(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537616(P2017-537616A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】インビトロ転写後のRNA精製のための方法及びキット
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20171124BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
C12N15/00 A
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-525860(P2017-525860)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月11日
(86)【国際出願番号】US2015059867
(87)【国際公開番号】WO2016077294
(87)【国際公開日】20160519
(31)【優先権主張番号】62/079,854
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】シェイ,イー−チォン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,チォン−イー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チーア−リン
(72)【発明者】
【氏名】イエン,シアンジャン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029HA05
(57)【要約】
本開示は、(a)少なくとも1つの核酸を含む試料を、少なくとも1つの磁性粒子を含み、かつ、約4〜約10の範囲のpHを有する結合バッファと混合し、溶液を形成する工程;(b)少なくとも1つの核酸を少なくとも1つの磁性粒子と可逆的に結合させて、少なくとも1つの改質された磁性粒子を形成するのに十分な時間、試料を結合バッファとともにインキュベートする工程、(c)少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶液から分離する工程、(d)少なくとも1つの改質された磁性粒子を少なくとも1つの洗浄バッファで洗浄する工程;及び、(e)少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶出バッファと混合する工程を含む、核酸精製のための方法に関する。これらのバッファ及び磁性粒子を含むキットもまた、本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの核酸を含む試料を約4〜約10の範囲のpHを有する結合バッファと混合し、溶液を形成する工程であって;
前記結合バッファが、少なくとも1つの磁性粒子、約0.2M〜約6Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのカオトロピック試薬、約0.1M〜約5Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1のアルコール、及び、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1の塩を含む、工程;
(b)少なくとも1つの核酸を少なくとも1つの磁性粒子と可逆的に結合させて、少なくとも1つの改質された磁性粒子を形成するのに十分な時間、前記溶液をインキュベートする工程;
(c)前記少なくとも1つの改質された磁性粒子を前記混合された溶液から分離する工程;
(d)前記少なくとも1つの改質された磁性粒子を、少なくとも1つの第2のアルコール及び必要に応じて少なくとも1つの第2の塩を含む、少なくとも1つの洗浄バッファで洗浄する工程;及び
(e)前記少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶出バッファと混合する工程
を含む、核酸精製のための方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの核酸を含む前記試料が、RNAを含むインビトロ転写試料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1のカオトロピック試薬が、グアニジン塩酸塩(GuHCl)、チオシアン酸グアニジン(GuSCN)、リチウム塩、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第1のアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第1の塩が、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2のアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第2の塩が、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、酢酸アンモニウム(NH4Ac)、酢酸リチウム(LiAc)、酢酸カリウム(KAc)、酢酸ナトリウム(NaAc)、塩化ナトリウム(NaCl)、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの磁性粒子が、カルボキシルコーティングされた常磁性粒子、シリカ系常磁性粒子、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(a)約4〜約10の範囲のpHを有し、かつ、少なくとも1つの磁性粒子、約0.2M〜約6Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのカオトロピック試薬、約0.1M〜約5Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1のアルコール、及び、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1の塩を含む、結合バッファ;
(b)少なくとも1つの第2のアルコール及び必要に応じて少なくとも1つの第2の塩を含む、洗浄バッファ;及び
(c)溶出バッファ
を含む、核酸精製のためのキット。
【請求項7】
