(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、必要とする対象において、抗PD−L1抗体またはその抗原結合断片といった免疫調節剤とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物とでがんを治療する方法を特徴とする。
免疫調節剤が、抗PD−L1抗体またはその抗原結合断片、抗PD1抗体またはその抗原結合断片、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合断片およびOX−40アゴニストからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
免疫調節剤が、MEDI4736、MPDL3280A、2.7A4、AMP−714、MDX−1105、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、BMS936559、MPDL3280A、トレメリムマブ、イピリムマブおよびOX40L FPから選択される、請求項1に記載の方法。
がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)をはじめとする肺がん、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞癌(HCC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)をはじめとする頭頸部がん、およびびまん性大細胞型B細胞癌(DLBCL)をはじめとするリンパ腫から選択される、請求項9に記載の方法。
約1mg/kg〜20mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片と約1mg/kg〜10mg/kgのAZD9150とを、その治療を必要とする患者に投与する、請求項13に記載の方法。
1回の用量当たり、約10mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片と約3mg/kgのAZD9150とを投与する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
1回の用量当たり、約20mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片と約3mg/kgのAZD9150とを投与する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
MEDI4736のみまたはAZD9150のみのいずれかの投与と比較して無増悪生存期間および/または全生存期間の増加をもたらす、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
医薬組成物が、MEDI4736またはその抗原結合断片の約1mg/kg〜約20mg/kgの用量とAZD9150の約1mg/kg〜約10mg/kgの用量とを与えるように製剤化されている、請求項24に記載の医薬組成物。
医薬組成物が、MEDI4736またはその抗原結合断片の約10mg/kgの用量とAZD9150の約3mg/kgの用量とを与えるように製剤化されている、請求項25に記載の医薬組成物。
ヒトのような温血動物において免疫浸潤細胞を調節する方法であって、前記動物に、有効な量のMEDI4736またはその抗原結合断片を、有効な量のAZD9150の前に、または後に、または同時に投与することを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
別途定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解する意味を有する。下記の参考文献は、本発明で使用する用語の中の多くの一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988)、The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991)、およびHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。化学合成および化学分析に標準的技術を使用することができる。許可される場合、全ての特許、出願、出願公開およびその他の公報、National Center for Biotechnology Information(NCBI)等のデータベースを通して入手可能なGENBANK受託番号および関連する配列情報、ならびに本明細書での開示全体を通して言及されるその他のデータを、文書の本明細書で論じた部分に関しておよびその全体を参照により援用する。
【0025】
別途指示しない限り、下記の用語は下記の意味を有する:
「2’−デオキシヌクレオシド」は、デオキシリボヌクレオシド(DNA)中において天然に存在することが分かっているような、2’−H−フラノシル糖部位を含むヌクレオシドを意味する。ある特定の実施形態では、2’−デオキシヌクレオシドは改変核酸塩基を含むことができる、またはRNA核酸塩基(例えばウラシル)を含むことができる。
【0026】
「2’−置換ヌクレオシド」は、2’−位でHまたはOH以外の置換基を含むヌクレオシドを意味する。別途指示しない限り、2’−置換ヌクレオシドは二環式ヌクレオシドではない。
【0027】
「5’−メチルシトシン」は、5’位に付着したメチル基で改変されたシトシンを意味する。5−メチルシトシンは改変核酸塩基である。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「約」は当分野で普通の許容誤差の範囲内と理解され、述べた値の±10%内(例えば9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%内)を概して意味する。例えば「化合物が、STAT3の少なくとも約70%阻害に影響を及ぼした」と述べられている場合、STAT3レベルが63%〜77%の範囲内で阻害されることが暗示される。化合物を約20mg/kgで使用すると述べられている場合、範囲18〜22mg/kgが包括的に包含される。別途文脈から明らかでない限り、本明細書に記載する全ての数値は、用語約で修飾される。
【0029】
「同時に投与される」は、2種の薬剤の、患者中において両方の薬理学的効果が同時に顕性であるあらゆる方法での共投与を意味する。同時投与は、両方の薬剤が単一の医薬組成物で投与されること、同一の剤形で投与されること、または同一の投与経路で投与されることを必要としない。両方の薬剤の効果が同時に顕在化する必要はない。これらの効果は、ある期間にわたり重複していることのみを必要としており、同一の広がりをもつ必要はない。
【0030】
「薬剤」は、ある効果を生じさせることが可能な物質(例えば、化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは抗体(および同様のもの))を意味する。
【0031】
「動物」はヒトまたは非ヒト動物を意味しており、非ヒト動物としてマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタおよび非ヒト霊長類が挙げられるがこれらに限定されず、非ヒト霊長類としてサルおよびチンパンジーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
用語「抗体」は、本開示で使用する場合、免疫グロブリンまたはこの断片もしくは誘導体を意味しており、in vitroで生じるかin vivoで生じるかにかかわらず、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを包含する。この用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異的抗体、多特異的抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組み換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体および移植抗体が含まれるがこれらに限定されない。本開示の目的のために「インタクトな抗体」のように別途用語「インタクトな」で修飾されない限り、用語「抗体」には抗体断片も含まれ、例えばFab、F(ab’)
2、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗原結合機能(即ち、例えばCTLA−4、PD−L1に特異的に結合する能力)を保持するその他の抗体断片も含まれる。典型的には、そのような断片は抗原結合ドメインを含むだろう。
【0033】
「抗CTLA−4抗体」は、CTLA−4ポリペプチドに選択的に結合する抗体を意味する。例示的な抗CTLA−4抗体が、例えば米国特許第6,682,736号明細書、米国特許第7,109,003号明細書、米国特許第7,123,281号明細書、米国特許第7,411,057号明細書、米国特許第7,824,679号明細書、米国特許第8,143,379号明細書、米国特許第7,807,797号明細書および米国特許第8,491,895号明細書(これらにおいて、トレメリムマブは11.2.1である)で説明されており、これらは参照により本明細書に援用される。トレメリムマブ(米国特許第6,682,736号明細書)は例示的な抗CTLA−4抗体である。
トレメリムマブ配列:
VL−配列番号13。
VH−配列番号14。
VH CDR1−配列番号15;VH CDR2−配列番号16;VH CDR3−配列番号17。
VL CDR1−配列番号18;VL CDR2−配列番号19;VL CDR3−配列番号20。
【0034】
「抗PD−L1」抗体は、PD−L1ポリペプチドに選択的に結合する抗体を意味する。例示的な抗PD−L1抗体が、例えば国際公開第2011/066389号パンフレット、米国特許出願公開第20130034559号明細書/米国特許第8779108号明細書および米国特許出願公開第20140356353号明細書で説明されており、これらは参照により本明細書に援用される。MEDI4736は例示的な抗PD−L1抗体である。配列を下記の配列表に記載する(例えば配列番号3〜10)。その他の抗PD−L1抗体として、BMS−936559(Bristol−Myers Squibb)およびMPDL3280A(Roche)が挙げられる。
【0035】
用語「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」および「結合断片」は、抗体分子において抗体と抗原との間の特異的結合に関与するアミノ酸を含む部分を意味する。例えば、抗原が大きい場合、抗原結合ドメインはこの抗原の一部にのみ結合することができる。抗原分子において抗原結合ドメインとの特異的な相互作用に関与する部分は、「エピトープ」または「抗原決定基」と称される。抗原結合ドメインは概して、抗体軽鎖可変領域(V
L)および抗体重鎖可変領域(V
H)を含むが、必ずしもこの両方を含む必要はない。例えば、いわゆるFd抗体断片はV
Hドメインのみからなるが、インタクトな抗体の一部の抗原結合機能を依然として保持する。
【0036】
組み換えDNA技術により、またはインタクトな抗体の酵素的なもしくは化学的な切断により、抗体の結合断片が生成される。結合断片として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvおよび一本鎖抗体が挙げられる。「二重特異性」抗体または「二機能性」抗体以外の抗体は、この結合部位のそれぞれが同一であると理解される。酵素パパインによる抗体の消化により、抗原結合活性を有しないが結晶化する能力を有する2個の同一の抗原結合断片(「Fab」断片および「Fc」断片としても知られている)が生じる。酵素ペプシンによる抗体の消化により、F(ab’)2断片(抗体分子の2本の腕が連結されたままであり、2個の抗原結合部位を含む)が生じる。このF(ab’)2断片は抗原を架橋する能力を有する。「Fv」は、本明細書で使用する場合、抗原認識部位および抗原結合部位の両方を保持する抗体の最小断片を意味する。「Fab」は、本明細書で使用する場合、抗体において軽鎖の定常ドメインと重鎖のCHIドメインとを含む断片を意味する。
【0037】
用語「mAb」はモノクローナル抗体を意味する。本発明の抗体は、全天然抗体、二重特異性抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチドおよび特殊な抗体を含むがこれらに限定されない。
【0038】
「アンチセンス化合物」は、水素結合を介した標的核酸へのハイブリダイゼーションを受けることが可能なオリゴマー化合物を意味する。アンチセンス化合物の例として一本鎖化合物および二本鎖化合物が挙げられ、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、snoRNA、miRNA、部分二本鎖(meroduplex)(mdRNA)およびサテライト反復が挙げられる。
【0039】
「STAT3を標的とするアンチセンス化合物」は、水素結合を介したSTAT3標的核酸へのハイブリダイゼーションを受けることが可能なオリゴマー化合物を意味する。
【0040】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的核酸の対応する領域またはセグメントへのハイブリダイゼーションを可能にする核酸塩基配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0041】
「抗腫瘍活性」は、腫瘍細胞の増殖および生存を低減させるまたは安定化させるあらゆる生物活性を意味する。一実施形態では、この抗腫瘍活性は抗腫瘍免疫応答である。
【0042】
「二環式糖」は、2個の原子の架橋により改変されたフルシル環を意味する。二環式糖は改変糖である。
【0043】
「がん」は、過剰な増殖またはアポトーシスの低減を特徴とする疾患または障害を意味する。本発明を使用することができる具体的ながんとして、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病、DLBCL)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、ならびに固形腫瘍、例えば肉腫および癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌(nile duct carcinoma)、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、睾丸がん、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、多形性膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫(oligodenroglioma)、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
「キメラアンチセンス化合物」は、少なくとも2種の化学的に異なる領域を有するアンチセンス化合物を意味する。
【0045】
「共投与」は、2種以上の医薬製剤の個体への投与を意味する。2種以上の医薬製剤は単一の医薬組成物中であることができる、または別々の医薬組成物中であることができる。2種以上の薬剤のそれぞれを、同じまたは異なる投与経路で投与することができる。共投与は並行投与または逐次投与を包含する。一実施形態では、共投与を実行し、その結果、薬剤の薬物動態に基づいて患者の両方の薬剤への同時曝露が引き起こされる。
【0046】
「拘束エチルヌクレオシド(constrained ethyl nucleoside)」(またcEtヌクレオシド)は、4’−CH(CH
3)−O−2’架橋を含む二環式糖部位を含むヌクレオシドを意味する。
【0047】
「隣接核酸塩基」は、互いに直接隣接する核酸塩基を意味する。
【0048】
「疾患」は、細胞、組織または器官の正常な機能を損傷する、妨げる、または調節不全にするあらゆる状態または障害を意味する。がん(例えば肺がん)等の疾患では、細胞、組織または器官の正常な機能が破壊されて免疫回避および/または免疫逃避が可能になる。
【0049】
「CTLA−4ポリペプチド」は、GenBank受託番号AAL07473.1と同一のアミノ酸配列を少なくとも85%有するポリペプチドまたはこの断片を意味しており、T細胞阻害活性を有する。本明細書においてAAL07473.1の配列を配列番号21で開示する。
【0050】
「CTLA−4核酸分子」は、CTLA−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なCTLA−4ポリヌクレオチドがGenBank受託番号AAL07473で提供される。
【0051】
「希釈剤」は、ある組成物において薬理活性を欠くが薬学的に必要であるまたは望まれる成分を意味する。例えば、注射用組成物中の希釈剤は液体(例えば生理食塩溶液)であることができる。
【0052】
「用量」は、単回投与でまたは特定の期間で提供される医薬製剤の特定の量を意味する。ある特定の実施形態では、用量を、1つ、2つまたはより多くのボーラス、錠剤または注射で投与することができる。例えば、皮下投与が望ましいある特定の実施形態では、望ましい用量に必要な体積は単回注射では容易に収容されないことから、この所望の用量を、2回以上の注射を使用して達成することができる。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、注入により長期にわたりまたは連続的に投与される。用量を、1時間当たりの、1日当たりの、1週間当たりのまたは1ヶ月当たりの医薬製剤の量として述べることができる。
【0053】
「有効な量」は、活性医薬製剤を必要とする個体中において所望の生理学的結果を実現するのに十分なこの活性医薬製剤の量を意味する。この有効な量は、治療する個体の健康状態および身体状態、治療する個体の分類群、組成物の配合、個体の病状の評価およびその他の関連因子に応じて個体によって異なることができる。
【0054】
「ギャップマー(gapmer)」は、RNアーゼH切断を支持する複数個のヌクレオシドを有する内部領域が1個または複数個のヌクレオシドを有する外部領域の間に位置しているキメラアンチセンス化合物を意味しており、内部領域を構成するヌクレオシドは、外部領域を構成するヌクレオシドとは化学的に異なる。この内部領域を「ギャップ」と称する場合があり、この外部領域を「ウィング(wing)」と称する場合がある。
【0055】
「ハイブリダイゼーション」は相補核酸分子のアニーリングを意味する。ある特定の実施形態では、相補核酸分子としてアンチセンス化合物および標的核酸が挙げられる。
【0056】
「免疫チェックポイント阻害剤」は、CTLA−4経路またはPD−L1経路を阻害する薬剤を意味しており、具体的なチェック阻害剤として、PD−1、PD−L1またはCTLA−4を阻害する抗体が挙げられる。
【0057】
「免疫調節剤」は、免疫応答(例えば抗腫瘍免疫応答)を増強する薬剤を意味する。本発明の例示的な免疫調節剤として、抗体(例えば抗CTLA−4抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−1抗体およびこれらのいずれかの抗原性断片)ならびにOX−40アゴニスト(例えばOX40リガンド融合タンパク質等のタンパク質またはこの断片)が挙げられる。一実施形態では、この免疫調節剤は免疫チェックポイント阻害剤である。
【0058】
「STAT3を阻害すること」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のSTAT3アンチセンス化合物の非存在下でのSTAT3のmRNAの発現および/またはタンパク質のレベルと比較して、STAT3アンチセンスオリゴヌクレオチド等のSTAT3アンチセンス化合物の存在下でのSTAT3のmRNAの発現および/タンパク質のレベルを低減させることを意味する。
【0059】
「個体」は、治療または療法のために選択されるヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0060】
「ヌクレオシド間連結」はヌクレオシド間の化学結合を意味する。
【0061】
「連結されたヌクレオシド」は、互いに結合している隣接ヌクレオシドを意味する。
【0062】
「改変ヌクレオシド間連結」は、天然に存在するヌクレオシド間結合(即ち、ホスホジエステルヌクレオシド間結合)からの置換または任意の変化を意味する。
【0063】
「改変核酸塩基」は、アデニン、シトシン、グアニン、チミジンまたはウラシル以外のあらゆる核酸塩基を意味する。「未改変核酸塩基」は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を意味する。
【0064】
「改変ヌクレオチド」は、改変糖部位、改変ヌクレオシド間連結または改変核酸塩基を独立して有するヌクレオチドを意味する。「改変ヌクレオシド」は、改変糖部位または改変核酸塩基を独立して有するヌクレオシドを意味する。
【0065】
「改変オリゴヌクレオチド」は、改変ヌクレオシド間連結、改変糖および/または改変核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0066】
「改変糖」は天然糖からの置換または変化を意味する。
