【実施例】
【0090】
本発明を以下の非限定的な実施例によって更に説明する。
【0091】
(実施例1)
本実施例は、0.5リットルのスピナーフラスコを使用して撹拌される懸濁培養系内でインスリン発現細胞の形成を実証する。培地及び気体を、取り外し可能なサイドアームキャップを通じて交換した。インスリン陽性細胞は、細胞がPDX1を最初に発現し、次に膵β細胞の形成及び機能に必要なタンパク質転写因子であるNKX6.1も共発現した段階的なプロセスで形成された。これらの共発現細胞は、次に、懸濁培養内にある間にPDX1及びNKX6.1と組み合わせて、インスリン及びその後MAFAの発現を得た。この細胞の集団を、免疫力が低下したマウスの腎臓被膜の中に移植したとき、生着の4週間以内にヒトCペプチドの検出可能血中濃度を産生した。
【0092】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、脂肪酸フリーウシ血清アルブミン(「FAF−BSA」)(Proliant,Inc.(Boone,Idaho);カタログ番号68700)を0.5重量対体積%(「w/v」)補充したEssential 8(商標)(「E8(商標)」)培地(Life Technologies Incorporated(Carlsbad,California);カタログ番号A15169−01)で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。凝集集団内の約600,000,000〜1,000,000,000細胞を、遠心管に移し、100mLの1X Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline,without Calcium or Magnesium(「DPS−/−」)(Life Technologies;カタログ番号14190−144)を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素(Life Technologies、カタログ番号A11105−01)を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632(Enzo Life Sciences,Inc.(Farmingdale,NY);カタログ番号ALX−270−333)及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO);カタログ番号C2874−100mL)を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアル(Corning Incorporated(Corning,NY);カタログ番号430488)に小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートフリーザー(CryoMed(商標)34L Controlled−Rate Freezer,Thermo Fischer Scientific,Inc.(Buffalo,NY);カタログ番号7452)を使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高濃度で凍結保存した単一細胞を中間/処理中の種材(「ISM」)として次に使用した。
【0093】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(DASGIP Information and Process Technology GMBH(Juelich,Germany))に播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、安全キャビネット(「BSC」)に移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容する培地移動ボトル(Cap2V8(登録商標),Sanisure,Inc.(Moorpark,California))内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0094】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、細胞をバイオリアクターから汲み出し、分化のために3つの0.5L使い捨てスピナーフラスコ(Corning;カタログ番号3153)の中に移した。全てのスピナーフラスコは、5%CO
2を補充した37℃加湿インキュベータ内で、かつ60RPM(55〜65RPM)の一定の撹拌速度で維持された。分化プロトコルは、条件A、B、及びCとして以下に説明される。
【0095】
分化プロセスを通じて、培地交換のためにスピナーをインキュベータ内の動的撹拌からBSCへ移動した。スピナーを撹拌せずに6分間保持して、細胞集団の大多数を容器の底部に沈降させた。6分後、スピナーフラスコのサイドアームキャップを取り外し、使用済み培地の90%以上を吸引によって取り除いた。使用済み培地を取り除くとすぐに、開いているサイドアームを通じてスピナーフラスコに300mLの新鮮培地を足し戻した。スピナーキャップはその後取り換えられ、前述の条件下でインキュベータ内の動的懸濁に戻された。
【0096】
ステージ1(3日間):
条件Aについては、基本培地(「ステージ1基本培地」)を、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム(Sigma Aldrich;カタログ番号S3187)、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標)(Life Technologies;カタログ番号35050−079);2.5mMグルコース(45%水溶液;Sigma Aldrich;カタログ番号G8769);及びインスリン−トランスフェリン−セレニウム−エタノールアミン(「ITS−X」)(Life Technologies;カタログ番号51500056)の1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地(Life Technologies;カタログ番号10372−019)を使用して調製した。細胞を、100ng/mLの増殖分化因子8(「GDF8」)(Peprotech,Inc.(Rocky Hill,New Jersey);カタログ番号120−00);及び2μMの14−プロパ−2−エン−1−イル−3,5,7,14,17,23,27−ヘプタアザテトラシクロ[19.3.1.1〜2,6〜.1〜8,12〜]ヘプタコサ−1(25),2(27),3,5,8(26),9,11,21,23−ノナエン−16−オン(「MCX化合物」)を補充した300mLのステージ1基本培地で1日培養した。24時間後、培地交換を上述のように完了し、100ng/mLのGDF8を補充した(ただしMCX化合物は補充しない)新鮮な300mLのステージ1基本培地をフラスコに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。
【0097】
条件Bでは、3μMのMCX化合物を1日目に使用したことを除き、条件Aについて記載したように細胞を培養した。
【0098】
条件Cでは、GDF8の代わりに100ng/mLのアクチビンAを使用したこと、及びMCX化合物の代わりに30μMのグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β阻害剤(6−[[2−[[4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(5−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−2ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]−3−ピリジンカルボニトリル(pyridinecarbonitirile)(「CHIR99021」)(Stemgent Inc(Cambridge Massachusetts)カタログ番号04004−10)を使用したことを除き、条件Aについて記載したように細胞を培養した。
【0099】
ステージ2(3日間):
条件Aについては、基本培地(「ステージ2基本培地」)を、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有し、追加の1.2g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、MCDB−131培地を使用して調製した。ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、50ng/mLの線維芽細胞増殖因子7(「FGF7」)(R&D Systems(Minneapolis,Minnesota);カタログ番号251−KG)を補充した300mLのステージ2基本培地と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した300mLの新鮮なステージ2基本培地と置換した。
【0100】
条件Bでは、条件Aのように細胞を培養した。
【0101】
条件Cでは、250μLの1Mアスコルビン酸(Sigma Aldrich;水中に再構成された、カタログ番号A4544)を1Lのステージ2基本培地に更に追加して、条件A及びBのように細胞を培養した。
【0102】
ステージ3(条件A及びBで3日間、並びに条件Cで2日間):
条件Aについては、基本培地(「ステージ3〜4基本培地」)を、追加の1.2g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地を使用して調製した。ステージ2の完了後、培地交換を完了して、使用済み培地を、50ng/mLのFGF−7;100nMの骨形成(「BMP」)受容体阻害剤((6−(4−(2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ)フェニル)−3−(ピリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン塩酸塩))(「LDN−193189」,Shanghai ChemPartner Co Ltd.(Shanghai,China));2μMのレチノイン酸(「RA」)(Sigma Aldrich;カタログ番号R2625);0.25μMのN−[(3,5−ジメチル−1−フェニル−1H−ピラゾール(prazol)−4−イル)メチレン]−4−(フェニルメチル)−1−ピペラジンアミン(「SANT−1」)(Sigma Aldrich;カタログ番号S4572);及び400nMのPKC活性剤((2S,5S−(E,E)−8−(5−(4−トリフルオロメチル)フェニル−2,4−ペンタジエノイルアミノ)ベンゾラクタム(「TPB」)(Shanghai ChemPartner Co Ltd.(Shanghai,China))を補充した300mLのステージ3〜4基本培地と置換した。培地交換24時間後、使用済み培地を、LDN−193189を除いて、上記添加剤を含む300mLの新鮮なステージ3〜4基本培地と再度置換した。その培地で48時間細胞を培養した。
【0103】
条件Bでは、条件Aのように細胞を培養した。
【0104】
条件Cでは、ステージ3〜4基本培地に250μL/Lの1Mアスコルビン酸溶液を更に追加して条件A及びBのように細胞を培養した。更に、ステージ3の開始の48時間後、以下に説明したように細胞をステージ4培地に移植した。
【0105】
ステージ4(条件A及びBで3日間、並びに条件Cで4日間):
条件Aについては、ステージ3の完了後、使用済み培地を取り除き、0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した300mLのステージ3〜4基本培地と置換した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)をフラスコに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。
【0106】
条件Bでは、条件Aのように細胞を培養した。
【0107】
条件Cでは、ステージ3〜4基本培地に0.1μMのRA、50ng/mLのFGF7、及び250μL/Lの1Mアスコルビン酸溶液を更に補充したことを除いて、条件A及びBのように細胞を培養した。48時間後、使用済み培地を同じ新鮮培地(条件Cの培地添加剤を使用して)と交換し、細胞を更に48時間培養した。
【0108】
ステージ5(7日間):
条件A、B、及びCについては、基本培地(「ステージ5+基本培地」)を、追加の1.75g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;10mg/Lのヘパリン(Sigma Aldrich;カタログ番号H3149−100KU)を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地ベースを使用して調製した。ステージ4の完了後、培地交換を完了し、300mLのステージ5+基本培地に1μMのT3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニンナトリウム塩として)(「T3」)(Sigma Aldrich;カタログ番号T6397)、10μMの2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジン(nathyridine)(「ALK5阻害剤II」)(Enzo Life Sciences,Inc.;カタログ番号ALX−270−445)、100nMのγセクレターゼ阻害剤XX(EMD Millipore Corporation(Gibbstown,NJ)、カタログ番号565789);20ng/mLのベータセルリン(R&D Systems、カタログ番号261−CE−050);0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した。ステージ5の開始の48時間後、使用済み培地を取り除き、300mLの同じ培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を取り除き、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5+基本培地と置換した。48時間後、培地を再度交換し、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5+基本培地と置換した。
【0109】
ステージ6(7日間):
最後のステージ5の培地交換の24時間後、条件A、B、及びC用の培地を、1μMのT3及び10μMのALK5阻害剤IIを補充したステージ5+基本培地と交換した。ステージ6の2、4、及び6日目の最後にこの補充された培地と培地交換を行った。
【0110】
分化プロセスを通じて、懸濁培養から毎日サンプルを収集した。毎日の細胞サンプルをmRNAについて分離し(qRT−PCR)、使用済み培地を代謝分析のために収集した。選択したステージの最後で、タンパク質の発現をフローサイトメトリー又は蛍光免疫組織化学によって測定した。NOVA(登録商標)BioProfile(登録商標)FLEX bio−analyzer(Nova Biomedical Corporation(Waltham,MA))を使用して、使用済み培地を分析した。
【0111】
図1A〜Dは、分化の毎日の終わりに使用済み培地サンプルから得られたNOVA(登録商標)BioProfile FLEX Analyzerからのデータを示している(
図1A−pO2/酸素分圧;
図1B−グルコース濃度;
図1C−乳酸濃度;
図1D−培地pH)。これらのデータは、分化細胞のステージ1の最初の3日間が、分化の後のステージと比べると最も酸素を消費することを実証している。ステージ1で細胞は、NOVA(登録商標)アナライザー(
図1A)によって検出されるように飽和濃度の19+kPaから13kPa未満(140+mmHg〜100mmHg未満)までpO
2濃度を減少させる。更に、ステージ1細胞は、培地中のほとんど全てのグルコースを消費し(
図1B)、プロセスの最初の3日間でリットルあたり1グラム超の乳酸を生成した(
図1C)。
【0112】
細胞が分化のステージ2及び3に移動したとき、酸素及びグルコースの消費及び乳酸の産生は、ステージ1と比較して変化した。ステージ1においてGDF8及びMCX化合物(条件A又はB)で処理された細胞は、ステージ1においてアクチビンA及びCHIR99021(条件C)で処理された細胞よりも、ステージ2においてより多く酸素を消費した(
図1A)。この増加した酸素消費の観察結果は、条件A又はBを条件Cと比較すると、使用済み培地におけるより低いpH(
図1D及び表1)、増加した乳酸産生(
図1C)、及びより高いグルコース消費(
図1B)と相関があった。
【0113】
細胞がステージ4(条件A及びBの10、11、及び12日目;条件Cの9、10、11、及び12日目)まで進行したとき、条件A及びBで処理した細胞は、条件Cで処理した細胞と比較して、増加したグルコース消費のレベル及びより低い培地pHを保持した(
