特表2017-537811(P2017-537811A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ストラ エンソ オーワイジェイの特許一覧

特表2017-537811シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置
<>
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000003
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000004
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000005
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000006
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000007
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000008
  • 特表2017537811-シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537811(P2017-537811A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/59 20170101AFI20171124BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   B31B50/59
   B29C51/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-520465(P2017-520465)
(86)(22)【出願日】2015年10月8日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月14日
(86)【国際出願番号】IB2015057700
(87)【国際公開番号】WO2016059516
(87)【国際公開日】20160421
(31)【優先権主張番号】1451243-8
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レセネン、ヤリ
(72)【発明者】
【氏名】ネヴァライネン、キンモ
(72)【発明者】
【氏名】リンデル、ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】タンイネン、パヌ
(72)【発明者】
【氏名】マテウス、サミ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトゥネン、マリ
(72)【発明者】
【氏名】カイリアイネン、オウティ
【テーマコード(参考)】
3E075
4F208
【Fターム(参考)】
3E075AA12
3E075BA81
3E075CA01
3E075DC70
3E075GA03
4F208AC03
4F208AG24
4F208AH58
4F208MA06
4F208MB01
4F208MC01
4F208MC02
4F208MC03
4F208MG04
4F208MJ14
4F208MK20
(57)【要約】
本発明は、シート材料のブランク(2)からトレイ(1)を深絞りする方法及び装置に関する。ブランクには、加工中に形成される皺の位置を決定するスコアラインが設けられる。装置は、トレイの底を外面側から形成するためのキャビティ(7)を備える雌成形型(3)と、トレイを形成するためのキャビティに対して移動可能な、トレイの底を内面側から形成するためのプランジャー(11)を備える雄成形型(4)と、シート材料を保持し、トレイの周縁フランジ部を形成するための接触面を有するクランプ(6、15)とを備える。本発明によれば、成形型(3、4)のうちの少なくとも一方をシート材料から側方に離間して設けることによって、自由形成のための空間を設け、その結果、トレイ側壁における皺の発生が、制御された形で実現される。プランジャー(11)の位置を、雌成形型(3)のキャビティ(7)と相対的に調整するために、スペーサープレート(13)を、プランジャー(11)の後部に配置できる。キャビティは、独立した底板(8)と、その下にスペーサープレート(9)を有することができ、又はキャビティの底の、クランプの接触面からの距離を調整するためのネジ手段を設けることができ、それによってトレイの深さを変化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材料(2)からトレイ(1)を深絞りする方法において、
(i)前記シート材料に、形成すべきトレイの外周に対して横切るようにスコアラインを設ける工程と、
