(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537622(P2017-537622A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】がんを治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20171124BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20171124BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20171124BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20171124BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20171124BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20171124BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20171124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20171124BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20171124BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20171124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20171124BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20171124BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20171124BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20171124BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20171124BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20171124BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20171124BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C12N5/10
C12N5/0783
A61K47/68
A61K47/66
A61K35/17 A
A61K48/00
A61P35/00
A61P25/00
A61K31/4188
A61P43/00 121
A61K38/45
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K31/17
A61K38/02
A61K31/713
C07D487/04 144
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2017-529284(P2017-529284)
(86)(22)【出願日】2015年12月1日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015063267
(87)【国際公開番号】WO2016089916
(87)【国際公開日】20160609
(31)【優先権主張番号】62/086,346
(32)【優先日】2014年12月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504332366
【氏名又は名称】ロジャー・ウィリアムズ・ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】セングプタ、サダク
(72)【発明者】
【氏名】サンパース、プラカーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユンハンス、リチャード ピー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C050
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C050AA01
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4C050FF03
4C050GG03
4C050HH01
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4C076EE41
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4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084AA07
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4C084BA02
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4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
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4C084ZC75
4C085AA16
4C085CC03
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4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA16
4C086MA01
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
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4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB35
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA26
4C206HA28
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA01
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
IL13受容体α−2(IL13Rα2)に結合するキメラ抗原受容体及びO
6−メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)タンパク質の両方を発現する免疫細胞に関する組成物及び方法について記載される。IL13キメラ抗原受容体(IL13CAR)又はそのバリアント及びMGMTタンパク質又はそのバリアントを含有するウイルス粒子は、T細胞のような免疫細胞をトランスフェクトするために使用され、トランスフェクトされた細胞にIL13Rα2を標的とする活性及び化学療法剤テモゾロミド(TMZ)に対する抵抗性の両方を付与する。記載された組成物及び方法は、悪性度の高い神経膠腫の治療のようながん治療に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸配列であって、
IL13α2受容体(配列番号44)に結合するIL13リガンドドメインと、
膜貫通ドメインと、
CD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと
を含むIL13CARをコードする核酸配列;並びに
第2の核酸配列であって、配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、及び配列番号43からなる群から選択されたMGMTポリペプチドをコードする核酸配列
を含む、キメラ核酸配列。
【請求項2】
IL13CARはシグナルペプチドをさらに含む、請求項1に記載のキメラ核酸配列。
【請求項3】
IL13CARはヒンジ領域をさらに含む、請求項1又は2に記載のキメラ核酸配列。
【請求項4】
細胞質ドメインは、CD28、4−1BB(CD137)、及びOX40(CD134)からなる群から選択された共刺激ドメインをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項5】
CD28共刺激ドメインは配列番号29に少なくとも90%同一である、請求項4に記載のキメラ核酸配列。
【請求項6】
CD3−ゼータシグナル伝達ドメインは配列番号30に少なくとも90%同一である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項7】
自己切断リンカーペプチドをコードする第3の核酸配列をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項8】
第3の核酸配列は第1の核酸と第2の核酸との間に配置される、請求項7に記載のキメラ核酸配列。
【請求項9】
第1の核酸は、IL13リガンドドメインとヒンジドメインとの間、ヒンジドメインと膜貫通ドメインとの間、膜貫通ドメインとCD28シグナル伝達ドメインとの間、又はCD28シグナル伝達ドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間に配置されるジペプチドリンカーをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項10】
CD3−ゼータシグナル伝達ドメインと自己切断ペプチドとの間にリンカーペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項11】
IL13リガンドドメインは、配列番号26、配列番号36、及び配列番号37並びにこれらのバリアントからなる群から選択された配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項12】
配列番号1のヌクレオチド109〜1839、配列番号2のヌクレオチド109〜1839、及び配列番号3のヌクレオチド109〜1839からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列。
【請求項13】
配列番号1(IL13 CAR−P140KMGMT)、配列番号2(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号3(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)、又はこれらの組み合わせを含む核酸配列。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列を含むベクター。
【請求項15】
ベクターはウイルスベクターである、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のキメラ核酸配列を含む宿主細胞。
【請求項18】
細胞は哺乳動物細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
細胞はT細胞である、請求項17又は18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
細胞は自己由来の細胞又はヒト白血球抗原(HLA)一致細胞である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項21】
細胞は脳腫瘍を有する1以上の個体から入手される、請求項17〜20のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項22】
第1の核酸配列であって、
IL13α2受容体(配列番号44)に結合するIL13リガンドドメインと、
膜貫通ドメインと、
CD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと
を含むIL13CARをコードする核酸配列;並びに
第2の核酸配列であって、配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号43からなる群から選択されたMGMTポリペプチドをコードする核酸配列
を含む宿主細胞。
【請求項23】
請求項17〜21のいずれか1項に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項24】
第1の核酸配列であって、
IL13α2受容体(配列番号44)に結合するIL13リガンドドメインと、
膜貫通ドメインと、
CD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと
を含むIL13CARをコードする核酸配列;並びに
第2の核酸配列であって、配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号43からなる群から選択されたMGMTポリペプチドをコードする核酸配列
を含む医薬組成物。
【請求項25】
IL13CARタンパク質及びMGMTタンパク質を発現する哺乳動物細胞を生産する方法であって:
a)細胞に、IL13CARタンパク質及びMGMTタンパク質をコードする核酸配列を導入するステップであって、IL13CARタンパク質は、IL13α2受容体(配列番号44)に結合するIL13リガンドドメインと、膜貫通ドメインと、CD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含むステップ;並びに
b)IL13CARタンパク質及びMGMTタンパク質が前記細胞によって発現される条件下に細胞を維持するステップ
を含む方法。
【請求項26】
前記核酸配列はウイルスベクターを使用して前記細胞に導入される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
治療を必要とする対象者の脳腫瘍を治療する方法であって、前記対象者に、
第1の核酸配列であって、
IL13α2受容体(配列番号44)に結合するIL13リガンドドメインと、
膜貫通ドメインと、
CD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと
を含むIL13CARをN末端→C末端の方向にコードする核酸配列、並びに
第2の核酸配列であって、配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号43からなる群から選択されたMGMTポリペプチドをコードする核酸配列
によってコードされたタンパク質を発現する1つ以上の免疫細胞を投与することを含む方法。
【請求項29】
脳腫瘍は悪性度の高い神経膠腫である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対象者は、DNAをメチル化する化学療法剤を用いた治療を受けているか、前記化学療法剤を用いて治療済みであるか、又は前記化学療法剤を用いた治療を受ける予定である、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
DNAをメチル化する化学療法剤はTMZである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
DNAをメチル化する化学療法剤は、投薬量の前記免疫細胞の投与前、投与中、又は投与後に投与される、請求項30又は31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、がんを治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術
標的免疫療法はこのように悪性病変の治療に関する有望な研究分野として出現し、近年大きく脚光を浴びてきた(非特許文献1及び2)。最も広く研究された標的のうちの1つはインターロイキン13受容体アルファ2(IL13Rα2)である(非特許文献3)。IL13Rα2は、遍在性のIL13Rα1には存在するシグナル伝達鎖を欠いておりその結果としてIL13を介した下流のいかなるシグナル伝達経路も阻止する、インターロイキン13(IL13)のデコイ受容体である(非特許文献4)。IL13Rα2の発現増大は神経膠腫及び他の腫瘍のモデルにおいて腫瘍の進行を促進することが報告されている。IL13Rα2の発現は、神経膠腫の悪性度及び低い患者生存率についての予後マーカーである(非特許文献5)。ほぼ20年前に発見された、そのMG上での選択的発現は、以来ずっと治療法の標的となってきた(非特許文献6)。
【0003】
神経膠芽腫は成人において最も一般的な原発性脳腫瘍である。毎年米国で悪性原発性脳腫瘍と診断される18,000人の患者の半分以上が、多形性神経膠芽腫を有している。多形性神経膠芽腫は、高い増殖指数、微小血管増殖及び巣状壊死を伴う、退形成性で細胞密度の高い腫瘍である。症候及び症状はいくつかの要因(大きさ、成長速度、脳内での腫瘍の局在性)に依存し、主として頭痛、卒中、神経学的欠損、精神状態の変化に代表される。多形性神経膠芽腫の予後は依然不良なままである。生存期間は大多数の患者において2年未満である。
【0004】
手術、放射線療法、及び化学療法の三部分よりなるレジメンである、神経膠芽腫(GBM)についての現在の標準的治療に伴う生存率は漸進的に向上しているにもかかわらず(非特許文献7及び8)、ほとんどの患者の予後は依然として不良である(非特許文献9及び10)。GBMの治療における主な妨げは、脳血液関門を横切っての細胞毒性作用薬の送達を妨害する、脳内部における腫瘍の位置(非特許文献8)と、強力な免疫抑制性の環境(非特許文献11)並びに化学療法抵抗性及び放射線抵抗性の神経膠腫幹細胞(非特許文献12及び13)との組み合わせである。その結果として、患者の生存率、生活の質、及び全般的な転帰を改善するために新規な戦略が絶えず試験されている。
【0005】
従って、本明細書中に記載されるのは、脳腫瘍など、悪性細胞がIL13Rα2を発現又は過剰発現するがんの、より効力の高い治療のための組成物及び方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】カルパンティエ(Carpentier)及びメン(Meng)、カレント・オピニオン・イン・オンコロジー(Curr Opin Oncol)、2006年、第18巻、第6号、p.631−636
【非特許文献2】ウェーンライト(Wainwright)ら、エキスパート・オピニオン・オン・エマージング・ドラッグズ(Exp Opin Emerging Drugs)、2012年、第17巻、第2号、p.181−202
【非特許文献3】タチ(Thaci)ら、ニューロオンコロジー(Neuro−Oncol)、2014年、第16巻、第10号、p.1304−1324
【非特許文献4】アリマ(Arima)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J Biol Chem)、2005年、第280巻、第26号、p.24915−24922
【非特許文献5】ブラウン(Brown)ら、プロス・ワン(PLoS ONE)、2013年、第8巻、第10号、論文ID e77769
【非特許文献6】デビンスキ(Debinski)ら、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Canc Res)、1999年、第5巻、第5号、p.985−990
【非特許文献7】ロル(Rolle)ら、ニューロサージェリー・クリニクス・オブ・ノースアメリカ(Neurosurgery Clin of North America)、2010年、第21巻、第1号、p.201−214
【非特許文献8】アシュビー(Ashby)及びライケン(Ryken)、ニューロサージカル・フォーカス(Neurosurgical focus)、2006年、第20巻、第4号、p.E3
【非特許文献9】ストゥップ(Stupp)ら、ザ・ランセット・オンコロジー(Lancet Oncol)、2009年、第10巻、第5号、p.459−466
【非特許文献10】オムロ(Omuro)及びデアンジェリス(DeAngelis)、米国医師会雑誌(JAMA)、2013年、第310巻、第17号、p.1842−1850
【非特許文献11】ロル(Rolle)ら、アドバンシズ・イン・エクスペリメンタル・メディシン・アンド・バイオロジー(Adv Exp Med Biol)、2012年、第746巻、p.53−76
【非特許文献12】バオ(Bao)ら、ネイチャー(Nature)、2006年、第444巻、第7120号、p.756−760
【非特許文献13】フロシナ(Frosina)、モレキュラー・キャンサー・リサーチ(Mol Canc Res)、2009年、第7巻、第7号、p.989−999
【発明の概要】
【0007】
1つの態様では、キメラ核酸配列であって、IL1Rα2受容体(IL13Rα2)に結合するIL13キメラ抗原受容体(IL13CAR)をコードする第1の核酸と、O
6−メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)タンパク質である薬物抵抗性ポリペプチドをコードする第2の核酸とを含むキメラ核酸配列が提供される。
【0008】
一実施形態では、IL13CARは、IL13Rα2に対するリガンドを含む。別の実施形態では、該リガンドはIL13である。さらに別の実施形態では、リガンドはIL13Rα2に結合するIL13のフラグメントである。さらに別の実施形態では、リガンドはIL13Rα2に選択的に結合する抗体可変ドメイン又はそのフラグメントである。
【0009】
一実施形態では、MGMTタンパク質はP140K置換を含む。
一実施形態では、キメラ核酸配列は、IL13CARをコードする第1の核酸配列と、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸配列とを含む。
【0010】
一実施形態では、IL13CARをコードする第1の核酸配列は、MGMTポリペプチドをコードする第2の核酸配列の5’側にある。代替実施形態では、IL13CARをコードする第1の核酸配列は、MGMTポリペプチドをコードする第2の核酸配列の3’側にある。
【0011】
一実施形態では、IL13CARをコードする第1の核酸配列は、5’→3’の方向に、IL13Rα2リガンドドメインをコードする核酸配列と、膜貫通(TM)ドメインをコードする核酸配列と、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインをコードする核酸配列とを含む。別の実施形態では、第1の核酸配列は、ヒンジ領域であってIL13リガンドドメインとTMドメインとの間に配置されているヒンジ領域をコードする核酸配列をさらに含む。さらに別の実施形態では、第1の核酸配列は、CD28共刺激ドメインであってTMドメインとCD3−ゼータ鎖との間に配置されているCD28共刺激ドメインをコードする核酸配列をさらに含む。さらに別の実施形態では、第1の核酸配列は、シグナル配列であってIL13Rα2リガンドドメインのN末端側に配置されているシグナル配列をコードする核酸をさらに含む。
