【課題を解決するための手段】
【0027】
生体分子-薬剤-抱合体の合成方法
本発明によれば、生体分子-薬剤-抱合体を合成する方法を提供し、この本発明方法は、
a) 随意的に、生体分子を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子を産生するステップと、
b)
i) ステップ(a) を実施するとき、前記ステップ(a) の前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子を、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤生体分子捕捉部分を有する捕捉樹脂に、前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子を固定化する、ひいては固定化した、化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子を産生するのに適した条件の下で、接触させる接触ステップ、又は
ii) ステップ(a) を実施しないとき、生体分子を、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤生体分子捕捉部分を有する捕捉樹脂に、前記生体分子を固定化する、ひいては固定化した生体分子を産生するのに適した条件の下で、接触させる接触ステップと、
c) 随意的に、ステップ(b)(i) の前記固定化した化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子、又はステップ(b)(ii) の前記固定化した生体分子を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した生体分子を産生するステップと、
d) 随意的に、ステップ(b)(i) の前記固定化した化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子;ステップ(b)(ii)の前記固定化した生体分子;又はステップ(c) の固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/若しくは活性化した固定化した生体分子を、緩衝剤で洗浄して、余分な若しくは未反応の化学修飾剤、酵素修飾剤、又は余分な若しくは未反応の活性剤を除去する洗浄ステップと、
e) 随意的に、ステップ(c) 及びステップ(d) を繰り返すステップと、
f) 随意的に、薬剤成分を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、化学修飾、酵素修飾、又は活性化した薬剤成分を産生するステップと、
g)
i) ステップ(f) を実施するとき、前記固定化した生体分子、若しくは前記固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/若しくは活性化した生体分子を、前記ステップ(f) の前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成するステップ、又は
ii) ステップ(f) を実施しないとき、前記固定化した生体分子、若しくは前記固定化した化学修飾、酵素修飾及び/若しくは活性化した生体分子を、薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成するステップと、
h) 随意的に、ステップ(g) の前記固定化した生体分子-薬剤-抱合体を、緩衝剤で洗浄し、余分な又は未反応の試薬を除去して、精製した固定化した生体分子-薬剤-抱合体を産生するステップと、
i) 前記精製した生体分子-薬剤-抱合体を、前記捕捉樹脂から剥離させるステップと、
を備え、
前記生体分子は、抗体、修飾抗体、又は抗体断片である。
【0028】
本発明における上述した方法の重要な特徴は、プロセスに採用する捕捉樹脂が一貫性及び再現性を持って生体分子を固定化できる点である。生体分子の捕捉樹脂に対する一貫した固定化は、上述の方法により産生される結果としての生体分子-薬剤-抱合体における変動が減少することになる。例えば、薬剤成分が固定化した生体分子に付着するポイントの変動が減少し、これにより、薬剤成分と固定化した生体分子との間の付着ポイントの一貫性が高まることになる。部位特異性のこのような向上は、結果として生ずる生体分子-薬剤-抱合体生成物の一貫性を高める点で望ましい。
【0029】
上述の方法の望ましい特徴は、生体分子の固定化が分子内相互作用ひいては凝集を減少する点である。抗体のような三次構造を有する複雑な生体分子にとって、捕捉樹脂への固定化は、生体分子の捕捉樹脂に対する多重付着ポイントによりアンフォールディングを少なくする。したがって、樹脂と生体分子との間の付着ポイントの数は、固定化ステップにより得られる安定性の向上に相関する。
【0030】
生体分子捕捉部分として、そのままのプロテインA、プロテインG、又はプロテインLを採用するのに反して、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、又はプロテインLの模倣剤を採用することにより、普通のプロテインA、プロテインG、又はプロテインLをベースとする系に対する模倣剤の向上した部位特異性に起因して、生体分子の固定化の一貫性が比較的向上する。生体分子のタンパク質に対する固定化の部位特異性が低いケースでは、そのままのプロテインA、プロテインG、又はプロテインLを生体分子捕捉樹脂として採用することは、本来的に捕捉樹脂に対する生体分子の固定化を変動させる結果となる。例えば、そのままのプロテインA、プロテインG、又はプロテインLは、タンパク質の他の部位による非特異性結合を示し、このことは全体的相互作用を複雑にし得る。上述したように、本発明で予想される生体分子の捕捉樹脂に対する一貫性のある固定化は、上述の方法で産生される結果としての生体分子-薬剤-抱合体における変動を減少することとなり得る。このことは有利である。本発明の樹脂系の他の利点は、普通のプロテインA、プロテインG、又はプロテインLをベースとする系の場合よりも、より広範囲の薬剤が樹脂と抱合し得る点にある。例えば、疎水性分子の場合、そのままのプロテインA、プロテインG、又はプロテインLをベースとする系で生じ得る他の非特異性結合が、このような薬剤の効果的な抱合を分裂させる又は阻害することがあり得る。