(ii)前記スコアラインを施した前記シート材料を、前記トレイの底を外面側から形成するためのキャビティ(7)を備えた雌成形型(3)と、前記トレイの底を内面側から形成するためのプランジャー(11)を備えた雄成形型(4)との間に運ぶ工程と、
(iii)深絞り工程の間に前記シート材料(2)を保持するために、前記シート材料を、前記雌成形型及び雄成形型(3、4)を用いて前記トレイの前記外周に沿ってクランプする工程と、
(iv)前記キャビティの底とクランプの接触面との間で前記雄成形型及び雌成形型のうちの少なくとも一方が前記シート材料から側方に離間した状態で、前記トレイを形成するために前記プランジャー(11)を前記キャビティ(7)に対して移動させる工程であって、前記少なくとも一方の側方に離間した成形型により形成された空きスペースで前記トレイの側壁を形成する前記シート材料の皺を前記スコアラインによって形成させる、工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記雄成形型(4)が、前記形成されるトレイ側壁の内側に自由空きスペースを確保するように、前記シート材料(2)から離間していることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記雄成形型及び前記雌成形型(3、4)の両方が、前記形成されるトレイ側壁の両側に自由空きスペースを確保するように、前記シート材料(2)から離間していることを特徴とする請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記キャビティの底と前記クランプの接触面との間の距離が、前記トレイ(1)の選択された深さに対応するように調整されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記キャビティの底を前記トレイの周縁フランジ部の下側のクランプ(17)に接続する少なくとも1つのネジ(18)を用いて、前記キャビティの底の鉛直方向の位置が調整されることを特徴とする請求項4に記載された方法。
【請求項6】
前記雄成形型(4)が、前記トレイの底を内面側から形成するためのプランジャープレート(11)を有し、前記プランジャープレートの前記鉛直方向の位置を調整するためにスペーサープレート(13)が挿入されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記スペーサープレート(13)が、前記形成されるトレイ側壁の内側に自由スペースを確保するように、前記シート材料(2)から側方に離間していることを特徴とする請求項6に記載された方法。
【請求項8】
前記雌成形型(3)が、キャビティ底板(8)を有し、その鉛直方向の位置がスペーサープレート(9)を用いて調整されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載された方法。
【請求項9】
前記シート材料が、紙、板紙、ボール紙、ポリマー被覆された紙又は厚紙、金属箔を付した紙又は厚紙、金属、及び金属とポリマーの複合材からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項10】
前記スコアラインが、前記シート材料を押圧することによって形成されることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された方法を使用してシート材料(2)からトレイ(1)を深絞りするための装置であって、
(i)前記シート材料(2)にスコアラインを設けるための手段と、
(ii)前記トレイの底を外面側から形成するためのキャビティ(7)を備える雌成形型(3)と、
(iii)前記トレイを形成するために前記キャビティに対して移動可能な、前記トレイの底を内面側から形成するためのプランジャー(11)を備える雄成形型(4)と、
(iv)前記シート材料(2)を保持し、トレイの周縁フランジ部を形成するための接触面を有するクランプ(6、15)とを備え、
(v)前記キャビティの底と前記クランプの接触面との間の鉛直方向の範囲内で、前記雄成形型と雌成形型(3、4)とが側方に離間して、前記トレイ(1)の側壁を形成するための空きスペースを形成するようになっている前記装置において、
前記キャビティの底を前記トレイの周縁フランジ部の下側面のクランプ(17)に接続するために、前記雌成形型(3)に少なくとも1つのネジ(18)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法を使用してシート材料(2)からトレイ(1)を深絞りするための装置であって、
(i)前記シート材料(2)にスコアラインを設けるための手段と、
(ii)前記トレイの底を外面側から形成するためのキャビティ(7)を備える雌成形型(3)と、
(iii)前記トレイを形成するために前記キャビティに対して移動可能な、前記トレイの底を内面側から形成するためのプランジャー(11)を備える雄成形型(4)と、
