(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537820(P2017-537820A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】膨張性バリアフィルムアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20171124BHJP
B32B 3/28 20060101ALI20171124BHJP
B32B 25/04 20060101ALI20171124BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B3/28 C
B32B25/04
B60C5/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-530694(P2017-530694)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】US2015059570
(87)【国際公開番号】WO2016099695
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】62/094,699
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】クレスギ エドワード エヌ
(72)【発明者】
【氏名】マンダーズ ピーター ダブリュー
【テーマコード(参考)】
3D131
4F100
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BA02
3D131BC02
3D131BC35
3D131BC36
3D131CB11
3D131CB12
4F100AJ04B
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK12B
4F100AK14B
4F100AK17B
4F100AK25B
4F100AK27B
4F100AK28B
4F100AK29B
4F100AK41B
4F100AK46B
4F100AK49B
4F100AK73B
4F100AL09B
4F100AN00A
4F100AN01B
4F100AN02B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DD12B
4F100EJ06B
4F100GB32
4F100JD02B
(57)【要約】
バリア層アセンブリは、繰り返し変形を受ける物品におけるバリア成分として有用である。バリア層アセンブリは、支持層およびフィルム層を有する。バリア層アセンブリは、2方向波形表面を有する。表面は外面または内面でもよく、非有溝のくぼみで規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層およびそれに結合されたフィルム層を含み、2方向波形表面を有するバリア層アセンブリ。
【請求項2】
前記2方向波形表面が、非有溝のくぼみを含む、請求項1に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項3】
前記バリアアセンブリの変形中に可逆的に膨張性である、請求項1または2に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項4】
前記2方向波形表面が、中心平面の周りに配置された、前記中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の曲線形状を前記中心平面に沿って前記第1の方向に非平行な第2の方向に配向された第2の曲線形状と組み合わせて含む3次元構造を含み、それぞれの方向における前記曲線形状が同じであるかまたは異なる、請求項1から3のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項5】
i)前記第1の曲線形状の周期と前記第2の曲線形状の周期とが異なるか、またはii)前記第1の曲線形状の振幅が前記第2の曲線形状の振幅と異なるか、またはiii)前記第1および前記第2の曲線形状の周期および振幅の両方が異なる、請求項4に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項6】
前記3次元構造の少なくとも一部が、式
z=a(sin(bx+sin(cy)))
(式中、
zは、前記構造と前記中心平面の間の前記中心平面に直交する距離であり、
xは、前記中心平面の長さに沿って前記第1の方向における相対距離であり、
yは、前記第1の方向に直交し、かつ前記中心平面の幅に沿って中心平面に直交する前記第2方向における相対距離である)
により表される、請求項4に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の方向に配向された第1の正弦波形状の周期が、前記第2の方向に配向された第2の正弦波形状の周期の少なくとも2倍である、請求項6に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項8】
前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、熱可塑性樹脂、動的加硫アロイ、またはそれらの組合せを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項9】
前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリニトリル樹脂、ポリメタクレート樹脂、ポリビニル樹脂、セルロース樹脂、フルオロ樹脂、イミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの組合せを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項10】
前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、熱可塑性連続相に分散された加硫エラストマーを含む動的加硫アロイを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項11】
前記加硫エラストマーが、ブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水添スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、水添ブタジエンゴム、星形分岐ブチルゴム、アクリルニトリルブタジンゴム、水添アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、マレイン酸−無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンゴム、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、無水マレイン酸グラフトエチルアクリレートコポリマー、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−アクリルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー、臭素化イソブチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン酸化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸グラフト塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ハロゲン化シリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ化ビニリデンゴム、ハロゲン化ビニルエーテルゴム、またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項12】
前記2方向波形表面の反対の反対面を有し、かつ前記反対面が非波形表面を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項13】
圧縮、膨張、または剪断で任意の方向に沿って非変形寸法から変形寸法に、次いで深溝を形成することなく逆戻りして可逆的に変形可能である、請求項1から12のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項14】
前記バリア層アセンブリが、ASTM D790によって、前記バリア層アセンブリの波形付与前の前記バリア層アセンブリの曲げ降伏強さから低下した曲げ降伏強さを有する、請求項1から13のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項15】
30℃で約25×10-12cc−cm/cm2・秒・cmHg未満の酸素透過率を有する、請求項1から14のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項16】
前記バリア層アセンブリが、規定幅Wを有し、前記2方向波形表面が、前記バリア層アセンブリ規定幅Wよりも小さい幅Wcを有するバリア層アセンブリの一部の上に存在する、請求項1から15のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項17】
2方向波形表面幅Wcを有する前記バリア層アセンブリの表面が、滑らかな表面と2方向波形表面とを有する表面の交互部分を有する、請求項16に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリを含む、タイヤインナーライナー。
【請求項19】
請求項18に記載のタイヤインナーライナーを含む、タイヤ。
【請求項20】
バリア層基材を、前記基材に波形を付与し、2方向波形バリア層を得るために十分な温度、圧力、および時間で2つの相補的テクスチャード表面間に通過させる工程を含む、方法。
【請求項21】
前記2つの相補的テクスチャード表面が、対抗するローラを構成する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
未硬化ゴム成分を準備する工程と、
バリア層を含むインナーライナーを準備する工程と、
前記未硬化ゴム成分、および前記未硬化ゴム成分の内側面上の前記インナーライナーを、未硬化生成物アセンブリにアセンブルする工程と、
前記未硬化生成物アセンブリに圧力および温度をかけて、前記未硬化生成物アセンブリを加硫し、前記バリア層が2方向波形付与された前記インナーライナーを含む生成物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項23】
前記バリア層が、前記インナーライナーと前記未硬化ゴム成分とのアセンブリの前に波形付与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記バリア層が、前記インナーライナーの少なくとも一部をテクスチャード表面と、前記未硬化アセンブリの加硫前またはそれと同時に前記インナーライナー内の前記バリア層に2方向に波形付与するために十分な温度、圧力、および時間で接触させることによって、前記インナーライナーと前記未硬化ゴム成分とのアセンブリ後またはそれと同時に前記インナーライナーにおいて波形付与される、請求項22の記載の方法。
【請求項25】
前記生成物が、タイヤを含む、請求項22から24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への優先権主張
本出願は、その開示がその参照により本明細書に完全に組み込まれる、2014年12月19日に出願された米国仮出願第62/094,699号に対する優先権を主張する。
本発明は、膨張性バリアフィルムアセンブリおよびこのようなバリアフィルムアセンブリを製造する方法に関する。バリアフィルムアセンブリは、非線形構造に有用であり、その構造に可撓性を与える。
【背景技術】
【0002】
いくつかの半結晶性熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミドおよびエチレンビニルアルコール(EVOH)は、このような半結晶性熱可塑性ポリマーの比較的薄い層が、比較的高い透過性ゴムの比較的厚い層の代わりに使用されるタイヤインナーライナーを含めて、様々なバリア用途に組み込まれてきた。薄いフィルムの使用は、タイヤ製造者がタイヤのインナーライナー部分の質量成分を減少させ、インナーライナーのための比較的高いガス不透過性を得ることを可能にする。しかしながら、インナーライナーフィルムとしてのまたはタイヤ用のインナーライナー組成物での熱可塑性樹脂の使用は、熱可塑性樹脂含有フィルムがタイヤを形成する他のエラストマーおよび強化エラストマー層に比較して比較的硬くかつ非弾性であり;それにより、より従来のエラストマーインナーライナーにより実証された保持率に比べて、匹敵する、またはより良い空気または他の流体保持率を与えるためのバリアフィルムとして使用される場合、あまり最適でない結果をもたらすので、問題となる。
望ましいバリア特性を有する熱可塑性樹脂またはポリマーは、一般に半結晶性であり、結晶領域における低い自由体積のために拡散ガス分子が結晶領域で低い溶解性および低い拡散率を有することからそれらの不透過性を得ている。熱可塑性樹脂の半結晶性の性質が荷重下で降伏をもたらし、これは、材料にミクロ構造変化をもたらす散逸機構であり、このことは、変形が本質的に可逆性である架橋ゴムとは対照的であることが発見されている。結果として、熱可塑性ポリマーフィルムは、繰り返し荷重下の疲労分解、または熱可塑性フィルムを含むバリア層のバリア特性の永続的欠陥をもたらし得る変形を被る。このような欠陥には、フィルムとその下にあるタイヤ本体の間の比較的高い剪断応力の形成が含まれ、これは、その後、広範囲にわたって層間剥離し得、空気保持率の低下をもたらす。この剪断応力は、バリア層の剛性が増加するにつれて増加する。
【0003】