前記少なくとも1つの核酸を含む前記試料が、RNAを含むインビトロ転写試料であることを特徴とする、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカオトロピック試薬が、グアニジン塩酸塩(GuHCl)、チオシアン酸グアニジン(GuSCN)、リチウム塩、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つのアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第1の塩が、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載のキット。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2のアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第2の塩が、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、酢酸アンモニウム(NH4Ac)、酢酸リチウム(LiAc)、酢酸カリウム(KAc)、酢酸ナトリウム(NaAc)、塩化ナトリウム(NaCl)、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記少なくとも1つの磁性粒子が、カルボキシルコーティングされた常磁性粒子、シリカ系常磁性粒子、及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2014年11月14日出願の米国仮特許出願第62/079854号の米国法典第35編特許法第119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概略的には、核酸精製のための方法及びキットに関し、より詳細には、インビトロ転写後のRNAを含む試料を精製するための磁性粒子をベースとしたキット及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
DNA又はRNAの単離などの核酸精製は、さまざまな生化学的及び診断的手順における重要な工程でありうる。RNAは、遺伝子発現研究、分子研究、及び/又は、例えば、RNA干渉、マイクロインジェクション、感染、インビトロ翻訳、及び/又はヌクレアーゼプロテクションアッセイの手順などの生化学研究など、多くの用途に使用されうる。転写は、相補的及び逆平行RNA鎖がRNAポリメラーゼを使用してDNA鋳型から合成される、遺伝子発現における最初のステップである。インビトロ転写(IVT)は、DNAから、キャッピング又は放射性標識などの所望の配列又は改変を有するヌクレオチドをインビトロで複写する方法を提供することができる。
【0004】
例えば、T7、T3、又はSP6プロモータについての転写を推進するように設計された、さまざまなIVTキットが存在する。しかしながら、下流用途に進む前に、塩、タンパク質、酵素、オリゴヌクレオチドなどの1つ以上の汚染物質を除去するために、IVT後の試料の精製が必要とされうる。このような汚染物質の存在によって、多くの下流処理が妨げられ、阻まれうる。よって、所望の最終用途の機能性を確実にするために、核酸をIVT後混合物から効率的に単離することが重要でありうる。
【0005】
核酸を精製するために選択される方法は、幾つかの事例では、核酸試料の収率、品質、及び/又は純度を含む、単離された生成物のさまざまな特性に影響を与えうる。核酸精製のための多くの方法が開発されてきたが、これらの方法は、例えば、高コスト、高複雑性、低速度、低収率、低純度、汚染、毒性、及び/又は非効率性を含む、1つ以上の欠点を有しうる。比較的高純度のRNAは、フェノール/クロロホルム抽出などの従来の沈殿法を使用して、IVT混合物から単離されうる;しかしながら、このような方法は、時間がかかり、かつ複雑でありうる。
【0006】
磁性ビーズ、スピンカラム、及び/又は濾過システムを使用する方法など、固相系の方法は、代替的な解決策として提示されている。これらの方法の中でもとりわけ、磁性粒子をベースとした精製システムは、遠心分離及び/又は真空工程がないことによる簡便性の向上など、さまざまな利点を有しうる。しかしながら、磁性粒子を使用する方法は、今もなお、低速度、高複雑性、及び/又は全体の収率の乏しさなどのさまざまな不利点に悩まされうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、より速く、複雑性が低下した、より安価な、及び/又は生成物の純度及び/又は収率に関して改善されうる、核酸精製のための磁性粒子をベースとした方法及びキットを提供することは有益であろう。結果的に得られる精製された核酸は、多種多様の遺伝子発現、分子、及び/又は生化学的用途に使用されうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、さまざまな実施形態において、核酸を精製するための方法に関し、該方法は、(a)少なくとも1つの核酸を含む試料を、少なくとも1つの磁性粒子を含み、かつ、約4〜約10の範囲のpHを有する結合バッファと混合し、溶液を形成する工程;(b)少なくとも1つの核酸を少なくとも1つの磁性粒子と可逆的に結合させて、少なくとも1つの改質された磁性粒子を形成するのに十分な時間、試料を結合バッファとともにインキュベートする工程、(c)少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶液から分離する工程、(d)少なくとも1つの改質された磁性粒子を少なくとも1つの洗浄バッファで洗浄する工程;及び、(e)少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶出バッファと混合する工程を含む。
【0009】
さまざまな実施形態によれば、結合バッファは、約0.2M〜約6Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのカオトロピック試薬、約0.1M〜約5Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのアルコール、及び、必要に応じて、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの塩を含みうる。他の実施形態では、洗浄バッファは、少なくとも1つのアルコール及び、必要に応じて、少なくとも1つの塩を含みうる。さらなる実施形態によれば、溶出バッファは、水、並びに、例えば、約0.1mM〜約10mMの少なくとも1つのイオンキレート剤及び/又は約10mM〜約100mMの少なくとも1つのバッファ化合物を含む低塩溶液から選択されうる。磁性粒子は、例えば、カルボキシルコーティングされた磁性粒子、シリカ系磁性粒子、及びそれらの組合せから選択されうる。これらのバッファ及び磁性粒子を含む核酸精製キットもまた、本明細書に開示される。
【0010】
本発明の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部には、その説明から当業者にとって容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む、本明細書に記載される本発明を実施することによって認識されよう。
【0011】
