特表2017-537203(P2017-537203A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-537203大気酸素の存在下でおいてポリマーを架橋させるための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537203(P2017-537203A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】大気酸素の存在下でおいてポリマーを架橋させるための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/08 20060101AFI20171117BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20171117BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20171117BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20171117BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20171117BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20171117BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20171117BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
   C08L1/08
   C08L21/00
   C08K5/14
   C08K3/04
   C08L71/02
   C08L91/00
   C08K3/06
   C08J3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-530731(P2017-530731)
(86)(22)【出願日】2015年12月3日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月21日
(86)【国際出願番号】US2015063617
(87)【国際公開番号】WO2016094164
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】62/089,398
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フォン−ジョン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ピー・パヴレック
(72)【発明者】
【氏名】レナード・エイチ・パリス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アール・ドゥルズネスキー
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・デスポトポーロウ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレード・デフランチッシ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーゼフ・エム・ブレナン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ビー・エイブラムズ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・タルタラン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA16
4F070AA52
4F070AA63
4F070AB16
4F070AC04
4F070AC05
4F070AC56
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4F070AC84
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE08
4J002AB01Y
4J002AE05X
4J002BN06W
4J002CH02Z
4J002DA038
4J002DA047
4J002EK036
4J002EK056
4J002EK066
4J002EK086
4J002GJ02
(57)【要約】
有機ペルオキシド配合物は、少なくとも1種の有機ペルオキシド及び少なくとも1種のセルロース化合物を含む。その有機ペルオキシド配合物の実施形態は、酸素の存在下でエラストマーを硬化させるときに表面粘着性における顕著な改良(多くの場合にタックフリーな表面を含むが、それに限定されない)である。本発明の実施形態は、酸素の全体的又は部分的な存在下で、例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、溶融塩浴、又はスチームオートクレーブを使用して、固体状のエラストマーを硬化させることができる有機ペルオキシド配合物に関する。本発明の実施形態は、架橋性エラストマー組成物、それらのエラストマーを硬化させるためのプロセス、及びそのようなプロセスによって作成される製品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ペルオキシド配合物であって、
少なくとも1種の有機ペルオキシドと、
少なくとも1種のセルロース化合物と
を含み、
前記少なくとも1種のペルオキシド及び前記少なくとも1種のセルロース化合物の量が、前記配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下でエラストマー組成物を硬化させることが可能であるように選択される、有機ペルオキシド配合物。
【請求項2】
前記有機ペルオキシド配合物が、少なくとも1種の飽和エラストマーを含むエラストマー組成物を硬化させることが可能であり、前記硬化されたエラストマー組成物が完全又は実質的にタックフリーである、請求項1に記載の有機ペルオキシド配合物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のセルロース化合物が、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロプリオネート、セルロースアセテート、セルロース、超微粉砕セルロース、セルロースガム、ミクロクリスタリンセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の有機ペルオキシド配合物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のセルロース化合物がセルロースアセテートブチレートを含む、請求項1に記載の有機ペルオキシド配合物。
【請求項5】
少なくとも1種の硫黄含有化合物をさらに含む、請求項1に記載の有機ペルオキシド配合物。
【請求項6】
請求項1に記載の有機ペルオキシド配合物を製造するための方法であって、前記少なくとも1種の有機ペルオキシドと前記少なくとも1種のセルロース化合物とを混合する工程を含む、方法。
【請求項7】
エラストマー組成物であって、
少なくとも1種のエラストマーと、
少なくとも1種のペルオキシドと、
少なくとも1種のセルロース化合物と
を含み、
前記エラストマー組成物が酸素の全体的又は部分的な存在下で硬化可能である、エラストマー組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のエラストマーが少なくとも1種の飽和エラストマーを含む、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項9】
エラストマーマスターバッチを含み、前記エラストマーマスターバッチが、少なくとも1種のエラストマーと、カーボンブラック、ポリエチレングリコール、少なくとも1種のプロセスオイル、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種の離型剤、少なくとも1種の熱安定剤、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数の添加剤とを含む、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のエラストマーが、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、ポリ(エチレンビニルアセテート)、ポリ(エチレンアクリレート)コポリマー、フルオロエラストマー(FKM、FFKM、FVMQ)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、部分水素化アクリロニトリルブタジエンコポリマー(HNBR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ネオプレンゴム(CR)、ポリクロロプロペン、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項11】
少なくとも1種のポリマーをさらに含む、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の有機ペルオキシドが、ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノ−ペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネートからなる群から選択される、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のセルロース化合物が、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロプリオネート、セルロースアセテート、セルロース、超微粉砕セルロース、セルロースガム、ミクロクリスタリンセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項14】
少なくとも1種のセルロース化合物がセルロースアセテートブチレートを含む、請求項7に記載のエラストマー組成物。
【請求項15】
完全又は実質的にタックフリーである、請求項7に記載の硬化されたエラストマー組成物を含む、エラストマー性物品。
【請求項16】
エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスであって、
酸素の存在下でエラストマー組成物を硬化させる工程
を含み、
前記エラストマー組成物が、少なくとも1種のエラストマー、少なくとも1種のペルオキシド、及び少なくとも1種のセルロース化合物を含む、プロセス。
【請求項17】
前記少なくとも1種のエラストマーと、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくとも1種のセルロース化合物とを混合して、前記エラストマー性混合物を得る工程をさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
加熱空気の存在下で前記エラストマー性混合物を押出成形して、未硬化の予備成形物品を形成する工程と、前記未硬化の予備成形物品を硬化させる工程とをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項16の方法に従って製造されるシール、ホース、又はガスケット。
【請求項20】