【0067】
「天然に存在するヌクレオシド間連結」は3’から5’へのホスホジエステル連結を意味する。
【0068】
「核酸」は、単量体ヌクレオチドで構成されている分子を意味する。核酸として、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、一本鎖核酸、二本鎖核酸、低分子干渉リボ核酸(siRNA)およびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。
【0069】
「核酸塩基」は、別の核酸の塩基との対形成が可能な複素環部位を意味する。
【0070】
「核酸塩基配列」は、あらゆる糖、連結または核酸塩基の改変と無関係な、連続した核酸塩基の順序を意味する。
【0071】
「ヌクレオシド」は、糖に連結された核酸塩基を意味する。
【0072】
「ヌクレオチド」はリン酸基を有するヌクレオシドを意味しており、このリン酸基は、このヌクレオシドの糖部分に共有結合的に連結されている。
【0073】
「オリゴマー化合物」または「オリゴマー」は、核酸分子の少なくともある領域にハイブリダイズすることが可能である、連結された単量体サブユニットのポリマーを意味する。
【0074】
「オリゴヌクレオチド」は連結されたヌクレオシドのポリマーを意味しており、各ヌクレオシドは互いに独立して改変され得る、または未改変であり得る。
【0075】
「全生存期間」は、疾患(例えば、がん)と診断された患者がまだ生きている、この疾患の治療の開始からの時間の長さを意味する。この全生存期間の数値は概して、適切なサイズの臨床試験からの平均として決定される。
【0076】
「OX40ポリペプチド」は、NCBI受託番号NP_003318と同一のアミノ酸を少なくとも約85%有するポリペプチドまたはこの断片を意味する。OX40は、抗原により活性化された哺乳動物のCD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球の表面上で発現されるTNFRスーパーファミリの受容体のメンバーである。例えば、Paterson et al.,Mol Immunol 24,1281−1290(1987)、Mallett et al.,EMBO J 9,1063−1068(1990)およびCalderhead et al.,J Immunol 151,5261−5271(1993))を参照されたい。OX40は、CD134、ACT−4およびACT35とも称される。OX40受容体の配列は当分野で既知であり、例えばGenBank受託番号:AAB33944またはCAE11757で提供される。本明細書において、例示的なヒトOX40アミノ酸配列を配列番号22で開示する。
【0077】
「OX40リガンド」は、NCBI受託番号NP_003317と同一のアミノ酸を少なくとも約85%有するおよびOX40受容体に特異的に結合するポリペプチドまたはこの断片を意味する。例えばBaum P.R.,et al.EMBO J.13:3992−4001(1994))を参照されたい。用語OX40Lには、完全なOX40リガンド、可溶性OX40リガンド、および別の部位(例えばタンパク質ドメイン)に共有結合的に連結されたOX40リガンドの機能的に活性な部分を含む融合タンパク質が含まれる。また、OX40Lの定義に含まれるのは、天然に存在するOX4Lとはアミノ酸配列が異なるがOX40受容体に特異的に結合する能力を保持する多様体である。OX40Lの定義に更に含まれるのは、OX40の生物学的活性を増強する多様体である。OX40Lリガンドの配列は当分野で既知であり、例えばGenBank受託番号NP_003318で提供される。
【0078】
本明細書において、例示的なヒトOX40リガンドのアミノ酸配列を配列番号23で開示する。
【0079】
「OX40アゴニスト」は、OX40受容体の生物学的活性と特異的に相互作用してこの生物学的活性を高めるOX40リガンドを意味する。望ましくは、この生物学的活性は、少なくとも約10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%またはちょうど100%高められる。ある特定の態様では、本明細書で開示するOX40アゴニストとして、OX40結合ポリペプチド、例えば抗OX40抗体(例えばOX40アゴニスト抗体)、OX40リガンドまたはこれらの分子の断片もしくは誘導体が挙げられる。
【0080】
「OX40抗体」は、OX40に特異的に結合する抗体を意味する。OX40抗体として、OX40に特異的であるモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびにこれらの抗原結合断片が挙げられる。ある特定の態様では、本明細書で説明する抗OX40抗体はモノクローナル抗体(またはこの抗原結合断片)であり、例えば、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である。特定の一実施形態では、OX40抗体はOX40受容体アゴニストであり、例えば、Weinberg et al.,J Immunother 29,575−585(2006)で説明されるマウス抗ヒトOX40モノクローナル抗体(9B12)である。その他の実施形態では、OX40に特異的に結合する抗体またはこの抗原結合断片は、mAb 9B12と同じOX40エピトープに結合する。
【0081】
「OX40リガンド融合タンパク質」は、OX40受容体に特異的に結合して免疫応答を高めるタンパク質を意味する。一実施形態では、OX40リガンド融合タンパク質のOX40受容体への結合により、T細胞認識が促進されて腫瘍抗原に特異的な免疫応答が増強される。例示的なOX40リガンド融合タンパク質が、「Trimeric OX40 Immunoglobulin Fusion Protein and Methods of Use」という標題の米国特許第7,959,925号明細書で説明されている。例えば米国特許第7,959,925明細書の配列番号8を参照されたい。本明細書では、この配列を配列番号24として再現する。その他のOX40リガンド融合タンパク質が例えば米国特許第6,312,700号明細書で説明されている。一実施形態では、OX40リガンド融合タンパク質は腫瘍に特異的なT細胞免疫を増強する。特定の実施形態では、OX40リガンド融合タンパク質は、配列番号32、34または36で開示するアミノ酸配列を有する(本明細書では、そのような多様体をOX40L FPと命名する)
【0082】
「非経口投与」は、注射(例えばボーラス注射)または注入による投与を意味する。非経口投与として、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与または頭蓋内投与、例えば髄腔内投与または脳室内投与が挙げられる。
【0083】
「PD−L1ポリペプチド」は、NCBI受託番号NP_001254635と同一のアミノ酸を少なくとも85%有するならびにPD−1結合活性およびCD80結合活性を有するポリペプチドまたはこの断片を意味する。
【0084】
「PD−L1核酸分子」は、PD−L1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なPD−L1核酸分子の配列がNCBI受託番号NM_001267706で提供される。
【0085】
「PD−L1陽性」は、免疫組織化学との関連で、がんサンプル中の細胞がPD−L1染色を示すことを意味する。生物学的に有意である陽性のレベルは、腫瘍タイプおよび腫瘍環境の免疫状態に基づいて異なり得る。
【0086】
「ペプチド」は、アミド結合で少なくとも2個のアミノ酸を連結することにより形成されている分子を意味する。ペプチドは、ポリペプチドおよびタンパク質を意味する。
【0087】
「医薬組成物」は、個体への投与に適した物質の混合物を意味する。例えば、医薬組成物は、1種または複数種の活性医薬製剤と無菌水溶液とを含むことができる。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、ある特定の細胞株での自由取り込みアッセイ(free uptake assay)での活性を示す。
【0088】
「ホスホロチオエート連結」は、架橋していない酸素原子の1つを硫黄原子で置き換えることによりホスホジエステル結合が改変されているヌクレオシド間の連結を意味する。ホスホロチオエート連結(P=S)は改変ヌクレオシド間連結である。
【0089】
「部分」は、核酸の規定の数の連続した(即ち連結された)核酸塩基を意味する。ある特定の実施形態では、ある部分は、標的核酸の規定の数の連続した核酸塩基である。ある特定の実施形態では、ある部分は、アンチセンス化合物の規定の数の連続した核酸塩基である。
【0090】
「予防する」は、数分から無期限までの期間にわたり疾患、障害または状態の発病または発症を遅らせることまたは未然に防ぐことを意味する。予防するはまた、疾患、障害または状態を発症するリスクを低減させることも意味する。
【0091】
「無増悪生存期間」は、患者が疾患(例えば、がん)と共生するが疾患が悪化しない、この疾患の治療中のまたは治療後の時間の長さを意味する。無増悪生存期間の数値は概して、適切なサイズの臨床試験からの平均として決定される。
【0092】
本明細書で説明する範囲は、この範囲内の値の全てが省略されていると理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50からなる群からの、あらゆる数、数の組合せまたは部分範囲を含むと理解される。
【0094】
治療との関係での「応答」は、治療への感受性を意味する。
【0095】
「シグナル伝達性転写因子3核酸」または「STAT3核酸」は、STAT3をコードするあらゆる核酸を意味する。例えば、ある特定の実施形態では、STAT3核酸として、STAT3をコードするDNA配列、STAT3をコードするDNA(例えば、イントロンおよびエクソンを含むゲノムDNA)から転写されたRNA配列、ならびにSTAT3をコードするmRNA配列が挙げられる。「STAT3のmRNA」は、STAT3のタンパク質をコードするmRNAを意味する。
【0096】
「一本鎖オリゴヌクレオチド」は、相補鎖にハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドを意味する。
【0097】
「特異的に結合する」は、サンプル(例えば生体サンプル)中において、ある分子(例えばポリペプチド)を認識してこの分子に結合するが、その他の分子を認識して結合することを実質的にしない化合物(例えば抗体)を意味する。例えば、特異的に結合する2種の分子は、生理的条件下で比較的安定である複合体を形成する。特異的に結合することは、能力が中〜高程度である低親和性を通常は有する非特異的結合と区別されるように、高親和性および低〜中程度の能力を特徴とする。典型的には、結合は、親和定数K
Aが10
6M
−1よりも高い場合には、またはより好ましくは10
8M
−1よりも高い場合には、特異的と考えられる。必要な場合には、結合条件を変更することにより、特異的結合に実質的に影響を及ぼすことなく非特異的結合を低減することができる。当業者は通常の技術を使用して、適切な結合条件、例えば抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合のために許容される時間、遮断剤(例えば、血清アルブミン、乳カゼイン)の濃度等を最適化することができる。
【0098】
「特異的にハイブリダイズ可能な」は、特異的結合が望ましい条件下で、即ちin vivoアッセイおよび治療的処置の場合には生理学的条件下で、非標的核酸への最小の効果を示すまたは効果を示さないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的核酸との間で所望の効果を誘導するのに十分な程度の相補性(核酸塩基間で対形成する)を有するアンチセンス化合物を意味する。
【0099】
「対象」は哺乳動物を意味しており、この哺乳動物として、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジまたはネコ)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
「標的とする」または「標的とされた」は、方向付けられることを意味する。抗体に関しては、言及するタンパク質に結合する能力を意味する。アンチセンス化合物に関しては、標的核酸に特異的にハイブリダイズして所望の効果を誘導する能力を意味する。
【0101】
「標的核酸」、「標的RNA」、「標的mRNA」および「標的RNA転写物」は全て、アンチセンス化合物の標的とされ得る核酸を意味する。
【0102】
「標的セグメント」は、アンチセンス化合物が標的とする標的核酸のヌクレオチドの配列を意味する。「5’標的部位」は、標的セグメントの最も5’側のヌクレオチドを意味する。「3’標的部位」は、標的セグメントの最も3’側のヌクレオチドを意味する。
【0103】
「治療上有効な量」は、個体に治療上の利益をもたらす医薬製剤の量を意味する。
【0104】
「治療する」、「治療すること」、「治療」および同様のものは、医薬組成物を投与して、疾患、障害もしくは状態および/またはこれらに関連するあらゆる症状を緩和するまたは改善することを意味する。排除するわけではないが、障害または状態を治療することは、これらに関連する障害、状態または症状を完全に除去することを必要としないことが認識されるだろう。
【0105】
「未改変ヌクレオチド」は、天然に存在する核酸塩基、糖部位およびヌクレオシド間連結で構成されているヌクレオチドを意味する。ある特定の実施形態では、未改変ヌクレオチドは、RNAヌクレオチド(即ちβ−D−リボヌクレオシド)またはDNAヌクレオチド(即ちβ−D−デオキシリボヌクレオシド)である。
【0106】
具体的に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、用語「または(or)」は包括的であると理解される。具体的に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「a」、「an」および「the」は単数形または複数形であると理解される。
【0107】
本開示では、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」および「有する」ならびに同様のものは、米国特許法においてこれらの用語に帰される意味を有することができ、「含む(include)」、「含む(including)」および同様のものを意味することができ、「本質的になる(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」は同様に、米国特許法において帰される意味を有し、この用語は非限定的であり、列挙されたもの以外の存在により、列挙されたものの基本的なまたは新規な特徴が変更されない限りは、列挙されたもの以外の存在を許容するが、先行技術の実施形態を排除する。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「決定すること」、「評価すること」、「アッセイすること」、「測定すること」および「検出すること」は、定量的な決定および定性的な決定の両方を意味しており、そのため、本明細書では、用語「決定すること」は「アッセイすること」、「測定すること」および同様のものと互換的に使用される。定量的決定が意図される場合には、分析物および同様のものの語句「量を決定すること」が使用される。定性的決定および/または定量的決定が意図される場合には、分析物の語句「レベルを決定すること」または分析物を「検出すること」が使用される。
【0109】
用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋」は、天然の状態で見られるように物質に通常附随する成分がゼロから様々な程度である物質を意味する。「単離する」は、元々の供給源または環境からの分離の程度を示す。「精製する」は、単離と比べて高い分離の程度を示す。「精製された」または「生物学的に純粋な」タンパク質はその他の物質が十分に低く、その結果、あらゆる不純物が、このタンパク質の生物学的特性に実質的に影響を及ぼさない、またはその他の悪影響を引き起こさない。即ち、組み換えDNA技術により産生される際に細胞物質、ウイルス物質もしくは培養培地を実施的に含まない場合、または化学的に合成される際に化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に含まない場合、本発明の核酸またはペプチドは精製されている。純度および均一性は概して分析化学技術を使用して決定され、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。用語「精製された」は、電気泳動ゲル中で核酸またはタンパク質が本質的に1本のバンドを生じることを示すことができる。改変(例えばリン酸化またはグリコシル化)され得るタンパク質の場合、様々な単離タンパク質に様々な改変が生じ得、これらの単離タンパク質は別々に精製され得る。
【0110】
本発明の詳細な説明
下記で説明するように、本発明は、必要な対象中において、免疫調節剤(例えばMEDI4736のような抗PD−L1抗体)とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)とで、がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)等の肺がん;三種陰性等の乳がん;漿液性等の卵巣がん;膵がん;結腸直腸がん;びまん性大細胞型B細胞肺がん(DLBCL)もしくはホジキンリンパ腫等のリンパ腫;または頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)等の頭頸部がん)を治療する方法を特徴とする。
【0111】
抗PD−L1抗体
本発明では、PD−L1に特異的に結合してPD−L1を阻害する抗体が有用である。
【0112】
MEDI4736は、PD−L1ポリペプチドに対して選択的であるならびにPD−1受容体およびCD80受容体へのDP−L1の結合を遮断する例示的な抗PD−L1抗体である。MEDI4736は、in vitroでのヒトT細胞活性化のPD−L1により媒介される抑制を軽減することができ、T細胞依存性機序により異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害することができる。
【0113】
本明細書で提供する方法で使用するMEDI4736(またはこの断片)に関する情報を米国特許第8,779,108号明細書中で見出すことができ、この開示はその全体が参照により本明細書に援用される。MEDI4736の断片結晶性(Fc)ドメインは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の媒介に関与する補体成分C1qおよびFcγ受容体への結合を低下させるIgG1重鎖の定常領域中の三重変異を含む。
【0114】
本明細書で提供する方法で使用するMEDI4736およびこの抗原結合断片は、重鎖と軽鎖とをまたは重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。具体的な態様では、本明細書で提供する方法で使用するMEDI4736またはこの抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。具体的な態様では、本明細書で提供する方法で使用するMEDI4736またはこの抗原結合断片は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、この重鎖可変領域は、配列番号5〜7のKabat定義のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、この軽鎖可変領域は、配列番号8〜10のKabat定義のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む。当業者は、Chothia定義、Abm定義または当分野の当業者に既知のその他のCDR定義を容易に明らかにすることができるだろう。具体的な態様では、本明細書で提供する方法で使用するMEDI4736またはこの抗原結合断片は、国際公開第2011/066389A1号パンフレット(この全体が参照により本明細書に援用される)で開示されている2.14H9OPT抗体の可変重鎖CDR配列および可変軽鎖CDR配列を含む。
【0115】
公開されている文献中には、本発明で特徴となる可能性がある多数の抗PDL−1抗体が存在し、この抗PDL−1抗体として、開発中のおよび/または臨床試験中の化合物、例えばMEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714およびMDX−1105が挙げられる。本発明で有用であり得る抗PDL−1抗体を開示する特許明細書として、国際公開第2007/005874号パンフレット(BMS/Medarex)、国際公開第01/14556号パンフレット(Dana Farber)、米国特許出願公開第2011/0271358号明細書(Dana Farber)、国際公開第2010/036959号パンフレット(Dana Farber)、国際公開第2010/077634号パンフレット(Genentech)(発行された米国特許第8,217,149号明細書を含む)、米国特許出願公開第2012/0039906号明細書(INSERM)、国際公開第2012/145493号パンフレット(Amplimmune)、米国特許第8,779,108号明細書(MedImmune−MEDI4726および2.7A4に関する)、米国特許出願公開第20140044738号明細書(Ampimmune−AMP−714に関する)ならびに国際公開第2009/089149号パンフレット(John’s Hopkins University)が挙げられる。これらの開示はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0116】