バリア層に熱可塑性樹脂を使用する別の利点は、従来のエラストマー配合インナーライナーに比較して減少した質量とともに匹敵するまたは改善された流体保持率が得られ得、これは、タイヤ質量の減少による燃料効率の改善に言い換えてもよい。加えて、モジュラスと断面の積である、バリア層における熱可塑性樹脂の比較的高い剛性は、言い換えるとエラストマーインナーライナーに比較してより多くの負荷を運ぶことができるバリア層になる。しかしながら、熱可塑性樹脂の比較的高い剛性は、ヒステレティックまたは非弾性であり得る固有の降伏挙動と相まって、比較的高い転がり抵抗をもたらし、これは、インナーライナーの性能にとって有害である。転がり抵抗を最小にするのと、疲労負荷における耐久性の低下をもたらすヒステリシス損との根本原因であり得る、ライナー内の塑性変形を防ぐ、または少なくとも減らすのとの両方のために、インナーライナー内のヒステリシス損を最小にすることが望ましい。
【0004】
硬いフィルム、例えば、熱可塑性樹脂フィルムがより柔軟な基材上に固定され、次いで、圧縮状態に置かれる場合、硬いフィルムは、ゆがみ(buckle)、または折り目がつき(crease)得る。同様に、タイヤのサイドウォールが曲げられ(flexed)、その内層および最内層を圧縮状態に置く場合、硬いインナーライナーフィルムは、ゆがみ、または皺がつき得;
図1aおよび
図1bを参照されたい。このような圧縮変形下で、深溝(sulcus)(溝底部における屈曲の少なくとも1つの鋭角側面または鋭くとがった先により規定される深く、狭い溝;その複数はsulciである)が形成し、応力および歪の特異点を生じさせる。タイヤ回転の間に遭遇され得るような、繰り返しのこのような変形を受けた後、亀裂が深溝底部での位置におけるインナーライナーフィルムで開始し得る。亀裂が硬いフィルムインナーライナーで形成するとき、それは、隣接するより軟らかいエラストマー層との接触面に高い剪断応力集中をもたらすことができ、フィルムインナーライナーの層間剥離をもたらし得る。
【0005】
タイヤ用途でインナーライナーとして使用される別の熱可塑性樹脂フィルムは、当技術分野で熱可塑性アロイ加硫物(TPV)とも称される、動的加硫アロイ(DVA)であってきたが、これは、バリア熱可塑性マトリックス内に分散されたミクロンサイズのゴム粒子を含む。しかしながら、DVAは、タイヤインナーライナーおよび他のバリア用途として使用されてきたが、今まで限定された成果であった。DVAが引張り歪みを受ける場合、DVAの熱可塑性マトリックスは、歪みが除かれたときも回復されない永久伸びを受け得;熱可塑性マトリックスにゆがみを生じさせ、これは、周囲のエラストマー粒子によって補償される[Micromechanical Deformation and Recovery of Nylon-6/Rubber Thermoplastic Vulcanizates as Studied by Atomic Force Microsccopy and Transmisson Electron Microscopy, Oderkerk et.al. Macromolecule, Vol.35.No.17,(2002)参照]。熱可塑性マトリックスとエラストマー粒子とのこの歪み後の関係は、DVAバリア層が、タイヤのインナーライナーに用いられる場合、限定された剪断歪み下で欠陥なく大きなかつ繰り返しの変形に耐えることを可能にする。
ゴム/熱可塑性樹脂の関係にもかかわらず、DVAインナーライナーは、疲労亀裂を起こしやすくあり得、これは、特に低温で層のバリア特性を低下させる。加えて、タイヤインナーライナーとして用いられる場合のDVA層上の比較的高い収縮力は、匹敵する弾性ゴムインナーライナーを含む膨張グリーンまたは未硬化タイヤアセンブリのものより大きく、これは、硬化タイヤにおける層間剥離、空気の閉じ込め、および奇形をもたらし得る。さらに、DVA含有インナーライナーの圧縮変形下で形成された深溝も、応力および歪みの特異点を生じさせ得、これは、タイヤの残部からのインナーライナー層の亀裂および/または層間剥離にさらに現れ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改善された空気バリア性能の達成への従来技術の手法の限界は、本発明の実施形態による空気バリアアセンブリ、方法および組成物の使用によって達成されたように、改善への継続する必要性を示唆する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
製造物品中のバリア成分として有用なバリア層アセンブリが、本明細書で開示される。バリア層アセンブリは、支持層およびそれに結合されたフィルム層を有する。アセンブリは、変形の間にアセンブリを屈曲させるために内側または外側の2方向波形表面を有する。
本明細書で開示されるいずれの態様においても、バリア層アセンブリの2方向波形表面は、非有溝のくぼみ(non−sulcate furrow)を有する。
【0008】
本発明のいずれの態様においても、バリア層アセンブリの2方向波形表面は、中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の曲線形状と第1の方向に平行でない中心平面に沿って第2の方向に配向された第2の曲線形状と組み合わせて含む、中心平面の周りに配置された3次元構造を有する。各方向における曲線形状は、互いに同じであっても、異なってもよい。湾曲における差は、深さ、ピッチ、または間隔における差であってもよい。
バリア層アセンブリの層の変形だけでなく、バリア層アセンブリを形成する材料の変形も本明細書で開示される。
【0009】
バリア層アセンブリが物品内に挿入される前、挿入される間、または挿入された後のいずれかで、バリア層アセンブリを製造または調製する方法が開示される。
以下の図面からの助けを借りて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a-1b】本開示による積層物(laminate)のゆがみ(bucking)および皺つき(wrinkling)/折り目つき(cresing)間の差を示す図である。
【
図2a-2b】可能なアセンブリ層を例示するバリア層アセンブリの横断面図である。
【
図3】本発明によるバリア層の3次元表面の図である。
【
図4】本発明によるバリア層の3次元表面の図である。
【
図6】2回の荷重サイクル後の、谷方向に平行に積載されたナイロンフィルムを有する
図5の波形型板で作製した積層物の写真である。
【
図7】2回の荷重サイクル後の、谷方向に対して90度で積載されたナイロンフィルムを有する
図5の波形型板で作製された積層物の写真である。
【
図8】2回の荷重サイクル後の、谷方向に対して45度で積載されたナイロンフィルムを有する
図5の波形型板で作製された積層物の写真である。
【
図9】本発明の一実施形態による2方向波形バリアアセンブリの側断面図である。
【
図10】本発明のある実施形態によるバリア層アセンブリに波形を付与するための一対のローラの側断面図である。
【
図12】比較のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図13】本発明のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図14】比較のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図15】比較のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図16】比較のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図17】本発明のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図18】本発明のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【
図19】本発明のバリア層アセンブリのヒステリシス曲線、荷重(N)対歪み(伸び%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示を理解するために本明細書で採用される実施形態および定義を含めて、様々な具体的な実施形態、バージョン、および実施例がこれから説明される。例示的な実施形態を詳細に説明されるが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な他の変形形態が、当業者に明らかであり、かつ当業者によって容易になされ得ることが理解される。侵害の決定のために、列挙されているものと同等である、それらの等価物、および要素または限定を含めて、本開示の範囲は、添付の特許請求項いずれか1つ以上を指す。
【0012】
バリア層アセンブリとしてまたはそれに熱可塑性樹脂を使用する場合に形成された深溝の応力および歪に関する上で検討された欠点は、熱可塑性樹脂ベースフィルムが3次元構造を有して調製され、タイヤインナーライナーなどの空気バリアとして有用な伸長性材料を生じさせる場合に克服され得ることが発見された。3次元構造は、滑らかに変化する折り畳み部分(fold)が、第1の方向に対して横の第2の方向に沿って配向された滑らかに変化する折り畳み部分によって覆われて、第1の方向に沿って配向されて、折り目線間の平面セグメントとして折り畳まれているよりはむしろ滑らかに変化する移行を有する形状または構造をもたらす波形形状を指す。この波形形状は、熱可塑性樹脂が、バリア層アセンブリ内のバリア層として使用され、フィルム中で高いレベルの歪みまたは歪みの局所集中、例えば、深溝なしでより高いレベルの伸びを達成することを可能にする。これは、バリア層がタイヤの本体などのより従順な材料に接着されたインナーライナーである場合でさえも当てはまるが、その理由は、下にあるゴムがあまり硬くなく、かつその局所変形がより硬いバリア材料のものに追従する傾向があるからである。インナーライナーにおいて滑らかに変化する波形の正味の効果は、インナーライナーの曲げおよび局所回転の組合せによる、約±10%、または±20%、または±30%、または±40%、または±50%のタイヤの比較的大きな変形の順応、およびライナーが波形でないか、または別に形状化されている場合であるよりも、インナーライナーの平面におけるはるかに低いレベルの歪みである。
【0013】
変更された物理的構造(変更された化学的構造または配合とは対照的に)を有するフィルム層の、フィルム層またはバリア層アセンブリは、非線形形状であるおよび/または多次元変形/屈曲を受ける構造におけるバリア手段として使用される場合、フィルム層の耐久性の改善を可能にする。フィルムは熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑性樹脂の量は、20質量部〜100質量部の範囲である。
本発明の実施形態は、タイヤインナーライナーなどのバリア層アセンブリで有用である。波形3次元構造を有する熱可塑性樹脂を含む、バリア層フィルムおよびバリア層アセンブリは、空気などの流体だけでなく、液体に対しても優れた耐久性および不透過性を示す。さらに、本発明は、本発明のいずれかの実施形態によるバリア層アセンブリを用いる、空気式タイヤ、ブラダ(bladder)、ホースなどを製造するための方法を含む。
【0014】
定義
本開示に適用可能な定義には、本明細書で記載されるとおりの以下が含まれる。
ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマーなどを指すために使用され得る。同様に、コポリマーは、少なくとも2種のモノマーを、他のモノマーと一緒にでもよく、含むポリマーを指し得る。分子量はすべて、特に断らない限り、質量平均である。
ポリマーがモノマーを含むと言及される場合、モノマーは、モノマーの重合形態、またはモノマーの誘導体形態でポリマー中に存在する。しかしながら、参照しやすいように、句「(それぞれの)モノマーを含む」などは、簡潔にした表現として使用される。イソオレフィンは、同じ炭素上に2つの置換基を有する任意のオレフィンモノマーを指す。マルチオレフィンは、2つの二重結合を有する任意のモノマーを指す。好ましい実施形態において、マルチオレフィンは、イソプレンのような共役ジエンなどの、2つの共役二重結合を含む任意のモノマーである。
【0015】
用語「エラストマー」は、ゴムと互換可能に使用され、ASTM D1566の定義:「大きな変形から回復することができ、かつ沸騰溶媒に本質的に不溶性である(しかし、膨潤し得る)状態に変性され得る、または既に変性され得る材料・・・」と一致する、任意のポリマーまたはポリマーの組成物を指す。この用語は、用語「ゴム(単数または複数)」と互換可能に使用される。
用語「マルチオレフィン」は、2つ以上の不飽和(典型的には二重結合)を有する任意のオレフィンモノマーを指し、例えば、マルチオレフィンは、2つの共役二重結合、例えば、共役ジエン、例えば、イソプレンを含む任意のモノマーであってもよい。
用語「スチレン」モノマーは、以下にさらに詳述されるとおりの、非置換または置換スチレンを指す。具体的には、アルキルスチレンは、このような置換スチレンである。
【0016】
用語「ブチルゴム」は、任意のイソブチレン系ゴムを指し、「イソブチレン系ゴム」は、ゴム中のモノマー単位の全量に基づいて、少なくとも70モル%のイソブチレン単位含有するゴムを意味する。
本明細書で言及されるポリマーおよび/またはエラストマーに関連して、用語「硬化された」、「加硫された」、または「架橋された」は、例えば、このようなプロセスを受けるエラストマーが、タイヤが利用される場合に硬化反応から生じる必要な機能特性を与え得る程度に、ポリマーまたはエラストマー構成する鎖延長、またはポリマー鎖間の架橋の間のような、結合の形成を含む化学反応を指す。本発明において、このような硬化反応の絶対的完了は、「硬化された」、「加硫された」、または「架橋された」とみなされる組成物を含有するエラストマーに必要とされない。例えば、本発明において、本発明に基づくインナーライナー層組成物を含むタイヤは、それが成分であるそのタイヤが、製造中および後に必要な製品仕様試験に合格し、乗り物で使用される場合に満足によく走る場合に十分に硬化されている。さらに、組成物は、さらなる硬化時間がさらなる架橋を生じさせ得る場合でさえも、タイヤを利用することができる場合、首尾よく、十分にまたは実質的に硬化、加硫または架橋されている。
【0017】
ASTM D1566定義による加硫ゴム化合物は、「変形力の除去後におおよそその元の寸法および形状への急速で強制的な回復のできる小さい力による大きな変形を受けやすい、エラストマーから配合された架橋弾性材料」を指す。硬化エラストマー組成物は、硬化プロセスを受けた、および/または有効量の硬化剤もしくは硬化パッケージを含むかもしくはそれらを使用して製造されている任意のエラストマー組成物を指し、用語加硫ゴム化合物と互換可能に使用される用語である。
