特表2017-537092(P2017-537092A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-537092クロロゲン酸結晶形を含む製剤およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537092(P2017-537092A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】クロロゲン酸結晶形を含む製剤およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/222 20060101AFI20171117BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20171117BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20171117BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20171117BHJP
   C07C 69/732 20060101ALN20171117BHJP
【FI】
   A61K31/222
   A61K9/19
   A61K9/20
   A61P39/06
   A61P37/02
   A61P35/00
   A61P1/16
   A61P9/00
   A61P31/12
   A61P17/06
   C07C69/732 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-527880(P2017-527880)
(86)(22)【出願日】2015年11月18日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月21日
(86)【国際出願番号】CN2015094869
(87)【国際公開番号】WO2016082703
(87)【国際公開日】20160602
(31)【優先権主張番号】201410680646.9
(32)【優先日】2014年11月24日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516331498
【氏名又は名称】スーチョアン チウチャン バイオロジカル サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン チエ
(72)【発明者】
【氏名】チュー リナ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャン リャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA36
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC35
4C076CC40
4C076DD24A
4C076DD24S
4C076DD26A
4C076DD38A
4C076DD67A
4C076EE16B
4C076EE31A
4C076EE32B
4C076EE38A
4C076FF02
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF13
4C076FF51
4C206AA02
4C206AA10
4C206DB20
4C206DB56
4C206KA01
4C206KA16
4C206KA17
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA64
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA11
4C206ZA36
4C206ZA75
4C206ZB07
4C206ZB26
4C206ZB33
4C206ZC37
4H006AA03
4H006AB20
4H006BJ50
4H006BN20
4H006BN30
4H006BS20
4H006KC14
(57)【要約】
