(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537308(P2017-537308A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】累積検知のシステム、方法、および装置
(51)【国際特許分類】
G01D 1/04 20060101AFI20171117BHJP
【FI】
G01D1/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-517095(P2017-517095)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月17日
(86)【国際出願番号】RU2014000743
(87)【国際公開番号】WO2016056933
(87)【国際公開日】20160414
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】315002955
【氏名又は名称】ノキア テクノロジーズ オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ガールシーブ イルヤ ボリソヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ベスソノフ アレクサンドル アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】キリコワ マリーナ ニコラエヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー マルク ジェームス アシュトン
(57)【要約】
本発明の例示的実施形態によると、システムが開示される。前記システムは、パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成される検知部と、前記検知部に電気的に結合され、前記検知部から前記生成された電気信号を受信するように構成され、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するようにさらに構成されるメモリスタ部と、前記メモリスタ部に電気的に結合され、前記メモリスタ部から前記生成された累積値を受信するように構成され、前記受信した累積値をデジタル化するようにさらに構成される処理部と、を備える。方法および装置も開示される。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成される検知部と、
前記検知部に電気的に結合され、前記検知部から前記生成された電気信号を受信するように構成され、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するようにさらに構成されるメモリスタ部と、
前記メモリスタ部に電気的に結合され、前記メモリスタ部から前記生成された累積値を受信するように構成され、前記受信した累積値をデジタル化するようにさらに構成される処理部と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記測定されるパラメータは、温度、抵抗、圧力、湿度、回転速度、直線加速度、磁界、輝度、電離放射線、消費電力、気体または水の流れ、化学的および生物学的パラメータ、ひずみ、機械的変形からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記メモリスタ部は1つまたは複数のメモリスタ要素を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記メモリスタ要素の少なくとも1つは、バルク金属酸化物、ハロゲン化物、窒化物、カルコゲン化物、有機ポリマーからなる群から選択される材料を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記メモリスタ部は、前記検知部および前記処理部に並列に結合される2つのメモリスタ要素を備える、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記メモリスタ要素の1つを選択的に前記検知部に結合するように構成される切替部をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記メモリスタ部は、前記処理部に並列に電気的に結合される2つ以上のメモリスタ要素を備え、
前記検知部は同じ数の検知要素を備え、