図1B及び表1)。しかしながら、14日目(ステージ5の第2日目)から19日目(ステージ5の最後)まで、グルコース濃度が、全ての処理条件においてリットルあたり3グラムより低くならなかったことが観察された。ステージ6が開始するとすぐに、3条件全てにおいて(
図1B、20日目以後)使用済み培地のグルコース濃度は、リットルあたり2.4グラムより低い傾向を示した。グルコース消費におけるこの増加は、全乳酸産生量においてリットルあたり0.5グラム超の増加も(
図1C)使用済み培地の酸性化(
図1D)も伴わず、細胞が、より少ない糖分解及びより成熟した代謝機能に変わり、膵島の内分泌ホルモン細胞集団と一致することを示唆した。
【0114】
毎日のサンプリングを通じて使用済み培地の代謝プロファイルを監視することに加え、細胞の代表的なサンプルを、分化プロセスを通じて得て、Applied Biosystems(登録商標)OpenArray(登録商標)(Life Technologies)によって遺伝子の集団のmRNA発現について試験し、実験の開始から培養下で24時間後の多能性ISM細胞と比較した発現の倍差として計算した。
図2A〜Mは、ステージ5の第1日目までに分化した細胞における次の遺伝子の発現に関するデータを示す。PDX1(
図2A);NKX6.1(
図2B);PAX4(
図2C);PAX6(
図2D)、NEUROG3(NGN3)(
図2E);ABCC8(
図2F);クロモグラニン−A(「CHGA」)(
図2G);G6PC2(
図2H);IAPP(
図2I);インスリン(「INS」)(
図2J);グルカゴン(「GCG」)(
図2K);PTF1a(
図2L);及びNEUROD1(
図2M)。
【0115】
図2Aに示されるように、3つの分化条件全てにおいて、ステージ2の3日目(「S2D3」)の終わりまでに細胞は、PDX1を発現し始め、膵臓運命を示す。細胞がステージ3に入ると、細胞は、膵内分泌腺の特異化を示す遺伝子(NGN3、NEUROD1、及びCHGA;
図2E、2M、及び2G)を発現し始め、ステージ3の終わり及びステージ4の開始までにβ細胞形成に必要な遺伝子(PAX4、PAX6、及びNKX6.1;
図2C、2D、及び2B)を発現し始めた。ステージ5の開始までに、細胞は、島及びβ細胞の形成及び機能に必要なマーカー(GCG、INS、IAPP、G6PC2、及びABCC8;
図2K、2J、2I、2H、及び2F)を発現し始めた。
【0116】
サンプルは、ステージ5及び6を通じても収集され、OpenArray(登録商標)リアルタイムPCR分析によって以下の遺伝子発現について分析した。PDX1(
図3A);NKX6.1(
図3B);PAX6(
図3C);NEUROD1(
図3D)、NEUROG3(NGN3)(
図3E);SLC2A1(
図3F);PAX4(
図3G)、PCSK2(
図3H)、クロモグラニン−A(
図3I);クロモグラニン−B(
図3J);PPY(
図3K);PCSK1(
図3L);G6PC2(
図3M)、グルカゴン(
図3N);及びインスリン(
図3O)。
図3A〜3Dに示されるように、PDX1、NKX6.1、PAX6、及びNEUROD1発現濃度は、ステージ5の3日目(「S5D3」)からステージ6の7日目(S6D7)の終わりまで安定していたことが観察された。NGN3、SLC2A1、及びPAX4のmRNA発現濃度は、細胞がγセクレターゼ阻害剤(ステージ5の1〜4日目)にさらされた間最高濃度であり、また発現濃度はγセクレターゼ阻害剤(
図3E〜3G)の除去を受けて低下した。遺伝子PCSK2、CHGA、及びCHGBは、ステージ5の最後に発現の増加を示したが(
図3M〜3O)、遺伝子PPY、PCSK1、G6PC2、GCG、及びINSは、ステージ5の開始からステージ6の最後まで連続的に上がった(
図3K、3L、3M、3N、3O)。
【0117】
様々なステージの追加的な特徴付けのために、細胞をステージ1、4、5、及び6の最後で採取し、フローサイトメトリーによって解析した。手短に言えば、細胞凝集体は、TrypLE(商標)Express(Life Technologies;カタログ番号12604)を37℃で3〜5分間使用して、単一細胞に分解された。表面染色については、遊離した単一細胞を、2,000,000細胞/mLの最終濃度で染色緩衝液に1:4に希釈した0.5%ヒトγグロブリンに再懸濁させた。1:20の最終希釈で細胞に、直接共役一次抗体を添加し、続いて4℃で30分間インキュベーションした。染色した細胞を、染色緩衝液中で2回洗浄し、続いて300μL染色緩衝液中に再懸濁した後、BD FACSCanto(商標)II上のフローサイトメトリー解析の前に、生/死区別のために、10μLの7−AAD中でインキュベートした。細胞内抗体染色では、単一細胞は、最初にViolet Fluorescent LIVE/DEAD cell dye(Life Technologies,カタログ番号L34955)を用いて4℃で20〜30分間インキュベートし、続いて冷たいPBS
−/−で単回洗浄した。次いで、洗浄した細胞を4℃で30分間、280μLのCytofix/Cytoperm(商標)Fixation and Permeabilization Solution(BDカタログ番号554722)中で固定した。次に細胞を、2,000,000細胞/mLの最終濃度で再懸濁される前に、1×Perm/Wash Buffer(BDカタログ番号51−2091KZ)で2回洗浄した。固定した細胞懸濁液を、次に20%正常ヤギ血清を10〜15分間室温で使用してブロックした。細胞を、実験的に事前決定された希釈で一次抗体と4℃で30分間培養し、続いてPerm/Wash緩衝液中で2回洗浄した。次いで細胞を、適切な抗体と4℃で30分間インキュベートした後、BD FACSCanto(商標)II上の解析前に2回洗浄した。使用した抗体の濃度を表IIに示す。膵臓マーカーのための抗体は、ヒト膵島又は未分化H1細胞を陽性対照として使用し、特異性について試験した。二次抗体については、次のように、anti−mouse Alexa Fluor(登録商標)647(1:4,000で)(Life Technologies,カタログ番号A21235)又はgoat anti−rabbit PE(1:100、1:200若しくは1:800で)(Life Technologies,カタログ番号A10542)を追加して4℃で30分間インキュベートし、続いてPerm/Wash緩衝液中での最終洗浄、及び取得された少なくとも30,000イベントによりBD FACSDiva(商標)Softwareを使用してBD FACSCanto(商標)IIで解析を行った。
【0118】
図4は、表面マーカーCD184及びCD9;又はCD184及びCD99(表IIIAに要約される)に関して共染色されたステージ1の終わりに得られる生細胞についてのフローサイトメトリードットプロットを示す。
図5は、次の対の細胞内マーカーに関して共染色されたステージ4の終わりからの、固定され、透過処理された細胞についてのフローサイトメトリードットプロットを示す。NKX6.1及びクロモグラニン−A;Ki67及びPDX1;並びにNKX2.2及びPDX1(表IIIAに要約される)。
図6A及びB(条件A)、7A及びB(条件B)、並びに8A及びB(条件C)は、次の対の細胞内マーカーに関して共染色されたステージ5の終わりからの、固定され、透過処理された細胞についてのフローサイトメトリードットプロットを示す。NKX6.1及びクロモグラニン−A;NKX2.2及びクロモグラニン−A;NKX6.1及びCペプチド;グルカゴン及びインスリン;Ki67及びPDX1;OCT4及びPAX6;NKX6.1及びNEUROD1;NKX6.1及びインスリン;並びにNKX6.1及びPDX1。
図9A及びB(条件A)、10A及びB(条件B)、並びに11A及びB(条件C)は、共染色された、対となる細胞内マーカーのフローサイトメトリーによって染色され、測定されたステージ6の終わりからの、固定され、透過処理された細胞を示す。NKX6.1及びクロモグラニン−A;NKX2.2及びクロモグラニン−A;グルカゴン及びインスリン;NKX6.1及びCペプチド;インスリン及びCペプチド;Ki67及びPDX1;OCT4及びPAX6;NKX6.1及びNEUROD1;NKX6.1及びインスリン;並びにNKX6.1及びPDX1。
【0119】
ステージ5の終わりで、
図6A、7A、及び8Aに示され、表IIIBに要約されるように、条件A、B、又はCで分化された細胞の17%、12%、又は10%は、インスリン及びNKX6.1をそれぞれ共発現した。ステージ6の完了時に、NKX6.1及びインスリン共発現細胞の数において増加が観察された(31%(条件A)、15%(条件B)、14%(条件C))。更に、細胞のほぼ大半がステージ6の終わりにβ細胞前駆マーカーNKX6.1、内分泌前駆マーカーNKX2.2、及び内分泌腺前駆マーカーNEUROD1(条件A−74%NKX6.1、82%NKX2.2、74%NEUROD1;条件B−75%NKX6.1、76%NKX2.2、67%NEUROD1;条件C−60%NKX6.1、64%NKX2.2、53%NEUROD1)を発現したことが留意された。
【0120】
β細胞の成熟及び機能に必要なマーカーの増加した発現に加えて、PDX1及びKi−67の共発現で測定される活性細胞周期内のPDX1陽性細胞の割合は、ステージ5からステージ6で低下したことが観察された(26%から9%に低下、条件A;22%から10%に低下、条件B;43%から19%に低下、条件C)。更に、フローサイトメトリーによって測定されたKi−67の発現が、3つの試験した条件全てにおいてステージ5及び6の過程で低下するとき、出願者らは、TaqMan(登録商標)qRT−PCRによって、β−細胞特異的転写因子MAFAの濃度の増加を検出した。ステージ6の終わりでのMAFA発現は、未分化の多能性幹細胞より40+倍高く、またヒト島組織で観察される発現の約25%である濃度に達した(
図12)。MAFAのタンパク質発現は、免疫蛍光核MAFA染色、免疫蛍光細胞質インスリン染色、及び汎核染色(「DAPI」)の20倍対物レンズによって得られる顕微鏡写真を示している
図13に示されるように免疫蛍光細胞化学によって確認された。
【0121】
上述されたこれらの結果は、ステージ5からステージ6に移動する細胞が、増殖性膵内分泌前駆細胞から内分泌細胞に変化したことを示す。これらの内分泌組織、及び具体的にインスリン陽性細胞は、機能性β細胞に関連する、かつ機能性β細胞に必要なキーマーカーを発現した。ステージ3及び4に関して、条件Cにおけるよりも、細胞が著しく低いpHで培養された条件A及びBは、条件Cに比べて6ステージ目の分化プロセスの終わりまでにクロモグラニン陽性、Cペプチド/NKX6.1共陽性細胞、及びNEUROD1/NKX6.1共陽性細胞をより多く生成した。条件Cは、当該技術分野において既知であり、かつCell,159:428〜439(2014)に開示された方法である。
【0122】
ステージ6を通して条件A及びCによって分化された細胞を、培地から50mL円錐に分離し、次いで追加の1.2g/L重炭酸ナトリウム及び0.2%w/vのFAF−BSAを補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地で2回洗浄した。細胞を次に洗浄培地に再懸濁させ、NSGマウス(N=7)の腎臓被膜下への移植前に室温にて約5時間保持した。動物は、血糖及びCペプチドレベルについて、生着の4、8、10、及び14週間後に監視された。動物は、一晩絶食し、グルコースの腹腔内注射を与えられ、IPグルコースボーラス注射の60分後(「ポスト」)に血液が眼窩後方出血により採血された(表III)。最も早く測定した時点(生着後4週間)で、検出可能な濃度のCペプチドの分泌で測定したところ移植片は機能した(表IV)。更に、Cペプチド濃度は、4週目から14週目まで上昇した。
【0123】
移植10週間後に、それぞれの動物は、グルコースボーラス注射の直前(「プレ」)及びグルコースボーラス注射の直後(「ポスト」)に採血された。参考までに、「プレ」濃度より高かった「ポスト」Cペプチド濃度は、グルコースがインスリン分泌を刺激したことを示す。出願者らは、条件Cによって分化された移植片で処理された7匹の動物のうち6匹は、より高いCペプチドの「ポスト」濃度を示し、条件Aによって分化された移植片で処理された7匹の動物のうち3匹は、より高いCペプチドの「ポスト」濃度を有したことに留意した。
【0124】
【表2】
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【0125】
【表3】
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【0126】
【表4】
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【0127】
【表5】
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【0128】
【表6】
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【0129】
(実施例2)
この実施例は、リアクター内のフィードバックpH及びDOセンサーによる培地pH及び溶存酸素濃度の直接コンピュータ制御を可能にした、撹拌タンクの閉じたループ内でPDX1を発現する細胞の集団からのインスリン発現細胞の形成を実証する。このプロセスから生成されたインスリン陽性細胞は、PDX1発現を保持し、NKX6.1を共発現した。インスリン陽性細胞は、ステージ3〜5において4つの異なる条件(A、B、C、及びD)にさらされた細胞から生成された(表V)。条件C(ステージ3の開始時にpH7.0及び2,000,000/mLの細胞濃度)に従って分化された細胞を、免疫力が低下したマウスの腎臓被膜の中に移植したとき、移植片が検出可能な血中濃度のヒトCペプチドを生着の4週間以内に産生したことが観察された。
【0130】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、0.5%w/vのFAF−BSAを補充したE8(商標)で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。凝集集団内の約600,000,000〜1,000,000,000細胞を、遠心管に移し、100mLの1X DPS−/−を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632(Enzo Life Sciences,Inc.(Farmingdale,NY);カタログ番号ALX−270−333)及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアルに小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートフリーザー(CryoMed(商標)34L Controlled−Rate Freezer)を使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高濃度で凍結保存した単一細胞を中間/処理中の種材ISMとして次に使用した。
【0131】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクDASGIPバイオリアクターに播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、BSCに移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容する培地移動ボトル(Cap2V8)内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0132】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、分化誘導が開始された。分化を開始するために、使用済み培地を取り出し、分化培地をバイオリアクター内にポンプで注入し、以下に説明したように培地0の交換及び分化プロトコルを使用したプロセスの過程で交換した。
【0133】
ステージ1(3日間):
基本培地を、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地を使用して調製した。細胞を、100ng/mLのGDF8及び3μMのMCX化合物を補充した1.5Lの基本培地で1日間培養した。24時間後、使用済み培地を取り除き、100ng/mLのGDF8を補充した新鮮な1.5Lの基本培地をリアクターに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。
【0134】
ステージ2(3日間):
基本培地を、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有し、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、MCDB−131培地を使用して調製した。ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した1.5Lのステージ2基本培地と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した1.5Lの新鮮なステージ2基本培地と置換した。
