(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
を有しており、式中、Aが少なくとも一置換のアルキレン基又はアリーレン基であり、Bがアミド基、エステル基又はエーテル基であり、そしてnが0又は1であり、Fがエステル、第二級アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、チオエステルの群より選択され、かつ異なる種類の側鎖について同一でも異なっていてもよく、Dが、基材に可逆的に結合することを意図しているか、又はコーティング機能を有している側鎖であり、Eが基材に不可逆的に結合することを意図している側鎖であり、かつポリマーが、1〜10種の異なる種類の側鎖D及び1〜10種の異なる種類の側鎖Eであるが、少なくとも1種の側鎖D及び少なくとも1種の側鎖Eを具備しており、かつ上記のポリマーが、複数の各種類の側鎖を具備しており、それによって、異なる種類の側鎖が不規則に又は規則的にポリマー中に分布している、機能性ポリマーに関する。
側鎖D1における前記官能基K1が、アミン類、カルボキシ、ポリ(プロピレンスルフィド)、及びチオエーテル類の群より選択され、かつ好ましくは末端基である、請求項1に記載の機能性ポリマー。
側鎖D2が、ポリジメチルアクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン及びポリエチレングリコールからなる群より選択され、好ましくはポリエチレングリコールである、請求項1又は2に記載の機能性ポリマー。
側鎖D3における前記官能基K3が、アミン類、カルボキシ、蛍光マーカー類、抗体類、ビオチン、ニトリロ三酢酸(NTA)、ペプチド類及び単鎖のDNAフラグメントからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性ポリマー。
側鎖Eにおける前記官能基が、アルコキシシラン類、クロロシラン類、カテコール類、ホスフェート類、ホスホネート類、アナケリン、ミモシン誘導体類、ガロール類、チオール類、N−複素環カルベン類、ペルフルオロフェニルアジド類、ベンゾフェノン、ジアリールジアゾメタン、アリールトリフルオロメチルジアゾメタン、有機ホウ素、ホスフェート類及びホスホネート類の群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性ポリマー。
前記機能性ポリマーが、2〜8種の異なる種類の側鎖D及び1〜5種の異なる種類の側鎖E、好ましくは2〜5種の異なる種類の側鎖D及び1又は2種の異なる種類の側鎖Eを具備している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機能性ポリマー。
前記ポリマーが、少なくとも1種の側鎖D1及び少なくとも1種の側鎖E、好ましくは更に少なくとも1種の側鎖D2及び/又は少なくとも1種の側鎖D3を具備している、請求項1〜9のいずれか一項に記載の機能性ポリマー。
前記ポリマー主鎖が、改質反応を実施する前において、エステル類、活性化エステル類、クロロ、フルオロ、アクリレート類、メタクリレート類、NHSエステル類、エポキシド類、無水物類、アジド類、アルキン類、アシルトリフルオロボレート類の群より選択され、好ましくはペンタフルオロフェノールエステル又はペンタクロロフェノールエステル、好ましくはポリ(ペンタフルオロフェノールアクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェノールメタクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェノールアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェノールメタクリレート)であり、そして最も好ましくはポリ(ペンタフルオロフェノールアクリレート)である、反応基Gを具備しているポリマーストランドである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の機能性ポリマー。
異なる種類の側基を、反応基を具備している前記ポリマー主鎖に逐次的に付加する後改質手段を用いることによる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機能性ポリマーを製造する方法。
0.1〜10ナノメートル、好ましくは1〜3ナノメートルの厚さを有する単分子層を有するコーティング、又は10ナノメートル〜10マイクロメートル、好ましくは10〜50ナノメートルの厚さを有する複層系を有するコーティングを製造するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機能性ポリマーの使用。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリマー主鎖における主鎖単位Aは、少なくとも一置換のアルキレン基又はアリーレン基であり、好ましくは、それは一置換アルキレン基又はアリーレン基であり、唯一の置換基は、リンカー基Fである。最も好ましくは、主鎖単位Aは、一置換アルキレン基、リンカー基Fを置換基として具備している、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はペンチレン基である。Aがエチレン基である場合に、良好な結果が得られよう。典型的には、ポリマー主鎖は、少なくとも10単位、好ましくは少なくとも50単位、最も好ましくは少なくとも80単位のAを具備している。概して、より長いポリマー主鎖は、より多くの側鎖を具備しており、これは、所望の官能性及び結合挙動をもたらし、その結果、基材のより安定なコーティングをもたらす。
【0013】
グループBは、任意選択のリンカー基を示しており、例えばアミド基、エステル基又はエーテル基であってよい。上記のリンカー基Bは、主鎖単位Aの間に配置されている。しかしながら、好ましくはポリマー主鎖中にはグループBは存在せず、すなわち、好ましくは整数nは0である。すなわち、各々のポリマー単位Aは、隣接するポリマー単位Aと結合して、ポリマー主鎖−A−A−A−A−をもたらしている。整数nが1である場合、Bは、好ましくはポリエーテル主鎖をもたらすエーテル基である。
【0014】
本発明に係るポリマーのポリマー主鎖は、好ましくは帯電していない。加えて、それは、好ましくは主鎖中にポリリシンを含有していない。
【0015】
好ましくは反応基を有しているポリマー主鎖の後改質により、本発明に係るポリマーが得られると、グループFは、側鎖D又はEをポリマー主鎖に結合させる。リンカー基Fは、側鎖D又はE上の反応基Hと、ポリマー主鎖上で、反応基Gが反応することにより形成される。上記のグループFがエステル基、第二級アミン基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、チオエステル基から選択され、そして、ポリマー主鎖の反応基と反応することが意図されている側鎖の反応基Hに応じて、異なる種類の側鎖について同一でも異なっていてもよい。好ましくは、リンカー基Fはアミドである。
【0016】
改質反応を実施する前において、ポリマー主鎖上の可能性のある反応基Gは、エステル類、活性化エステル類、クロロ、フルオロ、アクリレート、メタクリレート、NHSエステル類、エポキシド類、無水物類、アジド類、アルキン類、及びアシルトリフルオロボレート類からなる群より選択される。反応基Gは、ポリマー主鎖における炭素原子に直接的に連結していてもよく、又はポリマー主鎖の炭素原子と反応基Gとの間にメチレン基、エチレン基若しくはプロピレン基が存在していてもよい。好ましくは、反応基Gは、ポリマー主鎖における炭素原子に直接的に連結している。
【0017】
かかる反応基を有している1つの可能性のある主鎖は、ポリ−(ペンタフルオロフェニルアクリレート)であり、pFPは、ペンタフルオロフェニルの略語であり、これが反応基Gであり、そして主鎖単位Aはエチレンである:
【化2】
式(1)の機能性ポリマーにおけるDは、基材に可逆的に結合することを意図しており、及び/又はコーティング機能を伴っている側鎖である。本願の脈絡の範囲内における可逆的結合との表現は、より弱い相互作用、例えばファンデルワールス結合、水素結合又は静電的結合(electrostatic bonding)を表している。コーティング機能との表現は、基材物質の内在特性に属していない、コーティングによって与えられた新たな物理化学的特性を示している。
【0018】
側鎖Dは、
ヘテロ原子を任意選択的に具備しており、かつ少なくとも1つの官能基K1を有している、直鎖又は分岐の、置換又は非置換のC
1〜C
12アルキル基R
D1を有している、短鎖側鎖D1;
ポリジメチルシロキサン類、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロアルキル類、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアルキルオキサゾリン類、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ−(メタクリロイルオキシルエチルホスホリルコリン)、ポリ−(スルホベタインメタクリレート)、20個超の炭素原子を有するポリアルキレン残基、ペプチド鎖類、DNAフラグメント及びポリ−(スルホベタインアクリルアミド)、からなる群より選択される、長鎖R
D2を有しており、それにより官能性末端基又は側基を有していない、側鎖D2;
ポリジメチルシロキサン類、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロアルキル類、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアルキルオキサゾリン類、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ−(メタクリロイルオキシルエチルホスホリルコリン)、ポリ−(スルホベタインメタクリレート)、20個超の炭素原子を有するポリアルキレン残基、ペプチド鎖類、DNAフラグメント類及びポリ−(スルホベタインアクリルアミド)からなる群より選択される、長鎖R