抗CTLA−4抗体
CTLA−4に特異的に結合してCTLA−4活性を阻害する抗体は、抗腫瘍免疫応答を増強するのに有用である。本明細書で提供する方法で使用するトレメリムマブ(またはこの抗原結合断片)に関する情報を米国特許第6,682,736号明細書(この明細書中では11.2.1と称される)中で見出すことができ、この開示はその全体が参照により本明細書に援用される。トレメリムマブ(CP−675,206、CP−675、CP−675206およびチシリムマブとしても知られている)は、CTLA−4に対する選択性がより高いならびにCD80(B7.1)およびCD86(B7.2)へのCTLA−4の結合を遮断するヒトIgG
2モノクローナル抗体である。トレメリムマブはin vitroで免疫を活性化させることが分かっており、トレメリムマブで治療した一部の患者は腫瘍退縮を示している。
【0117】
本明細書で提供する方法で使用するトレメリムマブは、重鎖と軽鎖とをまたは重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。具体的な態様では、本明細書で提供する方法で使用するトレメリムマブまたはこの抗原結合断片は、本明細書において上記で示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、本明細書において上記で示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。具体的な態様では、本明細書で提供する方法で使用するトレメリムマブまたはこの抗原結合断片は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、この重鎖可変領域は、本明細書において上記で示したKabat定義のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、この軽鎖可変領域は、本明細書において上記で示したKabat定義のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む。当業者は、Chothia定義、Abm定義または当分野の当業者に既知のその他のCDR定義を容易に明らかにすることができるだろう。具体的な態様では、本明細書で提供する方法で使用するトレメリムマブまたはこの抗原結合断片は、米国特許第6,682,736号明細書(この全体が参照により本明細書に援用される)で開示されている11.2.1抗体の可変重鎖CDR配列および可変軽鎖CDR配列を含む。
【0118】
その他の抗CTLA−4抗体が例えば米国特許出願公開第20070243184号明細書で説明されている。一実施形態では、この抗CTLA−4抗体は、MDX−010、BMS−734016とも呼ばれるイピリムマブである。
【0119】
OX40アゴニスト
OX40アゴニストは、抗原に対するCD4
+T細胞の応答を増加させる抗原によるプライミング中にまたはこの抗原によるプライミング直後に、CD4
+T細胞上のOX40受容体と相互作用する。抗原特異的CD4
+T細胞上のOX40受容体と相互作用するOX40アゴニストは、抗原のみに対する応答と比較してT細胞増殖を増加させることができる。抗原に対する応答の上昇は、OX40アゴニストの非存在の場合と比べて実質的に長い期間にわたり維持され得る。そのため、OX40アゴニストによる刺激によって、抗原(例えば腫瘍細胞)のT細胞認識が促進されて抗原特異的免疫応答が増強される。OX40アゴニストは、例えば米国特許第6,312,700号明細書、米国特許第7,504,101号明細書、米国特許第7,622,444号明細書および米国特許第7,959,925号明細書で説明されており、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。がん治療におけるそのようなアゴニストの使用方法が、例えば国際公開第2013/119202号パンフレットおよび国際公開第2013/130102号パンフレットで説明されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0120】
OX40アゴニストとして、OX40結合分子、例えば結合ポリペプチド、例えばOX40リガンド(「OX40L」)またはこのOX40結合断片、多様体もしくは誘導体、例えば、可溶性細胞外リガンドドメイン、およびOX40L融合タンパク質、ならびに抗OX40抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体等のモノクローナル抗体)またはこの抗原結合断片、多様体もしくは誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。抗OX40モノクローナル抗体の例が、例えば米国特許第5,821,332号明細書および米国特許第6,156,878号明細書で説明されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に援用される。ある特定の実施形態では、抗OX40モノクローナル抗体は、Weinberg,A.D.,et al.J Immunother 29,575−585(2006)(この全体が参照により本明細書に援用される)で説明されている9B12またはこの抗原結合断片、多様体もしくは誘導体である。
【0121】
本明細書で開示する様々な態様のある特定の実施形態では、OX40アゴニストは、抗体VHおよび抗体VLを含むヒト化抗OX40抗体またはこの抗原結合断片であり、このVLは、参照アミノ酸配列:
【化1】
と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0122】
一実施形態では、このヒト化抗OX40抗体またはこの抗原結合断片は抗体VHおよび抗体VLを含み、このVLはアミノ酸配列
【化2】
を含み、このVHはアミノ酸配列
【化3】
を含む。
【0123】
ある特定のその他の実施形態では、このヒト化抗OX40抗体またはこの抗原結合断片は、抗体重鎖またはこの断片と、抗体軽鎖またはこの断片とを含み、この重鎖は、本明細書において配列番号28で開示するアミノ酸配列を含み、この軽鎖は、本明細書において配列番号29で開示するアミノ酸配列を含む。
【0124】
その他の実施形態では、OX40に特異的に結合する抗体またはこの抗原結合断片は、mAb 9B12と同じOX40エピトープに結合する。
【0125】
例示的なヒト化OX40抗体は、Morris et al.,Mol Immunol.May 2007;44(12):3112-3121により説明されており、本明細書において配列番号30で開示される配列を有する。
【0126】
9B12は、ヒトOX40の細胞外ドメイン(CD134)に対する抗OX40 mAbであるマウスIgG1である(Weinberg,A.D.,et al.J Immunother 29,575−585(2006))。この9B12は、OX40シグナル伝達へのアゴニスト応答を誘発する能力、安定性、およびハイブリドーマによる高レベルの産生により、抗OX40モノクローナル抗体のパネルから選択された。臨床用途での使用の場合、9B12 mAbはリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)で平衡化されており、この9B12 mAbの濃度は透析ろ過により5.0mg/mlに調整されている。
【0127】
「OX40リガンド」(「OX40L」)(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーのメンバー4、gp34、TAX転写的活性化糖タンパク質−1(TAX transcriptionally−activated glycoprotein−1)およびCD252とも様々に呼ばれる)は抗原提示細胞(APC)上で主に見出され、活性化されたB細胞上で、樹枝状細胞(DC)上で、ランゲルハンス細胞上で、形質細胞様DC上でおよびマクロファージ上で誘発され得る(Croft,M.,(2010)Ann Rev Immunol 28:57−78)。その他の細胞(例えば、活性化されたT細胞、NK細胞、肥満細胞、内皮細胞および平滑筋細胞)は、炎症性サイトカインに応答してOX40Lを発現することができる(同上)。OX40LはOX40受容体に特異的に結合する。このヒトタンパク質は米国特許第6,156,878号明細書で説明されている。マウスOX40Lは米国特許第5,457,035号明細書で説明されている。OX40Lは細胞の表面上で発現され、細胞内の、膜貫通のおよび細胞外の受容体結合ドメインを含む。例えば米国特許第5,457,035号明細書、米国特許第6,312,700号明細書、米国特許第6,156,878号明細書、米国特許第6,242,566号明細書、米国特許第6,528,055号明細書、米国特許第6,528,623号明細書、米国特許第7,098,184号明細書および米国特許第7,125,670号明細書(これらの開示は全ての目的のために本明細書に援用される)で説明されているように、細胞内ドメインおよび膜貫通ドメインを除去することにより、機能的に活性な可溶型のOX40Lを生成することができる。機能的活性型のOX40Lは、OX40に特異的に結合する能力を保持する型(即ち、OX40「受容体結合ドメイン」を持つ型)である。一例は、ヒトOX40Lのアミノ酸51〜183である。OX40L分子または誘導体のOX40に特異的に結合する能力を決定する方法を下記で論じる。OX40Lおよびこの誘導体(例えば、OX40結合ドメインを含む誘導体)を製造する方法および使用する方法が、米国特許第6,156,878号明細書、米国特許第6,242,566号明細書、米国特許第6,528,055号明細書、米国特許第6,528,623号明細書、米国特許第7,098,184号明細書および米国特許第7,125,670号明細書で説明されており、これらの明細書には、培養細胞からのOX40リガンドの精製を促進するためにまたは哺乳動物へのin vivoでの投与後に分子の安定性を増強するために生成され得るその他のペプチド(例えばヒト免疫グロブリン(「Ig」)Fc領域)に連結された可溶型のOX40Lを含むタンパク質も説明されている(米国特許第5,457,035号明細書および米国特許第7,959,925号明細書も参照されたい。これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0128】
本明細書で使用する場合、用語「OX40L」には、完全なOX40リガンド、可溶性OX40リガンド、およびOX40リガンドの機能的に活性な部分が含まれる。OX40Lの定義に更に含まれるのは、天然に存在するOX40リガンド分子とアミノ酸配列が異なるがOX40受容体に特異的に結合する能力を保持するOX40リガンド多様体である。そのような多様体が、米国特許第5,457,035号明細書、米国特許第6,156,878号名明細書、米国特許第6,242,566号明細書、米国特許第6,528,055号明細書、米国特許第6,528,623号明細書、米国特許第7,098,184号明細書および米国特許第7,125,670号明細書で説明されている。関連する実施形態では、OX40に特異的に結合する能力(例えばアミノ酸51〜183)を欠いているOX40Lの変異体が使用され、この変異体では、ヒトOX40Lの受容体結合ドメインの180位のフェニルアラニンがアラニンに置き換えられている(F180A)。
【0129】
OX40アゴニストには、OX40Lの1種または複数種のドメインが1種または複数種の追加のタンパク質ドメインに共有結合的に連結されている融合タンパク質が含まれる。OX40アゴニストとして使用され得る例示的なOX40L融合タンパク質が米国特許第6,312,700号明細書で説明されており、この開示はその全体が参照により本明細書に援用される。一実施形態では、OX40アゴニストには、多量体の(例えば三量体のまたは六量体の)OX40L融合タンパク質へと自己集合するOX40L融合ポリペプチドが含まれる。そのような融合タンパク質が例えば米国特許第7,959,925号明細書で説明されており、この明細書はその全体が参照により本明細書に援用される。多量体OX40L融合タンパク質は、このタンパク質の、より高度に安定した三量体および六量体へと自発的に集合する能力に起因して、対象(特にヒト対象)における抗原特異的免疫応答の増強での有効性の増加を示す。
【0130】
別の実施形態では、多量体型へと集合することが可能なOX40アゴニストとして、N末端からC末端方向へと、免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインとしてFcドメインが挙げられる)、三量体化ドメイン(この三量体化ドメインとしてコイルドコイル三量体化ドメインが挙げられる)、および受容体結合ドメイン(この受容体結合ドメインは、OX40受容体結合ドメイン、例えばOX40LまたはこのOX40結合断片、多様体もしくは誘導体である)を含む融合ポリペプチドが挙げられ、この融合ポリペプチドは三量体融合タンパク質へと自己集合することができる。一態様では、多量体型へと集合することが可能なOX40アゴニストは、OX40受容体に結合することおよび少なくとも1種のOX40媒介性活性を刺激することが可能である。ある特定の態様では、OX40アゴニストはOX40リガンドの細胞外ドメインを含む。
【0131】
多重体型へと集合することが可能なOX40アゴニストの三量体化ドメインは、個々のOX40L融合ポリペプチド分子の三量体タンパク質への自己集合を促進するのに役立つ。そのため、三量体化ドメインを有するOX40Lポリペプチドは、三量体OX40L融合タンパク質へと自己集合する。一態様では、この三量体化ドメインは、イソロイシンジッパードメインまたはその他のコイルドコイルポリペプチド構造である。例示的なコイルドコイル三量体化ドメインとして、TRAF2(GENBANK(登録商標)受託番号Q12933、アミノ酸299〜348;トロンゴスポンジン1(受託番号PO7996、アミノ酸291〜314;マトリリン−4(受託番号O95460、アミノ酸594〜618;CMP(マトリリン−1)(受託番号NP−002370、アミノ酸463〜496;HSF1(受託番号AAX42211、アミノ酸165〜191;およびキュビリン(受託番号NP−001072、アミノ酸104〜138が挙げられる。ある特定の具体的な態様では、この三量体化ドメインとして、TRAF2三量体化ドメイン、マトリリン−4三量体化ドメインまたはこれらの組合せが挙げられる。
【0132】
OX40L FPは、TNFRスーパーファミリのメンバーであるヒトOX40受容体に特異的に結合してこのヒトOX40受容体によるシグナル伝達を引き起こすヒトOX40リガンドIgG4P融合タンパク質である。OX40L FPは、配列番号31、33および35のいずれかで開示されている核酸と、配列番号32、34および36でそれぞれ開示されている、対応するコードされたアミノ酸配列とを有することができる。OX40L FPは、PCT/US2015/032598号明細書(この全体が参照により本明細書に援用される)にも開示されている。OX40L FPは下記の3つの異なるドメインで構成されている:(1)ホモ三量体を形成するおよびOX40受容体に結合するヒトOX40リガンド細胞外受容体結合ドメイン(RBD)、(2)OX40リガンドRBDのホモ三量体構造を安定化させる、TNFR関連因子2に由来するイソロイシンジッパー三量体化ドメイン、ならびに(3)OX40受容体に結合した場合に融合タンパク質のFcγ受容体クラスター形成を促進するおよび2組のOX40リガンドRBDホモ三量体の安定性を促進するためにヒンジ領域(IgG4P)中での228位(EUナンバリングによる)でのセリンからプロリンへの置換を含むヒトIgG4結晶性断片ガンマ(Fcγ)ドメイン。IgG4P Fcドメインは、ヒト腫瘍壊死因子2(TRAF2)のアミノ酸残基310〜349に由来するイソロイシンジッパー三量体化ドメインに直接融合している。TRAF2ドメインのc末端に融合しているのは、ヒトOX40L(遺伝子名TNFSF4)の細胞外受容体結合ドメイン(RBD)のアミノ酸残基51〜183である。TRAF2ドメインは、OX40L RBDのホモ三量体構造を安定化させてOX40結合および活性化を可能にするが、IgG4P Fcドメインは、OX40L三量体の二量体化である血清安定性を付与し、六量体融合タンパク質のFcγ受容体クラスター形成を促進する。一例のそのようなOX40L FPは、配列番号31および32で開示されている配列を有する。一例のOX40L FP多様体は、OX40L(配列番号33および34)の180位に対応するアミノ酸でフェニルアラニン(F)からアラニン(A)への変異を持つ。別のOX40L FP多様体は、IgG4P FcドメインがヒトIgG1 Fcドメイン(配列番号35および36)で置き換えられている。特定の実施形態では、本発明で使用するOX40アゴニストは、OX40L FP多様体の内の一つである。
【0133】
特定の実施形態では、本発明で使用するOX40アゴニストは、その血清半減期が増加するように改変されている。例えば、血清アルブミン、抗体Fc領域またはPEG等の異種分子へのコンジュゲーションにより、OX40アゴニストの血清半減期を増加させることができる。ある特定の実施形態では、OX40アゴニストをその他の治療薬または毒素にコンジュゲートさせて、免疫複合体および/または融合タンパク質を形成することができる。ある特定の実施形態では、OX40アゴニストを製剤化して、投与を容易にすることができる、および活性剤の安定性を促進させることができる。
【0134】
誘導体
本発明で使用する抗体(例えば抗CTLA−4、抗PD−L1、抗PD−1、抗OX40)は、これらの標的に特異的に結合する能力を保持するこれらの配列の多様体を含むことができる。そのような誘導体を、当分野で公知の技術を使用して、当業者により、これらの抗体の配列から得ることができる。例えば、FR中でおよび/またはCDR中でアミノ酸の置換、欠失または付加を行なうことができる。FR中での変更は通常、抗体の安定性および免疫原性を改善するように設計されており、CDR中での変更は概して、抗体のその標的への親和性を増加させるように設計されている。FRの多様体には、天然に存在する免疫グロブリンアロタイプも含まれる。そのような親和性を増加させる変更を、CDRを変更することおよび抗体のその標的への親和性を試験することを含む通常の技術により経験的に決定することができる。例えば、開示したCDRのいずれか1つ内で保存的アミノ酸置換を行なうことができる。様々な変更を、Antibody Engineering,2nd ed.,Oxford University Press,ed.Borrebaeck,1995で説明されている方法に従って行なうことができる。これらの変更として、配列内の機能的に等価なアミノ酸残基をコードする様々なコドンの置換により(従って「サイレント」変更を引き起こすことにより)変更されているヌクレオチド配列が挙げられるがこれに限定されない。例えば、非極性アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性天然アミノ酸として、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0135】
本発明の抗体の誘導体および類似体を当分野で公知の様々な技術により製造することができ、この技術として、組み換え法および合成法(Maniatis(1990)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.およびBodansky et al.(1995)The Practice of Peptide Synthesis,2nd ed.,Spring Verlag,Berlin, Germany)が挙げられる。類似体のシャフリング技術または組合せ技術もStemmer(Nature(1994)370:389−391)により開示されており、このStemmerにはβ−ラクタマーゼ遺伝子に関する技術が説明されているが、このアプローチが抗体の生成に使用され得ることが述べられている。
【0136】
1種または複数種の選択されたVH遺伝子および/またはVL遺伝子のランダム変異誘発を使用して、本明細書で開示する配列に由来する1種または複数種の配列を担持する新規のVH領域またはVL領域を生成することができる。一例のそのような技術(エラーを起こしやすいPCR)が、Gram他(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1992)89:3576−3580)により説明されている。
【0137】
使用することができる別の方法は、VH遺伝子またはVL遺伝子のCDRへの変異誘発を方向付けることである。そのような技術が、Barbas他(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1994)91:3809−3813)およびSchier他(J.Mol.Biol.(1996)263:551−567)により開示されている。