【0012】
一実施形態では、ヒンジドメインはCD8ヒンジドメインである。別の実施形態では、CD8ヒンジドメインは配列番号27を含む。
一実施形態では、細胞質ドメインは1つ以上の共刺激ドメインをさらに含む。一実施形態では、共刺激ドメインはCD28共刺激ドメインである。別の実施形態では、CD28共刺激ドメインはTMドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間に配置されている。
【0013】
一実施形態では、細胞質ドメインは、OX−40共刺激ドメイン、HVEM共刺激ドメイン、41BB共刺激ドメイン、ICOS共刺激ドメイン、OX40共刺激ドメイン及びCD27共刺激ドメインからなる群から選択された1つ以上の共刺激ドメインをさらに含む。一実施形態では、追加の共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間に配置されている。
【0014】
一実施形態では、シグナル配列は異種シグナル配列である。別の実施形態では、シグナル配列はIL13シグナル配列又はそのバリアントである。さらに別の実施形態では、IL13シグナル配列は配列番号25を含む。さらに別の実施形態では、シグナル配列をコードする核酸配列は配列番号9を含む。
【0015】
一実施形態では、IL13リガンド結合ドメインは成熟型IL13タンパク質(配列番号26)を含む。別の実施形態では、IL13リガンド結合ドメインは、成熟型IL13のフラグメントであって成熟型IL13タンパク質(配列番号26)とほぼ同じ親和性でIL13Rα2タンパク質に結合するフラグメントからなる。
【0016】
一実施形態では、IL13リガンドをコードする核酸配列は、配列番号26、配列番号36及び配列番号37からなる群から選択されたポリペプチドをコードする。別の実施形態では、成熟型IL13ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号10、配列番号34、及び配列番号35からなる群から選択された核酸配列を含む。
【0017】
一実施形態では、第1の核酸は、5’→3’の方向に、配列番号10、配列番号34、又は配列番号35からなる群から選択された核酸であってIL13リガンドドメインをコードする核酸、TMドメインをコードする配列番号14又はそのバリアントを含む核酸、及び、CD3−ゼータシグナル伝達ドメインをコードする配列番号18又はそのバリアントを含む核酸を含む。別の実施形態では、第1の核酸は、IL13シグナル配列をコードする配列番号9又はそのバリアントをさらに含み、配列番号9の配列はIL13リガンドドメインをコードする核酸配列の上流にある。別の実施形態では、第1の核酸は、CD8ヒンジドメインをコードする配列番号12又はそのバリアントをさらに含む。さらに別の実施形態では、第1の核酸は、CD28共刺激ドメインをコードする配列番号16又はそのバリアントの核酸をさらに含む。
【0018】
一実施形態では、第1の核酸は、5’→3’の方向に、シグナル伝達ドメインをコードする配列番号9又はそのバリアントの核酸配列、IL13リガンドドメインをコードする配列番号10、配列番号34、又は配列番号35からなる群から選択された核酸、CD8ヒンジドメインをコードする配列番号12又はそのバリアントの核酸配列、TMドメインをコードする配列番号14又はそのバリアントを含む核酸、CD28共刺激ドメインをコードする配列番号16又はそのバリアントの核酸、及び、CD3−ゼータシグナル伝達ドメインをコードする配列番号18又はそのバリアントの核酸配列を含む。
【0019】
一実施形態では、CARをコードする第1の核酸配列は、成熟型IL13リガンドとCD8ヒンジドメインとの間のリンカーをコードする核酸配列をさらに含む。別の実施形態では、成熟型IL13リガンドとCD8ヒンジドメインとの間のリンカーをコードする核酸配列は、配列番号11からなる。
【0020】
一実施形態では、CARをコードする第1の核酸配列は、配列番号12と配列番号14との間のリンカーをコードする核酸配列をさらに含む。別の実施形態では、配列番号12と配列番号14との間のリンカーをコードする核酸配列は、配列番号13からなる。
【0021】
一実施形態では、CARをコードする第1の核酸配列は、配列番号14と配列番号16との間のリンカーをコードする核酸配列をさらに含む。別の実施形態では、配列番号14と配列番号16との間のリンカーをコードする核酸配列は、配列番号15からなる。
【0022】
一実施形態では、CARをコードする第1の核酸配列は、配列番号16と配列番号18との間のリンカーをコードする核酸配列をさらに含む。別の実施形態では、配列番号16と配列番号18との間のリンカーをコードする核酸配列は、配列番号17からなる。
【0023】
一実施形態では、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸配列はP140KMGMT(配列番号22)を含む。別の実施形態では、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸配列は、配列番号33を含むタンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0024】
一実施形態では、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸配列は、G156A−MGMT(配列番号38)、MGMT−2(配列番号39)、MGMT−3(配列番号40)及びMGMT−5(配列番号41)からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸配列は、G156A−MGMT(配列番号38)、MGMT−2(配列番号39)、MGMT−3(配列番号40)及びMGMT−5(配列番号41)を含むタンパク質をコードする核酸配列を含む。
【0025】
一実施形態では、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸配列は配列番号48を含まない。別の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号49を含まないMGMTタンパク質をコードする。
【0026】
一実施形態では、キメラ核酸配列は、自己切断ペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。別の実施形態では、自己切断ペプチドをコードする核酸配列は配列番号21を含む。さらに別の実施形態では、自己切断ペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列を含む。
【0027】
一実施形態では、キメラ核酸配列はコザック配列をさらに含む。別の実施形態では、コザック配列は配列番号8を含む。さらに別の実施形態では、コザック配列は、IL13CARタンパク質及びMGMTタンパク質をコードする核酸配列の上流に位置する。一実施形態では、キメラ核酸配列は、コザック配列の上流にある第1の制限エンドヌクレアーゼ部位をさらに含む。別の実施形態では、コザック配列の上流の制限エンドヌクレアーゼ部位は配列番号7からなる。一実施形態では、キメラ核酸配列は、IL13CARタンパク質及びMGMTタンパク質をコードする核酸配列の下流にある第2のエンドヌクレアーゼ部位をさらに含む。
【0028】
一実施形態では、キメラ核酸配列は、配列番号1のヌクレオチド109〜1836、配列番号2のヌクレオチド109〜1836及び配列番号3のヌクレオチド109〜1836からなる群から選択されたヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、キメラ核酸配列は、配列番号1のヌクレオチド13〜1836、配列番号2のヌクレオチド13〜1836及び配列番号3のヌクレオチド13〜1836からなる群から選択されたヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、キメラ核酸配列は、配列番号1のヌクレオチド7〜1842、配列番号2のヌクレオチド7〜1842及び配列番号3のヌクレオチド7〜1842からなる群から選択されたヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、キメラ核酸配列は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択されたヌクレオチド配列を含む。
【0029】
一実施形態では、キメラ核酸配列は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号45、配列番号46又は配列番号47のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0030】
一実施形態では、IL13Rα2受容体リガンドは、野生型のIL13(配列番号26)の約1/5、1/10又は1/100の低い親和性でIL13Rα2に結合するIL−13のバリアント又はそのフラグメントである。別例の実施形態では、IL13Rα2受容体リガンドは、野生型のIL13(配列番号26)よりも約5倍、10倍又は100倍の高い親和性でIL13Rα2に結合するIL13のバリアント又はそのフラグメントである。
【0031】
一実施形態では、IL13Rα2受容体リガンドは野生型のIL−13と同一ではない。別の実施形態では、IL13Rα2受容体リガンドは配列番号26と同一ではない。
一実施形態では、P140KMGMTタンパク質は、IL13−CAR−Tでトランスフェクトされた細胞が化学療法剤で処理されたときの、該薬物抵抗性ポリペプチドを発現している細胞のin vitro及び/又はin vivoにおける生存可能性を、該化学療法剤で処理されるが薬物抵抗性ポリペプチドを発現していない細胞と比較して増大させるのに有効である。
【0032】
一実施形態では、IL13Rα2受容体リガンドは野生型のIL−13と同一ではない。別の実施形態では、IL13Rα2受容体リガンドは配列番号26と同一ではない。
別の態様では、本明細書中に記載されるようなIL13CAR及びMGMTタンパク質をコードする核酸配列を含むベクターが提供される。
【0033】
一実施形態では、該ベクターは、本明細書中に記載されるような、IL13CAR、自己切断ペプチド、及びMGMTタンパク質をコードするモノシストロニックな核酸配列を含む。別の実施形態では、自己切断ペプチドは2Aペプチドを含む。
【0034】
別例の実施形態では、ベクターは、IL13CAR及びMGMTタンパク質をコードするポリシストロニックなキメラ核酸配列を含む。別の実施形態では、IL13CAR及びMGMTタンパク質をコードするポリシストロニックなキメラ核酸配列は、IL13CARをコードする核酸配列とMGMTタンパク質をコードする核酸配列との間に配置された内部リボソーム進入部位(IRES)をさらに含む。さらに別の実施形態では、IL13CAR及びMGMTタンパク質をコードするポリシストロニックなキメラ核酸配列は、IL13CARをコードする核酸配列とMGMTタンパク質をコードする核酸配列との間に配置されたプロモーターをさらに含む。
【0035】
一実施形態では、ベクターは細菌性プラスミドベクターである。別の実施形態では、ベクターは発現ベクターである。
一実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。別の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターからなる群から選択される。
【0036】
別の態様では、本明細書中に記載されるようなキメラ抗原受容体(CAR)及び薬物抵抗性ポリペプチドをコードするキメラ核酸配列を含むベクターでトランスフェクトされた細胞が提供される。
【0037】
一実施形態では、細胞は、T細胞、NK細胞、及びNKT細胞からなる群から選択される。
別例では、N末端→C末端の方向に、本明細書中に記載されるような、腫瘍抗原に結合するリガンド、膜貫通ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメインを含む組換えポリペプチドが提供される。
【0038】
一実施形態では、N末端→C末端の方向に、腫瘍抗原に結合するリガンド、膜貫通ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメインを含む組換えポリペプチドは、CARと薬物抵抗性ポリペプチドとの間に配置された自己切断ペプチドをさらに含む。別の実施形態では、薬物抵抗性ポリペプチドはCARのN末端側にある。さらに別の実施形態では、薬物抵抗性ポリペプチドはCARのC末端側にある。
【0039】
別の態様では、TMZに曝露された細胞の生存能力を増大させる改変MGMTポリペプチドを含む組換えポリペプチドが提供され、前記細胞は、本明細書中に記載されるようなCARを発現するように遺伝子改変され、かつ脳腫瘍と診断された患者に投与される細胞である。
【0040】
別の態様では、本明細書中に記載されるようなCARをコードする第1の核酸と、本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質をコードする第2の核酸とを含む組成物が提供される。
【0041】
一実施形態では、第1の核酸は、本明細書中に記載されるようなIL13リガンドドメイン、本明細書中に記載されるようなTMドメイン、及び本明細書中に記載されるようなCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインを含むCARタンパク質をコードする。別の実施形態では、第1の核酸は、CARタンパク質のIL13リガンド結合ドメインの上流にあるシグナル配列をさらにコードする。さらに別の実施形態では、第1の核酸は、本明細書中に記載されるようなヒンジ領域であってCARタンパク質のIL13リガンドドメインとTMドメインとの間に配置されているヒンジ領域をさらにコードする。さらに別の実施形態では、第1の核酸は、TMドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間に配置されているCD28共刺激ドメインをさらにコードする。さらに別の実施形態では、第1の核酸は追加の共刺激ドメインをさらにコードする。別の実施形態では、第1の核酸は、CARタンパク質をコードする核酸の上流にコザック配列をさらに含む。
【0042】
一実施形態では、第2の核酸は、配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号43からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するMGMTタンパク質をコードする。
【0043】
一実施形態では、MGMTタンパク質は配列番号49を含まない。
一実施形態では、組成物は、第1の核酸及び第2の核酸を含むキメラ核酸を含む。
一実施形態では、キメラ核酸は、本明細書中に記載されるような自己切断リンカーペプチドをコードする核酸であって、第1の核酸と第2の核酸との間に配置された自己切断リンカーペプチドをコードする核酸を、さらに含む。
【0044】
一実施形態では、キメラ核酸は、本明細書中に記載されるような内部リボソーム進入部位(IRES)であって、第1の核酸と第2の核酸との間に配置されたIRESをさらに含む。
【0045】
一実施形態では、キメラ核酸は、CARタンパク質をコードする第1の核酸の上流の第1のプロモーターと、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸の上流の第2のプロモーターとを含むバイシストロニックな構築物である。
【0046】
一実施形態では、組成物は、CARタンパク質をコードする第1の核酸を含む第1のベクターと、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸を含む第2のベクターとを含む。別の実施形態では、第1及び第2のベクターは各々プラスミドベクター又は発現ベクターである。さらに別の実施形態では、第1及び第2のベクターは各々レトロウイルス粒子である。
【0047】
別の態様では、本明細書中に記載されるようなCARをコードする第1の核酸と、本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質をコードする第2の核酸とを含む宿主細胞。一実施形態では、第1の核酸は、本明細書中に記載されるようなIL13リガンドドメインと、本明細書中に記載されるようなTMドメインと、本明細書中に記載されるようなCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含むCARタンパク質をコードする。別の実施形態では、第1の核酸は、CARタンパク質のIL13リガンド結合ドメインの上流にあるシグナル配列をさらにコードする。さらに別の実施形態では、第1の核酸は、本明細書中に記載されるようなヒンジ領域であってCARタンパク質のIL13リガンドドメインとTMドメインとの間に配置されたヒンジ領域をさらにコードする。さらに別の実施形態では、第1の核酸は、TMドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間に配置されたCD28共刺激ドメインをさらにコードする。なおも別の実施形態では、第1の核酸は追加の共刺激ドメインをさらにコードする。別の実施形態では、第1の核酸は、CARタンパク質をコードする核酸の上流にコザック配列をさらに含む。
【0048】
一実施形態では、第2の核酸は、配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号43からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するMGMTタンパク質をコードする。別の実施形態では、MGMTタンパク質は配列番号49ではない。
【0049】
一実施形態では、宿主細胞は、第1の核酸及び第2の核酸を含むキメラ核酸を含む。
一実施形態では、キメラ核酸は、本明細書中に記載されるような自己切断リンカーペプチドをコードする核酸であって、第1の核酸と第2の核酸との間で配置されている、自己切断リンカーペプチドをコードする核酸をさらに含む。
【0050】
一実施形態では、キメラ核酸は、本明細書中に記載されるような内部リボソーム進入部位(IRES)であって、第1の核酸と第2の核酸との間に配置されているIRESをさらに含む。
【0051】
一実施形態では、キメラ核酸は、CARタンパク質をコードする第1の核酸の上流の第1のプロモーターと、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸の上流の第2のプロモーターとを含むジシストロニックな構築物である。
【0052】
一実施形態では、宿主細胞は、CARタンパク質をコードする第1の核酸を含む第1のベクターと、MGMTタンパク質をコードする第2の核酸を含む第2のベクターとを含む。別の実施形態では、第1及び第2のベクターはそれぞれ、本明細書中に記載されるようなプラスミドベクター又は発現ベクターである。さらに別の実施形態では、第1及び第2のベクターはそれぞれ、本明細書中に記載されるようなレトロウイルス粒子である。
【0053】
別の態様では、組換えポリペプチドを含む組成物であって、該組換えポリペプチドは、N末端→C末端の方向に、本明細書中に記載されるようなシグナル配列、本明細書中に記載されるようなIL13リガンド、本明細書中に記載されるような膜貫通ドメイン、本明細書中に記載されるような細胞質シグナル伝達ドメイン、本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物が提供される。別の実施形態では、組換えポリペプチドは、本明細書中に記載されるようなヒンジドメインであって、IL13リガンドドメインと膜貫通ドメインとの間に配置されているヒンジドメインをさらに含む。さらに別の実施形態では、組換えポリペプチドは、本明細書中に記載されるような自己切断ペプチドであって、細胞質シグナル伝達ドメインとMGMTタンパク質との間に配置されている自己切断ペプチドをさらに含む。
【0054】
一実施形態では、組成物は医薬組成物である。
別の態様では、がんと診察された対象者を治療するための方法が提供される。
一実施形態では、方法は、対象者から細胞を入手することと、細胞を、本明細書中に記載されるようなIL13CAR及び本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質をコードする1つ以上の核酸を用いて形質導入することと、細胞を、核酸が該細胞によって発現される条件下に維持することと、IL13CAR及びMGMTタンパク質を発現している治療上有効な数の細胞を患者に投与することとを含む。
【0055】
一実施形態では、細胞内への導入は、IL13CARをコードする核酸を含む第1のベクター及びMGMTタンパク質をコードする核酸を含む第2のベクターを使用することを含む。別の実施形態では、細胞内への導入は、IL13CAR及びMGMTタンパク質をコードする核酸を含むベクターを使用することを含む。
【0056】
一実施形態では、細胞は、本明細書中に記載されるようなIL13CAR−P140KMGMTキメラ構築物を含むベクターを用いて形質導入される。
一実施形態では、対象者は哺乳動物である。別の実施形態では、哺乳動物は霊長類、ヒト、又はマウスである。
【0057】
一実施形態では、1つ以上の核酸は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はこれらの組み合わせからなる群から選択されたウイルスベクターを使用して細胞内に導入される。
【0058】
一実施形態では、細胞はT細胞である。
一実施形態では、T細胞はプラズマフェレーシスを使用して入手される。
一実施形態では、対象者は、脳腫瘍、乳がん、膵臓がん、頭頚部がん、卵巣がん及び結腸直腸がんからなる群から選択されたがんであると診断済みである。別の実施形態では、がんは転移している。
【0059】
一実施形態では、対象者は悪性度の高い神経膠腫であると診断済みである。別の実施形態では、対象者は、多形性神経膠芽腫(GMB)、退形成性星細胞腫又は小児神経膠腫であると診断済みである。
【0060】
一実施形態では、脳腫瘍は神経膠芽腫である。別の実施形態では、脳腫瘍は高悪性度の星細胞腫である。
一実施形態では、乳がんは基底様(basal−like)乳がんである。
【0061】
一実施形態では、方法は1つ以上の化学療法剤を用いて対象者を治療することをさらに含む。別の実施形態では、方法はテモゾロミド(TMZ)を用いて対象者を治療することを含む。
【0062】
一実施形態では、1つ以上の化学療法剤は、1用量の改変細胞の投与前、投与中、及び/又は投与後において対象者に投与される。
一実施形態では、投与は、頭蓋内、髄内、皮内、皮下、局所、又は静脈内投与である。
【0063】
別の態様では、本明細書中に記載されるようなIL13CAR−P140KMGMT構築物を発現する細胞を生産する方法であって、細胞にIL13CAR−P140KMGMTキメラタンパク質をコードする核酸配列を導入することと、IL13CAR−P140KMGMTキメラタンパク質が細胞によって発現される条件下に細胞を維持することとを含む方法が提供される。