D3を有しており、それにより少なくとも1つの官能性末端基又は側基K3を有している、側鎖D3、
からなる群より選択される。
【0019】
側鎖D1は、基材に可逆的に結合することを意図している一方で、側鎖D2及び/又はD3は、コーティング機能を有している。
【0020】
本発明に係る機能性ポリマーは、異なる種類の側鎖D、例えば2つの異なる種類の短鎖側鎖D1、2種の長鎖側鎖D2及び1種の長鎖側鎖D3を具備していてよい。好ましくは、本発明に係る機能性ポリマーは、1種の側鎖D1(例えば末端アミンを具備しているアルキル鎖)、1種の側鎖D2(例えばポリエチレングリコール)及び任意選択的に1種の側鎖D3(例えば1つ又は複数のビオチン単位を具備しているポリエチレングリコール)を具備している。当然、本発明に係るポリマーは、各種類の側鎖からの、同一である複数の上記の側鎖を具備している。
【0021】
Eは、基材に不可逆的に結合することを意図している側鎖である。本願の脈絡の範囲内における非可逆的結合との表現は、側鎖の官能基と基材表面との間の共有結合、又は官能基と基材表面との間の強固な配位結合を示している。側鎖Eは、ヘテロ原子を任意選択的に具備しておりかつ少なくとも1つの官能基K4を有している、直鎖若しくは分岐の、置換若しくは非置換のC
1〜C
20、好ましくはC
1〜C
20のアルキル基R
Eのいずれかを具備しているか、又は官能基K4である。後者の場合においては、アルキル基R
Eは存在せず、すなわち、官能基Kが、ポリマー主鎖の反応基Gに直接結合して、官能基Fを形成している。
【0022】
本発明に係るポリマーは、1〜10種の異なる種類の側鎖D及び1〜10種の異なる種類の側鎖Eを具備している。「側鎖の種類」との表現は、種類Dの側鎖又は種類Eの側鎖であることができる1つの具体的な側鎖を示している。
【0023】
しかしながら、本発明に係るポリマーは、1種の側鎖D及び少なくとも1種の側鎖Eを具備していなければならない。すなわち、少なくとも1種の側鎖が基材に不可逆的に結合する一方で、少なくとも1種の側鎖が基材に可逆的に結合しており、及び/又はコーティング機能を有しており、このことは、緩い結合及び/又はコーティング機能をもたらす。
【0024】
非可逆的結合と可逆的結合との間の違いは、結合力の違いによってのみ与えられるものではない。というのは、表面相互作用をもたらす吸着動力学が2つの場合で異なるからである。物理吸着、すなわち、可逆的結合は、解消すべき活性化障壁が存在しないため、大幅に急速である。したがって、弱い結合、特に弱く結合する長距離相互作用は、分子内電荷斥力に起因して、イオン化基を具備している分子の良好な表面の空間的構成を可能とする。このことは、溶液中のポリマーの延伸した配座に起因して、本発明に係るポリマーのより高い密度及び制御された構成をもたらす。他方、少なくとも1種の他の種類の側鎖の共有結合基は、表面上に吸着された場合により低い充填密度を示す。結合の安定性は、共有又は配位の非可逆的結合の生成によって、より強くなる。したがって、本発明に係るポリマーは、環境条件、例えば溶液のpH又はイオン強度によってはもはや大きく影響されない。本発明に係るポリマーの可逆的及び非可逆的結合の可能性の組合せは、最適なパッケージング及び強力な結合の独特な性能をもたらす。加えて、本発明に係るポリマーは、所与の基材との非常に優れた適合性を有する。本発明に係るポリマーは、表面付着性、並びにその用途に応じたポリマー機能性、例えば親水性、帯電性、濡れ性、潤滑性、耐蛋白性等の両方の調整ための幾つかの化学官能性を含む。したがって、本発明に係るポリマーは、目的の基材に接着させるための再現可能で、改良された簡易な手段のために、最善なポリマー組織に自発的に適合させる一方で、環境界面に対する所望の機能性を示すことができる。
【0025】
本発明に係るポリマーは、複数の各種類の側鎖を具備している。好ましくは、ポリマー主鎖の実質的に全ての(すなわち90%超の)反応基が、側鎖D又はEを具備しているリンカー基Fをもたらす。最も好ましくは、リンカー基Fの数は、主鎖におけるグループAの数とほとんど等しい(90%超である)。
【0026】
本発明に係るポリマーにおいては、異なる種類の側鎖が不規則に又は規則的にポリマー中に分布している。より容易に合成し、かつより一様に面内分布させるため、好ましくは、それらは、不規則に分布している。
【0027】
好ましくは、本発明に係るポリマーは、官能基K1が、アミン類、カルボキシ、ポリ(プロピレンスルフィド)及びチオエーテル類からなる群より選択される、側鎖D1を具備している。
【0028】
好ましくは、上記の官能基K1は末端基である。側鎖D1は、1つ以上の官能基を具備していることが可能であるが、それは、好ましくはただ1つの官能基を具備している。
【0029】
リンカー基Fをもたらすポリマー主鎖上の反応基Gに応じて、反応性のポリマー主鎖と反応する化合物は、反応基、例えばアミン、アルコール又はチオールと反応することが意図されている追加の官能基Hも具備している。官能基は、好ましくは末端基である。次の図解は、ポリマー主鎖の側鎖D1との第一の反応の描写的な例を示している。
【化3】
【0030】
短鎖側鎖D1(−R
D1−K
1)は、鎖中にヘテロ原子を任意選択的に具備しており、そして置換又は非置換であることができる、直鎖又は分岐のC
1〜C
12アルキル基R
D1を有している。側鎖D1のための出発化合物は、次の一般式
H−R
D1−K
1 (4)
を有しており、式中、
Hは、ポリマー主鎖の反応基Gと反応してリンカー基Fをもたらすことが意図されている、官能基であり、
R
D1は、鎖中にヘテロ原子を任意選択的に具備しており、そして置換又は非置換であることができる、直鎖又は分岐のC
1〜C
12アルキル基であり、かつ
K
1は、下で更に定義する官能基である。
【0031】
R
D1が置換されている場合、それは、1〜2個のメチル基若しくはエチル基、ハロゲン原子、又はカルボキシ基を具備していてよい。加えて、アルキル基R
D1は、直鎖又は分岐であってよい。好ましくは、R
D1は、直鎖、非置換の1〜12個の炭素原子を有するアルキル鎖である。最も好ましくは、R
D1は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、−(CH
2)−CH(COOH)−、−C(=O)−O−(CH
2)
n−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n−の群より選択され、式中、n=1〜8である。最も好ましくは、R
D1は、エチレン、ブチレン、ヘキシレン及びウンデシレンからなる群より選択される。
【0032】
アミンとの表現は、第一級アミン(R
D1−2−NH
2)、R
D1−2−NHCH
3等の第二級アミン、R
D1−2−N(CH
3)
2等の第三級アミン、又はR
D1−2−NH
3+若しくはR
D1−2−N(CH
3)
3+等のアンモニウムを示しており、R
D1−2は、好ましくは1〜12炭素原子を有する直鎖、非置換のアルキル鎖である。D1における官能基がアミンである場合、D1は、好ましくはエチレンアミン、プロピレンアミン、ブチレンアミン、ペンチレンアミン、ヘキシレンアミン、ヘプチレンアミン、オクチレンアミン、ノニレンアミン、デシレンアミン、ウンデシレンアミン及びドデシレンアミンの群より選択され、好ましくはエチレンアミン、ブチレンアミン又はヘキシレンアミンであり、最も好ましくはヘキシレンアミンである。アミン類は、負に帯電した表面、金属酸化物、及びポリマー(特に活性化ポリマー)と特に良好な静電的結合を形成し、そして貴金属と弱い配位結合を形成する。
【0033】
チオエーテルとの表現は、式R
D1−5−CH
2−S−CH
3のチオエーテル類を示しており、式中、R
D1−5は、好ましくは直鎖C
1〜C
12アルキルである。D1における官能基がチオエーテルである場合、D1は、好ましくはメチレンチオエーテル、エチレンチオエーテル、プロピレンチオエーテル、ブチレンチオエーテル、ペンチレンチオエーテル、ヘキシレンチオエーテル、ヘプチレンチオエーテル、オクチレンチオエーテル、ノニレンチオエーテル、デシレンチオエーテル、ウンデシレンチオエーテル及びドデシレンチオエーテルの群より選択され、好ましくはエチレンチオエーテル、ヘキシレンチオエーテル又はウンデシレンチオエーテルである。チオエーテル類は、貴金属と特に良好な結合を形成し、そして疎水性基材とのファンデルワールス相互作用を形成する。本発明の脈絡の範囲内において、チオエーテル類は、基材と可逆的に結合すると考えられる。
【0034】
カルボキシとの表現は、COO
−残基を示している。負電荷によって、カルボキシ基は、正に帯電した表面上、特に金属酸化物上で弱く長い距離の静電的結合を形成する。D1における官能基がカルボキシ基(R
D1−5−COO
−)である場合、D1は、好ましくはエチレン炭酸(R
D1−5=C
1)、プロピレン炭酸(R
D1−5=C
2)、ブチレン炭酸(R
D1−5=C
3)、ペンチレン炭酸(R
D1−5=C
4)、ヘキシレン炭酸(R
D1−5=C
5)、ヘプチレン炭酸(R
D1−5=C
6)及びオクチレン炭酸(R
D1−5=C
7)、ノニレン炭酸(R
D1−5=C
8)、デシレン炭酸(R
D1−5=C
9)、ウンデシレン炭酸(R
D1−5=C
10)及びドデシレン炭酸(R
D1−5=C
11)の群より選択され、好ましくはエチレン炭酸又はヘキシレン炭酸である。
【0035】
ポリ(プロピレンスルフィド)との表現は、
【化4】
を示しており、式中、iは1〜20であり、リンカー基Fと官能基との間のR
D1−6は、好ましくは直鎖のC
1〜C
12アルキルである。D1における官能基がポリ(プロピレンスルフィド)である場合、D1は、好ましくはメチレンポリ(プロピレンスルフィド)、エチレンポリ(プロピレンスルフィド)、プロピレンポリ(プロピレンスルフィド)、ブチレンポリ(プロピレンスルフィド)、ペンチレンポリ(プロピレンスルフィド)、ヘキシレンポリ(プロピレンスルフィド)、ヘプチレンポリ(プロピレンスルフィド)、オクチレンポリ(プロピレンスルフィド)、ノニレンポリ(プロピレンスルフィド)、デシレンポリ(プロピレンスルフィド)、ウンデシレンポリ(プロピレンスルフィド)及びドデシレンポリ(プロピレンスルフィド)の群より選択され、好ましくはエチレンポリ(プロピレンスルフィド)、ヘキシレンポリ(プロピレンスルフィド)又はウンデシレンポリ(プロピレンスルフィド)である。ポリ(プロピレン)スルフィド類は、貴金属と特に良好な弱い多部位の(multisite)配位結合を形成する。
