【課題を解決するための手段】
【0011】
用いられる15族元素化合物は、規定の組み合わせにおける、可能な限り原子効率的で、費用効率的で、かつ再現性のある、多元的で、均質で、超高純度のIII−V族半導体及び/又は層の製造によって特徴づけられるものであるべきである。更に、15族元素化合物を本発明が意図するように用いて製造され得るIII−V族半導体層が提供されるべきである。加えて、15族元素二元化合物が提供される。
【0012】
本発明の主要な特徴は、請求項1、請求項16、又は請求項17に記載されている。実施形態は、請求項2〜15の主題となっている。
【0013】
上記の目的は、少なくとも1種類の15族元素二元化合物を蒸着プロセスの反応物質として用いることにより実現され、少なくとも1種類の15族元素二元化合物は、以下の一般式を有し:
R
1R
2E−E’R
3R
4 (I),
ここで、
−R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
−E及びE’は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群からそれぞれ独立に選択されるが、
EはE’と同じであるか又はE’とは異なっており、
かつ/又は
少なくとも1種類の15族元素二元化合物は、以下の一般式を有し:
R
5E(E’R
6R
7)
2 (II),
ここで、
−R
5、R
6、及びR
7は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、かつ
−E及びE’は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群からそれぞれ独立に選択されるが、
EはE’と同じであるか又はE’とは異なっており、
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。
【0014】
具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、C1〜C6アルキルラジカル、及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ水素(H)、C1〜C4アルキルラジカル、及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。
【0015】
より具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロブチル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0016】
アルキル基又はアリール基は、置換、特にフッ素置換又は全フッ素置換され得る。この場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)であり得る。
【0017】
最も具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ水素(H)、メチル(Me)、イソプロピル(iPr)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)からなる群から選択される。1つの具体的な実施形態においては、E及びE’は異なっており、かつ、E又はE’の一方は窒素である。式(I)の化合物の別の1つの実施形態においては、R
3及びR
4が水素(H)とは異なる場合、R
1及びR
2は水素であり、又はR
1及びR
2が水素とは異なる場合、R
3及びR
4は水素である。
【0018】
別の1つの実施形態においては、E及びE’は、窒素、リン、ヒ素、及びアンチモンからなる群から選択される。
【0019】
本発明は、ヒドラジン(H
2N−NH
2)及びその誘導体、特に1,1−ジメチルヒドラジン及びターシャリーブチルヒドラジンを、蒸着プロセスにおける反応物質として使用することには関しない。これらの化合物は、ヒドラジンから開始して、1個又は数個の水素原子を置換することによって製造され得るヒドラジン誘導体と見做される。これは、非環式化合物及び環式化合物をともに、例えば飽和三部化合物を含む。その結果、式(I)の化合物においては、E又はE’が窒素(N)である場合には、E及びE’は互いに異なる。
【0020】
本発明にしたがって、一般式(I)及び/又は(II)の15族元素二元化合物の1種類又は数種類を、蒸着プロセスにおける反応物質として使用することにより、規定の組み合わせの多元的で、均質で、超高純度のIII−V族半導体接続及び/又は層の再現性があり、費用効率的な製造が可能になる。蒸着プロセスは、好ましくは化学蒸着であり、特に、有機金属気相成長法又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)である。蒸着プロセスの生成物は、好ましくはIII−V族半導体層である。
【0021】
本発明にしたがって用いられる15族元素化合物は、15族の元素に関して単一源前駆体(SSP)を代表する。本発明にしたがって分解する単一源前駆体は、1種類以上の15族元素、特に、2種類の異なる15族元素を有する分子である。前駆体に含まれる15族元素は、生成される及び/又は基板上に堆積されるIII−V族半導体の望ましい光電子特性にしたがって、選択及び/又は組み合わされ得る。
【0022】
例えばPH
3、AsH
3、tBuPH
2、tBuAsH
2、及びMe
2N−NH
2のような、現在までに化学蒸着プロセスに用いられる15族元素源のそれぞれは、1種類の15族元素しか有しておらず、そのことは、生成及び/又は堆積される多元的、すなわちIII−V族三元以降の半導体の望ましい組み合わせによって、幾種類かの15族元素源が提供され、互いに混合される必要があるということを意味する。これとは対照的に、本発明にしたがって使用される式(I)及び/又は式(II)の15族元素源は、有利なことに、大半の場合に互いに異なる2種類の15族元素を含む。したがって、有利な点は、本発明による単一源前駆体から開始して、製造されるIII−V族半導体内に含まれるそれぞれの15族元素のための別体の前駆体接続を作成する必要なしで、III−V族多元半導体接続及び/又は層を製造する選択肢である。その結果、蒸着プロセスを計画し実行する文脈において、数種類の15族元素源及び/又は前駆体のさまざまな分解温度、蒸気圧、及びそれぞれに異なる拡散率を考慮する必要がなくなる。これにより、III−V族半導体の製造及び/又は堆積におけるプロセスが、特に実行容易になる。
【0023】
更に、本発明による15族元素二元化合物の使用法により、生成するIII−V族半導体及び/又はそれぞれの層に吸収されざるを得ない、結果として生じる副産物の種類が少なくなるが、それは、原子効率性の向上や、プロセスの単純化につながるものである。
【0024】
本発明にしたがって用いられる化合物は、これまでの化学蒸着プロセスにおいて用いられてきた、例えばPH
