しない。本開示に基づいて、当業者は本開示を実施するのに有用な他の成分および方法を同定および利用できる。
【実施例】
【0117】
実施例1:アピリモドはTSC2ヌル細胞増殖の高選択的阻害剤である
[140] TSC2 −/− マウス胚線維芽(mouse embryonic fibroblast)(MEF−EV)細胞を用いるハイスループット細胞生存率スクリーニングでアピリモドを同定した。TSC2ヌル細胞は構成性活性mTORをもつ。要約すると、TSC2 −/− ノックアウトマウス胚に由来するMEF細胞(Onda et al., J. Clin. Invest. 104(6):687-95, 1999)に、ハイグロマイシン抗生物質耐性遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを感染させ(MEF−EV)、または同じレトロウイルスベクターであってTSC2をもコードするものを感染させた(MEF−TSC2)。MEF−EVおよびMEF−TSC2系を次いでハイグロマイシン選択により樹立した。
【0118】
[141] 10%のFBS(Omega Scientific)および2mMのL−グルタミンを含有するDMEM中で細胞を拡張させた。HTSアッセイに直接使用するために細胞の凍結原液を調製した。細胞を収穫し、ペレット化し、次いで95% FBSおよび5% DMSOに1×10細胞/mlの濃度で再懸濁した。1mlアリコートを毎分1℃の速度で−80に凍結させた。これらの原液を次いで長期貯蔵のために蒸気相液体窒素へ移した。
【0119】
[142] スクリーニングのために、バイアルを37℃で連続撹拌しながらちょうど融解するまで融解させ、次いで室温のアッセイ培地に再懸濁し、1,000rpmで5分間遠心した。得られたペレットを適宜な体積に再懸濁し、自動細胞計数機を用いて計数し、40,000細胞/mlの最終カウントになるように相応に希釈した。
【0120】
[143] 被験化合物(5μlの原液,目標最終ウェル濃度の6×)を384ウェル−アッセイプレート(Corning 3712)にBiomek FXリキッドハンドラーを用いて分注した。MEF−EV細胞(ウェル当たり1000個の細胞,25μLの培地中)を、これらのプレフォーマットしたプレートに標準ボアカセットヘッド(bore cassette head)付きThermo Wellmate 非接触型分注システムを用いて添加した。プレートを37℃で5% CO雰囲気下に加湿インキュベーター内で72時間インキュベートした。
【0121】
[144] CellTiter−Glo(登録商標) 発光アッセイ(Promega)で製造業者の指示に従って細胞生存率を決定した。非処理対照細胞に対するパーセントとして生存率を表わした。一例として、アピリモドに対して、MEF−EV細胞生存率(平均±標準偏差,n=3)は0.5μMで2.16±0.36%、5μMで1.94±0.07%であった。
【0122】
[145] TSC2欠損細胞におけるアピリモドの活性を、前記のMEF−EVおよびMEF−TSC2系統ならびに下記の追加の3対の同質遺伝子(isogenic)系統における10ポイント用量応答の実施によりさらに立証した:(1)(TSC2 −/−,p53 −/−)および(TSC2 +/−,p53 −/−)MEF系統は、(TSC2 −/−,p53 −/−)または(TSC2 +/−,p53 −/−)胚から標準法に従って樹立された。たとえば、Zhang et al. J. Clin. Invest. 112, 1223-33, 2003を参照。(2)ELT3−EVおよびELT3−TSC2系統は、ELT3ラット腫瘍細胞系から樹立された。ELT3系統は、LAM/TSCについて樹立されたラット腫瘍モデルである。たとえば、Howe et al., Am. J. Path. 146, 1568-79, 1995を参照。これらの細胞にはTSC2に不活性化変異があり、これによりmTOR経路の構成性活性化が生じる。細胞の同質遺伝子対を発現させるために、ELT3細胞に、ハイグロマイシン抗生物質耐性遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを感染させ(ELT3−EV)、または同じレトロウイルスベクターであってTSC2をもコードするものを感染させた(ELT3−TSC2)。MEF−EVおよびMEF−TSC2系統を次いでハイグロマイシン選択により樹立した。(3)TRI−AML102およびAML103系統は、Dr. Elizabeth Henske(Fox Chase Cancer Center,ペンシルベニア州フィラデルフィア)により提供されたTSC2ヌル初代ヒトAML試料から樹立された。これらの細胞に、HPV16 E6およびE7オープンリーディングフレームおよびネオマイシン耐性カセットをコードする両指向性(amphotropic)レトロウイルスLXSN16E6E7を感染させた。細胞を拡張させ、ネオマイシン選択した。個々のクローンを分離し、凍結させた。ハイグロマイシン耐性カセットを含むヒトテロメラーゼ遺伝子(hTERT)のコード配列(pLXSN hTERT−hygプラスミド)をTSC2−/−内に安定発現させ、Fugene6トランスフェクション試薬(Roche Applied Science,インディアナ州インディアナポリス)を用いてE6E7 AMLクローンを確認した。TRI−AML102は対照ゼオマイシン(zeomycin)選択プラスミド(pcDNA3.1−zeo)の安定組込みにより作製され、一方、TRI−AML103はヒトTSC2 cDNA pcDNA3.1−zeoプラスミドを発現する。これらの工学操作の結果、TRI102およびTRI103は両方ともネオマイシン、ハイグロマイシン、およびゼオマイシン耐性系統である。