【0138】
同様に、1種または複数種のまたは3種全てのCDRを、VHドメインまたはVLドメインのレパートリー中に移植することができ、次いで、CTLA−4またはPD−L1に特異的な抗原結合断片に関してスクリーニングする。
【0139】
免疫グロブリン可変ドメインの一部は、本明細書に実質的に記載されているCDRの少なくとも1種と、任意選択で、本明細書に記載されているscFv断片からの介在性フレームワーク領域とを含むことができる。この部分は、FR1およびFR4のいずれかまたは両方の少なくとも約50%を含むことができ、この50%は、FR1のC末端の50%およびFR4のN末端の50%である。可変ドメインの実質的な部分のN末端またはC末端での更なる残基は、天然に存在する可変ドメイン領域と通常は関連しないものであることができる。例えば、組み換えDNA技術による抗体の構築では、クローニングまたはその他の操作工程を容易にするために導入されるリンカーによりコードされるN末端残基またはC末端残基が導入され得る。その他の操作工程は、可変領域を更なるタンパク質配列(例えば免疫グロブリン重鎖定常領域、(例えば二重特異性抗体の製造における)その他の可変ドメイン、または下記で更に詳細に論じるタンパク質性標識)に連結させるためのリンカーの導入を含む。
【0140】
当業者は、本発明で使用する抗体がVLドメインまたはVHドメインのいずれかからの単一CDRのみを含む抗原結合断片を含むことができることを認識するだろう。一本鎖特異的結合ドメインのいずれか1つを使用して、2種のドメインに特異的な抗原結合断片(例えばCTLA−4およびPD−L1に結合することが可能)を形成することが可能な相補ドメインに関してスクリーニングすることができる。
【0141】
本明細書で説明する本発明で使用する抗体を別の機能分子に連結させることができ、例えば別のペプチドまたはタンパク質(アルブミン、別の抗体等)に連結させることができる。例えば、この抗体を、化学的な架橋によりまたは組み換え法により連結させることができる。米国特許第4,640,835号明細書、米国特許第4,496,689号明細書、米国特許第4,301,144号明細書、米国特許第4,670,417号明細書、米国特許第4,791,192号明細書または米国特許第4,179,337号明細書に記載されている方法で、この抗体を様々な非タンパク質性ポリマーの内の1つに連結させることもでき、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコーンまたはポリオキシアルキレンに連結させることもできる。この抗体をポリマーへの共有結合的なコンジュゲーションにより化学的に改変して、例えばこの抗体の循環半減期を増加させることができる。この抗体を付着させるための例示的なポリマーおよび方法が、米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書および米国特許第4,609,546号明細書にも示されている。
【0142】
この抗体を、天然のパターンとは異なるグリコシル化パターンを有するように変更することもできる。例えば、1個もしくは複数個の炭水化物部位を欠失させることができる、および/または1個もしくは複数個のグリコシル化部位を元の抗体に付加することができる。本開示の抗体へのグリコシル化部位の付加は、当分野で既知のグリコシル化部位コンセンサス配列を含むようにアミノ酸配列を変更することにより達成することができる。この抗体上の炭水化物部位の数を増加させる別の手段は、この抗体のアミノ酸残基に対するグリコシドの化学的なまたは酵素による結合によるものである。そのような方法が、国際公開第87/05330号パンフレットおよびAplin et al.(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,22:259−306で説明されている。例えばHakimuddin et al.(1987)Arch.Biochem.Biophys.,259:52およびEdge et al.(1981)Anal.Biochem.,118:131およびThotakura et al.(1987)Meth.Enzymol.,138:350により説明されているように、この抗体からの任意の炭水化物部位の除去を化学的にまたは酵素により達成することができる。この抗体に、検出可能なまたは機能的な標識でタグを付けることもできる。検出可能な標識として131Iまたは99Tc等の放射性標識が挙げられ、この放射性標識を、従来の化学を使用して抗体に付着させることができる。検出可能な標識として、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ等の酵素標識も挙げられる。検出可能な標識としてビオチン等の化学部位が更に挙げられ、この化学部位を、特異的な同族の検出可能部位(例えば標識されたアビジン)への結合により検出することができる。
【0143】
CDR配列が本明細書に記載されたものとほんのわずかに異なる抗体は本発明の範囲に包含される。典型的には、あるアミノ酸が、類似の電荷、疎水性または立体化学的な特性を有する関連アミノ酸で置換されている。そのような置換は当業者の通常の技術内であるだろう。CDRとは異なり、FRでは、抗体の結合特性に悪影響を及ぼすことなくより実質的な変更を行なうことができる。FRに対する変更として、例えば米国特許第5,624,821号明細書および米国特許第5,648,260号明細書ならびにLund et al.(1991)J.Immun.147:2657−2662およびMorgan et al.(1995)Immunology 86:319−324に記載されているように、抗原接触に重要であるまたは結合部位の安定化に重要である非ヒト由来のフレームワーク残基をヒト化することまたはある特定のフレームワーク残基を操作すること、例えば、定常領域のクラスまたはサブクラスを変更すること、Fc受容体結合等のエフェクター機能を変更する可能性がある特定のアミノ酸残基を変更すること、または定常領域が由来する種を変更することが挙げられるがこれらに限定されない。
【0144】
当業者は、上記で説明した改変は全網羅的ではないこと、および多くのその他の改変は本開示の技術を考慮して当業者に明らかであるだろうということを認識するだろう。
【0145】
アンチセンスオリゴヌクレオチド等のSTAT3アンチセンス化合物
STAT3のmRNAに特異的に結合して阻害するまたはSTAT3のタンパク質発現を阻害する、STAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、本発明で有用である。
【0146】
STAT3阻害アンチセンスオリゴヌクレオチドは当分野で既知である。
【0147】
国際公開第2000/061602号パンフレットおよび国際公開第2005/083124号パンフレット(両方ともIsis Pharmaceuticals Inc.)には、本発明で特徴となる可能性がある多数のSTAT3阻害アンチセンスオリゴヌクレオチドが開示されている。
【0148】
国際公開第2012/135736号パンフレット(Isis Pharmaceuticals Inc.)には、本発明で特徴なる可能性がある多数のSTAT3阻害アンチセンスオリゴヌクレオチドも開示されている。本明細書に記載する実施形態での使用に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドとして、国際公開第2012/135736号パンフレットに記載されている配列番号9〜426、430〜442、445〜464、471〜498、500〜1034および1036〜1512が挙げられるがこれらに限定されない。これらの内の1つ(本明細書ではISIS 481464と識別される)は、AZD9150としても知られている分子である。この分子は、中心ギャップセグメントが10個の2’−デオキシヌクレオシドを含み、それぞれが3個のヌクレオシドを含むウィングが両側で(5’方向および3’方向で)隣接している3−10−3立体配置を有するギャップマー分子である。5’ウィングセグメント中の各ヌクレオシドおよび3’ウィングセグメント中の各ヌクレオシドはcET糖改変を有する。各ギャップマー全体にわたるヌクレオチド間連結はホスホロチオエート連結(P=S)である。このギャップマー中の全てのシトシン残基は5’−メチルシトシンである。AZD9150/ISIS481464の完全な16−mer核酸塩基配列は
【化4】
である。ウィングセグメントに下線を引いている。AZD9150は、GENBANK受託番号NM 139276.2のSTAT3配列中の核酸塩基3016〜3031に相補的であり、本明細書では配列番号1として援用する。
【0149】
国際公開第2014/070868号パンフレット(Isis Pharmaceuticals Inc.)には、AZD9150の特定の投薬量およびこのAZD9150による特定のがんの治療方法が開示されている。
【0150】
AZD9150は現在、フェーズI臨床試験で試験されており、耐性用量でDLBCLおよびHCCにおいて臨床応答を示している。
【0151】
STAT3を標的とするその他のアンチセンス化合物が、例えば国際公開第2008109494号パンフレット(STAT3部分二本鎖リボ核酸分子(mdRNA)が開示されている)および米国特許出願公開第20100298409号明細書(STAT3siRNA分子が開示されている)に開示されている。
【0152】
これらの開示はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0153】
ある特定の実施形態
一態様では、本発明は、必要とする患者に、免疫調節剤とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物とを投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、これらの薬剤((i)抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片および(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物)を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0154】
一態様では、本発明は、(i)少なくとも1種の免疫調節剤と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物とを、必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。一実施形態では、これらの薬剤を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0155】
一態様では、本発明は、必要とする患者の治療で使用する免疫調節剤とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物とを提供する。一実施形態では、これら2種の薬剤を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0156】
一態様では、本発明は、必要とする患者の治療で使用する少なくとも1種の免疫調節剤とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物とを提供する。一実施形態では、これらの薬剤を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0157】
一態様では、本発明は、必要とする患者の治療で使用する免疫調節剤であって、前記患者を、STAT3を標的とするアンチセンス化合物でも治療する、免疫調節剤を提供する。一実施形態では、これらの薬剤を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0158】
一態様では、本発明は、必要とする患者の治療で使用する、STAT3を標的とするアンチセンス化合物であって、前記患者を免疫調節剤でも治療する、アンチセンス化合物を提供する。一実施形態では、これらの薬剤を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0159】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療用の薬剤の製造での免疫調節剤の使用であって、患者を、STAT3を標的とするアンチセンス化合物でも治療する、使用を提供する。
【0160】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者を治療するための薬剤の製造での免疫調節剤の使用であって、この免疫調節剤を、必要とする患者に、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と同時に、別々にまたは逐次に投与する、使用を提供する。
【0161】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療用の薬剤の製造での、STAT3を標的とするアンチセンス化合物の使用であって、患者を免疫調節剤でも治療する、使用を提供する。
【0162】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者を治療するための薬剤の製造での、STAT3を標的とするアンチセンス化合物の使用であって、このSTAT3を標的をとするアンチセンス化合物を免疫調節剤と同時に、別々にまたは逐次に投与する、使用を提供する。
【0163】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療用の薬剤の製造での(i)免疫調節剤と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物との使用を提供する。一実施形態では、これら2種の薬剤(アンチセンス化合物および免疫調節剤)を同時に、別々にまたは逐次に投与する。
【0164】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療で使用する免疫調節剤であって、この患者を、STAT3を標的とするアンチセンス化合物でも治療する、免疫調節剤を提供する。
【0165】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療で使用する免疫調節剤であって、この免疫調節剤を、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と同時に、別々にまたは逐次に投与する、免疫調節剤を提供する。
【0166】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療で使用する、STAT3を標的とするアンチセンス化合物であって、この患者を免疫調節剤でも治療する、アンチセンス化合物を提供する。
【0167】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療で使用する、STAT3を標的とするアンチセンス化合物であって、このSTAT3を標的とするアンチセンス化合物を免疫調節剤と同時に、別々にまたは逐次に投与する、アンチセンス化合物を提供する。
【0168】
一態様では、本発明は、がんを罹患している患者の治療で使用する(i)免疫調節剤と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物とであって、これら免疫調節剤およびSTAT3を標的とするアンチセンス化合物それぞれを患者に同時に、別々にまたは逐次に投与する、免疫調節剤およびアンチセンス化合物を提供する。
【0169】
本明細書で開示する様々な態様では、免疫調節剤による患者の治療に言及されている場合には複数種の免疫調節剤による治療も包含される。
【0170】
本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、この免疫調節剤は免疫チェックポイント阻害剤である。
【0171】
本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、この免疫調節剤は抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片である。
【0172】
本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、この免疫調節剤は抗PD−1抗体またはこの抗原結合断片である。
【0173】
本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、この免疫調節剤は抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片である。
【0174】
本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、この免疫調節剤はOX−40アゴニストである。特定の実施形態では、このOX−40アゴニストは、抗OX40アゴニスト抗体またはこの抗原結合断片、OX40リガンドまたはこの断片もしくは誘導体またはOX40リガンド融合タンパク質から選択される。
【0175】
本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、この免疫調節剤は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714、MDX−1105、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MPDL3280A、トレメリムマブ、イピリムマブおよびOX40L FPからなる群から選択される。
【0176】
本明細書で開示する態様のいずれかの一実施形態では、このSTAT3はヒトSTAT3であり、そのため、治療の組合せおよび方法ならびに同様のものは、ヒトSTAT3を標的とするアンチセンス化合物を利用する。
【0177】
ある特定の態様は、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と1種または複数種の免疫調節剤との組合せに関する。ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と1種または複数種の免疫調節剤とのそのような組合せは、AZD9150と、抗PD−L1抗体、抗PD1抗体および抗CTLA−4抗体およびOX40アゴニストから選択される1種または複数種の薬剤とを含む。ある特定の実施形態では、そのような組合せは、STAT3を標的とするアンチセンス化合物としてのAZD9150と、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714、MDX−1105、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MPDL3280A、トレメリムマブ、イピリムマブおよびOX40L FPからなる群から選択される1種または複数種の免疫調節剤とを含む。
【0178】
本明細書で開示する第1のまたは第2の医療用途または治療の方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、2種以上の免疫調節剤を、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と組み合わせて投与することができる。例えば、この組合せ治療は、STAT3 ASO、抗PDL−1抗体および抗CTLA−4、例えばAZD9150、MEDI4736およびトレメリムマブを含むことができる。ある代替は、STAT3 ASO、抗PDL−1抗体およびOX40アゴニスト、例えばAZD9150、MEDI4736およびOX40L FPを含むだろう。別の代替は、STAT3 ASO、抗PDL−1抗体および抗CTLA−4抗体、例えばAZD9150、MEDI4736およびトレメリムマブを含むだろう。
【0179】
本明細書で開示する第1のまたは第2の医療用途または治療の方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、免疫調節剤は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714およびMDX−1105から選択される抗PD−L1抗体もしくはこの抗原結合断片、またはこれらのいずれかの抗原結合断片である。
【0180】
抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片を含む上記の第1のまたは第2の医療用途または治療方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、この抗PD−L1抗体はMEDI4376またはこの抗原結合断片である。
【0181】
抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片を含む上記の第1のまたは第2の医療用途または治療方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、この抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片は、PD−1受容体およびCD80受容体へのPD−L1の結合を遮断する。