【0036】
好ましくは、本発明に係る機能性ポリマーの少なくとも1種の側鎖は、長鎖側鎖D2である。D2は、好ましくはポリジメチルシロキサン類、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロアルキル類、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアルキルオキサゾリン類、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ−(メタクリロイルオキシルエチルホスホリルコリン)、20個超の炭素原子を有するポリアルキレン残基、ペプチド鎖類、DNAフラグメント類、ポリ−(スルホベタインメタクリレート)、20個超の炭素原子を有するポリアルキレン残基、ペプチド鎖類、DNAフラグメント類及びポリ−(スルホベタインアクリルアミド)の群より選択される。
【0037】
典型的には、かかる「長鎖」側鎖D2は、500Da〜20000Da、好ましくは1000Da〜10000Daの分子量を有している。好ましくは、R
D2は、ポリジメチルアクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン及びポリエチレンからなる群より選択され、最も好ましくはポリエチレングリコールである。上記の側鎖D2は、コーティング機能を有しており、すなわち、それらは例えば(例えばPEG、PVP及びPOXAの場合)非汚染性(non−fouling properties)を有しているか、又は他の機能性(PDMS及びフッ化ポリマーの場合、例えば疎水性、疎油性(oleophobicity))を全ての異なる基材の種類、例えば金属酸化物、ガラス、ポリマー、及び貴金属に提供する。
【0038】
好ましくは、少なくとも1種の側鎖は、長鎖側鎖D3(−R
D3−K
3)である。側鎖D3のための出発化合物は、次の一般式
H−R
D3−K
3 (6)
を有しており、式中、
Hは、ポリマー主鎖の反応基Gと反応して、リンカー基Fをもたらすことを意図している官能基であり、
R
D3は、ポリジメチルシロキサン、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロアルキル類、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアルキルオキサゾリン類、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ−(メタクリロイルオキシルエチルホスホリルコリン)、ポリ−(スルホベタインメタクリレート)、20個超の炭素原子を有するポリアルキレン残基、ペプチド鎖類、DNAフラグメント類及びポリ−(スルホベタインアクリルアミド)からなる群より選択され、かつ
K
3は、下で更に定義する官能基である。D3は、好ましくは官能基K3を1つだけ具備している。しかしながら、幾つかの官能基K3を具備することも可能であり、好ましくは2〜20個、最も好ましくは5〜10個である。好ましくは、D3は、末端官能基K3を具備している。
【0039】
側鎖D3における官能基K
3は、好ましくはビオチン、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミン類、カルボキシ、蛍光マーカー類、抗体類、ペプチド及び単鎖のDNAフラグメントからなる群より選択される。
【0040】
官能基K
3のアミン類及びカルボキシとの表現は、側鎖D1の官能基K1に関する意味と同一の意味であるが、官能基をリンカー基Fに結合させている鎖R
D3は、R
D1とは異なる。
【0041】
リンカー基Fと官能基R
D3との間の上記鎖は、ポリジメチルシロキサン、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロアルキル類、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアルキルオキサゾリン類、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ−(メタクリロイルオキシルエチルホスホリルコリン)、20個超の炭素原子を有するポリアルキレン残基、ペプチド鎖類、DNAフラグメント類、ポリ−(スルホベタインメタクリレート)、及びポリ−(スルホベタインアクリルアミドからなる群より選択されることができ、好ましくはポリジメチルアクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン及びポリエチレングリコールであることができ、そして最も好ましくはポリエチレングリコールであることができる、上記鎖である。
【0042】
典型的には、側鎖R
D3は、500Da〜30000Da、好ましくは5000Da〜15000Daの分子量を有しており、長鎖側鎖D3をもたらす。
【0043】
最も好ましくは、R
D3は、5〜230個、好ましくは20〜120個のエチレングリコール単位を有しているポリエチレングリコールオリゴマーである。
【0044】
蛍光マーカーとの表現は、ポリマーに視覚的な機能を与える蛍光色素分子(fluorophore)を示している。例としては、キサンテン、シアニン、ナフタレン、クマリン、オキサジアゾール、アントラセン、ピレン、オキサジン、アクリジン、アリールメチン、テトラピロール、ベンゾフラン、ペリレン、ベンザントロン、アントラピリミジン又はアントラピリドンが挙げられる。官能基K3として蛍光マーカーを具備している側鎖D3は、全て突出した蛍光特性を有しており、全ての異なる基材の種類、例えば金属酸化物、ガラス、ポリマー、及び貴金属のために適切である。
【0045】
側鎖D3の官能基K
3が抗体である場合、それは、当業者に知られている抗体のうちの1つであることができる。
【0046】
側鎖D3の官能基K
3がペプチドである場合、それは、カスタム合成ペプチド、又は公知の細胞選択的ペプチド配列の1種であってよい。最も好ましいのは、RGDセグメントを含有しているペプチド配列である。
【0047】
側鎖D3の官能基K
3が式5のビオチンである場合、
【化5】
R
D3−21は、上記の長鎖であり、最も好ましくは、それはポリエチレングリコールである。
【0048】
側鎖D3の官能基K
3がニトリロ三酢酸である場合、
【化6】
R
D3−22は上で定義した長鎖、好ましくはポリエチレングリコールである。
【0049】
代替的には、側鎖D3は、リンカー基Fによってポリマー主鎖に結合されている、ペプチド又は単鎖のDNAフラグメントであることができる。
【0050】
本発明に係る機能性ポリマーは、少なくとも1種の側鎖Eを具備していなければならない。側鎖Eのための出発化合物は、官能基K4と官能基Hとの間にアルキル鎖が存在しているか否かに応じて、次の一般式
H−R
E−K
4又はH−K
4
を有している。上記の式では、
Hは、ポリマー主鎖の反応基Gと反応してリンカー基Fをもたらすことを意図している官能基であり、
R
Eは、直鎖又は分岐のC
1〜C
20、好ましくはC
1〜C
12アルキル基R
Eであり、R
Eは、ヘテロ原子を任意選択的に鎖中に具備しており、置換又は非置換であってよく、かつ
K
4は、下で更に定義する官能基である。
【0051】
側鎖Eの官能基K
4は、基材に不可逆的に結合することを意図している。それは、好ましくはアルコキシシラン類、クロロシラン類、カテコール類、ホスフェート類、ホスホネート類、ミモシン誘導体類、アナケリン(anacheline)、ガロール類、チオール類、N−複素環カルベン類、ペルフルオロフェニルアジド類、ベンゾフェノン、ジアリールジアゾメタン、アリールトリフルオロメチルジアゾメタン、及び有機ホウ素の群より選択される。
【0052】
好ましくは、上記の官能基K3は、末端基である。側鎖Eは、1つ以上の官能基を具備していることが可能であるが、それは、好ましくは1つの官能基のみを具備している。
【0053】
側鎖Eにおいては、R
Eは、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、−(CH
2)−CH(COOH)−、−C(=O)−O−(CH
2)
n−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n−からなる群より選択され、n=1〜8である。最も好ましくは、R
Eは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、−(CH
2)−CH(COOH)−、−C(=O)−O−(CH
2)
n−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n−からなる群より選択され、n=1〜8である。
【0054】
側鎖Eにおける官能基が、次の式のアルコキシシランである場合、
【化7】
R
E−30は、リンカー基Fとアルコキシシラン基とを結合させている、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。好ましくは、R
E−30は、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンからなる群より選択される。シラン基は、好ましくは末端基である。R
31及びR
32は、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基から選択され、好ましくはメチル基又はエチル基であり、最も好ましくはエチル基である。最も好ましくは、側鎖Eは、プロピルジメチルエトキシシラン又はプロピルジメチルジメチルメトキシシランであり、これは、好ましくはアミンによってリンカー基Fに結合して、例えばアミドをもたらす。アルコキシシラン類は、表面上のヒドロキシル基、金属酸化物、ガラス、及びポリマー(特に活性化ポリマー)への特に良好な結合を形成する。
【0055】
