特表2017-537456(P2017-537456A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-537456カプセル化されたリチウム粒子並びにその製造及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537456(P2017-537456A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】カプセル化されたリチウム粒子並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/50 20130101AFI20171117BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20171117BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171117BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20171117BHJP
   H01G 11/22 20130101ALI20171117BHJP
【FI】
   H01G11/50
   H01M4/40
   H01M4/36 C
   H01G11/06
   H01G11/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-516104(P2017-516104)
(86)(22)【出願日】2015年9月21日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月23日
(86)【国際出願番号】US2015051118
(87)【国際公開番号】WO2016048850
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】14/493,886
(32)【優先日】2014年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ガドカリー,キショアー プルショタム
(72)【発明者】
【氏名】ハステッド,アンドルー フレイツ
(72)【発明者】
【氏名】カダム,ラフル スルヤカント
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB06
5E078BA26
5E078BA42
5E078BA62
5E078BA71
5H050AA19
5H050BA05
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB12
5H050EA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA18
5H050HA01
(57)【要約】
リチウム、リチウム金属合金、又はそれらの組合せのうち少なくとも1つからなるコア(110)と、リチウム塩、油、及び必要に応じて結合剤からなるシェル(120)とを含む、カプセル化されたリチウム粒子(100)であって、シェルはコアをカプセル化し、粒子の大きさが10〜500μmである、カプセル化されたリチウム粒子(100)。該粒子の製造方法、及び、キャパシタ又は電池などの電気デバイスにおける該粒子の使用についても開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム、リチウム金属合金、又はそれらの組合せのうち少なくとも1つからなるコアと、
リチウム塩及び油からなるシェルと、
を含み、前記シェルが前記コアをカプセル化し、前記粒子が1〜500μmの直径を有することを特徴とする、カプセル化されたリチウム粒子。
【請求項2】
前記コアが、前記粒子の総重量に基づいて、50〜90質量%で存在し、
前記シェルが、前記粒子の総重量に基づいて、50〜10質量%で存在し、
前記シェルが0.01〜100μmの平均厚さを有し、
前記シェルが、前記シェルの総重量に基づいて、70〜99.9質量%の前記リチウム塩、及び0.1〜30質量%の前記油を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記リチウム塩が、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiFSO、リチウムビスオキサレートボラート、リチウムフルオロオキサレートボラート及びそれらの組合せからなる群より選択され、前記油が、鉱油、変圧器油又は絶縁油、シリコーン油、シリコーン系油、フッ素化炭化水素、植物系油、ホワイト油、液体パラフィン、流動パラフィン、液化石油、又はそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリシロキサン、又はそれらの組合せからなるポリマー群より選択される結合剤を有する前記シェルをさらに含み、前記結合剤が、前記粒子の総重量に基づいて、0.1〜2質量%の量で存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
前記リチウム金属合金が、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ビスマス、及びそれらの組合せからなる金属の群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2014年9月23日出願の米国特許出願第14/493,886号の米国法典第35編特許法第120条に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本出願は、その優先権は主張しないが、「リチウム複合粒子(LITHIUM COMPOSITE PARTICLES)」という発明の名称の下、本願の権利者が所有し譲渡された2012年11月9日出願の米国特許出願第13/673019号に関連する。
【技術分野】
【0003】
本明細書に記載される各刊行物又は特許文献の開示全体が、参照することによって本明細書に援用される。
【0004】
本開示は、リチウム材料に関し、より詳細には、カプセル化されたリチウム粒子、及び、リチウムイオンキャパシタなどの電極におけるカプセル化されたリチウム粒子の使用に関する。
【発明の概要】
【0005】
実施形態において、本開示は、カプセル化されたリチウム粒子及び、電極上に粒子を堆積させる方法を提供し、このカプセル化された粒子は、酸素及び水分に対して安定であり、リチウムイオンキャパシタ又はリチウム電池などの電気化学デバイスに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】例示的なカプセル化されたリチウム粒子の断面図
図1B】本開示のカプセル化されたリチウム粒子の層を有する、例示的な電極構造の断面図
図2A】LiPFでコーティングされたリチウム金属粒子を含む本開示のカプセル化されたLi粒子のSEM顕微鏡写真
図2B】LiPFでコーティングされたリチウム金属粒子を含む本開示のカプセル化されたLi粒子のSEM顕微鏡写真
図3】さまざまなカプセル化されたリチウム粉末を用いて手動でコーティングしたアノード又は負極を有するリチウムイオンキャパシタ(LIC)の容積のラゴンプロット
図4】本開示の単一段階噴霧コーティング法から得られた本開示のカプセル化されたリチウム粉末でコーティングしたアノード又は負極を有する選択されたリチウムイオンキャパシタ(LIC)、及び比較例についての容積ラゴンプロット
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示のさまざまな実施形態は、存在する場合には図面を参照しつつ、詳細に説明される。さまざまな実施形態についての言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ、限定される。さらには、本明細書に記載される例は、限定するものではなく、単に、特許請求される本発明の多くの予定されている実施形態の幾つかを説明しているにすぎない。