【0018】
用語「phr」は、ゴム100部当たりの部または「部」であり、組成物の成分が、エラストマー成分のすべての合計に対して測定される当技術分野で共通の尺度である。1種、2種、3種、またはそれを超える異なるゴム成分が所与の処方に存在するかどうかにかかわらず、ゴム成分すべてについての合計phrまたは部は、常に100phrと規定される。他の非ゴム成分はすべて、ゴムの100部に対して比例しており、phrで表現される。このように、例えば、単に1種、またはそれを超える成分(単数または複数)のレベルを調整後に成分ごとにパーセントを再計算する必要なしに、ゴムの同じ相対割合に基づく、異なる組成物間の硬化剤または充填剤の配合レベルなどを容易に比較することができる。
アルキルは、これは、式から1個以上の水素を削減することによってアルカンから誘導され得る、パラフィン系炭化水素基、例えば、メチル基(CH3)、またはエチル基(CH3CH2)など、および同様のものを指す。
【0019】
アリールは、芳香族化合物、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンなどの特徴的な環構造を形成し、典型的にはその構造内に交互の二重結合(「不飽和」)を有する炭化水素基を指す。したがって、アリール基は、式から1個以上の水素を削減することによって芳香族化合物から誘導された基、例えば、フェニル、またはC6H5などである。
「置換されている」は、少なくとも1個の水素基が少なくとも1個の置換基によって置き換えられていることを指し;置換基には、単一分子、例えば、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素)、または別の化学構造の部分、例えば、窒素、硫黄、酸素、または炭素を含む部分が含まれる。例えば、「置換されているスチレン単位」には、p−メチルスチレン、p−エチルスチレンなどが含まれる。
本明細書において、層のゆがみは、湾曲の比較的滑らかな周期的変化を意味し;層の皺つきは、
図1に示されるとおりに、はるかにより低く、かつ対抗する湾曲の領域によって分離された高い局所の湾曲の線を含む。皺の極端な例は、折り目である。
本明細書において、酸素透過率は、Mocon空気透過係数を指す。透過率試験は、当業者に公知の方法によって行われる。本明細書において、試験は、MOCON OXTRAN 2/61(Mocon、Minneapolis、MN、USA)、またはその同等物で行われる。透過率は、当業者に公知の標準方法によって、例えば、MOCONにより推奨されるとおりに計算される。値はまた、周囲気圧に対して補償される。
【0020】
バリア層アセンブリ
バリア層アセンブリの最も簡単な実施形態の横断面の例示は、
図2aで与えられ;横断面図は、アセンブリの膨張性構造の形成前の次元構造またはアセンブリの任意の平面端部に平行な位置でのアセンブリを表す。最小でも、バリア層アセンブリ10は、2つの層:バリアフィルム層12および支持層14を有する。
図2bのバリア層アセンブリ10’は、バリアフィルム層12と支持層14の間の任意選択の接着層16、およびバリアフィルム層12に反対の支持層14の表面上の任意選択の接着層18の位置を例示する。この構造に対する変形には、2つ以上のバリアフィルム層12、2つ以上の支持層14、およびバリア層アセンブリ10’を構成する任意の2つまたはすべての層間の任意選択の接着層が含まれるが、これに限定されない。
【0021】
バリアフィルム層12
− 熱可塑性樹脂フィルム
バリア層アセンブリまたは物品中のバリアフィルム層として有用な材料は、熱可塑性樹脂を含有し;熱可塑性樹脂の量は、20質量%〜100質量%の量でフィルム中に存在する。熱可塑性樹脂は、500Mpaを超えるヤング率、および/または30℃で
25×10
-12cc−cm/cm
2−秒・cmHg未満の、本明細書で酸素透過率とも称される、Mocon空気透過係数、および/または約170℃〜約230℃の融点を有する。
【0022】
使用に適した熱可塑性樹脂には、以下の樹脂カテゴリおよび各カテゴリの例示的樹脂が含まれる:
− ポリアミド樹脂:ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン6,10(N610)、ナイロン6,12(N612)、ナイロン6/66コポリマー(N6/66)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T(N6T)、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン66/PPコポリマー、ナイロン66/PPSコポリマー;
− ポリエステル樹脂:ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEIコポリマー、ポリアクリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド二酸/ポリブチレートテレフタレートコポリマーおよび他の芳香族ポリエステル;
− ポリニトリル樹脂:ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレンコポリマー(AS)、メタクリロニトリル−スチレンコポリマー、メタクリロニトリル−スチレン−ブタジエンコポリマー;
− ポリメタクリレート樹脂:ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート;
− ポリビニル樹脂:酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレンコポリマー(EVOA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニル/ポリビニリデンコポリマー、ポリ塩化ビニリデン/メタクリレートコポリマー;
− セルロース樹脂:酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース;
− フルオロまたはフッ素樹脂:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレンコポリマー(ETFE);
− 芳香族ポリイミド;
− ポリスルホン;
− ポリアセタール;
− ポリアセトン;
− ポリフェニレンオキシドおよびポリフェニレンスルフィド;
− 芳香族ポリケトン;
または上記熱可塑性樹脂のいずれかの任意の混合物が含まれる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、フィルムは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、ナイロン6/66/610、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン66/ポリプロピレンコオリマー、ナイロン66/ポリスチレンコポリマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリアリ―レート、ポリブチレンナフタレート、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレートコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、メタクリロニトリル/スチレンコポリマー、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、エチルポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/アクリル酸メチルコポリマー、酢酸酪酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン性コポリマー、芳香族ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリオキシメチレン、またはそれらの組合せから構成される。本発明のより好ましい態様において、フィルムは、異なる粘度のポリアミドコポリマーが一緒にブレンドされて、フィルムの望まれる加工性を達成するポリアミドのブレンドを含めて、ポリアミド樹脂のブレンドである。
フィルムが100質量%未満の熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂は、従来の熱可塑性添加剤、例えば、可塑剤および酸化防止剤とブレンドされる。
【0024】
− DVAフィルム
代わりに、フィルムが100質量%未満の熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂は、従来の熱可塑性添加剤と一緒にまたはそれなしで、熱可塑性エラストマー材料中で連続相マトリックスであってもよい。このような熱可塑性エラストマー材料中で、エラストマーは熱可塑性連続相中に分散相として存在する。エラストマーの分散粒子サイズおよび樹脂相の構造は、加工性、フィルム形成性、および製品性能に関して、材料の望まれる特性を得るように選択される。エラストマーが、エラストマーと熱可塑性樹脂との溶融混合中に加硫される場合(典型的にはゴム成形で起こる静的硬化と対照的に)、材料は、動的加硫アロイ(DVA)と称されてもよい。本発明のいずれかの態様での使用に適したDVAは、共に譲渡された(co−assigned)国際公開第第2007/050236号に開示されており、これは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0025】
DVA中の大部分のエラストマー粒子についての平均エラストマー粒子サイズは、本発明のいずれの実施形態においても、1,000ナノメートル(1.0ミクロン)未満の直径によって規定されるか、または100〜1,000ナノメートル(0.1ミクロン〜1.0ミクロン)、もしくは125〜500ナノメートル、もしくは発明のいずれの実施形態においても125〜400ナノメートルの範囲である。
【0026】
DVAのエラストマー化合物は、熱硬化性エラストマー材料各種から選択されてもよい。製造される最終物品の不透過性が望ましい使用の場合、少なくとも1種の低透過性エラストマーの使用が望ましい。
有用なものは、少なくとも以下のモノマー:C4−C7イソオレフィンモノマーおよび重合性モノマーを有する、モノマーの混合物に由来するエラストマーである。このような混合物では、イソオレフィンは、いずれの実施形態においても合計モノマーの70〜99.5質量%、またはいずれの実施形態において85〜99.5質量%の範囲で存在する。重合性モノマーは、いずれの実施形態において30〜約0.5質量%、またはいずれの実施形態においても15〜0.5質量%、またはいずれの実施形態において、8〜0.5質量%の範囲の量で存在する。エラストマーは、同じ質量パーセンテージを有するモノマー由来単位量を含有する。
【0027】
イソオレフィンは、C4−C7化合物であり、その非限定例は、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテンなどの化合物である。重合性モノマーは、C4−C14マルチオレフィン、例えば、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、およびピペリレンであってもよい。他の重合性モノマー、例えば、スチレン、アルキルスチレン、例えば、p−メチルスチレン、およびジクロロスチレンも、有用なエラストマーの調製に適する。
【0028】
本発明の実施に有用なエラストマーには、シソブチレン系コポリマーが含まれる。イソブチレン系エラストマーまたはポリマーは、イソブチレン由来の少なくとも70モル%の繰り返し単位および少なくとも1種の他の重合性単位を含むエラストマーまたはポリマーを指す。イソブチレン系コポリマーは、ハロゲン化されていても、されていなくてもよい。エラストマーは、ブチルタイプゴムまたは分岐ブチルタイプゴム、特にこれらのエラストマーのハロゲン化バージョンであってもよい。有用なエラストマーは、不飽和ブチルゴム、例えば、オレフィンまたはイソオレフィンとマルチオレフィンとのコポリマーである。本発明における使用のためのフィルムに形成されるDVAに有用な不飽和エラストマーの非限定例は、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、天然ゴム、星形分岐ブチルゴム、およびそれらの混合物である。ブチルゴムは、イソブチレンを0.5〜8質量%のイソプレンと反応させるか、またはイソブチレンを0.5質量%〜5.0質量%のイソプレンと反応させることによって得られ(ポリマーの残りの質量%はイソブチレンに由来する)、ブチルゴムは、同じ質量パーセンテージを有するモノマー由来単位量を含有する。
【0029】
DVAで使用されるエラストマー組成物はまた、C4−C7イソオレフィンとアルキルスチレンコモノマーとを含む少なくとも1種のランダムコポリマーを含んでもよい。イソオレフィンは、上に挙げられたC4−C7イソオレフィンモノマーのいずれかから選択されてもよく、好ましくはイソモノオレフィンであり、いずれの実施形態においても、イソブチレンであってもよい。アルキルスチレンは、少なくとも80質量%、さらに代わりに少なくとも90質量%のパラ−異性体を含有する、パラ−メチルスチレンであってもよい。ランダムコポリマーは、官能化インターポリマーを含んでもよい。官能化インターポリマーは、スチレンモノマー単位中に存在する少なくとも1種以上のアルキル置換基を有し;置換基は、ベンジルハロゲンまたはある他の官能基であってもよい。いずれの実施形態においても、ポリマーは、C4−C7α−オレフィンとアルキルスチレンコモノマーとのランダムエラストマーコポリマーであってもよい。
【0030】
好ましいエラストマーには、イソブチレンとパラ−アルキルスチレンとのコポリマーが含まれ、これは、ハロゲン化されていても、されていなくてもよい。好ましくは、イソブチレンとパラ−アルキルスチレンとのコポリマーは、ハロゲン化されている。このようなエラストマーは、欧州特許出願第0344021号に記載されている。コポリマーは、実質的に均一な組成分布を有する。パラ−アルキルスチレン部分のための好ましいアルキル基には、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、第一級ハロアルキル、1〜5個の炭素原子を有する第二級アルキル、およびそれらの混合物が含まれる。好ましいコポリマーは、イソブチレンとパラ−メチルスチレンとを含む。イソブチレンとパラ−メチルスチレンとの臭素化コポリマーには、5〜12質量%のパラ−メチルスチレン、0.3〜1.8モル%の臭素化パラ−メチルスチレン、および125℃で30〜65(1+4)のムーニー粘度(ASTM D1646−99により測定して)を有するものが含まれる。
