特表2017-537049(P2017-537049A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特表2017-537049強化および耐久性ガラス容器の製造方法
<>
  • 特表2017537049-強化および耐久性ガラス容器の製造方法 図000004
  • 特表2017537049-強化および耐久性ガラス容器の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537049(P2017-537049A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】強化および耐久性ガラス容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20171117BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20171117BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20171117BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C03C15/00 B
   C03C21/00 101
   C03C17/32
   A61J1/05 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-526680(P2017-526680)
(86)(22)【出願日】2015年11月23日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】US2015062169
(87)【国際公開番号】WO2016085867
(87)【国際公開日】20160602
(31)【優先権主張番号】62/084,877
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】フィアコ,リチャード マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
【テーマコード(参考)】
4C047
4G059
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047BB01
4C047CC03
4G059AA04
4G059AB09
4G059AC18
4G059BB04
4G059BB14
4G059FA07
4G059FA30
4G059FB03
4G059HB03
4G059HB14
4G059HB23
(57)【要約】
ガラス容器の形成方法は、内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を有し、側面の内部表面の少なくとも一部分が、内部表面層を有する、ガラス容器を形成するステップと;側面の内部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する内部表面層の薄層を除去するために、ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップとを含んでなる。内部表面は、耐剥離性である。ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させる前に、側面の外部表面は、第1の形状を有する強度限界表面欠陥を含んでなり、かつ側面の外部表面を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させた後、強度限界表面欠陥は、第2の形状を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス容器の形成方法において、
内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなるガラス容器であって、前記側面の内部表面の少なくとも一部分が、内部表面層を有する、ガラス容器を形成するステップと;
前記側面の前記内部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する前記内部表面層の薄層を除去するために、前記ガラス容器を、水性処理媒体と接触させるステップと
を含んでなり、
前記水性処理媒体が、約0.001重量パーセント〜約0.15重量パーセントのフッ化物イオンを含んでなり、
前記内部表面層の前記薄層が除去された後、前記ガラス容器が10以下の剥離係数を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記水性処理媒体が、HCl、HBr、HNO、HSO、HSO、HPO、HPO、HOAc、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、それらの混合物および前記酸の少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される要素を含んでなる、水性酸性処理媒体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性酸性処理媒体が、約3以下のpHを有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラス容器が、ASTM規格E438−92によるタイプI、クラスAまたはタイプI、クラスBガラスから形成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記側面の外部表面を、前記水性処理媒体と接触させるステップをさらに含んでなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記側面の前記外部表面を、前記水性処理媒体と接触させる前に、前記側面の前記外部表面が、第1の形状を有する強度限界表面欠陥を含んでなり、
前記側面の前記外部表面を、前記水性処理媒体と接触させた後、前記強度限界表面欠陥が、第2の形状を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガラス容器が、前記側面の少なくとも前記外部表面上に表面圧縮応力層を含んでなるイオン交換−強化ガラス容器であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
表面圧縮のレベルが、前記側面の前記外部表面を、前記水性処理媒体と接触させることによって、約0.1%〜約4%の量低下することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記側面の少なくとも前記外部表面上に、同様の被覆ガラス容器に対して0.7以下の摩擦係数を有する低摩擦コーティングを適用するステップをさらに含んでなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記低摩擦コーティングが、熱安定性であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、全体として本明細書に組み込まれる、2014年11月26日出願の米国仮特許出願第62/084,877号に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本現在の明細書は、一般に、ガラス容器の形成方法、特に、ガラス容器が剥離および損傷に対して耐性があるように、ガラス容器を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、ガラスは、他の材料と比較して、その気密性、光学的透明度および優れた化学的耐久性のため、医薬品の包装のための好ましい材料として使用されてきた。特に、医薬品包装で使用されるガラスは、その中に含まれる医薬品組成物の安定性に影響を及ぼさないように、適切な化学的耐久性を有さなければならない。適切な化学的耐久性を有するガラスとしては、歴史的に化学的耐久性が証明されている、ASTM規格E438.92「タイプIA」および「タイプIB」ガラス組成物の範囲内のガラス組成物が含まれる。一般的に、化学的耐久性ガラスは、ガラスが長時間溶液に暴露された時に、その構成成分がガラスから溶解しないガラスである。
【0004】
タイプIAおよびタイプIBガラス組成物は、それらの化学的耐久性のため、医薬品の包装において一般に使用されるが、それらは、医薬品包装の内部表面が、医薬品溶液への暴露後に、ガラス粒子を流出させる、または「離層する」傾向を含む、いくつかの欠陥を起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、離層特性の減少を示す別のガラス容器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によると、ガラス容器の形成方法は、内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなり、側面の内部表面の少なくとも一部分が、内部表面層を有する、ガラス容器を形成するステップと;側面の内部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する内部表面層の薄層を除去するために、ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップとを含んでなる。側壁の内部表面は、耐剥離性である。
【0007】
別の実施形態によると、ガラス容器の形成方法は、内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなり、側面が、外部表面層を含んでなる外部表面を有する、ガラス容器を形成するステップと;側面の外部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する外部表面層の薄層を除去するために、ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップとを含んでなる。ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させる前に、側面の外部表面は、第1の形状を有する強度限界表面欠陥を含んでなり、かつ側面の外部表面を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させた後、強度限界表面欠陥は、第2の形状を有する。
【0008】
追加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明において明らかにされ、そして一部は、この説明から当業者に容易に明白であるか、または以下の詳細な説明、請求の範囲、ならびに添付の図面を含む、本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0009】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が種々の実施形態を説明し、そして主張された対象の性質および特徴を理解するための概観またはフレーム構造を提供するように意図されることは理解されるべきである。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、そして本明細書の一部に組み込まれ、かつそれを構成する。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を例示しており、かつ説明と一緒に、主張された対象の原理および操作を説明するために有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に記載の1つまたはそれ以上の実施形態によるガラス容器、特にガラスバイアルの断面を概略的に示す。
図2】本明細書に記載の1つまたはそれ以上の実施形態による内部表面層の除去の前の、図1のガラス容器の側面の一部を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、その実施例が添付の図面に例示されている、改善された剥離耐性および強度を有するガラス容器の形成方法の種々の実施形態が詳細に参照されるであろう。可能な場合は常に、同一および同様の部分を参照するために、同じ参照番号が図画全体で使用されるであろう。一実施形態において、ガラス容器の形成方法は、内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなり、側面の内部表面の少なくとも一部分が、内部表面層を有する、ガラス容器を形成するステップと;側面の内部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する内部表面層の薄層を除去するために、ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップとを含んでなる。別の実施形態によると、ガラス容器の形成方法は、内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなり、側面が、外部表面層を含んでなる外部表面を有する、ガラス容器を形成するステップと;側面の外部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する外部表面層の薄層を除去するために、ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップとを含んでなる。ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させる前に、側面の外部表面は、第1の形状を有する強度限界表面欠陥を含んでなり、かつ側面の外部表面を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させた後、強度限界表面欠陥は、第2の形状を有する。耐剥離性であるガラス容器の形成方法およびガラス容器の特性については、添付の図面を具体的に参照することによって、本明細書により詳細に説明されるであろう。
【0012】