【0135】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了時、かつ培地交換の直前に、無菌溶接及び蠕動ポンプを介して、3リットルリアクターから900,000,000細胞を取り出した。3リットルリアクター内の培地を次に前述のように交換し、以下のステージ3培地と置換した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地。ステージ3培地に50ng/mLのFGF−7;100nMのLDN−193189;2μMのRA;0.25μMのSANT−1;及び400nMのTPBを補充した。取り出した細胞を次に無菌円錐管内で遠心沈殿させ、使用済み培地を取り除き、細胞をステージ3培地及び添加剤に再懸濁させた。これらの細胞を次に、無菌溶接及び蠕動ポンプを介して4つの別個のDASGIP(商標)より提供される0.2リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(リアクターA、B、C、及びD)に移した。0.2リットルのバイオリアクター及び3リットルの対照バイオリアクター内の細胞を、ステージ3〜5に関して
図14及び表Vに示されるように、細胞濃度及び培地pHの異なる組み合わせにさらした。培地交換24時間後、使用済み培地を、対照及びリアクターA〜DのそれぞれにおいてLDN−193189を除いて、上記添加剤を含む300mLの新鮮なステージ3培地と再度置換した。その培地で48時間細胞を培養した。
【0136】
【表7】
[この文献は図面を表示できません]
【0137】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了後、使用済み培地を取り除き、150mLの以下のステージ4培地と置換した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する150mLのMCDB−131培地。培地に0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)をバイオリアクターのそれぞれに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。
【0138】
ステージ5(7日間):
ステージ5基本培地を、追加の1.754g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;及び10mg/Lヘパリン(Sigma Aldrich;カタログ番号H3149−100KU)を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する150mLのMCDB−131培地ベースを使用して各バイオリアクター用に調製した。ステージ4の完了後、各バイオリアクター内の使用済み培地を、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、1μMのγセクレターゼ阻害剤XXI(EMD Millipore;カタログ番号565790);20ng/mLのベータセルリン;0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した、150mLのステージ5基本培地と交換した。ステージ5の開始の48時間後、使用済み培地を取り除き、150mLの同じ新鮮培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を取り除き、1μMのT3、10μMのAlk5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5基本培地と置換した。48時間後、培地を再度交換し、同じ新鮮な培地及び添加剤と置換した。24時間後ステージ5の終わりを示し、生成された細胞を特徴付け及び解析のために処理した。
【0139】
分化プロセスを通じて、pH及び溶存酸素(「DO」)についてのリアルタイム連続監視に加えて、培地サンプルを毎日リアクターから収集した。毎日の終わりに使用済み培地をNOVA bio−analyzerによって解析した。サンプルを、細胞数(Nucleocounter 100)、mRNA発現(qRT−PCR)、及びタンパク質発現(フローサイトメトリー及び蛍光(florescent)免疫組織化学)についても解析した。
【0140】
図15A及びBは、ステージ3及び4の過程でリアクター1、A、B、C、及びDの培地におけるpH(
図15A)及び溶存酸素濃度(
図15B)の連続監視グラフを示す。
図16A及びBは、ステージ3及び4における分化の毎日の終わりに使用済み培地サンプルから得られるNOVA(登録商標)BioProfile FLEX Analyzerからのデータを示している(
図16A−グルコース濃度;
図16B−乳酸濃度)。
図17は、リアクター及び条件A、B、C、及びDについて細胞カウントの傾向線を示している(B×A、B×B、B×C、及びB×Dとしても列挙される)。これらのデータは、pH7.0に設定されるリアクターにおいて、ステージ3の過程で細胞損失が存在することを実証し、これは低いpH(バイオリアクターC及びD)設定値と相関している。しかしながら、mLあたり2×10
6細胞で播種されたリアクターCは、ステージ4の終わりまでに細胞集団を回復した一方、7.0のpHを有するがmLあたり1.0×10
6細胞の細胞播種を有したリアクターDは回復しなかった。また、7.4のpH、かつmLあたり2×10
6及び1.0×10
6細胞で播種された、リアクターA及びBは、両方ともステージ3を通して細胞濃度を維持していたがそれぞれステージ4で著しい細胞損失を呈した(
図17)。これらのデータは、ステージ3でのmLあたり約1.5×10
6細胞以上、好ましくは、mLあたり約2.0×10
6細胞以上の濃度と組み合わせた7.0のpH設定値の使用が、ステージ3においてpH7.4で維持された細胞と比較して、後続の分化ステージを通してより高い細胞濃度を促進することを示す。
【0141】
細胞濃度への効果は、グルコース及び乳酸の毎日の使用済み培地濃度に反映される。リアクターC及びDの両方は、pH7.4対照群、A及びBそれぞれと対になるその濃度より毎日の終わりに残量の多いグルコース及び少ない乳酸を有した。これらの結果は、リアクターC及びDがステージ3の間、低い代謝活性を有したことを示した。しかしながら、リアクターCがステージ4を通して進行したとき、乳酸濃度は、リアクターCにおいて低いままであったが、残留グルコース濃度は、ステージ4の第1及び第2日目の終わりまでリアクターA内のものと同程度であった。これらのデータから、出願者らは、リアクターC内の細胞がリアクターA内のものよりも、分化され、成熟した、かつ少ない糖分解の表現型をとり始めたと推論することができる。
【0142】
ステージ3の完了時、1M(リアクターB)又は2M(リアクターA)の開始密度でpH7.4に維持された細胞は、低pH処理細胞が膵内胚葉の特異化を保持することを示すことを観察されたが、1×10
6(リアクターD)又は2×10
6(リアクターC)細胞/mLの開始濃度でpH7.0に維持されたほとんど全ての細胞は、内胚葉転写因子(FOXA2)及び膵特異的転写因子(PDX1)の両方を発現することが観察された。更に、5つ全ての試験した条件において、NKX6.1を発現する細胞の割合は、ステージ3の終わりで同様に低かった(範囲:5.4〜13.6%)。pH7.4に維持された細胞(リアクターA及びB、並びに対照リアクター、「1」)は、ステージ3の終わりでNEUROD1を発現し始めたが、pH7.0(リアクターC及びD)で維持された細胞は、フローサイトメトリーによって測定した場合NEUROD1発現のレベルの減少を示した(表Vi)。ステージ4の開始時、リアクターC及びDのpH設定値を、7.4に戻した(
図14及び15A)。3日後、ステージ4の終わりに、リアクターのそれぞれからのサンプルを、フローサイトメトリーによってNKX6.1、NEUROD1、PDX1、FOXA2、CDX2、及びKi67の発現について解析した。ステージ3においてpH7.0に維持された細胞(リアクターC及びD)は、表VIに要約されるように7.4のpHに設定されたリアクター(バイオリアクター1、A、及びB)で維持された細胞と比較すると、細胞内フローサイトメトリーによって検出されるようにステージ4の終わりに、実質的により多くのNKX6.1陽性細胞及び活性細胞周期にある細胞(Ki67陽性)を有したことが観察された。
【0143】
フローサイトメトリーによって細胞タンパク質発現を判定することに加えて、分化プロセスのステージ3及び4を通してサンプルを、OpenArray(登録商標)qRT−PCRを使用して遺伝子パネルのmRNA発現について試験した。
図18A〜Nは、分化させてからステージ4の第2日目までヒト胚性幹細胞株H1の細胞における以下の遺伝子のリアルタイムPCR解析のデータを示す。PDX1(
図18A)、NKX6.1(
図18B)、PAX4(
図18C)、PAX6(
図18D)、NeuroG3(NGN3)(
図18E)、ABCC8(
図18F)、クロモグラニン−A(
図18G)、クロモグラニン−B(
図18H)、ARX(
図18I)、グレリン(
図18J)、IAPP(
図18K)、PTF1a(
図18L)、NEUROD1(
図18M)、及びNKX2.2(
図18N)。
【0144】
図18Aに示されるように、低(7.0)又は標準(7.4)pHの両方の分化条件下で、細胞は、ステージ3を通して膵臓運命をとる細胞と類似のレベルのPDX1を発現した。pH7.4リアクターからの細胞が、ステージ3を通して進行したとき(リアクターBX A及びBX B)、NKX6.1の発現が相対的に無い状態では(
図18B)、細胞は早期の膵内分泌細胞の発達に必要かつ特徴的な複数の遺伝子を発現し始めた。
図18C、18D、18E、18M、18N、18I、18J、18G、及び18Hに示されるようにPAX4、PAX6、NGN3、NEUROD1、NKX2.2、ARX、グレリン、CHGA及びCHGB。低いNKX6.1の発現と組み合わせたこの遺伝子発現のパターンは、いくつかの早期の(非β細胞)膵内分泌腺の特異化を示した。
【0145】
対照的に、リアクターC及びDからの細胞(ステージ3、pH7.0)は、OpenArray(登録商標)qRT−PCRで測定すると、ステージ3において、リアクターA及びBと比較して著しく低い濃度の、内分泌腺発達に必要な転写因子(PAX4、PAX6、NGN3、NEUROD1、NKX2.2、及びARX)を発現した(
図18C、18D、18E、18M、18N、及び18I)。更に、リアクターC及びDからの細胞は、ステージ4の1日目にNKX6.1(β細胞形成に必要な転写因子)が増加し、その後ステージ4の2日目にPAX6、NEUROD1、及びNKX2.2の発現が増加した(
図18D、18M、18N、及び18B)ことが観察された。これらのqRT−PCRデータは、ステージ3において7.0pHで維持された細胞について、ステージ3及び4の終わりにNEUROD1を発現する細胞の割合が減少し、NKX6.1を発現する細胞数が増加したことを実証したフローサイトメトリー結果に相関した(表VI、
図19、及び
図20)。これらのデータは、ステージ3における低pH(7.0)が早期の(非β細胞)膵内分泌腺の特異化を阻害し、β細胞を形成するのに必要な転写因子発現シーケンスを活性化することを示唆した。
【0146】
遺伝子の発現の遅延又は低下の効果は、非β細胞膵内分泌腺の特異化に関与し、ステージ3で減少した培地pHを通じ、分化のステージ5を通して持続した。NGN3遺伝子発現は、発達中の膵臓において適切な内分泌ホルモン細胞の発達のために必要とされ、条件A(pH7.4)及びC(ステージ3にてpH7.0)の両方において、NGN3の発現は、γセクレターゼ阻害剤を含有するステージ5培地を用いた細胞の処理に反応して誘導された。しかしながら、条件C細胞に従って分化された細胞について、ピークのNGN3発現に1日の遅れが認められた(
図21A)。更に、NGN3発現によって誘導又は調節された複数の遺伝子もまた、条件Cによって分化された細胞(ステージ3にてpH7.0)において遅れがあった。NEUROD1(
図21B)、NKX2.2(
図21C)、ARX(
図21D)、クロモグラニンA/CHGA(
図21E)、及びPCSK2(
図21F)などの内分泌腺特異的な遺伝子は全て、NGN3と同様に発現において遅れを示した。しかしながら、β細胞と特異的に関連する遺伝子であるABCC8(
図21G)、G6CP2/グルコース6ホスファターゼ(
図21H)、インスリン/INS(
図21I)、Islet1/ISL1(
図21J)、グルコース輸送体1/SLC2A1(
図21K)、亜鉛輸送体/SLC30A8(
図21L)、及びNKX6.1(
図21M)は、条件A及びCからの細胞において同時にかつ同規模で現れる。更に、機能的β細胞の適切な成熟に関連する遺伝子であるUCN3の発現は、ステージ3におけるpH7.0への曝露がこのプロセスにおいてβ様(lie)細胞への後期の成熟を促進することを示す
図21Nに示されるように、pH7.4(リアクターA)で維持された細胞と比較すると、リアクターC(ステージ3にてpH7.0)で分化された細胞においてステージ5を通じて増加した。
【0147】
UCN3発現における増加に加えて、qRT−PCRによってβ細胞特異的転写因子であるMAFAの発現における増加もまた観察された。MAFA発現は、γセクレターゼ阻害剤の追加の後、ステージ5の1日目(
図21O)に単一のプライマープローブqRT−PCRアッセイによって試験された3つの条件全てにおいて(A、B、及びC)最初に検出可能であった。ステージ4の3日目からステージ5の5日目まで、検出可能なMAFAのmRNA発現は、条件A又はBにおいてより条件Cにおいて高かった。MAFAのタンパク質発現は、免疫蛍光細胞化学によってステージ6の終わりに確認された。
図22に示されるように、20倍対物レンズによって得られる顕微鏡写真は、核のMAFA及び細胞質のインスリン染色に関する免疫蛍光染色を示す。
【0148】
これらの遺伝子発現パターンは、ステージ3での低pHへの曝露による早期の内分泌腺の特異化の抑制は、β細胞特異的転写因子の発現前に、早期の非β細胞運命の選択を低減することによってβ細胞様運命への後期の分化を促進することができることを示唆する。フローサイトメトリーの結果は、リアクターCで分化された細胞は、NKX6.1/インスリン共陽性細胞(21.3%、条件C対15.6%、条件A)での増加と共に、条件A細胞(20.3%、表VI)と比較するとインスリン陽性細胞の割合(27.3%、表VI)が増加したので、この仮説を支持した。
【0149】
興味深いことに、ステージ3における低pH及びβ細胞様運命への後期の分化は、その他の膵内分泌腺運命に特徴的な遺伝子発現を抑制しなかった。qRT−PCRによって、ステージ5(
図21P−PPY、21Q−グレリン、21R−GCG、及び21S−SST)の終わりに分析されたサンプル中の内分泌ホルモン膵臓ポリペプチド(「PPY」)、グレリン、グルカゴン(「GCG」)、及びソマトスタチン(「SST」)について、遺伝子発現を観察した。この観察結果は、分化された細胞が表VII及び
図23に示されるように汎内分泌系転写因子、NEUROD1に対して陽性であった(条件Cに対してNEUROD1陽性が63.1%、及びNEUROD1/NKX6.1共陽性の細胞が56.1%;条件Aに対してNEUROD1陽性が51.6%、及びNEUROD1/NKX6.1共陽性の細胞が43%)ことを示すフローサイトメトリーのデータによって更に支持された。
【0150】
ステージ5の第7日目の終わりに、ステージ3にてpH7.0の設定値(条件C)で分化された5×10
6細胞を50mL円錐内の培地から分離し、次いで合計2.4g/L重炭酸ナトリウム及び0.2%w/vのFAF−BSAを含有するMCDB−1313培地で2回洗浄した。細胞を洗浄培地に再懸濁させ、NSGマウスの腎臓被膜下への移植前に室温にて約5時間保持した。最も早く測定した時点、移植4週間後、夜間絶食、腹腔内グルコース注射、及びIPグルコースボーラス60分後の眼窩後方採血の後に平均ヒトCペプチド血中濃度の0.3ng/mLが観察された(N=7動物)。
【0151】
【表8】
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【0152】
【表9】
[この文献は図面を表示できません]
【0153】
(実施例3)
この実施例は、撹拌タンクの無菌で閉じたバイオリアクター内で、PDX1を発現する細胞の集団からのインスリン発現細胞の形成を実証する。インスリン陽性細胞を、ステージ3の間に3つの条件のうちの1つにさらされた細胞から生成した。3つの条件:リアクターB−ステージ3を通じてpH7.0(レチノイン酸で処理)、リアクターC−ステージ3の第1日目にpH7.4、次いでステージ3の2及び3日目にpH7.0、又はリアクターD−ステージ3を通じてpH7.4。ステージ3にてpH7.0に長く曝露することは分化プロセスの後半で、Ki67を低減し、NEUROD1、NKX6.1と共陽性であるNEUROD1、PAX6、Islet1、及びPDX1/NKX6.1といったタンパク質の発現を増加させたことが観察された。