(iv)前記シート材料(2)を保持し、トレイの周縁フランジ部を形成するための接触面を有するクランプ(6、15)とを備え、
v)前記キャビティの底と前記クランプの接触面との間の鉛直方向の範囲内で、前記雄成形型と雌成形型(3、4)とが側方に離間して、前記トレイ(1)の側壁を形成するための空きスペースを形成するようになっている前記装置において、
前記雌成形型(3)がキャビティ底板(8)を有し、スペーサープレート(9)が前記キャビティ底板の鉛直方向の位置を調整するために設けられていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された方法を使用してシート材料(2)からトレイ(1)を深絞りするための装置であって、
(i)前記シート材料(2)にスコアラインを設けるための手段と、
(ii)前記トレイの底を外面側から形成するためのキャビティ(7)を備える雌成形型(3)と、
(iii)前記トレイを形成するために前記キャビティに対して移動可能な、前記トレイの底を内面側から形成するためのプランジャー(11)を備える雄成形型(4)と、
(iv)前記シート材料(2)を保持し、トレイの周縁フランジ部を形成するための接触面を有するクランプ(6、15)とを備え、
(v)前記キャビティの底と前記クランプの接触面との間の鉛直方向の範囲内で、前記雄成形型と雌成形型(3、4)とが側方に離間して、前記トレイ(1)の側壁を形成するための空きスペースを形成するようになっている前記装置において、
前記雄成形型(4)が、前記トレイの底を内面側から形成するためのプランジャープレート(11)を有し、前記プランジャープレートの鉛直方向の位置を調整するためにスペーサープレート(13)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記スペーサープレート(13)が、前記形成されるトレイ側壁の内側に自由スペース(14)を確保するように、前記シート材料(2)から側方に離間するようになっていることを特徴とする請求項13に記載された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材料からトレイを深絞りする方法及び装置に関するものである。このトレイは、使い捨て食器としてや、熱シールされた製品パッケージ、特に食品用の熱シールされた製品パッケージの一部として有用である。
【背景技術】
【0002】
パッケージ用トレイは、生鮮食品や調理済み食品のパッケージに広く使用されている。トレイは、ポリマー被覆された板紙やボール紙などの繊維質材料、又はアルミニウムなどの金属で作られ、熱シールされたポリマーフィルムにより、又はポリマー被覆された厚紙の蓋により閉じられる。ポリマー被覆は、熱シール性を付与する目的に加えて、材料を液密及び気密にする目的で設けられる。生鮮食品の保存可能期間は非常に短く、防漏かつ気密なシールが要求されることが多い。食料品のなかには、かなり硬いパッケージ用トレイが必要なものもある。
【0003】
深絞りによりトレイを製造するために、シート材料のブランクを、雄成形型と雌成形型との間に位置付ける。そして、成形型を互いに移動させて、底およびその底部を囲んで上向きに広がる側壁を有するトレイを形成する。
【0004】
ブランクをトレイに形成するうえでの主要な問題は、トレイの形成中に厚紙に発生する皺の制御に加え、深絞り中のシート材料の断裂である。皺の発生は、材料の、特に可塑性及び加工中の成形性に対する適合性が限られている紙や厚紙、金属の不利な点である。皺は特に、略長方形をしたトレイの角部で発生するが、円形や楕円形をしたトレイの側壁及び周辺フランジ部に沿っても生じる。
【0005】
一切の皺を避けることを意図した先行技術が存在する。他の手法は、皺の発生を許容するが、材料がトレイの形に絞られる際に材料が強制的に曲がる位置を決定するための予め形成したスコアラインによって皺を制御することである。しかしながら、現在の深絞り加工では、材料の皺は不規則な傾向があり、審美的に不十分な外観を有するトレイが生産される。
【0006】
先行技術のトレイ及びシール被覆蓋の例は、特許文献1に見られる。ポリエステルで被覆された厚紙材料をトレイ状に形成された容器に押圧することで、トレイの角部の側壁から周縁フランジ部まで延びる波形(皺)を形成している。フィルムカバーを周縁フランジ部に熱シールし、防漏パッケージを提供する。
【0007】
特許文献2には、ポリマー被覆された板紙ブランクから深絞りされる長方形状の容器であって、その角部の側壁及び周縁フランジ部にひだ状の折り目を有するように皺をつけた容器が示されている。深絞り用の成形型は、容器の形状に成形するために、ブランクを型に絞るために互いに移動可能な上側心金及び下側型を備える。
【0008】
