【実施例】
【0076】
(実施例1)
材料及び方法
FliC-gp120融合タンパク質の生成及び精製
ネズミチフス菌(配列番号4)由来のFliC遺伝子を、インフレームでHIVgp120遺伝子(配列番号2)の3'末端に融合させることにより、FliC-gp120キメラタンパク質、Fg115(配列番号5;
図1b)を生成させた。スレオニン-セリンジペプチドリンカーに翻訳される、配列ACTAGT(配列番号7)を有する短鎖リンカーを、2つのコード領域を分離するように含めた。融合タンパク質カセットの5'末端(融合タンパク質のC末端部分として翻訳される)に、トロンビン切断配列(配列番号9に記載のヌクレオチド配列;配列番号8に記載のアミノ酸配列)及びヒスチジンタグ(6H;配列番号11に記載のヌクレオチド配列;配列番号10に記載のアミノ酸配列)をコードする核酸を含めた。
【0077】
生じた融合タンパク質カセット(配列番号6;
図1a)を、Sf9又はHigh Five(商標)(Life Technologies社)昆虫細胞でのバキュロウイルス系を使用して、発現用のpFastBacプラスミドベクターにクローニングして、Fg115の3つのバッチを産生させた。
【0078】
Fg115組換えタンパク質の第1のバッチ(2011)は、University of Queensland Protein Expression Facilityで産生させた。簡潔に言えば、感染させたSf9細胞を28℃でSF900-II培地において培養し、72時間後に収集した。固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びイオン交換クロマトグラフィー(IEX)を利用する2段階プロセスにより、Fg115タンパク質を上清から精製した。IMAC精製には、20mMトリス-HCl、200mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾールpH8.5の結合/洗浄緩衝液、及び20mMトリス-HCl、200mM塩化ナトリウム、500mMイミダゾールpH8.5の溶出緩衝液とともに、5ml HisTrap FF(GE社)カラムを利用した。IEX精製には、20mMトリス-HCl、10mM塩化ナトリウム、pH8.5の結合/洗浄緩衝液、及び20mMトリス-HCl、1M塩化ナトリウム、pH8.5の溶出緩衝液とともに、5ml HiTrap Q FF(GE社)カラムを利用した。2つのピーク(A及びB)が観察され、各ピークがほぼ等しい収量(ピークA画分:0.33mg/mL;ピークB画分:0.34mg/mL)であった。
【0079】
Fg115の第2のバッチ(05/2014)をHigh Five(商標)細胞の感染により産生させ、次いでこれを27℃でSF900-II培地において培養し、48時間後に収集した。IMAC及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用する2段階プロセスにより、Fg115タンパク質を上清から精製した。IMAC精製には、20mM NaP、500mM NaCl、60mMイミダゾール、pH7.0の結合/洗浄緩衝液、及び20mM NaP、500mM NaCl、500mMイミダゾール、pH7.0の溶出緩衝液とともに、5ml HisTrap FF(GE社)カラムを利用した。SEC精製には、PBS緩衝液とともにHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare社)カラムを利用した。2つのピーク(A及びB)が観察され、ピークAの収量が0.30mg/mL、ピークBの収量が0.58mg/mLであった。
【0080】
Fg115の第3のバッチ(07/2014)もHigh Five(商標)細胞の感染により産生させ、次いでこれを27℃でSF900-II培地において培養し、66時間後に収集した。まず、50kDa MWCO Hydrosart限外濾過カセット(Sartorius Crossflow Systems社)を使用して上清を濃縮し、その後、IMAC及びSECを利用する2段階プロセスによりFg115タンパク質を精製した。IMAC精製には、20mM NaP、500mM塩化ナトリウム、80mMイミダゾールpH7の結合/洗浄緩衝液、及び20mM NaP、500mM NaCl、700mMイミダゾール、pH7.0の溶出緩衝液とともに、5ml HisTrap FF(GE社)カラムを利用した。SEC精製には、PBS緩衝液とともにHiLoad 26/600 Superdex 200(GE Healthcare社)カラムを利用した。2つのピーク(A及びB)が観察され、ピークAの収量が0..88mg/mL及びピークBの収量が0.1.16mg/mLであった。
【0081】
図1cはFg115キメラタンパク質の概略図であり、gp120ポリペプチドにおける潜在的な12個のN-グリコシル化部位を示す。キメラタンパク質の予期される分子量(配列による)は約110kDaである。昆虫細胞における発現中のグリコシル化により、Fg115タンパク質ははるかにより大きい見かけ上の分子量を有する(
図1d)。
【0082】
リポソームの調製
下記の研究のため、5種類のリポソームを調製した:Fg115移植の解析用の、内部カーゴを有しないストックリポソーム;結合/標的化及び内在化研究用の、蛍光トレーサーβ-BODIPY(登録商標)500/510 C12-HPCを用いて調製した蛍光リポソーム;NT-FITCペプチド(これは、蛍光標識FITCを担持する合成ニューロテンシンペプチドである)カーゴを用いて調製したリポソーム;内部カーゴSIINFEKLペプチドを用いて調製したリポソーム;内部カーゴニワトリ卵アルブミン(オボアルブミン又はOVA)タンパク質を用いて調製したリポソーム。
【0083】
脂質はAvanti Polar Lipids社から購入し、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(ナトリウム塩)(DOPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(ナトリウム塩)(DOPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(塩化物塩)(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-750](アンモニウム塩)(DSPE-PEG750)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、又は2-(4,4-ジフルオロ-5-メチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ドデカノイル)-1-ヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(Bodipy)を含んでいた。
【0084】
TLR4アゴニストモノホスホリルリピドA(合成)(PHAD)(MPLA(PHAD))(Avanti Polar lipids社)及びTLR2アゴニストLipokel(Pam2Cys-3NTA)(自家試薬)も、一部のリポソーム製剤に使用した。
【0085】
押出し用の、手動で振とうした48mM脂質小胞の調製
概して、リポソームを以下の通り調製した。構成脂質のストック溶液を揮発性溶媒(クロロホルム又はエタノール)中で調製し、適切な体積の丸底フラスコ中で適当な比及び体積で混合し、次いで、ロータリーエバポレーターを使用して、薄膜になるまで乾燥させた。生理食塩水若しくはPBSの溶液、又は下記のカーゴタンパク質若しくはペプチドを含むこれらの溶液で薄膜を再水和させた。手動で穏やかに振とうすることにより膜を再水和させ、それにより様々なサイズの多重層小胞(MLV)懸濁液が生じた。基本的に製造業者の説明書に従って、単純な手動のシリンジ作動式押出し機(Avanti Polar Lipids社「Mini extruder」等)、又は窒素ガス作動式押出しシステム(Northern lipids社「Lipex」押出し機等)のいずれかを使用して、規定のサイズ(典型的には0.2μm)の孔を有するポリカーボネート膜を通しての押出しにより、MLVのサイズを変えた。
【0086】
具体的には、E-Toxa Clean(SIGMA社)の0.5%溶液で最低2時間(好ましくは一晩)処理することで、エンドトキシン及び残った微量の脂質を除去することにより1000mLフラスコを準備した。E-Toxa clean溶液を捨て、フラスコを大量の水道水、次いで5倍量のMilliQ水ですすいだ。最終的に、フラスコをエタノール約50mLですすぎ、その後風乾させた。
【0087】
