(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537426(P2017-537426A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】定量的な二次電子検出
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20171117BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20171117BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/06 A
G02B21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-512395(P2017-512395)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月12日
(86)【国際出願番号】US2015056787
(87)【国際公開番号】WO2016077047
(87)【国際公開日】20160519
(31)【優先権主張番号】62/067,163
(32)【優先日】2014年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/918,560
(32)【優先日】2015年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517069295
【氏名又は名称】サイエンストゥモロー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョティ アグローワル、ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】サブハダルシ ナヤク、サブハダルシ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シー ジョイ、デイビッド
【テーマコード(参考)】
2H052
5C030
5C033
【Fターム(参考)】
2H052AA07
2H052AF10
5C030BC09
5C033NN01
5C033NN02
5C033NN04
5C033NP01
5C033NP08
(57)【要約】
固体デバイス(SSD)ベースの電子計数装置のアレイを用いる定量的な二次電子検出(QSED)が、半導体、ナノ材料、生体試料などの複数の材料に対する臨界寸法計測測定を可能にする(
図3)。複数の方法及びデバイスが、多数の固体検出器を含む固体検出器のアレイを用いる二次電子の定量的な検出に効果を奏する。アレイは、複数の固体検出器を用いて多数の二次電子を感知し、計数モードにおける時間/デジタル変換器回路を用いて多数の二次電子をカウントする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量的二次電子検出デバイスであって、
多数の二次電子のカウントを集計する回路と、
多数の二次電子のカウントを格納する回路と、
時間/デジタル変換器を有する回路と、
複数の二次電子を分散パターンで前記固体検出器のアレイの上へ引き付ける電子デバイスまたは磁気デバイスと、
固体検出器のアレイと
を備え、
前記固体検出器のアレイは、グリッドを有し、前記グリッドは、
少なくとも4行の固体検出器の複数の行と、少なくとも4列の固体検出器の複数の列と、固体検出器の複数のセルとを含み、
複数の前記固体検出器は、滞留時間にわたって、多数の二次電子を検出及びカウントする、
定量的二次電子検出デバイス。
【請求項2】
前記電子デバイスまたは前記磁気デバイスは、ファラデーケージまたは磁気レンズを有する、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項3】
さらに、前記固体検出器のアレイは、多数の二次電子を検出及びカウントし、前記電子ビームは、標準エミッタと、複数の揮発性試料に適した低電力エミッタと、高電力エミッタとを含む、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項4】
複数の前記固体検出器は、
計数装置内部回路への接続と、
PN接合と
を有する複数の単独電子検出器である、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項5】
前記固体検出器のアレイは、少なくとも1000行の固体検出器と、少なくとも1000列の固体検出器とを含むグリッドである、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項6】
前記PN接合は、2マイクロ秒に等しいか又はそれより小さい応答時間を有し、
前記アレイは、81列の前記固体検出器と、81行の前記固体検出器とを有し、
前記アレイは、毎秒およそ1000万の電子を放射する電子ビームのためのものである、請求項3に記載の定量的二次電子検出。
【請求項7】
前記複数の単独電子固体検出器は、シリコンダイオード検出器、CMOS検出器、またはCCD検出器を含む、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項8】
前記固体検出器は、逆バイアスモードにおいて正電位で動作する、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項9】
前記グリッドは、正方形、矩形、菱形、円形、及び楕円を含む前記グループから選択される形状である、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項10】
既存の二次電子検出器を置換するためのキットをさらに備え、前記キットは、前記固体検出器のアレイからのデータ出力を処理するためのソフトウェアを含む、請求項1に記載の定量的二次電子検出。
【請求項11】
複数の固体検出器を有する固体検出器のアレイを用いる複数の二次電子の定量的検出のための方法であって、
荷電粒子のビームをターゲット上で走査する段階と、
ファラデーケージを用いて多数の二次電子を引き付ける段階と、
固体検出器のアレイに、多数の二次電子を分配する段階と、
複数の前記固体検出器を用いて前記多数の二次電子を検出し、電流変化及び電圧変化を生成する段階と、
前記電流変化または前記電圧変化の何れか、または前記電流変化及び前記電圧変化の両方を含む前記データを、前記固体検出器のアレイに集計する段階と、
計数モードにおける時間/デジタル変換器回路を用いて前記多数の二次電子をカウントする段階と、
前記カウントを画素に割り当てる段階と、
複数の前記固体検出器をリセットする段階と
を備える
方法。
【請求項12】
