特表2017-537650(P2017-537650A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537650(P2017-537650A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】キメラタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20171124BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20171124BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20171124BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20171124BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20171124BHJP
   C07K 14/16 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20171124BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20171124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20171124BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20171124BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K17/00
   C07K19/00
   C07K16/28
   C07K14/195
   C07K14/16
   A61K48/00
   A61K45/00
   A61K9/14
   A61K38/16
   A61P37/04
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   A61K39/00 H
   A61K9/127
   A61K47/66
   A61K47/69
   A61K39/00 G
   A61K9/51
   A61K39/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2017-538275(P2017-538275)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月6日
(86)【国際出願番号】AU2015050614
(87)【国際公開番号】WO2016054696
(87)【国際公開日】20160414
(31)【優先権主張番号】2014904028
(32)【優先日】2014年10月9日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517123818
【氏名又は名称】ライポテック・ピーティーワイ・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】507357704
【氏名又は名称】ジ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・デイヴィッド・プライス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・パリシュ
(72)【発明者】
【氏名】イネス・アトモスカルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA95
4C076BB15
4C076CC06
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA02
4C084BA22
4C084BA42
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA01
4C085EE01
4C085EE03
4C085FF11
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA05
4H045CA11
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は概して、ナノ粒子担体が抗原提示細胞を標的とすることを促進することが可能なキメラタンパク質、及びこれらのキメラタンパク質を含むナノ粒子担体を対象とする。キメラタンパク質の実施形態は、フラジェリン等のTLR5アゴニスト、及びgp120由来ペプチドを含む。本発明は、キメラタンパク質を含むナノ粒子担体を使用して、抗原を抗原提示細胞に内在化させる方法、及び対象において抗原に対する免疫応答を誘発する方法も対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、
前記第1のポリペプチドがToll様受容体5(TLR5)アゴニストであり;
前記第2のポリペプチドが、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも50%の配列同一性を有し、少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有する、キメラタンパク質。
【請求項2】
前記TLR5アゴニストが、フラジェリンポリペプチド、抗TLR5抗体又は抗TLR5アプタマーである、請求項1に記載のキメラタンパク質。
【請求項3】
前記フラジェリンポリペプチドが、サルモネラ属の種、エシェリキア属の種、ボレリア属の種、ヘリコバクター属の種、カンピロバクター属の種、カウロバクター属の種、ビブリオ属の種、バチルス属の種、シュードモナス属の種、リゾビウム属の種、ハロバクテリウム属の種、ハロフェラックス属の種、クロストリジウム属の種、エンテロバクター属の種、エルウィニア属の種、クレブシエラ属の種、エルシニア属の種、プロテウス属の種、セラチア属の種、シュワネラ属の種、シゲラ属の種、及びストレプトマイセス属の種のフラジェリンから選択される、請求項2に記載のキメラタンパク質。
【請求項4】
前記フラジェリンポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項3に記載のキメラタンパク質。
【請求項5】
前記第2のポリペプチドが、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項6】
前記第1のポリペプチドのC末端が、前記第2のポリペプチドのN末端に連結されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項7】
前記第1のポリペプチドのN末端が、前記第2のポリペプチドのC末端に連結されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項8】
タグを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項9】
前記タグがヒスチジンタグである、請求項8に記載のキメラタンパク質。
【請求項10】
前記TLR5アゴニストが、フラジェリンポリペプチドであり、gp120ポリペプチドに連結されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項11】
前記キメラタンパク質が、配列番号5に記載のポリペプチドに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項10に記載のキメラタンパク質。
【請求項12】
前記キメラタンパク質がグリコシル化されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項13】
前記キメラタンパク質が昆虫細胞のグリコシル化パターンを含む、請求項12に記載のキメラタンパク質。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のキメラタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のキメラタンパク質を含むナノ粒子担体。
【請求項16】
少なくとも1つの更なるTLRアゴニストを含む、請求項15に記載のナノ粒子担体。
【請求項17】
前記TLRアゴニストが、Pam3Cys、Pam2Cys、MALP2、MPLA、トリアシル化リポペプチド、細菌ペプチドグリカン、細菌リポタンパク質、リポテイコ酸、リポ多糖、GPIアンカータンパク質、ナイセリアのポリン、ホスホリポマンナン、CFA、FSL-1、Hib-OMPC、RSV F-タンパク質、グリコイノシトールリン脂質、Hsp60、Hsp70、フィブロネクチンドメインA、サーファクタントタンパク質A、ヒアルロナン、HMGB-1、AGP、RC-529、MDF2β、フェノール可溶性モジュリン、ジアシル化リポペプチド、LTA、ザイモサン、イミダゾキノリン、ロキソリビン及びヘモゾイン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載のナノ粒子担体。
【請求項18】
前記キメラタンパク質が、キレート化により前記ナノ粒子担体の表面に付着している、請求項15から17のいずれか一項に記載のナノ粒子担体。
【請求項19】
前記キメラタンパク質が、ヒスチジンタグを含み、前記ナノ粒子担体が、ニトリロ三酢酸部分を含み、前記キメラタンパク質が、前記ヒスチジンタグ、前記ニトリロ三酢酸部分及び金属イオンの間のキレート化により前記ナノ粒子担体に付着している、請求項18に記載のナノ粒子担体。
【請求項20】
前記ニトリロ三酢酸部分が、ニトリロ三酢酸(NTA)又はトリニトリロ三酢酸(3NTA)である、請求項19に記載のナノ粒子担体。
【請求項21】
前記ニトリロ三酢酸部分が、少なくとも1つの脂肪族鎖に付着している、請求項19又は20に記載のナノ粒子担体。
【請求項22】
前記ニトリロ三酢酸部分が、ジテトラデシルアミン(DTDA)、Pam2Cys又はPam3Cysに付着している、請求項21に記載のナノ粒子担体。
【請求項23】
ニトリロ三酢酸ジテトラデシルアミン(NTA-DTDA)、3(ニトリロ三酢酸)-ジテトラデシルアミン(3NTADTDA)又はPam2CysSerLys8Cys-3NTAを含む、請求項22に記載のナノ粒子担体。
【請求項24】
前記ナノ粒子担体が、リポソーム、ビロソーム、ウイルス様粒子、アーケオソーム、細胞膜小胞、ニオソーム、脂質コアペプチド、免疫刺激複合体及びポリマーベースのナノ粒子から選択される、請求項15から23のいずれか一項に記載のナノ粒子担体。
【請求項25】
抗原を更に含む、請求項15から24のいずれか一項に記載のナノ粒子担体。
【請求項26】
前記抗原が前記ナノ粒子担体の表面に付着している、請求項25に記載のナノ粒子担体。
【請求項27】
前記抗原が前記ナノ粒子担体内にカプセル化されている、請求項25に記載のナノ粒子担体。
【請求項28】
対象において抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、請求項25から27のいずれか一項に記載のナノ粒子担体を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
前記免疫応答がCD8+T細胞応答を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫応答がCD4+T細胞応答及び抗体応答を含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
抗原を抗原提示細胞に内在化させる方法であって、請求項25から27のいずれか一項に記載のナノ粒子担体と前記抗原提示細胞を接触させる工程を含む、方法。
【請求項32】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ナノ粒子担体の抗原提示細胞への結合とそれに続く細胞による内在化を促進することができるキメラタンパク質、及びこれらのキメラタンパク質を含むナノ粒子担体を対象とする。本発明は、キメラタンパク質を含むナノ粒子担体を使用して、抗原を抗原提示細胞に内在化させる方法、及び対象において抗原に対する免疫応答を誘発する方法も対象とする。
【0002】
関連出願
本出願は、2014年10月9日出願のオーストラリア仮特許出願第2014904028号、名称「Chimeric proteins」の優先権に関し、これを主張する。オーストラリア仮特許出願第2014904028号の記載内容は、その全体にわたって参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最適なワクチン設計には、最大の免疫原性、安全性及び忍容性のバランスが必要である。概して、現代の組換えワクチンにおける安全性プロファイルの向上には、免疫原性プロファイルの低下が伴う。したがって、安全性及び忍容性を保持しつつ、免疫原性を強化するアジュバント及び新規の送達系が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008097016
【特許文献2】US20090011982
【特許文献3】WO2009156405
【特許文献4】WO2006081631
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yoonら(2012)Science. 335(6070):859〜864頁
【非特許文献2】Mizel及びBates 2010 J Immunol. 185(10):5677〜82頁
【非特許文献3】Nempontら(2008)J. Immunol. 181:2036〜2043頁
【非特許文献4】Burdelyaら(2008)Science 320:226〜230頁
【非特許文献5】Yamashitaら(2007)Cytotechnology. 55(2〜3):55〜60頁
【非特許文献6】Orlandiら、(1989)PNAS USA 5:3833〜3837頁
【非特許文献7】Kaluzaら(1992)Gene 122(2):321〜8頁
【非特許文献8】Riechmannら、(1988)Nature 332:323〜327頁
【非特許文献9】Singerら、(1993)J. Immunol. 750:2844〜2857頁
【非特許文献10】Tempestら(1991)Biotechnology 9:266〜271頁
【非特許文献11】Lonbergら、(1994)Nature 55:856〜859頁
【非特許文献12】Lonberg(2005)Nat Biotechnol. 23(9):1117〜25頁
【非特許文献13】Greenら、(1999)J. Immunol. Methods 231:11〜23頁
【非特許文献14】Gringhuis及びGeijtenbeek(2010)Methods Enzymol. 480:151〜64頁
【非特許文献15】Turvilleら(2003)J Leukoc Biol. 74(5):710〜8頁
【非特許文献16】Satoら(2012)Ann N Y Acad Sci.1253:133〜48頁
【非特許文献17】Joshiら(2012)J Cont Release 161:25〜37頁
【非特許文献18】Altin(2012)Liposomes and other nanoparticles as cancer vaccines and immuno therapeutics. Chapter 8 In: Innovations in Vaccinology: from design、through to delivery and testing. S. Baschieri Ed、Springer
【非特許文献19】Gregoryら(2013)Front Cell Infect Microbiol. 3:13頁
【非特許文献20】Zhaoら(2014)32(3):327〜337頁
【非特許文献21】1998 McCutcheon's Detergents and Emulsifiers
【非特許文献22】1998 McCutcheon's Functional Materials
【非特許文献23】Avanti Polar Lipids, Inc.社カタログ
【非特許文献24】Wagner及びVorauer-Uhl(2011)J Drug Delivery、Article ID 591325
【非特許文献25】Yuら(2009)Methods Enzymol. 465:129〜141頁
【非特許文献26】Laouiniら(2012)J Colloid Sci Biotech 1:147〜168頁、2012
【非特許文献27】Nobsら(2004)J Pharm Sci. 93(8):1980〜92頁
【非特許文献28】Marques-Gallego及びde Kroon(2014)BioMed Research International、Article ID 129458
【非特許文献29】Suraceら、(2009)Molecular Pharmaceutics 6:1062〜1073頁
【非特許文献30】Banerjeeら(2004)International Journal of Cancer 112:693〜700頁
【非特許文献31】Hassaneetら(2006)Bioconjugate Chemistry 17:849〜854頁
【非特許文献32】Kooら(2012)Angewandte Chemie:International Edition 51:11836〜11840頁
【非特許文献33】Zhangら(2009)Chemical Communications 21:3032〜3034頁
【非特許文献34】Emmetiereら、(2013)Bioconjugate Chemistry 24:1784〜1789頁
【非特許文献35】Altinら(2001)Biochim Biophys Acta 1513(2):131〜48頁
【非特許文献36】van Broekhavenら(2005)Biochimica et Biophysica Acta - Biomembranes 1716:104〜116頁
【非特許文献37】E. W. Martin「Remington's Pharmaceutical Sciences」
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本発明は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、第1のポリペプチドがToll様受容体5(TLR5)アゴニストであり;第2のポリペプチドが、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも50%の配列同一性を有し、少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有する、キメラタンパク質を対象とする。
【0007】
一部の実施形態において、TLR5アゴニストは、フラジェリンポリペプチド、抗TLR5抗体又は抗TLR5アプタマーである。例えば、TLR5アゴニストは、サルモネラ属の種(Salmonella spp)、エシェリキア属の種(Escherichia spp)、ボレリア属の種(Borrelia spp)、ヘリコバクター属の種(Helicobacter spp)、カンピロバクター属の種(Campylobacter spp)、カウロバクター属の種(Caulobacter spp)、ビブリオ属の種(Vibrio spp)、バチルス属の種(Bacillus spp)、シュードモナス属の種(Pseudomonas spp)、リゾビウム属の種(Rhizobium spp)、ハロバクテリウム属の種(Halobacterium spp)、ハロフェラックス属の種(Haloferax spp)、クロストリジウム属の種(Clostridium spp)、エンテロバクター属の種(Enterobacter spp)、エルウィニア属の種(Erwinia spp)、クレブシエラ属の種(Klebsiella spp)、エルシニア属の種(Yersinia spp)、プロテウス属の種(Proteus spp)、セラチア属の種(Serratia spp)、シュワネラ属の種(Shewanella spp)、シゲラ属の種(Shigella spp)、及びストレプトマイセス属の種(Streptomyces spp)のフラジェリンから選択されるフラジェリンポリペプチドであってよい。特定の例において、フラジェリンポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2に記載の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0008】