クロロゲン酸結晶形を含む製剤であって、前記結晶形は斜方晶系であり、空間群はP2であり、単位格子パラメータはa=7.7291(2)Å、b=10.9808(2)Å、c=36.5334(7)Å、α=β=γ=90.00°、Z=8であり、単位格子の体積は3100.65(11)Åである。前記製剤中のクロロゲン酸結晶形の含有量は、10〜5000mg/gである。前記製剤は、バイオアベイラビリティに有益であり、腫瘍や乾癬等の免疫系疾患の治療、抗酸化、肝臓保護と利胆、心血管疾患の治療、抗ウィルスの薬物に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロゲン酸結晶形を含む製剤であって、
前記クロロゲン酸結晶形が斜方晶系であり、空間群がP2であり、単位格子パラメータがa=7.7291(2)Å、b=10.9808(2)Å、c=36.5334(7)Å、α=β=γ=90.00°、Z=8であり、単位格子の体積が3100.65(11)Åであり、
前記製剤の臨床用量が1日あたり1.0〜20mg/kgである、製剤。
【請求項2】
製剤が経口製剤または注射剤であり、前記注射剤が凍結乾燥粉末注射剤であることが好ましい、請求項1の製剤。
【請求項3】
前記注射製剤の臨床用量が、1日あたり1.0〜6.0mg/kgであり、好ましくは2〜4mg/kgである、請求項2の製剤。
【請求項4】
前記経口製剤の臨床用量が、1日あたり2mg〜20mg/kgであり、好ましくは5〜14mg/kgである、請求項2の製剤。
【請求項5】
前記注射剤が、
クロロゲン酸結晶体 10〜40重量部
酸化防止剤 1〜5重量部
スキャホールド 60〜100重量部
を含み、
好ましくは、クロロゲン酸結晶体が30〜40重量部、酸化防止剤が2〜5重量部、スキャホールドが80〜90重量部であり、好ましくは、前記酸化防止剤が亜硫酸水素ナトリウム、スキャホールドがマンニトールである、請求項2または3の製剤。
【請求項6】
前記注射剤が、1000製剤単位あたり、
クロロゲン酸結晶体 30g
酸化防止剤 2g
スキャホールド 80g
を含み、
注射用水を2000mlまで加える、請求項5の製剤。
【請求項7】
前記経口製剤が、
クロロゲン酸結晶体 80〜150重量部
充填剤 700〜900重量部
結合剤 20〜220重量部
を含み、
好ましくは、前記クロロゲン酸結晶体が80〜100重量部、充填剤が800〜900重量部、結合剤が100〜220重量部であり、好ましくは、前記充填剤がデンプン、粉糖、デキストリン、乳糖、圧縮性デンプン、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、マンニトールから1つ又は複数を選んだものであり、前記結合剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンから1つ又は複数を選んだものである、請求項2または3の製剤。
【請求項8】
前記経口製剤が、1000製剤単位あたり、
クロロゲン酸結晶体 100g
充填剤 800g
結合剤 100g
を含む、請求項7の製剤。
【請求項9】
免疫系疾患の治療、抗酸化、肝臓保護と利胆、心血管疾患の治療、抗ウィルス等の薬物の調製に用いられる、請求項1〜8のいずれか1つの製剤の用途。
【請求項10】
前記免疫系疾患が、腫瘍、乾癬等であり、前記腫瘍には、小細胞肺癌、肝臓癌、乳癌または脳腫瘍が含まれるがこれに限定されない、請求項9の用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロロゲン酸結晶形を含む製剤およびその用途に関し、薬物製剤の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
クロロゲン酸は、カフェ酸とキナ酸から生成されるデプシドであり、植物体の好気呼吸の過程で、シキミ酸経路で生成されるフェニルプロパノイド化合物である。
【0003】
クロロゲン酸の生物活性の範囲は広く、現代科学では、食品、ヘルスケア、医薬、日用化学品等の複数の分野において、クロロゲン酸の生物活性に関する研究が進められている。クロロゲン酸は重要な生物活性物質であり、抗菌、抗ウィルス、白血球増加、肝臓保護と利胆、抗腫瘍、血圧降下、血中脂質降下、フリーラジカルの除去、中枢神経系の興奮等の効果をもたらす。
【0004】
しかしながら、従来技術におけるクロロゲン酸製剤は、ほとんどが不確定なものであって、それを使用した場合の効果には有意差が見られる。
【0005】
