(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537464(P2017-537464A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(54)【発明の名称】エネルギー蓄積デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/18 20060101AFI20171117BHJP
H01G 4/20 20060101ALI20171117BHJP
H01G 4/10 20060101ALI20171117BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20171117BHJP
【FI】
H01G4/18 327
H01G4/18 330A
H01G4/20
H01G4/10
H01G4/30 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2017-519933(P2017-519933)
(86)(22)【出願日】2015年11月3日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月31日
(86)【国際出願番号】US2015058890
(87)【国際公開番号】WO2016073522
(87)【国際公開日】20160512
(31)【優先権主張番号】62/075,145
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517126875
【氏名又は名称】キャパシタ サイエンシス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラザレフ,パヴェル,イワン
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB03
5E082EE23
5E082FF14
5E082FF15
5E082FG27
5E082FG32
5E082FG34
5E082FG35
5E082PP01
5E082PP08
5E082PP09
(57)【要約】
本発明は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された固体多層構造を含むエネルギー蓄積デバイスを提供する。固体多層構造は、前記第1および第2の電極と接触してもよい。固体多層構造は、前記電極に平行に配置された層を含むことができ、前記層はシーケンス(A−B)m−Aを有し、ここで、Aは絶縁層であり、Bは絶縁体マトリックス中に導電性ナノ粒子の微小分散体を有するコロイド状複合体を含有する分極層であり、「m」は1以上の数である。層Aは、少なくとも約0.05ボルト/ナノメートル(nm)の破壊電圧を有し、層Bは少なくとも約100の誘電率を有することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された固体多層構造と、
を有し、
前記固体多層構造は、前記第1および第2の電極と接触しており、前記電極に平行に配置された層を含み、前記固体多層構造は、前記層(A−B)m−Aのシーケンスを有し、ただし、Aは絶縁層であり、Bは絶縁体マトリックス中に導電性ナノ粒子の微小分散体を有するコロイド状複合体を含有する分極層であり、mは1以上の数であり、
Aは1ナノメートル(nm)当たり少なくとも約0.05ボルト(V)の破壊電圧を有し、
Bは少なくとも約100の誘電率を有する
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記絶縁層の少なくとも一つが結晶質であることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
Aが少なくとも約0.5V/nmの破壊電圧を有する、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記絶縁層の少なくとも1つが、酸化物、窒化物、酸窒化物およびフッ化物から選択される材料を含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記絶縁層の少なくとも1つは、SiO2、HFO2、Al2O3、およびSi3N4から選択される材料を含む、請求項4に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記絶縁層の少なくとも1つが、一般構造式Iの改質有機化合物を含み、
【化1】
Corは多環式有機化合物であり、各Mは独立して修飾官能基であり、nは修飾官能基の数であり、0以上である請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記多環式有機化合物は、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアジン、インダントロン、および構造1〜43から選択される、請求項6に記載のコンデンサ。
【表1】
【請求項8】