3、AsH
3、tBuPH
2、tBuAsH
2のような15族元素源よりも、分解温度が低い。本発明にしたがって用いられる、EとE’が同じである15族元素化合物の場合には、分解温度が低い理由は、それぞれのE−E’結合が弱いことに帰することができる。更に、例えば、ホスフィン(PH
3)及びアルシン(AsH
3)のような、非常に毒性の高い15族元素前駆体をなしで済ますことが可能になる。これにより、蒸着プロセスは、低いプロセス温度で実行される比較的エネルギー節約的で、それゆえ費用効率的なプロセスなり、更に安全で、衛生的、かつ環境にやさしい方法で実行可能なプロセスとなる。
【0025】
本発明による複数の単一源前駆体から選択が実行され得るが、生成されるIII−V族半導体に含まれるべき15族元素どうしの関係は、単一源前駆体の組成により予め設定され得る。これにより、規定の、予め設定可能な光電子特性を有するIII−V族半導体化合物及び/又は層の製造が可能になる。例えば、本発明による15族元素化合物を用いるIII−V族三元半導体化合物及び/又は層、例えば、Ga(E
xE’
1−x)(E≠E’であり、かつ0<x<1)、の製造が、シンプルで、原子効率性が高く、費用効率的な方法で可能になる。例えば、Ga
nIn
1−nE
xE’
1−x(E≠E’であり、かつ0<x<1)及びGa(As
1−(x+y)N
xP
y)(0<x<1であり、かつ0<y<1)のような、III−V族四元半導体化合物及び/又は層の製造についても同じことが言える。
【0026】
本発明による一般式(I)及び/又は(II)の15族元素二元化合物の特に好ましい実施形態は、例えば、tBu
2As−NH
2又はHN(SbtBu
2)
2のような、窒素に結合した炭素を有しない窒素系の単一源前駆体の選択を提供する。これらの15族元素二元源は、例えば、高い蒸気圧、低い毒性、単純な製造可能性、容易な取扱性、及び良好な解離基の存在のような単一源前駆体のあらゆる有利な特性を有するが、その一方で、窒素に結合した炭素原子を含まない。また、1,1−ジメチルヒドラジンのような有機置換された窒素化合物を窒素源として添加することを不要とすることができる。その結果、上のような化合物は、超高純度の窒素系のIII−V族半導体及び/又は層の製造に特に好適である。本発明による化合物を使用して得られるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層は炭素系窒素源が使用されないので、従来の製造方法にしたがって製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層と比べて、炭素含有量を劇的に減らしたという点で、特に有利である。生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に混入し得る炭素混入物は、通常は有機置換された1種類又は複数種類の13族元素源から典型的には生じる。
【0027】
本発明によって提供される単一源前駆体はまた、本発明による又は既知の1種類又は数種類の他の15族元素源とともに用いることもあり得る。これは、式(I)又は(II)の窒素系の15族元素二元化合物の場合には特に有利となり得る。1種類又は複数種類の他の15族元素源を制御可能に添加することは、生成及び/又は堆積される、窒素系の15族元素二元化合物由来のIII−V族半導体の窒素の含有量に影響を及ぼし、かつ微調整することを可能とし得る。15族元素二元化合物のみを排他的に用いた場合に得られるであろう15族元素どうしの間の関係とは異なる関係を、その15族元素どうしの間に有するIII−V族半導体を生成及び/又は堆積することが、特に可能である。例えば、窒素の含有量は、Ga(As
1−xN
x)(0<x<1)の製造におけるヒ素の含有量よりも低いレベルの含有量を通常想定する。例えば、ヒ素源tBuAsH
2のような、別の1種類の15族元素源を添加することにより、Ga(As
1−xN
x)(0<x<1)の窒素含有量を、ヒ素の含有量と比較して、更に減少させることが可能になる。このことの理由は、窒素原子は、追加的なヒ素源からのヒ素原子と競う必要があるという事実に帰することができる。それにより、生成及び/又は堆積されるIII−V族半導体の光電子特性を、更に大きな程度で変化及び/又は微調整することが可能になる。
【0028】
概して、比較的低いプロセス温度で、本発明による15族元素二元化合物から開始して、規定の組み合わせの、均質でかつ超高純度のIII−V族多元半導体を生成及び/又は堆積することが可能である。本発明による15族元素前駆体により、III−V族半導体及び/又はそれぞれの層の、シンプルで、確実で、比較的原子効率的で、かつ比較的エネルギー効率的な製造が可能になる。
【0029】
本発明による使用法の1つの有利な実施形態においては、反応物質は、一般式(I)の15族元素二元化合物であり、
−R
1及びR
2は、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、かつ
−R
3=R
4=Hである。
【0030】
具体的には、R
1及びR
2は同じであるか又は異なっており、かつ、C1〜C6アルキルラジカル及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
1及びR
2は同じであるか又は異なっており、かつ、C1〜C4アルキルラジカル及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
1及びR
2は同じであるか又は異なっており、かつ、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0031】
アルキル基又はアリール基は、置換され得る。特に、それらは、フッ素化又は全フッ素化され得る。その場合、R
1及びR
2は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)である。特に、R
1及びR
2は同じである。一部の具体的な実施形態においては、R
1及びR
2は、tBu、iPr、トリフルオロメチル、又はフェニルである。
【0032】
別の1つの実施形態においては、E及びE’は互いに異なる。別の1つの実施形態においては、Eは、リン、ヒ素、及びアンチモンからなる群から選択される。更に別の1つの具体的な実施形態においては、E’は、窒素、リン、及びヒ素からなる群から選択され、より具体的には、E’は窒素である。また更に別の1つの具体的な実施形態においては、Eは、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択され、特にリン、ヒ素、及びアンチモンからなる群から選択され、かつE’は窒素である。この実施形態においては、tBuを、R
1及びR
2の両方として、有利に用いることができる。