側鎖Eにおける官能基が、次の式のクロロシランである場合、
【化8】
R
E−33は、リンカー基F及びクロロシラン基を結合させている直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和のアルキル鎖である。好ましくは、R
E−33は、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンから選択される。クロロシラン基は、好ましくは末端基である。最も好ましくは、側鎖Eは、プロピルジメチルジメチルクロロシラン又はプロピルトリクロロシランであり、これは、好ましくはアミンによってリンカー基Fに結合して、例えばアミドをもたらす。クロロシラン類は、表面上のヒドロキシル基、金属酸化物、ガラス、ポリマー(特に活性化ポリマー)への特に良好な結合を形成する。
【0056】
Eにおける官能基が式12のカテコールである場合、
【化9】
式中、X
1は、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アセチル、ニトロ、CH
3、−N(CH
3)
2、N(CH
3)
3+、SO
3−、又はSO
2CF
3であり、R
E−34は、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン及びドデシレン、並びに−(CH
2)−CH(COOH−)、−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−からなる群より選択される。基材の性質に応じて、カテコール類は、縮合反応による共有結合か、又は配位結合のいずれかをする能力を有している。
【0057】
R
E−34及びX
1の各々の組合せは、表A1及びA2に示すように本発明の一部であり、側鎖Eの特定の種類を示している:
【表1】
【0059】
最も好ましくは、X
1は水素又はニトロであり、かつR
E−34はエチレンである。というのは、これは、出発化合物としてニトロドーパミン又はドーパミンを用いることを可能とするためである。カテコール類は、金属酸化物、特に遷移金属酸化物への、及び金属表面(例えばAg、Au及びPt)への特に良好な結合を形成する。
【0060】
側鎖Eにおける官能基が、式13又は14のミモシン誘導体である場合、
【化10】
R
E−35及び/又はR
E−35’は、好ましくは置換又は非置換のメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン及びオクチレンの群より選択され、最も好ましくは、アミノ酸ミモシン
【化11】
を出発化合物として用いることができ、かつアミン基によってリンカー基Gと結合することができる利点を有する、カルボキシ置換エチレンである。ミモシン誘導体は、酸化物表面、特に遷移金属酸化物への、及び金属表面(例えばAg、Au及びPt)への特に強力な共有結合又は配位結合を形成する。
【0061】
Eにおける官能基が、式のアナケリンである場合、
【化12】
R
E−36は、好ましくは、リンカー基F及びアナケリン基を結合させる直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、側鎖Eは、好ましくはエチルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
2)、プロピルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
3)、ブチルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
4)、ペンチルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
5)、ヘキシルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
6)、へプチルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
7)及びオクチルアナケリン(R
E−36=(CH
2)
8の群より選択される。代替的には、R
E−36は、アミノ基で置き換えてもよい。最も好ましくは、アナケリンは、そのアミノ基によって官能基Gと結合している。アナケリンは、酸化物表面、特に遷移金属酸化物への、及び金属表面(例えばAg、Au及びPt)への特に強力な共有結合又は配位結合を形成する。
【0062】
ガロール(gallol)との表現は、
【化13】
を示しており、式中、X
2は、H、F、Cl、Br、I、CF
3、アセチル、ニトロ、CH
3、−N(CH
3)
2、N(CH
3)
3+、SO
3−、又はSO
2CF
3であり、R
E−37は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン及びドデシレン、並びに−(CH
2)−CH(COOH−)、−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−の群より選択される。R
E−37及びX
2の各々の組合せは、表B1及びB2に示すように本発明の一部であり、側鎖Eの特定の種類を示している:
【0065】
最も好ましくは、X
2は水素であり、かつR
E−37は−(CH
2)−CH(COOH−)、−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−である。ガロール類は、酸化物表面への特に強力な共有結合又は配位結合を形成する。
【0066】
チオール類との表現は、R
E−38−SHを示している。官能基K4がチオールである場合、R
E−38は、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、−(CH
2)−CH(COOH−)、−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−からなる群より選択される。最も好ましいものは、エチレン、ヘキシレン及びウンデシレンである。チオール類は、貴金属、例えばAg、Au及びPtへの特に強力な共有結合を形成する。
【0067】
Eにおける官能基が、次の式のN−複素環カルベンである場合、
【化14】
式中、R
E−38は、リンカー基F及びN−複素環カルベンを結合させる、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖でありる。R
E−38は、好ましくはメチレン、エチレン、−(CH
2)CH(COOH)−;−O−(CH
2)
x=1−8−;−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−である。N−複素環カルベン類は、貴金属表面(例えばAu)への特に強力な共有結合を形成する。
【0068】
ペルフルオロフェニルアジド(perfluorophenylazide)との表現は、
【化15】
を示しており、式中、R
E−39は、好ましくは直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖である。側鎖Eの官能基がペルフルオロフェニルアジドである場合、R
E−39は、好ましくはエチルペルフルオロアジド、プロピルペルフルオロアジド、ブチルペルフルオロアジド、ペンチルペルフルオロアジド、ヘキシルペルフルオロアジド、へプチルペルフルオロアジド及びオクチルペルフルオロアジドの群より選択されるか、又はR
E−39は、−(CH
2)CH(COOH)−;−O−(CH
2)
n=1−8−;−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−である。アジド類は、光又は温度による活性化の際に、中間のニトレンを経由して、ポリマーの結合への特に良好な共有結合の挿入、及び金属への配位結合を形成する。
【0069】
側鎖Eにおける官能基が、式19のベンゾフェノンである場合、
【化16】
R
E−40は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、好ましくは、メチレン、エチレン、−(CH
2)CH(COOH)−;−O−(CH
2)
n=1−8−;−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−である。官能基としてのベンゾフェノンの存在は、活性化後(ジラジカル経由)のポリマーの結合への共有結合の挿入を可能とする。したがって、上記の官能基は、ポリマー基材のために特に好ましい。
【0070】
側鎖Eにおける官能基が、式20のジアリールジアゾメタンである場合、
【化17】
R
E−41は、好ましくは直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、最も好ましくは、メチレン、エチレン、−(CH
2)CH(COOH)−;−O−(CH
2)
n=1−8−;−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−である。官能基としてのジアリールジアゾメタンの存在は、活性化後(カルベン経由)のポリマーの結合への共有結合の挿入を可能とする。したがって、上記の官能基は、ポリマー基材のために特に好ましい。
【0071】
側鎖Eにおける官能基が、式21のアリールトリフルオロメチルジアゾメタンである場合、
【化18】
R
E−42は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、最も好ましくは、メチレン、エチレン、−(CH
2)CH(COOH)−;−O−(CH
2)
n=1−8−;−C(=O)−O−(CH
2)
n=1−8−;及び−C(=O)−NH−(CH
2)
n=1−8−である。ジアリールジアゾメタンの官能基としての存在は、活性化後(カルベン経由)のポリマーの結合への共有結合の挿入を可能とする。したがって、上記の官能基は、ポリマー基材のために特に好ましい。
【0072】
有機ホウ素との表現は、
【化19】
を示しており、式中、X
3、X
4、及びX
5は、互いに独立してCl又はOHであり、R
E−44は、メチル又はエチルであり、かつR
E−43及びR