【0008】
定義
「カプセル化された」、「カプセル化」、「複合」等の用語は、リチウム含有コア粒子のことを指し、該粒子は、リチウム金属塩、油、及び、場合によっては結合剤を含む、カプセル化するシェルを有する。
【0009】
「リチウムイオンキャパシタ」、「LIC」等の用語は、スーパーキャパシタエネルギー貯蔵デバイスに関連したハイブリッド型のキャパシタのことを指す。ハイブリッド型のキャパシタは、静電的かつ電気化学的に電荷を蓄積することができる。活性炭はカソードとして使用することができる。LICのアノードは、リチウムイオン源をプレドーピング可能な炭素材料でありうる。プレドーピングは、アノードの電位を低下させ、他のスーパーキャパシタと比較して比較的高い出力電圧を可能にする。両方の電極に電荷二重層機構に基づいたエネルギーを貯蔵する電気化学二重層キャパシタ(EDLC)とは異なり、ハイブリッドリチウムイオンキャパシタは、アノードにおけるエネルギー貯蔵がファラデー機構を介するのに対し、電荷二重層機構を介してカソードにエネルギーを貯蔵する。結果的に、このようなデバイスにおけるエネルギー密度は、電力をEDLCの約3〜4倍に維持する一方で、EDLCに比べて5倍も高い。エネルギー貯蔵のファラデー機構にもかかわらず、これらのデバイスは、なお、200,000サイクルを超える非常に高いサイクル寿命を示し、デバイスを多くの用途にとって魅力的なものにする。LICは、陽極に高表面積(典型的には1000m/gを超える)炭素を使用し、アノードに低多孔率かつ低表面積(典型的には300m/gを超える)のインターカレートする炭素を使用するが、この電極配置はリチウムイオンの高速化学的インターカレーション及び脱インターカレーションを支援する。充電及び放電の間、アニオンの吸着及び脱着は陽極において発生するのに対し、リチウムのインターカレーション及び脱インターカレーションは負極のバルク内で生じる。陽極における吸着及び脱着は、負極におけるリチウムイオンのインターカレーション及び脱インターカレーションと比べて比較的早い非ファラデー反応である。電解質中に含まれるリチウムイオンはデバイスの動作にとって十分ではないことから、リチウムイオン源が必要とされる。リチウムイオンキャパシタ内のこの追加のリチウムイオン源は、負極/アノード電極内へのリチウム金属の挿入によって利用可能となりうる。商業的に、リチウム金属箔は、リチウムをリチウムイオンキャパシタの負極/アノード電極内に挿入するために、負極/アノード電極と短絡される。この取り組みは、デバイスにおけるリチウム金属電極の使用を必要とし、多くの安全性の問題を生じる。あるいは、リチウム箔から得られるリチウム金属はまた、負極/アノード電極内に電気化学的にあらかじめ挿入されてもよい。しかしながら、短絡及び電気化学的な技法は、複雑かつ困難な面倒な技法であり、実用的価値がない。リチウムの短絡又は電気化学的ドーピング法が提示する問題を回避するため、本開示は、安定なカプセル化されたリチウム粒子粉末の層がアノードの表面に形成され、その表面リチウム粉末がアノードにおけるリチウム挿入のためのリチウム源として作用する、製造方法を提供する。
【0010】
「含む」、「含有する」等の用語は、包括的であるがそれらに限定しない、すなわち、包含的であって、排他的ではないことを意味する。
【0011】
本開示の実施形態の説明に用いられる、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収量、流量、圧力、粘度等の値、及びそれらの範囲、又は要素の寸法等の値、及びそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、複合材料、濃度、構成部品、製造物品、又は使用配合物の調製に用いられる典型的な測定及び取扱方法を通じて;方法を実行するために用いられる開始材料または成分の製造、供給源、または純度の違いを通じて;及び、同様の考慮すべき事項によって生じ得る数量のばらつきのことを指す。「約」という用語はまた、組成物又は配合物の劣化に起因して、特定の初期濃度又は混合とは異なる量、及び、組成物又は配合物の混合又は処理に起因して、特定の初期濃度または混合とは異なる量を包含するものである。
【0012】
「随意的な」又は「場合によっては」とは、その後に記載される事象又は
状況が、生じても生じなくてもよいこと、並びに、その記載が、その事象又は状況が生じる場合及び生じない場合を含むことを意味する。
【0013】
本明細書において用いられる場合、名詞は、他に明記されない限り、少なくとも1つ、又は1つ以上の対象を指す。
【0014】
当業者に周知の略語が用いられる場合がある(例えば、時間についての「h」又は「hrs」、グラムについての「g」又は「gm」、ミリリットルについての「mL」、及び室温についての「rt」、ナノメートルについての「nm」等の略語)。
【0015】
成分、原材料、添加剤、寸法、条件、時間等の態様、及びそれらの範囲について開示される特定の及び好ましい値は、単に例証の目的であり、他の定められた値又は定められた範囲内にある他の値を排除するものではない。本開示の組成物及び方法は、明示又は黙示の中間の値及び範囲を含む、本明細書に記載されるいずれかの値、又は、その値、特定の値、さらに特定の値、及び好ましい値のいずれかの組合せを含みうる。
【0016】
リチウム金属は、有機金属及びポリマー合成、並びに充電式のリチウム電池、ウルトラキャパシタ、及び、リチウムイオン電池などの電気化学デバイスを含む、幅広い用途に用いられる。このような電気化学デバイスは、電話、タブレット、及びノートブック型コンピュータなどの携帯電子デバイス、並びに電気自動車及びハイブリッド車などの自動車を含む、多くの状況で使用されうる。しかしながら、多くの形態におけるリチウム金属は、空気を含む酸素含有環境において、あるいは水又は水蒸気への曝露の際に発火及び燃焼しうる、不安定な物質である。加えて、リチウムの炎は消火が困難であり、乾燥粉末の消火器を必要としうる。したがって、リチウム金属は、短い保管寿命しか有しない場合があり、また、保管に危険を伴う可能性がある。
【0017】
米国特許第7,588,623号明細書には、安定化したリチウム金属粉末の製造方法が記載されており、この方法は、最初に、リチウム金属をその融点より高い温度に加熱し、続いて、溶融リチウムを、微粒化ノズルを通じて噴霧して液滴とし、次に、雰囲気として粉末表面をフッ素化して安定化させることからなる。
【0018】
ここに開示される製造方法は、米国特許第7,588,623号明細書の方法とはかなり異なり、低温かつリチウムの融点より完全に下で行うことができる。ここに開示される方法は、米国特許第7,588,623号明細書の方法と比較して、より安全でより単純かつより安価である。本開示の方法の他の利点は、Li金属が、電解質塩でコーティングされ、かつ、セルの電気化学と相容性であることである。加えて、粒子の外側の保護シェルに存在する疎水性油の存在は、周囲条件に対するカプセル化されたリチウム粒子の安定性を拡大する。
【0019】
Wietelmannの米国特許出願公開第2013/0122318号明細書には、リチウムを含む少なくとも2種類の可溶性に乏しい成分を含む、又はそれらからなる複合最上層を有する、表面を不動態化したリチウム金属が記載されている。表面を不動態化したリチウム金属の生産は、180℃未満すなわち固体状態のリチウム金属が、一般式:Li{P(C−x/2}(式中、x=0、2、又は4である)の不動態化剤を用いて、不活性な非プロトン性の溶媒へと変換されるようにするものである。
【0020】