【0033】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。一般式(I)の15族元素二元化合物は、好ましくは、tBu
2P−NH
2、(CF
3)
2P−NH
2、(C
6H
5)
2P−NH
2、tBu
2P−AsH
2、tBu
2As−NH
2、tBu
2As−PH
2、(C
6H
5)
2As−PH
2、tBu
2Sb−NH
2、及びtBu
2Sb−PH
2からなる群から選択される。これらの全ての単一源前駆体は、複数種類のIII−V族多元半導体の製造及び/又は堆積に好適である。窒素系の15族元素化合物、具体的にはtBu
2P−NH
2、(CF
3)
2P−NH
2、(C
6H
5)
2P−NH
2、tBu
2As−NH
2、及びtBu
2Sb−NH
2は、超高純度の窒素系のIII−V族半導体層の製造及び/又は堆積に好適であるが、それは、上に挙げたような窒素系の15族元素化合物は、いかなる窒素結合炭素原子を有しないため、既知の製造方法により生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層と比較して、その炭素含有量が劇的に減少するためである。炭素混入物が、生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の中におそらく含まれているという場合、それらは通常、13族元素源、又は通常有機置換されている源に、典型的には由来する。
【0034】
例えばトリメチルガリウム(Me
3Ga)、トリ−tert−ブチルガリウム(tBu
3Ga)、又はトリ−エチルガリウム(Et
3Ga)を潜在的なガリウム源として、15族元素二元化合物であるtBu
2As−NH
2(DTBAA=ジ−tert−ブチルアミノアルサン)を、例えば、Ga(As
1−xN
x)層(0<x<1)の合成用の窒素及びヒ素源として用い得るが、その際、GaAsを基板としてその上に堆積が起こり得る。これにより、例えば1,1−ジメチルヒドラジンのような有機置換された窒素化合物を窒素源として使用することを回避できるので、窒素混入物を、既知の製造方法により製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の場合と比べて劇的に減らすことができる。生成されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に含まれ得るいかなる炭素混入物も、通常は、13族元素源又は正常に有機置換された源に由来する。
【0035】
唯一のヒ素源が15族元素二元化合物、tBu
2As−NH
2である限りは、生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に含まれるはずの15族元素どうし(このケースでは窒素及びヒ素)の関係は、主として、単一源前駆体であるtBu
2As−NH
2の組成により、予め設定される。しかしながら、III−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層内の、この15族元素どうし、例えばヒ素と窒素との関係は、例えば、反応装置内での15族二元元素源の分圧、又はプロセス温度といったプロセスパラメーターのバリエーションにより影響され得る。15族元素合成物tBu
2As−NH
2に加えて、本発明又は既知の方法による1種類又は数種類の他の15族元素化合物を、例えば、既知の15族元素非二元化合物tBuAsH
2を、追加的なヒ素源として、又は既知の15族元素非二元化合物tBuPH
2をリン源として、使用し得る。tBu
2As−NH
2を、15族元素二元化合物として、1種類又は数種類の15族元素化合物とともに用いることにより、tBu
2As−NH
2だけを窒素及びヒ素源として用いる場合と比較して、窒素の含有量が少ないGa(As
1−xN
x)層(0<x<1)を製造することが可能となる。このことの原因は、窒素原子は、追加的な15族元素源、例えば、ヒ素又はリン源からの15族元素の原子と競う必要があるという事実に帰することが可能である。概して、III−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の組み合わせと、それに伴い光電子特性とが、より大きな程度に、変化及び/又は微調整され得る。
【0036】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質は、一般式(I)の15族元素二元化合物で、
−R
1、R
2、及びR
4は、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、かつ、
−R
3は水素である。
【0037】
具体的には、R
1、R
2、及びR
4は同じであるか又は異なっており、かつC1〜C6アルキルラジカル及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
1、R
2、及びR
4は同じであるか又は異なっており、かつ、C1〜C4アルキルラジカル及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
1、R
2、及びR
4は同じであるか又は異なっており、かつ、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0038】
アルキル基又はアリール基は、置換、特にフッ素置換又は全フッ素置換され得る。その場合、R
1、R
2、及びR
4は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)である。1つの実施形態においては、R
1、R
2、及びR
4は同じである。具体的な実施形態においては、R
1、R
2、及びR
4は、互いに独立であるが、Me、tBu、iPr、トリフルオロメチル、又はフェニルである。
【0039】
1つの具体的な実施形態においては、EとE’とは異なっている。別の1つの実施形態においては、Eは、ヒ素及びアンチモンからなる群から選択される。更に別の1つの具体的な実施形態においては、E’は、窒素、リン、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択される。
【0040】
更により具体的には、E’がアンチモン又はビスマス、である場合には、R
4はtBuである。
【0041】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。一般式(I)の15族元素二元化合物は、好ましくは、tBu
2As−PHMe、tBu
2Sb−NHtBu、tBu
2Sb−PHtBu、及びtBu
2Sb−NHiPrからなる群から選択される。これらの単一源前駆体は、さまざまな、均質な、定義可能なIII−V族半導体の製造及び/又は堆積のために使用され得る。
【0042】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質が、一般式(I)の15族元素二元化合物であり、かつ、R