従来の文献では、クロロゲン酸には複数種の結晶形があるという報告がなされているものの、クロロゲン酸結晶形製剤の治療効果について比較研究した報告はまだない。同じ薬物の製剤であっても、結晶形の違いによって、薬物の外観、溶解度、融点、密度等の物理的・化学的性質、薬物溶出度、生物的有効性等において有意差が発生するため、薬物の安定性やバイオアベイラビリティ等、治療効果を発揮するにあたって影響が出てしまう。
【0006】
結晶形が薬物の効果を左右することは、現在の薬学界において関心を集めている問題であり、同じ薬物であっても治療効果に差が見られる原因としては、生産工程の違いによる品質のばらつき以外に、別の要素として薬物の結晶形が影響している可能性がある。薬物の結晶形によって溶解度および溶出速度が異なるため、バイオアベイラビリティに影響を及ぼし、ひいては臨床治療の効果にばらつきが出てしまうことになる。文献では、シメチジンにはA、B、C等複数種の結晶形が存在し、最も有効なものはA型のみであるが、国産シメチジンは一般に不完全なA型であり、それが治療効果に影響していると報告されている。抗潰瘍薬のファモチジンには4種類の結晶形があり、融点、赤外線分光分析および物理化学的性質において有意差が見られるが、胃酸分泌を抑制する活性はA型よりもB型が大きい。薬物の中には、無定形ネオマイシン懸濁液のように、非結晶形のものが結晶状態のものより治療効果が高いものがある。
【発明の概要】
【0007】
上記の技術的課題に対し、本発明の目的は、特定のクロロゲン酸を含む製剤および特定のクロロゲン酸の用量を提供することにある。
【0008】
本発明の上記目的は、以下の技術的手段によって達成される。
クロロゲン酸結晶形を含む製剤であって、前記結晶形が斜方晶系であり、空間群がP2であり、単位格子のパラメータがa=7.7291(2)Å、b=10.9808(2)Å、c=36.5334(7)Å、α=β=γ=90.00°、Z=8であり、単位格子の体積が3100.65(11)Åであり、前記製剤の臨床用量が1日あたり1.0〜20mg/kgである。
本発明では、前記製剤中のクロロゲン酸結晶形の含有量は、剤形に応じて10〜500mg/gであることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記製剤の剤形は、当分野の通常の剤形とすることができ、経口製剤、注射剤、気道投与製剤、皮膚投与製剤、粘膜投与製剤などを含むが、これらに限定されない。
【0010】
出願人は研究によって、クロロゲン酸製剤中のクロロゲン酸結晶形をコントロールすることで、その使用効果が著しく改善されることを見出した。さらに、出願人は、前記注射製剤において、クロロゲン酸結晶形の含有量が10〜60mg/kgである場合、前記製剤が有する、ヒト神経膠腫、肝臓癌、肺癌、乳癌等の腫瘍のマウス移植腫瘍に対する著しい抑制作用がさらに優れた効果を発揮し、20〜40mg/kgであることが好ましい、ということを見出した。クロロゲン酸凍結乾燥粉末注射剤の臨床使用用量は、動物とヒトとの用量換算の関係から、1日あたり1.0〜6.0mg/kgであり、2〜4mg/kgであることが好ましい。
【0011】
さらに出願人は、前記経口製剤中のクロロゲン酸結晶形の含有量が20〜200mg/kgである場合、前記製剤の著しい肝臓保護作用がより優れた効果を発揮し、50〜140mg/kgが好ましいことを見出した。クロロゲン酸経口製剤の臨床使用用量の範囲は、動物とヒトとの用量換算の関係から、1日あたり2mg〜20mg/kgであり、5〜14mg/kgであることが好ましい。
【0012】
本発明では、前記経口製剤および注射剤は、クロロゲン酸、又は、クロロゲン酸と薬学的に許容可能な医薬補助材料とにより調製される。
【0013】
本発明では、前記クロロゲン酸の結晶形は中国特許出願CN201410193699.8に記載される方法により調製することができ、前記凍結乾燥粉末注射剤も中国特許出願CN201310366945.0に記載される方式により実施することができる。
【0014】
さらに本発明では、前記凍結乾燥粉末注射剤は、以下の成分を含む。
クロロゲン酸結晶体 10〜40重量部
酸化防止剤 1〜5重量部
スキャホールド 60〜100重量部。
【0015】
上記凍結乾燥粉末注射剤中のクロロゲン酸結晶体は、30〜40重量部が好ましく、酸化防止剤は2〜5重量部が好ましく、スキャホールドは80〜90重量部が好ましい。前記酸化防止剤は亜硫酸水素ナトリウムであり、スキャホールドはマンニトールである。
【0016】
本発明の具体的な実施例では、前記凍結乾燥粉末注射剤は、1000製剤単位あたり以下の成分を含む。
クロロゲン酸結晶体 30g