【0031】
実施形態において、捕捉樹脂は非タンパク質捕捉樹脂である。実施形態において、捕捉樹脂の生体分子捕捉部分は、約1000Da以下、随意的に約500Da以下、約300Da以下、又は約200Da以下の分子量を有する。実施形態において、捕捉樹脂は非タンパク質捕捉樹脂であり、また捕捉樹脂の生体分子捕捉部分は約1000Da以下の分子量を有する。さらに他の実施形態において、捕捉樹脂は非ペプチドをベースとする捕捉樹脂であり、また捕捉樹脂の生体分子捕捉部分は約1000Da以下の分子量を有する。
【0032】
生体分子捕捉部分としてそのままのプロテインA、プロテインG、又はプロテインLを採用するのに反して、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、又はプロテインLの模倣剤を採用することの他の利点は、模倣剤生体分子捕捉部分が広範囲にわたる共通抗体抱合体化学物質と相溶性(適合性)があり、産業レベルまで拡大できる点である。このことは、プロテインA、プロテインG、又はプロテインLをベースとする生体分子捕捉部分、及びペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、又はプロテインL捕捉部分とは対照的である。
【0033】
例えば、固定化した抗体におけるリシル側鎖官能基を標的にすると望ましいことがよくある。現在臨床開発されている28個の抗体-薬剤-抱合体のうちほぼ半数(以下の表でクレーで網掛けしてある)は、リジン標的抱合化学物質を採用している。プロテインA、G又はLの表面における固定化リガンドのタンパク質の性質は、結果として、タンパク質捕捉樹脂におけるリシル側鎖官能基を意図的でなく標的にする。プロテインA(swiss-prot P02976参照)は59個のリジン残基を有し、プロテインG(swiss-prot P919909参照)は59個のリジン残基を有し、プロテインL(swiss-prot Q51918参照)は132個のリジン残基を有する。
【表1】
【0034】
上述したように、リガンドと抗体リシル残基との間における競合に加えて、プロテインA、G及びLをベースとする捕捉樹脂に関する他の問題もある。これら問題としては、タンパク質の浸出及び浸出した付加物の免疫原性がある。このことは、これら親和性支持体を製造プロセスの終了時付近で(精製又は抱合のために)採用できないことを意味する。プロテインA、G及びLをベースとする捕捉樹脂を採用するこのようなプロセスから仕上げられるいかなる抱合体物質も、抗体精製及び生成物品質に関する現行の規制ガイドラインを満たさない。
【0035】
生体分子-薬剤-抱合体を合成するプロセス
本発明によれば、生体分子-薬剤-抱合体を合成するプロセスを提供する。本発明のプロセスは、以下の表に示す。以下の表の開示は、特許請求の範囲及び本発明の内容を制限するものではなく、本発明を使用するプロセスを説明するための可視的表示として供するものである。
【表2】
【0036】
化学的に修飾若しくは酵素で修飾した又は活性化した、固定した化生体分子を合成する方法
本発明によれば、化学的に若しくは酵素で修飾した、又は活性化した、固定化した生体分子を合成する方法を提供し、前記方法は、
a) 随意的に生体分子を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子を産生するステップと、
b)
i) ステップ(a) を実施するとき、前記ステップ(a) の化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子を、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤生体分子捕捉部分を有する捕捉樹脂に、前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子を固定化する、ひいては固定化した、化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子を産生するのに適した条件の下で、接触させる接触ステップ又は
ii) ステップ(a) を実施しないとき、生体分子を、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤生体分子捕捉部分を有する捕捉樹脂に、前記生体分子を固定化する、ひいては固定化した生体分子を産生するのに適した条件の下で、接触させる接触ステップと、
c) ステップ(b)(i) の前記固定化した化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した生体分子、又はステップ(b)(ii) の前記固定化した生体分子を、化学修飾剤、酵素修飾剤、若しくは活性剤に接触させて、固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した生体分子を産生するステップと、
を含み、
前記生体分子は、抗体、修飾抗体、又は抗体断片である、方法。
