特表2017-537008(P2017-537008A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧 ▶ アンスティテュ ドゥ スーデュールの特許一覧

特表2017-537008液体ポリマー樹脂を使用して複合部材を製造するための成形装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537008(P2017-537008A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】液体ポリマー樹脂を使用して複合部材を製造するための成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20171117BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20171117BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20171117BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20171117BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   B29C43/36
   B29C33/10
   B29C43/18
   B29C43/32
   B29C43/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-529834(P2017-529834)
(86)(22)【出願日】2015年12月3日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月25日
(86)【国際出願番号】FR2015053309
(87)【国際公開番号】WO2016087788
(87)【国際公開日】20160609
(31)【優先権主張番号】1461865
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】517190050
【氏名又は名称】アンスティテュ ドゥ スーデュール
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コショワ, ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ, ジル
(72)【発明者】
【氏名】タイユミット, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ペラン, アンリ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA21
4F202AA29
4F202AA39
4F202AA41
4F202AA42
4F202AA43
4F202AD16
4F202AG01
4F202AH17
4F202AH31
4F202AH43
4F202AH46
4F202AH51
4F202AH59
4F202AM28
4F202CA09
4F202CB01
4F202CB11
4F202CP01
4F202CP04
4F202CP06
4F202CQ01
4F204AA21
4F204AA24
4F204AA29
4F204AA36
4F204AA39
4F204AA41
4F204AD16
4F204AG01
4F204AH17
4F204AH30
4F204AH31
4F204AH51
4F204AJ08
4F204AM28
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF01
4F204FF05
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FN20
4F204FQ15
(57)【要約】
本発明は、ポリマー樹脂(50)及び繊維状基材(51)を含む構造化又は半構造化された複合部材を製造するための成形装置(1)及び方法に関する。本発明によると、装置は、底部及び側面を含む金型(2)と、金型の側面に沿って可動であり、前記金型(2)の底部及び側面(5)と共にキャビティ(7)を形成する圧縮表面(14)を含む部分(10)とを含み、可動部分(10)が、キャビティの上方に位置し、前記キャビティ(7)と連通するチャンバ(25、42)内に開口する真空引きチャネル(13、23)を含むことを特徴とする。
【選択図】図1.1、図1.2、図1.3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー樹脂(50)及び繊維状基材(51)を含む構造化又は半構造化された複合部材を製造するための成形装置(1)において、
底部及び側面を含む金型(2)と、
金型の側面に沿って移動することができ、前記金型(2)の底部及び側面(5)と共にキャビティ(7)を形成する圧縮表面(14)を含む可動部分(10)と
を含み、
可動部分(10)が、キャビティの上方に位置し前記キャビティ(7)と連通するチャンバ(25、42)内に開口する真空引きチャネル(13、23)を含むことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
金型が、下側部分(3)と、金型を閉じるために前記下側部分と接触することができる上側部分(4)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
可動部分(10)が、金型の側面に沿って移動することができるパンチ(11)と、射出ヘッド(20)とをさらに含み、前記射出ヘッドが開口(26)によりキャビティ(7)と連通する射出カラム(22)を画定する壁(21)を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
下面を備えた下側部分(32)、上側部分(33)、及び凹み(31)を含むピストン(30)をさらに含み、前記ピストンが、射出カラム(22)に沿って、その下面が射出ヘッドの壁及び開口と共に射出カラムの下部を画定する開位置と呼ばれる少なくとも1つの第1の位置と、ピストンが射出カラムの開口を遮断する少なくとも1つの第2の位置との間で移動することができることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項5】
真空引きチャネル(23)が、射出ヘッド(20)の壁を貫通し、射出カラム(22)の下部(25)からなるチャンバ内に開口する第1のチャネルからなることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項6】
真空引きチャネル(23)がポリマー樹脂(50)を射出するためのチャネルでもあることを特徴とする、請求項5に記載の成形装置。
【請求項7】
射出ヘッド(20)が、射出ヘッドの壁を貫通し、カラム(22)からの樹脂(50)の排出を可能にする第2のチャネル(24)をさらに含むことを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項8】
閉位置において、ピストン(30)が、その凹み(31)のレベルで、射出ヘッドの壁、第1のチャネル(23)、及び第2のチャネル(24)と共に、未射出樹脂を再循環させる回路を形成することを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項9】
可動部分(10)が、カラー(40)をさらに含み、前記カラーが、パンチ(11)の側面に沿って、カラー(40)の下面がパンチの側面と共に開口(44)を介してキャビティ(7)と連通する収縮空間(42)を画定する開位置と呼ばれる少なくとも1つの第1の位置と、カラーが前記開口(44)を遮断する閉位置と呼ばれる少なくとも1つの第2の位置との間で移動することができることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項10】
収縮空間(42)がパンチ(30)内に位置する周辺の溝(43)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の成形装置。
【請求項11】
真空引きチャネル(13)が、パンチ内に位置し、収縮空間からなるチャンバ(42)内、又は前記収縮空間の周辺の溝(43)内に開口するチャネルからなることを特徴とする、請求項1、9及び10の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項12】
射出ヘッド(20)が、その壁を貫通する、樹脂を射出するための少なくとも1つの第1のチャネル(23)、及びその壁を貫通する、射出ヘッドからの樹脂の排出のための少なくとも1つの第2のチャネル(24)をさらに含むことを特徴とする、請求項3、及び9から11の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項13】