前記固体検出器のアレイを用いて前記多数の二次電子を検出する前記段階は、時間/デジタル変換器回路を用いて前記多数の二次電子をカウントする前記段階の前に、行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数のもっと後の段階をさらに備え、前記固体検出器のアレイは、リセットされ、前記方法は、繰り返され、ポアソン統計が前記データに適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記多数の固体検出器のうちの1つの固体検出器が、フォトダイオード検出器、CMOS検出器、及びCCD検出器の前記グループから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
逆バイアスモードにおいて正電位で前記固体検出器を動作させる段階をさらに備える請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記検出器は、レンズ、レンズのセット、またはファラデーケージと一体化される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記多数の二次電子のうち2つ以上が滞留時間にわたって固体検出器のうち1つに到達する可能性を10パーセント未満の確率に設定するように、前記固体検出器の滞留時間を設定し、前記多数の固体検出器を調整する段階をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項18】
複数の固体検出器を含む固体検出器のアレイを用いて複数の荷電粒子または電離放射線の検出に関わるノイズを低減するための方法であって、前記電離放射線または前記複数の荷電粒子は、固体検出器のアレイに分配され、
前記複数の固体検出器を用いて電離放射線または複数の荷電粒子を検出する段階であって、パルスが、前記複数の固体検出器に生成され、格納される、段階と、
デジタルデータのストリームを生成する計数モードにおける時間/デジタル変換器回路を用いて電離放射線または複数の荷電粒子をカウントする段階と、
前記デジタルデータのストリームに対してポアソンプロセスの前記適用である段階と、
ポアソンプロセスの複数の結果を集計する段階と、
前記カウントを画素に割り当てる段階と
を備える
方法。
【請求項19】
前記固体検出器はさらに、単独電子固体検出器または単独光子電離放射線検出器であり、前記時間/デジタル変換器回路は、時間/デジタル変換器のアレイである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記デジタルデータのストリームを多重化及び逆多重化する段階をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項21】
複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方の検出のための定量的検出デバイスであって、
複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方のカウントを集計する回路と、
複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方の前記カウントを格納する回路と、
時間/デジタル変換器を有する回路と、
物体上の単独スポットから、複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方を、前記固体検出器のアレイに、分散させるデバイスと、
固体検出器のアレイと
を備え、
前記固体検出器のアレイは、
少なくとも4行の固体検出器の複数の行と、少なくとも4列の固体検出器の複数の列とを含むグリッドを有し、さらに、前記グリッドは、少なくとも多数の固体検出器を含み、よりさらに、前記多数の固体検出器は、複数の前記固体検出器の前記スイッチング周波数により分割された前記アレイに衝突する複数の光子または粒子の割合より大きい、
定量的検出デバイス。
【請求項22】
前記アレイは、最適数の固体検出器を含み、用いられる特定のスイッチング周波数において、単独光子または粒子が独立事象において前記検出器に衝突する可能性が、少なくとも90%である、請求項21に記載の定量的検出デバイス。
【請求項23】
グリッド状パターンで前記試料を反復して照らす、複数の光子または粒子のエミッタをさらに備え、前記アレイは、前記試料による放射及び反射のうち少なくとも一方がなされる複数の粒子及び複数の光子のうち少なくとも一方を検出するために用いられる、請求項21に記載の定量的検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照] 2014年10月22日に出願された米国仮特許出願第62/067,163号が参照により組み込まれている。本出願は、2014年10月22日に出願された該米国仮特許出願第62/067,163号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本開示の分野は、試料により放射される粒子または光子の量を決定するよう共に動作する複数の固体検出器アレイに関する。本開示の他の複数の態様は、固体デバイスアレイを用いて二次電子をカウントするための検出器及び複数の方法、及び固体デバイスアレイに由来するデータによるノイズを低減するための方法を含む。
【0003】
走査電子顕微鏡(SEM)は、材料科学、電子工学、エネルギー、医療科学、並びに国家の及び公共の福祉にきわめて重要な他の専門分野における基本ツールである。二次電子(SE)のトポグラフィックな撮像が、SEMにおいて最も一般的な動作モードである。しかしながら、その現在の制限の関係で、SE撮像においてその制限がなければ実現され得る進歩が妨げられている。
【0004】
SE撮像は、最も一般には、シンチレータ−光電子増倍管ベースのEverhart−Thornley(E−T)検出器またはそれのあるバリエーションを用いて実行される。E−T検出器は、検出器に対する角度、傾斜、エッジ効果、及びシャドーイングに起因するSE収集差異から起こるコントラストを有する複数の対象物の全ての側面を撮像する。
図1は、従来のEverhart−Thornley(E−T)シンチレータ−光電子増倍管の、試料の表面層から脱出した複数のSEから画像を形成する操作上の機構を図示する。電子ビームが画素毎に試料をラスタすると、E−T検出器は、低エネルギー(5〜50eV)の複数のSEを収集する。さらに、ファラデーケージが、E−T検出器の不可欠な部分である。+10kVに維持されている検出器の表面が、複数のSEをさらに加速させる。シンチレータ層は、それらのSEにより衝突されると、複数の光子を放射する。それらの光子は、下へ光パイプを進み、光電陰極に当たり、電気信号に変換され、増幅される。アナログ/デジタル変換器(ADC)が、信号をデジタル画素に変換する。
【0005】
検出器における構成要素の数、及び信号処理は、ノイズ、歪み、及び非線形性の原因になりやすい。従って、E−T信号を用いる測定が、高分解能で、低減された定量的な有用性(Reimer,1985)を有する。