【0182】
上記の第1のまたは第2の医療用途または治療方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物を、免疫調節剤の前に患者に投与する。特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物の投与と免疫調節剤の投与との間の継続時間は、少なくとも10分、1時間、2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、5日、7日、10日または14日である。特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物を患者に最初に投与し、次いで、免疫調節剤を異なる時点でおよび異なる訪問時で後に投与する。この文脈における異なる訪問とは、免疫調節剤を患者に供給するまたは投与する医療提供者が、STAT3を標的とするアンチセンス化合物を提供した/投与したときの訪問とは異なる訪問時にそのようなことを行なうことを意味することができる。明らかに、この訪問の場所は重要ではない。患者が医療提供者を訪問するということもあり得、逆もまたあり得る。
【0183】
上記の第1のまたは第2の医療用途または治療方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、免疫調節剤を、STAT3を標的とするアンチセンス化合物の前に患者に投与する。
【0184】
特定の実施形態では、(i)免疫調節剤の投与と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物の投与との間の継続時間は、少なくとも10分、1時間、2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、5日、7日、10日または14日である。
【0185】
上記の様々な第1のまたは第2の医療用途または治療方法の態様のいずれかでは、STAT3を標的とするアンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。
【0186】
上記の第1のまたは第2の医療用途または治療方法の態様のいずれかの特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物はAZD9150であることができる。
【0187】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物は、STAT1、STAT4またはSTAT6を阻害しない。
【0188】
ある特定の実施形態では、患者はがんを有する。一実施形態では、患者は、頭頸部がん(例えば扁平上皮癌(HNSCC))、リンパ腫(例えばびまん性大細胞型B細胞癌(DLBCL)またはホジキンリンパ腫)、乳がん(例えば三種陰性)、卵巣がん(例えば漿液性)、膵がん、結腸直腸がん、肺がん(例えば非小細胞性肺がん(NSCLC)および肝細胞癌(HCC)から選択されるがんを有する。
【0189】
ある特定の実施形態では、がん細胞はPD−L1を発現する。
【0190】
ある特定の実施形態では、必要とする患者は、PD−L1陽性であるがんを有すると同定された。特定の実施形態では、患者の腫瘍細胞中の少なくとも20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはより多くの細胞が、免疫化学を使用して評価する場合にPD−L1陽性である。
【0191】
一実施形態では、肺がんは、小細胞肺がんまたは非小細胞性肺がん(例えば、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、腺扁平上皮癌および肉腫様癌)である。
【0192】
一実施形態では、頭頸部がんはHNSCCである。
【0193】
一実施形態では、リンパ腫はDLBCLである。
【0194】
別の態様では、本発明は、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150とを、がんを有すると同定された患者に投与することを含む治療方法を提供する。この具体的な態様の一実施形態では、がんは、HNSCC、DLBCL、膵がん、乳がん、卵巣がん、NSCLCおよびHCCから選択される。
【0195】
別の態様では、本発明は、約0.5〜20mg/kg/週のMEDI4736またはこの抗原結合断片と、約0.3〜5mg/kg/週のAZD9150とを、がんを有すると同定された患者に投与することを含む治療方法を提供する。特定の実施形態では、AZD9150およびMEDI4736に加えて、約1〜10mg/kg/週のトレメリムマブも患者に投与する。ある特定の実施形態では、対象の体重を、下記のDevine式(Pai,M.P.and Paloucek,F.P.Ann.Pharmacol.2000.34:1066−1069)を使用して理想体重として算出する:男性の場合(kg)=50+2.3kg/5フィートを超えるインチ;女性の場合(kg)=45.5+2.3kg/5フィートを超えるインチ。
【0196】
ある特定の実施形態では、観測される治療効果により、免疫調節剤および/またはSTATを標的とするアンチセンス化合物を、単剤治療として使用する場合の同じ薬剤と比べて低い用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供するSTAT3を標的とするアンチセンス化合物を、1週間当たり対象の体重1kg当たり約0.3〜5ミリグラムのアンチセンス化合物(0.3〜5mg/kg/週)の範囲で対象に投与する。そのような用量範囲は、がんの治療としては予想外に低い。比較すると、キャップ結合タンパク質である真核生物開始因子4E(eIF−4E)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであるLY2275796のフェーズI研究は、LY2275796の最大耐用量(MTD)および生物学的有効用量(BED)は負荷および維持用量レジメン下で1,000mgであるという結論を下したが、1,000mgの用量であっても腫瘍応答を観測しなかった。(Hong D.S.et al.,Clin Cancer Res.2011 17(20):6582−91)。ある特定の実施形態では、免疫調節剤を、1週間当たり対象の体重1kg当たり約1〜20ミリグラムの抗体化合物(1〜20mg/kg/週)の範囲で対象に投与する。
【0197】
抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片を含む、上記の態様または本明細書で描写する本発明のあらゆる態様のいずれかの様々な実施形態では、抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714およびMDX−1105またはこれらのいずれかの抗原結合断片から選択される。
【0198】
抗PD1抗体またはこの抗原結合断片を含む、上記の態様または本明細書で描写する本発明のあらゆる態様のいずれかの様々な実施形態では、抗PD1抗体またはこの抗原結合断片は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブおよびMPDL3280Aから選択される。
【0199】
抗CTLA−4またはこの抗原結合断片を含む、上記の態様または本明細書で描写する本発明のあらゆる態様のいずれかの様々な実施形態では、CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片は、トレメリムマブおよびイピリムマブから選択される。
【0200】
OX040アゴニストを含む、上記の態様または本明細書で描写する本発明のあらゆる態様のいずれかの様々な実施形態では、OX−40アゴニストはOX40L FPである。
【0201】
上記の態様または本明細書で描写する本発明のあらゆる態様のいずれかの様々な実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物はAZD9150である。
【0202】
ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物がハイブリダイズすることができるSTAT3核酸は、GENBANK受託番号NM_139276.2(本明細書では配列番号1として援用される)に記載されている配列またはヌクレオチド4185000〜4264000からトランケートされたGENBANK受託番号NT_010755.14(国際公開第2012/135736号パンフレットにおいて配列番号2と称される)の相補のいずれかである。ある特定の実施形態では、本明細書での使用に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドとして、国際公開第2012/135736号パンフレットに記載されている配列番号9〜426、430〜442、445〜464、471〜498、500〜1034および1036〜1512が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明で使用するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも12個の連続した核酸塩基の一部が配列番号1の核酸塩基3008〜3033の内の等しい長さの部分と相補的である核酸塩基配列を有する、12〜30個の連結されたヌクレオシドからなる改変オリゴヌクレオチドを含み、この核酸塩基配列は、配列番号1と相補的である。ある特定の実施形態では、このアンチセンスオリゴヌクレオチドはAZD9150である。
【0203】
本明細書で提供する方法で使用するAZD9150(別名ISIS 481464)に関する情報を国際公開第2012/135736号パンフレット(例えば実施例1)中に見出すことができ、この開示はその全体が参照により本明細書に援用される。AZD9150は、10個の連結されたデオキシヌクレオシド(ギャップセグメント)、3個の連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント、および3個の連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含む一本鎖改変オリゴヌクレオチドである。このギャップセグメントは、5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントとの間に位置しており、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドは拘束エチルヌクレオシドを含む。オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結はホスホロチオエート連結であり、オリゴヌクレオチドの各シトシンは5’−メチルシトシンである。AZD9150の完全な16−merの核酸塩基配列は
【化5】
であり、ウィングセグメントに下線を引いている。ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物は、12〜30個の連結されたヌクレオシドからなるおよび配列番号2の核酸塩基配列の内の少なくとも12個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する改変オリゴヌクレオチドを含む化合物である。
【0204】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドは一本鎖改変オリゴヌクレオチドからなる。
【0205】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの少なくとも1個のヌクレオシド間連結は改変ヌクレオシド間連結である。
【0206】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間連結はホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0207】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの少なくとも1個のヌクレオシドは改変糖を含む。
【0208】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの少なくとも1個の改変糖は二環式糖である。
【0209】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの二環式糖は、4’−CH
2−O−2’架橋または4’−CH(CH
3)−O−2’架橋を含む。
【0210】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの改変糖は、2’−O(CH
2)
2−OCH
3基または2’−O−CH
3基を含む。
【0211】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドの少なくとも1個のヌクレオシドは改変核酸塩基を含む。ある特定の実施形態では、前記改変核酸塩基は5’−メチルシトシンである。
【0212】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とする改変オリゴヌクレオチドは、1〜5個の連結されたヌクレオシドからなる5’−ウィング、1〜5個の連結されたヌクレオシドからなる3’−ウィング、8〜12個の連結された2’−デオキシヌクレオシドからなる、5’−ウィングと3’−ウィングとの間のギャップを含み、5’−ウィングおよび3’−ウィングの少なくとも一方は、少なくとも1個の二環式ヌクレオシドまたは2’−置換ヌクレオシドを含む。
【0213】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物は、5’から3’の方向に記載した場合に標的とされる標的核酸の標的セグメントの逆相補を含む核酸塩基配列を有する。
【0214】
本明細書に含まれる各配列番号に記載される配列およびアンチセンス分子/化合物に適用される配列は、糖部位、ヌクレオシド間連結または核酸塩基へのあらゆる改変から独立していることが理解される。そのため、配列番号で定義されるアンチセンス化合物は、糖部位、ヌクレオシド間連結または核酸塩基への1種または複数種の改変を独立して含むことができる。
【0215】
改変
ヌクレオシドとは塩基−糖の組合せのことである。ヌクレオシドの核酸塩基(塩基としても知られている)部分は通常、複素環塩基部位である。ヌクレオチドはリン酸基を更に含むヌクレオシドであり、このリン酸基はこのヌクレオシドの糖部分に共有結合的に連結されている。ペントフラノシル糖を含むこのヌクレオシドの場合、リン酸基は糖の2’、3’または5’ヒドロキシ部位に連結され得る。オリゴヌクレオチドは、互いに隣接したヌクレオシドの共有結合的な連結により形成され、直線状のポリマーオリゴヌクレオチドが形成される。オリゴヌクレオチド構造内では、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結を形成すると一般にいわれている。
【0216】
アンチセンス化合物への改変には、ヌクレオシド間連結、糖部位または核酸塩基への置換または変更が包含される。改変アンチセンス化合物は、所望の特性(例えば、細胞取り込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強、ヌクレアーゼの存在下での安定性の増加、または阻害活性の増加等)により、天然の形態よりも好ましいことが多い。
【0217】
化学的に改変されたヌクレオシドを用いて、短縮されたまたはトランケートされたアンチセンスオリゴヌクレオチドのその標的核酸に対する結合親和性を増加させることもできる。その結果、そのように化学的に改変されたヌクレオシドを有するより短いアンチセンス化合物により、比較可能な結果を得ることもできる。
【0218】
改変ヌクレオシド間連結
RNAおよびDNAの天然に存在するヌクレオシド間連結は、3’から5’へのリン酸ジエステル連結である。1個または複数個の改変された(即ち天然には存在しない)ヌクレオシド間連結を有するアンチセンス化合物は、所望の特性(例えば、細胞取り込みの増強、標的核酸に対する親和性の増強およびヌクレアーゼの存在下での安定性の増加等)により、天然に存在するヌクレオシド間連結を有するアンチセンス化合物よりも選択されることが多い。
【0219】
改変ヌクレオシド間連結を有するオリゴヌクレオチドは、リン原子を保持するヌクレオシド間連結とリン原子を有しないヌクレオシド間連結とを含む。代表的なリン含有ヌクレオシド間連結として、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル、メチルホスホネート、ホスホロアミデートおよびホスホロチオエートが挙げられるがこれらに限定されない。リンを含む連結およびリンを含まない連結の作る方法は公知である。
【0220】
ある特定の実施形態では、STAT3核酸を標的とするアンチセンス化合物は、1個または複数個の改変ヌクレオシド間連結を含む。ある特定の実施形態では、改変ヌクレオシド間連結はホスホロチオエート連結である。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物の各ヌクレオシド間連結はホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0221】
改変糖部位
本明細書で提供するアンチセンス化合物は、糖基が改変されている1種または複数種のヌクレオシドを任意選択で含むことができる。そのような糖改変ヌクレオシドは、ヌクレアーゼ安定性の増強、結合親和性の増加またはいくつかのその他の有益な生物学的特性をアンチセンス化合物に付与することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオシドは、化学的に改変されたリボフラノース環部位を含む。化学的に改変されたリボフラノース環の例として、置換基(例えば5’置換基および2’置換基)の付加、二環式核酸(BNA)を形成するための非ジェミナルな環原子の架橋、S、N(R)またはC(R1)(R)2(R=H、C
1〜C
12アルキルもしくは保護基)によるリボシル環酸素原子の置き換え、およびこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。化学的に改変された糖の例として、2’−F−5’−メチル置換ヌクレオシド(その他の開示された5’,2’−ビス置換ヌクレオチドに関してはPCT国際出願国際公開第2008/101157号パンフレットを参照されたい)、2’−位での更なる置換を有する、Sによるリボシル環酸素原子の置き換え(公開された米国特許出願公開第2005/0130923号明細書を参照されたい)、あるいはBNAの5’−置換(PCT国際出願国際公開第2007/134181号パンフレット(LNAが例えば5’−メチル基または5’−ビニル基で置換されている)を参照されたい)が挙げられる。
【0222】
改変糖部位を有するヌクレオシドの例として、5’−ビニル置換基を含むヌクレオシド、5’−メチル(RまたはS)置換基を含むヌクレオシド、4’−S置換基を含むヌクレオシド、2’−F置換基を含むヌクレオシド、2’−OCH
3置換基を含むヌクレオシドおよび2’−O(CH
2)2OCH
3置換基を含むヌクレオシドが挙げられるがこれらに限定されない。2’位での置換基を、アリル、アミノ、アジド、チオ、O−アリル、O−C
1〜C
10アルキル、OCF
3、O(CH
2)2SCH
3、O(CH
2)2−O−N(Rm)(Rn)およびO−CH
2−C(=O)−N(Rm)(Rn)(各RmおよびRnは独立して、Hまたは置換されたもしくは未置換のC
1〜C
10アルキルである)から選択することもできる。
【0223】
コンジュゲートされたアンチセンス化合物
アンチセンス化合物を、得られたアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する1種または複数種の部位またはコンジュゲートに共有結合的に連結させることができる。典型的なコンジュゲート基として、コレステロール部位および脂質部位が挙げられる。追加のコンジュゲート基として、炭水化物、リン脂質、ビオチン、フェナジン、ホレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよび色素が挙げられる。
【0224】
製剤
免疫調節剤とSTAT3核酸を標的とするアンチセンス化合物とを、これらの化合物と薬学的に許容される適切な希釈剤または担体とを組み合わせることにより、医薬組成物で利用することができる。薬学的に許容される希釈剤としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体の適切な例として、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物油、イソプロピルミリステート等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0225】
