(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537758(P2017-537758A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】血管バイパスにより血流を維持するカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20171124BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
A61M25/10 520
A61B17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-547375(P2017-547375)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月7日
(86)【国際出願番号】TR2014000478
(87)【国際公開番号】WO2016085420
(87)【国際公開日】20160602
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517186112
【氏名又は名称】ベビラー ヤジリム メディカル エンヂュストリエル タリムサル アラシュチルマラル ヴェ タリム ウルンレリ ティジャレト ヴェ サナイ リミテッド シルケティ
【氏名又は名称原語表記】BEBILLER YAZILIM MEDIKAL ENDUSTRIYEL TARIMSAL ARASTIRMALAR VE TARIM URUNLERI TICARET VE SANAYI LIMITED SIRKETI
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】トクル,マフムト
【テーマコード(参考)】
4C160
4C167
【Fターム(参考)】
4C160MM33
4C167AA10
4C167BB02
4C167BB03
4C167BB18
4C167BB27
4C167BB39
4C167BB40
4C167CC08
4C167HH08
(57)【要約】
手術が行われる血管内の血流のバイパスを通し、また、関連する血管より送り込まれた器官の血流を止めることに起因する病気の発生を防ぐことにより、出血することなく、血管内の血流を阻害することなく、血管修復手術を可能とし、また、人体の血管に関する外科的処置のために実施される血管手術の過程における血管バイパスにより血流を維持する、カテーテル及び血管修復方法であり、その両端に近接する各位置に1つのバルーン(3)と、前記バルーン(3)上に位置する保護層(4)と、前記バルーン(3)の収縮膨張を可能とし、第1経路(2)に隣接して接着された一体構造の管の形状を有し、その一方の開放端が前記バルーン(3)内で終端する、第2経路(5)と、前記第2経路(5)の後端と一体構造の逆止弁装置(7)であって、前記バルーン(3)の膨張収縮のために注入装置で空気及び液体等の物質を供給する逆止弁装置(7)と、前記第1経路(2)及び第2経路(5)を外部から包囲し、それにより圧縮されたときに経路閉塞を阻止する保護セグメント(6)であって、前記バルーン(3)の後端から前記カテーテル(1)の後面まで様々な長さを有し、前記第1経路(2)及び前記第2経路(5)と共に一体構造の保護セグメント(6)と、前記カテーテル装置(1)が前記血管から抜けるのを、又はカテーテル装置(1)が移動するのを防止し、前記カテーテル装置(1)の本体側に置かれ、前記バルーン(3)の背後に配置され、前記カテーテル装置(1)の本体より広いので前記カテーテル装置(1)上を移動可能であり、両端が開放された柔軟な構造を持ち、漏斗状、円形又は楕円形、又は他の形状を有し得るカバー(8)と、前記カバーを適所に固定するためにしようされるクランプ装置(9)と、両端が開放した管状の少なくとも1つの第3経路(10)であって、その一端が第1経路(2)内に位置し、他端が第1経路(2)の外に位置し、液体又は空気を汲み出すために使用される第3経路(10)と、第3経路(10)の外側後端と一体化され、外部の前記注入装置と前記カテーテルを連結する接続装置(11)と、を有することを特徴とするカテーテル装置(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック又は類似の原材料で形成され、両端が開放された、血管バイパスによって血流を維持するカテーテル装置(1)であって、
血管の両端に近接する各位置の1つのバルーン(3)と、
前記バルーン(3)上に配置された保護層(4)と、
前記バルーン(3)の収縮膨張を可能とし、第1経路(2)に隣接して接着された一体構造管の形状を有し、その一方の開放端が前記バルーン(3)内で終端する、第2経路(5)と、
前記第2経路(5)の後端と一体構造の逆止弁装置(7)であって、前記バルーン(3)の膨張収縮のために注入装置で空気及び液体等の物質を供給する逆止弁装置(7)と、