一部の実施形態において、第2のポリペプチドは、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対して少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0009】
一実施形態において、第1のポリペプチドのC末端は、第2のポリペプチドのN末端に連結されている。別の実施形態において、第1のポリペプチドのN末端は、第2のポリペプチドのC末端に連結されている。
【0010】
本発明の更なる実施形態において、キメラタンパク質はタグ、例えばヒスチジンタグ等も含んでいてよい。
【0011】
特定の実施形態において、TLR5アゴニストは、フラジェリンポリペプチドであり、gp120ポリペプチドに連結されている。更なる実施形態において、キメラタンパク質は、配列番号5に記載のポリペプチドに対して少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0012】
本発明の一実施形態において、キメラタンパク質はグリコシル化されている。例えば、キメラタンパク質は昆虫細胞のグリコシル化パターンを含んでいてよい。
【0013】
更なる態様において、本発明は、上記の及び本明細書で記載されるキメラタンパク質をコードする核酸分子を対象とする。
【0014】
本発明の別の態様は、上記の及び本明細書で記載されるキメラタンパク質を含むナノ粒子担体に関する。
【0015】
一実施形態において、ナノ粒子担体は少なくとも1つの更なるTLRアゴニスト、例えば、Pam3Cys、Pam2Cys、MALP2、MPLA、トリアシル化リポペプチド、細菌ペプチドグリカン、細菌リポタンパク質、リポテイコ酸、リポ多糖、GPIアンカータンパク質、ナイセリアのポリン、ホスホリポマンナン、CFA、FSL-1、Hib-OMPC、RSV F-タンパク質、グリコイノシトールリン脂質、Hsp60、Hsp70、フィブロネクチンドメインA、サーファクタントタンパク質A、ヒアルロナン、HMGB-1、AGP、RC-529、MDF2β、フェノール可溶性モジュリン、ジアシル化リポペプチド、LTA、ザイモサン、イミダゾキノリン、ロキソリビン及びヘモゾイン等を含む。
【0016】
一部の実施形態において、キメラタンパク質は、キレート化によりナノ粒子担体の表面に付着している。例えば、キメラタンパク質は、ヒスチジンタグを含んでいてよく、ナノ粒子担体は、ニトリロ三酢酸部分を含んでいてよく、キメラタンパク質は、ヒスチジンタグ、ニトリロ三酢酸部分及び金属イオンの間のキレート化によりナノ粒子担体に付着している。一部の例において、ニトリロ三酢酸部分は、ニトリロ三酢酸(NTA)又はトリニトリロ三酢酸(3NTA)である。一実施形態において、ニトリロ三酢酸部分は、少なくとも1つの脂肪族鎖に付着している。特定の例において、ニトリロ三酢酸部分は、ジテトラデシルアミン(DTDA)、Pam2Cys又はPam3Cysに付着している。一実施形態において、ナノ粒子担体は、ニトリロ三酢酸-ジテトラデシルアミン(NTA-DTDA)、又は3(ニトリロ三酢酸)-ジテトラデシルアミン(3NTADTDA)、又はPam2CysSerLys8Cys-3NTAを含む。
【0017】
一部の実施形態において、ナノ粒子担体は、リポソーム、ビロソーム、ウイルス様粒子、アーケオソーム(archaeosome)、細胞膜小胞、ニオソーム、脂質コアペプチド、免疫刺激複合体及びポリマーベースのナノ粒子から選択される。
【0018】
一実施形態において、ナノ粒子担体は抗原も含む。一部の例において、抗原はナノ粒子担体の表面に付着している。その他の例において、抗原はナノ粒子担体内にカプセル化されている。
【0019】
更なる態様において、本発明は、上記の及び本明細書に記載されるキメラタンパク質並びに抗原を含むナノ粒子担体を対象に投与する工程を含む、対象において抗原に対する免疫応答を誘発する方法を対象とする。一部の実施形態において、免疫応答はCD8+T細胞応答を含む。更なる実施形態において、免疫応答はCD4+T細胞応答及び抗体応答を含む。
【0020】
別の態様において、本発明は、上記の及び本明細書に記載されるキメラタンパク質並びに抗原を含むナノ粒子担体と抗原提示細胞を接触させる工程を含む、抗原を抗原提示細胞に内在化させる方法を対象とする。特定の実施形態において、抗原提示細胞は樹状細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】Fg115キメラタンパク質を示す図である。Fg115発現カセットのヌクレオチド配列。
図1B】Fg115キメラタンパク質を示す図である。Fg115キメラタンパク質のアミノ酸配列。
図1C】Fg115キメラタンパク質を示す図である。潜在的なN-グリコシル化部位を示す、Fg115キメラタンパク質の概略図。
図1D】Fg115キメラタンパク質を示す図である。Sf9細胞で発現させた精製Fg115キメラタンパク質のSDS-PAGE解析であり、プールされたピークA(レーン2)及びピークB(レーン3)画分、並びにレーン1に分子量マーカーを示す。
図2】Fg115、FlgT若しくはDMS5000抗体を移植したリポソーム、又は未移植リポソームとともに培養したヒト単球由来樹状細胞(moDC)のFACs解析を示すグラフである。
図3A】ヒトmoDCによる、Fg115移植リポソームの内在化を評価した2つの研究の結果を示すグラフである。Fg115、DMS5000を移植したリポソーム、又は未移植リポソームを、4℃又は37℃でヒトmoDCとともに培養した。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。第1のドナーの、内在化したリポソームを反映するMFIを示す。
図3B】ヒトmoDCによる、Fg115移植リポソームの内在化を評価した2つの研究の結果を示すグラフである。Fg115、DMS5000を移植したリポソーム、又は未移植リポソームを、4℃又は37℃でヒトmoDCとともに培養した。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。第2のドナーの、内在化したリポソームを反映するMFIを示す。
図4】DC-SIGNトランスジェニックマウス(DC-SIGN Tg)由来のCD11c+細胞とともにインキュベートしたOT-I細胞の、FACs解析結果を示すグラフである。CD11c+細胞は、高レベルのOVA(LipOVA(高):100μg/mLは脂質最終濃度7.38mMに相当)又は低レベルのOVA(LipOVA(低):100μg/mLは脂質最終濃度20.75mMに相当)をローディングしFg115、FliC又はgp120を移植したリポソームとともに培養したものであった。未移植リポソーム(Uneng)も研究に使用した。Fg115は、脂質20.75mMに104μg/mL、又は脂質20.75mMに37μg/mL(Fg115(低))で移植した。DC-SIGNトランスジェニックマウス由来のCD11c+細胞及び生理食塩水若しくはOVAとともに培養したOT-I細胞、又は野生型マウス(WT)由来の樹状細胞及び生理食塩水若しくはOVAとともに培養したOT-I細胞を使用した対照、又はT細胞単独のFACs解析も含めた。活性化されたCD69hiCD44hi CD8 T細胞のパーセンテージを示す。
図5】C57BL/6J野生型マウス由来のCD11c+細胞とともにインキュベートしたOT-I細胞のFACs解析結果を示すグラフである。CD11c+細胞は、OVAをローディング(LipOVA)しFg115を移植したリポソームとともに培養したものであった。各種バックボーンを有するリポソームを使用した。リポソームバックボーンは、DOPC(「LipOVA-DOPC」)、DOPC/DPOP(30%)(「LipOVA-DOPC/DOPG」)、DOPC/DOPS(30%)(「LipOVA-DOPC/DOPS」)、DOPC/DOTAP(30%)(「LipOVA-DOPC/DOTAP」)、POPC(LipOVA-POPC)、POPC/DOPG(30%)(「LipOVA-POPC/DOPG」)、POPC/DOPE(30%)(「LipOVA-POPC/DOPE」)、POPC/DOTAP(30%)(「LipOVA-POPC/DOTAP)、DOPC/MPLA(「LipOVA-DOPC/MPLA)及びDOPC/LIPOKEL(LipOVA-DOPC/LIPOKEL)を含んでいた。未移植リポソーム(「Uneng」)も研究に使用した。CD11c+細胞、及び生理食塩水(「Nil」)又はOVAとともに培養したOT-I細胞を使用した対照も含めた。活性化されたCD69hiCD44hi CD8 T細胞のパーセンテージを示す。
図6】OVAをローディング(LipOVA)しFg115を移植したリポソームによりマウスを免疫化して、その後インビボで細胞応答を活性化させた後のCD8+T細胞増殖を示すグラフである。
図7】Fg115を移植し、各マウスがOVA0.57、0.68、1.19又は2μgを受けるように様々な量のOVAをローディングしたリポソームによりマウスを免疫化した後の、CD8+T細胞増殖を示すグラフである。
図8A】Fg115又はFliCを移植しOVAをローディングしたリポソームによりマウスを免疫化した後の、免疫応答の誘導を示すグラフである。曲線下面積(AUC)値で表される、標的細胞をペプチドでパルス処理した後の特異的な死滅。
図8B】Fg115又はFliCを移植しOVAをローディングしたリポソームによりマウスを免疫化した後の、免疫応答の誘導を示すグラフである。IFN-γCD8+T細胞。
図8C】Fg115又はFliCを移植しOVAをローディングしたリポソームによりマウスを免疫化した後の、免疫応答の誘導を示すグラフである。AUCで表されるヘルパーT細胞応答。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書を通して、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと」等の変化形は、明記される要素、整数又はステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を含むだけでなく、任意のその他の要素、整数又はステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を除外しないことを含意することが理解される。
【0023】
本明細書で言及される全ての出版物は、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、行為、材料、機器、物品等についてのあらゆる説明は、単に本発明の状況を提供することを目的とする。このことが、これらの事物のうちいずれか又は全てが、本出願の各請求項の優先日前にオーストラリア又は他の国に存在していた、先行技術基準又は本発明に関連する分野における共通一般知識の一部を形成すると認めることとして取られるべきではない。
【0024】
本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上明示的に別段の定めがない限り、複数の態様を含む。したがって、例えば、「1つの(a)」との言及は、1つ及び2つ以上を含み;「1つの(an)」との言及は、1つ及び2つ以上を含み;「その(the)」との言及は、1つ及び2つ以上等を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「toll様受容体5」又は「TLR5」という語は当技術分野における一般的な意味を有し、任意の種のtoll様受容体5を意味することを意図される。最も典型的には、TLR5はヒトTLR5である。TLR5は単球、好中球、マクロファージ、樹状細胞及び腸上皮細胞上に発現される。TLR5は、活性化されると、一連のシグナル伝達分子を介して細胞表面から核へ伝播される細胞内シグナルを伝達することにより、細胞の免疫応答を誘導する。典型的には、TLR5の細胞内ドメインがアダプタータンパク質、MyD88を補充し、これによりセリン/スレオニンキナーゼIRAK(IRAK-1及びIRAK-4)が補充される。IRAKはTRAF6と複合体を形成し、次いでこれが、TLRシグナルの伝達に寄与する各種分子と相互作用する。これらの分子及びその他のTLR5シグナル伝達経路成分が、NF-kB等の転写因子の活性、及び対応する、広範な炎症関連標的遺伝子、例えば、IL-8及びTNF-α等の誘導を刺激する。
【0026】
本明細書で使用される場合、TLR5アゴニストとはTLR5を活性化することができる任意の分子である。本発明の目的において、TLR5アゴニストはポリペプチドである。ポリペプチドがTLR5を活性化する能力(すなわち「TLR5アゴニスト活性」を示すこと)は、NF-kB活性化を検出及び/又は測定する方法等の、当技術分野で既知の任意の方法を使用して評価可能である。例えば、NF-kB応答要素の転写制御下でTLR5及びレポーター遺伝子を安定に発現するTLR5レポーター細胞株(例えばHEK-Blue(商標)hTLR5又はmTLR5:InvivoGen社)を使用して、ポリペプチドのTLR5アゴニスト活性を評価することができる。
【0027】
「N-グリコシル化部位」という語は、グリコシル化の間に糖部分がアスパラギン残基に付着する、ポリペプチド中の部位を指す。N-グリコシル化部位は配列モチーフN-X-S/T/Cにより特定され、ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸残基であり、Nはアスパラギンであり、S/T/Cはセリン、スレオニン又はシステインのいずれか、好ましくはセリン又はスレオニン、最も好ましくはスレオニンである。
【0028】
「ナノ粒子担体」という語は、直径約1000nm未満の小さい粒子を指し、そこに1つ又は複数のポリペプチド又はタンパク質が付着可能である。ナノ粒子担体は中性でも、アニオン性でもカチオン性でもよく、例えば、リポソーム、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、アーケオソーム、細胞膜小胞(PMV)、ニオソーム、脂質コアペプチド(LCP)、免疫刺激複合体(ISCOM)、及びポリマーベースのナノ粒子(例えばポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)ナノ粒子、ポリプロピレンスルフィドナノ粒子及びポリヒドロキシル化ナノ粒子等の生分解性ナノ粒子)が含まれる。
【0029】
「連結する」及び「付着する」という語は互換可能に使用され、かつ、2つのポリペプチド又はキメラタンパク質、及びナノ粒子等の2つの物体を結合し、共有結合又は非共有結合、例えば疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン結合又は水素結合等が含まれる、任意の種類の相互作用に関する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、天然であるか又は一部若しくは全体が組換え等により合成的に産生されたものかにかかわらず、免疫グロブリン及び免疫グロブリンフラグメントを指し、全長免疫グロブリンの結合特異性能力を保持した、免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部を含む、その任意のフラグメントを含む。したがって、抗体には、免疫グロブリン抗原結合ドメイン(抗体と組み合わされる部位)と相同又は実質的に相同な結合ドメインを有する、任意のタンパク質が含まれる。抗体は抗体フラグメントを含む。本明細書で使用される場合、抗体という語には、合成抗体、組換え産生された抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、細胞内抗体、及び、以下に限定されないが、上記のうちいずれかのFabフラグメント、Fab1フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド結合したFvs(dsFv)、Fdフラグメント、Fd'フラグメント、単鎖Fv(scFv)、単鎖Fab(scFab)、ダイアボディ又は抗原結合フラグメント等の抗体フラグメントが含まれる。本明細書で提供される抗体には、任意の種類の免疫グロブリン(例えばIgG、IgM、IgD、IgE、IgA及びIgY)、任意のクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラス(例えばIgG2a及びIgG2b)のメンバーが含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合フラグメント」には、その抗体と同じ抗原に結合する能力を保持した任意の抗体フラグメントが含まれる。典型的には、抗原結合フラグメントは、抗体が示す結合親和性の少なくとも又は約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又はそれ以上の親和性で抗原に結合する。例示的な抗原結合フラグメントには、Fabフラグメント、Fab1フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド結合Fvs(dsFv)、Fdフラグメント、Fd'フラグメント、単鎖Fvs(scFv)、単鎖Fabs(scFab)及びダイアボディが含まれるがこれらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「%同一である」という語は、既定の領域における2つの配列の比較において、2つの配列が同じ位置に規定の数の同一残基を有することを意味する。「%類似である」という語は類似の意味を有するが、2つの配列間の同一アミノ酸数に加えて、アミノ酸が同一ではないが保存的置換である箇所も考慮しなければならない。
【0033】
本明細書で使用される「対象」という語は、動物、具体的には哺乳類、より具体的には下等霊長類を含む霊長類、更により具体的には、本発明の医療プロトコルから利益を得ることができるヒトを指す。対象は、ヒトであるかヒト以外の動物であるか胚であるかに関わらず、個体、対象、動物、患者、宿主又はレシピエントと称されうる。本発明はヒト及び獣医学両方への応用を有する。便宜上、「動物」には特に、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ラクダ科の動物、ヤギ及びロバ等の家畜動物が含まれる。ウマに関しては、これらには娯楽に使用されるウマ、又は畜産業に使用されるウマだけでなく、レース産業に使用されるウマも含まれる。実験動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット及びハムスターが含まれる。ウサギ、並びにラット及びマウス等のげっ歯類動物により、霊長類及び下等霊長類と同等に好都合な試験系又は動物モデルがもたらされる。一部の実施形態において、対象はヒトである。
【0034】
【表1】
【0035】
キメラタンパク質
本発明のキメラタンパク質は、TLR5アゴニストである第1のポリペプチド、並びに、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも50%の配列同一性、及び少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有する第2のポリペプチドを含む。したがって、グリコシル化を促進するように産生されると、第2のポリペプチドは高度にグリコシル化された糖タンパク質となる。キメラタンパク質を使用して、ナノ粒子担体の抗原提示細胞への結合を促進し、かつ/又は樹状細胞等の抗原提示細胞によるナノ粒子担体の内在化を促進することができる。したがって、キメラタンパク質は、ナノ粒子担体内にカプセル化されるかこれに付着した抗原の、抗原提示細胞による内在化を促進し、その抗原に対する免疫応答も促進することができる。