E−45は、直鎖又は分岐の、飽和又は不飽和の1〜8個の炭素原子を有するアルキル鎖である。有機ホウ素は、ポリマー及び酸化物表面への特に強力な共有結合を形成する。
【0073】
ホスフェート類との表現は、モノホスフェートR
E46O−PO
32−を示しており、式中、R
E46は、好ましくは直鎖の非置換C
1〜C
12アルキル基である。Eにおける官能基がホスフェートである場合、Eは、好ましくはエチレンホスフェート、プロピレンホスフェート、ブチレンホスフェート、ペンチレンホスフェート、ヘキシレンホスフェート、ヘプチレンホスフェート、オクチレンホスフェート、ノニレンホスフェート、デシレンホスフェート、ウンデシレンホスフェート及びドデシレンホスフェートの群より選択され、好ましくはヘキシレンホスフェート及びドデシレンホスフェートである。ホスフェート類は、特に正に帯電した金属酸化物への良好な長距離静電的結合を形成し、そして負に帯電した金属酸化物への配位結合を形成する。本発明の脈絡の範囲内において、ホスフェート類は、基材に不可逆的に結合することが考えられる。
【0074】
ホスホネート類との表現は、式R
E−47−CH
2−PO
32−のホスホネート類を示しており、式中、R
E−47は、好ましくは直鎖のC
1〜C
8アルキルである。Eにおける官能基がホスホネートである場合、Eは、好ましくはエチレンホスホネート、プロピレンホスホネート、ブチレンホスホネート、ペンチレンホスホネート、ヘキシレンホスホネート、ヘプチレンホスホネート、オクチレンホスホネート、ノニレンホスホネート、デシレンホスホネート、ウンデシレンホスホネート及びドデシレンホスホネートの群より選択され、好ましくはヘキシレンホスホネート及びドデシレンホスホネートである。ホスホネート類は、特に正に帯電した金属酸化物への良好な長距離静電的結合を形成し、そして負に帯電した金属酸化物への配位結合を形成する。本発明の脈絡の範囲内において、ホスホネート類は、基材に不可逆的に結合することが考えられる。
【0075】
好ましい実施態様においては、本発明に係る機能性ポリマー2〜8種の異なる種類の側鎖D及び1〜5種の異なる種類の側鎖Eを具備している。2〜8種の異なる種類の側鎖は、異なる種類の側鎖D1、異なる種類の側鎖D2、異なる種類の側鎖D3、側鎖D1及びD2の組合せ、側鎖D1及びD3の組合せ、側鎖D2及びD3の組合せ、並びに側鎖D1、D2及びD3の組合せであることができる。最も好ましくは、機能性ポリマーは、2〜5種の異なる種類の側鎖D及び1又は2種の異なる種類の側鎖Eを具備している。
【0076】
本発明の好ましい実施態様において、本発明に係る機能性ポリマーは、少なくとも1種の側鎖D1及び少なくとも1種の側鎖Eを具備しており、好ましくは追加的に少なくとも1種の側鎖D2及び/又は少なくとも1種の側鎖D3を具備している。
【0077】
好ましくは、機能性ポリマーは、
(i)アミン類、カルボキシ、ポリ(プロピレンスルフィド)及びチオエーテルから成る群より選択され、好ましくはアミン類又はカルボキシであり、最も好ましくはアミン類である、官能基K1を具備している、1種又は2種の異なる種類の側鎖D1、並びに
(ii)ポリエチレングリコール、ポリジメチルアクリルアミド及びポリアルキルオキサゾリンの群より選択される、好ましくは1種又は2種、好ましくは1種の異なる種類の側鎖D2、並びに
(iii)アルコキシシラン類、クロロシラン類、カテコール類、ホスフェート類、ホスホネート類又はチオール類から、好ましくはアルコキシシラン類、ホスフェート類及びカテコール類からなる群からの官能基K4を具備している、1〜3種の異なる、好ましくは2種又は3種、最も好ましくは3種の異なる種類の側鎖E
(iv)並びに任意選択的に、ビオチン及びNTAからなる群より選択される官能基K3を具備している、1種又は2種、好ましくは1種の異なる種類の側鎖D3
を具備している。
【0078】
好ましくは、機能性ポリマーは、
(i)側鎖D1としてのヘキシルアミン、
(ii)側鎖D2としてのアミンPEG(好ましくは2kDa)、
(iii)側鎖E(2種の側鎖)としてのアミノプロピルジメチルエトキシシラン及びニトロドーパミン、
(iv)並びに任意選択的に側鎖D3としてのアミンPEG(好ましくは3.5kDa)ビオチン又はアミンPEG(好ましくは3.4kDa)NTA
を具備している。
【0079】
本発明の好ましいポリマーは、次の式のポリマーである。
【化20】
式中、5種の異なる種類の側鎖は、規則的に又は不規則に分布していてよい(式24において、nは5〜230、好ましくは20〜120である)。
【0080】
好ましくは、本発明に係るポリマーは、ポリマー主鎖の急速かつ万能な後改質により得られる。ポリマーの後改質は、本技術分野において、例えばKlokらのSysthesis of functional polymers by post−polymerization modification,Angew.Chem.In.Ed.2009,48,48〜58において公知である。
【0081】
改質反応を実施する前において、ポリマー主鎖は、好ましくはエステル類、活性化エステル類、NHSエステル類、エポキシド類、無水物類、アジド類、アルキン類、アシルトリフルオロボレート類の群より選択される反応基を具備している。最も好ましくは、反応基は、ラジカル重合法を用いることにより得られる活性化エステル類である。これは、フリーラジカル重合であってもよく、又は制御ラジカル重合であってもよい。
【0082】
5種の異なる種類の側鎖を具備している本発明に係るポリマーの作製は、次の手順に従うことができる:
1)好ましくはラジカル重合プロトコルを用いることによる、反応基Gを具備しているポリマー主鎖の作製、
2)反応基Hを具備している第一の側鎖D3を、ポリマー主鎖と反応させて、リンカー基Fをもたらすこと、
3)反応基Hを具備している第二の側鎖D2を、ポリマー主鎖と反応させて、リンカー基Fをもたらすこと、
4)反応基Hを具備している第三の側鎖D1を、ポリマー主鎖と反応させて、リンカー基Fをもたらすこと、
5)反応基Hを具備している第四の側鎖Eを、ポリマー主鎖と反応させて、リンカー基Fをもたらすこと、
6)反応基Hを具備している第五の側鎖Eを、ポリマー主鎖と反応させて、リンカー基Fをもたらすこと。
【0083】
必要に応じ、官能基K1、K3又はK4を保護する必要がある。異なる種類の側鎖の付加は、逐次的に又は並行して生じることができ、好ましくは逐次的に生じる。好ましくは、嵩高い側鎖D2及び/又はD3をまずポリマー主鎖に付加して、その後により短い鎖D1及び/又はEを付加する。
【0084】
本発明の好ましい実施態様においては、ポリマー主鎖は、改質反応を実施する前において、ペンタフルオロフェノールエステル又はペンタクロロフェノールエステルであり、好ましくはポリ(ペンタフルオロフェノールアクリレート)、ポリ(ペンタフルオロフェノールメタクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェノールアクリレート)、ポリ(ペンタクロロフェノールメタクリレート)であり、そして最も好ましくはポリ(ペンタフルオロフェノールアクリレート)である。
【0085】
本発明に係る機能性ポリマーは、好ましくはディップコーティング、スピンコーティング、噴射、印刷、コーティング又は溶媒のキャスティングにより、基材上に堆積させることができる。全ての場合において、機能性ポリマーを含有している溶液は、好ましくは改質すべき基材と接触させて、その部分が表面上で化学的にグラフトできるようにする。得られるコーティングは、用いた分子の構造に依存し、かつ0.1〜10ナノメートル、好ましくは1〜3ナノメートルの厚さを有する単分子厚さの層から、10ナノメートル〜10マイクロメートル、好ましくは10〜50ナノメートルの厚さを有する複層系まで変化することができる。
【0086】
本発明に係る機能性ポリマーは、異なる基材上、特に金属酸化物上、例えば二酸化ケイ素又は遷移金属酸化物、好ましくはTiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Fe
2O
3、Fe
3O
4上、貴金属表面、例えば金、銀、及び白金、並びにポリマー、例えばポリエチレン上のコーティング系のために好ましい。本発明に係る機能性ポリマーは、多機能コーティングとして用いることができ、又は非常に特殊なコーティング機能を有することができ、すなわち、例えば防汚コーティングであることができる。本発明の脈絡における基材は、本発明に係る機能性ポリマーにより部分的に又は全体的に被覆すべき表面、特に二次元の表面、並びにナノ粒子又はマイクロ粒子であってよい。
【0087】
金属酸化物基材、特に二酸化ケイ素又は二酸化チタンについては、本発明に係るポリマーは、好ましくは
少なくとも1種の側鎖が側鎖D1であり、官能基が好ましくはアミン類、カルボキシから選択され、及び/又は
少なくとも1種の側鎖が側鎖D2であり、
少なくとも1種の側鎖が側鎖Eであり、官能基が好ましくはカテコール類、ミモシン誘導体類、アナケリン、ガロール類及び有機ホウ素からなる群より選択される、
を具備している。
【0088】
加えて、それは、官能基が好ましくはアミン類、カルボキシ及びビオチンからなる群より選択される、少なくとも1種の側鎖D3を任意選択的に具備していることができる。
【0089】
貴金属表面、特に銀又は金の表面を有する基材については、本発明に係る機能性ポリマーは、好ましくは
少なくとも1種の側鎖が側鎖D1であり、官能基がアミン、チオエーテル及びポリ(プロピレンスルフィド)からなる群より選択され、
少なくとも1種の側鎖が、官能基を有していない側鎖D2であり、並びに
少なくとも1種の側鎖が側鎖Eであり、官能基が好ましくはカテコール、チオール類、及びN−複素環カルベン類からなる群より選択される、
を具備している。
【0090】
加えて、それは、官能基が好ましくはアミン類、カルボキシ及びビオチンからなる群より選択される、少なくとも1種の側鎖D3を任意選択的に具備していることができる。
【0091】
ポリマー基材、特にポリエチレンについては、本発明に係る機能性ポリマーは、好ましくは
少なくとも1種の側鎖が側鎖D1であり、官能基がアミン及びカルボキシからなる群より選択され、