前記修飾官能基が、アルキル、アリール、置換アルキル、および置換アリールから選択される、請求項6または7に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記絶縁層の少なくとも1つが、フッ素化アルキル、ポリエチレン、ケブラー、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリプロピレン、フッ素化ポリプロピレン、およびポリジメチルシロキサンから選択される化合物を含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記絶縁層の少なくとも1つが、構造44〜49から選択される構造を有する材料を含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【表2】
【請求項11】
前記絶縁層の少なくとも1つは、構造50〜55から選択される構造を有する材料を含み、
【表3】
各R
1およびR
2は、アルキル、アリール、置換アルキル、および置換アリールから独立して選択される請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記分極層の少なくとも1つが結晶性である、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記導電性ナノ粒子が、導電性オリゴマーを含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項14】
前記導電性オリゴマーの長手方向軸が、電極表面に対して垂直に向けられている、請求項13に記載のコンデンサ。
【請求項15】
前記導電性オリゴマーは、構造式57〜63のいずれかであり、
【表4】
X=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であることを特徴とする請求項13に記載のコンデンサ。
【請求項16】
前記導電性ナノ粒子が、低分子量導電性ポリマーを含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項17】
前記低分子量導電性高分子が、構造式57〜63のいずれかに対応するモノマーを含み、
【表5】
ここで、X=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であることを特徴とする請求項16に記載のコンデンサ。
【請求項18】
前記導電性オリゴマーが、次の式で表され、
【化2】
R
qは置換基であり、qは0以上の数であることを特徴とする請求項13に記載のコンデンサ。
【請求項19】
各Rが、独立して、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールである、ことを特徴とする請求項18に記載のコンデンサ。
【請求項20】
前記絶縁体マトリックスの材料が、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン)[P(VDF−HFP)]、エチレンプロピレンゴム(EPR)およびエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)を含むエチレンプロピレンポリマー、およびジメチルジクロロシロキサン、ジメチルシランジオールおよびポリジメチルシロキサンなどのシリコーンゴム(PDMSO)から選択されることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項21】
前記電極の少なくとも1つが、Pt、Cu、Al、Ag、Au、Ti、W、Zn、Niまたは低融点合金を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項22】
前記絶縁層の厚み(dins)と前記分極層の厚み(dpol)と前記絶縁層の破壊電界強度Einsと前記分極層Epolの絶縁破壊電界強度との関係が、dins<dpol、およびEins>Epolであることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項23】
電極が銅を含み、mが1以上であり、絶縁層Aの誘電材料がポリエチレンであり、分極層Bの材料が、微分散PANI−DBSA/PAAであり、前記複合層におけるPAAに対するPANIの比が約20重量%以上であり、前記絶縁層の厚さ(dins)が少なくとも約2.5nmであり、前記分極層の厚さ(dpol)が少なくとも約1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項24】
前記電極が銅を含み、mが1以上であり、前記絶縁層Aの誘電材料がポリエチレンであり、前記分極層Bの材料が、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)で安定化されたコロイドPANI分散体であり、絶縁層の厚さ(dins)が2.5〜1000nm、分極層の厚さ(dcond)が10〜50μmである。
【請求項25】
前記分極層が、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、およびドデシルジメチルアミン酸化物から選択される界面活性剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項26】
コンデンサの製造方法であって、
a)第1の電極として機能する導電性基板を準備するステップと、