Jongheらの米国特許出願公開第2004/0253510号明細書には、活性金属アノードが有害な反応から保護され、活性金属アノード−固体カソード電池における電圧遅延が、リチウム金属表面に異原子価(多価)アニオンを取り込む化学保護層の薄層で活性金属アノード(例えばLi)表面をコーティングすることによって、かなり低減されるか、又は完全に軽減されうることが記載されている。このような異原子価の表面層は、Liイオンに対して導電性であるが、リチウム金属を、周囲雰囲気中の酸素、窒素又は水分との反応から保護し、それによってリチウム材料を乾燥室などの制御雰囲気の外での取り扱い可能にする。特に、このような保護層の好ましい例としては、リン酸リチウム、メタリン酸リチウム、及び/又は硫酸リチウムの混合物又は固液が挙げられる。これらの保護層は、さまざまな技法によって、Liと相容性の乾燥有機溶媒中、次の酸の希釈溶液で処理することによってLi表面に形成されうる:HPO、HPO、及びHSO又はそれらの酸性塩。Li又は他の活性金属電極のこのような化学保護は、活性金属電極の保護をかなり促進し、電解質に対する保護されたアノードの安定性の改善に起因して、電圧遅延を低減する。
【0021】
実施形態において、本開示は、カプセル化されたリチウム粒子を提供し、このカプセル化されたリチウム粒子は、例えばリチウム金属を含むコアと、コアをカプセル化するシェルとを含む。シェルは、例えば、リチウム塩、油、及び、場合によっては結合剤を含みうる。カプセル化された粒子は、例えば、約1〜約500μmの粒径又は直径を有しうる。実施形態において、カプセル化された粒子は1〜100μmの直径を有してよく;シェルは1〜50μmの平均厚さを有しうる。
【0022】
実施形態において、コアは、粒子の総重量に基づいて、例えば、50〜90質量%の量で存在してよく;シェルは、粒子の総重量に基づいて、例えば、50〜10質量%の量で存在してよく、シェルは、例えば、0.01〜100μmの平均厚さを有してよく、シェルは、シェルの総重量に基づいて、例えば、70〜99.9質量%のリチウム塩及び0.1〜30質量%の油を含む。
【0023】
実施形態において、本開示は、リチウムイオンキャパシタ、及び該キャパシタの製造方法を提供し、該方法は、カプセル化されたリチウム粉末を形成する工程、及びアノード又は負極上にカプセル化リチウム粉末をコーティングする工程を含む。
【0024】
実施形態において、本開示は、有機溶媒中、リチウム塩、鉱油などの油、及び、場合によって、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)などの熱可塑性ポリマー等の結合剤の溶液に分散させた、リチウム金属粉末又はリチウム金属合金粉末を含むスラリー混合物を用いて、アノード又は負極をコーティングする工程を含む、製造方法を提供する。本コーティング法は、アノード又は負極の表面に形成されたカプセル化されたリチウム粉末の付着層を提供する。本コーティング法は、アノード又は負極のリチオ化にリチウム金属が必要とされる、エネルギー貯蔵デバイスの製造に使用することができる。本開示はまた、本開示のカプセル化されたリチウム粒子でコーティングされたアノード又は負極を用いて作られたリチウムイオンキャパシタの実証例も提供する。LiPFを含むカプセル化コーティングへの油の添加は、セルの高い放電率性能を改善する。カプセル化コーティングへの油の添加は、カプセル化されたリチウム粉末が、より確実に生産可能であること、改善された性能を有することなどの利点を提供する。このデバイスが電力供給デバイスであり、非常に高い放電率で良好に機能すると予期されることから、デバイスの放電率性能は重要である。
【0025】
実施形態において、本開示は、例えば、液体又は気体に分散させたリチウム含有コア粒子と、複合リチウム金属塩、油、場合によっては結合剤、及び溶媒を含む、シェル形成混合物とを接触させる工程、及び、溶媒を除去して、リチウム含有コアと、リチウム金属塩、油、及び、場合によっては結合剤を含むシェルとを含む粒子を形成する工程であって、該シェルがコアをカプセル化する、工程を含む、カプセル化されたリチウム粒子の製造方法を提供する。カプセル化されたリチウム粒子は、貯蔵条件に応じて、数時間から数週間の間、周囲条件に対して安定である。
【0026】
実施形態において、本開示は、コーティングされた電極の製造方法を提供し、該方法は、
リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン電池などの電気化学デバイスのアノード又は負極上に本開示のカプセル化されたリチウム粉末をコーティングする工程
を含む。
【0027】
本開示の方法は再現性が高く、スケールアップしやすい。単一段階コーティングは、噴霧コーティング又はディップコーティングなどの異なるコーティング技法を用いて達成されうる。単一段階コーティングは、例えば、有機溶媒中、リチウム塩、鉱油などの油、及び、場合によっては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)などのポリマー等の結合剤の混合物又は溶液中に分散された、リチウム金属粉末のスラリー混合物から、アノード又は負極の少なくとも一部をコーティングする工程を含みうる。さまざまな適切な乾燥有機溶媒として、例えば、THF、モノグライム、ジグライム、n−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の乾燥溶媒、又はそれらの混合物が挙げられ、これらは、コーティング法に使用することができる。全固体、溶解する全液体、又は分散する全液体に対する有機溶媒の質量%は、例えば、50質量%の溶質(有機溶媒中に分散又は溶解した固体、液体、又は両方)に対し50質量%の有機溶媒から、5質量%の溶質(有機溶媒中に分散又は溶解した固体、液体、又は両方)に対し95質量%の有機溶媒まで変動しうる。
【0028】
実施形態において、特定の例では、リチウム塩としてのLiPFの油成分としての鉱油に対する質量%は、例えば、2質量%の鉱油に対し98質量%のLiPFから、30質量%の鉱油に対し70質量%のLiPFまで変動しうる。リチウム金属粉末、リチウム塩、油、及び結合剤の混合物の質量%は、例えば、0.1質量%の結合剤(SBRなど)に対し99.9質量%の、リチウム金属粉末、リチウム塩、及び油の混合物から、2質量%の結合剤に対し98質量%の、リチウム金属粉末、リチウム塩、及び油の混合物まで変動しうる。本開示はまた、本開示のカプセル化されたリチウム複合粉末粒子でコーティングされたアノード又は負極を用いて作製されたリチウムイオンキャパシタについての実行結果も提供する。
【0029】
実施形態において、本開示は、大まかには、コアと、該コアをカプセル化し、安定化するシェルとを含む、カプセル化されたリチウム粒子を提供する。コアはリチウム金属又はリチウム金属合金を含みうる。リチウム塩、油、及び、場合によって結合剤を含むシェルは、コアをカプセル化する。シェルは、好ましくは密封し、かつ、水又は、酸素を含む空気が、コアと接触及び反応することを防止するか、あるいは実質的に抑制する。カプセル化されたリチウム粒子は、環境曝露に対して安定である。
【0030】
図面を参照すると、図1Aは、例となるカプセル化されたリチウム粒子の断面図の概略図である(正確な縮尺ではない)。図1Aは、単一のカプセル化されたリチウム粒子(100)の断面を概略的に示している。粒子(100)は、コア(110)と、コアをカプセル化するシェル(120)とを含む。コア(110)は、外面(112)を画成する単一構造体を含みうる。シェル(120)は、コーティング(120)の内面(124)に沿って、コア(110)の外面(112)と直接物理的に接触する。シェルコーティングは、相容性の無機又は有機塩、油、及び、場合によっては結合剤を含む。
【0031】
実施形態において、コア(110)は元素リチウム金属を含む。実施形態において、コアは、リチウムの合金を含みうる。このような合金の例としては、リチウムと、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、又はそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0032】