【0037】
タンパク質及びより厳密には抗体との抱合は、しばしば研究、診断法及び治療学に使用される。生体抱合体技術の第2版(グレッグ・T・ハーマンソン著)では、標識付け又は抱合分子を産生する化学的性質、試薬系及び実際的用途についての高度に詳細な情報を提供している。さらに、数百もある市販試薬における細目との数十の反応、及びペプチドとタンパク質、糖類と多糖類、核酸とオリゴヌクレオチド、脂質、及び合成ポリマー、の修飾又は架橋結合を行うためのこれら試薬の使用について記載している。抗体に適用される重要な抱合(共役)の概要を以下に提示する。
【0038】
天然鎖間ジスルフィドの還元後の遊離チオールとの抱合は、市販ADCであるADCetris(登録商標)に採用される抗体抱合及び化学的性質に対する共通の手法である。プロセスは、TCEP、DTT、メルカプトエチルアミンのような還元剤、又は当業界でよく知られている他の適当な還元剤に抗体を接触させるステップを備え、これに続いて薬剤、リガンド、標識との化学式D−Xで表される抱合ステップが行われ、ここでDは、薬剤、リガンド又は標識であり、またXは、マレイミド、ハロアルカン、ピリジルジスルフィド、エン、ビニルスルホン、bis-スルホン、アクリル酸塩、及び従来既知の他のチオール反応性化学物質から選択した反応基である。
【0039】
抗体とのチオール抱合に対する代替的手法は、抗体の特定部位における反応性システイン残基を(遺伝子的に)操作して、薬剤、リガンド又は標識が、鎖間ジスルフィド結合を分裂させることなく、規定の化学量論で抱合できるようにすることである。操作したシステインは、システイン又はグルタチオンの混合ジスルフィドとして存在することがよくある。付加物は、完全な還元後に透析濾過によって除去する。このことは鎖間ジスルフィドを破壊し、この鎖間ジスルフィドは、空気、CuSO
4又はデヒドロアスコルビン酸を用いた酸化によって再形成しなければならない。
【0040】
抱合の他の共通部位は、リジン残基の側鎖に存在するアミノ基である。最も簡単な手法は、抗体を、化学式D−Yで表される、薬剤、リガンド、標識又はリンカーに対する接触させることである。Dは上述したのと同一であり、またYは、イソシアン酸塩、NHSエステル、塩化スルホニル、エポキシド、及び当業者には既知の他の試薬から選択される反応基である。
【0041】
リジンに対する間接的抱合もよく採用される。リジン側鎖のアミノ基は、相補的反応性化学物質を含む、薬剤、リガンド又は標識と抱合する前に、ヘテロ二官能基型リンカーで先ず活性化させる。このようなカプレットの例としては、新たなチオールの産生に続く上述したチオール反応性薬剤リンカー(D−X)のうちの任意なものを用いた抱合をする、2-イミノチオランを用いたリジンの修飾を含む。他のカプレットは、リジン結合マレイミドの産生に続くリガンド又は標識のない遊離チオールを含む約剤との抱合をする、ヘテロ二官能基型架橋剤SMCCによるリジンの修飾である。間接的リジン抱合に有用な潜在的カプレットの完全な報告に関しては、ハーマンソン社及びピアース/テルモ・サイエンティフィック社の架橋剤カタログを参照されたい。
【0042】
20個のタンパク新生アミノ酸側鎖に対して、化学的に直交する側鎖を有する非天然アミノ酸をタンパク質に取り込む方法を、幾つかのグループが開発した。
【0043】
レッドウッド・バイオサイエンス社(www.redwoodbioscience.com参照)は、同社がアルデヒド・タギング(Aldehyde Tagging)と称している技術を開発した。この技術において、ホルミルグリシン酵素(FGE)と称され、通常高度に保存された13個のアミノ酸配列内のCys残基をI型スルファターゼにおいてホルミルグリシン(アルデヒド)に変換する天然酵素を活用する(Wu et al, PNAS, 2009, 106, 9, 3001参照)。このような修飾した抗体に抱合された薬剤、リガンド又は標識は、オキシアミン又はヒドラジンのようなアルデヒド反応性化学物質を含んでいなければならない。アルデヒド反応官能性に関する完全な開示は、ハーマンソン及びパーバイオ(Hermanson and Perbio)社のカタログに見ることができる。
【0044】
アムブリクス(Ambryx)社は、同社がEuCodeと称する技術を開発した(Liu et al, Anu. Rev. Biochem., 2010, 79, 413参照)。EuCodeは、細胞を操作して非天然アミノ酸を異種タンパク質内に取り込むプラットフォームであり、この取込みは、発現系内に3つの非天然成分を包接させることによって行うものであり、3つの非天然成分とは、
1. 媒剤に追加される非天然アミノ酸
2. 直交性アミノアシル−tRNA合成酵素(aaRS)
3. 直交性tRNA
である。
【0045】
直交性aaRS/tRNAの対は、アンバー終結コドンによる読み取りを促進し、また非天然アミノ酸をその位置に取り込むよう操作/選択しておく。この手法を用いて、70個もの多くのnnAAがタンパク質内に取り込まれてきた。以下の図は、直交性アミノ酸側鎖及び反応性化学物質のあり得る組合せを詳細に示すものである(Ambryx presentation at Hanson Wade ADC summit meeting in Feb 2012参照)。
【0046】
ストロ(Sutro)社は、オープン無細胞合成(OCFS)技術を用いる抗体及びサイトカインの産生を記載している。OCFSの特徴は、非天然アミノ酸をタンパク質内に荷電tRNAsとともに取り込む能力であり、これら荷電tRNAは、特定コドンに向けて導かれ、非天然アミノ酸をタンパク質における特定場所に送給することができ、これによりタンパク質が特定修飾を受け易くなる、又は新たな所望特性を付与し易くなる(Goerke et al, Biotechnol. Bioeng., 2008, 99: 351-367参照)。