少なくとも1種の側鎖が、官能基を有していない側鎖D2であり、並びに
少なくとも1種の側鎖が側鎖Eであり、官能基が好ましくはアルコキシシラン、クロロシラン、ペルフルオロアジド、ベンゾフェノン、ジアリールジアゾメタン、アリールトリフルオロメチルジアゾメタン、及び有機ホウ素からなる群より選択される、
を具備している。
【0092】
加えて、それは、官能基が好ましくはアミン類、カルボキシ及びビオチンから成っている、少なくとも1種の側鎖D3を任意選択的に具備していてもよい。
【実施例】
【0093】
〈実施例1:ポリペンタフルオロフェニルアクリレート(PPFPAc)の合成〉
ペンタフルオロフェニルアクリレート(PFPAc)モノマーは、周知の商業的に入手可能な製品であり、既に報告されたプロトコル(Eberhardt,M.,&Theato,P.(2005).PFPAcのRAFT重合:反応性直鎖ジブロックコポリマーの作製。Macromolecular Rapid Communications,26(18),1488−1493)に従って作製した。簡潔には、ペンタフルオロフェノール(87.21g、0.47mol)を、150mLのCH
2Cl
2中に0℃で溶解させ、そして2,6−ジメチルピリジン(60.55mL、0.52mol)を滴下漏斗でゆっくりと添加した。その後、この滴下漏斗を別の150mLのCH
2Cl
2で濯ぎ、これも反応混合物に添加した。次いで、アクリロイルクロリド(42.14mL、0.52mol)を、冷却下のままで反応器に液滴で添加し、そして室温まで温めながら窒素雰囲気下で18時間放置して反応させた。得られた2,6−ジメチルピリジンヒドロクロリド塩を、濾過により除去し、そしてその後の溶液を100mLの水で3回洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、そして溶媒を減圧下で蒸発させた。この生成物を、真空蒸留により2回精製して、純粋なモノマーを無色の液体として得た(97.09g、78%)。
【0094】
1H NMR(CDCl
3、δ/ppm):3.1ppm(1H、a)及び2.1ppm(2H、br s)。
【0095】
PFPAcモノマー(14.31g、60.13mmol)、開始剤AIBN(23.83mg、0.15mmol)及び連鎖移動剤2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸(158.45mg、0.43mmol)を、シュレンクチューブ内で15mLのトルエンに溶解させた。この溶液を、3回の凍結脱気(freeze−pump−thaw)サイクルによって脱気し、そして18時間油浴中で80℃で窒素雰囲気下で放置して反応させた。反応混合物を放置して室温まで冷却し、そして得られたポリマー(PPFPAc)をメタノール中で沈殿させることにより単離し、そして48時間真空下で乾燥させた(収量:12.90g、90%)。
【0096】
GPC(THF):M
n=12800g mol
−1、M
w=19300g mol
−1、PDI=1.51。
FTIR(KBr、cm
−1);2950(C−H伸縮)、1800(C=O伸縮)、1525(芳香族性C−C)、950−1250(C−F伸縮)。
1H NMR(CDCl
3、δ/ppm):−CH−3.1(1H、br、s)、−CH
2−2.15(2H、br、s)。
Anal.Calcd.for(C
8H
3F
5)
n:C45.37、H1.26、O13.45、F39.92。Found:C45.40、H1.27、O13.44、F39.89。
【0097】
〈実施例2:PPFPAcの後改質の第一段階:非汚染機能のためのペグ化(PEGylation)〉
非汚染性を得るため、実施例1からの主鎖を、ポリマーメトキシ−ポリ(エチレングリコール)−アミンヒドロクロリド(PEG−NH
2 HCl、2000gmol
−1)で改質した。簡潔には、79.4mg(モノマー当たり0.333mmol)のPPFPAcを、50℃の温度での撹拌下でジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させた。別個に、100mgのPEG−NH
2 HClを2〜3倍過剰量のトリエチルアミンとともにDMF(0.050mmol)中に溶解させた。次いで、PEG溶液を、液滴で最初の反応混合物に添加し、そして一晩放置して反応させて、0.15のPEGグラフト密度を得た。得られたポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)の溶液を、後の項目に記載した更なる後改質のために用いた。
【0098】
1H NMR(CDCl
3、δ/ppm):−CH
2−O−CH
2−3.5−3.8(180H、m)、−O−CH
33.4(3H、s)、−CH
2−NH−C(=O)−3.1(2H、m)。
【0099】
〈実施例3:PPFPAcの後改質の第二段階:側基の結合〉
下に示した全てのポリマーの組合せは、実施例2において記載したポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc,PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)のペグ化した変形態様から始まる。
【0100】
{ポリマーA}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、1,6−ヘキサンジアミン)(2000:116.2Mr;0.15:0.85d):107.43mg(0.425mmol)のN−Boc−1,6−ヘキサンジアミンヒドロクロリドを、過剰量のトリエチルアミン(177.71μL、1.275mmol)とともに、1mLのDMF中に溶解させた。混合物を、実施例2で作製したポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)溶液に液滴で添加し、そして50℃での撹拌下で一晩放置して反応させた。DMFを減圧下で蒸発させ、混合物をジクロロメタン(DCM、2mL、4当量)及びトリフルオロ酢酸(0.5mL、1当量)中に再び溶解させ、そして撹拌下で一晩放置して反応させた。得られた混合物を、減圧下で再び蒸発させ、そして超純水(5mL)中に再び溶解させた。この溶液を、3,500DaのMWCOを有する膜を用いて、2日間水に対して透析させることによって精製し、そしてその後に凍結乾燥させて、ポリマーを白色粉末として得た(収量:133.77mg、77.24%)。
【0101】
{ポリマーB}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、1,6−ヘキサンジアミン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン)(2000:116.2:161.3Mr;0.15:0.425:0.425d):35.81mg(0.142mmol)のN−Boc−1,6−ヘキサンジアミンヒドロクロリドを、過剰量のトリエチルアミン(59.2μL、0.425mmol)とともに1mLのDMF中に溶解させた。混合物を、実施例2からのポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)溶液に液滴で添加し、そして50℃で撹拌下で一晩放置して反応させた。1mLのDMF中に45.71mg(0.283mmol)の3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン及びトリエチルアミン(118.47μL、0.85mmol)を含有している新たな溶液を、上記の溶液に液滴で添加しながら、50℃で一晩撹拌させた。アミンの脱保護及び精製を、ポリマーAについて記載したように続けた。
【0102】
{ポリマーC}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、1,6−ヘキサンジアミン、ニトロドーパミン)(2000:116.2:198.2Mr;0.15:0.425:0.425d):N−Boc−1,6−ヘキサンジアミンヒドロクロリドによる後改質は、ポリマーBに関して記載したとおりであった。過剰量のニトロドーパミン(83.94mg、0.283mmol)を、1mLのDMF中に118.47μLのトリエチルアミン(0.85mmol)とともに別途溶解させた。後者の溶液を、ヘキサンジアミン溶液にゆっくりと添加し、そして同一の温度で一晩撹拌させて放置した。アミンの脱保護及び精製を、ポリマーAについて記載したように続けた。
【0103】
{ポリマーD}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、1,6−ヘキサンジアミン、12−アミノドデシルホスホネート)(2000:116.2:265.3Mr;0.15:0.425:0.425d):N−Boc−1,6−ヘキサンジアミンヒドロクロリドによる後改質は、ポリマーBに関して記載したとおりであった。ここに、1mLのDMF(85.33mg、0.283mmol)中に12−アミノドデシルホスホネート−ビストリメチルシリルエステル及び118.47μLのトリエチルアミン(0.85mmol)を含有している溶液を、液滴で添加した。得られたポリマー溶液を、50℃での撹拌下で一晩放置して反応させ、アミン及びホスホネートの脱保護並びに精製を、ポリマーAについて記載したように続けた。
【0104】
{ポリマーE}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、1,6−ヘキサンジアミン、エタノールアミン)(2000:116.2:61.1Mr;0.15:0.425:0.425d):N−Boc−1,6−ヘキサンジアミンヒドロクロリドによる後改質は、ポリマーBに関して記載したとおりであり、その後にエタノールアミン(17.31mg、0.283mmol)及びトリエチルアミン(118.47μL、0.85mmol)を1mLのDMF中に過剰に含有している溶液を、ゆっくりと添加した。得られたポリマー溶液を、50℃で撹拌させながら一晩放置して反応させ、アミンの脱保護及び精製を、ポリマーAについて記載したように続けた。
【0105】