治療用途に許容される担体または希釈剤は医薬分野で公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,A.R Gennaro edit.,1985で説明されている。
【0226】
免疫調節剤および/またはアンチセンス化合物を含む医薬組成物は、ヒト等の動物への投与時に生物学的に活性な代謝産物またはこの残留物を(直接的にまたは間接的に)生成することを可能にするあらゆる薬学的に許容される塩、エステルまたはそのようなエステルの塩を包含する。
【0227】
ある特定の実施形態では、2種の薬剤(免疫調節剤およびSTAT3アンチセンス化合物)が別々に製剤化されている。
【0228】
一態様によれば、免疫調節剤と、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と、1種または複数種の薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0229】
本発明の薬剤は、(例えば、注射による、例えばボーラス注射による、または持続注入による)非経口投与用に製剤化され得る、ならびに、防腐剤が添加されているアンプル中における、プレフィルドシリンジ中における、小体積注入中におけるまたは複数用量容器中における単位用量形態で存在することができる。この組成物は、油性もしくは水性の賦形剤中の溶液、懸濁液または乳濁液等の形態をとることができ、例えば水性ポリエチレングリコール中の溶液の形態をとることができる。油性もしくは非水性の担体、希釈剤または賦形剤の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられる。この組成物はまた、その他の製剤用薬剤(formulatory agent)、例えば湿潤剤、乳化剤または懸濁化剤、保存剤、安定剤および/または分散剤を含むこともできる。あるいは、活性成分は、適切な賦形剤(例えば無菌でパイロジェンフリーの水)との使用前の構成のために、無菌固体の無菌単離または溶液からの凍結乾燥により得られる粉末の形態であることができる。
【0230】
一実施形態では、抗PD−L1抗体MEDI4736は、26mMのヒスチジン/ヒスチジン−HCl、275mMのトレハロース二水和物、0.02%(重量/体積[w/v])のポリソルベート80、pH6.0中において50mg/mLに配合されている。次いで、この製品を、例えばエラストマーストッパーおよびフリップオフキャップオーバーシールで密閉された透明ガラスバイアル(例えば10Rバイアル)中の白色からオフホワイトの凍結乾燥粉末として供給することができる。各バイアルには、200mg(名目上)の活性製品が入っている。次いで、4.0mLの無菌の注射用水(WFI)による無菌技術を使用してMEDI4736を再構成し、50mg/mLの最終濃度を得る。次いで、再構成した溶液を、例えばシリンジまたは袋を使用してIV注入用に0.9%(w/v)の生理食塩水で希釈する。
【0231】
治療レジメン
上記態様のいずれかの様々な実施形態では、治療を1週毎に、2週毎に、3週毎にまたは4週毎に施す。様々な実施形態では、患者に免疫調節剤(例えば抗PD−L1抗体MEDI4736)の1回のまたは一連の負荷用量を最初に投与する。このことは、治療の初期段階(負荷段階)での(例えば1週目中の1日目、3日目および5日目での)複数回の薬剤の投与を伴う可能性がある。
【0232】
本発明者らは、患者を最初にSTAT3阻害剤で治療し、その後に続いて免疫調節剤で治療することにより、良好な抗がん結果が得られることを発見した。様々な実施形態では、STAT3核酸を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)の1回のまたは一連の負荷用量を患者に最初に投与する。このことは、治療の初期段階での(例えば1週目中の1日目、3日目および5日目での)複数回の薬剤の投与を伴う可能性がある。
【0233】
負荷用量段階の目的は、例えば1週間に1回で、治療の「維持」段階前に(血中で測定した場合の)薬剤の安定した状態または効果的なレベルをより迅速に達成することである。
【0234】
STAT3選択的阻害剤による前治療は、腫瘍浸潤CD45+細胞の増加をもたらすのに役立つこともでき、場合によっては腫瘍浸潤マクロファージの減少をもたらすのに役立つこともでき、免疫調節剤による効果的な治療の影響をより受けやすい腫瘍環境がもたらされる。
【0235】
上記態様のいずれかの様々な実施形態では、約1mg/kg〜20mg/kg(合計)の免疫調節剤と、約1mg/kg〜15mg/kg(合計)の、STAT核酸を標的とするアンチセンス化合物とを患者に投与する。
【0236】
MEDI4736またはこの抗原結合断片を含む上記態様のいずれかの様々な実施形態では、約2mg/kg〜10mg/kg(合計)のMEDI4736またはこの抗原結合断片と、約1mg/kg〜3mg/kg(合計)のAZD9150とを投与する。MEDI4736またはこの抗原結合断片を含む上記態様のいずれかの様々な実施形態では、約1mg/kgのMEDI4736と約1mg/kgのAZD9150とを投与し、約1mg/kgのMEDI4736と約2mg/kgのAZD9150とを投与し、約1mg/kgのMEDI4736と約3mg/kgのAZD9150とを投与し;約1mg/kgのMEDI4736と約10mg/kgのAZD9150とを投与し、約3mg/kgのMEDI4736と約1mg/kgのAZD9150とを投与し;約3mg/kgのMEDI4736と約2mg/kgのAZD9150とを投与し;約3mg/kgのMEDI4736と約3mg/kgのAZD9150とを投与し;約3mg/kgのMEDI4736と約10mg/kgのAZD9150とを投与し;約10mg/kgのMEDI4736と約1mg/kgのAZD9150とを投与し;約10mg/kgのMEDI4736と約2mg/kgのAZD9150とを投与し;約10mg/kgのMEDI4736と約3mg/kgのAZD9150とを投与し;約10mg/kgのMEDI4736と約10mg/kgのAZD9150とを投与し、約15mg/kgのMEDI4736と約1mg/kgのAZD9150とを投与し;約15mg/kgのMEDI4736と約2mg/kgのAZD9150とを投与し;約15mg/kgのMEDI4736と約3mg/kgのAZD9150とを投与し、または約15mg/kgのMEDI4736と約10mg/kgのAZD9150とを投与する。ある特定の実施形態では、対象の体重を、Devine式を使用して理想体重として算出する。
【0237】
上記態様のいずれかの様々な実施形態では、本方法により、免疫調節剤(例えばMEDI4736もしくはこの抗原結合断片)のみまたはAZD9150のみのいずれかの投与と比較して全生存期間が増加する(例えば、数週間、数ヶ月または数年増加する)。具体的には、生存期間の増加は約4〜6週、1〜2ヶ月、3〜4ヶ月、5〜7ヶ月、6〜8ヶ月または9〜12ヶ月を超える。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、免疫調節剤(例えばMEDI4736またはこの抗原結合断片)の投与を約4週毎に繰り返す。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、AZD9150の投与を約4週毎に繰り返す。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、AZD9150の投与を約12週毎に繰り返す。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、AZD9150の投与を、7回の投与にわたり約4週毎に投与し、次いで12週毎に投与する。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、免疫調節剤(例えばMEDI4736またはこの抗原結合断片)の投与は静脈内注入による。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、AZD9150の投与は静脈内注入による。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、AZD9150とMEDI4736またはこの抗原結合断片とを同時にまたは異なる時間で投与する。上記態様のいずれかの様々な実施形態では、AZD9150とMEDI4736またはこの抗原結合断片とを、24時間離して、48時間離してもしくは72時間離して、1週間、2週間もしくは3週間離して、または1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月離して投与する。
【0238】
3種の薬剤を含む組合せも考えられる。本明細書で開示する態様のいずれかの特定の実施形態では、本組合せおよび/または本治療でAZD9150、MEDI4736およびトレメリムマブを使用する。3種の薬剤の特定の投薬量は、2mg/kgまたは3mg/kgのAZD9150、5mg/kg、10mg/kgまたは20mg/kgのMEDI4736、および1mg/kgまたは2mg/kgのトレメリムマブを含む。
【0239】
本発明のその他の特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであるだろう。
【0240】
ある特定の態様では、がん/腫瘍の患者に、(i)少なくとも1種の免疫調節剤と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物とを薬学的に有効な量で投与する。
【0241】
ある特定の態様では、がん/腫瘍の患者に、(i)MEDI4736またはこの抗原結合断片と(ii)AZD9150とを薬学的に有効な量で投与する。この態様の特定の実施形態では、この患者に、トレメリムマブまたはこの抗原結合断片も投与する。MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150とを、患者に利益をもたらしている間に一度だけまたは低頻度で投与することができる。更なる態様では、この患者に更に後続の用量を投与する。後続の用量を、患者の年齢、体重、臨床的評価、腫瘍量および/またはその他の因子(例えば主治医の判断)に応じて様々な時間間隔で投与することができる。
【0242】
免疫調節剤(例えばMEDI4736もしくはこの抗原結合断片および/またはトレメリムマブもしくはこの抗原結合断片)の用量とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)の用量との間隔は、1週間おき、2週間おき、3週間おき、4週間おき、5週間おきまたは6週間おきであることができる。MEDI4736またはこの抗原結合断片の用量とAZD9150の用量との間隔は、6サイクルにわたり4週間おきであり、次いで12週間おきであることができる。ある特定の態様では、MEDI4736またはこの抗原結合断片をAZD9150の約2倍の頻度で投与する。ある特定の態様では、MEDI4736またはこの抗原結合断片をAZD9150の約6倍の頻度で投与する。ある特定の態様では、AZD9150をMEDI4736またはこの抗原結合断片の約2倍の頻度で投与する。ある特定の態様では、AZD9150をMEDI4736またはこの抗原結合断片の約6倍の頻度で投与する。
【0243】
いくつかの実施形態では、少なくとも3回の用量、少なくとも4回の用量、少なくとも5回の用量、少なくとも6回の用量、少なくとも7回の用量、少なくとも8回の用量、少なくとも9回の用量、少なくとも10回の用量または少なくとも15回の用量またはより多くの各薬剤を患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、免疫調節剤(例えばMEDI4736またはこの抗原結合断片)を、2週超の治療期間で、4週超の治療期間で、6週超の治療期間で、8週超の治療期間で、12週超の治療期間で、24週超の治療期間で、または1年超のもしくはより長い治療期間で投与する。いくつかの実施形態では、AZD9150を、2週超の治療期間で、4週の治療期間で、8週超の治療期間で、12週超の治療期間で、24週超の治療期間で、または1年超のもしくはより長い治療期間で投与する。
【0244】
個々の患者に投与する(i)免疫調節剤と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物との量を、患者の年齢、体重、臨床的評価、腫瘍量および/またはその他の因子(例えば主治医の判断)等の様々なパラメーターに応じて決定することができる。患者に投与する免疫調節剤(例えば抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片)とSTAT3核酸を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)との量を、患者集団中における薬剤の包括的な臨床試験から決定することができる。
【0245】
抗PD−L1抗体MEDI4736を含むある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の1回もしくは複数回の用量を投与し、この用量は約0.3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約10mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約15mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約20mg/kgである。ある特定の実施形態では、MEDI4736またはこの抗原結合断片の各用量を少なくとも1週間離して投与し、例えば1週毎に、2週毎に、3週毎に、4週毎に、8週毎におよび12週毎に投与する。ある特定の実施形態では、対象の体重を、Devine式を使用して理想体重として算出する。
【0246】
STAT3を標的とするアンチセンス化合物(AZD9150として既知である)を含むある特定の実施形態では、患者にAZD9150の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約0.3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約10mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約15mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約20mg/kgである。ある特定の実施形態では、AZD9150の各用量を少なくとも1週間離して投与する。ある特定の実施形態では、AZD9150の各用量を2週間離して(2QW)投与する。ある特定の実施形態では、AZD9150の各用量を3週間離して(3QW)投与する。ある特定の実施形態では、AZD9150の各用量を4週間離して(4QW)投与する。ある特定の実施形態では、AZD9150の各用量を8週間離して(8QW)投与する。ある特定の実施形態では、AZD9150の各用量を12週間離して(12QW)投与する。
【0247】
抗CTLA−4抗体トレメリムマブもしくはイピリムマブまたはどちらかの抗原結合断片を含むある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の1回または複数回の用量を投与し、この用量は約10mg/kgである。
【0248】
ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約10mg/kgである。いくつかの実施形態では、この少なくとも2回の用量を約4週間離して投与する。いくつかの実施形態では、この少なくとも2回の用量を約12週間離して投与する。
【0249】
ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の少なくとも3回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の少なくとも3回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者に抗CTLA−4抗体またはこの抗原結合断片の少なくとも3回の用量を投与し、この用量は約10mg/kgである。いくつかの実施形態では、この少なくとも3回の用量を約4週間離して投与する。いくつかの実施形態では、この少なくとも3回の用量を約12週間離して投与する。
【0250】
ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約10mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約15mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にMEDI4736またはこの抗原結合断片の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約20mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約1mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約2mg/kgである。ある特定の実施形態では、患者にAZD9150の少なくとも2回の用量を投与し、この用量は約3mg/kgである。ある特定の実施形態では、対象の体重を、Devine式を使用して理想体重として算出する。
【0251】
いくつかの実施形態では、少なくとも2回の用量を約4週間離して投与する。いくつかの実施形態では、少なくとも2回の用量を約12週間離して投与する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供する方法に従うMEDI4736もしくはこの抗原結合断片および/またはAZD9150等の薬剤の投与は、非経口投与による。例えば、一方または両方の薬剤を、静脈内注入または皮下注射により投与することができる。いくつかの実施形態では、この投与は静脈内注入による。
【0252】
免疫調節剤(例えば、抗CTLA−4抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−1抗体およびOX40アゴニスト)とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)との組合せによる効果的な治療は、例えば、原発腫瘍の部位または1つもしくは複数の転移のいずれかでのがんの悪化速度の低下、腫瘍増殖もしくは転移性増殖の遅延もしくは安定化、腫瘍収縮および/または腫瘍退縮を含む。いくつかの態様では、腫瘍増殖の減少または遅延は統計的に有意であることができる。腫瘍増殖の減少を、ベースライン時での患者の腫瘍の増殖と、予想の腫瘍増殖、大きな患者集団に基づく予想の腫瘍増殖またはコントロール集団の腫瘍増殖との比較により測定することができる。その他の実施形態では、本発明の方法により生存期間が延びる。
【0253】
免疫調節剤(例えば、抗CTLA−4抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−1抗体およびOX40アゴニスト)とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)との投与に対する臨床応答を臨床医に既知の診断技術を使用して評価することができ、この診断技術として、磁気共鳴画像撮影(MRI)スキャン、x線画像撮影、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリーまたは蛍光励起セルソーター(FACS)分析、組織学、肉眼所見ならびに血液化学(ELISA、RIAおよびクロマトグラフィーにより検出可能な変化が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0254】
本発明で提供する方法により、がん腫瘍増殖を減少させることができる、または遅延させることができる。いくつかの場合では、この減少または遅延は統計的に有意であることができる。腫瘍増殖の減少を、ベースライン時での患者の腫瘍の増殖と、予想の腫瘍増殖、大きな患者集団に基づく予想の腫瘍増殖またはコントロール集団の腫瘍増殖との比較により測定することができる。
【0255】
ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物および免疫調節剤の用量を投与することにより、対象の腫瘍サイズまたは腫瘍体積が減少する。ある特定の実施形態では、アンチセンス化合物および免疫調節剤の用量を投与することにより、対象の生存期間が延びる。ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物および免疫調節剤の用量を投与することにより、対象のがん(例えばB細胞リンパ腫)が治療される。ある特定の実施形態では、本方法は、対象においてがんの治療に効果的であり許容可能に受忍される。
【0256】
ある特定の実施形態では、免疫関連応答基準(irRc)を使用して腫瘍応答を測定する。ある特定の実施形態では、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)を使用して腫瘍応答を測定する。
【0257】
ある特定の実施形態では、腫瘍応答は7週目またはそれ以降(例えば13週目、25週目、41週目、52週目)で検出可能である。
【0258】