乾燥脂質膜を調製するため、適切な脂質を保管庫から取り出し、室温(RT)で30分間静置した。必要に応じて、適正量のDOPC(Avanti Polar Lipids社)を、清潔な20mLアンバーガラスバイアル中でクロロホルム15mLに溶解させた;適正量のDOPG(Avanti Polar Lipids社)を、清潔な20mLアンバーガラスバイアル中でクロロホルム15mLに溶解させた;適正量のDSPE-PEG750(Avanti Polar Lipids社)を、清潔な20mLアンバーガラスバイアル中でクロロホルム5mLに溶解させた;適正な体積の3NTA-DTDAストック(エタノール中7.1mg/mL)を処理済みの1000mLフラスコに添加した。次いで脂質を、3NTA-DTDAを含む1000mLフラスコに添加し、全てのアンバーガラスバイアルをクロロホルム約2mLで3回すすぎ、このクロロホルムも1000mLフラスコに添加した。
【0088】
次いで、ウォーターバスを42℃に設定し、400〜600mmHgの真空に調節したロータリーエバポレーターを使用して、乾燥脂質の薄膜がフラスコの壁に析出するまで溶媒を除去した。脂質膜が均一でないか、多量の気泡を含んでいた場合、膜をクロロホルム5〜10mLに再溶解させ、ロータリーエバポレーターで再度乾燥させた。フラスコ内に残った視認可能な溶媒がなくなると、ロータリーエバポレーターの真空を10分間、最大(約600mmHg)まで増大させ、フラスコをロータリーエバポレーターから取り外して、42℃に設定した真空オーブンに最低2時間(好ましくは一晩)移して、残った微量のクロロホルムを全て除去した。
【0089】
乾燥させた脂質膜をもどすため、PBS及びNiS0
4ストックを50mLチューブに添加し、37℃に温めた。乾燥脂質を含むフラスコにPBS/NiS0
4溶液を添加し、30分間穏やかに回転させて脂質を再水和させた。30分後、フラスコの壁に視認可能な脂質がまだあった場合、溶解するまで回転を継続した。次いで、基本的に製造業者の説明書に従って、10mLサーモバレルを52℃に温めたNorthern Lipids社「Lipex」押出し機を使用して、リポソームを0.4μmのPC膜に5回、次いで0.2μmのPC膜に10回通して押し出した。インビボで材料を使用するために、0.2μmの滅菌フィルター及び滅菌シリンジを使用して更なる濾過ステップを行った。
【0090】
ペプチド含有リポソームの調製
ペプチドカーゴ(例えばNT-FITC又はSIINFEKL)カーゴを担持するリポソームを生成させるため、クロロホルム/エタノール中の脂質ストックを丸底フラスコ(体積10〜50mL)に添加し、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去することにより脂質薄膜を調製した。手動で穏やかに振とうすることにより、PBS中ペプチド溶液で脂質薄膜を再水和させ、それにより様々なサイズのMLV懸濁液が生じた。Avanti Polar lipids社「Mini extruder」、又はNorthern lipids社「Lipex」押出し機のいずれかを使用して、規定のサイズ(典型的には0.2μm)の孔を有するポリカーボネート膜を通しての押出しにより、MLVのサイズを変えた。次いで、300kDa MWCOチューブを使用して、サイズを変えたリポソームを透析して、カプセル化されていないあらゆるペプチドを除去した。HPLC及び/又はNanodrop装置を使用しての試料の蛍光解析により、透析したリポソームのペプチド含量を決定した。
【0091】
具体的には、上記の通り乾燥脂質膜を調製した。必要であれば、pH7.5〜8のペプチド溶液(SIINFEKL又はNT-FITC)を使用した。乾燥脂質を含むフラスコに適切な体積のペプチドを添加し、フラスコを30分間穏やかに回転させ、脂質を再水和させた。30分後、フラスコの壁に視認可能な脂質がまだあった場合、溶解するまで回転を継続した。
【0092】
次いで、基本的に製造業者の説明書に従って、10mLサーモバレルを52℃に温めたNorthern Lipids社「Lipex」押出し機を使用して、リポソームを0.2μmのPC膜に5回通して押し出した。押し出したリポソームを、末端を「汎用型」ナイロン透析クローザーで固定した複数本の300kDa MWCOチューブにローディングし、少なくとも100倍量の生理食塩水で2時間、次いで4℃の水で戻した生理食塩水(refereshed saline)で一晩透析した。リポソーム中に存在するペプチドの量をHPLCで、ペプチド標準液との比較により決定した。典型的には、C18分析カラム(Grace Everest 300A C18 5μm 100mmx2.1mm)及び水/アセトニトリル勾配を使用し、両溶媒が0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含んでいた。
【0093】
OVAリポソームの調製
OVAカーゴを担持するリポソームを生成させるため、脂質薄膜を上記の通り調製し、その後、30分間手動で穏やかに振とうすることにより、PBS中1.5mg/mL OVA溶液で再水和させ、それにより様々なサイズのMLV懸濁液が生じた。基本的に製造業者の説明書に従って、10mLサーモバレルを52℃に温めたNorthern Lipids社「Lipex」押出し機を使用して、0.2μmのPC膜に5回通して押し出すことにより、MLVのサイズを変えた。押し出したリポソームを、末端を「汎用型」ナイロン透析クローザーで固定した複数本の300kDa MWCOチューブにローディングし、少なくとも100倍量の生理食塩水で2時間、次いで4℃の新しい生理食塩水で一晩透析した。銀染色したSDS-PAGEゲルで、QuantITゲル解析ソフトウェアを使用して、透析したリポソームのOVA含量を標準液と比較することによりOVA含量を決定した。
【0094】
リポソームの移植
上記の通り調製したリポソームに、必要であれば、ヒスチジンタグタンパク質(例えばFg115、FliC-6his又はgp120-6his)を移植した。移植可能なタンパク質の量は実験的に決定した。最大でも50%の3NTA-DTDA分子しかhisタグ分子と複合体を形成することができない(残りの50%はリポソーム内部の水性区画に面しているため)ことは重要な想定である。簡潔に言えば、押し出したリポソームのうち必要量を清潔なチューブに移し、次いで適切な量のヒスチジンタグタンパク質を添加した。必要に応じて、製剤をPBSで望ましい体積にした。反転させることにより製剤を混合し、室温又は4℃で(BODIPY含有製剤については暗所で)一晩インキュベートした。
【0095】
(実施例2)
Fg115移植リポソームによるヒト単球由来樹状細胞の標的化
Fg115移植リポソームの、ヒト単球由来樹状細胞(moDC)への結合を、実施例1に上記した通りFACSによって評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有し、DOPC、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)の脂質バックボーンを有する、キレート化用リポソーム(chelating liposomes)を産生させた。リポソームに、100μg/mL Fg115タンパク質、10μg/mL FlgTペプチド(配列番号12;フラジェリン由来ペプチド-Auspep Pty Ltd社)、50μg/mL DC-SIGN特異的抗体DMS5000(Domantis Ltd社)を移植するか、又は未移植のままとした。移植されたリポソームの最終脂質含量は3.6mMであった。
【0096】
リポソーム10μLをmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して氷上で30分〜1時間インキュベートした。細胞をPBSで穏やかに洗浄し、次いで、リポソームの細胞への結合をFACSにより解析し(
図2)、リポソームによる標的化を平均蛍光強度(MFI)値に基づき評価した。Fg115移植リポソームが、未移植リポソーム(MFI9.7)より高い効率(MFI27.7)でmoDCに結合することが観察された。関連するFlgTペプチドを移植したリポソームはこの結合の増強を示さず(MFI16.3)、DMS5000を移植したリポソームは強力な結合を示した(MFI143)。
【0097】
(実施例3)
Fg115移植リポソームの内在化