「化学的耐久性」という用語は、本明細書で使用される場合、指定された化学的条件への暴露時の分解に耐性を示す、ガラス組成物の能力を意味する。特に、本明細書に記載のガラス組成物の化学的耐久性は、3つの確立された材料試験規格:2001年3月付の「Testing of glass−Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid−Method of test and classification」と題されたDIN 12116;「Glass−Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali−Method of test and classification」と題されたISO 695:1991;「Glass−Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C−Method of test and classification」と題されたISO 720:1985;ならびに「Glass−Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C−Method of test and classification」と題されたISO 719:1985に従って評価された。それぞれの規格およびそれぞれの規格内の分類は、本明細書においてさらに詳細に説明される。あるいは、ガラス組成物の化学的耐久性は「Surface Glass Test」と題されたUSP<660>および/またはガラスの表面の耐久性を評価する「Glass Containers For Pharmaceutical Use」と題されたEuropean Pharmacopeia 3.2.1に従って評価されてもよい。
【0013】
医薬品組成物を含有するための従来のガラス容器またはガラス包装は、一般に、タイプIBアルカリボロシリケートガラスなどの、化学的耐久性および低い熱膨張を示すことが知られているガラス組成物から形成される。アルカリボロシリケートガラスは、良好な化学的耐久性を示すが、容器製造者は、ガラス容器中に含まれる溶液中に分散したシリカが豊富なガラスフレークを観察している。この現象は、本明細書中、剥離と呼ばれる。剥離は特に、溶液が長期間(数カ月〜数年)ガラス表面と直接接触して貯蔵される場合に生じる。したがって、良好な化学的耐久性を示すガラスが、必ずしも剥離に対して耐性があるわけではない。
【0014】
剥離は、ガラス粒子がガラスの表面から放出し、続いて、浸出、腐食および/または風化反応が生じる現象を意味する。一般に、ガラス粒子は、容器内に含まれる溶液中への変性剤イオンの浸出の結果として、容器の内部表面に由来する、ガラスのシリカが豊富なフレークである。これらのフレークは、一般に、約1nm〜約2μmの厚さであり、約50μmより大きい幅を有し得る。これらのフレークは、主にシリカから構成されるため、ガラスの表面から放出された後、フレークは一般に、さらに分解しない。
【0015】
これまでに、剥離は、容器の形状にガラスを再形成するために使用される高温にガラスが暴露される時に、アルカリボロシリケートガラスにおいて生じる相分離のためであることが仮定されてきた。しかしながら、ここで、ガラス容器の内部表面からのシリカが豊富なガラスフレークの剥離は、その形成されたままの状態におけるガラス容器の組成特徴のためであると考えられる。特に、アルカリボロシリケートガラスの高いシリカ含有量のため、ガラスは、比較的高い融解および形成温度を有する。しかしながら、ガラス組成物中のアルカリおよびボレート成分は、さらにより低い温度において融解および/または蒸発する。特に、ガラスのボレート種は、非常に揮発性であり、ガラスを形成および再形成するために必要な高温においてガラスの表面から蒸発する。
【0016】
特に、ガラス管などのガラスストックは、高温で、そして直火で、ガラス容器に再形成される。より高い装置速度において必要とされる高温は、より揮発性のボレート種を、ガラスの表面の部分から蒸発させる。このような蒸発が、ガラス容器の内部容積内で生じる場合、揮発性ボレート種は、ガラス容器表面の他の領域において再堆積し、特にガラス容器の内部の近表面領域(すなわち、ガラス容器の内部表面におけるか、またはそれに直接接触する領域)に関して、ガラス容器表面における組成不均質性を引き起こす。
【0017】
例示として、図1を参照すると、医薬品組成物を貯蔵するためのガラス容器などのガラス容器の断面が概略的に示される。ガラス容器100は、一般に、ガラス体102を有するガラス物品を含んでなる。ガラス体102は、内部表面104と外部表面106との間に延在し、そして一般に、内部容積108を包囲する。図1で示されるガラス容器100の実施形態において、ガラス体102は、一般に、壁部分110および床部分112を含んでなる。壁部分110および床部分112は、一般に、約0.5mm〜約3.0mmの範囲の厚さを有し得る。壁部分110は、ヒール部分114を通して、床部分112へと移行する。内部表面104および床部分112は、未コーティングであり(すなわち、それらは、いずれの無機コーティングまたは有機コーティングも含有しない)、そして、そのようなものとして、ガラス容器100の内部容積108に貯蔵される含有物は、ガラス容器100が形成されるガラスと直接接触する。ガラス容器100は、図1中、特異的形状(すなわち、バイアル)を有するものとして示されているが、ガラス容器100が、限定されないが、バキュテナー、カートリッジ、シリンジ、シリンジバレル、アンプル、ボトル、フラスコ、フィアル、チューブ、ビーカーなどを含む他の形状を有し得ることは理解されるべきである。
【0018】
本明細書に記載される通り、ガラス容器100は、ガラス管を容器形状へと変換することによって形成され得る。例えば、ガラス管を閉鎖し、そして容器100の底部または床部分112を形成維するために、ガラス管の一端を加熱する場合、ボレート種および/またはアルカリ種などのより高度に揮発性である種は、管の底部分から蒸発し得、そして管の他の部分に再堆積し得る。容器のこれらの領域が最も大規模な再形成を受け、そして、そのようなものとして、最高温度に暴露されるため、容器のヒールおよび床部分からの材料の蒸発は特に顕著である。結果として、床部分112などの、より高い温度に暴露される容器の領域が、シリカ豊富表面を有し得る。壁部分110などの揮発した種の堆積を受けることが可能な容器の内部表面104の他の領域は、揮発した種の凝結によって形成された内部表面層105(概略的に図2に示される)を有し得、そして、そのようなものとして、表面はシリカが乏しい。例えば、ボレート種の場合、ガラス組成物の焼鈍し点より高いが、ガラスが再形成の間に受ける最高温度よりも低い温度にある、ホウ素堆積を受けることが可能な領域は、ガラスの表面上でのホウ素組み込みを導く可能性がある。
【0019】
ここで、図1および2を参照すると、図2に示される実施形態は、堆積した揮発種を含む内部表面層105を含む、ガラス容器100の一部の内部表面104を概略的に示す。内部表面層105の組成は、壁部分110の中点MPなどの、壁部分のより深いガラスの組成とは異なっている。特に、図2は、図1のガラス容器100の壁部分110の部分的断面を概略的に示す。ガラス容器100のガラス体102は、ガラス容器の内部表面104から深さDSLまで、ガラス容器100の内部表面104から壁部分110の厚さまで延在する、内部表面層105を含む。内部表面層105内のガラス組成物は、壁部分の中点MPにおけるガラスと比較して、持続的な層不均質性を有し、そして、そのようなものとして、内部表面層105におけるガラスの組成は、壁部分110の中点MPにおけるガラスとは異なることは理解されるべきである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約30nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約50nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約100nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約150nmである。いくつかの他の実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約200nmまたはさらには約250nmである。いくつかの他の実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約300nmまたはさらには約350nmである。なお他の実施形態において、内部表面層の厚さTSLは、少なくとも約500nmである。いくつかの実施形態において、内部表面層は、少なくとも約1μmまたはさらには少なくとも約2μmの厚さTSLまで延在し得る。
【0020】
本明細書に記載の実施形態において、「持続的な層不均質性」という句は、内部表面層105中のガラス組成の構成成分(例えば、SiO、Al、NaOなど)の濃度が、ガラス体の厚さの中点における(すなわち、内部表面104と外部表面106との間でガラス体を均等に二分する中点線MPに沿った点における)同一構成成分の濃度から、ガラス容器内に含まれる溶液への長期間の暴露時にガラス体の剥離を引き起こす量まで変動することを意味する。本明細書に記載の実施形態において、ガラス体の内部表面層における持続的な層不均質性は、内部表面層105におけるガラス組成物のそれぞれの構成成分の層濃度の極限(すなわち、最小または最大)が、ガラス容器100が、形成されたままの状態にある場合、ガラス体の厚さの中点における同一構成成分の約92%未満または約108%より高いようなものである。他の実施形態において、ガラス体の内部表面層105における持続的な層不均質性は、内部表面層105におけるガラス組成物のそれぞれの構成成分の層濃度の極限が、ガラス容器100が、形成されたままの状態にある場合、ガラス体の厚さの中点における同一構成成分の約90%未満または約110%より高いようなものである。なお他の実施形態において、ガラス体の内部表面層105における持続的な層不均質性は、内部表面層105におけるガラス組成物のそれぞれの構成成分の層濃度の極限が、ガラス容器100が、形成されたままの状態にある場合、ガラス体の厚さの中点における同一構成成分の約80%未満または約120%より高いようなものである。いくつかの実施形態において、持続的な層不均質性は、約2モル%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分を除く。また、持続的な層不均質性は、ガラス組成物中に存在し得るいずれの水分も同じく除く。
【0021】
本明細書に記載の実施形態において、「持続的な層均質性」という句は、内部領域中のガラス組成の構成成分(例えば、SiO、Al、NaOなど)の濃度が、ガラス体の厚さの中点における(すなわち、変性された内部表面104’’と外部表面106との間でガラス体を均等に二分する中点線MPに沿った点における)同一構成成分の濃度から、ガラス容器内に含まれる溶液への長期間の暴露時にガラス体の剥離を引き起こす量まで変動しないことを意味する。本明細書に記載の実施形態において、ガラス体の内部領域における持続的な層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物のそれぞれの構成成分の層濃度の極限(すなわち、最小または最大)が、持続的な層均質性を有する内部表面層がガラス容器から除去された後、ガラス体の厚さの中点における同一構成成分の約80%以上または約120%以下であるようなものである。他の実施形態において、ガラス体の内部領域における持続的な層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物のそれぞれの構成成分の層濃度の極限が、持続的な層均質性を有する内部表面層がガラス容器から除去された後、ガラス体の厚さの中点における同一構成成分の約90%以上または約110%以下であるようなものである。なお他の実施形態において、ガラス体の内部領域における持続的な層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物のそれぞれの構成成分の層濃度の極限が、持続的な層均質性を有する内部表面層がガラス容器から除去された後、ガラス体の厚さの中点における同一構成成分の約92%以上または約108%以下であるようなものである。いくつかの実施形態において、持続的な層均質性は、約2モル%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分を除く。また、持続的な層均質性は、ガラス組成物中に存在し得るいずれの水分も同じく除く。
【0022】
「形成されたままの状態」という用語は、本明細書で使用される場合、ガラス容器がガラスストックから形成された後であるが、容器が、イオン交換強化、コーティング、硫酸アンモニウム処理、酸エッチングおよび/またはいずれかの他の表面変性などのいずれかの追加的な加工ステップを受ける前のガラス容器100の組成物を指す。本明細書に記載の実施形態において、ガラス組成物中の構成成分の層濃度は、動的二次イオン質量分析(「D−sims」)を使用して、関心のある領域におけるガラス体の厚さを通して組成物試料を回収することによって決定される。本明細書に記載の実施形態において、組成プロフィールは、ガラス体102の内部表面104の領域からサンプリングされる。サンプリングされた領域は、1mm2の最大面積を有する。この技術によって、サンプリングされた領域のガラス体の内部表面からの深さの関数として、ガラス中の種の組成プロフィールが得られる。
【0023】
ガラス容器が、(タイプIBガラス組成物などの)ボロシリケートガラス組成物から形成される場合、堆積した揮発性の種を含有する内部表面層105の存在も定性的に確認され得る。特に、ガラス容器100に、メチレン青色染料の溶液を充填してもよい。メチレン青色染料は、ガラス表面のホウ素が豊富な領域に反応して化学結合し、視覚的に、その領域を青色に着色する。適切なメチレン青色染料溶液としては、限定されないが、水中1%メチレン溶液が含まれる。