図2において、同一構造のアレイにわたって走査するよう、SEMトレースが電子ビームを用いて実行され(Joy,2012)、E−T検出器から記録された。ビームが第1対象物の左縁部に到達すると、信号は、急激に上昇する。結果として、アナログフィードバックループが、システムゲイン及びDCオフセットを低減し始める。ビームがその対象物の他の側面上を走査し続けると、フィードバックループがまだ信号を下へ駆動しているので、信号のレベルは低下するが、さらにより速く減衰する。結果として、信号は、フィードバックによりかなり歪められ、増加したDCオフセット、抑制されたダイナミックレンジ(
図2参照)、画素から画素へと変動する「暗」レベル、低信号対ノイズ比(SNR)、及びコントラストとSE収集との間の非線形関係を示す(Joy,2012;Merli,1995;Kazemian,2007;Postek,2012;Bogner,2007;Oho,2007;Joy,1992;Isaacson,1977;ITRS,2011:Metrology Challenges)。DoE電子散乱ワークショップ(DOE_BES,2007)が、電子顕微鏡法における広範囲の研究の必要性を認識している。同様に、半導体産業が、計測学的課題を認識している(ITRS,2011)。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、複数の固体検出器(例えば、ダイオード、キャパシタ、CCD)の複数のアレイを用いて複数の光子または粒子を検出するための複数のデバイス及び複数の方法を備える。本発明は、複数の固体検出器アレイ、並びに使用の方法を備え、アレイは、デジタル計数装置として、複数の単独光子または粒子を検出及びカウントすることができる複数の固体検出器を含む。
【0007】
それらの固体検出器は、それらが、二次電子をカウントするために再び利用可能となり得るようにリセットされるよう構成される。アレイは、1つまたは複数の固体検出器から、出力をデジタル形式に変換する計数モードにおけるデジタル変換器への電気的接続も含み、その接続は、多重化され得る。における複数の固体検出器から生成されたパルスのカウントが、単独画素に関連する。ポアソン統計が、このデータに対して用いられ得る。
【0008】
好ましい実施形態において、二次電子検出器が、固体検出器アレイにおいて二次電子を分散パターンで方向付けるファラデーケージにより構成され得、パターンは、そのアレイの固体検出器の大部分を包囲する。固体検出器は、複数の単独二次電子を検出及びカウントするよう構成され得、そのアレイは、複数の行及び複数の列の固体検出器からなるグリッドである。固体検出器アレイは、計数モードにおける時間/デジタル変換器回路と、集計する回路と、多数の光子または粒子のカウントを格納する回路とをさらに含む。
【0009】
別の好ましい実施形態が、固体検出器の構成であり、複数の固体検出器が、ポアソン統計誤差補正を用いて試料から1つの画素を検出するよう構成される。固体検出器の構成は、試料の複数の画素の段階的な検出をさらに可能にする。
【0010】
固体デバイス(SSD)ベースの電子計数装置のアレイを用いる定量的な二次電子検出(QSED)は、半導体、ナノ材料、及び生体試料などの複数の材料における臨界寸法計測測定を可能にする(
図3)。
【0011】
本発明の他の複数の実施形態は、多数の固体検出器を含む固体検出器アレイを用いて二次電子の定量的な検出の方法を用いる。方法は、ターゲットに荷電粒子のビームを走査する段階と、ファラデーケージを用いて多数の二次電子を引き付ける段階と、固体検出器のアレイに多数の二次電子を分配する段階と、多数の固体検出器を用いて多数の二次電子を検出する段階と、計数モードにおける時間/デジタル変換器回路を用いて多数の二次電子をカウントする段階と、固体検出器アレイにカウントの結果を集計する段階と、そのカウントを画素に割り当てる段階と、固体検出器アレイをリセットする段階とを備える。
【0012】
固体検出器のアレイを用いて荷電粒子または電離放射線の検出に関わるノイズを低減する方法は、電離された放射線または複数の荷電粒子をアレイに分散させる段階と、複数の固体検出器を用いて検出する段階であって、パルスが生成され固体検出器に格納される、段階と、画素に割り当てられたデジタルデータのストリームを生成する集積回路デジタル計数装置を用いてそのパルスをカウントする段階と、ポアソン統計分析をデジタルデータのストリームに適用する段階と、次に、新しい画素で複数の前の段階を繰り返す段階とを備える。
【0013】
従って、本発明の複数の実施形態は、固有の固体検出器の前述した利点から恩恵を受けると同時に、特に、従来技術と比較してより低いノイズで二次電子撮像を達成し得る。
【0014】
[デジタル電子検出器の応用]
用いられる基板/材料に依存する定量的なデジタル電子/光子検出器は、マイクロスコピーにおける二次電子検出器から、位置感応型検出器、暗視カメラの赤外線検出器、超速時間的分光法における単独光子検出器、CCDカメラ、エネルギー分散型X線検出器などにわたり、多種多様の応用に用いられ得る。
【0015】
電子顕微鏡法において、標準、大型で非効率的なEverhart−Thornley検出器は、はるかにより効率的なSi系のCMOS技術の電子検出器に置換され得る。これらのSi検出器は、低消費電力を有し、迅速で、向上した量子効率で動作するようにスマートに設計されるであろう。例えば、Si、Ge、またはGaAsウェハが、標準CMOS工程を用いてデジタル二次電子検出器を製造するために用いられ得る。Si、Ge、及びGaAsのバンドギャップが、0.66eVから1.43eVまでの範囲内にあるので、これらの材料は、空乏幅、キャリアの拡散長、及び電場の強度に依存する小さい逆バイアス電圧の有無を問わず、二次電子の検出のために用いられ得る。
【0016】
同一材料は、比較的に低い信号対ノイズ比で量子効率を増大すること、及び検出器の設計におけるわずかな変更で増加した感度によって、電子顕微鏡法における効率的な直接後方散乱型電子検出器としても、用いられ得る。
【0017】
Ge及びInGaAsも、標準CMOS製造工程を用いて近赤外線検出器を製造するために用いられ得る。中及び遠赤外線放射の検出に対して、Hg添加のCdTeのような、はるかにより小さいバンドギャップ(0から0.5eVまでの範囲のバンドギャップ)の材料が、用いられ得る。
【0018】
また、3eVから4.5eVまでの範囲のバンドギャップエネルギーを有するSiC及びダイヤモンドのような新世代材料が、いかなるシンチレータまたは光ファイバ結合なしで、直接X線検出器を製造するために用いられ得る。これらの材料は、高感度及び高量子効率で深UV光を検出し得る検出器を製造するためにも用いられ得る。
【0019】