前述の概要及び以下の詳細な説明は、両方とも本開示のさまざまな実施形態を提示しており、特許請求の範囲の本質及び特性を理解するための概観又は枠組みを提供することが意図されているものと解されたい。添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書内に取り込まれてその一部を構成する。図面は、本開示のさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、本発明の原理及び動作を説明する役目をする。
【0012】
以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示される、以下の図面と併せて読まれた場合に、最もよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態に従った核酸精製方法を示す流れ図
【
図2】先行技術の方法と比較した、本開示のさまざまな実施形態に従った方法についてのRNA収率を示すグラフ
【
図3】本開示のさまざまな実施形態に従った方法を使用して、及び、先行技術の方法を使用して精製されたRNAのアガロースゲル電気泳動分析
【
図4】先行技術の方法と比較した、本開示のさまざまな実施形態に従った方法についてのRNA収率を示すグラフ
【
図5A】本開示のさまざまな実施形態に従った方法を使用して、及び、先行技術の方法を使用して精製されたRNAのアガロースゲル電気泳動分析
【
図5B】本開示のさまざまな実施形態に従った方法を使用して、及び、先行技術の方法を使用して精製されたRNAのアガロースゲル電気泳動分析
【
図6】先行技術の方法と比較した、本開示のさまざまな実施形態に従った方法についてのRNA収率を示すグラフ
【
図7】本開示のさまざまな実施形態に従った方法を使用して、及び、先行技術の方法を使用して精製された核酸のアガロースゲル電気泳動分析
【
図8】本開示のさまざまな実施形態に従った方法を使用して、及び、先行技術の方法を使用して精製された小さい核酸断片のアガロースゲル電気泳動分析
【発明を実施するための形態】
【0014】
方法
核酸精製のための方法が、本明細書に開示され、該方法は、(a)少なくとも1つの核酸を含む試料を、少なくとも1つの磁性粒子を含み、かつ、約4〜約10の範囲のpHを有する結合バッファと混合し、溶液を形成する工程;(b)少なくとも1つの核酸を少なくとも1つの磁性粒子と可逆的に結合させて、少なくとも1つの改質された磁性粒子を形成するのに十分な時間、試料を結合バッファとともにインキュベートする工程、(c)少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶液から分離する工程、(d)少なくとも1つの改質された磁性粒子を少なくとも1つの洗浄バッファで洗浄する工程;及び、(e)少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶出バッファと混合する工程を含む。
【0015】
本開示の実施形態は、本開示の非限定的な実施形態に従った核酸精製方法の流れ図を示す
図1に関して論じられる。以下の概要は、特許請求の範囲に記載される本方法の概観を提供することが意図されており、さまざまな態様は、非限定的な実施形態に関して、本開示全体にわたってさらに詳細に論じられ、これらの実施形態は、以下に論じられる概略的な方法の文脈において互いに置き換え可能である。
【0016】
図1に実証されるように、工程IVTでは、RNA分子110及び望ましくない汚染物質105(例えば、塩、タンパク質、酵素、オリゴヌクレオチド、炭水化物、DNA鋳型、及びヌクレオチド三リン酸(NTP))を含む試料が生成されうる。工程Iでは、試料は、とりわけ、少なくとも1つの磁性粒子115を含む結合バッファと混合され、かつ、インキュベートされうる。インキュベーションの間、試料中のRNA分子110は、磁性粒子115の表面に可逆的に結合されうる。次に、工程Sにおいて、磁石120を使用して、磁性粒子115を引き寄せ、残りの溶液からそれらを分離する。結合していない汚染物質105は、工程Wにおいて1つ以上の洗浄バッファを使用して磁性粒子115を洗浄することによって除去されうる。次に、RNA110は、工程Eにおいて、1つ以上の溶出バッファを使用して、磁性ビーズから溶出かつ解放されうる。最後に、磁性粒子115は、工程PにおいてRNA110から分離されて、次にさまざまな用途に使用されうる精製された生成物を生じうる。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「少なくとも1つの核酸を含む試料」及びその変形物は、例えば、DNA分子、RNA分子、又はDNA/RNAハイブリッド分子など、少なくとも1つの核酸を含みうる任意の材料を意味することが意図されている。少なくとも1つの核酸としては、例えば、ゲノムDNA、染色体DNA(cDNA)、プラスミドDNA(pDNA)、トータルRNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、及び/又はRNA/DNAハイブリッドが挙げられうる。さまざまな実施形態において、試料は、RNAを含むIVT後混合物でありうる。追加の実施形態によれば、精製される少なくとも1つの核酸は、例えばトータルRNAなどのRNAでありうる。
【0018】
本明細書に開示されるさまざまな方法によれば、例えば、RNAを含むIVT後の試料など、少なくとも1つの核酸を含む試料は、結合バッファ(B1)(例えば、
図1の工程Bを参照)と混合されうる。結合バッファB1は、少なくとも1つのカオトロピック試薬(C1)、少なくとも1つのアルコール(A1)、及び、必要に応じて、少なくとも1つの塩(Z1)を含みうる。試料と結合バッファB1との体積比は、例えば、約1:1.8〜約1:2.5、又は約1:2〜約1:2.2など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約1:1.5〜約1:3の範囲でありうる。ある特定の実施形態では、試料と結合バッファとの体積比は、約1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、又は1:3であってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。
【0019】
試料及び結合バッファB1は、当技術分野で知られたいずれかの方式で混合してよく、例えば、結合バッファB1は、試料に加えられて、例えば反転によって、混合されうる。ある特定の実施形態では、混合物は、少なくとも5回、少なくとも10回、又はそれ以上などの複数回、反転されうる。試料は、少なくとも1つの核酸を少なくとも1つの磁性粒子に結合させるのに十分な時間、結合バッファB1中でインキュベートされうる。この時間は、例えば、約2分〜約25分、約3分〜約20分、約4分〜約15分、又は約5分〜約10分など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約1分〜約30分の範囲でありうる。