【0024】
堆積した揮発種のこのような内部表面層105が内部表面104に残る場合、堆積した揮発種は、内部表面層105から、容器中に含まれる溶液に浸出し得る。これらの揮発種がガラスから浸出すると、高シリカガラスネットワーク(ゲル)が、内部表面104に残り、これは、水和の間に膨潤および浸出し、最終的に表面から破砕し(すなわち、ガラス容器100の内部表面104は剥離する)、潜在的にガラス容器内に含まれる溶液中へ粒子状物質を導入する。
【0025】
剥離への1つの従来の解決策は、SiOなどの無機コーティングによってガラス容器のガラス体の内部表面をコーティングすることである。このコーティングは、約100nm〜200nmの厚さを有し得、そして容器の含有物がガラス体の内部表面と接触すること、および剥離を引き起こすことを防ぐ。しかしながら、このようなコーティングの適用は困難であり、かつ追加的な製造および/または点検ステップを必要とし、それによって、容器製造の全費用が増加し得る。さらに、容器の含有物が、例えば、コーティングの不連続点を通して、コーティングを浸透し、そしてガラス体の内部表面と接触する場合、結果として生じるガラス体の剥離によって、コーティングの部分がガラス体の内部表面から脱着し得る。
【0026】
本明細書に記載の実施形態において、ガラス容器が剥離する性質は、変性内部表面(すなわち、薄い内部表面層の除去後のガラス容器の内部表面)に、ガラスから浸出する可能性のある揮発種が少なくなり、究極的に、暴露されたシリカネットワークの破砕が引き起こされるように、ガラス容器から内部表面層105の非常に薄い部分を除去することによって軽減される。さらに、内部表面層の薄層を除去することによって、表面に存在し、かつガラスネットワークに統合されなかった超過のシリカが除去される。薄い内部表面層105が除去された後、ガラス容器100は、剥離に対する改善された耐性を示す。
【0027】
いくつかの実施形態において、内部表面層105は、エッチングによってガラス容器の壁部分110から除去される。例えば、水性処理媒体が内部容積108中に導入され得、そして薄い内部表面層105を除去するために十分な時間で、内部容積中に残ることが可能となり得る。適適切な水性処理媒体は、薄い内部表面層105を均一に溶解するであろう。特に、ガラス容器100は、一般に、一次ネットワーク形成剤としてのシリカ(SiO)およびシリカネットワーク中に存在維する追加的な構成成分(例えば、B、酸化アルカリ、酸化アルカリ土類など)を含むガラス組成物から形成される。しかしながら、シリカおよび構成成分は、必ずしも同一溶液中に可溶性ではある必要はなく、または溶液中に同一速度で溶解する必要はない。したがって、水性処理媒体は、内部表面層105に含まれるガラスネットワークおよび追加的な構成成分の均一溶解を促進するために、フッ化物イオンおよび/または1種またはそれ以上の酸を含み得る。
【0028】
実施形態において、水性処理媒体の組成物は、実質的にフッ化物を含まない。「実質的にフッ化物を含まない」という句は、本明細書で使用される場合、処理媒体が、媒体の全重量に基づき、約0.15重量%(すなわち、1500ppm)以下のフッ化物イオンを含んでなることを意味する。いくつかの実施形態において、水性処理媒体は、約0.10重量%(すなわち、1000ppm)以下のフッ化物イオンなどの約0.12重量%(すなわち、1200ppm)以下のフッ化物イオンを含んでなる。他の実施形態において、水性処理媒体は、約0.09重量%(すなわち、900ppm)以下のフッ化物イオンなどの約0.095重量%(すなわち、950ppm)以下のフッ化物イオンを含んでなる。さらに、いくつかの実施形態において、水性処理媒体は、フッ化物イオンを含まないことが可能である。フッ化物イオンを含有する実施形態において、フッ化物イオンの供給源は、HF、NaF、NHHFなどから選択される。フッ化物を含有する実施形態において、実質的にフッ化物を含まない水性酸処理媒体は、約0.001〜約0.12重量%のフッ化物イオンなどの、約0.001〜約0.15重量%のフッ化物イオンを含むことが可能である。他の実施形態において、実質的にフッ化物を含まない水性酸処理媒体は、約0.001〜約0.010重量%のフッ化物イオンまたは約0.001〜約0.0090重量%のフッ化物イオンなどの、約0.001〜約0.15重量%のフッ化物イオンを含むことが可能である。
【0029】
実施形態において、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体は、実質的にフッ化物を含まない酸性水性処理媒体であり得る。本明細書に開示される実施形態において、薄い内部表面層を除去するために適切である実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体を配合するために、様々な酸性化合物が、単独で、または組合せのいずれかにおいて使用可能である。特定の実施形態において、水性酸性処理媒体は、酸の水溶液などの無機酸またはキレート化有機酸を含む有機酸を含んでなる。実施形態で使用される例示的な酸としては、HCl、HBr、HNO、HSO、HSO、HPO、HPO、HOAc、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、EDTA、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、それらの混合物および上記の少なくとも1つを含んでなる組合せが含まれる。
【0030】
実施形態において、実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体は、約2.5以下などの、約3以下のpHを有する。他の実施形態において、実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体は、約0.5以下などの、約1以下のpHを有するであろう。
【0031】
他の実施形態において、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、酸性ではないか、またはわずかに酸性であり得る。例えば、実施形態において、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、約6〜約12のpHなどの、約4〜約12のpHを有し得る。いくつかの実施形態において、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、約6〜約10、または約8〜約10のpHを有する。
【0032】
本明細書に開示される実施形態において、薄い内部表面層を除去するために適切である実質的にフッ化物を含まない処理媒体を配合するために、様々な化合物が、単独で、または組合せのいずれかにおいて使用可能である。特定の実施形態において、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、水およびフッ化物イオンを含んでなる水溶液であり得る。いくつかの実施形態において、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、NHなどの塩基性成分、あるいは(例えば、NaOH、KOH、LiOHなどの)水酸化アルカリまたは(例えば、Ca(OH)もしくはBa(OH)などの)水酸化アルカリ土類金属を含んでなる水溶液である。
【0033】
内部表面層の薄層を除去するために、実質的にフッ化物を含まない処理媒体を、ガラス容器の内部表面と接触させる。接触のステップは、実質的にフッ化物を含まない処理媒体を、ガラス容器上に噴霧すること、またはガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない処理媒体を含んでなる容器に、部分的に、または完全に含浸すること、あるいは固体表面に液体を適用するための他の同様の技術を含む、種々の技術によって実行されることが可能である。
【0034】
本明細書に記載の実施形態において、加工条件は、実質的にフッ化物を含まない処理媒体中のガラスのエッチング速度に影響を与え得、かつガラスの溶解速度を制御するように調整され得ることは理解されるべきである。例えば、実質的にフッ化物を含まない処理媒体および/またはガラス容器の温度は、実質的にフッ化物を含まない処理媒体中のガラスのエッチング速度を増加し得、それによって、加工時間が減少し得る。あるいは、実質的にフッ化物を含まない処理媒体の濃度は、水性処理媒体中のガラスのエッチング速度を増加し得、それによって、加工時間が減少し得る。
【0035】
特定の場合、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、キレート化を促進することが知られている化合物を含有し得る。キレート化剤は、溶液中に溶解された金属の活性を減少させることを補助するために添加される。「金属」という用語は、実質的にフッ化物を含まない処理媒体によって溶解されたガラス成分(Si、Al、B、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Ti、Zrなど)を意味する。実質的にフッ化物を含まない処理媒体中の金属の活性/濃度を減少させることによって、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、ガラス表面をより均一に溶解し、そして均一ガラス表面化学の形成を促進する。別々に記載された通り、キレート化剤は、優先的なエッチングのため、深さにおいて組成不均質性を形成する分解溶解を限定するために添加され得る。
【0036】
同様に、ルシャトリエの原理を使用して、実質的にフッ化物を含まない処理媒体から金属種を沈殿することも可能である。キレート化剤と異なっていて、反応性アニオン(または官能基)を、実質的にフッ化物を含まない処理媒体に添加して、実質的にフッ化物を含まない処理媒体から金属の種の沈殿を促進し、そして実質的にフッ化物を含まない処理媒体中の低い金属濃度を維持することが可能である。金属濃度が十分に低い場合、実質的にフッ化物を含まない処理媒体は、均一ガラス表面化学の形成を促進する。
【0037】
表面組成物中のいくつかの不純物は、有機および無機粒子状物質の表層堆積物と関連する。界面活性剤は、エッチングプロセスの一部として、ガラス表面からのこれらの不純物のすすぎ/除去を促進するために、実質的にフッ化物を含まない処理媒体溶液に添加することが可能である。界面活性剤の適切な選択によって、不純物濃度は減少し、そして均一表面化学の形成を補助することが可能である。
【0038】
上記において、水性処理媒体は、ガラス容器の内部容積中に導入されると記載されるが、他の実施形態が可能であることは理解されるべきである。例えば、水性処理媒体が、ガラス容器の内部表面およびガラス容器の外部表面の両方と直接接触するように、ガラス容器が水性処理媒体中に完全に浸漬されてもよい。これによって、ガラスの層が、ガラスの外部表面から同時に除去されることが可能となり、そしてガラス容器の機械的特性を改善することができる。特に、擦傷、砕片などの欠陥は、その形成されたままの状態で、ガラス容器の外部中に導入され得る。そのような欠陥は、加工装置などによる機械的取り扱いの結果であり得る。これらの欠陥は、「応力集中部」として作用し、かつ亀裂開始部位として機能し、ガラス容器の強度を効果的に減少させ得る。このような実施形態において、ガラス容器の外部表面は、エッチングによって表面欠陥の幾何学が変化する点までエッチングされる。例えば、形成されたままの表面欠陥は第1の幾何学を有し得るが、実質的にフッ化物を含まない酸処理媒体によるエッチング後、表面欠陥は第2の幾何学を有し、これは、実施形態において、表面欠陥の幅対深さ比を増加させることなどによって、表面欠陥を鈍化させる。上記の通り、ガラス容器の外部表面をエッチングして、欠陥を含有するガラスの層を除去することによって、欠陥の幾何学を変化させることが可能であり、それによって、既存の欠陥により、ガラス容器が破損する可能性が減少する。加えて、ガラス容器の外部表面をエッチングすることによって、限定されないが、有機および無機コーティングを含む、外部表面にその後適用されるコーティングの付着性が改善され得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、水性処理溶液は、ガラス容器のいずれかの層を除去することなく、表面欠陥の幾何学を変化させ得る。むしろ、水性処理媒体は表面欠陥に入り込み、そして表面から層を除去することなく、表面欠陥の幅対深さ比を増加させる。
【0040】
いずれかの特定の理論に拘束されないが、強度改善の基礎にある機構は、ガラスバイアルの亀裂生長特徴の変化によって、実質的にフッ化物を含まない処理媒体の作用によってガラス中に存在する強度限界表面欠陥の少なくともいくつかの鈍化により達成されると考えられる。他方、そのような除去は、ガラス表面品質の減少をもたらす恐れがあり、かつ/またはガラス容器の厚さを減少させる可能性があるため、処理されたバイアルから表面ガラスの有意な量を除去するほど、接触が長時間に及ぶことは望ましくない。
【0041】
上記の理由のため、例示的な実施形態において、接触ステップは、ガラスにおける少なくともより大きい強度限界表面欠陥の生長傾向を減少させるために少なくとも十分であるが、ガラス容器の平均厚さを本質的に減少させるためには不十分である時間で実行されるべきである。本明細書で使用される場合、平均厚さにおける「材料減少」は、平均厚さにおいて1.0μmより大きい減少であると考えられる。実施形態において、接触ステップによって、約100nm〜約750nmなどの、約100nm〜約1.0μmのガラス容器の平均厚さにおける減少がもたらされる。他の実施形態において、接触ステップによって、約200nm〜約500nmまたは約300nmのガラス容器の平均厚さにおける減少がもたらされる。上記接触は、どの表面が、実質的にフッ化物を含まない酸処理媒体と接触するか次第で、ガラス容器の内部表面の厚さおよび/またはガラス容器の外部表面の厚さを減少させるために使用することが可能である。
【0042】