有機ペルオキシド配合物であって、
少なくとも1種の有機ペルオキシドと、
少なくとも1種のセルロース化合物と、
少なくとも1種の硫黄含有化合物と
を含み、
前記少なくとも1種のペルオキシド及び前記少なくとも1種のセルロース化合物の量が、前記配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下でエラストマー組成物を硬化させることが可能であるように選択される、有機ペルオキシド配合物。
【請求項21】
有機ペルオキシド配合物であって、
少なくとも1種の有機ペルオキシドと、
少なくとも1種のセルロース化合物と、
少なくとも1種の硫黄含有化合物と、
少なくとも1種の架橋助剤であって、バイオベース及び非バイオベースの化合物からなる群から選択されることができる、少なくとも1種の架橋助剤と
を含み、
前記少なくとも1種のペルオキシド及び前記少なくとも1種のセルロース化合物の量が、前記配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下でエラストマー組成物を硬化させることが可能であるように選択される、有機ペルオキシド配合物。
【請求項22】
有機ペルオキシド配合物であって、
少なくとも1種の有機ペルオキシドと、
少なくとも1種のセルロース化合物と、
少なくとも1種の架橋助剤であって、バイオベース及び非バイオベースの化合物からなる群から選択されることができる、少なくとも1種の架橋助剤と
を含み、
前記少なくとも1種のペルオキシド及び前記少なくとも1種のセルロース化合物の量が、前記配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下でエラストマー組成物を硬化させることが可能であるように選択される、有機ペルオキシド配合物。
【請求項23】
エラストマー組成物であって、
少なくとも1種のエラストマーと、
少なくとも1種のペルオキシドと、
少なくとも1種のセルロース化合物と、
少なくとも1種の架橋助剤であって、バイオベース及び非バイオベースの化合物からなる群から選択されることができる、少なくとも1種の架橋助剤と、
任意選択的に、少なくとも1種の硫黄含有化合物と
を含み、
前記エラストマー組成物が酸素の全体的又は部分的な存在下で硬化可能である、エラストマー組成物。
【請求項24】
完全又は実質的にタックフリーである、請求項23に記載の硬化されたエラストマー組成物を含む、エラストマー性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気酸素の存在下で有機ペルオキシドを用いてエラストマーを架橋させるための組成物及び方法、並びにそれらの方法によって作成される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ペルオキシドを用いて架橋されたポリマー及びコポリマーが、特に硫黄硬化によって架橋されたポリマーと比較して優れた性質を有していることは公知である。それらの性質としては、高い耐熱老化性、低い圧縮永久歪みパーセント、金属の汚染の低下、及び高い色安定性を有する着色製品を容易に製造できることなどが挙げられる。これらの有利な性質を考慮すれば、ペルオキシド硬化の実務的な重要性は極めて高い。ペルオキシド硬化で起こりうる欠点は、硬化時に材料の表面から空気を排除しなければならないことであり、空気が排除されていないと、酸素による硬化阻害のために粘着性のある表面が生じる可能性がある。
【0003】
有機ペルオキシドで架橋させる予定のエラストマーに酸素が接触すると、そのエラストマーの表面での架橋反応が阻害されるか、又は全く起きない可能性がある。したがって、そのエラストマーの表面は未硬化のままである。したがって、ペルオキシドを用いたゴム物品の硬化は、典型的には、架橋プロセス中に大気酸素を排出しながらエラストマーに熱がかけられるように設計されているスチームチューブ、スチームオートクレーブ、及び排気密閉金型内などで実施される。
【0004】
残念ながら、それらの商用プロセスからの空気の排除には、かなりの時間とコストとがかかる。それとは対照的に、エラストマーの硫黄加硫は、より安価な加熱空気オーブン又はチューブで実施することが可能であり、その中の加熱された大気酸素は何らの問題ももたらさない。硫黄硬化剤は、一般的に、有機ペルオキシドよりも安価であるものの、硫黄硬化に適したエラストマーのタイプは、不飽和エラストマー、例えば、ポリ(エチレンプロピレンジエン)、ポリ(ブタジエン)、天然ゴム、合成ポリ(イソプレン)、ポリ(スチレン−ブタジエン)ゴム、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)ゴムなどに限定される。
【0005】
多くの場合、製造業者らは、硫黄硬化から既存の加熱空気オーブンを使用したペルオキシド硬化に切り替えることを望むであろうが、しかしながら、それらの条件下での慣用されるペルオキシド系を用いた硬化は、酸素による表面硬化阻害があるために商業的に実行不可能となるであろう。フリーラジカル架橋時の酸素による表面硬化阻害を防止するための各種の方法が提案されてきた。それらの方法は、一般的にはほとんど受け入れられていない。
【0006】
米国特許第6,747,099号明細書は、ビス−、トリ−若しくはより高級のポリマレイミド及び/又はビス−、トリ−若しくはより高級のポリシトラコンイミドを含むエラストマー組成物を目的としている。
【0007】
米国特許第4,983,685号明細書は、少なくとも2.5〜20phr(ゴム100部あたりの部数)のベンゾチアジルジスルフィドを含むエラストマー組成物を目的としている。
【0008】
米国特許第6,775,848号明細書は、ディップ成形によって調製する細孔を含まないゴム物品を目的としている。
【0009】
米国特許第4,376,184号明細書は、オルガノポリシロキサンゴムを含むゴム組成物を目的としている。
【0010】
欧州特許第0246745号明細書は、添加剤として1,000〜15,000の低分子量のポリマーを含むエラストマー組成物を目的としている。
【0011】
米国特許第5,219,904号明細書は、ヨウ素及び臭素を含むフッ素含有エラストマーを目的としている。
【0012】
米国特許出願公開第2013/0131221号明細書は、少なくとも1種のセルロースエステルを含むエラストマー組成物を目的としている。
【0013】
一般的に、上述の系のいずれも、例えば優れた圧縮性のような望ましい物理的性質を備えながらも、タックフリーな表面を得るには十分ではない。さらに、硫黄硬化及びペルオキシド硬化を含むこれまでに公知の方法は、典型的には、不飽和エラストマーに限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、大気酸素の全体的又は部分的な存在下で、市販されている飽和及び不飽和の両方の架橋性エラストマー及びポリマーを硬化させる有機ペルオキシド配合物及び方法が有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態は、酸素の全体的又は部分的な存在下で、例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、溶融塩浴、又はスチームオートクレーブを使用して固体状のエラストマーを硬化させることができる有機ペルオキシド配合物に関する。本発明の実施形態は、架橋性エラストマー組成物、それらのエラストマーを硬化させるためのプロセス、及びそのようなプロセスによって作成される製品にもさらに関する。
【0016】
本出願人らは、セルロース化合物を有機ペルオキシドと組み合わせることにより、酸素の存在下で硬化させたエラストマー性物品の表面粘着性を顕著に低下させることが可能であることを見出した。本発明の実施形態は、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくともセルロース化合物とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる有機ペルオキシド配合物に関する。その少なくとも1種の有機ペルオキシド及び少なくとも1種のセルロース化合物の量は、その配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させることが可能であるように選択される。
【0017】
本発明の実施形態は、少なくとも1種のエラストマーと、少なくとも1種のペルオキシドと、少なくともセルロース化合物とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなるエラストマー組成物にもさらに関し、ここで、そのエラストマー組成物は酸素の全体的又は部分的な存在下で硬化可能である。
【0018】
本発明の実施形態は、エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスにもさらに関し、前記プロセスは、酸素の存在下でエラストマー組成物を硬化させる工程を含むか、実質的にそれからなるか、又はそれからなり、ここで、そのエラストマー組成物は、少なくとも1種のエラストマー、少なくとも1種の有機ペルオキシド、及び少なくとも1種のセルロース化合物を含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。本発明の実施形態は、このプロセスによって作成される製品にもさらに関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願人らは、酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)エラストマーを硬化させるときに表面粘着性において顕著な改良(タックフリーな表面を含むが、それに限定されない)を与える、有機ペルオキシド配合物を発見した。したがって、本発明の有機ペルオキシド組成物は、酸素(例えば、大気酸素)が各種の量で存在している可能性がある硬化プロセスにおいて硫黄加硫に取って代わることが可能である。
【0020】
硫黄硬化させたエラストマーに熱と圧力とを加えると、典型的には、硫黄結合が破断及び再生されて、そのエラストマーが変形される。この変形を測定するための1つの試験が、パーセント(%)圧縮永久歪み試験である。熱及び圧力下で変形が大きくなるほど、測定される%圧縮永久歪みの値は高い。したがって、より低い%圧縮永久歪みの値は、多くのエラストマーにとって、特にホース、ガスケット、及びシーリング用途で望ましい。
【0021】
本発明の有機ペルオキシド組成物を使用して硬化させたエラストマーには、固体状の不飽和エラストマー、固体状の飽和エラストマー、又はそれらの組合せが含まれていてよい。米国特許第6,747,099号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)には、空気の存在下で有機ペルオキシドを使用することが開示されている。不飽和がほとんど又は全く無いエラストマー(例えば、EPM、エチレン−プロピレンコポリマー)を使用したときに十分にタックフリーな表面を与えることがない、米国特許第6,747,099号明細書に教示された配合物を超える改良を本発明の実施形態は提供する。例えば、本発明の実施形態では、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)とEPMとのブレンド物(したがって、不飽和度が顕著に低い)を用いても、高い不飽和を有するエラストマー、例えばEPDMを用いて得られるのと実質的に同等の表面硬化性を得ることができる。したがって、本発明の実施形態は、エラストマーの不飽和レベルによる制限がない。
【0022】