特許文献3は、角部に曲げ線(皺)を有する紙容器と、容器の環状縁部(フランジ部)にシールされた蓋とを備えるシールパッケージが、漏出を起こす可能性があるという問題を取り扱っている。この特許文献には、角部のどのような凹凸も平滑化でき、それによって皺を介しての漏出を避けることのできる最小厚さの被覆層を使用することが提案されている。
【0009】
特許文献4には、単一又は複数の作業工程で形成する側壁の段差を増加させて、したがってトレイの底の周囲に同心円状に階段状となった外形を有するようにトレイの側壁を形成することによって、皺の問題を解決することが教示されている。材料の皺の発生を全て避けることを意図している。
【0010】
特許文献5には、厚紙材料に、材料のブランクがトレイに変化する際に引き込まれて閉じる予め形成されたスコアラインを設けることによって皺の発生を制御することが教示されている。この特許文献によれば、スコアラインは、切り込みやレーザー手段によって設けることができる。
【0011】
先行技術の成形型の更なる問題は、トレイの大きさが変化するに際し、大きさ毎に、例えば異なる深さのトレイに対して適合性を持たずに、独自の機械が必要なことである。同様のことが、使用されるシート材料の厚さに当てはまる。材料厚さを変えると、加工機械も変えざるを得なくなる。
【0012】
特許文献6の先行技術には、雌成形型の型キャビティに、インサートを着脱可能に取り付けることによって、厚紙容器の深さを変えることが可能な成形型システムが記載されている。インサートが、キャビティの新たな底を形成し、したがってキャビティの深さを減少させ、それに応じて形成される容器の深さを減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】英国特許出願公開第2123786号明細書
【特許文献2】米国特許第4,026,458号明細書
【特許文献3】欧州特許第1115572号明細書
【特許文献4】フィンランド特許出願第20125304号明細書
【特許文献5】米国特許第4,246,223号明細書
【特許文献6】国際公開第2010/018306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、深絞りによってトレイを形成するための、新規な方法及び装置を通じて、シート材料に生じる皺の管理を向上させることを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る方法は、
(i)シート材料に、形成すべきトレイの外周に対して横切るようにスコアラインを設ける工程と、
(ii)スコアラインを施したシート材料を、トレイの底を外面側から形成するためのキャビティを備えた雌成形型と、トレイの底を内面側から形成するためのプランジャーを備えた雄成形型との間に運ぶ工程と、
(iii)深絞り工程の間にシート材料保持するために、シート材料を、雌成形型及び雄成形型を用いてトレイの前記外周に沿ってクランプする工程と、
(iv)キャビティの底とクランプの接触面との間で雄成形型及び雌成形型のうちの少なくとも一方がシート材料から側方に離間した状態で、トレイを形成するためにプランジャーをキャビティに対して移動させる工程であって、少なくとも一方の側方に離間した成形型により形成された空きスペースでトレイの側壁の収縮がスコアラインによって決まる、工程と
を含む。
【0016】
シート材料からトレイを深絞りするための本発明に係る装置は、
(i)シート材料にスコアラインを設けるための手段と、
(ii)トレイの底を外面側から形成するためのキャビティを備える雌成形型と、
(iii)トレイを形成するためにキャビティに対して移動可能な、トレイの底を内面側から形成するためのプランジャーを備える雄成形型と、
(iv)シート材料を保持し、トレイの周縁フランジ部を形成するための接触面を有するクランプとを備え、
キャビティの底とクランプの接触面との間の鉛直方向の範囲内で、雄成形型と雌成形型とが側方に離間してトレイの側壁を形成するための空きスペースを形成するようになっている。
【0017】
本発明によれば、トレイの側壁を自由形成できるように、キャビティの底とクランプの接触面との間で、雄成形型及び雌成形型の少なくとも一方を、シート材料から側方に離間させる。これにより、トレイ側壁における皺の発生の制御が向上する。例えば雄成形型が、プランジャーの後部に配置され、シート材料から側方に離間したスペーサープレートを備えることができ、これにより、形成されるトレイ側壁の内側に自由空きスペースを確保する。雄成形型及び雌成形型の両方が、形成されるトレイ側壁の両側に自由空きスペースを確保するように、シート材料から側方に離間していることが好ましい。
【0018】
上記具体例の利点は、通常のように、成形型の表面が薄厚シート材料にぴたりと接触して、シート材料の収縮及び皺の発生を妨げ、材料を強制的に引き伸ばして断裂の虞が生じさえするようにはなっていないことであり、空きスペースによってシート材料は、無理な力を加えられることなく成形に適合できるようになっている。皺に関しては、空きスペースによって、先行技術による密着した成形型の場合のような不規則かつ見た目の悪い外観を生じる圧縮なしに、皺を自由に形成できるようになる。