【0047】
固定化した抗体抱合は、1つの条件付きで、すべての非天然アミノ酸側鎖及び相補的反応性化学物質と相溶性がある。抗体捕捉リガンドは、非天然アミノ酸側鎖の一部として取り込まれた新規化学物質を含むものであってはならない。
【化1】
【0048】
糖タンパク質内における多糖類残基の過ヨウ素酸ナトリウムでの酸化は、薬剤、リガンド又は標識のような分子を含むアミン又はヒドラジドに対するその後の抱合のために、反応性アルデヒド基を産生する穏やかで効率的な方法を提供する。プロセスは、先ず抗体を過ヨウ素酸ナトリウムに接触させるステップと、及び次にアミン、ヒドラジド、アミノオキシ又は従来既知の他のアルデヒド反応性化学物質から選択される反応基と抱合させるステップとを有する。この抱合ステップは、代表的には酸性条件の下で行って、オキシム及びヒドラゾン結合を形成する。関連する手法において、ヒドラジノ・イソ・ピクテ・スペングラー(HIPS)連結反応(ライゲーション)も、反応性アルデヒド基を置換したヒドラジンと抱合させて、安定したアザカルボリン(azacarboline)抱合体を形成する。
【0049】
ステップ(a)
【0050】
実施形態において、前記ステップ(a) を実施する。
【0051】
代替的実施形態において、前記ステップ(a) を省略する。
【0052】
実施形態において、生体分子を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した生体分子を産生するステップは、生体分子を還元するステップを含む。実施形態において、生体分子の還元は完全還元を行う。実施形態において、生体分子の還元は部分還元を行う。実施形態において、生体分子の還元は、完全還元に続いて再酸化を行う
【0053】
実施形態において、生体分子は、還元剤、例えば、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエチルアミン、又は他の適当な還元剤に生体分子を接触させることによって還元する。好適には、還元剤はtris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)とする。
【0054】
実施形態において、還元した生体分子は、空気、CuSO
4又はデヒドロアスコルビン酸(DHAA)のような酸化剤に生体分子を接触させることによって再酸化する。好適には、酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(DHAA)とする。
【0055】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。
【0056】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、pHが約5〜約10、好適には約7〜約8、好適には約7.4で行う。
【0057】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0058】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、生体分子を還元剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0059】
実施形態において、生体分子を化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した生体分子を産生するステップは、生体分子を架橋剤部分と反応させるステップを含む。例えば、架橋剤部分は、アミン・トゥ・スルフヒドリル基架橋剤(amine-to-sulfhydryl crosslinker)、例えば両側端部にNHSエステル及びマレイミド反応基を有する架橋剤とすることができる。生体分子を効果的に修飾又は活性化するこの方法により、結果として生体分子-リンカー-薬剤-抱合体を生ずる。適当な架橋剤によれば、概して薬剤群における第1級アミン基と反応し(反応性NHSエステル端部を介して)、また生体分子におけるシステイン残基と反応する(反応性マレイミド端部を介して)こともできる。この特別な実施例において、マレイミド端部は固定化済み生体分子におけるシステインと反応する。このような架橋剤の例は、サクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)である。
【0060】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。代案として、架橋剤との反応プロセスは、リン酸ナトリウム緩衝剤、NaCl、及びEDTAのようなキレート剤を含む「修飾緩衝液」(Modification Buffer)内で行う。
【0061】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、pHが約7〜約9、好適には約7〜約8、好適には約8.0で行う。
【0062】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0063】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、生体分子を架橋剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0064】
実施形態において、生体分子を化学修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した生体分子を産生するステップは、生体分子をトラウト試薬と反応させるステップを含む。