【0154】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、0.5%w/v脂肪酸フリーウシ血清アルブミンを補充したEssential 8(商標)培地で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。凝集集団内の約600,000,000〜1,000,000,000細胞を、遠心管に移し、100mLの1X DPS−/−を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアル(Corning)に小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートCryoMed(商標)34Lフリーザーを使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高濃度で凍結保存した単一細胞をISMとして次に使用した。
【0155】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(DASGIP)にmLあたり295,000生細胞の播種濃度で播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、BSCに移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容する培地移動ボトル(Cap2V8(登録商標))内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0156】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、使用済みE8(商標)培地を取り除き、分化培地を追加することによって3リットルリアクター内の分化が開始された。分化プロトコルを以下に説明する。
【0157】
ステージ1(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを10%の溶存酸素設定値(調節された空気、酸素、及び窒素)に設定し、CO
2調節によってpHを7.4に設定した。基本培地を、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地を使用して調製した。細胞を、100ng/mLのGDF8及び3μMのMCX化合物を補充した1.5Lの基本培地で1日間培養した。24時間後、培地交換を上述のように完了し、100ng/mLのGDF8を補充した新鮮な1.5Lの基本培地をリアクターに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。
【0158】
ステージ2(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、酸素、及び窒素)に設定し、CO
2調節によってpHを7.4に設定した。基本培地を、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有し、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.5LのMCDB−131培地を使用して調製した。ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した1.5Lのステージ2基本培地と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した1.5Lの新鮮なステージ2基本培地と置換した。
【0159】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了時、かつ培地交換の直前に、無菌溶接及び蠕動ポンプを介して、3リットルリアクターから全ての細胞を取り出した。細胞を、カウントし、重力沈降させ、2,000,000細胞/mLの正常に戻した分布状態で以下のステージ3培地に再懸濁させた。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ3培地に50ng/mLのFGF−7;100nMのLDN−193189;2μMのRA;0.25μMのSANT−1;及び400nMのTPBを補充した。細胞は、2,000,000細胞/mLの細胞濃度の正常に戻した分布状態で、3つの0.2リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクDASGIP(商標)バイオリアクターB、C、及びD(BxB、BxC、及びBxDとも呼ばれる)の中に無菌溶接及び蠕動ポンプを介して播種された。リアクターを、37℃の温度に設定し、55rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、酸素、及び窒素)に設定し、ステージ3のpHを表VIIIに列挙されるように3つの異なる培地pH変数に設定した。培地交換24時間後、使用済み培地を、リアクターB〜DのそれぞれにおいてLDN−193189を除いて、上記添加剤を含む150mLの新鮮なステージ3培地と再度置換した。細胞をその後、この培地でステージ3の終わりまで48時間培養した。
【0160】
【表10】
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【0161】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了時、使用済み培地を取り除き、各バイオリアクター内で150mLの以下のステージ4培地と置換した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する150mLのMCDB−131培地。培地に0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃で維持し、55rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、酸素、及び窒素)に、及びCO
2調節によって7.4のpH設定値に調節した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)を各バイオリアクターに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。
【0162】
ステージ5(7日間):
ステージ5基本培地を、追加の1.754g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;及び10mg/Lヘパリン(Sigma Aldrich;カタログ番号H3149−100KU)を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する150mLのMCDB−131培地ベースを使用して各バイオリアクター用に調製した。ステージ4の完了後、各バイオリアクター内の使用済み培地を、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、1μMのγセクレターゼ阻害剤XXI;20ng/mLのベータセルリン;0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した、150mLのステージ5培地と置換した。ステージ5の開始の48時間後、使用済み培地を取り除き、同じ新鮮な基本培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を再度交換し、γセクレターゼXXI及びSANTが除外されたことを除いて、同じ新鮮な培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を再度交換し、同じ新鮮な培地及び添加剤と置換し、ステージ5の終わりまで更に24時間細胞を培養した。ステージ5を通して、30%DO及び7.4pHを維持した。
【0163】
分化プロセスを通じて、pH及びDOについてのリアルタイム連続監視に加えて、培地サンプルを毎日リアクターから収集した。サンプルを、細胞数、mRNA発現、及びタンパク質発現について解析した。
【0164】
図24A及びBは、ステージ3、4及び5の過程でリアクターB、C、及びDの培地におけるpH(
図24A)及び溶存酸素濃度(
図24B)の連続監視グラフを示す。これらのデータは、ステージ3を通じてpH7.0に設定されたリアクターB内の細胞は、リアクターC及びDと比較してより低い濃度の溶存酸素によって測定されるように、ステージ4及び5で酸素消費の増加を示したことを実証する(
図24B)。更に、リアクターB、C、及びD内の細胞濃度は、ステージ5を通じて同程度であった(
図25及び表VIII)ので、酸素消費の差は、細胞密度の有意差のためではなかった。これは、ステージ3の間pH7.0で処理されたリアクターB内の細胞が、ステージ4の終わりまでにリアクターC又はDからの細胞(ステージ3の間pH7.4にそれぞれ1又は3日間曝露された)より成熟した、かつ酸素を消費する表現型を取り始めたことを示唆する。
【0165】
ステージ3の完了時、及び3日後のステージ4の終わりに再び、リアクターのそれぞれからのサンプルをフローサイトメトリーによってタンパク質発現について分析した。NKX6.1、NEUROD1、PDX1、及びCDX2の発現を実証するデータは、表IXに示される。ステージ3を通じて、又はステージ3の最後の2日間pH7.0で維持された細胞(それぞれリアクターB及びC)が、リアクターD(ステージ3を通して7.4のpHに設定された)内で維持された細胞と比較したとき、ステージ4の終わりに比例的に多くのNKX6.1陽性細胞及び少ないNEUROD1陽性細胞を有したことが、細胞内フローサイトメトリーによって観察された。これらのデータは、ステージ3におけるpH7.0への部分的な曝露であってもNEUROD1発現を抑制するのに十分であることを示す。
【0166】
フローサイトメトリーによって細胞タンパク質発現を判定することに加えて、出願者らは、分化プロセスのステージ3及び4を通してサンプルを、OpenArray(登録商標)qRT−PCRを使用して遺伝子パネルのmRNA発現について試験した。
図26A〜Nは、分化させてからステージ5の第1日目までヒト胚性幹細胞株H1の細胞における以下の遺伝子のリアルタイムPCR解析のデータを示す。PDX1(
図26A)、NKX6.1(
図26B)、PAX4(
図26C)、PAX6(
図26D)、NeuroG3(NGN3)(
図26E)、ABCC8(
図26F)、クロモグラニン−A(
図26G)、クロモグラニン−B(
図26H)、ARX(
図26I)、グレリン(
図26J)、IAPP(
図26K)、PTF1a(
図26L)、NEUROD1(
図26M)、及びNKX2.2(
図26N)。
【0167】
図26Aに示されるように、低いステージ3のpH(7.0)又は標準のステージ3のpH(7.4)の両方の分化条件下で、細胞は、ステージ3で膵臓運命をとる細胞を示す類似のレベルのPDX1を発現した。しかしながら、リアクターB及びC(pH7.0曝露)からの細胞がステージ4に入ったとき、PDX発現は、一貫してpH7.4で維持された細胞(リアクターD)と比較して増加した。PDX発現におけるこの増加は、NKX6.1発現における誘導と一致した(
図26B)。興味深いことに、ステージ3及び4におけるリアクターDからの細胞は、早期の膵内分泌細胞の発達に必要かつ特徴的な複数の遺伝子を発現し始めた。
図26C、26D、26E、26M、26N、26I、26J、26G、及び26Hに示されるようにPAX4、PAX6、NGN3、NEUROD1、NKX2.2、ARX、グレリン、CHGA、及びCHGB。相対的に低いNKX6.1の発現と組み合わせたこの遺伝子発現のパターンは、リアクターB及びCと比較して、リアクターDにおいて増加した早期の(非β細胞)膵内分泌腺の特異化を示した。
【0168】
対照的に、リアクターB及びCからの細胞は、qRT−PCRで測定すると、ステージ3において、リアクターDと比較して著しく低い濃度の、早期の内分泌腺発達に特徴的な転写因子(PAX4、PAX6、NGN3、NEUROD1、NKX2.2、及びARX)を発現した(
図26C、26D、26E、26M、26N、及び26I)。更に、出願者らは、リアクターB及びCからの細胞は、ステージ4の1日目にβ細胞形成に必要な転写因子のNKX6.1メッセージが増加し(
図26B)、その後ステージ4の2日目にPAX6、NEUROD1、及びNKX2.2のmRNA発現が増加した(
図26D、26M、及び26N)ことを観察した。これらのOpenArray(登録商標)qRT−PCRデータは、ステージ3にて7.0pHで2又は3日間維持された細胞が、ステージ3及び4の終わりにNEUROD1を発現しにくく、NKX6.1を発現しやすかったことを実証したフローサイトメトリー結果に相関した(表XI)。これらの結果は、ステージ3の全ての間又は一部の間であっても低pH(7.0)への曝露が早期の(非β細胞)膵内分泌腺の特異化を阻害し、β細胞を形成するのに必要な転写因子発現シーケンスを活性化したことを示す。
【0169】
遺伝子の発現の遅延又は低下の効果は、非β細胞膵内分泌腺の特異化に関与し、ステージ3で減少した培地pHを通じ、分化のステージ5の終わりまで持続した。リアクターB(ステージ3の全てでpH7.0)で分化された細胞は、NKX6.1/インスリン共陽性細胞(17.9%、条件B、対14%、条件D)での増加と共に、リアクターD細胞(19.5%、表XIV)と比較するとインスリン陽性細胞の割合(25.4%、表XIV)が増加した。これらの結果は、リアクターDの44.9%PAX6及び24.7%Islet1陽性細胞と比較して、リアクターBが53.8%PAX6及び31%islet1陽性細胞を産生したように、PAX6及びIslet1発現などの適切な内分泌島の形成に必要なマーカーの増加に反映された(表XIV)。増殖の尺度であるKi67発現もまた、リアクターDからの細胞と比較すると、ステージ3にてpH7.0で処理された細胞において減少したが(表XIV)、これは成長中かつ分化の程度が少ない集団から、より最終分化した組織への遷移を示す。
【0170】
興味深いことに、ステージ3における低pHは、早期の内分泌腺分化を抑制したが、リアクターB及びCからの細胞は、ステージ4及び5において汎膵転写因子、PDX1の高発現を保持した。更に、リアクターB及びC細胞は、リアクターDと比較してステージ3及び4において低いNEUROD1発現(汎内分泌系転写因子)を有したが(表XI)、これらはステージ5の終わりまでに、より高い割合のNEUROD1及びNEUROD1/NKX6.1共陽性細胞(表X)を示した。これらの結果は、ステージ3における低pHが、早い段階での内分泌腺運命への初期分化を抑制したこと、その後適切なβ細胞特異化に必要な転写因子の共発現の増加を促進したこと、並びにステージ5の終わりまでに島組織及びβ細胞に特徴的なマーカー及び転写因子の全体の発現を増加させたことを示す。
【0171】
【表11】
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【0172】
【表12】
[この文献は図面を表示できません]
【0173】
(実施例4)
この実施例は、3リットル撹拌タンクの無菌で閉じたバイオリアクター内で、PDX1を発現する細胞の集団からのインスリン発現細胞の形成を実証する。インスリン陽性細胞は、PDX1発現を保持し、NKX6.1を共発現したこのプロセスから生成された。ステージ5の終わりに、インスリン陽性細胞を55RPMで撹拌される500mLスピナーフラスコに移し、ステージ6の間高グルコース(25.5mM)又は低グルコース(5.5mM)を含有する培地のどちらかで、5%CO2加湿37℃インキュベータに保持した。ステージ6でどちらのグルコース濃度を使用する細胞も大半は、PDX1、NKX6.1又はNEUROD1陽性であり、リアクター内の全ての細胞のほぼ半分は、NKX6.1/PDX1/インスリン共陽性であった。
【0174】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、0.5%w/vのFAF−BSAを補充したE8(商標)培地で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。集団内の約600,000,000〜1,000,000,000の凝集細胞を、遠心管に移し、100mLの1X DPS−/−を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアルに小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートフリーザーCryoMed(商標)34L Controlled−Rate Freezerを使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高密度で凍結保存した単一細胞をISMとして次に使用した。