【0019】
スペーサープレートを使用して雄成形型をシート材料から離間させることにより、プランジャーの位置を雌成形型に対して調整できるようにもなる。雌成形型のキャビティをも調整可能にすることにより、形成されるトレイの深さを変化させることができる。
【0020】
本発明の一具体例によれば、雌成形型はキャビティ底板を有し、その底板の下に設置されるスペーサープレートを用いて持ち上げることができる。したがって、スペーサープレートを雄成形型に追加し、スペーサープレートを雌成形型から、すなわち底板の下から取り外すことによりトレイの深さを増すことができる。勿論、トレイの深さを減らす場合には逆のことをする必要がある。
【0021】
本発明の他の具体例によれば、雌成形型に、少なくとも1つのネジが設けられて、クランプの接触面までの距離を調整する。したがって、そのネジが、底板の下の上述したスペーサープレートと置換する。ネジは、キャビティの底を、トレイの周縁フランジ部の下面のクランプに接続できる。このようにして、部品を構成に追加したり取り外したりする必要なく、装置を容易にかつ精度良くシート材料の厚さの小さな差に適合させることができる。
【0022】
スコアラインは、シート材料を押圧することによって形成することが好ましい。押圧は、材料を弱くしたり、液体遮断性や気体遮断性を付与するために必要なポリマー被覆を破壊することがない。しかしながら、もしそのような性質が優先されないのであれば、機械的又はレーザーによる切り込みによってスコアラインを形成してもよい。
【0023】
トレイに有用な材料は、紙や板紙、ボール紙などの繊維質材料であり、熱シール可能なポリマーによる押し出し加工された被覆が設けられていることが好ましい。熱シール性並びに液体遮断性及び気体遮断性を最適化するために、異なるポリマーによる多層被覆を設けることができる。好適な被覆ポリマーとしては、熱シール性に関してはポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、遮断性に関してはポリエチレンテレフタレート(PET)やエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド(PA)が挙げられる。PETは、食品パッケージをオーブン加熱できるため、最適なポリマーである。トレイ用の更なる好適な材料としては、アルミニウム等の金属や、金属箔を付した紙又は厚紙、金属/ポリマー複合材が挙げられる。金属は、効果的な遮断性を有するために有用であり、またオーブン加熱性にも有用である。金属(アルミニウム)とPET層との複合材は、PETの融点が高いため、オーブン加熱性を維持しつつ熱シール性を付加する。
【0024】
本発明で使用されるシート材料の厚さは、成形型の変更や修正する必要なく変化させることができる。繊維系材料については、材料の重量は50〜1000g/m、好ましくは100〜600g/m、より好ましくは170〜450g/mの範囲にできる。
【0025】
本発明は、様々な目的の深絞りトレイの生産に適用可能である。用途は、使い捨て食器、特に熱シールされた蓋で閉じられる様々な深さの食品パッケージ用トレイを含む。蓋は、ポリマーフィルム製、ポリマー被覆された紙若しくは厚紙製、又は金属/ポリマー複合材製にできる。シールポリマーは、パッケージを開ける際の剥がしやすさという点で選択できる。
本発明は、以下の図面に描かれた例によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】分解図による本発明に係る装置。
図2図1の装置においてトレイに絞られたシート材料のブランク。
図3】深絞りされたトレイ、および本発明の別の具体例に係る装置の部品。
図4】深絞りされたトレイ、および本発明の第3具体例に係る装置の部品。
図5】押圧されたスコアラインを有するシート材料のブランク。
図6】押圧されたスコアラインを有するシート材料のブランク。
図7図5のブランクから深絞りによって形成された長方形のトレイ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図に示す装置は、深絞りによってシート材料のブランク2からパッケージ用トレイ1を形成するものである。シート材料は、被覆されていない厚紙若しくは紙、ポリマー被覆された厚紙若しくは紙、又は金属箔を付した厚紙若しくは紙でよく、場合によってはポリマー、金属、又は金属とポリマーの複合材の被覆が追加される。
【0028】
シート材料のブランク2を図5及び図6に示す。図5のブランク2は、1枚の長方形の平坦な材料であり、図7のような長方形のトレイ1を形成するのに好適である。図5のブランク2は、1枚の楕円形の平坦な材料であり、楕円形のトレイを形成するのに好適である。ブランクには、ブランクの外周に対して横切るように走る、押圧されたスコアラインが設けられている。図5の長方形ブランクは、スコアラインを角部だけに有するのに対し、図6の楕円形ブランクは、外周全体にわたって広がるスコアラインを有する。スコアラインの生成するに必要な押圧工程は先行技術で知られており、本明細書にはその詳細を記載しない。