【0123】
[146] 10ポイント用量応答のために、96ウェル−プレートのウェル当たり750個のMEF、2000個のELT3、または2000個のAML細胞を、100μLの増殖培地(DMEM(CellGro 10−017−CV) FBS 10%(Sigma Aldrich F2442−500ML,ロット12D370)、ペニシリン/ストレプトマイシン(100×)(CellGro Ref 30−002)中において播種し、細胞を播種した24時間後に培地を除去し、100μLの増殖培地中におけるアピリモド希釈液(1〜500nM,2倍希釈)を添加した(0.1%の最終DMSO濃度)。化合物を添加して72時間後、相対細胞生存率をCellTiter−Glo(登録商標) 発光アッセイ(Promega)により決定し、ビヒクル(DMSO)処理した対照細胞に対するパーセントとして表わした。IC50値を次いで用量応答曲線からXLFIT(IDBS)を用いて計算した。
【0124】
[147] TSC2欠損細胞はアピリモドに対して感受性が高かった(IC50=20nM,図1)。TSC2 −/− p53 −/− MEFは、1を超える感受性比(2.45)により示されるように、TSC2 +/− p53 −/− MEFと比較してアピリモドに対する感受性の増大を示した。
【0125】
【表1】
【0126】
TSC2 −/− 欠損系統およびレスキュー(rescue)系統に対する10ポイント用量応答から計算したIC50(nM)。IC50は2つの実験の平均から計算される。選択比はTSC2レスキュー系統のIC50をTSC2 −/− 系統のもので割ることにより計算される。
【0127】
[148] さらに、より高濃度のアピリモドは、TSC2 −/− MEF−EV細胞に対してTSC2レスキューMEF−TSC2細胞より高い力価をもっていた。このデータは、アピリモドが末梢血単核細胞に対して細胞毒性ではなく(Wada et al., Blood 109, 1156-64, 2007)、U937、HELA、ジャーカットおよびTHP−1を含めた他の多様な癌系統に対しても細胞毒性ではない(PCT Publication No. WO 2006/128129)という事実と合わせて、TSC2 −/− 癌細胞をアピリモドで処置するための療法指数が高いであろうということを示唆する(図2A−2B)。
【0128】
実施例2:アピリモドは癌細胞において高選択的細胞毒性である
[149] 標準的な細胞生存率アッセイ、たとえばCellTiterGlo(商標)を製造業者の指示に従って用いて、アピリモドの細胞毒性を評価した。122のヒト癌細胞系をアピリモドに対する感受性について評価した。IC50が500nM未満であれば、細胞系をアピリモド感受性と呼んだ。35の細胞系がアピリモド誘発による細胞毒性に対して感受性と同定された。アピリモドは、癌細胞より20〜200倍高い範囲のIC50をもつ正常細胞と比較しても、癌細胞に対して高選択性であった(図2A−2B)。
【0129】
[150] H4神経膠腫細胞系(IC50 250〜300nM)における処置の72時間後にオートファジー空胞をアッセイすることにより、アピリモドの細胞毒性の機序をさらに調べた。Cyto−IDオートファジー検出キット(Enzo)を製造業者の指示に従って用いて、オートファジーを定量した。図3は、アピリモドが用量応答性でオートファジーを誘発したことを示す。
【0130】
実施例3:アピリモドはPIKfyveキナーゼの高選択的結合剤である
[151] 癌細胞におけるアピリモドの細胞ターゲットを同定するために、ヒト神経膠腫細胞から調製した細胞溶解物を用い、化合物捕獲質量分析(chemical capture mass spectrometry)(CCMS)を用いてそれの結合パートナーを同定した。この作業はCaprotec Bioanalytics GmbH(ドイツ、ベルリン)で実施された。参照:Michaelis et al., J. Med. Chem., 55 3934-44 (2012)およびそれに引用された参考文献。
【0131】