【0036】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明のキメラタンパク質は、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも50%の配列同一性、及び少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有する、高度にグリコシル化された第2のポリペプチドを介して、樹状細胞等の抗原提示細胞と結合することが想定される。この糖タンパク質は、抗原提示細胞上の、DC-SIGN又はマンノース受容体等のレクチンと相互作用することができる。キメラタンパク質は、キメラタンパク質中のTLR5アゴニストと細胞表面のTLR5との間の相互作用を介して、樹状細胞、マクロファージ及び単球等の抗原提示細胞と結合することもできる。したがって、本発明のキメラタンパク質を使用して、キメラタンパク質を移植したナノ粒子担体の抗原提示細胞への送達、及びその後の、抗原提示細胞による担体の内在化を促進することができる。ナノ粒子担体が抗原をローディングされている(すなわち、抗原が担体内にカプセル化されているかつ/又はその表面に付着している)と、キメラタンパク質は抗原提示細胞による抗原の内在化を促進する。典型的には、抗原提示細胞は樹状細胞である。
【0037】
本明細書で実証する通り、キメラタンパク質を移植したナノ粒子担体は、未移植の担体と比較して、抗原提示細胞への結合の増大、及び抗原提示細胞による内在化の増大を示す。更に、キメラタンパク質中のTLR5アゴニストによるTLR5活性化は、担体内にカプセル化されているかつ/又はその表面に付着している抗原に対する炎症促進性の応答を刺激する助けとなりうる。TLR5アゴニストによるTLR5の活性化によって、例えば、炎症促進性サイトカイン及びケモカインの誘導、二次リンパ部位へのT細胞及びB細胞の補充の増大、DCの活性化、CD4+及びCD8+T細胞の直接刺激、並びに高力価IgG1及びIgG2aを特徴とする液性免疫応答の誘導が生じうる。更に、第2のポリペプチドが、「非自己」グリカン構造又はパターン、すなわち、キメラタンパク質が投与される種において通常産生されるグリカン構造又はパターンと異なるグリカン構造又はパターンを含む場合、抗原に対する免疫応答が更に増強されうる。キメラタンパク質によりもたらされる内在化の増強、キメラタンパク質中のTLR5アゴニストによるTLR5活性化というアジュバント効果、及び一部の場合における、第2のポリペプチドの「非自己」グリコシル化というアジュバント効果の組合せにより、未移植のナノ粒子担体を使用した際に発生する免疫応答と比較して、キメラタンパク質を移植したナノ粒子担体内にカプセル化されているかつ/又はその表面に付着している抗原に対する免疫応答の増強がもたらされる。
【0038】
TLR5アゴニスト
本発明に有用なTLR5アゴニストには、フラジェリンポリペプチド、抗TLR5抗体及び抗TLR5アプタマーを含むがこれらに限定されない、TLR5を活性化することができる任意のポリペプチドが含まれる。最も典型的には、TLR5アゴニストはヒトTLR5を活性化するが、その他の種由来のTLR5を活性化するTLR5アゴニストも、キメラタンパク質の望ましい特異性及び有用性次第で使用可能であることを当業者は理解するものである。一部の場合においては、TLR5アゴニストは複数の種由来のTLR5を活性化した。
【0039】
一部の例において、本発明のキメラタンパク質中のTLR5アゴニストはフラジェリンポリペプチドである。フラジェリンは細菌鞭毛の一部であり、運動性及び走化性に関与する。細菌種に応じて、フラジェリンの分子量は28〜80kDaの範囲である。フラジェリンは、超可変領域に隣接するN末端(アミノ酸残基約170個)及びC末端(アミノ酸残基約100個)に、保存された領域を有する。フラジェリンのN末端部分及びC末端部分は詰まったα-ヘリックス構造を形成し、これがD0及びD1ドメインを構成する。研究により、D1ドメインは高親和性結合及びTLR5シグナル伝達の両方に関与し、D0はTLR5活性化には寄与するが、結合に対しては全く又はほとんど効果を有しないことが示されている(Yoonら(2012)Science. 335(6070):859〜864頁)。
【0040】
フラジェリンは、サイトカイン及びケモカインの誘導、二次リンパ部位へのT細胞及びB細胞の補充の増大、DCの活性化、CD4+及びCD8+T細胞の直接刺激、並びに高力価IgG1及びIgG2aを特徴とする液性免疫応答の誘導を含むがこれらに限定されない、有力なアジュバント効果を有することが示されている(Mizel及びBates 2010 J Immunol. 185(10):5677〜82頁)。フラジェリンは、低用量で有効であり、IgE応答を促進せず、そのアジュバント効果が既存の免疫によって損なわれないという利点も有する(Mizel及びBates 2010 J Immunol. 185(10):5677〜82頁)。
【0041】
TLR5を活性化することができる任意のフラジェリンポリペプチドが本発明に有用であり、サルモネラ属の種、エシェリキア属の種、ボレリア属の種、ヘリコバクター属の種、カンピロバクター属の種、カウロバクター属の種、ビブリオ属の種、バチルス属の種、シュードモナス属の種、リゾビウム属の種、ハロバクテリウム属の種、ハロフェラックス属の種、クロストリジウム属の種、エンテロバクター属の種、エルウィニア属の種、クレブシエラ属の種、エルシニア属の種、プロテウス属の種、セラチア属の種、シュワネラ属の種、シゲラ属の種、及びストレプトマイセス属の種由来のフラジェリンが含まれるが、これらに限定されない。フラジェリンのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、NCBI Genbank及びUniProtデータベースから公的に入手可能である。本発明に有用なフラジェリンポリペプチドの非限定的な例には、ネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium)フラジェリン(S. typhimurium;例えばUniProt受入番号P06179)、S・ダブリン(S. dublin)フラジェリン(例えばUniProt受入番号Q06971)、パラチフス菌(S. paratyphi)フラジェリン(例えばUniProt受入番号P06178)、腸炎菌(S. enteritidis)フラジェリン(例えばUniProt受入番号Q06972)、大腸菌(Escherichia coli)フラジェリン(例えばUniProt受入番号P04949)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)フラジェリン(例えばUniProt受入番号P21184及びP72151)、フレキシネル赤痢菌(Shigella flexneri)フラジェリン(例えばUniProt受入番号Q08860)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)フラジェリン(例えばUniProt受入番号P42272及びP42273)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)フラジェリン(例えばUniProt受入番号P13713)、並びにブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)フラジェリン(例えばUniProt受入番号Q8YDM5)が含まれる。
【0042】
本発明に有用なフラジェリンポリペプチドには、TLR5アゴニスト活性を保持した、野生型フラジェリンのフラグメント及び変異体等の、フラジェリン由来ポリペプチドが含まれる。典型的には、フラグメント又は変異体は、野生型フラジェリンポリペプチドのTLR5アゴニスト活性の少なくとも20%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上)を保持している。NF-kB応答要素の転写制御下で、TLR5及びレポーター遺伝子を安定に発現するTLR5レポーター細胞株を利用するアッセイ等の、TLR5アゴニスト活性を評価するのに利用可能な多くの方法に、当業者であれば精通しているものである。一部の場合においては、変異体は野生型ポリペプチドと比較して向上したTLR5アゴニスト活性を有する(例えば、WO2008097016を参照のこと)。フラグメント又は変異体は、典型的にはD0及び/又はD1領域等の、野生型フラジェリンの領域に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%又は95%の配列同一性を有する。TLR5アゴニスト活性を保持したフラジェリン変異体の生成又は特定の目的において、超可変領域等の、TLR5結合及び/又は活性化に関与しないフラジェリンポリペプチド領域は概して、D0及びD1領域等の、TLR5結合及び/又は活性化に不可欠な領域よりも変異を受けやすいことを、当業者であれば理解するものである。したがって、一部の場合において、フラジェリン変異体又はフラグメントは、大部分が超可変領域において改変されている。一部の場合において、超可変領域の全部又は一部が欠失したフラジェリンポリペプチドは、このようなポリペプチドが野生型フラジェリンと比較して免疫原性の低下を示しうるため有利となりうる(例えばNempontら(2008)J. Immunol. 181:2036〜2043頁を参照のこと)。基本的にD0及びD1領域を含み、超可変領域が完全に又は部分的に欠失したフラジェリンポリペプチドが当技術分野で既知であり、本発明のキメラポリペプチド中のTLR5アゴニストとして使用可能である(例えばUS20090011982、WO2009156405、Burdelyaら(2008)Science 320:226〜230頁、及びNempontら(2008)J. Immunol. 181:2036〜2043頁を参照のこと)。本発明の目的に好適なフラジェリンポリペプチドを産生、選択及び/又は特定することは、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0043】
特定の一例において、本発明のキメラタンパク質中のTLR5アゴニストは、ネズミチフス菌のFliC遺伝子由来のフラジェリンポリペプチドである。一実施形態において、フラジェリンポリペプチドは配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。別の例においては、TLR5アゴニストは、配列番号2に記載の配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むフラジェリンポリペプチドである。
【0044】
或いは、本発明によるTLR5アゴニストは、抗TLR5抗体又はその抗原結合フラグメントであってもよい。TLR5アゴニストとして作用する抗TLR5抗体は、抗原に対して抗体を調製する標準的な技術を使用して生成可能である(例えば概説に関して、Yamashitaら(2007)Cytotechnology. 55(2〜3):55〜60頁を参照のこと)。例えば、マウス等の非ヒト対象にTLR5を注射することにより、TLR5に特異的なモノクローナル抗体が得られる。次いでBリンパ球が得られ、骨髄腫細胞と融合されてハイブリドーマが生じ、これがクローニングされる。標準的な技術(例えばELISpot)を使用して、TLR5に対する抗体を産生する陽性クローンが選択される。次いで、抗原に対して抗体を産生するクローンが培養され、分泌された抗体がハイブリドーマ培養物から単離される。プロテインA SEPHAROSE(登録商標)を用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、十分に確立された様々な技術により、モノクローナル抗体がハイブリドーマ培養物から単離及び精製されうる。免疫原に対して最初に抗体が産生された後、抗体が配列決定され、続いて組換え技術により調製されうる。
【0045】
マウスモノクローナル抗体が産生される場合、当業者に周知の方法を使用して、このような抗体がヒト化又はキメラ化されうる。キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えばマウス抗体の可変領域で置換された組換えタンパク質である。マウスの免疫グロブリン可変ドメインは、抗体をコードする核酸からクローニングすることができ、キメラ抗体は、当技術分野で周知の技術を使用して産生することができる(例えばOrlandiら、(1989)PNAS USA 5:3833〜3837頁;Kaluzaら(1992)Gene 122(2):321〜8頁を参照のこと)。
【0046】
マウス又はキメラ抗体の可変重鎖及び可変軽鎖由来のCDRを、対応するヒト抗体の可変ドメインに移入させることによりヒト化モノクローナル抗体を産生する技術も、当技術分野で周知である(例えば、Riechmannら、(1988)Nature 332:323〜327頁;Singerら、(1993)J. Immunol. 750:2844〜2857頁を参照のこと)。一部の場合においては、親和性を増大させるためヒト化抗体のヒトフレームワーク領域に更なる改変が加えられる(例えばTempestら(1991)Biotechnology 9:266〜271頁を参照のこと)。
【0047】
或いは、ヒト抗体を産生するように遺伝的に操作されたトランスジェニック動物を使用して、標準的な免疫化プロトコルを使用することによりTLR5に対する抗体を生成させることができる(例えばLonbergら、(1994)Nature 55:856〜859頁、Lonberg(2005)Nat Biotechnol. 23(9):1117〜25頁を参照のこと)。このようなマウス、例えば、Amgen社(Thousand Oaks、CA)のXenoMouse(登録商標)が市販されている(Greenら、(1999)J. Immunol. Methods 231:11〜23頁で説明される)。
【0048】
別の実施形態において、TLR5アゴニストはアプタマーである。アプタマーとは、分子認識という点で抗体の代替に相当する分子クラスであり、高い親和性及び特異性で事実上あらゆるクラスの標的分子も認識する能力を有するオリゴペプチド配列である。ペプチドアプタマーは、大腸菌チオレドキシンA等のプラットフォームタンパク質により示される、立体構造的に制限された抗体可変領域からなり、ツーハイブリッド法によりコンビナトリアルライブラリーから選択される。
【0049】
gp120に対する少なくとも50%の配列同一性、及び少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有するポリペプチド
キメラタンパク質の第2のポリペプチドは、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも50%の配列同一性、及び少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有する。一部の例において、ポリペプチドは、配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性、及び少なくとも8個のN-グリコシル化部位、例えば8、9、10、11又は12個等のN-グリコシル化部位を有する。
【0050】
N-グリコシル化部位でのポリペプチドのグリコシル化を可能にする適切な系において産生されると、第2のポリペプチドは高度にグリコシル化された糖タンパク質となり、HIV-1由来の野生型gp120で示されるように、抗原提示細胞上のDC-SIGN等のレクチンに結合することができる。DC-SIGNは微生物における糖を認識するC型レクチンであり、多様な細菌、ウイルス、寄生生物及び菌類の高マンノース構造又はフコース含有グリカンのいずれかと相互作用する(Gringhuis及びGeijtenbeek(2010) Methods Enzymol. 480:151〜64頁)。最も典型的には、第2のポリペプチドはヒト樹状細胞上のヒトDC-SIGNに結合することができる。第2のポリペプチドは、まさにHIV-1由来のgp120が示すように、ランゲルハンス細胞上のランゲリン(Langerin)、真皮樹状細胞上のマンノース受容体、各種CD4+抗原提示細胞上のガレクチン-1、及び樹状細胞上のDC免疫受容体(DCIR)等のその他のレクチンとも結合することができる(Turvilleら(2003)J Leukoc Biol. 74(5):710〜8頁;Satoら(2012)Ann N Y Acad Sci. 1253:133〜48頁)。
【0051】
一例においては、第2のポリペプチドはgp120ポリペプチドである。特定の実施形態において、gp120ポリペプチドは配列番号1に記載の配列を含み、12個のN-グリコシル化部位を有する。
【0052】
キメラタンパク質の産生
キメラタンパク質は、組換え法、化学合成法又はそれらの組合せを含む、当業者に周知の方法のうち1つ又は複数を使用して産生されうる。キメラタンパク質は、単一のポリペプチドとして産生されてもよく、第1及び第2のポリペプチドを別々に生成させ、次いでこれらを連結することにより産生されてもよい。特定の例においては、配列番号6に記載の核酸分子等の、インフレームに第1及び第2のポリペプチドの両方をコードする単一の核酸分子からキメラタンパク質が発現される。その他の例においては、第1及び第2のポリペプチドが別々に生成され、次いでその後連結されてキメラタンパク質を形成する。このような連結は、第1のポリペプチドの第2のポリペプチドへの化学架橋等の任意の手段によるものであってよい。数多くの化学架橋剤が当技術分野で既知である(例えばPierce社、Rockford Ill.から市販されている)。
【0053】
第1及び第2のポリペプチドは、任意の方向に連結可能である。例えば、本発明のキメラタンパク質において、第1のポリペプチドのN末端が、第2のポリペプチドのC末端に連結されてよい。その他の例においては、第2のポリペプチドのN末端が、第1のポリペプチドのC末端に連結されている。第1及び第2のポリペプチドは直接連結され(すなわち、一方のポリペプチドのN末端アミノ酸が、他方のポリペプチドのC末端アミノ酸に直接連結し、これと隣接し)てもよく、立体障害を減少させることが可能な、ペプチドリンカー等のリンカー又はスペーサーを介して連結されてもよい。更に、キメラタンパク質は、精製を促進するためのアフィニティタグ(例えばmycエピトープ、GST融合又はヒスチジンタグ)等の1つ又は複数の更なる物体、又はその後のキメラタンパク質のナノ粒子担体への付着を促進するためのその他の物体を含んでいてよい。特定の例において、キメラタンパク質は、キメラタンパク質の精製及びナノ粒子担体への移植の両方を促進することが可能なヒスチジンタグを含む。更なる例において、キメラタンパク質は1つ又は複数の細菌、ウイルス、真菌又は腫瘍抗原を含む1つ又は複数の抗原を含んでいてよい。
【0054】
組換えポリペプチドを産生する方法が当技術分野で周知であり、これを使用して、本発明のキメラタンパク質に含めるための第1及び/又は第2のポリペプチドを得ることができる。第1及び/又は第2のポリペプチドをコードする核酸は、選択される発現系に好適な発現ベクターにクローニングされ、異種核酸分子の発現を引き起こす制御配列に作動可能に連結されてよい。多くの発現ベクターが利用可能であり、ポリペプチドの発現において当業者に既知である。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択の影響を受ける。このような選択は、十分に当業者の技術レベルの範囲内である。一般的に、発現ベクターは転写プロモーター、並びに場合によりエンハンサー、翻訳シグナル、並びに転写及び翻訳終結シグナルを含んでいてよい。安定な形質転換のために使用される発現ベクターは、典型的には、形質転換された細胞の選択及び維持を可能にする選択可能なマーカーを有する。一部の場合においては、複製起点を使用して細胞中のベクターのコピー数を増幅させてよい。
【0055】
上記開示内容より理解される通り、少なくとも第2のポリペプチドは糖タンパク質として産生されるべきである。キメラタンパク質が1つの転写物由来の融合タンパク質として産生される場合は、典型的には融合タンパク質が糖タンパク質として産生される。更に、上に論じられる通り、「非自己」グリカン、すなわち、キメラタンパク質が投与される種において通常産生されるグリカン構造又はパターンと異なるグリカン構造又はパターンを有する第2のポリペプチド又はキメラタンパク質全体を産生することにより、第2のポリペプチドのアジュバント活性を増大させることができる。したがって、キメラタンパク質がナノ粒子担体に移植され、ヒト対象に投与されることになる場合、キメラタンパク質(又は少なくとも第2のポリペプチド)は、グリコシル化を促進する非哺乳動物発現系を使用して産生可能である。キメラタンパク質を産生するのに最も適切な発現系を選択することは、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0056】