b)前記第1の電極に隣接して固体多層構造を形成するステップと、
c)多層構造に隣接する第2の電極を形成するステップとを有し、
ただし、多層構造の形成ステップは、絶縁層および分極層の適用の交互操作または絶縁層および分極層の同時押出し操作を含み、個々の絶縁層は、ナノメートル(nm)当たり少なくとも約0.05ボルトの誘電率を有し、個々の分極層は、少なくとも約100の誘電率を有することを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項27】
前記固体多層構造を形成するステップが、絶縁材料の溶液の塗布と分極材料の溶液の塗布との交互の操作を含み、前記両方の塗布操作の後に乾燥させて固体絶縁層および分極層を形成するステップを含み、交互操作は、多層構造の形成が完了するまで繰り返され、絶縁層は、最初の層および最後の層が電極と直接接触するように形成されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記固体多層構造を形成するステップが、絶縁材料の溶融物の塗布と分極材料の溶融物の塗布との交互の操作を含み、前記両方の塗布操作の後に、冷却させて固体絶縁層および分極層を形成するステップを含み、交互動作は、多層構造の形成が完了するまで繰り返され、絶縁層は、最初の層および最後の層が電極と直接接触するように形成されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記固体多層構造を形成するステップが、交互の分極材料および絶縁誘電材料を連続的に含む前記層の少なくとも1つのセットを基板上に共押出しした後、乾燥させて前記固体多層構造を形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記固体多層構造を形成するステップが、分極材料と絶縁誘電材料との交互の溶融物を連続的に含む前記層のセットの共押出しした後に、冷却させて前記固体多層構造を形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
コンデンサの製造方法であって、
a)第1および第2の電極上に絶縁層をコーティングするステップと、
b)第1および第2の電極の一方の絶縁層上に多層構造をコーティングし、第1および第2の電極の他方を多層構造に積層し、
個々の絶縁層は少なくとも約0.05ボルト/ナノメートル(nm)の破壊電圧を有し、多層構造は少なくとも約100の誘電率を有する分極層を含むことを特徴とするコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
コンデンサは、静電界の形でエネルギーを蓄積するために使用される受動電子部品であり、誘電体層によって分離された一対の電極を含む。2つの電極間に電位差が存在するとき、電界が誘電体層に存在する。この電界はエネルギーを蓄積し、理想的なコンデンサは、各電極上の電荷とそれらの間の電位差との比である単一の一定の静電容量値によって特徴付けられる。実際には、電極間の誘電体層は少量の漏れ電流を通過させる。電極およびリード線は等価直列抵抗を生成し、誘電体層は破壊電圧をもたらす電界強度に制限を有する。最も単なるコンデンサは、誘電率εの誘電体層によって分離された2つの平行な電極からなり、各電極は面積Sを有し、互いに距離dをおいて配置されている。電極は面積Sにわたって均一に延びていると考えられ、表面電荷密度は式:±ρ=±Q/Sで表すことができる。電極の幅が間隔(距離)dよりもはるかに大きいので、コンデンサの中心付近の電場は、大きさE=ρ/εで均一になる。電圧は、電極間の電界の線積分として定義される。理想的なコンデンサは、式(1)で定義される一定の静電容量Cで特徴付けられる。
【数1】
これは容量が面積と共に増加し、距離と共に減少することを示している。したがって、高誘電率の材料で作られたデバイスでは、容量は最大である。
【背景技術】
【0002】
破壊電界強度E
bdとして知られる特性電界は、コンデンサ内の誘電体層が導電性になる電界である。これが起こる電圧は、デバイスの絶縁破壊電圧と呼ばれ、絶縁耐力と電極間の間隔との積によって与えられ、
【数2】
【0003】
コンデンサに蓄積される最大体積エネルギー密度は、〜ε・E
2bdに比例する値によって制限され、εは誘電率であり、E
bdは破壊強度である。したがって、コンデンサの蓄積エネルギーを増加させるためには、誘電体の透磁率εおよび誘電体の破壊強度E
bdを高める必要がある。
【0004】
高電圧用途では、はるかに大きなコンデンサを使用しなければならない。破壊電圧を劇的に下げる要因はいくつかある。導電性電極の形状はこれらの用途にとって重要である。特に、鋭いエッジまたは点は、電界強度を局所的に著しく増大させ、局所的な破壊を招く可能性がある。任意の位置でローカル破壊が開始されると、破壊は、誘電体層を通って対向電極に到達して短絡するまでに、速やかに“トレース”する。
【0005】
誘電体層の破壊は、通常、以下のように起こる。電場の強さが十分に高くなると、誘電材料の原子からの自由電子が、一方の電極から他方の電極へ電流を伝導させる。誘電体における不純物の存在または結晶構造の不完全性によっては、半導体デバイスにおいて観察されるようなアバランシェブレークダウンをもたらし得る。
【0006】