第1のチャネル(23)及び第2のチャネル(24)がピストンの凹み(31)及び射出ヘッドの壁(21)と共に未射出樹脂を再循環させる回路を形成することを特徴とする、請求項3、4及び12の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項14】
射出ヘッド(20)がその壁内に、樹脂を射出するための少なくとも1つの下部第1チャネル(23.1)及び前記射出ヘッドからの樹脂の排出のための少なくとも1つの上部第1チャネル(23.2)をさらに含み、前記第1の下部及び上部チャネルが直接上下に配置されて、ピストンの凹み及び射出ヘッドの壁と共に少なくとも1つの樹脂再循環回路を形成することを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項15】
射出ヘッド(10)がその壁内に、樹脂を射出するための少なくとも1つの下部第2チャネル(24.1)及び前記射出ヘッドからの樹脂の排出のための少なくとも1つの上部第2チャネル(24.2)をさらに含み、前記第2の下部及び上部チャネルが直接上下に配置されて、ピストンの凹み及び射出ヘッドの壁と共に少なくとも1つの樹脂再循環回路を形成することを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項16】
射出ヘッド(20)がその壁内に、樹脂を射出するためのn個の下部チャネル及び射出カラムから樹脂を排出するためのm個の上部チャネルを含み、nが2以上であり、mが2以上であり、nがmと等しいか又は異なっていて、nがmより小さければn個の樹脂再循環回路を形成し、又はmがnより小さいときはm個の再循環回路を形成することを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項17】
射出カラム(22)の上側部分が、押し付けられることが意図され、ピストンの上側部分を受容することができる空間(27)からなり、前記ピストンが、射出カラムに沿った前記ピストンの変位を可能にするために油圧式であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項18】
ポリマー樹脂及び繊維状基材を含む構造化又は半構造化された複合部材を製造する方法において、請求項1から17の何れか一項に記載の射出装置を使用して実施され、
a)繊維状基材をキャビティ内に配置する工程と、
b)成形装置の可動部分内に位置する真空引きチャネルを介してキャビティ内を真空引きする工程と、
c)樹脂射出チャネルを介して既定量のポリマー樹脂をキャビティ内に射出することによって繊維状基材に含浸させ、次いで成形装置の可動部分により前記樹脂を圧縮する工程と
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項19】
キャビティ内の未射出樹脂を再循環させるための1つ又は複数の回路をクリーニングする工程をさらに含み、前記クリーニング工程は樹脂圧縮工程の前、間、又は後に実施し得ることを特徴とする、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
樹脂射出工程の前にチャンバ閉鎖工程をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の製造方法。
【請求項21】
チャンバ閉鎖工程が、前記ピストンの閉位置への変位によって射出カラムの下部の開口をピストンの下面により遮断することからなることを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
チャンバ閉鎖工程が、前記カラーの閉位置への変位によって収縮空間の開口をカラーの下面により遮断することからなることを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
【請求項23】
ポリマー樹脂の単一成分射出を可能にすることを特徴とする、請求項1から13の何れか一項に記載の射出装置を使用する、請求項18から22の何れか一項に記載の部材の製造方法。
【請求項24】
ポリマー樹脂の二成分射出を可能にすることを特徴とする、請求項14から17の何れか一項に記載の射出装置を使用する、請求項18から22の何れか一項に記載の部材の製造方法。
【請求項25】
樹脂が、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ビニル−エステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、前記熱硬化性ポリエステル、ビニル−エステル、及びアクリル樹脂の混合物、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂から選択されることを特徴とする、単一成分モードにおける請求項18から23の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項26】
樹脂が、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ビニル−エステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、前記熱硬化性ポリエステル、ビニル−エステル、及びアクリル樹脂の混合物、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂から選択されることを特徴とする、二成分モードにおける請求項18から22及び24の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項27】
請求項18から26の何れか一項に記載の製造方法を実施することによって得られ、前記部材が自動車、道路輸送、例えばトラック、鉄道輸送、海上輸送、及び航空、風力、太陽光発電、太陽(熱)、建築、土木工学、家具及び都市インフラストラクチャー、信号、スポーツ及びレジャー活動の分野に使用できることを特徴とする、構造化又は半構造化された複合部材。
【請求項28】
いわゆる「ネットシェイプ」であり、すなわち残留する成形スプルーを含まず、離型後仕上げ処理をすることなくことを特徴とする、請求項27に記載の構造化又は半構造化された複合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部材の成形分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、液体ポリマー樹脂を使用して複合部材を製造するための成形装置に関する。本発明はまた、該成形装置を用いて実施される複合部材の製造方法、前記方法により得られる部材並びに該方法を実施するのに使用される樹脂にも関する。
【0003】
本発明の方法によって、ポリマー樹脂の単一成分又は多成分射出が可能になる。本明細書では以後、重合前のポリマー樹脂に対してポリマー樹脂という用語を使用し、重合後のポリマー樹脂に対して重合樹脂という用語を使用する。
【背景技術】
【0004】
上述したもののようなある種の部材又はある種の部材の集合体は大きい機械的な応力又は機械的な負荷がかかることがある。したがって、かかる部材は多くの場合複合材料から作製される。
【0005】
複合材料は少なくとも2つの不混和性成分の集合体である。かかる集合体では相乗効果が得られるので、得られる複合材料は、最初の成分の各々が保有していないか、又は保有はするが複合材料と比較してより低い程度に保有する、特に機械的及び/又は熱的な性質を保有する。
【0006】
また、複合材料は、前記複合材料に良好な機械特性を付与し、特に複合材料が受ける機械的な負荷の下での良好な挙動を提供する少なくとも1つの強化材、及び、連続相を形成し、前記複合材料の結合を確実にする母材材料、より簡単に言うと母材からなる。工業的に使用される様々な種類の複合材のうち、有機の母材を有する複合材が最も一般的である。有機の母材を有する複合材の場合、母材材料は一般にポリマーである。このポリマーは熱硬化性のポリマーでも、熱可塑性のポリマーでもよい。
【0007】
複合材料は、母材材料と強化材を混合し、又は強化材を母材材料で濡らし、若しくは含浸し、続いて得られた系を重合させることによって製造される。本明細書では以後樹脂といわれるポリマー母材と強化材は、前記樹脂を金型に射出することにより前記金型内で混合される。
【0008】
工業上一般的に使用される金型は、金型内部の圧力平衡を維持するための1つ以上のベントを備えた金型である。しかし、遮断されたベントは、成形後に得られる最終の部材に欠陥を生ずる可能性がある。また、ベントは一般に部材上にマークを残すため、このマークができるだけ目立たないようにするか、又は部材の成形後に加工処理される部分にマークが生じるように、ベント及び/又は部材を配置する必要がある。
【0009】