実施形態において、シェル(120)は、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、リチウムビスオキサレートボラート、リチウムフルオロオキサレートボラート等の塩、又はそれらの混合物を含んでよい、リチウム塩を含む。リチウム塩は、リチウム及び追加の金属、半金属、又は、それ自体はイオン化せず、適切な溶媒に可溶性又は分散性の非金属原子を含む、イオン化合物でありうる。例えば、LiPFは、金属原子としてリチウム及びリンを含むが、リンはそれ自体ではイオン化しない。むしろ、リンはPFイオンとしてイオン化する。さらなる例では、LiBFは、リチウム金属及び半金属のホウ素を含む。リチウムはイオン化(Li)するが、ホウ素はそれ自体ではイオン化せず、BFイオンとしてイオン化する。またさらなる例では、LiClOは、リチウム金属と、非金属原子の塩素及び酸素を含む。非金属原子は過塩素酸イオン(ClO)としてイオン化する。適切な溶媒は、例えば、THF、塩化メチレン、トルエン、ジエチルエーテル、モノグライム、ジグライム、n−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の溶媒、又はそれらの混合物から選択されうる。
【0033】
実施形態において、カプセル化された粒子の製造方法は、好ましくは、リチウムの融点より完全に下で達成される。
【0034】
複合リチウム塩を含めたリチウム塩は、液体電解質の成分としてリチウムイオン電池及びリチウムイオンキャパシタに用いられうる。複合リチウム塩は、溶媒に溶解して、電気化学デバイスとともに使用するための電解質溶液を形成しうる。電解質を形成するための例となる溶媒としては、炭酸ジメチル、プロピオン酸メチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの有機溶媒又は有機溶媒の混合物、及び、リチウムイオンが電荷担体である電解質における使用に適した他の溶媒などが挙げられる。
【0035】
油は、例えば、鉱油、変圧器油又は絶縁油、シリコーン油、シリコーン系油、フッ素化炭化水素、植物系油、ホワイト油、液体パラフィン、流動パラフィン、液化石油、又はそれらの組合せからなる群より選択することができる。他の鉱油名としては、ホワイト油、液体パラフィン、流動パラフィン、及び液化石油が挙げられる。精製鉱油は基本的に次の3つに分類される:n−アルカンをベースとするパラフィン油;シクロアルカンをベースとするナフテン油;及び、芳香族炭化水素をベースとする芳香油。天然及び合成のペンタエリトリトールテトラ脂肪酸エステルは、一般的な鉱油代替物である。
【0036】
再び図1Aを参照すると、コア(110)は粒径(136)を有し、カプセル化されたリチウム粒子(100)は粒径(134)を有する。「粒径」とは、粒子に関する最大の長さ寸法のことを指す。球状の粒子では、例えば、粒径は直径である。楕円状の粒子では、粒径は粒子の「長さ」である。複数のカプセル化された粒子(100)の例となる平均粒径は、中間の値及び範囲を含めて、例えば、約1〜500μm、例えば5、10、20、50、100、150、200、300、400、及び500μmなどであってよく、前述の値のいずれか2つの値の範囲にわたって、所与の材料バッチについて定められうる。
【0037】
シェル(120)は、シェルの内面(124)とシェルの外面(122)との間の平均最短距離として定義される厚さ(132)を有しうる。実施形態において、シェルは、例えば、シェルの形成に用いられる方法に応じて、実質的に均一な厚さ又は可変の厚さを有しうる。シェル(124)についての例となる平均厚さは、中間の値及び範囲を含めて、約10nm〜100μm、例えば0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、及び100μmなどであってよく、前述の厚さの値のいずれか2つの値の範囲にわたって所与の材料バッチについて定められうる。
【0038】
実施形態において、カプセル化されたリチウム粒子(100)は、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリシロキサン、又はそれらの組合せからなるポリマー群より選択される結合剤を有するシェルをさらに含んでよく、この結合剤は、粒子の総重量に基づいて、例えば0.1〜2質量%の量で存在しうる。
【0039】
実施形態において、カプセル化されたリチウム粒子(100)は、実質的に球状に形作られうる。しかしながら、本明細書では他の形状も予定されており、例えば、非対称な形状、回転楕円形状、融合した又は対になった回転楕円形状(例えば、ピーナツ形状)、ポップコーン形状(例えば、粒子の小さな凝集体)等の形状、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
カプセル化されたリチウム粒子(100)は、空気、酸素、又は水に曝露された場合に、実質的に非反応性又は非燃焼性である。シェル(120)は、リチウムコア(110)をカプセル化して、リチウムが周囲の気体又は液体に曝露し、それらと反応することを実質的に抑制又は防止する。カプセル化されたリチウム粒子(100)は、例えば、環境曝露、若しくは、空気、酸素、水蒸気、又はそれらの組合せへの高温(例えば、50、100、150、又は200℃)曝露に対し、実質的に化学的に不活性でありうる。カプセル化されたリチウム粒子は、実質的な化学分解、燃焼、又はその両方を生じさせずに、少なくとも1週間、2週間、1カ月、又は1年の間、空気中で保管するのに十分に安定でありうる。
【0041】
実施形態において、本開示は、
コア及び、該コアをカプセル化するシェル
から本質的になる、カプセル化されたリチウム粒子を提供し、
コアは元素リチウム金属から本質的になり、
シェルはリチウム塩、油、及び結合剤から本質的になり、
シェルはコアと直接接触し、
粒子は1〜100μmの粒径を有する。
【0042】
実施形態において、本開示は、上述のカプセル化されたリチウム粒子の製造方法を提供し、該方法は、例えば、
リチウム含有コア粒子と、複合リチウム金属塩、油、及び溶媒を含むシェル原料物質とを接触させる工程、及び
溶媒を除去して、リチウム含有コアと該コアをカプセル化するシェルとを含む粒子を生成する工程であって、シェルが複合リチウム金属塩と油とを含む、工程
を含む。
【0043】
実施形態において、コアは、元素リチウム金属から本質的になりうる。
【0044】
実施形態において、カプセル化されたリチウム複合粒子は、リチウム金属粒子を、溶媒に溶解させた、リチウム金属塩、油、及び結合剤を含むシェル原料物質と接触させることによって製造されうる。シェル原料物質は、上述のリチウム塩又は複合リチウム塩を含みうる。接触は、シェル原料物質溶液中にリチウムコア粒子を浸漬することによって、又は噴霧コーティングなどの他の手段によって行われうる。粒子をシェル原料物質でコーティングした後、溶媒を除去して、リチウム金属粒子の上に層又はシェルを形成する。溶媒の除去は、例えば、蒸発、遠心分離等の適切な方法で行われうる。
【0045】
その高い反応性及び可燃性に起因して、リチウム金属は、通常、鉱油などの粘性の炭化水素に覆われた状態で保管される。鉱油のカプセル化剤は、リチウム金属の劣化を抑制すると同時に、概して、最も固体状態のデバイスと相容性である。本安定化の取り組みを用いて、リチウム粒子は、安全に取り扱い及び保管され、また、油成分がシェルにカプセル化され、デバイスに干渉しないことから、安定化した状態でリチウムイオンデバイスに直接取り込まれうる。
【0046】
実施形態において、カプセル化されたリチウム粒子は、初めに、油中に浸漬されたリチウム金属又はリチウム金属含有粒子を提供することによって生産されうる。例として、油は、シリコーン油を含みうる。シリコーン油中に懸濁されたリチウム金属粒子は、米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ−アルドリッチ社から市販されている。
【0047】
真空濾過システムは、例えば、リチウム粒子の洗浄に使用されうる。リチウムが揮発性であるため、有機溶媒の除去のための洗浄、及び、リチウム金属粒子をリチウム金属塩を含むシェル原料物質と接触させることによる無機シェルの形成は両方とも、酸素及び水を含まないか実質的に含まない、グローブボックスなどの制御雰囲気内で行われうる。リチウム金属粒子をシェル原料物質と接触させる前に、洗浄したリチウム粒子を不活性雰囲気内で乾燥させてよい。洗浄した粒子は、例えば約100℃まで粒子を加熱して、溶媒を蒸発させることによって乾燥させることができる。