前記第1経路(2)及び第2経路(5)を外部から包囲し、圧縮されたときの流路閉塞を阻止する保護セグメント(6)であって、前記バルーン(3)の後端から前記カテーテル(1)の後側まで様々な長さを有し、前記第1経路(2)及び前記第2経路(5)と共に一体構造の保護セグメント(6)と、
前記カテーテル装置(1)が前記血管から抜けるのを防止し、又は、カテーテル装置(1)が移動するのを防止するカバー(8)であって、前記カテーテル装置(1)の本体側部に位置し、前記バルーン(3)の背後に配置され、前記カテーテル装置(1)の本体より広いので前記カテーテル装置(1)上を移動可能であり、両端が開放された可撓性構造を有し、漏斗状、円形又は楕円形、又は他の形状を有し得るカバー(8)と、
前記カバーを適所に固定するために使用されるクランプ装置(9)と、
両端が開放した管状の少なくとも1つの第3経路(10)であって、一端が第1経路(2)内に位置し、他端が第1経路(2)の外に位置し、液体又は空気を汲み出すために使用される第3経路(10)と、
第3経路(10)の外側後端と一体化され、外部注入装置と前記カテーテルを連結する接続装置(11)と、
を有することを特徴とするカテーテル装置(1)。
【請求項2】
前記カバー(8)及びクランプ装置(9)が互いに結合されるか、あるいは、一体構造を有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置(1)。
【請求項3】
プラスチック又は類似の原材料からなり、両端が開放された、血管バイパスによって血流を維持するカテーテル装置(1)であって、該カテーテル装置は、
近位クランプ(17)と血管損傷(15)の間の健全な血管組織(14)上に小さな切り込みを形成することによってカテーテル装置(1)の端部を配置するステップ(101)と、
逆止弁(7)及び第2経路(5)によって血管(12)内でバルーン(13)を膨張させるステップ(102)と、
血管壁(13)からカテーテル(1)をわずかに引き抜くことによってカテーテル(1)を前記血管壁(13)にもたれかからせるステップ(103)と、
カバー(8)を前記血管壁(13)の外側から前記血管壁(13)に向けて押し、クランプ装置(9)で押圧するステップ(104)と、
遠位クランプ(16)と血管損傷(15)の間の健全な血管組織(14)上に形成した小さな切り込みを通じてカテーテル装置の他端を配置するステップ(105)と、
逆止弁(7)及び第2経路(5)によって前記血管(12)内でバルーン(13)を膨張させるステップ(106)と、
血管壁(13)からカテーテル(1)をわずかに引き抜くことによってカテーテル(1)を前記血管壁(13)にもたれかからせるステップ(107)と、
カバー(8)を前記血管壁(13)の外側から前記血管壁(13)に向けて押し、クランプ装置(9)で押圧するステップ(108)と、
近位クランプ(17)をわずかに開放することによって前記血管(12)内へ血液を還流させるステップ(109)と、
カテーテル装置(1)の両端で、血管損傷(15)が観察される領域に2つのクランプ(20)を配置し、血流を第1経路(2)に導いて前記血管(12)の他端に進めるように異常のある部位の血管を迂回するステップ(111)と、
を有することを特徴とするカテーテル装置(1)。
【請求項4】
前記血管(12)内に空気が入った場合に、遠位クランプ(12)を開放することなく第3経路(10)を通じて前記血管(12)から空気を抜くステップを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項5】
外科的修復の完了後に、
近位側(18)のカテーテル装置(1)のクランプ装置(9)及びカバー(8)を緩めるステップと、
逆止弁(7)及び第2経路(5)を通じてバルーン(3)の空気を抜き、カテーテル装置(1)の端部を引き戻すステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項4に記載に方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術が行われる血管(静脈/vein)内の血流のバイパスを介して、また、関連する血管より送り込まれる器官の血流を止めることに起因する任意の疾患を防ぐことにより、出血することなく、血管内の血流を阻害することなく、血管修復手術を可能とし、また、人体の血管に関する外科的処置のために実施される血管手術の過程において血管バイパスにより血流を維持する、カテーテル及び血管修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺がん等の特定の腫瘍は成長し、主要な血管に到達する。右肺腫瘍駆動(right lung driven tumor)の範囲での上大静脈(SVC)の侵しゅう(invasion)による血管の閉塞がその一例である。縦隔腫瘍の範囲において観察される他の例は、腫瘍による主要な血管の侵しゅうにより起こる血管閉塞である。