処理されたガラスバイアルにおける強度限界表面欠陥の生長傾向の減少は、例えば、処理されたバイアルの破壊強度または破壊点の有意な増加によって示される。「破壊点」という用語は、曲げ強度試験下でのガラス容器の破損(破壊)における力および/または応力の負荷を意味する。
【0043】
実施形態において、一端、接触ステップが完了したら、実質的にフッ化物を含まない水性酸性媒体のいずれの存在も除去するために強化された酸処理ガラス容器をすすぐステップが実行されてよい。すすぎは、脱イオン水、滅菌水または注射用水(WFI)を含む水、あるいはアセトンなどのいずれかの適切な溶液によって実行されてもよい。
【0044】
容器が事前にテンパリング処理を受けたかどうかにかかわらず、表面欠陥を有するガラス容器の強度を増加させるために、この方法を使用することができるが、ガラス容器がテンパリング処理されたガラス容器である実施形態、特にテンパリング処理された容器が、イオン交換−強化ガラス容器である実施形態が特に価値を有する。
【0045】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、ガラス体102は、イオン交換強化などによって強化されている。実施形態において、ガラス体102は、ガラスの表面において、約250Mpa以上、300Mpaまたはさらに約350Mpa以上の圧縮応力を有し得る。実施形態において、圧縮応力は、ガラスの表面において約400Mpa以上、またはガラスの表面においてさらに約450Mpa以上であり得る。いくつかの実施形態において、圧縮応力は、ガラスの表面において約500Mpa以上、またはガラスの表面においてさらに約550Mpa以上であり得る。なお他の実施形態において、圧縮応力は、ガラスの表面において約650Mpa以上、またはガラスの表面においてさらに約750Mpa以上であり得る。ガラス体102の圧縮応力は、一般に、少なくとも約10μmの層の深さ(DOL)まで延在する。いくつかの実施形態において、ガラス体102は、約25μmより大きい、または約50μmより大きい層の深さを有し得る。いくつかの他の実施形態において、層の深さは、約75μmまたは約100μmまでであり得る。イオン交換強化は、約350℃〜約600℃の温度で維持された溶融塩浴で実行され得る。望ましい圧縮応力を達成するために、形成されたままの状態のガラス容器を塩浴に、約30時間未満、または約20時間未満で浸漬させてよい。実施形態において、容器は、約15時間未満、または約12時間未満浸漬させてよい。他の実施形態において、容器は、10時間未満浸漬させてよい。例えば、一実施形態において、ガラス容器は、ガラス組成物の化学的耐久性を維持しながら、所望の層の深さおよび圧縮応力を達成するために、約5時間〜約8時間、約450℃において100%KNO塩浴に浸漬される。
【0046】
これらの実施形態における表面ガラス除去の最小化は、テンパリングされたガラスにおける表面圧縮層の厚さおよび応力レベルの望ましくない減少を回避する。したがって、そのようなガラスの処理のため、接触ステップは、ガラス容器の表面圧縮のレベルにおける材料減少を防ぐ時間のみ実行される。本明細書で使用される場合、「表面圧縮における材料減少」という用語は、接触ステップ後、表面圧縮のレベルの約4%以下の減少が観察されることを意味する。実施形態において、表面圧縮のレベルは、約0.1%〜約4%、例えば、約0.1%〜約3.5%または約0.1%〜約3%の量で減少する。他の実施形態において、表面圧縮のレベルは、約0.1%〜約2.5%、例えば、約0.1%〜約2%または約0.1%〜約1.5%の量で減少する。なお他の実施形態において、表面圧縮のレベルは、約0.1%〜約1%、例えば、約0.1%〜約0.5%または約0.1%〜約0.25%の量で減少する。
【0047】
上記で開示されたイオン交換処理は、ガラス容器の薄層を除去する前または後に実行されてよい。いくつかの実施形態において、ガラス容器の内部表面の薄層は、本明細書に記載される実質的にフッ化物を含まない酸処理媒体を容器の内部に接触させ、その後、ガラス容器の少なくとも外面上でイオン交換を実行し、続いて、容器の外部の薄層を除去し、上記で開示されたガラス容器の外部上の表面欠陥の幾何学を変化させることによって除去され得る。
【0048】
上記の通り、強化された、酸処理されたガラス容器は、未処理のガラス容器と実質的に同じ厚さを有し、かつ未処理のガラス容器よりも高い破壊点を示す。未処理のガラス容器における強度限界表面欠陥の少なくとも部分集合は、それらの幾何学における変化のため、酸処理後、生長傾向の減少を示す。一般に、酸処理後に幾何学の変化を受け、かつ亀裂先端が鈍化した、それらの強度限界表面欠陥は、光学顕微鏡法などの表面特徴決定技術によって証拠づけることができる。「鈍化」という用語は、2倍以上増加する亀裂先端の角度を意味する。いくつかの実施形態において、亀裂先端の角度は、5倍以上、例えば、10倍以上増加する。いくつかの実施形態において、亀裂先端の角度は20度より大きくなるまで増加する。他の実施形態において、亀裂先端の角度は、40度より大きく、例えば、60度より大きくなるまで増加する。なお他の実施形態において、亀裂先端の角度は、80度より大きく、例えば、100度より大きくなるまで増加する。
【0049】
加えて、いくつかの実施形態において、本明細書において製造された、強化された酸処理されたガラス容器は、ガラス容器が強化のために高フッ化物イオン含有媒体で処理される場合よりも高い破壊点を有することが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、高フッ化物イオン含有媒体は、ガラスにおける応力、ガラスにおける不均質性および/または表面汚染(ほこりまたは指紋など)であり得る、不均等なエッチングの結果として、高度のガラス表面の荒れまたはガラス表面フロストをもたらす可能性がある。このようなガラス表面の荒れまたはフロストは、本明細書に開示および記載される低フッ化物イオン媒体を使用して製造することができる、より少ない表面荒れまたはフロストを有するガラス物品比較して、ガラス表面強度を低下し得る。
【0050】
持続的な層不均質性または持続的な層均質性を有する内部表面層の薄層を除去することによって、一般に、ガラス容器の剥離に対する耐性が改善する。特に、内部表面層の表面からの揮発した種の除去によって、ガラス容器の使用時に内部表面層から分離し得るこれらの揮発した種の量は減少する。
【0051】
上記の通り、剥離は、溶液への長期暴露後、シリカが豊富なガラスフレークが、ガラス容器内に含まれる溶液中に放出される結果をもたらす。したがって、剥離に対する耐性は、特定の条件下で溶液に暴露した後にガラス容器に含まれる溶液に存在するガラス粒子の数によって特徴づけられてよい。ガラス容器の剥離に対する長期耐性を評価するために、促進剥離試験が利用された。この試験は、イオン交換されたガラス容器およびイオン交換されていないガラス容器の両方に関して実行された。この試験は、ガラス容器を室温で1分間洗浄するステップと、約320℃で1時間、容器を脱パイロジェン化するステップとからなった。その後、pH10を有する20mMグリシン水溶液を、80〜90%充填までガラス容器中に配置し、そして100℃まで急速に加熱し、次いで、2気圧の圧力で1度/分の上昇速度において100℃から121℃まで加熱する。ガラス容器および溶液をこの温度で60分間保持し、0.5度/分の速度で室温まで冷却し、そして加熱サイクルおよび保持を繰り返す。次いで、ガラス容器を50℃まで加熱し、そして高温調整のために10日間以上保持する。加熱後、ガラス容器を、積層タイル床などの強固な表面上に、少なくとも18インチ(45.7cm)の距離から落下させ、ガラス容器の内部表面に弱く接着したいずれのフレークまたは粒子も移動させる。落下の距離は、より大きいサイズのバイアルが衝撃時に破壊することを防ぐために、適切に調整されてよい。
【0052】
その後、ガラス容器に含まれる溶液は、溶液1リットルあたりに存在するガラス粒子の数を決定するために分析される。特に、ガラス容器からの溶液を、5mLを10〜15秒以内でフィルターを通して溶液を吸引する真空吸引に取り付けられた、Millipore Isopore Membraneフィルター(部品#AP1002500および#M000025A0を有するアセンブリに保持されたMillipore #ATTP02500)に直接注入される。その後、リンスとして別の5mLの水を使用して、フィルター媒体から緩衝残留物を除去した。次いで、Fundamentals of light microscopy and digital imaging.New York:Wiley−Liss,pp 153−168からの「Differential interference contrast(DIC)microscopy and modulation contrast microscopy」に記載される通り、反射モードで、微分干渉顕微鏡(DIC)によって微粒状フレークスの数を数えた。視野は、約1.5mm×1.mmに設定され、そして50μmより大きい粒子は手作業で数えられる。イメージ間の重なりがないように、3×3パターンにおけるそれぞれのフィルターメンブランの中心で実行された、9つのそのような測定が行われる。フィルター媒体のより大きい面積が分析される場合、結果を、等しい面積(すなわち、20.25mm2)に標準化することができる。光学顕微鏡から集められた像は、存在するガラスフレークスの数を測定し、数えるために、象分析プログラム(Media Cybernetic’s ImagePro Plus バージョン6.1)によって試験される。これは次のように達成された:単純なグレースケールセグメンテーションによって、背景より暗いように現われた象内の特徴の全てがハイライトされ;次いで、25マイクロメートルより長い長さを有するハイライトされた特徴の全ての長さ、幅、面積および全周が測定され;次いで、いずれの明らかな非ガラス粒子をデータから除去し;次いで、測定データは、スプレッドシートにエクスポートされる。次いで、長さが25マイクロメートルより長く、かつ背景より明るい特徴の全てを抽出し、そして測定し;25マイクロメートルより長い長さを有するハイライトされた特徴の全ての長さ、幅、面積、全周およびX−Yアスペクト比を測定し;いずれの明らかな非ガラス粒子をデータから除去し;そして測定データは、スプレッドシートの以前にエクスポートされたデータに添付される。スプレッドシート内のデータは、次いで、特徴長さによって分類され、そして径によって区分けされる。報告された結果は、長さが50マイクロメートルより長い特徴に関する。これらの群のそれぞれは、次いで、数を数えられ、そして試料のそれぞれに関する数が報告された。
【0053】
最小限の100mLの溶液が試験される。そのようなものとして、複数の小型容器からの溶液は、溶液の全量を100mLにさせるように共同利用されてよい。10mLより高い容積を有する容器に関して、同一加工条件下で同一ガラス組成物から形成された10個の容器の試験のために、試験を繰り返し、粒子数の結果を、10個の容器に関して平均し、平均粒子数を決定する。あるいは、小型容器の場合、10個のバイアルの試験のために、試験を繰り返し、そのそれぞれを分析し、そして粒子数を複数の試験に対して平均して、試験あたりの平均粒子数を決定する。複数の容器に対して粒子数を平均することによって、個々の容器の剥離挙動における可能な変動が考慮される。表1に、試験用の容器の試料容積のおよび数の非限定的な例を要約する。
【0054】
【表1】
【0055】
上記試験は、形成プロセスから容器に存在する浮遊粒子、または溶液とガラスとの間の反応の結果としてガラス容器に含まれる溶液から沈殿する粒子ではなく、剥離のため、ガラスの内壁から流出する粒子を識別するために使用されることは理解されるべきである。特に、剥離粒子は、粒子のアスペクト比(すなわち、粒子の厚さに対する粒子の最大長さの比率、または最大および最小寸法の比率)に基づいて浮遊ガラス粒子とは区別され得る。剥離によって、不規則形状であり、かつ典型的に、約50μmより大きいが、しばしば約200μmより大きい最大長さを有する微粒状フレークスまたはラメラが生じる。フレークスの厚さは、通常、約100nmより大きく、かつ約1μmと同程度の大きさであり得る。したがって、フレークスの最小アスペクト比は、典型的に、約50より高い。アスペクト比は約100より高くてもよく、時には約1000より高いこともある。それとは対照的に、浮遊ガラス粒子は、一般に、約3以下の低いアスペクト比を有するであろう。したがって、剥離の結果として生じる粒子は、顕微鏡の観測の間に、アスペクト比に基づいて浮遊粒子から区別され得る。他の普通の非ガラス粒子としては、体毛、繊維、金属粒子、プラスチック粒子および他の汚染物質が含まれ、したがって、検査の間に除外される。結果の確認は、試験された容器の内部領域を評価することによって、達成することができる。観測時に、Journal of Pharmaceutical Sciences 101(4),2012,pages 1378−1384からの「Nondestructive Detection of Glass Vial Inner Surface Morphology with Differential Interference Contrast Microscopy」に記載の通り、スキン侵食/ピッチング/フレーク除去の証拠が見られる。
【0056】