位置感応型検出器の実装が行われる限り、当業者は、基板の前面及び背面を用いてダブルPN接合を生成し、一方の接合をX位置の検出用のために用い、他方の接合をY位置の検出のために用い得る。フォトダイオードアレイを生成することによって、次に、ダイオードの表面抵抗における変更を測定することによっても実装され得る。
【0020】
質量分光解析において、それらも、質量分析器により分析され得るイオン検出のための電子増倍管として用いられ得る。回折パターンの具現化のため、相検出を伴う直接デジタル単独電子検出器は、TEMにおいて使用されるようなものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ET検出器によるSE検出が、計測に適しないノイズ及び歪みのいくつかの原因に関わることを示す図である。
【
図2】ベースライン「黒」が下へシフトされ、フィードバックループにDC復元が存在しないことを示す図である。
【
図3】直接SE検出が、ノイズ源を取り除くSSDアレイにより達成され得ることを示す図である。
【0022】
【
図4】(a)衝突電離が電子−正孔対を生成することを示し、(b)電場中のe−h対の動力学を示し、(c)p‐n接合にわたるビルトイン電圧を示し、(d)計数装置ICが多数のSEをカウントすることを示す。
【0023】
【
図5】ビーム電流(I
B)の機能として8ビットのグレースケールに正規化されたQSEDデバイス電流(強度、J)を示す。(SNR=34dB、DCオフセット=−35dB、線形(R2=0.992))
【
図6】格納されたキャパシタ電荷から複数のSEをカウントすることを示す。
【
図7】SSDの処理段階のためのマスクを示す。マスク0番(不図示)が、位置合わせマークのために用いられた。
【0024】
【
図8】信頼できるSE検出のためにどのくらいのSSDが必要かを決定するよう、様々なスイッチング周波数で多数のダイオードを変動させるための計算を示す。0.9を示す線は、アレイにおける一SSDにより電子が検出される確率が90%であることに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[発明]
直接デジタル二次電子撮像が、ナノスケールの定量的な測定を実行できるより良い方法である。QSEDは、固体検出器(例えば、ダイオード、CMOS、CCD)のアレイに基づき、各デバイスは、「一回限り」の電子計数装置として動作し、次に、リセットされる。固体検出器(SSD)ベースの電子計数装置のアレイを用いる定量的な二次電子検出(QSED)は、臨界寸法計測を可能にする(
図3)。QSEDの特性は、上に列挙された技術的課題に取り組む(DOE_BES,2007;ITRS,2011;Zajac,2012;Barbi,2012)。
【0026】
[二次電子を検出する技術的アプローチ]
電子ビームで物体を走査する段階、当該物体からの出力放射線を固体検出器アレイ上へ方向付ける段階と、多数の二次電子を検出する段階と、多数の二次電子を一カウントする段階と、固体検出器をリセットする段階とが、複数の定量性画像を取得するために続いて行われる。試料をラスタする画素に電子ビームが滞留すると、それらの二次電子がリリースされ、ファラデーケージ、レンズ、及び/またはガイドのうちの1つまたは複数へ向けて拡散される。
【0027】
図3に図示されているQSEDは、複数のSEを収集する固体検出器(SSD)のアレイからなる。そのようなSSD(pn接合ダイオード)の働きが、
図4に図示されている。n側ではL
pでp側ではL
nである1拡散長内に入射SEにより生成された過剰な少数キャリア(電子−●、正孔−○)が、pn接合(幅W)へ拡散される。それらは次に、ビルトインポテンシャルΨ
oにより接合にわたって掃引され、パルスが生成される。次に、画素の電子カウントが1つ増加され、PN接合がリセットされる。
【0028】
二次電子が固体検出器アレイに衝突し、カウントのためのパルスを生成する。滞留期間の終わりにおいて、固体検出器の全てからのカウントが、各画素に対して集計される。ビームは次に、画像上の次の画素に対応する次の点に移動する。これらの段階は、全ての画素がカバーされるまで続く。最終的に、それらのカウントは、ターゲット上のエリアに対応してX×Yのマトリクスに正規化され、グレースケールで較正された画像を生成する。
【0029】
単独二次電子検出事象により生成されたパルスは、時間/デジタル変換器を用いてデジタル形式に変換される。時間/デジタル変換器は、1つずつパルスを処理する場合に最適に動作する。時間/デジタル変換器は、1以上の比で、固体デバイスを時間/デジタル変換器に多重化する。
【0030】
一実施形態において(数1参照)、アレイは、検出器により用いられる特定のスイッチング周波数に対して、固体検出器に衝突する電子の平均数に画素滞留時間を乗じたものより多いまたは等しい最小数の固体デバイスを含み、その粒子または放射線は、固体デバイスに測定可能な検出事象をトリガすることができる。
【0031】
ポアソン統計も、どのように固体デバイスアレイ毎に最適数の固体デバイスを決定するかについてのことを我々に示す。アレイにおける最適数の固体デバイスは、特定のスイッチング周波数に対する計算により決定され、1つまたはより少ない二次電子が滞留時間毎にアレイの任意の特定の固体検出器に衝突する確率は、90%より高い。
【0032】
この計算は、数2の使用に関わる。各測定またはカウントが、同一画素滞留時間において同一固体検出器に衝突する別の粒子または光子の影響とは無関係の独立事象である場合、ポアソン統計に基づく統計処理が最良に働く。数2は、粒子または光子(例えば、電子検出器に対する電子)が、独立事象において検出器と相互作用する確率を決定するために用いられ得る。統計処理が、電子顕微鏡検出器に関連するノイズを低減させるために役に立つ技術である。90%より高い確率を有する多数の固体検出器を含むアレイが好ましい。
【0033】
本定量的な二次電子デバイスの設計の一目標は、単独電子検出を達成するよう、アレイ(n)において十分なSSDを有することである。さらに、デバイスの最適動作は、独立事象である各検出に依存し、ポアソン統計処理を可能にする。数1において、nは、アレイにおけるデバイスの数を示し、mは、スイッチング周波数を示し、qは、画素滞留時間を示し、τは、毎秒カウントされた電子を示す。
【数1】
【0034】
各SE検出が独立事象である確率が少なくとも90パーセントある場合、デジタル計数装置が、ポアソン統計がアレイにおける固体ダイオードの最適数を推定するために用いられることを可能にし得る。この確率は、数2として表されている。数2におけるkは、ダイオード毎の電子数を示し、μは、ダイオード毎の電子の平均数を示す。
【数2】
【0035】
[光子または荷電粒子を検出する技術的アプローチ]