DVAにおいて、熱可塑性樹脂は、アロイブレンドに基づいて約20〜95質量%、または35〜90質量%の範囲の量で存在する。DVA中のエラストマーの量は、アロイブレンドに基づいて約5〜80質量%、または10〜65質量%の範囲の量である。本発明において、熱可塑性樹脂は、エラストマーの量に対して、40〜80phrの範囲の量でアロイ中に存在する。
【0031】
他の材料が、DVA中にブレンドされて、DVAの調製で助けても、またはDVAに所望の物理的特性を与えてもよい。このような追加の材料には、限定されないが、硬化剤、安定剤、相溶化剤、反応性可塑剤、非反応性可塑剤、延長剤、およびポリアミドオリゴマーまたは低分子量ポリアミド、ならびに米国特許第8,021,730B2号に記載されたとおりの他の潤滑剤が含まれる。
【0032】
支持層14
バリア層アセンブリは、上で検討された熱可塑性樹脂含有材料のいずれかのバリアフィルム層12および少なくとも1つの支持層14から形成される。バリア層アセンブリの意図された使用が、屈曲を受ける物品であるか、または弾性特性を有ししなければならない場合、支持層14は、好ましくはエラストマー組成物から形成される。バリア層アセンブリが、バリアフィルム層12に隣接して、またはその反対面のいずれかに、複数の支持層14を有する場合、支持層14は、同じかまたは異なる組成物/化合物配合物を有してもよい。
【0033】
本発明のいずれかの実施形態によれば、支持層14は、エラストマー組成物であり、以後、エラストマー層と称されてもよい。バリアアセンブリ中の少なくとも1ツノエラストマー層の主要なエラストマーポリマーは、その不透過性について選択されても、例えば、上で検討されたC4−C7イソオレフィン系ポリマーもしくはイソブチレン系ポリマーのいずれか、または他の特性、例えば、耐久性、撓み性、耐熱性、加工性、接着/粘着性、またはダンピング性について選択されてもよい。バリアアセンブリのためのエラストマー組成物を調製するためのこのような他の適当なポリマーには、高ジエンポリマーおよびそれらの水和物が含まれる。
【0034】
高ジエン含有量のエラストマーは、高ジエンモノマーゴムとも称される。それは、典型的には少なくとも50モル%、典型的には少なくとも約60モル%〜約100モル%;より好ましくは少なくとも約70モル%〜約100モル%;より好ましくは少なくとも約80モル%〜約100モル%のC4−C12ジエンモノマーを含むゴムである。有用な高ジエンモノマーゴムには、オレフィンもしくはイソオレフィンおよびマルチオレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、またはマルチオレフィンのホモポリマーが含まれる。バリアアセンブリのエラストマー層を形成するための主要なエラストマーとしての、またはゴムブレンドにおけるこのようなポリマー/ゴムの例には、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム(高シスBRおよび低シスBRを含む)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水添SBR、天然ゴム、エポキシル化天然ゴム、クロロプレンゴム、アルリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水添NBR、エチレンプロピレンゴム(EEPDとEPMの両方を含む)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、ハロゲン含有ゴム、例えば、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン酸化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)、シリコーンゴム(例えば、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム)、硫黄含有ゴム(例えば、ポリスルフィドゴム)、フルオロゴム(例えば、フッ化ビニリデンゴム、フッ素含有ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、フッ素含有シリコーンゴム、フッ素含有ホスファゲンゴム)、およびそれらの混合物が含まれる。
エラストマーは、好ましくは30℃未満の低いガラス転移温度、Tgを示す官能化ゴムを含んでもよい。低いTgは、動作時のゴムのモジュラスの減少(軟度の向上)、または約20℃未満の、このようなゴムを含有する製品、例えば、インナーライナーの使用温度に寄与する。適当な官能基には、無水マレイン酸、アシルラクタム、またはポリアミド中に存在するアミン官能基と容易に反応し得る他のものが含まれる。
【0035】
本発明の実施形態において、バリア層アセンブリのエラストマー層は、ブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水添スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、水添ブタジエンゴム、星形分岐ブチルゴム、アクリルニトリルブタジンゴム、水添アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、マレイン酸−無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンゴム、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、無水マレイン酸グラフトエチルアクリレートコポリマー、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−アクリルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー、臭素化イソブチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン酸化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸グラフト塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ハロゲン化シリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ化ビニリデンゴム、ハロゲン化ビニルエーテルゴム、またはそれらの組合せを含む。
【0036】
接着層
本発明のある態様において、バリア層アセンブリは、接着層を含んでもよい。接着層の位置には、a)層の接着を助けるためのバリアフィルム層と支持層との間、b)バリア層アセンブリを含むインナーライナーを未硬化またはグリーンタイヤの内面上への粘着を助けるために未加硫ジエン系ゴムなどに粘着を与えるための、バリアフィルム層から支持層の反対面上、およびc)支持層の両面上、すなわち、前に記載した位置の両方ともにおける、が含まれる。選択される接着組成物は、接着層の位置および接着層を介して積層が意図された材料に依存する。
【0037】
接着層は、熱可塑性樹脂またはエラストマーのベースポリマーを有してもよく、ベースポリマーが十分な粘着を与えない場合は粘着付与剤を含有してもよい。接着組成物のための適当なポリマーには、様々なスチレン−ブタジエン系ブロックコポリマー(SBS)、様々なスチレン−イソプレンブロック(SIS)コポリマー、およびそれらの混合物および組合せを含めて、それらの部分水添物などのいずれかが含まれる。ある実施形態において、接着組成物は、オキシラン酸素官能基を有する、エポキシ変性、すなわち、エポキシル化SBS(ESBS)を含んでもよい。このエポキシ変性は、例えば、過酸、ヒドロペルオキシドなどを使用してスチレン−ブタジエン系ブロックコポリマー(SBS)をエポキシル化することによって行われてもよい。過酸としては、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられてもよい。さらに、ヒドロペルオキシドとしては、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンペルオキシドなどが挙げられてもよい。このようにして得られたESBSのオキシラン酸素含有量が低過ぎる場合、下層と熱可塑性エラストマー層と結合性は、低下する傾向があり、したがって、好ましくなく、一方で逆に、それが接着外層で高過ぎる場合、タイヤゴムとの結合性が低下する傾向があり、これは好ましくない。
【0038】
バリア層アセンブリの熱可塑性樹脂含有バリアフィルム層とエラストマー層との間で使用される場合、接着組成物は、熱可塑性樹脂含有バリアフィルム層と結合するために有効なオキシラン酸素含有量を有するESBSを含んでもよい。接着組成物は、合計で100質量部の熱可塑性エラストマーを含んでもよく、ここで、熱可塑性エラストマーは少なくとも50質量部、好ましくは60〜100質量部のESBSを含有し、その結果、オキシラン酸素含有量は、層または下層の質量で、1〜5質量%または1から3質量%、好ましくは1.2〜2.8質量%になる。このタイプの例示的接着剤は、国際公開第2008/004998号に開示されている。
【0039】
バリア層アセンブリを別のエラストマー層に結合するためにエラストマー層の反対面で使用される場合、接着組成物は、例えば、タイヤカーカスの内面上へのインナーライナーとしてのバリア層アセンブリの接着において、それが接触状態で置かれるジエンゴムとの共硬化のために有効な量で硬化剤を含んでもよい。
代わりに、接着組成物は、RFLとして当技術分野で知られた、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂およびゴムラテックス組成物を含んでもよい。RFL組成物は、単独で、または他の接着剤、粘着付与剤、アジュバントなどと組み合わせて使用されてもよい。
【0040】
別の有用な接着組成物は、水性組成物である。ある実施形態において、接着組成物は、ポリエチレンイミンポリマー、好ましくは化学的に変性または官能化されたポリエチレンイミンを含んでもよい。例には、Mica H760およびH760A(Mica Corporation,Shelton、Ct.から入手可能)、Epomin P1050(Nippon−Shokubaiから入手可能)などが含まれる。ポリエチレンイミンポリマーは、好ましくは5〜50質量%の第一級アミン官能基、5〜75質量%の第二級アミン官能基、および5〜50質量%の第三級アミン官能基を含む。本明細書において、ポリエチレンイミンポリマーは、アミノ官能性ポリマーであるとみなされる。やはり適当な水性接着剤には、低分子量マレイン酸化ブタジエン(Cray Valley HSC、米国からRicobond 7002および7004として商業的に入手可能)、低分子量スチレンブタジエンのラテックス(Pliocord SB 2108として商業的に入手可能)、およびビニルピリジンのラテックス(OmnovaからPliocord VP 106Sとして商業的に入手可能)が含まれる。これらの材料の非ラテックス形態も、接着組成物で有用であり得る。
【0041】
接着組成物は、3000超の数平均分子量を有するカチオン的に安定化可能なアミノ官能性ポリマーを含んでもよく、これは、pHが8以下であるときだけ溶液または安定なエマルションとして水の存在下で存在し、かつ乾燥後直ぐに、アクリル、メタクリル、およびエナミンからなる群から選択されるエチレン性不飽和部分を含む。アミノ官能性ポリマーは、ノニオン性ポリマーおよびカチオン性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のさらなるポリマーを含んでもよい。ある実施形態において、接着組成物は、アクリル、メタクリ、およびエナミンからなる群から選択されるエチレン性不飽和部分を含む水性組成物を含んでもよく、ここで、この接着コーティング組成物は、70〜99質量%のアミノ官能性ポリマーおよび1〜30質量%の不飽和エンハンサー(enhancer)要素を含む。
【0042】
アミノ官能性ポリマーを含む接着組成物は、反応性アミン水素を含むアミノ官能性ポリマーと、ハロ官能性モノマー、ハロ官能性オリゴマー、カルボニル官能性モノマー、カルボニル官能性オリゴマー、エポキシ官能性モノマー、エポキシ官能性オリゴマー、ポリ官能性アクリルモノマー、ポリ官能性アクリルオリゴマー、ポリ官能性メタクリルモノマー、およびポリ官能性メタクリルオリゴマーからなる群から選択される官能化剤または要素との反応の縮合生成物であってもよく、前記官能化剤は、アクリル、メタクリル、およびエナミンからなる群から選択させるエチレン性不飽和部分を含むかまたは乾燥後直ぐに形成する。官能化剤には、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート、およびアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)が含まれる。
接着組成物は、アクリル、メタクリル、およびエナミンからなる群から選択されるエチレン性不飽和部分、好ましくは2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、またはそれらの組合せとの縮合反応によって変性された、化学変性ポリエチレンイミンポリマーを含んでも、またはそれであってもよい。
【0043】
− 添加剤
バリア層アセンブリのエラストマー層の組成物、またはバリア層アセンブリの層間もしくは別の材料への接着のためのバリア層アセンブリのエラストマー層の外面でのための接着組成物のいずれかの調製において、組成物は、従来のエラストマー系組成物で典型的に見出される成分を含んでもよい。このような追加的な成分には、充填剤、硬化剤、加工助剤、および酸化防止剤が含まれる。
【0044】