【0020】
少なくとも1つのカオトロピック試薬C1は、例えば、約0.3M〜約5M、約0.5M〜約4M、約0.7M〜約3.5M、約1M〜約3M、約1.2M〜約2.5M、又は約1.5M〜約2Mなど、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約0.2M〜約6Mの範囲の濃度で結合バッファB1中に存在しうる。例えば、C1の濃度は、約0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、3M、3.1M、3.2M、3.3M、3.4M、3.5M、3.6M、3.7M、3.8M、3.9M、4M、4.1M、4.2M、4.3M、4.4M、4.5M、4.6M、4.7M、4.8M、4.9M、5M、5.1M、5.2M、5.3M、5.4M、5.5M、5.6M、5.7M、5.8M、5.9M、又は6Mであってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。さまざまな実施形態によれば、少なくとも1つのカオトロピック試薬C1は、グアニジン塩酸塩(GuHCl)及びチオシアン酸グアニジン(GuSCN)などのグアニジン塩;酢酸リチウム及び過塩素酸リチウムなどのリチウム塩;及び、それらの組合せから選択されうる。ある特定の非限定的な実施形態では、少なくとも1つのカオトロピック試薬C1は、GuHCl及びGuSCNから選択されうる。少なくとも1つのカオトロピック試薬C1は、さまざまな実施形態において、少なくとも1つの核酸の少なくとも1つの磁性粒子への結合を促進するために用いられうる。
【0021】
少なくとも1つのアルコールA1は、例えば、約0.3M〜約4.5M、約0.5M〜約4M、約0.7M〜約3.5M、約1M〜約3M、約1.2M〜約2.5 M、又は約1.5M〜約2Mなど、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約0.1M〜約5Mの範囲の濃度で結合バッファB1中に存在しうる。例えば、A1の濃度は、約0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、3M、3.1M、3.2M、3.3M、3.4M、3.5M、3.6M、3.7M、3.8M、3.9M、4M、4.1M、4.2M、4.3M、4.4M、4.5M、4.6M、4.7M、4.8M、4.9M、又は5Mであってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。
【0022】
非限定的な実施形態では、少なくとも1つのアルコールA1は、例えば、約25体積%〜約45体積%、又は約30体積%〜約40体積%など、結合バッファB1の全体積の約20体積%〜約50体積%を構成してよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。さまざまな実施形態によれば、少なくとも1つのアルコールA1は、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択されうる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのアルコールA1は、イソプロパノールでありうる。少なくとも1つのアルコールA1は、さまざまな実施形態において、カオトロピックであってよく、試料中のタンパク質を変性させるのに用いられうる。
【0023】
少なくとも1つの塩Z1は、存在する場合には、例えば、約20mM〜約90mM、約30mM〜約80mM、約40mM〜約70mM、又は約50mM〜約60mMなど、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で結合バッファB1中に存在しうる。例えば、Z1の濃度は、約10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、又は100mMであってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。さまざまな実施形態によれば、少なくとも1つの塩Z1は、リン酸一ナトリウム(NaH
2PO
4)、リン酸二ナトリウム(Na
2HPO
4)、及びそれらの組合せなどのリン酸塩から選択されうる。
【0024】
さまざまな実施形態によれば、結合バッファB1は、約4.5〜約9.5、約5〜約9、約5.5〜約8.5、約6〜約8、又は約6.5〜約7.5など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約4〜約10の範囲のpHを有しうる。例えば、結合バッファB1のpHは、約4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、又は10であってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。
【0025】
本明細書で用いられる場合、用語「磁性粒子」及びその変形物は、例えば、核酸が可逆的に結合可能な表面を有する少なくとも1つの材料でコーティングされた、常磁性又は超常磁性などの磁性を有するコアを有する粒子を意味することが意図されている。適切な磁性粒子としては、例えば、カルボキシルコーティングされた常磁性粒子、シリカ系常磁性粒子などが挙げられうる。シリカ系磁性粒子は、幾つかの実施形態では、ケイ質酸化物(siliceous oxide)でコーティングされ、したがって核酸が結合可能な水和したケイ質酸化物吸着性表面(例えば、シラノール基を含む表面)を提供する、常磁性のコアを含みうる。磁性粒子は、追加的な実施形態において、2、3例を挙げると、弱く又は強く正に荷電した表面、弱く又は強く負に荷電した表面、若しくは疎水性の表面などの機能化された表面を生成するように表面改質されうる。
【0026】
市販の磁性粒子の非限定的な例としては、MagQu Co.Ltd.社製のQbeads、W.R.Grace&Co.社製のGraceビーズなどが挙げられる。磁性粒子は、例えば、直径約0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10μmなど、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、直径約0.3μm〜約10μmの範囲の直径などの市販の寸法を含む、核酸を結合するのに適した任意の寸法を有しうる。Qbeadsは、例えば、約4μm〜約5μmの範囲の平均直径、Graceビーズは約5μm〜約10μmの範囲の平均直径を有しうる。
【0027】