これらの問題を克服するために、ベントなしに真空中で作動する金型が設計された。樹脂を射出する前に、金型内を真空にして、樹脂による基材の最適な含浸を可能にし、できるだけ欠陥又は瑕疵の少ない複合部材を得る。
【0010】
例えば、DE202012104148は、互いに接触してキャビティを形成することができる2つの補完する金型部分から形成された成形型を記載している。成形型の下側部分は、真空点に接続され、前記下側部分の壁を貫通するチャネルを含む。上側部分は、特に、チャネルの一端がキャビティ内に開口していて、前記キャビティ内に真空を作り出すことができるようになっているいわゆる「開」位置と、チャネルの内側端が上側部分により遮断されているいわゆる「閉」位置との間で可動である。この型の上側部分の壁に沿って配置されたシールがキャビティとチャネルとの間、したがってキャビティと外部との間の良好な密封性を提供する。成形型の下側部分は射出口を含み、真空がキャビティ内に作り出され、成形型が閉位置にあるとき、射出口を通って樹脂が射出される。
【0011】
しかしながら、この種の成形型は非常に高価であり、その使用は複雑であり得ることが分かっている。また、キャビティの容積は成形型の開位置と閉位置とで大幅に減少する。この容積の大きい減少は、上側部分が下側部分に向かって近づく移動に起因している。この容積の変化はキャビティ内の圧力の変化を伴い、樹脂をキャビティ内に射出する工程中の圧力は前記キャビティ内に真空を作り出す先の工程中の圧力より大きくなる。この圧力差は得られる複合部材に欠陥及び/又は瑕疵を生じる可能性がある。
【0012】
また、真空引きすることができる容積は小さい。その理由は、この容積は成形型の下側部分に含まれるチャネルの容積によって決定されるからである。ここで、チャネルの直径は成形型の上側部分に提供されるシール間に位置する空間より大きくなることはできない。したがって、真空引きする速度は遅く、成形時間は長く、そのためこの種の成形型は高い生産速度の工業用途には適さない。
【0013】
EP0792903は、ポリイミド樹脂と繊維状強化材を用いて複合材を製造するための金型及び成形プロセスを記載している。金型は、互いに連結されることになる上側部分と下側部分を含む。上側部分と下側部分は、繊維状強化材と樹脂を受容するキャビティの境界を定める。上側部分は下側部分内に侵入するので、金型の閉鎖中この部分の移動の動きがある。金型の上側部分の形状は、この部分が下側部分内に移動することができるようになっている。また、金型は、キャビティの上方に位置し、前記キャビティと連通する真空引きチャネルを含む。
【0014】
DE102013207668は、繊維状強化材を有する複合材料を製造するための成形装置を記載している。金型は、接続され、強化材と樹脂を受容するキャビティの境界を定めるように意図された2つの部分を含む。成形装置は、金型の上側部分のチャネル内を動くロッドからなる部材を含む。装置はまた、キャビティの上方に位置し、それと連通するガス排出のためのチャネルも含む。ロッドの機能は、金型を開いた後成形品の取り出しを可能にすることである。
【0015】
したがって、本発明の目的は、欠陥がないか又は欠陥及び/又は瑕疵が少ない部材を得ることを可能にする、ポリマー樹脂をベースとする複合材料から部材を製造するための成形装置を提案することによって、従来技術の欠点を修正することである。本発明による成形装置では、また、高い流量での迅速な真空引き工程も可能になる。この種の装置では、また、成形キャビティの一定の容積、及び真空引きする際と樹脂を成形装置内に射出する際の無視できる圧力変化を維持することも可能になる。
【発明の概要】
【0016】
この目的のために、本発明は、ポリマー樹脂及び繊維状基材を含む構造化又は半構造化された複合部材の製造のための成形装置において、
底部及び側面を含む金型と、
金型の側面に沿って移動することができ、圧縮表面を含み、前記金型の底部及び側面と共にキャビティを形成する可動部分と
を含むことを特徴とし、
主に、可動部分が、キャビティの上方に位置するチャンバ内に開口しており、前記キャビティと連通している真空引きチャネルを含むことを特徴とする成形装置に関する。
【0017】
別の特徴によると、金型は、下側部分と、金型を閉じるために前記下側部分と接触することができる上側部分とを含む。
【0018】
可動部分は、さらに、金型の側面に沿って移動することができるパンチと、射出ヘッドとを含み、前記射出ヘッドは開口を介してキャビティと連通する射出カラムを画定する壁を備えている。
【0019】
別の特徴によると、金型はさらに下面を備えた下側部分、上側部分、及び凹みを含むピストンを含み、前記ピストンは、その下面が射出ヘッドの壁及び開口と共に射出カラムの下部を画定する、開位置といわれる少なくとも1つの第1の位置と、ピストンが射出カラムの開口を遮断する少なくとも1つの第2の位置との間で、射出カラムに沿って移動することができる。
【0020】
第1の実施態様によると、
真空引きチャネルは、射出ヘッドの壁を貫通し、射出カラムの下部からなるチャンバ中に開口している第1のチャネルからなり、
真空引きチャネルはまた、ポリマー樹脂を射出するためのチャネルでもあり、
射出ヘッドはさらに、射出ヘッドの壁を貫通していて、樹脂のカラムからの排出を可能にする第2のチャネルを含み、
閉位置で、その凹みのレベルにおいて、ピストンは、射出ヘッドの壁、第1のチャネル、及び第2のチャネルと共に、未射出樹脂を再循環させる回路を形成する。
【0021】
第2の実施態様によると、可動部分はさらに、パンチの側面に沿って、カラーの下面がパンチの側面と共に開口を介してキャビティと連通する収縮空間を画定する、開位置といわれる少なくとも1つの第1の位置と、カラーが前記開口を遮断する閉位置といわれる少なくとも1つの第2の位置との間で移動することができるカラーを含み、
収縮空間は、パンチ内に位置する周辺の溝を含み、
真空引きチャネルは、パンチ内に位置し、収縮空間により形成されるチャンバ中、又は前記収縮空間の周辺の溝中に開口しているチャネルからなり、
射出ヘッドはさらに、樹脂を射出するための、その壁を貫通する少なくとも1つの第1のチャネル、及び樹脂の射出ヘッドからの排出ための、その壁を貫通する少なくとも1つの第2のチャネルを含み、
第1のチャネル及び第2のチャネルは、ピストンの下面及び射出カラムの開口と共に、未射出樹脂を再循環させるための回路を形成している。
【0022】
第3の実施態様によると、射出ヘッドはさらに、その壁内に、樹脂を射出するための少なくとも1つの第1の下部チャネル及び樹脂を前記射出ヘッドから排出するための少なくとも1つの第1の上部チャネルを含み、前記第1の下部及び上部チャネルは直接上下に配置されており、ピストンの凹み及び射出ヘッドの壁と共に、未射出樹脂を再循環させるための少なくとも1つの回路を形成しており、
射出ヘッドはさらに、その壁内に、樹脂を射出するための少なくとも1つの第2の下部チャネル及び樹脂を前記射出ヘッドから排出するための少なくとも1つの第2の上部チャネルを含み、前記第2の下部及び上部チャネルは直接上下に配置されており、ピストンの凹み及び射出ヘッドの壁と共に、未射出樹脂を再循環させるための少なくとも1つの回路を形成しており
射出ヘッドは、その壁内に、樹脂を射出するためのn個の下部チャネル及び樹脂を射出カラムから排出するためのm個の上部チャネルを含み、nは2以上であり、mは2以上であり、nはmと等しいか又は異なっていて、nがmより小さければ未射出樹脂を再循環させるためのn個の回路を、又はmがnより小さければm個の再循環回路を形成し、
射出カラムの上側部分は、圧力がかけられることが意図されており、ピストンの上側部分を受容することができる空間からなり、前記ピストンは油圧式であって、射出カラムに沿った前記ピストンの変位を可能にしている。
【0023】
本発明はまた、ポリマー樹脂及び繊維状基材を含む構造化又は半構造化された複合部材の製造方法にも関し、この方法は、主として、射出装置を使用して実施され、
a)繊維状基材をキャビティ内に配置する工程と、
b)成形装置の可動部分内に位置する真空引きチャネルを介してキャビティ内を真空引きする工程と、
c)樹脂射出チャネルを介して既定量のポリマー樹脂をキャビティ内に射出することにより繊維状基材に含浸させ、次いで成形装置の可動部分により前記樹脂を圧縮する工程と
を含むことを特徴とする。
【0024】
もう1つ別の特徴によると、方法はさらに未射出樹脂をキャビティ内でクリーニングする工程を含み、前記クリーニング工程は樹脂圧縮工程の前、その工程中、又は後に実施し得る。
【0025】
樹脂射出工程に先立って、方法はチャンバ閉鎖工程を含む。
【0026】
チャンバ閉鎖工程は、前記ピストンの閉位置への変位により、射出カラムの下部の開口をピストンの下面によって遮断することからなる。
【0027】
チャンバ閉鎖工程は、前記カラーの閉位置への移動により、収縮空間の開口をカラーの下面によって遮断することからなる。
【0028】
本方法では、成形装置の3つの実施態様、より有利には第1及び第2の実施態様によって、ポリマー樹脂の単一成分射出が可能になる。
