特表2017-537022(P2017-537022A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537022(P2017-537022A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】航空機タイヤの保護クラウン補強体
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20171117BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   B60C9/18 H
   B60C9/20 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-530634(P2017-530634)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2015078362
(87)【国際公開番号】WO2016091683
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】1462030
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(71)【出願人】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】キーブレ リミャレグド
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA37
3D131BB05
3D131BC22
3D131BC23
3D131BC51
3D131BC52
3D131DA31
3D131DA62
3D131LA28
(57)【要約】
本発明は、航空機のタイヤ、特にその保護補強体に関し、本発明の目的は、異物による穿孔及び切断に対する航空機タイヤの保護補強体の抵抗力を高めることである。本発明によれば、保護補強体(3)は、補強材(4)の直径Dの2倍に少なくとも等しい平均半径方向厚Tを有し、保護補強体(3)は、補強材(4)の直径Dに少なくとも等しい軸方向幅Wを有するエラストマ化合物で構成された部分(7)を、保護補強体(3)の半径方向内側面(31)上及び半径方向外側面(32)上にそれぞれ含み、あらゆる補強材(4)のタイヤの円周方向(XX’)の経路は、保護補強体(3)の補強材(4)の経路の集合体が3次元格子を構成するように、半径方向内側の第1の面(31)と半径方向外側の第2の面(32)との間で半径方向に変化する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機タイヤ(1)であって、
− 地面に接触するように意図されたトレッド部(2)と、
− 前記トレッド部(2)の半径方向内側の保護補強体(3)と、
を備え、
− 前記保護補強体(3)は、前記タイヤの回転軸(YY’)をその回転の軸とし、第1の軸端(E1)から第2の軸端(E2)まで軸方向幅Lにわたって軸方向に延び、半径方向内側の第1の面(31)から半径方向外側の第2の面(32)まで平均半径方向厚Tにわたって半径方向に延びる円筒構造を有し、
− 前記保護補強体(3)は、直径Dを有するとともに前記タイヤの円周方向(XX’)の経路を有する、エラストマ化合物で被覆された補強材(4)を含み、
− 前記保護補強体(3)は、ワーキング補強体(5)の半径方向外側に存在し、
− 前記ワーキング補強体(5)は、前記タイヤの前記円周方向(XX’)のジグザグ経路を有する補強材(6)で構成された、少なくとも2つの半径方向に重なり合ったワーキング層を含み、
前記保護補強体(3)は、前記補強材(4)の直径Dの2倍以上である平均半径方向厚Tを有し、前記保護補強体(3)は、前記補強材(4)の前記直径D以上である軸方向幅Wを有するエラストマ化合物で構成された部分(7)を、前記保護補強体(3)の前記半径方向内側面(31)上及び半径方向外側面(32)上にそれぞれ含み、前記保護補強体(3)のあらゆる前記補強材(4)の前記タイヤの前記円周方向(XX’)の前記経路は、前記保護補強体(3)の前記補強材(4)の前記経路の集合体が3次元格子を構成するように、前記半径方向内側の第1の面(31)と前記半径方向外側の第2の面(32)との間で半径方向に変化する、
ことを特徴とする航空機タイヤ。
【請求項2】
前記保護補強体(3)は、前記補強材(4)の前記直径Dの5倍以下の平均半径方向厚Tを有する、
請求項1に記載の航空機タイヤ(1)。
【請求項3】