酸化防止剤 2g
スキャホールド 80g、
注射用水を2000mlまで加える。
【0017】
さらに、本発明の前記経口製剤は、以下の成分を含む。
クロロゲン酸結晶体 80〜150重量部
充填剤 700〜900重量部
結合剤 20〜220重量部。
【0018】
前記クロロゲン酸結晶体は、80〜100重量部が好ましく、充填剤は800〜900重量部が好ましく、結合剤は100〜220重量部が好ましい。
【0019】
上記経口製剤中の、前記充填剤にはデンプン、粉糖、デキストリン、乳糖、圧縮性デンプン、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、マンニトールのうちの1つ又は複数が含まれるが、これらに限定されない。結合剤にはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンのうちの1つ又は複数が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の具体的な実施例では、前記経口製剤は、1000製剤単位あたり以下の成分を含む。
クロロゲン酸結晶体 100g
充填剤 800g
結合剤 100g。
【0021】
本発明のもう1つの目的は、上記製剤を、腫瘍、乾癬等の免疫系疾患の治療、抗酸化、肝臓保護と利胆、心血管疾患の治療、抗ウィルス等の分野における薬物の調製に使用することであり、具体的には、小細胞肺癌、肝臓癌、乳癌、脳腫瘍、乾癬が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。本発明のクロロゲン酸結晶形製剤は、薬物のバイオアベイラビリティ等、治療効果を発揮するのにより効果的であり、クロロゲン酸に治療効果を発揮させるための優れた結晶形であるとともに、腫瘍や乾癬等の免疫系疾患の治療、抗酸化、肝臓保護と利胆、心血管疾患の治療、抗ウィルス等の分野における薬物への使用においても、より優れた臨床治療効果を発揮する。さらに、本発明は、該クロロゲン酸結晶形製剤について、臨床のための効果的な用量を提供し、該クロロゲン酸結晶形製剤が臨床使用において安全且つ効果的であることの根拠となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、ルイス肺癌のC57BL/6マウス移植腫瘍の腫瘍抑制率に与える影響について、本発明のクロロゲン酸と市販のクロロゲン酸とを比較したグラフである。
図2図2は、H22肝臓癌のKMマウス移植腫瘍の腫瘍抑制率に与える影響について、本発明のクロロゲン酸と市販のクロロゲン酸とを比較したグラフである。
図3図3は、EMT−6乳癌のBABLcマウス移植腫瘍の腫瘍抑制率に与える影響について、本発明のクロロゲン酸と市販のクロロゲン酸とを比較したグラフである。
図4図4は、ヒト神経膠腫のマウスの腫瘍抑制率に与える影響について、本発明のクロロゲン酸と市販のクロロゲン酸とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施例1
凍結乾燥粉末注射剤の調製
1000製剤単位(30mg/本)あたりの確定処方は以下の通りである。
クロロゲン酸結晶体 30g
酸化防止剤 2g
スキャホールド 80g
注射用水を2000mlまで加えた。
上記処方に従って原料を秤量し、注射用水を用意して、酸化防止剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム)、クロロゲン酸結晶体、スキャホールド(例えばマンニトール)の順に加え、攪拌して十分に溶解させ、pHを2〜4に制御した。注射用水の温度は45〜50℃とし、0.03%の活性炭を添加して、30分間攪拌した後、活性炭をろ過により除去した。さらに0.22ミクロンの親水性微多孔膜を用いて、ろ液が清澄になるまでろ過し、無菌充填して、凍結乾燥させた。
【0025】
実施例2
経口製剤の調製
1000製剤単位(100mg/錠)あたりの確定処方は以下の通りである。
クロロゲン酸結晶体 100g
充填剤 800g
結合剤 100g
クロロゲン酸結晶形に適量の充填剤を加えた後、結合剤を加え、ふるいにかけて混合し、造粒、整粒を行って適量の潤滑剤を添加し、打錠した。
【0026】
実施例3 肺癌の治療に用いた。
動物 C57BL/6マウス、体重13〜20g、雄、雌各半数。
【0027】