誘電体材料の他の重要な特性は、その誘電率である。コンデンサには様々な種類の誘電体が使用され、セラミックス、ポリマーフィルム、紙、電解コンデンサなどの各種のコンデンサがある。最も広く使用されるポリマーフィルム材料は、ポリプロピレンおよびポリエステルである。誘電率を増加するとともに体積エネルギー密度を増加するのが重要な技術課題となる。
【0007】
ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)の存在下でのポリアクリル酸(PAA)の水性分散液中のアニリンの現場重合を用いて、ポリアニリンの超高誘電率複合体PANI−DBSA/PAAを合成した(Chao−Hsien Hoaら、「in situ重合によって調製された高誘電率ポリアニリン/ポリ(アクリル酸)複合体」、Synthetic Metals 158(2008)、第630−637ページ)。水溶性PAAは高分子安定剤として働き、巨視的凝集からPANI粒子を保護した。重量で30%のPANIを含有する複合体について、ca.2.0×10
5(1kHzで)との非常に高い誘電率が得られた。PANI含有量によって複合材料の形態学的、誘電的および電気的特性に及ぼす影響が調べられた。誘電率、誘電損失、損失係数および電気係数の周波数依存性が、0.5kHz〜10MHzの周波数範囲で分析された。SEM顕微鏡写真では、高いPANI含有量(すなわち、20重量%)を有する複合材が、PAAマトリックス内に均一に分布した多数のナノスケールPANI粒子からなることを明らかにした。高誘電率は、PANI粒子の小さなコンデンサの合計に起因するものであった。この材料の欠点は、電場の増加に伴ってそのような事象が増加する確率で、電場の下でのパーコレーションおよび少なくとも1つの連続導電路の形成の可能性があることである。隣接する導電性PANI粒子を通る少なくとも1つの連続的な経路(トラック)がコンデンサの電極間に形成されると、そのコンデンサの破壊電圧を低下させる。
【0008】
水溶性ポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)[ポリ(1−ビニルピロリジン−2−オン)]で安定化されたコロイド状ポリアニリン粒子は、分散重合によって調製された。平均粒径241±50nmは、動的光散乱にて確定された(Jaroslav StejskalおよびIrina Sapurina、「ポリアニリン:薄膜およびコロイド分散(IUPAC Technical Report)」、Pure and Applied Chemistry、77巻、 No.5、第815−826ページ(2005)を参照)。
【0009】
ドープされたアニリンオリゴマーの単結晶は、単純な溶液に基づく自己組織化法を介して製造される(Yue Wangら、“ドーピングされたオリゴアニリン単結晶の階層的アセンブリを介した形態学的および次元的制御”、J.Am.Chem.Soc.、2012、134、第9251−9262ページ)。機械学についての詳細的な研究は、異なる形態および寸法の結晶を「ボトムアップ」階層アセンブリによって生成し、1次元(1−D)ナノファイバーような構造を高次構造に集約することができることを明らかにした。1−Dナノファイバーおよびナノワイヤ、2−Dナノリボンおよびナノシート、3−Dナノプレート、積み重ねシート、ナノフロア、多孔質ネットワーク、中空球およびねじれコイルを含む、多種多様な結晶ナノ構造を、結晶の制御およびドープされたオリゴマー間の非共有相互作用によって取得することができる。これらのナノスケールの結晶質は、その多量の対等物と比較して導電性が向上し、形状依存性の結晶性などの興味深い構造特性の関係も示される。さらに、吸収研究を介して、これらの構造の形態および寸法は、分子−溶媒相互作用を監視することによって、大幅に合理化および予測することができる。ドーピングされたテトラアニリンをモデルシステムとして用いて、この論文で提示された結果および戦略は、有機材料の形状およびサイズ制御の一般的なスキームについての示唆を提供する。
【0010】
多層構造に基づく公知のエネルギー蓄積装置(コンデンサ)が存在する。エネルギー蓄積デバイスは、第1および第2の電極と、遮断層および誘電体層を含む多層構造とを含む。第1遮断層は、第1電極と誘電体層との間に配置され、第2遮断層は、第2電極と誘電体層との間に配置される。第1および第2の阻止層の誘電率は、いずれも誘電体層の誘電率よりも独立して大きい。この装置の欠点は、電極と直接接触して位置する高誘電率の層を遮断することが、エネルギー蓄積装置の破壊を招く可能性があることである。複合材料をベースとし、分極粒子(PANI粒子など)を含む高誘電率の材料は、パーコレーション現象を示すことがある。形成された層の多結晶構造は、結晶間の境界に複数のもつれ化学結合を有する。高誘電率の材料が多結晶構造を有する場合には、結晶粒の境界に沿ってパーコレーションが生じることがある。公知の装置の別の欠点は、すべての層の真空蒸着である高価な製造手順である。
【0011】