本明細書に記載される実施形態において、促進剥離試験後に存在する粒子の数は、試験されたバイアルのセットに関する剥離係数を確定するために利用され得る。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する10個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、10の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する9個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、9の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する8個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、8の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する7個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、7の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する6個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、6の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する5個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、5の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する4個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、4の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する3個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、3の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する2個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、2の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、平均すると、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する1個未満のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、1の剥離係数を有すると考えられる。本明細書に記載される実施形態において、促進剥離試験後に試験あたり約50μmの最小長さおよび約50より高いアスペクト比を有する0個のガラス粒子を有するガラス容器の試験は、0の剥離係数を有すると考えられる。したがって、剥離係数が低いほど、剥離に対するガラス容器の耐性が良好であることは理解されるべきである。本明細書に記載される実施形態において、ガラス容器は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、10以下の剥離係数(すなわち、3、2、1または0の剥離係数)を有する。
【0057】
上記された特徴を有するガラス容器は、本明細書に記載される通り、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去されることによって得られる。特に、実施形態において、ガラス容器が、ガラス容器の内部表面に延在する持続的な層不均質性(すなわち、内部表面層の組成が壁部分の中点におけるガラスの組成物と異なる)を有する内部表面層を有するように、容器は、最初にタイプIBガラス組成物から形成される。容器は、ガラス管、ガラスシートなどのガラスストック材料を提供し、そしてガラス容器の少なくとも内部表面が、持続的な層不均質性を有する内部表面層を有するように、従来の成形技術を使用して、ガラス容器へとガラスストック材料を形成することによって、最初に形成される。その後、本明細書に記載される通り、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層を、ガラス容器の内部表面から除去する。
【0058】
本明細書に記載される実施形態において、ガラス容器は、「Standard Specification for Glasses in Laboratory Apparatus」と題されたASTM規格E438−92(2011)において、タイプI、クラスA(タイプIA)またはタイプI、クラスB(タイプIB)ガラスの基準を満たすガラス組成物から形成され得る。ボロシリケートガラスは、タイプI(AまたはB)基準を満たし、そして医薬品包装用に日常的に使用される。ボロシリケートガラスの例としては、限定されないが、Corning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740、7800、Wheaton 180、200および400、Schott Duran(登録商標)、Schott Fiolax(登録商標)、KIMAX(登録商標)N−51A、Gerresheimer GX−51 Flintが含まれる。
【0059】
ガラス容器が形成されるガラス組成物は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、化学的に耐久性であり、かつISO 720規格によって決定される通り、分解に対して耐性がある。ISO 720規格は、蒸留水中での分解に対するガラスの耐性(すなわち、ガラスの加水分解耐性)の基準である。簡単に説明すると、ISO 720規格プロトコルは、粉砕されたガラス粒子を利用して、これをオートクレーブ条件下(121℃、2気圧)で30分間、18MΩの水と接触させる。次いで、溶液を、比色測定によって、希釈HClを用いて中性pHまで倍散する。次いで、中性溶液になるまで倍散するために必要とされたHClの量を、ガラスから抽出され、ガラスのμmで報告されるNa2Oの当量に変換した。この値が低いほど、高い耐久性を示す。「Testing of glass−Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid−Method of test and classification」と題されたISO 720;「Glass−Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali−Method of test and classification」と題されたISO 695:1991;「Glass−Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C−Method of test and classification」と題されたISO 720:1985;および「Glass−Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C−Method of test and classification」と題されたISO 719:1985。それぞれの規格およびそれぞれの分類規格によって、個々の種類へと分類される。タイプHGA1は、62μgまでのNaOの抽出された当量を示し;タイプHGA2は、62μgより多く、かつ527μgまでのNaOの抽出された当量を示し;そしてタイプHGA3は、527μgより多く、かつ930μgまでのNaOの抽出された当量を示す。本明細書に記載されるガラス容器は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、ISO 720 タイプHGA1加水分解耐性を示す。
【0060】
ガラス容器が形成されるガラス組成物は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、化学的に耐久性であり、かつISO 719規格によって決定される通り、分解に対して耐性がある。ISO 719規格は、蒸留水中での分解に対するガラスの耐性(すなわち、ガラスの加水分解耐性)の基準である。簡単に説明すると、ISO 719規格プロトコルは、粉砕されたガラス粒子を利用して、これを2気圧の圧力および98℃の温度で60分間、18MΩの水と接触させる。次いで、溶液を、比色測定によって、希釈HClを用いて中性pHまで倍散する。次いで、中性溶液になるまで倍散するために必要とされたHClの量を、ガラスから抽出され、ガラスのμgで報告されるNaOの当量に変換した。この値が低いほど、高い耐久性を示す。ISO 719規格によって、個々の種類へと分類される。タイプHGB1は、31μgまでのNaOの抽出された当量を示し;タイプHGB2は、31μgより多く、かつ62μgまでのNaOの抽出された当量を示し;タイプHGB3は、62μgより多く、かつ264μgまでのNaOの抽出された当量を示し;タイプHGB4は、264μgより多く、かつ620μgまでのNaOの抽出された当量を示し;かつタイプHGB5は、620μgより多く、かつ1085μgまでのNaOの抽出された当量を示す。本明細書に記載されるガラス容器は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、ISO 719 タイプHGB1加水分解耐性を示す。
【0061】
USP<660>試験および/またはEuropean Pharmacopeia 3.2.1試験に関して、本明細書に記載されるガラス容器は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、タイプ1の化学的耐久性を有する。上記の通り、USP<660>試験およびEuropean Pharmacopeia 3.2.1試験は、粉砕されたガラスの粒子ではなく、未変化のガラス容器上で実行され、そのようなものとして、USP<660>試験およびEuropean Pharmacopeia 3.2.1試験は、ガラス容器の内部表面の化学的耐久性を直接評価するために使用され得る。
【0062】
ガラス容器が形成されるガラス組成物は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、化学的に耐久性であり、かつDIN 12116規格によって決定される通り、酸性溶液中での分解に対して耐性がある。簡単に説明すると、DIN 12116規格は、既知の表面積を有する研磨されたガラス試料を利用し、次いで、この重量を計量し、6時間、比例量の沸騰6M塩酸と接触するように配置する。次いで、試料を溶液から除去し、乾燥させ、再び重量を計量する。酸性溶液への暴露の間のガラス質量損失は、試料の酸耐久性の基準である。この数値が低いほど、より高い耐久性を示す。試験の結果は、表面積あたりの半質量の単位、具体的にはmg/dmで報告される。DIN 12116規格によって、個々の種類へと分類される。クラスS1は、0.7mg/dmまでの重量損失を示し;クラスS2は、0.7mg/dmから1.5mg/dmまでの重量損失を示し;クラスS3は、1.5mg/dmから15mg/dmまでの重量損失を示し;そしてクラスS4は、15mg/dmより多くの重量損失を示す。本明細書に記載されるガラス容器は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、DIN 12116 クラスS2またはそれより良好な酸耐性を示す。
【0063】
ガラス容器が形成されるガラス組成物は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、化学的に耐久性であり、かつISO 695規格によって決定される通り、塩基性溶液中での分解に対して耐性がある。簡単に説明すると、ISO 695規格は、既知の表面積を有する研磨されたガラス試料を利用し、次いで、この重量を計量し、3時間、沸騰1M NaOH+0.5M NaCO溶液中に配置する。次いで、試料を溶液から除去し、乾燥させ、再び重量を計量する。塩基性溶液への暴露の間のガラス質量損失は、試料の塩基耐久性の基準である。この数値が低いほど、より高い耐久性を示す。DIN 12116規格と同様に、ISO 695規格の結果は、表面積あたりの半質量の単位、具体的にはmg/dmで報告される。ISO 695規格によって、個々の種類へと分類される。クラスA1は、75mg/dmまでの重量損失を示し;クラスA2は、75mg/dmから175mg/dmまでの重量損失を示し;そしてクラスA3は、175mg/dmより多くの重量損失を示す。本明細書に記載されるガラス容器は、持続的な層不均質性を有する内部表面層の薄層がガラス容器から除去された後、クラスA2またはそれより良好なISO 695塩基耐性を示す。
【0064】
ISO 695、ISO 719、ISO 720またはDIN 12116による上記分類を参照する時、指定された分類「またはそれより良好」を有するガラス組成物またはガラス容器は、ガラス組成物の性能が、指定された分類と同等に良好であるか、またはそれ以上に良好であることを意味することは理解されるべきである。例えば、ISO 695基準の「クラスA2」またはそれより良好な耐性を有するガラス容器は、クラスA2またはクラスA1のISO 695分類を有し得る。
【0065】
ガラス容器は、容器が加工および充填される時に、衝撃損傷、擦傷および/または摩擦などの損傷を受け得る。そのような損傷は、しばしば、個別のガラス容器間の接触、またはガラス容器と製造装置との間の接触によって生じる。このような損傷は、一般に、容器の機械的強度を減少させ、そして貫通亀裂を導き得、これは容器の含有物の完全性を損なう可能性がある。したがって、本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、ガラス容器は、がガラス体の外側表面の少なくとも一部の周囲に配置された低摩擦コーティングをさらに含む。いくつかの実施形態においては、低摩擦コーティングは、ガラス容器のガラス体の外側表面の少なくとも一部において配置され得るが、他の実施形態においては、無機コーティング利用されて、ガラス体の表面に圧縮応力を与えられる場合など、1つまたはそれ以上の中間コーティングが、低摩擦コーティングとガラス体の外側表面との間に配置されてよい。低摩擦コーティングは、コーティングを有するガラス体の一部分の摩擦係数を減少させ、そして、そのようなものとして、ガラス体の外側表面上での摩擦の出現および表面損傷を減少させる。本質的に、コーティングによって、容器が、別の物体(容器)に対して「スリップ」することが可能となり、それによって、ガラス上での表面損傷の可能性が減少する。さらに、低摩擦コーティングは、ガラス容器のガラス体を保護し、それによって、ガラス容器への鈍損傷の影響が軽減する。例示的なコーティングは、2013年11月8日出願の米国特許出願第14/075,630号明細書に開示されている。上記特許出願は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0066】