インビトロでの、Fg115移植リポソームのヒトmoDC細胞への内在化を、実施例1に上記した通りFACSにより評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。リポソームに使用した脂質バックボーンは、DOPC、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。100μg/mL Fg115タンパク質、50μg/mL DMS5000をリポソームに移植するか、又は未移植のままとした。あらかじめ冷却したmoDC(最小限の内在化が予期される)又は37℃で維持したmoDCのいずれかにリポソームを添加し(移植リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)、混合物をそれぞれ4℃又は37℃で、光から保護して2時間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。PBS洗浄により、細胞に結合した(すなわち表面に結合した又は内在化した)リポソームの評価が可能となり、一方PBS/イミダゾールは表面に結合したリポソームを洗い流し、その結果これらの細胞のMFIは内在化したリポソームのみを反映する。異なるドナー由来のmoDCを使用する2つの独立した実験での、FACs解析のMFI値が示す通り(
図3A及び
図3B)、4℃での未移植リポソームでは予期通りごくわずかな結合及び最小限の内在化しかみられなかった。Fg115をリポソーム表面に移植すると、リポソームのmoDCへの結合の増大が4℃で検出された(約3倍の増大)。PBS/イミダゾールで洗浄したFg115リポソーム-細胞混合物のMFIが示す通り、これらのリポソームを、4℃に維持した細胞から剥ぎ取ることができた。37℃では、全ての細胞に関連してより高いレベルの蛍光がみられ、その大部分が内在化の結果と考えられた。これらの結果は、未移植リポソームと比較して、Fg115移植リポソームの内在化が増強されたことを明らかに示している。
【0098】
(実施例4)
Fg115密度が、Fg115移植リポソームのヒトmoDC細胞への内在化に及ぼす効果
100μg/mL又は50μg/mLのFg115タンパク質をリポソームに移植し、Fg115密度が内在化に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンは、DOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。100μg/mL若しくは50μg/mLのFg115タンパク質、又は25μg/mL、50μg/mL若しくは75μg/mLのDMS5000をリポソームに移植するか、未移植のままとした。最終脂質含量は3.6mMであった。次いで、リポソームを2人のドナー由来のmoDCに添加(移植リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)した。moDCをあらかじめ冷却するか37℃で維持し、混合物を関連する温度で光から保護して2時間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。
【0099】
未移植リポソームと比較してFg115移植リポソームの内在化が増大したことが、複数のドナーから調製したmoDCで観察され、同じ条件下で、Fg115移植リポソームのMFI値は未移植リポソームのMFI値の約2倍であった(データは示さない)。更に、リポソームに100μg/mLのFg115を移植した場合、50μg/mLと比較して内在化が約25〜40%増強され、このことが、リポソーム表面上のFg115密度を増加させると、moDCへのリポソームの結合が増大し、リポソームの内在化が増強されることを示している。
【0100】
(実施例5)
Fg115移植リポソームの様々な画分を移植したリポソームの結合
実施例1に記載した通りFg115を精製すると、典型的には2つのピーク(A及びBと標識)が検出される。High Five昆虫細胞での発現後、ピークA及びBからFg115を単離し、その、移植した脂質の内在化を増強する能力について別々に評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。最終濃度10〜90mg/mLの範囲でFg115タンパク質をリポソームに移植し(又は未移植とし)て、以下のTable 1(表2)に示す製剤を産生させた。
【0101】
リポソーム20μLを2人のドナーのうち1人由来のmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して氷上でインキュベートした。リポソームの細胞への結合をFACS結合により解析し、MFI値を決定した。ピークB由来のFg115が、ピークA由来のFg115と比較して結合の向上を促進すると考えられることが観察された(Table 1(表2))。広範な用量にわたって、用量効果も確認された。
【0102】
【表2】
【0103】
(実施例6)
ピークB由来Fg115移植リポソームの、CD11c
+細胞への結合
Fg115移植リポソームの、C57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウス由来のCD11c
+細胞への結合を、ピークB由来Fg115を使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。最終濃度10〜90μg/mLの範囲で、High Five細胞で発現されたFg115タンパク質、又は0.75若しくは75μg/mLのDMS5000をリポソームに移植して、以下のTable 2(表3)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0104】
【表3】
【0105】
C57Bl/6 DC-SIGNトランスジェニックマウスの脾臓から精製されたCD11c
+細胞にリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して氷上で1時間インキュベートした。リポソームの細胞への結合をFACSにより解析した。Fg115移植により、リポソームのCD11c
+細胞への結合が向上することが観察された(データは示さない)。DMS5000の移植では、0.75μg/mLという低い移植レベルでも結合が向上した。
【0106】
(実施例7)
ヒトmoDC細胞による、ピークB由来Fg115移植リポソームの内在化
ピークB由来Fg115を移植したリポソームの内在化について、ヒトmoDCを使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。High Five細胞で発現されたタンパク質のピークB由来Fg115タンパク質、又は0.75若しくは75μg/mLのDMS5000をリポソームに移植して、以下のTable 3(表4)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0107】
【表4】
【0108】
リポソーム20μLを2人のドナー(ドナー1又はドナー2)のうち1人由来のmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して関連する温度で20分間インキュベートした。細胞はあらかじめ冷却されるか37℃で維持されていた。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。ドナー1及びドナー2のmoDCに内在化したリポソームを表すMFI値をTable 4(表5)に示す。試験した最大のFg115密度(90μg/mL)でピークB由来Fg115を移植すると、ドナー細胞によってはリポソームの内在化が最大10倍向上することをデータが示している。DMS5000による、リポソームのmoDCへの標的化は非常に効率的であったが、Fg115移植リポソームではより高いレベルの内在化が観察された。
【0109】
【表5】
【0110】
(実施例8)
蛍光Fg115移植リポソームの内在化
脂質二重膜ではなく内部の水性カーゴの一部として、蛍光トレーサーとしてのNT-FITCを有するリポソームを使用して、Fg115移植リポソームの内在化を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。β-BODIPY 500/510 C
12-HPCの代わりにNT-FITCを有する類似のリポソームも調製した。Fg115タンパク質をリポソームに移植して、以下のTable 5(表6)及びTable 6(表7)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
リポソーム20μLを2人のドナー(ドナー3又はドナー2)のうち1人由来のmoDC 50,000個に添加し、混合物を光から保護して関連する温度で20分間インキュベートした。細胞はあらかじめ冷却されるか37℃で維持されていた。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。内在化したリポソームを表すMFI値をTable 7(表8)に示す。Fg115移植BODIPYリポソームで観察された内在化の増強(Table 7(表8))は、Fg115移植NT-FITCリポソームでも確認された(Table 8(表9))。DMS5000移植リポソームは、より効率的にmoDCを標的とするものの、Fg115移植リポソームよりも小さい内在化を示した。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