【0003】
肺腫瘍による主要な血管の侵しゅうは、これらのがんの外科的処置を妨げる。それゆえ、これらの患者は、大きなリスク下で放射線化学療法を受けるか、あるいは、外科的処置を受ける。
【0004】
大動脈等の主要な血管で起こる大動脈瘤は、処置が難しく、外科的処置が必要となるが、その過程で重大な合併症が起こりうる。例えば、外科手術中の生命を脅かす出血、当該血管から血液を送り込まれている器官の損傷が直面し得る危険の例である。
【0005】
腫瘍の侵しゅうによる動脈瘤や閉塞等の血管疾患は、内視鏡検査法及びステント留置術により処置される。しかしながら、そのような処置は、任意の医療センターや任意の専門医によって行われるものではない。多くの合併症はそのような処置の過程で発生する。隣接血管の閉塞及び器官の損傷、器官の損傷を引き起こす血管壁から分裂した血栓、すなわち、塞栓、血管破裂及び致命的な出血はすべて前述のリスクの例である。
【0006】
肺及び縦隔腫瘍は、所定の場合、SVC及び下大静脈(IVC)に侵入し、(上大静脈症候群のように)これらの血管内で、閉塞の発見の進行という結果になるかもしれない。SVC関与を伴う腫瘍のケースは、一部又は亜全切除と静脈再建が適用され得る拡張切除によって治療され得る。しかしながら、この試みの合併症のリスクは高く、特別な施設で、そして、この分野での相当の経験を有する外科医によって行われるに過ぎない。加えて、上半身からの静脈流は、塊が静脈に侵しゅうしている領域の遠位及び近位に鉗子(クランプ)を配置することで塞がれる。すなわち、静脈中の血流は止められる。
【0007】
その結果、
1)静脈還流が塞がれることにより心拍出量が減少し、
2)脳の静脈還流が妨げられることによる脳浮腫、
3)静脈流を止めておける時間を長くすべきではないので、主要な病理処置(静脈に侵入した腫瘍の除去及び静脈の修復)のために残される時間が短い。
【0008】
結果、困難で危険な手術となり、患者が望まない合併症になる可能性がある。
【0009】
他方、動脈瘤及び大動脈等の大血管での剥離(dissection)は致命的な病気である。そのような疾患の治療として、開腹手術及び非開腹(内視鏡的にステント留置)手術(closed operation)が行われる。しかしながら、心肺バイパスポンプは、所定の患者について危険を伴う開腹手術の分野で使用されるべきである。非開腹法によるステント留置術は、限られた場合に、経験豊かなチームによってのみ行われ得る。内視鏡的ステント留置術は、静脈上のプラークの破壊に関連して塞栓を形成する結果を生じる場合があり、ステントの不適切な留置又は血管の損傷のため即座に開腹手術への切り替えが必要となる場合もある。
【0010】
現在の技術では、容易に主要血管疾患を治療できる方法がまだ開発されていないと言いうる。
【0011】
WO2013079731(A1)の公開番号を有し、「流れ指向性点滴装置」との名称の特許出願が前記方法の1つである。当該発明は、静脈の任意領域での任意の膨張が問題となったときに使用し得る装置に関する。仮に静脈が完全に膨張したら、本装置は使用できず、現在の技術に関わる問題を排除することはできない。
【0012】
したがって、上述の欠点及び現在の解決方法の不十分さにより、血管バイパスにより血流を維持するカテーテル及び血管修復方法を開発する必要性が生じる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述のすべての要件を満たし、すべての隠れた危険を排除し、特定の利点をもたらす、血管バイパスにより血流を維持するカテーテル及び血管修復方法に関する。
【0014】
本発明の目的は、血管上の本発明の血管バイパスを通じて、血流を維持するカテーテルをインプラントすることによって、修復されるべき血管損傷の遠位と近位の間の血流を維持する単回使用のカテーテルの改善である。この方法において、血管の外科的処置は容易に実施され、その血管から給血される(血液が送り込まれる)1つ又は複数の器官に対する損傷が阻止され、出血の危険は排除されるであろう。
【0015】
本発明の更なる目的は、本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテルが配設された血管の外科的処置を容易にすることである。
【0016】
本発明の他の目的は、本発明の血管バイパスによる血流を維持するカテーテルが配設される血管によって給血される1つ又は複数の器官に対する損傷を防ぐことである。
【0017】
本発明の他の目的は、本発明の血管バイパスによる血流を維持するカテーテルが配設された血管によって給血される1つ又は複数の器官の出血の危険を排除することである。
【0018】