エネルギー蓄積デバイスとしてのコンデンサは、電気化学的エネルギー蓄積に対して、周知の利点を有する。電池と比較して、コンデンサは、非常に高い電力密度、すなわち充電/再充電速度でエネルギーを蓄積することができ、劣化の少なく長い蓄積寿命を有し、数十万回または数百万回の充放電が可能である。しかし、コンデンサは、電池のように小さな体積または重量でエネルギーを貯蔵しないことが多く、エネルギー蓄積コストが低いので、電気自動車などの一部のアプリケーションではコンデンサが実用的ではない。したがって、体積および質量エネルギー蓄積密度が高く、コストが低いコンデンサを提供することは、エネルギー蓄積技術の進歩であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、エネルギー蓄積デバイス(例えば、コンデンサ)およびその製造方法を提供する。本発明のエネルギー蓄積デバイスは、いくつかのエネルギー蓄積デバイスに関連する蓄積エネルギーの体積および質量密度のさらなる増加の問題を解決すると同時に、材料および製造プロセスのコストを削減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの形態では、コンデンサは、第1の電極、第2の電極、および前記第1および第2の電極の間に配置された固体多層構造を含む。前記電極は平面であり、互いに平行に配置され、前記固体多層構造は、前記電極に平行に配置された層を含み、以下のシーケンスを有する:(A−B)
m−A。ここで、Aは絶縁層であり、Bは、絶縁体マトリックスにおける導電性ナノ粒子の微小分散を含む分極層であり、数m≧1である。ある場合では、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600またはそれ以上であり得る。いくつかの例において、mは、1〜1000、1〜100、または1〜50である。電極は、互いにほぼ平行であってもよく、または実質的に平行であってもよい。電極は、平行配置からオフセットすることができる。
【0014】
別の形態では、コンデンサの製造方法は、(a)電極の1つとして機能する導電性基板の準備、(b)固体多層構造の形成、および(c)多層構造上への第2の電極の形成を含み、多層構造の形成は、絶縁層および分極層の交互適用のステップまたは層の同時押出しのステップを含む。
【0015】
別の形態では、コンデンサの製造方法は、両方の電極上に絶縁層をコーティングするステップと、第2電極を多層構造に積層して電極の一方に多層構造をコーティングするステップとを含む。
【0016】
本発明のさらなる形態および利点は、本発明の例示的な実施形態のみが示され記載される以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明から逸脱することなく様々な点で変更可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0017】
参照による組み込み
個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されていると同様に、本明細書中に言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書に援用される。
【0018】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態によるエネルギー蓄積デバイスを概略的に示す。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による別のエネルギー蓄積デバイスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の様々な実施形態を本明細書に示し説明してきたが、当業者には、そのような実施形態は単なる例示として提供されていることが明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、および置換が当業者に生じ得る。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物を使用することができることを理解されたい。
【0021】
本発明は、コンデンサなどのエネルギー蓄積デバイスを提供する。本発明の一実施形態では、絶縁層は結晶質である。絶縁層は、単結晶材料、バッチ結晶材料、または非晶質材料を含む任意の適切な結晶材料から製造することができる。用途に応じて、絶縁誘電体材料の誘電率は広範囲にあり得る。絶縁層は、4eVより大きいバンドギャップ、および約0.001ボルト(V)/ナノメートル(nm)、0.01V/nm、0.05V/nm、0.1V/nm0.2V/nm、0.3V/nm、0.4V/nm、0.5V/nm、1V/nm、または10V/nmより大きい破壊電界強度によって特徴付けられる材料を含む。分極層の材料は、広範囲にあり得る誘電率ε
polを有する。場合によっては、ε
polは、少なくとも約100、200、300、400、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000または100000である。
【0022】
本発明では、固体絶縁誘電体層は、使用される材料および製造手順に応じて、アモルファス層と結晶固体層との間の範囲において異なる構造を有することができる。開示されたコンデンサの一実施形態では、絶縁層は、酸化物、窒化物、酸窒化物およびフッ化物から選択される材料を含む。開示されたコンデンサの別の実施形態では、絶縁層は、SiO
2、HFO
2、Al
2O
3またはSi
3N
4から選択される材料を含む。開示されるコンデンサの一実施形態では、絶縁層は、一般構造式I:
【化1】
式中、Corは共役π系を有する多環式有機化合物であり、Mは修飾官能基であり、nは修飾官能基の数で、1以上となる。本発明の別の実施形態では、多環式有機化合物は、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアジン、インダントロン、およびそれらの混合物からなるリストから選択される。表1に示す構造1〜43から選択される一般構造式を有する。
【表1】
【0023】
本発明の別の実施形態において、修飾官能基は、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される。修飾官能基は、製造段階での有機化合物の溶解性と、コンデンサの固体絶縁層のさらなる絶縁特性とを提供する。本発明のさらに別の実施形態では、絶縁層は、フッ素化アルキル、ポリエチレン、ケブラー、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリプロピレン、フッ素化ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサンを含むリストから選択されるポリマー材料を含む。本発明のさらに別の実施形態では、絶縁層は、表2に示す構造44〜49から選択される水溶性ポリマーに基づいて形成されたポリマー材料を含む。
【表2】
【0024】
本発明の別の実施形態では、絶縁層は、表3に示す構造50〜55から選択される有機溶媒に可溶なポリマーに基づいて形成されたポリマー材料を含む。
【表3】
修飾官能基R
1およびR
2は、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから独立して選択される。
【0025】
本発明の一実施形態では、分極層は結晶質である。本発明の一実施形態では、分極層は、導電性オリゴマーのナノ粒子を含む。本発明の別の実施形態では、導電性オリゴマーの縦軸は、電極表面に対して主に垂直に向けられる。本発明の1つの実施形態において、導電性オリゴマーは、表4に示す構造式57〜63のうちの1つに対応する以下の構造式を含むリストから選択される。
【表4】
ただし、X=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12である。本発明のコンデンサの別の実施形態では、分極層は、低分子化合物の導電性ナノ粒子を含み、この導電性ナノ粒子は、分子量の導電性ポリマーである。本発明の別の実施形態において、低分子導電性ポリマーは、表4に与えられるような構造57〜63から選択される部分を含む。開示されるコンデンサの別の実施形態において、導電性オリゴマーは、置換基をさらに含み、一般構造式II:
【化2】
ここで、R
qは置換基の集合であり、qは集合R
qにおける置換基Rの数であり、qは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に等しいことができる。コンデンサの別の実施形態では、置換基Rは、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから独立して選択される。コンデンサのさらに別の実施形態では、絶縁体マトリックスの材料は、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)[P(VDF−HFP)]、エチレンプロピレンゴム(EPR)およびエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)を含むエチレンプロピレンポリマー、およびジメチルジクロロシロキサン、ジメチルシランジオールおよびポリジメチルシロキサンなどのシリコーンゴム(PDMSO)を含む。これらの化合物は安定剤としても機能し、導電性ナノ粒子を巨視的凝集から保護する。開示されたエネルギー蓄積デバイスの電極は、Pt、Cu、Al、Ag、Au、Ti、W、Zn、Niまたは他の低融点合金を含むがこれらに限定されない任意の適切な材料から作製され得る。本発明の一形態では、絶縁層の厚さ(d
ins)と、分極層の厚さ(d
pol)と、絶縁層の絶縁破壊電界強度E
insと、偏波層の絶縁破壊電界強度E
polとは、d
ins<d
pol、およびE
ins>E
polという関係がある。
【0026】
本発明の別の実施形態では、電極は銅からなり、数mは1であり、絶縁層Aの誘電材料はポリエチレンであり、分極層Bの材料は微分散PANI−DBSA/PAAドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)の存在下でのポリアクリル酸(PAA)の水性分散液中のアニリンの現場重合を用いて合成されたものであり、複合体中のPANI対PAAの比は20重量%絶縁層の厚さはd
ins=25nm、分極層の厚さd
pol=10mmである。本発明のさらに別の実施形態では、電極は銅からなり、数mは1に等しく、絶縁層Aの誘電材料はポリエチレンであり、分極層Bの材料はポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)であり、絶縁層の厚さはd
ins=25nmであり、分極層の厚さd
cond=50μmである。本発明の別の実施形態において、分極層は、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ドデシルジメチルアミンオキシドである。