エラストマー組成物および接着組成物における有用な充填剤には、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカおよびシリケート、タルク、酸化チタン、デンプンおよび他の有機充填剤、例えば、木粉、ならびにカーボンブラックが含まれる。適当な充填材料には、カーボンブラック、例えば、チャネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、変性カーボンブラック、例えば、シリカ処理またはシリカコーテッドカーボンブラック、などが含まれる。強化グレードカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの特に有用なグレードは、ミディアムカラーファーネスブラックとも特定される、Mitsubishi Carbon BlackグレードMA600である。エラストマー層におけるカーボンブラックの使用は、ゴム100部当たり20〜100部(phr);または25〜80phr、または40〜80phrの範囲である。接着層のいずれにおけるカーボンブラックの使用は、使用される接着剤ベースのタイプに基づき−エマルションまたはラテックス接着剤は、まったく有しなくても、または1〜50質量%、もしくは0.5〜25phrの範囲の比較的少ない量のカーボンブラックを有してもよい。接着剤ベースが、比較的高い分子量のポリマー、例えば、SBSである場合、カーボンブラック含有量は、エラストマー層で使用されるものと同等であってもよい。
【0045】
エラストマー層および接着剤におけるポリマーの硬化のために(必要であれば)、硬化剤、硬化調整剤、および可能な促進剤の組合せが使用されてもよい。硬化剤(単数または複数)は、少なくとも1種の促進剤の使用の有無にかかわらず、しばしば当技術分野でエラストマー(単数または複数)のための硬化「系」と称される。典型的には2種以上の硬化剤が有利な効果のために用いられるので、硬化系が使用される。ゴムの促進加硫のための機構は、硬化剤、促進剤、活性化剤およびポリマーの間の複雑な相互作用を伴う。理想的には、利用可能な硬化剤のすべては、個別のポリマー鎖を互いに連結させ、ポリマーマトリックスの全体強度を増強する効果的な架橋の形成において消費される。
【0046】
本発明で機能し得る一般的な硬化剤には、金属酸化物および硫黄ドナーが含まれる。公知の有用な金属酸化物には、ZnO、CaO、MgO、Al
2O
3、CrO
3、FeO、Fe
2O
3、およびNiOが含まれる。硫黄ドナーには、粉末硫黄、沈降硫黄、高分散硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、およびそれらの混合物が含まれる。金属酸化物は、対応する金属ステアリン酸塩錯体(例えば、Zn、Ca、Mg、およびAlのステアリン酸塩)、またはステアリン酸、および硫黄化合物またはアルキルペルオキシド化合物のいずれかとともに使用することができる。[Formulation Design and Curing Characteristics of NBR Mixes for Seal, RUBBER WORLD 25-30(19993)も参照]。硬化促進剤には、アミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメート、キサンテートなどが含まれる。公知の一般的な特定の促進剤には、限定されないが、以下、すなわち、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4,4’−ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、2,2’−ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオサルフェート二ナトリウム塩二水和物、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBSまたはMOR)、90%MORおよび10%MBTS(MOR90)の組成物、N−ターシャリブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、およびN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)、およびN,N’−ジエチル尿素が含まれる。
【0047】
少なくとも1種の硬化剤が、典型的には約0.1〜約15phr;代わりに、約0.5〜約10phrで存在する。硫黄加硫剤は、約0.5phr〜約4phrの量で使用されてもよい。望まれるかまたは必要ならば、加硫促進剤の1種以上が、約0.1phr〜約5phrの量で添加されてもよい。特定の硬化剤、硬化調整剤のための有用なレベル、および有用なレベルには、約0.05phr〜約5phrでの酸化亜鉛および/またはステアリン酸亜鉛、約0.1phr〜約5phrでのステアリン酸、約0.5phr〜約4phrでの酸化マグネシウム、約10〜20phrでのリゼルグ(lyserge)、約0.5phr〜約10phrでのp−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、またはポリ−p−ジニトロソベンゼン、および約0.05phr〜約10phrでのメチレンジアニリンが含まれる。
【0048】
例示的な酸化防止剤には、アルキル化フェノール、ヒンダードフェノール、およびフェノール誘導体、例えば、t−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ポリブチル化ビスフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アルキル化ヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−パラクレゾール、2,5−ジ−tert−アリールヒドロキノン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、テトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−(tert)−ブチル−4−ヒドロシンナメート)メタン(IRGANOX 1010)などが含まれる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例に、BASF(New Jersey、米国)からのIRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 3052、およびIRGANOX 1076を含めて、商用称号のIRGANOXシリーズ下で市販されている。一実施形態において、接着組成物は、活性または正味基準(受け入れたままの市販の酸化防止剤パッケージ中の不活性物を除外し、SBSなどのブレンド成分中の任意の酸化防止剤を含む)で、0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜2質量%の全酸化防止剤を含む。
【0049】
上で記載されたとおり、プロセス油または可塑剤油は、組成物中に存在してもよい。このような油は、主として層の調製の間の組成物の処理、例えば、混合、カレンダー加工などを改善するために使用される。一般に、プロセス油は、パラフィン油、芳香族油、ナフテン油、およびポリブテン油から選択されてもよい。ゴムプロセス油も、それらがパラフィン、ナフテンまたは芳香族炭素質プロセス油のクラスに入るかどうかに依存して、ASTM指定を有する。用いられるプロセス油のタイプは、エラストマー成分のタイプとともに習慣的に使用されるものであり、熟練のゴム化学者は、油のどのタイプが特定の用途で特定のゴムと用いられるべきかを理解する。熱可塑性エラストマー組成物について、油は、全組成物の0〜約20質量%のレベルで存在してもよく;好ましくは、油は、組成物の不透過性を最大にするために含まれない。
【0050】
バリア層アセンブリの形成
バリア層アセンブリのフィルム層12は、最初に、従来のまたは公知の熱可塑性樹脂フィルム形成方法を使用して、熱可塑性樹脂含有フィルムをキャストまたは押出すことによって形成される。DVAフィルムの形成は、2014年5月30日に出願された米国仮出願第60/005,226号に開示されている。フィルム層12は、0.01mm〜1.00mm、または0.01〜0.75mm、または0.10〜0.75mmの範囲の厚さを有する。
【0051】
支持層14の形成は、支持層14に使用される材料のタイプに基づいて従来の方法を使用して行われる。支持層14がエラストマー層である場合、エラストマー組成物を形成する成分が、一般的にエラストマーが混合中に硬化されない2段階混合プロセスにおいて、Banbury(商標)混合器中で一緒に混合され、次いで、好ましい厚さのシートに押出される。押出されたエラストマーは、約2mm以下、または約1.0mm以下、または0.2〜約1.5mm、もしくは0.2mm〜約0.8mmの範囲の平均厚さを有する。
使用される場合、接着層16の厚さは、600ミクロンまでであるか、または約5〜200ミクロン、もしくは約5〜100ミクロン、もしくは約5〜80ミクロン、もしくは約5〜70ミクロン、もしくは10〜50ミクロンである。
熱可塑性樹脂ベースフィルム層12のミリメートル厚さ(上で検討されたとおりの)のせいで、フィルム層12の2方向波形表面を組み込み、および維持する容易さのために、フィルム層12における波形の作成(以下で検討される)前に、バリア層アセンブリの個別の層は、好ましくは従来のアセンブリ技術によって合わせられる。波形前アセンブリのための従来のアセンブリ技術には、熱硬化性樹脂ベース層と接着剤との共押出し、または他のコーティング手段による接着が含まれ;米国特許出願公開第2012/0232210号を参照されたい。少なくとも、フィルム層12でのいずれの波形の作成前にも、フィルム層12および支持層14は、接着層16を含めることの有無にかかわらず、プリアセンブルされる。
いずれの実施形態においても、バリア層アセンブリは、耐パンク性を与えるためにシーラント材料のゲル状層をさらに含んでもよい。このような材料は、それが成形バリア層の伸長性作用をあまり妨害しないので比較的硬い硬化ゴムにとって好ましい。
【0052】
バリア層アセンブリの構成
本発明のバリア層アセンブリは、中心平面の周りに配置された3次元構造(
図3および
図4参照)をもたらす、バリア層アセンブリの平面に垂直な方向およびその平面内の両方において滑らかに変化する仕方で、少なくとも2つの方向に波形付与された、すなわち、2方向波形のフィルム層を有する。2方向波形付与は、アセンブリが、このような波形のないフィルム層についての場合であるよりも、アセンブリのフィルム層におけるより少ない歪みとともにアセンブリの大きな曲げ変形を受け入れることを可能にする。このように、歪みは、ほとんどがフィルムの弾性限界未満に、フィルムの破壊歪未満に、および深溝の形成なしに保つことができる。バリア層におけるヒステリシス損も低下し、より低い転がり抵抗および全体的により良い耐久性をもたらす。
【0053】
バリア層アセンブリにおけるフィルム層の2方向波形は、非有溝のくぼみを形成し、ここで、非有溝のくぼみは、滑らかに曲がる山および谷をもつ傾斜した側面を有するくぼみである。これらのくぼみは、平坦な熱可塑性樹脂フィルムの圧縮変形により形成された有溝と反対である。波形は、中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の曲線形状と、第1の方向に非平行な第2の方向に配向された第2の曲線形状との組合せとして表されてもよい。各方向における曲線形状は、形状の周期および/または振幅に関して同じであっても、変わってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、バリア層アセンブリは、中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の本質的に正弦波の形状と第1の方向に対して横方向の中心平面に沿って第2の方向に配向された第2の本質的に正弦波の形状とを組み合わせて含む、中心平面の周りに配置された3次元構造を有する、少なくとも1つの層を含む。正弦波形状は、独立変数の正弦として変わる大きさを有する正弦曲線であって、2次元で中心線の周りにおよび3次元構造で中心平面の周りに山および谷の滑らか反復振動を表す数学的曲線である正弦曲線に概して近似する形状を指す。正弦波形状の振幅は、中心平面と曲線の間の距離であり、これは、本発明において、溝の深さの半分に位置する形状の上面に平行な平面であり、周期は、隣接する山(または隣接する谷)の頂上間の直線距離である。バリア層アセンブリの3次元構造は、式:
z=a(sin(bx+sin(cy)))
(式中、zは、バリア層アセンブリの中心平面に垂直な方向の距離であり、xは、中心平面の長さに沿って第1の方向における距離であり、yは、第1の方向に直交し、かつ中心平面の幅に沿って中心平面に直交する第2の方向における距離である)
によって表されてもよいし、またはそれに近似してもよい。定数a、b、およびcは、z方向における大きさならびにそれぞれxおよびy方向における周期を拡大縮小して、バリア層アセンブリの変形が、バリアフィルムの大きな曲げを受け入れることを可能にし、それらの値は、波形の所望の深さおよびサイズならびにバリア層アセンブリの厚さに依存する。
【0055】
層が上で検討された厚さを有するタイヤにおける使用のためのバリア層アセンブリを形成する場合、各定数a、b、およびcは、ゼロより大きいが10mm以下の、代わりに0.5mm〜2.5mmの範囲の値を有する。3つの定数の値は、変わっても、または等しくてもよく;
図3について、bおよびcの値は等しく、
図4について、bの値は、cの値の2倍であり、z方向に相対的により深いくぼみをもたらす。代わりに、値は、以下の比:0.1a<b<10aおよび0.1b<c<10bと表現されてもよい。
本発明のいずれの実施形態においても、バリア層アセンブリ10の3次元形状の波形の深さは、最小にされて、波形に組み込まれているかまたは組み込まれる支持層14の質量を減少させてもよい一方で、依然としてバリア層アセンブリの厚さに関してそれを上で検討されたとおりの伸張性インナーライナーとして変形させるのに十分大きい。
【0056】
本発明の実施形態において、バリア層アセンブリ10の3次元形状の波形の深さは、最小にして、波形内の支持層材料14(すなわち、インラーライナーと波形の谷とちょうど接触する平面との間の材料)の質量を減少させてもよい一方で、依然としてバリア層アセンブリ10の厚さに関連してそれを前に記載されたとおりに伸張性構造として変形させるのに十分大きい。バリア層アセンブリの変形に続いて、引張りもしくは圧縮または交互の引張および圧縮のサイクルのいずれでも、深溝は、バリア層アセンブリの表面で形成されない。
【0057】