(実施例9)
ヒトmoDC細胞による、Fg115混合リポソームの内在化
Fg115を3NTADTDA不含のリポソーム(すなわち非キレート化用リポソーム)と混合し、これらのリポソームの内在化をFg115移植リポソームと比較することにより、Fg115をリポソームと混合する効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。3NTADTDA不含の非キレート化用リポソームも調製した。次いで、キレート化用リポソーム及び非キレート化用リポソームをFg115タンパク質と混合して、Table 9(表10)に示すリポソーム製剤を産生させた。
【0117】
あらかじめ冷却したmoDC又は37℃で維持したmoDCのいずれかにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を関連する温度で光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 9(表10)に提示するMFI値により実証される通り、Fg115と混合させたリポソームの内在化は、Fg115濃度によって、未移植(Fg115なし)リポソームと同じかわずかに大きいだけであり、このことは、リポソームの内在化の増大が、3NTADTDAを介したFg115のリポソームへの付着に依存することを示している。
【0118】
【表10】
【0119】
(実施例10)
ヒトmoDCによる、ピークA又はB由来Fg115混合リポソームの内在化
ピークA又はピークB由来のFg115をリポソームと混合する効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。次いで、NiS0
4存在下又は非存在下で、ピークA由来のFg115タンパク質又はピークB由来のFg115タンパク質とリポソームを混合して、Table 10(表11)に示す通り、それぞれ移植又は混合リポソームを産生させた。
【0120】
あらかじめ冷却したmoDC又は37℃で維持したmoDCのいずれかにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を関連する温度で光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 10(表11)に提示するMFI値により実証される通り、ピークA又はピークB由来Fg115のいずれかと混合したリポソームは、未移植リポソームと同様のmoDCへの内在化を示し、Fg115移植リポソームのみが内在化の増強を示した。
【0121】
【表11】
【0122】
(実施例11)
ヒトmoDCによる、Fg115又はFg115成分を移植したリポソームの内在化
キメラFg115タンパク質又はFg115タンパク質の成分を移植したリポソームの内在化について、ヒトmoDCを使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。次いで、総体積50μLで、Fg115、ヒスチジンタグFliC(FliC-6his)、ヒスチジンタグgp120(gp120-6his)、又はFliC-6his及びgp120-6hisタンパク質をリポソームに移植して、Table 11(表12)に示すリポソーム製剤を産生させた。FliC-6hisは大腸菌で産生させ、gp120-6hisはSF9細胞で産生させた。
【0123】
37℃で維持したmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。MFI値が示す通り(Table 11(表12))、Fg115キメラタンパク質をリポソームに移植したときにのみリポソームの内在化の向上がみられ、FliC又はgp120、又はその両方をリポソームに移植したときにはみられなかった。
【0124】
【表12】
【0125】
(実施例12)
CD11c
+細胞による、Fg115又はFg115成分を移植したリポソームの内在化
キメラFg115タンパク質又はFg115タンパク質の成分を移植したリポソームの内在化について、野生型マウス又はDC-SIGNトランスジェニックマウス由来のCD11c
+細胞を使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。次いで、Fg115、FliC-6his、gp120-6his、又はFliC-6his及びgp120-6hisをリポソームに移植して、Table 12(表13)に示すリポソーム製剤を産生させた。FliCは大腸菌で産生させ、gp120はSF9細胞で産生させた。
【0126】
【表13】
【0127】
野生型又はDC-SIGNトランスジェニックC57/Bl6マウスの脾臓から調製したCD11c
+細胞にリポソームを添加した。細胞を37℃に維持し、リポソーム20μLを細胞50,000個と混合した。次いで、混合物を光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Fg115移植リポソームの内在化の向上は、DC-SIGNトランスジェニックCD11c
+細胞を使用したときのみ明白であり、ヒトDC-SIGNを提示しない野生型マウス細胞では明白でなかった(Table 13(表14))。その他のタンパク質(FliC及びgp120)の移植は、同じ内在化効果の増強を有しなかった。
【0128】
【表14】
【0129】
(実施例13)
TLR5受容体の活性化
HEK-Blue(商標)mTLR5細胞株(Invitrogen社)を使用して、Fg115がTLR5を活性化することを確認した。HEK-Blue(商標)mTLR5細胞は、5つのNF-κB及びAP-1結合部位と融合したIL-12 p40最小プロモーターの制御下で、SEAP(分泌性胚性アルカリホスファターゼ)レポーター遺伝子を安定に発現するHEK293細胞である。TLR5リガンドでの刺激によりNF-κB及びAP-1が活性化され、これによりSEAPの産生が誘導される。TLR活性化は、HEK-Blue(商標)検出培地の色の変化により視覚化される。異なるバッチのFg115を使用して、Fg115移植リポソームではTLR5活性化が確認された(データは示さない)。FliC移植リポソーム及び市販のフラジェリン製剤(Biofarma社)、並びにEAH(2つのTB抗原の融合物からなる組換えタンパク質)及びFg115又はFliCを共移植したリポソームでも、TLR5活性化が観察された。未移植リポソーム、EAH単独又はPaM2CSK4(TLR2アゴニスト)を移植したリポソームではTLR5活性化が観察されなかった。
【0130】
(実施例14)
異なるバッチのFg115を移植し、異なるリポソームバックボーンを使用したリポソームの内在化
異なるバッチのFg115(バッチ05/2014及びバッチ07/2014)間の一貫性、及び異なるリポソームバックボーンを使用しての一貫性を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.1%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。第1の脂質バックボーンはDOPC(67.2%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)(「DOPC/DOPG」と称する)であり、第2の脂質バックボーンはDOPC(97.4%)及びDSPE-PEG750(2.5%)(「DOPC」と称する)であった。更に、脂質二重膜のトレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPCではなく、内部の蛍光ペプチドカーゴ(NT-FITC)を担持するDOPC/DOPGリポソームを調製した(これらのリポソーム中のDOPCのパーセンテージを、BODIPYリポソームと比較して0.2%増大させた)。総体積50μLで、Fg115タンパク質をリポソームに移植して、Table 14(表15)に示す製剤を産生させた(総脂質5mM)。
【0131】
37℃に維持したmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を関連する温度で光から保護して20分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 14(表15)に示す通り、未移植リポソームと比較して、Fg115を移植した両方の種類のリポソームバックボーンで内在化が約5倍に増大し、Fg115移植による内在化の向上が両方の種類のリポソームで観察された。更に、異なるバッチのFg115により、内在化の増強が同等にもたらされた。
【0132】
【表15】
【0133】
(実施例15)
ヒトmoDC細胞による、Fg115移植DOPC/DOPG及びPOPC/DOPEリポソームの内在化
