(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537071(P2017-537071A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20171117BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20171117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20171117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20171117BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20171117BHJP
A61P 5/50 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
A61K45/00
C07K16/18
A61K39/395 N
A61P3/10
A61P1/18
A61P5/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-522350(P2017-522350)
(86)(22)【出願日】2015年10月23日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月24日
(86)【国際出願番号】CN2015092770
(87)【国際公開番号】WO2016062282
(87)【国際公開日】20160428
(31)【優先権主張番号】62/068,475
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517141661
【氏名又は名称】法▲瑪▼科技▲顧▼▲問▼股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】517141672
【氏名又は名称】▲陳▼ 肇文
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 肇文
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲てぃん▼▲てぃん▼
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZC351
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA14
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4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
【課題】糖尿病患者の膵臓機能を保護する医薬組成物を製造するのに用いられるマクロファージ炎症性タンパク質_1β抑制剤の使用方法を提供する。
【解決手段】マクロファージ炎症性タンパク質−1β(MIP−1β)抑制剤は、膵臓を保護し、インシュリンの分泌を維持し、血糖値の上昇を防止する効果を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病患者の膵臓機能を保護する医薬組成物を製造するのに用いられるマクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤の使用方法であって、
前記医薬組成物は、糖尿病患者の膵臓機能を保護し、糖尿病患者の膵島細胞の損傷を防ぐことを含むことを特徴とする、マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤の使用方法。
【請求項2】
前記医薬組成物は、糖尿病患者のインシュリン分泌を維持するのに用いられることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記医薬組成物は、糖尿病患者の血糖値の上昇を防止するのに用いられることを特徴とする、請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質_1βの生物活性を低減または抑制することを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βに対して特異的な結合性を有するリガンド化合物であることを特徴とする、請求項1または4に記載の使用方法。
【請求項6】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質_1βに反応する抗体であることを特徴とする、請求項5に記載の使用方法。
【請求項7】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βまたはそのフラグメントに対して特異的に結合しマクロファージ炎症性タンパク質−1βに反応する単クローン抗体であることを特徴とする、請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1βに反応する単クローン抗体は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βの構造のメイン機能性部位と結合することを特徴とする、請求項7に記載の使用方法。
【請求項9】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1βに反応する単クローン抗体は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βの46〜54:SFVMDYYET(SEQ ID NO:1)に位置するアミノ酸配列を含むペプチド類フラグメントと結合することを特徴とする請求項7または8に記載の使用方法。