光子ビームを用いて物体を走査する段階と、当該物体からの出力放射線を固体検出器アレイ上へ方向付ける段階と、多数の光子を検出する段階と、多数の光子をカウントする段階と、固体検出器をリセットする段階とが、複数の定量性画像を取得するために続けて行われる。光子ビームが、ラスタする画素に滞留すると、複数の光子がその検出器へ向けて反射される。QSEDの別の実施形態は、光子を収集する一レンズ、複数のレンズ、または光ガイド及び固体検出器(アバランシェフォトダイオード)のアレイ、及び、固体検出器のアレイを計数装置に接続させる内部回路からなる。SSD(pn接合ダイオード)は、n側ではL
pでp側ではL
nである1拡散長内に入射光子により生成され、p+n−接合(幅W)へ拡散される過剰な少数キャリア(電子−●、正孔−○)を含む。それらは次に、ビルトインポテンシャルΨ
oにより接合にわたって掃引され、パルスが生成される。次に、画素の光子カウントが1つ増加され、PN接合がリセットされる。
【0036】
[アレイ毎の検出器数の最適化の技術的アプローチ]
一実施形態において(数1)、アレイは、検出器により用いられる特定のスイッチング周波数に対して、固体検出器に衝突する電子の平均数に画素滞留時間を乗じたものより多いまたは等しい最小数の固体デバイスを含み、当該粒子または放射線は、固体デバイスに測定可能な検出事象をトリガすることができる。
【0037】
固体ダイオードの最適数は、数2の使用によっても決定され得る。各測定またはカウントが、同一画素滞留時間において同一固体検出器に衝突する別の粒子または光子の影響とは無関係の独立事象である場合、ポアソン統計が最良に働く。数2は、粒子または光子(例えば、電子検出器に対する電子)が、独立事象において検出器と相互作用する確率を決定するために用いられ得る。
【0038】
本モデリング実験の結果が、
図8のグラフに示されている。
図8のグラフにおける黒線が、90%の確率を示す。よって、90%より高い確率で示されている構成も好ましい。この計算は、新しい構成をもたらす異なるスイッチング周波数においても行われ得る。
【0039】
[応用] QSEDは、顕微鏡ユーザ団体の間のナノスケールの動的研究に関連する科学的課題の解決に役に立つであろう(Barbi,2012)。例えば、高κゲート、薄膜誘電体キャパシタ、インターフェース層、及び16nm未満のノードにおける相互接続バリアに対するCu/低κ配線工程(BEOL)サブ5nmの範囲におけるギャップのナノスケール性質の測定(難易度の高い計測課題(ITRS,2011))である。これらの科学的課題に取り組むことが、半導体(ITRS,2011;Abbott,2012)、触媒作用(Zajac,2012)、ナノ技術、医療デバイス、及びクリーンエネルギー(DOE_BES)における技術的な進歩に直接利益を与えるであろう。
【0040】
[結果]
発明者らは、p‐n接合を含んだ固体検出器アレイを設計して製造し、以下の研究発見が行われた。
1)QSEDはもはや、その動作範囲において、−30dBより大きな検出器ノイズを生成しなかった。
【0041】
SEの直接デジタル検出として、幾何効率(Joy,1996)に等しい検出量子効率(DQE)で特性づけられる、QSEDを用いて改善されたSNRは、ノイズレスとなる閾値であり得る(Faruqi,2005)。
2)ゼロに近いDCオフセットが、全ての動作条件に対して達成された。
【0042】
ダイナミックレンジが、40dBであると決定され、SE検出においてDCオフセットは観察されなかった。
3)QSED画像のコントラストは、SE収集とは(測定値の±5%以内で)線形関係に近い関係を達成した。
【0043】
画素信号とビーム電流との間の(±4%の偏差での)線形関係に近い関係が観察された。ゼロDCオフセットとの線形関係が、SEM画像(CD−SEM)から、定量的でナノスケールの臨界寸法測定を可能にした。
【0044】
現代の複数のSEM(例えば、ADDA3を有するAgilent8500 FE−SEM)を用いて、信号の大部分が、アナログからデジタルへの変換器(ADC)及びデジタルからアナログへの変換器(DAC)を用いてデジタル方式で扱われる(Olympus)。次世代のアナログ/デジタル変換器は、ダイナミックレンジを最大14ビットまで改善し、画像サイズが12000×12000まで拡大され、画像取得速度が、アクティブモードにおいて600×600画素で最大25fpsまで増加される。
【0045】
「SSDアレイ」
図6において機能が図示されているQSEDデバイスは、10000×10000(または、代替的に、1000列及び1000行の固体検出器)のPN接合アレイによりSE収集を達成するよう、設計され形成された。3〜5eVのエネルギーを有する二次電子は、SEをカウントするベースを形成する衝突電離をもたらすために十分なエネルギーを与えることが示された。または代替的に、81列及び81行の固体検出器を有する複数のデバイスも、典型的な電力の電子ビームを用いて1Mhzで動作されている場合に、複数のSEを確実にカウントし得ることも示され得る。
【0046】
QSEDデバイスの一実施形態が、二次電子検出器として用いられるための単独電子固体検出器のアレイであり、検出器は、毎秒およそ1000万の電子の電子ストリームにより衝突され、アレイは、少なくとも4列の単独電子固体検出器と少なくとも4行の単独電子固体検出器とを含み、当該グリッドは、少なくとも6561セルの単独電子固体検出器を含む。単独電子固体検出器のアレイが正方形の構成であり、固体検出器のサイクルが少なくとも1Mhzまたはそれより速い場合、定量的なデータを提供する。単独電子固体検出器のアレイの他の形状は、当業者の能力内で作られる。上記単独電子固体検出器のアレイの好ましい構成が、81列の単独電子固体検出器及び81行の単独電子固体検出器である。
【0047】
本単独電子固体検出器のアレイのより好ましい構成が、1000列の単独電子固体検出器及び1000行の単独電子固体検出器であり、10kHzまたはそれより速いサイクルを有する。
【0048】
「固体デバイス」
固体デバイス(SSD)におけるp‐n接合ベースの容量は、(約2cm×2cmのアクティブエリアにおいて約10000×10000の)密度を増加するよう小型化され得る。SSDに格納され得る電荷の量が、ビルトイン電圧及びその容量性により制限される。撮像の空間的及び時間的分解能を改善するべく、p‐n接合にわたる高容量性及び高いビルトイン電圧が望ましい。
【0049】
固体デバイスが、電子と衝突すると、光子、電圧、または電流のパルスを生成し得る。各PN接合ダイオードユニットは、SEの検出器として動作し得る。
図6の右上隅に概略的に示されているように、SEは、ダイオードにおいて電子−正孔対を生成する(Maes,1995)。
【0050】
過剰な少数キャリア(p領域にある電子(●)及びn領域にある正孔(○))が、接合へ向けて拡散される。1拡散長(n側及びp側上のそれぞれのL
p及びL
n)を生成した少数電荷キャリアは、それらが再度結合する前に、PN接合(幅x
d)に到達し得る(delAlamo,1987)。一旦インターフェースに到達すると、それらは、Ψ
0により接合にわたって掃引される。SEがいつ収集されるかを決定する工程は、これにより、パルスをトリガする(表1及び