前記保護補強体(3)の前記半径方向内側面(31)上及び前記半径方向外側面(32)上にそれぞれ含まれる前記エラストマ化合物で構成された部分(7)の前記軸方向幅Wは、前記補強材(4)の前記直径Dの10倍以下、好ましくは前記補強材(4)の前記直径Dの5倍以下である、
請求項1又は2に記載の航空機タイヤ(1)。
【請求項4】
いずれの子午面(YZ)においても、前記保護補強体(3)の前記半径方向内側面(31)上及び前記半径方向外側面(32)上にそれぞれ含まれる前記エラストマ化合物で構成された部分(7)の前記軸方向幅Wと、前記保護補強体(3)の前記軸方向幅Lとの比率Rは、0.08以上、好ましくは0.10以上であり、
請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機タイヤ(1)。
【請求項5】
いずれの子午面(YZ)においても、前記保護補強体(3)の前記半径方向内側面(31)上及び前記半径方向外側面(32)上にそれぞれ含まれる前記エラストマ化合物で構成された部分(7)の前記軸方向幅Wと、前記保護補強体(3)の前記軸方向幅Lとの比率Rは、0.20以下、好ましくは0.15以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の航空機タイヤ(1)。
【請求項6】
前記保護補強体(3)の前記補強材(4)は、少なくとも2つの連続する補強材(4)を含むストリップ(8)にグループ化される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の航空機タイヤ(1)。
【請求項7】
前記保護補強体(3)の前記補強材(4)は、少なくとも1種類の繊維材料で構成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機タイヤ(1)。
【請求項8】
前記保護補強体(3)の前記補強材(4)は、脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミド、或いは脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで構成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機タイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機タイヤに関し、特に航空機タイヤの保護補強体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは、回転軸に関して回転対称性を示す形状を有するので、タイヤの形状は、一般にタイヤの回転軸を含む子午面又は半径方向面で表される。所与の子午面では、半径方向、軸方向及び円周方向は、タイヤの回転軸に垂直な方向、タイヤの回転軸に平行な方向、及び子午面に垂直な方向をそれぞれ示す。
【0003】
以下、「半径方向に」、「軸方向に」及び「円周方向に」という表現は、タイヤの「半径方向に」、「軸方向に」及び「円周方向に」をそれぞれ意味する。「〜の半径方向内側及び/又は〜の半径方向外側」という表現は、「半径方向において〜よりもタイヤの回転軸に近く、及び/又は半径方向において〜よりもタイヤの回転軸から離れている」ことを意味する。「軸方向内側及び/又は軸方向外側」という表現は、「軸方向において〜よりもタイヤの赤道面に近く、及び/又は軸方向において〜よりもタイヤの赤道面から離れている」ことを意味し、タイヤの赤道面とは、タイヤの回転軸に垂直な、タイヤのトレッド部の中心を通る面のことである。
【0004】
タイヤの保護補強体は、タイヤの回転軸をその回転の軸とする円筒構造である。保護補強体は、第1の軸端から第2の軸端まで軸方向幅Lにわたって軸方向に延びるとともに、半径方向内側の第1の面から半径方向外側の第2の面まで平均半径方向厚Tにわたって半径方向に延びる。半径方向では、保護補強体は、金属又は繊維である補強要素又は補強材で構成された少なくとも1つの保護層のスタックである。これらの補強材は、エラストマ化合物、すなわち様々な成分をブレンドすることによって得られる天然ゴム又は合成ゴムに基づく材料で被覆される。保護補強体が少なくとも2つの保護層のスタックで構成されている場合、保護補強体の軸方向幅Lは、最大軸方向幅の保護層の軸方向幅であり、保護補強体の平均半径方向厚Tは、保護層の平均半径方向厚の和である。保護補強体は、トレッド部の半径方向内側であってワーキング補強体の半径方向外側に存在する。保護補強体は、基本的にトレッド部を通じてタイヤの半径方向内側に向かって広がる可能性のある攻撃からワーキング補強体を保護する。