【請求項10】
前記マクロファージ炎症性タンパク質−1βに反応する単クローン抗体は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βの62〜74:AVVFLTKRGRQIC(SEQ ID NO:2)に位置するアミノ酸配列を含むペプチド類フラグメントと結合することを特徴とする請求項7または8に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2014年10月24日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第62/068475号に基づくアメリカ仮特許申請の優先権を主張する。その全部の内容が本発明に引用されている。
【0002】
本発明は、膵臓を保護するマクロファージ炎症性タンパク質−1β(MIP−1β)抑制剤の使用方法に関し、特に、糖尿病患者のインシュリンの分泌の維持、および血糖値の異常上昇を防止するMIP−1βの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、糖尿病患者の数は、全世界またはアジア諸国、特に、台湾を含む中国、日本、インドで毎年増加している。台湾の二型糖尿病患者人数は、全人口の10%に近づいており、増加中である。よって、糖尿病治療薬の研究は、緊迫な需要がある。現在知られている糖尿病の血糖上昇メカニズムは、インシュリン抵抗が上昇すること(二型糖尿病)、および、膵臓細胞が炎症により損害されること(一型糖尿病および二型糖尿病)であり、膵臓のインシュリン分泌の不足により、外部から摂取される糖分や、体内で生成される糖分が低下することにより起こりえる。
【0004】
現在、臨床の糖尿病の血糖制御は、主に膵臓がインシュリンを分泌することを刺激すること(二型糖尿病の治療)、外部組織のインシュリン抵抗を低減させること(二型糖尿病の治療)、腸の糖分摂取を低減させること(二型および二型糖尿病の治療)、尿液の糖分の排出を増加すること(二型および二型糖尿病の治療)などのメカニズムを有する。
しかし、一型または二型糖尿病のいずれも、結果的に膵臓細胞が炎症を発生して壊れ、インシュリンの分泌が著しく不足するため、インシュリンの注射または吸入で治療を補助する必要がある。その主な原因は、現存または開発中の薬は、膵臓(膵臓細胞)を直接的に保護し、その損傷を回復または軽減することができず、インシュリンの分泌を維持することができないためである。
よって、本発明は、人の膵臓を保護することで、膵臓細胞の炎症および損害を改善する治療方法で、糖尿病患者の血糖が上昇する薬を開発する。
【0005】
マクロファージ炎症性タンパク質−1β(Macrophage inflammatory protein-1β、MIP−1β、他の文献ではCCL4とも呼ばれる)は、CCサイトカインのファミリーである。最初にリポ多糖により活性化されたマクロファージ培養液から分離されており(非特許文献1)、分子量が7.8キロダルトンであり、タンパク質構造が92個のアミノ酸前駆体により構成されている。DM(高血糖症)及び心血管患者の中でMIP−1βが増量調節されることが観察されている(非特許文献2、3)。
【0006】
MIP−1βは、細胞表面上のCCサイトカイン受容体(CCR、G−タンパク質−カップリング型受容体スーパーファミリーに属する)と結合することにより、生物化学機能を実行する。マクロファージ炎症性タンパク質−1βの受容体は多く存在する。その中のCCR5は主な生理的及び病理的作用を有すると認められており、我々が使用するマクロファージ炎症性タンパク質−1βの単クローン抗体はCCR5に拮抗かつ制御する作用を有する。
糖尿病を有する動物モデルで行った研究によると、膵臓中のCCR5の発現は膵炎及び自発性一型糖尿病の発展と関連する(非特許文献4)。また、二型糖尿病を有するラットの頸部神経節中にCCR5が増加する現象が見られる。しかし、このデータは、異なる動物モデルの中で得られた結果が一致していない。報告によると、糖尿病(NOD)を有する11−13週のマウスモデルの中で、CCR5抗体でCCR5結合のブロッキングまたはCCR5の欠陥に至る。自体免疫の一型糖尿病の発生を防止することができず加速させる(非特許文献5、6)。
【0007】
文献によると、血液中のマクロファージ炎症性タンパク質_1βの数値は、糖尿病及び心臓血管疾患と正相関を有する。よって、発明者は、糖尿病患者の膵島の炎症破壊に対し、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1を抑制することで、膵臓を保護し炎症を改善し、インシュリンの分泌を維持し、血糖をコントロールする新しい治療方法を発展させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lodi P.J. 等, Science 263: 1762-1767, 1994
【非特許文献2】Tatara, Y. 等, J Mol Cell Cardiol 47:104-111,2009
【非特許文献3】Mirabelli-Badenier, M. 等, Thromb Haemost 105:409-420, 2011
【非特許文献4】Cameron MJ等, J Immunol 165:1102-1110, 2000
【非特許文献5】Gonzalez P等, Genes Immun 2:191-195, 2001