一例において、昆虫細胞のグリコシル化パターン又は構造を有するキメラタンパク質を産生するように、N結合型グリコシル化等の翻訳後修飾を有するポリペプチドを発現させるのに昆虫及び昆虫細胞が使用される。昆虫細胞と併せてバキュロウイルス発現系が使用可能である。バキュロウイルスは制限的な宿主範囲を有し、このことにより安全性が向上し、真核細胞発現についての制御上の懸念が減少する。典型的には、発現ベクターには、高レベル発現のための、バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーター等のプロモーターを使用する。通常使用されるバキュロウイルス系には、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)、及びカイコ(Bombyx mori)核多角体病ウイルス(BmNPV)等のバキュロウイルスが含まれる。例示的な昆虫細胞株には、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)由来のSf9細胞株、シューダレチア・ユニプンクタ(Pseudaletia unipuncta)由来のA7S細胞株、及びオオカバマダラ(Danaus plexippus)由来のDpN1細胞株等が含まれる。高レベル発現のため、発現されるべき分子のヌクレオチド配列は、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合される。
【0057】
サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母も、糖タンパク質に有用な発現宿主である。エピソーム複製ベクターを用いて、又は相同組換えによる安定な染色体組込みによって酵母を形質転換させることができる。典型的には、遺伝子発現を制御するためにGAL1、GAL7及びGAL5等を含む誘導性プロモーターが使用される。酵母発現ベクターはしばしば、形質転換されたDNAの選択及び維持のため、LEU2、TRP1、HIS3及びURA3等の選択可能なマーカーを含む。
【0058】
本明細書に記載されるタンパク質及びポリペプチドを発現させるために、哺乳動物発現系を使用することもできる。アデノウイルスの使用等のウイルス感染、又はリポソーム、リン酸カルシウム、DEAEデキストランの使用等の直接DNA移入、並びにエレクトロポレーション及びマイクロインジェクション等の物理的手段により、発現構築物を哺乳動物細胞に移入させることができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、典型的にはmRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(Kozakコンセンサス配列)及びポリアデニル化要素を含む。このようなベクターは、しばしば高レベル発現のための転写プロモーター-エンハンサー、例えばSV40プロモーター-エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)の長い末端反復を含む。哺乳動物での発現に利用可能な例示的な細胞株には、BHK、293-F、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNSO(非分泌性)及びその他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマ及びヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、293T、2B8及びHKB細胞等の、マウス、ラット、ヒト、サル、及びニワトリ及びハムスター細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0059】
固相グリコペプチド合成、ネイティブケミカルライゲーション(NCL)、及び発現タンパク質ライゲーション(EPL)を使用して糖タンパク質を合成することもできる。
【0060】
産生された後、SDS-PAGE、サイズ分画及びサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、キレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、当業者に既知の任意の方法を使用して、キメラタンパク質又は第1及び第2のポリペプチド(別々に産生された場合)を精製することができる。アフィニティ精製技術を使用して、製剤の効率及び純度を向上させることができる。例えば、キメラタンパク質又は第1若しくは第2のポリペプチドと結合する抗体、受容体及びその他の分子を、アフィニティ精製に使用することができる。上に論じられる通り、mycエピトープ、GST融合又はHis6等のアフィニティタグを加えるように構築物を操作してもよく、それぞれmyc抗体、グルタチオン樹脂及びNi樹脂を用いて精製を行うことができる。ゲル電気泳動及び染色法、並びに分光光度技術を含む、当技術分野で既知の任意の方法により、純度を評価することができる。
【0061】
ナノ粒子担体
本発明のナノ粒子担体は、上記の及び本明細書に記載の少なくとも1つのキメラタンパク質を含む。したがって、ナノ粒子担体は、TLR5アゴニストである第1のポリペプチド、並びに配列番号1に記載のgp120ポリペプチドに対する少なくとも50%の配列同一性、及び少なくとも8個のN-グリコシル化部位を有する第2のポリペプチドを含むキメラタンパク質を含みうる。キメラタンパク質の上記特性のおかげで、キメラタンパク質を含むナノ粒子担体は、樹状細胞等の抗原提示細胞に結合し、そこに内在化することが可能である。
【0062】
1つ又は複数のポリペプチドがそこに付着することができ、抗原提示細胞、具体的には樹状細胞により内在化されうる任意のナノ粒子担体が、本発明について企図される。例示的なナノ粒子担体には、リポソーム(中性、アニオン性又はカチオン性リポソーム;及びエソソーム(ethosome)を含む)、ビロソーム、ウイルス様粒子(VLP)、アーケオソーム、細胞膜小胞(PMV)、ニオソーム、脂質コアペプチド(LCP)、免疫刺激複合体(ISCOM)、ポリマーベースのナノ粒子(例えばポリ(D,L-乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)ナノ粒子、ポリプロピレンスルフィドナノ粒子、及びポリヒドロキシル化ナノ粒子等の生分解性ナノ粒子)が含まれるがこれらに限定されない。多様なナノ粒子担体が当技術分野で周知であり、広く研究され他の文献に記載されてきた(概説に関して、例えばJoshiら(2012)J Cont Release 161:25〜37頁;Altin(2012)Liposomes and other nanoparticles as cancer vaccines and immunotherapeutics. Chapter 8 In: Innovations in Vaccinology: from design、through to delivery and testing. S. Baschieri Ed、Springer;Gregoryら(2013)Front Cell Infect Microbiol. 3:13頁;及びZhaoら(2014)32(3):327〜337頁を参照のこと)。
【0063】
特定の例において、本発明のナノ粒子担体は、脂質ベースの二重膜小胞であるリポソームである。脂質の粒径及び物理的パラメータに汎用性があることで、医薬品、化粧品及び生化学用の、薬物、ペプチド、タンパク質及び核酸分子の担体として広く使用されるリポソームがもたらされてきた。リポソームは主に小胞形成脂質から構成されており、これは天然でも、半合成又は完全に合成でもよく、中性でも、負又は正に荷電していてもよい。例示的な小胞形成脂質には、スフィンゴ脂質、エーテル脂質、ステロール、リン脂質、具体的にはホスホグリセリド、並びにセレブロシド及びガングリオシド等の糖脂質が含まれる。リポソームに使用するのに好適な脂質は当業者に既知であり、ともにMcCutcheon Publishing Co.社、New Jerseyにより公表された1998 McCutcheon's Detergents and Emulsifiers、1998 McCutcheon's Functional Materials、及びAvanti Polar Lipids, Inc.社カタログ等の様々な出典に記載されている。特定の例において、本発明のリポソームは、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(ナトリウム塩)(DOPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(ナトリウム塩)(DOPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(塩化物塩)(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-750](アンモニウム塩)(DSPE-PEG750)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、又は2-(4,4-ジフルオロ-5-メチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(Bodipy)のいずれか1つ又は複数を含む。リポソームを産生する方法は当業者に周知であり、他の文献に広く記載されてきた(概説に関して、例えばWagner及びVorauer-Uhl(2011)J Drug Delivery、Article ID 591325;Yuら(2009)Methods Enzymol. 465:129〜141頁、及びLaouiniら(2012)J Colloid Sci Biotech 1:147〜168頁、2012を参照のこと)。これらの方法には、例えば、薄膜水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、エタノール注入、単相溶液の凍結乾燥、マイクロ流体力学的フォーカシング(microfluidic hydrodynamic focusing)、及び超臨界流体法が含まれる。
【0064】
当技術分野で既知の任意の方法を使用して、キメラタンパク質をナノ粒子担体に付着させることができる。ただし、付着によってキメラタンパク質と抗原提示細胞との間の相互作用が可能となり、結合及び内在化が可能となることを条件とする。したがって、最も典型的には、キメラタンパク質はナノ粒子担体の表面に提示されるように付着する。共有結合的方法及び非共有結合的方法を含む、タンパク質をナノ粒子担体に付着させるための多くの方法が広く知られている(例えばNobsら(2004)J Pharm Sci. 93(8):1980〜92頁;Marques-Gallego及びde Kroon(2014)BioMed Research International、Article ID 129458を参照のこと)。タンパク質は、ナノ粒子担体形成中にナノ粒子担体に付着させてもよく、あらかじめ形成されたナノ粒子担体の表面に付着させてもよい。例えば、タンパク質を脂質に付着させ、脂質-タンパク質をその他の成分と混合して、ナノ粒子担体を調製することができる(例えばSuraceら、(2009)Molecular Pharmaceutics 6:1062〜1073頁;Banerjeeら(2004)International Journal of Cancer 112:693〜700頁を参照のこと)。或いは、アミドコンジュゲーション、アミン-カルボキシルコンジュゲーション、ジスルフィド/チオエーテルコンジュゲーション又はビオチン/ストレプトアビジン結合により、タンパク質をナノ粒子担体の表面にライゲートさせることができる。その他の例においては、銅(I)触媒Huisgen 1,3-双極子環化付加(CuAAC)ライゲーション(Hassaneetら(2006)Bioconjugate Chemistry 17:849〜854頁)、銅フリークリックケミストリーライゲーション(Kooら(2012)Angewandte Chemie:International Edition 51:11836〜11840頁)、Staudingerライゲーション(Zhangら(2009)Chemical Communications 21:3032〜3034頁)、及びテトラジン/trans-シクロオクテン逆電子要請型Diels-Alder環化付加(IEDDA)(Emmetiereら、(2013)Bioconjugate Chemistry 24:1784〜1789頁)を含む「クリックケミストリー」を利用してもよい。
【0065】
特定の例において、キメラタンパク質はヒスチジンタグを含み、以下に限定されないが、ニトリロ三酢酸(NTA)又はトリニトリロ三酢酸(3NTA)等の1つ又は複数のニトリロ三酢酸部分、及びニッケル(Ni)イオン等の金属イオンを有するキレーター脂質を介してタンパク質がリポソームに移植される。典型的には、ニトリロ三酢酸部分は、様々な長さであってよく飽和していても不飽和でもよい少なくとも1つの脂肪族鎖に付着する。特定の例においては、ニトリロ三酢酸部分は炭素8〜20個の1つ又は複数の脂肪族鎖に付着する。脂肪族鎖の非限定的な例には、ジテトラデシルアミン(DTDA)鎖、Pam2Cys((S-(2,3-ジパルミテート-プロピル)システイン)、及びPam3Cys(N-パルミトイル-S-[2,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロピル]システイン)が含まれる。したがって、一部の例において、ニトリロ三酢酸部分は1つ又は複数のジテトラデシルアミン(DTDA)鎖に付着し、例えばニトリロ三酢酸-ジテトラデシルアミン(NTA-DTDA)又は3(ニトリロ三酢酸)-ジテトラデシルアミン(3NTADTDA)を生じる(Altinら(2001)Biochim Biophys Acta 1513(2):131〜48頁;van Broekhavenら(2005)Biochimica et Biophysica Acta - Biomembranes 1716:104〜116頁)。更なる例において、ニトリロ三酢酸部分は、WO2006081631に記載されるようにPam2Cysに付着する。例えば、Pam2CysSerLys8Cys(P2CSK8C)に付着した3NTAにより、Lipokel(Pam2CysSerLys8Cys-3NTA)が生じる。したがって、本発明の例示的なナノ粒子担体は、NTA-DTDA、3NTADTDA、及び/又はPam2CysSerLys8Cys-3NTAを含む。
【0066】
本発明のナノ粒子担体は、1つ又は複数のポリペプチド、ペプチド、核酸分子又は薬物等の1つ又は複数のその他の物体も含んでいてよく、これらは担体内にカプセル化されかつ/又は担体表面に付着していてよい。具体的には、ナノ粒子担体を対象に投与するとそれに対して免疫応答が誘発されうる抗原を含むナノ粒子担体が企図される。例示的な抗原には、細菌抗原(例えばアクチノマイセス属(Actinomyces)、バチルス属、バクテロイデス属(Bacteroides)、ボルデテラ属(Bordetella)、バルトネラ属(Bartonella)、ボレリア属、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属、キャプノサイトファーガ属(Capnocytophaga)、クラミジア属(Chlamydia)、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、コクシエラ属(Coxiella)、デルマトフィルス属(Dermatophilus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エーリキア属(Ehrlichia)、エシェリキア属、フランシセラ属(Francisella)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘモバルトネラ属(Haemobartonella)、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、L型菌、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリア属(Mycobacteria)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ネオリケッチア属(Neorickettsia)、ノカルジア属(Nocardia)、パスツレラ属(Pasteurella)、ペプトコッカス属(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、プロテウス属、シュードモナス属、リケッチア属(Rickettsia)、ロシャメリア属(Rochalimaea)、サルモネラ属、シゲラ属、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)及びエルシニア属の種由来の抗原)、ウイルス抗原(例えばアデノウイルス、カリシウイルス、コロナウイルス、ジステンパーウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、免疫不全ウイルス、伝染性腹膜炎ウイルス、白血病ウイルス、腫瘍ウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、パルボウイルス、狂犬病ウイルス、及びレオウイルス由来の抗原)、真菌抗原(例えばアブシディア属(Absidia)、アクレモニウム属(Acremonium)、アルテルナリア属(Alternaria)、アスペルギルス属(Aspergillus)、バシジオボラス属(Basidiobolus)、ビポラリス属(Bipolaris)、ブラストミセス属(Blastomyces)、カンジダ属(Candida)、コクシジオイデス属(Coccidioides)、コニディオボラス属(Conidiobolus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、カーブラリア属(Curvalaria)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton)、エクソフィアラ属(Exophiala)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ヒストプラズマ属(Histoplasma)、マヅレラ属(Madurella)、マラセチア属(Malassezia)、ミクロスポルム属(Microsporum)、モニリエラ属(Moniliella)、モルチェレラ属(Mortierella)、ムコール属(Mucor)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、フィアレモニウム属(Phialemonium)、フィアロフォラ属(Phialophora)、プロトテカ属(Prototheca)、シュードアレシェリア属(Pseudallescheria)、シュードミクロドキウム属(Pseudomicrodochium)、フィチウム属(Pythium)、リノスポリジウム属(Rhinosporidium)、リゾプス属(Rhizopus)、スコレコバシディウム属(Scolecobasidium)、スポロトリクス属(Sporothrix)、ステムフィリウム属(Stemphylium)、トリコフィトン属(Trichophyton)、トリコスポロン属(Trichosporon)、及びキシロヒファ属(Xylohypha)の種由来の抗原)、原虫又は寄生生物抗原(例えばバベシア属(Babesia)、バランチジウム属(Balantidium)、ベスノイチア属(Besnoitia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、エイメリア属(Eimeria)、エンセファリトゾーン属(Encephalitozoon)、