【0175】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(DASGIP)にmLあたり295,000生細胞の播種濃度で播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、BSCに移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容するCap2V8(登録商標)培地移動ボトル内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0176】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、集団を沈降させるために羽根車及び電熱ジャケットを5〜20分間停止し、培地を取り除き、閉鎖システムを維持するためにTerumo(商標)チューブウェルダーを使用してC−Flex(登録商標)チュービングに結合された浸漬管を通して蠕動ポンプによって置換した。羽根車を浸らせるのに十分な培地を添加した後で、電熱ジャケットに再び電圧を加えた。分化プロトコルを以下に説明する。
【0177】
ステージ1(3日間):
ステージ1基本培地を、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有し、追加の3.6g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された100mLの2%w/vのFAF−BSA;10mLの1X濃度のGlutaMAX(商標);1mLの2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、900mLのMCDB−131培地を使用して調製した。細胞を、100ng/mLのGDF8及び3μMのMCX化合物を補充した基本培地で1日間培養した。24時間後、培地交換を上述のように完了し、100ng/mLのGDF8を補充した新鮮な基本培地をフラスコに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。ステージ1を通して、溶存酸素含量を10%で、かつpHを7.4で維持した。
【0178】
ステージ2(3日間):
ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、ステージ1の基本培地(ただし50ng/mLのFGF7を補充した)と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した新鮮な基本培地と置換した。ステージ2を通して、DOを30%DOで、かつpHを7.4で維持した。
【0179】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ2培地を取り除き、以下の基本培地と置換した。1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有し、追加の3.6g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された100mLの2%w/vのFAF−BSA;10mLの1X濃度のGlutaMAX(商標);1mLの2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、900mLのMCDB−131培地。ステージ3基本培地に50ng/mLのFGF−7;100nMのLDN−193189;2μMのRA;0.25μMのSANT−1;及び400nMのTPBを補充した。培地交換24時間後、使用済み培地を、LDN−193189を除いて、上記添加剤を含む新鮮な培地と再度置換した。その培地で48時間細胞を培養した。ステージ3を通して、30%DO及び7.0のpHを維持した。
【0180】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ3培地を取り除き、ステージ3で使用されるのと同じ基本培地(ただし0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した)と置換した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)を各バイオリアクターに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。ステージ4を通して、30%DO及び7.4のpHを維持した。
【0181】
ステージ5(7日間):
ステージ4の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ4培地を取り除き、以下のステージ5基本培地と置換した。追加の1.754g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された100mLの2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);8mL/Lの45%グルコース溶液;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;及び1mLの10mg/Lヘパリン溶液を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する900mLのMCDB−131培地ベース。ステージ5基本培地に1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、1μMのγセクレターゼ阻害剤XXI;20ng/mLのベータセルリン;0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した。ステージ5の開始の48時間後、使用済み培地を取り除き、同じ新鮮な基本培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を再度交換し、同じ新鮮な培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を再度交換し、γセクレターゼ阻害剤XXI及びSANTが除外されたことを除いて、同じ新鮮な培地及び添加剤と置換した。48時間後、使用済み培地を取り除き、同じ新鮮な培地及び添加剤と置換した。細胞をステージ5の終わりまで更に24時間培養した。ステージ5を通して、30%DO及びpH7.4を維持した。
【0182】
ステージ6(7日間):
ステージ5の終わりに(分化の19日目)、細胞を無菌溶接及び蠕動ポンプを介して3リットルリアクターから取り出した。次に細胞をカウントし、重力沈降させ、500,000細胞/mLの正常に戻した分布状態でステージ6培地(以下に詳述される)に再懸濁させ、55RPMで撹拌される2つの0.5リットル使い捨てスピナーフラスコ(Corning)に追加し、高グルコース(25.5mM)又は低グルコース(5.5mM)を含有する培地のどちらかで、5%CO2加湿37℃インキュベータにドリフト条件下で7日間維持した。1つのフラスコは、以下の培地及び添加剤を含有した。追加の1.754g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された100mLの2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);8mL/Lの45%グルコース溶液(25.5mMの最終グルコース濃度);ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;及び1mLの10mg/Lヘパリン;及び10μMのALK5阻害剤IIを補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する300mLのMCDB−131培地ベース。第2のフラスコは、以下の培地及び添加剤を含有した。追加の1.754g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された100mLの2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;及び1mLの10mg/Lヘパリン;及び10μMのALK5阻害剤IIを補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウム及び5.5mMの基礎グルコース濃度を含有する300mLのMCDB−131培地ベース。ステージ5の開始の48時間、96時間、及び120時間後、使用済み培地を取り除き、同じ新鮮な基本培地及び添加剤と置換した。ステージ6を、開始から144時間後に終了した(分化26日目)。
【0183】
分化プロセスを通じて、サンプルをリアクターから収集し、表Xに示されるように全細胞数、及び
図27に示されるようにmRNA発現(OpenArray(登録商標)qRT−PCR)について解析した。ステージ3、4、5、及び6の終わりに、サンプルを、フローサイトメトリー(表XII)を使用してタンパク質発現について分析した。
【0184】
ステージ3の完了時、ほとんど全ての細胞が内胚葉転写因子(FOXA2)及び膵特異的転写因子(PDX1)の両方を発現したことが観察された。フローサイトメトリーによって、NKX6.1(〜20%)を発現した少数の細胞が検出され、NEUROD1発現細胞はほとんど検出されなかった(表XII)。ステージ4の終わりに、サンプルを、フローサイトメトリーによってNKX6.1、NEUROD1、PDX1、FOXA2、CDX2、及びKi67の発現について再度解析した(表XII)。興味深いことに、ステージ3の終わりからステージ4の終わりまで、NKX6.1発現集団は、細胞の91%を超えるまで増加し、これらの細胞は、内胚葉及び膵臓の特異化を保持した(PDX1及びFOXA2発現細胞が>99%)。しかしながら、細胞の限定された集団(<8%)だけが、内分泌ホルモン細胞に特徴的なマーカー(Islet1、CHGA、NEUROD1、及びNKX2.2)を発現した。ステージ5の完了時に、内分泌ホルモン細胞に特徴的なマーカーに対して陽性である細胞の割合は実質的に増加し、ステージ4の終わりの10%未満から、NEUROD1に対して陽性である細胞76%及びインスリンに対して陽性57%まで上がった。更に、細胞の全集団は、大部分がNKX6.1(81%)及びPDX1(>97%)発現をし続けた。Ki67に対して陽性である細胞の割合によって測定される増殖のレベルは、約18%であり、内胚葉系腸細胞に対するマーカー、CDX2は、<3.0%で非常に低かった。これらのデータは、島様の、及び特にβ細胞様の集団が、リアクター内で生じていたことを示す。
【0185】
ステージ5の完了時に、細胞を3リットルの撹拌タンクリアクターから取り出し、5%CO2、37℃、加湿インキュベータに維持された500mLスピナーフラスコに分割した。スピナーフラスコを、基本培地のグルコース濃度を除いて同様の条件下で処理した。試験された2つのグルコース条件は以下のとおりであった。低グルコース−5.5mM初期基礎グルコース濃度(「LG」)、又は高グルコース−25.5mM初期基礎グルコース濃度(「HG」)(表XIV)。どの条件においても7日間ステージ6で処理した細胞は、内分泌ホルモン細胞、及び特に膵β島細胞に特徴的なマーカーにおいてほぼ増加を示した。ステージ6の7日目の終わりに、細胞のほぼ半分は、PAX6に対して陽性であり、更に60%は、NEUROD1 & NKX6.1、又はインスリン& NKX6.1に対して共陽性であった(表XIII)。加えて、この系で生成された細胞は、高濃度のPDX1(>81%)を保持し、Ki67に対して陽性である細胞の割合によって測定される増殖のレベルの減少を実証した(表XIVで約12%)。
【0186】
これらの結果は、細胞がステージ5に入ると、劇的かつ一過性のNGN3の誘導があることを示すOpenArray(登録商標)qRT−PCRデータによって支持された(
図27A)。この後に、NEUROD1発現(
図27B)、並びにそれぞれ
図27C〜Jに示されるクロモグラニンA(CHGA)、クロモグラニンB(CHGB)、グルカゴン(GCG)、島関連ポリペプチド(IAPP)、Islet1(ISL1)、MAFB、PAX6、及びソマトスタチン(SST)などの島形成及び内分泌ホルモン細胞に関連する他の遺伝子での持続的誘導が続く。島特異的遺伝子の誘導に加えて、NKX6.1、NKX2.2、MNX1/HB9、及びUCN3(それぞれ
図27P〜S)などのβ細胞の形成及び機能に必要な転写因子と同様に、インスリン(INS;
図27K)、グルコース6ホスファターゼ2(G6PC2;
図27L)、PCSK1及び2(
図27M及びN)、亜鉛輸送体(SLC30A8;
図27O)で観察されるように、β細胞特異的遺伝子もまたステージ5で誘導され、ステージ6に至るまで持続された。他に取り得る運命の形成を示すCDX2及びZIC1などの遺伝子の発現は、qRT−PCRによる検出の限界に近いか又は限界を下回った(データは示さず)。
【0187】
【表13】
[この文献は図面を表示できません]
【0188】
【表14】
[この文献は図面を表示できません]
【0189】
【表15】
[この文献は図面を表示できません]
【0190】
【表16】
[この文献は図面を表示できません]
【0191】
(実施例5)
この実施例は、撹拌タンクの無菌で閉じたバイオリアクター内で、転写因子、PDX1を発現する細胞の集団からのインスリン発現細胞の形成を実証する。このプロセスから生成されたインスリン陽性細胞は、PDX1発現を保持し、NKX6.1を共発現した。この細胞の集団を、免疫力が低下したマウスの腎臓被膜の中に移植したとき、生着の4週間以内にヒトCペプチドの検出可能血中濃度を産生した。
【0192】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、0.5%w/vのFAF−BSAを補充したE8(商標)培地で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。集団内の約600,000,000〜1,000,000,000の凝集細胞を、遠心管に移し、100mLの1X DPS−/−を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632(Enzo Life Sciences)及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアル(Corning)に小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートCryoMed(商標)34Lフリーザーを使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高密度で凍結保存した単一細胞をISMとして次に使用した。
【0193】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(DASGIP)にmLあたり295,000生細胞の播種濃度で播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、BSCに移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容する培地移動ボトル(Cap2V8(登録商標),Sanisure,Inc)内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0194】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、使用済みE8(商標)培地を取り除き、分化培地を追加することによって3リットルリアクター内の分化が開始された。分化プロトコルを以下に説明する。
【0195】
ステージ1(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを10%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に設定し、CO2調節によってpHを7.4に設定した。ステージ1基本培地を、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地を使用して調製した。細胞を、100ng/mLのGDF8及び3μMのMCX化合物を補充した1.5Lの基本培地で1日間培養した。24時間後、培地交換を上述のように完了し、100ng/mLのGDF8を補充した新鮮な1.5Lの基本培地をリアクターに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。
【0196】
ステージ2(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に設定し、CO2調節によってpHを7.4に設定した。ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、1.5Lの同じ培地(ただし50ng/mLのFGF7を補充した)と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した300mLの新鮮なステージ2基本培地と置換した。