【0048】
無機のシェルを形成するため、リチウム塩、油、及び、場合によって結合剤を、初めにシェル溶媒に溶解させて、シェル原料物質の溶液を形成する。適切な乾燥、脱気、又はその両方を行った、リチウム塩を溶解可能な溶媒としては、例えば、THF、n−メチルピロリドン(NMP)、塩化メチレン等の溶媒、又はそれらの組合せが挙げられる。リチウム粒子をシェル原料物質の溶液と接触させた後、シェル溶媒は除去されて、粒子の上にリチウム塩のシェルが形成されうる。溶媒は、例えば、蒸発によって除去することができ、これは、調製方法の環境条件下で自然に生じてもよく、又は、真空の適用を含むさまざまな技法を通じて加速化してもよい。例えば、THFは、室温における蒸発を通じて、真空を適用せずに放散されうる。さらなる例では、NMPは、場合によっては真空の適用とともに加熱することによって除去されうる。実施形態において、シェルコーティング溶媒の除去は、室温で、又は、例えば、中間の値及び範囲を含む、約30、50、75、又は100℃など、最高で約150℃に加熱することによって行うことができる。実施形態において、接触及び除去は、15℃〜150℃で行われる。
【0049】
図1Aに示されるシェルコーティング(120)の厚さ(132)は、シェルコーティング溶液中のリチウム塩の濃度を制御することによって決定することができる。大まかには、溶液中の塩含量が高くなると、より厚いシェルコーティングが生じる。リチウム塩のシェルコーティング溶液の濃度は、約0.1〜4モルであってよく、例えば、0.1、0.2、0.5、1、2、3、又は4モル(M)である。実施形態において、シェルコーティング溶液には、リチウム塩、油、及び、場合によって結合剤の飽和溶液が含まれる。
【0050】
結果として得られるカプセル化されたリチウム粒子において、リチウム塩のシェルは、粒子の全質量の約1〜50質量%を含みうる。例えば、シェルコーティングは、中間の値及び範囲を含めて、カプセル化された粒子の全質量の例えば、0.1、0.5、1、2、5、10、20、30、40、又は50質量%を含みうる。コア粒子の組成物と共に、このシェルの厚さは、空気、酸素、及び水の拡散に対して有効な障壁をもたらすように選択される。
【0051】
結果として得られるカプセル化されたリチウム粒子において、油は、シェルの総重量に基づいて、0.1〜30質量%の量で存在しうる。結果として得られるカプセル化されたリチウム粒子において、油は、粒子の総重量に基づいて、0.01〜15質量%の量で存在しうる。
【0052】
実施形態において、本開示は、
炭素電極の表面の少なくとも一部に堆積された、前述のカプセル化されたリチウム粒子及び結合剤の混合物
を含む、電極物品を提供する。
【0053】
実施形態において、本開示は、
リチウム含有コアと、リチウム塩、油、結合剤、及び有機溶媒を含むシェルとを含む前述のカプセル化されたリチウム粒子からなる混合物を、炭素電極の表面の少なくとも一部に噴霧する工程
を含む、リチウム電極物品の製造方法を提供する。
【0054】
実施形態において、カプセル化されたリチウム粒子の混合物を噴霧する工程は、例えば、0〜200℃で達成されうる。炭素電極の表面の少なくとも一部の上に結果として生じる噴霧された混合物は、場合によって、1分間〜12時間の間、乾燥されうる。
【0055】
実施形態において、本開示は、周囲環境的に安定なカプセル化されたリチウム粒子を有するコーティングされた電極の作製方法を提供し、該方法は、
アノード/負極上に、有機溶媒中、リチウム複合塩、鉱油、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)結合剤の溶液に分散させたリチウム金属粉末を含むスラリー混合物をコーティングして、リチウム金属粉末上にインサイチュでリチウム塩、鉱油、及び結合剤のコーティングを形成し、次いで電極を形成する工程
を含む。こうしてアノード/負極上に形成されたカプセル化リチウム粉末は、LiPF及び鉱油の保護コーティングによってカプセル化され、取り囲まれたコアからなる。カプセル化リチウム粉末のコアは、リチウム金属又は、例えば、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ビスマス、又はそれらの組合せからなる金属の群より選択された幾つかの他の金属とのリチウム金属合金からなる。保護コーティングは、リチウム塩、油、及び、場合によって結合剤からなり、リチウム金属又はリチウム金属合金のコアをカプセル化し、取り囲む。コーティングは、周囲条件とコアとの間の障壁として作用する。リチウム金属コアは、保護リチウム塩及び油でカプセル化され、取り囲まれていなければ、激しく反応するであろう。スチレンブタジエンゴム(SBR)は、アノード/負極の表面へのカプセル化されたリチウム粉末の付着を保持及び補助する結合剤として作用する。単一段階コーティング法は、噴霧コーティング又はディップコーティングなどのさまざまなコーティング法によって達成することができる。電極をコーティングする本開示の単一段階方法は、アノード/負極の表面を、有機溶媒中、リチウム塩、油、及び、場合によって結合剤の溶液に分散させたリチウム金属粉末のスラリー混合物でコーティングすると同時に、インサイチュでのリチウム金属粉末の周囲の保護コーティングの形成を含む。
【0056】
鉱油は、使用可能な多くの油の一例である。さまざまな等級の鉱油を、シェル(すなわち、外側の保護コーティング)のための油成分として使用することができる。C15〜C40のアルカンの無色、無臭の軽い混合物である鉱油が選択されうる。コア粒子は、リチウム塩、油、及び、場合によって結合剤の保護コーティング混合物でコーティングされた、反応性かつ不安定なリチウムをベースとしたコアを有する。リチウム塩及び油は、内側のリチウムをベースとしたコアを周囲条件への曝露から保護し、かつ、周囲条件と激しく反応することを防ぐ。鉱油等の油は疎水性の性質であることから、油は、周囲空気中の水分をはじき、リチウムコアの保護コーティングの有効性を高めるという補足的な利益をもたらす。
【0057】
図1Bを参照すると、集電体(155)(例えばCu又はAlなどの金属)、薄い炭素層(160)(例えば、1〜20μm)、厚い炭素層(165)(すなわち、ハードカーボン粒子及びPVDF結合剤;例えば100μmなど、約50〜200μmの厚さ)、及びカプセル化されたLi粒子(100)と結合剤とを含む層(170)を有する、例となるコーティングされた電極構造(150)の断面の概略図(正確な縮尺ではない)が提供されている。カプセル化されたLi粒子は、単一段階方法で調製されかつアノード構造に施された場合、粒子シェル内及び粒子間に結合剤を含みうる。
【0058】
アノード/負極の表面にインサイチュで形成されたカプセル化リチウム粉末は、周囲条件で、かつ、例えば最高で200℃までなどの高温において、かなりの安定性を有する。本開示のカプセル化されたリチウム粉末でコーティングされたアノード/負極は、空気中で保管された場合に実質的に安定である。リチウム塩はリチウムイオンデバイスにおいて電解質塩として使用できることから、コーティングはデバイスの性能に干渉を生じさせないため、保護コーティングとしてのリチウム塩及び油の使用は、追加の利点を提供する。ひとたび電気化学デバイスに用いられると、シェル被膜は、電解質溶媒に容易に溶解可能であり、該溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、プロピオン酸メチル、リチウムイオン電荷担体のための電解質における使用に適切な同様の他の溶媒が挙げられうる。
【0059】
