特表2017-537002(P2017-537002A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-537002プリントカートリッジ、インクジェットプリンタおよびプリントカートリッジを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537002(P2017-537002A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】プリントカートリッジ、インクジェットプリンタおよびプリントカートリッジを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20171117BHJP
【FI】
   B41J2/175 171
   B41J2/175 173
   B41J2/175 169
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-524486(P2017-524486)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2015006058
(87)【国際公開番号】WO2016092802
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】14/568,776
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】ドライヤー・ポール ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】クラフト・クリストファー エー.
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA03
2C056FA10
2C056KC10
2C056KC16
2C056KC27
(57)【要約】
コンテナ本体(163)と、コンテナ本体(163)を囲む蓋(10)とを有するカートリッジハウジング(127)を備えるプリントカートリッジ。蓋(10)は底面(14)および上面(12)を含む。上面(12)から底面(14)へと蓋(10)の厚み全体を貫いて1つ以上の空気通気開口部が形成される。疎水性コーティングが蓋(10)の上面または底面(12、14)のうちの少なくとも1つに配置され、当該1つ以上の空気通気開口部の上には疎水性コーティングが存在しない。疎水性コーティングは液体または気体の形態で堆積される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ本体と、前記コンテナ本体を囲む、底面および上面を含む蓋と、を有するカートリッジハウジングと、
前記コンテナ本体内に配置され、流体を受け入れ収容する流体容器と、
前記カートリッジハウジング上に配置され、プリントカートリッジから前記流体を吐出する複数の加熱素子を有する流体吐出器チップと、
前記上面から前記底面へと前記蓋の厚み全体を貫いて形成された、1つ以上の空気通気開口部と、
前記蓋の前記上面または前記底面のうちの少なくとも1つに配置された疎水性コーティングと、を備え、
前記1つ以上の空気通気開口部の上には前記疎水性コーティングが存在しない
プリントカートリッジ。
【請求項2】
前記疎水性コーティングが前記蓋の前記上面および前記底面に配置されている
請求項1に記載のプリントカートリッジ。
【請求項3】
前記疎水性コーティングが液体または気体の形態で塗布される
請求項1に記載のプリントカートリッジ。
【請求項4】
前記疎水性コーティングがフルオロケミカルポリマーまたは非フルオロケミカルポリマーのうちの少なくとも1つを含む
請求項1に記載のプリントカートリッジ。
【請求項5】
前記1つ以上の空気通気孔が、対応する1つ以上の空気拡散通気口の部分を形成している
請求項1に記載のプリントカートリッジ。
【請求項6】
前記1つ以上の空気拡散通気口の各々が、蛇行路をたどるチャネルを含む
請求項5に記載のプリントカートリッジ。
【請求項7】
前記蓋の上に配置されたラベルをさらに含む
請求項1に記載のプリントカートリッジ。
【請求項8】
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたシャフトに沿って往復動するのに適合したキャリッジと、
制御機構により前記キャリッジが前記シャフトに沿って往復動する際に、印刷媒体上にインクを吐出するように前記キャリッジ上に配置された、1つ以上のプリントヘッドアセンブリと、を備え、
前記1つ以上のプリントヘッドアセンブリのうちの少なくとも1つはプリントヘッドカートリッジを有し、
前記プリントヘッドカートリッジは、
コンテナ本体と、前記コンテナ本体を囲む、底面および上面を含む蓋と、を有するカートリッジハウジングと、
前記コンテナ本体内に配置され、インクを受け入れ収容するインク容器と、
前記カートリッジハウジング上に配置され、前記プリントカートリッジから前記インクを吐出する複数の加熱素子を有するインク吐出器チップと、
前記上面から前記底面へと前記蓋の厚み全体を貫いて形成された、1つ以上の空気通気開口部と、
前記蓋の前記上面または前記底面のうちの少なくとも1つに配置された疎水性コーティングと、を有し、