【0064】
一実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。別の実施形態では、哺乳動物細胞は、ヒト細胞、霊長類細胞又はマウス細胞である。
一実施形態では、細胞はT細胞である。別の実施形態では、細胞は、自己由来の細胞又はヒト白血球抗原(HLA)一致細胞である。
【0065】
一実施形態では、細胞は、脳腫瘍又は悪性腫瘍と診断された1以上の対象者から入手される。
別の態様では、IL13CAR−P140KMGMT構築物を含む細胞集団が提供される。別の実施形態では、細胞集団中の少なくとも約50%、60%、70%、80T、90%又は95%の細胞がIL13CAR−P140KMGMT構築物を発現する、が提供される。
【0066】
1つの態様では、本発明は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原に対する1つ以上のリガンド(例えば抗体)を発現するT細胞受容体を含む(から本質的になる;からなる)キメラ抗原受容体(CAR)をコードする(を有する:を含む;から本質的になる;からなる)、(1つ以上の)単離核酸配列に関する。いくつかの態様では、CARは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに発現する。
【0067】
別の態様では、本発明は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原(例えばがん抗原結合ドメイン)の1つ以上のリガンド(例えば抗体)を発現するT細胞受容体を含むCARをコードする1つ以上の核酸配列を含む(から本質的になる;からなる)発現構築物に関する。いくつかの態様では、CARは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに発現する。
【0068】
別の態様では、本発明は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原の1つ以上のリガンド(例えば抗体)を発現するT細胞受容体を含むCARをコードする1つ以上の核酸配列を含む発現構築物を含む(から本質的になる;からなる)宿主細胞に関する。いくつかの態様では、CARは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに発現する。
【0069】
別の態様では、本発明は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原の1つ以上のリガンド(例えば抗体)を含むT細胞受容体を含む(から本質的になる;からなる)CARを発現する細胞を生産する方法に関する。特定の態様では、CARは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに含む。
【0070】
別の態様では、本発明は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原の1つ以上のリガンド(例えば抗体)を含むT細胞受容体を含む(を有する;から本質的になる;からなる)CARポリペプチドに関する。特定の態様では、CARポリペプチドは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに含む。
【0071】
別の態様では、本発明は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原の1つ以上のリガンド(例えば抗体)を発現するT細胞受容体を含むCARを発現する1つ以上のT細胞を投与することを含む(から本質的になる;からなる)、治療を必要とする個体において脳腫瘍を治療する方法に関する。いくつかの態様では、CARは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに発現する。
【0072】
本発明はさらに、本明細書中に提供される組成物を含む医薬組成物にも関する。
先述の内容は、添付の図面において示されるような、以降の本発明の実例の実施形態のより具体的な説明から明白となろう。図面において同様の参照文字は様々な図の全体にわたって同じ部品を指している。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、それよりもむしろ本発明の実施形態を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1A】IL13E13K.R109K CAR核酸構築物の概略図。
【
図1B】IL13E13K.R109K CARを含むpMFG宿主プラスミドのプラスミドマップを提示する図。
【
図2A】IL13.E13KR109K CAR−2A−P140KMGMTの概略図。
【
図2B】IL−13−CAR−2A−P140KMGMTを含むpMFG宿主プラスミドのプラスミドマップを提示する図。
【
図3A】IL13CAR構築物及びIL13CAR−2A−P140KMGMT構築物を含有するウイルスを用いて形質導入されたPG13細胞のFACS解析を示す図。富化処理前。
【
図3B】IL13CAR構築物及びIL13CAR−2A−P140KMGMT構築物を含有するウイルスを用いて形質導入されたPG13細胞のFACS解析を示す図。富化処理後。
【
図3C】IL13CAR構築物及びIL13CAR−2A−P140KMGMT構築物を含有するウイルスを用いて形質導入されたPG13細胞のFACS解析を示す図。細胞溶解産物のウエスタンブロット解析を示す図である。
【
図4】IL13CAR−2A−P140KMGMT構築物を含むレトロウイルスを用いて形質導入され、かつTMZに曝露されたT細胞の生存率を示すグラフ。
【
図5A】本明細書中に記載されるようなIL13CAR−2A−MGMT構築物でトランスフェクトされた細胞におけるIL2に関する部分について示す図。
【
図5B】本明細書中に記載されるようなIL13CAR−2A−MGMT構築物でトランスフェクトされた細胞におけるIFNγに関する部分について示す図。
【
図6】腫瘍を担持し、かつ本明細書中に記載されるようなキメラ構築物及び/又は化学療法剤を投与されたマウスの生存率を示す図。
【
図7A】IL13CAR−P140KMGMT構築物のキメラの核酸配列(配列番号1)を提示する図。
【
図7B】IL13CAR−P140KMGMT構築物のアミノ酸配列(配列番号4)を提示する図。
【
図8A】IL13(E13Y)CAR−P140KMGMT構築物のキメラの核酸配列(配列番号2)を提示する図。
【
図8B】IL13(E13Y)CAR−P140KMGMT構築物のキメラのアミノ酸配列(配列番号5)を提示する図。
【
図9A】IL13(E13K.R109K)CAR−P140KMGMT構築物のキメラの核酸配列(配列番号3)を提示する図。
【
図9B】IL13(E13K.R109K)CAR−P140KMGMT構築物のキメラのアミノ酸配列(配列番号6)を提示する図。
【発明を実施するための形態】
【0074】
発明の詳細な説明
本明細書中に記載されるのは、がんの1つ以上の腫瘍抗原に対する1つ以上のリガンド(例えば、細胞表面タンパク質に対する抗体又はその他のリガンド)を発現するように遺伝子操作によって改変されたT細胞受容体を含む(1つ以上の)キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)の生成である。具体的には、本明細書中に記載されたCARタンパク質は、がん細胞の表面上に発現されるタンパク質に結合するリガンド結合ドメインを備えている。好ましくは、腫瘍抗原は、非疾患細胞若しくは正常細胞の表面上では発現されないか、又は非疾患細胞若しくは正常細胞において、がん若しくは他の疾患の細胞上で発現されるレベルよりはるかに低いレベルで発現される。改変されその結果としてCARを発現するようになされたT細胞は、そのCARの新たな特異性(neo−specificity)によって、CARにより認識される表面抗原(例えば受容体)を発現している腫瘍を攻撃するようにリダイレクトされる。同様に本明細書中に示されるのは、CARが、脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質(例えば、治療に対する脳腫瘍細胞の抵抗性を克服する作用物質)をさらに含むことが可能であるということである。具体的には、本明細書中に記載された組成物及び方法は、悪性の細胞がIL13α2受容体(IL13Rα2)を発現する脳腫瘍を治療するように設計される。従って、本開示は、サイトカインであるインターロイキン13(IL13)又はIL13Rα2に選択的に結合する抗体の可変ドメインのような、IL13Rα2のリガンドを発現及び提示するCARを使用して本明細書中に例証される。IL13CARは、O(6)−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子とともに発現される。一実施形態では、MGMT遺伝子は、脳腫瘍を治療するために使用される化学療法剤であるテモゾロミド(TMZ)に対する宿主細胞(例えばT細胞)の抵抗性を付与又は増強するタンパク質をコードするように改変される。
【0075】
1つの好ましい実施形態では、IL13CARは、13位(配列番号26と比較した相対的番号付け)においてグルタミン酸がチロシンに変化するように変異させたIL13を含む。別例の好ましい実施形態では、IL13を、13位においてグルタミン酸がリジンに変化し、かつ109位においてアルギニンがリジンに変化するように変異させる(アミノ酸の13位及び109位は、例えば、配列番号26に対しての位置である)。一実施形態では、IL13を、109位のアミノ酸がアルギニンからリジンへと変化するように変異させる。
【0076】
1つの好ましい実施形態では、改変されたMGMT遺伝子は、本明細書中ではP140KMGMT(配列番号33)と称されるMGMTバリアントをコードし、該MGMTバリアントはTMZのようなメチル化剤を用いる治療によって引き起こされる細胞毒性からIL13CAR−P140KMGMTを発現するT細胞を保護する。
【0077】
一実施形態では、IL13CARタンパク質及びP140KMGMTタンパク質は、転写されてN末端→C末端方向にIL13CAR、自己切断ペプチド(2A)、及びP140KMGMTを含む単一タンパク質をコードする単一転写物を生じる、モノシストロニックな構築物から発現される。この融合タンパク質の翻訳後、自己切断ペプチドの切断により、主として核に局在化するP140KMGMTタンパク質と、IL13リガンドドメインが宿主細胞の表面に提示されるIL13CARとを生じる。しかしながら、当然であるがIL13CARタンパク質及びP140KMGMTタンパク質が個別の核酸から発現されることも可能である。例えば、IL12CARタンパク質及びP140KMGMTタンパク質をコードしている核酸が、別々のベクター内にあってその後同じ細胞内に導入されてもよいし、又は、個別のモノシストロニックな構築物として(例えば、各々が自身のプロモーターを有して)単一のベクター内にクローニングされることも可能である。
【0078】
IL13CAR−2A−P140KMGMT構築物を用いて形質導入されたT細胞は、TMZの存在下において、P140KMGMTを発現しなかったIL13CAR形質導入T細胞と比較して、より長く生存した(例えば、実施例6;
図6)。従って、本明細書中にさらに開示されるのは、CAR及び薬物抵抗性ポリペプチド(MGMTタンパク質)をコードする核酸配列、1つ以上の核酸又は該核酸を含むレトロウイルスベクター、1つ以上のベクターを用いてトランスフェクト又は形質導入された細胞、並びに、遺伝的に改変されたT細胞の中で改変MGMT遺伝子を共発現することにより、TMZのような化学療法剤に曝露された該改変T細胞の生存可能性を増強するための方法である。
【0079】
さらに構想されるのは、IL13Rα2を発現する細胞を含むがんであると診察された対象者を治療する方法である。例えば、悪性度の高い神経膠腫のような脳腫瘍及び基底様乳がんの細胞は、IL13Rα2タンパク質を同じ組織の非疾患細胞又は非がん細胞と比較して過剰に発現する。特許請求の対象となる組成物は、対象者が、メチル化作用を有する化学療法剤と、IL13CAR及び改変MGMT遺伝子の両方を発現する遺伝的に改変された免疫細胞(例えばT細胞)とをいずれも投与される場合に、特に有用である。この方法は、対象者が単に化学療法剤のみ又は遺伝的に改変されたT細胞を用いて治療された場合よりも、治療期間を短縮し、かつ神経膠腫の撲滅をより速くより効果的に達成することが可能である。従って、1つの態様では、本発明は、がんの1又は(one or)腫瘍抗原に対する1つ以上のリガンド(例えば抗体)を発現する、T細胞で使用するためのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする(1つ以上の)単離された核酸配列に関する。いくつかの態様では、T細胞は脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに発現する。
【0080】
[定義]
本明細書中で使用されるように、「キメラ抗原受容体(CAR)」とは、1つ以上の細胞外のがん抗原結合ドメイン、1つ以上の膜貫通ドメイン、及びT細胞活性化のための1つ以上の細胞質シグナル伝達ドメインを含み、かつがんリガンド(例えばがん抗原)を発現している細胞に対する特異性を有する分子を指す。T細胞内へ導入されると、CARはそのT細胞の特異性をリダイレクトする。特定の態様では、CARは単一の分子として発現される。
【0081】
本明細書中で使用されるように、「がん抗原結合ドメイン」とは、がん細胞によって発現された1つ以上の抗原(1つ以上のがん抗原)に結合するドメインを指す。特定の態様では、がん抗原結合ドメインは、がん抗原に特異的に(選択的に)結合し、かつ非がん細胞(例えば正常細胞、健康な細胞、野性型細胞)によって発現されない非特異的な標的には結合しない結合ドメインである。
【0082】
様々ながん抗原結合ドメインが使用されることが可能であり、かつ既知の方法を使用して生産されることも商業的供給元から入手されることも可能である。がん抗原結合ドメインは、例えば、核酸、ペプチド(タンパク質)、抗体、有機分子、合成分子などであってよい。そのようながん抗原結合ドメインは、例えば、ライブラリに由来するもの、及び/又は天然の供給源から得られるものであってよい。
【0083】
本明細書中で使用されるような用語「IL13CAR」は、本明細書中に記載されるか又は当分野で知られているようなIL13リガンド、例えば、限定するものではないがIL13のバリアント(例えば、限定するものではないがIL13の機能性フラグメント(例えばIL13Rα2に結合することが可能なIL13のフラグメント))、及びIL13Rα2に選択的に結合する免疫グロブリンドメインのような他のIL13リガンドを含むCARを包含する。同様に、本明細書中で使用されるような用語「MGMT」は、野性型MGMT及び本明細書中に記載されるか又は当分野で知られているような任意のMGMTバリアントを包含する。
【0084】
本明細書中で使用されるように、投薬量又は量に対して適用される用語「治療上有効な」とは、本開示のキメラ受容体を含み、かつ薬物抵抗性ポリペプチドをさらに含む化合物又は医薬組成物(例えばTリンパ球及び/又はNK細胞のような免疫細胞を含む組成物)の量であって、投与を必要とする対象者に投与されると所望の活性をもたらすのに十分な量を指す。本開示の文脈においては、用語「治療上有効な」は、本開示の方法によって治療される障害の、症状発現を遅延させるか、進行を阻止するか、少なくとも1つの症状を軽減又は緩和するのに十分な、化合物又は医薬組成物の量を指す。有効成分の複合物が投与される場合、該複合物の有効な量は、個別に投与された場合に有効であろうそれぞれの成分の量を含む場合もあれば含まない場合もあることに注意されたい。
【0085】
本開示の組成物に関して使用されるような「薬学的に許容される」という言葉は、哺乳動物(例えばヒト)に投与された時に生理学的に忍容可能でありかつ典型的には有害反応を生じない、そのような組成物の分子的実体及び他の成分を指す。好ましくは、本明細書中で使用されるように、用語「薬学的に許容される」とは、哺乳動物での、及びより具体的にはヒトでの使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認識された薬局方に収載されていることを意味する。
【0086】
本明細書中で使用されるように、用語「対象者」は任意の哺乳動物を指す。好ましい実施形態では、対象者はヒトである。
他の態様では、がん抗原結合ドメインは抗体全体又は抗体の生物学的に活性な部分である。本明細書中で使用されるような用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に選択的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本明細書中で使用されるように、「選択的に結合する」とは、抗体が抗原又はそのフラグメントに結合できること及び試料中の他の分子(例えば抗原)にはほとんど結合できないことを指す。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例には、Fabフラグメント(例えば、F(ab)、F(ab’)
2)、可変フラグメント(例えば、一本鎖可変領域(scFv)、二量体化scFv(di−scFv)、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)、二重特異性フラグメント(例えば、二重特異性T細胞誘導体(BiTE))が挙げられる。そのようなフラグメントは、商業的供給元から入手され、及び/又は、例えばペプシンのような酵素を用いて抗体を処理することにより生成されてもよい。
【0087】
抗体は、がん細胞によって発現される1つ以上の抗原に結合する(例えば、選択的に結合する)ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってよい。本明細書中で使用されるように、「ポリクローナル抗体」は、各々が異なるエピトープを識別して特異性抗原に結合する抗体の集合に由来する抗体である。本明細書中で使用されるように、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、1つ以上の抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位を1種類しか含有していない抗体分子の集団を指す。よってモノクローナル抗体組成物は、典型的には該組成物が免疫反応する特定の抗原についての単一の結合親和性を示す。
【0088】
ポリクローナル抗体は、IL13Rα2タンパク質の細胞外ドメインのような1つ以上の所望のがん抗原を用いて適切な対象者を免疫することにより上述のようにして調製可能である。免疫された対象者の抗体力価は、固定化されたポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いるなど、標準的な技法によって経時的にモニタリング可能である。必要に応じて、がん抗原に対する抗体分子は、哺乳動物から(例えば組織、血液から)単離され、かつ、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーのような良く知られた技法によってさらに精製されることが可能である。当業者であれば、IL13Rα2タンパク質の細胞外ドメインに選択的に結合するポリクローナル抗体を作製することができるであろう。
【0089】
免疫化の後の適切な時点で、例えば抗体力価が最も高い時に、抗体産生細胞を対象者から得て、標準的技法、例えば、ケーラー(Kohler)及びミルシテイン(Milstein)、ネイチャー(Nature)、1975年、第256巻、p.495−497)によって最初に記載されたハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(コズボール(Kozbor)ら、イムノロジー・トゥデイ(Immunol.Today)、1983年、第4巻、p.72)、EBVハイブリドーマ技術(コール(Cole)ら、「モノクローナル・アンタイボディーズ・アンド・キャンサー・セラピー(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、アラン・アール.リス社(Alan R.Liss,Inc.)、1985年、p.77−96)又はトリオーマ技法によってモノクローナル抗体を調製するために使用することが可能である。ハイブリドーマを生産するための技術はよく知られている(コリガン(Coligan)ら編、「カレント・プロトコール・イン・イムノロジー(Current Protocols in Immunology)」、米国ニューヨーク州ニューヨーク、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley and Sons,Inc.)、1994年を一般には参照されたい)。簡潔に述べると、不死化細胞株(典型的には骨髄腫)を、上述のようにして免疫原で免疫した哺乳動物由来のリンパ球(典型的には脾細胞)に融合させ、結果として生じるハイブリドーマ細胞の培養上清を、本発明のポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングする。
【0090】
リンパ球と不死化細胞株とを融合させるために使用される数多くの良く知られたプロトコールのうち任意のものが、がん抗原に対するモノクローナル抗体を生成する目的に適用可能である(例えば、上述の「カレント・プロトコール・イン・イムノロジー」;ガルフレ(Galfre)ら、ネイチャー(Nature)、1977年、第266巻、p.55052;R.H.ケネス(Kenneth)、「モノクローナル・アンタイボディーズ:ア・ニュー・ディメンジョン・イン・バイオロジカル・アナライシズ(Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses)」、米国ニューヨーク州ニューヨーク、プレナム・パブリッシング社(Plenum Publishing Corp.)、1980年の書中;及びラーナー(Lerner)、ザ・イェール・ジャーナル・オブ・バイオロジー・アンド・メディシン(Yale J.Biol.Med.)、1981年、第54巻、p.387−402を参照されたい)。さらに、当業者は、同様に有用であろうそのような方法の多数の変法があることを認識するであろう。