2つの異なるリポソームバックボーン、DOPC/DOPG及びPOPC/DOPGを用いて調製したNT-FITCリポソームの内在化を試験するため、研究を行った。各リポソームは0.05%又は0.25%の3NTADTDA、30%のDOPG、及び残りのパーセンテージのDOPC又はPOPCを含んでいた。簡潔に言えば、総脂質48mMで、0.05%又は0.25%の3NTADTDA及び内部の蛍光ペプチドNT-FITC(NT-FITCカプセル化は1mg/mLで実施した)を有するキレート化用リポソームを産生させた。総体積100μLでFg115タンパク質をリポソームに移植して、Table 15(表16)に記載する、最終総脂質含量5mMを有するリポソーム製剤を産生させた。
【0134】
37℃に維持したmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して60分間インキュベートした。次いで、細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。Table 15(表16)に示すMFI値は、Fg115移植によるリポソーム内在化の増強が、POPC/DOPGバックボーンよりもDOPC/DOPGバックボーンを用いて調製したリポソームでより顕著であったことを示しており、このことから、リポソームの組成が内在化に影響しうることが示唆される。Table 15(表16)に示す結果は、0.05%というより少ない3NTADTDA含量のリポソームにFg115を移植すると、0.25%の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームで観察されたものと比較して、内在化の増強が低下したことも実証している。したがって、リポソームバックボーン及び3NTADTDA含量の両方が、moDCへのリポソーム内在化の増強の程度に影響しうる。
【0135】
【表16】
【0136】
(実施例16)
ヒトmoDC細胞による、Fg115移植DOPC/DOPG及びPOPC/DOPEリポソームの内在化
様々なリポソームバックボーン:DOPC/DOPG(「DOPC/PG」);POPC/DOPG(「POPC/PG」);POPC;DOPC;DOPC/DOPE;DOPC/DOTAP;DOPC/DOPS;及びDOPC/MPLAを用いて調製したNT-FITCリポソームの内在化を試験するため、別の研究を行った。簡潔に言えば、総脂質48mMで、0.25%の3NTADTDA及び内部の蛍光ペプチドNT-FITC(NT-FITCカプセル化は1mg/mLで実施した)を有するキレート化用リポソームを産生させた。25μg/mL又は80μg/mLのFg115タンパク質をリポソームに移植して、Table 16(表17)に記載するリポソーム製剤を産生させた。
【0137】
【表17】
【0138】
37℃に維持した、2人のドナー(ドナー1又は2)のうち1人由来のmoDCにリポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を光から保護して60分間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。上記結果と一致して、Fg115移植によりリポソーム内在化が増強された(データは示さない)。本研究の結果も、Fg115移植によるリポソーム内在化の増強が、DOPCを用いて調製したリポソームでより顕著となる傾向があることを実証している。
【0139】
(実施例17)
マンナンによるFg115移植リポソーム結合の阻害
酵母由来のポリサッカライドマンナン(Sigma Aldrich社)が、インビトロでFg115移植リポソームのヒトmoDC細胞への結合に及ぼす効果を試験するため、リポソーム製剤を調製した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、0.25%の3NTADTDA及び蛍光トレーサーβ-BODIPY 500/510 C
12-HPC(0.2%)を有するキレート化用リポソームを産生させた。脂質バックボーンはDOPC(67.05%)、DOPG(30%)及びDSPE-PEG750(2.5%)であった。最終濃度25μg/mL及び最終脂質含量5mMで、Fg115又はDMS5000をリポソームに移植した。未移植リポソームも調製した。moDCを10mg/mLのマンナンとともにあらかじめインキュベートし、その後リポソームを添加(リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を4℃で光から保護して60分間インキュベートした。次いで、リポソームのmoDCへの結合をFACsにより解析し、MFI値を定量した。Fg115移植リポソームのmoDCへの結合がマンナンにより阻害される(MFIが、未処理の細胞での52.4からマンナン処理細胞での18に減少する)ことから、Fg115移植リポソームがポリペプチドバックボーンの糖を介してmoDCに結合することが示唆される。DMS5000移植リポソームを使用すると同様の結合阻害が観察された(MFIが、未処理の細胞での787からマンナン処理細胞での517に減少)が、未移植リポソームでは観察されなかった(MFIが、未処理の細胞での19.8からマンナン処理細胞での17.7に減少)。
【0140】
(実施例18)
マンナンによる、様々な量の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームの内在化阻害
様々な量の3NTADTDAが、マンナンによる内在化阻害に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、DOPC/DOPG/DSPE-PEG750バックボーン及び0.05%又は0.25%の3NTADTDA(すなわち2.5%のDSPE-PEG750、30%のDOPG、及び67.05%又は67.25%のDOPC又はPOPC)を有するキレート化用リポソームを産生させた。カプセル化を2mg/mLで実施した内部の蛍光ペプチドNT-FITCを用いてリポソームを調製した。リポソームにFg115を移植して、Table 17(表18)に示す製剤を産生させた(最終体積100μL及び最終総脂質含量5mM)。
【0141】
moDCを10mg/mLのマンナンとともにあらかじめインキュベートし、その後移植リポソームを添加(移植リポソーム20μLを細胞50,000個と混合)し、混合物を4℃で光から保護して60分間インキュベートした。次いで細胞-リポソーム混合物をPBS又はPBS/イミダゾールのいずれかで洗浄し、FACSにより解析した。MFI値を定量し、結果をTable 17(表18)に示した。0.05%の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームの内在化は、マンナンによって、0.25%の3NTADTDAを有するFg115移植リポソームで観察された内在化よりも大幅に阻害された。このことは、Fg115移植リポソームが、ポリペプチドバックボーンの糖を介してmoDCに結合する更なる証拠を与える。
【0142】
【表18】
【0143】
(実施例19)
DC-SIGNトランスジェニックマウスにおける、Fg115移植リポソームを使用した、MHCクラスI複合体によるSIINFEKLペプチドの交差提示
Fg115移植リポソームを使用して、カプセル化されたSIINFEKLペプチドの交差提示を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、DOPC/DOPG/DSPE-PEG750(67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDSPE-PEG750)からなるバックボーンを有するキレート化用リポソームを産生させた。3NTADTDAを0.25%含めた。「高」又は「低」SIINFEKLカーゴのいずれかを担持するリポソームを調製した。「高」SIINFEKLリポソームは、リポソーム(24mM)を0.5mg/mL SIINFEKLで再水和させることにより調製し、「低」SIINFEKLリポソームは、同じ脂質を0.050mg/mL SIINFEKLで再水和させることにより調製した。全てのリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、カプセル化されていないSIINFEKLを透析(300kDa MWCO)により除去した。これにより、SIINFEKL含量に約4倍の差を有するリポソームが生じた(Table 18(表19))。次いで、これらのリポソームに総体積50μLでFg115を移植し、Table 19(表20)に示す、最終脂質含量5mMを有するリポソーム製剤を産生させた。
【0144】
【表19】