本発明の血管バイパスによる血流を維持するカテーテルは、腫瘍、動脈瘤又は他の何らかの理由によって外科的処置が行われるべき血管手術の分野において代替経路を通して、血管損傷領域内の血流を維持することによって、患者及び外科医の両方から見て、より効率的で、より快適な手術を確実にする。
【0019】
構成の性質及び特徴並びに本発明のあらゆる利点は以下の図面及び当該図面の詳細な説明に伴い明らかに理解されよう。また、これらの図面及びその詳細な説明を考慮して評価されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の主題である「血管バイパスにより血流を維持するカテーテル及び血管修復法」は、以下に列挙する添付の図面に示される。
【0021】
【
図1】本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテル装置を示す概念図である。
【
図2】本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテル装置及び血管を示す図である。
【
図3】本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテル装置及び血管修復法による処理を示す図である。
【
図4】本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテル装置及び血管修復法による処理を示す図である。
【
図5】本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテル装置の血管修復方法及び血管修復法による処理の処理ステップを示す図である。
【0022】
各図は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の理解に不要な詳細は省略されている場合がある。少なくとも大部分が互いに対応する他の構成要素、又は少なくとも大部分が互いに対応する機能を有する他の構成要素は同じ符号で示した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[処理ステップの説明]
101−近位クランプ(17)と血管損傷(15)の間の健全な血管組織(14)に形成した小さな切り込みを介してカテーテル装置(1)の一端を配置する。
102−逆止弁(7)及び第2経路(5)により血管(12)内のバルーン(3)を膨張させる。
103−カテーテル(1)を血管壁(13)からわずかに引き抜くことによって血管壁(13)にカテーテル(1)をもたれかけさせる。
104−カバー(8)を血管壁(13)の外側から血管壁(13)に向けて押しつけ、クランプ装置(9)で押圧する。
105−遠位クランプ(16)と血管損傷(15)の間の健全な血管組織(14)に形成した小さな切り込みを介してカテーテル装置(1)の他端を配置する。
106−逆止弁(7)及び第2経路(5)により血管(12)内のバルーン(3)を膨張させる。
107−カテーテル(1)を血管壁(13)からわずかに引き抜くことによって血管壁(13)にカテーテル(1)をもたれかけさせる。
108−カバー(8)を血管壁(13)の外側から血管壁(13)に向けて押しつけ、クランプ装置(9)で押圧する。
109−近位クランプ(17)をわずかに開くことにより血管(12)内に血液を還流させる。
110−空気が血管(12)内に入った場合、遠位クランプ(16)を開くことなく、第3経路(10)を通じて血管(12)から空気を放出する。
111−血管損傷(15)が認められる領域で、カテーテル装置(1)の両端に、2つのクランプ(20)を配設し、血管(12)を疾病領域にバイパス/迂回して、血流の第1経路(2)への配向を可能にし、血管(12)の他端への進行を可能にする。
112−外科的修復の完了後、カテーテル装置(1)、クランプ装置(9)、近位側(18)のカバー(8)を開放し、
113−逆止弁(7)及び第2経路(5)によりバルーン(3)の空気を抜き、カテーテル装置(1)を引き戻す。
【0024】
[詳細な説明]
本詳細な説明において、本発明の血管バイパスによる血流を維持するカテーテル及び血管修復法の好ましい実施の形態は、何ら限定的影響を及ぼすことなく本発明の理解を深めるために記述される。
【0025】
さらに、詳細な説明中のいくつかの構成要素は理解を深めるために様々な形態で使用され、文中の整合性を満足させる。様々な記述の構成要素は同じ符号の構成要素に相当する。
【0026】
カテーテル装置(1)は、血管バイパスによって血流を維持する本発明のカテーテルであって、任意のプラスチック及び類似の原材料から形成され、両端が開放されており、第1経路(2)、バルーン(3)、保護層(4)、第2経路(5)、逆止弁装置(7)、保護セグメント(6)、カバー(8)、クランプ装置(9)、第3経路(10)、接続装置(11)を有する。
【0027】
第1経路(2)は、その両端に近い位置に1つのバルーン(3)を含み、保護層(4)がその表面に配設される。
【0028】