各検知要素は、メモリスタ要素の1つに直列に電気的に結合される、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理部は前記メモリスタ部にリセット信号を送信するように構成され、前記メモリスタ部は前記処理部から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開するように構成される、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記メモリスタ部にリセット信号を送信するように構成されるリセット部をさらに備え、前記メモリスタ部は前記リセット部から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開するように構成される、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記検知部および前記メモリスタ部は単一のデバイスを形成する、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記検知部および前記メモリスタ部は、遷移金属ジカルコゲン化物、部分的または完全に酸化した遷移金属ジカルコゲン化物、およびグラフェン状材料からなる群から選択される共有活物質を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記検知部および前記メモリスタ部は物理的に分離され、かつ相互に電気的に結合される、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
検知要素によってパラメータを測定することと、
前記測定に基づいて電気信号を生成することと、
前記電気信号を1つまたは複数のメモリスタ要素に提供することと、
前記メモリスタ要素の少なくとも1つによって前記電気信号の経時的な累積値を生成することと、
前記累積値を処理要素に提供することと、
前記処理要素によって前記累積値をデジタル化することと、
を含む方法。
【請求項14】
前記メモリスタ要素が閾値に達すると、前記処理要素によって前記メモリスタ要素をリセットして、前記検知要素によるパラメータの測定を再開させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記処理要素によって前記メモリスタ要素を定期的にリセットして、前記検知要素によるパラメータの測定を再開させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
2つ以上のメモリスタ要素が用いられ、切替要素によって前記メモリスタ要素を切り替え、前記メモリスタ要素を選択的に前記処理要素に結合することをさらに含む、請求項13から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
電子デバイスにおける、請求項13から16のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項18】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合され、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合、請求項13から16のいずれかに記載の方法を前記装置に実行させるプログラムコード命令を含む少なくとも1つのメモリと、を備える装置。
【請求項19】
パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成される検知要素と、
前記検知要素から前記生成された電気信号を受信し、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成される2つのメモリスタ要素と、
前記2つのメモリスタ要素を選択的に前記検知要素に結合するように構成される切替要素と、
前記2つのメモリスタ要素から前記生成された累積値を受信し、前記受信した累積値をデジタル化するように構成され、前記2つのメモリスタ要素に並列に電気的に結合される処理要素と、
を備える装置。
【請求項20】
前記切替要素にリセット信号を送信するように構成されるリセット要素をさらに備え、
前記切替要素は、前記2つのメモリスタ要素、前記処理要素、および前記リセット要素に電気的に結合されるクロスオーバスイッチを備え、
前記処理要素は、前記クロスオーバスイッチに制御信号を提供するように構成され、
前記クロスオーバスイッチは、前記処理要素から前記制御信号を受信し、前記2つのメモリスタ要素を前記検知要素および前記リセット要素に選択的に結合するように構成され、
前記2つのメモリスタ要素は、前記リセット要素に結合されると、前記リセット要素から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開させるように構成される、
請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記検知要素および前記切替要素に電気的に結合される極性検出器をさらに備え、
前記検知要素は、前記パラメータの測定に基づいて、反対の極性を有する電気信号を生成するように構成され、
前記切替要素は単極双投スイッチを備え、
前記極性検出器は、前記検知要素によって生成された前記電気信号の極性を検出し、前記検出した極性に基づいて前記単極双投スイッチを制御するように構成される、
請求項19に記載の装置。
【請求項22】
メモリスタ要素と、それに直列に電気的に結合される検知要素とのペアを2つ以上備え、
前記検知要素は、パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成され、