いずれの実施形態においても、バリア層アセンブリは、ASTM D790に従って決定された0.1の伸びまたはその等価物(伸びは、長さの増分を元の長さで除したものであり、したがって無次元単位である)でより低い荷重を有したが、これは、3次元構造を含まない比較のバリア層アセンブリ、すなわち、同じ割合で同じ成分を含みおよび/または本質的に同じバリア層特性を有するが、本明細書での本発明の実施形態による3次元構造を含まないバリア層アセンブリの0.1の伸びでの荷重よりも小さい。
【0058】
本発明のいずれの実施形態においても、バリア層アセンブリの波形は、バリア層アセンブリがそれに使用され、または組み込まれる物品のそれぞれの領域で予期される典型的および局所的変形を受け入れるように設計されてもよく、これは、それぞれの主方向で波形の周期、様々な方向の配向、正弦波形状の振幅または相対的な大きさなどを変化させることを含んでもよい。例えば、バリア層アセンブリがタイヤに組み込まれる場合、その位置および形状(すなわち、波形の設計)は、タイヤまたは他の最終物品中のバリア層アセンブリの位置に関して変えられて、最小必要量の伸長作用だけを与え、それにより、質量を最小にし、バリア層性能を最大にしてもよい。例えば、タイヤトレッド領域は、タイヤのサイドウォールおよびショルダ領域よりも小さい変形を受け、高い変形領域に対応するアセンブリインナーライナーの部分だけに本発明の2方向波形が与えられてもよいバリア層アセンブリのインナーライナーが提供されてもよい。逆に言えば、インナーライナーアセンブリの全幅の一部の領域に2方向波形が与えられなくてもよい。
【0059】
3次元構造は、その構造をアセンブリ層中に刻印するか、またはそうでなければ形成することによってバリア層に固定される。3次元構造をバリアフィルムに付与するために使用される型または他の形成装置の形成は、その両方が当技術分野で最少の技術を有するものにより容易に理解される製造および機械加工の限界内に曲線部を近似する、第1の滑らかに変化する形状および第2の滑らかに変化する形状をアセンブリにもたらす許容差および他の要因に限定されることが成形技術分野の当業者には理解されるであろう。本発明の実施形態の第1の形状および第2の形状は、第1の「形状」および第2の「形状」に近似すると理解され、これは、中心平面に沿って第1の方向に配向された曲線形状と第1の方向に対して横方向の中心平面に沿って第2の方向に配向された第2の曲線形状との組合せの正確な表示を暗示するであろう。
【0060】
例として、かつ限定ではなく、例示的なバリア層アセンブリは、中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の正弦波形状と第1の方向に対して横方向の中心平面に沿って第2の方向に配向された第2の正弦波形状とを組み合わせて含む形状が配置された少なくとも1つの板を使用して型で調製された。これらの形状は、板を横切って一定深さで繰り返し正弦波治具通路に沿って移動させたコニカルカッターを使用して平面型の表面に機械加工された。カッターの回転の軸は、表面に垂直であった。
図5は、名目上2mmの溝深さを有して調製された溝付型板を示す。波形のこの幾何形状について、表面積は、平坦な平面フィルムに比べておよそ2の平方根(1.4)倍分だけより大きい。形状化バリア層アセンブリの形成の際に、バリアフィルムおよび少なくとも1つの支持層を含む積層物は、バリア層アセンブリの上および中に所望の3次元構造を付与するために十分な温度および圧力、ならびに時間で例示された型板に対して成形を受ける。
【0061】
図6、
図7、および
図8は、
図5の板を使用して作製したバリア層アセンブリを示し、ここで、バリア層アセンブリは、様々な方向に2回の荷重サイクルによって変形させて、タイヤインナーライナーなどの適用用途での変形をシミュレートした。
図6および
図7のバリア層アセンブリは、示されたアセンブリに対して水平方向で2回の荷重サイクルで伸張/変形させ;したがって、
図6の積層物について、荷重/変形は、谷/山方向に対して平行であり、
図7について、荷重/変形は、谷/山方向に対して90度であった。
図8のバリア層アセンブリは、積層物の谷/山方向に対して45度に沿って変形させた。
【0062】
バリア層アセンブリの構造は、代替の構造およびアセンブリ調製を有すると想定されてもよい。
図9は、アセンブリ50の実施形態を示し、ここで、2方向波形バリア層52は、2つの支持層54、56の間にサンドイッチ状に挟まれており、各支持層は平坦な外側表面58、60を有し;したがって、それは、2方向に波形付与されている、アセンブリの内側表面である。このような実施形態について、支持層は、アセンブリ50の変形を許容するために十分な伸長性の材料のものであるべきである。このような実施形態において、異なる支持層54、56は、同じまたは異なる材料を使用して調製されてもよい。
図10は、代替の製造方法を例示する。バリア層アセンブリにおける2方向波形表面は、未形状化バリア層70アセンブリを少なくとも2つのローラ72、74の間に向かわせることによって形成されてもよく、ここで、少なくとも1つのローラ72は、バリア層アセンブリの上に2方向波形を付与するために十分なテクスチャード表面76を有する。第2のローラ74の表面78は、滑らかと例示されているが、表面76と同様のまたは異なってテクスチャ化された表面を有してもよい。ローラ72、74を通過する際に、バリア層アセンブリ70は、所望の2方向波形3次元構造をバリア層アセンブリ70の少なくとも一部に付与するために十分な温度、圧力、および時間の下に置かれる。バリア層アセンブリ70は、ローラ72、74間に向かわせる前に加熱またはそうでなければ調整されてもよい。ローラ72、74はまた、加熱および冷却されて、2方向波形バリア層を付与および形成してもよい。所望の構成の形成に続いて、バリア層アセンブリの温度は、アセンブリの冷却のために低下させられる。
【0063】
記載されたとおりに、バリア層アセンブリのバリアフィルム層は、その不透過性のために選択され、DVAがバリアフィルム層材料として使用に選択される場合、バリア層アセンブリは、空気式タイヤ用のインナーライナーとしての使用に適する。アセンブリは、従来の天然ゴムおよび/またはハロブチルベースエラストマー層の代替として使用される。空気式タイヤの一例の横断面が
図11に示される(タイヤはタイヤ中心線の周りに対称であるので、タイヤ横断面の半分だけが例示される)。タイヤは、断面高さSHおよび最大断面幅SWを有する。タイヤは、トレッド部分111、サイドウォール部分112、ビード部分113、および本明細書で開示される実施形態による空気バリアアセンブリを含むインナーライナー117を含む。本発明の実施形態において、
図11の空気式タイヤは、左右のビード部分113間に延在するカーカスプライ114を有する。カーカスプライ114は、タイヤの半径方向に延在する強化コードを含むゴム層を有する。カーカスプライ114は、反対端部を有し、これらは、それぞれのビード部分113に埋め込まれたビードコア115の周りにタイヤ軸方向に内側からタイヤ軸方向に外側向けて上方に折り返されて、その中のビード充填剤116をサンドイッチ状に挟む。複数のベルトプライ118は、タイヤのトレッド部分111においてカーカスプライ114の外側に半径方向に設けられる。トレットゴム層119は、ベルトプライ118の外側に半径方向に置かれる。サイドゴム層120は、それぞれのサイドウォール部分112においてカーカスプライ114の外側に配置される。クッションゴム層121は、それぞれのビード部分113に設けられる。
【0064】
本発明の空気バリアアセンブリの、開示されかつ許容される実施形態のいずれか1つを含むインナーライナー117は、カーカスプライ114の内側に配置される。例示されたインナーライナー117は、3つの層を有し;当業者は、インナーライナー層の厚さが、タイヤの他の層と比較して拡大縮小すべきでないが、本発明を説明するためにそのように例示されることを理解する。インナーライナー117は、少なくとも1つのインナーゴム層103と、支持層104および2方向波形バリアフィルム層105を有するバリア層アセンブリとを含む。代わりに、タイヤインナーライナー117は、3層バリア層アセンブリであってもよく、ここで、層103はエラストマー支持層であり、層104は接着層であり、105は、2方向波形バリアフィルム層である。
【0065】
インナーライナー成分としてタイヤで用いられる場合、バリア層アセンブリ(波形のもしくは非波形の、複数積層物構造として既に形成されたか、またはその個別の層のいずれか)は、従来の仕方で連続的にアセンブルされた、さらなるタイヤ要素、例えば、トレッドベルトブライおよびトレッドゴムを除いて、カーカスプライ、ビードリング、サイドウォールプライを有する従来のエラストマーインナーライナー層と同様の仕方でタイヤ構築ドラム上に置かれる。タイヤ構築ドラムは、ベルト層およびトレッドゴムの適用のためのトロイダル形状にインフレートされる。インフレーション後、グリーン(未硬化)タイヤは、かなり変形するが、タイヤ要素の接合は、剛性が局所的に高く、したがって、接合はインフレーション時に比較的わずかに変形する。ベルト層およびトレッドゴムの適用に続いて、グリーンタイヤは、型である期間加熱することによって硬化されて、完全硬化タイヤを生成する。
バリア層アセンブリの3次元表面の利点を最大にするために、波形パターンは、グリーンタイヤアセンブリがトロイダル構造にインフレートされる前にバリア層アセンブリインナーライナーで形成される。波形パターンは、バリア層アセンブリを構築ドラムに適用する前に3次元構造を完全に形成することによってか、または最内タイヤ層、すなわち、バリア層アセンブリのバリアフィルム上に3次元表面を形成するように変更された構築ドラムの使用によってのいずれかで、記載のインフレーション前に存在してもよい。3次元構造が、アセンブリを構築ドラム上に適用する前に前形成される(本明細書で開示されるいずれかの適用可能な方法によって)場合、グリーンタイヤのさらなる処理は、アセンブリの3次元波形を保存するために十分であるべきであり;1つの提案方法は、タイヤのためのブラダレス硬化系の使用である。代わりに、波形バリアフィルム層が2つのエラストマー支持層間にサンドイッチ状に挟まれる場合、形成された3次元構造は、パターンの意図しない除去から保護されてもよい。グリーンタイヤと波形ライナーの膨張は、大部分は波形フィルムの膨張性作用によって受け入れられる。グリーンタイヤの典型的な膨張は、45%である。タイヤ硬化の高温は、フィルムを伸張して緩和する際に発生した応力を許すことが仮定される。
【0066】
バリア層アセンブリの波形が構築ドラムによって形成される場合、ライナーの伸張およびそれがその上に適用されたタイヤ成分から後退する傾向は本質的になくてもよい。このような実施形態において、支持層は、十分な圧力でフィルム層の上部、下部、または両側部に適用されて、化合物を波形に流れ込ませ、バリア層に接着させてもよい。
【0067】
或いは、バリア層アセンブリの3次元構造は、グリーンタイヤがトロイダル状に膨張された後で適用されてもよい。これは、タイヤの硬化中にタイヤインナーライナー最内表面の少なくとも一部をテクスチャード表面と接触させて、3次元構造をバリア層アセンブリタイヤインナーライナー中に形成することによって、または本発明の波形バリア層アセンブリがタイヤの硬化後に適用される、インナーライナーを含まないタイヤを形成することによって、行われてもよい。3次元構造がタイヤの硬化中に形成される場合、パターン化タイヤ硬化性ブラダまたは所望の波形表面をその中に有するセグメント化金属型部分の使用によって作成されてもよく、したがって、パターンは、タイヤの未硬化ゴムがブラダまたは型表面にぴったり密着する際にライナーが波形表面中に伸張される。インナーライナーレスタイヤの実施形態が使用される場合、本発明のバリア層アセンブリは、タイヤの硬化後に接着によって適用されてもよく;このような構造において、パンクシーラントまたはダンピング層として使用される材料は、バリア層アセンブリの硬化タイヤへの十分な粘着を与えるように改質されてもよい。
【0068】
バリア層アセンブリを調製する仕方について開示される実施形態のいずれにおいても、バリア層アセンブリは、交互の滑らかな、または非パターン化部分および2方向波形表面部分ととともに形成されてもよい。このようなバリア層アセンブリ構造は、バリア層アセンブリがタイヤインナーライナーとして使用される場合に応用される。バリア層の滑らかな表面部分は、タイヤのより低いサイドウォール部分および中心トレッド部分に対応するように配置することができ、一方でバリア層アセンブリの2方向波形表面部分は、タイヤのトレッド端部およびショルダ部分などのより大きな回転の屈曲(flex)および応力を受けるタイヤ領域に対応するように配置することができる。
図11を参照すると、この領域は、ベルト端部のちょうど軸方向に内側からおおよそ最大のタイヤ断面幅に延在する例示された円内の領域を包含することができるであろう。3次元パターンが変更構築ドラム、パターン化硬化ブラダ、またはパターン化金属型セグメントを介して適用される場合、バリア層アセンブリ上の所望のパターニングの位置は、容易に特定または変更され得る。
【0069】
具体的実施形態
したがって、本発明は、以下の実施形態を与える。
項A:支持層およびそれに結合されたフィルム層を含み、2方向波形表面を有するバリア層アセンブリ。
項B:2方向波形表面が、非有溝のくぼみを含む、項Aのバリア層アセンブリ。
項C:バリアアセンブリの変形中に可逆的に膨張性である、項AまたはBのバリア層アセンブリ。
項D:2方向波形表面が、中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の曲線形状と第1の方向に非平行な中心平面に沿って第2の方向に配向された第2の曲線形状とを組み合わせて含む、中心平面の周りに配置された3次元構造を含み、それぞれの方向における曲線形状は同じかまたは異なる、項Aから項Cのいずれか1つまたはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項E:i)第1の曲線形状の周期および第2の曲線形状の周期が異なるか、またはii)第1の曲線形状の振幅が、第2の曲線形状の振幅と異なるか、またはiii)第1および第2の曲線形状の周期および振幅の両方が異なる、項Dのバリア層アセンブリ。
項F:3次元構造の少なくとも一部が、式:z=a(sin(bx+sin(cy)))(式中、zは、構造と中心平面の間の中心平面の長さに直交する距離であり、xは、中心平面に沿って第1の方向における相対距離であり、yは、第1の方向に直交し、かつ中心平面の幅に沿って中心平面に直交する第2の方向における相対距離である)によって表される、項Dのバリア層アセンブリ。