{ポリマーF}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、1,6−ヘキサンジアミン、3−アミノプロピル−ジメチルエトキシシラン、ニトロドーパミン)(2000:116.2:161.3:198.2Mr;0.15:0.425:0.2125:0.2125d):N−Boc−1,6−ヘキサンジアミンヒドロクロリドによる後改質は、ポリマーBに関して記載したとおりである。その後、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン(11.43mg、0.071mmol)及びトリエチルアミン(29.62μL、0.21mmol)の1mLのDMF中の溶液を液滴で添加し、そして撹拌させながら50℃で一晩放置した。DMF(1mL)中の過剰なニトロドーパミン(41.97mg、0.142mmol)、及びトリエチルアミン(59.24μL、0.43mmol)の最後の溶液を液滴で添加した。得られたポリマー溶液を50℃で撹拌させながら一晩放置して反応させ、アミンの脱保護及び精製を、ポリマーAについて記載したように続けた。
【0106】
{ポリマーG}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、3−アミノプロピル−ジメチルエトキシシラン、ニトロドーパミン)(2000:161.3:198.2Mr;0.15:0.425:0.425d):1mLのDMF中にあらかじめ溶解しており、そして過剰なトリエチルアミン(59.24μL、0.425mmol)を含有している22.85mg(0.142mmol)の3−アミノプロピルジメチルエトキシシランを、ポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)の溶液に添加した。50℃での撹拌下で一晩反応させた後に、1mLのDMF中の過剰なニトロドーパミン(83.94mg、0.283mmol)及びトリエチルアミン(59.24μL、0.43mmol)の新たな溶液を液滴で添加した。得られたポリマー溶液を50℃で撹拌させながら一晩放置して反応させ、アミンの脱保護及び精製を、ポリマーAについて記載したように続けた。
【0107】
{ポリマーH}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、3−アミノプロピル−ジメチルエトキシシラン)(2000:161.3Mr;0.15:0.85d):過剰量の3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン(0.425mmol、68.56)及びトリエチルアミン(1.275mmol、177.71μL)を、実施例2において作製したポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)の2mL溶液に添加した。反応は、50℃で撹拌させて一晩放置した。精製は、ポリマーAについて記載したとおりに行った。
【0108】
{ポリマーI}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、ニトロドーパミン)(2000:198.2Mr;0.15:0.85d):167.88mgの過剰なニトロドーパミン(0.57mmol)及び236.95μLのトリエチルアミンを、2mLのDMF中に溶解させて、ポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)の溶液に添加し、そして一晩撹拌下で50℃で放置して反応させた。精製は、ポリマーAについて記載したとおりに行った。
【0109】
{ポリマーJ}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、12−アミノドデシルホスホネート)(2000:265.3Mr;0.15:0.85d):170.66mgの過剰な12−アミノドデシルホスホネート−ビストリメチルシリルエステル(0.57mmol)及び236.95μLのトリエチルアミン(1.7mmol)を、2mLのDMF中に溶解させて、ポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)の溶液に添加し、そして一晩撹拌下で50℃で放置して反応させた。精製は、ポリマーAについて記載したとおりに行った。
【0110】
{ポリマーK}ポリ(アクリル酸)−g−(PEG、エタノールアミン)(2000:61.1Mr;0.15:0.85d):34.61mgの過剰なエタノールアミン(0.57mmol)及び118.47μLのトリエチルアミン(0.85mmol)を、2mLのDMF中に溶解させて、ポリ(アクリル酸)−g−(PFPAc、PEG)(238.11:2000Mr;0.85:0.15d)の溶液に添加し、そして一晩撹拌下で50℃で放置して反応させた。精製は、ポリマーAについて記載したとおりに行った。
【0111】
〈実施例4:TiO
2上のポリマーA、C、E又はI〉
20nmのTiO
2をスパッタコーティングしたSiウェハーを、トルエン中で2×15分間、2−プロパノール中で2×15分間超音波処理し、N
2流下で乾燥させ、そして2分間O
2−プラズマ洗浄をした。
【0112】
試料を次いで一晩(暗所で室温で)ポリマーA、C、E又はIの0.1mg/mL溶液(1mMHEPES緩衝液、pH=7.4)中に含浸させた。吸着にあたり、試料を上記の緩衝液で1回、水で1回すすぎ、そしてN
2流下で乾燥させた。試料の厚さを、インキュベーション(incubation)の前後で偏光解析法により測定した。
【0113】
その後、アドレイヤー(adlayer)の安定性を試験するため、試料を異なるイオン強度でpH7.4で塩化ナトリウム溶液に一晩(室温で)含浸させた。2つのイオン濃度を用いた:0.16M及び10mM HEPES緩衝液(HEPES II)の濃度が低い溶液、並びに2M溶液。次いで、試料を塩の溶液から取り出し、1mM HEPES緩衝液で1回、水で1回すすぎ、そしてN
2流下で乾燥させた。次いで、アドレイヤーの厚さを偏光解析法により測定した。
【0114】
最後に、試料をHEPES II中に15分間再度含浸させ、そしてヒト血清(Precinorm Roche)に30分間暴露した。インキュベーションの間、試料を振動させずに周囲条件で保管した。暴露した後、HEPES II緩衝液で2回、続いて超純水ですすぎ、そしてN
2流下で乾燥させた。蛋白質の取り込みを、偏光解析法により再度測定した。
【0115】
図1は、4つの後改質したポリマー:ポリマーA(アミン)、ポリマーE(アミン−エタノールアミン)、ポリマーC(アミン−ニトロドーパミン)及びポリマーI(ニトロドーパミン)の酸化チタン表面上の吸着及び安定性(溶液への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、安定性試験工程の間に低イオン強度媒体(HEPES II 0.16M)に暴露した場合のポリマーコーティングの結果を示しており、一方、右のグラフは、高イオン強度媒体(NaCl 2M)に暴露したそれらを示している。
【0116】
結果は、結合のために用いられた化学現象の種類に応じたポリマー膜厚の予測可能な形成を示している。静電的結合のみが含まれる場合(アミン及びアミン−エタノールアミン)、1.75nm付近の当初のアドレイヤーの厚さは、低イオン強度媒体(HEPES II−H2)中に一晩暴露した後でさえも維持されなかった。これは、予測される結果である。というのは、塩はポリマーの荷電した部分間の反作用、及び膜と基材との間の静電相互作用を遮断することが知られているからである。表面への静電引力を緩めると、ポリマーは巻き始め、遂には表面から脱着し、厚さの低減をもたらす。しかしながら、H2浸漬後に得られた値(1nm付近)は、機能性表面の耐蛋白性を維持するのに十分であるように思われる一方、2M塩溶液に暴露した後には、試料はもはや耐蛋白性ではない。
【0117】
アミン及びニトロドーパミンの両方が存在する場合に最大の厚さが得られ、そしてこのことは、低イオン強度媒体及び高低イオン強度媒体のいずれに暴露した後にも当てはまっていた。類似の安定性は、ニトロドーパミンのみをチタニアへの結合基として用いた場合にも観察されたが、厚さはより低い値であった。それにもかかわらず、全体の耐蛋白性は、前者の場合にのみ、表面がさらされるイオン強度とは独立して得られた。この事実は、ポリマーが基材に達して自己組織するためのみならず、溶液−表面界面に暴露されるPEGによる非汚染表面のための最適な配置に適合させるための推進力として作用するために、長い距離の相互作用(静電力)の存在が必要とされることを示唆している。共有結合は同様に、過酷な環境下、例えば高イオン強度環境下でのアドレイヤーの安定性を高めるために特に必要である。
【0118】
〈実施例5:SiO
2上のポリマーA、E、B及びH〉
全て実施例4のプロトコルに従い、研磨したSiウェハーの1つの面を洗浄し、4つのポリマー(ポリマーA、E、B及びH)のアドレイヤーを作製し、安定性試験及び耐蛋白性試験を行った。異なる工程の後のアドレイヤーの厚さを、偏光解析法により測定した。
【0119】
図2は、4つの後改質したポリマー:ポリマーA(アミン)、ポリマーE(アミン−エタノールアミン)、ポリマーB(アミン−シラン)及びポリマーH(シラン)の酸化ケイ素表面上の吸着及び安定性(溶液への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、安定性試験工程の間に低イオン強度媒体(HEPES II 0.16M)に暴露した場合のポリマーコーティングの結果を示しており、一方、右のグラフは、高イオン強度媒体(NaCl 2M)に暴露したそれらを示している。
【0120】
前の例において観察された傾向は、最初の2つの試験したポリマーA及びF(アミン及びアミン−エタノールアミン)については、TiO
2についてと同様である。というのは、いずれの基材も、中性のpHにおいて負に帯電した界面を有しているからである。シランを反応性の主鎖にアミンとともに付加した場合(ポリマーB)、安定性試験の後のアドレイヤーの厚さの僅かな低減があるが、耐蛋白性は、機能化された表面が暴露されたのが、低イオン強度媒体であっても高イオン強度媒体であっても維持される。このことは、このポリマー構造が、TiO