1、R
2、R
3、及びR
4が互いに独立に、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群から選択される。アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。一般式(I)の15族元素二元化合物は、好ましくは、Me
2As−AsMe
2、tBu
2Sb−NMe
2、iPr
2Sb−PMe
2、Et
2Sb−NMe
2、Et
2Sb−P(C
6H
5)
2、tBu
2Bi−PtBu
2、及びtBu
2Bi−AstBu
2からなる群から選択される。
【0043】
これらの化合物は全て、規定の組み合わせの、複数の、均質なIII−V族多元半導体の製造及び/又は堆積に好適である。
【0044】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質は、一般式(II)でかつR
5が水素の15族元素二元化合物である。この場合、一般式(II)の15族元素二元化合物は、好ましくは、HP(AstBu
2)
2及びHN(SbtBu
2)
2からなる群から選択される。両方の単一源前駆体は、均質で、規定の、かつ超高純度のIII−V族半導体の製造及び/又は堆積に好適である。15族元素二元化合物であるHN(SbtBu
2)
2は、規定の組成の、窒素系のIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の製造に特に好適である。本発明による15族元素二元化合物を用いて得られるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層は、従来の製造方法にしたがって製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層と比べて、炭素系窒素源が使用されないので、炭素含有量を劇的に減らしたという点で、特に有利である。炭素混入物が、生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の中におそらく含まれているという場合、それらは通常、13族元素源、又は通常有機置換されている源に、典型的には由来する。
【0045】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質は、一般式(II)の15族元素二元化合物で、かつ、
−R
5は、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群から選択され、かつ、
−R
6とR
7とはともに水素である。
【0046】
具体的には、R
5は、C1〜C6アルキルラジカル及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
5は、C1〜C4アルキルラジカル及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
5は、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0047】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。その場合には、R
5は、トリフルオロメチル(CF
3)及びペンタフルオロフェニル(C
6F
5)からなる群から選択され得る。具体的な実施形態においては、R
5は、Me、tBu、トリフルオロメチル、又はフェニルから選択され得る。
【0048】
別の1つの実施形態においては、Eは、リン及びヒ素からなる群から選択される。更に別の1つの具体的な実施形態においては、E’は窒素である。
【0049】
一般式(II)の15族元素二元化合物は、好ましくは、tBuP(NH
2)
2、tBuAs(NH
2)
2、及び(C
6H
5)P(NH
2)
2からなる群から選択される。これらの15族元素源は、規定の組み合わせの、窒素系の、均質で、超高純度のIII−V族半導体の製造及び/又は堆積に好適である。本発明による15族元素二元化合物を用いて得られるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層は、従来の製造方法にしたがって製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層と比べて、炭素系窒素源が使用されないので、炭素含有量を劇的に減らしたという点で、特に有利である。生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に混入し得る炭素混入物は、通常は有機置換された1種類又は複数種類の13族元素源から典型的には生じる。
【0050】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質は、一般式(II)の15族元素二元化合物で、かつ、
−R
5及びR
7は、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、かつ
−R
6は水素である。
【0051】
具体的には、R
5及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、C1〜C6アルキルラジカル及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
5、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、C1〜C4アルキルラジカル及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
5、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0052】
アルキル基又はアリール基は、置換、特にフッ素置換又は全フッ素置換され得るが、更に、このケースでは、R
5及びR
7は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)である。1つの具体的な実施形態においては、R
5とR
7とは異なっている。別の1つの実施形態においては、R
5及びR
7は、Me、Et、nBu、tBu、トリフルオロメチル、又はフェニルから選択され得る。
【0053】
別の1つの実施形態においては、Eは、リン、ヒ素、及びアンチモンからなる群から選択され、より具体的には、リンであり得る。更に別の1つの具体的な実施形態においては、E’は、窒素、リン、及びヒ素からなる群から選択され、より具体的には、E’はヒ素である。
【0054】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。一般式(II)の15族元素二元化合物は、好ましくは、nBuP(AsHMe)
2及び(C
6H
5)P(AsHMe)