【0029】
本方法によると、第3の実施態様の成形装置を用いてポリマー樹脂の二成分射出が可能になる。
【0030】
本発明はまた、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ビニル−エステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、前記熱硬化性ポリエステル、ビニル−エステル、及びアクリル樹脂の混合物、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂から選択される、単一成分製造方法を実施するための液体ポリマー樹脂にも関する。
【0031】
本発明はまた、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ビニル−エステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、前記熱硬化性ポリエステル、ビニル−エステル、及びアクリル樹脂の混合物、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂から選択される、二成分製造方法を実施するための液体ポリマー樹脂にも関する。
【0032】
本発明はまた、本製造方法を実施することによって得られる構造化又は半構造化された複合部材にも関し、前記部材は自動車、道路輸送、例えばトラック、鉄道、海上、及び航空輸送、風力、太陽光発電、太陽(熱)、建築、土木工学、家具及び都市インフラストラクチャー、信号、スポーツ及びレジャー活動の分野で使用することができる。
【0033】
有利な特徴によると、得られる構造化又は半構造化された複合部材は「ネットシェイプ」と呼ばれ、すなわち、残留する成形スプルーを含まず、離型後仕上げ処理をしないで使用できる。
【0034】
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図面に示されている成形装置の概略図を参照した、説明のための非限定例としての以下の記載を見れば明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1.1】本発明の第1の実施態様による真空引き工程にある成形装置の断面図である。
図1.2】本発明の第1の実施態様による樹脂射出工程にある成形装置の断面図である。
図1.3】本発明の第1の実施態様による樹脂クリーニング及び圧縮工程にある成形装置の断面図である。
図2.1】本発明の第2の実施態様による真空引き工程にある成形装置の断面図である。
図2.2】本発明の第2の実施態様によるカラー閉鎖工程にある成形装置の断面図である。
図2.3】本発明の第2の実施態様による樹脂射出工程にある成形装置の断面図である。
図2.4】本発明の第2の実施態様による樹脂クリーニング及び圧縮工程にある成形装置の断面図である。
図3.1】本発明の第3の実施態様による真空引き工程にある成形装置の断面図である。
図3.2】本発明の第3の実施態様によるカラー閉鎖工程にある成形装置の断面図である。
図3.3】本発明の第3の実施態様による樹脂射出工程にある成形装置の断面図である。
図3.4】本発明の第3の実施態様による樹脂クリーニング及び圧縮工程にある成形装置の断面図である。
図4】アングルドリターンシステムの概略図である。
図5】樹脂保管手段の概略図である。
図6】周辺狭窄手段の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に述べる説明では、本発明の成形装置をまず一般的な用語で示し、その後該装置を3つの特定の実施態様に基づいてより詳細に説明する。
【0037】
成形装置の一般的な説明
本明細書で使用されるとき用語「モノマー」は重合することができる分子を指す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「重合」は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーに変換するプロセスをいう。オリゴマーは、小数のモノマーを含むポリマーである。
【0039】
「多成分射出」は少なくとも2種の成分を含む樹脂の射出を意味し、前記成分は成形装置内における前記樹脂の射出の工程から出発して初めて接触させられる。本明細書では、特に二成分射出、すなわち、2種の成分A及びBを含む樹脂の射出を示し、前記成分は成形装置内における前記樹脂の射出の工程から出発して初めて接触させられる。
【0040】
「単一成分射出」は少なくとも2種の成分を含む樹脂の射出を意味し、前記成分はその樹脂を成形プロセスの実施に使用する前に接触させられる。得られる混合物は一般に、使用される前に重合するのを防止するために低温で保管される。
【0041】
成形装置1は、下側部分3、及び前記下側部分と接触して、金型を閉じるために固定された部分上に配置されることができる上側部分4を含む金型2を含む。金型2は、その下側部分3内に備えられ、繊維状強化材を受容するようにされている底部6を含む。この底部は、周辺が金型の側面5によって限定されている。
【0042】
成形装置はまた、金型の側面5に沿って移動することができる可動部分10も含む。前記可動部分は、金型の外側壁5及び金型の底部6と共にキャビティ7を形成する圧縮表面14を含む。可動部分はまた、金型1の側面5に沿って移動することができるパンチ11、及び第1の実施態様では前記パンチによって取り囲まれるように前記パンチ内に、又は後に記載する第2及び第3の実施態様ではパンチ11内に収容されたカラー40内に含まれる射出ヘッド20も含む。
【0043】
可動部分10はまた、例えば真空ポンプのような真空引き装置に接続されることになる真空引きチャネル23又は13も含む。このチャネルはチャンバ25又は、以下に詳細に記載される実施態様ではチャンバ42に開口している。このチャンバ25又は42はキャビティ7の上方に位置し、このキャビティ上の開口26を介して前記キャビティ7と連通している。
【0044】
成形装置1は、さらに、可動部分10、特にパンチに運動を起こさせて、樹脂が重合するとき樹脂−基材集合体を圧縮するために、前記樹脂の重合反応の間ずっと前記可動部分に一定の圧力を加えることを可能にするシステム60を含むのが有利である。
【0045】
実際、樹脂50の重合中、繊維状基材51の前記樹脂による含浸の後、前記樹脂の体積収縮現象が観察される。樹脂−基材集合体により占められる容積は樹脂の重合反応が進行するにつれて減少し、その結果重合反応の終了時に得られる重合樹脂−基材集合体により占められる容積は最初の樹脂−基材集合体により占められていた容積より小さくなる。記載されている系によると、可動部分10、特に前記可動部分の圧縮表面14が樹脂−基材集合体と接触したままであり、重合反応中ずっと前記樹脂−基材集合体を圧縮することができるので、繊維状基材の樹脂による最適な含浸を得ることが可能になる。
【0046】
システムは図4に示されているような並進アングルドリターンシステム60を含むのが有利である。このシステムは、並進アングルドリターン62に対して負荷を加えるジャッキ(シリンダ)61を含み、前記アングルドリターンはジャッキの縦軸に対して角度αだけずれるように配置されている。アングルドリターンはパンチ11に接続されており、負荷をパンチに伝え、その結果前記パンチが並進運動をして金型の側面12に沿ってスライドすることが可能になる。
【0047】
複合部材の製造方法を実施するために、方法の全ての工程の間、可動部分10、特にパンチ11の動きと位置決めの正確な制御が必要である。この目的のため、ジャッキ61は複動式ジャッキであるのが好ましい。
【0048】
記載されているシステム60は、有利なことに、パンチに一定の圧力をかけることにより、前記樹脂の重合中の樹脂の収縮を相殺しながらパンチ11の移動が可能になる。作用させる圧力は特に、射出される樹脂の種類及び樹脂の体積に応じて決定される。このシステム60により、樹脂による繊維状基材の含浸の優れた均一性を得、良好な機械特性と共に粗さのない良好な表面仕上げを保有する複合部材を与えることが可能である。
【0049】
成形装置1は、有利なことに、射出された樹脂の体積が金型内の繊維状基材の最適な含浸に必要とされる体積より大きいとき、射出された樹脂の余剰分を受容することが可能な保管手段を含む。図5に示されているような保管手段は、有利なことに、射出された樹脂50の余剰分を受容することができるリザーブチャンバ70を含み、前記リザーブチャンバはライン71によりキャビティ7に接続される。このようにして、射出された樹脂の体積が繊維状基材の最適な含浸に必要とされる体積より大きいとき、その余剰の樹脂はラインを使用し、リザーブチャンバ70に入る。
【0050】
このリザーブチャンバ70の存在は樹脂の射出に対してより広い窓枠を提供する。すなわち、最適な含浸体積を超えたとき、余剰分はリザーブチャンバに入るからである。したがって、これらの保管手段は繊維状基材の最適な含浸を保証することができ、その結果良好な機械特性を保有する複合部材が得られる。