前記1つ以上の空気通気開口部の上には前記疎水性コーティングが存在しない
インクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記疎水性コーティングが前記蓋の前記上面および前記底面に配置されている
請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記疎水性コーティングが液体または気体の形態で塗布される
請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記疎水性コーティングがフルオロケミカルポリマーまたは非フルオロケミカルポリマーのうちの少なくとも1つを含む
請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記1つ以上の空気通気孔が、対応する1つ以上の空気拡散通気口の部分を形成している
請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記1つ以上の空気拡散通気口の各々が、蛇行路をたどるチャネルを含む
請求項12に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
プリントカートリッジを形成する方法であって、
コンテナ本体と、前記コンテナ本体を囲む、底面および上面を含む蓋と、を有するカートリッジハウジングを提供し、
疎水性コーティングを液体または蒸気の形態で前記蓋の前記上面または前記底面のうちの少なくとも1つに堆積させる
方法。
【請求項15】
前記堆積のステップは、液体溶液を堆積させることを含む
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積のステップは、前記蓋を前記液体溶液中に浸漬することを含む
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積のステップは、前記蓋上に前記液体溶液を分注することを含む
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記液体溶液は、フルオロケミカルポリマーまたは非フルオロケミカルポリマーのうちの少なくとも1つを含む
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記堆積のステップは気体混合物の化学蒸着を含む
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記堆積のステップの前に、ラベルを前記蓋に接着させるステップをさらに含む
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリントヘッドに関し、より具体的には、インクジェットプリントヘッド用の疎水性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリントヘッドは、1つ以上のインクの充填された内部を画定するハウジングまたは本体を有する。印刷中の背圧の蓄積を防止するために、各コンパートメントは、ラングまたはフォームインサート、および内部を大気圧と流体連通させる空気拡散通気口を含む。空気拡散通気口は、ハウジングの厚みを貫いて形成されて内部に流体接続された孔から、末端部へと蛇行する、蛇行チャネルの形状の迂回路または蛇行路を具現化することが多い。インク蒸発の作用を遅くするために、通常はラベルまたはその他の被覆材を空気拡散通気口の孔および部分に被せるが、末端部には被せない。
【0003】
プリントヘッドが低気圧条件(すなわち輸送)下に置かれると、インクが通気孔の外へ漏れ出る可能性がある。たとえば、航空機での輸送中、プリントヘッドは漏れを生じ得る低気圧条件に曝される(つまり、高度19000フィートで飛行する場合、大気圧は海抜高度での場合に比べて1/2だけ低下する)。そのような漏れを防止するために、空気拡散通気孔を覆うようにカートリッジ蓋上に疎水膜材料のシートが配置され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、通気孔によりプリントヘッドを適切に通気する際に、インクジェットプリントヘッドの通気孔の外へインクが漏れ出るのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の典型的な一実施形態によるプリントカートリッジは、コンテナ本体とコンテナ本体を囲む、底面および上面を含む蓋とを有するカートリッジハウジングと、コンテナ本体内に配置され、流体を受け入れ収容する流体容器と、カートリッジハウジング上に配置され、プリントカートリッジから流体を吐出する複数の加熱素子を有する流体吐出器チップと、上面から底面へと蓋の厚み全体を貫いて形成された1つ以上の空気通気開口部と、蓋の上面または底面のうちの少なくとも1つに配置された疎水性コーティングと、を備え、当該1つ以上の空気通気開口部の上には疎水性コーティングが存在しない。
【0006】
本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリンタは、上記のプリントカートリッジを備える。
【0007】