前記メモリスタ要素は、同じペアの前記検知要素から前記生成された電気信号を受信し、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成される装置であって、
前記メモリスタ要素から前記生成された累積値を受信し、前記受信した累積値をデジタル化するように構成され、前記2つ以上のペアに並列に電気的に結合される処理要素をさらに備える、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はマイクロエレクトロニクスに関する。特に、本出願はセンサおよび可変抵抗システムに関する。
【0002】
日常生活におけるものには様々なセンサが用いられているが、ほとんどの人はそれが備えられていることに気付いていない。エレクトロニクスの発展につれて、センサの利用は、温度、圧力、または流れの測定といった従来の分野から、例えばMARG(Magnetic Angular Rate Gravity)センサや他のセンサへと拡大している。ポテンショメータや圧力感知抵抗等のアナログセンサもいまだに広く用いられている。センサは特に、技術デバイスや電子デバイスに適用されている。
【0003】
技術デバイスの動作において、経時的に変化する継続的な物理パラメータを測定する必要があることがある。場合によっては、測定対象のパラメータの瞬時値ではなく、そのパラメータの経時的な累積値が求められる。測定した信号の値の積分は、付属のデジタルマイクロプロセッサを用いてセンサ信号を数値積分することによって行うことができる。
【0004】
以下に、請求の範囲に定められた本発明の主な実施形態について説明し、特定の定義を示す。
【0005】
本発明の一態様によると、システムが開示される。前記システムは、パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成される検知部と、前記検知部に電気的に結合され、前記検知部から前記生成された電気信号を受信するように構成され、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するようにさらに構成されるメモリスタ部と、を備える。前記システムは、前記メモリスタ部に電気的に結合され、前記メモリスタ部から前記生成された累積値を受信するように構成され、前記受信した累積値をデジタル化するようにさらに構成される処理部も備える。
【0006】
前記システムは、例えば、検知システム、積分検知システム、またはパラメータの累積値を測定するためのシステムであってもよい。
【0007】
前記検知部は、例えば、前記検知部が配置された環境の1つまたは複数のパラメータ、すなわちパラメータの変化に反応することによって、測定を行うことができる。
【0008】
メモリスタ部とは、メモリスタ特性を有する部品を意味する。メモリスタ特性とは、例えば、印加された電圧および通過した電荷の履歴、すなわち、受信した電気信号の履歴に基づいて、抵抗の状態を保持する能力を意味する。
【0009】
前記メモリスタ部は、例えば固有のパラメータを変化させることで、前記受信した信号の経時的な累積値を生成できる。「経時的な累積値を生成する」とは、前記処理部によって解釈されうる値、例えば前記メモリスタ部の伝導率を表す値を生成することを意味する。前記受信した電気信号の経時的な累積値は、前記検知部によって測定されたパラメータの累積値を表すことができる。
【0010】
一実施形態において、前記処理部は、例えば、マイクロプロセッサおよびアナログデジタル変換器を備えてもよい。
【0011】
一実施形態によると、前記測定されるパラメータは、温度、抵抗、圧力、湿度、回転速度、直線加速度、磁界、輝度、電離放射線、消費電力、気体または水の流れ、化学的および生物学的パラメータ、ひずみ、機械的変形からなる群から選択される。前記検知部は、本発明の実施形態による他のパラメータを測定するように構成されてもよい。
【0012】
一実施形態によると、前記メモリスタ部は1つまたは複数のメモリスタ要素を備える。
【0013】
一実施形態によると、前記メモリスタ要素の少なくとも1つは、金属酸化物、ハロゲン化物、窒化物、カルコゲン化物、有機ポリマーからなる群から選択される材料を含む。本発明の実施形態によると、他のメモリスタ材料も使用可能である。
【0014】
一実施形態によると、前記メモリスタ部は、前記検知部および前記処理部に並列に結合される2つのメモリスタ要素を備える。
【0015】
一実施形態によると、前記システムは、前記メモリスタ要素の1つを選択的に前記検知部に結合するように構成される切替部をさらに備える。前記切替部は、単極双投スイッチ、クロスオーバスイッチ等の任意の適切なスイッチを備えてもよい。選択的な結合とは、前記メモリスタ要素を一度に1つ結合することを意味することも、両方を同時に結合することを意味することもある。
【0016】
一実施形態によると、前記メモリスタ部は、前記処理部に並列に電気的に結合される2つ以上のメモリスタ要素を備え、前記検知部は同じ数の検知要素を備える。本実施形態において、各検知要素は、前記メモリスタ要素の1つに直列に電気的に結合され、したがって前記メモリスタ要素は、結合された前記検知要素とペアを形成することができる。