より低いか、または減少した摩擦係数は、ガラスへの摩擦損傷を軽減することによって、ガラス物品に改善された強度および耐久性を与え得る。さらに、低摩擦コーティングは、例えば、脱パイロジェン化、オートクレーブなどの医薬品包装において利用される包装および包装前ステップの間に経験するものなどの高温および他の条件への暴露後に、上記の改善された強度および耐水性特徴を維持し得る。したがって、低摩擦コーティングおよび低摩擦コーティングを有するガラス物品は、熱安定性である。
【0067】
低摩擦コーティングは、一般に、シランなどのカップリング剤およびポリイミドなどのポリマー化学組成物を含んでなり得る。いくつかの実施形態において、カップリング剤は、ガラス物品の表面上に配置されるカップリング剤層中に配置され得、かつポリマー化学組成物は、カップリング剤層上に配置されたポリマー層中に配置され得る。他の実施形態において、カップリング剤およびポリマー化学組成物は、単一層中で混合され得る。適切なコーティングは、2013年2月28日出願の米国特許出願第13/780,740号明細書に記載されている。
【0068】
上記実施形態を参照すると、シラン化学組成物は、芳香族化学組成物であり得る。本明細書で使用される場合、芳香族化学組成物は、ベンゼン系列に特有の、1個またはそれ以上の6員炭素環および関連有機部分を含有する。芳香族シラン化学組成物は、限定されないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物またそのオリゴマー、あるいはトリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーなどのアルコキシシランであり得る。いくつかの実施形態において、芳香族シランは、アミン部分を含んでなり得、かつアミン部分を含んでなるアルコキシシランであり得る。別の実施形態において、芳香族シラン化学組成物は、芳香族アルコキシシラン化学組成物、芳香族アシルオキシシラン化学組成物、芳香族ハロゲンシラン化学組成物または芳香族アミノシラン化学組成物であり得る。別の実施形態において、芳香族シラン化学組成物は、アミノフェニル、3−(m−アミノフェノキシ)プロピル、N−フェニルアミノプロピルまたは(クロロメチル)フェニル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハイロゲン(hylogen)またはアミノシランからなる群から選択され得る。例えば、芳香族アルコキシシランは、限定されないが、アミノフェニルトリメトキシシラン(本明細書中、「APhTMS」と記載されることもある)、アミノフェニルジメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルジエトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルジメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルジエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルジメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルジエトキシシラン、その加水分解物、またはそのオリゴマー化学組成物であり得る。例示的な実施形態において、芳香族シラン化学組成物は、アミノフェニルトリメトキシシランであり得る。
【0069】
再び、上記の実施形態を参照すると、シラン化学組成物は、脂肪族化学組成物であってもよい。本明細書で使用される場合、脂肪族化学組成物は非芳香族であり、限定されないが、アルカン、アルケンおよびアルキンなどの開鎖構造を有する化学組成物である。例えば、いくつかの実施形態において、カップリング剤は、アルコキシシランであり、かつ限定されないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物またそのオリゴマー、あるいはトリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーなどの脂肪族アルコキシシランであり得る化学組成物を含んでなり得る。いくつかの実施形態において、脂肪族シランは、アミン部分を含んでなり得、かつアミノアルキルトリアルコキシシランなどのアミン部分を含んでなるアルコキシシランであり得る。一実施形態において、脂肪族シラン化学組成物は、3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、ビニル、メチル、N−フェニルアミノプロピル、(N−フェニルアミノ)メチル、N−(2−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハイロゲン(hylogen)またはアミノシラン、その加水分解物またはそのオリゴマーからなる群から選択され得る。アミノアルキルトリアルコキシシランとしては、限定されないが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(本明細書中、「GAPS」と記載されることもある)、3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3アミノプロピルジエトキシシラン、その加水分解物およびそのオリゴマー化学組成物が含まれる。他の実施形態において、脂肪族アルコキシシラン化学組成物は、アルキルトリアルコキシシランまたはアルキルビアルコキシシランなどのアミン部分を含有し得ない。そのようなアルキルトリアルコキシシランまたはアルキルジアルコキシシランとしては、限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、その加水分解物またはそのオリゴマー化学組成物が含まれる。例示的な実施形態において、脂肪族シラン化学組成物は、3−アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0070】
上記の通り、低摩擦コーティングは、ポリマー化学組成物も含む。ポリマー化学組成物は、熱安定性ポリマーまたはポリマーの混合物であり得、例えば、限定されないが、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエトケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリフェニル、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾキサゾール、ポリビスチアゾールおよび多芳香族複素環式ポリマーであって、有機または無機充てん剤の有無にかかわらないものであり得る。ポリマー化組成物は、他の熱安定性ポリマー、例えば、250℃、300℃および350℃を含む200℃〜400℃の範囲の温度において分解しないポリマーから形成され得る。これらのポリマーは、カップリング剤の有無にかかわらず適用され得る。
【0071】
一実施形態において、ポリマー化学組成物は、ポリイミド化学組成物である。低摩擦コーティングがポリイミドを含んでなる場合、ポリイミド組成物は、モノマーの重合によって溶液中で形成されるポリアミド酸から誘導され得る。1つのそのようなポリアミド酸は、(NeXolveから商業的に入手可能な)Novastrat(登録商標)800である。硬化ステップによって、ポリアミド酸はイミド化され、ポリイミドが形成する。ポリアミド酸は、ジアミンなどのジアミンモノマーと、二無水物などの無水物モノマーとの反応から形成され得る。本明細書で使用される場合、ポリイミドモノマーは、ジアミンモノマーおよび二無水物モノマーとして記載される。しかしながら、ジアミンモノマーは2つのアミン部分を含んでなるが、以下の記載において、少なくとも2つのアミン部分を含んでなるいずれのモノマーもジアミンモノマーとして適切となり得ることは理解されるべきである。同様に、二無水物モノマーは2つの無水物部分を含んでなるが、以下の記載において、少なくとも2つの無水物部分を含んでなるいずれのモノマーも二無水物モノマーとして適切となり得ることは理解されるべきである。無水物モノマーの無水物部分とジアミンモノマーのアミン部分との間の反応によって、ポリアミド酸が形成する。したがって、本明細書で使用される場合、指定されたモノマーの重合から形成されるポリイミド化学組成物は、指定されたモノマーから形成されるポリアミド酸のイミド化後に形成されるポリイミドを意味する。一般に、全無水物モノマーおよびジアミンモノマーのモル比は、約1:1であり得る。ポリイミドは、2つのみの別個の化学組成物(1つは無水物モノマーであり、もう1つはジアミンモノマーである)から形成され得るが、少なくとも1つの無水物モノマーが重合され得、かつ少なくとも1つのジアミンモノマーが重合され得、ポリイミドが形成され得る。例えば、1つの無水物モノマーが、2つの異なるジアミンモノマーと重合され得る。いずれの数のモノマー種の組合せも使用され得る。さらに、1つの無水物モノマー対異なる無水物モノマー、または1つまたはそれ以上のジアミンモノマー対異なるジアミンモノマーの比率は、約1:0.1〜0.1:1、例えば、約1:9、1:4、3:7、2:3、1:1、3:2、7:3、4:1または1:9などのいずれの比率でもあり得る。
【0072】
ジアミンモノマーと一緒にポリイミドが形成される無水物モノマーは、いずれの無水物モノマーも含んでなり得る。一実施形態において、無水物モノマーは、ベンゾフェノン構造を含んでなる。例示的な実施形態において、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドが形成される無水物モノマーの少なくとも1つであり得る。他の実施形態において、ジアミンモノマーは、上記無水物の置換型を含む、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造またはペンタセン構造を有し得る。
【0073】
無水物モノマーと一緒にポリイミドが形成されるジアミンモノマーは、いずれのジアミンモノマーも含んでなり得る。一実施形態において、ジアミンモノマーは、少なくとも1つの芳香族環部分を含んでなる。ジアミンモノマーは、2つの芳香族環部分を一緒に連結する1つまたはそれ以上の炭素分子を有し得る。あるいは、ジアミンモノマーは、直接連結されて、かつ少なくとも1つの炭素分子によって分離されていない2つの芳香族環部分を有し得る。
【0074】
ジアミンモノマーの2つの異なる化学組成物がポリイミドを形成し得る。一実施形態において、第1のジアミンモノマーは、直接連結されて、かつ連結炭素分子によって分離されていない2つの芳香族環部分を含んでなり、かつ第2のジアミンモノマーは、2つの芳香環部分を連結する少なくとも1つの炭素分子によって連結される2つの芳香環部分を含んでなる。1つの例示的な実施形態において、第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5のモル比(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)を有する。しかしながら、無水物モノマーレシオが約0.5に保持される間、第1のジアミンモノマーおよび第2のジアミンモノマーの比率は、約0.010.49〜約0.40:0.10の範囲で変動し得る。
【0075】
一実施形態において、ポリイミド組成物は、少なくとも第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーの重合から形成され、第1および第2のジアミンモノマーは異なる化学組成物である。一実施形態において、無水物モノマーは、ベンゾフェノンであり、第1のジアミンモノマーは、一緒に直接結合した2つの芳香環を含んでなり、かつ第2のジアミンモノマーは、第1および第2の芳香族環を連結する少なくとも1つの炭素分子と一緒に結合した2つの芳香環を含んでなる。第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5のモル比(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)を有し得る。
【0076】