本発明の1つの態様は、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくとも1種のセルロース化合物とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる有機ペルオキシド配合物に関する。特定の実施形態では、本発明の有機ペルオキシド配合物は、完全又は実質的にタックフリーな硬化されたエラストマー組成物を与えることが可能である。本明細書で使用するとき、実質的にタックフリーであるエラストマー組成物は、7〜9.9又は10、好ましくは7〜9.9、より好ましくは8〜9.9又は10、より好ましくは9〜9.9又は10の表面粘着性を有している。完全にタックフリーであるエラストマー組成物は、10の表面粘着性を有しており、最も望ましい。表面粘着性を測定するための方法は、本明細書中に与えられており、「ティッシュペーパー試験(Facial Tissue Paper Test)」と呼ばれている。
【0023】
特定の実施形態では、その本発明の有機ペルオキシド配合物は、少なくとも1種の飽和エラストマー(例えば少なくとも1種の飽和エラストマーと少なくとも1種の不飽和エラストマーとのブレンド物)を含むエラストマー組成物を酸素の全体的又は部分的な存在下で硬化させることが可能であり、その硬化されたエラストマー組成物は、完全又は実質的にタックフリーである。
【0024】
本発明の実施形態において使用するのに好適な有機ペルオキシド
ヒドロペルオキシド及び液状のペルオキシジカーボネートは別として、加熱によって分解して、所望の硬化(架橋)反応を開始させることができるラジカルを発生することが公知である全ての有機ペルオキシドが、本発明の配合物において使用するのに好適であると考えられる。例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノ−ペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド、ペルオキシエステル、及び固体であり、室温で安定なペルオキシジカーボネート。少なくとも1つの実施形態では、その有機ペルオキシドが、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、環状ケトンペルオキシド、及びジアシルペルオキシドから選択される。
【0025】
それらのタイプの有機ペルオキシドの全てについてのペルオキシドの名称及び物理的性質は、「Organic Peroxides」(Jose Sanchez and Terry N.Myers;Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Ed.,Volume 18(1996))に見出すことができる(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0026】
ジアルキルペルオキシド重合開始剤の具体例としては、以下のものが挙げられる:
ジ−t−ブチルペルオキシド;
t−ブチルクミルペルオキシド;
ジクミルペルオキシド;
2,5−ジ(クミルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;
2,5−ジ(クミルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3;
4−メチル−4−(t−ブチルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(t−アミルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(クミルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(t−ブチルペルオキシ)−2−ペンタノン;
4−メチル−4−(t−アミルペルオキシ)−2−ペンタノン;
4−メチル−4−(クミルペルオキシ)−2−ペンタノン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキシン−3;
2,5−ジメチル−2−t−ブチルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5−ジメチル−2−クミルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5−ジメチル−2−t−アミルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
m/p−アルファ,アルファ−ジ[(t−ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン;
1,3,5−トリス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5−トリス(t−アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5−トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
ジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3−ジメチル−3−(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ−t−アミルペルオキシド;
t−アミルクミルペルオキシド;
t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;
2,4,6−トリ(ブチルペルオキシ)−s−トリアジン;
1,3,5−トリ[1−(t−ブチルペルオキシ)−1−メチルエチル]ベンゼン;
1,3,5−トリ−[(t−ブチルペルオキシ)−イソプロピル]ベンゼン;
1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブタノール;
1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブタノール;及び
それらの混合物。
【0027】
固体であり、室温で安定なペルオキシジカーボネートの具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
ジ(2−フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート;ジ(4−t−ブチル−シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート;ジミリスチルペルオキシジカーボネート;ジベンジルペルオキシジカーボネート;及びジ(イソボルニル)ペルオキシジカーボネート。
【0028】
本発明の開示において考慮されている、単独で使用できるか、又は他のフリーラジカル重合開始剤と組み合わせて使用できる別のタイプのジアルキルペルオキシドは、次式で表される群から選択されるものである。
【化1】
式中、R4及びR5は独立して、メタ位又はパラ位に存在することが可能であり、同一であるか又は異なっており、水素又は1〜6個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖のアルキルから選択される。ジクミルペルオキシド及びイソプロピルクミルクミルペルオキシドが具体例である。
【0029】
他のジアルキルペルオキシドとしては、以下のものが挙げられる:
3−クミルペルオキシ−1,3−ジメチルブチルメタクリレート;
3−t−ブチルペルオキシ−1,3−ジメチルブチルメタクリレート;
3−t−アミル−1,3−ジメチルブチルメタクリレート;
トリ(1,3−ジメチル−3−t−ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン;
1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブチルN−[1−{3−(1−メチルエテニル)−フェニル}1−メチルエチル]カルバメート;
1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブチルN−[1−{3(1−メチルエテニル)−フェニル}−1−メチルエチル]カルバメート;
1,3−ジメチル−3−(クミルペルオキシ)ブチルN−[1−{3−(1−メチルエテニル)−フェニル}−1−メチルエチル]カルバメート。
【0030】
ジペルオキシケタール重合開始剤の群のなかで好ましい重合開始剤としては、以下のものが挙げられる:
1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;
1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;
n−ブチル4,4−ジ(t−アミルペルオキシ)バレレート;
エチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;
2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)プロパン;
3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−エトキシカルボニルメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン;
n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート;
エチル−3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート;及び
それらの混合物。
【0031】
本開示の少なくとも1つの実施形態において使用することが可能な他のペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、OO−t−ブチル−O−水素−モノペルオキシ−スクシネート、及びOO−t−アミル−O−水素−モノペルオキシ−スクシネートが挙げられる。
【0032】
具体的な環状ケトンペルオキシドは、次の一般式(I)、(II)及び/又は(III)を有する化合物である。
【化2】
式中、R1〜R10は独立して、水素、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、及びC7〜C20アルクアリールからなる群から選択され、それらの基には、直鎖状又は分岐状のアルキルが含まれていてもよく、かつR1〜R10のそれぞれが、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、直鎖状又は分岐状のC1〜C20アルキル、C6〜C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリド及びアミドから選択される1個又は複数の基で置換されていてもよく、例えば、架橋反応のために使用されるペルオキシド混合物の全活性酸素含量の少なくとも20%が、式(I)、(II)及び/又は(III)を有する化合物からのものとなるであろう。
【0033】
好適な環状ケトンペルオキシドのいくつかの例としては、以下のものが挙げられる:3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン(又はメチルエチルケトンペルオキシド環状トリマー)、メチルエチルケトンペルオキシド環状ダイマー、及び3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン。
【0034】
ペルオキシエステルの具体例としては、以下のものが挙げられる:
2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン;
t−ブチルペルベンゾエート;
t−ブチルペルオキシアセテート;
t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;
t−アミルペルベンゾエート;
t−アミルペルオキシアセテート;
t−ブチルペルオキシイソブチレート;
3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート;
OO−t−アミル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシスクシネート;
OO−t−ブチル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシスクシネート;
ジ−t−ブチルジペルオキシフタレート;
t−ブチルペルオキシ(3,3,5−トリメチルヘキサノエート);
1,4−ビス(t−ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン;
t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;
t−ブチル−ペルオキシ−(cis−3−カルボキシ)プロピオネート;
アリル3−メチル−3−t−ブチルペルオキシブチレート。
【0035】
モノペルオキシカーボネートの具体例としては、以下のものが挙げられる:
OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート;
OO−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;
1,1,1−トリス[2−(t−ブチルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1−トリス[2−(t−アミルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1−トリス[2−(クミルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
OO−t−アミル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート。
【0036】
ジアシルペルオキシドの具体例としては、以下のものが挙げられる:
ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジデカノイルペルオキシド;
ジラウロイルペルオキシド;
2,4−ジブロモ−ベンゾイルペルオキシド;
コハク酸ペルオキシド;
ジベンゾイルペルオキシド;
ジ(2,4−ジクロロ−ベンゾイル)ペルオキシド。
【0037】
国際公開第9703961A1号パンフレット(1997年2月6日)に記載されているタイプのイミドペルオキシドも使用するには好適であると考えられ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種又は複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル,−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジ−t−ブチルペルオキシド;ジ−t−アミルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート;ポリエーテルポリ−t−ブチルペルオキシカーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;t−ブチルペルオキシアセテート;t−ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイルペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド、及びジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。
【0039】
より好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種又は複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル,−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジ−t−ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート;ポリエーテルポリ−t−ブチルペルオキシカーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;ジベンゾイルペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド、及びジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。
【0040】
さらにより好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種又は複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル,−1,2,4−トリオキセパン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジ−t−ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;ジベンゾイルペルオキシド、及びジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド。
【0041】
最も好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種又は複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジクミルペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシカーボネート;及びt−ブチルペルオキシベンゾエート。
【0042】
さらなる実施形態では、本発明の有機ペルオキシド配合物は、少なくとも1種の不活性な充填剤、例えばシリカ充填剤をさらに含んでいてもよい。
【0043】
セルロース化合物を含む有機ペルオキシド組成物
本発明の1つの実施形態では、その有機ペルオキシド配合物は、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくとも1種のセルロース化合物とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。有機ペルオキシド及びセルロース化合物、並びにそれらそれぞれの量は、その配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させることが可能であるように選択されるのが好ましい。
【0044】
本発明において使用するのに好適なセルロース化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:セルロース及びその誘導体、例えばセルロースエステル、セルロースエーテル、及びそれらの組合せ;例えば、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロプリオネート、セルロースアセテート、セルロース、微粉化セルロース、セルロースゴム、ミクロクリスタリンセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、及びそれらの組合せ。
【0045】
特定の実施形態の1つでは、本発明の有機ペルオキシド配合物は、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる:
少なくとも1種の有機ペルオキシド(例えば、全有機ペルオキシド配合物を基準にして、20重量%〜99重量%、又は30重量%〜90重量%、又は40重量%〜75重量%、又は40重量%〜70重量%、又は40重量%〜65重量%、又は45重量%〜80重量%、又は45重量%〜75重量%、又は45重量%〜70重量%、又は45重量%〜65重量%、又は50重量%〜98重量%、又は50重量%〜75重量%、又は50重量%〜70重量%、又は50重量%〜65重量%、50重量%〜60重量%の量);
少なくとも1種のセルロース化合物(例えば、全有機ペルオキシド配合物を基準にして、5重量%〜70重量%、又は10重量%〜50重量%、又は15重量%〜45重量%、又は20重量%〜70重量%、又は20重量%〜65重量%、又は20重量%〜60重量%、又は25重量%〜70重量%、又は25重量%〜65重量%、又は25重量%〜60重量%、又は30重量%〜70重量%、又は30重量%〜65重量%、又は30重量%〜60重量%、又は35重量%〜70重量%、又は35重量%〜65重量%、又は35重量%〜60重量%、又は40重量%〜70重量%、又は40重量%〜65重量%、又は40重量%〜60重量%、又は40重量%〜55重量%、又は40重量%〜50重量%の量);及び
少なくとも1種の任意選択的な不活性充填剤(例えば、全有機ペルオキシド配合物を基準にして、0.01重量%〜60重量%、又は0.01重量%〜20重量%、又は0.01重量%〜20重量%、又は0.01重量%〜10重量%、又は0.01重量%〜5重量%、又は0.01重量%〜2重量%、又は0.01重量%〜0.1重量%の量)、
ここで、その少なくとも1種のペルオキシド及び少なくとも1種のセルロース化合物、並びにそれらそれぞれの量は、その配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下でエラストマー組成物を硬化させることが可能であり、かつその硬化されたエラストマー組成物が実質的又は完全にタックフリーであるように選択される。
【0046】
特定の実施形態では、その少なくとも1種のセルロース化合物は、以下のものからなる群から選択される:セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロプリオネート、セルロースアセテート、セルロース、超微粉砕セルロース、セルロースガム、ミクロクリスタリンセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、及びそれらの組合せ。1つの実施形態では、その少なくとも1種のセルロース化合物がセルロースアセテートブチレート(CAB)を含むか、実質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0047】
好ましいセルロース化合物としては、以下のものが挙げられる:セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びそれらの組合せ。
【0048】
より好ましいものとしては、以下のものが挙げられる:セルロースアセテートブチレート(ここで、CAB中のブチリル%含量は、20%、好ましくは18%以下である)、セルロースアセテート、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの組合せ。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなるエラストマー組成物が提供される:
少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、又はそれら両方);