【0145】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウス(上部パネル)又は野生型C57Bl/6マウス(下部パネル)からCD11c
+細胞を調製した。細胞を、Table 19(表20)に列挙するSIINFEKLリポソームでパルス処理する(20分間)か、これらと細胞を共培養した(16時間)。MHCクラスIのH-2Kbに結合したオボアルブミン由来ペプチドSIINFEKLとは反応するが、結合していないH-2Kb又は無関係のペプチドと結合したH-2Kbとは反応しないmAb 25-D1.16(eBioscience社)で染色することにより、SIINFEKL提示を評価した。次いで、細胞をFACSにより解析した。リポソームバックボーン及びFg115移植がSIINFEKL交差提示に及ぼす効果を、MFI値(Table 19(表20))を比較することにより評価した。Fg115を移植したリポソームは、SIINFEKLペプチドの交差提示を向上させることができた。リポソームに80μg/mLのFg115含量を移植した場合の、野生型及びDC-SIGNトランスジェニック細胞で交差提示の向上が観察された。
【0146】
【表20】
【0147】
(実施例20)
野生型マウスにおける、Fg115移植リポソームを使用した、リポソームバックボーンがSIINFEKL交差提示に及ぼす効果
様々なリポソームバックボーンを有するFg115移植リポソームを使用して、カプセル化されたSIINFEKLペプチドの交差提示を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、カプセル化されたSIINFEKLペプチドを有し、Table 18(表19)に示すリポソームバックボーンを有するキレート化用リポソームを産生させた。3NTADTDAを0.05%含めた。リポソーム(24mM)を0.5mg/mL SIINFEKLで再水和させることにより、「高」SIINFEKLカーゴを有するリポソームを調製した。全てのリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、カプセル化されていないSIINFEKLを透析(300kDa MWCO)により除去した。これにより、SIINFEKL含量に約4倍の差を有するリポソームが生じた(Table 20(表21))。100μLで、25μg/mL Fg115又は20μg/mL FliCをリポソームに移植して、Table 21(表22)に示す試験用リポソーム製剤(それぞれが最終総脂質含量5mMを有する)を産生させた。
【0148】
【表21】
【0149】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6野生型マウスからCD11c
+細胞を調製した。次いで、細胞をリポソームで20分間パルス処理し、mAb 25-D1.16で染色しFACSにより解析することによりSIINFEKL提示を評価した。リポソームバックボーン及びFg115移植がSIINFEKL交差提示に及ぼす効果を、MFI値(Table 21(表22))を比較することにより評価した。上記の実施例19で、リポソームに80μg/mLのFg115含量を移植した場合に野生型及びDC-SIGNトランスジェニック細胞で観察された交差提示の向上は、リポソームに25μg/mLというより少ない用量を移植した場合の野生型細胞では概して観察されなかった。
【0150】
【表22】
【0151】
(実施例21)
Fg115移植リポソームがインビトロでCD8
+T細胞応答を誘導する能力
Fg115移植リポソームがインビトロでCD8
+T細胞応答を誘導する能力を、オボアルブミンをローディングしたリポソームを使用して評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDSPE-PEG750バックボーンを有し、0.25%の3NTADTDAを有し、カプセル化されたオボアルブミン(OVA)を有するキレート化用リポソームを産生させた。リポソームを1.5mg/mL OVAで再水和させることにより、OVAをローディングしたリポソーム(LipOVA)を調製し、次いでリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、透析した(300kDa MWCO)。生じたLipOVA製剤は、29.7mMの脂質及び476μg/mL OVAを含んでいた。LipOVA製剤を215μg/mL OVAに希釈すると、OVA:脂質比が脂質1mgあたりOVA19.85μgとなった。次いで、この希釈されたLipOVA製剤を100μg/mL Fg115の移植に使用して、総脂質含量13mMのLipOVA-Fg115リポソームを産生させるか、74μg/mLの対照分子(hisタグ対照ドメイン抗体;Domantis Ltd社)の移植に使用して、総脂質含量13mMのLipOVA-contリポソームを産生させた。
【0152】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c
+細胞を調製した。次いで、CD11c
+細胞を、密度1.2×10
6細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した(各ウェルにつき最終10μg/mL OVA)。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8
+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8
+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c
+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、抗体及びフローサイトメトリーを使用して、CD69及びCD44のアップレギュレーションを介したCD8
+T細胞活性化を決定することにより、すなわちCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団をT細胞活性化の指標として使用し、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、又は生理食塩水若しくはOVAとともにインキュベートしたT細胞の対照も研究に含めた。DOPC/DOPGリポソーム表面にFg115を移植すると、対照分子を移植したリポソームと比較してCD8
+T細胞の活性化がほぼ3倍に向上した(データは示さない)。
【0153】
(実施例22)
Fg115移植及びFg115混合リポソームがCD8
+T細胞応答を誘導する能力
Fg115移植リポソームがCD8
+T細胞応答を誘導する能力を、更なる研究で確認した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDPSE-PEG750のバックボーン、並びに0.25%の3NTADTDAを有するキレート化用リポソームを産生させ、1.5mg/mL OVAで再水和させた。次いで、最終脂質含量7.48mM及び215μg/mL OVAとなるように、LipOVAリポソームに100μg/mL Fg115を移植するか、未移植のままとした。
【0154】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c
+細胞を調製した。次いで、CD11c
+細胞を、密度1.2×10
6細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8
+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8
+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c
+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、抗体及びフローサイトメトリーを使用して、CD69及びCD44のアップレギュレーションを介したCD8
+T細胞活性化を決定することにより、すなわちCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団をT細胞活性化の指標として使用し、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、又はCD11c
+細胞及び生理食塩水、Fg115、OVA、若しくはOVA+Fg115とともに培養したT細胞の対照も研究に含めた。リポソームのFg115移植により、未移植リポソームと比較して(未移植リポソームを使用しての約35%と比較して、Fg115移植リポソームを使用するとOT-I CD8 T細胞が約55%活性化された)、また可溶性OVA+Fg115と比較して(OT-I CD8 T細胞が約30%活性化された)、CD8