例示的な実施形態において、第1のジアミンモノマーは、オルト‐トリジンであり、第2のジアミンモノマーは、4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)であり、かつ無水物モノマーは、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物である。第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5のモル比(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)を有し得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、ポリイミドは、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸1,2;3,4−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2t,3t,6c,7c−テトラカルボン酸2,3:6,7−二無水物、2c,3c,6c,7c−テトラカルボン酸2,3:6,7−二無水物、5−エンド−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2−エキソ,3−エキソ,5−エキソ−トリカルボン酸2,3:5,5−二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの異性体、または4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)3,3’,4,4’−ビフェニル二無水物(4,4’−BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノン二無水物(4,4’−BTDA)、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸無水物(4,4’−ODPA)、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシル−フェノキシ)ベンゼン二無水物(4,4’−HQDPA)、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシル−フェノキシ)ベンゼン二無水物(3,3’−HQDPA)、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシルフェノキシフェニル)−イソプロピリデン二無水物(4,4’−BPADA)、4,4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ペンタフルオロフェニルエチリデン)ジフタル酸二無水物(3FDA)、4,4’−オキシジアニリン(ODA)、m−フェニレンジアミン(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、m−トルエンジアミン(TDA)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4,4−APB)、3,3’−(m−フェニレンビス(オキシ))ジアニリン(APB)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン(DMMDA)、2,2’−ビス(4(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)、1,4−シクロヘキサンジアミン2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン(4−BDAF)、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン(DAPI)、マレイン酸無水物(MA)、シトラコン酸無水物(CA)、ナド酸無水物(NA)、4−(フェニルエチニル)−1,2−ベンゼンジカルボン酸無水物(PEPA)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジ−フタル酸無水物(6−FDA)、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4の’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ならびに全体として参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,619,042号明細書、同第8,053,492号明細書、同第4,880,895号明細書、同第6,232,428号明細書、同第4,595,548号明細書、国際公開第2007/016516号、米国特許出願公開第2008/0214777号明細書、米国特許第6,444,783号明細書、同第6,277,950号明細書および同第4,680,373号明細書に記載される材料の1つまたはそれ以上の重合から形成され得る。別の実施形態において、ポリイミドが形成されるポリアミド酸溶液は、(Aldrichから商業的に入手可能な)ポリ(ピロメリト酸二無水物−co−4,4−オキシジアニリン)アミド酸を含んでなり得る。
【0078】
上記の通り、コーティングは低摩擦係数を有し得る。低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数(μ)は、同ガラス組成物から形成された未コーティングのガラス容器の表面よりも低い摩擦係数を有し得る。摩擦係数(μ)は、2つの表面間の摩擦の定量的測定値であり、かつ表面の粗さを含む、第1および第2の表面の機械的および化学的特性、ならびに限定されない、温度および湿度などの環境的条件の関数である。本明細書で使用される場合、被覆ガラス容器の摩擦係数測定は、第1のガラス容器の外側表面と、第1のガラス容器と同一の第2のガラス容器の外側表面との間の摩擦係数として報告され、第1および第2のガラス容器は、同一のガラス体および同一のコーティング組成物(適用される場合)を有し、かつ摩擦の前、摩擦の間および摩擦の後、同一の環境に暴露される。他に明示されない限り、摩擦係数は、バイアル−オン−バイアル試験ジグにおいて測定された、30Nの標準負荷によって測定された最大摩擦係数を意味する。しかしながら、特定の適用された負荷において最大摩擦係数を示す被覆ガラス容器は、より低い負荷において同様またはより良好な(すなわち、より低い)最大摩擦係数を示すであろうことは理解されるべきである。例えば、被覆ガラスで容器は、50Nの適用負荷下において0.5以下の最大摩擦係数を示し、被覆ガラス容器は、25Nの適用負荷下においても0.5以下の最大摩擦係数を示すであろう。
【0079】
本明細書に記載される実施形態において、(被覆および未被覆の両方の)ガラス容器の摩擦係数は、バイアル−オン−バイアル試験ジグで測定される。この測定技術および対応するデバイスは、全体として参照によって本明細書に組み込まれる、2013年2月28日出願の米国特許出願第13/780,740号明細書に記載されている。
【0080】
本明細書に記載される実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、バイアル−オン−バイアル試験ジグで決定される場合、同様の被覆ガラス容器と比較して、約0.7以下の摩擦係数を有する。他の実施形態において、摩擦係数は、約0.6以下または約0.5以下であり得る。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、約0.4以下または約0.3以下の摩擦係数を有する。0.7以下の摩擦係数を有する被覆ガラス容器は、一般に、摩擦損傷に対する改善された体制を示し、結果として、改善された機械的特性を有する。例えば、従来のガラス容器(低摩擦コーティングを含まない)は、0.7より高い摩擦係数を有し得る。
【0081】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、同ガラス組成物から形成された未被覆のガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%低い。例えば、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、同ガラス組成物から形成された未被覆のガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%低いか、少なくとも25%低いか、少なくとも30%低いか、少なくとも40%低いか、または少なくとも50%低くなり得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度への暴露後、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度への暴露後、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下または約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分間、約260℃の温度への暴露後、約30%より多くまで増加し得ない。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度への暴露後、約30%より多くまで(すなわち、約25%、約20%、約15%または約10%)増加し得ない。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度への暴露後、約0.5より高くまで(すなわち、約0.45、約.04、約0.35、約0.3、約0.25、約0.2、約0.15、約0.1または約0.5)増加し得ない。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度への暴露後、全く増加し得ない。
【0083】
いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、10分間、約70℃の温度において水浴中に浸漬後、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間または1時間、70℃の温度において水浴中に浸漬後、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下または約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、10分間、約70℃の温度において水浴中に浸漬後、約30%より多くまで増加し得ない。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間または1時間、約70℃の温度において水浴中に浸漬後、約30%より多くまで(すなわち、約25%、約20%、約15%または約10%)増加し得ない。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間または1時間、約70℃の温度において水浴中に浸漬後、全く増加し得ない。
【0084】
いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、凍結乾燥条件への暴露後、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、凍結乾燥条件への暴露後、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下または約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への暴露後、約30%より多くまで増加し得ない。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への暴露後、約30%より多くまで(すなわち、約25%、約20%、約15%または約10%)増加し得ない。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への暴露後、全く増加し得ない。
【0085】
いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、オートクレーブ条件への暴露後、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分は、オートクレーブ条件への暴露後、約0.7以下(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下または約0.3以下)の摩擦係数を有し得る。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への暴露後、約30%より多くまで増加し得ない。他の実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への暴露後、約30%より多くまで(すなわち、約25%、約20%、約15%または約10%)増加し得ない。いくつかの実施形態において、低摩擦コーティングを有する被覆ガラス容器の部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への暴露後、全く増加し得ない。
【0086】
本明細書に記載される被覆ガラス容器は、水平圧縮強度を有する。水平圧縮強度は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる、2013年2月28日出願の米国特許出願第13/780,740号明細書に記載の通り測定される。水平圧縮強度の測定は、選択された標準圧縮負荷における破損確率として示すことができる。本明細書で使用される場合、破損は、ガラス容器が最少50%の試料において水平圧縮下で破裂する時に生じる。いくつかの実施形態において、被覆ガラス容器は、未被覆のバイアルよりも、少なくとも10%、20%または30%高い水平圧縮強度を有し得る。
【0087】
水平圧縮力測定は、摩耗ガラス容器上においても実行され得る。特に、試験ジグの操作によって、被覆ガラス容器外部表面上に、被覆ガラス容器の強度を弱める表面擦傷または摩擦などの損傷が生じ得る。次いで、ガラス容器に水平圧縮手順を受けさせ、そこで容器は、2つのプレート間に配置される。擦傷は、プレートに平行に外方向へ示される。擦傷は、バイアル−オン−バイアルによって適用された選択された標準圧力および擦傷長さによって特徴づけることができる。他に明示されない限り、水平圧縮手順のための摩耗ガラス容器の擦傷は、30Nの標準負荷によって作成された擦傷長さ20mmによって特徴づけられる。
【0088】
被覆ガラス容器を、熱処理後、水平圧縮長さに関して評価することができる。熱処理は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度への暴露であり得る。いくつかの実施形態において、被覆ガラス容器の水平圧縮強度は、上記されたものなどの熱処理への暴露およびその次の摩耗後、約20%、30%または40%より多くまで減少しない。一実施形態において、被覆ガラス容器の水平圧縮強度は、30分間、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の熱処理への暴露およびその次の摩耗後、約20%より多くまで減少しない。
【0089】
本明細書に記載される被覆ガラス物品は、30分間、少なくとも260℃の温度への加熱後、熱安定性であり得る。「熱安定性」という句は、本明細書で使用される場合、ガラス物品に適用された低摩擦コーティングが、暴露後、被覆ガラス物品の機械的特性、特に摩擦係数及び水平圧縮強度が、影響を受けるとしても最低限でのみ影響を受けるように、高温への暴露後、ガラス物品の表面上で実質的に変化しないままであることを意味する。これは、低摩擦コーティングが、高温暴露後にガラスの表面に接着して残り、そしてガラス物品を、摩擦、衝撃などの機械攻撃から保護し続けることを示す。