【非特許文献6】Simeoni E等, Eur Heart J 25:1438-1446, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、一型及び二型糖尿病を有する動物モデルで、(例えば単クローン抗体等の方法により、)直接に体内のマクロファージ炎症性タンパク質−1βを抑制することである。これにより、膵臓を保護し、インシュリンの分泌を維持し、血糖値の継続的な上昇を防止する効果を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、糖尿病患者の膵臓機能を保護する医薬組成物を製造するのに用いられるマクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤の使用方法である。医薬組成物は、糖尿病患者の膵臓機能を保護し、糖尿病患者の膵島細胞の損傷を防ぐことを含む。
また、医薬組成物は、糖尿病患者のインシュリン分泌を維持するのに用いられる。
また、医薬組成物は、糖尿病患者の血糖値の上昇を防止するのに用いられる。
【0011】
本発明の実施の態様によると、マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βの生物活性を低減または抑制する。
マクロファージ炎症性タンパク質−1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質−1βに対して特異的な結合性を有するリガンド化合物である。
マクロファージ炎症性タンパク質_1β抑制剤は、マクロファージ炎症性タンパク質_1βに反応する抗体または拮抗剤である。
【0012】
本発明の実施の態様によると、マクロファージ炎症性タンパク質−1βに反応する抗体は単クローン抗体または多クローン抗体である。
本発明の他の実施の態様によると、マクロファージ炎症性タンパク質−1βに反応する抗体は単クローン抗体、または、マクロファージ炎症性タンパク質−1βの少なくともペプチド類フラグメントと結合する抗体フラグメントである。
発明の他の実施の態様によると、マクロファージ炎症性タンパク質_1βのペプチド類フラグメントは、アミノ酸配列46SFVMDYYET54(SEQ ID NO:1)、または62AVVFLTKRGRQIC74(SEQ ID NO:2)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】MIP−1β抑制剤が一型糖尿病マウス膵臓に対する保護作用を示す図である。単クローン抗体(mAb)で体内のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βの活性を抑制し、血液中のインシュリン量を効果的に上昇させることが示されている。
【
図2】一型糖尿病動物モデルの膵臓組織がストレプトゾトシン(STZ)の誘導を受け炎症が発生する状態を切片及び染色後に観察する結果を示す図である。赤マーカーは膵島細胞である。
【
図3】正常のマウス(非−DM対照組)及び二型糖尿病を有するマウスの血液中のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βタンパクの含有量を示す図である。
【
図4】一型糖尿病動物モデルの膵臓組織がストレプトゾトシン(STZ)の誘導を受け炎症が発生する状態を切片染色観察する結果を示す図である。赤マーカーは膵島細胞である。
【
図5】ウェスタンブロット法(Western blot)と統計学分析を示す図である。マウスの膵臓の中のIL6及びIL8の含量(n=3)を測定し、#P<0.05,##P<0.01は正常の対照組マウスと比較した結果であり、*P<0.05,**P<0.01は抗体処理されていないDMマウスと比較した結果である。
【
図6A】異なるSTZ(または)で処理する間、培養液の中のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βの濃度が膵島細胞(NIT−1)NIT−1の細胞増殖にしたがって増加する状況を示す。
【
図6B】MTTにより異なる容量のSTZ(STZ 1.5,STZ 3)が膵島細胞(NIT−1細胞)に対する毒性の評価を示す図である。単クローン抗体(mAb)でSTZによる損害を低減し、NIT−1細胞の増殖(n=3)を回復させる。
【
図7】NIT−1細胞培養上澄み液中のインシュリンの分泌量(n=6)を示す図である。#P<0.05,##P<0.01は、いずれの処理もされていない対照組NIT−1の細胞に比べ著しい差異を有し、*P<0.05,**P<0.01は、同じ濃度のSTZで処理されたNIT−1細胞に比べ著しい差異を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中の「マクロファージ炎症性タンパク質−1β(MIP−1β)抑制剤」の意味は、MIP−1βタンパク質含量を減少させる、及び/又は、MIP−1βタンパク質の少なくとも一つの活性を低下させる化合物をいう。本発明の実施形態では、MIP−1β抑制剤化合物は、MIP−1βタンパク質の少なくとも一つの活性を10%、25%、50%、75%またはそれ以上低下させることができる。
【0015】
本発明の実施形態によると、MIP−1β抑制剤化合物は、MIP−1βタンパク質の発現量を低減することで、膵臓を保護し血糖の上昇を防止する。例えば、MIP−1βを標的とするsiRNA、アンチセンス核酸、リボザイムを使用し、細胞内のMIP−1βの遺伝子発現を抑制することができる。また、MIP−1βタンパク質をコーディングする遺伝子転写を調節すること、または、対応するmRNAを不安定となるようにすることでMIP−1βタンパク質の発現量を減少させることができる。
【0016】