【0005】
トレッド部は、半径方向外側のトレッド面を介して地面に接触するように意図されたタイヤの部分であり、タイヤの摩耗部分である。航空機タイヤの場合には、通常、少なくとも1種類のエラストマ化合物を含むトレッド部が、円周溝として知られている円周方向の空隙によって分離された円周方向リブで構成される。
【0006】
保護補強体の半径方向内側のワーキング補強体も、タイヤの回転軸をその回転の軸とする円筒構造である。半径方向では、ワーキング補強体は、通常はエラストマ化合物で被覆された繊維補強材で構成される少なくとも2つのワーキング層のスタックである。航空機タイヤでは、一般にワーキング層の補強材は、周期的なジグザグ経路をタイヤの円周方向にたどり、この経路の振幅がワーキング層の軸方向幅を定める。ワーキング補強体は、タイヤのクラウンの機械的挙動を左右する。ワーキング補強体及び保護補強体で構成されたアセンブリが、クラウン補強体を構成する。
【0007】
現在の航空機タイヤ設計によれば、保護補強体は、単一の保護層で構成されることが多い。保護層は、タイヤの円周方向に波状経路をたどる金属補強体、或いはタイヤの円周方向に波状経路を有する、又はタイヤの円周方向との間に角度を成す繊維補強材のいずれかを含む。
【0008】
タイヤの円周方向に波状経路をたどる金属補強材を含む保護層の場合、金属補強材の質量を考慮すると保護補強体の質量は比較的高く、このことはタイヤの質量の面で、従って航空機の最大積載量の面で不利である。
【0009】
保護層は、波状経路をたどる金属補強材を含んでいるか、それとも波状経路をたどる、又は斜めに存在する繊維補強材を含んでいるかに関わらず、トレッド部からワーキング補強体への異物の移動を防ぐのに十分でない場合があり、換言すれば異物損傷(FOD)に十分に耐えられない場合があることが分かっている。具体的に言えば、航空機タイヤは、高膨張圧、高静荷重及び高速によって特徴付けられる過酷な使用状況を考慮すると、たまたま滑走路上に存在する可能性のある鋭い異物によるトレッド部へのあらゆる攻撃に非常に弱い。このようなトレッド部への攻撃の場合、保護補強体を通り抜けた鋭い異物がワーキング補強体に向かって進む可能性がある。ワーキング補強体に完全に穴が開いた場合には、圧力がゆっくりと失われ、タイヤの構造全体に損傷が及ぶ恐れがある。ワーキング補強体に部分的に穴が開いた場合には、タイヤの再トレッド性、すなわち摩耗後のトレッド部を取り替えるタイヤの能力がもはや保証されなくなってしまう恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、タイヤのトレッド部を通り抜けた異物による穿孔及び切断に対する航空機タイヤの保護補強体の抵抗力を高め、すなわち異物損傷に対する保護補強体の抵抗力を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、航空機タイヤであって、
− 地面に接触するように意図されたトレッド部と、
− トレッド部の半径方向内側の保護補強体と、
を備え、
− 保護補強体は、タイヤの回転軸をその回転の軸とし、第1の軸端から第2の軸端まで軸方向幅Lにわたって軸方向に延び、半径方向内側の第1の面から半径方向外側の第2の面まで平均半径方向厚Tにわたって半径方向に延びる円筒構造を有し、
− 保護補強体は、直径Dを有するとともにタイヤの円周方向の経路を有する、エラストマ化合物で被覆された補強材を含み、
− 保護補強体は、ワーキング補強体の半径方向外側に存在し、
− ワーキング補強体は、タイヤの円周方向のジグザグ経路を有する補強材で構成された、少なくとも2つの半径方向に重なり合ったワーキング層を含み、
− 保護補強体は、補強材の直径Dの2倍以上の平均半径方向厚Tを有し、
− 保護補強体は、補強材の直径D以上の軸方向幅Wを有するエラストマ化合物で構成された部分を、保護補強体の半径方向内側面上及び半径方向外側面上にそれぞれ含み、
− 保護補強体のあらゆる補強材のタイヤの円周方向の経路は、保護補強体の補強材の経路の集合体が3次元格子を構成するように、半径方向内側の第1の面と半径方向外側の第2の面との間で半径方向に変化する、
航空機タイヤによって達成される。
【0012】
本発明の原理は、3次元格子の作用効果、すなわち保護補強体の補強材同士を交差させる効果によって、半径方向内側面及び半径方向外側面のそれぞれにおけるワーキング補強体及びトレッド部の両方への良好な機械的接続と、保護補強体に対する損傷時に生じる補強材のほころびに対する良好な抵抗とを有する保護補強体を得るものである。
【0013】