少なくとも1つの磁性粒子は、例えば、約0.75μg/μl〜約55μg/μl、約1μg/μl〜約50μg/μl、約2μg/μl〜約45μg/μl、約3μg/μl〜約40μg/μl、約4μg/μl〜約35μg/μl、約5μg/μl〜約30μg/μl、約6μg/μl〜約25μg/μl、約7μg/μl〜約20μg/μl、約8μg/μl〜約15μg/μl、又は約9μg/μl〜約10μg/μlなど、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約0.5μg/μl〜約60μg/μlの範囲の濃度で結合バッファ中に存在しうる。非限定的な実施形態の例として、少なくとも1つの磁性粒子は、Qbeadsから選択されて差し支えなく、約0.5μg/μl〜約5μg/μlの範囲の濃度で結合バッファB1中に存在しうる。代替的な実施形態では、少なくとも1つの磁性粒子は、Graceビーズから選択されて差し支えなく、約2μg/μl〜約60μg/μlの範囲の濃度で結合バッファB1中に存在しうる。
【0028】
理論に縛られることは望まないが、結合バッファB1によって取り込まれた、比較的高濃度のカオトロピック試薬、アルコール、及び/又は塩は、RNAなどの核酸が、シリカ表面などの磁性粒子の表面に可逆的に(例えば、非共有的に)結合する能力を高めることができると考えられる。よって、例えば可逆的に結合された核酸を含む、改質された磁性粒子は、次に、結合していない汚染物質から分離されうる(例えば、
図1の工程Sを参照)。例えば、磁石は、改質された磁性粒子に近接して配置され、粒子を引き寄せて、例えば、凝集体又はペレットを形成しうる。ある特定の実施形態では、改質された磁性粒子を含む混合溶液を含有する管のような容器は、残留溶液を除去するとともに粒子を寄せ集めいくらか固定することが可能な磁気スタンド上に、配置されうる。
【0029】
核酸を磁性粒子に結合する際、及び、磁石を用いて、改質された磁性粒子を分離した後、粒子を混合し、濯がれ、又は、1つ以上の洗浄バッファで洗浄されうる(例えば、
図1の工程Wを参照)。洗浄バッファ(W1)は、例えば、少なくとも1つのアルコール(A2)及び、必要に応じて、少なくとも1つの塩(Z2)を含みうる。改質された磁性粒子は、洗浄バッファW1で1回又は複数回、濯がれてよく、追加的な洗浄には、同一又は異なる組成、濃度、及び/又は容積量を使用することができる。
【0030】
少なくとも1つのアルコールA2は、例えば、約75体積%〜約95体積%、又は約80体積%〜約90体積%など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約70体積%〜100体積%の範囲の濃度で洗浄バッファW1中に存在しうる。例えば、A2の濃度は、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%であってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。さまざまな実施形態によれば、少なくとも1つのアルコールA2は、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択されうる。ある特定の非限定的な実施形態では、少なくとも1つのアルコールA2は、エタノールでありうる。
【0031】
少なくとも1つの塩Z2は、存在する場合には、例えば、約20mM〜約90mM、約30mM〜約80mM、約40mM〜約70mM、又は約50mM〜約60mMなど、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で洗浄バッファW1中に存在しうる。例えば、Z2の濃度は、約10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、又は100mMであってよく、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む。さまざまな実施形態によれば、少なくとも1つの塩Z2は、硫酸アンモニウム((NH
4)
2SO
4)、酢酸アンモニウム(NH
4Ac)、酢酸リチウム(LiAc)、酢酸カリウム(KAc)、酢酸ナトリウム(NaAc)、塩化ナトリウム(NaCl)、及びそれらの組合せから選択されうる。ある特定の非限定的な実施形態では、少なくとも1つの塩Z2は、NaAC及びNH
4ACから選択されうる。
【0032】
さまざまな実施形態によれば、洗浄バッファW1のpHは、例えば、約5〜約7、約6〜約6.5、又は約6.4〜約6.8など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約4〜約8の範囲でありうる。洗浄バッファW1のpHは、アルコール及び/又は塩の量を変化させることによって調整されてよく、あるいは、本明細書に開示されるように、氷酢酸又はNaOHなどの1つ以上のバッファ化合物を使用して調整されてもよい。
【0033】
洗浄バッファW1の添加及び除去の後に、塩、タンパク質、酵素等の汚染物質を含まない、又は実質的に含まない、表面に可逆的に結合された核酸を有する、改質された磁性粒子がもたらされうる。さまざまな実施形態によれば、このように生成された、改質された磁性粒子は、次に、1つ以上の溶出バッファ(E1)と混合され、結合した核酸を放出し、磁性粒子から分離することができる(例えば、
図1の工程Eを参照)。改質された磁性粒子は、例えば、約45秒〜約9分、約1分〜約8分、約2分〜約7分、約3分〜約6分、又は約4分〜約5分など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約30秒〜約10分などの核酸を放出するのに十分な時間、溶出バッファE1中でインキュベートされうる。溶出バッファE1は、例えば、水、若しくは、例えば、約1mM〜約10mMの少なくとも1つのバッファ(例えばTrisなど)、約1mM〜約10mMの少なくとも1つの塩、及び/又は約0.1mM〜約10mMの少なくとも1つのイオンキレート剤(例えば、EDTAなど)を含む、比較的低塩の溶液を含みうる。非限定的な実施形態によれば、溶出バッファE1は、約1mMのEDTA及び約10mMのTrisを含みうる。
【0034】
磁性粒子(もはや核酸には付着していない)は、その後、例えば、磁石を使用して分離され、溶液から除去されてよく、最終生成物として溶液中の精製された核酸を生じうる(例えば、
図1の工程Pを参照)。例えば、本明細書に開示される方法及びキットは、精製されたRNA生成物を提供するために用いられうる。さまざまな実施形態によれば、本明細書に開示される方法及びキットは、精製されたRNAを短時間で効率的に生成するために用いられうる。例えば、非限定的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、約20分未満など、約30分未満の時間で行われうる。本明細書に開示される方法は、ある特定の実施形態では、およそ20分間で少なくとも約90%の相対的なRNA収率をもたらす。
【0035】