カプセル化リチウム粉末は、初めに、米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ−アルドリッチ社から供給される鉱油に分散させたリチウム金属粉末を入手することによって生産されうる。リチウム金属は鉱油中で安定である。アノード表面堆積のためにリチウム金属粉末を調製する従前の調製法は、鉱油をすべて剥離することを必要とした。代替的に、幾つかの鉱油は、表面に少量の油を残しつつ、粉末を洗い流すことができ、その後、粒子を、鉱油を後で添加せずに、さらなる処理に使用できた。鉱油のすべてまたは一部は、ヘキサン、THF、塩化メチレン、トルエン、及びヘプタンなどの有機溶媒でリチウム金属粉末を洗浄することによってリチウム金属粉末から剥離することができる。効率的な洗浄の目的で、鉱油中に分散させたリチウム金属粉末は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、THF、塩化メチレン、ジエチルエーテル、及びそれらの混合物などの有機溶媒とともに撹拌すべきであり、次いで真空濾過アセンブリ又は重力濾過アセンブリを使用して濾過してもよい。リチウム金属粉末の揮発性及び反応性の性質に起因して、鉱油の剥離のための有機溶媒を用いたリチウム金属粉末の洗浄、及び、アノード/負極の表面にカプセル化されたリチウム粒子粉末を形成する単一段階コーティング法は、水及び酸素を含まない、アルゴンのグローブボックス内で行われうる。シリコーン油、植物油、若しくは他の合成又は天然の油などの他の油は、適切な溶媒とともに本方法に代替的に又は追加的に使用することができる。
【0060】
鉱油を含まないリチウム金属粉末は、分散させて、有機溶媒中に溶解させた、リチウム塩、油、及び結合剤の混合物のスラリーを形成してもよい。スラリーは、例えば、噴霧コーティング又はディップコーティングを使用して、アノード/負極上にコーティングすることができる。コーティングされたアノード/負極は、有機溶媒を除去するために、例えば、120℃で、真空下で乾燥させてもよい。
【0061】
リチウム金属粉末上の保護シェルの厚さは、リチウム塩及び油の濃度に応じて変動しうる。塩の濃度が高いほど、リチウム金属をベースとしたコア上の保護コーティングが厚くなる。有機溶媒中、リチウム塩及び油からなるコーティング溶液は、大まかには、リチウム塩及び油の飽和溶液である。
【0062】
実施形態において、本開示は、本開示の方法に従って製造した複合電極を提供する。複合電極は、リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスにおける使用について実証した。実施形態において、電極は、例えば、2つ以上のコーティングを有する金属集電体からなる。集電体に隣接する第1のコーティング層は、例えば、低表面積炭素材料、結合剤、及びカーボンブラックでありうる。第1の層上の第2の層は、例えば、リチウム塩及び油のカプセル化又はカプセル化剤混合物でコーティングされたリチウム金属コア粒子を含む、本開示のカプセル化されたリチウム粒子粉末でありうる。
【0063】
実施形態において、本開示は、電極構造の表面にカプセル化されたリチウム粒子を含む層を生成するための方法を提供する。実施形態において、本開示は、リチウム金属コア粒子の周りにインサイチュで保護被膜又はカプセルを生成し、かつ、アノード/負極の表面を、カプセル化されたリチウム粒子を含む、結果的に得られたスラリー混合物でコーティングするための単一段階方法を提供する。リチウム金属粉末は、初めに、有機溶媒中、適切なリチウム塩、適切な油、及び、場合によって例えばSBRなどのポリマー等の適切な結合剤の溶液に分散させて、カプセル化されたリチウム粒子をインサイチュで形成する。カプセル化されたリチウム粒子を含む、結果として得られた混合物は、アノード構造の表面にカプセル化されたリチウム粒子を直接堆積させるために使用することができる。
【0064】
シェルでカプセル化された粒子のSEM画像。図2A及び2Bを参照すると、図2A及び2Bは、それぞれ、単一段階コーティング法でコーティングした、カプセル化されたリチウム粒子粉末を用いてコーティングしたアノード/負極の上面又は平面図(2A)及び断面図(2B)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。図2Aは、炭素電極上に、本開示の単一段階コーティング法で噴霧コーティングした、倍率100倍のLiPFでコーティングされたリチウム金属粒子を示している。図2Bは、炭素電極上に本開示の単一段階コーティング法によって噴霧コーティングした、カプセル化されたリチウム粒子粉末の断面図を示している。本開示のカプセル化されたリチウム粒子の画像は、5〜500μmの平均粒径を有するリチウム金属粉末の表面におけるリチウム塩と鉱油との均一な保護被膜を示している。保護被膜は、10nm〜100μmの厚さを有していた。コーティングされていない粒子の顕微鏡写真は、それらの非常に自然発火性の性質のため、入手できなかった。
【0065】
図3は、さまざまなカプセル化リチウム粉末を用いて手動でコーティングしたアノード又は負極を有するリチウムイオンキャパシタ(LIC)についての容積のラゴンプロットを示している。異なるレベルの油(比較:0%の油;本発明:17%及び22%の鉱油)を使用して粉末を調製した。プロットは、0%の油の例と比較して、油を用いて調製した本開示のカプセル化されたLi粉末について、電力デバイスにとって重要な要件である、かなり高いエネルギーが、高電力で達成できることを実証している。
【0066】
図4は、本開示の単一段階噴霧コーティング法による、本開示のカプセル化されたリチウム粉末でコーティングされたアノード又は負極を有する、選択されたリチウムイオンキャパシタ(LIC)、及び比較例についての容積のラゴンプロットを示している。
【実施例】
【0067】
次の実施例は、本開示のカプセル化されたリチウム複合粒子及びコーティングされた電極の製造、使用、及び分析、並びに、上記の大まかな手順に従った製造および使用方法を実証するものである。
【0068】
比較例1
鉱油を含まないTHF溶媒。鉱油中に保管されたリチウム金属粉末をシグマ−アルドリッチ社から入手した。鉱油中のリチウム金属の分散液を、ワットマン紙No.41を用いて漏斗を通して重力濾過し、ほとんどの鉱油をリチウムから分離した。濾紙内のリチウム粉末を、アルゴン下でヘキサンを用いて、鉱油が含まれなくなるまで洗浄した。洗浄したリチウム金属粉末を、次に、アルゴン雰囲気下で12時間、乾燥した。リチウム粉末を計量した。別のバイアル内にLiPFを計量し、リチウム金属粉末のLiPFに対する比を80:20(質量%)に保持した。次に、THFのLiPFに対する比を80:20(質量%)に維持しつつ、LiPFをTHF中に溶解した。THF中LiPFの溶液を、LiPFが完全に溶解するまで攪拌した。THF中LiPFの溶液を、リチウム金属粉末上に溶液を注ぐことによって、リチウム金属粉末と接触させた。THF中リチウム金属粉末とLiPFとの混合物を、溶媒が蒸発するまで攪拌した。結果として得られたコーティングされたリチウム金属粉末を、次に、真空下、100℃で12時間、乾燥して、THFを完全に除去した。カプセル化されたリチウム粉末の試料のSEM画像を得た(図示せず;ともに係属中の米国特許出願第13/673019号明細書の図2参照)。結果として得られたカプセル化されたリチウム粉末を、リチウムイオンキャパシタの構成におけるリチウム金属源として使用した。リチウム塩でカプセル化されたリチウム粒子又はリチウム複合粉末(LCP)を、アノード電極の表面に手動で噴霧した。リチウムイオンキャパシタをCR2032セル(コイン電池)のフォーマットで構成した。リチウムイオンキャパシタは、85質量%の小麦粉ベースのアルカリ活性炭から作製したカソード電極を積層することによって構築した。活性炭は小麦粉前駆物質から製造した。小麦粉を650〜700℃まで炭化した。炭化した炭素をすりつぶして、およそ5μmの粒径とした。すりつぶした炭化した炭素を、次に、750℃で、KOH(アルカリ)をKOH:炭素の重量比2.2:1で用いて、2時間、賦活した。アルカリ活性炭をさらに水で洗浄して残留KOHを除去した。結果として得られた活性炭を、次に0.1MのHCl水溶液で処理して微量のKOHを中和し、次いで水で洗浄して炭素を中和しpH7とした。次に、活性炭を、窒素フォーミングガス(例えば、98体積%のNと2体積%のH)下、900℃で2時間、加熱処理した。