エントアメーバ属(Entamoeba)、ジアルジア属(Giardia)、ハモンディア属(Hammondia)、ヘパトゾーン属(Hepatozoon)、イソスポラ属(Isospora)、リーシュマニア属(Leishmania)、微胞子虫門(Microsporidia)、ネオスポラ属(Neospora)、ノゼマ属(Nosema)、ペンタトリコモナス属(Pentatrichomonas)、プラスモディウム属(Plasmodium)、ニューモシスティス属(Pneumocystis)、サルコシスティス属(Sarcocystis)、シストソーマ属(Schistosoma)、タイレリア属(Theileria)、トキソプラズマ属(Toxoplasma)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、アカントケイロネマ属(Acanthocheilonema)、エルロストロンギルス属(Aelurostrongylus)、アンシロストーマ属(Ancylostoma)、アンギオストロンギルス属(Angiostrongylus)、アスカリス属(Ascaris)、ブルギア属(Brugia)、ブノストムム属(Bunostomum)、キャピラリア属(Capillaria)、シャベルティア属(Chabertia)、クーペリア属(Cooperia)、クレノソーマ属(Crenosoma)、ディクチオカウルス属(Dictyocaulus)、ジオクトフィーマ属(Dioctophyme)、ディペタロネマ属(Dipetalonema)、ジフィロボスリウム属(Diphyllobothrium)、ジピリジウム属(Diplydium)、ディロフィラリア属(Dirofilaria)、ドラクンクルス属(Dracunculus)、エンテロビウス属(Enterobius)、フィラロイデス属(Filaroides)、ヘモンクス属(Haemonchus)、ラゴキルアスカリス属(Lagochilascaris)、ロア糸状虫属(Loa)、マンソネラ属(Mansonella)、ムエレリウス属(Muellerius)、ナノフィエツス属(Nanophyetus)、ネカトール属(Necator)、ネマトジルス属(Nematodirus)、エソファゴストムム属(Oesophagostomum)、オンコセルカ属(Onchocerca)、オピストルキス属(Opisthorchis)、オステルタギア属(Ostertagia)、パラフィラリア属(Parafilaria)、パラゴニムス属(Paragonimus)、パラスカリス属(Parascaris)、フィサロプテラ属(Physaloptera)、プロトストロンギルス属(Protostrongylus)、セタリア属(Setaria)、スピロセルカ属(Spirocerca)、スピロメトラ属(Spirometra)、ステファノフィラリア属(Stephanofilaria)、ストロンギロイデス属(Strongyloides)、ストロンギルス属(Strongylus)、テラジア属(Thelazia)、トキサスカリス属(Toxascaris)、トキソカラ属(Toxocara)、トリキネラ属(Trichinella)、トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)、トリチュリス属(Trichuris)、ウンシナリア属(Uncinaria)、及びウケレリア属(Wuchereria)の種由来の抗原)、並びに腫瘍抗原(例えばCEA、MHC、CTLA-4、gp100、メソセリン、PD-L1、TRP1、CD40、EGFP、Her2、TCRアルファ、trp2、TCR、MUC1、cdr2、ras、4-1BB、CT26、GITR、OX40、TGF-β、WT1、MUC1、LMP2、HPV E6 E7、EGFRvIII、HER-2/neu、MAGE A3、非変異p53、NY-ESO-1、PSMA、GD2、メランA/MART1、Ras突然変異体、gp100、p53突然変異体、プロテイナーゼ3(PR1)、bcr-abl、チロシナーゼ、サバイビン、PSA、hTERT、EphA2、PAP、ML-IAP、AFP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、TRP-2、GD3、フコシルGM1、メソセリン、PSCA、MAGE A1、sLe(a)、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GloboH、ETV6-AML、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、Tie2、Page4、VEGFR2、MAD-CT-1、FAP、PDGFR-β、MAD-CT-2、及びFos関連抗原1)が含まれる。抗原は、ポリペプチド又はペプチド(糖タンパク質又はグリコペプチドを含む)であってもよく、核酸分子(例えばDNA又はRNA)であってもよい。当業者に既知の任意の方法を使用して、抗原をナノ粒子内にカプセル化させるかその表面に付着させることができる。特定の例において、抗原はナノ粒子担体の表面に付着している。本発明のナノ粒子担体は、1つ又は複数の抗原を含んでいてよい。
【0067】
例えば、その他のTLRアゴニスト、ケモカイン及び/又はサイトカインを含む1つ又は複数のその他の免疫調節剤を含むナノ粒子担体も企図される。TLRアゴニストには、PAMP(病原体関連分子パターン)又はDAMP(ダメージ関連分子パターン)リガンド等の天然アゴニスト、及び合成アゴニストの両方が含まれる。本発明の目的のためのTLRアゴニストは当技術分野で既知であり、TLR1/2アゴニスト(例えばトリアシル化リポペプチド、Pam3Cys)、TLR2アゴニスト(例えばグラム陽性細菌由来のペプチドグリカン、細菌リポタンパク質、リポテイコ酸、リポ多糖(LPS)、GPI-アンカータンパク質、ナイセリアのポリン、ホスホリポマンナン、CFA、MALP2、Pam2Cys、FSL-1及びHib-OMPC)、TLR3アゴニスト(例えば一本鎖及び二本鎖ウイルスRNA、ポリI:C、ポリA:U)、TLR4アゴニスト(例えばLPS、RSV F-タンパク質;マンナン、グリコイノシトールリン脂質、RSV及びMMTV外被タンパク質、Hsp60、Hsp70、フィブロネクチンドメインA、サーファクタントタンパク質A、ヒアルロナン、HMGB-1、AGP、MPLA、RC-529、MDF2β及びCFA)、TLR2/6アゴニスト(例えばフェノール可溶性モジュリン、ジアシル化リポペプチド、LTA、ザイモサン、MALP-2、Pam2Cys及びFSL-1)、TLR7アゴニスト(例えばウイルス一本鎖RNA、ヒトRNA、グアノシンアナログ、及びイミダゾキノリン(例えばイミキモド、Aldara(登録商標)、R848、Resiquimod(登録商標))、及びロキソリビン)、TLR8アゴニスト(例えばウイルス一本鎖RNA、ヒトRNA、イミダゾキノリン、ロキソリビン及びssPolyU)、TLR9アゴニスト(dsDNAウイルス、ヘモゾイン、非メチル化CpG DNA、ヒトDNA/クロマチン、LL37-DNA及びCpG-オリゴヌクレオチド)並びにTLR10アゴニストが含まれる。特定の例においては、ナノ粒子担体はPam2Cysを含む。例えば、ナノ粒子担体は、ヘテロ二官能性のリンカー分子N-スクシンイミジル6-マレイミドカプロエート(MCS)を介して3NTAとカップリングした脂質部分P2CSK8Cを含むLipokelを含みうる(WO2006081631)。
【0068】
使用及び方法
本明細書に記載されるキメラタンパク質を含む、本発明のナノ粒子担体は、抗原を抗原提示細胞に内在化させるのに特に有用である。本発明のキメラタンパク質及び1つ又は複数の抗原を含むナノ粒子担体を抗原提示細胞と接触させて、抗原提示細胞によるナノ粒子担体、ひいては抗原の内在化を促進することができる。特定の例において、抗原提示細胞は樹状細胞である。抗原提示細胞とナノ粒子担体との接触はインビトロで又はインビボで行うことができる。
【0069】
本明細書に記載されるキメラタンパク質を含む、本発明のナノ粒子担体は、ナノ粒子担体が担持する抗原に対する免疫応答を誘発するのにも特に有用である。キメラタンパク質及び1つ又は複数の抗原を含むナノ粒子担体を、抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分な量で対象に投与することができる。免疫応答は細胞性及び/又は液性免疫応答であってよく、CD4+T細胞応答、CD8+T細胞応答、液性応答(すなわちB細胞)、並びに/又は炎症促進性サイトカイン及び/若しくはケモカインの誘導が含まれていてよい。特定の場合において、この方法は少なくともCD8+T細胞応答を誘発する。
【0070】
ナノ粒子担体は、1つ又は複数の生理的に許容される担体又は賦形剤を用いて、任意の従来の方式で製剤化されてよい。担体又は賦形剤の選択は、投与の専門家の技術の範囲内であり、投与様式(すなわち、静脈内、筋肉内又は任意のその他の様式)等の複数のパラメータによって決められる。本明細書で提供されるナノ粒子担体は、直接投与されるように製剤化されてもよく、希釈又はその他の改変がなされるように製剤化されてもよい。したがって、ナノ粒子担体は単一の(又は単位)剤形又は複数の剤形として製剤化されてよい。単一剤形の例にはアンプル及びシリンジが含まれる。複数剤形の例には、複数の単位用量を含むバイアル及びビンが含まれる。
【0071】
一般的に、治療用のナノ粒子担体は、規制機関からの承認を考慮して調製されるか、そうでない場合は、動物及びヒトに使用するための一般的に認められた薬局方に従って調製される。ナノ粒子担体は、希釈剤、賦形剤又はビヒクル等の担体を含んでいてよい。このような医薬担体は、水及び油等の滅菌した液体であってよい。生理食塩溶液並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も、液体担体、具体的には注射液用の液体担体として使用可能である。組成物は、活性成分:希釈剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム又はカルボキシメチルセルロース等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びタルク等;並びに結合剤、例えばデンプン、アカシアゴム等の天然ゴム、ゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリジン、セルロース及びこれらの誘導体、ポビドン、クロスポビドン、及び当業者に既知のその他のこのような結合剤を併せて含んでいてよい。好適な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、及びエタノールが含まれる。ワクチン組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤、例えば、アセテート、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、及びその他のこのような薬剤も含んでいてよい。好適な医薬担体の例は、E. W. Martinの「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0072】
対象に投与されるナノ粒子担体の正確な量又は用量は、担体上又は担体内にローディングされる抗原の量、抗原の抗原性、TLR5アゴニストの種類、投与経路、投与される用量の数、並びに、対象の体重、年齢及び全身状態等のその他の考慮事項によって決まる。特定の投与量及び投与プロトコルは、実験的に決定されてもよく、例えば動物モデルでの研究又はヒトでの以前の研究から推定されてもよい。
【0073】
ナノ粒子担体は、筋肉内、皮内、非経口、静脈内、皮下、経鼻、経口、腹腔内又は局所投与、及びこれらのいずれか2つ以上の任意の組合せを含むがこれらに限定されない、好適であると当業者が理解する任意の方法及び経路によって投与されてよく、各投与経路に好適な方式で製剤化される。担体は、1回、又は2、3、4、5若しくはそれ以上の回数を含む1超の回数で対象に投与されてよい。ワクチンが1超の回数で投与される場合、投与量投与間の時間は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間若しくはそれ以上、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月若しくはそれ以上であってよい。最適なワクチン投与プロトコルを選択することは、十分に当業者の技術レベルの範囲内である。
【0074】
ナノ粒子担体は、望ましい場合、1つ又は複数の単位剤形を含みうる、パッケージ、キット、又は針付きのシリンジ、若しくはバイアル及び針付きのシリンジ等のディスペンサー機器として提供されてよい。キット又はディスペンサー機器には投与のための説明書が伴っていてよい。
【0075】
本発明について概して記載してきたが、以下の実施例に言及することにより、同じことがより容易に理解されるであろう。実施例は例示のために与えられるものであり、限定するものとは意図されない
【実施例】
【0076】
(実施例1)
材料及び方法
FliC-gp120融合タンパク質の生成及び精製
ネズミチフス菌(配列番号4)由来のFliC遺伝子を、インフレームでHIVgp120遺伝子(配列番号2)の3'末端に融合させることにより、FliC-gp120キメラタンパク質、Fg115(配列番号5;図1b)を生成させた。スレオニン-セリンジペプチドリンカーに翻訳される、配列ACTAGT(配列番号7)を有する短鎖リンカーを、2つのコード領域を分離するように含めた。融合タンパク質カセットの5'末端(融合タンパク質のC末端部分として翻訳される)に、トロンビン切断配列(配列番号9に記載のヌクレオチド配列;配列番号8に記載のアミノ酸配列)及びヒスチジンタグ(6H;配列番号11に記載のヌクレオチド配列;配列番号10に記載のアミノ酸配列)をコードする核酸を含めた。
【0077】
生じた融合タンパク質カセット(配列番号6;図1a)を、Sf9又はHigh Five(商標)(Life Technologies社)昆虫細胞でのバキュロウイルス系を使用して、発現用のpFastBacプラスミドベクターにクローニングして、Fg115の3つのバッチを産生させた。
【0078】
Fg115組換えタンパク質の第1のバッチ(2011)は、University of Queensland Protein Expression Facilityで産生させた。簡潔に言えば、感染させたSf9細胞を28℃でSF900-II培地において培養し、72時間後に収集した。固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びイオン交換クロマトグラフィー(IEX)を利用する2段階プロセスにより、Fg115タンパク質を上清から精製した。IMAC精製には、20mMトリス-HCl、200mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾールpH8.5の結合/洗浄緩衝液、及び20mMトリス-HCl、200mM塩化ナトリウム、500mMイミダゾールpH8.5の溶出緩衝液とともに、5ml HisTrap FF(GE社)カラムを利用した。IEX精製には、20mMトリス-HCl、10mM塩化ナトリウム、pH8.5の結合/洗浄緩衝液、及び20mMトリス-HCl、1M塩化ナトリウム、pH8.5の溶出緩衝液とともに、5ml HiTrap Q FF(GE社)カラムを利用した。2つのピーク(A及びB)が観察され、各ピークがほぼ等しい収量(ピークA画分:0.33mg/mL;ピークB画分:0.34mg/mL)であった。
【0079】
Fg115の第2のバッチ(05/2014)をHigh Five(商標)細胞の感染により産生させ、次いでこれを27℃でSF900-II培地において培養し、48時間後に収集した。IMAC及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用する2段階プロセスにより、Fg115タンパク質を上清から精製した。IMAC精製には、20mM NaP、500mM NaCl、60mMイミダゾール、pH7.0の結合/洗浄緩衝液、及び20mM NaP、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH7.0の溶出緩衝液とともに、5ml HisTrap FF(GE社)カラムを利用した。SEC精製には、PBS緩衝液とともにHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare社)カラムを利用した。2つのピーク(A及びB)が観察され、ピークAの収量が0.30mg/mL、ピークBの収量が0.58mg/mLであった。
【0080】
Fg115の第3のバッチ(07/2014)もHigh Five(商標)細胞の感染により産生させ、次いでこれを27℃でSF900-II培地において培養し、66時間後に収集した。まず、50kDa MWCO Hydrosart限外濾過カセット(Sartorius Crossflow Systems社)を使用して上清を濃縮し、その後、IMAC及びSECを利用する2段階プロセスによりFg115タンパク質を精製した。IMAC精製には、20mM NaP、500mM塩化ナトリウム、80mMイミダゾールpH7の結合/洗浄緩衝液、及び20mM NaP、500mM NaCl、700mMイミダゾール、pH7.0の溶出緩衝液とともに、5ml HisTrap FF(GE社)カラムを利用した。SEC精製には、PBS緩衝液とともにHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare社)カラムを利用した。2つのピーク(A及びB)が観察され、ピークAの収量が0..88mg/mL及びピークBの収量が0.1.16mg/mLであった。
【0081】
図1cはFg115キメラタンパク質の概略図であり、gp120ポリペプチドにおける潜在的な12個のN-グリコシル化部位を示す。キメラタンパク質の予期される分子量(配列による)は約110kDaである。昆虫細胞における発現中のグリコシル化により、Fg115タンパク質ははるかにより大きい見かけ上の分子量を有する(図1d)。
【0082】
リポソームの調製
下記の研究のため、5種類のリポソームを調製した:Fg115移植の解析用の、内部カーゴを有しないストックリポソーム;結合/標的化及び内在化研究用の、蛍光トレーサーβ-BODIPY(登録商標)500/510 C12-HPCを用いて調製した蛍光リポソーム;NT-FITCペプチド(これは、蛍光標識FITCを担持する合成ニューロテンシンペプチドである)カーゴを用いて調製したリポソーム;内部カーゴSIINFEKLペプチドを用いて調製したリポソーム;内部カーゴニワトリ卵アルブミン(オボアルブミン又はOVA)タンパク質を用いて調製したリポソーム。
【0083】
脂質はAvanti Polar Lipids社から購入し、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(ナトリウム塩)(DOPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(ナトリウム塩)(DOPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(塩化物塩)(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-750](アンモニウム塩)(DSPE-PEG750)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、又は2-(4,4-ジフルオロ-5-メチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(Bodipy)を含んでいた。
【0084】
TLR4アゴニストモノホスホリルリピドA(合成)(PHAD)(MPLA(PHAD))(Avanti Polar lipids社)及びTLR2アゴニストLipokel(Pam2Cys-3NTA)(自家試薬)も、一部のリポソーム製剤に使用した。
【0085】
押出し用の、手動で振とうした48mM脂質小胞の調製