少なくとも1種の有機ペルオキシド、及び
少なくとも1種のセルロース化合物、
ここで、そのエラストマー組成物は、酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)硬化可能である。その硬化されたエラストマー組成物が完全又は実質的にタックフリーであれば好ましい。
【0050】
特定の実施形態では、そのエラストマー組成物には、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる;
少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、又はそれら両方);及び
少なくとも1種の有機ペルオキシド(0.1phr〜20phr、又は1phr〜10phr、又は2.0phr〜10.0phr、又は2.0phr〜8.0phr(ゴム100部あたりの部数)、又は2.5phr〜10.0phr、又は2.5phr〜8.0phr、又は2.5phr〜7.5phr、又は2.5phr〜7.0phr、又は2.5phr〜6.5phr、又は2.5phr〜6.0phr、又は3.0phr〜10.0phr、又は3.0phr〜8.0phr、又は3.0phr〜7.5phr、又は3.0phr〜7.0phr、又は3.0phr〜6.5phr、又は3.0phr〜6.0phr、又は3.5phr〜10.0phr、又は3.5phr〜8.0phr、又は3.5phr〜7.5phr、又は3.5phr〜6.5phr、又は4.0phr〜10.0phr、又は4.0phr〜8.0phr、又は4.0phr〜7.0phrの量);
少なくとも1種のセルロース化合物(0.1phr〜20phr、又は1phr〜10phr、又は2.0phr〜10.0phr、又は2.0phr〜8.0phr(ゴム100部あたりの部数)、又は2.5phr〜10.0phr、又は2.5phr〜8.0phr、又は2.5phr〜7.5phr、又は2.5phr〜7.0phr、又は2.5phr〜6.5phr、又は2.5phr〜6.0phr、又は2.5phr〜5.5phr、又は3.0phr〜6.5phr、又は3.0phr〜6.0phr、又は3.0phr〜5.5phr、又は3.5phr〜6.5phr、又は3.5phr〜6.0phr、又は3.5phr〜5.5phrの量);及び
任意選択的に、以下のものからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤:プロセスオイル(例えば、脂肪族プロセスオイル)、プロセス助剤、顔料、染料、粘着付与剤、ワックス、補強用助剤、UV安定剤、発泡剤、スコーチ防止剤、活性化剤、抗オゾン剤、及び架橋助剤(例えば、Sartomerより市販されているもの)。
【0051】
本発明において使用するのに考えられる架橋助剤としては、Sartomer、Cray Valley、DuPontなどから市販されている、スコーチ保護添加剤の有無とは無関係に以下の官能基を含む化合物が挙げられる:二官能アリリック、三官能アリリック、二官能アクリリック、三官能アクリリック、二官能メタクリリック、三官能メタクリリック、ジビニル、トリビニル、ビス−、トリ−若しくはより高級のポリマレイミド及び/又はビス−、トリ−若しくはより高級のポリシトラコンイミドの官能基(これらの化学的官能基の少なくとも1つ又は複数を有する、より高分子量のオリゴマー種も含む)。例えばSartomer SR(登録商標)523(Arkema Inc.から入手可能)のような、特殊品の二重官能性架橋助剤、例えばアリリック及びメタクリリック架橋助剤も本発明では好ましい。
【0052】
本発明で使用するのに好適な架橋助剤としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルメタクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート;N,N’−フェニレンビスマレイミド(HVA−2としても知られている(DuPont製))。他の好適な架橋助剤は、バイオベースの、例えばキリ油及びアマニ油であってもよい。これらの架橋助剤は、エラストマー配合物中で単独で使用することもでき、又は各種のブレンド物又は組合せの形態で使用することもできる。
【0053】
特定の実施形態では、その有機ペルオキシド配合物中のセルロース化合物にセルロースアセテートブチレート(CAB)が含まれる。セルロースアセテートブチレートのブチリル含量は、好ましくは、約10%〜約60%、又は約15%〜約60%、又は約1%〜約30%、又は約1%〜約25%、又は約1%〜約20%、又は約15%〜約60%、又は約17%〜約54%、又は50%未満、又は40%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは20%未満である。
【0054】
少なくとも1種のセルロース化合物の、少なくとも1種の有機ペルオキシドに対する比率は、特に限定はないが、約1:約0.1〜約1:約10;例えば、約1:約0.2、約1:約0.4、約1:約0.8、約1:約1、約1:約2、約1:約1.6、約1:約2.4、約1:約3.2、又は約1:約5とするのがよい。
【0055】
特定の実施形態では、本発明のエラストマー組成物は、少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、又はそれら両方)と、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくとも1種のセルロース化合物とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなり、それを酸素の全体的又は部分的な存在下で硬化させると、同一のプロセスで硬化させ、セルロース化合物を全く含まないこと以外は同一の組成を有しているエラストマー組成物と比較して、より低い表面粘着性を有している。
【0056】
本発明のさらなる実施形態では、その有機ペルオキシド配合物に少なくとも1種の硫黄含有化合物がさらに含まれる。それらの実施形態では、その有機ペルオキシド配合物は、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくとも1種のセルロース化合物と、少なくとも1種の硫黄含有化合物とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなり、ここで、その有機ペルオキシド、セルロース化合物、及び硫黄含有化合物、並びにそれぞれの量は、その配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させることができるように選択されるのが好ましい。
【0057】
「R.T.Vanderbilt Rubber Handbook」,13th Ed.(1990)に列記されている硫黄含有化合物を本発明の実施で使用することが考えられる(その文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0058】
本発明において使用するのに好適な硫黄含有化合物としては、有機スルフィド化合物(モノスルフィド、ジスルフィド、トリスルフィド、又はより高級なポリスルフィドなどであってよい)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
本発明の実施形態において使用するのに好適な硫黄含有化合物は、一般的なジスルフィド又はトリスルフィドタイプの構造を有するものである:
(R1−SS−R2x又は(R1−SSS−R2x
ここで、R1又はR2は、同一であっても異なっていてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、x=1及び/又はx≧2であり、ポリマー性構造も含まれ、例えばVultac(登録商標)ジスルフィドである。R1及びR2は、例えば、芳香族基、例えばフェニル基(これは、例えばヒドロキシル及び/又はアルキル基で置換されていてもよい);非芳香族環状基、例えば硫黄−窒素結合が存在しているモルホリン基又はカプロラクタム基;及び/又はベンゾチアジル基などであってよい。
【0060】
ダイマー性及びポリマー性のアルキルフェノールポリスルフィド(ポリ(アルキルフェノール)ポリスルフィドとも呼ばれる)は、本発明において使用することができる硫黄含有化合物の1つのタイプである。アルキルフェノールは、例えば、tert−ブチルフェノール又はtert−アミルフェノールであってよい。そのような物質及びそれらを合成するための方法は、以下の特許に記載されている:米国特許第2,422,156号明細書;米国特許第3,812,192号明細書;米国特許第3,968,062号明細書;米国特許第3,992,362号明細書;米国特許第6,303,746号明細書;米国特許第7,294,684号明細書;及び米国特許第8,063,155号明細書(上記特許のそれぞれは、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0061】
ジスルフィド及びトリスルフィドは、生物由来(例えば、ニンニク油及びタマネギ油)であってもよく、又は非生物由来の化合物であってもよい。
【0062】
好ましい硫黄含有化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
ジスルフィド(ポリ(置換フェノールジスルフィド)を含む)、並びに:
Vultac(登録商標)5=ポリ(t−アミルフェノールジスルフィド);
Vultac(登録商標)7=ポリ(t−ブチルフェノールジスルフィド);
Vanax(登録商標)A=DTDM=4,4−ジチオジモルホリン;
Altax(登録商標)=MBTS=ベンゾチアジルジスルフィド;及び
CLD−80=N,N’−カプロラクタムジスルフィド。
【0063】
特定の実施形態では、その少なくとも1種の硫黄含有化合物は、ポリ(t−アミルフェノールジスルフィド);ポリ(t−ブチルフェノールジスルフィド);4,4−ジチオジモルホリン;ベンゾチアジルジスルフィド;N,N’−カプロラクタムジスルフィド;及びそれらの組合せからなる群から選択される。さらなる実施形態では、その少なくとも1種の硫黄含有化合物に、ベンゾチアジルジスルフィド及び少なくとも1種のさらなる硫黄含有化合物(例えば、ポリ(t−アミルフェノールジスルフィド);ポリ(t−ブチルフェノールジスルフィド);4,4−ジチオジモルホリン;又はN,N’−カプロラクタムジスルフィド)が含まれる。
【0064】
本発明のさらなる実施形態では、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなるエラストマー組成物が提供される:
少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、又はそれら両方);
少なくとも1種の有機ペルオキシド、
少なくとも1種のセルロース化合物、及び
少なくとも1種の硫黄含有化合物、
ここで、そのエラストマー組成物は、酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)硬化可能である。その硬化されたエラストマー組成物が完全又は実質的にタックフリーであれば好ましい。
【0065】