結果として得られた電極は、85%の小麦粉ベースのアルカリ活性炭、10質量%のPTFE(デュポン601Aテフロン(登録商標)PTFE)、及び5質量%のCabot Black Pearl 2000で構成されており、アルミニウムクラッドコイン電池内に、NKK−4425セパレータと、5mgのカプセル化されたリチウム粒子粉末(アノード上に手動で噴霧し、アノードへのプレドーピングに使用)及びNPC−15(ニードルコークス)アノードを備えていた。PVDFをベースとしたアノード電極は、90質量%のNPC−15(Asbury Carbons社から入手)、5質量%のTimcal Super C−45導電性カーボン、及び、結合剤として5質量%のKYNAR761等級のPVDF(分子量:300,000〜400,000)で構成されていた。炭酸エチレン:炭酸ジメチル:プロピオン酸メチルの比20:20:60(質量:質量:質量)中、120μLの1M LiPFを5質量%のフッ素化エチレンカーボネートとともに、電解質として使用した。セルを、Arbin BT 2000において、0.5mAの電流で3.8Vから2.2Vまで、定電流充電/放電で調整した。次に、セルを、フレームワーク5ソフトウェアを備えたGamry社のポテンショスタット/ガルバノスタットにおいて、電気化学インピーダンス分光法で試験した。Arbin BT2000において、1Cレートでセルを充電し、さまざまなCレートでセルを放電させることによって、セルのレート性能を試験した。図3は、リチウム金属コア上に100質量%のLiPF及び0質量%の鉱油のシェル被膜を有するこの比較用のカプセル化されたリチウム粉末についての出力密度に対するエネルギー密度のプロットを示している。LICは、1Cレートにおいて58.39Wh/lのエネルギー密度を示した。LICは、100Cレートにおいて6.71Wh/lのエネルギー密度を示した。
【0069】
実施例2、3、及び4は、鉱油を含むカプセル化されたリチウム粉末の調製;デバイスにおけるカプセル化されたリチウム粉末の利用;及び、デバイスにおけるこれらの粉末を使用する電極についてのより高い放電率性能を実証している。
【0070】
実施例2
カプセル化されたリチウム粉末がリチウム金属コア上に83質量%のLiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)及び17質量%の鉱油を含むが結合剤を含まないシェル被膜を有すること以外は、実施例1を繰り返した。リチウム金属コアのシェル被膜に対する全体比は80:20(質量%)であった。図3は、このカプセル化されたリチウム粉末についての出力密度に対するエネルギー密度のプロットを示している。LICは、1Cレートにおいて51.99Wh/lのエネルギー密度を示した。LICは、100Cレートにおいて18.94Wh/lのエネルギー密度を示した。同じレートにおける約3倍のエネルギー密度の増加は、コーティングに鉱油を含まない比較例1と比較した、鉱油を含むコーティングの性能の利点を示している。
【0071】
実施例3
カプセル化されたリチウム粉末がリチウム金属コア上に79質量%のLiPF及び21質量%の鉱油を含むが結合剤を含まないシェル被膜を有していた以外は、実施例2を繰り返した。リチウム金属コアのシェル被膜に対する全体比は80:20(質量%)であった。図3は、このカプセル化されたリチウム粉末についての出力密度に対するエネルギー密度のプロットを示している。LICは、1Cレートにおいて52.21Wh/lのエネルギー密度を示した。LICは、100Cレートにおいて17.84Wh/lのエネルギー密度を示し、この場合もやはり鉱油の添加の利点を示した。表1は、鉱油コーティングの有無による、カプセル化されたリチウム粉末を手動でコーティング又は手動で噴霧した電極の性能の比較の一覧である。
【0072】
【表1】
【0073】
以下の実施例は、リチウム塩、油、及び結合剤でカプセル化又はコーティングされたリチウム粒子を電極に付着させる方法、及び、結果として得られた電極のデバイスにおける性能を実証する。この付着方法は、例えば、大規模セルの生産及び電極の継続的な製作において好ましい。本開示の電極の高い頑健性を確実にするため、シェルコーティングの配合における結合剤の使用は、電極表面への粒子の適切な付着にとって好ましい。
【0074】
実施例4
鉱油中に保管されたリチウム金属粉末をシグマ−アルドリッチ社から入手し、分散液をワットマン紙No.41を用いて漏斗を通して重力濾過し、ほとんどの鉱油をリチウムから分離した。濾紙内のリチウム粉末を、アルゴン下でヘキサンを用いて、鉱油が含まれなくなるまで洗浄した。洗浄したリチウム金属粉末を、次に、アルゴン雰囲気下で12時間、乾燥した。次に、1.5gの乾燥リチウム金属粉末を噴霧コーティング容器内に計量した。THF中、0.33375gのLiPF、0.04125gの鉱油、及び0.942gのSBR結合剤の1質量%溶液を別のバイアル内に計量した。溶質(シェル形成材料混合物及び不溶性のリチウム金属コア)の有機溶媒(THF)に対する質量比が20:80になるように、3.46gのTHFをシェル形成材料混合物に加えた。シェル形成混合物を10分間、攪拌し、THF中のLiPF、鉱油及びSBR結合剤を完全に溶解させた。シェル形成材料溶液を、リチウム金属粉末を有する噴霧容器に加えた。合わせたリチウム金属粉末とシェル形成スラリーとを攪拌して、均質な分散を維持した。次に、スラリーを、90質量%のコークス系炭素(Asbury Carbons社から供給されるNPC−15)、5質量%のTimcal Super C−45(Timcal社から供給される導電性カーボンブラック)、及び結合剤としての5質量%のKYNAR HSV 900から作製した14mmのディスク状のアノード/負極上に噴霧コーティングした。噴霧コーティングされた電極を、真空下、120℃で12時間、乾燥し、THFを除去した。乾燥後、アノード/負極上に8mgのカプセル化されたリチウム粉末の負荷を達成した。電極は剥離を示さず、電極表面へのカプセル化されたリチウム粉末の優れた付着を示した。
【0075】
リチウムイオンキャパシタは、CR2032セル(コイン電池)のフォーマットで、85質量%の上述の小麦粉ベースのアルカリ活性炭、10質量%のPTFE(デュポン601Aテフロン(登録商標)PTFE)、及び5質量%のCabot Black Pearl 2000から作製されたカソード電極を積み重ねることにより構築され、アルミニウムクラッドコイン電池内にNKK−4425(ニッポン高度紙工業株式会社製)セルロース系セパレータ、及び、結合剤としてKYNAR HSV 900を有する噴霧コーティングしたコークスをベースとしたアノードを備えていた。炭酸エチレン:炭酸ジメチル:プロピオン酸メチルの比20:20:60(質量:質量:質量)中、120μLの1M LiPFを5質量%のフッ素化エチレンカーボネートとともに電解質として使用した。Arbin BT 2000において、セルを、0.5mAの電流で3.8Vから2.2Vまで、定電流充電/放電において調整した。Arbin BT2000において、1Cレートでセルを充電し、さまざまなC−レートでセルを放電させることによって、セルの放電率性能を試験した。
【0076】
図4は、リチウム金属コア上に、87質量%のLiPF、10.5質量%の鉱油、及び2.5質量%のSBR結合剤のシェル被膜を用いて調製されたカプセル化されたリチウム粉末を有する、実施例4についての出力密度に対するエネルギー密度のプロットを示している。リチウム金属コアのシェル被膜に対する全体比は80:20(質量%)であった。実施例4のリチウムイオンキャパシタ(LIC)は、1Cレートにおいて34.56Wh/lのエネルギー密度を有していた。LICは、100Cレートにおいて18.20Wh/lのエネルギー密度を示した。
【0077】
上述のように調製された噴霧コーティングした電極の別のセットをグローブボックス(アルゴン雰囲気)保管場所から取り出し、フード内の周囲条件下でペトリ皿内に置き、それらの安定性について光学顕微鏡下で監視した。アノード/負極上にコーティングした本開示のカプセル化されたリチウム粉末は、周囲条件下で2時間の間、安定性を示した。
実施例5
全ての固体(シェル形成混合物及びリチウム金属コア)の有機溶媒(THF)に対する質量比30:70で構成された14mmのディスク状のアノード/負極上に噴霧したスラリー以外は実施例4を繰り返し、乾燥後にアノード/負極上に7.1mgのカプセル化されたリチウム粉末の負荷を達成した。