【0017】
一実施形態によると、前記処理部は前記メモリスタ部にリセット信号を送信するように構成される。本実施形態による前記メモリスタ部は、前記処理部から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開するように構成される。測定の再開とは、元の状態に戻ってから、または事前に定義された状態へと状態を変更してから継続することを意味する。
【0018】
一実施形態によると、前記システムは、前記メモリスタ部にリセット信号を送信するように構成されるリセット部をさらに備えてもよく、前記メモリスタ部は、前記リセット部から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開するように構成される。
【0019】
一実施形態によると、前記検知部と前記メモリスタ部は単一のデバイスを形成する。一実施形態において、前記検知部および前記メモリスタ部は、遷移金属ジカルコゲン化物、部分的または完全に酸化した遷移金属ジカルコゲン化物、およびグラフェン状材料からなる群から選択される共有活物質を含む。このような活物質は、前記検知部と前記メモリスタ部によって形成される前記デバイスの活物質であってもよい。あるいは、前記活物質の一部のみが共有されてもよい。
【0020】
一実施形態によると、前記検知部と前記メモリスタ部は、物理的に分離され、かつ相互に電気的に結合される。言い換えると、本実施形態による前記検知部および前記メモリスタ部は、相互に電気的に結合される個々のモジュールまたはデバイスとして実装される。
【0021】
本発明の一態様によると、方法が開示される。前記方法は、検知要素によってパラメータを測定することと、前記測定に基づいて電気信号を生成することと、前記電気信号を1つまたは複数のメモリスタ要素に提供することと、前記メモリスタ要素の少なくとも1つによって前記電気信号の経時的な累積値を生成することと、前記累積値を処理要素に提供することと、前記処理要素によって前記累積値をデジタル化することと、を含む。
【0022】
前記方法は、パラメータを検知する方法、またはパラメータを累積検知する方法であってもよいが、これらに限定されない。
【0023】
一実施形態によると、前記方法は、前記メモリスタ要素が閾値に達すると、前記処理要素によって前記メモリスタ要素をリセットして、前記検知要素によるパラメータの測定を再開させることをさらに含む。前記メモリスタ要素が達する閾値は、前記メモリスタ要素に電気的に結合される閾値回路によって検出されてもよい。あるいは、一実施形態によると、前記方法は、前記処理要素によって前記メモリスタ要素を定期的にリセットして、前記検知要素によるパラメータの測定を再開させることを含むことができる。
【0024】
一実施形態によると、2つ以上のメモリスタ要素が用いられ、前記方法は、切替要素によって前記メモリスタ要素を切り替え、前記メモリスタ要素を選択的に前記処理要素に結合することをさらに含む。
【0025】
一実施形態によると、前述の実施形態の前記方法は、電子デバイスにおいて用いることができる。
【0026】
本発明の第3の態様によると、装置が開示される。前記装置は、少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサに結合され、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行された場合、前述の実施形態のいずれかによる方法を前記装置に実行させるプログラムコード命令を含む少なくとも1つのメモリと、を備える。
【0027】
本発明の第4の態様によると、装置が開示される。前記装置は、パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成される検知要素と、前記検知要素から前記生成された電気信号を受信し、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成される2つのメモリスタ要素と、前記2つのメモリスタ要素を選択的に前記検知要素に結合するように構成される切替要素と、前記2つのメモリスタ要素から前記生成された累積値を受信し、前記受信した累積値をデジタル化するように構成され、前記2つのメモリスタ要素に並列に電気的に結合される処理要素と、を備える。
【0028】
前記装置は、例えば、検知装置、またはパラメータを累積検知するための装置であってもよい。
【0029】
一実施形態によると、前記装置は、前記切替要素にリセット信号を送信するように構成されるリセット要素をさらに備える。本実施形態の前記切替要素は、前記2つのメモリスタ要素、前記処理要素、および前記リセット要素に電気的に結合されるクロスオーバスイッチを備える。前記処理要素は、前記クロスオーバスイッチに制御信号を提供するように構成され、前記クロスオーバスイッチは、前記処理要素から前記制御信号を受信し、前記2つのメモリスタ要素を前記検知要素および前記リセット要素に選択的に結合するように構成され、前記2つのメモリスタ要素は、前記リセット要素に結合されると、前記リセット要素から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開させるように構成される。