概して、リポソームを以下の通り調製した。構成脂質のストック溶液を揮発性溶媒(クロロホルム又はエタノール)中で調製し、適切な体積の丸底フラスコ中で適当な比及び体積で混合し、次いで、ロータリーエバポレーターを使用して、薄膜になるまで乾燥させた。生理食塩水若しくはPBSの溶液、又は下記のカーゴタンパク質若しくはペプチドを含むこれらの溶液で薄膜を再水和させた。手動で穏やかに振とうすることにより膜を再水和させ、それにより様々なサイズの多重層小胞(MLV)懸濁液が生じた。基本的に製造業者の説明書に従って、単純な手動のシリンジ作動式押出し機(Avanti Polar Lipids社「Mini extruder」等)、又は窒素ガス作動式押出しシステム(Northern lipids社「Lipex」押出し機等)のいずれかを使用して、規定のサイズ(典型的には0.2μm)の孔を有するポリカーボネート膜を通しての押出しにより、MLVのサイズを変えた。
【0086】
具体的には、E-Toxa Clean(SIGMA社)の0.5%溶液で最低2時間(好ましくは一晩)処理することで、エンドトキシン及び残った微量の脂質を除去することにより1000mLフラスコを準備した。E-Toxa clean溶液を捨て、フラスコを大量の水道水、次いで5倍量のMilliQ水ですすいだ。最終的に、フラスコをエタノール約50mLですすぎ、その後風乾させた。
【0087】
乾燥脂質膜を調製するため、適切な脂質を保管庫から取り出し、室温(RT)で30分間静置した。必要に応じて、適正量のDOPC(Avanti Polar Lipids社)を、清潔な20mLアンバーガラスバイアル中でクロロホルム15mLに溶解させた;適正量のDOPG(Avanti Polar Lipids社)を、清潔な20mLアンバーガラスバイアル中でクロロホルム15mLに溶解させた;適正量のDSPE-PEG750(Avanti Polar Lipids社)を、清潔な20mLアンバーガラスバイアル中でクロロホルム5mLに溶解させた;適正な体積の3NTA-DTDAストック(エタノール中7.1mg/mL)を処理済みの1000mLフラスコに添加した。次いで脂質を、3NTA-DTDAを含む1000mLフラスコに添加し、全てのアンバーガラスバイアルをクロロホルム約2mLで3回すすぎ、このクロロホルムも1000mLフラスコに添加した。
【0088】
次いで、ウォーターバスを42℃に設定し、400〜600mmHgの真空に調節したロータリーエバポレーターを使用して、乾燥脂質の薄膜がフラスコの壁に析出するまで溶媒を除去した。脂質膜が均一でないか、多量の気泡を含んでいた場合、膜をクロロホルム5〜10mLに再溶解させ、ロータリーエバポレーターで再度乾燥させた。フラスコ内に残った視認可能な溶媒がなくなると、ロータリーエバポレーターの真空を10分間、最大(約600mmHg)まで増大させ、フラスコをロータリーエバポレーターから取り外して、42℃に設定した真空オーブンに最低2時間(好ましくは一晩)移して、残った微量のクロロホルムを全て除去した。
【0089】
乾燥させた脂質膜をもどすため、PBS及びNiS04ストックを50mLチューブに添加し、37℃に温めた。乾燥脂質を含むフラスコにPBS/NiS04溶液を添加し、30分間穏やかに回転させて脂質を再水和させた。30分後、フラスコの壁に視認可能な脂質がまだあった場合、溶解するまで回転を継続した。次いで、基本的に製造業者の説明書に従って、10mLサーモバレルを52℃に温めたNorthern Lipids社「Lipex」押出し機を使用して、リポソームを0.4μmのPC膜に5回、次いで0.2μmのPC膜に10回通して押し出した。インビボで材料を使用するために、0.2μmの滅菌フィルター及び滅菌シリンジを使用して更なる濾過ステップを行った。
【0090】
ペプチド含有リポソームの調製
ペプチドカーゴ(例えばNT-FITC又はSIINFEKL)カーゴを担持するリポソームを生成させるため、クロロホルム/エタノール中の脂質ストックを丸底フラスコ(体積10〜50mL)に添加し、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去することにより脂質薄膜を調製した。手動で穏やかに振とうすることにより、PBS中ペプチド溶液で脂質薄膜を再水和させ、それにより様々なサイズのMLV懸濁液が生じた。Avanti Polar lipids社「Mini extruder」、又はNorthern lipids社「Lipex」押出し機のいずれかを使用して、規定のサイズ(典型的には0.2μm)の孔を有するポリカーボネート膜を通しての押出しにより、MLVのサイズを変えた。次いで、300kDa MWCOチューブを使用して、サイズを変えたリポソームを透析して、カプセル化されていないあらゆるペプチドを除去した。HPLC及び/又はNanodrop装置を使用しての試料の蛍光解析により、透析したリポソームのペプチド含量を決定した。
【0091】
具体的には、上記の通り乾燥脂質膜を調製した。必要であれば、pH7.5〜8のペプチド溶液(SIINFEKL又はNT-FITC)を使用した。乾燥脂質を含むフラスコに適切な体積のペプチドを添加し、フラスコを30分間穏やかに回転させ、脂質を再水和させた。30分後、フラスコの壁に視認可能な脂質がまだあった場合、溶解するまで回転を継続した。
【0092】
次いで、基本的に製造業者の説明書に従って、10mLサーモバレルを52℃に温めたNorthern Lipids社「Lipex」押出し機を使用して、リポソームを0.2μmのPC膜に5回通して押し出した。押し出したリポソームを、末端を「汎用型」ナイロン透析クローザーで固定した複数本の300kDa MWCOチューブにローディングし、少なくとも100倍量の生理食塩水で2時間、次いで4℃の水で戻した生理食塩水(refereshed saline)で一晩透析した。リポソーム中に存在するペプチドの量をHPLCで、ペプチド標準液との比較により決定した。典型的には、C18分析カラム(Grace Everest 300A C18 5μm 100mmx2.1mm)及び水/アセトニトリル勾配を使用し、両溶媒が0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含んでいた。
【0093】
OVAリポソームの調製
OVAカーゴを担持するリポソームを生成させるため、脂質薄膜を上記の通り調製し、その後、30分間手動で穏やかに振とうすることにより、PBS中1.5mg/mL OVA溶液で再水和させ、それにより様々なサイズのMLV懸濁液が生じた。基本的に製造業者の説明書に従って、10mLサーモバレルを52℃に温めたNorthern Lipids社「Lipex」押出し機を使用して、0.2μmのPC膜に5回通して押し出すことにより、MLVのサイズを変えた。押し出したリポソームを、末端を「汎用型」ナイロン透析クローザーで固定した複数本の300kDa MWCOチューブにローディングし、少なくとも100倍量の生理食塩水で2時間、次いで4℃の新しい生理食塩水で一晩透析した。銀染色したSDS-PAGEゲルで、QuantITゲル解析ソフトウェアを使用して、透析したリポソームのOVA含量を標準液と比較することによりOVA含量を決定した。
【0094】
リポソームの移植
上記の通り調製したリポソームに、必要であれば、ヒスチジンタグタンパク質(例えばFg115、FliC-6his又はgp120-6his)を移植した。移植可能なタンパク質の量は実験的に決定した。最大でも50%の3NTA-DTDA分子しかhisタグ分子と複合体を形成することができない(残りの50%はリポソーム内部の水性区画に面しているため)ことは重要な想定である。簡潔に言えば、押し出したリポソームのうち必要量を清潔なチューブに移し、次いで適切な量のヒスチジンタグタンパク質を添加した。必要に応じて、製剤をPBSで望ましい体積にした。反転させることにより製剤を混合し、室温又は4℃で(BODIPY含有製剤については暗所で)一晩インキュベートした。
【0095】
(実施例2)
Fg115移植リポソームによるヒト単球由来樹状細胞の標的化
Fg115移植リポソームの、ヒト単球由来樹状細胞(moDC)への結合を、実施例1に上記した通りFACSによって評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有し、DOPC、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)の脂質バックボーンを有する、キレート化用リポソーム(chelating liposomes)を産生させた。リポソームに、100μg/mL Fg115タンパク質、10μg/mL FlgTペプチド(配列番号12;フラジェリン由来ペプチド-Auspep Pty Ltd社)、50μg/mL DC-SIGN特異的抗体DMS5000(Domantis Ltd社)を移植するか、又は未移植のままとした。移植されたリポソームの最終脂質含量は3.6mMであった。
【0096】
リポソーム10μLをmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して氷上で30分〜1時間インキュベートした。細胞をPBSで穏やかに洗浄し、次いで、リポソームの細胞への結合をFACSにより解析し(図2)、リポソームによる標的化を平均蛍光強度(MFI)値に基づき評価した。Fg115移植リポソームが、未移植リポソーム(MFI9.7)より高い効率(MFI27.7)でmoDCに結合することが観察された。関連するFlgTペプチドを移植したリポソームはこの結合の増強を示さず(MFI16.3)、DMS5000を移植したリポソームは強力な結合を示した(MFI143)。
【0097】
(実施例3)
Fg115移植リポソームの内在化
インビトロでの、Fg115移植リポソームのヒトmoDC細胞への内在化を、実施例1に上記した通りFACSにより評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。リポソームに使用した脂質バックボーンは、DOPC、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。100μg/mL Fg115タンパク質、50μg/mL DMS5000をリポソームに移植するか、又は未移植のままとした。あらかじめ冷却したmoDC(最小限の内在化が予期される)又は37℃で維持したmoDCのいずれかにリポソームを添加し(移植リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)、混合物をそれぞれ4℃又は37℃で、光から保護して2時間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。PBS洗浄により、細胞に結合した(すなわち表面に結合した又は内在化した)リポソームの評価が可能となり、一方PBS/イミダゾールは表面に結合したリポソームを洗い流し、その結果これらの細胞のMFIは内在化したリポソームのみを反映する。異なるドナー由来のmoDCを使用する2つの独立した実験での、FACs解析のMFI値が示す通り(図3A及び図3B)、4℃での未移植リポソームでは予期通りごくわずかな結合及び最小限の内在化しかみられなかった。Fg115をリポソーム表面に移植すると、リポソームのmoDCへの結合の増大が4℃で検出された(約3倍の増大)。PBS/イミダゾールで洗浄したFg115リポソーム-細胞混合物のMFIが示す通り、これらのリポソームを、4℃に維持した細胞から剥ぎ取ることができた。37℃では、全ての細胞に関連してより高いレベルの蛍光がみられ、その大部分が内在化の結果と考えられた。これらの結果は、未移植リポソームと比較して、Fg115移植リポソームの内在化が増強されたことを明らかに示している。
【0098】
(実施例4)
Fg115密度が、Fg115移植リポソームのヒトmoDC細胞への内在化に及ぼす効果
100μg/mL又は50μg/mLのFg115タンパク質をリポソームに移植し、Fg115密度が内在化に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンは、DOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。100μg/mL若しくは50μg/mLのFg115タンパク質、又は25μg/mL、50μg/mL若しくは75μg/mLのDMS5000をリポソームに移植するか、未移植のままとした。最終脂質含量は3.6mMであった。次いで、リポソームを2人のドナー由来のmoDCに添加(移植リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)した。moDCをあらかじめ冷却するか37℃で維持し、混合物を関連する温度で光から保護して2時間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。
【0099】
未移植リポソームと比較してFg115移植リポソームの内在化が増大したことが、複数のドナーから調製したmoDCで観察され、同じ条件下で、Fg115移植リポソームのMFI値は未移植リポソームのMFI値の約2倍であった(データは示さない)。更に、リポソームに100μg/mLのFg115を移植した場合、50μg/mLと比較して内在化が約25〜40%増強され、このことが、リポソーム表面上のFg115密度を増加させると、moDCへのリポソームの結合が増大し、リポソームの内在化が増強されることを示している。
【0100】
(実施例5)
Fg115移植リポソームの様々な画分を移植したリポソームの結合
実施例1に記載した通りFg115を精製すると、典型的には2つのピーク(A及びBと標識)が検出される。High Five昆虫細胞での発現後、ピークA及びBからFg115を単離し、その、移植した脂質の内在化を増強する能力について別々に評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。最終濃度10〜90mg/mLの範囲でFg115タンパク質をリポソームに移植し(又は未移植とし)て、以下のTable 1(表2)に示す製剤を産生させた。
【0101】
リポソーム20μLを2人のドナーのうち1人由来のmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して氷上でインキュベートした。リポソームの細胞への結合をFACS結合により解析し、MFI値を決定した。ピークB由来のFg115が、ピークA由来のFg115と比較して結合の向上を促進すると考えられることが観察された(Table 1(表2))。広範な用量にわたって、用量効果も確認された。
【0102】
【表2】
【0103】
(実施例6)
ピークB由来Fg115移植リポソームの、CD11c+細胞への結合
Fg115移植リポソームの、C57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウス由来のCD11c+細胞への結合を、ピークB由来Fg115を使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。最終濃度10〜90μg/mLの範囲で、High Five細胞で発現されたFg115タンパク質、又は0.75若しくは75μg/mLのDMS5000をリポソームに移植して、以下のTable 2(表3)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0104】
【表3】
【0105】
C57Bl/6 DC-SIGNトランスジェニックマウスの脾臓から精製されたCD11c+細胞にリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して氷上で1時間インキュベートした。リポソームの細胞への結合をFACSにより解析した。Fg115移植により、リポソームのCD11c+細胞への結合が向上することが観察された(データは示さない)。DMS5000の移植では、0.75μg/mLという低い移植レベルでも結合が向上した。
【0106】
(実施例7)
ヒトmoDC細胞による、ピークB由来Fg115移植リポソームの内在化
ピークB由来Fg115を移植したリポソームの内在化について、ヒトmoDCを使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。High Five細胞で発現されたタンパク質のピークB由来Fg115タンパク質、又は0.75若しくは75μg/mLのDMS5000をリポソームに移植して、以下のTable 3(表4)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0107】
【表4】
【0108】
リポソーム20μLを2人のドナー(ドナー1又はドナー2)のうち1人由来のmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して関連する温度で20分間インキュベートした。細胞はあらかじめ冷却されるか37℃で維持されていた。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。ドナー1及びドナー2のmoDCに内在化したリポソームを表すMFI値をTable 4(表5)に示す。試験した最大のFg115密度(90μg/mL)でピークB由来Fg115を移植すると、ドナー細胞によってはリポソームの内在化が最大10倍向上することをデータが示している。DMS5000による、リポソームのmoDCへの標的化は非常に効率的であったが、Fg115移植リポソームではより高いレベルの内在化が観察された。
【0109】
【表5】
【0110】
(実施例8)
蛍光Fg115移植リポソームの内在化
脂質二重膜ではなく内部の水性カーゴの一部として、蛍光トレーサーとしてのNT-FITCを有するリポソームを使用して、Fg115移植リポソームの内在化を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。β-BODIPY 500/510 C12-HPCの代わりにNT-FITCを有する類似のリポソームも調製した。Fg115タンパク質をリポソームに移植して、以下のTable 5(表6)及びTable 6(表7)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
リポソーム20μLを2人のドナー(ドナー3又はドナー2)のうち1人由来のmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して関連する温度で20分間インキュベートした。細胞はあらかじめ冷却されるか37℃で維持されていた。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。内在化したリポソームを表すMFI値をTable 7(表8)に示す。Fg115移植BODIPYリポソームで観察された内在化の増強(Table 7(表8))は、Fg115移植NT-FITCリポソームでも確認された(Table 8(表9))。DMS5000移植リポソームは、より効率的にmoDCを標的とするものの、Fg115移植リポソームよりも小さい内在化を示した。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
(実施例9)
ヒトmoDC細胞による、Fg115混合リポソームの内在化
Fg115を3NTADTDA不含のリポソーム(すなわち非キレート化用リポソーム)と混合し、これらのリポソームの内在化をFg115移植リポソームと比較することにより、Fg115をリポソームと混合する効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。3NTADTDA不含の非キレート化用リポソームも調製した。次いで、キレート化用リポソーム及び非キレート化用リポソームをFg115タンパク質と混合して、Table 9(表10)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0117】
あらかじめ冷却したmoDC又は37℃で維持したmoDCのいずれかにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を関連する温度で光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 9(表10)に提示するMFI値により実証される通り、Fg115と混合させたリポソームの内在化は、Fg115濃度によって、未移植(Fg115なし)リポソームと同じかわずかに大きいだけであり、このことは、リポソームの内在化の増大が、3NTADTDAを介したFg115のリポソームへの付着に依存することを示している。