細胞系 ルイス細胞をマウスの肺癌細胞株とし、10%の子ウシ血清、100U・ml−1のペニシリン、100μg・ml−1のストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地に付着させて成長させ、37℃、C05%のインキュベータ内で培養し、2〜3日ごとに液を交換して継代を行った。
【0028】
細胞の培養 細胞を通常通り蘇生させて継代し、対数増殖期のルイス細胞を0.25%のトリプシンで消化解離させた後、消化を終了させてRPMI−1640培養液を加えた。細胞をピペッティングして懸濁液を作り、1000rpmで5分間遠心分離を行った。そして2回洗浄し、トリパンブルー染色により生存細胞数を計数した。細胞懸濁液を、マウス1匹あたり0.2ml(約1×10個の細胞を含む)の割合で、マウスの左前肢腋窩にそれぞれ皮下注射し、腫瘍が1cm×1cm×1cmまで成長したところで、実験用マウスとした。マウスの腫瘍を無菌剥離し、ハンクス液で3回洗浄して血液や脂肪、壊死組織を除去した。腫瘍を1mm×1mm×1mmの断片に切断し、ハンクス液で2回洗浄し、比率に応じて生理食塩水(1g:3ml)を加え、ガラスホモジナイザーですりつぶした。それを80〜100メッシュのスクリーンでろ過して単細胞懸濁液を作り、トリパンブルー染色により生存細胞数を計数した。
【0029】
(4)投与実験
調製された細胞懸濁液を、マウス1匹あたり0.2ml(約1×10個の細胞を含む)の割合で、C57BL/6マウスの左前腋窩下に接種して、体重別に1群10匹として無作為に群分けし、それぞれクロロゲン酸投与用量群100mg・kg−1、90mg・kg−1、80mg・kg−1、70mg・kg−1、60mg・kg−1、50mg・kg−1、40mg・kg−1、30mg・kg−1、20mg・kg−1、10mg・kg−1、5mg・kg−1、1mg・kg−1および陰性群(N.S生理食塩水)とした。接種後2日目に、各群全てに腹腔注射(ip)にて投与を行った。容量は0.2ml・10g−1、1日1回、連続12回投与した。陰性群の平均腫瘍重量が1.0g(腫瘍の体積が約0.5cm)を超えたところで実験を止め、マウスを頸椎脱臼により死なせて秤量し、腫瘍を切り取って腫瘍抑制率を算出した。
【0030】
腫瘍抑制率%=[1−(投与群平均腫瘍重量/陰性群平均腫瘍重量)]×100%。
【0031】
(5)実験結果
表1および図1から、本発明のクロロゲン酸は、ルイス肺癌のC57BL/6マウス移植腫瘍に対していずれも著しい抑制効果があり、陰性の対照群と比較すると、統計学的な差異があることがわかる。しかも10mg/kg〜60mg/kgの用量群において、腫瘍抑制効果が顕著である。
【0032】
【表1】
【0033】
陰性群との比較 p<0.05、**p<0.01。
【0034】
実施例4 肝臓癌の治療に用いた。
(1)動物 昆明マウス、雄、雌各半数、体重16〜27g。
【0035】
細胞系 H22細胞株をマウスの肝臓癌細胞とし、10%の子ウシ血清、100U・ml−1のペニシリン、100μg・ml−1のストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地に懸濁させて成長させ、37℃、C05%のインキュベータ内で培養し、2〜3日ごとに液を交換して継代を行った。
【0036】
細胞の培養 対数増殖期のH22細胞を取って、1000rpmで5分間遠心分離を行い、2回洗浄して、トリパンブルー染色により生存細胞数を計数した。そしてできるだけ早くKMマウスの腹腔内に接種し、7〜10d後に腹水を吸引して、腹水細胞懸濁液を、マウス1匹あたり0.2ml(約2×10個の細胞を含む)の割合でマウスの左前肢腋窩に皮下注射した。腫瘍が1cm×1cm×1cmまで成長したところで、実験用マウスとした。マウスの腫瘍を無菌剥離し、ハンクス液で3回洗浄して血液や脂肪、壊死組織を除去した。腫瘍を1mm×1mm×1mmの断片に切断し、ハンクス液で2回洗浄し、比率に応じて生理食塩水(1g:3ml)を加え、ガラスホモジナイザーですりつぶした。それを80〜100メッシュのスクリーンでろ過して単細胞懸濁液を作り、トリパンブルー染色により生存細胞数を計数した。
【0037】
(4)投与実験