2からなる群から選択される。両方の単一源前駆体は、均質で、規定の、超高純度のIII−V族半導体及び/又は層の製造に好適である。
【0055】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質は、一般式(II)の15族元素二元化合物で、かつ、
−R
5は水素であり、かつ、
−R
6及びR
7は、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群から選択され、
具体的には、R
6及びR
7は、C1〜C6アルキルラジカル及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
6及びR
7は、C1〜C4アルキルラジカル及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
6及びR
7は、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。その場合には、R
6及びR
7は、トリフルオロメチル(CF
3)及びペンタフルオロフェニル(C
6F
5)からなる群から選択され得る。1つの具体的な実施形態においては、R
6とR
7とは同じである。具体的な実施形態においては、R
6及びR
7は、Me、tBu、又はフェニルから選択され得る。
【0056】
別の1つの実施形態においては、Eは、リン及びヒ素からなる群から選択される。更に別の1つの具体的な実施形態においては、E’は窒素である。
【0057】
一般式(II)の15族元素二元化合物は、好ましくは、HP(AstBu
2)
2、HN(SbtBu
2)
2、HP(N(tBu)
2)
2、HAs(N(tBu)
2)
2、及びHP(N(C
6H
5)
2)
2からなる群から選択される。これらの15族元素源は、規定の組み合わせの、窒素系の、均質で、超高純度のIII−V族半導体の製造及び/又は堆積に好適である。本発明による15族元素二元化合物を用いて得られるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層は、従来の製造方法にしたがって製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層と比べて、炭素系窒素源が使用されないので、炭素含有量を劇的に減らしたという点で、特に有利である。生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に混入し得る炭素混入物は、通常は有機置換された1種類又は複数種類の13族元素源から典型的には生じる。
【0058】
本発明による使用法の別の1つの実施形態においては、反応物質が、一般式(II)の15族元素二元化合物であり、かつ、R
5、R
6、及びR
7が互いに独立に、アルキルラジカル(C1〜C10)及びアリール基からなる群から選択される。
【0059】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。一般式(II)の15族元素二元化合物は、好ましくは、tBuAs(NMe
2)
2、m−F
3CC
6H
4As(NMe
2)
2、及びtBuAs(PMe
2)
2からなる群から選択される。これらの化合物のすべてが、規定の組み合わせの、複数の均質なIII−V族多元半導体の製造及び/又は堆積に好適である。
【0060】
上述のように蒸着プロセスに15族元素化合物を反応物質として用いることは、式(I)又は式(II)の化合物が反応物質として用いられる蒸着方法も含む。
【0061】
このように、上述の実施形態の1つにしたがって、少なくとも1種類の15族元素二元化合物を蒸着プロセスの反応物質として用いて、III−V族半導体層がこの蒸着法により製造され得る。
【0062】
具体的には、式(I)又は式(II)の化合物が反応物質として用いられる蒸着方法は、上述のように式(I)又は式(II)の15族元素化合物を蒸着プロセスにおいて反応物質として用いることに含まれるが、以下のステップを含み得る:
−少なくとも1種類の、上述の式(I)又は式(II)の15族元素化合物を提供するステップと、
−式(I)又は式(II)の15族元素化合物を、III−V族半導体層の堆積に好適な条件にさらすステップと、
−III−V族半導体層を堆積させるステップ。
【0063】
より具体的には、式(I)又は式(II)の化合物が反応物質として用いられる蒸着方法は、上述のように式(I)又は式(II)の15族元素化合物を蒸着プロセスにおいて反応物質として用いることに含まれるが、以下のステップを含み得る:
−少なくとも1種類の、上述の式(I)又は式(II)の15族元素化合物を提供するステップと、
−少なくとも1種類の13族元素化合物を提供するステップと、
−1種類又は複数種類の、式(I)又は式(II)の15族元素化合物と、1種類又は複数種類の、13族元素化合物との両方を、III−V族半導体層の堆積に好適な条件にさらすステップと、
−III−V族半導体層を堆積させるステップ。
【0064】
その方法においては、式(I)又は式(II)の15族元素化合物は、上記のさまざまな実施形態において一般的に又は具体的に記述されたすべての化合物であり得るが、それは一般的に言えば、以下の一般式による化合物で:
R
1R
2E−E’R
3R
4 (I),
ここで、
−R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
−E及びE’は、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群からそれぞれ独立に選択されるが、
EとE’とが異なっている、
又は、
以下の一般式による化合物で:
R
5E(E’R
6R
7)
2 (II),
ここで、
−R
5、R
6、及びR
7は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
−Eは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択され、かつ、
−E’は、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択され、
EとE’とが異なっている。
【0065】
ヒドラジン(H
2N−NH
2)及びその誘導体は、本発明の主題ではない。
【0066】
具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、C1〜C6アルキルラジカル、及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ水素(H)、C1〜C4アルキルラジカル、及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0067】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。この場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)であり得る。1つの具体的な実施形態においては、E及びE’は異なっており、かつ、E又はE’の一方は窒素である。式(I)の化合物の別の1つの実施形態においては、R