【0065】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。
【0066】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、pHが約7〜約9、好適には約7〜約8、好適には約8.0で行う。
【0067】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0068】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、生体分子を還元剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0069】
実施形態において、活性化した生体分子は、いかなる修飾/活性剤をも除去するよう洗浄する。実施形態において、洗浄は、緩衝剤ですすぎ洗いするステップを含み、随意的に、前記緩衝剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)とする。他の適当な緩衝剤としては、リン酸カリウム緩衝剤、リン酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム緩衝剤、ビス−トリス プロパン緩衝剤、HEPES緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム緩衝剤、カコジル酸緩衝剤、酢酸アンモニウム緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、ビシン緩衝剤、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝剤がある。例えば、生体分子は、pHが約7〜約8、好適には約7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液で洗浄することができる。随意的に、活性化した生体分子のすすぎ洗いは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。活性化した生体分子をすすぎ洗いする他の例としては、樹脂をPBSのような緩衝剤ですすぎ洗いし、これに続いてクエン酸ナトリウム、NaCl及びEDTAのようなキレート剤を含む「抱合緩衝剤」(Conjugation Buffer)によってすすぎ洗いする。
【0070】
ステップ(b)
ステップ(a) を実施するとき、ステップ(b) は、前記ステップ(a) の前記化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子を、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤生体分子捕捉部分を有する捕捉樹脂に、前記化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子を固定化する、ひいては固定化した、化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子を産生するのに適した条件の下で、接触させることを含む。
【0071】
ステップ(a) を省略するとき、ステップ(b) は、生体分子を、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤生体分子捕捉部分を有する捕捉樹脂に、前記生体分子を固定化する、ひいては固定化した生体分子を産生するのに適した条件の下で、接触させることを含む。
【0072】
実施形態において、生体分子を捕捉樹脂に接触させる接触ステップは、生体分子を前記捕捉樹脂とともにインキュベーションするステップを含む。
【0073】
インキュベーションは、約0℃〜約100℃の範囲における温度、好適には、約5℃〜約50℃の範囲における温度、随意的に約10℃〜約40℃の範囲における温度、で実施することができる。理想的には、インキュベーションは約15℃〜約37℃の範囲における温度で行い、例えば、インキュベーションは、約21℃のような室温で行う。代案として、インキュベーションは約37℃の温度で行う。
【0074】
インキュベーションは、約1分〜約3日間の期間にわたり、例えば約10分〜約18時間の期間にわたり行うことができる。好適には、インキュベーションは、約20分〜約1時間の期間にわたり行うことができる。
【0075】
実施形態において、インキュベーションは、水性媒剤内で行う。他の実施形態において、インキュベーションは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液、又は所望の結合pH及び化学物質と相溶性のある任意な緩衝塩の下で行い、随意的に、インキュベーションは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。実施形態において、インキュベーションは、DMSO、DMA又はDMFのような溶媒を含む共溶媒を使用して行う。この共溶媒は、0.5〜80体積%の範囲内、例えば0.5〜50体積%範囲内で存在し得る。
【0076】
実施形態において、インキュベーションは、pHが約5〜約10の範囲、好適にはpHが約5〜約8の範囲、より好適にはpHが約6〜約8の範囲で行う。好適な実施形態において、インキュベーションはpHが約6〜約7.5の範囲、理想的にはpHが約6.5で行う。他の好適な実施形態において、インキュベーションはpHが約7〜約8の範囲、理想的にはpHが約7.4で行う。この結果として、誘導体化支持体に対する抗体の改善した結合を生ずる。
【0077】