[152] 要約すると、一方向に結合したアピリモドを選択性官能基として用いる2つの捕獲化合物バリアントを合成し、LC−MSおよび1H−NMRにより分析して同一性および純度を確認した。H4(ヒト神経膠腫)癌細胞からの全細胞溶解物において捕獲条件を最適化した;たとえば、タンパク質と捕獲化合物の非特異的的相互作用の最小化、タンパク質と捕獲化合物の最大結合を得るための試薬およびタンパク質の濃縮など。CCMS実験にアピリモドを競合リガンドとして用いて特異的タンパク質結合剤を同定するために、1つの捕獲化合物を選択した。捕獲アッセイにおいてLC−Sにより検出され、競合対照実験において有意に低減するタンパク質を特異的結合剤とみなす。これらの特異的結合剤にさらにストリンジェントデータ解析基準を施して、不偏データ評価(unbiased data evaluation)後に特異性を決定した。特異的タンパク質結合剤を捕獲実験におけるそれらの倍率変化(fold change)(FC)値に従ってランク付けした。2種類のタンパク質のみがアピリモドの高確率候補ターゲットタンパク質として同定された:PIKfyveおよびVac14。ボルケーノ(Volcano)プロットを図4に示す。4種類の捕獲化合物濃度におけるこれらのタンパク質のFC値およびp−値を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
[153] 別の試験において、アピリモドのプロテインキナーゼプロファイリングを実施して、キナーゼターゲットを同定した(DiscoveRx,カリフォルニア州フリーモント)。アピリモドを漸増濃度(0.05〜3000nM)で用い、アピリモドの既知ターゲットであるPIKfyveに対して解離定数(K)試験を実施した。実験を二重に実施し、Kは0.075nM(範囲0.069〜0.081nM)であると決定された(図5)。
【0134】
[154] 次に、アピリモドを包括的なキナーゼパネル(PIKfyveを含まない)に対してスクリーニングした。疾患関連キナーゼを含む合計456種類のキナーゼをそれらがアピリモドと結合する能力についてアッセイした。アピリモドのスクリーニング濃度は1μM、すなわちPIKfyveに対するアピリモドのKより>10,000倍大きい濃度であった。このスクリーニングからの結果は、試験した456種類のキナーゼのいずれにもアピリモドが結合しないことを示した。
【0135】
[155] 合わせると、これらの結果はアピリモドが癌細胞において高選択性で単一の細胞キナーゼ、PIKfyveに結合することを立証する。PIKfyveはPI(3)Pに結合して脂質第2メッセンジャーであるPI(3,5)P2およびPI(5)Pの形成を触媒する酵素であり、他の人々がアピリモドは正常細胞においてもこのキナーゼPIKfyveの有効かつ特異的な阻害剤であることを示している。Cai X et al., Chem Biol. 2013 Jul 25;20(7):912-21。以下においてより詳細に考察するように、癌細胞に対するアピリモドの選択的細胞毒性の機序を理解するために、本発明者らは癌細胞におけるそれの生物活性を解明することを目的として一連の実験を実施した。
【0136】
実施例4:アピリモドの抗癌活性の機序
[156] アピリモドは炎症性サイトカインIL−12およびIL−23の有効な阻害剤であることが知られていた。アピリモドが疾患または障害の処置のために適用される限り、それはこの活性を意味していた。アピリモドの臨床試験は自己免疫疾患および炎症性疾患、たとえば乾癬、関節リウマチおよびクローン病におけるそれの有望な効果に注目したが、アピリモドが癌に対して、特にc−relまたはIL−12/23が増殖促進因子として作用している癌に対して有用な可能性があるという公表された示唆はほとんど無かった。たとえば、それぞれWO 2006/128129およびBaird et al., Frontiers in Oncology 3:1 (2013)を参照。意外にも、アピリモドのIL−12/23阻害活性について推定されたこれらの予想とは逆に、本発明者らはc−Rel発現(c−RelはIL−12/23遺伝子に対する転写因子である)、IL−12またはIL−23の発現とアピリモドに対する感受性との間に相関性を見出さなかった。
【0137】
[157] IL−12A、IL−12RB1、IL−12RB2、IL−12B、IL−23AおよびIL−23Rの発現を75の多様な癌細胞系のグループにおいて分析した(参照:表3)。
【0138】
【表3-1】
【0139】
【表3-2】
【0140】
[158] 要約すると、アピリモドに対する用量応答曲線が得られたCCLEからの遺伝子発現データを75の癌細胞系について解析した。各インターロイキン遺伝子の発現を、感受性(IC50が500nM未満)と非感受性(IC50が500nMを超える)系統において、対応のないt検定(unpaired t-test)により比較した。IL−23A(p=0.022)を唯一の例外として、統計的に有意の関係は見出されなかった。IL−23Aはアピリモド感受性の非小細胞性肺癌系統において増大することが以前に指摘され、組換えIL−23Aは非小細胞性肺癌系統の増殖を高めることが指摘された(参照:Baird et al. 2013, 前掲)。重要なことに、感受性癌系統におけるIL−23A発現の統計的有意性はすべて、わずか2つの結腸癌系統によって誘導されたと思われる。さらに、IL−23A発現は非ホジキンB細胞性リンパ腫における感受性の統計的に有意の予測子ではない。