【0090】
一実施形態において、被覆ガラス容器は、熱安定性であり得る。本明細書に記載される通り、被覆ガラス容器は、被覆ガラス容器を約30分間、少なくとも260℃の温度に暴露した後、摩擦係数基準および水平圧縮強度基準が満たされる場合に、熱安定性である(すなわち、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも260℃の温度において熱安定性である)と考えられる。熱安定性は、約260℃〜約400℃の温度においても評価され得る。例えば、いくつかの実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約270℃または約280℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。なお他の実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約290℃または約300℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。さらなる実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約310℃または約320℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。なお他の実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約330℃または約340℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。さらに他の実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約350℃または約360℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。いくつかの他の実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約370℃または約380℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。なお他の実施形態において、被覆ガラス容器は、約30分間、少なくとも約390℃または約400℃の温度において基準が満たされる場合、熱安定性であると考えられるであろう。
【0091】
本明細書に開示される被覆ガラス容器は、温度の範囲において熱安定性であり得、これは、範囲内のそれぞれの温度において、摩擦係数基準および水平圧縮強度基準を満たすことによって、被覆ガラス容器が熱安定性であることを意味する。例えば、本明細書に記載される実施形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約260℃から約400℃以下の温度まで熱安定性であり得る。いくつかの実施形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約260℃〜約350℃の範囲において熱安定性であり得る。いくつかの実施形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約280℃から約350℃以下の温度まで熱安定性であり得る。なお他の実施形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約290℃〜約340℃の範囲において熱安定性であり得る。別の実施形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約300℃〜約380℃の温度範囲において熱安定性であり得る。別の実施形態において、被覆ガラス容器は、少なくとも約320℃〜約360℃の温度範囲において熱安定性であり得る。
【0092】
請求された対象の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に、様々な修正および変更を実施することが可能であることは、当業者に明らかであろう。したがって、そのような修正および変更が添付の請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にあることを条件として、本明細書が、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更を包括することが意図される。
【0093】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0094】
実施形態1
ガラス容器の形成方法において、
内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなるガラス容器であって、前記側面の内部表面の少なくとも一部分が、内部表面層を有する、ガラス容器を形成するステップと;
前記側面の前記内部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する前記内部表面層の薄層を除去するために、前記ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップと
を含んでなり、
前記内部表面が、耐剥離性であることを特徴とする、方法。
【0095】
実施形態2
前記内部表面層の前記薄層が除去された後、前記ガラス容器が10以下の剥離係数を有することを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0096】
実施形態3
除去される前記内部表面層の前記薄層が、約100nm〜約750nmの厚さを有することを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0097】
実施形態4
前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体が、約0.001重量パーセント〜約0.15重量パーセントのフッ化物イオンを含んでなることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0098】
実施形態5
前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体が、HCl、HBr、HNO、HSO、HSO、HPO、HPO、HOAc、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、それらの混合物および前記酸の少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される要素を含んでなる、実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体であることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0099】
実施形態6
前記実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体が、HCl、HNO、HSOおよびHPOからなる群から選択される要素を含んでなることを特徴とする、実施形態5に記載の方法。
【0100】
実施形態7
前記実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体が、約3以下のpHを有することを特徴とする、実施形態5に記載の方法。
【0101】
実施形態8
前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体が、約0.001重量パーセント〜約0.015重量パーセントのフッ化物イオンを含んでなることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0102】
実施形態9
前記ガラス容器が、ASTM規格E438−92によるタイプI、クラスAまたはタイプI、クラスBガラスから形成されることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0103】
実施形態10
前記ガラス容器が、ボロシリケートガラスから形成されることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0104】
実施形態11
前記側面の外部表面を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0105】
実施形態12
前記側面の前記外部表面を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させる前に、前記側面の前記外部表面が、第1の形状を有する強度限界表面欠陥を含んでなり、かつ
前記側面の前記外部表面を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させた後、前記強度限界表面欠陥が、第2の形状を有することを特徴とする、実施形態11に記載の方法。
【0106】
実施形態13
前記第2の形状が、鈍化した亀裂先端を含んでなることを特徴とする、実施形態12に記載の方法。
【0107】
実施形態14
前記ガラス容器が、前記側面の少なくとも前記外部表面上に表面圧縮応力層を含んでなるイオン交換−強化ガラス容器であることを特徴とする、実施形態11に記載の方法。
【0108】
実施形態15
前記側面の前記外部表面が、約250MPa以上の圧縮応力を有することを特徴とする、実施形態14に記載の方法。
【0109】
実施形態16
表面圧縮のレベルが、前記側面の前記外部表面を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させることによって、約0.1%〜約4%の量低下することを特徴とする、実施形態14に記載の方法。
【0110】
実施形態17
前記側面の少なくとも前記外部表面上に低摩擦コーティングを適用するステップをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0111】
実施形態18
前記低摩擦コーティングが、熱安定性であることを特徴とする、実施形態17に記載の方法。
【0112】
実施形態19
ガラス容器の形成方法において、
内部容積を少なくとも部分的に包囲する側面を含んでなるガラス容器であって、前記側壁が、外部表面層を含んでなる外部表面を有する、ガラス容器を形成するステップと;
前記側面の前記外部表面から約100nm〜約1.0μmの厚さを有する前記外部表面層の薄層を除去するために、前記ガラス容器を、実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させるステップと
を含んでなり、
前記ガラス容器を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させる前に、前記側面の前記外部表面が、第1の形状を有する強度限界表面欠陥を含んでなり、
前記側面の前記外部表面を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させた後、前記強度限界表面欠陥が、第2の形状を有することを特徴とする、方法。
【0113】
実施形態20
前記第2の形状が、鈍化した亀裂先端を含んでなることを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0114】
実施形態21
除去される前記外部表面層の前記薄層が、約100nm〜約750nmの厚さを有することを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0115】
実施形態22
前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体が、約0.001重量パーセント〜約0.15重量パーセントのフッ化物イオンを含んでなることを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0116】
実施形態23
前記ガラス容器が、ASTM規格E438−92によるタイプI、クラスAまたはタイプI、クラスBガラスから形成されることを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0117】
実施形態24
前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体が、HCl、HBr、HNO、HSO、HSO、HPO、HPO、HOAc、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、それらの混合物および前記酸の少なくとも1つを含んでなる組合せからなる群から選択される要素を含んでなる、実質的にフッ化物を含まない水性酸性処理媒体であることを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0118】
実施形態25
前記ガラス容器が、前記側面の少なくとも前記外部表面上に表面圧縮応力層を含んでなるイオン交換−強化ガラス容器であることを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0119】
実施形態26
前記側面の前記外部表面が、約250MPa以上の圧縮応力を有することを特徴とする、実施形態25に記載の方法。
【0120】
実施形態27
表面圧縮のレベルが、前記側面の前記外部表面を、前記実質的にフッ化物を含まない水性処理媒体と接触させることによって、約0.1%〜約4%の量低下することを特徴とする、実施形態25に記載の方法。
【0121】
実施形態28
前記側面の少なくとも前記外部表面上に低摩擦コーティングを適用するステップをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
【0122】
実施形態29
前記低摩擦コーティングが、熱安定性であることを特徴とする、実施形態28に記載の方法。
図1
図2
【国際調査報告】