【0091】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの調製の1つの代替法では、がん抗原に対するモノクローナル抗体は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例えば抗体ファージディスプレイライブラリ)を、ポリペプチドを用いてスクリーニングすることによりがん抗原に結合する免疫グロブリンライブラリの構成メンバーを単離することで、同定及び単離されることが可能である。ファージディスプレイライブラリを生成及びスクリーニングするためのキットは市販されている(例えばファルマシア(Pharmacia)の組換えファージ抗体システム(Recombinant Phage Antibody System)、カタログ番号27−9400−01;及びストラタジーン(Stratagene)のSurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。加えて、抗体ディスプレイライブラリの生成及びスクリーニングに使用するのに適した方法及び試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号明細書;PCT国際公開第92/18619号;PCT国際公開第91/17271号;PCT国際公開第92/20791号;PCT国際公開第92/15679号;PCT国際公開第93/01288号;PCT国際公開第92/01047号;PCT国際公開第92/09690号;PCT国際公開第90/02809号;フックス(Fuchs)ら、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)、1991年、第9巻:p.1370−1372;ヘイ(Hay)ら、ヒューマン・アンタイボディーズ・アンド・ハイブリドーマズ(Hum.Antibod.Hybridomas)、1992年、第3巻、p.81−85;ヒューズ(Huse)ら、サイエンス(Science)、1989年、第246巻、p.1275−1281;及びグリフィス(Griffiths)、ジ・エンボ・ジャーナル(EMBO J.)、1993年、第12巻、p.725−734に見出すことが可能である。
【0092】
加えて、標準的な組換えDNA技法を使用して作製可能な、ヒト部分及び非ヒト部分の両方を含む、キメラかつヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗体も、本発明の範囲内にある。そのようなキメラかつヒト化モノクローナル抗体は、当分野で既知の組換えDNA技法によって生産可能である。
【0093】
ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を生成するための上記の常套的な方法はいずれも、IL13Rα2タンパク質の細胞外ドメインに選択的に結合するモノクローナル抗体を生成するための方法に容易に適用可能である。結果として生じた抗体の可変ドメイン又はそのフラグメントはその後、IL13リガンドドメイン(配列番号26)がIL13Rα2タンパク質に結合する親和性とほぼ同じ親和性でIL13Rα2タンパク質に結合するIL13リガンドドメインを生成するために使用可能である。
【0094】
[本発明の構築物]
本発明は、少なくとも部分的には、IL13Rα2に特異的なCARを発現している免疫細胞であってTMZのような化学療法剤に抵抗性である細胞に基づいている。
【0095】
ある実施形態では、本発明は、脳腫瘍細胞に対して選択的なCARタンパク質と、薬物抵抗性ポリペプチドとの両方をコードする核酸(本明細書中ではキメラ核酸配列とも呼ばれる)を提供する。好ましい実施形態では、CARタンパク質はIL13CARであり、薬物抵抗性ポリペプチドは該ポリペプチドを発現する細胞に対してTMZ抵抗性を付与することができるMGMTタンパク質である。キメラ核酸配列は、本明細書中に記載されるようにして、IL13CARタンパク質及びMGMT薬物抵抗性タンパク質の両方をコードするように構築されることが可能である。以下に提供されるのは、IL13CARタンパク質の、及びMGMTタンパク質のドメイン又は配列領域についての説明、並びに各ドメイン又は領域の非限定的な例である。IL13CARタンパク質は、N末端→C末端の方向に、脳腫瘍細胞のような疾患細胞上のIL13R2αに選択的に結合するIL13リガンドドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む、直線状のキメラ(融合)タンパク質である。ある実施形態では、本明細書中に記載されたIL13CARタンパク質は、IL13リガンドドメインのN末端側に配置されたシグナルドメイン、及び/又はリガンドドメインと膜貫通ドメインとの間に配置されたヒンジ領域を含むことができる。
【0096】
ある実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸残基を含む短いペプチドリンカーが、CARタンパク質の領域又はドメイン(例えばシグナル配列、IL13リガンドドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、CD28共刺激ドメイン、CD3−ゼータシグナル伝達ドメイン、又は追加の共刺激ドメイン)を分離するためにIL13CARに含められる。当然ながら、短いペプチドリンカーは、他の任意の2つの領域(ドメイン)の間に短いペプチドリンカーが存在するか不在であるかとは関係なく、任意の2つの領域(ドメイン)の間に存在することが可能である。例えば、小さなペプチドリンカーがCARの中に存在して、該リンカーがシグナル配列(存在する場合)及びIL13リガンドドメイン、IL13リガンドドメイン及び膜貫通ドメイン、IL13リガンドドメイン及びヒンジ領域(存在する場合)、ヒンジ領域(存在する場合)及び膜貫通ドメイン、膜貫通ドメイン及びCD28補助シグナル伝達ドメイン(存在する場合)、CD28補助シグナル伝達ドメイン(存在する場合)及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン及びCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、及び/又は、CD3−ゼータシグナル伝達ドメイン及び追加の共刺激ドメイン(存在する場合)を分離することができる。ペプチドリンカーは、IL13CAR−自己切断ペプチド−MGMTキメラタンパク質のそれぞれの領域又は(モノシストロニックな構築物の場合には)ドメインをコードする核酸のライゲーションを可能にする、制限エンドヌクレアーゼ部位又はその他の機構を含有する核酸配列によってコードされるアミノ酸であってよい。これらのドメイン及びリンカーそれぞれについては、以下により詳細に説明される。
【0097】
1つの態様では、がん抗原結合ドメインは、ペプチド又はタンパク質(例えば、がん細胞の表面に発現される抗原に結合するリガンド;がん細胞の表面に発現される受容体に結合するリガンド)である。好ましい実施形態では、受容体はIL132α受容体であり、CARはIL132α受容体に選択的に結合するリガンドを含むように構築される。特定の態様では、がん抗原結合ドメインは、インターロイキン13(IL13)、又は1つ以上の挿入、欠失若しくは点突然変異を有するIL−13のバリアント(例えばE13K IL13;R109K IL13;及び/又はE13Y IL13)である。がん抗原結合ドメインは、別例として、IL13Rα2に選択的に結合する抗体の可変ドメイン又はそのフラグメント、例えばscFvフラグメントであってよい。
【0098】
以下の表1及び2はそれぞれ、本発明の組成物(例えばキメラ核酸配列)及び方法において使用することが可能な本明細書中に記載の核酸及びポリペプチドの概要を提示している。一実施形態では、本発明は、表1に参照された核酸配列の任意の組み合わせを含むキメラ核酸配列を含む。一実施形態では、本発明は、表2に参照されたアミノ酸配列の任意の組み合わせをコードするキメラ核酸配列を含む。
【0101】
<リガンド>
IL13CARリガンド(あるいは、リガンドドメイン)は、疾患細胞によって発現されるIL13受容体(例えばIL13Rα2)に選択的に結合するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である。疾患細胞は、腫瘍細胞又はその他のがん性若しくは悪性の細胞であってよく、疾患細胞によって発現されるタンパク質は別例として本明細書中ではがん抗原とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、がん抗原は、健康な組織細胞によっては全く又はほとんど(mRNA発現プロファイリングによる決定で50%、40%、30% 20%又は10%未満しか)発現されないタンパク質である。一実施形態では、疾患細胞は神経膠芽腫細胞のような脳腫瘍細胞である。特定の態様では、がん抗原結合ドメインは、IL−13R(例えば、IL13Rα2、例えばGenBank登録番号NP_000631;配列番号44)に結合する(例えば、特異的又は選択的に結合する)抗体全体又は抗体の生物学的に活性な部分である。他の態様では、リガンド(がん抗原結合ドメイン)は、IL−13R(例えばIL13Rα2)に対する(に結合する;に特異的又は選択的に結合する)scFvである。
【0102】
がん(例えば腫瘍)細胞によって発現される様々な抗原が当分野において知られている。1つの態様では、がん抗原は脳腫瘍抗原であって例えば腫瘍表面上に発現されるものである。特定の態様では、脳腫瘍抗原は悪性度の高い神経膠腫によって発現される(例えば、神経膠腫/悪性脳腫瘍抗原)。悪性度の高い神経膠腫の具体例には、多形性神経膠芽腫(GBM)、退形成性星細胞腫及び小児神経膠腫が挙げられる。悪性度の高い神経膠腫の腫瘍細胞によって発現される抗原の具体例には、EGFRvIII、EphA2、Her−2及びIL−13R(例えばIL13Rα2)が挙げられる。
【0103】
1つの態様では、本発明の方法及び組成物の標的とされるがん抗原は、IL13受容体α−2(IL13Rα2)、多形性神経膠芽腫(GBM)腫瘍上で過剰発現されるが正常な脳組織では最小限の発現であるか又は発現されない多形性神経膠芽腫関連タンパク質である(タチ(Thaci)ら、ニューロオンコロジー(Neuro−Onco)、2014年、第16巻、第10号、p.1304−1324;セングプタ(Sengupta)ら、バイオメド・リサーチ・インターナショナル(Biomed Res Int)、2014年、第2014巻、p.952128)。1つの態様では、IL13CARは、IL13α2受容体に結合するIL13及び/又はIL13突然変異体(例えばE13K IL13(配列番号36)及び/又はR109K IL13(配列番号37))であるリガンドドメインを発現するか又は含有する(コン(Kong)ら、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)、2012年、第18巻、第21号、p.5949−5960)。IL13Rα2タンパク質はさらに、乳がん転移を含む乳がんにおいて(パパジョージス(Papageorgis)ら、ブレスト・キャンサー・リサーチ(Breast Canc Res)、2015年、第17巻、p.98−112)及び頭頚部がんにおいて(ジョーシー(Joshi)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)、2000年、第60巻、p.1168−1172;カワカミ(Kawakami)ら、2003年、第9巻、p.6381−6388)、アップレギュレートされることも見出されており、かつさらには膵臓がん、卵巣がん、及び結腸直腸がんの浸潤及び転移を促進することも示された(フジサワ(Fujisawa)ら、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int J Cancer)、2009年、第69巻、p.8678−8695;バルデラス(Barderas)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)、2012年、第72巻、p.2780−2790)。従って、本明細書中に記載された組成物及び方法は悪性腫瘍と診断された対象者を治療するための方法において有用であり、悪性腫瘍の種類には、限定するものではないが脳腫瘍、頭頚部がん、乳がん、膵臓がん、卵巣がん、結腸直腸がんが挙げられる。
【0104】
当業者はIL13Rα2に特異的に結合するリガンドを生成することができる。例えば、IL13Rα2の細胞外ドメインを用いたマウスの免疫化によるか、又はファージディスプレイによるなど、IL13Rα2に選択的に結合する抗体を生成するために常套的な実験作業がなされる。所望の選択的結合活性を備えた抗体の可変ドメインはその後、一本鎖可変ドメイン(scFv)を作出するために使用可能である。一実施形態では、IL13Rα2に対して野性型IL13、IL13(E13Y)、IL13(R109K)又はIL13(E13K.R109K)と同じ親和性で選択的に結合するscFvが、本明細書中に開示されるようなIL13CAR構築物中のリガンドとして使用されることが可能である。
【0105】
一実施形態では、IL13CARは、配列番号26と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは99.5%同一であるIL13ポリペプチド、又はその機能性フラグメントを含む、IL13リガンドドメインを有し、a)配列番号26の13位のアミノ酸はグルタミン酸であるか;b)配列番号26の13位のアミノ酸はチロシンであるか;又は、c)配列番号26の13位のアミノ酸はリジンでありかつ配列番号26の109位のアミノ酸はアルギニンである。一実施形態では、IL13CARのIL13リガンドドメインは、配列番号26、配列番号36若しくは配列番号37、又はこれらの機能性フラグメントを含む。
【0106】
本開示による核酸は上述のようなIL13ポリペプチドをコードする。一実施形態では、IL13ポリペプチドをコードする核酸は、配列番号10、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択される。
【0107】
IL13CARは、任意選択で、IL13CARタンパク質がプロセシングを受けて宿主細胞表面に提示されることを可能にするシグナル(リーダー)ペプチドをさらに含む。一実施形態では、シグナルペプチドは該リガンドタンパク質についての天然に存在するシグナルペプチドである。例えば、リガンドドメインは、自身のシグナル配列(配列番号25のアミノ酸配列を含むか又は該配列からなるシグナル配列)を備えた完全長のIL13タンパク質を含む。一実施形態では、シグナル配列は、配列番号25と95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一の配列を含む。本開示による核酸は該シグナルペプチドをコードする。一実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸は配列番号9からなる。
【0108】
当業者は、異種のシグナル配列(IL13ではない分泌型タンパク質又は膜貫通タンパク質由来のシグナルペプチド)が使用可能であることを理解している。シグナルペプチド(シグナル配列)は、膜結合型ポリペプチド又は分泌型ポリペプチドの膜移行に必要とされ、かつ膜移行後若しくは膜移行中にプロセシングを受ける、該ポリペプチドの不可欠な部分である。シグナル配列は、約13及び36アミノ酸の長さを有し、かつアミノ末端に少なくとも1つの、正電荷を有する残基を含有する。シグナル配列の中央部は疎水性の高い10〜15残基の部分であり、例えば、ヌナリ、ジェイ(Nunnari,j.)ら、カレント・オピニオン・イン・セル・バイオロジー(Curr.Opin.Cell Biol.)、1992年、第4巻、p.573−580及びギルモア、アール.(Gilmore,R.)ら、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Ann.N.Y.Acad.Sci.)、1992年、第674巻、p.27−37に記載されている。シグナルペプチドのいくつかの例には、限定するものではないが、VHCAMP、CD40、CD40L又はTNF−Rのシグナルペプチドが挙げられる。シグナルペプチドは標的細胞の細胞膜に組み込まれると切断される。さらに、IgG様タンパク質のシグナル配列のような異種のシグナル配列が使用されうることも企図される。
【0109】
<ヒンジ領域>
本明細書中に開示されるようなIL13CARは、IL13リガンドドメイン(抗原結合ドメイン)と膜貫通ドメインとの間に配置された、ヒンジ領域又はヒンジドメインとも呼ばれるスペーサー領域を含むことが可能である。本開示に包含されるIL13CARは、ヒンジ領域を含む場合もあれば、含まない場合もある。目下記載されるCARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインが抗原認識を容易にするために様々な方向に配向することを可能にするのに十分な可撓性を一般に有する、ペプチド配列である。当業者には十分理解されるように、他の適切なスペーサーが設定されることも可能である。例えば、短いオリゴペプチド又はポリペプチドのリンカー(例えば長さ2〜10アミノ酸)が、CARの膜貫通ドメインと細胞質領域との間の連結を形成してもよい。ヒンジ領域の例は、免疫グロブリン由来のヒンジ領域(例えばIgG1のヒンジ領域)であり、限定するものではないが、免疫グロブリン様のタンパク質又はドメイン由来のヒンジ領域、免疫グロブリンのCH2CH3領域、及びCD3の一部が挙げられる。一実施形態では、ヒンジ領域はCD8アルファ鎖由来のIg様ドメインを含む。
【0110】
IL13CARの一実施形態では、ヒンジ領域は配列番号27のアミノ酸配列を含むか又は同配列からなる。別例として、ヒンジ領域は、配列番号27と95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一である配列を含むか又は同配列からなる。本開示による核酸はヒンジ領域をコードする。一実施形態では、ヒンジ領域をコードする核酸は配列番号12を含む。一実施形態では、IL13CARをコードする核酸は、配列番号12と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一である核酸を含む。
【0111】
<膜貫通ドメイン>
本明細書中に記載されるように、CARは1つ以上の膜貫通ドメインを含む。典型的には、膜貫通ドメインは、膜の両側を架け渡す疎水性領域(例えば疎水性アルファヘリックス)である。様々な膜貫通ドメインのうち任意のものが使用可能である。適切な膜貫通ドメインの例には、限定するものではないが、CD3(例えばCD3−ゼータ膜貫通ドメイン)又はCD28膜貫通ドメインが挙げられる。膜貫通ドメインは天然又は組換えの供給源のいずれかに由来することができる。供給源が天然のものである場合、ドメインは任意の膜結合型又は膜貫通型のタンパク質に由来しうる。1つの態様では、膜貫通ドメインは、CARが標的に結合済みであるときは常に細胞内ドメインにシグナル伝達を行うことができる。本発明に特に有用な膜貫通ドメインには、少なくとも、例えばT細胞受容体のアルファ、ベータ若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通領域を挙げることができる。
【0112】
一実施形態では、IL13CARの膜貫通ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖の少なくとも一部分、例えば配列番号28を含むか、又はヒトCD3ゼータ鎖の少なくとも一部分からなる。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号28と95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一である配列を含むか又は前記配列からなる。本開示による核酸は膜貫通ドメインをコードする。一実施形態では、膜貫通ドメインをコードする核酸は、配列番号14、又は配列番号14と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは99.5%同一である核酸を含む。
【0113】
<細胞質シグナル伝達ドメイン>
本明細書中に記載されるように、IL13CARは、抗原が結合した後にT細胞に対して活性化及び/又は刺激シグナル(例えば、T細胞の活性化、始動、増殖、存続性及び/又は増幅、並びに腫瘍抗原に対するT細胞応答(例えば細胞傷害性に必要なシグナル)をもたらすもの)を伝達する細胞質ドメインを有する。細胞質ドメインは、1つ以上のシグナル伝達ドメイン(例えば共刺激ドメイン)、及び/又は、T細胞受容体の、又はT細胞受容体に関連した、1つ以上の活性化ドメインを含む。適切な細胞質シグナル伝達ドメインの例には、限定するものではないが、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有するCD3−ζ(CD3−ゼータ)、FcεRIγ、CD28(例えば、キメラCD28)、4−IBB(CD137)、DAP10、OX40(CD134)、CD4、CD27、CD244、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、白血球C末端SRCキナーゼ(LCK)、及びCD137の細胞質シグナル伝達ドメインが挙げられる(例えば、サデライン(Sadelain)ら、キャンサー・ディスカバリー(Cancer Discov)、2013年、第3巻、第4号、p.388−398;リー(Lee)ら、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)、2012年、第18巻、第10号、p.2780−2790)。1つ以上のこれらの細胞質ドメインの存在により、ZAP70、TNF受容体関連因子1(TRAF1)、PI3K及び成長因子受容体結合タンパク質2(GRB2)と、CARの細胞質ドメイン内の要素との会合によって経路を始動させ、シグナル伝達中間体の発動及び遺伝子転写をもたらすことが可能である。
【0114】
「共刺激ドメイン」又は「共刺激シグナル伝達ドメイン」は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子とは、抗原に結合するとTリンパ球の効率的な活性化及び機能に必要な第2のシグナルを提供する、抗原受容体又はFc受容体以外の細胞表面分子である。共刺激ドメインは、例えばCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを通した細胞への活性化シグナルをもたらす立体配座変化を生じる。共刺激リガンドには、限定するものではないが、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、誘導性共刺激イガンド(igand)(ICOS−L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、M1CB、HVEM、リンフォトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、及びB7−H3と特異的に結合するリガンドを挙げることができる。IL13CARに1つ以上の共刺激ドメインを含めることにより、IL13CARを発現するT細胞の効力及び増殖が増強されうる。一実施形態では、共刺激ドメインはさらに、数ある中でも特に、T細胞上に存在する共刺激分子、例えば、限定するものではないがCD27、CD28、4−IBB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA−1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7−H3、CD83と特異的に結合するリガンド、と特異的に結合する抗体も包含する。
【0115】
当業者には明白であろうが、IL13CARは任意の数の活性化ドメイン及び/又は刺激ドメインを有することができる。シグナル伝達ドメインは各々、ペプチド結合によって連結されてIL13CAR構築物の細胞質ドメインを形成する。1つの態様では、IL13CARは活性化ドメイン及び刺激ドメインを有する。別の態様では、IL13CARは1、2、3、4、5個等の活性化ドメイン及び1、2、3、4、5個等の刺激ドメインを有する。