(各)バルーン(3)は、その膨張収縮性により血管内に配設されたときに血管内の血流を止める要素であり、その上に保護層(4)が配設される。
【0029】
(各)保護層(4)は、バルーン(3)上に配置され、前記バルーンの強度を高める要素である。
【0030】
(各)第2経路(5)は、第1経路(2)に接続された排出流路であり、バルーン(3)の膨張及び収縮を可能とする。
【0031】
(各)保護セグメント(6)は、第1経路(2)上に配置された要素で、第1経路(2)上のクランプ装置(9)の損傷を防ぐ。
【0032】
(各)逆止弁(7)は、バルーン(3)の膨張に必要とされる空気の取入れ口を提供する要素であり、カテーテル装置(1)上で血管内の空気を排出する。
【0033】
(各)カバー(8)は、カテーテル装置(1)が血管(12)から抜けないように、またはカテーテル装置(1)が移動しないようにする要素であり、カテーテル装置(1)の本体側部に位置し、バルーン(3)の背後に配置され、カテーテル装置(1)の本体より広いのでカテーテル装置(1)上を移動することができ、両端が開放した柔軟性のある構造を有し、漏斗状、円形、楕円形又は他の形状を取り得る。
【0034】
クランプ装置(9)はカバー(8)を固定位置に維持するために使用される要素である。
【0035】
(各)第3経路(10)は、両端が開放された要素で、一端が第1経路(2)内に位置し、他端が第1経路(2)の外に位置し、血管(12)内で発生する空気を抜き、必要に応じて、血液の流れを血管(12)及びカテーテル装置(1)の外に出すことを可能にする。
【0036】
接続装置(11)は、第3通路(10)の外側後端と一体化された要素で、必要に応じて、外部注入装置とカテーテルの連結を可能にする。
【0037】
血管(12)は人体の血液循環が維持される血液流路である。
【0038】
血管壁(13)は、血管(12)を包囲しかつ構成する血管(12)の外表面であり、その内部を血液が流れる。
【0039】
健全な血管組織とは、始点から血管損傷(15)が存在する領域の端までの健全な血管(14)部分である。
【0040】
血管損傷(15)は、血管(12)内の腫瘍、浮腫及び類似の疾病が発生した血管(12)の部分である。
【0041】
遠位クランプ(16)は、血管(12)上の遠位側(19)に置かれるクランプ(20)を言う。
【0042】
近位クランプ(17)は、血管(12)上の近位側(18)に置かれるクランプ(20)を言う。
【0043】
近位側(18)は、血液が流れる血管(12)の血管損傷(15)の手前の部分である。
【0044】
遠位側(19)は、血管(12)の血管損傷(15)を通過した後の血流の部分である。
【0045】
クランプ(20)は、外科的処置の間血流を止める固定装置である。
【0046】
本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテル及び血管修復法の適用
【0047】
近位クランプ(17)と血管損傷(15)の間の健全な血管組織(14)上の小さな切り込みを通して、カテーテル装置(1)の端部が配置される。バルーン(3)が、血管(12)内で逆止弁(7)及び第2経路(5)によって膨張させられる。カテーテル(1)を血管壁(13)からわずかに引き抜くことによって、カテーテル(1)が血管壁(13)にもたれかかる。カバー(8)が血管壁(13)の外側から血管壁(13)に向けて押され、クランプ装置(9)で押圧され、このようにして、血管(12)の外への又は血管(12)内でのカテーテル装置(1)の動きが防止され、カテーテル装置(1)が固定される。
【0048】
カテーテル装置(1)の他端は、遠位クランプ(16)と血管損傷(15)の間の健全な血管組織(14)の小さな切れこみから挿入される。バルーン(3)が、血管(12)内で逆止弁(7)及び第2経路(5)によって膨張させられる。カテーテル(1)を血管壁(13)からわずかに引き抜くことによって、カテーテル(1)が血管壁(13)にもたれかかる。カバー(8)が血管壁(13)の外側から血管壁(13)に向けて押され、クランプ装置(9)で押圧され、このようにして、血管(12)の外への又は血管(12)内でのカテーテル装置(1)の動きが防止され、カテーテル装置(1)が固定される。
【0049】
近位クランプ(17)が緩やかに開放され、血管(12)への血液の還流が提供される。一方、前述の処理ステップの遂行の間、血管(12)内への空気漏れが起こり得る。この空気は血管(12)から排出されるべきである。このため、第3経路(10)が利用される。遠位クランプ(16)の手前の第3経路(10)を開放することにより、空気は第3経路(10)より排出される。血管(12)中に全く空気が入ってないことを確実にした後、遠位クランプ(16)が開放される。この段階で、血液は血管(12)及びカテーテル装置(1)の両方を通して流れる。すなわち、血管(12)上で2つの流れが発生する。
【0050】