【0197】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了時、かつ培地交換の直前に、細胞を、カウントし、重力沈降させ、1.5リットル中に2,000,000細胞/mLの正常に戻した分布状態で以下のステージ3基本培地に再懸濁させた。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ3基本培地に50ng/mLのFGF−7;100nMのLDN−193189;2μMのRA;0.25μMのSANT−1;及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に、及びCO2調節により7.0pHに設定した。培地交換24時間後、使用済み培地を、LDN−193189を除いて、上記添加剤を含む1.5Lの新鮮なステージ3培地と再度置換した。細胞をその後、この培地でステージ3の終わりまで48時間培養した。
【0198】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了時、使用済み培地を取り除き、各バイオリアクター内で以下からなる1.5Lのステージ4基本培地と置換した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ4基本培地に0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃で維持し、70rpmで撹拌した。気体及びpHを、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に、及びCO2調節により7.4のpH設定値に調節した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)をバイオリアクターに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。
【0199】
ステージ5及び6:
ステージ4の3日目の終わりに、丸い凝集集団をバイオリアクターから汲み出し、55RPMで撹拌される2つの別個の0.5リットルのCorning使い捨てスピナーフラスコに移し、5%CO2を補充した37℃加湿インキュベータ内で維持した。その後、各容器内の細胞を、以下からなる300mLの作業体積のステージ5基本培地で維持した。追加の1.75g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;10mg/Lヘパリン;3,3’,5−トリヨード−L−チロニンナトリウム塩として1μMのT3、及び10μMのALK5阻害剤IIを補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する300mLのMCDB−131培地。
【0200】
使用されるステージ5基本培地を、以下のような2つの異なる条件A又はBに従って補充した。
a.条件Aについては、100nMのLDN、100nMのSANT、及び10μMの硫酸亜鉛を補充したステージ5+基本培地を利用することによってステージ5を開始した。この培地を、ステージを開始して24及び48時間後に交換した。ステージ5を開始して72時間後に、使用済み培地を取り除き、100nMのXX γセクレターゼ阻害剤、100nMのLDN、及び10μMの硫酸亜鉛を補充したステージ5基本培地で細胞を処理することによって、ステージ6を開始した。この培地をその後、8、9、及び11日目の開始時を除き11日間24時間ごとに置換した。
b.条件Bについては、100nMのγセクレターゼ阻害剤、XX;20ng/mLのベータセルリン;0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充したステージ5基本培地を利用することによってステージ5を開始した。ステージ5の開始の48時間後、使用済み培地を取り除き、300mLの同じ培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を取り除き、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5基本培地と置換した。48時間後、培地を再度交換し、同じ培地と置換した。
【0201】
分化プロセスを通じて、解析のために懸濁培養から細胞サンプルを収集した。サンプルを、mRNA発現(OpenArray(登録商標)qRT−PCR)、及びタンパク質発現(フローサイトメトリー及び蛍光免疫組織化学)について解析した。
【0202】
ステージ4の終わりから6日後(条件A−ステージ6、3日目;条件B−ステージ5、6日目)、両方の処理からの細胞が、膵内分泌腺及びβ細胞の形成と一致するフローサイトメトリーによって検出可能なタンパク質の集団を発現した(表XV)ことが観察された。両方の処理が、高い割合のPDX1(>91%)発現細胞を生成し、細胞は、インスリン及びNKX6.1(表示せず)を共発現し始めた。興味深いことに、条件Aに従って処理された細胞は、増殖のレベルが低下したことが観察された。すなわちAでは細胞の15.5%及びBでは27.3%がKi67を発現した(表XV)。更に、条件Aで処理された細胞は、条件Bより多くのNKX6.1発現細胞、NEUROD1発現細胞、及びNKX6.1/NEUROD1共発現細胞を有し(表XV)、条件Aでの処理が、膵内分泌腺に特徴的かつβ細胞を形成することができる遺伝子を発現する細胞の、より大きな集団を生成したことを示した。
【0203】
これらのフローサイトメトリーデータは、細胞がステージ5に入ると、NEUROD1発現の持続的誘導(
図28B)と相関している両方の条件下でNGN3の誘導(
図28A)があったことを示したOpenArray qRT−PCRデータによって支持された。条件Aでは、ステージ5でのNGN3の初期誘導後、γセクレターゼ阻害剤、XXでの処理に対応したステージ6の開始時にNGN3の第2の誘導があった。条件Aに関するNGN3発現のこの二重のピークは、NKX6.1の持続的発現と同時に発生し(
図28C)、クロモグラニンA(CHGA)、クロモグラニンB(CHGB)、グルカゴン(GCG)、島関連ポリペプチド(IAPP)、MAFB、PAX6、及びソマトスタチン(SST)(それぞれ
図28D〜J)などの島形成及び内分泌ホルモン細胞と関連する複数の遺伝子の発現と相関した。更に、β細胞の形成、成熟、及び機能に必要なMNX1/HB9、及びUCN3転写因子(それぞれ
図28O及びP)と同様に、β細胞の機能に必要な遺伝子もまた、インスリン(INS;
図28K)、グルコース6ホスファターゼ2(G6PC2;
図28L)、PCSK1(
図28M)、及び亜鉛輸送体(SLC30A8;
図28N)について観察されるように、ステージ5で誘導され、ステージ6に至るまで持続された。
【0204】
ステージ6の11日目の終わりに、条件Aからの5×10
7分化細胞を、50mL円錐内の培地から分離し、その後1.18g/L重炭酸ナトリウム及び0.2%w/vのFAF−BSAを含有するMCDB−1313培地で2回洗浄した。細胞を洗浄(was)培地に再懸濁させ、NSGマウスの腎臓被膜下への移植前に室温にて約5時間保持した。各動物は、5×10
6細胞の投与を受けた。移植の前に、これらの細胞は、膵内分泌腺及びβ細胞と一致するタンパク質を発現した(表XVI)。また最も早く測定した時点、移植4週間後に、及び18週間の実験の過程の間中、夜間絶食及びIPグルコースボーラス60分後の眼窩後方採血の後に、腹腔内グルコース注射に応じてヒトCペプチドが検出された(N=7動物、
図29)。
【0205】
【表17】
[この文献は図面を表示できません]
【0206】
【表18】
[この文献は図面を表示できません]
【0207】
(実施例6)
この実施例は、撹拌タンクの無菌で閉じたバイオリアクター内で、PDX1を発現する細胞の集団からのインスリン発現細胞の形成を実証する。このプロセスから生成されたインスリン陽性細胞は、PDX1発現を保持し、NKX6.1を共発現した。この細胞の集団を、免疫力が低下したマウスの腎臓被膜の中に移植したとき、生着の2週間以内にヒトCペプチドの検出可能血中濃度を産生した。
【0208】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、0.5%w/vのFAF−BSAを補充したE8(商標)培地で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。集団内の約600,000,000〜1,000,000,000の凝集細胞を、遠心管に移し、100mLの1X DPS−/−を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632(Enzo Life Sciences)及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアル(Corning)に小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートCryoMed(商標)34Lフリーザーを使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高密度で凍結保存した単一細胞をISMとして次に使用した。
【0209】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(DASGIP)にmLあたり295,000生細胞の播種濃度で播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、BSCに移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容する培地移動ボトル(Cap2V8(登録商標),Sanisure,Inc)内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0210】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、使用済みE8(商標)培地を取り除き、分化培地を追加することによって3リットルリアクター内の分化が開始された。分化プロトコルを以下に説明する。
【0211】
ステージ1(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを10%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に設定し、CO2調節によってpHを7.4に設定した。ステージ1基本培地を、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地を使用して調製した。細胞を、100ng/mLのGDF8及び3μMのMCX化合物を補充した1.5Lの基本培地で1日間培養した。24時間後、培地交換を上述のように完了し、100ng/mLのGDF8を補充した新鮮な1.5Lの基本培地をリアクターに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。
【0212】
ステージ2(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に設定し、CO2調節によってpHを7.4に設定した。ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、1.5Lのステージ1基本培地として使用される同じ培地(ただし50ng/mLのFGF7を補充した)と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した300mLの新鮮な基本培地と置換した。
【0213】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了時、かつ培地交換の直前に、細胞を、カウントし、重力沈降させ、1.5リットル中に2,000,000細胞/mLの正常に戻した濃度で以下のステージ3基本培地に再懸濁させた。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ3基本培地に50ng/mLのFGF−7;100nMのLDN−193189;2μMのRA;0.25μMのSANT−1;及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に、及びCO2調節により7.0pHに設定した。培地交換24時間後、使用済み培地を、LDN−193189を除いて、上記添加剤を含む1.5Lの新鮮なステージ3基本培地と再度置換した。細胞をその後、この培地でステージ3の終わりまで48時間培養した。
【0214】
ステージの終わりに、150mLの細胞(1.05×10
6生細胞/mL)を元の3リットルリアクターから取り出し、無菌で0.2Lリアクターに移した。残りの1.35Lのリアクター容量を以下に説明されるステージ4に従って更に分化した。また、このプロセス及び細胞を、以下、「標準プロセス」及び「標準細胞」と称する。また一方、0.2Lリアクターに移された細胞は、そうしないで、以下のステージ4に従い分化するのではなく、むしろ以下に説明されるようにステージ5に従い更に分化された。また、このプロセス及び細胞を、以下、「スキップ4プロセス」及びスキップ4細胞」と称する。スキップ4プロセスについては、凝集細胞集団を、ステージ3の後に無菌溶接及び蠕動ポンプを使用して0.2Lバイオリアクター(「スキップ4」とラベル付けされた)に取り出して、1.05×10
6細胞/mLでステージ5培地曝露を開始した。
【0215】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了時、使用済み培地を取り除き、各バイオリアクター内で以下からなる1.5Lのステージ4基本培地と置換した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ4基本培地に0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃で維持し、70rpmで撹拌した。気体及びpHを、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に、及びCO2調節により7.4のpH設定値に調節した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)をバイオリアクターに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。
【0216】
凝集細胞集団(150mL、0.9×10
6生細胞/mL)を、ステージ4の3日目の終わりに標準プロセス用に無菌溶接及び蠕動ポンプを使用して取り出し、0.2Lバイオリアクター(「標準」とラベル付けされた)に移してステージ5培地曝露を開始した。加えて、いくつかのステージ4、3日目細胞(45×10
6細胞/mL)を、50mL円錐内の培地から分離し、次に1.18g/L重炭酸ナトリウム及び0.2%w/vのFAF−BSAを含有するMCDB−1313培地で2回洗浄した。細胞を、洗浄培地に再懸濁させ、室温で約5時間保持し、その後夜間絶食及びIPグルコースボーラス60分後の眼窩後方採血の後に、腹腔内グルコース注射に応じてヒトCペプチド検出を使用した生体内機能のアッセイのために、動物ごとに5×10
6細胞にて、NSGマウスの腎臓被膜下に移植した(N=7動物)。
【0217】
ステージ5(7日間):
標準及びスキップ4の0.2Lバイオリアクターの中への細胞の播種に続いて、使用済み培地を取り除き、追加の1.75g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;10mg/Lヘパリン(Sigma Aldrich;カタログ番号H3149−100KU)を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有するMCDB−131培地ベースからなる150mLのステージ5+基本培地と置換した。このステージ5基本培地に、1μMのT3、10μMの2−(3−(6−メチルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1,5−ナフチリジン(「ALK5阻害剤II」)、1μMのγセクレターゼ阻害剤XXI;20ng/mLのベータセルリン(R&D Systems、カタログ番号261−CE−050);0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した。ステージ5の開始の48時間後、使用済み培地を取り除き、150mLの同じ培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を取り除き、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5+基本培地と置換した。48時間後、培地を再度交換し、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5+基本培地と置換し、ステージ5の終わりまで24時間培養した。ステージ5の7日間の終わりに、標準及びスキップ4プロセスのそれぞれからの細胞を、上述の方法によって生体内機能について分析するために、NSGマウスの腎臓被膜の中に移植した。