実施形態において、固定化済みの生体分子(すなわち、捕捉樹脂に固定化された生体分子)を洗浄して、捕捉樹脂に固定化されなかったいかなる生体分子をも除去する。固定化済みの生体分子の洗浄は、新鮮な溶剤ですすぎ洗いすることによって影響を受けることができる。例えば、固定化済みの生体分子の洗浄は、PBSのような緩衝溶液ですすぎ洗いすることによって影響を受けることができる。随意的に、固定化済みの生体分子のすすぎ洗いは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。代案として、固定化済みの生体分子の洗浄は、リン酸ナトリウム緩衝剤、NaCl、及びEDTAのようなキレート剤を含む「修飾緩衝液」ですすぎ洗いすることによって影響を受けることができる。
【0078】
ステップ(c)
実施形態において、ステップ(c) を実施する。
【0079】
代替的実施形態において、ステップ(c) を省略する。
【0080】
このステップ(c) は、ステップ(b)(i) の前記固定化した化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子、又はステップ(b)(ii) の前記固定化した生体分子を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した生体分子を産生することを含む。
【0081】
実施形態において、固定化した生体分子を、化学修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した固定化した生体分子を産生するステップは、生体分子を還元するステップを含む。実施形態において、生体分子の還元は完全な還元を含む。実施形態において、生体分子の還元は部分的還元を含む。実施形態において、生体分子の還元は完全還元、及びこれに続く再酸化を含む。
【0082】
実施形態において、生体分子は、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオスレイトール(DTT)、メルカプトエチルアミン、又は他の適当な還元剤に生体分子を接触させることによって還元する。好適には、還元剤はtris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)とする。
【0083】
実施形態において、還元した生体分子、空気、CuSO
4又はデヒドロアスコルビン酸(DHAA)のような酸化剤に生体分子を接触させることによって再酸化する。好適には、酸化剤はデヒドロアスコルビン酸(DHAA)とする。
【0084】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。
【0085】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、pHが約5〜約10、好適には約7〜約8、好適には約7.4で行う。
【0086】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0087】
実施形態において、生体分子を還元するプロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、及びさらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、生体分子を還元剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0088】
実施形態において、固定化した生体分子を化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した固定化済み生体分子を産生するステップは、生体分子を架橋剤部分と反応させるステップを含む。例えば、架橋剤部分は、アミン・トゥ・スルフヒドリル基架橋剤(amine-to-sulfhydryl crosslinker)、例えば両側端部にNHSエステル及びマレイミド反応基を有する架橋剤とすることができる。生体分子を効果的に修飾又は活性化するこの方法により、結果として生体分子-リンカー-薬剤-抱合体を生ずる。適当な架橋剤によれば、概して薬剤における第1級アミン基と反応し(反応性NHSエステル端部を介して)、また生体分子におけるシステイン残基と反応する(反応性マレイミド端部を介して)こともできる。この特別な例において、マレイミド端部は固定化済み生体分子におけるシステインと反応する。このような架橋剤の例は、サクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)である。
【0089】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。代案として、架橋剤との反応プロセスは、リン酸ナトリウム緩衝剤、NaCl、及びEDTAのようなキレート剤を含む「修飾緩衝液」内で行う。
【0090】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、pHが約7〜約9、好適には約7〜約8、好適には約8.0で行う。
【0091】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0092】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、生体分子を架橋剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0093】