【0116】
一実施形態では、本開示のIL13CARは、ヒトCD28タンパク質及び/又はヒトCD3−ゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、IL13CARは、CD28及びCD3−ゼータ鎖シグナル伝達ドメインをいずれも含み、CD28共刺激ドメインはCD3−ゼータシグナル伝達ドメインのN末端側にある。さらに、CD3−ゼータドメインがCD28共刺激ドメインのN末端側にあるCAR細胞質ドメインも企図される。本明細書中に記載されるように、CD28共刺激ドメインは配列番号29の配列を含む。CD3−ゼータシグナル伝達ドメインは配列番号30の配列を含むか、又は前記配列からなる。本開示による核酸はCD28共刺激ドメインをコードする。一実施形態では、CD28共刺激ドメインをコードする核酸は配列番号16からなる。本開示による核酸はCD3−ゼータシグナル伝達ドメインをコードする。一実施形態では、CD3−ゼータシグナル伝達ドメインをコードする核酸は配列番号18からなる。これらのシグナル伝達ドメインはそれぞれ、1つ以上の欠失、挿入、又は点突然変異(天然のもの又は人為的なもの)であって各ドメインのシグナル伝達機能が1つ以上の欠失、挿入、又は点突然変異を含有していないタンパク質のシグナル伝達機能とほぼ同じである、欠失、挿入、又は点突然変異を含有することができる。
【0117】
一実施形態では、IL13CARの細胞質ドメインは、配列番号1のヌクレオチド673〜1140、又は配列番号1のヌクレオチド673〜1143を含む核酸配列によってコードされる。別の実施形態では、IL13CARは、配列番号4のアミノ酸残基221〜376を含む細胞質ドメインを含む。
【0118】
図1Aは、IL13リガンドがE13K置換及びR109K置換を含有しているバリアントであるIL13CAR構築物の実施形態を示している。
<薬物抵抗性ポリペプチド>
本開示は、少なくとも部分的には、上記に詳述されたような脳腫瘍細胞に対して選択的なCARタンパク質と、薬物抵抗性ポリペプチドとの両方をコードしている核酸であって、CAR及び薬物抵抗性ポリペプチドの両方の発現ががんを治療するのに有用である核酸に関する。例えば、CAR及び薬物抵抗性ポリペプチドは、化学療法剤及び/又は化学療法剤の細胞毒性を増強する作用薬を用いた治療を受けている対象者に投与される細胞において発現させることが可能である。化学療法剤の例には、悪性神経膠腫(例えば多形性神経膠芽腫(GBM))を治療するために一般に使用される、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロスウレア(nitrosurea)(BCNU又はカルムスチン)、ホテムスチン、ロムスチン及びテモゾロミド(TMZ)が挙げられる。いくつかの化学療法剤の細胞毒性作用は、致死的な鎖内架橋を形成する再編成をなす能力を有しているO
6−メチルグアニン傷害の形成を伴う。しかしながらこれらのメチル化剤の有効性は、処理された細胞のDNAから細胞毒性のO
6−アルキルグアニン付加物を取り除くタンパク質であるDNA修復タンパク質O
6−メチルグアニンDNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)の、腫瘍での過剰発現により、限定的である。したがって、高レベルのMGMTを発現する腫瘍細胞は、TMZ化学療法による殺滅に対して部分的又は完全に抵抗性である。メチル化剤の効力の低減を防止する1つの手段は、MGMTの阻害剤、具体的にはO
6−ベンジルグアニンを用いてTMZ化学療法を受けている対象者を治療することである。しかしながら、O
6−ベンジルグアニンの投薬は、造血細胞に対する同剤の毒性作用により制限されている。
【0119】
テモゾロミド(TMZ)は、T細胞を含む造血細胞に対する細胞毒性効果を有する抗神経膠腫化学療法薬である。FDAにより指示されるようなTMZの標準投薬量、かつ従って抗神経膠腫治療における不可避なステップは、TMZが腫瘍細胞を破壊するのとまさしく同じ様式で、T細胞のDNAをメチル化することによりT細胞を殺滅する(セングプタ(Sengupta)ら、クリニカル・アンド・ディベロプメンタル・イムノロジー(Clin Dev Immunol)、2012年、p.831090)。しかしながら、細胞における野性型MGMTの過剰発現又は1つ以上のMGMT突然変異体(例えばG156A;P140K)の発現は、その細胞をTMZのようなメチル化剤から保護するであろうことが示されている(ウールフォード(Woolford)ら、ザ・ジャーナル・オブ・ジーン・メディシン(J Gene Med)、2006年、第8巻、第1号、p.29−31)。従って、上記の核酸によってコードされる薬物抵抗性ポリペプチドは、TMZに対する抵抗性を付与するMGMT又はMGMTバリアントである。これらのTMZ抵抗性バリアントには、限定するものではないが、P140K−MGMT(配列番号33)、P140K−MGMT(配列番号43)、G156A−MGMT(配列番号38)、MGMT−2(配列番号39)、MGMT−3(配列番号40)及びMGMT−5(配列番号41)が挙げられる(フォンテス(Fontes)ら、モレキュラー・キャンサー・セラピューティクス(Mol Cancer Ther)、第5巻、第1号、p.121−128)。随所に記載されたMGMTバリアント中のアミノ酸置換についての表示部位(場所)(例えばP140K及びG156A)は、配列番号33の配列に基づいたアミノ酸部位である。MGMT−2バリアントは、S152H、A154G、Y158H、G160S及びL162V置換を有する。MGMT−3バリアントは、C150Y、A154G、Y158F、L162P及びK165R置換を有する。MGMT−5バリアントは、N157T、Y158H及びA170S置換を有する。
【0120】
本明細書中において開示及び使用される構築物について特に好ましいのは、P140K−MGMTバリアントである。本開示による核酸はMGMTバリアントをコードする。一実施形態では、P140K−MGMTをコードする核酸は配列番号22からなる。同様に企図されるのは、G156A−MGMT(配列番号38)、MGMT−2(配列番号39)、MGMT−3(配列番号40)又はMGMT−5(配列番号41)をコードする核酸であって、各々がIL13CAR−MGMT構築物中に存在しうる。同様に企図されるのは、配列番号43(P140K点突然変異を有しているGenBank登録番号NP_002403)、及びG156A−MGMT(配列番号38)、MGMT−2(配列番号39)、MGMT−3(配列番号40)又はMGMT−5(配列番号41)の突然変異に相当する任意の点突然変異を含むMGMTタンパク質配列である。
【0121】
本明細書中に開示されたキメラ核酸配列によってコードされたMGMT又はそのバリアントは、核酸配列のIL13CARタンパク質をコードする部分の下流又は上流に位置することが可能である。一実施形態では、このキメラ核酸配列はモノシストロニックであって、構築物は単一の転写物の転写を駆動するための単一のプロモーター配列を含み、該転写物が次に翻訳されて単一タンパク質となり該タンパク質が後に切断される。このモノシストロニック構築物の使用には、IL13CARタンパク質とMGMTタンパク質との間に配置された自己切断要素が必要である。例えば、キメラ核酸配列は、宿主細胞において発現された時、最初に単一タンパク質であってN末端→C末端の方向にCAR(例えば上述のIL13 CAR)、自己切断ペプチド、及び本明細書中に記載されたMGMTタンパク質又はMGMTバリアントを含む単一タンパク質を生じる。このタンパク質はその後、切断されて個別のCARタンパク質及びMGMTタンパク質を生じる。CARタンパク質はプロセシングを受けて細胞表面に提示される一方、MGMTタンパク質は細胞核内に保持されることが可能である。別例の構築物は、N末端→C末端の方向に、MGMTタンパク質、自己切断タンパク質、及びCARを含む。
【0122】
一実施形態では、CARポリペプチド及びMGMTポリペプチドの部分は自己切断ペプチドによって隔てられる。自己切断配列の一例は、口蹄疫ウイルス由来の2A配列を含む2A要素である。典型的な実施形態では、自己切断配列は配列番号32の配列を含むか又は該配列からなる。
【0123】
別例の実施形態では、上述のようなCARと上述のようなMGMT又はそのバリアントとの両方をコードする核酸配列はポリシストロニックであって、該配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)のようなタンパク質をコードしない配列によって隔てられた、CARをコードする核酸配列とMGMT又はそのバリアントをコードする核酸配列とを含む。使用可能なIRES配列の例には、限定するものではないが、脳脊髄炎ウイルス(EMCV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、ヒトライノウイルス(HRV)、コクサッキーウイルス(CSV)、ポリオウイルス(POLIO)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、及びペスチウイルス(例えば豚コレラウイルス(HOCV)及びウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV))のIRES要素が挙げられる(例えば、レ(Le)ら、ヴァイラス・ジーンズ(Virus Genes)、1996年、第12巻、p.135−147、;及びレ(Le)ら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nuc.Acids Res.)、1997年、第25巻、p.362−369を参照のこと、前記文献はそれぞれその全体が参照により組込まれる)。
【0124】
ポリシストロニックなキメラ核酸の別例の実施形態は、IL13CARをコードする核酸配列と、MGMT又はそのバリアントをコードする核酸配列との間に第2のプロモーターが配置されているものである。この実施形態では、自己切断ペプチドをコードする核酸配列は存在しない。
【0125】
さらに企図されるのは、IL13CAR及びMGMTバリアントをコードする核酸がそれぞれ個別の核酸ベクター内にあることである。すなわち、本明細書中に記載されるようなIL13CARをコードする核酸を含む第1のベクターと、本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質をコードする第2のベクターとを含む系又はキットも企図される。
【0126】
当業者には十分理解されるように、少なくともIL13CARタンパク質及びMGMTタンパク質又はそれらのバリアントをコードする核酸配列は、宿主細胞におけるCAR及び/又はMGMTの発現及び機能を促進及び/又は増強するための追加の構成要素をさらに含むことができる。例えば、CARは、翻訳を開始する(1つ以上の)配列(例えば、コザック配列及び/又はプロモーター配列)、並びに相同組換えのための配列(レトロウイルスの5’LTR;レトロバイアル(retrovial)3’LTR)をさらに含むことができる。コザック配列は、本明細書中に記載されるようなIL13CAR−2A−MGMTをコードする核酸配列を含むキメラ核酸構築物において使用されうる。
【0127】
本開示による使用のためのキメラ核酸配列は、5’→3’の方向に次の要素すなわちコザック配列、シグナル配列をコードする核酸、IL13リガンドをコードする核酸、ヒンジ領域をコードする核酸、膜貫通ドメインをコードする核酸、CD28共刺激(シグナル伝達)ドメインをコードする核酸、CD3−ゼータシグナル伝達ドメインをコードする核酸、自己切断ペプチド(例えば2Aペプチド)をコードする核酸、及びMGMTタンパク質をコードする核酸であって、それぞれ上述されたもの、を合わせてライゲーション又は連結することにより生成される。キメラ核酸配列は、上記の要素を含みかつコードする単一配列を合成することにより生成可能である。別例として、上記の要素がそれぞれ当業者に既知の方法を用いて個別に生成されることも可能である。例えば、要素はそれぞれ、各要素の5’端及び3’端に必要に応じて制限エンドヌクレアーゼ部位を生成するように設計されたPCRを使用して増幅され、かつ個々の要素は適切なエンドヌクレアーゼで消化されて所望の構築物を得るために共にライゲーションされた。IL13CAR−P140KMGMT構築物を生成するための本方法の結果として、短いリンカーペプチドが個々の要素の間に存在する。
【0128】
例えば、2、3、4、5又は6個のアミノ酸をコードする核酸が、リガンドドメインとヒンジ領域との間、ヒンジ領域と膜貫通ドメインとの間、膜貫通ドメインとCD28共刺激ドメインとの間、CD28共刺激ドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間、CD3−ゼータシグナル伝達ドメイン及び/又は自己切断ペプチドの間に、配置されることが可能である。
【0129】
典型的な実施形態では、IL13CARは、2個のアミノ酸プロリン−アルギニンからなる、リガンドとヒンジドメインとの間のリンカーを含む。ヒンジ領域と膜貫通ドメインとの間のリンカーはグルタミン−リジンである。膜貫通ドメインとCD28共刺激ドメインとの間のリンカーはバリン−トレオニンである。CD28共刺激ドメインとCD3−ゼータシグナル伝達ドメインとの間のリンカーはトレオニン−アルギニンである。CD3−ゼータシグナル伝達ドメインと2Aペプチドとの間のリンカーは、グルタミン−プロリン−アラニン−アラニン−アラニンである。上述のリンカーはそれぞれ、他のリンカーとは無関係にIL13CARタンパク質中に存在する場合もあれば存在しない場合もあることが企図される。
【0130】
従って、T細胞のような宿主細胞をトランスフェクトするのに使用するための、及びIL13Rα2を発現しておりかつTMZに曝露される細胞の生育を阻害又は防止するのに使用するための、IL13CAR−P140KMGMT構築物の好ましい実施形態には、限定するものではないが、IL13(WT)CAR−P140KMGMT(配列番号1のヌクレオチド配列;配列番号4のアミノ酸配列);IL13(E13Y)CAR−P140KMGMT(配列番号2のヌクレオチド配列;配列番号5のアミノ酸配列);及びIL13(E13K.R109K)CAR−P140KMGMT(配列番号3のヌクレオチド配列;配列番号6のアミノ酸配列)が挙げられる。
図2Aは、IL13(E13K.R109K)CAR−P140KMGMT構築物の概略図を提示している。これらのIL13CAR−P140KMGMT構築物の追加の実施形態には、限定するものではないが、タンパク質IL13(WT)CAR−P140KMGMT(配列番号45)、IL13(E13Y)CAR−PAR140KMGMT(配列番号46)、及びIL13)E13K.R109K)CAR−P140KMGMT(配列番号47)をコードするものが挙げられる。
【0131】
当業者には十分理解されるであろうが、本明細書中に開示されるようなシグナルペプチド、IL13リガンド、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、及びCD28共刺激ドメイン、CD3−ゼータシグナル伝達ドメイン、自己切断ペプチドリンカー並びにMGMTタンパク質又はそのバリアントをコードする核酸配列はそれぞれ、コードされるタンパク質には影響することなくコドン縮重を原因とした変化を有することが可能である。さらに、ポリペプチド配列も、例えば保存的なアミノ酸置換などにより、明示的に記述されたタンパク質の機能にはあまり影響することなく、変化を有することが可能である。従って、本明細書中でさらに企図されるのは、本明細書中に記載されたヌクレオチド配列それぞれのバリアントであって、本開示の核酸配列が、配列番号1〜3、7〜24及び34〜35のそれぞれと少なくとも75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一である配列を含むようなバリアントである。同様に、本明細書中でさらに企図及び開示されるのは、配列番号4〜6、25〜33、36〜41及び43のそれぞれと少なくとも75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%同一であるポリペプチドである。
【0132】
2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の同一性(%)は、該配列を最適な比較を目的としてアラインすることにより決定可能である(例えば、ギャップが第1の配列の配列中に導入されることが可能である)。次いで対応する位置のヌクレオチド又はアミノ酸が比較され、2つの配列間の同一性(%)は、それらの配列によって共有される同一な位置の数の関数である(すなわち、同一性(%)=(同一な位置の#/位置の合計#)×100)。ある実施形態では、比較の目的でアラインされるアミノ酸又はヌクレオチド配列の長さは、参照配列、例えば
図7A(配列番号1)、7B(配列番号4)、8A(配列番号2)、8B(配列番号5)、9A(配列番号3)及び9B(配列番号6)に提供された配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。2つの配列の実際の比較は、例えば数学的アルゴリズムを使用して、良く知られた方法によって遂行可能である。そのような数学的アルゴリズムの好適で非限定的な例は、カーリン(Karlin)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、1993年、第90巻、p.5873−5877に記載されている。そのようなアルゴリズムは、シェーファー(Schaffer)ら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、2001年、第29巻、p.2994−3005に記載されるようなBLASTN及びBLASTXプログラム(バージョン2.2)に組み込まれる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばBLASTN)のデフォルトパラメータを使用可能である。一実施形態では、検索されるデータベースは非冗長性の(NR)データベースであり、配列比較用のパラメータは以下すなわち:フィルタ処理なし;期待値10;ワードサイズ3;マトリックスはBLOSUM62;及び、ギャップコストは存在11及び伸展1、に設定可能である。別の実施形態では、2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチドの間の同一性(%)は、対象とするポリペプチド又はポリヌクレオチドの全長にわたって決定される。
【0133】
配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの、別の好ましい非限定的な例は、マイヤーズ(Myers)及びミラー(Miller)、コンピュータ・アプリケーションズ・イン・ザ・バイオサイエンシズ(CABIOS)、1989年のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれるが、該プログラムは、GCG配列アラインメント・ソフトウェア・パッケージ(米国カリフォルニア州サンディエゴのアクセルリス(Accelrys))の一部である。アミノ酸配列の比較のためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120の残基重み付け表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用可能である。配列解析用の追加のアルゴリズムは当分野において知られており、トレリス(Torellis)及びロボッティ(Robotti)、コンピュータ・アプリケーションズ・イン・ザ・バイオサイエンシズ(Comput.Appl.Biosci.)、1994年、第10巻、p.3−5に記載されているようなADVANCE及びADAM;並びにピアソン(Pearson)及びリプマン(Lipman)、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci USA)、1988年、第85巻、p.2444−8に記載されているFASTAが挙げられる。
【0134】
別の実施形態では、2つのアミノ酸配列の間の同一性(%)は、Blossom63行列又はPAM250行列のいずれか、並びにギャップ加重12、10、8、6、又は4、及び長さ加重(length weight)2、3、又は4を使用して、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて遂行可能である。さらに別の実施形態では、2つの核酸配列の間の同一性(%)は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して、ギャップ加重を50、及び長さ加重(length weight)を3として遂行可能である。
【0135】
ポリペプチド間の類似性は、典型的には保存的アミノ酸置換によって決定される。そのような置換は、ポリペプチド中の所与のアミノ酸を似た特性の別のアミノ酸によって置換するものである。保存的置換は、表現型上はサイレントである可能性が高い。保存的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸であるAla、Val、Leu、及びIleの中の1つを別のものとする置き換え;ヒドロキシル残基であるSer及びThrの相互交換;酸性残基であるAsp及びGluの交換;アミド残基Asn及びGlnの間の置換;塩基性残基であるLys及びArgの交換;並びに芳香性残基であるPhe及びTyrの中での置き換えである。どのアミノ酸変化が表現型上サイレントである可能性が高いかについての手引きは、ボウイ(Bowie)、サイエンス(Science)、1990年、第247巻、p.1306−1310に見出される。
【0136】
バリアントポリペプチドは、1つ以上の置換、欠失、挿入、転位、融合、及び切断又はこれらのうち任意のものの組み合わせによるアミノ酸配列の違いを有することが可能である。さらに、バリアントポリペプチドは、完全に機能性(例えば細胞を感染させ、かつ子ウイルスを生産する能力)を有することも可能であるし、1つ以上の活性(例えば子ウイルスを生産する能力)において機能を欠くことも可能である。完全に機能性のバリアントは、典型的には、保存的な変異又は重要でない残基若しくは重要でない領域における変異のみを含有する。機能性のバリアントはさらに、機能に変化をもたらさないか又は軽微な変化しかもたらさない類似アミノ酸の置換も含有することが可能である。別例として、そのような置換はある程度まで機能に正又は負の影響を及ぼす場合もある。非機能性のバリアントは、典型的には、1つ以上の非保存的なアミノ酸置換、欠失、挿入、転位、若しくは切断を含有するか、又は重要な残基若しくは重要な領域における置換、挿入、転位、若しくは欠失を含有する。
【0137】