【0027】
また、本発明は、上記のコンデンサの製造方法を提供する。開示された方法の一実施形態では、多層構造の形成のステップ(b)は、絶縁材料の溶液の塗布と分極材料の溶液の塗布の交互のステップを含み、両方の塗布ステップの後には、乾燥させて固体絶縁層および分極層を形成するステップを有し、多層構造の形成が完了するまで前記の交互のステップが繰り返され、最初の層および最後の層が電極に直接接触するように絶縁層が形成される。開示された方法の別の実施形態では、多層構造の形成のステップ(b)は、絶縁材料の溶融物の塗布と分極材料の溶融物の塗布の交互のステップを含み、両方の塗布工程の後には、冷却して固体の絶縁層および分極層を形成するステップを有し、多層構造の形成が完了するまで前記の交互のステップが繰り返され、最初の層および最後の層が電極と直接接触するように絶縁層が形成される。開示された方法のさらに別の実施形態では、固体多層構造を形成するステップ(b)は、交互の分極材料および絶縁性誘電材料を連続して含む層のセットを基板上に共押出しするステップを含み、その後には、乾燥させて固体多層構造を形成するステップを有する。開示された方法のさらに別の実施形態では、前記の固体多層構造を形成するステップは、分極材料と絶縁性誘電材料との交互溶融物を連続的に含む層のセットを共押出するステップを含み、その後には、冷却して固体の多層構造を形成するステップを有する。また、本発明は、(d)両電極上に絶縁層を被覆するステップと、(e)一方の電極上に多層構造を被覆して第2の電極を多層構造に被覆するステップとを含む、上記のコンデンサの製造方法を提供する。
【0028】
実施例1
図2は、電極1および2と、分極層(5)で分離された絶縁誘電体(3および4)の2つの絶縁層を含む固体多層構造を含む開示されたエネルギー蓄積デバイスの実施形態を示す。本発明のこの実施形態では、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)の存在下でのポリアクリル酸(PAA)の水性分散液中のアニリンの現場重合を用いて合成された、ポリアニリンとPANI−DBSA/PAAとの複合体が分極層の材質、ポリエチレンなどが絶縁性誘電体材料としてそれぞれ用いられる。絶縁層の厚さd
insは2.5nmである。電極10および11は銅からなる。ポリエチレンの誘電率は2.2に等しい(すなわち、ε
ins= 2.2)。ポリアニリンとPANI−DBSA/PAAとの複合体は、誘電率ε
polが100000であり、分子伝導性を有する導電層の厚さがd
pol=1.0mmである。
【0029】
実施例2
図3は、電極6および7と、交互の絶縁層および分極層を含む固体多層構造を含む開示されたエネルギー蓄積デバイスの実施形態を示し、絶縁誘電材料(11、12、13、14)の層は分極層(8、9、10)で分離される。本発明のこの実施形態では、分極層の材料としてPANI−DBSA/PAA複合材料を使用し、絶縁誘電材料としてポリエチレンを使用する。絶縁層の厚さ=2.5〜1000nm。電極6および7は銅で作られている。ポリエチレンの誘電率は2.2(すなわち、ε
ins=2.2)であり、絶縁破壊電圧V
bd=1ミリメートルの厚さで40キロボルトである。一実施形態では、分極層の材料は、100000に等しい誘電率ε
polを有するポリアニリン(PANI)/ポリ(アクリル酸)(PAA)複合材料である。この例では、分極層の厚さd
pol=1.0〜5.0mmである。
【0030】
本発明を特定の好ましい実施形態を参照して詳細に説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および改良がなされることができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され説明されてきたが、そのような実施形態が単なる例示として提供されることは、当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には数多くの変形、変更、および置換が可能である。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造およびそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
【表2】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
【表3】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
【表4】
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項10
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項10】
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項15】
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項17
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項17】
【国際調査報告】