【0030】
一実施形態によると、前記装置は、前記検知要素および前記切替要素に電気的に結合される極性検出器をさらに備える。本実施形態の前記検知要素は、前記パラメータの測定に基づいて、反対の極性を有する電気信号を生成するように構成され、前記切替要素は単極双投スイッチを備え、前記極性検出器は、前記検知要素によって生成された前記電気信号の極性を検出するように構成される。前記極性スイッチは、前記検出した極性に基づいて前記単極双投スイッチを制御するようにさらに構成される。
【0031】
本発明の第5の態様によると、装置が開示される。前記装置は、メモリスタ要素と、それに直列に電気的に結合される検知要素とのペアを2つ以上備え、前記検知要素は、パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成され、前記メモリスタ要素は、同じペアの前記検知要素から前記生成された電気信号を受信し、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成される。前記装置は、前記メモリスタ要素から前記生成された累積値を受信し、前記受信した累積値をデジタル化するように構成され、前記2つ以上のペアに並列に電気的に結合される処理要素をさらに備える。
【0032】
前記装置は、例えば、検知装置、またはパラメータを累積検知するための装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の例示的実施形態のより包括的な理解のために、以下の添付の図面と関連付けて以下に説明を行う。
【0034】
【
図1】
図1aおよび
図1bは、実施形態によるシステムを示す図である。
【0035】
【
図2】
図2は、一実施形態による方法を示す図である。
【0036】
【
図3】
図3aから
図3cは、実施形態による装置を示す図である。
【0037】
本発明の例示的実施形態およびその潜在的な利点は、図面の
図1から
図3cを参照することによって理解される。本発明は、パラメータ検知のシステム、方法、および装置に関する。
【0038】
図1aは、本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。この図に示されるシステムは本発明の例示的実装であり、請求の範囲に記載されるシステムは本明細書に示す構造に限定されないことは当業者に明らかであろう。このシステムは、12として図示されるパラメータを測定する検知部11を備える。パラメータ12は、温度、抵抗、圧力、湿度、回転速度、直線加速度、磁界、輝度、電離放射線、消費電力、気体または水の流れ、化学的および生物学的パラメータ、ひずみ、機械的変形、またはその他のパラメータであってもよい。測定は継続的に行うことも、事前に決定された頻度で個別に行うこともできる。検知部11は、
図1には個々に示さない1つまたは複数の検知要素を備えてもよい。これらの要素は同時にまたは選択的に測定を行ってもよい。検知部11は、パラメータ12の測定に基づく電気信号13を生成するようにも構成される。つまり検知部11は、パラメータ12、またはパラメータ12の変化を測定し、この反応を電気信号13に変換する。検知部11は、例えば、物理的、化学的、または生物学的パラメータを、特定の電流または電圧の出力電気信号に変換するアナログセンサデバイスを備えてもよい。
【0039】
このシステムは、検知部11に電気的に結合され、生成された電気信号13を受信するように構成されたメモリスタ部14をさらに備える。メモリスタ部14は、受信した電気信号の経時的な累積値15を生成する。メモリスタ部14は、
図1には個々に示さない1つまたは複数のメモリスタ要素を備えてもよい。メモリスタ要素は、バルク金属酸化物、ハロゲン化物、窒化物、カルコゲン化物、有機ポリマーからなる群から選択される材料を含んでもよい。メモリスタ部14は、検知部11および処理部16に並列に結合される2つのメモリスタ要素を備えてもよい。このシステムは、メモリスタ要素の1つを選択的に検知部11に結合するように構成される切替部(
図1に図示しない)を備えてもよい。これによって2つのメモリスタ要素を、例えば、一度に1つずつ用いることが可能になる。メモリスタ要素は、二極のメモリスタまたは一極のメモリスタであってもよいが、これらに限定されない。
【0040】
メモリスタ部14のメモリスタ特性とは、例えば、このシステムに含まれる1つまたは複数のメモリスタ要素またはメモリスタ材料の伝導率は、その要素または材料内を流れる電流に依存し、より具体的には、該電流の経時的な積分に比例することを意味する。これはメモリスタ要素の「メモリ」機能と呼ぶこともできる。メモリスタ要素の伝導率はその中を流れる電気信号13の履歴に依存するからである。メモリスタ部14のこの特性を利用すると、メモリスタ部14が任意の瞬間に自部の状態(例えば伝導率)を監視することによって受信した電気信号13の、任意の時点までの累積値15を取得することができる。電気信号13はパラメータ12の測定に基づくため、メモリスタ部によって生成された累積値15を解析して、測定されたパラメータ12の累積値を表すこともできる。