機能にとって不可欠なアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニンスキャニング突然変異誘発のような、当分野で既知の方法によって同定可能である(カニングハム(Cunningham)ら、サイエンス(Science)、1989年、第244巻、p.1081−1085)。後者の手法は分子内の残基それぞれにおいて単一のアラニン突然変異(1分子当たり1突然変異)を導入する。その後、結果として生じる突然変異体分子はin vitroで生物学的活性に関して試験される。ポリペプチドの活性にとって重要な部位も、結晶化、核磁気共鳴、又はフォトアフィニティーラベリングのような構造解析によって決定可能である(スミス(Smith)ら、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、1992年、第224巻、p.899−904;及びデ・ヴォス(de Vos)ら、サイエンス(Science)、1992年、第255巻、p.306−312を参照のこと)。
【0138】
本明細書中でさらに開示されるのは、配列番号4、5又は6のアミノ酸1〜146の配列として本明細書中に記載されたIL13CARタンパク質を含むか又は該タンパク質からなる、ほぼ純粋なポリペプチド、及び配列番号4、5又は6のアミノ酸1〜146の配列に対して好ましくは少なくとも75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するポリペプチド、並びに、配列番号1のアミノ酸400〜606の配列として本明細書中に記載されたP140KMGMTバリアント、及び配列番号1のアミノ酸400〜606の配列に対して、本明細書中に記載されたBLASTプログラム及びパラメータを使用して決定されるように好ましくは少なくとも75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有しているポリペプチドを含む組成物である。別の実施形態では、ポリペプチドの例には、配列番号4、5及び/又は6を含むか又は配列番号4、5及び/又は6からなる、ほぼ純粋なポリペプチド;並びに、本明細書中に記載されたBLASTプログラム及びパラメータを使用して決定されるように、好ましくは少なくとも75%、80%、82%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列番号4との配列類似性を有するポリペプチドが挙げられる。
【0139】
特定の態様では、本開示は配列番号1(IL13 CAR−P140KMGMT)、配列番号2(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号3(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)又はこれらの組み合わせによってコードされた単離ポリペプチドに関する。他の態様では、本開示は、ポリペプチド(配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号45、配列番号46、配列番号47又はこれらの組み合わせのアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドに関する。
【0140】
脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原に対する1つ以上のリガンド(例えば抗体)を含むT細胞受容体を含むCARポリペプチドも企図される。特定の態様では、CARポリペプチドは脳腫瘍を治療するのに有用な1つ以上の追加の作用物質をさらに含む。他の態様では、本発明は単離ポリペプチド並びにそのフラグメント、誘導体、及びバリアントのほかに、本明細書中に記載されたヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチド(例えば他のバリアント)に関する。本明細書中で使用されるように、用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを指すが、特定の長さを指すものではなく;よって、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質がポリペプチドの定義に含まれる。
【0141】
ポリペプチドは既知のタンパク質合成方法を使用して合成可能である。一実施形態では、ポリペプチドは組換えDNA及び組換えタンパク質の発現及び精製技法によって生産される。例えば、ポリペプチドをコードする核酸分子が発現ベクター中にクローニングされ、該発現ベクターが宿主細胞に導入され、該宿主細胞中でポリペプチドが発現され、所望のタンパク質が精製されてパッケージング及び投与のために製剤化される。
【0142】
本明細書中で使用されるように、ポリペプチドは、組換え若しくは非組換え細胞から単離された場合には物質をほとんど含まないときに、又は化学合成された場合には前駆体化学物質若しくは他の化学物質を含まないときに、「単離された」、「ほぼ純粋な」、又は「ほぼ純粋であり単離された」と言われる。加えて、ポリペプチドは、通常は細胞内において関連のない別のポリペプチドに(例えば「融合タンパク質」中で)接合されて、なおも「単離された」、「ほぼ純粋な」、又は「ほぼ純粋であり単離された」状態であることが可能である。単離された、ほぼ純粋な、又はほぼ純粋であり単離されたポリペプチドは、例えば、本明細書中に記載されたアフィニティー精製技法、及び本明細書中に記載されかつ当業者に知られた他の技法を使用して、得られうる。
【0143】
本発明のポリペプチドは均質になるように精製可能である。しかしながら、当然のことであるがポリペプチドが均質になるまで精製されていない調製物も有用である。重要な特徴は、かなりの量の他の構成成分が存在する状態であっても該調製物がポリペプチドの所望の機能を可能にするということである。よって、本発明は様々な程度の純度を包含する。一実施形態では、「物質をほとんど含まない」という言葉には、約30%未満(乾燥重量比)の他のタンパク質(すなわち混在タンパク質)、約20%未満の他のタンパク質、約10%未満の他のタンパク質、約5%未満、又は約1%未満の他のタンパク質を有しているポリペプチドの調製物が含まれる。
【0144】
ポリペプチドが組換え生産される場合、該ポリペプチドは培地をほとんど含まないということも可能である、すなわち、培地はポリペプチド調製物の体積の約20%未満、約10%未満、又は約5%未満に相当する。「前駆体化学物質又は他の化学物質をほとんど含まない」という言葉には、ポリペプチドの合成に関与する前駆体化学物質又は他の化学物質から分離されているポリペプチドの調製物が含まれる。一実施形態では、「前駆体化学物質又は他の化学物質をほとんど含まない」という言葉には、約30%未満(乾燥重量比)の前駆体化学物質若しくは他の化学物質、約20%未満の前駆体化学物質若しくは他の化学物質、約10%未満の前駆体化学物質若しくは他の化学物質、又は約5%未満の前駆体化学物質若しくは他の化学物質を有しているポリペプチドの調製物が含まれる。
【0145】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1、3、及び/又は5の核酸分子並びにその相補体及び一部分によってコードされたアミノ酸配列を含む。本発明のポリペプチドはさらに、配列番号1、3及び/又は5のヌクレオチド配列を含む核酸分子並びにその相補体及び一部分によってコードされたポリペプチドに対してかなりの相同性を有しているフラグメント及び配列バリアントをも包含する。
【0146】
[核酸発現構築物]
本開示の別の態様は、核酸発現構築物すなわちベクター、レトロウイルスベクター及び/又はレトロウイルス粒子、並びにこれらの使用に関する。当業者に既知の組換えDNA技術の方法が、本明細書中に詳細に記載されるようなIL13CAR、自己切断ペプチド、及びMGMTバリアントをコードするキメラ核酸配列を設計及び生成するために使用される。キメラ核酸構築物はその後、例えば該構築物の配列を確認するためのシーケンシングを可能にするために、プラスミドベクター中にクローニングされる。所望の配列が確認されると、キメラ核酸構築物は哺乳動物細胞のトランスフェクションのためのレトロウイルス粒子を生産するために使用される。従って、本明細書中に記載されるような配列番号1〜3並びに配列番号7〜24、34及び/又は34〜35の組み合わせの核酸配列を含むキメラ構築物が、その後のレトロウイルス粒子中へのパッケージングのためのそのようなプラスミドベクター中にクローニングされる。特定の態様では、キメラ構築物及びプラスミドベクターは、上述のような配列番号1、配列番号2及び/又は配列番号3を含む1つ以上の核酸配列を含む。IL13(WT)CAR−P140KMGMT配列(配列番号1)、IL13(E13Y)CAR−P140KMGMT(配列番号2)、又はIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMT配列(配列番号3)を含有するプラスミドベクターは、レトロウイルス粒子の生産(実施例2)に先立って、本明細書中に記載されたフラグメントを実施例1に記載されるようにしてpUC57ベクター中に、次にpMFGベクター中にクローニングすることにより生成された。
【0147】
図1Bは、MGMT遺伝子がまだ導入されていないIL13CAR構築物を含むプラスミドベクターを示している。
図2Bは、同じプラスミド骨格であってIL13CAR構築物を含有しかつさらにIL13CARをコードする配列の下流にP140KMGMTをコードする配列も含有するものを示している。
【0148】
別例の実施形態では、本明細書中に記載されるようなIL13CARをコードする核酸は第1のベクターにクローニングされ、本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質をコードする核酸は第2のベクターにクローニングされる。従って、本開示はさらに、本明細書中に記載されるようなIL13CARをコードする核酸を含む第1のベクター(プラスミドベクター、発現ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターなど)と、本明細書中に記載されるようなMGMTタンパク質をコードする核酸を含む第2のベクター(プラスミドベクター、発現ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターなど)とについて説明する。
【0149】
適切な核酸構築物の例には、プラスミド(例えば環状の二本鎖DNAループ)及びウイルスベクター(例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター)が挙げられる。ある種のベクターは、該ベクターが導入される宿主細胞の中で自己複製することができる(例えば細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及び哺乳動物のエピソームベクター)。その他のベクター(例えば哺乳動物の非エピソームベクター)は、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれ、これにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクター、発現ベクターは、該ベクターが作動可能なように連結された核酸の発現を導くことが可能である。一般に、組換えDNA技法における発現構築物はプラスミドの形態であることが多い。しかしながら、本発明は、同等な機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損性のレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)のような他の形態の発現ベクターを含むように意図されている。
【0150】
本発明の好ましい組換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸分子の発現に適した形態の本発明の核酸分子を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現されるべき核酸配列に作動可能なように連結された、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択された1つ以上の調節配列を備えていることを意味する。組換え発現ベクター内において、「作動可能なように連結された」とは、対象とするヌクレオチド配列が該ヌクレオチド配列の発現を(例えばin vitroの転写/翻訳系において、又はベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞において)可能にする方式で調節配列に連結されることを意味するように意図されている。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー及びその他の発現制御要素(例えばポリアデニル化シグナル)を含むように意図されている。そのような調節配列は、例えば、ゴーデル(Goeddel)、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)第185巻、ジーン・エクスプレッション・テクノロジー(Gene Expression Technology)、米国カリフォルニア州サンディエゴ、アカデミック・プレス(Academic Press)、1990年に記載されている。調節配列には、多くの種類の宿主細胞中でヌクレオチド配列の構成的な発現を導くもの、及びある一定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば組織特異的な調節配列)が含まれる。
【0151】
当業者には十分理解されることであるが、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択及び所望されるポリペプチドの発現のレベルのような要因に応じて変化することが可能である。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入されることにより、本明細書中に記載されるような核酸分子によってコードされた、融合ポリペプチドを含むポリペプチドを、生産することが可能である。
【0152】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞又は真核細胞、例えば大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウィルス発現ベクターを使用)、酵母細胞又は哺乳動物細胞(霊長類(例えばヒト)、ネズミ科動物(例えばマウス)、ネコ科動物、イヌ科動物、げっ歯動物、ヒツジ、ウシの細胞)における本発明のポリペプチドの発現のために設計されることが可能である。
【0153】
キメラ核酸構築物を含有するレトロウイルス粒子の生産は、実施例1及び2に記載されているようにIL13(E13K.R109K)CAR−P140KMGMTをコードするキメラ核酸配列を含有するように生成することに成功した。実施例及び本明細全体にわたって記載され、かつ当業者に既知の方法と組み合わされた方法を、本明細書中に記載されたようなキメラ核酸構築物のうち任意のものを含有するレトロウイルス粒子を生産するために使用可能である。該プロセスによるトランスフェクション効率は、フローサイトメトリーによってIL13リガンドの細胞表面での発現を測定することによりモニタリング可能である。IL13CAR−P140KMGMT構築物を用いて形質導入された細胞は、例えば蛍光染色細胞選別機を使用して、富化することが可能である。
図3A及び3Bは、IL13(E13K.R109K)CAR−A2−P140KMGMT構築物でトランスフェクトされたPG13細胞の富化を示す。
図3Aは、エコトロピックレトロウイルスを用いた最初の形質導入の後のIL13を発現する細胞の相対数を示す(例えば4.0%)。
図3Bは、エコトロピックレトロウイルスを用いて形質導入された細胞の富化の後のIL13を発現する細胞の相対数を示す(例えば96.6%)。細胞溶解産物のウエスタンブロット解析は、宿主細胞によるP140KMGMTタンパク質の発現を確認及び測定するための常套的な方法を使用して実施可能である。
図3Cに示されるように、IL13CAR−A2−P140KMGMT構築物を用いて形質導入された細胞の富化により、形質導入されていない細胞又は
図1A〜1Bに示されたようなIL13CAR構築物のみを発現する構築物を用いて形質導入された細胞と比較して、P140KMGMTタンパク質が過剰発現される。
【0154】
図1A及び2AはプラスミドベクターにクローニングされたIL13(E13K.R109K)CAR−P140KMGMTの概略図を提供する一方、
図1B及び2Bは宿主細胞ゲノムに組み込むための5’LTR及び3’LTRが隣接したキメラの直線的表現を示す。
【0155】
本明細書中に記載された核酸構築物は、宿主哺乳動物細胞に導入されて該細胞に腫瘍細胞殺滅機能及びTMZのようなDNAメチル化剤である化学療法薬に対する抵抗性の両方を付与する。哺乳動物の宿主細胞への核酸の導入は、例えば実施例3に記載されたようにして、例えばレトロウイルスベクターを使用して遂行される。一時的又は安定的に哺乳動物細胞に形質導入するためのレトロウイルスベクターは当分野において良く知られており、またまもなく説明されるタンパク質発現及び治療システムにおいて使用されるため以下に記載される。
【0156】
ある実施形態は、本明細書中に記載された発現系を用いてT細胞のようなプラズマ細胞を形質導入するためにウイルスベクターを使用する。ウイルスベクターの例には、限定するものではないが、MFGベクター、アデノウイルスに基づいたベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づいたベクター、レトロウイルスベクター、レトロウイルス−アデノウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のベクターが挙げられる。
【0157】
典型的には、最小限のレトロウイルスベクターは、ある種の5’LTR及び3’LTR配列と、1つ以上の対象の(標的細胞において発現されるべき)遺伝子と、1つ以上のプロモーターと、RNAのパッケージングのためのシス作用配列とを含む。本明細書中に記載されており当分野で知られているような、その他の調節配列が含まれることも可能である。ウイルスベクターは、典型的には、プラスミドであって真核細胞(例えばPG13マウス繊維芽細胞)のようなパッケージング用細胞株にトランスフェクトされることが可能であり、かつさらに典型的には細菌中における該プラスミドの複製に有用な配列を含むプラスミド中にクローニングされる。レトロウイルスベクターのようなある種のウイルスベクターは1つ以上の異種のプロモーター、エンハンサー、又は両方を使用する。ある実施形態は、ウイルスベクターの5’LTR配列と3’LTR配列との間に位置し、かつ対象とする遺伝子に作動可能なように連結された「内部」プロモーター/エンハンサーを使用する。「機能的な関係」及び「作動可能なように連結された」とは、限定するものではないが、遺伝子がプロモーター及び/又はエンハンサーに関して正確な位置及び配向にあって、プロモーター及び/又はエンハンサーが適切な調節分子と接触した時に該遺伝子の発現が影響を受けるようになっていることを意味する。パッケージング用細胞株におけるウイルスRNAゲノムの発現を調節する(例えば、増大させる、減少させる)か、感染した標的細胞における選択された対象遺伝子の発現を調節するか、又は両方であるかのいずれかの、任意のエンハンサー/プロモーターの組み合わせが使用されうる。
【0158】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合及び転写の開始を可能にするDNA配列によって形成された発現制御要素である。プロモーターは、選択された対象遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置し(典型的には約100〜1000bp以内)、該プロモーターが作動可能なように連結されているポリヌクレオチドのコード配列の転写及び翻訳を制御する、翻訳されない配列である。プロモーターは誘導型であってもよいし構成型であってもよい。誘導型プロモーターは、温度の変化のような培養条件の何らかの変化に応答して該プロモーターの制御下にあるDNAからの転写のレベルの上昇を引き起こす。
【0159】
様々なプロモーターが、該プロモーターをポリヌクレオチドのコード配列に作動可能なように連結する方法もそうであるように、当分野において既知である。本来のプロモーター配列及び数多くの異種プロモーターの両方が、選択された対象の遺伝子の発現を導くために使用されうる。ある実施形態は異種プロモーターを使用するが、これは該異種プロモーターが一般に本来のプロモーターと比較してより大量の転写及び所望のタンパク質のより高い収量を可能にするからである。
【0160】
ある種のウイルスベクターは、ウイルス粒子内へのウイルスゲノムRNAの組み込みを促進するためにシス作用性のパッケージング配列を含有する。例としてはプサイ配列が挙げられる。そのようなシス作用配列は当分野において既知である。
【0161】
ウイルスベクターの生成は、当分野で既知の任意の適切な遺伝子操作技法、例えば、限定するものではないが、制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、形質変換、プラスミド精製、PCR増幅、及びDNA塩基配列決定の標準的な技法であって、例えば、サムブルック(Sambrook)ら(モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、米国ニューヨークのコールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年)、コフィン(Coffin)ら(レトロウイルス(Retroviruses)、米国ニューヨークのコールド・スプリング・ハーバー研究所出版、1997年)及び「RNAヴァイラシズ:ア・プラクティカル・アプローチ(RNA Viruses:A Practical Approach)」(アラン・ジェイ.カン(Alan J.Cann)編、オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、2000年)に記載されたような技法を使用して遂行することが可能である。
【0162】
当分野で既知の任意の様々な方法が、ゲノムにウイルスベクターのRNA複製物を含む適切なレトロウイルス粒子を生産するために使用されうる。1つの方法として、ウイルスベクターは、該ウイルスベクターに基づいたウイルスゲノムRNAをパッケージングして所望の標的細胞特異性を備えたウイルス粒子とする、パッケージング用細胞株に導入されうる。パッケージング用細胞株は、典型的には、ウイルスゲノムRNAをウイルス粒子にパッケージングして標的細胞を感染させるのに必要なウイルスタンパク質、例えば構造タンパク質であるgag、酵素タンパク質pal、及び外被の糖タンパク質を、トランスに提供する。
【0163】