さまざまなバッファ溶液の成分は、幾つかの実施形態では、例えば、互いに同一であっても異なっていてもよいなど、互いに置換可能に用いられうるものと解されたい。例えば、アルコールA1及びA2並びに塩Z1及びZ2は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。同様に、これらの成分の濃度は可変であり、幾つかの事例では、所望の用途に応じて、同一であるか又は類似していてもよい。
【0036】
本明細書に開示される方法はさらに、遠心分離、濾過など、当技術分野で知られている追加の工程を含みうるものと解されたい。他の非限定的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、遠心分離又は濾過の工程を含まず、それによって、処理を自動化する能力が高まりうる。他の必要に応じた工程は、空気乾燥を含んでもよく、例えば、改質された磁性粒子を洗浄バッファW1で濯いだ後に、粒子は、約2分〜約9分、約3分〜約8分、約4分〜約7分、又は約5分〜約6分など、これらの間のすべての範囲及び部分的範囲を含む、約1分〜約10分の範囲の時間、空気乾燥されうる。さまざまな試料、溶液、若しくは、試料又は溶液の一部を管などの新しい容器へと除去又は移動することもまた、所望されるように又は必要に応じて、本明細書に開示される方法の間に行われうる。
【0037】
キット
本開示はまた、核酸精製のためのキットにも関し、該キットは、結合バッファ、洗浄バッファ、及び溶出バッファを含む。バッファは、さまざまな実施形態において、精製方法に関して先に開示されたバッファB1、W1、及びE1に対応しうる。各バッファに関して上述したさまざまな実施形態は、本明細書に開示されるキットを形成するために、限定されることなく、いずれかの方式で組み合わせることができるものと解されたい。
【0038】
さまざまな実施形態によれば、即時使用可能な、各成分について所定の濃度を有する各バッファが、キットに提供されうる。あるいは、末端利用者によって、適切な種類及び量の溶媒で希釈されて、即時使用可能なバッファを生成するために、1つ以上の濃縮溶液が提供されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、使用者によって例えばイソプロパノールなどのアルコールで体積比1:1まで希釈可能な、濃縮された結合バッファがキット内に提供されてもよい。さらなる実施形態によれば、使用者によってエタノールなどのアルコールで、例えば、エタノールの70体積%以上の最終濃度まで希釈可能な、濃縮された洗浄バッファW1が提供されてもよい。キットは、幾つかの実施形態では、末端利用者への精製プロトコルに関する指示書及び/又は希釈指示書をさらに含みうる。他の実施形態によれば、キットはさらに、磁気スタンド、管、遠心分離機、及び/又は溶媒などのさまざまな追加の構成要素又は設備を含みうる。
【0039】
さまざまな開示される実施形態は、その特定の実施形態に関して説明される特定の特徴、要素又は工程を包含しうるものと認識されよう。特定の特徴、要素又は工程は、1つの特定の実施形態に関して説明されるが、さまざまな例証されていない組合せ又は置換における代替的な実施形態と差し替える又は組み合わせることができることもまた認識されよう。
【0040】
本明細書で用いられる場合、名詞は、「少なくとも1つ」の対象を指し、そうでないことが明確に示されない限り、「1つのみ」の対象に限定されるべきではないこともまた理解されたい。よって、例えば、「バッファ」についての言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、このような「バッファ」を2つ以上有する例を含む。
【0041】
範囲は、ここでは、「約」1つの特定の値から、及び/又は、「約」別の特定の値までとして表されうる。このような範囲が表される場合、例には、1つの特定の値から、及び/又は、他の特定の値までが含まれる。同様に、値が先行詞「約」を使用して近似的に表される場合、その特定の値は、別の態様を形成するものと解されたい。範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、及び、他の端点とは独立して、の両方の意味を表すこともさらに理解されよう。
【0042】
実施例以外において、本明細書に表されるすべての数値は、他に明確に示されない限り、そのように記載されているかどうかにかかわらず、「約」を含むものと解釈されるべきである。しかしながら、列挙される各数値は、「約」その値として表されているかどうかにかかわらず、正確を予定されているものとも解されたい。よって、「2Mより大きい濃度」及び「約2Mより大きい濃度」は、両方とも、「約2Mより大きい濃度」と「2Mより大きい濃度」の実施形態を含む。
【0043】
他に明記されない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順番で行われる必要があると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程が従うべき順番について実際に記述していない場合、又はその工程がある特定の順番に限定されるべきであることが、特許請求の範囲又は説明において他に明示されていない場合、任意の特定の順番が推測されることは、決して意図されていない。
【0044】
特定の実施形態のさまざまな特徴、要素又は工程は、移行句「含む(comprising)」を使用して開示されうると同時に、移行句「〜からなる(consisting)」又は「〜から実質的になる(consisting essentially of)」を使用して記載されうるものを含む、代替的な実施形態が含蓄されるものと解されたい。よって、例えば、A+B+Cを含むバッファに含蓄される代替的な実施形態は、バッファがA+B+Cからなる実施形態と、バッファがA+B+Cから実質的になる実施形態を含む。
【0045】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変形が本開示になされうることは、当業者にとって明白であろう。本開示の精神および実体を取り込む開示される実施形態の修正、組合せ、部分的組合せ及び変形は、当業者に想起されうることから、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にあるすべてを含むものと解釈されたい。
【0046】
以下の実施例は、非限定的かつ単なる例証であることが意図されており、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定められる。
【実施例】
【0047】
例示的な精製プロトコル
単なる論述の目的で、例えばIVT試料などの試料からRNAを精製するための例となるプロトコルが、以下に提供される。当然ながら、このプロトコルは、添付の特許請求の範囲を限定することは意図されておらず、そのように解釈されるべきではない。
【0048】
a)結合バッファの調製:濃縮された結合バッファB1をアルコール中に、1:1の体積比を用いて、再懸濁する;
b)洗浄バッファの調製:濃縮された洗浄バッファに、アルコールを、70%の最終体積濃度まで加える;