【0218】
分化プロセスを通じて、解析のために懸濁培養から細胞サンプルを収集した。サンプルを、mRNA発現(OpenArray(登録商標)qRT−PCR)について、及びフローサイトメトリーによってタンパク質発現について解析した。ステージ3培地からステージ5培地へ分化を直接移動する、スキップ4プロセスは、標準プロセスに従って分化された細胞と比較して、島細胞、内分泌ホルモン発現細胞、及びβ細胞と関連する遺伝子の発現の増加をもたらしたことが観察された。スキップ4プロセスを使用すると、他に取り得る腸の運命と関連する遺伝子は、より低い発現を示したが(ALB及びCDX2;
図30B及びD)、一方内分泌ホルモン細胞の形成及び機能に必要な遺伝子は、標準プロセスに見られるより多くの発現を有した(
図30A、C、E、F、G、H、J、M、O、Q、S、T、X、及びA’に示されるようなABCC8、ARX、CHGA、CHGB、G6PC2、GCG、IAPP、MAFB、NEUROD1、NKX2.2、PAX4、PAX6、PPY、及びSST)。更に、β細胞形成に必要な遺伝子(NKX6.1及びPDX1;
図30R及びW)は、スキップ4及び標準プロセスの細胞の両方について、ステージ5の6日目までに同様の濃度で発現した。β細胞の機能及び維持に必要な遺伝子(IAPP、INS、ISL1、HB9、PCSK1、PCSK2、SLC30A8、及びUNC3;
図30J、K、L、M、U、V、Z、及びB’)又はβ細胞増殖に必要な遺伝子(WNT4A、
図30C’)は、ステージ5培地で処理されたスキップ4細胞において同様又はより高い濃度で発現した。
【0219】
これらのデータは、スキップ4細胞において、より早い時点で、かつより長い期間、より高い濃度のNGN3誘導(内分泌腺特異化に必要とされる)を示したデータと相関したが、一方PTF1A発現(膵外分泌腺に必要とされる)は、最高で標準プロセスによって生成される濃度の1/20に達するだけであった。これらの結果は、スキップ4リアクター内の細胞は、PTF1Aの短い誘導さえもないときに膵内分泌腺の運命にロバストに特定されたことを示し、PTF1Aがβ細胞を生体外で形成するのに必要とされないことを示唆する。この観察結果は、PTF1Aが更に分化する前にステージ4で発現された当該技術分野において見られる結果、又はステージ4細胞が、ステージ4でPDX1/NKX6.1/PTF1Aのシグネチャによって特徴付けられ、次にβ様細胞に生体外で更に発達される米国特許公報第2014/0271566(A1)号に記載された発達の想定されたモデルと異なるので重要である。
【0220】
ステージ4、3日目に存在するPTF1A発現(
図30Y)細胞集団は、ほぼ均質なPDX1/NKX6.1共発現集団を有し、NEUROD1陽性細胞(フローサイトメトリーでKX6.1が96.2%、PDX1が99.6%、及びNEUROD1が2.4%)をほとんど有しなかった。細胞は、NSGマウスの腎臓被膜の中に挿入され(5,000,000細胞/動物;N=7)、それから16週間に渡って、血液サンプル中にヒトCペプチドは検出されなかった(データ表示せず)。4つのステージ分化プロセス中に誘導される富化させたNXK6.1/PDX1/PTF1A発現細胞集団は、生着の3か月以内に糖尿病を逆転させることができたことが、当該技術分野において以前に実証されていたので、この結果は、予想外であった。
【0221】
ステージ4、3日目(PTF1A発現)細胞が、標準プロセスに従ってステージ5を通して更に分化されると、移植片は、2週目で検出可能な血中濃度のヒトCペプチドを分泌し(
図31)、スキップ4プロセスの細胞(低/無PTF1A)と同様に移植後12週目で>0.5ng/mLのヒトCペプチドに達した。これらのデータは、PTF1A発現が、機能的β細胞への更なる成熟を確実にするために必要でも十分でもないことを示す。むしろ、PTF1A発現の上昇は、標準ステージ4をスキップし、≧0.5μMのレチノイン酸、FGF7、及びPKCアゴニスト(TPPB)を含有する培地からγセクレターゼ阻害剤、甲状腺ホルモン(T3)、及びALK5阻害剤あり又はなしを含有する培地へ直接細胞を移動することによって回避され得る代替細胞集団の出現を恐らく示している。
【0222】
これらの結果は実証する。ステージ3でのpHの≦7.2への調節は、NGN3発現を少なくとも80%(
図26E参照:B×B及びB×C、対B×D)に抑制し、PTF1A陽性ステージ4細胞集団を経ることなく、PDX1/NKX6.1/インスリン陽性β様細胞を含有する島様細胞集団に更に直接分化され得るPDX1/NKX6.1共陽性、PTF1A陰性細胞を発展させることができる。
【0223】
(実施例7)
この実施例は、低培地pH(<7.2)、FGF7、レチノイン酸、及びPKCアンタゴニスト(TPPB)を使用して、撹拌タンクの無菌で閉じたバイオリアクター内で、5ステージの分化プロセスを介しインスリン発現細胞の形成を実証する。ステージ3での低pHの使用は、ステージ3での任意のソニックヘッジホッグ阻害剤(SANT01又はシクロパミンなど)又はTGF−β/BMPシグナル伝達阻害剤又は活性化物質を使用する必要性を省略し、ステージ4の終わりにPDX1(94%)及びNKX6.1(87%)発現細胞の集団を生じたことがわかった。これらの細胞から生成されたステージ5リアクター集団は、高い割合のNEUROD1/NKX6.1共陽性細胞、及びPDX1及びNKX6.1共発現を伴うインスリン陽性細胞を有し、この3つ(NEUROD1、PDX1、NKX6,1)は、適切な膵β細胞機能に対してインスリンと共発現されるはずである。一致して、この細胞のステージ5集団が、凍結保存され、解凍され、免疫力が低下したマウスの腎臓被膜の中に移植されたとき、移植片は、生着の2週間以内に検出可能な血中濃度のヒトCペプチド、及び平均で生着4週目で>1ng/mLのCペプチドを産生した。
【0224】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、動的懸濁液の状態の、0.5%w/vのFAF−BSAを補充したE8(商標)培地で、丸い凝集集団として≧4の継代の間増殖させた。この集団をそれから、次の方法を通じて単一細胞及び2〜10細胞の集団として凍結した。集団内の約600,000,000〜1,000,000,000の凝集細胞を、遠心管に移し、100mLの1X DPS−/−を使用して洗浄した。洗浄後、ほぐれた細胞凝集体のペレットにStemPro(登録商標)Accutase(登録商標)酵素を50体積%、及びDPBS−/−を50体積%の溶液30mLを添加することによって、次に細胞凝集体を酵素的に分解した。細胞集団をピペットで1〜3度上下させてから、断続的に室温で約4分間旋回させ、その後80〜200rcfで5分間遠心分離した。次いで、細胞ペレットを撹乱させることなく、Accutase(登録商標)の上澄を可能な限り完全に吸引した。遠心管を硬質面に約4分間軽くたたきつけて、この集団を単一細胞及び2〜10細胞からなる集団にほぐした。4分後、細胞を、10μMのY−27632(Enzo Life Sciences)及び0.5%w/vのFAF−BSAを補充した100mLのE8(商標)培地に再懸濁させ、80〜200rcfで5〜12分間遠心分離した。上澄を次に吸引し、mLあたり100,000,000〜150,000,000細胞の最終濃度を得るために冷たい(≦4℃)Cryostor(登録商標)Cell Preservation Media CS10を滴加した。この細胞溶液を、2mLの極低温バイアル(Corning)に小分けにしている間氷浴中において保持し、その後次のようにコントロールレートCryoMed(商標)34Lフリーザーを使用して細胞を凍結した。チャンバを4℃に冷却し、この温度を試料バイアルの温度が6℃に達するまで保持し、次に試料が−7℃に達するまでチャンバの温度を毎分2℃下げ、その時点でチャンバが−45℃に達するまでチャンバを20℃/分冷却した。次にチャンバの温度を、温度が−25℃に達するまで10℃/分で短時間に上昇させ、その後チャンバを試料バイアルが−40℃に達するまで0.8℃/分で更に冷却した。次にチャンバの温度を、チャンバが−100℃に達するまで10℃/分で冷却し、その時点で、次にチャンバが−160℃に達するまでチャンバを35℃/分冷却した。チャンバの温度を、次に−160℃で少なくとも10分間保持し、その後バイアルをガス相液体窒素保存庫に移動した。これらの高密度で凍結保存した単一細胞をISMとして次に使用した。
【0225】
ISMのバイアルを液体窒素保管庫から取り出し、解凍し、3リットルのガラスの撹拌懸濁液タンクバイオリアクター(DASGIP)にmLあたり295,000生細胞の播種密度で播種するために使用した。バイアルを液体窒素保管庫から取り出し、37℃の水浴に120秒間迅速に移して解凍した。バイアルを、BSCに移動させ、解凍された内容物を、2mLガラスピペットを介して50mL円錐管に移した。次に、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのRhoキナーゼ阻害剤Y−27632を補充した10mLのE8(商標)培地を、その管に滴下方式で添加した。細胞を、80〜200rcfで5分間遠心分離した。管からの上澄を吸引し、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した10mLの新鮮なE8(商標)培地を添加し、細胞を含む体積を、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した450mLのE8(商標)培地を収容する培地移動ボトル(Cap2V8(登録商標),Sanisure,Inc)内にピペットで移した。その後、蠕動ポンプによって、無菌C−Flex(登録商標)チュービング溶接を介して、ボトル内容物をバイオリアクター内に直接ポンプで注入した。37℃に予熱し、70rpmで撹拌した、0.5%w/vのFAF−BSA及び10μMのY−27632を補充した1000mLのE8(商標)培地で、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O
2、及びN
2)、及び5%の制御されたCO
2分圧によって、バイオリアクターを調製した。0.225×10
6細胞/mL(濃度範囲:0.2〜0.5×10
6細胞/mL)の目標濃度を得るために、リアクターに播種した。
【0226】
ひとたびリアクターに播種すると、細胞は、撹拌リアクター内で丸い凝集集団を形成した。培養下で24時間後、元の体積の80%超を取り除き、0.5%w/vのFAF−BSAを補充した1.5LのE8(商標)培地を足し戻したように(新鮮培地)、培地は部分的に交換された。この培地交換プロセスを、播種から48時間後に繰り返した。丸い凝集集団として懸濁培養下で3日後、使用済みE8(商標)培地を取り除き、分化培地を追加することによって3リットルリアクター内の分化が開始された。分化プロトコルを以下に説明する。
【0227】
ステージ1(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを10%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に設定し、CO2調節によってpHを7.4に設定した。ステージ1基本培地を、追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地を使用して調製した。細胞を、100ng/mLのGDF8及び2μMのMCX化合物を補充した1.5Lのステージ1基本培地で1日間培養した。24時間後、培地交換を上述のように完了し、100ng/mLのGDF8を補充した新鮮な1.5Lの基本培地をリアクターに追加した。更なる培地交換をしないで、細胞を48時間維持した。
【0228】
ステージ2(3日間):
リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に設定し、CO2調節によってpHを7.4に設定した。ステージ1の完了後、培地交換を上述のように完了し、それによって使用済みステージ1培地を取り除き、1.5Lのステージ1基本培地として使用される同じ培地(ただし50ng/mLのFGF7を補充した)と置換した。培地交換から48時間後、使用済み培地を再度取り除き、50ng/mLのFGF7を補充した1.5Lの新鮮な基本培地と置換した。
【0229】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了時、かつ培地交換の直前に、細胞を、カウントし、重力沈降させ、1.5リットル中に2,000,000細胞/mLの正常に戻した濃度で以下のステージ3基本培地に再懸濁させた。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ3基本培地に50ng/mLのFGF−7;1μMのRA;及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃の温度に設定し、70rpmで連続的に撹拌した。気体及びpHコントロールを30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に、及びCO2調節により7.0pHに設定した。培地交換24時間後、使用済み培地を、上記添加剤を含む1.5Lの新鮮なステージ3基本培地と再度置換した。細胞をその後、この培地でステージ3の終わりまで48時間培養した。
【0230】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了時、使用済み培地を取り除き、各バイオリアクター内で以下からなる1.5Lのステージ4基本培地と置換した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ4基本培地に0.25μMのSANT−1及び400nMのTPBを補充した。リアクターを、37℃で維持し、70rpmで撹拌した。気体及びpHを、30%の溶存酸素設定値(調節された空気、O2、及びN2)に、及びCO2調節により7.4のpH設定値に調節した。ステージ4の開始の48時間後、3.2mL/Lの45%グルコース溶液(8mMグルコースボーラス)をバイオリアクターに追加し、その培地で更に24時間細胞を培養した。
【0231】
ステージ5(8日間):
ステージ4の3日目の終わりに、使用済み培地を取り除き、以下からなる1.5Lのステージ5基本培地と置換した。追加の1.75g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;10mg/Lヘパリンを補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。最初の供給では、ステージ5基本培地に3,3′,5−トリヨード−L−チロニンナトリウム塩として1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、1μMのγセクレターゼ阻害剤、XXI;20ng/mLのベータセルリン;0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した。ステージ5の開始48時間後、使用済み培地を取り除き、1.5Lの同じ新鮮培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を取り除き、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5基本培地と置換した。48時間後、培地を再度交換し、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5基本培地と置換し、ステージ5の終わりまで48時間培養した。
【0232】
ステージ5の8日目の終わりに(最後の供給から48時間後)、凝集細胞集団を無菌溶接及び蠕動ポンプを介しリアクターから取り出し、ペレットの中に遠心分離した。細胞を冷凍保存するため、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム、30%のゼノフリーKSR、10%のDMSO、及び2.5%のHEPES(最終濃度25mM)を有する57.5%のMCDB131からなる冷凍保存培地に、細胞を移植した。細胞集団を周囲温度で冷凍保存培地内に懸濁した後で、クライオバイアルを自動凍結保存装置(CRT)に15分以内で移植した。次いで、チャンバ温度を45分間4℃に下げ、2.00℃/分でー7.0℃(試料)まで更に下げた。サンプルを次に急速に冷却し、25.0℃/分の速度でチャンバの温度を−45.0℃まで下げた。次いで補正上昇が、チャンバ温度を−25.0℃(チャンバ)まで10.0℃/分、上昇させることによって提供された。サンプルを次に、温度が−40.0℃に達するまで0.2℃/分で冷却した。チャンバを次に、−160℃まで35.0℃/分の速度で冷却し、その温度で15分間保持した。CRF運転の終了時に、試料をガス相液体窒素保管容器に移植した。
【0233】