ある実施形態では、パッケージング用細胞株は、必要又は所望されるウイルスタンパク質(例えばgag、pol)のいくつかを安定的に発現しうる(例えば米国特許第6,218,181号明細書を参照されたい)。ある実施形態では、パッケージング用細胞株は、必要又は所望されるウイルスタンパク質(例えばgag、pol、糖タンパク質)のいくつか、例えば本明細書中に記載された麻疹ウイルス糖タンパク質配列をコードするプラスミドで一時的にトランスフェクトされてもよい。1つの典型的な実施形態では、パッケージング用細胞株はgag配列及びpol配列を安定的に発現し、かつ該細胞株は次にウイルスベクターをコードするプラスミド及び糖タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトされる。所望のプラスミドの導入に続いて、ウイルス粒子が回収されて、ウイルス粒子の濃縮ストックを得るための超遠心分離などにより適宜処理される。典型的なパッケージング用細胞株には、PG13(ATCC CRL−10686)、293(ATCC CCL X)、HeLa(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL−10)及びCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞株が挙げられる。
【0164】
[宿主細胞]
本発明の別の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」は、本明細書中では互換的に使用される。当然のことであるが、そのような用語は特定の対象細胞だけでなくそのような細胞の子孫又は潜在的な子孫をも指す。ある種の改変が突然変異又は外界の影響のいずれかにより次の世代に生じるかもしれないので、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない場合があるが、それでもなお本明細書中で使用されるような該用語の範囲内に含まれる。
【0165】
宿主細胞は任意の原核細胞又は真核細胞であってよい。例えば、本発明の核酸分子は、細菌細胞(例えば大腸菌)、昆虫細胞、酵母、又は哺乳動物細胞において発現させることが可能である。1つの態様では、宿主細胞は、哺乳動物細胞(霊長類(例えばヒト)、ネズミ科動物(例えばマウス)、ネコ科動物、イヌ科動物、げっ歯動物、ヒツジ、ウシの細胞)である。特定の態様では、哺乳動物細胞は免疫細胞である。さらに別の態様では、哺乳動物細胞はT細胞である。その他の適切な宿主細胞は当業者には明白である。
【0166】
本明細書中の目的のためには、T細胞は、任意のT細胞、例えば培養されたT細胞(例えば初代T細胞)、又は培養されたT細胞株由来のT細胞(例えばJurkat、SupT1など)、又は哺乳動物から得られたT細胞であってよい。哺乳動物から得られる場合、T細胞は数々の供給源から、例えば、限定するものではないが、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又はその他の組織若しくは体液から、得ることが可能である。T細胞はさらに、富化されることも可能であるし精製されることも可能である。T細胞はヒトのT細胞であってよい。T細胞はヒトから単離されたT細胞であってよい。T細胞は、任意の種類のT細胞であってよく、かつ任意の発生段階のもの、例えば、限定するものではないが、CD4
+/CD8
+二重陽性T細胞、CD4
+ヘルパーT細胞、例えば、Th
1及びTh
2細胞、CD8
+T細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞などであってよい。T細胞は、CD8+T細胞又はCD4
+T細胞であってよい。
【0167】
一実施形態では、本発明の組成物及び方法において使用される宿主細胞は、NK−92細胞(NK−92細胞株、ATCC寄託番号PTA−6672)である。
核酸構築物は従来の形質変換又はトランスフェクションの技法によって原核細胞又は真核細胞に導入可能である。本明細書中で使用されるように、用語「感染」、「形質変換」、「形質導入」、及び「トランスフェクション」は、宿主細胞に外来核酸分子(例えばDNA)を導入するための様々な当分野で認識された技法、例えばリン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン介在型トランスフェクション、リポフェクション、又はエレクトロポレーションを指すように意図されている。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適切な方法は、例えばサムブルック(Sambrook)ら、「モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)」、第2版、米国ニューヨークのCSHP、1989年及びその他の実験手引き書に見出すことが可能である。
【0168】
本発明の宿主細胞、例えば原核生物又は真核生物の宿主培養細胞は、本開示の1つ以上のCARを生産(発現)するために使用可能である。従って、本開示は、本発明の宿主細胞を使用してCARを生産する方法をさらに提供する。一実施形態では、該方法は、適切な培地中で本開示の宿主細胞(ここに本開示のポリペプチドをコードする組換え発現ベクターを導入済み)を培養して1つ以上のCARが生産される(例えば、宿主細胞の表面に発現される)ようにすることを含む。
【0169】
哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションについては、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技法に応じて、ごく一部の細胞だけがそのゲノムに外来DNAを組み込むことが知られている。これらの組み込み体を同定及び選択するために、一般に選択マーカー(例えば抗生物質抵抗性に関するもの)をコードする遺伝子が対象とする遺伝子と共に宿主細胞内に導入される。好ましい選択マーカーには、G418、ヒグロマイシン、又はメトトレキセートのような薬物に対する抵抗性を付与するものが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸分子は、本発明の核酸分子と同じベクター上で宿主細胞に導入されることも可能であるし、別のベクター上で導入されることも可能である。導入された核酸分子で安定的にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定されることが可能である(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生き残ることになる一方、他の細胞は死滅する)。
【0170】
本明細書中で例証されるように、企図されるのは免疫細胞、例えば、限定するものではないがT細胞であって、IL13CARを発現し、かつ化学療法剤テモゾロミドへの曝露に抵抗性であるものである。具体的には、本明細書中に示されるのは、上記に詳述されるようなIL13CAR(配列番号4、配列番号5又は配列番号6)及びP140KMGMT突然変異体(配列番号33)をコードしかつ発現する核酸配列を用いて形質導入されたT細胞が、TMZの存在下でIL13のみを発現するCARを発現するT細胞と比較してより高い生存率を有するということである。よって、特定の態様では、本発明は、IL13及び/又はIL13のバリアントを発現するCAR(例えば配列番号4(WT IL13 CAR)、配列番号5(IL13E13YCAR)又は配列番号6(IL13E13K.R109KCR)及び/又はR109K IL13CAR)と、細胞を化学防護(chemoprotect)するMGMT突然変異体(例えばP140KMGMT突然変異体(配列番号33、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41))とに関する。一実施形態では、細胞は、MGMTタンパク質が野性型MGMTタンパク質(配列番号49)ではないIL13CAR−A2−MGMT構築物を用いて形質導入される。
【0171】
<宿主T細胞の採取及びトランスフェクション>
高度に特異的な腫瘍の認識及び殺滅を可能にするためにキメラ抗原受容体(CAR)で遺伝子操作されたT細胞は、有望な臨床結果を経てかなりの注目を集めてきた(グラップ(Grupp)ら、ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N Eng J Med)、2013年、第368巻、p.1509−1518;ポーター(Porter)ら、ザ・ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N Eng J Med)、2011年、第365巻、p.725−733;サデライン(Sadelain)ら、カレント・オピニオン・イン・イムノロジー(Curr Opin Immunol)、2009年、第21巻、p.215−223)。CAR遺伝子を用いたT細胞の再プログラム化は、腫瘍細胞と結合して同細胞を溶解するためのMHC非依存的メカニズムを提供する。そのような改変T細胞は、別例として「デザイナーT細胞」、「T−ボディ(T−body)」又は「CAR−T細胞」とも呼ばれてきた(マ(Ma)ら、「キャンサー・ケモセラピー・アンド・バイオロジカル・レスポンス・モディファイア―ズ(Cancer Chemotherapy and Biological Response Modifiers)」、エルゼビア・サイエンス(Elsevier Science)、2002年、p.319−345;パーク(Park)ら、トレンズ・イン・バイオテクノロジー(Trends Biotech)、2011年、第29巻、p.550−557;マ(Ma)ら、ザ・プロステート(Prostate)、2014年、第74巻、p.286−296)。
【0172】
別の態様では、本開示は、脳腫瘍の1又は(one or)腫瘍抗原に対する1つ以上のリガンド(例えば抗体)を含むT細胞受容体を含むCARと、MGMTタンパク質であってCAR及びMGMTタンパク質をコードする核酸で形質導入されてTMZのようなDNAメチル化剤に曝露された細胞の生存可能性を増大させるMGMTタンパク質とを発現する細胞を生産する方法に関する。特定の態様では、本開示は、配列番号4(IL13 CAR−P140KMGMT)、配列番号5(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号6(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)又はこれらの組み合わせのアミノ酸配列を有するCARを発現する細胞を生産する方法に関する。該方法は、配列番号1(IL13(WT)CAR−P140KMGMT)、配列番号2(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)又は配列番号3(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)を含む核酸配列を細胞に導入することと;該細胞をCARが該細胞によって発現される条件下に維持することにより、配列番号4(IL13(WT)CAR−P140KMGMT)、配列番号5(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号6(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)又はこれらの組み合わせのアミノ酸配列を有するキメラ抗原受容体を発現する細胞を生産することとを含む。
【0173】
特定の態様では、核酸配列は、ウイルスベクター(例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はこれらの組み合わせ)を使用して細胞に導入される。別の態様では、細胞は、哺乳動物T細胞(例えばヒトT細胞又はマウスT細胞)のような哺乳動物細胞である。特定の態様では、細胞は、自己由来の細胞又はヒト白血球抗原(HLA)一致細胞である。さらに別の態様では、細胞は、脳腫瘍(例えば、多形性神経膠芽腫(GBM)、退形成性星細胞腫又は小児神経膠腫のような悪性度の高い神経膠腫)を有する1人以上の個体から得られる。
【0174】
したがって、さらなる態様は、本開示による少なくとも1つのCAR及び薬物抵抗性ポリペプチドを発現する組換えT細胞に関する。特に好ましい形質転換宿主細胞は、本開示による核酸構築物を含むということを特徴とする、トランスジェニックT−前駆細胞又は幹細胞である。宿主細胞及び/又は幹細胞の形質変換又は形質導入のための方法は当業者に良く知られており、例えば、エレクトロポレーション又はマイクロインジェクションが挙げられる。特に好ましい形質転換宿主細胞は患者に固有のT細胞であって、これは採取後に本開示による核酸構築物でトランスフェクトされる。本開示によれば、宿主細胞は特に、1個又は数個の細胞、好ましくはT細胞、特にCD8
+−T細胞が採取され、続いて該細胞が1つ以上の本開示による核酸構築物を用いてex vivoでトランスフェクト又は形質導入され、これにより本開示による宿主細胞が得られることにより、入手可能である。
【0175】
増殖及び遺伝子改変に先立ち、T細胞の供給源が対象者から得られる。用語「対象者」は、免疫応答が誘発されることが可能な生体(例えば哺乳動物)を含むように意図されている。対象者の例には、ヒト及び他の霊長類 イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びトランスジェニックなげっ歯動物類が挙げられる。T細胞は、数多くの供給源、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織、及び腫瘍などから得ることが可能である。本発明のある態様では、当分野で利用可能な任意の数のT細胞株が使用されうる。本開示のある態様では、T細胞は、Ficoll(商標)による分離のような当業者に知られた任意の数の技法を使用して対象者から収集された血液1ユニットから得ることが可能である。1つの好ましい態様では、個体の循環血由来の細胞はアフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的にはリンパ球、例えばT細胞、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、及び血小板などを含有する。1つの態様では、アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿分画を除去して細胞をその後の処理ステップのための適切な緩衝液又は培地中に入れるために、洗浄されうる。本発明の1つの態様では、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。別例の態様では、洗浄溶液はカルシウムを欠き、かつマグネシウムを欠く場合もあれば全てではないにせよ多数の2価カチオンを欠く場合もある。カルシウム不在下での最初の活性化ステップは活性化の拡大をもたらす可能性がある。当業者であれば容易に認識するであろうが、洗浄ステップは当業者に既知の方法によって、例えば半自動化された「フロースルー式」遠心分離機を製造業者の指示に従って使用することにより、遂行されうる。洗浄の後、細胞は、生物学的適合性を有する様々な緩衝液、又は緩衝剤の有無は問わず他の生理食塩水の中に、再懸濁されることができる。別例として、アフェレーシス試料の望ましからぬ構成成分が除去されて細胞が培地に直接再懸濁されてもよい。
【0176】
1つの態様では、T細胞は、末梢血リンパ球から、赤血球の溶解及び単球の消去により、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離によるか、又は対向流遠心溶出法(counterflow centrifugal elutriation)によって、単離される。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及びCD45RO+T細胞のような特定のT細胞亜集団は、ポジティブ又はネガティブセレクション技法によってさらに単離可能である。当業者であれば、多数回にわたるセレクションが本発明に関連して使用されることも可能であることを認識するであろう。ある態様では、セレクション手技を実施して「セレクトされない」細胞を活性化及び増殖のプロセスに使用することが望ましい場合もある。「セレクトされない」細胞はさらなる回のセレクションに供されることも可能である。
【0177】
ネガティブセレクションによるT細胞集団の富化は、ネガティブセレクションの対象となる細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせを用いて遂行可能である。1つの方法は、ネガティブセレクションの対象となる細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体の混合物を使用する、ネガティブな磁気免疫粘着(magnetic immunoadherence)又はフローサイトメトリーを介した細胞の選別及び/又は選択である。例えば、ネガティブセレクションによるCD4+細胞の富化のためには、モノクローナル抗体混合物は典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA−DR及びCD8に対する抗体を含む。ある態様では、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、及びFoxP3+を発現する調節性T細胞を、富化するか又はポジティブセレクションすることが望ましい場合がある。別例として、ある態様では、調節性T細胞は、抗C25抗体がコンジュゲートしたビーズ又は他の同様のセレクション方法によって消去される。
【0178】
<T細胞の活性化及び増殖>
望ましいCARを発現するためのT細胞の遺伝子改変の前後いずれであっても、T細胞は通常、例えば;米国特許第6,352,694号明細書、同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;同第6,867,041号明細書;及び米国特許出願公開第20060121005号明細書に記載されているような方法を使用して活性化及び増殖させることが可能である。
【0179】
トランスフェクション又は形質導入されたT細胞がIL13CARを表面膜タンパク質として所望の調節のもとに所望のレベルで発現可能であることが確立されれば、該キメラ受容体が所望のシグナル誘導を提供するべき宿主細胞において機能性を有するかどうかを決定することが可能である。続いて、形質導入されたT細胞は、対象者の抗腫瘍性反応を活性化するために対象者に再導入又は投与される。
【0180】
[医薬組成物]
さらに別の態様では、本開示は、本明細書中に記載されるような形質導入T細胞の、必要としている対象者への投与を容易にするための医薬組成物に関する。本開示による形質導入T細胞は、適切な、さらには薬学的に許容される担体又は希釈剤を用いて、医薬組成物となされることも可能であるし、in vivoの投与に適した移植物となされることも可能である。そのような組成物又は移植物を作製する手段は当分野において説明がなされている(例えば、「レミングトンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第16版、マック(Mack)、編(ed.)1980年を参照されたい)。適切な場合は、形質導入T細胞は、それぞれの投与経路のための通常の方法で、カプセル剤、溶液、注射剤、吸入薬、又はエアロゾルのような半固体又は液体の形態の調製物に製剤化されることが可能である。組成物が標的の組織若しくは器官に到達するまで該組成物の放出及び吸収を防止するか若しくは最小限にするために、又は組成物の持続放出を確実にするために、当分野で既知の手段が利用可能である。しかしながら望ましくは、細胞がキメラ受容体を発現するのを妨げない、薬学的に許容される形態が使用される。よって、望ましくは形質導入T細胞は、平衡塩類溶液、好ましくはハンクス平衡塩溶液、又は通常の生理食塩水を含有する医薬組成物となされることができる。例えば、組成物は、医薬組成物を調製するために生理学的に許容される担体又は賦形剤を用いて製剤化されることが可能である。担体及び組成物は無菌であることができる。製剤は、投与の様式に適合しているべきである。
【0181】
適切な薬学的に許容される担体には、限定するものではないが、水、塩類溶液(例えばNaCl)、生理食塩水、緩衝生食水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース又はデンプン、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどのほかに、これらの組み合わせが挙げられる。医薬調製物は、必要に応じて、補助的薬剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩類、緩衝剤、着色用、着香用及び/又は芳香用の物質などであって活性化合物と有害な反応を起こさない補助的薬剤と、混合されてもよい。
【0182】
組成物はさらに、必要に応じて、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することも可能である。組成物は、液体の溶液、懸濁物、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、又は散剤であってよい。組成物は、従来の結合剤及びトリグリセリドのような担体と共に、坐薬として製剤化可能である。経口用製剤は、標準的な担体、例えば製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。
【0183】
組成物は、常套的な手法に従ってヒトへの投与に適合した医薬組成物として製剤化されることが可能である。例えば、静脈内投与用の組成物は、典型的には無菌の等張の水性緩衝液中の溶液である。必要な場合には、組成物は、可溶化剤及び注射部位の疼痛を緩和するための局所麻酔薬も含みうる。一般に成分は、例えば、活性化合物の量が表示されたアンプル又はサシェ(sachette)のような密封容器中に、乾燥した凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として、別々に又は単位投薬形態中にともに混合されて、供給される。組成物が注入によって投与されることになっている場合、組成物は、無菌の製薬グレードの水、生理食塩水又はデキストロース/水が入っている注入用ボトルを用いて調剤されることが可能である。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルが提供されて成分が投与に先立ち混合されうるようになっていてもよい。
【0184】
これらの組成物を導入する方法には、限定するものではないが、頭蓋内、髄内、皮内、筋肉内、腹腔内、眼内、静脈内、皮下、局所、経口及び鼻腔内への導入が挙げられる。他の適切な導入方法にはさらに、遺伝子治療(下記に記載されるようなもの)、充填式(rechargeable)又は生物分解性のデバイス、粒子加速デバイス(「遺伝子銃」)及び徐放性のポリマーデバイスも含まれうる。本発明の医薬組成物はさらに、他の化合物との併用療法の一部として投与されることも可能である。
【0185】
局所への適用については、噴霧不可能な形態、局所への適用に適合性のある担体を含みかつ好ましくは水より大きな動粘性率を有する粘性〜半固体又は固体の形態が使用されうる。適切な製剤には、限定するものではないが、溶液、懸濁物、乳剤、クリーム剤、軟膏剤(ointment)、散剤、浣腸剤、ローション剤、ゾル剤、リニメント剤、軟膏(salve)、エアロゾル剤などであって、必要に応じて、滅菌されるか、又は補助的薬剤であって例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤、緩衝剤、若しくは浸透圧に影響を及ぼすための塩類などと混合されるものが挙げられる。化合物は化粧用製剤に組み込まれる場合もある。局所への適用については、同じく適切なのは、噴霧可能なエアロゾル調製物であって、活性成分が、好ましくは固体又は液体の不活性担体材料と組み合わされて、スクイーズボトル中に入っているか、又は加圧された揮発性の通常は気体の噴射剤(例えば加圧空気)との混合剤中にあるものである。