【0118】
【表10】
【0119】
(実施例10)
ヒトmoDCによる、ピークA又はB由来Fg115混合リポソームの内在化
ピークA又はピークB由来のFg115をリポソームと混合する効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。次いで、NiS04存在下又は非存在下で、ピークA由来のFg115タンパク質又はピークB由来のFg115タンパク質とリポソームを混合して、Table 10(表11)に示す通り、それぞれ移植又は混合リポソームを産生させた。
【0120】
あらかじめ冷却したmoDC又は37℃で維持したmoDCのいずれかにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を関連する温度で光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 10(表11)に提示するMFI値により実証される通り、ピークA又はピークB由来Fg115のいずれかと混合したリポソームは、未移植リポソームと同様のmoDCへの内在化を示し、Fg115移植リポソームのみが内在化の増強を示した。
【0121】
【表11】
【0122】
(実施例11)
ヒトmoDCによる、Fg115又はFg115成分を移植したリポソームの内在化
キメラFg115タンパク質又はFg115タンパク質の成分を移植したリポソームの内在化について、ヒトmoDCを使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。次いで、総体積50μLで、Fg115、ヒスチジンタグFliC(FliC-6his)、ヒスチジンタグgp120(gp120-6his)、又はFliC-6his及びgp120-6hisタンパク質をリポソームに移植して、Table 11(表12)に示すリポソーム製剤を産生させた。FliC-6hisは大腸菌で産生させ、gp120-6hisはSF9細胞で産生させた。
【0123】
37℃で維持したmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。MFI値が示す通り(Table 11(表12))、Fg115キメラタンパク質をリポソームに移植したときにのみリポソームの内在化の向上がみられ、FliC又はgp120、又はその両方をリポソームに移植したときにはみられなかった。
【0124】
【表12】
【0125】
(実施例12)
CD11c+細胞による、Fg115又はFg115成分を移植したリポソームの内在化
キメラFg115タンパク質又はFg115タンパク質の成分を移植したリポソームの内在化について、野生型マウス又はDC-SIGNトランスジェニックマウス由来のCD11c+細胞を使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。次いで、Fg115、FliC-6his、gp120-6his、又はFliC-6his及びgp120-6hisをリポソームに移植して、Table 12(表13)に示すリポソーム製剤を産生させた。FliCは大腸菌で産生させ、gp120はSF9細胞で産生させた。
【0126】
【表13】
【0127】
野生型又はDC-SIGNトランスジェニックC57/Bl6マウスの脾臓から調製したCD11c+細胞にリポソームを添加した。細胞を37℃に維持し、リポソーム20μLを細胞50,000個と混合した。次いで、混合物を光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Fg115移植リポソームの内在化の向上は、DC-SIGNトランスジェニックCD11c+細胞を使用したときのみ明白であり、ヒトDC-SIGNを提示しない野生型マウス細胞では明白でなかった(Table 13(表14))。その他のタンパク質(FliC及びgp120)の移植は、同じ内在化効果の増強を有しなかった。
【0128】
【表14】
【0129】
(実施例13)
TLR5受容体の活性化
HEK-Blue(商標)mTLR5細胞株(Invitrogen社)を使用して、Fg115がTLR5を活性化することを確認した。HEK-Blue(商標)mTLR5細胞は、5つのNF-κB及びAP-1結合部位と融合したIL-12 p40最小プロモーターの制御下で、SEAP(分泌性胚性アルカリホスファターゼ)レポーター遺伝子を安定に発現するHEK293細胞である。TLR5リガンドでの刺激によりNF-κB及びAP-1が活性化され、これによりSEAPの産生が誘導される。TLR活性化は、HEK-Blue(商標)検出培地の色の変化により視覚化される。異なるバッチのFg115を使用して、Fg115移植リポソームではTLR5活性化が確認された(データは示さない)。FliC移植リポソーム及び市販のフラジェリン製剤(Biofarma社)、並びにEAH(2つのTB抗原の融合物からなる組換えタンパク質)及びFg115又はFliCを共移植したリポソームでも、TLR5活性化が観察された。未移植リポソーム、EAH単独又はPaM2CSK4(TLR2アゴニスト)を移植したリポソームではTLR5活性化が観察されなかった。
【0130】
(実施例14)
異なるバッチのFg115を移植し、異なるリポソームバックボーンを使用したリポソームの内在化
異なるバッチのFg115(バッチ05/2014及びバッチ07/2014)間の一貫性、及び異なるリポソームバックボーンを使用しての一貫性を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.1%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。第1の脂質バックボーンはDOPC(67.2%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)(「DOPC/DOPG」と称する)であり、第2の脂質バックボーンはDOPC(97.4%)及びDSPE-PEG750(2.5%)(「DOPC」と称する)であった。更に、脂質二重膜のトレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPCではなく、内部の蛍光ペプチドカーゴ(NT-FITC)を担持するDOPC/DOPGリポソームを調製した(これらのリポソーム中のDOPCのパーセンテージを、BODIPYリポソームと比較して0.2%増大させた)。総体積50μLで、Fg115タンパク質をリポソームに移植して、Table 14(表15)に示す製剤を産生させた(総脂質5mM)。
【0131】
37℃に維持したmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を関連する温度で光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 14(表15)に示す通り、未移植リポソームと比較して、Fg115を移植した両方の種類のリポソームバックボーンで内在化が約5倍に増大し、Fg115移植による内在化の向上が両方の種類のリポソームで観察された。更に、異なるバッチのFg115により、内在化の増強が同等にもたらされた。
【0132】
【表15】
【0133】
(実施例15)
ヒトmoDC細胞による、Fg115移植DOPC/DOPG及びPOPC/DOPEリポソームの内在化
2つの異なるリポソームバックボーン、DOPC/DOPG及びPOPC/DOPGを用いて調製したNT-FITCリポソームの内在化を試験するため、研究を行った。各リポソームは0.05%又は0.25%の3NTADTDA、30%のDOPG、及び残りのパーセンテージのDOPC又はPOPCを含んでいた。簡潔に言えば、総脂質48mMで、0.05%又は0.25%の3NTADTDA及び内部の蛍光ペプチドNT-FITC(NT-FITCカプセル化は1mg/mLで実施した)を有するキレート化用リポソームを産生させた。総体積100μLでFg115タンパク質をリポソームに移植して、Table 15(表16)に記載する、最終総脂質含量5mMを有するリポソーム製剤を産生させた。
【0134】
37℃に維持したmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して60分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 15(表16)に示すMFI値は、Fg115移植によるリポソーム内在化の増強が、POPC/DOPGバックボーンよりもDOPC/DOPGバックボーンを用いて調製したリポソームでより顕著であったことを示しており、このことから、リポソームの組成が内在化に影響しうることが示唆される。Table 15(表16)に示す結果は、0.05%というより少ない3NTADTDA含量のリポソームにFg115を移植すると、0.25%の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームで観察されたものと比較して、内在化の増強が低下したことも実証している。したがって、リポソームバックボーン及び3NTADTDA含量の両方が、moDCへのリポソーム内在化の増強の程度に影響しうる。
【0135】
【表16】
【0136】
(実施例16)
ヒトmoDC細胞による、Fg115移植DOPC/DOPG及びPOPC/DOPEリポソームの内在化
様々なリポソームバックボーン:DOPC/DOPG(「DOPC/PG」);POPC/DOPG(「POPC/PG」);POPC;DOPC;DOPC/DOPE;DOPC/DOTAP;DOPC/DOPS;及びDOPC/MPLAを用いて調製したNT-FITCリポソームの内在化を試験するため、別の研究を行った。簡潔に言えば、総脂質48mMで、0.25%の3NTADTDA及び内部の蛍光ペプチドNT-FITC(NT-FITCカプセル化は1mg/mLで実施した)を有するキレート化用リポソームを産生させた。25μg/mL又は80μg/mLのFg115タンパク質をリポソームに移植して、Table 16(表17)に記載するリポソーム製剤を産生させた。
【0137】
【表17】
【0138】
37℃に維持した、2人のドナー(ドナー1又は2)のうち1人由来のmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して60分間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。上記結果と一致して、Fg115移植によりリポソーム内在化が増強された(データは示さない)。本研究の結果も、Fg115移植によるリポソーム内在化の増強が、DOPCを用いて調製したリポソームでより顕著となる傾向があることを実証している。
【0139】
(実施例17)
マンナンによるFg115移植リポソーム結合の阻害
酵母由来のポリサッカライドマンナン(Sigma Aldrich社)が、インビトロでFg115移植リポソームのヒトmoDC細胞への結合に及ぼす効果を試験するため、リポソーム製剤を調製した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。最終濃度25μg/mL及び最終脂質含量5mMで、Fg115又はDMS5000をリポソームに移植した。未移植リポソームも調製した。moDCを10mg/mLのマンナンとともにあらかじめインキュベートし、その後リポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を4℃で光から保護して60分間インキュベートした。次いで、リポソームのmoDCへの結合をFACsにより解析し、MFI値を定量した。Fg115移植リポソームのmoDCへの結合がマンナンにより阻害される(MFIが、未処理の細胞での52.4からマンナン処理細胞での18に減少する)ことから、Fg115移植リポソームがポリペプチドバックボーンの糖を介してmoDCに結合することが示唆される。DMS5000移植リポソームを使用すると同様の結合阻害が観察された(MFIが、未処理の細胞での787からマンナン処理細胞での517に減少)が、未移植リポソームでは観察されなかった(MFIが、未処理の細胞での19.8からマンナン処理細胞での17.7に減少)。
【0140】
(実施例18)
マンナンによる、様々な量の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームの内在化阻害
様々な量の3NTADTDAが、マンナンによる内在化阻害に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、DOPC/DOPG/DSPE-PEG750バックボーン及び0.05%又は0.25%の3NTADTDA(すなわち2.5%のDSPE-PEG750、30%のDOPG、及び67.05%又は67.25%のDOPC又はPOPC)を有するキレート化用リポソームを産生させた。カプセル化を2mg/mLで実施した内部の蛍光ペプチドNT-FITCを用いてリポソームを調製した。リポソームにFg115を移植して、Table 17(表18)に示す製剤を産生させた(最終体積100μL及び最終総脂質含量5mM)。
【0141】
moDCを10mg/mLのマンナンとともにあらかじめインキュベートし、その後移植リポソームを添加(移植リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を4℃で光から保護して60分間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。MFI値を定量し、結果をTable 17(表18)に示した。0.05%の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームの内在化は、マンナンによって、0.25%の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームで観察された内在化よりも大幅に阻害された。このことは、Fg115移植リポソームが、ポリペプチドバックボーンの糖を介してmoDCに結合する更なる証拠を与える。
【0142】
【表18】
【0143】
(実施例19)
DC-SIGNトランスジェニックマウスにおける、Fg115移植リポソームを使用した、MHCクラスI複合体によるSIINFEKLペプチドの交差提示
Fg115移植リポソームを使用して、カプセル化されたSIINFEKLペプチドの交差提示を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、DOPC/DOPG/DSPE-PEG750(67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDSPE-PEG750)からなるバックボーンを有するキレート化用リポソームを産生させた。3NTADTDAを0.25%含めた。「高」又は「低」SIINFEKLカーゴのいずれかを担持するリポソームを調製した。「高」SIINFEKLリポソームは、リポソーム(24mM)を0.5mg/mL SIINFEKLで再水和させることにより調製し、「低」SIINFEKLリポソームは、同じ脂質を0.050mg/mL SIINFEKLで再水和させることにより調製した。全てのリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、カプセル化されていないSIINFEKLを透析(300kDa MWCO)により除去した。これにより、SIINFEKL含量に約4倍の差を有するリポソームが生じた(Table 18(表19))。次いで、これらのリポソームに総体積50μLでFg115を移植し、Table 19(表20)に示す、最終脂質含量5mMを有するリポソーム製剤を産生させた。
【0144】
【表19】
【0145】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウス(上部パネル)又は野生型C57Bl/6マウス(下部パネル)からCD11c+細胞を調製した。細胞を、Table 19(表20)に列挙するSIINFEKLリポソームでパルス処理する(20分間)か、これらと細胞を共培養した(16時間)。MHCクラスIのH-2Kbに結合したオボアルブミン由来ペプチドSIINFEKLとは反応するが、結合していないH-2Kb又は無関係のペプチドと結合したH-2Kbとは反応しないmAb 25-D1.16(eBioscience社)で染色することにより、SIINFEKL提示を評価した。次いで、細胞をFACSにより解析した。リポソームバックボーン及びFg115移植がSIINFEKL交差提示に及ぼす効果を、MFI値(Table 19(表20))を比較することにより評価した。Fg115を移植したリポソームは、SIINFEKLペプチドの交差提示を向上させることができた。リポソームに80μg/mLのFg115含量を移植した場合の、野生型及びDC-SIGNトランスジェニック細胞で交差提示の向上が観察された。
【0146】
【表20】
【0147】
(実施例20)
野生型マウスにおける、Fg115移植リポソームを使用した、リポソームバックボーンがSIINFEKL交差提示に及ぼす効果
様々なリポソームバックボーンを有するFg115移植リポソームを使用して、カプセル化されたSIINFEKLペプチドの交差提示を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、カプセル化されたSIINFEKLペプチドを有し、Table 18(表19)に示すリポソームバックボーンを有するキレート化用リポソームを産生させた。3NTADTDAを0.05%含めた。リポソーム(24mM)を0.5mg/mL SIINFEKLで再水和させることにより、「高」SIINFEKLカーゴを有するリポソームを調製した。全てのリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、カプセル化されていないSIINFEKLを透析(300kDa MWCO)により除去した。これにより、SIINFEKL含量に約4倍の差を有するリポソームが生じた(Table 20(表21))。100μLで、25μg/mL Fg115又は20μg/mL FliCをリポソームに移植して、Table 21(表22)に示す試験用リポソーム製剤(それぞれが最終総脂質含量5mMを有する)を産生させた。
【0148】
【表21】
【0149】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6野生型マウスからCD11c+細胞を調製した。次いで、細胞をリポソームで20分間パルス処理し、mAb 25-D1.16で染色しFACSにより解析することによりSIINFEKL提示を評価した。リポソームバックボーン及びFg115移植がSIINFEKL交差提示に及ぼす効果を、MFI値(Table 21(表22))を比較することにより評価した。上記の実施例19で、リポソームに80μg/mLのFg115含量を移植した場合に野生型及びDC-SIGNトランスジェニック細胞で観察された交差提示の向上は、リポソームに25μg/mLというより少ない用量を移植した場合の野生型細胞では概して観察されなかった。
【0150】
【表22】
【0151】
(実施例21)
Fg115移植リポソームがインビトロでCD8+T細胞応答を誘導する能力
Fg115移植リポソームがインビトロでCD8+T細胞応答を誘導する能力を、オボアルブミンをローディングしたリポソームを使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDSPE-PEG750バックボーンを有し、0.25%の3NTADTDAを有し、カプセル化されたオボアルブミン(OVA)を有するキレート化用リポソームを産生させた。リポソームを1.5mg/mL OVAで再水和させることにより、OVAをローディングしたリポソーム(LipOVA)を調製し、次いでリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、透析した(300kDa MWCO)。生じたLipOVA製剤は、29.7mMの脂質及び476μg/mL OVAを含んでいた。LipOVA製剤を215μg/mL OVAに希釈すると、OVA:脂質比が脂質1mgあたりOVA19.85μgとなった。次いで、この希釈されたLipOVA製剤を100μg/mL Fg115の移植に使用して、総脂質含量13mMのLipOVA-Fg115リポソームを産生させるか、74μg/mLの対照分子(hisタグ対照ドメイン抗体;Domantis Ltd社)の移植に使用して、総脂質含量13mMのLipOVA-contリポソームを産生させた。