本発明の実施形態によると、MIP−1β抑制剤化合物は、MIP−1βタンパク質と結合することにより、直接または間接にMIP−1βタンパク質の生物活性を抑制し、膵臓を保護し、血糖の上昇を防止する。例えば、本発明の実施例によると、MIP−1βに反応する抗体とMIP−1βタンパクを競争させ、細胞表面上の受容体に結合させることで、MIP−1βタンパク質の生物活性を抑制することができる。抗体は、全長の単クローン抗体、多クローン抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、及び、抗体フラグメントを含む。
【0017】
本明細書中の「抗体」の意味は、特定の抗原と特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子またはそのフラグメントを指す。抗体フラグメントは、抗体全長の一部を含み、好ましくは、抗体の抗原結合領域または可変領域である。
抗体フラグメントは、以下の例を含む。
Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fv(代表的なのは抗体のシングルハンドルのVL及びVHの機能領域である)、単鎖Fv(scFv)、dsFv、Fdフラグメント(代表的なのはVH及びCH1機能領域である)、及びdAbフラグメント(代表的なのはVH機能領域である);
VH、VL、及びVhH機能領域;
微抗体(minibodies)、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、及びkappa抗体(参考文献、Ill等, Protein Eng 10: 949-57, 1997);
駱駝IgG;
一つまたは複数の単離されたCDRsまたは一つの機能性パラトープ(paratope)により形成される多特異性抗体フラグメント、その中で、単離された、または、抗原結合残基またはペプチドは、互いに結合またはリンキングし、機能性の抗体フラグメントを形成する。
【0018】
本発明の実施形態によると、MIP−1β抑制剤はMIP−1β?タンパクと特異的に結合する単クローン抗体である。
本発明の一つの詳細な実施形態によると、MIP−1βに反応する単クローン抗体はMIP−1βタンパクの構造上の主な機能性部位と結合する。
本発明の実施例によると、MIP−1β抑制剤(例えば、MIP−1βに反応する単クローン抗体)は、MIP−1βタンパクのアミノ酸配列位置6〜54:SFVMDYYET(SEQ ID NO:1)、または、MIP−1βタンパクのアミノ酸配列位置62〜74:AVVFLTKRGRQIC(SEQ ID NO:2)を含む抗原決定基と結合することができる。
【0019】
本発明の実施例によると、抗体はヒト化または完全ヒト抗体である。
本発明の医薬組成物によると、少なくとも一つのMIP−1β抑制剤または一つまたは複数の生理上受けられる担体、希釈剤、または賦形剤を含む。選ばれた投薬経路によって、適切な医薬組成物の形を調合することができる。経口製剤の場合、錠剤、カプセル、粉末などを含み、消化器を経由しない製剤の場合、皮下、筋肉、または腹膜内注射液、及び、投薬する前に生理緩衝溶液と組み合わせた冷凍乾燥粉末などを含む。
【0020】
本発明のほかの特徴及び長所は、以下の実施例の中で例示して説明する。下記の実施例は補助説明のためであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0021】
[実施例一:MIP−1β抑制剤による一型糖尿病動物(ストレプトゾトシン(STZ)の誘導を受けた糖尿病マウスモデル)の膵臓保護及び血糖値上昇の防止]
生体実験期間において実験マウスの血糖濃度を監視及び測定する。結果を表1に示す。ストレプトゾトシン(STZ)の誘導を受けた一型糖尿病マウスモデルは、足部血管閉塞手術(OP)を行ったか否かに関わらず、血糖値の増加が著しい。しかし、MIP−1β中和抗体を4週間注射したマウスは、足部血管閉塞手術(OP)を行ったか否かに関わらず、血糖値が上昇せず、下降する傾向を有することがわかる。
【0023】
図1の血清インシュリン測定結果が示すように、ストレプトゾトシン(STZ)の誘導を受けた一型糖尿病マウスは、正常の対照組マウスに比べ、血清インシュリン濃度が著しく下降している。血糖値の高い糖尿病動物において、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βの単クローン抗体(mAb)を4週間注射した後、処理を受けてない糖尿病マウスに比べ、血液中のインシュリンの量を効果的に高めることができ、血糖値をコントロールし、血糖値の濃度が再び上昇させない。
【0024】
また、切片かつ染色により膵臓組織の炎症状態を観察した結果、血糖値の高い糖尿病動物(DM組)では、膵臓中の膵島細胞は損害により数が著しく減少する(赤色のマーカーは膵島細胞である)。単クローン抗体(mAb)を注射することで体内のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βに対抗する糖尿病動物(DM+mAb組)では、膵島細胞が炎症により損害することを防止し、膵島細胞の形を部分的に維持することができ、膵臓を保護する効果を達成する(
図2)。
【0025】
[実施例二:MIP−1β抑制剤による二型糖尿病動物(Leprdb/db マウスモデル)に対する膵臓保護及び血糖値上昇の防止]
図3に示すように、正常の動物に比べ二型糖尿病動物の血液中のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βの量が高い。血糖値の高い動物の中で、足部血管閉塞手術(OP)を行ったか否かに関わらず、単クローン抗体(mAb)を注射し、体内のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βに対抗することで、血糖値が再び上昇しないよう有効にコントロールすることができる(表2)。