【0186】
本明細書中に記載された化合物は、中性又は塩の形態として製剤化可能である。薬学的に許容される塩には、遊離アミノ基を備えて形成されたもの、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するもの、及び遊離カルボキシル基を備えて形成されたもの、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものが挙げられる。
【0187】
[キット]
本開示はさらに、本開示の医薬組成物の成分のうち1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。そのような容器に任意選択で付随するのは、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知書であってよく、その通知書は、該機関によるヒトへの投与についての製造、販売の使用(use of sale)の承認を示すものである。該パック又はキットには、投与様式、薬物投与の順序(例えば別々に、順次又は同時に)などに関する情報を示すラベルが付されることが可能である。該パック又はキットはさらに、治療処置を行うことを患者に思い出させるための手段を備えてもよい。パック又はキットは、併用療法の単回分の単位投薬量であってもよいし、複数回分の単位投薬量であってもよい。特に、化合物は、別々に、任意の組み合わせで混合されて、単一のバイアル又は錠剤の中に存在することが可能である。ブリスターパック又はその他の投薬手段の中に結集された化合物が好ましい。本発明の目的では、単位投薬量は、各化合物の個々の薬力学によって決まる投薬量を意味するように意図され、かつFDAの承認を受けた投薬量で標準的な時間経過で投与される。
【0188】
[治療方法]
別の態様では、本開示は、治療を必要とする個体の悪性腫瘍を治療する方法であって、IL13Rα2タンパク質に対する1つ以上のリガンド(例えば抗体)を含むIL13CARと、MGMTタンパク質とを発現する1つ以上のT細胞を投与することを含む方法に関する。特定の態様では、本開示は、治療を必要とする個体の脳腫瘍を治療する方法であって、配列番号26、配列番号36又は配列番号37(リガンド)、配列番号28(TM)、配列番号29及び30(CD28及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメイン)を含み、かつ任意選択で配列番号27(ヒンジ)をさらに含むタンパク質をコードする核酸配列を担持しかつ発現する1つ以上のT細胞を投与することを含む方法に関する。別の実施形態では、核酸配列は配列番号1(IL13 CAR−P140KMGMT)、配列番号2(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号3(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)又はこれらの組み合わせを含む。1つの態様では、T細胞は自己由来のT細胞又はヒト白血球抗原(HLA)一致細胞である。別の態様では、脳腫瘍は、悪性度の高い神経膠腫、例えば悪性度の高い神経膠腫は多形性神経膠芽腫(GBM)、退形成性星細胞腫又は小児神経膠腫である。一実施形態では、本明細書中に開示された方法は有害なIL13Rα2発現に関連したがんを治療するために使用される。
【0189】
IL13Rα2を過剰発現する細胞を有することが実証されているその他のがんには、限定するものではないが、乳がん、膵臓がん、頭頚部がん、卵巣がん及び結腸直腸がんが挙げられる。別の実施形態では、がんは転移したがんである。従って、さらに企図されるのは、これらのがんのうち1つ以上を、上述のようなIL13CAR−MGMT構築物のうち1つ以上で形質導入された1つ以上のT細胞を対象者に投与することにより、治療する方法である。
【0190】
T細胞は、CARを発現し、またMGMTの過剰発現又はMGMTバリアント(例えばP140K)の薬物抵抗性からの保護を付与する突然変異体MGMTを発現するので、脳腫瘍の治療方法は、個体(脳腫瘍患者)に1つ以上の化学療法剤を順次又は同時に投与することをさらに含むことができる。換言すれば、改変T細胞は、化学療法剤の投与前、投与中又は投与後に投与される。化学療法剤の例には、テモゾロミド(TMZ)、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロスウレア(nitrosurea)(BCNU又はカルムスチン)、ホテムスチン及びロムスチンが挙げられる。特定の態様では、1つ以上のT細胞は、配列番号1(IL13 CAR−P140KMGMT)、配列番号2(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号3(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)又はこれらの組み合わせを含む核酸配列を発現し、かつ1つ以上の化学療法剤は個体に同時に投与される。特定の態様では、個体は、ヒト若しくは他の霊長類のような哺乳動物、又はマウス若しくはラットのようなげっ歯動物である。
【0191】
IL13CAR−MGMTキメラをコードして発現する構築物で形質導入されたT細胞の効力は、部分的には以下の実施例4及び5によって示されている。実施例4は、IL13CAR−2A−P140KMGMTタンパク質をコードするベクターで形質導入された単離T細胞が、P140KMGMTタンパク質の同時発現を伴わないIL13CARをコードするベクターで形質導入されたT細胞と比較して、TMZに曝露された時の抵抗性を増大させた(生存率を増大させた)ことを示している(例えば、
図5を参照されたい)。従って、構想されるのは、本明細書中に記載されたもののようなIL13CAR−MGMT構築物で形質導入された免疫細胞の生存率を増大させる方法である。典型的な実施形態では、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の核酸配列を含むレトロウイルスで形質導入されたT細胞が、TMZを用いた治療を順次又は同時に受けている脳腫瘍と診断された対象者を治療するための方法のように、提供される。
【0192】
さらなる研究から、本明細書中に開示されたIL13CAR−MGMT構築物は、対象者に投与されることが可能でありかつ対象者の生存率を増大させることが可能であるT細胞の改変にも有効であることが示される。実施例5によって示されかつ
図6に描写されるように、U251MG神経膠腫細胞を注射されたマウスは、TMZを用いて、かつIL13CAR(MGMTを伴わない)をコードする構築物又はIL13CAR−A2−P140KMGMT構築物で形質導入されたT細胞を用いて、治療された。P140KMGMTの不在下におけるIL13CARの発現はCAR T細胞の投与未実施と比較して生存率を増大させたが、IL13CAR−A2−P140KMGMTキメラをコードする核酸配列で形質導入されたT細胞とともにTMZを投与された動物が最も高い生存率を有している(
図6)。従って、本明細書中において企図されるのは、脳腫瘍と診断された対象者を治療するための方法であって、本明細書中に記載されるようなIL13CAR−MGMTタンパク質を発現する免疫細胞を対象者に投与することを含む方法である。
【0193】
T細胞及び/又は化学療法剤は、任意の適切な投与経路を使用して個体に投与されることが可能である。適切な投与経路の例には、限定するものではないが、頭蓋内、髄内、皮内、筋肉内、腹腔内、眼内、静脈内、皮下、局所、経口及び鼻腔内への送達が挙げられる。
【0194】
1つの態様では、方法は、個体から1つ以上のT細胞を入手することと、該T細胞に、本発明のキメラ核酸配列、例えば配列番号1(IL13 CAR−P140KMGMT)、配列番号2(IL−13(E13Y)CAR−P140KMGMT)、配列番号3(IL−13(E13K R109K)CAR−P140KMGMT)又はこれらの組み合わせを含む核酸配列を導入することと、をさらに含む。個体からT細胞を入手する方法は当分野で知られており、例えばプラズマフェレーシスが挙げられる。いくつかの態様では、CAR T細胞を、該細胞が例えば数十億個に達するまで実験室で生育(増殖)させる。その後、増殖したCAR T細胞の集団は患者に注入されることが可能である。注入後、T細胞は患者の体内で増加し、該細胞の遺伝子操作済み受容体の誘導で、細胞表面上に抗原を担持するがん細胞を認識して殺滅する。
【0195】
本明細書中に記載されたIL13CAR及び突然変異体MGMTを発現する宿主細胞は、治療上有効な量(すなわち、その疾患に関連した症状を改善すること、その疾患の発病を防止するか又は遅延させること、及び/又は、さらにその疾患の症状の重症度又は頻度を減少させることにより、その疾患を治療するのに十分な量)で投与される。特定の個体の障害又は状態の治療において治療上有効であろう量は、その疾患の症状及び重症度に応じて変化しうるものであり、標準的な臨床技術によって決定されることが可能である。加えて、in vitro又はin vivoのアッセイが、最適な投薬範囲を同定するのを支援するために任意選択で使用されうる。製剤中で使用される正確な用量はさらに、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度にも応じて変化することになり、かつ施術者の判断及び各患者の状況に従って決断されるべきである。有効な用量は、in vitro又は動物モデルの試験システムに由来する用量−応答曲線から推定されうる。
【0196】
望ましくは、有効な量又は十分な数の単離されたトランスフェクションT細胞又は改変T細胞が組成物中に存在して対象者に導入されて、その結果長期的で特異的な抗腫瘍性の応答が確立され、そのような治療がなければ生じたであろうよりも、腫瘍の大きさを縮小するか、又は腫瘍の成長若しくは再成長を排除する。望ましくは、対象者に投与される改変T細胞の量は、改変T細胞が存在しないことを除いて同一の条件と比較した時に、腫瘍の大きさの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は100%の減少を引き起こす。
【0197】
従って、投与される改変T細胞の量は、投与経路を考慮に入れるべきであり、かつ所望の治療反応を達成するように十分な数の形質導入T細胞が導入されるようになっているべきである。更に、本明細書中に記載された組成物に含まれる個々の活性作用薬の量(例えば、接触される各細胞あたりの量又は一定の体重あたりの量)は、様々な適用において変動することが可能である。一般に、改変T細胞の濃度は、望ましくは治療を受けている対象者に少なくとも約1×10
6〜約1×10
9個の形質導入T細胞を、さらにより望ましくは、約1×10
7〜約5×10
8個の形質導入T細胞を提供するのに十分であるべきであるが、これより多いか又は少ない任意の適切な量、例えば5×10
8個を超える細胞、又は例えば1×10
7個未満の細胞も利用することが可能である。投薬スケジュールは、確立した細胞療法(例えば、トパリアン(Topalian)及びローゼンバーグ(Rosenberg)、アクタ・ヘマトロジカ(Acta Haematol.)、1987年、第78巻、増補1、p.75−6;米国特許第4,690,915号明細書を参照のこと)を基にすることも可能であるし、代替の持続注入方策が使用されることも可能である。
【0198】
実施例
テモゾロミド抵抗性神経膠芽腫の免疫療法のためのIL13CAR−P140KMGMT
実施例1:発現プラスミドの構築
IL13(WT)CAR構築物をコードするcDNA、IL13(E13Y)CAR構築物をコードするcDNA、及びIL13(E13K.R109K)CAR構築物をコードするcDNAを、IL13(WT)CAR構築物について
図1A及び1Bに例証されるようにしてMFGレトロウイルスベクターのBamHI及びNotIクローニング部位に挿入し、ホストプラスミドであるIL13(WT)CAR−pMFG、IL13(E13Y)CAR−pMFG、及びIL13(E13K.R109K)CAR−pMFGプラスミドを生成した。(コン(Kong)ら、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)、2012年、第18巻、第21号、p.5949−5960を参照されたい)。IL13CAR及びP140K.MGMTのcDNA配列を両方とも有しているモノシストロニックな転写物を生成するために、5’にNotI端及び3’にEagI端を備えた2A−P140KMGMTフラグメントをジェンスクリプト・ユーエスエイ(Genscript USA)(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)によって合成した。この2.3kbのフラグメントを、配列を確認するためのpUC57クローニングベクターにクローニングした。確認されたら、該フラグメントを一括してIL13CAR−pMFGレトロウイルスベクターの3’NotI部位に移行させ、IL13(WT)CAR−2A−P140K.MGMT−pMFG、IL13(E13Y)CAR−2A−P140K.MGMT−pMFG、及びIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140K.MGMT−pMFGプラスミドをそれぞれ生成した。
図2A及び2Bは、IL13(E13K.R109K)CAR及びIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140K.MGMT構築物及びpMFGプラスミド構築物を示している。
【0199】
実施例2:レトロウイルス粒子の生産
実施例1に記載されたIL13(E13K.R109K)CAR及びIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMT構築物をコードする構築物を含有するMFGレトロウイルス粒子を、「ピンポン」法の使用により生成した。実施例1由来のホストプラスミドをそれぞれ、同種指向性レトロウイルスを生成するためにphoenix(商標)−eco細胞に最初にトランスフェクションした。トランスフェクション効率をIL13発現のフローサイトメトリーによって測定した。培養上清を保存し、両指向性ウイルスをコードしているマウス繊維芽細胞株PG13(米国バージニア州マナッサスのATCC)に形質導入するために使用した。形質導入されたPG13細胞をIL13に関して試験し、IL13陽性の細胞を蛍光染色細胞選別機によって富化させた(
図3A〜3B)。IL13富化細胞におけるMGMTの過剰発現も、細胞溶解産物のウエスタンブロット解析によって試験した(
図3C)。
【0200】
図3A及び3Bに示されるように、形質導入細胞はIL13を発現し、かつ富化されて約97%の細胞がIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMT構築物を発現するようになった。
図3Cはさらに、IL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMTでトランスフェクトされた細胞における、トランスフェクトされていない細胞又はIL13CARのみの構築物でトランスフェクトされた細胞と比較して高いP140KMGMTの発現を示している。
【0201】
富化された細胞を、高力価のCARをコードする両指向性レトロウイルスを含有した培養上清を採取するために組織培養条件下で増殖させた。
実施例3:ヒトT細胞の遺伝子改変
実施例2の方法によって生成されたIL13(E13K.R109K)CAR及びIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMT構築物を含むレトロウイルス粒子を、ヒトT細胞を形質導入するために使用した。ヒトのPBMCは血液フィルタ廃棄物(米国ロードアイランド州プロビデンスのロードアイランド輸血センター(Rhode Island Blood Center))から単離された。PBMCを、T細胞集団を富化するためにOKT3(10μg/ml)及びIL2(3000U/ml)の存在下で36〜48時間培養した。富化されたT細胞を、プロタミン及びIL2が存在する状態で、レトロネクチン(登録商標)でコーティングされたプレート中にて室温で1時間、レトロウイルスを含有する培養上清を用いて遠心感染させた。このステップは以降の24時間に3回繰り返された。3回の感染の後、細胞をレトロウイルスを含有する培地中でさらに24時間生育させ、次いで今後の実験用に、10%ウシ胎児血清、抗生物質、及びIL2を含有する新鮮なRPMI−1640培地に移した。IL13(E13K.R109K)CAR(P140KMGMT無し)での形質導入に成功したT細胞及び形質導入未実施のT細胞を、すべての実験において対照群として使用した。IL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMT構築物を含むレトロウイルス粒子でトランスフェクトされたT細胞のおよそ20〜25%は、細胞表面上のIL13を検出するフローサイトメトリーによる測定でIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMTについて陽性であった(データは示されない)。IL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMTについての形質導入効率は、形質導入未実施のT細胞を対照として使用した場合、約69.2%であった。
【0202】
実施例4:形質導入されたT細胞におけるテモゾロミド抵抗性
上述のようなIL13(E13K.R109K)CAR(
図1A)又はIL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMT(
図2A)を用いて形質導入されたT細胞を、別々に、テモゾロミドの濃度を増大させて(TMZ;0〜1000μM)48時間インキュベートした。培地を24時間ごとに交換し、新鮮なTMZを補充した。TMZを用いた処理の後、細胞の生存率を、トリパンブルー色素排除の原理、加えてアネキシンV/7AAD染色法によって解析した。アネキシンV/7−AAD陰性の細胞の頻度をフローサイトメトリーによって測定し、その結果は細胞の生存率を表した。生存率及びTMZ活性の濃度を推定するために生存曲線を構築した。
図4に示されるように、IL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMTで形質導入されたT細胞は、TMZへの曝露後に、IL13(E13K.R109K)CARで形質導入されたT細胞と比較してより多く生き残った。この観察は、P140KMGMTを発現するCARを用いたT細胞の遺伝子改変が、改変T細胞に化学防護を与えたことを示している。
【0203】
実施例5:IL13CAR−2A−P140KMGMTの機能的特徴解析
形質導入された細胞の免疫調節機能についても、神経膠腫細胞とともに同時培養された時の形質導入細胞によるサイトカインIL2及びIFNγの分泌を測定することにより解析された。IL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMTレトロウイルスを用いて形質導入済みのT細胞を、200μMのTMZとともに、又はTMZを伴わずに、通常の組織培養条件で(5%血清及びIL2(3000U/ml)を含んだRPMI1640培地並びに200μMのTMZを使用)48〜72時間培養した。次に、細胞をU251MG神経膠腫細胞とともに72時間(U251MG同時培養に関して本明細書中に記載されたようにして)培養した。培養上清をELISAによってサイトカイン分泌について試験した。
【0204】
インターロイキン2(IL2)はT細胞の生存能力及び増殖のマーカーである一方、インターフェロン−ガンマ(IFNγ)は細胞傷害性T細胞の機能性のマーカーである。
図5A及び5Bに見られるように、形質導入された細胞はTMZの不在下又は存在下においてIL2及びIFNγの両方を分泌した。さらに、TMZの存在は、形質導入された細胞によるいずれのサイトカインの分泌も顕著には減少させなかった。TMZ抵抗性のT細胞はTMZへの曝露の後もその正常な細胞傷害性機能を維持することが可能であり、これらの遺伝的改変が実際にこれらの細胞にTMZ誘発性の白血球を減少させる細胞毒性に対する抵抗性を与えたことが示された。
【0205】
実施例6:IL13CAR−2A−MGMTのin vivoにおける効力
IL13E13K.R109K−2A−P140KMGMT構築物のin vivoにおける効力を、実施例2に記載されるようにして生成されたウイルス粒子を使用してマウスにおいて試験した。50匹の無胸腺ヌードマウスに、U251MG神経膠腫細胞(40匹のマウス;群I〜IV)又はPBS(10匹のマウス)を皮下注射した(左脇腹)。神経膠腫移植の4日後に、3群のマウス(群I、II、及びIII、マウス10匹/群)に4日間TMZを経口投与した(強制経口投与により64mg/kg/日)。神経膠腫移植後5日目に、TMZを経口投与された3群のマウスを以下のように処理した:群I:IL13E13K.R109KCAR−2A−P140KMGMT構築物(TMZ抵抗性)の腫瘍内注射;群II:MGMTを伴わないIL13 IL13E13K.R109K構築物(TMZ感受性);群III:PBSのみを用いた処理(T細胞の注射なし)。群IVはT細胞やTMZ処理を受けなかった。マウスは、視覚的な腫瘍の成長、行動変化、及び死亡率についてT細胞の注射後90日目までモニタリングされ、90日目にはIACUCの規制により必要とされるようにしてマウスを屠殺した。
【0206】
マウス実験の結果から描かれた生存曲線は、IL13(E13K.R109K)CAR−2A−P140KMGMTのT細胞及びTMZで処理された腫瘍担持マウス(群I)が生存期間中央値73日であって40%の動物が生き残り、対してMGMTを伴わないTMZ感受性のIL13(E13K.R109K)CARのT細胞及びTMZで処理された群IIの動物では61日であって14%が生き残ったことを示した。未処理の腫瘍担持マウス(群IV)は生存期間中央値が29日であった。T細胞での処理は受けなかったがTMZ単独を経口投与された群IIIの腫瘍担持動物は、20%が生き残ったが、同時にわずか36日の低い生存期間中央値を示し、これはTMZ処理によるバックグラウンドの抗腫瘍効果であると考えられた(
図9及び10)。この観察は、3G TMZ抵抗性CARを投与される群Iの動物が、CAR免疫療法及びTMZ化学療法の相乗効果によって腫瘍の排除に最も効率的であったことを示している。
【0207】
本明細書中で引用されたすべての特許文献、公開出願及び参照文献の教示は参照によりその全体が援用される。
本発明についてその実例の実施形態を参照して具体的に示しかつ説明してきたが、該実施形態に、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく形態及び細部の様々な変更が行なわれうることは、当業者には理解されるであろう。
【国際調査報告】