図4)。10
3V/cmまでの電場が、0.72Vのビルトイン電位(Ψ
0)に対して空乏域(<1μm)にわたって観察された。その空乏域は、一SSDの大部分のスペースを占めている。
【表1】
【0051】
[容量性]
一旦生成されると、電子−正孔対(ehp)が、空乏域において、pn接合キャパシタへ導く反対方向に分離される。検出器の効率を増加するべく、容量性(C
j)が、最大化されなければならない。しかしながら、デバイスの応答時間(τ)は、時定数であるτ=RC
jの通り、減少する。RC
jは、p型基板を周りに有するpn接合を形成するn+領域から決定される。ドーパント集中プロファイルが、スイッチング時間及び寄生遅延に影響を及ぼす。時定数が2μsまでとして、相Iデバイスの平均C
jが、0.13pFであり、Rが12kΩである。時定数であるRCは、より速い応答のために<2nsまでさらに減少され得る。スイッチングにおける変動を最小化するよう、R及びC
jにおける変動の原因を制御しなければならない。
【0052】
[SSDアレイ]
理想的には、固体検出器全体は、SEを収集するための準備ができているp‐n接合空乏域からなるべきである。絶縁体、金属パッド、及び他の回路は、SE収集のために利用可能な空間を減少する。検出器の最適エリアがコンピュータ処理された。例えば、イオン注入または貫通穴が、SE収集のために前面のエリアを解放し、背面のルーティング及びパッドのコンタクトを可能にする。さらに、信号は、デイジーチェーンにおける複数のキャパシタを接続することによって向上され得る。(デイジーチェーンにおける)キャパシタ群の動作をずらすことによって、SE収集のオフ時間が最小化され得る。(+150Vから+300Vまでの)バイアス電圧が、SEを検出器に向けて引き付けるよう、ファラデーケージに印加された。適切なバイアス電圧が、十分なSEがその検出器に到達することを保証し得る。
【0053】
[IC製造工程によるQSEDデバイス]
1μm×1μmのデバイスの10000×10000のアレイに小型化され得る1000列及び1000行の固体検出器のアレイにおいて、100μm×100μmのp‐n接合エリアにわたって、SE信号が収集された。
【0054】
QSEDは、馬蹄型キャパシタを作るための6つのマスクを利用した(
図7)。直径150mmで約0.75mmの厚みで、非常に正規でフラットな表面を得るように研磨された単独結晶p−Siウェハが用いられた。所望の回路を生成する複数の処理段階が、p‐n接合ベースの容量性デバイスのための基板工程(FEOL)処理及び配線工程(BEOL)処理または金属接触という2つの主な部分にグループ化された。ドーピング化学及び寸法公差は、信号対ノイズ比を向上するよう厳密に制御された。ドーピング密度及び寸法の一例が、表1に示されている。複数のさらなる実施形態は、当業者の対応範囲内である。固体検出器アレイは、標準プレーナフォトリソグラフィック及び化学処理工程段階シーケンスを介して製造され得、その間において、SSD及びICがウェハに徐々に生成される。
【0055】
[SE計数装置集積回路]
QSEDにおいて、固体検出器は、デバイス(例えば、ダイオード、キャパシタ、CCD)であり、各デバイスが、「一回限り」の電子計数装置として動作し、次に、リセットされる。ICは、計数装置の機能をQSEDに提供する。時間0では、SEが衝突し、複数の正孔−電子対を生成するよう電離する。読み出された電子は次に、パルス電流に対して「1」を足す。可能な場合、電荷キャリアは、すぐに再結合し、デバイスは、リセットされる。pn電位が平衡(電流=0、電位=Ψ
0)に戻り、次のSEを検出するための準備ができている。SE並びにSSDが独立で無相関なので、ポアソン統計はこの状況に適用し、入射ビーム電流I
B(pA)に対してラスタする画素毎に平均数Nの電子が生成され、電荷は、滞留時間τ(μs)において測定され、次に、N=6I
Bδτとなる。
【0056】
可能にする技術が、迅速な相補的金属酸化物半導体(CMOS)の時間/デジタル変換器回路に基づく電子計数装置である。SE検出が、たとえただ1つの単独SEの検出にも応答して速い電気パルスを生成する(
図7参照)。シンプルなレベルシフトを用いて、このパルスは、画素内に組み込まれるデジタルCMOS回路をトリガし得る。単独SEの感度が、サブナノ秒のタイミング精度と共に達成された。タイミング情報が、画素回路においてデジタル化されるので、ノイズレスで読み出される。
【0057】
時間/デジタル変換器回路の多重化されたトランジスタアレイが、特性づけのための複数の固体検出器への高密度アクセスを提供するために用いられる(Realov,2009)。時間/デジタル変換器の多重化されたトランジスタアレイ回路は、特性づけのための複数のデバイスへの高密度アクセスを提供するよう設計され製造された。オンチップの電流−電圧特性づけシステムによれば、多重化されたデバイスの大型で密集したSSDアレイの迅速な特性づけを可能にし、スイッチ抵抗の影響を取り除く(Faruqi,2005)。
【0058】
[引用書誌及び参照文献]
[Barbi,2011]:N Barbi et al(2011).A photomultiplier SSD for imaging,Microscopy&Microanalysis,17(2). [Barbi,2012]:Barbi etal;Pulse Tor,LLC;Scintillator−Photomultiplier Combination&Electron Microscope…, [Bogner,2007]:Bogner A et al.,A history of SEM developments:"wet−STEM"imaging,Micron,38(4),2007. [delAlamo,1987]:delAlamo JA and R.M.Swanson,Solid State Electron.30,11(1987)1127−1136. [DOE_BES,2007]:Futurescience needs and opportunities for electron scattering:BES workshop,Mar 2007. [Faruqi,2005a]:AR Faruqi et al;Direct single electron detection with a CMOS detector for electron microscopy; Nuclear Instruments&Methods;A546;2005. [Faruqi,2005b]:AR Faruqi et al,Noiseless direct detection of electrons for EM,Nuclr Instr;A546(1−2),2005. [ITRS,2011]:Intern Tech Roadmap for Semiconductors (ITRS);Semiconductor Industry Assoc(SIA),2011. [FEI,2010]http://www.fei.com/uploadedfiles/documents/content/introduction_to_em_booklet_july_10.pdf. [Goldstein,1990]:Principles of Analytical Electron Microscopy;Goldstein J,Joy DC,Romig AD;1990. [Hitachi]SU8040;www.hitachi−hta.com/sites/default/files/literature/HTD−E187−HitachiSU8040datasheet.pdf. [Isaacson,1977]:M Isaacson et al;Observation of atomic diffus