+T細胞の活性化が向上した。予期された通り、陰性対照ではごくわずかなCD8
+T細胞活性化しか観察されなかった。
【0155】
(実施例23)
Fg115移植及びFg115混合リポソームがCD8
+T細胞応答を誘導する能力
高濃度及び低濃度のFg115を移植したリポソーム、又はFg115と混合したリポソームがCD8
+T細胞応答を誘導する能力を評価した。簡潔に言えば、総脂質24mMで、67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDPSE-PEG750のバックボーン、並びに0.25%の3NTADTDAを有するキレート化用リポソームを産生させ、1.5mg/mL OVAで再水和させた。次いで、最終脂質含量10mM及び215μg/mL OVAとなるように、LipOVAリポソームに5μg/mL又は50μg/mLのFg115を移植するか、未移植のままとした。NiS0
4非存在下でLipOVAリポソームをFg115と混合することにより、Fg115と混合したLipOVAリポソームも調製した。
【0156】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c
+細胞を調製した。次いで、CD11c
+細胞を、密度1.2×10
6細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した(各ウェルにつき最終10μg/mL OVA)。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8
+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8
+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c
+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、T細胞活性化の指標としてCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団を測定することにより、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、又はCD11c
+細胞及び生理食塩水、Fg115、OVA、若しくはOVA+Fg115とともに培養したT細胞の対照も研究に含めた。
【0157】
リポソームのFg115移植により、未移植リポソームと比較して、また可溶性OVA+Fg115と比較してCD8
+T細胞の活性化が向上し、このことは実施例22の結果と一致していた。Fg115をリポソームと混合することで、可溶性OVA+Fg115又は未移植リポソームと比較して、CD8
+T細胞活性化が向上することも観察された(データは示さない)。
【0158】
(実施例24)
カプセル化されたOVAレベルが、Fg115移植リポソームのCD8
+T細胞応答誘導能に及ぼす効果
カプセル化されたOVAレベルが、Fg115移植リポソームのCD8
+T細胞応答誘導能に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、高レベルのOVA(LipOVA(高):436μg/mL OVA)又は低レベルのOVA(LipOVA(低):129μg/mL OVA)を有するキレート化用リポソームを産生させた(Table 22(表23)及びTable 23(表24))。次いで、総脂質13mMで、リポソームにFg115、gp120又はFliCを移植するか未移植のままとして、Table 24(表25)の脂質製剤を産生させた。
【0159】
【表23】
【0160】
【表24】
【0161】
【表25】
【0162】
抗CD11cマイクロビーズを使用して、磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、マウスC57/Bl6 DC-SIGNトランスジェニックマウスからCD11c
+細胞を調製した。次いで、CD11c
+細胞を、密度1.2×10
6細胞/ml及び反復5で、リポソーム製剤とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した(各ウェルにつき最終10μg/mL OVA)。次いで、細胞を収集し、これを使用してOVA特異的CD8
+T細胞(OT-I細胞)を刺激した。OVA特異的CD8
+T細胞は、マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MAC分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によって精製したものであった。約5〜20:1の比でOT-I T細胞をCD11c
+樹状細胞とともに、37℃で18時間、u字底96ウェルプレートのウェル中で培養した。次いで、T細胞活性化の指標としてCD69hiCD44hi CD8 T細胞集団を測定することにより、リポソームの免疫原性を評価した。T細胞単独、CD11c
+細胞及び生理食塩水若しくはOVAとともに培養したT細胞、又は野生型樹状細胞及び生理食塩水若しくはOVAとともに培養したT細胞の対照も研究に含めた。
図4に示す通り、カプセル化されたOVAレベルが、リポソームのCD8活性化誘導能に影響し、LipOVA(高)リポソームがより高いレベルのCD8
+T細胞活性化を誘導した。
【0163】
(実施例25)
様々なリポソームバックグラウンドが、Fg115移植リポソームによるCD8
+T細胞活性化に及ぼす効果
各種バックボーンを有する、OVAをローディングしたリポソームを調製して、様々なリポソームバックグラウンドが、Fg115移植リポソームのCD8
+T細胞活性化能に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、0.25%の3NTADTDA及び各種リポソームバックボーンを有するキレート化用リポソームを1.5mg/mL OVAで再水和させて、Table 25(表26)に示す、OVAをローディングしたリポソームを産生させた。全てのリポソームを0.2μm膜を通して押し出し、カプセル化されていないOVAを一晩の透析(300kDa MWCO)により除去した。Table 26(表27)に示す各種濃度のFg115及び総脂質をLipOVAリポソームに移植した。
【0164】
【表26】
【0165】
【表27】
【0166】
マウスC57/Bl6野生型マウスからCD11c
+細胞を調製した。細胞をリポソームとともに一晩培養し、CD11c
+細胞によるOT-I CD8 T細胞の活性化を上記の通り評価した。
図5に示す通り、リポソームバックボーン組成がCD8
+T細胞の活性化レベルに影響し、POPC/DOPE、POPC/DOPG及びDOPC/DOPGバックボーンで最も高い活性化が観察された。
【0167】
(実施例26)
Fg115移植リポソームがインビボでCD8
+T細胞応答を誘導する能力
Fg115移植リポソームがインビボでCD8
+T細胞応答を誘導する能力を評価した。総脂質24mMでキレート化用リポソームを産生させた。簡潔に言えば、上記の通り、OVA、並びに67.25%のDOPC、30%のDOPG及び2.5%のDPSE-PEG750のバックボーンを有し、0.25%の3NTADTDAを有するリポソームを調製した(Table 27(表28))。総脂質17.38mM、最終OVA濃度500μg/mLで、LipOVAリポソームに100μg/mL Fg115を移植した。Table 28(表29)のLipOVA-Fg115又は未移植LipOVAリポソーム製剤でマウスを免疫化した。
【0168】
【表28】
【0169】
【表29】
【0170】
マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によってOVA特異的CD8
+T細胞を精製した。色素希釈により細胞分裂を評価可能にするため、細胞を生体色素(vital dye)CFSEで標識もした。外側尾静脈への静脈内注射によって、CD8
+T細胞(細胞10
6個)をC57BL/6J宿主マウスに養子移入した。次いで24時間後、筋肉内に注射される、生理食塩水のボーラス50μl中の各種リポソーム製剤により、1群あたりマウス5匹の反復で宿主マウスを免疫化した。6日後、CD45.1
+ C57BL/6Jマウス由来の脾細胞を使用して蛍光標的アレイ(FTA)を作製した。これは、様々な濃度の数種の変異OVA MHC-I-結合ペプチドでパルス処理された標的細胞から構成されていた。FTA細胞1〜5×10
6個を、外側尾静脈より宿主マウスに静脈注射した。宿主動物に入れて18時間後、抗体及びHoechst33258(細胞の生存率を評価するため)標識、並びにフローサイトメトリーを使用して、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞の死についてFTA細胞を評価した。%FTA細胞の特異的な死滅について、以下の式を使用して評価した。