3及びR
4が水素(H)とは異なる場合、R
1及びR
2は水素であり、又はR
1及びR
2が水素とは異なる場合、R
3及びR
4は水素である。
【0068】
本発明は、ヒドラジン(H
2N−NH
2)及びその誘導体、特に1,1−ジメチルヒドラジン及びターシャリーブチルヒドラジンを、蒸着プロセスにおける反応物質として使用することには関しない。これらの化合物は、ヒドラジンから開始して、1個又は数個の水素原子を置換することによって製造され得るヒドラジン誘導体と見做される。これは、非環式化合物及び環式化合物をともに、例えば飽和三部化合物を含む。その結果、式(I)の化合物においては、E又はE’が窒素(N)である場合には、E及びE’は互いに異なる。
【0069】
本発明により用いられる15族元素化合物は、15族の元素に関して単一源前駆体(SSP)を代表している。これは、本発明によって提供される単一源前駆体のそれぞれが1種類より多くの種類の15族元素を有し、特に、それらは2種類の異なる15族元素であるということを意味する。前駆体に含まれる15族元素は、生成及び/又は基板上に堆積されるIII−V族半導体が有すべき特性、特に光電子特性にしたがって選択又は組み合わせられ得る。
【0070】
式(I)又は式(II)の化合物が反応物質として用いられる蒸着方法においては、式(I)又は式(II)の15族元素化合物は、単一の化合物として、互いの混合物として、又は、例えば、PH
3、AsH
3、tBuPH
2、tBuAsH
2、及びMe
2NNH
2のような、本発明の対象とはならない他の15族化合物との混合物として用いられ得る。
【0071】
好適な13族化合物は、例えば、トリメチルインジウム(Me
3In)、トリメチルガリウム(Me
3Ga)、トリ−tertブチルガリウム(tBu
3Ga)、又はトリエチルガリウム(Et
3Ga)である。
【0072】
1種類又は複数種類の、式(I)又は式(II)の15族元素化合物と、1種類又は複数種類の13族化合物との両方を、III−V族半導体層の堆積に好適な条件にさらすことは、当該技術分野においては一般に、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)として知られている方法をはじめとする化学蒸着プロセスのような、均質で、規定され、かつ超高純度であることにより特徴づけられる層の堆積を通常もたらす、反復可能な蒸着プロセスとして知られている。
【0073】
例えばトリメチルガリウム(Me
3Ga)、トリ−tert−ブチルガリウム(tBu
3Ga)、又はトリ−エチルガリウム(Et
3Ga)を潜在的なガリウム源として、15族元素二元化合物であるtBu
2As−NH
2(DTBAA=ジ−tert−ブチルアミノアルサン)を、例えば、Ga(As
1−xN
x)層(0<x<1)の合成用の窒素及びヒ素源として用い得るが、その際、GaAsを基板としてその上に堆積が起こり得る。これにより、例えば1,1−ジメチルヒドラジンのような有機置換された窒素化合物を窒素源として使用することを回避できるので、炭素混入物を、既知の製造方法により製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の場合と比べて劇的に減らすことができる。生成されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に含まれ得るいかなる炭素混入物も、通常は、13族元素源又は正常に有機置換された源に由来する。
【0074】
唯一のヒ素源が15族元素二元化合物、tBu
2As−NH
2である限りは、生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に含まれるはずの15族元素どうし(このケースでは窒素及びヒ素)の関係は、主として、単一源前駆体であるtBu
2As−NH
2の組成により、予め設定される。しかしながら、III−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層内の、この15族元素どうし、例えばヒ素と窒素との関係は、例えば、反応装置内での15族二元元素源の分圧、又はプロセス温度といったプロセスパラメーターのバリエーションにより影響され得る。15族元素合成物tBu
2As−NH
2に加えて、本発明又は既知の方法による1種類又は数種類の他の15族元素化合物を、例えば、既知の15族元素非二元化合物tBuAsH
2を、追加的なヒ素源として、又は既知の15族元素非二元化合物tBuPH
2をリン源として、使用し得る。tBu
2As−NH
2を、15族元素二元化合物として、1種類又は数種類の15族元素化合物とともに用いることにより、tBu
2As−NH
2だけを窒素及びヒ素源として用いる場合と比較して、窒素の含有量が少ないGa(As
1−xN
x)層(0<x<1)を製造することが可能となる。このことの原因は、窒素原子は、追加的な15族元素源、例えば、ヒ素又はリン源からの15族元素の原子と競う必要があるという事実に帰することが可能である。概して、III−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の組み合わせと、それに伴い光電子特性とが、より大きな程度に、変化及び/又は微調整され得る。
【0075】
この目的は更に、上述の実施例のうちの1つにしたがって、少なくとも1種類の15族元素二元化合物を、蒸着プロセスにおける反応物質として用いる蒸着プロセスにより製造可能なIII−V族半導体層によって達成される。
【0076】
これが言及しているのは、少なくとも1種類の15族元素二元化合物を反応物質として用いる蒸着プロセスにおいて製造可能なIII−V族半導体層であって、
少なくとも1種類の15族元素二元化合物は、以下の一般式を有し:
R
1R
2E−E’R
3R
4 (I),
ここで、
−R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
−E及びE’は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群からそれぞれ独立に選択されるが、
EはE’と同じであるか又はE’とは異なっており、
かつ/又は
少なくとも1種類の15族元素二元化合物は、以下の一般式を有し:
R
5E(E’R
6R
7)
2 (II),
ここで、
−R
5、R
6、及びR
7は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、かつ