調製された細胞懸濁液を、マウス1匹あたり0.2ml(約1×10個の細胞を含む)の割合で、KMマウスの左前腋窩下に接種して、体重別に1群10匹として無作為に群分けし、それぞれクロロゲン酸投与用量群100mg・kg−1、90mg・kg−1、80mg・kg−1、70mg・kg−1、60mg・kg−1、50mg・kg−1、40mg・kg−1、30mg・kg−1、20mg・kg−1、10mg・kg−1、5mg・kg−1、1mg・kg−1および陰性群(N.S生理食塩水)とした。接種後2日目より静脈(iv)投与を開始した。容量は0.2ml・10g−1、1日1回とした。陰性群の平均腫瘍重量が1.0g(腫瘍の体積が約0.5cm)を超えたところで実験を止め、マウスを頸椎脱臼により死なせて秤量し、腫瘍を切り取って腫瘍抑制率を算出した。
【0038】
(5)試験結果
表2および図2から、本発明のクロロゲン酸は、H22肝臓癌のKMマウス移植腫瘍に対していずれも著しい抑制効果があり、陰性の対照群と比較すると、統計学的な差異があることがわかる。しかも10mg/kg〜60mg/kgの用量群において、腫瘍抑制効果が顕著である。
【0039】
【表2】
【0040】
陰性群との比較 p<0.05、**p<0.01。
【0041】
実施例5 BABLcマウス移植腫瘍に対する抑制効果の体内研究
実験材料
(1)動物 BABLcマウス、雌、体重17〜21g。
【0042】
細胞系 EMT−6細胞株をマウスの乳癌細胞とし、10%の子ウシ血清、1mmol/Lのグルタミン、100U・ml−1のペニシリン、100μg・ml−1のを含むRPMI−1640完全培地に付着させて成長させ、37℃、C05%のインキュベータ内で培養し、2〜3日ごとに液を交換して継代を行った。
【0043】
細胞の培養 細胞を通常通り蘇生させて継代し、対数増殖期のEMT−6細胞を0.25%のトリプシンで消化解離させた後、消化を終了させてRPMI−1640培養液を加えた。細胞をピペッティングして懸濁液を作り、1000rpmで5分間遠心分離を行った。そして2回洗浄し、トリパンブルー染色により生存細胞数を計数した。細胞懸濁液を、マウス1匹あたり0.2ml(約1×10個の細胞を含む)の割合で、できるだけ早くマウスの左前肢腋窩にそれぞれ皮下注射し、腫瘍が1cm×1cm×1cmまで成長したところで、実験用マウスとした。マウスの腫瘍を無菌剥離し、ハンクス液で3回洗浄して血液や脂肪、壊死組織を除去した。腫瘍を1mm×1mm×1mmの断片に切断し、ハンクス液で2回洗浄し、比率に応じて生理食塩水(1g:3ml)を加え、ガラスホモジナイザーですりつぶした。それを80〜100メッシュのスクリーンでろ過して単細胞懸濁液を作り、トリパンブルー染色により生存細胞数を計数した。
【0044】
実験方法
調製された細胞懸濁液を、マウス1匹あたり0.2ml(約1×10個の細胞を含む)の割合で、70匹のBABLcマウスの左前腋窩下に接種した。そして体重別に1群10匹として無作為に群分けし、それぞれクロロゲン酸投与用量群100mg・kg−1、90mg・kg−1、80mg・kg−1、70mg・kg−1、60mg・kg−1、50mg・kg−1、40mg・kg−1、30mg・kg−1、20mg・kg−1、10mg・kg−1、5mg・kg−1、1mg・kg−1および陰性群(N.S生理食塩水)とした。接種後2日目に、各群全てに筋肉注射(ip)によって投与を行った。容量は0.2ml・10g−1、1日1回、9日間連続投与した。陰性群の平均腫瘍重量が1.0g(腫瘍の体積が約0.5cm)を超えたところで実験を止め、マウスを頸椎脱臼により死なせて秤量し、腫瘍を切り取って腫瘍抑制率を算出した。
【0045】
腫瘍抑制率%=[1−(投与群平均腫瘍重量/陰性群平均腫瘍重量)]×100%。
【0046】
実験結果
クロロゲン酸が、EMT−6乳癌のBABLcマウス移植腫瘍の重量および腫瘍抑制率に与える影響については、表3および図3を参照。
【0047】
【表3】
【0048】
陰性群との比較 ***p<0.001。
【0049】
表3および図3から、本発明のクロロゲン酸は、EMT−6乳癌のBABLcマウス移植腫瘍に対していずれも著しい抑制効果があり、陰性の対照群と比較すると、統計学的な差異があることがわかる。しかも10mg/kg〜60mg/kgの用量群において、腫瘍抑制効果が顕著である。
【0050】
実施例6 クロロゲン酸の、移植性神経膠腫に対する腫瘍抑制効果に関する研究
1.材料
四川大学華西医院衛生部移植工程および移植免疫重点実験室より提供されたヒト神経膠腫細胞株。四川九章生物科技有限公司から提供された本発明のクロロゲン酸。市販のクロロゲン酸。
【0051】
方法