細胞をガス相液体窒素で保存した後、保管場所から除去することによって細胞を解凍し、37℃の水浴に移植した。小さい氷晶がバイアルに残るまで、バイアルを2分未満水浴内で静かに渦流した。次いで、バイアル内容物を50mLの円錐に移植し、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム及び2%のBSAを有するMCDB131培地を使用して、合計20mLの最終体積になるまで、滴下式で2分以上希釈した。全細胞数を、次にNucleocounter(登録商標)によって測定した。細胞は、次に、50mL円錐内の培地から分離され、上澄は除去され、細胞は2.43g/L重炭酸ナトリウム及び2%BSAを含む新鮮なMCDB131培地に再懸濁され、mLあたり1,000,000細胞の細胞濃度で75mLの容量にて満たされた125mLのCorning(登録商標)スピナーフラスコに移動された。細胞を、55RPMで撹拌される加湿、5%CO2インキュベータ内で一晩維持し、翌日細胞を、フローサイトメトリーによって解析した。細胞は、3回の反復でNKX6.1/NEUROD1共陽性が50%超(
図32)、NKX6.1/NEUROD1共陽性が80%超(
図33)、及び解凍後NKX6.1/インスリン共陽性が少なくとも35%(
図34)であった。更に、これらの細胞をNSGマウスの腎臓被膜下に移植したとき(投与あたり5,000,000細胞;N=7)、全ての動物は、検出可能な濃度のCペプチドを有し、またそれらの動物は、移植の4週間以内に算術平均(mean average)で>1ng/mLのCペプチドを分泌した。移植6週間後に、移植された7匹の動物のうち5匹が、グルコース応答性インスリン(ヒトCペプチド)の非刺激レベルを超える分泌を示し(
図35)、12週目で7匹の動物全てが、グルコース応答性インスリン(ヒトCペプチド)の分泌を示した(
図36)。
【0234】
これらのデータは、NKX6.1/インスリン共発現細胞は、ステージ3でpH及び溶存酸素調節を使用して生成されて、撹拌タンクリアクター内の5番目のステージを介しNEUORD1/NKX6.1/PDX1/インスリン共発現へと更に分化され得るステージ4でNKX6.1/PDX1陽性細胞の収率もまた最大にしながら、TGF−β/BMP又はソニックヘッジホッグシグナル伝達をブロックするために、タンパク質又は小分子の必要性を省略することができることを示す。細胞は、冷凍保存し、解凍し、移植することができ、移植の4週間以内にグルコース誘発性インスリン分泌(>1ng/mLのCペプチド)によって測定されるように生体内で機能し、移植後12週目でグルコース応答性を実証するだろう。
【0235】
(実施例8)
本実施例は、3Lの使い捨てスピナーフラスコを使用して撹拌される懸濁培養内でインスリン発現細胞の形成を実証する。培地及び気体を、取り外し可能な通気式サイドアームキャップを通じて交換した。インスリン陽性細胞は、細胞がPDX1を最初に発現し、次にNKX6.1も共発現した段階的なプロセスで形成された。これらの共発現細胞は、次に、懸濁培養内にある間にPDX1及びNKX6.1と組み合わせて、インスリン及びその後MAFAの発現を得た。
【0236】
ヒト胚幹細胞株H1(WA01 cells,WiCell Research Institute(Madison,Wisconsin))の細胞を、Matrigel(商標)を付着マトリックスとして使用してmTeSR1(商標)培地で接着培養条件において4継代の間増殖させ、より大きな容器の中に持続的に拡大した。細胞は、第4の継代で複数の5層の細胞スタック(「CS5」)の中に播種された。継代72時間後、各CS5内の細胞密集度は、70〜80%に達した。使用済み培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄した。37℃に予熱した300mLのVersene(商標)を次いで細胞に追加し、細胞を次に37℃(5%CO
2)で8.5分間インキュベートした。インキュベーション時間後、フラスコ内に約50mLの残留Versene(商標)を残してEDTAを注意深くフラスコから取り出した。細胞層を、それから細胞集団を除去するために容器の断続的なタップを受けながら、残留Versene(商標)で3分間インキュベートし続けさせた。この残留インキュベーションの3分後、10μMのY−27632(Enzo Life Sciences)を含有する250mLのmTeSR1(商標)をフラスコに追加して、細胞分離プロセスをクエンチし、浮き上がった細胞集団を収集した。洗浄培地を次に丸型ボトルに移し、CS5を、150μMのY−27632を含有する追加の150mLのmTeSR1(商標)で洗浄し、第1の洗浄液をためた。200,000,000細胞を次に未塗装であるが、組織培養処理したCS1に移し、追加の培地を補充して、mLあたりの1,000,000細胞の細胞密度で200mLの最終体積を得た。
【0237】
浮き上がった細胞を含有するCS1を37℃で2時間インキュベートした。2つのCELIスタックポート間に結合された、ポンプチュービングを有する、閉ループのC−flexチュービングを使用して、細胞懸濁液を蠕動ポンプによって75rpmで5分間微粉化して、凝集体を均質化した。ポンプチュービングアセンブリを次に、0.2μMの通気式キャップと置換し、12〜22時間の夜間インキュベーション用に37℃インキュベータに戻した。インキュベーション後、細胞は、多能性細胞の丸い球状凝集集団を形成した。
【0238】
新しく形成された集団を含有する600mLの3つのCS1容器を、次にそれぞれ、結果として得られるmLあたり約300,000細胞の細胞密度で10μMのY−27632を含有する追加の1200mLの新鮮な予熱されたmTeSR1(商標)と共に3L使い捨てスピナーフラスコに移した。スピナーフラスコを次に37℃及び40rpmの撹拌速度でインキュベートした。インキュベーションの24時間後、細胞を撹拌から取り出し、集団をフラスコの底部に8分間沈降させた。その後1.5Lの使用済み培地を、容器の底部に止まっている集団を回避して上部から吸引した。1.5mLの新鮮なmTeSR1(商標)培地を細胞に追加し、それらを40rpmで更に24時間増殖させるためインキュベータ内に戻した。72時間の終わりに、多能性集団は、分化培地に遷移された。分化プロトコルを以下に説明する。
【0239】
ステージ1(3日間):
4つのスピナーフラスコのそれぞれを、動的懸濁液から撹拌なしでBSC内のインキュベータに移した。以下に説明されるように完全培地交換を実行して、残留の使用済み培地だけが新しい培地に持ち越されるようにした。完全培地交換を実行するために、集団を、フラスコの底部まで8分間沈降させた。使用済み培地を、次に300mLだけが残るまで液体の上部から真空吸引を使用して取り除いた。残りの細胞体積を150mL円錐管に移し、800rpmで3分間遠心分離した。真空吸引システムを使用して、残りの使用済み培地を、細胞集団ペレットの破壊なしに取り除いた。ペレットを、次に追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム、MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース(45%水溶液);及びITS−Xの1:50,000希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地を含有する1.8Lの基本培地に再懸濁させた。細胞を、1.8mLのGDF8及び540μLのMCX化合物を補充した1.8Lのステージ1基本培地で1日間培養した。細胞カウントを計数して、分化の開始時にmLあたり500,000細胞の開始密度を確認した。フラスコを次に、下表XVIIに示されるように条件ごとに2種類の速度でスピナープレート上のインキュベータに戻した。スピナーフラスコを、夜間インキュベートした。
【0240】
【表19】
[この文献は図面を表示できません]
【0241】
約24時間後、培地交換を完了して、使用済み培地から約90%を取り除き、1.8mLのGDF8を補充した新鮮な1.8Lの基本培地と置換した。培地交換を実行するために、集団を、フラスコ底部に8分間沈降させ、使用済み培地を300mLだけが残るまで真空吸引を使用して取り除いた。残りの細胞を250mL円形ボトルの中に移し、集団を6分間沈降させ、その後残留使用済み培地の10%以下が次の供給へ移されることを確実にするために、ピペットを使用して培地を取り出して細胞を含有する180mLの培地だけが残されるようにした。残りの細胞及び培地を、次に1.8Lの新鮮培地と共にスピナーフラスコに戻し、48時間インキュベートさせた。
【0242】
ステージ2(3日間):
上述のように完全培地交換を実行して、ステージ1使用済み培地を全て取り除き、細胞を1.8Lのステージ1基本培地として使用される同じ培地(ただし1.8mLのFGF7を補充した)の中に移した。フラスコを次にインキュベータに戻して、48時間培地交換をしないで動的撹拌を維持した。その後180mLの使用済み培地を残して、使用済み培地を再度取り除き、1.8mLのFGF7を補充した1.8Lの新鮮な基本培地を追加した。細胞を次に24時間インキュベートした。
【0243】
ステージ3(3日間):
ステージ2の完了時に、完全培地交換を実行して、ステージ2培地を全て取り出し、細胞を以下の1.5Lの培地に移した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ3基本培地に、1.5mLのFGF−7;75μLのRA;及び120μLのTPBを補充した。培地は、「暗条件」下で調製された。フラスコの全容量を1.8〜2.0Lから1.5〜1.65Lに減少させて、mLあたり約1,500,000〜2,000,000細胞の細胞密度を標的にした。フラスコを24時間インキュベートした。その後150mLの使用済み培地を後に残し、上述の添加剤を含有する1.5Lの新鮮なステージ3基本培地を追加して培地交換を実行した。細胞をその後、この培地でステージ3の終わりまで48時間培養した。
【0244】
ステージ4(3日間):
ステージ3の完了時、完全培地交換を実行して、細胞を以下からなる1.5Lのステージ4基本培地の中に移した。追加の2.4g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);2.5mMグルコース;及びITS−Xの1:200希釈物を補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ4基本培地に150μLのSANT−1及び120μLのTPBを補充した。フラスコを次にインキュベータに戻して、48時間培地交換をしないで動的撹拌を維持した。48時間の終わりに、5.28mLの45%D−グルコース溶液をスピナーに追加し、フラスコを更に24時間に戻した。
【0245】
ステージ5(3日間):
ステージ4の3日目の終わりに、使用済み培地を取り除き、以下からなる1.5Lのステージ5基本培地と置換した。追加の1.75g/L重炭酸ナトリウム;MCDB−131に予め再構成された2%w/vのFAF−BSA;1X濃度のGlutaMAX(商標);20mMグルコース;ITS−Xの1:200希釈物;250μL/Lの1Mアスコルビン酸;10mg/Lヘパリンを補充した、1.18g/L重炭酸ナトリウムを含有する1.5LのMCDB−131培地。ステージ5基本培地に3,3’,5−トリヨード−L−チロニンナトリウム塩として1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、1μMのγセクレターゼ阻害剤、XXI;20ng/mLのベータセルリン;0.25μMのSANT−1;及び100nMのRAを補充した。ステージ5の開始48時間後、使用済み培地を取り除き、1.5Lの同じ新鮮培地及び添加剤と置換した。48時間後、培地を取り除き、1μMのT3、10μMのALK5阻害剤II、20ng/mLのベータセルリン、及び100nMのRAを補充したステージ5基本培地と置換した。それから分化を、ステージ5の終わりまで48時間継続した。
【0246】
ステージ5の終わりに、凝集細胞集団を、フラスコの底部に8分間沈降させ、培地を約300mLの液体が残るまで真空吸引を使用して取り除いた。残りの細胞体積を150mL円錐管に移し、800rpmで3分間遠心分離し、続いて残りの使用済み培地を除去した。細胞ペレットを、洗浄培地、基本MCDB1313に再懸濁させた。細胞を再度、800rpmで5分間遠心沈殿させた。細胞を冷凍保存するため、2.43g/Lの重炭酸ナトリウム、20%のゼノフリーKSR、10%のDMSO、及び2.5%のHEPES(最終濃度25mM)を有する57.5%のMCDB131からなる冷凍保存培地に、細胞を移植した。細胞集団を周囲温度で冷凍保存培地内に懸濁した後で、クライオバイアルを自動凍結保存装置(CRT)に15分以内で移植した。次いで、チャンバ温度を45分間4℃に下げ、2.00℃/分でー7.0℃(試料)まで更に下げた。サンプルを次に急速に冷却し、25.0℃/分の速度でチャンバの温度を−45.0℃まで下げた。次いで補正上昇が、チャンバ温度を−25.0℃(チャンバ)まで10.0℃/分、上昇させることによって提供された。サンプルを次に、温度が−40.0℃に達するまで0.2℃/分で冷却した。チャンバを次に、−160℃まで35.0℃/分の速度で冷却し、その温度で15分間保持した。CRF運転の終了時に、試料をガス相液体窒素保管容器に移植した。
【0247】
細胞をガス相液体窒素で保存した後、保管場所から除去することによって3つのバイアルの細胞を解凍し、37℃の水浴に移植した。小さい氷晶がバイアルに残るまで、バイアルを2分未満水浴内で静かに渦流した。バイアル内容を次にスピナーフラスコに移し、1.6g/L重炭酸ナトリウム、8mMグルコース、1xのITS−X、及び2%BSAの最終濃度に達するように補充されたMCDB131培地を使用して、手でスピナーを連続的に混合しながら10mLの解凍培地を滴下方式で添加した。3つのバイアル全てを解凍した後、追加の解凍培地を約80mLの目標体積に達するように追加した。スピナーフラスコを次いで加湿インキュベータにおいて5%CO
2で一晩(16〜24時間)、及び38〜40rpmの穏やかな撹拌の下インキュベートした。翌日、細胞以下のように洗浄した。スピナーをフード内で6分間沈降させ、約75mLの使用済み培地を吸引し、同時に残りの細胞懸濁液を、10mLガラスピペットを使用して50mL円錐管に移し、続いて600rpmで3分間遠心分離した。上澄を吸引し、細胞ペレットを10mL洗浄培地に再懸濁させ、その後細胞を600rpmで3分間再度遠心分離した。吸引、及び10mLの洗浄培地における細胞ペレットの再懸濁後、ペレットを60mLの洗浄培地が追加されたスピナーフラスコに移し戻した。解析及び移送のために細胞を収集するだけでなく細胞回復を得るために、フラスコを次にBSC内のスピンプレート上に置き、均質のよく混合されたスピナーからサンプルを収集した。
【0248】
図37A及び37Bは、スピナーフラスコ内の培養培地のpHプロファイルを示す。培地のpHは、インキュベータ(設定値、5%)内のCO
2及び代謝活性、具体的には
図38に示される細胞の乳酸産生によって調節される。最低pH環境による培地、具体的には条件Aは、最高の乳酸濃度も有したことが示される。
図37A及びBに見られるように、全てのスピナーのpHは、ステージ2の間、約6.8〜7.2、及びステージ3を通じて約7.0〜7.2の範囲に及んだ。ステージ3の完了後、ほとんど全ての細胞が内胚葉転写因子FOXA2及び膵特異的転写因子PDX1の両方を発現したことが観察された。少なくとも50%は、NEUOD1陽性である小さな集団と共にNKX6.1を発現することが検出された。ステージ3の更に48時間後(ステージ4、2日目の終了)、NKX6.1集団は、表XVIIIに示されるようにAccutaseで元々浮き上がっていた集団が約65%に増加し(条件C及びD)、EDTAで元々浮き上がっていた細胞の集団が約70〜75%に増加した。
【0249】
【表20】
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【0250】
ステージ5の6日目の終了時に、冷凍保存される前にフローサイトメトリーによって細胞を再度解析した。
【0251】
【表21】
[この文献は図面を表示できません]
【0252】
表XXに示されるように未使用の(予め凍結保存した)解析との比較のために、解凍した細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。細胞回復は、最終細胞集団を、解凍に際し(t=0)元の集団と比較することによって評価された。細胞の生存性は、
図39に示されるようにライブ/デッド蛍光撮像によって定性的に評価され、t=0のものと比較した。
【0253】
【表22】
[この文献は図面を表示できません]
*「24HAT」は、解凍から24時間後を意味し、上付き文字は試験番号を指す。
【0254】
以上、本発明を、様々な特定の材料、手順及び実施例を参照しながら本明細書に説明及び例示したが、本発明は、その目的のために選択された特定の材料及び手順の組み合わせに限定されない点は理解されるであろう。当業者には認識されるように、このような細部には多くの変更を行い得ることが示唆される。本明細書及び実施例はあくまで例示的なものとしてみなされるべきものであり、発明の真の範囲及び趣旨は以下の「特許請求の範囲」によって示されるものである。本出願において引用される参照文献、特許及び特許出願は、いずれもそれらの全容を参照により本明細書に援用するものとする。