少なくとも1つの実施形態において、疎水性コーティングは蓋の上面および底面に配置されている。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、疎水性コーティングは液体または気体の形態で塗布される。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、疎水性コーティングはフルオロケミカルポリマーを含む。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、疎水性コーティングは非フルオロケミカルポリマーを含む。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、疎水性コーティングはn−オクタデシルトリクロロシランまたはトリメチルクロロシランを含む。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、1つ以上の空気通気孔は、対応する1つ以上の空気拡散通気口の部分を形成している。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、1つ以上の空気拡散通気口の各々が、蛇行路をたどるチャネルを含む。
【0014】
少なくとも1つの実施形態において、プリントカートリッジはさらに、蓋の上に配置されたラベルを含む。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、プリントカートリッジは、250mtorr未満の圧力においてのみ、1つ以上の空気通気開口部から流体が漏れる。
【0016】
本発明の典型的な一実施形態によるプリントカートリッジを形成する方法は、コンテナ本体と、コンテナ本体を囲む、底面および上面を含む蓋とを有するカートリッジハウジングを提供し、疎水性コーティングを液体または蒸気の形態で蓋の上面または底面のうちの少なくとも1つに堆積させる。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、堆積のステップは、液体溶液を堆積させることを含む。
【0018】
少なくとも1つの実施形態において、堆積のステップは、蓋を液体溶液中に浸漬することを含む。
【0019】
少なくとも1つの実施形態において、堆積のステップは、蓋上に液体溶液を分注することを含む。
【0020】
少なくとも1つの実施形態において、液体溶液は、フルオロケミカルポリマーを含む。
【0021】
少なくとも1つの実施形態において、堆積のステップは、気体混合物の化学蒸着を含む。
【0022】
少なくとも1つの実施形態において、方法は、堆積のステップの前に、ラベルを蓋に接着させるステップをさらに含む。
【0023】
本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、添付図面および別記の請求項から容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるプリントカートリッジは、インクジェットプリントヘッドの通気孔の外へインクが漏れ出るのを防止しながら、通気孔によるプリントヘッドの適切な通気をなおも可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の典型的な実施形態の特徴および利点は、添付図面と照らし合わせながら以下の詳細な説明を参照することで、さらに完全に理解される。
【0026】
図1図1は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリントヘッドの斜視図である。
図2図2は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリンタの斜視図である。
図3図3は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリントヘッドの蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用する見出し項目は、構成上の目的しかなく、明細書または請求項の範囲を限定するために使用するものではない。本出願全体で使用する「してもよい」および「できる」という言葉は、強制(つまり「ねばならぬ」)の意味ではなく、許容(つまり「可能性がある」)の意味で使用している。同様に、「含む」および「含んでいる」という言葉は、何かを含むが限定的ではないことを意味する。理解しやすいように、可能な場合は、諸図に共通する類似の要素を表すのに類似の番号を付与している。
【0028】
図1は、本発明の典型的な一実施形態による、全体的に参照番号101で表されるインクジェットプリントヘッドの斜視図を示す。プリントヘッド101は、蓋161と本体163とで形成されているハウジング127を有しており、蓋の底面と本体の上面とをインターフェース171において取り付けるかまたは接続することで一体に組み立てられている。ハウジングの形状は、プリントヘッドを担持または収容する外部デバイス、プリントヘッドに収容されるインク量、およびプリントヘッドが1種類以上の異なるインクを収容するかどうかに依って様々である。いずれの実施形態でも、ハウジングまたは本体は、その内部に、初回または補充のインク、および使用中にインクジェットプリントヘッド内の適切な背圧を維持するためのフォームインサート、ラングなどの構造物を保持するためのコンパートメントを少なくとも1つは有している。ある実施形態では、内部コンパートメントは、3種類のインク、特にはシアン、マゼンタおよびイエローのインクを収容するための3つのチャンバを含んでいる。別の実施形態では、コンパートメントは、ブラックインク、フォトインクおよび/またはシアンインク、マゼンタインクもしくはイエローインクのうちの複数種を収容している。コンパートメントを遠隔の大容量インク源に接続する流体接続部(図示せず)が存在し得ることが理解される。