c)RNA結合:体積Xの試料に対し、体積3Xの結合バッファB1を加え、よく混合し、5分間インキュベートする;
d)RNAが結合した磁性粒子の分離:可逆的に結合したRNAを有する磁性粒子を、磁気スタンドを使用して、液体が実質的に透明になるまで磁気的に分離し、透明な液体を除去する;
e)RNAが結合した磁性粒子の洗浄:可逆的に結合したRNAを含む磁性粒子を、700μlの洗浄バッファW1で1回、洗浄する;
f)洗浄バッファの除去:可逆的に結合したRNAを有する磁性粒子を、磁気スタンドを使用して、液体が実質的に透明になるまで磁気的に分離し、透明な液体を除去する;
g)繰り返し:400μlの洗浄バッファW1を用いた、工程e);
h)繰り返し:工程f);
i)乾燥:可逆的に結合したRNAを有する磁性粒子を磁気スタンド上で5〜10分間、空気乾燥させる;
j)RNAの溶出:磁気スタンドから管を取り外し、所望の体積の溶出バッファE1を(大体、所望の試料濃度を生じるまで)加え、室温で少なくとも2分間、インキュベートする;及び
k)RNAの精製:管を磁気スタンド上に置き、液体が実質的に透明になるまで磁性粒子を分離し、透明な液体を取り出し、保存する。
【0049】
比較実施例1
RNAを含む試料を、Qbeads(62.5μg)又はGraceビーズ(180、360、1080、3240μg)を用いる上記プロトコルを使用して精製した。同じ試料を、Beckman Coulter社のAgencourt(登録商標)RNAClean XPキットも使用して精製した。各方法について平均全RNA収率を定量し、
図2に示した。Qbeadsを使用する本発明の方法についての相対的な全RNA収率は88.4%であった。Graceビーズを使用する本発明の方法についての相対的な全RNA収率は、73.3%(3240μg)〜82.0%(360μg)の範囲であった。比較例の「Agencourt」キットは、81.5%のRNAを生じた。
【0050】
図3は、各方法によって生成したRNAの品質が同等であったことを示す、さまざまな方法についてのRNA試料のアガロースゲル電気泳動分析を実証している。したがって、
図2〜3は、約20分で行われた本発明の方法が、ベンチマーク比較例の「Agencourt」キットのものに匹敵するRNA収率及び品質を提供することを実証している。
【0051】
比較実施例2
可変のpH(4.3及び6.3)並びに可変のRNA濃度(20μgのRNAを20μl又は200μgの溶液中に溶解)で、結合バッファB1を用いた上記例となるプロトコルを使用して、RNAを精製した。Beckman Coulter社の「Agencourt」RNAClean XPキットも使用して、同じ試料を精製した。各方法について相対的な全RNA収率を定量し、
図4に示した。結合バッファをpH4.3で使用する本発明の方法についての相対的な全RNA収率は、結合バッファをpH6.3で使用する方法と比較して、改善された。加えて、20μg/20μlのRNAを使用する本発明の方法についての相対的な全RNA収率は、20μg/200μlのRNAを使用する方法と比較して、改善された。
【0052】
図5は、結合バッファをpH4.3で使用する本発明の方法によって生成されたRNAの品質が、結合バッファをpH6.3で使用する本発明の方法と比較して、低下したことを示す、さまざまな方法についてのRNA試料のアガロースゲル電気泳動分析を実証している。よって、
図4〜5は、約20分で行われた本発明の方法が、ベンチマーク比較例の「Agencourt」キットのものと同等又はそれに対して改善されたRNA収率及び/又は品質を提供することを実証している。
【0053】
比較実施例3
Qbeads(62.5μg)又はGraceビーズ(360μg)を用いた上記例となるプロトコルを使用して、IVT試料からRNAを精製した。Beckman Coulter社の「Agencourt」RNAClean XPキットも使用して、同じ試料を精製した。各方法についてRNA収率を定量し、「Agencourt」の収率に対して正規化した結果とともに、
図6に示した。Qbeadsを使用する本発明の方法についての相対的な全RNA収率は96.0%であった。Graceビーズを使用する本発明の方法についての相対的な全RNA収率は91.2%であった。
【0054】
図7は、各方法によって生成した核酸の品質が同等であることを示す、さまざまな方法についての核酸試料のアガロースゲル電気泳動分析を実証している。
図8は、本発明の方法の小断片核酸に結合する能力が、比較例の「Agencourt」の方法のものに対して改善されることを示す、オリゴヌクレオチド(30nt)についてのアガロースゲル電気泳動分析を実証している。
【0055】
したがって、
図6〜8は、約20分で行われた本発明の方法が、小さい核酸断片の結合性の向上ももたらすとともに、ベンチマーク比較例の「Agencourt」キットのものに匹敵するRNA収率及び品質を提供することを実証している。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0057】
実施形態1
(a)少なくとも1つの核酸を含む試料を約4〜約10の範囲のpHを有する結合バッファと混合し、溶液を形成する工程であって、
前記結合バッファが、少なくとも1つの磁性粒子、約0.2M〜約6Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのカオトロピック試薬、約0.1M〜約5Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1のアルコール、及び、必要に応じて、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1の塩を含む、工程;
(b)少なくとも1つの核酸を少なくとも1つの磁性粒子と可逆的に結合させて、少なくとも1つの改質された磁性粒子を形成するのに十分な時間、前記溶液をインキュベートする工程;
(c)前記少なくとも1つの改質された磁性粒子を、前記混合された溶液から分離する工程;
(d)前記少なくとも1つの改質された磁性粒子を、少なくとも1つの第2のアルコール及び必要に応じて少なくとも1つの第2の塩を含む、少なくとも1つの洗浄バッファで洗浄する工程;及び
(e)前記少なくとも1つの改質された磁性粒子を溶出バッファと混合する工程
を含む、核酸精製のための方法。
【0058】
実施形態2
前記少なくとも1つの核酸を含む前記試料が、RNAを含むインビトロ転写試料であることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0059】
実施形態3
前記少なくとも1つの第1のカオトロピック試薬が、グアニジン塩酸塩(GuHCl)、チオシアン酸グアニジン(GuSCN)、リチウム塩、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第1のアルコールが、イソプロパノール、メタノール エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第1の塩が、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