【0041】
このシステムは、メモリスタ部14から生成された累積値15を受信するように構成される処理部16も備える。処理部16はさらに、受信した累積値15をデジタル化するようにさらに構成される。例えば、処理部16は、受信した値15をデジタル化するアナログデジタル変換器(Analog-Digital Converter:ADC)を備えてもよい。処理部16は、デジタル化された値を格納するメモリ、およびマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはプログラマブルロジックアレイを備えてもよい。
【0042】
例示的実施形態において、処理部16は、リセット信号17をメモリスタ部14に送信してもよく、この場合、メモリスタ部14は、処理部からリセット信号17を受信し、該信号17を受信すると測定を再開するように構成される。一実施形態において、このシステムは、メモリスタ部14にリセット信号を送信するように構成されるリセット部(
図1に示さない)をさらに備えてもよく、この場合、メモリスタ部14は、リセット部からリセット信号を受信し、該信号を受信すると測定を再開するように構成される。リセット部は、独自のマイクロプロセッサを備えても、および/またはメモリスタ部から読み込まれた特定の閾値に反応するように構成されてもよい。後者の場合、リセット部は閾値回路であってもよい。
【0043】
一部のメモリスタ部14の特性により、リセット機能が必要になる場合がある。例えば、メモリスタ部14でメモリスタ要素を用いる場合、このメモリスタ要素は閾値を有してもよく、この閾値を超えると、適用された電気信号13に基づくメモリスタ要素の内部状態(例えば伝導率)の変化が停止する。つまり、メモリスタ要素が経時的な累積値15をそれ以上生成できなくなる。メモリスタ部14においてリセット信号17を受信すると、メモリスタ部14は元の状態に戻るか、または事前に定義された状態に切り替わり、受信した電気信号13の累積値15の生成を継続する。リセット信号17は、例えば、プログラムされた電圧極性、振幅、およびパルス幅を有する単一の電気パルスであっても、プログラムされた周波数とパルス数を有する一連の電気パルスであってもよい。
【0044】
例示的実施形態によると、検知部11およびメモリスタ部14は、例えば、
図1aにおいて破線で図示する単一のデバイス18内の別々のモジュールとすることもできる。
【0045】
図1bに示す一実施形態において、検知部とメモリスタ部(文字SおよびMで示す)はデバイス18を形成する。言い換えると、検知部11およびメモリスタ部14は、1つのデバイス18内の領域、例えば検知領域およびメモリスタ領域(
図1bにおいて破線で区切られている)として実装することができ、この場合、システムはデバイス18を備える。一実施形態において、検知部11およびメモリスタ部14は、遷移金属ジカルコゲン化物、部分的または完全に酸化した遷移金属ジカルコゲン化物、およびグラフェン状材料からなる群から選択される共有活物質19を含む。このような活物質19は、検知部11とメモリスタ部14によって形成されるデバイス18の活物質であってもよい。あるいは、活物質19の一部のみが共有されてもよい。検知部11およびメモリスタ部14は、少なくとも1つの共有電極を備えることもできる。
図1bに示す実施形態において、電気信号13は、共有活物質19を介して直接メモリスタ領域で受信されてもよい。検知部11とメモリスタ部14は、垂直の積層、または平面構造を形成するように配置されてもよい。
【0047】
一実施形態において、検知部11とメモリスタ部14は、物理的に分離され、かつ相互に電気的に結合されることもできる。結合は並列であっても直列であってもよい。
【0048】
前述の実施形態の技術的効果は、システムにおいて電力が経済的に消費されることである。これは、個々に測定されたパラメータ値の入力を受信するためにプロセッサを頻繁に駆動する必要がなくなるためであり、また、累積値の積分または生成が処理部16ではなくメモリスタ部14によって実行されるためである。処理部16は、より長い期間非駆動状態にされてもよく、これによって消費電力が削減される。
【0049】
図2は、一実施形態による方法の概要を示す図である。この方法によると、21において、検知要素によってパラメータが測定される。この測定値は電気信号へと変換される。すなわち、測定に基づいて信号が生成される。22に示すとおり、この電気信号はメモリスタ要素に送信される。この後、23において、提供された信号の累積値がメモリスタ要素によって生成される。この累積値は、システムの実施形態に関連して上述したように生成することができる。24において、生成された累積値がメモリスタ要素によって処理要素に提供され、25において、処理要素によって累積値がデジタル化される。この方法は、20に示すように、メモリスタ要素をリセットして測定を再開するという任意のステップを含んでもよい。一実施形態において、メモリスタ要素は、閾値に達するとリセットされる。一実施形態において、メモリスタ要素は定期的にリセットすることができる。一実施形態によると、リセットは処理要素によって行うことができる。あるいは、一実施形態によると、メモリスタ要素は別個のリセット要素によってリセットされてもよい。