【0051】
3つの実施態様全てにおいて、成形装置は、有利なことに、パンチの下面及び/又は金型の底部の幾何形状の変化からなる部材の横断面の周辺狭窄のための手段を含む。図6に示されている狭窄手段は、パンチの側面12及び/又は金型の側面5の近くに位置し、図6において参照番号80、81及び82を有する3つの構造変形により例示されている。
【0052】
第1の変形において、パンチの下面15は湾曲してリップ80を形成している。第2の変形において、パンチの下面はノッチ81を含む。第3の構造形において、パンチの下面及び金型の底部6は勾配の変化を含み、傾斜面を形成している。
【0053】
部材の横断面の周辺狭窄のための前記手段(80、81、82)は、特に、前記基材の樹脂による含浸が極めて少ないか又はさらには存在しない基材のゾーンに対応する乾燥ゾーンの形成を避けることによって、繊維状基材51の樹脂50による含浸の良好な均一性を与える。こうして、部材の横断面の周辺狭窄のための前記手段(80、81、82)は、良好な機械特性を保有する複合部材を得ることを可能にする。
【0054】
成形装置の3つの実施態様の詳細な例及びこれら3つの実施態様による複合部材の製造。
以下、「低圧」射出ヘッド又は「高圧」射出ヘッドについて述べる。いわゆる「低圧」射出ヘッドは第1の実施態様及び第2の実施態様に関し、いわゆる「高圧」射出ヘッドは第3の実施態様に関する。
【0055】
図1.1、1.2及び1.3に示されている第1の実施態様
成形装置1は、下側部分3と、金型を閉じるために前記下側部分と接触することができる上側部分4とを含む金型2を含む。金型はその下側部分内に具備された底部6を含み、前記底部は周辺において金型の側面5により境界を定められている。
【0056】
この成形装置では、樹脂50の単一成分射出が可能である。上で記載したように、装置は、金型の側面5に沿って移動することができる可動部分10、この可動部分内に配置され、金型の側面に沿って移動することができるパンチ11、及びパンチ内に位置する射出ヘッド20を含む。射出ヘッド20はパンチと一体となっていて、パンチの移動が前記射出ヘッドの対応する移動となる。パンチの下面15は圧縮表面14を構成し、金型の外側壁5及び金型の底部6と共にキャビティ7を形成している。
【0057】
射出ヘッド20は、特に樹脂50の射出圧力が1バールから20バールの間であるときに使用される低圧射出ヘッドである。射出ヘッド20は、ほぼ垂直の射出カラム22の境界を定める壁21を含み、前記射出カラムは特にポリマー樹脂を受容することを意図しており、一方本発明による複合部材の製造方法を実施する。
【0058】
射出ヘッド20は、その壁21内に、第1のチャネル23及び第1のチャネルに対向しており射出ヘッドの縦軸に関して前記第1のチャネルとは異なるレベルに位置する第2のチャネル24を含む。第1のチャネル23は「下部」と呼ばれ、第2のチャネルは「上部」と呼ばれる。また、第1のチャネル23は、真空引きするために、真空ポンプのような真空引き装置(図には示していない)に接続することができる。第1のチャネル23はまた、樹脂の射出中射出カラム内への樹脂のための入口チャネルも構成する。このように、第1のチャネル23は、一方でキャビティ内を真空に引き、他方で射出カラム内に樹脂を射出する役割を果たす。この二重の機能は、図には示されていないが、有利には射出ヘッドの上流に具備されるスイッチシステムを用いて実施される。
【0059】
可動部分10は、射出ヘッドの射出カラム22内で、開位置と呼ばれる少なくとも1つの第1の位置と、閉位置と呼ばれる少なくとも1つの第2の位置との間で移動することができるピストン30を含む。開位置において、ピストンの底端部32、射出ヘッドの壁21、及びカラムの開口26は、実際問題として、開口26を介してキャビティ7と連通し、且つ第1のチャネル23と連通しているカラム22の一部分に対応するチャンバ25の境界を定めている。閉位置において、カラムの開口26はピストンの底端部32によって遮断されている。
【0060】
ピストン30は、その長さの一部に凹み31を含み、その寸法は可変であり、成形装置の射出ヘッドの寸法に依存する。凹みに沿ったピストンの横断面は、ピストン本体の横断面と比べて低下している。前記凹みは、射出カラムの内面と共に、未射出ポリマー樹脂を再循環させるための回路の境界を定める。
【0061】
射出ヘッドの壁内に具備された第1のチャネル23を介して真空に引かれる。真空引き工程の間、ピストン30は、第1のチャネルを遮断することなく第2のチャネル24を遮断する開位置にあって、射出ヘッドを介して、特に第2のチャネル24を介して空気が漏れることなく、金型のキャビティ7内に、そして射出ヘッド20のカラム部分25により形成されるチャンバ内に真空が作り出される。
【0062】
その後、樹脂50が射出ヘッドの第1のチャネル23を介して金型のキャビティ7中に射出されて、予め前記キャビティ内に置かれている繊維状基材51に含浸する。樹脂の射出中、ピストン30は開位置にあるままであって、第1のチャネル23を遮断することなく第2のチャネル24を遮断する。
【0063】
所望の量の樹脂が射出されたとき、ピストン30を閉位置に移して射出カラムの部分の開口26を遮断する。閉位置において、ピストンの凹み31は、射出ヘッドの壁21、第1のチャネル23、及び第2のチャネル24と共に、未射出樹脂を再循環させる回路を形成する。未射出樹脂をクリーニングする工程中、樹脂は第1のチャネル23を介して射出カラム22内を循環し、パンチの凹み31内を循環し、第2のチャネル24を介して前記カラムを出て行き、樹脂の排出を可能にする。
【0064】
再循環回路をクリーニングした後、パンチ11を低い位置に達するまで金型の側面5に沿って移動させる。この低い位置は、射出される樹脂の種類と体積に応じて、前記射出された樹脂と接触するように変化する。可動部分10は樹脂を圧縮して、繊維状基材の表面全体への樹脂の最大の拡大、及び繊維状基材の前記樹脂による最適な含浸を可能にする。樹脂の再循環回路をクリーニングする工程は圧縮工程の前、間、又は後に行うことができる。好ましくは、クリーニング及び圧縮工程は同時に行われる。
【0065】
この実施態様で記載されている成形装置で成形プロセスを実施すると、真空引き工程と樹脂射出の工程との間一定のままでいるキャビティ7の容積を得ることが可能である。実際、パンチ11は高い位置にあり、真空引き工程と樹脂射出工程を実施する間高い位置に留まる。かかるキャビティの不変性は、真空引き工程と樹脂射出工程との間にキャビティの容積が減少しキャビティ内の圧力が増大する従来技術の装置では見られない。
【0066】
図2.1、2.2、2.3、2.4に示されている第2の実施態様
成形装置は、先の第1の実施態様で記載した要素の全てとカラー40を含む。成形装置は樹脂の単一成分射出用に意図されている。実際、第2の実施態様において、前記成形装置1の可動部分10は、「低圧」射出ヘッド20が位置するカラー40を含み、前記カラーは前記低圧射出ヘッドを取り囲んでいる。カラー40は、パンチ11の側面12に沿って、且つ金型の側面5に対して移動することができる。特に、カラーは、開位置と呼ばれる少なくとも1つの第1の位置と、閉位置と呼ばれる少なくとも1つの第2の位置との間で移動することができる。
【0067】
カラーが開位置にあるとき、その下面41は、パンチの側面12及び開口44と共に、前記開口を介してキャビティ7に連通しており、且つチャネル13中に開口している収縮空間42からなるチャンバの境界を定めている。
【0068】
収縮空間42はパンチの側面12上に位置する周辺の溝43を含む。前記溝は好ましくは長方形の横断面であり、パンチの側面の全周辺にわたって伸延している。この周辺の溝の存在により、非常に高い真空引きする容積及び非常に高い真空引きする速度を得、したがって工業界で一般に使用されている装置と比較して大幅に低減した真空引きする時間を得ることが可能になる。この種の成形装置では、特に、1mに等しい表面積を有する部材に対して5秒以下の真空引きする時間を得ることが可能になり、一方工業界で得られる真空引きする時間は一般に1分より長い。
【0069】
真空は可動部分10のパンチ内に位置するチャネル13を介して引かれる。そのチャネルの一方の端部は収縮空間42により形成されたチャンバ中、特にキャビティ7に連通する収縮空間の周辺の溝43に開口しており、他の端部はパンチの外部に開口し、例えば真空ポンプのような真空引きシステムに接続されている。
【0070】
真空引き工程において、ピストン30は閉位置にあり、射出カラム22の開口26を遮断している。パンチ11は高い位置にあり、カラー40は開位置にあって収縮空間42を形成している。キャビティ内及び収縮空間内に真空が作り出されたとき、カラーがパンチの側面12に沿って閉位置になるまで移動し、こうして収縮空間42を満たす。カラーが溝を塞いで、この方法の以降の工程中空気がチャネル13を介してキャビティ7内に入るのを防ぐ。閉位置において、カラー40の下面41はパンチの下面15と同じレベルに位置し、カラー及びパンチの前記下面が圧縮表面14を構成する。その後、カラーはパンチに固定されて、前記パンチと一体になって、キャビティの密封性を保証する。