−E及びE’は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群からそれぞれ独立に選択されるが、
EはE’と同じであるか又はE’とは異なっており、
具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、C1〜C6アルキルラジカル、及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ水素(H)、C1〜C4アルキルラジカル、及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0077】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。この場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)であり得る。
【0078】
本発明は、ヒドラジン(H
2N−NH
2)及びその誘導体、特に1,1−ジメチルヒドラジン及びターシャリーブチルヒドラジンを、蒸着プロセスにおける反応物質として使用することには関しない。これらの化合物は、ヒドラジンから開始して、1個又は数個の水素原子を置換することによって製造され得るヒドラジン誘導体と見做される。これは、非環式化合物及び環式化合物をともに、例えば飽和三元化合物を含む。
【0079】
反復可能な蒸着プロセス、好ましくは、化学蒸着、特に有機金属気相成長法(MOCVD)又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)において製造される本発明によるIII−V族半導体層は、均質で、規定され、かつ超高純度であることにより特徴づけられる。
【0080】
本発明によるIII−V族半導体層の製造の準備において、本発明による、複数の、一般式(I)及び(II)の15族元素二元化合物から選択をし得る。単一源前駆体の組成は、特に15族二元元素のそれぞれの選択を介して、III−V族半導体層内に含まれる15族元素どうしの関係を主として決定する。
【0081】
本発明によって提供される単一源前駆体はまた、本発明による又は既知の1種類又は数種類の他の15族元素源とともに用いることもあり得る。これは、式(I)又は(II)の窒素系の15族元素二元化合物の場合には特に有利となり得る。本発明による又は既知の、1種類又は複数種類の他の15族元素源を制御可能に添加することは、生成及び/又は堆積される、窒素系の15族元素二元化合物由来のIII−V族半導体の窒素の含有量に影響を及ぼし、かつ微調整することを可能とし得る。主として単一源前駆体の組成により予め設定される同じ比率で、窒素系の15族元素二元化合物内に含まれる15族元素を特徴として有しないIII−V族半導体を、製造又は堆積することが特に可能である。唯一のヒ素源が、例えば15族元素二元化合物、tBu
2As−NH
2である限りは、生成及び/堆積されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層に含まれるはずの15族元素どうし(このケースでは窒素及びヒ素)の関係は、主として、単一源前駆体であるtBu
2As−NH
2の組成により、予め規定される。しかしながら、生成されるIII−V族半導体及び/又は堆積されるIII−V族半導体層内の、この15族元素どうし、例えばヒ素と窒素との関係は、例えば、反応装置内での15族二元元素源の分圧、又はプロセス温度といったプロセスパラメーターのバリエーションにより影響され得る。15族元素合成物tBu
2As−NH
2に加えて、本発明又は既知の方法による1種類又は数種類の他の15族元素化合物を、例えば、既知の15族元素非二元化合物tBuAsH
2を、追加的なヒ素源として、又は既知の15族元素非二元化合物tBuPH
2をリン源として、使用し得る。tBu
2As−NH
2が、15族元素二元化合物として、1種類又は数種類の15族元素化合物を添加されて用いられる場合、窒素及びヒ素源としてtBu
2As−NH
2だけを用いた場合と比べて窒素の含有量が少ないGa(As
1−xN
x)層(0<x<1)を作製することが可能である。このことの原因は、窒素原子は、追加的な15族元素源、例えば、ヒ素又はリン源からの15族元素の原子と競う必要があるという事実に帰することが可能である。それにより、生成及び/又は堆積されるIII−V族半導体の光電子特性を、更に大きな程度で変化及び/又は微調整することが可能になる。
【0082】
これにより、規定の、設定可能な光電子特性5を有するIII−V族半導体化合物及び/又は層の製造が可能になる。更に、本発明により提供されるような15族二元元素源を使用することにより、比較的低いプロセス温度で、III−V族多元半導体層の製造が可能になるが、このことは、エネルギー効率性の改善に貢献し、それゆえに、一般的に、プロセスの最適化に貢献する。加えて、プロセスはその実行が特に容易で安全であり、しかも原子効率的でありかつエネルギー効率的であり、それゆえに、概して費用効率的である。
【0083】
更に、その目的は、以下の一般式の15族元素二元化合物により実現され:
R
1R
2E−E’R
3R
4 (I),
ここで、
−R
1、R
2、R
3、及びR
4は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
−E及びE’は、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群からそれぞれ独立に選択されるが、
EとE’とが異なっている、
又は、
以下の一般式による化合物により実現され:
R
5E(E’R
6R
7)
2 (II),
ここで、
−R
5、R
6、及びR
7は、水素、アルキルラジカル(C1〜C10)、及びアリール基からなる群からそれぞれ独立に選択され、
−Eは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択され、かつ、
−E’は、リン、ヒ素、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択され、
EとE’とが異なっている。
【0084】
ヒドラジン(H
2N−NH
2)及びその誘導体は、本発明の主題ではない。
【0085】
具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、C1〜C6アルキルラジカル、及びC1〜C8アリールラジカルからなる群から選択される。特に、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ水素(H)、C1〜C4アルキルラジカル、及びC1〜C6アリールラジカルからなる群から選択される。より具体的には、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、同じであるか又は異なっており、かつ、水素(H)、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、シクロプロピル、ブチル(nBu)、イソブチル(iBu又は2−メチルプロピル)、s−ブチル(secBu)、tert.−ブチル(tBu又は2−メチルプロピル)、シクロプロピル、フェニル(C