【0029】
テープ自動接合(TAB)回路201の1つの部分191が、ハウジングの1つの表面181に接着し、別の部分211が別の表面221に接着している。図示のように、これらの2つの表面181、221は、エッジ231のところで互いに対して直角に存在している。
【0030】
TAB回路201には複数の入力/出力(I/O)コネクタ241が作製されており、使用中にヒーターチップ251をプリンタ、ファックス機、コピー機、写真複写機、プロッター、複合機などの外部デバイスに電気的に接続する。TAB回路201には複数の導電体261が存在して、I/Oコネクタ241をヒーターチップ251の接合パッド281に電気的に接続したり短絡したりするが、そのような接続を容易にする様々な製造技法は知られている。なお、8つのI/Oコネクタ241、8つの導電体261、および8つの接合パッド281を示しているが、本明細書では任意の数が包含されることが理解される。また、そのようなコネクタ、導電体および接合パッドの数は、互いに同じでなくてもよいことも理解される。
【0031】
ヒーターチップ251は、ハウジング内部のインク供給部と流体接続する少なくとも1つのインクビア321を収容している。典型的には、ヒーターチップのインクビアの数は、ハウジング内部に収容されているインクの種類の数と1対1の対応である。ビアは通常、横並びまたは縦並びになっている。プリントヘッドの製造中、ヒーターチップ251は、好ましくは、当業界では周知の種々の接着剤、エポキシなどのうちのいずれかによりハウジングに取り付けられる。図示のように、ヒーターチップは、4列(A列〜D列)の抵抗加熱素子またはヒーターを収容している。この込み入った図中でわかりやすいように、列中のヒーターをドットで表しているが、典型的なプリントヘッドには何百というヒーターが収容されている。ヒーターチップのヒーターは、好ましくは、成長、堆積、マスキング、フォトリソグラフィおよび/またはエッチングもしくはその他の処理ステップにより、一連の薄膜層として形成されることが理解される。図示されていない、複数のノズル穴を有するノズルプレートは、薄膜処理中、インクを使用中に吐出するためにノズル穴がヒーターと揃うように、ヒーターチップに重ねて接着されるかまたはヒーターチップと一緒に製造される。
【0032】
図2を参照すると、外部デバイスが、プリントヘッド101を収容するインクジェットプリンタの形態で、全体的に401として示されている。プリンタ401は、1つ以上のプリントヘッドを収容する複数のスロット441を有するキャリッジ421を備える。キャリッジ421は、当業界では周知のように、ドライブベルト501に供給される推進力によって、シャフト481に沿って(コントローラ571の出力591により)印刷ゾーン431の上方で往復動させられる。キャリッジ421の往復動は、プリンタ401内で給紙トレイ541から用紙搬送路に沿って印刷ゾーン431を通過し排紙トレイ561へと送られる用紙521などの印刷媒体に対して相対的に実行される。
【0033】
印刷ゾーンでは、キャリッジ421は、矢印で示すように、用紙送り方向に対して概ね垂直の往復動方向に往復動する。そのようなときに、プリントヘッドからのインク滴は、プリンタのマイクロプロセッサまたは他のコントローラ571の指令に応じてヒーターチップ251(図7)から吐出されることになる。インク滴放出のタイミングは、印刷中の画像のピクセルパターンに対応する。多くの場合、そのようなパターンは、プリンタ外部の、コントローラに(外部入力により)電気的に接続されたデバイス、たとえばコンピュータ、スキャナ、カメラ、視覚的表示装置、携帯情報端末、またはその他で生成される。ユーザー選択インターフェース601を有するコントロールパネル581も、コントローラ571に入力621を与えて、プリンタの追加の性能や堅牢性を有効にする。
【0034】
インク一滴を印刷または放出するために、ヒーター(図7のA列〜D列のドット)に少量の電流が個別に流されて、少量のインクを急速に加熱する。それによってインクは局所のインクチャンバ内で蒸発し、ノズルプレートから印刷媒体に向けて吐出される。
【0035】
本明細書において記載されるインクジェットプリントヘッドという用語は、代わりにピエゾ技術などを含んでもよく、図示の上面発射構造の代わりに側面発射構造を具現化してもよい。
【0036】