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【0059】
[用語の解釈]
カウントとは、項目または事象の数の個別の測定であり、そのインクリメントが1または0の何れかである。時間/デジタル変換器とは、アナログデータの分散パケットを取り、1つずつそれらをデジタルの数字に変換する計数装置として動作する回路または回路のアレイである。SEとは、二次電子の略語である。SEMとは、走査電子顕微鏡の略語である。SSDとは、固体検出器の略語である。QSEDデバイスとは、定量的な二次電子検出デバイスである。E−T検出器とは、Everhart−Thornley(E−T)検出器に基づくシンチレータ−光電子増倍管である。CMOS相補的金属酸化物半導体とは、集積回路を構築するための技術である。"CMOS"は、特定のスタイルのデジタル回路設計、及び、集積回路(チップ)にその回路を実装するために用いられる工程のファミリーの両方を指す。アレイとは、共に配置される複数のユニットのセットである。複数のユニットは、論理的繰り返しのパターンで配置される。複数のアレイが、線形、矩形、菱形、または異なる2次元の形状において配置されているように説明されている。しかしながら、個々のユニットは、3次元の形状を有する。カウントとは、項目または事象の数の個別の測定である。時間/デジタル変換器とは、アナログデータの分散パケットを取り、1つずつそれらをデジタルの数字に変換する計数装置として動作する回路または回路のアレイである。
【手続補正書】
【提出日】2017年4月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量的二次電子検出デバイスであって、
多数の二次電子のカウントを集計する回路と、
多数の二次電子のカウントを格納する回路と、
時間/デジタル変換器を有する回路と、
複数の二次電子を分散パターンで固体検出器のアレイの上へ引き付ける電子デバイスまたは磁気デバイスと
を備え、
前記固体検出器のアレイは、グリッドを有し、前記グリッドは、
少なくとも4行の固体検出器の複数の行と、少なくとも4列の前記固体検出器の複数の列と、前記固体検出器の複数のセルとを含み、
複数の前記固体検出器は、滞留時間にわたって、多数の二次電子を検出及びカウントする、
定量的二次電子検出デバイス。
【請求項2】
さらに、前記固体検出器のアレイは、多数の二次電子を検出及びカウントし、電子ビームは、標準エミッタと、複数の揮発性試料に適した低電力エミッタと、高電力エミッタとを含む、請求項1に記載の定量的二次電子検出デバイス。
【請求項3】
複数の前記固体検出器は、
計数装置内部回路への接続と、
PN接合と
を有する複数の単独電子検出器である、請求項1又は2に記載の定量的二次電子検出デバイス。
【請求項4】
前記PN接合は、2マイクロ秒に等しいか又はそれより小さい応答時間を有し、
前記アレイは、81列の前記固体検出器と、81行の前記固体検出器とを有し、
前記アレイは、毎秒およそ1000万の電子を放射する電子ビームのためのものである、請求項3に記載の定量的二次電子検出デバイス。
【請求項5】
前記固体検出器は、逆バイアスモードにおいて正電位で動作する、請求項1から4の何れか一項に記載の定量的二次電子検出デバイス。
【請求項6】
既存の二次電子検出器を置換するためのキットをさらに備え、前記キットは、前記固体検出器のアレイからのデータ出力を処理するためのソフトウェアを含む、請求項1から5の何れか一項に記載の定量的二次電子検出デバイス。
【請求項7】
固体検出器のアレイを用いる複数の二次電子の定量的検出のための方法であって、
荷電粒子のビームをターゲット上で走査する段階と、
ファラデーケージを用いて多数の二次電子を引き付ける段階と、
前記固体検出器のアレイに、多数の二次電子を分配する段階と、
前記固体検出器のアレイを用いて前記多数の二次電子を検出し、電流変化及び電圧変化を生成する段階と、
前記電流変化または前記電圧変化の何れか、または前記電流変化及び前記電圧変化の両方を含むデータを、前記固体検出器のアレイに集計する段階と、
計数モードにおける時間/デジタル変換器回路を用いて前記多数の二次電子をカウントする段階と、
前記カウントを画素に割り当てる段階と、
前記固体検出器のアレイをリセットする段階と
を備える
方法。
【請求項8】
前記固体検出器のアレイを用いて前記多数の二次電子を検出する前記段階は、前記時間/デジタル変換器回路を用いて前記多数の二次電子をカウントする前記段階の前に、行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数のもっと後の段階をさらに備え、前記固体検出器のアレイは、リセットされ、前記方法は、繰り返され、ポアソン統計が前記データに適用される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
逆バイアスモードにおいて正電位で前記固体検出器を動作させる段階をさらに備える請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
多数の二次電子のうち2つ以上が滞留時間にわたって前記固体検出器のうち1つに到達する可能性を10パーセント未満の確率に設定するように、前記固体検出器の前記滞留時間を設定し、前記多数の固体検出器を調整する段階をさらに備える請求項7から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
固体検出器のアレイを用いて複数の荷電粒子または電離放射線の検出に関わるノイズを低減するための方法であって、前記電離放射線または前記複数の荷電粒子は、前記固体検出器のアレイに分配され、前記方法は、
前記固体検出器を用いて電離放射線または複数の荷電粒子を検出する段階であって、パルスが、前記固体検出器に生成され、格納される、段階と、
デジタルデータのストリームを生成する計数モードにおける時間/デジタル変換器回路を用いて電離放射線または複数の荷電粒子をカウントする段階と、
前記デジタルデータのストリームに対してポアソンプロセスを適用する段階と、