ある特定の実施形態では、患者は疾患管理(DC)を達成する。疾患管理は、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)または安定疾患(SD)であることができる。
【0259】
「完全奏効」(CR)は、測定可能であるか否かにかかわらず全ての病変の消失および新たな病変がないことを意味する。最初の文書化の日付から4週以上の繰り返しの連続した評価を使用して確認することができる。新たな測定不能な病変によりCRは除外される。
【0260】
「部分奏効」(PR)は、ベースラインに対する≧30%の腫瘍量の減少を意味する。最初の文書化の日付から少なくとも4週の連続した繰り返しの評価を使用して確認することができる。
【0261】
「安定疾患」(SD)は、ベースラインに対する約30%未満の腫瘍量の減少が確立され得ないことおよび最下点と比較して20%超の増加が確立され得ないことを示す。
【0262】
ある特定の実施形態では、免疫調節剤とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物との投与により、無増悪生存期間(PFS)を増加させることができる。
【0263】
ある特定の実施形態では、免疫調節剤とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物との投与により、全生存期間(OS)を増加させることができる。
【0264】
ある特定の実施形態では、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との投与により、無増悪生存期間(PFS)を増加させることができる。
【0265】
ある特定の実施形態では、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との投与により、全生存期間(OS)を増加させることができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、患者は少なくとも1種の化学療法剤による治療を既に受けている。いくつかの実施形態では、患者は少なくとも2種の化学療法剤による治療を既に受けている。この化学療法剤は、例えばベムラフェニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブおよび/またはペメトレキセドであることができるがこれらに限定されない。
【0267】
いくつかの実施形態では、がんは、少なくとも1種の化学療法剤に対して抵抗性がある、または耐性がある。いくつかの実施形態では、がんは、少なくとも2種の化学療法剤に対して抵抗性がある、または耐性がある。がんは、例えばベムラフェニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブおよび/またはペメトレキセドの内の1種または複数種に対して抵抗性があり得るがまたは耐性があり得るがこれらに限定されない。
【0268】
いくつかの実施形態では、患者は、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との投与の前に0、1または2のEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)(Oken MM, et al.Am.J.Clin.Oncol.5:649-55(1982))活動指標を有する。
【0269】
本明細書に記載するように、MEDI4736またはこの抗原結合断片はまた、遊離(可溶性)PD−L1レベルも減少させることができる。遊離(可溶性)PD−L1は、(例えばMEDI4736により)結合していないPD−L1を意味する。いくつかの実施形態では、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との投与の後にsPD−L1レベルは減少する、および/または検出不能である。いくつかの実施形態では、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との投与により、例えば投与前の遊離(可溶性)PD−L1レベルの増加率と比較して遊離(可溶性)PD−L1レベルの増加率が減少する。
【0270】
本明細書で提供する、(i)免疫調節剤(例えばMEDI4736またはこの抗原結合断片)と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)との両方を使用する、がんを有する患者の治療(即ち併用療法)により、相加効果および/または相乗効果が生じ得る。本明細書で使用する場合、用語「相乗」は、単一治療の相加効果と比べて効果的である治療の組合せ(例えば、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との組合せ)を意味する。
【0271】
治療の組合せ(例えば、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150との組合せ)の相乗効果により、1種または複数種の治療薬のより低い投薬量の使用および/またはがんを有する患者への前記治療薬のより少ない頻度の投与が可能になり得る。治療薬のより低い投薬量を利用する能力および/またはより低い頻度で前記治療薬を投与する能力により、がんの治療における前記治療薬の有効性が低減することなく、前記治療薬の対象への投与に関連する毒性が低減される。加えて、相乗効果により、がんの管理、治療または寛解における治療薬の有効性を改善することができる。治療薬の組合せの相乗効果により、いずれかの単一の治療の使用と関連する有害なまたは望ましくない副作用を避けることができる、または低減させることができる。治療薬の組合せの相乗効果はまた、腫瘍体積の減少(または腫瘍退縮)として現れる場合もある。治療薬の組合せの相乗効果はまた、腫瘍増殖率の長期にわたる減少として現れる場合もある。
【0272】
併用療法では、免疫調節剤(例えばMEDI4736またはこの抗原結合断片)は、STAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)と同じ医薬組成物中に任意選択で含まれ得る、または別々の医薬組成物中に含まれる場合もある。後者の場合、免疫調節剤を含む医薬組成物は、STAT3を標的とするアンチセンス化合物を含む医薬組成物の投与の前の、この医薬組成物の投与と同時の、またはこの医薬組成物の投与の後の投与に適している。ある特定の場合、免疫調節剤を別々の組成物にて、STAT3を標的とするアンチセンス化合物と重複する時間で投与する。
【0273】
キット
別の態様では、本発明は、がんを治療するためのキットであって、(i)STAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)と(ii)免疫調節剤(例えば抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片)とを含むキットを提供する。一実施形態では、このキットは、免疫調節剤(例えば抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片)とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)とをそれぞれ単位剤形で含む治療用組成物を含む。ある特定の実施形態では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物はAZD9150であることができる、ならびに/または免疫調節剤は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714、MDX−1105、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MPDL3280A、トレメリムマブ、イピリムマブおよびOX40L FPからなる群から選択され得る。
【0274】
免疫調節剤が抗PD−L1抗体である場合、免疫調節剤は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714およびMDX−1105またはこれらのいずれかの抗原結合断片から選択され得る。
【0275】
いくつかの実施形態では、このキットは、1種または複数種の治療用組成物が入っている無菌容器を含み、そのような容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、袋、ポーチ、ブリスターパックまたは当分野で既知のその他の適切な容器の形状であることができる。そのような容器を、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔または薬剤を保持するのに適したその他の材料で作ることができる。
【0276】
必要に応じて、このキットは、がんを有する対象に免疫調節剤(例えば抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片)とSTAT3を標的とするアンチセンス化合物(例えばAZD9150)とを投与するための説明書を更に含む。特定の実施形態では、この説明書は下記の内の少なくとも1つを含む:治療薬の説明、がんまたはこの症状の治療または予防のための投薬スケジュールおよび投与、注意、警告、指示、禁忌(counter−indication)、過剰投薬量情報、有害反応、動物薬理、臨床研究および/または参考文献。この説明書を容器(存在する場合)上に直接印刷することができる、または容器に適用されるラベルとして印刷することができる、または容器中でもしくは容器と共に供給される別々のシート、小冊子、カードもしくは折り畳み印刷物として印刷することができる。
【0277】
別の態様では、がんの治療での同時使用、別々での使用または逐次使用のための組合せ調製物としてSTAT3を標的とするアンチセンス化合物と免疫調節剤とを含む製品が提供される。
【0278】
そのような製品では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物はAZD9150である、もしくはAZD9150であることができる、ならびに/または免疫調節剤は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714、MDX−1105、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MPDL3280A、トレメリムマブ、イピリムマブおよびOX40L FPから選択される、もしくはこれらから選択され得る。
【0279】
その他の実施形態では、そのような製品では、STAT3を標的とするアンチセンス化合物はAZD9150である、もしくはAZD9150であることができる、ならびに/または抗PD−L1抗体もしくはこの抗原結合断片は、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714およびMDX−1105もしくはこれらのいずれかの抗原結合断片である、もしくはこれらから選択され得る。
【0280】
本発明の実行では、別途指示しない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学免疫組織化学および免疫学の従来の技術が用いられ、これら従来の技術は当業者の範囲内である。そのような技術は文献中で完全に説明されており、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989)、“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984)、“Animal Cell Culture”(Freshney,1987)、“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996)、“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987)、“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994)、“Current Protocols in Immunology”(Coligan et al.,1991)中で完全に説明されている。これらの技術は本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造に適用可能であり、従って本発明の製造および実行で考慮され得る。特定の実施形態に特に有用な技術が下記のセクションで論じられ得る。
【0281】
下記の実施例および図面は、本発明の様々な態様をどのようにして作るかおよび使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明と考える範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0282】
実施例1.マウスにおいてASOを使用するSTAT3阻害が免疫系を強化することを示す臨床前研究
使用したアンチセンスオリゴヌクレオチド:
使用した両方のASOは、cET化学およびホスホロチオエート連結を有する3−10−3ギャップマーであり、塩基は全て2’−デオキシヌクレオシドである。ウィング部分に下線を引いている。
【化6】
【0283】
Seth et al.,(J Med Chem.52(1):10−13,2009)で説明されている技術等の標準的な技術に従って、オリゴヌクレオチドを合成することができる。
【0284】
CT−26マウス結腸腫瘍細胞(5×10
5個/マウス)を雌のBALB/cマウスに皮下移植した。このマウスを8個の群に無作為化し(体重に基づく)、PBS賦形剤、標的が設定されていないコントロールアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)(配列番号12)またはマウスSTAT3を標的とするASO(配列番号11)のいずれか(50mg/kg)で処置した。全てのASOをPBSに配合し、腫瘍移植の2日後に開始して5日オン/2日オフスケジュールにて50mg/kg QDで皮下投与した。投与開始から12日後および26日後に、各群から4匹のマウスを選択して腫瘍を摘出し、フローサイトメトリー分析用に処理した。12日(2週目)で摘出した腫瘍からの細胞を、腫瘍サイズが小さいことから分析前にプールし、26日(4週目)で摘出した腫瘍を個々に分析した。2週目および4週目でCD45+細胞を定量化した。4週目でマクロファージを定量化した。様々な細胞を同定し、免疫染色ならびにBD FACS Canto IIフローサイトメーターおよびFlowJoソフトウェアを使用するフローサイトメトリー分析により定量化した。
【0285】
本発明の実行では、別途指示しない限り、細胞生物学、免疫組織化学および免疫学における従来の技術が用いられ、これら従来の技術は十分に当業者の範囲内である。そのような技術は文献中で完全に説明されており、例えば“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996)および“Current Protocols in Immunology”(Coligan et al.,1991)中で完全に説明されている。
【0286】
STAT3 ASOによる処置によって、賦形剤で処置したマウスおよびコントロールASOで処置したマウスと比較して腫瘍免疫浸潤物に変化が生じた(
図1)。賦形剤処置群およびコントロールASO処置群と比較したマウスSTAT3 ASO処置群における総免疫浸潤物(CD45+白血球)の増加を、2週目(149%)および4週目(353%)で観測した。腫瘍中におけるマクロファージ(CD45+F4/80+)は4週目でより低かった(65%減少)。
【0287】
腫瘍浸潤マクロファージの減少を伴う腫瘍浸潤CD45+細胞の上昇は、免疫調節およびSTAT3 ASO処置に関連する抗腫瘍免疫応答の増強を示す。
【0288】
実施例2.抗PD−L1抗体処置との組合せにおけるマウスSTAT3 ASOによる前処置対同時処置により、抗腫瘍活性が増強される
CT−26マウス結腸腫瘍細胞(5×10
5個/マウス)を雌のBALB/cマウスに皮下移植した。マウスを、PBS賦形剤、マウスSTAT3 ASO(実施例1で使用したのと同一)、抗PD−L1抗体(抗マウスPD−L1、クローン10F.9G2、ラットIgG2bアイソタイプ、BioXCell、West Lebanon、NHから購入)、アイソタイプコントロールAb(ラットIgG2b、製品LTF−2、BioXCell、West Lebanon NHから購入)またはマウスSTAT3 ASO+PD−L1抗体の組合せのいずれかで処置した。処置群への無作為化前(移植の2日後)または無作為化時(移植の9日後)のいずれかでASO処置を開始した。無作為化時では、ASO処置を施したマウスにおける腫瘍体積とASO処置を施さなかったマウスにおける腫瘍体積との有意な差はなかった。各処置群には10匹のマウスが存在した。ASOをPBSに配合して皮下投与した。AbもPBSに配合して腹腔内(introperitoneally)投与した。実験の経過中、腫瘍の長さおよび幅をノギスで測定し、式 体積=(長さ×幅
2)
*π/6を使用して腫瘍体積を算出した。
【0289】
図2aに示すように、コントロールAbによる処置は腫瘍増殖に対して有意な効果がなかった。単剤としてのマウスSTAT3 ASOによる処置および抗PD−L1 Abによる処置は、腫瘍増殖に対して中程度の効果があった。STAT3 ASO+抗PD−L1 Abの組合せによる治療は、単剤治療と比べて抗腫瘍活性が大きかった。
【0290】
抗PD−L1 Abによる処置の前にSTAT3 ASOによる処置を開始した場合(ASO処置を2日目に開始し、Ab処置を9日目に開始した)には6匹/10匹のマウス(60%)で腫瘍退縮を観測したが、両方の処置を9日目に開始した場合にはわずか1匹/10匹のマウス(10%)で腫瘍退縮を観測した。
図2aは平均+/−SEMを示す。
図2bは、同時に投与した場合の組合せに関する個々の動物を示す。
図2cは、ASOを前投与した場合の組合せに関する個々の動物を示す。
【0291】
これらの結果は、チェックポイント阻害剤処置前にSTAT3 ASO処置を開始することにより抗腫瘍活性がより大きいことを示す。そのため、STAT3 ASO処置の免疫刺激効果がチェックポイント阻害剤での処置の時点で既に進行中であるようにすることは有益であると思われる。
【0292】
実施例3.マウス同系腫瘍モデルにおいて、マウスSTAT3 ASO治療の追加により、PD−L1を標的とする抗体およびCTLA−4を標的とする抗体ならびにOX40リガンド融合タンパク質の抗腫瘍活性が増強される
下記のチェックポイント阻害剤または免疫刺激剤を使用した:
抗マウスCTLA−4:クローン9D9、マウスIgG2bアイソタイプ。BioXCell、West Lebanon、NHから購入
抗マウスPD−L1:クローン10F.9G2、ラットIgG2bアイソタイプ。BioXCell、West Lebanon、NHから購入。
マウスOX40リガンド融合タンパク質(mIgG1FcmTF2mOX40LまたはOX40FP)を内製した。DNA配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号37および配列番号38で示す。
【0293】
PD−L1もしくはCTLA−4を標的とする抗体またはOX40リガンド融合タンパク質と組み合わせたマウスSTAT3 ASOの抗腫瘍効果を、3種のマウス同系腫瘍モデル:CT−26(結腸直腸)、4T1(乳房)およびA20(リンパ腫)で評価した。各モデルに関する腫瘍移植および治療スケジュールを下記表で詳述する。STAT3 ASO(実施例1で使用したのと同じASO)に関するQD×5/週の投与スケジュールは、5日間の処置(治療)に続いて2日間の処置なしであった。抗体に関する2×/週の投与スケジュールは、週の間に等間隔で離して2回の処置/週(例えば、月曜日および木曜日または火曜日および金曜日等)であった。処置群への無作為化の前にASO処置を開始した。無作為化時では、ASO処置を施したマウスにおける腫瘍体積とASO処置を施さなかったマウスにおける腫瘍体積との有意な差はなかった。各処置群には10匹のマウスが存在した。
【0294】
【表1】
【0295】
マウスSTAT3 ASOをPBSに配合して皮下投与した。AbおよびFPもPBSに配合して腹腔内(introperitoneally)投与した。実験の経過中、腫瘍の長さおよび幅をノギスで測定し、式 体積=(長さ×幅
2)
*π/6を使用して腫瘍体積を算出した。
【0296】
結果を
図3に示す。この実験で投与した用量およびスケジュールでは、抗PD−L1 Ab、抗CTLA−4 Ab、OX40リガンドFPおよびマウスSTAT3を標的とするASOは、弱から中程度の単剤抗腫瘍活性を有した。多くの場合では、マウスSTAT3 ASO処置の追加により、抗体処置およびFP処置の抗腫瘍活性が有意に増強された。ある特定の場合には、この効果は相乗的に現れた。PD−L1 Ab、CTLA−4 AbまたはOX40リガンドFPへのマウスSTAT3 ASOの追加により、CT−26モデルおよびA20モデルにおいて平均して腫瘍が停滞した、または退縮した。4T1モデルでは、マウスSTAT3 ASOプラスCTLA−4抗体の組合せにより腫瘍が退縮した。加えて、この組合せ治療により、いくつかの個々のマウスにおいて長期にわたる完全奏効(処置の終了後、数週間にわたり測定可能な腫瘍がない)がもたらされた(例えば、CT−26モデル、4T1モデルおよびA20モデルにおいてマウスSTAT3 ASO+CTLA−4 Abの組合せによるマウスの30%(3匹/10匹);A20モデルにおいてPD−L1組合せによる20%(2匹/10匹);およびA20モデルにおいてOX40組合せによる50%(5匹/10匹))。