2上のポリマーC(アミン−ニトロドーパミン−
図1を参照されたい)の場合と同等に理想的でかつ安定であることを示している。シランを結合基として単に有している場合、酸化ケイ素表面については理想的であるが、当初のアドレイヤーは、全ての他のポリマーよりも相対的に厚い厚さに適合しており、このことは、いずれの場合でも耐蛋白性でない異なるポリマー配座が得られることを示している。前の例において言及した理由から、全ての他の組合せよりも性能が良いのは、表面に静電的及び共有の両方で結合している基を有しているポリマーBである。
【0121】
〈実施例6:TiO
2上のポリマーA、E、D及びJ〉
全て実施例4のプロトコルに従い、20nmのTiO
2をスパッタコーティングしたSiウェハーを洗浄し、4つのポリマー(ポリマーA、E、D及びJ)のアドレイヤーを作製し、安定性試験及び耐蛋白性試験を行った。アドレイヤーの厚さを、偏光解析法により異なる工程の後に測定した。
【0122】
図3は、4つの後改質したポリマー:ポリマーA(アミン)、ポリマーE(アミン−エタノールアミン)、ポリマーD(アミン−ホスホネート)及びポリマーJ(ホスホネート)の酸化チタン表面上の吸着及び安定性(溶液への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、安定性試験工程の間に低イオン強度媒体(HEPES II 0.16M)に暴露した場合のポリマーコーティングの結果を示しており、一方、右のグラフは、高イオン強度媒体(NaCl 2M)に暴露したそれらを示している。
【0123】
実施例4と似たように、安定性のために表面をH
2に暴露した場合、全体的に初期厚さの損失が存在しているが、静電的な寄与を含むすべての組合せは、耐蛋白性であることが明らかとなった。このことは、この目的(非汚染性)のために最適な配座にポリマーが適合する場合に、静電的な寄与が重要な役割を果たすことを、ここでも示している。表面をより高いイオン強度媒体に暴露した場合、全ての表面はそれらの汚染を防止する能力を緩める。同じことは、他のチタニア選択性の基であるニトロドーパミンによっては起こらなかった。このことは、この静電的な寄与がホスホネート基よりも基材とより安定な結合を形成することを示している。
【0124】
〈実施例7:TiO
2及びSiO
2上のポリマーA、E、F1、F2*及びG〉
両方の基材、すなわち研磨したSiウェハーの1つの面、及び20nmのTiO
2をスパッタコーティングしたSiウェハーを、既に記載したように洗浄し、そして5つのポリマー(ポリマーA、E、F1、F2*及びG)のアドレイヤーを作製した。前の実施例と似たように、アドレイヤーの厚さを、偏光解析法により異なる工程の後に測定した実施例4のプロトコルに従い、安定性試験及び耐蛋白性試験を行った。
* ポリマーF(F1、F2)は、共有結合基(シラン及びニトロドーパミン)を逆順で付加する2つの異なる方法で合成した。
【0125】
図4は、5つの後改質したポリマー:ポリマーA(アミン)、ポリマーE(アミン−エタノールアミン)、ポリマーF1(アミン−ニトロドーパミン−シラン)、ポリマーF2(アミン−シラン−ニトロドーパミン)及びポリマーG(シラン−ニトロドーパミン)の酸化ケイ素表面上の吸着及び安定性(溶液への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、安定性試験工程の間に低イオン強度媒体(HEPES II 0.16M)に暴露した場合のポリマーコーティングの結果を示しており、一方、右のグラフは、高イオン強度媒体(NaCl 2M)に暴露したそれらを示している。
【0126】
図5は、5つの後改質したポリマー:ポリマーA(アミン)、ポリマーE(アミン−エタノールアミン)、ポリマーF1(アミン−ニトロドーパミン−シラン)、ポリマーF2(アミン−シラン−ニトロドーパミン)及びポリマーG(シラン−ニトロドーパミン)の酸化チタン表面上の吸着及び安定性(溶液への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、安定性試験工程の間に低イオン強度媒体(HEPES II 0.16M)に暴露した場合のポリマーコーティングの結果を示しており、一方、右のグラフは、高イオン強度媒体(NaCl 2M)に暴露したそれらを示している。
【0127】
両方の基材について、実施例4、5及び6において既に説明したように、静電により推進されるポリマー配座を有する表面は、H
2に暴露された後では蛋白質の取り込みを示さない。ポリマーGは、主鎖に付着しているアミン類を含有しておらず、含有していたとしても吸着されているため、ポリマーは、PEG側鎖がブラシ状の構造に適合する方法で組織されておらず、したがって、表面は耐蛋白性ではない。
【0128】
表面を2M塩溶液に暴露させた後には、SiO
2又はTiO
2に共有結合的に付着することができる基を有しないか、又は静電的寄与を有しないポリマー(ポリマーA、E及びG)は、ヒト血清に対するそれらの耐性を保持しない。想定される例外は、ポリマーFの2つの変形態様である。最初にシランを付加し、次いでニトロドーパミンを付加した場合、得られるポリマーは、高イオン強度媒体に暴露した後であっても、両方の基材上でその耐性を維持する。最初にニトロドーパミンを付加し、次いでシランを付加した場合には、同じことは生じない。この場合、その非汚染性は、TiO
2上でのみ維持される。このことは、PPFPAcの後改質の間の化学物質の添加順が、シラン基のエステルへの接近を制限する立体障害を、付着後において促進する可能性のあるドーパミン基の嵩高さに恐らくは起因して、ある役割を果たしていることを示している。このことで、SiO
2上でのポリマーF1(アミン−ニトロドーパミン−シラン)ポリマーの耐性が保持されなかった理由の説明がつくであろう:ポリマー主鎖の全体にわたって安定な共有結合を確保するのに十分にシラン基が存在していなかったのである。
【0129】
〈実施例8:酸に対する安定性〉
高分子電解質の安定性/脱着性へのpHの影響は、周知であり一般的な評価を行うべきである。この例においては、実施例4において記載したプロトコルに従い、2つのポリマーの組合せを用いて、SiO
2及びTiO
2の両方を機能化させ、その後にヒト血清に暴露し、グリシン−HCl(10mM−pH=2.4)緩衝液に30分間室温で表面を浸漬させることによってそれらの安定性を試験した。結果を
図6に示す。
【0130】
図6は、2つの後改質したポリマー:ポリマーA(アミン)及びポリマーF(アミン−ニトロドーパミン−シラン)の吸着及び安定性(グリシン−HCl 10mM−pH=2.4酸性溶液への一晩の暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、酸化ケイ素上の結果を示しており、一方、右のグラフは、酸化チタン表面上のデータを示している。
【0131】
図6に示したデータは、両方の基材上の両方のポリマーの組合せは、酸溶液に暴露した後のそれらの絶対的な厚さの低減を及ぼしていることを明らかにしている。それにもかかわらず、安定性試験の後に少なくとも1nmのアドレイヤーが残る場合に、耐蛋白性が維持される。後者は、両方の基材上のポリマーF及びTiO
2上のポリマーAを含み、静電的結合と共有結合との間の調和を有することが、安定化させ、そしてこの特定の試みにおけるコーティングの非汚染性を維持するために重要であることを実証している。
【0132】
〈実施例9:界面活性剤に対する安定性〉
ポリマーアドレイヤー安定性への界面活性剤の作用を、ポリマーA(SiO
2及びTiO
2への完全な静電的結合)及びポリマーF(金属表面への静電的結合及び共有結合の混合)で機能化させた表面を、アニオン性及びカチオン性界面活性剤、それぞれSDS及びCTABに、0.5%w/vで30分間暴露することにより試験した。表面は、実施例4に記載したプロトコルに従って改質し、そしてその後、既に記載した方法と類似の方法で、安定性試験を行い、それらの耐蛋白性を評価した。
【0133】
図7は、ポリマーA及びポリマーFの吸着及び安定性(カチオン性CTAB界面活性剤への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、酸化ケイ素表面上の結果を示しており、一方、右のグラフは、酸化チタン表面上のデータを示している。
図7に見られるように、ポリマーAのカチオン性界面活性剤(CTAB)への暴露は、SiO
2上でよりもTiO
2上でより大きなアドレイヤーへの作用を有している。最初の場合、試験後に得られた厚さは1nm未満であり、これは蛋白質の取り込みに変換され、その一方で、チタニアの場合、厚さは、CTABに暴露する前後において大きく異なっておらず、コーティングがその耐蛋白性を維持することを可能とした。界面活性剤とポリマーとの間の吸着競合は、これらの条件下でより等電点に近いチタニア上よりも、負に帯電した酸化ケイ素の場合に関連性が大きいことが提言できよう。
【0134】
図8は、ポリマーA及びポリマーFの吸着、安定性(アニオン性SDS界面活性剤への暴露)及び耐蛋白性の結果を示している。左のグラフは、酸化ケイ素表面上の結果を示しており、一方、右のグラフは、酸化チタン表面上のデータを示している。SDSの場合(
図8を参照されたい)、ポリマーAの結果は、両方の基材上の厚さの無視できない低減を示しており(この場合も、SiO
2の場合においてより明白である)、このことは、蛋白質の取り込みを明らかにしている。この場合、カチオン性ポリマーアドレイヤーは、アニオン性界面活性剤によって基材から直ちに移動される。ポリマー層は、いずれの金属表面にも単に静電的に結合しているが、2つの場合において、層の構造はSiO
2上でよりもTiO
2上で安定であることが明らかである。しかしながら、SiO
2又はTiO
2上のポリマーFを2つの界面活性剤に暴露した場合(
図7及び
図8の両方を参照されたい)、グラフは、ポリマーコーティングの安定性は損なわれておらず、かつその耐蛋白性を維持していることを明確に示している。これは、界面活性剤に暴露されている間に表面からポリマーが有意に脱離することを妨げる、形成された共有結合(SiO
2上のシラン、TiO
2上のニトロドーパミン)に起因している。