実施形態において、固定化済み生体分子を化学修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した固定化済み生体分子を産生するステップは、生体分子をトラウト試薬と反応させるステップを含む。
【0094】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。
【0095】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、pHが約7〜約9、好適には約7〜約8、好適には約8.0で行う。
【0096】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0097】
実施形態において、トラウト試薬との反応プロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、生体分子を還元剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0098】
ステップ(d)
実施形態において、ステップ(d)を実施する。
【0099】
代替的実施形態において、ステップ(d)を省略する。
【0100】
実施形態において、
ステップ(b)(i) の前記固定化した化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子;ステップ(b)(ii)の前記固定化した生体分子;又はステップ(c) の固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した固定化した生体分子を洗浄して、いかなる修飾剤/活性剤をも除去する。
【0101】
実施形態において、洗浄ステップは緩衝剤ですすぎ洗いするステップを含み、随意的に、この緩衝剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)とする。他の適当な緩衝剤としては、リン酸カリウム緩衝剤、リン酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム緩衝剤、ビス−トリス プロパン緩衝剤、HEPES緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム緩衝剤、カコジル酸緩衝剤、酢酸アンモニウム緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、ビシン緩衝剤、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝剤がある。例えば、固定化済み生体分子は、pHが約7〜約8、好適には約7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液で洗浄することができる。随意的に、活性化した固定化済み生体分子のすすぎ洗いは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。活性化した固定化済み生体分子をすすぎ洗いする他の例としては、樹脂をPBSのような緩衝剤ですすぎ洗いし、これに続いてクエン酸ナトリウム、NaCl及びEDTAのようなキレート剤を含む「抱合緩衝剤」(Conjugation Buffer)によってすすぎ洗いする。
【0102】
ステップ(e)
実施形態において、ステップ(c) を、1回、2回又は3回繰り返す。実施形態において、ステップ(c) を1回繰り返す。実施形態において、ステップ(c) を2回繰り返す。実施形態において、ステップ(c) を3回繰り返す。
【0103】
実施形態において、ステップ(d) を、1回、2回又は3回繰り返す。実施形態において、ステップ(d) を1回繰り返す。実施形態において、ステップ(d) を2回繰り返す。実施形態において、ステップ(d) を3回繰り返す。
【0104】
ステップ(f)
実施形態において、ステップ(f) を実施する。
【0105】
代替的実施形態において、ステップ(f) を省略する。
【0106】
ステップ(f) は、薬剤成分を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、化学修飾、酵素修飾及び/又は活性化した薬剤成分を産生するステップを含む。
【0107】
実施形態において、前記薬剤成分を、化学修飾剤、酵素修飾剤、又は活性剤に接触させて、修飾した又は活性化した薬剤成分を産生するステップは、薬剤成分を架橋剤部分と反応させるステップを含む。例えば、架橋剤部分は、アミン・トゥ・スルフヒドリル基架橋剤(amine-to-sulfhydryl crosslinker)、例えば両側端部にNHSエステル及びマレイミド反応基を有する架橋剤とすることができる。薬剤成分を効果的に修飾又は活性化するこの方法により、結果として生体分子-リンカー-薬剤-抱合体を生ずる。適当な架橋剤によれば、概して生体分子、例えば、化学修飾、酵素修飾、又は活性化した生体分子におけるシステイン残基と反応し(反応性マレイミド端部を介して)、また薬剤成分におけるアミン部分と反応する(反応性NHSエステル端部を介して)こともできる。この特別な例において、マレイミド端部は固定化済み生体分子におけるシステインと反応する。このような架橋剤の例はサクシニミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)である。
【0108】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液内で行う。代案として、架橋剤との反応プロセスは、リン酸ナトリウム緩衝剤、NaCl、及びEDTAのようなキレート剤を含む「修飾緩衝液」内で行う。