6H
5)、及びオルソ、メタ、又はパラトルイルからなる群から選択される。
【0086】
アルキル基及び/又はアリール基は、置換、例えば部分的にフッ素置換又は全フッ素置換されていてよい。この場合、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、特に、トリフルオロメチル(CF
3)又はペンタフルオロフェニル(C
6F
5)であり得る。
【0087】
本発明により用いられる15族元素化合物は、15族の元素に関して単一源前駆体(SSP)を代表している。これは、本発明によって提供される単一源前駆体のそれぞれが1種類より多くの種類の15族元素を有し、特に、それらは2種類の異なる15族元素であるということを意味する。前駆体に含まれる15族元素は、生成及び/又は基板上に堆積されるIII−V族半導体が有すべき特性、特に光電子特性にしたがって選択又は組み合わせられ得る。
【0088】
例えば、PH
3、AsH
3、tBuPH
2、tBuAsH
2、及びMe
2NNH
2のような、現在までに化学蒸着プロセスに用いられる15族元素源のそれぞれは、1種類の15族元素しか有しておらず、そのことは、生成及び/又は堆積されるIII−V族半導体の望ましい組み合わせにより、数種類の15族元素源が提供され互いに混合される必要があるということを意味する。対照的に、本発明にしたがって使用される式(I)及び/又は(II)の15族元素源は、有利なことに、互いに異なる2種類の15族元素を含む。したがって、有利な点は、本発明による単一源前駆体から開始して、製造されるIII−V族半導体内に含まれるそれぞれの15族元素のための別体の前駆体接続を作成する必要なしで、III−V族多元半導体接続及び/又は層を製造する選択肢である。その結果、蒸着プロセスを計画し実行する文脈において、数種類の15族元素源及び/又は前駆体のさまざまな分解温度、蒸気圧、及びそれぞれに異なる拡散率を考慮する必要がなくなる。これにより、III−V族半導体の製造及び/又は堆積におけるプロセスが、特に実行容易になる。
【0089】
更に、本発明による15族元素二元化合物の使用法により、生成するIII−V族半導体及び/又はそれぞれの層に吸収されざるを得ない、結果として生じる副産物の種類が少なくなるが、それは、原子効率性の向上や、プロセスの単純化につながるものである。
【0090】
本発明にしたがう化合物は、これまでの化学蒸着プロセスにおいて用いられてきた、例えばPH
3、AsH
3、tBuPH
2、tBuAsH
2のような15族元素源よりも、分解温度が低い。更に、本発明による15族元素前駆体は、ホスフィン(PH
3)及びアルシン(AsH
3)と比べて毒性がない。本発明による15族元素前駆体の使用法により、蒸着プロセスは比較的低いプロセス温度で、エネルギー効率的でそれゆえに費用効率的に、しかも安全で、衛生的で、かつ環境にやさしいやり方で実行され得る。
【0091】
本発明による複数の単一源前駆体から選択が実行され得るが、生成されるIII−V族半導体に含まれるべき15族元素どうしの関係は、単一源前駆体の組み合わせにより実質的に指示されるように、予め設定されている。これにより、規定の、予め設定可能な光電子特性を有するIII−V族半導体化合物及び/又は層の製造が可能になる。例えば、本発明による15族元素化合物、例えば、Ga(E
xE’
1−x)(E≠E’であり、かつ0<x<1)を用いたIII−V族三元半導体化合物及び/又は層の製造は、シンプルで、原子効率的で、かつ費用効率的なやり方で可能である。III−V族四元半導体化合物及び/又は層、例えば、Ga
nIn
1−nE
xE’
1−x(E≠E’でありかつ、0<x<1)及びGa(As
1−(x+y)N
xP
y)(0<x<1かつ0<y<1)の製造についても同じことが言える。
【0092】
本発明による一般式(I)及び/又は(II)の15族元素二元化合物の特に好ましい実施形態においては、これらの化合物は、例えばtBu
2As−NH
2又はHN(SbtBu
2)
2のような、窒素に結合した炭素を有しない窒素系の単一源前駆体である。これらの15族元素二元源は、例えば、高い蒸気圧、低い毒性、単純な製造可能性、容易な取扱性、及び良好な解離基の存在のような単一源前駆体のあらゆる有利な特性を有するが、その一方で、窒素に結合した炭素原子を含まない。また、1,1−ジメチルヒドラジンのような有機置換された窒素化合物を窒素源として添加することを不要とすることができる。その結果、上記のような化合物は、超高純度の窒素系のIII−V族半導体及び/又は層の製造に、特に好適なものとなる。本発明による化合物を使用して得られるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層は、従来の製造方法にしたがって製造されたIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層と比べて、炭素系窒素源が使用されないので、炭素含有量を劇的に減らしたという点で、特に有利である。炭素混入物が、生成されるIII−V族半導体及び/又はIII−V族半導体層の中におそらく含まれているという場合、それらは通常、13族元素源、又は通常有機置換されている源に、典型的には由来する。
【0093】
本発明によって提供される単一源前駆体はまた、本発明による又は既知の1種類又は数種類の他の15族元素源とともに用いることもあり得る。これは、式(I)又は(II)の窒素系の15族元素二元化合物の場合には特に有利となり得る。1種類又は複数種類の他の15族元素源を制御可能に添加することは、生成及び/又は堆積される、窒素系の15族元素二元化合物由来のIII−V族半導体の窒素の含有量に影響を及ぼし、かつ微調整することを可能とし得る。主として単一源前駆体の組成により予め設定される同じ比率で、窒素系の15族元素二元化合物内に含まれる15族元素を特徴として有しないIII−V族半導体を、製造又は堆積することが特に可能である。それにより、生成及び/又は堆積されるIII−V族半導体の光電子特性を、更に大きな程度で変化及び/又は微調整することが可能になる。
【0094】
概して、比較的低いプロセス温度で、本発明による15族元素二元化合物から開始して、規定の組み合わせの、均質でかつ超高純度のIII−V族多元半導体を生成及び/又は堆積することが可能である。本発明による15族元素前駆体により、III−V族半導体及び/又はそれぞれの層の、シンプルで、確実で、比較的原子効率的で、かつ比較的エネルギー効率的な製造が可能になる。
【0095】
本発明のその他の特徴、詳細、及び有利点については、請求項の正確な表現と、以下の、図に基づく実施例の説明から明らかとなる。