項G:第1の方向に配向された第1の正弦波形状の周期が、第2の方向に配向された第2の正弦波形状の周期の少なくとも2倍である、項Fのバリア層アセンブリ。
項H:バリア層アセンブリのフィルム層が、熱可塑性樹脂、動的加硫アロイ、またはそれらの混合物を含む、項AからGのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項I:バリア層アセンブリのフィルム層が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリニトリル樹脂、ポリメタクレート樹脂、ポリビニル樹脂、セルロース樹脂、フルオロ樹脂、イミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの組合せを含む、項AからHのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項J:バリア層アセンブリのフィルム層が、熱可塑性連続相に分散された加硫エラストマーを含む動的加硫アロイを含む、項AからIのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項K:2方向波形表面の反対の反対面を有し、かつ反対面が、非波形表面を有する、項AからJのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項L:圧縮、膨張、または剪断で任意の方向に沿って非変形寸法から変形寸法に、次いで深溝を形成することなく逆戻りして可逆的に変形可能である、項AからKのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項M:バリア層アセンブリが、ASTM D790によって、前記バリア層アセンブリの波形付与前のバリア層アセンブリの曲げ降伏強さから低下した曲げ降伏強さを有する、項AからLのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項N:30℃で約25×10
-12cc−cm/cm
2・秒・cmHg未満の酸素透過率を有する、項AからMのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項O:バリア層アセンブリが、規定幅Wを有し、2方向波形表面が、バリア層アセンブリ規定幅Wよりも小さい幅Wcを有するバリア層アセンブリの一部の上に存在する、項AからNのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリ。
項P: 2方向波形表面幅Wcを有するバリア層アセンブリの表面が、滑らかな表面と2方向波形表面とを有する表面の交互部分を有する、項Oのバリア層アセンブリ。
項Q:項AからPのいずれか1項またはいずれかの組合せのバリア層アセンブリを含む、タイヤインナーライナー。
項R:項Qのタイヤインナーライナーを含む、タイヤ。
項S:バリア層基材を、基材に波形を付与し、2方向波形バリア層を得るために十分な温度、圧力、および時間で2つの相補的テクスチャード表面間に通過させる工程を含む、方法。
項T:2つの相補的テクスチャード表面が、対抗するローラを構成する、項Sの方法。
項U:未硬化ゴム成分を準備する工程と、
バリア層を含むインナーライナーを準備する工程と、
未硬化ゴム成分、および未硬化ゴム成分の内側表面上のインナーライナーを、未硬化生成物アセンブリにアセンブルする工程と、
未硬化生成物アセンブリに圧力および温度をかけて、未硬化生成物アセンブリを加硫し、バリア層が2方向波形付与されたインナーライナーを含む生成物を形成する工程と
を含む方法。
項V:バリア層が、インナーライナーと未硬化ゴム成分とのアセンブリの前に波形付与される、項Uの方法。
項W:バリア層が、インナーライナーの少なくとも一部をテクスチャード表面と、未硬化アセンブリの加硫前またはそれと同時にインナーライナー内のバリア層に2方向に波形付与するために十分な温度、圧力、および時間で接触させることによって、インナーライナーと未硬化ゴム成分とのアセンブリ後またはそれと同時にインナーライナーにおいて波形付与される、項Uの方法。
項X:生成物が、タイヤを含む、項UからWのいずれか1項またはいずれかの組合せの方法。
【実施例】
【0070】
バリア層アセンブリは、有限要素モデリング(FEM)によって、およびまた波形表面に対して成形された積層物を使用して評価した。タイヤのインナーライナーおよび隣接するゴム化合物は、全体としてタイヤのカーカスに比較して相対的に順応性があり、その理由は、それらが、タイヤコード強化材を含有せず、したがって、それらが、より硬い強化カーカスおよびタイヤの全体荷重によって大部分決定される歪みを受けるからである。しかしながら、局所レベルでは、尺度でライナーおよびそれを硬い強化材から隔てるゴム化合物の厚さに匹敵して、バリア層アセンブリは、カーカスの全体変形と異なる変形を受けることができ、しかしながら、平均して、それらは、カーカスにおけるものと同じでなければならない。引張り試験は、波形のバターンに対して様々な角度で行われた、一軸引張りを使用して行った。さらに、波形表面の機械加工における制限は、z=asin(bx+sin(c y))により規定された表面に近似した型をもたらし、実験作業の一般的所見を検証し、FEMで拡張したことに留意されたい。FEM作業は、z=asin(bx+sin(c y))により規定された表面をモデルにし、多軸荷重にかけた。
【0071】
バリア層アセンブリは、典型的なタイヤカーカス組成に相当するように配合された2つのエラストマー層間の熱可塑性樹脂層を成形することによって積層物として調製した。100mm平方の型を、外側への流れを防ぐ付属側板とともに使用した。比較の滑らかなバリア層は、2つの滑らかな型表面間で調製した。1つの波形表面を有する例は、上部に波形型板および下部に滑らかな板を使用して作製した。
【0072】
波形は、型の表面に、平面型表面を横切って一定深さで反復正弦波治具通路に沿って移動させたコニカルカッターを使用して機械加工した。カッターの回転の軸は、表面に垂直であった。谷に沿った周期(2つの谷ピーク間の直線距離)は、第1の方向で6mmおよび谷を横切って第2の方向で3mmであった。溝の深さは、名目上2mmであった。波形のこの幾何形状について、形状化フィルムの表面積は、平面フィルムに比較しておよそ2の平方根(1.4)倍分だけより大きい。
典型的なタイヤカーカスを表すために製造したエラストマーゴムは、非反応性マスターバッチのBanbury混合、続いて、マスターバッチ中へ硬化剤を含めた後の最終混合によって製造し;その組成は、表1に示す。
【表1】
【0073】
ゴムを名目上1mm厚シートにロール加工し、これを積み重ねて、バリア層アセンブリを作製し、層間に捕捉される空気を避けるために注意をはらった。型に、Miller−Stephenson Chemical Company Incにより供給されたMS−136W PTFE Water Base Mold Rlease Agentの薄い層を噴霧した。積層物を型中でアセンブルし、185℃で予備加熱したプレスに挿入し、3トンの力下で30分間硬化させ、プレス中でゆっくりと冷却した。
【0074】
引張り試験用の試料を、谷に平行に、谷に垂直に、および谷に45℃に、または滑らかな積層物の場合は、バリアフィルムの機械方向に平行、垂直、および45℃に0.5インチ幅で切断した。各構成において3つの試料を試験し、結果を平均した。
【0075】
引張り試験は、空気式グリップを備えた、BlueHill3ソフトウェアを走らすInstron Model 5565荷重フレームで行った。グリップ間の試料の長さは60mmであった。伸び計により、歪みを測定した。クロスヘッド速度は2インチ/分であり、試料を伸び計で測定して20%伸びに持って行き、同じ速度で0%伸びに戻し、次いで、同じ速度で再び20%伸びに引いて、2つのヒステリシス曲線を得た。試料はすべて、23±2℃および50%±10%相対湿度で少なくとも24時間調整した。試料を、構造の谷に平行な方向で、谷方向に45度で、および谷方向に90度で試験した。データは、表2に示す。
【表2】
【0076】
熱可塑性樹脂バリアフィルムは、Alpha Technologiesにより供給されたナイロン66であり、0.0262mmの厚さ(130mm幅をわたる5つの測定の平均)を有した。すべての場合に、フィルムの機械方向(MD)は波形の谷方向と合わせ;フィルムの機械方向は、フィルムの縦方向にあった。
発明および比較の両方の例の引張り挙動を、
図12〜
図19のヒステリシス曲線/ループを参照して説明する。垂直軸はN単位の荷重であり、水平軸は、割合として表された伸び(すなわち、歪み)であり、すべてのグラフについての縮尺は同じである。タイヤのFEM分析により、アンダーインフレーションおよび過荷重の組合せである100%過荷重試験状態でタイヤについて約±20%のインナーライナーにおける最大歪みが見出されたので、すべての場合の最大伸びは、0.2(すなわち、20%)歪みであった。
【0077】
各ヒステリシス曲線は、2回の連続の荷重および非荷重サイクルについて荷重対伸びを示す。試験を各試料で、ゼロ荷重およびゼロ伸びで出発して、4工程で行った:i)例に0.2の最大伸びまで荷重をかけ、ii)荷重を取り除き、例をゼロ伸びの方に戻して緩和させ、iii)例を直ちに荷重下に置いて、例を0.2の最大伸びに戻し、およびiv)荷重を取り除いた。したがって、各グラフは、2つのループの連続線を示し、各ループは1回の荷重サイクルである。各グラフにおける最上曲線は、前に決して引き延ばされなかった材料についての荷重対伸びプロファイルであり、直ぐ隣接する下にある曲線は、例が、さらなる変形サイクルの下に置かれるときに受ける荷重対伸び曲線の典型である。例、またはその中に層としてこのような例を組み込むタイヤにより吸収されたエネルギーの量は、第2のサイクルの荷重と非荷重との曲線間の面積に等しい。各サイクルの荷重および非荷重曲線により取り囲まれた面積は、各例のヒステリシス量でもある。
【0078】
比較例1は、両面で滑らかな、2層のゴムを、ベースライン挙動を確立する熱可塑性樹脂バリアフィルムなしで含んだ。
図12に示されるように、比較例1は、最初および2番目のサイクルで小さなヒステリシスを実証し、第2のサイクルでのヒステリシスは、最初のサイクルのものの約半分であった。各サイクルの非荷重部分は、事実上区別できず、したがって、
図12において3つの曲線だけの出現をもたらす。
実施例2は、熱可塑性層なしでバリア層としてエラストマーを使用して、一面で波形付与された、2層のゴムを含み、構造の谷と平行に試験した。
図13において、0.2の最大伸びに到達するためのより低い荷重により証明されるとおり、実施例2のバリアアセンブリは、比較例1よりも硬くなく、その理由は、試料のより厚い部分の材料がより薄い部分のものよりも少なく変形するからである。しかしながら、波形の最大深さ(1mm)が、試料の全体厚さの半分より小さいので、この幾何学的効果は小さい。単位面積当たりのゴムの合計量は、すべての試料について同じである。
【0079】
これらの結果は、試料の一面での波形の導入が、荷重方向にかかわらず、剛性の低下以外の弾性応答に対してあまり効果を有さないことを示す。
比較例3は、熱可塑性フィルムとゴムとの滑らかな積層物(すなわち、非2方向波形)であった。試験は、ナイロンフィルムのMDの縦方向と平行に行った。データは、
図14にグラフとして示す。データが示すとおり、非荷重後の曲線の実質的に平坦な部分によって、例は、例は、永久的伸びを受けており、それが接着されたゴムの弾性回復のためにゆがんでいた。ナイロンフィルムは最初の荷重サイクルにより皺つけられたと決定した。2番目の荷重時に、荷重は、ナイロンフィルムがピンと引っ張られるにつれて当初ゆっくりと上昇し、次いで、荷重/歪み曲線は、初期の荷重曲線に近似し、0.2の歪みでおおよそ同じ最大荷重に到達した。2番目の荷重のヒステリシスは、最初の荷重でのもののおよそ半分であり、ナイロンフィルムの非存在下でよりもはるかに大きかった。比較例は、2回の荷重サイクル後に積層物のゆがんだ状態を示した。
図15および
図16におけるグラフデータは、比較例が、フィルムMDに対して、それぞれ、45°および90°方向に荷重をかけられる場合、本質的に同じ挙動を示す。
【0080】
対照的に、実施例4の波形積層物設計は、より低いヒステリシスで2番目の荷重時でのはるかにより大きい線形応答を実証した。
図17は、第1の方向(また、ナイロン層のMDと平行)である、構造の谷と平行に評価した実施例4を示し;
図18は、構造の第1の方向に45°で評価した実施例4を示し、
図19は、第1の方向に90°で(すなわち、第2の方向と平行)評価した実施例4を示す。
これらのデータが示すとおりに、それぞれの非荷重サイクルの最後およびそれぞれ2番目の荷重サイクルの始めでの曲線に対して非常に限定された実質的に水平部分により、波形のまったく有しない比較例3とは違って、フィルムの明らかな皺つきは、あったとしても非常に小さい。これは、フィルムが大きく曲がって、降伏よりもむしろ歪みを受け入れたことの指示であり、これはまた、より低いヒステリシスで反映されている。したがって、本発明は、タイヤの変形を、降伏よりもむしろライナーフィルムの曲げによって大きく受け入れることができるので、耐久性および転がり抵抗の利点を与える。
【0081】
以上の明細書または以下の特許請求の範囲で列挙される数字、例えば、特定の組の特性、測定の単位、条件、物理的状態またはパーセンテージを表す数字のいずれの範囲も、参照により、またはそうでなければ、そのように列挙された任意の範囲内に包含される数字または範囲の任意のサブセットを含めて、このような範囲内に入るいずれの数字によっても本明細書に明示的に文字どおりに組み込まれることが意図される。
【0082】
本明細書に記載されるすべての文書は、本出願および特許請求の範囲と不一致でない程度にいずれの特許出願および/または試験手順を含めて、本明細書に参照により組み込まれる。本発明の原理、好ましい実施形態、および操作の様式を前述の明細書で説明してきた。本明細書における発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および利用の単に例示的なものであることが理解されるべきである。したがって、多くの変更が例示的な実施形態になされてもよいこと、および他の配置が、添付の特許請求の範囲により規定されるとおりの本発明の精神および範囲から逸脱することなく、工夫されてもよいことが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層およびそれに結合されたフィルム層を含み、2方向波形表面を有するバリア層アセンブリであって、