【0071】
次に、予め前記キャビティ内に入れられている繊維状基材51に含浸させるために樹脂50を金型2のキャビティ7内に射出する。樹脂の射出中、パンチ11は高い位置にあるままであり、カラーは閉位置にあるままである。第1の実施態様と同様、樹脂は射出ヘッドの第1のチャネル23を介して射出され、射出カラムに沿って流れ、その後キャビティ内で繊維状基材と接触する。
【0072】
先の第1の実施態様と同様に、所望の量の樹脂が金型キャビティ内に射出されたとき、ピストン30を閉位置に移動させて、射出カラム25の部分の開口26を遮断する。閉位置において、ピストン30の凹み31は射出ヘッドの壁、第1のチャネル23、及び第2のチャネル24と共に樹脂の再循環回路を形成する。クリーニング工程中、樹脂50は第1の射出チャネル23内を循環し、射出カラム内のピストンの凹み内を循環し、第2のチャネル24を介して前記カラムを出て行き、樹脂の排出を可能にする。
【0073】
クリーニングの後、成形装置の可動部分10を、射出された樹脂の種類と体積に応じて変化する低い位置に達するまで金型の壁に沿って移動させて、圧縮表面14を前記射出された樹脂と接触させる。可動部分は樹脂を圧縮して、繊維状基材51の表面全体への樹脂の最大の拡張、及び繊維状基材の前記樹脂による最適な含浸を可能にする。このクリーニング工程は圧縮工程の前、間、又は後に行うことができる。好ましくは、クリーニング及び圧縮工程が同時に起こる。
【0074】
図3.1、3.2、3.3、3.4に示されている第3の実施態様
成形装置は、先の第2の実施態様で記載した要素2、3、4及び11を含むが、射出ヘッド及び前記射出ヘッド内で可動であるピストンの構造と動作が異なる。この成形装置は、主として、樹脂の二成分射出用であるが、樹脂の単一成分射出も可能である。
【0075】
実際、いわゆる「高圧」射出ヘッド20は一般に50バールから100バールの間の樹脂射出圧力で使用され得る。この射出ヘッド20は、その壁21内に、直接上下に位置する第1の下部チャネル23.1及び第1の上部チャネル23.2、並びに直接上下に位置する第2の下部チャネル24.1及び第2の上部チャネル24.2を含む。第1及び第2の下部チャネルは互いに対して対向しており、互いに対面している。同様に、第1及び第2の上部チャネルは互いに対して対向しており、互いに対面している。
【0076】
射出ヘッド20はさらに、その長さの一部に凹み31を含む油圧式ピストン30を含み、前記油圧式ピストンは前記射出ヘッドのカラム22に沿って、開位置と呼ばれる少なくとも1つの第1の位置と、閉位置と呼ばれる第2の位置との間で移動することができる。
【0077】
開位置において、ピストンの底端部32、射出ヘッドの壁21、及びカラムの開口26は、特に、キャビティ7内に射出される前のポリマー樹脂を受容するようになっているカラム部分25の境界を定めている。
【0078】
閉位置において、カラムの開口26はピストンの底端部32により遮断されている。また、油圧式ピストンの一部に備えられた凹み31並びに上部及び下部チャネルはポリマー樹脂を循環させるための回路を形成している。第1の回路はピストンの凹み31、第1の下部チャネル23.1、及び第1の上部チャネル23.2によって形成される。第2の回路はピストンの凹み31、第2の下部チャネル24.1、及び第2の上部チャネル24.2により形成される。
【0079】
上に記載したように、ピストン30は、高い圧力でのポリマー樹脂の射出を可能にする油圧式ピストンである。かかる圧力をピストンにかけることができるように、射出ヘッドはピストンの上端部33を受容することができる空間27を含む。
【0080】
真空引きするのは、第2の実施態様と同様に、可動部分のパンチ内に位置するチャネル13を介して実施され、このチャネルの一方の端部は収縮空間42により形成されたチャンバ内に、特に開口44を介してキャビティ7に連通している収縮空間の周辺の溝43内に開口しており、他の端部はパンチの外部に開口し、例えば真空ポンプのような真空引きシステムに接続されている。
【0081】
真空引き工程において、ピストンは閉位置にあり、射出カラムの開口26を遮断している。パンチ11は高い位置にあり、カラー40は開位置にあって収縮空間44を形成している。成分A及びBは射出ヘッド内で、それぞれ第1の回路及び第2の回路内を再循環する。成分A及びBの再循環の速度は、樹脂射出の以降の工程中高い圧力での前記成分の最適な混合が可能になるように調節される。特に、成分AとBの再循環の速度は樹脂射出の以降の工程中樹脂の射出の速度と同じでも異なってもよい。
【0082】
キャビティ内及び収縮空間内に真空が作り出されたとき、パンチの側面12に沿ってカラー40を閉位置に達するまで移動させ、収縮空間42を満たす。本方法の以降の工程中チャネル13を介してキャビティ7中に空気が入ることを防止するために、カラーが溝43を塞ぐ。閉位置において、カラーの下面41はパンチの下面15と同じレベルに位置し、カラー及びパンチの前記下面が圧縮表面14を形成している。次いで、カラーがパンチに固定され、キャビティの密封性を保証するために前記パンチと一体になる。
【0083】
その後、樹脂50を金型のキャビティ7中に射出して、予め前記キャビティ内に入れられていた繊維状基材51に含浸させる。この樹脂射出工程において、ピストン30は開位置にあり、したがって第1の下部チャネル23.1及び第2の下部チャネル24.1はカラム部分25内に開口している。
【0084】
成分AとBはそれぞれ第1の下部チャネルと第2の下部チャネルを介してカラム部分中に射出され、そこで互いに高い圧力で接触する。射出圧力並びに成分A及びBの射出の速度は再循環圧力並びに前記成分A及びBの再循環の速度と同じ又は異なるように選択することができる。
【0085】
成分AとBをカラム部分において高い圧力及び高い流量で接触させることで、繊維状基材の最適な含浸のための、前記成分の均一な混合を得、したがって均一なポリマー樹脂を得ることが可能になる。
【0086】
所望の量の樹脂が金型キャビティ内に射出されたとき、ピストン30を閉位置に移動させて射出カラムの部分の開口26を遮断する。その後、成分AとBは、真空引き工程と同じように、射出ヘッド内で、それぞれ、第1の回路と第2の回路内を再循環する。
【0087】
樹脂の再循環の後、成形装置の可動部分10を、金型の側面5に沿って、射出された樹脂の種類と体積に応じて変化する低い位置に到達するまで移動させ、その結果圧縮表面14が前記射出された樹脂と接触する。可動部分は樹脂を圧縮して、繊維状基材の表面全体への樹脂の最大の拡張、並びに繊維状基材の前記樹脂による最適な含浸を可能にする。樹脂の再循環工程は圧縮工程の前、間、又は後に実施することができる。好ましくは、循環及び圧縮工程は同時に起こる。
【0088】
射出は単一成分又は二成分モードで実施できる。特に、成分AとBは同じであっても異なっていてもよい。
【0089】
成分A及びBはまた異なっていてもよく、各々が異なるポリマー樹脂からなっていて、2つの異なるポリマー樹脂の二成分射出となってもよい。
【0090】
射出は、多成分モードで、すなわち2種以上の数の成分を用いて、下部及び上部チャネルの数並びに樹脂の再循環のための回路の数を適切に適応させて実施できる。
【0091】
あるいは、成分Aのみ又は成分Bのみを単一成分モードで射出することも可能であり、各々が1つのポリマー樹脂からなる。
【0092】
構造化又は半構造化された複合部材の製造方法
記載されている成形装置では、構造化又は半構造化された複合部材の製造が可能になる。この部材は、ポリマー樹脂、特に1種以上の熱可塑性又は熱硬化性ポリマー樹脂、及び繊維状基材を用いて成形することにより、様々な実施態様で記載されているようにして得られる。これらのポリマー樹脂はまた、成形プロセスで使用される成形装置内で重合を経た後に得られる複合材料のポリマー母材の前駆体であるので、プレポリマーとも呼ばれる。
【0093】
本方法はより特定的には以下の工程を含む。
成形装置のキャビティ7の底部6に繊維状基材51を配置する工程。成形装置の金型2は開位置にあって、前記金型のキャビティ内に繊維状基材を配置することができる。次いで、前記成形装置の上側部分4と下側部分3を接触させた後、例えばプレスのような閉鎖システム、又は工業上一般に使用されている他のいずれかの成形装置閉鎖システムを用いて前記上側部分を前記下側部分に押し付けることによって成形装置を閉じる。
この目的のために備えられたチャネルを介して、キャビティ7内に真空を作り出すか、又はキャビティ内を真空引きする工程。この真空引きチャネルは成形装置の可動部分内に位置し、キャビティ7に連通するチャンバ25又は40内に開口している。真空引きチャネルは、キャビティ内を真空引きする工程を実行するために、例えば真空ポンプのような真空引きシステムに接続されるようになっている。こうして、真空引き工程の終了時、チャンバ内及びキャビティ内に真空が作り出される。