本発明の別の実施形態では、その有機ペルオキシド配合物に、少なくとも1種のニトロキシド(例えば、4−ヒドロキシ−TEMPO(4−OHT))と、少なくとも1種のキノン(例えば、モノ−tert−ブチルヒドロキノン(MTBHQ))とが含まれる。それらの実施形態では、その有機ペルオキシド配合物は、好ましくは、少なくとも1種の有機ペルオキシドと、少なくとも1種のセルロース化合物と、少なくとも1種の硫黄含有化合物と、少なくとも1種のニトロキシド(例えば、4−ヒドロキシ−TEMPO(4−OHT))と、少なくとも1種のキノン(例えば、モノ−tert−ブチルヒドロキノン(MTBHQ))とを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなり、ここで、それらの成分及びそれらそれぞれの量は、その配合物が酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させることができるように選択されるのが好ましい。本明細書で使用するとき、「キノン」又は「キノン含有化合物」という用語には、キノン及びヒドロキノンの両方、さらにはそれらのエーテル、例えば、ヒドロキノンのモノアルキル、モノアリール、モノアラルキル、及びビス(ヒドロキシアルキル)エーテルが含まれる。
【0066】
本発明のさらなる実施形態では、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなるエラストマー組成物が提供される:
少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、又はそれら両方);
少なくとも1種の有機ペルオキシド、
少なくとも1種のセルロース化合物、
少なくとも1種の硫黄含有化合物、
少なくとも1種のニトロキシド、及び
少なくとも1種のキノン、
ここで、そのエラストマー組成物は、酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)硬化可能である。その硬化されたエラストマー組成物が完全又は実質的にタックフリーであれば好ましい。
【0067】
本発明の実施形態において使用するのに好適なエラストマー
少なくとも1つの実施形態では、本発明のエラストマー組成物が、飽和エラストマー、不飽和エラストマー、又は飽和と不飽和との両方のエラストマーのブレンド物を含んでいてもよい。
【0068】
特定の実施形態では、本発明のエラストマー組成物が、少なくとも1種のポリマーをさらに含んでいる。そのエラストマー組成物の少なくとも1種のポリマーは、飽和ポリマー、不飽和ポリマー、又は飽和と不飽和との両方のポリマーを含んでいてもよい。
【0069】
本発明では、市販されている予備コンパウンディングされたエラストマーを使用してもよいことに注意されたい。それらのエラストマーには、例えばカーボンブラック充填剤、プロセスオイル、離型剤、抗酸化剤、及び/又は熱安定剤などの添加剤が含まれていてもよい。特定の実施形態では、その少なくとも1種のエラストマーが、1種又は複数のこれら添加剤を含むエラストマーマスターバッチの一部である。例えば、エラストマーマスターバッチは、少なくとも1種のエラストマー、並びにカーボンブラック、ポリエチレングリコール、少なくとも1種のプロセスオイル(例えば、液状飽和炭化水素、例えばPrimol(登録商標)352)、少なくとも1種の抗酸化剤(例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、別名Stanguard(登録商標)TMQ Powder)、少なくとも1種の離型剤、少なくとも1種の熱安定剤、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数の添加剤を含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなっていてもよい。
【0070】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」という用語は、重合された形態の少なくとも1つの少なくとも1種のモノマーを含む、非エラストマー性のポリマーを意味している。その「ポリマー」という用語にはホモポリマー及びコポリマーが包含され、ここで、その「コポリマー」という用語は、重合された形態の少なくとも2種の異なるモノマーを含むポリマーを指している。例えば、本開示におけるコポリマーは、2種の異なるモノマーを含むポリマー、3種の異なるモノマー以上を含むターポリマー、又は3種以上の異なるモノマーを含むポリマーであってもよい。
【0071】
少なくとも1つの実施形態では、そのエラストマー組成物のポリマーには、コポリマーが含まれる。本明細書において開示された実施形態では、コポリマーを含むエラストマー組成物を列挙している。しかしながら、当業者であれば容易に理解できるように、(明白にそうではないとされている場合以外では)いかなるコポリマーを含む実施形態でもホモポリマーに置き換えることができる。
【0072】
少なくとも1つの実施形態では、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種のエラストマー及び少なくとも1種のコポリマーが含まれる。そのエラストマーとコポリマーとは、そのエラストマー組成物中に、99:1〜1:99、例えば85:15〜15:85、又は75:25〜25:75の重量比で存在することができる。少なくとも1つの実施形態では、そのエラストマーとコポリマーとが、エラストマー組成物中に50:50の重量比で存在している。
【0073】
少なくとも1つの実施形態では、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の飽和エラストマーが含まれる。その飽和エラストマーは、例えば、以下のものから選択することができる:不飽和を有さないケイ素ゴム(Q)、メチル−ポリシロキサン(MQ)、フェニル−メチル−ポリシロキサン(PMQ)、ポリ(エチレン−ビニルアセテート)(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩素化ポリ(エチレン)(CM又はCPE)、ポリ(エチレンプロピレン)(EPM)、フルオロエラストマー(FKM、FFKM)(例えば、Viton(登録商標)及びDyneon(登録商標))、及びそれらの組合せ。
【0074】
少なくとも1つの実施形態では、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の不飽和エラストマーが含まれる。エラストマー組成物中で使用することが可能な不飽和エラストマーとしては、例えば以下のものが挙げられる:エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フルオロシリコーン(FMVQ)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、部分水素化アクリロニトリルブタジエン(HNBR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ネオプレンゴム(CR)、ポリクロロプロペン、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム、及びそれらの組合せ。
【0075】
特定の実施形態では、本発明のエラストマーが、フッ素含有エラストマーを含まず、かつヨウ素又は臭素を含むエラストマーも含まない。
【0076】
少なくとも1つの実施形態では、そのエラストマー組成物には少なくとも1種の飽和コポリマーが含まれる。使用可能な飽和ポリマーの例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:エチレンと、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、及びビニルアセテートとのコポリマー、例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(エチレンビニルアセテート)(EVA)、ポリ(エチレン−プロピレン)(EPM)、ポリ(エチレン−α−オレフィン)、ポリ(エチレン−オクテン)(例えば、Engage(登録商標))、ポリ(エチレン−ヘキセン)、ポリ(エチレン−ブチレン)(例えば、Tafmer(登録商標))、Vamac(登録商標)ポリマー(例えば、ポリ(エチレン−メチルアクリレート)、ポリ(エチレンアクリレート)、及びアクリル酸との組合せ、並びにそれらの組合せ。発泡させた製品が望まれる場合、そのエラストマー組成物に発泡剤が含まれていてもよい。
【0077】
本発明において使用するのに好適なエラストマー及びポリマーのさらなる例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:ポリウレタン(AU及びEU)、ビニリデンフオリドコポリマー(CFM)、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、5−ビニル−2−ノルボルネン−EPDM(例えばKeltan(登録商標)ACE EPDM)、及びポリスルフィドゴム。
【0078】
特定の実施形態では、本発明のエラストマー組成物及び有機ペルオキシド配合物には、例えば米国特許第4,376,184号明細書に記載されているようなオルガノシロキサンゴムは含まれない。さらなる実施形態では、本発明のエラストマー組成物及び有機ペルオキシド配合物には、欧州特許第0246745号明細書に記載されているような1,000〜15,000の低分子量を有するいかなるポリマー添加剤も含まれない。さらなる実施形態では、本発明のエラストマー組成物及び有機ペルオキシド配合物には、酸化亜鉛が全く含まれない。
【0079】
当業者であれば、有機ペルオキシド配合物及びエラストマー組成物中で使用するための各種の成分の量を適切に選択することができ、また、硬化させる(架橋させる)ポリマーのサンプル中で成分の量を増やしながら実験することで、濃度を最適化することができるであろう。最適な加工(コンパウンディング)時間及び温度なども最適な硬化時間及び温度として求めることができる。
【0080】
本発明の方法の実施形態
本発明の少なくとも1つの実施形態は、本明細書に記載されているようなエラストマー組成物を含む物品を製造するための方法にも関し、ここで、その方法は、酸素の全体的又は部分的な存在下で(例えば、加熱空気オーブン若しくはトンネル、又はスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させる工程を含む。
【0081】
本明細書で使用するとき、「硬化(curing)」という用語は、ポリマーを架橋させて、強化されるか又は固化された(strengthened or hardened)ポリマーを形成すること指している。硬化工程は、従来からの各種の方法、例えば、加熱空気法、スチーム法、又は加熱成形法などで実施することができる。
【0082】
その方法には、本明細書に記載されているように、エラストマー組成物を押出加工して、未硬化の予備成形物品を形成する工程、及びその未硬化の予備成形物品を硬化させる工程が含まれていてもよい。そのエラストマー組成物を加熱空気の存在下で押出成形して、未硬化の予備成形を形成することができる。少なくとも1つの実施形態では、マイクロ波又はスチームオートクレーブを用いて、その予備成形物を硬化させる。少なくとも1つの他の実施形態では、マイクロ波又はスチームオートクレーブを使用せずに予備成形物を硬化させる。
【0083】
少なくとも1つの実施形態では、押出成形した成形物をエクストルーダーから直接、空気の存在するマイクロ波ゾーン内で加熱し、次いでより長い加熱空気トンネル内を通過させて、そのエラストマー性成形物の硬化を完結させる。物品を製造するための方法は、加熱空気トンネル中又は任意の他の装置で実施することができる。
【0084】
少なくとも1つの実施形態では、物品を製造するためのその方法を連続的に実施することができる。連続的製造法により、連続的な物品、例えば連続シール材の製造が可能となるが、これは、より小さい部品から組み合わせなければならない個別のシールの場合と異なる。