本発明によれば、3次元格子効果が得られるように、保護補強体の平均半径方向厚Tが、補強材の直径Dの2倍以上である。
【0014】
また、本発明によれば、保護補強体は、補強材の直径D以上である軸方向幅Wを有するエラストマ化合物で構成された部分を、その半径方向内側面及びその半径方向外側面にそれぞれ含む。換言すれば、半径方向内側面及び/又は半径方向外側面には、補強材を含まないエラストマ化合物で構成された部分が存在する。実際に、製造中のタイヤの硬化段階前には、これらのエラストマ化合物で構成された部分は補強材間の格子間穴に対応し、これらの格子間穴は、タイヤの硬化時にエラストマ化合物で満たされる。従って、半径方向内側面及び/又は半径方向外側面では、補強材を含む部分と補強材を含まない部分とが交互になっており、後者の部分は、保護補強体との接合面におけるワーキング補強体及びトレッド部などの構成要素へのさらに効果的な接続に寄与する。これらのエラストマ化合物で構成された部分は、効果的であるために、補強材の直径Dに等しい最小軸方向幅Wによって特徴付けられる最小寸法を有する必要がある。
【0015】
本発明の別の基本的特徴は、保護補強体のあらゆる補強材のタイヤの円周方向の経路が、保護補強体の補強材の経路の集合体が3次元格子を構成するように、半径方向内側の第1の面と半径方向外側の第2の面との間で半径方向に変化する点である。換言すれば、あらゆる補強材の円周方向の経路は、タイヤの回転軸をその回転の軸とする円筒面に含まれない。また、この経路は、軸方向に変化することも、又はしないこともできる。この結果、円周方向では、あらゆる補強材が、少なくとも1つの他の補強材の半径方向外側及び半径方向内側に交互に存在する。従って、このような補強材の集合体は、何らかの時点で異物によって偶発的に断ち切られたあらゆる補強材が、異物に接触する他の補強材によって固定化され、円周全体にわたってほころびを生じないように、その半径方向厚において3次元格子の形又は互いに交差する形を有する円筒構造を構成する。従って、この3次元格子は、補強材が円周方向に完全にほころびを生じないことを保証する自動ロックシステムである。
【0016】
保護補強体は、補強材の直径Dの5倍以下の平均半径方向厚Tを有することが有利である。この最大平均半径方向厚Tを上回ると保護が過剰になり、保護補強体の質量が大きくなり過ぎる。
【0017】
また、保護補強体の半径方向内側面上及び半径方向外側面上にそれぞれ含まれるエラストマ化合物で構成された部分の軸方向幅Wは、補強材の直径Dの10倍以下、好ましくは補強材の直径Dの5倍以下であることが有利である。この最大軸方向幅Wを上回ると、保護補強体を通じた異物の移動に対する保護の効果が弱くなってしまうリスクがある。
【0018】
いずれの子午面においても、保護補強体の半径方向内側面上及び半径方向外側面上にそれぞれ含まれるエラストマ化合物で構成された部分の軸方向幅Wと、保護補強体の軸方向幅Lとの比率Rが、0.08以上、好ましくは0.10以上である。この比率は、保護補強体の軸方向幅Lに対する補強材を含まない部分の割合を特徴付ける。この比率は、一方ではワーキング補強体への、他方ではトレッド部への保護補強体の十分な機械的接続を保証するために最小値を有する必要がある。
【0019】
いずれの子午面においても、保護補強体の半径方向内側面上及び半径方向外側面上にそれぞれ含まれるエラストマ化合物で構成された部分の軸方向幅Wと、保護補強体の軸方向幅Lとの比率Rが、0.20以下、好ましくは0.15以下である。この比率は、一方ではワーキング補強体への、他方ではトレッド部への保護補強体の機械的接続が強くなり過ぎないことを保証するために最大に保たれる必要がある。
【0020】
好ましい実施形態によれば、保護補強体の補強材は、少なくとも2つの連続する補強材を含むストリップにグループ化される。航空機タイヤの分野では、満足のいく製造生産性を得るために、非包括的な例として少なくとも4つの補強材を含む補強体のストリップの使用が一般的である。
【0021】
好ましい実施形態の好ましい代替形態によれば、保護補強体の補強材が、少なくとも1種類の繊維材料で構成される。この理由は、繊維材料が、補強材の質量と破壊強度との間の良好な妥協を保証するからである。保護補強体に繊維補強材を使用すると、タイヤの質量の最小化に大きく貢献し、従って航空機の最大積載量が改善される。
【0022】