2つのクランプ(20)は、血管損傷(15)が存在する両側で、カテーテル装置(1)の両端に配置される。したがって、血流は、第1経路(2)に向けられ、そこで、血液が流れて血管(12)の他端へと進む。すなわち、血管(12)の疾病領域はバイパス/迂回され、そこでは、血流が阻止される。この領域にはいかなる血流もないので、器官の無血が残される危険がない。任意の血管(12)修復処理は、血管(12)の出血の危険無しに、安全に悠々と行われる。
【0051】
外科的修復の完了後、近位側(18)でカテーテル装置(1)のクランプ装置(9)及びカバー(8)が緩められ、バルーン(3)は逆止弁(7)及び第2経路(5)を通じて空気を抜かれる。カテーテル装置(1)の端部は引き戻される。
【0052】
遠位側(18)でカテーテル装置(1)のクランプ装置(9)及びカバー(8)が緩められ、バルーン(3)は逆止弁(7)及び第2経路(5)を通じて空気を抜かれる。カテーテル装置(1)の端部は引き戻される。
【符号の説明】
【0053】
1・・・カテーテル装置
2・・・第1経路
3・・・バルーン
4・・・保護層
5・・・第2経路
6・・・保護セグメント
7・・・逆止弁
8・・・カバー
9・・・クランプ装置
10・・・第3経路
11・・・接続装置
12・・・血管
13・・・血管壁
14・・・健全な血管組織
15・・・血管損傷
16・・・遠位クランプ
17・・・近位クランプ
18・・・近位側
19・・・遠位側
20・・・クランプ
【手続補正書】
【提出日】2017年7月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、手術が行われる血管(静脈/vein)内の血流のバイパスを介して、また、関連する血管より送り込まれる器官の血流を止めることに起因する任意の疾患を防ぐことにより、出血することなく、血管内の血流を阻害することなく、血管修復手術を可能とし、また、人体の血管に関する外科的処置のために実施される血管手術の過程において血管バイパスにより血流を維持する、カテーテルに関する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明は、上述のすべての要件を満たし、すべての隠れた危険を排除し、特定の利点をもたらす、血管バイパスにより血流を維持するカテーテルに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の主題である「血管バイパスにより血流を維持するカテーテル」は、以下に列挙する添付の図面に示される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
本発明の血管バイパスにより血流を維持するカテーテルの適用法
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック又は類似の原材料で形成され、両端が開放された、血管バイパスによって血流を維持するカテーテル装置(1)であって、
血管の両端に近接する各位置の1つのバルーン(3)と、
前記バルーン(3)上に配置された保護層(4)と、
前記バルーン(3)の収縮膨張を可能とし、第1経路(2)に隣接して接着された一体構造管の形状を有し、その一方の開放端が前記バルーン(3)内で終端する、第2経路(5)と、
前記第2経路(5)の後端と一体構造の逆止弁装置(7)であって、前記バルーン(3)の膨張収縮のために注入装置で空気及び液体等の物質を供給する逆止弁装置(7)と、
前記第1経路(2)及び第2経路(5)を外部から包囲し、圧縮されたときの流路閉塞を阻止する保護セグメント(6)であって、前記バルーン(3)の後端から前記カテーテル(1)の後側まで様々な長さを有し、前記第1経路(2)及び前記第2経路(5)と共に一体構造の保護セグメント(6)と、
前記カテーテル装置(1)が前記血管から抜けるのを防止し、又は、カテーテル装置(1)が移動するのを防止するカバー(8)であって、前記カテーテル装置(1)の本体側部に位置し、前記バルーン(3)の背後に配置され、前記カテーテル装置(1)の本体より広いので前記カテーテル装置(1)上を移動可能であり、両端が開放された可撓性構造を有し、漏斗状、円形又は楕円形、又は他の形状を有し得るカバー(8)と、
前記カバーを適所に固定するために使用されるクランプ装置(9)と、
両端が開放した管状の少なくとも1つの第3経路(10)であって、一端が第1経路(2)内に位置し、他端が第1経路(2)の外に位置し、液体又は空気を汲み出すために使用される第3経路(10)と、
第3経路(10)の外側後端と一体化され、外部注入装置と前記カテーテルを連結する接続装置(11)と、
を有することを特徴とするカテーテル装置(1)。
【請求項2】
前記カバー(8)及びクランプ装置(9)が互いに結合されるか、あるいは、一体構造を有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置(1)。
【国際調査報告】