【0141】
実施例5:アピリモドは腎癌細胞の増殖を阻害する
[159] 腎癌細胞系RCC−MF、RCC−ER、RCC−JF、およびRCC−JWをマッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)(Corning)中で増殖させ、一方、786−0、769−PおよびRCC−FG2をRPMI−1640(Corning)中で増殖させ、A−704をMEM(Corning)中で増殖させた;10%のFBS(Sigma Aldrich F2442−500ML,ロット12D370)およびペニシリン/ストレプトマイシン(100×)(CellGro Ref 30−002)を補充;96ウェル−プレートにウェル当たりそれぞれ細胞1000、1200、1000、4000、200、2000、1200および5000個の密度で、最終体積50μL中において播種。
【0142】
[160] 単剤処理試験のために、播種後24時間目に細胞を最終濃度0.5〜10000nM(3倍希釈および合計10種類の希釈液)のアピリモドメシレート(この例においては単に‘アピリモド’またはLAM−002と呼ぶ)、ソラフェニブ、パゾパニブまたはスニチニブで処理した。すべての薬物希釈液を2×原液として作成し、50μLを適宜なウェルに添加した。細胞を120時間処理した後にCellTiterGlo(登録商標)(Promega)を用いて生存率を査定し、その際、非処理細胞の相対発光を100%生存率に設定し、各薬物濃度を非処理細胞に対するパーセントとして表わした。GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc)を用いてEC50値を決定した。要約すると、生データをlog変換し、次いで非線形回帰(曲線あてはめ)を用いて解析し、その際、データは制約条件付きであった(下=0,上=100)。
【0143】
[161] これらの単剤処理試験の結果を図6〜13に示し、下記の表にまとめる。
【0144】
【表4】
【0145】
[162] アピリモドとパゾパニブまたはソラフェニブとの相乗性を計算するために、RCC−ER、RCC−FG2、RCC−MF、および769−P細胞を前記に概説したように播種した。24時間後、細胞をアピリモド単独(最終濃度2〜250nM;2倍希釈および合計8種類の希釈液)、パゾパニブ単独(最終濃度78.1〜10000nM;2倍希釈および合計8種類の希釈液)もしくはソラフェニブ単独(最終濃度78.1〜10000nM;2倍希釈および合計8種類の希釈液)、または各濃度のアピリモドと各濃度のパゾパニブもしくはソラフェニブとの組合わせ(8×8のマトリックス)で処理した。細胞を120時間処理した後にCellTiterGlo(登録商標)(Promega)を用いて生存率を査定し、その際、非処理細胞の相対発光を100%生存率に設定し、各薬物濃度を非処理細胞に対するパーセントとして表わした。
【0146】
[163] 図14−21は、相乗性試験の結果を示す。各図(A)の棒グラフは、細胞生存率に対する単一濃度のアピリモド、単一濃度のパゾパニブの効果、およびアピリモドとパゾパニブ(単一薬剤濃度で)の組合わせの効果を示す。アピリモドについての生存率にパゾパニブについての生存率を掛けることにより、2種類の薬物の組合わせ効果が相加的である場合の‘予想値’を計算し、黒棒として示す。各図のCI−対−フラクショナル効果のグラフ(B)は、Chou et al. (Chou TC, Talalay P. Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul. 1984;22:27-55)により定義された組合わせ指数(combination index)(CI)を示し、これを相乗性の尺度として用い、CalcuSyn(version 2.11,Biosoft)を用いて計算した。臨床的に達成できる濃度内であって、かつフラクション効果(Fa)が0.75より大きい(すなわち、薬物の組合わせで細胞生存率が75%より大きく低減する)CI値の査定に解析を限定した。CI−対−フラクショナル効果のグラフにおいて、データ点を‘x’により表わし、ラインは95%信頼区間を示し、CI値>1を生じる薬物組合わせは拮抗的であり、CI=1は相加的であり、CI<1は相乗的である。さらに、アピリモドとパゾパニブまたはソラフェニブのいずれかとの組合わせについてED50、ED75およびED90におけるCI値を示す。同じ方法をアピリモドとソラフェニブの組合わせに適用した。下記の表6に相乗性試験の結果をまとめる。
【0147】
[164] ここに提示するデータは、試験した腎細胞系のパネルにおいてアピリモドがパゾパニブと、およびソラフェニブと、相乗的に作用できたことを立証する。
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】