前もって成形装置のキャビティ7内に配置された繊維状基材の、単一成分又は多成分モード、特に二成分モードでのポリマー樹脂による含浸工程。
【0094】
含浸工程は、樹脂をキャビティ内に射出する工程と、その後前記樹脂及び繊維状基材を圧縮する工程を含む。
【0095】
樹脂は可動部分10内に位置する射出チャネルを介して射出され、このチャネルは先に第1の実施態様において真空引きするために使用されたものと同じである。このチャネルは射出ヘッド20の壁内に備えられており、射出カラム22内へ開口する1つの端部と、射出ヘッドの外部に開口する他の端部を含む。既定量の樹脂51がチャネルを介して射出され、射出ヘッドを貫通し、次いでキャビティ内に入り、繊維状基材51と接触して複合材料を形成する。樹脂の重合後、複合材料のポリマー母材を構成する重合樹脂が得られる。
【0096】
本発明による成形装置を用いて行われる成形方法により、真空引き工程と樹脂50の射出工程との間で変化しないキャビティ7の容積を得ることが可能になる。また、提案されている成形装置によると、真空引き工程と樹脂の射出工程との間で不変又は準−不変である圧力を得ることも可能になる。「準−不変の圧力」とは、キャビティ内の圧力の無視できる変化、また、圧力の前記変化の、得られる複合部材の質に対する無視できる影響を意味する。
【0097】
実際、第1の実施態様において、パンチ11の位置は真空引きする際と樹脂を射出する際との間変化しない。第2及び第3の実施態様において、パンチは固定されたままであり、カラー40のみが開位置から閉位置へ移動して、収縮空間42によって形成されたチャンバを満たす。収縮空間の開口26の面積の、キャビティの総面積に対する、したがって得られる部材の面積に対する割合は5%より小さいので、カラーの移動に起因するキャビティ7の圧力の増大は無視できる。
【0098】
また、本発明の第2及び第3の実施態様による複合部材の製造のための成形装置によって、真空引きする非常に大きい面積を得ることも可能になり、そのため100ミリバールより高い、好ましくは50ミリバールより高い真空を、10秒未満、好ましくは5秒未満で作り出すことが可能になる。非常に高い真空とは、100ミリバール未満、好ましくは50ミリバール未満の金型内、好ましくはキャビティ内の圧力を意味する。
【0099】
結果として、この種の成形装置では、より小さい数の欠陥及び/又は瑕疵を有する複合部材、及びポリマー樹脂による繊維状基材の最適な含浸を得ることが可能になる。
【0100】
繊維状基材
繊維状基材に関し、前記基材は好ましくは、前記繊維状基材が成形キャビティの底部を完全に又は殆ど完全に覆うように、前記成形キャビティの寸法に対応する寸法を有する。
【0101】
繊維状基材は好ましくは、L/D比(長さ対直径の比)が1000超、好ましくは2000超、有利には3000超、より有利には5000超、さらにより有利には6000超、さらにより有利には7500超、最も有利には10000超である長い繊維を含む。
【0102】
繊維
基材の繊維は連続であり、プリフォームであり得る集合体の形態であってもよい。基材の繊維は、一方向(UD)又は多方向(2D、3D)強化材の形態であってもよい。特に、これらは織物、布、層、ストリップ又は組紐の形態であってもよく、また例えば不織布(マット)の形態、又はフェルトの形態に切断されていてもよい。
【0103】
基材の繊維は直径が0.005μmから100μm、好ましくは1μmから50μm、より好ましくは3μmから30μm、有利には5μmから25μmの間である。
【0104】
基材の繊維は、
鉱物繊維、好ましくは適用温度を超える高い溶融点Tmを有するもの、
ポリマー性又はポリマー繊維、好ましくは適用温度より十分高い溶融点Tm’を有するか、又はTm’が存在しないときはガラス転移温度Tg’を有するもの、又は
上記繊維の混合物
から選択され得る。
【0105】
より特定的には、繊維は次のように選択され得る。
鉱物繊維は、炭素繊維、炭素ナノチューブ繊維、ガラス繊維、特にE、R又はS2タイプのもの、ホウ素繊維、セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、玄武岩繊維、金属及び/又は金属合金をベースとする繊維又はフィラメント、Alのような金属酸化物をベースとする繊維、金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維のような金属化繊維、又は上記繊維の混合物から選択され得る、
ポリマー又はポリマー性繊維は、上述した条件下で、以下のものから選択される:
熱可塑性ポリマーの、より特定的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択される繊維、
ポリアミドの繊維、
アラミド(Kevlar(登録商標)のような)並びに式:PPD.T、MPD.I、PAA及びPPAの1つに対応するもののような芳香族ポリアミドの繊維、式中、PPD及びMPDはそれぞれp−及びm−フェニレンジアミンであり、PAAはポリアリールアミドを意味し、PPAはポリフタルアミドを意味する、
ポリアミド/ポリエーテルのようなポリアミドブロックコポリマーの繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維。
【0106】
好ましい強化用繊維は、金属化されたものを含む炭素繊維、E、R、S2タイプの金属化されたものを含むガラス繊維、アラミド(Kevlar(登録商標)のような)若しくは芳香族ポリアミドの繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)の繊維、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)の繊維又はこれらの混合物から選択される長繊維である。
【0107】
より特定的に好ましい繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維及びアラミド(Kevlar(登録商標)のような)の繊維又はこれらの混合物から選択される。
【0108】
前記繊維は、前記複合材料の40−70vol%、好ましくは45−70vol%、さらにより好ましくは50−65vol%のレベルを占め得る。
【0109】
繊維の集合体はランダム(マット)、一方向(UD)又は多方向(2D、3D又はその他)であり得る。その「重量」、すなわち単位平方メートル当たりのその重量は、100−1000g/m、好ましくは150−900g/m、さらにより好ましくは200−700g/mの範囲であり得る。
【0110】
ポリマー樹脂
図で参照番号50により示されるポリマー樹脂は成形装置1中に射出される。
【0111】
ここで、ポリマー樹脂は、反応性の基を含む成分を含む粘稠な液体の化学組成物を意味する。前記樹脂は、成形装置1中に射出されたとき、繊維状基材51への含浸及び以降の前記樹脂の重合により、したがって重合樹脂を形成することにより、様々な用途向け、例えば鉄道輸送、航空、又は建設及び建築の分野における複合部材を得ることを可能にする。
【0112】
使用される樹脂は、その場での重合を可能にする反応性の樹脂である。これらの樹脂は液体であり、300℃以下の一定の温度で10000mPa.s以下の粘度を有する。
【0113】
ポリマー樹脂の射出は、第1の実施態様及び第2の実施態様に従って単一成分モードで、又は、第3の実施態様に従って多成分モード、特に二成分モードで行うことができる。
【0114】
樹脂は、反応性であってもそうでなくてもよい少なくとも1種のポリマー又はオリゴマー、並びに少なくとも1種のモノマー又は前記ポリマー又はオリゴマーが反応性であれば前記モノマー又はオリゴマーと反応することができる鎖延長剤を含むシロップを含む。樹脂はまた、モノマー又は鎖延長剤と反応して重合を開始させることが意図された少なくとも1種の開始剤又は触媒も含む。
【0115】
特に、樹脂の重合はラジカル重合、又は重付加若しくは重縮合であってもよい。
【0116】
単一成分射出の場合
ラジカル重合による。樹脂は、反応性であってもそうでなくてもよい少なくとも1種のポリマー又はオリゴマー、及び少なくとも1種のモノマーを含むシロップを含む。樹脂はまた、前記ポリマー又はオリゴマーが反応性であればモノマー及び/又はポリマー若しくはオリゴマーと反応して重合を開始させることが意図された少なくとも1種の開始剤も含む。
重付加又は重縮合による。樹脂は、少なくとも1種の反応性のポリマー又はオリゴマーを含むシロップを含む。樹脂はまた、反応性のポリマー又はオリゴマーと反応して重合を開始させることが意図された少なくとも1種の鎖延長剤も含む。
【0117】
樹脂の単一成分射出は、本発明の成形装置の3つ全ての実施態様で、より有利には第1及び第2の実施態様で使用できる。