(1)モデル作成 マウスを1群10匹として無作為に群分けした。神経膠腫芽細胞の腫瘍細胞株と適切な希釈液とを配合して、マウスの左側頭葉皮質内にそれぞれ接種した。
【0052】
投与と介入 接種の24h後、各群のマウスにそれぞれ腹腔注射にて投与を行った。それぞれクロロゲン酸が100mg・kg−1、90mg・kg−1、80mg・kg−1、70mg・kg−1、60mg・kg−1、50mg・kg−1、40mg・kg−1、30mg・kg−1、20mg・kg−1、10mg・kg−1、5mg・kg−1、1mg・kg−1の用量群とし、陰性対照群には同体積の生理食塩水を投与した。連続15d投与を行った。
【0053】
腫瘍抑制率の測定 最終日に投与を止め、全てのマウスを死なせて解剖し、腫瘍組織を取り出して秤量した。抑制率=(対照群の平均腫瘍重量−治療群の平均腫瘍重量)/腫瘍重量対照群平均腫瘍重量×100%。
【0054】
統計学的方法 データ分析は、統計プログラムパッケージソフト(SPSS 13.0 for Windows)を用いて分散分析を行った。P<0.05をもって有意差ありとした。
【0055】
結果 分析結果から、投与群はブランク群に対して、腫瘍抑制率が著しく向上していることがわかり、クロロゲン酸には腫瘍の成長を阻害する効果があることが証明された。その腫瘍抑制効果は、用量が中程度の群において最も顕著であり、用量が多い群がそれに続く。具体的なデータは表4を参照。
【0056】
【表4】
【0057】
表4および図4から、本発明のクロロゲン酸は、ヒト神経膠腫のマウス移植腫瘍に対して著しい抑制効果があり、陰性の対照群と比較すると、統計学的な差異があることがわかる。しかも10mg/kg〜60mg/kgの用量群における腫瘍抑制効果が顕著である。
【0058】
実施例7 クロロゲン酸の化学的肝障害(アルコール性脂肪肝ラットモデル)に対する保護効果
1.材料および方法
薬物 四川九章生物科技有限公司より提供された本発明のクロロゲン酸。市販のクロロゲン酸。
【0059】
動物 雌のSDラット、体重156〜193g、SPFグレード。
【0060】
試験の群分けと用量設計 雌のSDラットを、1群10匹として無作為に群分けした。試験は、20mg/kg、35mg/kg、50mg/kg、70mg/kg、85mg/kg、100mg/kg、120mg/kg、140mg/kg、160mg/kg、180mg/kg、200mg/kgの用量群を設け、別途陰性の対照群と、50%エタノールのモデル対照群とを設けた。エタノール(分析グレード)によって肝障害モデルを作った。
【0061】
試験方法 アルコール肝障害モデル法を用いた。クロロゲン酸群には、異なる用量の試験薬物をガバージュにて投与し、陰性対照群およびモデル対照群には、生理食塩水を10ml/kgの割合で1日1回、経口にて連続30日間与えた。
2.検出指標
ラット血清ALT、AST、TGの測定、肝ホモジネートSOD、MDA、還元型グルタチオン(GSH)の測定。
【0062】
試験データの統計 試験データの統計は、SPSS 19.0 for windowsパッケージソフトを用いて処理を行った。
【0063】
実験結果
ラットの肝ホモジネート中のSOD、MDA、還元型GSHおよび血清ALT、AST、TG含有量に対するクロロゲン酸の影響は、表5、表6及び表7を参照。
【0064】
表5、表6及び表7から、モデル対照群のラットの肝ホモジネートにおけるMDA、GSH、TG含有量は、陰性対照群よりもMDA、TGの含有量が著しく高く(P<0.01)、還元型GSHの含有量が著しく低い(P<0.01)ことから、該モデルは成功しており、信頼できる実験システムであるということがわかる。一方、本発明のクロロゲン酸群では、いずれも異なる度合いでラットの血清ALT、AST、TG、MDAの含有量が下がり、SOD、GSHレベルが上がっている。しかも、50mg/kg〜140mg/kgの用量群は、非常に重要な統計学的有意性を備えている。
【0065】
従って、本発明のクロロゲン酸は、化学的肝障害に対して明らかな抑制効果があり、用量が50〜140mg/kgにおいて最も効果が顕著である。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
注:陰性対照群との比較:**P<0.01、P<0.05。モデル対照群との比較:##P<0.01、#P<0.05。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】