【0027】
さらに、切片かつ染色により膵臓組織の炎症状態を観察した結果、糖尿病マウスの膵島細胞の損傷が著しい(赤色のマーカーは膵島細胞である)。血糖値の高い二型糖尿病マウスでは、単クローン抗体(mAb)を注射し、体内のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βに対抗した後、部分的に膵島細胞の形を回復させることができる。マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1β中和抗体で膵臓を保護し、膵島細胞が破壊されることを防止し、膵臓がインシュリンを分泌し、血糖を調節する正常な機能を維持することができることを示す。
上述の結果が示すように、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを抑制する機能により、膵臓を保護する効果が生じる。
【0028】
[実施例三:MIP−1β抑制剤が膵島細胞の損傷(ストレプトゾトシン(STZ)の誘導を受けた膵臓細胞損傷モデル)を防止することに対する保護作用]
MIP−1β抑制剤の保護作用をさらに調べるために、ウェスタンブロット法(Western blotting)で膵臓中の炎症性タンパク質の含有量を測定する。
図5の結果が示すように、血糖値の高い糖尿病動物では、単クローン抗体(mAb)を注射し、体内のマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βに対抗することで、膵臓(膵島)の炎症性物質を有効に抑制することができる。例えば、インターロイキン−6(IL−6)及びインターロイキン−8(IL−8)の発現。よって、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを抑制することで、膵島細胞を保護することができ、ストレプトゾトシンがそれに対する炎症反応を低減することができる。
【0029】
インビトロの細胞研究も行い、MIP−1β抑制剤が体内の膵島細胞の損傷を防止する効果を模擬した。NIT−1細胞を96−孔培養皿に接種し、一晩インキュベートする。接種濃度は1×10
5細胞/孔とする。前述の前培養を行ってから、STZ(0、0.75、1.5、3、6mM)を入れ、細胞とともに24時間培養する。STZがNIT−1細胞に対する細胞毒性をMTTで測定する。NIT−1細胞をSTZにより24時間処理し、無添加、低使用量(0.3μg/ml)、または高使用量(30μg/ml)のMIP−1β抗体(R&D system)で4時間処理する。MTTによりNIT−1細胞の増殖状況を分析評価する。結果を
図6に示す。
【0030】
図6Aのデータが示すように、NIT−1細胞研究において、ストレプトゾトシン(STZ 1.5,STZ 3)は、膵島細胞(NIT−1)がマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを生成するよう膵島細胞(NIT−1)を刺激し、培養液の中においてストレプトゾトシンの濃度の増加にしたがってマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βの濃度が増加する。マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βの濃度が増加するこの現象は薬−単クローン抗体(mAb)を投与することによって抑制される。
【0031】
図6Bのデータが示すように、ストレプトゾトシン(STZ 1.5,STZ 3)が膵島細胞(NIT−1)に対する毒性は、ストレプトゾトシンの使用量の増加に従って増加する。単クローン抗体(mAb)で、細胞が生成するマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを対抗することで、ストレプトゾトシン(STZ 1.5,STZ 3)が膵島細胞(NIT−1)に対する数の抑制及び破壊作用を直接かつ有効に改善することができる。よって、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを抑制することで、直接に膵島細胞を保護することができ、ストレプトゾトシンが膵島細胞に対する傷害を軽減することができる。
【0032】
細胞研究の結果が示すように、ストレプトゾトシン(STZ 1.5,STZ 3)は膵島細胞(NIT−1)がインシュリン(insulin)を分泌することを抑制する。この抑制作用は、使用量の増加に従って増加する。単クローン抗体(mAb)で、細胞が生成するマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを対抗することで、ストレプトゾトシン(STZ 1.5,STZ 3)によるインシュリンの分泌作用を有効に改善することができる。よって、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)−1βを抑制することで、直接に膵島細胞を保護し、ストレプトゾトシンがそれに対する傷害を低減し、インシュリンの分泌を回復させることができる(
図7)。
【0033】
上述の実施例の結果によると、マクロファージ炎症性タンパク質−1βを直接抑制し(例えば、単クローン抗体または拮抗剤などの方法)、膵臓機能を保護し、膵島細胞の炎症を低減することで、インシュリンの正常な分泌を維持し、糖尿病感謝の血糖をコントロールすることができる。
【国際調査報告】