【0050】
一実施形態において、2つ以上のメモリスタ要素を用いる場合、この方法は、切替要素によってそれらのメモリスタ要素を切り替え、メモリスタ要素を選択的に処理要素に結合することをさらに含んでもよい。
【0051】
前述の実施形態による方法およびシステムは、累積検知から利益を得る可能性のある電子デバイスにおいて用いることもできる。このようなデバイスの例として、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、フィットネストラッカー、eスキンデバイス、eノーズデバイス、および、温度状態、空気清浄度等のモニタのような独立型センサ等の、検知能力を有するデバイスが挙げられる。自動車用電装品も、前述の方法およびシステムから利益を得る場合がある。これらの方法およびシステムは、モノのインターネット(IoT)、スマートシティ、スマートハウス等の概念に用いることができる可能性もある。
【0052】
図3aは、例示的実施形態による装置を示す図である。この装置は、パラメータを測定し、測定に基づいて電気信号を生成するように構成された検知要素31を備える。この装置は、2つのメモリスタ要素32、切替要素33、およびリセット要素34も備える。メモリスタ要素32は、検知要素31から生成された電気信号を受信し、該受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成され、切替要素33は、該2つのメモリスタ要素32を検知要素31およびリセット要素34に選択的に結合する。この装置は、該2つのメモリスタ要素32に並列に電気的に結合される処理要素35をさらに備える。処理要素35は、該2つのメモリスタ要素32から生成された累積値を受信し、該受信した累積値をデジタル化するように構成される。
図3aに示す例において、切替要素33はクロスオーバスイッチとすることもでき、少なくとも1つのメモリスタ要素32が常に検知要素31に結合されているように、リセット要素34と検知要素31を切り替えることができる。これによって、リセットを実行するわずかな期間においても有効な信号が失われないようにする効果が得られる。処理要素35は、切替要素に制御信号36を提供してもよい。例えば、一方の位置において、検知要素31からの入力を第1のメモリスタ要素に接続でき、リセット要素34を第2のメモリスタ要素に接続してその状態をリセットすることができる。他方の位置では逆の組合せを提供する。
【0053】
図3bは、本発明の一実施形態による別の装置を示す概略図である。本実施形態において、検知要素31の出力は反対の極性を有することができる。この装置は、並列に接続された2つのメモリスタ要素32も備える。また、本実施形態の装置は単極双投スイッチ303および極性検出器304を備える。スイッチ303は、検知要素31からの信号の極性に応じて極性検出器304によって制御できる。
【0054】
図3cは一実施形態を示す図である。本実施形態によると、装置はメモリスタ要素302と、それに直列に電気的に結合される検知要素301とのペアを2つ以上備える。検知要素301は、パラメータを測定し、測定に基づいて電気信号を生成するように構成される。一実施形態において、すべての検知要素301を異なる振幅用に調整してもよい。メモリスタ要素302は、同じペアの検知要素301から生成された電気信号を受信し、受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成される。この装置は、メモリスタ要素から生成された累積値を受信し、受信した累積値をデジタル化するように構成される処理要素35をさらに備える。処理要素35は、
図3cに示すように、2つ以上のペアに並列に電気的に結合される。
【0055】
本実施形態によって、オーバーフローを起こさずかつ精度よく、広範な振幅の値を測定することが可能になる。
【0056】
本発明による装置は、1つまたは複数のメモリと通信する少なくとも1つのプロセッサを備えてもよい。このプロセッサは、メモリに対して情報を格納、制御、追加、および/または読取してもよい。メモリは、プロセッサによって実行されうる1つまたは複数のコンピュータプログラムを含んでもよい。プロセッサは、装置の機能を制御してもよい。プロセッサは、制御信号を有効にすることによって装置の他の要素を制御してもよい。プロセッサは、例えば、回路、少なくとも1つのプロセッサコア、デジタル信号プロセッサが付属する1つまたは複数のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサが付属しない1つまたは複数のプロセッサ、1つまたは複数のコプロセッサ、1つまたは複数のマルチコアプロセッサ、1つまたは複数のコントローラ、処理回路、1つまたは複数のコンピュータ、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-Programmable Gate Array:FPGA)等の集積回路を含む他の様々な処理要素、あるいはこれらの何らかの組合せを含む、様々な手段として実装されてもよい。プロセッサによって送信および受信される信号には、任意の数の異なる有線または無線ネットワーキング技術が伴ってもよい。