【0078】
図4は、リチウム金属コア上に、87質量%のLiPF、10.5質量%の鉱油、及び2.5質量%のSBR結合剤のシェル被膜を用いて調製したカプセル化されたリチウム粉末を有する、実施例5の出力密度に対するエネルギー密度のプロットを示している。リチウム金属コアのシェル被膜に対する全体比は80:20(質量%)であった。実施例5のリチウムイオンキャパシタ(LIC)は、1Cレートにおいて38.67Wh/lのエネルギー密度を有していた。LICは、100Cレートにおいて13.37Wh/lのエネルギー密度を示した。
【0079】
上述のように調製した噴霧コーティングされた電極の別のセットをグローブボックス(アルゴン雰囲気)から取り出し、フード内の周囲条件下でペトリ皿に置き、それらの安定性について光学顕微鏡下で監視した。アノード/負極上にコーティングされた本開示のカプセル化されたリチウム粉末は、周囲条件下で2時間の間、安定性を示した。
【0080】
【表2】
【0081】
本開示は、さまざまな特定の実施形態及び技法に関して説明してきた。しかしながら、本開示の範囲内に保ちつつ、多くの変形及び修正が可能であることが理解されるべきである。
【0082】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0083】
実施形態1
リチウム、リチウム金属合金、又はそれらの組合せのうち少なくとも1つからなるコアと、
リチウム塩及び油からなるシェルと、
を含み、前記シェルが前記コアをカプセル化し、前記粒子が1〜500μmの直径を有することを特徴とする、カプセル化されたリチウム粒子。
【0084】
実施形態2
前記コアが、前記粒子の総重量に基づいて、50〜90質量%で存在し、
前記シェルが、前記粒子の総重量に基づいて、50〜10質量%で存在し、
前記シェルが、0.01〜100μmの平均厚さを有し、
前記シェルが、前記シェルの総重量に基づいて、70〜99.9質量%の前記リチウム塩及び0.1〜30質量%の前記油を含む
ことを特徴とする、実施形態1に記載の粒子。
【0085】
実施形態3
前記リチウム塩が、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiFSO、リチウムビスオキサレートボラート、リチウムフルオロオキサレートボラート及びそれらの組合せからなる群より選択され、前記油が、鉱油、変圧器油又は絶縁油、シリコーン油、シリコーン系油、フッ素化炭化水素、植物系油、ホワイト油、液体パラフィン、流動パラフィン、液化石油、又はそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の粒子。
【0086】
実施形態4
スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリシロキサン、又はそれらの組合せからなるポリマー群より選択される結合剤を有する前記シェルをさらに含み、前記結合剤が、前記粒子の総重量に基づいて、0.1〜2質量%の量で存在することを特徴とする、実施形態1〜3のいずれかに記載の粒子。
【0087】
実施形態5
前記リチウム金属合金が、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ビスマス、及びそれらの組合せからなる金属の群より選択されることを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の粒子。
【0088】
実施形態6
前記粒子が1〜100μmの直径を有し、
前記シェルが1〜50μmの平均厚さを有する
ことを特徴とする、実施形態1〜5のいずれかに記載の粒子。
【0089】
実施形態7
前記粒子が、実質的に球状に形作られていることを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載の粒子。
【0090】
実施形態8
前記粒子が、酸素、水蒸気、又はそれらの組合せを含む周囲環境において実質的に化学的に不活性であることを特徴とする、実施形態1〜7のいずれかに記載の粒子。
【0091】
実施形態9
コア及び、前記コアをカプセル化するシェルから本質的になり、
前記コアが元素リチウム金属から本質的になり、
前記シェルがリチウム塩、油、及び結合剤から本質的になり、
前記シェルが前記コアと直接接触し、
前記粒子が、1〜100μmの寸法を有する
ことを特徴とする、カプセル化されたリチウム粒子。
【0092】
実施形態10
実施形態1に記載の前記カプセル化されたリチウム粒子の製造方法であって、
リチウム含有コア粒子と、複合リチウム金属塩、油、及び溶媒を含むシェル原料物質とを接触させる工程、及び
前記溶媒を除去してリチウム含有コアと前記コアをカプセル化するシェルとを含む前記粒子を生成する工程であって、前記シェルが前記複合リチウム金属塩及び前記油を含む、工程
を含む、方法。
【0093】
実施形態11
前記コアが元素リチウム金属から本質的になることを特徴とする、実施形態10に記載の方法。
【0094】
実施形態12
前記リチウム塩が、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiFSO、リチウムビスオキサレートボラート、リチウムフルオロオキサレートボラート又はそれらの混合物からなる群より選択され、
前記溶媒が、THF、塩化メチレン、トルエン、ジエチルエーテル、モノグライム、ジグライム、n−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、又はそれらの混合物からなる群より選択され、
前記方法が、リチウムの融点より完全に下で達成される
ことを特徴とする、実施形態10又は11に記載の方法。
【0095】
実施形態13
前記シェルの総重量に基づいて、前記シェル原料物質中の前記リチウム塩の濃度が0.1〜4Mであり、前記シェル原料物質中の油の濃度が0.1〜30質量%であることを特徴とする、実施形態10〜12のいずれかに記載の方法。
【0096】
実施形態14
前記接触する工程及び前記除去する工程が、15℃〜150℃で行われることを特徴とする、実施形態10〜13のいずれかに記載の方法。
【0097】
実施形態15
前記溶媒の除去が、蒸発、濾過、遠心分離又はそれらの組合せによって達成されることを特徴とする、実施形態10〜14のいずれかに記載の方法。
【0098】
実施形態16
前記粒子を前記シェル原料物質と接触させる前に、前記リチウム含有粒子を洗浄溶媒で洗浄する工程をさらに含み、前記洗浄溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、THF、塩化メチレン、ジエチルエーテル、又はそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態10〜15のいずれかに記載の方法。
【0099】
実施形態17
実施形態1の前記カプセル化されたリチウム粒子と、炭素電極の表面の少なくとも一部に堆積された結合剤との混合物
を含む、電極物品。
【0100】
実施形態18
リチウム含有コアと、リチウム塩、油、結合剤、及び有機溶媒を含むシェルとを含む実施形態1の前記カプセル化されたリチウム粒子からなる混合物を、炭素電極の表面の少なくとも一部の上に噴霧する工程
を含む、リチウム電極物品の製造方法。
【0101】
実施形態19
前記生じた噴霧された混合物が、1分間〜12時間の間で乾燥されることを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【符号の説明】
【0102】
100 リチウム粒子
110 コア
112 外面
120 シェル
122 シェルの外面
124 シェルの内面
132 厚さ
134 粒径
136 粒径
150 電極構造
155 集電体
160 薄い炭素層
165 厚い炭素層
170 層
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】