【0085】
本開示の少なくとも1つの実施形態は、ホースを製造するための方法に関する。その方法には、エラストマー組成物から、長いホースを硬化させることなく、長いホースを押出成形する工程が含まれていてよい。未硬化の長いホースを集めて、例えばその未硬化のホースをスチームに曝露させることにより硬化させてもよい。
【0086】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスに関し、そのプロセスには、酸素の存在下でエラストマー組成物を硬化させる工程が含まれ、その組成物は、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなる:
少なくとも1種のエラストマー、
少なくとも1種の有機ペルオキシド、及び
少なくとも1種のセルロース化合物。
そのプロセスには、少なくとも1種のエラストマー、有機ペルオキシド、及びセルロース化合物を別途又は同時にかついかなる順序でもよく混合して、エラストマー組成物を得る工程がさらに含まれていてもよい。
【0087】
少なくとも1つの実施形態では、慣用される添加剤、例えば抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール及びポリマー性キノリン誘導体)、脂肪族プロセスオイル、及び他のプロセス助剤、顔料、染料、粘着付与剤、ワックス、補強助剤、UV安定化剤、発泡剤、及び活性化剤、並びに抗オゾン剤を、本明細書に記載された各種のエラストマー組成物に硬化工程の前、後、及び/又は途中で添加してもよい。
【0088】
本発明のエラストマー性物品の実施形態
本発明の実施形態は、本明細書に記載されているような硬化されたエラストマー組成物を含むエラストマー性物品もさらに提供する。そのエラストマー性物品は、完全又は実質的にタックフリーであるのが好ましい。
【0089】
特定の実施形態では、そのエラストマー性物品が非コーティングタイプである(すなわち、液状コーティングではない)。
【0090】
本発明の実施形態には、高分子量で固体状のポリマーを溶媒中に溶解させる工程、次いでその溶媒を除去して固体状のエラストマー構造物(これは次いで別の工程で加熱空気により硬化される)を形成する(例えば、織物を含浸させる手段を得るための)工程のプロセスがさらに含まれていてもよい。この商業的使用の一例は、自動車用のエアバッグの製造である。さらなる例としては、現場硬化(cured−in−place)の固体状エラストマーの自動車及びトラックのヘッドガスケットが挙げられ、この場合、溶媒と、高分子量ポリマー、又はポリマーと硬化剤とのブレンド物との液体溶液を金属の表面に塗布する。その溶媒が除去されると、その金属部品上に複雑な構造の固体状の高分子量ポリマーが残る。この金属部品上の固体状のゴムガスケットを次いで加熱して、そのポリマーを架橋させることができる。この場合、その溶媒は、その固体状のポリマー又はエラストマーから除去できなくてはならない。その固体状のエラストマーから溶媒を除去したら、その部品に熱をかけることによって架橋反応を開始させて硬化させることができる。これは、その硬化プロセスが溶媒の除去と同時に進行する、ペイント、コーティング及びワニスとは対照的である。
【0091】
少なくとも1つの実施形態では、物品には、シール、ホース、又はガスケットが含まれていてよい。本発明の組成物及び方法に従って製造することが可能なエラストマー性物品の例としては、以下のものが挙げられる:O−リング、ガスケット、ダイヤフラム、シール、グロメット、絶縁材、靴底、セプタム、フィッティング、シュラウド、シート、ベルト、チューブなど。本開示は、本明細書において開示された組成物及び方法によって製造される、自動車用、工業用又は住宅用のシール材にもさらに関する。
【0092】
本発明のさらなる利点は、エラストマー物品製造の際の金型の汚れが低減することである。従来技術の方法では、金型内に存在している酸素が、そのエラストマーが完全に反応することを妨げ、その結果、未硬化のエラストマーの残渣が残り、それが金型内に蓄積することが起こりえた。この蓄積物は、定期的に除く必要があった。
【0093】
さらなる実施形態では、酸素の存在下で金型の汚れを抑制するための方法には、未硬化のエラストマー組成物を金型に供給する工程が含まれる、ここで、その未硬化のエラストマー組成物は、少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、又はそれら両方)、及び本明細書に記載されたような有機ペルオキシド配合物を含むか、実質的にそれらからなるか、又はそれらからなっている。
【0094】
本明細書に記載されている実施形態は、本発明を説明することを目的としており、本発明を限定するものではない。当業者のよく知るところであるが、本開示の範囲を逸脱することなく、本開示の実施形態及び実施例の変更形態をなしうる。本発明の実施形態は、上記では、「含む」及びその変形語を使用して記述されている。しかしながら、本発明者らの意図するところでは、「含む」という用語は、本明細書に記載されたいずれの実施形態でも本発明の範囲を逸脱することなく、「からなる」及び「から実質的になる」という用語と置き換えることが可能である。
【0095】
以下の実施例において、本発明を実施するにあたって本発明者らが考え得る最良の態様をさらに説明するが、それらは説明のためと解釈するべきであり、本発明を限定するものではない。
【0096】
RPAレオメーター試験で使用される略称
ML(dN−m)は、RPAレオメーター試験における最小トルク(単位、デシ−ニュートン−メートル)であり、その試験温度でのエラストマー組成物の粘度に関連する。
MH(dN−m)は、RPAレオメーター試験における最大トルク(単位、デシ−ニュートン−メートル)であり、得られる最大架橋量に関連する。
MH−ML(dN−m)は、相対的な架橋度(単位、デシ−ニュートン−メートル)である。
Ts1(分)は、最小トルクから1dN−mの上昇を達成するまでの時間(単位、分)である。
Ts2(分)は、最小トルクから2dN−mの上昇を達成するまでの時間(単位、分)である。
Tc50(分)は、最小トルクから50%のMH−ML(dN−m)の硬化状態に達するまでの時間(単位、分)である。
Tc90(分)は、最小トルクから90%のMH−ML(dN−m)の硬化状態に達するまでの時間(単位、分)である。
【0097】
実施例において使用される略称
4−ヒドロキシTEMPO又は4−OHTは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。
CABは、セルロースアセテートブチレートである(使用した各種のグレードについては表2参照)。
Kleenex(登録商標)は、Kimberly−Clarkから入手可能なティッシュペーパーである。
MBTSは、ベンゾチアジルジスルフィド、別名メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド、さらにはR.T.Vanderbilt製でAltax(登録商標)と呼ばれているものである。
MTBHQは、モノ−三級ブチルヒドロキノン、CAS 1948−33−0である。
N550カーボンブラック、ここで、N550は、カーボンブラックの粒径についてのASTM用語である。
Naugard(登録商標)445は、4,4’−ビス(α,−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンであり、Chemtura製の抗酸化剤である。
phrは、配合物において100部のゴムあたりに添加される成分の部数を意味している。
PEGは、ポリ(エチレングリコール)である。
Primol(登録商標)352は、ExxonMobilから入手可能なホワイトオイル(100%非芳香族)である。
Luperox(登録商標)F90Pは、Arkema,Inc.から入手可能なm/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(ペルオキシド含量、90%)である。
Luperox(登録商標)TBECは、t−ブチル−2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートである。
SR−350又はTMPTMAは、架橋助剤、すなわちArkema Inc.製のトリメチロールプロパントリメタクリレートである。
SR−351は、架橋助剤であり、Arkema Inc.製のトリメチロールプロパントリアクリレートである。
TACは、Evonik製のトリアリルシアヌレート架橋助剤である。
TAICは、Mitsubishi Intl.製のトリアリルイソシアヌレート架橋助剤である。
TMPTMAは、架橋助剤であり、Arkema Inc.製のSartomer SR−350、すなわちトリメチロールプロパントリメタクリレートである。
TMQ又はStanguard(登録商標)TMQ Powderは、Harwick Standard Distribution Corporation製の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、CAS#26780−96−1である。
キリ油は、純品又は実質的に純品のバイオベースの油であり、好ましくは種を冷圧プレスして得られたものである。
Vamac(登録商標)DPは、Chemours製のペルオキシド硬化可能なポリ(エチレンアクリリック)エラストマーである。
Vanfre(登録商標)VAMは、エラストマーのための推奨される加工助剤のポリオキシエチレンオクタデシルエーテルホスフェートであり、R.T.Vanderbiltから入手可能である。
VAMAC(登録商標)DPは、エチレン/アクリリックコポリマーである。
Vistalon(登録商標)2504 EPDMは、ExxonMobil製のポリ(エチレンプロピレンジエン)ターポリマーエラストマーであり、50%エチレン、4.7%エチリデンノルボルネン(ENB);ML(1+4)@125℃、25MUである。
Vul−Cup(登録商標)40KEは、m/p−ジ−t−ブチルペルオキシジイソプロピルベンゼンであり、Burgess KE Clay上40%のペルオキシド含量を有するものである。
Vultac(登録商標)5は、t−アミルフェノールジスルフィドポリマー、アリールポリスルフィドポリマー/オリゴマー、ポリ(t−アミルフェノールジスルフィド)とも呼ばれ、Arkema Inc.から入手可能なものである。
【0098】
試験及び手順
ゴムを混合する手順及びゴムシートの調製
以下の手順を使用して、ゴムを混合し、加熱空気硬化のためのゴムシートを調製した。室温又は加熱オイルを使用することが可能なジャケット付きの容量50mLのボウルを備えたBrabender Plasti−Corder(登録商標)を使用した。ミキサーには、取り外し可能なシグマタイプのブレードが備わっていた。予備コンパウンディングされたエラストマーに備わっている比重を使用して、20〜25rpmの混合速度で、ゴムの小片をボウルに徐々に添加した。Brabender Plasti−Corder(登録商標)のボウルに添加したゴムの全量は、48mLのゴム容積を与えるのに必要な重量と同じにしたため、そのゴムにペルオキシド硬化剤するのに十分な容積が存在していた。
【0099】