図3は、本発明の典型的な一実施形態による、全体的に参照番号10(あるいは図7の蓋161)で表される蓋の上面斜視図を示す。蓋10は、上面12と略平行底面14との間で定義される厚みtを有する。一実施形態において、3つの空気拡散通気口16−1、16−2、16−3は、上面に存在し、蓋厚み内に所望の深さに彫られた蛇行チャネルを具現化する。チャネルは、その一方の末端部にある通気孔18から他方の末端部にある終端点20へと蛇行する。他の実施形態において、空気拡散通気口は、3つ以外の数で存在し、本体および/または本体と蓋との組み合わせを含むインクジェットプリントヘッドハウジングの任意の部分に存在する。各々の通気孔は、蓋を上面から底面まで完全に貫通して延び、インクジェットプリントヘッドの内部と空気拡散通気口との間での流体接続部を作り出している。このように、プリントヘッドの内部を大気へと通気させて使用中の背圧の蓄積を防止することができる。図示されていないが、通気孔の断面は、面積が一定の実質的に円柱の断面を含むことが好ましい。
【0037】
ラベル22は、適切なエポキシまたはその他の接着剤を使用して蓋の上面に接着されるかまたは取り付けられる。ラベル22は、空気拡散通気口16−1、16−2、16−3の一部を覆うかまたはその上に存在するように配置されるものの、拡散通気口16−1、16−2、16−3の末端部を露出させたまま残す。このようにして空気拡散通気口16−1、16−2、16−3は、使用中に大気圧との流体連通が可能になる。代表的な例を挙げると、インクジェットプリントヘッドの内容物が三色インク、たとえばシアン、マゼンタおよびイエローを含むときなど、3つの空気拡散通気口を大気と流体連通させる必要がある場合、製造者はこの位置にラベルを配置するであろう。
【0038】
従来の設計では、蓋に接触しているいかなるインクも、通気孔を通じて蛇行通気口の外へ毛細管現象により運ばれ得る。本発明は、蓋上に疎水性コーティングを配置してインクが漏れ出るのを防止しながら、プリントヘッドの通気をなおも可能にすることによって、この問題に対処する。具体的には、本発明によれば、疎水性コーティングは液体または蒸気の形態で蓋に塗布される。
【0039】
本発明の典型的な一実施形態によれば、蓋10に塗布される疎水性コーティングはフルオロケミカルポリマー溶液、たとえば、ハイドロフルオロエーテル溶媒で運ばれるフルオロケミカルアクリル系ポリマーなどである。そのようなコーティングの具体例としては、たとえば、米国ミネソタ州セントポールの3M Companyから入手可能なノベック(商標)1700およびノベック(商標)2702が挙げられる。別の典型的な実施形態において、疎水性コーティングは、たとえばn−オクタデシルトリクロロシランまたはトリメチルクロロシランなどの非フルオロケミカルポリマーを含み得る。液体コーティングは、たとえば溶液槽の中に蓋10全体を浸漬することによって塗布され得る。蓋10へのラベル22の接着を疎水性コーティングが妨げないように、浸漬の前にラベル22を蓋10上に配置することが好ましい。あるいは、蛇行通気路および通気孔18を含む空気拡散通気口16−1、16−2、16−3内のみに溶液を分注する分注システムを使用して、(結果として生じるコーティングが通気孔18を覆わないように)液体コーティングを塗布してもよい。適する分注システムの例としては、米国カリフォルニア州カールスバッドのPalomar Technologiesから入手可能な自動分注システムが挙げられる。
【0040】
本発明の別の典型的な実施形態によれば、疎水性コーティングは、蒸着を用いて蓋10に塗布される。適する蒸着ツールは、たとえば、米国カリフォルニア州メンローパークのIntegrated Surface Technologiesから入手可能なISTツールである。この方法を用いて、ラベルの配置後にコーティングを蓋10上に堆積させることが好ましい。コーティングは、蓋に結合させるためにトリメチルアルミニウムを使用して作り出されたアルミナシード層と、アルミナに結合させかつ自己組織化単層のための活性面を与えるために1,2−ビス(トリクロロシリル)エタンを使用して作り出されたシリカ層と、疎水面を作り出す自己組織化単層とを含む3層からなっていてもよい。次の分子を使用して自己組織化単層の様々な接触角が作り出され得る:(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシランおよび/または(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン。
【0041】
本発明の具体的な実施形態を例示し説明してきたが、当業者にとっては本発明の精神と範囲を逸脱しない様々な他の変化形態および変更形態が明白である。したがって、本発明の範囲内のそのような変化形態および変更形態は全て別記の請求項に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0042】
10 蓋
12 上面
14 底面
16−1、16−2、16−3 空気拡散通気口
18 通気孔
20 終端点
22 ラベル
101 プリントヘッド
127 ハウジング
161 蓋
163 本体
171 インターフェース
181、221 表面
191 部分
201 テープ自動接合回路
211 別の部分
231 エッジ
241 I/Oコネクタ
251 ヒーターチップ
261 導電体
281 接合パッド
321 インクビア
401 プリンタ
421 キャリッジ
431 印刷ゾーン
441 スロット
481 シャフト
501 ドライブベルト
521 用紙
541 給紙トレイ
561 排紙トレイ
571 コントローラ
581 コントロールパネル
591 出力
601 ユーザー選択インターフェース
621 入力
図1
図2
図3
【国際調査報告】