【0171】
【数1】
【0172】
更に、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞中の%IFN-γCD8
+T細胞について、これらを10μg/ml SIINFEKLペプチド及びGolgistop(BD bioscience社)とともにインビトロで6時間培養した後、抗体及びフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン染色法(ICS)を使用して評価した。
【0173】
図6に示す結果は、Fg115移植リポソームがインビボでCD8
+T細胞の増殖を誘導した(CFSEが薄くなることにより分裂が評価される)ことを実証している。Fg115移植リポソームは、OVAペプチドSIINFEKL並びに関連ペプチドN6(SIINFNKL)、G4(SIIGFEKL)及びE1(EIINFEKL)に特異的なエフェクターT細胞による死滅を誘導したが、対照ペプチドNP68に特異的なエフェクターT細胞による死滅は誘導しなかった。ただし、このレベルのタンパク質カーゴでは、死滅を誘導するのに未移植リポソームも非常に有効であった(データは示さない)。
【0174】
(実施例27)
Fg115移植リポソームが、インビボで抗原特異的なT細胞媒介性の死滅を誘導する能力
Fg115移植リポソームが、インビボで抗原特異的なT細胞媒介性の死滅を誘導する能力を評価するため、上記及びTable 29(表30)及びTable 30(表31)に示す通り、Fg115移植及び未移植LipOVAリポソームを調製した。
【0175】
【表30】
【0176】
【表31】
【0177】
免疫化の24時間前に、OT-I CD8 T細胞をマウスに移入した。マウス1匹あたり2.5μgで、上に示す製剤によりマウスを免疫化した(ボーラス50μLあたり0.673mM脂質、筋肉内)。
【0178】
マイクロビーズに付着させた抗B220/抗TER119抗体(Miltenybiotec社)を使用した磁気MACS分離(Miltenybiotec社)により、OT-I TCR-トランスジェニックマウスからの負の選択によってOVA特異的CD8
+T細胞を精製した。外側尾静脈へのi.v.注射によって、CD8
+T細胞(細胞10
6個)をC57BL/6J宿主マウスに養子移入した。次いで24時間後、i.m.注射される、生理食塩水のボーラス50μl中に抗原としてのOVA、危険シグナル及び/又は各種標的モチーフを担持する各種リポソーム製剤により、1群あたりマウス5匹の反復で宿主マウスを免疫化した。6日後、CD45.1
+ C57BL/6Jマウス由来の脾細胞を使用して蛍光標的アレイ(FTA)を作製した。これは、様々な濃度の数種の変異OVA MHC-I-結合ペプチドでパルス処理された標的細胞から構成されていた;FTA細胞1〜5×10
6個を、外側尾静脈より宿主マウスにi.v.注射した。宿主動物に入れて18時間後、抗体及びHoechst33258(細胞の生存率を評価するため)標識、並びにフローサイトメトリーを使用して、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞の死についてFTA細胞を評価した。%FTA細胞の特異的な死滅について、上記の通り評価した。
【0179】
Fg115移植リポソームが、インビボで抗原特異的なT細胞媒介性の死滅を有効に誘導することが観察された(データは示さない)。
【0180】
(実施例28)
Fg115移植リポソームによる免疫化後に、OVAレベルがインビボでのOVA特異的な死滅に及ぼす効果
様々なレベルのカプセル化されたOVAを有するLipOVA製剤を調製して、OVAレベルがインビボでのOVA特異的な死滅に及ぼす効果を評価した。簡潔に言えば、Table 31(表32)に示す通りにLipOVAリポソームを調製した。リポソームにFg115を移植するか未移植のままとして、Table 32(表33)に示す製剤を産生させた。
【0181】
【表32】
【0182】
【表33】
【0183】
マウスをリポソーム製剤で免疫化し、標的特異的な死滅を上記の通り評価した。移植リポソームは、特に用量OVA1.19μgで、細胞増殖の向上を誘導することができた(
図7)。オボアルブミンペプチドSIINFEKLを各種OVA用量で標的細胞をパルス処理した後の特異的な死滅について評価すると(野生型マウス由来の細胞を使用)、リポソームにカプセル化されたオボアルブミン量を減少させたときに、未移植リポソームと比較して、Fg115移植リポソームによるOVA特異的な死滅が明らかに増加することが観察された(データは示さない)。Fg115移植の利点は、マウスにOVA0.57μgを投与した場合に特に明らかであり、Fg115移植リポソームで観察された強力な抗原特異的死滅と比較して、未移植リポソームを使用するとごくわずかな抗原特異的死滅しか観察されなかった。
【0184】
野生型マウスに加えて、DC-SIGNトランスジェニックマウスの一群も、Table 32(表33)に列挙するFg115移植OVAリポソーム製剤で免疫化した。(DC-SIGNトランスジェニックマウス又は野生型マウス由来のCD11c
+細胞を使用して、オボアルブミンペプチドSIINFEKLをOVA用量0.57μg又は2μgで標的細胞をパルス処理した後に)、より小さい用量(用量0.57μg;データは示さない)では、野生型マウスよりもDC-SIGNトランスジェニックマウスでより高いレベルの抗原特異的死滅がみられた。この、DC-SIGNトランスジェニックマウスでの死滅の向上は、より大きい用量では明白でなかった。このことは、DC-SIGNによる標的化によってFg115媒介性応答が増強されることがあり、この利点がより小さい抗原用量で最も明白であることを示唆している。
【0185】
(実施例29)
Fg115移植リポソームにより誘発されるポリクローナル応答
ポリクローナル応答を評価するため、67.25%のPOPC、30%のDOPG及び2.5%のDSPE-PEG750のバックグラウンドで、0.05%の3NTADTDAを有し、OVAをローディングしており、110μg/mL Fg115又は55μg/mL FliCを移植したリポソームを上記の通り調製して、130μg/mL OVA(22mM、用量1)又は300μg/mL(22mM、用量2)を有するLipOVAリポソームを産生させた。マウス(C57/Bl6野生型マウス)をリポソーム製剤で免疫化し、標的特異的な死滅を上記の通り評価した。MHC-II-結合ペプチドエピトープでパルス処理したFTA(蛍光標的アレイ)B細胞におけるCD69のアップレギュレーションに基づき、抗体標識及びフローサイトメトリーを使用して、Tヘルパー応答についても評価した。屠殺前に、マウスを後眼窩洞(retro-orbital sinus)から失血させ、ELISAによる循環サイトカイン及び抗原特異的Igの測定のため、血清を単離した。更に、屠殺した宿主マウスから単離した脾細胞中の%IFN-γCD8+T細胞について、これらを10μg/ml抗原ペプチド及びGolgistop(BD bioscience社)とともにインビトロで6時間培養した後、抗体及び標識及びフローサイトメトリーを使用する細胞内サイトカイン染色法(ICS)を使用して評価した。
【0186】
Fg115又はFliCのいずれかを移植したOVAリポソームによるプライミング及びブーストを受けた動物のみで、OVA特異的な死滅(SIIN及びN6ペプチド)が検出された(
図8A)。動物を未移植OVAリポソームで免疫化すると、最小の死滅が検出された。初回用量にのみFg115を移植した場合も、最小の死滅が観察された。Fg115又はFliCのいずれかを移植したOVAリポソームで動物を免疫化すると、抗原特異的IFNγ産生CD8
+T細胞数の増加が検出された(
図8B)。一方、抗原特異的IFNγ産生CD4
+T細胞の出現頻度は、OVAリポソームにFliCを移植した場合に最大であった。18時間後、抗原特異的B細胞と同族(cognate)相互作用が可能なヘルパーT細胞が生成されたことを示す、インビボでのFTA B細胞活性化を測定することによってインビボでのTヘルパー応答を評価した。LipOVA-Fg115/LipOVA-Fg115、LipOVA-Fg115/LipOVA-uneng及びLipOVA-FliC/LipOVA-FliCワクチンレジメンを受けたマウスは、OVAペプチドに特異的なB細胞応答を活性化することができるCD4ヘルパーT細胞を生成した。しかし、全体としてLipOVA-FliC/LipOVA-FliCにより、その他のワクチンよりも有意に良好なCD4 Tヘルパー応答が生じた。これらの傾向は、
図8Cに示すように、各用量応答曲線下面積(AUC)を測定することにより十分に概説される。