前記2方向波形表面が、中心平面の周りに配置された、前記中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の曲線形状を前記中心平面に沿って前記第1の方向に非平行な第2の方向に配向された第2の曲線形状と組み合わせて含む3次元構造を含み、それぞれの方向における前記曲線形状が同じであるかまたは異なる、バリア層アセンブリ。
【請求項2】
i)前記第1の曲線形状の周期と前記第2の曲線形状の周期とが異なるか、またはii)前記第1の曲線形状の振幅が前記第2の曲線形状の振幅と異なるか、またはiii)前記第1および前記第2の曲線形状の周期および振幅の両方が異なり、
前記3次元構造の少なくとも一部が、式
z=a(sin(bx+sin(cy)))
(式中、
zは、前記構造と前記中心平面の間の前記中心平面に直交する距離であり、
xは、前記中心平面の長さに沿って前記第1の方向における相対距離であり、
yは、前記第1の方向に直交し、かつ前記中心平面の幅に沿って中心平面に直交する前記第2方向における相対距離である)
により表される、請求項1に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の方向に配向された第1の正弦波形状の周期が、前記第2の方向に配向された第2の正弦波形状の周期の少なくとも2倍である、請求項2に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項4】
前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、動的加硫アロイ、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリニトリル樹脂、ポリメタクレート樹脂、ポリビニル樹脂、セルロース樹脂、フルオロ樹脂、イミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの組合せを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項5】
前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、熱可塑性連続相に分散された加硫エラストマーを含む動的加硫アロイを含み、
前記加硫エラストマーが、ブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水添スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、水添ブタジエンゴム、星形分岐ブチルゴム、アクリルニトリルブタジンゴム、水添アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、マレイン酸−無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンゴム、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、無水マレイン酸グラフトエチルアクリレートコポリマー、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−アクリルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー、臭素化イソブチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン酸化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸グラフト塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ハロゲン化シリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ化ビニリデンゴム、ハロゲン化ビニルエーテルゴム、またはそれらの組合せを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリを含むタイヤインナーライナーを含む、タイヤ。
【請求項7】
未硬化ゴム成分を準備する工程と、
バリア層を含むインナーライナーを準備する工程と、
前記未硬化ゴム成分、および前記未硬化ゴム成分の内側面上の前記インナーライナーを、未硬化生成物アセンブリにアセンブルする工程と、
前記未硬化生成物アセンブリに圧力および温度をかけて、前記未硬化生成物アセンブリを加硫し、前記バリア層が2方向波形付与された前記インナーライナーを含む生成物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項8】
前記バリア層が、前記インナーライナーと前記未硬化ゴム成分とのアセンブリの前に波形付与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バリア層が、前記インナーライナーの少なくとも一部をテクスチャード表面と、前記未硬化アセンブリの加硫前またはそれと同時に前記インナーライナー内の前記バリア層に2方向に波形付与するために十分な温度、圧力、および時間で接触させることによって、前記インナーライナーと前記未硬化ゴム成分とのアセンブリ後またはそれと同時に前記インナーライナーにおいて波形付与される、請求項7の記載の方法。
【請求項10】
前記生成物が、タイヤを含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
本明細書に記載されるすべての文書は、本出願および特許請求の範囲と不一致でない程度にいずれの特許出願および/または試験手順を含めて、本明細書に参照により組み込まれる。本発明の原理、好ましい実施形態、および操作の様式を前述の明細書で説明してきた。本明細書における発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および利用の単に例示的なものであることが理解されるべきである。したがって、多くの変更が例示的な実施形態になされてもよいこと、および他の配置が、添付の特許請求の範囲により規定されるとおりの本発明の精神および範囲から逸脱することなく、工夫されてもよいことが理解されるべきである。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 支持層およびそれに結合されたフィルム層を含み、2方向波形表面を有するバリア層アセンブリ。
2. 前記2方向波形表面が、非有溝のくぼみを含む、上記1に記載のバリア層アセンブリ。
3. 前記バリアアセンブリの変形中に可逆的に膨張性である、上記1または2に記載のバリア層アセンブリ。
4. 前記2方向波形表面が、中心平面の周りに配置された、前記中心平面に沿って第1の方向に配向された第1の曲線形状を前記中心平面に沿って前記第1の方向に非平行な第2の方向に配向された第2の曲線形状と組み合わせて含む3次元構造を含み、それぞれの方向における前記曲線形状が同じであるかまたは異なる、上記1から3のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
5. i)前記第1の曲線形状の周期と前記第2の曲線形状の周期とが異なるか、またはii)前記第1の曲線形状の振幅が前記第2の曲線形状の振幅と異なるか、またはiii)前記第1および前記第2の曲線形状の周期および振幅の両方が異なる、上記4に記載のバリア層アセンブリ。
6. 前記3次元構造の少なくとも一部が、式
z=a(sin(bx+sin(cy)))
(式中、
zは、前記構造と前記中心平面の間の前記中心平面に直交する距離であり、
xは、前記中心平面の長さに沿って前記第1の方向における相対距離であり、
yは、前記第1の方向に直交し、かつ前記中心平面の幅に沿って中心平面に直交する前記第2方向における相対距離である)
により表される、上記4に記載のバリア層アセンブリ。
7. 前記第1の方向に配向された第1の正弦波形状の周期が、前記第2の方向に配向された第2の正弦波形状の周期の少なくとも2倍である、上記6に記載のバリア層アセンブリ。
8. 前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、熱可塑性樹脂、動的加硫アロイ、またはそれらの組合せを含む、上記1から7のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
9. 前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリニトリル樹脂、ポリメタクレート樹脂、ポリビニル樹脂、セルロース樹脂、フルオロ樹脂、イミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはそれらの組合せを含む、上記1から8のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
10. 前記バリア層アセンブリの前記フィルム層が、熱可塑性連続相に分散された加硫エラストマーを含む動的加硫アロイを含む、上記1から9のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
11. 前記加硫エラストマーが、ブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水添スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、水添ブタジエンゴム、星形分岐ブチルゴム、アクリルニトリルブタジンゴム、水添アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、マレイン酸−無水マレイン酸グラフトエチレンプロピレンゴム、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、無水マレイン酸グラフトエチルアクリレートコポリマー、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−アクリルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー、臭素化イソブチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン酸化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸グラフト塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、ハロゲン化シリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ化ビニリデンゴム、ハロゲン化ビニルエーテルゴム、またはそれらの組合せを含む、上記10に記載のバリア層アセンブリ。
12. 前記2方向波形表面の反対の反対面を有し、かつ前記反対面が非波形表面を有する、上記1から11のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
13. 圧縮、膨張、または剪断で任意の方向に沿って非変形寸法から変形寸法に、次いで深溝を形成することなく逆戻りして可逆的に変形可能である、上記1から12のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
14. 前記バリア層アセンブリが、ASTM D790によって、前記バリア層アセンブリの波形付与前の前記バリア層アセンブリの曲げ降伏強さから低下した曲げ降伏強さを有する、上記1から13のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
15. 30℃で約25×10-12cc−cm/cm2・秒・cmHg未満の酸素透過率を有する、上記1から14のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
16. 前記バリア層アセンブリが、規定幅Wを有し、前記2方向波形表面が、前記バリア層アセンブリ規定幅Wよりも小さい幅Wcを有するバリア層アセンブリの一部の上に存在する、上記1から15のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリ。
17. 2方向波形表面幅Wcを有する前記バリア層アセンブリの表面が、滑らかな表面と2方向波形表面とを有する表面の交互部分を有する、上記16に記載のバリア層アセンブリ。
18. 上記1から17のいずれか1項に記載のバリア層アセンブリを含む、タイヤインナーライナー。
19. 上記18に記載のタイヤインナーライナーを含む、タイヤ。
20. バリア層基材を、前記基材に波形を付与し、2方向波形バリア層を得るために十分な温度、圧力、および時間で2つの相補的テクスチャード表面間に通過させる工程を含む、方法。
21. 前記2つの相補的テクスチャード表面が、対抗するローラを構成する、上記20に記載の方法。
22. 未硬化ゴム成分を準備する工程と、
バリア層を含むインナーライナーを準備する工程と、
前記未硬化ゴム成分、および前記未硬化ゴム成分の内側面上の前記インナーライナーを、未硬化生成物アセンブリにアセンブルする工程と、
前記未硬化生成物アセンブリに圧力および温度をかけて、前記未硬化生成物アセンブリを加硫し、前記バリア層が2方向波形付与された前記インナーライナーを含む生成物を形成する工程と
を含む方法。
23. 前記バリア層が、前記インナーライナーと前記未硬化ゴム成分とのアセンブリの前に波形付与される、上記22に記載の方法。
24. 前記バリア層が、前記インナーライナーの少なくとも一部をテクスチャード表面と、前記未硬化アセンブリの加硫前またはそれと同時に前記インナーライナー内の前記バリア層に2方向に波形付与するために十分な温度、圧力、および時間で接触させることによって、前記インナーライナーと前記未硬化ゴム成分とのアセンブリ後またはそれと同時に前記インナーライナーにおいて波形付与される、上記22の記載の方法。
25. 前記生成物が、タイヤを含む、上記22から24のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】