【0060】
実施形態4
前記少なくとも1つの第2のアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第2の塩が、硫酸アンモニウム((NH
4)
2SO
4)、酢酸アンモニウム(NH
4Ac)、酢酸リチウム(LiAc)、酢酸カリウム(KAc)、酢酸ナトリウム(NaAc)、塩化ナトリウム(NaCl)、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
【0061】
実施形態5
前記洗浄バッファが、少なくとも約70体積%の前記少なくとも1つの第2のアルコールを含むことを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
【0062】
実施形態6
前記少なくとも1つの磁性粒子が、カルボキシルコーティングされた常磁性粒子、シリカ系常磁性粒子、及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
【0063】
実施形態7
前記少なくとも1つの磁性粒子が、約0.5μg/μl〜約60μg/μlの範囲の濃度で前記結合バッファ中に存在することを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0064】
実施形態8
前記インキュベーション時間が、約1分〜約30分の範囲であることを特徴とする、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
【0065】
実施形態9
前記少なくとも1つの核酸を含む前記試料の前記結合バッファに対する体積比が、約1:1.5〜約1:3の範囲であることを特徴とする、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
【0066】
実施形態10
前記溶出バッファが、水、並びに、少なくとも1つのバッファ化合物及び/又は少なくとも1つのイオンキレート剤を含む溶液から選択されることを特徴とする、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
【0067】
実施形態11
前記少なくとも1つの改質された磁性粒子が、前記溶出バッファとともに約30秒〜約10分の範囲の時間、インキュベートされることを特徴とする、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
【0068】
実施形態12
(a)約4〜約10の範囲のpHを有し、かつ、少なくとも1つの磁性粒子、約0.2M〜約6Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのカオトロピック試薬、約0.1M〜約5Mの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1のアルコール、及び、必要に応じて、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つの第1の塩を含む、結合バッファ;
(b)少なくとも1つの第2のアルコール及び必要に応じて少なくとも1つの第2の塩を含む、洗浄バッファ;及び
(c)溶出バッファ
を含む、核酸精製のためのキット。
【0069】
実施形態13
前記少なくとも1つの核酸を含む前記試料が、RNAを含むインビトロ転写試料であることを特徴とする実施形態12に記載のキット。
【0070】
実施形態14
前記少なくとも1つのカオトロピック試薬が、グアニジン塩酸塩(GuHCl)、チオシアン酸グアニジン(GuSCN)、リチウム塩、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つのアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第1の塩が、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、実施形態12又は13に記載のキット。
【0071】
実施形態15
前記少なくとも1つの第2のアルコールが、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、及びそれらの組合せから選択され、
前記少なくとも1つの第2の塩が、硫酸アンモニウム((NH
4)
2SO
4)、酢酸アンモニウム(NH
4Ac)、酢酸リチウム(LiAc)、酢酸カリウム(KAc)、酢酸ナトリウム(NaAc)、塩化ナトリウム(NaCl)、及びそれらの組合せから選択される
ことを特徴とする、実施形態12〜14のいずれかに記載のキット。
【0072】
実施形態16
前記洗浄バッファが、少なくとも約70体積%の前記少なくとも1つの第2のアルコールを含むことを特徴とする、実施形態12〜15のいずれかに記載のキット。
【0073】
実施形態17
前記少なくとも1つの磁性粒子が、カルボキシルコーティングされた常磁性粒子、シリカ系常磁性粒子、及びそれらの組合せから選択されることを特徴とする、実施形態12〜16のいずれかに記載のキット。
【0074】
実施形態18
前記少なくとも1つの磁性粒子が、約0.5μg/μl〜約60μg/μlの範囲の濃度で前記結合バッファ中に存在することを特徴とする、実施形態12〜17のいずれかに記載のキット。
【0075】
実施形態19
前記溶出バッファが、水、並びに、少なくとも1つのバッファ化合物及び/又は少なくとも1つのイオンキレート剤を含む溶液から選択されることを特徴とする、実施形態12〜18のいずれかに記載のキット。
【0076】
実施形態20
(a)約4〜約7の範囲のpHを有し、かつ、少なくとも1つシリカ系磁性粒子;約0.3M〜約2.5Mの範囲の濃度で存在する、GuHCl、GuSCN、及びそれらの組合せから選択される、少なくとも1つのカオトロピック試薬;約2M〜約5Mのイソプロパノール;並びに、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1つの第1の塩を含む、結合バッファ;
(b)少なくとも70体積%のエタノール、及び、必要に応じて、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1つの第2の塩を含む、洗浄バッファ;及び
(c)水、並びに、約10mM〜約100mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのバッファ化合物及び約0.1mM〜約10mMの範囲の濃度で存在する少なくとも1つのイオンキレート化合物を含む溶液から選択される溶出バッファ
を含む、核酸精製のためのキット。
【国際調査報告】