48mLのゴムから、ゴムの2つの小片(約4グラム又は5mL以下に相当)を取り出しておいた。残りのゴム全部をボウルに徐々に添加した。全てのゴムをミキサーに添加し、そのゴムがボウル内で流動するようになったら、ミキサーのrpmを下げて15rpmとし、その実験のためのペルオキシド配合物を、混合されているゴムに徐々に添加したが、そのペルオキシド配合物は、最小3桁の天秤を使用して小型のDixie(登録商標)アップ内で予備計量しておいた。残っているペルオキシドも全部混合ゴム中に確実に含まれるようにするため、取り出しておいた2つのゴムの小片を使用して、ミキサーのV形の金属部分から粉体をぬぐい去った。このゴム小片に付着した粉体と残っていたゴムの2つの小片をミキサー内に導入した。
【0100】
次いでrpmを再び3分間25rpmに上げた。この時間が過ぎたら、ミキサーの速度を下げて10rpmとし、ミキサーのヘッドのボルトを弛めて外した。ブレードがもはや回転していないため、ブレードのまわりのゴムが安全に取り出せることから、Mylar(登録商標)ポリエステルのシート上にのせた。混合チャンバーの内部空洞部分のミキサーのブレードのヘッドに少量のゴムが存在していたが、それは最後に取り除いた。ボルトを使用してミキサーのヘッドを再取り付けし、ミキサーのモーターを20rpmで再起動させた。混合チャンバー内に取り込まれていた最後に取り除いたゴムを最初に回転ブレードに加え、その後、ブレードから取り除いたゴムを加えた。これにより、より均質な混合をエラストマーに与えることになった。次いでrpmを上げて25rpmとし、その状態で3分間維持した。この時間が過ぎたら、ミキサーの速度を10rpmに設定し、ミキサーのヘッドのボルトを弛めて外した。取り外せばミキサーのブレードの動きが停止するため、この場合も安全にミキサーのボウル及びブレードからゴムを全て取り出すことができる。
【0101】
次いで、その暖かいゴムを確実に丸めて、2枚のMylar(登録商標)ポリエステルシート間にはさんだ。このサンドイッチ状態物を暖かい水圧式のCarverプレス内に入れたが、このプレスは、使用するエラストマー及びペルオキシド硬化剤に合わせて室温〜60℃の温度に設定することができる。ゴムのボールを2枚の大型のMylar(登録商標)ポリエステル間でプレスして平たくした。ニトリル製の手袋を着用して、プレスを開き、平らにしたゴムを含むMylar(登録商標)ポリエステルシートのサンドイッチ状態物を取り出した。上側のシートを外し、ゴムを丸めて筒状にした。これを再びサンドイッチ状にして、再び平たくした。そのシートを再び丸めたが、今回は最初のロールの方向から90度の方向で丸め、再び平たくした。これを3回繰り返したが、平らにするときには約1/8インチの厚みになるように注意した。そのサンドイッチ状態物をベンチ上に置き、金属シートで覆って、そこでゴムを放冷させた。次いで、それを取り出し、密封されたポリエチレンのバッグ内で保存した。次いでそれらのシートから、ハサミを使用するか又は鋭利な金属製のサークルパンチを用いて切り出し、レオメーター硬化評価用の未硬化のゴムのフラットな円盤状シート、及び「ティッシュペーパー試験法」(以下において説明する)を使用した、加熱空気オーブンのための四角形のフラットなシートを作成した。
【0102】
ティッシュペーパー試験
以下の手順を使用して、加熱空気オーブン内で硬化させた後のゴムシートの表面粘着性を試験した。この手順は、加熱空気オーブン中で硬化させたゴムシートの表面粘着性のための「ティッシュペーパー試験」とも呼ばれている。
【0103】
厚み1/8”×幅2”×長さ3”の寸法を有する未硬化のゴムのフラットなシートを調製し、あらかじめ加熱してある205℃に設定された加熱空気オーブン内に15分間、慎重にぶら下げた。そのシートは、オーブン内で金属製のラックから金属製のクランプで吊り下げ、シートの全ての面が加熱空気に曝露されるようにした。15分かけて硬化させてから、そのゴムシートを速やかに取り出し、アルミニウムフォイルで被覆した厚紙片上に置いた。直ちにKleenex(登録商標)ティッシュを用いてそれを覆い、直ちに手でそのゴム表面全体に圧力をかけ、それに続けて1800グラムの重りで5分間加圧した。ゴムが冷却されて室温となってから、その柔らかいティッシュペーパーを慎重に剥がして、その表面に付着したティシュペーパーの繊維があるかどうかについてゴムの表面を確認した。大量のティッシュペーパーの繊維が付着しているようであれば、それは表面硬化性が乏しい、すなわち大きい表面粘着性を有していることを示す。
【0104】
本明細書で使用するとき、表面粘着数(Surface Tackiness Number)=(紙の繊維がない表面の%÷10)である。表面粘着数は、10〜0の範囲をとることができる。ティッシュペーパー繊維が全く付着していない完全にタックフリーな硬化ゴム表面は、10の評点を有している。ティッシュペーパー繊維で完全に被覆されている極めて貧弱にのみ硬化しているゴム表面は、評点0である。その表面の90%にティッシュペーパー繊維の付着がない場合、その評点が9であり、表面の70%にティッシュペーパー繊維の付着がない場合、その評点は7などである。
【0105】
レオメーターの手順
ムービングダイレオメーター及びRPA(ラバープロセスアナライザー)評価では、以下の手順を使用した。Alpha Technologies MDRレオメーターでは、試験法ASTM D5289−12「Standard Test Method for Rubber Property−Vulcanization Using Rotorless Cure Meters」を使用した。試験法のASTM D6204は、0.5度又は1.0度アークのいずれか、100cpmのオシレーション周波数を用いて、その硬化剤系に適した硬化温度、例えば、以下の実施例では185℃で実施した。
【0106】
レオメーター評価を実施する場合、約5〜6グラム(最終コンパウンド物の密度に依存する)のエラストマーを使用して、レオメーターの上側及び下側のダイに完全に充填した。先に述べた手順で形成したプレスしたシートから未硬化のゴムを切り出した。そのゴムを切って、直径約1.25インチの小さい円板とし、2枚のDartek(登録商標)シート間に挟み込んだ。次いで、このサンドイッチ状態物をレオメーター内に入れ、ASTM D5289に従って試験した。
【0107】
硬化後の動的な試験のためのASTM D6601に従って、3度アークの適用歪みを用いた装置の応力緩和機構を使用するRPAでの試験を実施して、架橋されたエラストマーのガスケット又はシールとして使用するための性能を評価した。この目的は、標準NF ISO 815に従うパーセント圧縮試験と類似している。弾性率の損失、すなわちS’(dN−m)が数分間の時間に対して追跡される。弾性率の損失における比率がパーセント圧縮永久歪みの性能を反映している。硬化させたゴムの試料について最小のパーセント圧縮の値が、185℃以上の試験温度での1分を超える弾性率又はS’(dN−m)における最小損失を有しているであろう。
【0108】
%圧縮永久歪みの手順
以下の手順を使用して圧縮永久歪みの評価を行った。%圧縮永久歪みのための標準化された試験法は、NF ISO 815及び/又はASTM D395であり、それらは周囲温度及び高温の用途試験に適している。具体的には、実施例1においてNF ISO 815を使用したが、そこでは、試験にかける試料をまずTc90+8分の硬化時間を使用して190℃で硬化させて、高さ6.3±0.3mm、直径13±0.5mmの円筒を形成し、次いで、試験片をNF ISO 815装置内に入れ、150℃で24時間、25%の圧縮をかけた。この時間が経過した後、試料を解放し、周囲温度で30分間、木製のボード上に放置してから、高さの変化についての測定をした。
【0109】
引張試験の手順
以下の手順を用いて引張試験を行った。引張性能は、標準NF ISO 37及び/又はASTM D412に従って測定した。最初に、厚み1.5mmのシートを空気圧プレス中加圧下で硬化させた。硬化条件は、MDR又はRPAレオメーターで190℃において試験したときのコンパウンド物についての硬化時間結果の90%、Tc90(分)から求めた。硬化温度は190℃であり、硬化時間はTc90+8分であった。次いで、その1.5mmの硬化させたシートから、NF ISO 37及び/又はASTM D412で決められている適切なダイを使用してダンベルを切り出した。最後に、INSTRON(登録商標)5565引張試験機を使用して、そのダンベルについて引張試験を実施した。200mm/分の速度を使用した。
【実施例】
【0110】
実施例1
この実施例では、セルロースアセテートブチレート(CAB)を有機ペルオキシドと組み合わせて、EPDMエラストマー組成物を加熱空気硬化させた。表2に示した4種の異なるグレードのセルロースアセテートブチレート(CAB)をVul−Cup(登録商標)40KEと組み合わせて、表1に記載のEPDMマスターバッチエラストマー組成物を、加熱空気オーブン中205℃で15分かけて硬化させるための試験をした。それらの結果を表3に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
思いがけないことに、表面粘着性のための205℃、15分の加熱空気オーブン試験において、6phrのVul−Cup(登録商標)40KEを3phr又は6phrのいずれかのセルロースアセテートブチレート(CAB)と組み合わせて使用したときに、EPDM化合物の表面硬化で優れた結果が得られた。表3に示した結果に基づけば、最も低いブチリル含量を有するCABグレード171−15が、MH(dN−m)及びMH−ML(dN−m)についてRPAレオメーター試験結果で高い硬化状態を与え、さらには完全にタックフリーな表面も与えた。
【0115】
実施例2
この実施例では、セルロースアセテートブチレート(CAB)を使用して、表1に示したEPDMマスターバッチの表面粘着性を顕著に改良した。この実施例において使用したセルロースアセテートブチレート(CAB)のグレードを表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
表1のEPDMマスターバッチ中で2種の硫黄含有化合物、Vultac(登録商標)5及びMBTSとブレンドした有機ペルオキシドのLuperox(登録商標)F90Pを使用して、セルロースアセテートブチレート(CAB)の挙動を試験した。コンパウンディングしたEPDM試料をレオメーター中185℃で試験し、さらに加熱空気オーブン中において205℃で15分かけて硬化させた。次いで、直ちにその熱いゴムシートの表面の粘着性をティッシュペーパー試験により試験した。
【0118】
【表5】
【0119】
表5のデータに見られるように、対照の試料1と比較して、CAB試料2、3、及び4が、顕著に改良された加熱空気硬化エラストマー表面を与えた。セルロースアセテートブチレートを使用することにより、少なくとも1種の硫黄含有化合物と組み合わせて使用されると、エラストマーの表面硬化性能に予想外の改良が得られた。セルロースアセテートブチレートと2種の硫黄含有化合物との組合せをペルオキシド(この場合にはLuperox(登録商標)F90P)と組み合わせると、加熱空気オーブン中でエラストマーを硬化させたときに十分に硬化された表面が得られた。
【0120】
実施例3
【0121】
【表6】
【0122】
実施例3では、表6から、ジクミルペルオキシド、非バイオベースのTAIC架橋助剤、及びCAB 321−0−1(セルロースアセテートブチレート)を含む新規なペルオキシド組成物(ラン#2)が、エラストマー中にコンパウンディングし、硬化させたときに、Vamac(登録商標)DP[ポリ(エチレンアクリレート)コポリマー、DuPont製]の加熱空気オーブン中における200℃で15分かけての架橋において、極めて良好な加熱空気硬化表面を与えることが分かった。そのエラストマーの表面は、タック試験で10のうちの8の評点を与えたが、それと比較して、ペルオキシド対照物(ラン#1)では、10のうちの0という極めて粘着性の強い表面を与えた。
【国際調査報告】