前記ポアソンプロセスの複数の結果を集計する段階と、
カウントを画素に割り当てる段階と
を備える
方法。
【請求項13】
複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方の検出のための定量的検出デバイスであって、
複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方のカウントを集計する回路と、
複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方の前記カウントを格納する回路と、
時間/デジタル変換器を有する回路と、
物体上の単独スポットから、複数の光子及び複数の粒子のうち少なくとも一方を、固体検出器のアレイに、分散させるデバイスと
を備え、
前記固体検出器のアレイは、
少なくとも4行の前記固体検出器の複数の行と、少なくとも4列の前記固体検出器の複数の列とを含むグリッドを有し、さらに、前記グリッドは、少なくとも多数の固体検出器を含み、さらに、前記多数の固体検出器は、複数の前記固体検出器のスイッチング周波数により分割された前記アレイに衝突する複数の光子または粒子の割合より大きい、
定量的検出デバイス。
【請求項14】
前記アレイは、最適数の固体検出器を含み、用いられる特定のスイッチング周波数において、単独光子または粒子が独立事象において前記固体検出器に衝突する可能性が、少なくとも90%である、請求項13に記載の定量的検出デバイス。
【請求項15】
グリッド状パターンで試料を反復して照らす、複数の光子または粒子のエミッタをさらに備え、前記アレイは、前記試料による放射及び反射のうち少なくとも一方がなされる複数の粒子及び複数の光子のうち少なくとも一方を検出するために用いられる、請求項13又は14に記載の定量的検出デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
それらの固体検出器は、それらが、二次電子をカウントするために再び利用可能となり得るようにリセットされるよう構成される。アレイは、1つまたは複数の固体検出器から、出力をデジタル形式に変換する計数モードにおけるデジタル変換器への電気的接続も含み、その接続は、多重化され得る。
複数の固体検出器から生成されたパルスのカウントが、単独画素に関連する。ポアソン統計が、このデータに対して用いられ得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
[デジタル電子検出器の応用] 用いられる基板/材料に依存する定量的なデジタル電子/光子検出器は、マイクロスコピーにおける二次電子検出器から、位置感応型検出器、暗視カメラの赤外線検出器、超速時間的分光法における単独光子検出器、CCDカメラ、エネルギー分散型X線検出器などにわたり、多種多様の応用
を生成する手段として展開され得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
電子顕微鏡法において、標準、大型で非効率的なEverhart−Thornley検出器は、はるかにより効率的なSi系のCMOS技術の電子検出器に置換され得る。これらのSi検出器は、低消費電力を有し、迅速で、向上した量子効率で動作するようにスマートに設計されるであろう。例えば、Si、Ge、またはGaAsウェハが、標準CMOS工程を用いてデジタル二次電子検出器を製造するために用いられ得る。Si、Ge、及びGaAsのバンドギャップが、0.66eVから1.43eVまでの範囲内にあるので、これらの材料は、空乏幅、キャリアの拡散長、及び電場の強度に依存する小さい逆バイアス電圧
で二次電子の検出のために用いられ得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
[二次電子を検出する技術的アプローチ] 電子ビームで物体を走査する段階、当該物体からの出力放射線を固体検出器アレイ上へ方向付ける段階と、多数の二次電子を検出する段階と、多数の二次電子を
カウントする段階と、固体検出器をリセットする段階とが、複数の定量性画像を取得するために続いて行われる。試料をラスタする画素に電子ビームが滞留すると、それらの二次電子がリリースされ、ファラデーケージ、レンズ、及び/またはガイドのうちの1つまたは複数へ向けて拡散される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
この計算は、数2の使用に関わる。各測定またはカウントが、同一画素滞留時間において同一固体検出器に衝突する別の
電子の影響とは無関係の独立事象である場合、ポアソン統計に基づく統計処理が最良に働く。数2は、粒子または光子(例えば、電子検出器に対する電子)が、独立事象において検出器と相互作用する確率を決定するために用いられ得る。統計処理が、電子顕微鏡検出器に関連するノイズを低減させるために役に立つ技術である。90%より高い確率を有する多数の固体検出器を含むアレイが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
本定量的な二次電子デバイスの設計の
目標は、単独電子検出を達成するよう、アレイ(n)において十分なSSDを有することである。さらに、デバイスの最適動作は、独立事象である各検出に依存し、ポアソン統計処理を可能にする。数1において、nは、アレイにおけるデバイスの数を示し、mは、スイッチング周波数を示し、qは、画素滞留時間を示し、τは、毎秒カウントされた電子を示す。
【数1】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
[アレイ毎の検出器数の最適化の技術的アプローチ] 一実施形態において(数1)、アレイは、検出器により用いられる特定のスイッチング周波数に対して、固体検出器に衝突する電子の平均数に画素滞留時間を乗じたものより多いまたは等しい最小数の固体デバイスを含み、当該
電子は、固体デバイスに測定可能な検出事象をトリガすることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
過剰な少数キャリア(p領域にある電子(●)及びn領域にある正孔(○))が、接合へ向けて拡散される。1拡散長(n側及びp側上のそれぞれのL
p及びL
n)を生成した少数電荷キャリアは、それらが再度結合する前に、PN接合(幅x
d)に到達し得る(delAlamo,1987)。一旦インターフェースに到達すると、それらは、Ψ
0により接合にわたって掃引される。SEがいつ収集されるかを決定する工程は、これにより、パルスをトリガする(表1及び
図4)。10
3V/cmまでの電場が、0.72Vのビルトイン電位(
Φo)に対して空乏域(<1μm)にわたって観察された。その空乏域は、一SSDの大部分のスペースを占めている。
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】