【0057】
メモリとしては、例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、および/または同様の要素を含めることができる。例えば、揮発性メモリはランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)であってもよく、これはダイナミックおよび/またはスタティックRAM、オンチップまたはオフチップキャッシュメモリ、および/または同様の要素であってもよい。不揮発性メモリは内蔵および/または取外し可能であってもよく、例えば、読取専用メモリ、フラッシュメモリ、例えばハードディスク、フロッピーディスクドライブ、磁気テープ等の磁気記憶装置、光学ディスクドライブおよび/または媒体、不揮発性ランダムアクセスメモリ(Non-Volatile Random Access Memory:NVRAM)、および/または同様の要素であってもよい。必要に応じて、本明細書において説明した様々な機能を異なる順序および/または同時に実行してもよい。また、必要に応じて、前述の機能の1つまたは複数を任意選択にしても、組み合わせてもよい。
【0058】
前述の実施形態によって、経時的かつ継続的に変化するパラメータの累積値を正確に検知する技術的効果が得られる。これは、本発明によると、信号の数値補間が不要になるからである。前述の実施形態の一部またはすべてによって、生成およびデジタル化される連続信号の部分が失われないという技術的効果も得られる。
【0059】
本発明の実施形態によるシステム、方法、および装置は、電子デバイス、適応エレクトロニクス、神経形態学的エレクトロニクス、フレキシブルエレクトロニクス、および複数の機能を有する高度な電子デバイス(eスキンやeノーズ等)の電気回路の測定に用いてもよい。本発明は、限られた消費電力および計算リソースで機能する必要があるデバイスに用いることができる。
【0060】
本発明の様々な態様を個々の請求項に記載するが、本発明の他の態様は、記載した実施形態および/または従属項の機能と独立項の機能との他の組合せを含み、請求の範囲に明示的に記載した組合せのみに限られない。
【0061】
本明細書において本発明の例示的実施形態を説明したが、これらの説明は限定的な意味で解釈されるべきではない。むしろ、添付の請求の範囲に定められた本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形および修正を加えうる。
【手続補正書】
【提出日】2017年4月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータを測定し、前記測定に基づいて電気信号を生成するように構成される検知要素と、
前記検知要素から前記生成された電気信号を受信し、前記受信した電気信号の経時的な累積値を生成するように構成される2つのメモリスタ要素と、
前記2つのメモリスタ要素を選択的に前記検知要素に結合するように構成される切替要素と、
前記2つのメモリスタ要素から前記生成された累積値を受信し、前記受信した累積値をデジタル化するように構成され、前記2つのメモリスタ要素に並列に電気的に結合される処理要素と、
を備える装置。
【請求項2】
前記切替要素にリセット信号を送信するように構成されるリセット要素をさらに備える、請求書1に記載の装置。
【請求項3】
前記切替要素は、前記2つのメモリスタ要素、前記処理要素、および前記リセット要素に電気的に結合されるクロスオーバスイッチを備える、請求書2に記載の装置。
【請求項4】
前記処理要素は、前記クロスオーバスイッチに制御信号を提供するように構成される、請求書3に記載の装置。
【請求項5】
前記クロスオーバスイッチは、前記処理要素から前記制御信号を受信し、前記2つのメモリスタ要素を前記検知要素および前記リセット要素に選択的に結合するように構成される、請求書4に記載の装置。
【請求項6】
前記2つのメモリスタ要素は、前記リセット要素に結合されると、前記リセット要素から前記リセット信号を受信し、前記信号を受信すると測定を再開させるように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記検知要素および前記切替要素に電気的に結合される極性検出器をさらに備える、請求書1に記載の装置。
【請求項8】
前記検知要素は、前記パラメータの測定に基づいて、反対の極性を有する電気信号を生成するように構成される、請求書7に記載の装置。
【請求項9】
前記切替要素は単極双投スイッチを備える、請求書8に記載の装置。
【請求項10】
前記極性検出器は、前記検知要素によって生成された前記電気信号の極性を検出し、前記検出した極性に基づいて前記単極双投スイッチを制御するように構成される、請求項9に記載の装置。
【国際調査報告】