【0029】
スコアラインをシート材料のブランクに形成する代替法は、機械的な又はレーザーによる切り込みであり、材料に穴をあけること無く局所的に材料を彫るように制御される。
【0030】
図1及び図2に示す装置は、主要部品として、外側からトレイを成形するための雌成形型3と、内側からトレイを成形するための雄成形型4と、深絞り工程の最中にシート材料のブランクを保持して周縁フランジ部をトレイに形成するためのクランプ手段5とを備える。
【0031】
雌成形型3は、形成されるトレイ1の形に概ね対応するキャビティ7を有するフレーム6を備える。図1及び図2に示される具体例では、キャビティ7に組み込まれる別個の底板8が存在する。この底板8は、形成されるトレイの深さを減少させるためのスペーサープレート9を用いて持ち上げることができる。しかしながら、底板8がキャビティ7の底と同じ高さになるようにスペーサープレート9を取り外すこともでき、それにより、トレイ1の形及び深さはフレーム6のみにより決定される。
【0032】
雌成形型3のフレーム6の下方には、加熱ユニット10が設けられる。
【0033】
雄成形型4は、トレイ1の底を内側から形成するためのプランジャープレート11と、深絞り工程の最中静止したまま保持されることが好ましい雌成形型3に対して移動可能になっている本体部12とを備える。プランジャープレート11を本体部12から離間させるために、複数のスペーサープレート13がプランジャープレート11と本体部12との間に位置付けられている。雄成形型4が鉛直方向へ移動することにより、プランジャープレート11がシート材料のブランク2を雌成形型3のキャビティ7内へ押圧し、材料を、底板8及びキャビティの側壁によって決定される形状に適合させる。
【0034】
雄成形型4のスペーサープレート13の具体的な構成は、スペーサープレート13がトレイ3の水平断面よりも狭いことであり、その結果、プレート13の一群を囲む自由スペース14が、それらのプレートと、形成されるべきトレイ側壁との間に残る。このようにして、トレイ側壁の自由形成が可能になり、トレイの角部における皺の発生が制御され、シート材料の断裂が避けられる。
【0035】
クランプ手段5は、雄成形型4の本体部12を囲み、雄成形型4と独立して鉛直方向に移動可能なフレーム15を備える。図1及び図2の具体例では、フレーム15が上側のクランプを形成するのに対し、雌成形型3のフレーム6が下側のクランプとして機能する。クランプ15、16は、相互接触面を有し、これによりクランプ動作中にブランク2の縁部を所定位置で保持し、形成されるべきトレイ1に周縁フランジ部を形成する。
【0036】
図1及び図2の装置は先ず、雌成形型3の底板8の位置がトレイ1の所望の深さに対応するように、対応する数のスペーサープレート9を下に設置することによって調整することで作動する。次に、予めスコアラインを施したシート材料のブランク2が、クランプ手段5と共に互いに離間した状態の雌成形型と雄成形型3、4との間に運ばれる。次いで、クランプフレーム15が雌成形型3のフレーム6に当接して、ブランク2の縁を深絞り操作のための所定の位置にクランプする。最後に、雄成形型4の本体部12が、プランジャープレート11及びスペーサープレート13と共に下方に移動し、プランジャープレートがキャビティ7に入ってブランク2を雌成形型3の底板8に対して押圧する。トレイ3の底は、プランジャープレート11の形状に一致する一方、トレイの側面は自由形成の空間を有しており、不適切な圧縮や破損のない一様に形成された皺を実現する。
【0037】
図3の具体例は、雌成形型3に、別個の底板やスペーサープレートが無く、雌成形型3のキャビティ7だけで、形成中のトレイ1の全体の形及び深さを決定するという点で、図2の具体例を単純化したものである。雄成形型4のプランジャープレート11及びスペーサープレート13は、図1及び図2のものと同様である。クランプ手段15も同様である。
【0038】
図4の具体例は、図2及び図3の先の具体例におけるものと同様の雄成形型4および上部クランプツールを備える。しかしながら、雌成形型3は異なっている。形成されるトレイ1の底に対応する形をしたキャビティ7を有する底フレーム部16が存在する。下側クランプフレーム17は、ネジ山の切られたネジ18を介して、底フレーム部16に接続されており、このネジ18を用いて部品16、17間の距離を精度良く調整し、それによって完成したトレイ1の深さを調整する。更なる重要な特徴は、トレイ側壁の両側に十分な自由スペースが存在し、したがって側壁を自由に形成する空間が増すことである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】