【0118】
単一成分射出に使用される樹脂は次のものを含む。
添加剤の存在下で1種以上の反応性のモノマーに希釈された不飽和ポリエステルポリマーからなる熱硬化性ポリエステル樹脂。ポリマー及び/又はポリマー(複数)及びモノマー及び/又はモノマー(複数)はラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にスチレンであるが、スチレンと組み合わせて、又は組み合わせないで、(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
添加剤の存在下で1種以上の反応性のモノマーに希釈されたメタクリル化エポキシポリマーからなる熱硬化性ビニル−エステル樹脂。ポリマー及び/又はポリマー(複数)及びモノマー及び/又はモノマー(複数)はラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にスチレンであるが、スチレンと組み合わせて、又は組み合わせないで、(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
添加剤の存在下で1種以上の反応性のモノマーに希釈された(メタ)アクリル化ウレタンポリマー又は(メタ)アクリル化ポリエステルからなる熱硬化性アクリル樹脂。ポリマー及び/又はポリマー(複数)及びモノマー及び/又はモノマー(複数)はラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にメタクリル酸メチルであるが、メタクリル酸メチルと組み合わせて、又は組み合わせないで、スチレン又は(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
3種類の上記樹脂の混合物。
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種のモノマー、並びに前記少なくとも1種のモノマーの重合を開始させる開始剤からなる熱可塑性アクリル樹脂。1種以上のモノマーはラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にメタクリル酸メチルであるが、メタクリル酸メチルと組み合わせて、又は組み合わせないで、(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
出典明示により援用されるEP1191050及びEP2586585に記載されているもののような熱可塑性ポリアミド樹脂(PA及びPAHT)。特に、一例として、β,β−ジメチルプロピオラクタム、α,α−ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム及びラウリルラクタムのような少なくとも種のラクタムモノマーを含む熱可塑性ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0119】
いわゆる二成分射出の場合
ラジカル重合による。樹脂は、反応性であってもそうでなくてもよい少なくとも種のポリマー又はオリゴマー、及び少なくとも1種のモノマーを含むシロップからなる成分Aを含む。また、樹脂は、前記ポリマー又はオリゴマーが反応性であればモノマー及び/又はポリマー又はオリゴマーと反応して重合を開始させることが意図された少なくとも1種の開始剤を含む成分Bも含む。
重付加又は重縮合による。樹脂は、少なくとも1種の反応性のポリマー又はオリゴマーを含むシロップからなる成分Aを含む。また、樹脂は、反応性のポリマー又はオリゴマーと反応して重合を開始させることが意図された少なくとも1種の鎖延長剤を含む成分Bも含む。
【0120】
成分A及びBはポリマー樹脂の射出中に成形装置内で接触するので、成分AとBの混合物を低温で保管する工程が回避される。
【0121】
樹脂の二成分射出は本発明の第3の実施態様の成形装置で実施することができる。
【0122】
多成分射出、特に二成分射出に使用される樹脂は次のものを含む。
添加剤の存在下で1種以上の反応性のモノマーに希釈された不飽和ポリエステルポリマーからなる熱硬化性ポリエステル樹脂。ポリマー及び/又はポリマー(複数)及びモノマー及び/又はモノマー(複数)はラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にスチレンであるが、スチレンと組み合わせて、又は組み合わせないで、(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
添加剤の存在下で1種以上の反応性のモノマーに希釈されたメタクリル化エポキシポリマーからなる熱硬化性ビニル−エステル樹脂。ポリマー及び/又はポリマー(複数)及びモノマー及び/又はモノマーは(複数)ラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にスチレンであるが、スチレンと組み合わせて、又は組み合わせないで、(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
添加剤の存在下で1種以上の反応性のモノマーに希釈された(メタ)アクリル化ウレタンポリマー又は(メタ)アクリル化ポリエステルからなる熱硬化性アクリル樹脂。ポリマー及び/又はポリマー(複数)及びモノマー及び/又はモノマー(複数)はラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にメタクリル酸メチルであるが、メタクリル酸メチルと組み合わせて、又は組み合わせないで、スチレン又は(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
3種類の上記樹脂の混合物。
添加剤及び/又は希釈剤の存在下での、イソシアネート基を有するポリマー又はオリゴマーをベースとする熱硬化性ポリウレタン樹脂。重合は、任意選択的に促進剤を存在させて、ポリオール又はポリアミンの重付加又は重縮合によって行われる。
添加剤及び/又は希釈剤の存在下での、エポキシ基を有するポリマー又はオリゴマーをベースとする熱硬化性エポキシ樹脂。重合は、任意選択的に促進剤を存在させて、ポリアミン又は無水物の重付加又は重縮合によって行われる。
少なくとも1種のポリマー及び少なくとも1種のモノマー、並びに前記少なくとも1種のモノマーの重合を開始させる開始剤からなる熱可塑性アクリル樹脂。1種以上のモノマーはラジカル重合により重合可能であり、重合は、促進剤を用いて、又は用いないで、例えば過酸化物のような開始剤により開始される。反応性のモノマーは一般にメタクリル酸メチルであるが、メタクリル酸メチルと組み合わせて、又は組み合わせないで、(メタ)アクリルモノマーのような他のビニルモノマーを含んでいてもよい。
出典明示により援用される欧州特許出願公開第1191050号及び同第2586585号に記載されているもののような熱可塑性ポリアミド樹脂(PA及びPAHT)。特に、一例として、β,β−ジメチルプロピオラクタム、α,α−ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム及びラウリルラクタムのような少なくとも1種のラクタムモノマーを含む熱可塑性ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0123】
複合部材
上に記載された成形装置と方法により、複合部材、又は構造化若しくは半構造化された複合部材、特に残留する成形スプルーを含まず、離型後仕上げ処理なしで使用することができる部材を作成することが可能になる。
【0124】
より特定的には、前記部材は、成形産業で現行の用語によると、最終使用の前に特別な機械加工又は仕上げ処理を必要としないことを意味する「ネットシェイプ」である。これは製造の特別な条件に関係しており、特に、真空下で作動し、したがってベントを必要とすることのない金型で成形するという特別な製造条件に関連している。このベントは、通常(存在するときは)、離型の際このベントに関連して形成されるスプルーを追加の機械加工及び仕上げ処理によって除去する必要性を生ずる。これは、最終構造における重要な違いであり、この分野における従来技術と比べて重大な追加の利点である。実際、本装置は構造化又は半構造化された複合部材の工業的な製造に適しており、特に、その結果として、生産性が向上し、廃棄物がなく、改良された機械的な性質を有する欠陥のない機械的な部材が得られる。
【0125】
こうして得られる構造化又は半構造化された部材は、様々な最終用途に、特に自動車分野、道路輸送、例えば、トラックの部材、鉄道、海上及び航空輸送、太陽光発電、(熱的)太陽光発電、特に太陽光発電所の部材、風力、宇宙、建築及び土木工学、家具及び都市インフラストラクチャー、信号、スポーツ及びレジャー活動に使用し得る。
図1.1】
図1.2】
図1.3】
図2.1】
図2.2】
図2.3】
図2.4】
図3.1】
図3.2】
図3.3】
図3.4】
図4
図5
図6
【国際調査報告】