通常、保護補強体の補強材は、脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミド、或いは脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで構成される。アラミドなどの芳香族ポリアミドで構成された補強材がもたらす質量と破壊強度との間の妥協は、ナイロンなどの脂肪族ポリアミドで構成された補強材よりも良好である。脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの組み合わせで構成された補強材は、ハイブリッド補強材とも呼ばれ、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの両方の利点、すなわち高破壊強度、高引張歪み及び低質量をもたらす。
【0023】
縮尺通りに描いていない以下の図1図3を参照すれば、本発明の特徴及びその他の利点がさらに良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】先行技術の航空機タイヤのクラウンの片側の、タイヤの回転軸(YY’)を通る半径方向面(YZ)における断面図である。
図2】本発明による航空機タイヤの保護補強体の、タイヤの回転軸(YY’)を通る半径方向面(YZ)における子午断面図である。
図3】本発明による航空機タイヤの保護補強体を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、地面に接触するように意図されたトレッド部2と、トレッド部2の半径方向内側の保護補強体3とを含む先行技術の航空機タイヤ1のクラウンの、タイヤの回転軸YY’を通る半径方向面YZにおける片側の断面を示す。保護補強体3は、タイヤの回転軸YY’をその回転の軸とし、第1の軸端E1から第2の軸端E2まで軸方向幅Lにわたって赤道面XZ(図示せず)に関して対称に軸方向に延び、半径方向内側の第1の面31から半径方向外側の第2の面32まで平均半径方向厚Tにわたって半径方向に延びる円筒構造である。保護補強体3は、直径Dを有するとともにタイヤの円周方向XX’の経路を有する、エラストマ化合物で被覆された補強材4を含む。保護補強体3は、この例では半径方向に重なり合う4つのワーキング層を含む、タイヤの円周方向XX’のジグザグ経路(図示せず)をたどる補強材6で構成されたワーキング補強体5の半径方向外側に存在する。
【0026】
図2に、本発明による航空機タイヤの保護補強体の、タイヤの回転軸YY’を通る半径方向面YZにおける子午断面を示す。保護補強体3は、補強材4の直径Dの少なくとも2倍に等しい、この例では補強材4の直径Dの約5倍に等しい平均半径方向厚Tを有する。保護補強体3は、補強材4の直径Dに以上である軸方向幅Wを有するエラストマ化合物で構成された部分7を、その半径方向内側面31上及びその半径方向外側面32上にそれぞれ含む。この子午断面には、保護補強体3の補強材4の一群の経路が、保護補強体3のあらゆる補強材4のタイヤの円周方向XX’の経路が、半径方向内側の第1の面31と半径方向外側の第2の面32との間で半径方向に変化することによって生じる3次元格子を形成することも示す。さらに、保護補強体3の補強材4は、この例では4つの連続する補強材4を含むとともに軸方向幅Bを有するストリップ8にグループ化される。
【0027】
図3に、本発明による航空機タイヤの保護補強体を上から見た図を示す。具体的に言えば、図3には、第1の軸端E1から第2の軸端E2まで軸方向幅Lにわたって軸方向に延びる保護補強体3の半径方向外側の第2の面32を概略的に示している。一般に、半径方向外側面32は、あらゆる形状を有するとともに軸方向幅Wを有するエラストマ化合物で構成された部分7を含み、軸方向幅Wは様々とすることができるが、補強材4の直径D以上である。これらのエラストマ化合物で構成された部分7は、図3の斜線領域に対応する補強部分、すなわち補強材を含む部分によって取り囲まれ、保護補強体3とトレッド部2との間の好ましい機械的接合領域を構成する。
【0028】
本発明者らは、軸方向幅Lが200mmに等しく平均半径方向厚Tが4mmに等しい3次元格子である保護補強体を有する46×17 R20のサイズの航空機タイヤについて本発明を実施した。保護補強体を構成する繊維補強体はナイロン製であり、1mmに等しい直径Dを有する。エラストマ化合物で構成された部分の軸方向幅Wは、2mm〜7mmである。
【符号の説明】
【0029】
3 保護補強体
4 補強材
7 エラストマ化合物で構成された部分
31 半径方向内側の第1の面
32 半径方向外側の第2の面
D 補強材の直径
E1 保護補強体の第1の軸端
E2 保護補強体の第2の軸端
L 保護補強体の軸方向幅
T 保護補強体の平均半径方向厚
W エラストマ化合物で構成された部分の軸方向幅
図1
図2
図3
【国際調査報告】