【0152】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c+細胞を調製した。次いで、CD11c+細胞を、密度1.2×106細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した(各ウェルにつき最終10μg/mL OVA)。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、抗体及びフローサイトメトリーを使用して、CD69及びCD44のアップレギュレーションを介したCD8+T細胞活性化を決定することにより、すなわちCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団をT細胞活性化の指標として使用し、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、又は生理食塩水若しくはOVAとともにインキュベートしたT細胞の対照も研究に含めた。DOPC/DOPGリポソーム表面にFg115を移植すると、対照分子を移植したリポソームと比較してCD8+T細胞の活性化がほぼ3倍に向上した(データは示さない)。
【0153】
(実施例22)
Fg115移植及びFg115混合リポソームがCD8+T細胞応答を誘導する能力
Fg115移植リポソームがCD8+T細胞応答を誘導する能力を、更なる研究で確認した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDPSE-PEG750のバックボーン、並びに0.25%の3NTADTDAを有するキレート化用リポソームを産生させ、1.5mg/mL OVAで再水和させた。次いで、最終脂質含量7.48mM及び215μg/mL OVAとなるように、LipOVAリポソームに100μg/mL Fg115を移植するか、未移植のままとした。
【0154】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c+細胞を調製した。次いで、CD11c+細胞を、密度1.2×106細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、抗体及びフローサイトメトリーを使用して、CD69及びCD44のアップレギュレーションを介したCD8+T細胞活性化を決定することにより、すなわちCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団をT細胞活性化の指標として使用し、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、又はCD11c+細胞及び生理食塩水、Fg115、OVA、若しくはOVA+Fg115とともに培養したT細胞の対照も研究に含めた。リポソームのFg115移植により、未移植リポソームと比較して(未移植リポソームを使用しての約35%と比較して、Fg115移植リポソームを使用するとOT-I CD8 T細胞が約55%活性化された)、また可溶性OVA+Fg115と比較して(OT-I CD8 T細胞が約30%活性化された)、CD8+T細胞の活性化が向上した。予期された通り、陰性対照ではごくわずかなCD8+T細胞活性化しか観察されなかった。
【0155】
(実施例23)
Fg115移植及びFg115混合リポソームがCD8+T細胞応答を誘導する能力
高濃度及び低濃度のFg115を移植したリポソーム、又はFg115と混合したリポソームがCD8+T細胞応答を誘導する能力を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDPSE-PEG750のバックボーン、並びに0.25%の3NTADTDAを有するキレート化用リポソームを産生させ、1.5mg/mL OVAで再水和させた。次いで、最終脂質含量10mM及び215μg/mL OVAとなるように、LipOVAリポソームに5μg/mL又は50μg/mLのFg115を移植するか、未移植のままとした。NiS04非存在下でLipOVAリポソームをFg115と混合することにより、Fg115と混合したLipOVAリポソームも調製した。
【0156】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c+細胞を調製した。次いで、CD11c+細胞を、密度1.2×106細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した(各ウェルにつき最終10μg/mL OVA)。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、T細胞活性化の指標としてCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団を測定することにより、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、又はCD11c+細胞及び生理食塩水、Fg115、OVA、若しくはOVA+Fg115とともに培養したT細胞の対照も研究に含めた。
【0157】
リポソームのFg115移植により、未移植リポソームと比較して、また可溶性OVA+Fg115と比較してCD8+T細胞の活性化が向上し、このことは実施例22の結果と一致していた。Fg115をリポソームと混合することで、可溶性OVA+Fg115又は未移植リポソームと比較して、CD8+T細胞活性化が向上することも観察された(データは示さない)。
【0158】
(実施例24)
カプセル化されたOVAレベルが、Fg115移植リポソームのCD8+T細胞応答誘導能に及ぼす効果
カプセル化されたOVAレベルが、Fg115移植リポソームのCD8+T細胞応答誘導能に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、高レベルのOVA(LipOVA(高):436μg/mL OVA)又は低レベルのOVA(LipOVA(低):129μg/mL OVA)を有するキレート化用リポソームを産生させた(Table 22(表23)及びTable 23(表24))。次いで、総脂質13mMで、リポソームにFg115、gp120又はFliCを移植するか未移植のままとして、Table 24(表25)の脂質製剤を産生させた。
【0159】
【表23】
【0160】
【表24】
【0161】
【表25】
【0162】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c+細胞を調製した。次いで、CD11c+細胞を、密度1.2×106細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した(各ウェルにつき最終10μg/mL OVA)。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、T細胞活性化の指標としてCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団を測定することにより、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、CD11c+細胞及び生理食塩水若しくはOVAとともに培養したT細胞、又は野生型樹状細胞及び生理食塩水若しくはOVAとともに培養したT細胞の対照も研究に含めた。図4に示す通り、カプセル化されたOVAレベルが、リポソームのCD8活性化誘導能に影響し、LipOVA(高)リポソームがより高いレベルのCD8+T細胞活性化を誘導した。
【0163】
(実施例25)
様々なリポソームバックグラウンドが、Fg115移植リポソームによるCD8+T細胞活性化に及ぼす効果
各種バックボーンを有する、OVAをローディングしたリポソームを調製して、様々なリポソームバックグラウンドが、Fg115移植リポソームのCD8+T細胞活性化能に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、0.25%の3NTADTDA及び各種リポソームバックボーンを有するキレート化用リポソームを1.5mg/mL OVAで再水和させて、Table 25(表26)に示す、OVAをローディングしたリポソームを産生させた。全てのリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、カプセル化されていないOVAを一晩の透析(300kDa MWCO)により除去した。Table 26(表27)に示す各種濃度のFg115及び総脂質をLipOVAリポソームに移植した。
【0164】
【表26】
【0165】
【表27】
【0166】
マウスC57/Bl6野生型マウスからCD11c+細胞を調製した。細胞をリポソームとともに一晩培養し、CD11c+細胞によるOT-I CD8 T細胞の活性化を上記の通り評価した。図5に示す通り、リポソームバックボーン組成がCD8+T細胞の活性化レベルに影響し、POPC/DOPE、POPC/DOPG及びDOPC/DOPGバックボーンで最も高い活性化が観察された。
【0167】
(実施例26)
Fg115移植リポソームがインビボでCD8+T細胞応答を誘導する能力
Fg115移植リポソームがインビボでCD8+T細胞応答を誘導する能力を評価した。総脂質24mMでキレート化用リポソームを産生させた。簡潔に言えば、上記の通り、OVA、並びに67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDPSE-PEG750のバックボーンを有し、0.25%の3NTADTDAを有するリポソームを調製した(Table 27(表28))。総脂質17.38mM、最終OVA濃度500μg/mLで、LipOVAリポソームに100μg/mL Fg115を移植した。Table 28(表29)のLipOVA-Fg115又は未移植LipOVAリポソーム製剤でマウスを免疫化した。
【0168】
【表28】
【0169】
【表29】
【0170】
マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によってOVA特異的CD8+T細胞を精製した。色素希釈により細胞分裂を評価可能にするため、細胞を生体色素(vital dye)CFSEで標識もした。外側尾静脈への静脈内注射によって、CD8+T細胞(細胞106個)をC57BL/6J宿主マウスに養子移入した。次いで24時間後、筋肉内に注射される、生理食塩水のボーラス50μl中の各種リポソーム製剤により、1群あたりマウス5匹の反復で宿主マウスを免疫化した。6日後、CD45.1+ C57BL/6Jマウス由来の脾細胞を使用して蛍光標的アレイ(FTA)を作製した。これは、様々な濃度の数種の変異OVA MHC-I-結合ペプチドでパルス処理された標的細胞から構成されていた。FTA細胞1〜5×106個を、外側尾静脈より宿主マウスに静脈注射した。宿主動物に入れて18時間後、抗体及びHoechst33258(細胞の生存率を評価するため)標識、並びにフローサイトメトリーを使用して、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞の死についてFTA細胞を評価した。%FTA細胞の特異的な死滅について、以下の式を使用して評価した。
【0171】
【数1】
【0172】
更に、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞中の%IFN-γCD8+T細胞について、これらを10μg/ml SIINFEKLペプチド及びGolgistop(BD bioscience社)とともにインビトロで6時間培養した後、抗体及びフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン染色法(ICS)を使用して評価した。
【0173】
図6に示す結果は、Fg115移植リポソームがインビボでCD8+T細胞の増殖を誘導した(CFSEが薄くなることにより分裂が評価される)ことを実証している。Fg115移植リポソームは、OVAペプチドSIINFEKL並びに関連ペプチドN6(SIINFNKL)、G4(SIIGFEKL)及びE1(EIINFEKL)に特異的なエフェクターT細胞による死滅を誘導したが、対照ペプチドNP68に特異的なエフェクターT細胞による死滅は誘導しなかった。ただし、このレベルのタンパク質カーゴでは、死滅を誘導するのに未移植リポソームも非常に有効であった(データは示さない)。
【0174】
(実施例27)
Fg115移植リポソームが、インビボで抗原特異的なT細胞媒介性の死滅を誘導する能力
Fg115移植リポソームが、インビボで抗原特異的なT細胞媒介性の死滅を誘導する能力を評価するため、上記及びTable 29(表30)及びTable 30(表31)に示す通り、Fg115移植及び未移植LipOVAリポソームを調製した。
【0175】
【表30】
【0176】
【表31】
【0177】
免疫化の24時間前に、OT-I CD8 T細胞をマウスに移入した。マウス1匹あたり2.5μgで、上に示す製剤によりマウスを免疫化した(ボーラス50μLあたり0.673mM脂質、筋肉内)。
【0178】
マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によってOVA特異的CD8+T細胞を精製した。外側尾静脈へのi.v.注射によって、CD8+T細胞(細胞106個)をC57BL/6J宿主マウスに養子移入した。次いで24時間後、i.m.注射される、生理食塩水のボーラス50μl中に抗原としてのOVA、危険シグナル及び/又は各種標的モチーフを担持する各種リポソーム製剤により、1群あたりマウス5匹の反復で宿主マウスを免疫化した。6日後、CD45.1+ C57BL/6Jマウス由来の脾細胞を使用して蛍光標的アレイ(FTA)を作製した。これは、様々な濃度の数種の変異OVA MHC-I-結合ペプチドでパルス処理された標的細胞から構成されていた;FTA細胞1〜5×106個を、外側尾静脈より宿主マウスにi.v.注射した。宿主動物に入れて18時間後、抗体及びHoechst33258(細胞の生存率を評価するため)標識、並びにフローサイトメトリーを使用して、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞の死についてFTA細胞を評価した。%FTA細胞の特異的な死滅について、上記の通り評価した。
【0179】
Fg115移植リポソームが、インビボで抗原特異的なT細胞媒介性の死滅を有効に誘導することが観察された(データは示さない)。
【0180】
(実施例28)
Fg115移植リポソームによる免疫化後に、OVAレベルがインビボでのOVA特異的な死滅に及ぼす効果
様々なレベルのカプセル化されたOVAを有するLipOVA製剤を調製して、OVAレベルがインビボでのOVA特異的な死滅に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、Table 31(表32)に示す通りにLipOVAリポソームを調製した。リポソームにFg115を移植するか未移植のままとして、Table 32(表33)に示す製剤を産生させた。
【0181】
【表32】
【0182】
【表33】
【0183】
マウスをリポソーム製剤で免疫化し、標的特異的な死滅を上記の通り評価した。移植リポソームは、特に用量OVA1.19μgで、細胞増殖の向上を誘導することができた(図7)。オボアルブミンペプチドSIINFEKLを各種OVA用量で標的細胞をパルス処理した後の特異的な死滅について評価すると(野生型マウス由来の細胞を使用)、リポソームにカプセル化されたオボアルブミン量を減少させたときに、未移植リポソームと比較して、Fg115移植リポソームによるOVA特異的な死滅が明らかに増加することが観察された(データは示さない)。Fg115移植の利点は、マウスにOVA0.57μgを投与した場合に特に明らかであり、Fg115移植リポソームで観察された強力な抗原特異的死滅と比較して、未移植リポソームを使用するとごくわずかな抗原特異的死滅しか観察されなかった。
【0184】
野生型マウスに加えて、DC-SIGNトランスジェニックマウスの一群も、Table 32(表33)に列挙するFg115移植OVAリポソーム製剤で免疫化した。(DC-SIGNトランスジェニックマウス又は野生型マウス由来のCD11c+細胞を使用して、オボアルブミンペプチドSIINFEKLをOVA用量0.57μg又は2μgで標的細胞をパルス処理した後に)、より小さい用量(用量0.57μg;データは示さない)では、野生型マウスよりもDC-SIGNトランスジェニックマウスでより高いレベルの抗原特異的死滅がみられた。この、DC-SIGNトランスジェニックマウスでの死滅の向上は、より大きい用量では明白でなかった。このことは、DC-SIGNによる標的化によってFg115媒介性応答が増強されることがあり、この利点がより小さい抗原用量で最も明白であることを示唆している。
【0185】
(実施例29)
Fg115移植リポソームにより誘発されるポリクローナル応答
ポリクローナル応答を評価するため、67.25%のPOPC、30%のDOPG及び2.5%のDSPE-PEG750のバックグラウンドで、0.05%の3NTADTDAを有し、OVAをローディングしており、110μg/mL Fg115又は55μg/mL FliCを移植したリポソームを上記の通り調製して、130μg/mL OVA(22mM、用量1)又は300μg/mL(22mM、用量2)を有するLipOVAリポソームを産生させた。マウス(C57/Bl6野生型マウス)をリポソーム製剤で免疫化し、標的特異的な死滅を上記の通り評価した。MHC-II-結合ペプチドエピトープでパルス処理したFTA(蛍光標的アレイ)B細胞におけるCD69のアップレギュレーションに基づき、抗体標識及びフローサイトメトリーを使用して、Tヘルパー応答についても評価した。屠殺前に、マウスを後眼窩洞(retro-orbital sinus)から失血させ、ELISAによる循環サイトカイン及び抗原特異的Igの測定のため、血清を単離した。更に、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞中の%IFN-γCD8+T細胞について、これらを10μg/ml抗原ペプチド及びGolgistop(BD bioscience社)とともにインビトロで6時間培養した後、抗体及び標識及びフローサイトメトリーを使用する細胞内サイトカイン染色法(ICS)を使用して評価した。
【0186】
Fg115又はFliCのいずれかを移植したOVAリポソームによるプライミング及びブーストを受けた動物のみで、OVA特異的な死滅(SIIN及びN6ペプチド)が検出された(図8A)。動物を未移植OVAリポソームで免疫化すると、最小の死滅が検出された。初回用量にのみFg115を移植した場合も、最小の死滅が観察された。Fg115又はFliCのいずれかを移植したOVAリポソームで動物を免疫化すると、抗原特異的IFNγ産生CD8+T細胞数の増加が検出された(図8B)。一方、抗原特異的IFNγ産生CD4+T細胞の出現頻度は、OVAリポソームにFliCを移植した場合に最大であった。18時間後、抗原特異的B細胞と同族(cognate)相互作用が可能なヘルパーT細胞が生成されたことを示す、インビボでのFTA B細胞活性化を測定することによってインビボでのTヘルパー応答を評価した。LipOVA-Fg115/LipOVA-Fg115、LipOVA-Fg115/LipOVA-uneng及びLipOVA-FliC/LipOVA-FliCワクチンレジメンを受けたマウスは、OVAペプチドに特異的なB細胞応答を活性化することができるCD4ヘルパーT細胞を生成した。しかし、全体としてLipOVA-FliC/LipOVA-FliCにより、その他のワクチンよりも有意に良好なCD4 Tヘルパー応答が生じた。これらの傾向は、図8Cに示すように、各用量応答曲線下面積(AUC)を測定することにより十分に概説される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【配列表】
2017537650000001.app
【国際調査報告】