【0297】
これらのモデルでの単剤に対する組合せ治療の抗腫瘍活性の増強は、複数種の腫瘍タイプにおいて、PD−L1を標的とする薬剤、CTLA−4を標的とする薬剤およびOX40を標的とする薬剤等の、使用したチェックポイント阻害剤または免疫刺激剤の活性を、STAT3を標的とするアンチセンス分子による処置が増強する可能性を示す。この組合せ活性は、STAT3 ASOによる処置が腫瘍中における抗腫瘍免疫浸潤物の増加をもたらす(実施例1)メカニズムと一致し、PD−L1およびCTLA−4を標的とする治療薬による治療により免疫チェックポイントがブロックされる場合またはOX40アゴニスト等の免疫刺激剤が使用される場合に腫瘍増殖の阻害の増強を可能にする。
【0298】
実施例4.CT−26腫瘍を担持するマウスにおいてコントロールASOおよびコントロール抗体による抗腫瘍活性を観測しない
実施例3でのCT−26実験に、陰性コントロールとして、コントロールASO(AZD9150)による処置およびアイソタイプコントロール抗体(ラットIgG2b、製品LTF−2、BioXCell、West Lebanon NHから購入)による処置を含めた。ヒトSTAT3を標的とするASO分子AZD9150はマウスSTAT3配列と交差反応しないことから、このAZD9150をマウス腫瘍モデルにおけるコントロールとして使用することができる。
図4に示すように、ならびに実施例2および3で説明したマウスを標的とするSTAT3 ASOによる活性とは対照的に、コントールASOによる処置では抗PD−L1抗体の活性の増強が生じなかった。これらの結果は、マウスSTAT3 ASOおよび抗PD−L1抗体の活性がこれらの薬剤の標的活性に対するものであることと一致する。
【0299】
実施例5.小分子JAK1阻害剤を使用するSTAT3阻害により免疫系が抑制される
CT−26マウス結腸腫瘍細胞(5×10
5個/マウス)を雌のBALB/cマウスに皮下移植した。移植の10日後、このマウスを4個の群(平均腫瘍体積122mm
3)に無作為化し、JAK1選択的小分子阻害剤(AZ−3;Woessner et al.,Proc.Am.Assoc.Cancer Res.54:931,2013)または賦形剤のいずれかで処置した。本明細書において今後はAZ−3をAZ−JAK1と称する。AZ−JAK1を水に配合し、11日にわたり100mg/kg BIDで経口投与した。11日目に、腫瘍を摘出してフローサイトメトリー分析用に処理した。各群からの腫瘍を分析前にプールし、低割合の細胞集団のフローサイトメトリーによる検出を可能にした。CD45+白血球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD11c+MHCII+樹枝状細胞およびCD11b+Gr1+骨髄系サプレッサー細胞を定量化した。
【0300】
JAK1選択的阻害剤による処置によってT細胞、樹枝状細胞および骨髄系サプレッサー細胞が減少しており(
図5)、このことは、この処置が、STAT3 ASOによる処置(
図1)とは対照的に広範囲な免疫抑制性であったことを示す。このデータは、JAK1(STAT3、更にSTAT1、4および6等のいくつかのSTATを介するシグナル伝達を阻害する)の阻害は広範囲な免疫抑制性であるが、STAT3を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドによるSTAT3の選択的阻害は抗腫瘍免疫応答を増強することができることを示す。
【0301】
実施例6.確立されたCT−26腫瘍を担持するマウスにおいて、JAK1阻害は抗PD−L1 Abおよび抗CTLA−4 Abの抗腫瘍活性を弱める
CT−26マウス結腸腫瘍細胞(5×10
5個/マウス)を雌のBALB/cマウスに皮下移植した。移植の14日後、このマウスを10個の群に無作為化し(腫瘍体積に基づく)、PBS賦形剤、100mg/kg BIDでのJAK1選択的小分子(AZ−JAK1)、1週間に2回の2.5mg/kgでの抗PD−L1抗体(クローン10F.9G2)、1週間に2回の1mg/kgでの抗CTLA−4抗体(クローン9D9)またはAZ−JAK1+抗PD−L1 AbもしくはAZ−JAK1+抗CTLA−4 Abの組合せのいずれかで処置した。AZ−JAK1を水に配合して経口投与した。抗体をPBSに配合して腹腔内投与した。処置開始時の平均腫瘍サイズは約140mm
3であった。実験の経過中、腫瘍の長さおよび幅をノギスで測定し、式 体積=(長さ×幅
2)
*π/6を使用して腫瘍体積を算出した。
【0302】
結果を
図6に示す。単剤としての抗PD−L1抗体による処置および抗CTLA−4抗体による処置は腫瘍増殖を阻害した。AZ−JAK1による処置によって、賦形剤コントロールと比較して平均腫瘍増殖率がわずかに増加した。抗PD−L1 Abまたは抗CTLA−4 AbへのAZ−JAK1の追加により抗体の抗腫瘍活性が弱められ、単剤ZA−JAK1の腫瘍増殖率と類似の腫瘍増殖率となった。全ての処置(治療)は良好な耐容性を示し、治療中に顕著に表だった徴候はなかった。全ての群において、処置終了時のマウスの平均体重は処置の開始時の平均体重と比べて大きかった。
【0303】
STAT3 ASOの追加による抗PD−L1活性または抗CTLA−4活性の増強(
図2および
図3)対JAK1阻害剤の追加による抗体活性の拮抗(
図6)は、STAT3阻害のメカニズムに左右される異なる効果(STAT3 ASO処置によるSTAT3タンパク質の選択的減少対複数種のSTAT(例えばSTAT1、3、4および6)により媒介されるシグナル伝達のJAK1阻害剤での処置による阻害)を示す。
【0304】
STAT3 SAO処置の免疫刺激および抗腫瘍活性(
図1〜3)対AZ−JAK1による抗PD−L1 Ab活性および抗CTLA−4 Ab活性の免疫抑制および拮抗(
図5および
図6)は、STAT3 ASO+抗PD−L1 Ab処置の組合せ活性が直接的で選択的なSTAT3阻害に左右され、JAK1阻害等のJAK/STATシグナル伝達の阻害のためのその他のアプローチに置き換えられ得ない(および実際には弱められ得ない)ことを示す。
【0305】
実施例7.STAT3 ASO処置によるCT−26腫瘍中におけるおよび血液中におけるSTAT3ノックダウンを示すデータ
STAT3を標的とするASOによるSTAT3のmRNAのノックダウンを確認するために、皮下CT−26腫瘍を担持するマウスを、賦形剤、マウスSTAT3 ASO(実施例1で使用したのと同じASO、QD、3.5週にわたり50mg/kg)、抗PD−L1 Ab(抗マウスPD−L1:クローン10F.9G2、ラットIgG2bアイソタイプ、2×/週、3.5週にわたり2.5mg/kg)またはSTAT3 ASOプラス抗PD−L1 Abの組合せで処置し、実験の終了時に血液サンプルおよび腫瘍サンプルを採取してSTAT3のmRNAのレベルに関して分析した。各処置群における4匹のマウスからサンプルを採取し、qRT−PCR分析用に処理した。血液をPaxgene試薬中に採取し、キットの指示書(Qiagen、カタログ番号762164)に従ってRNAを調製した。腫瘍をRNAlater(Qiagen)中に採取し、qRT−PCR分析用にキットの指示書(Qiagen、カタログ番号74104)に従って処理してRNAを得た。qRT−PCRにより測定したSTAT3のmRNAレベルを、各サンプル中のGAPDHmRNAの量に対して正規化した。プライマー/プローブセットをABIから購入した:マウスSTAT3に関してカタログ番号4331182、マウスGAPDHに関してカタログ番号4352339E。
【0306】
STAT3 ASO処置後の血液中におけるおよび腫瘍中におけるSTAT3のmRNAノックダウンはそれぞれ、53%および70%であった(
図7)。PD−L1 Ab+STAT3 ASOで処置したマウスにおけるSTAT3のmRNAノックダウンとSTAT3 ASOのみで処置したマウスにおけるSTAT3のmRNAノックダウンとの有意な差はなかった。
【0307】
実施例8.AZD9150で処置したDLBCL患者における遺伝子発現変化
処置の開始前におよび処置を開始してから4〜6週後にAZD9150で処置したがん患者からのフェーズI臨床試験で腫瘍生検を採取した。第1週の1日目、3日目および5日目に、患者に3種の負荷用量2または3mg/kgのAZD9150を投与し、続いて週量を投与した。生検のセットの内の9種はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者由来であり、2種は濾胞性リンパ腫を有する患者由来であり、1種は非小細胞肺がんを有する患者由来であった。これらの生検をホルマリンで固定してパラフィン包埋し、薄片を作成した。RNAを各生検の6枚の5ミクロン薄片から単離し、594種の免疫関連遺伝子を表すnCounter Human Immunology Codesetを使用するNanostring遺伝子発現プロファイリング分析にかけた。生データをVeldman−Jones他(Cancer Research.75:2587,2015)に従って較正し、ベースラインである処置前サンプルと比較した処置時の変化に関して分析した。DLBCLにおいて最大のおよび最も統計的に関連する遺伝子発現変化の教師なしクラスタリングを表すヒートマップを作成した。AZD9150により上方制御される遺伝子の中には、PD1を標的とする治療用の抗体であるペンブロリズマブの臨床的利益と関連すると報告されている「インターフェロンガンマ遺伝子シグネチャー」を含む6種の遺伝子の内の5種がある(Plimack et al,J Clin Oncol 33,2015(suppl;abstr 4502))。これら5種のAZD9150により上方制御される「インターフェロンガンマ遺伝子シグネチャー」遺伝子は、STAT1、IFN−ガンマ、CXCL9、CXCL10およびIDOであった。これらのデータは、患者のAZD9150処置後の腫瘍微小環境中における免疫調節を示し、AZD9150処置により患者の腫瘍がPD(L)1を軸とする治療(PD(L)1 axis therapy)に対してより応答することができることを示唆する。
【0308】
実施例9.有望な組合せの試験
MEDI4736およびAZD9150の組合せに関する安全な用量を確立するために、およびいずれかの治療薬のみに対する優れた臨床的応答率に関して試験するために、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)においてこれらの組合せの臨床試験を計画する。適応症を、SCCHNにおける単剤治療MEDI4736またはDLBCLにおけるAZD9150治療もしくは抗PD1治療に対する以前の臨床試験における臨床応答の実証に基づいて選択した。
【0309】
AZD9150を生理食塩水に配合し、処置の1日目、3日目、5日目におよびその後は毎週、注入により投与することができる。MEDI4736を生理食塩水に配合し、最初のAZD9150投与と同時に開始してまたはAZD9150負荷用量フェーズを可能にするためにAZD9150投与の1週、2週もしくは更なる週の後のいずれかで、静脈内中により2週間に1回投与することができる。
【0310】
実施例9a:頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)試験
この研究での対象には、18歳以上であること、およびResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)ガイドラインv1.1に従って測定可能な少なくとも1種の病変を有する組織学的にまたは細胞学的に確認されたSCCHNを有することが求められる。
【0311】
SCCHN試験の設計
この研究は、RECIST基準を使用して、単剤治療に対する抗PD−L1抗体(MEDI4736)とSTAT3 ASO(AZD9150)との組合せの用量、安全性および優れた有効性を確立するための、この組合せ対AZD9150のみの非盲検フェーズ1/2研究である。
【0312】
フェーズ1a:安全性およびフェーズ1bの用量を確立するために、対象の小規模のコホート(例えば6例)に、最大で3mg/kgのAZD9150(3mg/kgで開始し、安全性の問題がある場合にはより少量)と3または10mg/kgのMEDI4736との組合せを投与することができる。
【0313】
フェーズ1b:最大で50例の患者に、フェーズ1aで確立したAZD9150+MEDI4736の用量を投与することができ、最大で50例の患者に、この組合せで使用したのと同じ用量でAZD9150のみを投与することができる。SCCHNにおけるMEDI4736の以前の臨床試験からのMEDI4736単剤治療応答率を、この組合せ治療に対する別のコンパレータとして使用することができる。
【0314】
臨床応答と関連付けるために、全ての対象に関してPDL−1腫瘍発現のベースラインレベルを得ることができる。加えて、臨床応答との相関を評価するために、免疫表現型検査により、いくつかの循環白血球集団(例えば骨髄系由来サプレッサー細胞MDSC)をモニタリングすることができる。
【0315】
成功を、AZD9150とMEDI4736との組合せの、全患者集団における推奨される単剤治療用量でのいずれかの薬剤に対する優れた応答率または延命効果として、またはバイオマーカーで定義されるサブセットとして定義する。
【0316】
実施例9b:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)試験
この研究での対象には、18歳以上であること、およびInternational Working Group(IWG)基準に従って測定可能な少なくとも1種の病変を有する組織学的にまたは細胞学的に確認されたDLBCLを有することが求められる。適格患者は、自家幹細胞移植(ASCT)に失敗していなくてはならない、または少なくとも2回の事前の多剤化学療法レジメンを有していなければならない、およびASCTの候補者であってはならない。
【0317】
DLBCL試験の設計
この研究は、IWG基準を使用して、単剤治療に対する抗PD−L1抗体(MEDI4736)とAZD9150との組合せの用量、安全性および優れた有効性を確立するための、この組合せ対MEDI4736のみの非盲検フェーズ1/2研究である。
【0318】
フェーズ1a:安全性およびフェーズ1bの用量を確立するために、対象の小規模のコホート(例えば6例)に、最大で3mg/kgのAZD9150(3mg/kgで開始し、安全性の問題がある場合にはより少量)と3または10mg/kgのMEDI4736との組合せを投与することができる。
【0319】
フェーズ1b:最大で50例の患者に、フェーズ1aで確立したAZD9150+MEDI4736の用量を投与することができ、最大で50例の患者に、この組合せで使用したのと同じ用量でMEDI4736のみを投与することができる。DLBCLにおけるAZD9150の以前の臨床試験からのAZD9150単剤治療応答率を、この組合せ治療に対する別のコンパレータとして使用することができる。
【0320】
臨床応答と関連付けるために、全ての対象に関してPDL−1腫瘍発現のベースラインレベルを得ることができる。加えて、臨床応答との相関を評価するために、免疫表現型検査により、いくつかの循環白血球集団(例えば骨髄系由来サプレッサー細胞MDSC)をモニタリングすることができる。
【0321】
成功を、AZD9150とMEDI4736との組合せの、全患者集団における推奨される単剤治療用量でのいずれかの薬剤に対する優れた応答率または延命効果として、またはバイオマーカーで定義されるサブセットとして定義する。
【0322】
その他の実施形態
上述の説明から、本明細書で説明した本発明を様々な用途および条件に採用するために本発明に変更および改変を行なうことができることは明らかであるだろう。そのような実施形態も下記の特許請求の範囲内である。
【0323】
本明細書における変数のあらゆる定義における要素のリストの列挙には、任意の単一の要素または列挙された要素の組合せ(もしくは部分的組合せ)としての変数の定義が含まれる。本明細書における実施形態の列挙には、任意の単一の実施形態または任意のその他の実施形態もしくはこの一部との組合せとしての実施形態が含まれる。
【0324】
本明細書で言及した全ての特許および刊行物は、それぞれの独立した特許および刊行物が参照により援用されると具体的におよび個々に示されたのと同程度に参照により本明細書に援用される。
【0325】
下記の更なる態様を提供する。
1.(i)抗PD−L1抗体またはこの抗原結合断片と(ii)STAT3を標的とするアンチセンス化合物とを、それによる治療を必要とする患者に投与することを含む治療方法。
【0326】
2.PD−L1抗体が、MEDI4736、MPDL3280A、BMS936559、2.7A4、AMP−714およびMDX−1105から選択される、態様1に記載の方法。
【0327】
3.PD−L1抗体がMEDI4736である、態様2に記載の方法。
【0328】
4.STAT3を標的とするアンチセンス化合物がSTAT1、STAT4またはSTAT6を阻害しない、態様1に記載の方法。
【0329】
5.STAT3を標的とするアンチセンス化合物がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、態様1に記載の方法。
【0330】
6.STAT3を標的とするアンチセンス化合物がAZD9150である、態様1または5に記載の方法。
【0331】
7.患者ががんを有する、態様1に記載の方法。
【0332】
8.がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)をはじめとする肺がん、三種陰性(triple negative)をはじめとする乳がん、漿液性をはじめとする卵巣がん、膵がん、結腸直腸がん、肝細胞癌(HCC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)をはじめとする頭頸部がん、およびびまん性大細胞型B細胞癌(DLBCL)をはじめとするリンパ腫から選択される、態様7に記載の方法。
【0333】
9.がん細胞がPD−L1を発現する、態様8に記載の方法。
【0334】
10.前記治療を必要とする患者が、PD−L1陽性であるがんを有すると同定された、態様1に記載の方法。
【0335】
11.抗PD−L1抗体がMEDI4736であり、STAT3を標的とするアンチセンス化合物がAZD9150である、態様1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【0336】
12.約1mg/kg〜20mg/kgのMEDI4736またはこの抗原結合断片と約1mg/kg〜10mg/kgのAZD9150とを、その治療を必要とする患者に投与する、態様11に記載の方法。
【0337】
13.その治療を1週毎に、2週毎に、3週毎にまたは4週毎に投与する、態様12に記載の方法。
【0338】
14.1回の用量当たり、約1mg/kgのMEDI4736またはこの抗原結合断片と約3mg/kgのAZD9150とを投与する、態様1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【0339】
15.前記方法が、MEDI4736のみまたはAZD9150のみのいずれかの投与と比較して無増悪生存期間および/または全生存期間の増加をもたらす、態様1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【0340】
16.MEDI4736またはこの抗原結合断片の投与が静脈内注入による、態様2〜15のいずれか一つに記載の方法。
【0341】
17.AZD9150の投与が静脈内注入による、態様4〜16のいずれか一つに記載の方法。
【0342】
18.AZD9150とMEDI4736またはこの抗原結合断片を同時にまたは異なる時間で投与する、態様2〜15のいずれか一つに記載の方法。
【0343】
19.がんを治療するためのキットであって、MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150とを含むキット。
【0344】
20.MEDI4736またはこの抗原結合断片とAZD9150とを、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物。
【0345】
21.医薬組成物が、MEDI4736またはこの抗原結合断片の約1mg/kg〜約20mg/kgの用量とAZD9150の約1mg/kg〜約10mg/kgの用量とを与えるように製剤化されている、態様20に記載の医薬組成物。
【0346】
22.医薬組成物が、MEDI4736またはこの抗原結合断片の約1mg/kgの用量とAZD9150の約3mg/kgの用量とを与えるように製剤化されている、態様21に記載の医薬組成物。
【0347】
23.ヒトのような温血動物において免疫浸潤細胞を調節する方法であって、前記動物に、有効な量のMEDI4736またはこの抗原結合断片を、有効な量のAZD9150の前に、有効な量のAZD9150の後にまたは有効な量のAZD9150と同時に投与することを含む方法。