【0109】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、pHが約7〜約9、好適には約7〜約8、好適には約8.0で行う。
【0110】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0111】
実施形態において、架橋剤との反応プロセスは、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、薬剤成分を架橋剤によりインキュベーションするステップを含む。
【0112】
ステップ(g)
ステップ(g)は、前記固定化した生体分子、又は前記固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した生体分子を、前記ステップ(f) (ステップ(f)を実施するとき)の前記化学修飾、酵素修飾、又は活性化した薬剤成分に接触させて、又は前記固定化した生体分子、又は前記固定化した化学修飾、酵素修飾及び/又は活性化した生体分子を、薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成することを含む。
【0113】
実施形態において、前記固定化した生体分子、又は前記固定化した化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した生体分子を、前記ステップ(f) (ステップ(f)を実施するとき)の前記化学修飾、酵素修飾、又は活性化した薬剤成分に接触させるステップは、(1) 前記薬剤成分の化学修飾、酵素修飾又は活性化の実施、及び(2) 前記固定化済み生体分子、又は化学修飾、酵素修飾及び/又は活性化した固定化済み生体分子に接触させることを、同時に行うステップを含む。換言すれば、生体分子は、その場で生ずる化学修飾、酵素修飾又は活性化した薬剤成分に接触する。この実施形態において、ステップ(f) 及び(g) は別個のステップではなく、単独の複合したステップである。
【0114】
実施形態において、前記固定化済みの生体分子、あるいは前記化学修飾、酵素修飾、及び/又は活性化した、固定化済みの生体分子を、薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成するステップは、前記化学修飾、酵素修飾、及び/若しくは活性化した固定化済みの生体分子を、ステップ(c) につき上述した緩衝溶液内で薬剤成分に接触させるステップを含む。
【0115】
実施形態において、前記固定化済みの生体分子、又は前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した固定化済みの生体分子を、薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成するステップは、前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した固定化済みの生体分子を、pHが約5〜約8、好適には約7〜約8、より好適には約7.4の薬剤成分に接触させるステップを含む。
【0116】
実施形態において、前記固定化済みの生体分子、又は前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した固定化済みの生体分子を、薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成するステップは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0117】
実施形態において、前記固定化済みの生体分子、又は前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した固定化済みの生体分子を、薬剤成分に接触させて、固定化した生体分子-薬剤-抱合体を形成するステップは、前記化学修飾、酵素修飾、若しくは活性化した固定化済みの生体分子を、約20分〜約3日間、随意的に約1時間〜約2日間、さらに随意的に約6時間〜約18時間の期間にわたり、薬剤成分によりインキュベーションするステップを含む。
【0118】
ステップ(h)
実施形態において、ステップ(h) を実施する。
【0119】
代替的実施形態において、ステップ(h) を省略する。
【0120】
実施形態において、前記生体分子-薬剤-抱合体を前記捕捉樹脂から剥離させるステップの前に、前記固定化済み生体分子-薬剤-抱合体を洗浄する。洗浄は、いかなる未反応薬剤成分をも除去する。実施形態において、洗浄は、緩衝剤ですすぎ洗いするステップを含み、随意的に、前記緩衝剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び他の溶剤とする。他の適当な緩衝剤としては、リン酸カリウム緩衝剤、リン酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム緩衝剤、ビス−トリス プロパン緩衝剤、HEPES緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム緩衝剤、カコジル酸緩衝剤、酢酸アンモニウム緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、ビシン緩衝剤、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝剤がある。例えば、固定化済み生体分子-薬剤-抱合体は、pHが約5〜約7であるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びジメチルアセトアミド(DMA)のような緩衝溶液で洗浄することができる。随意的に、固定化済み生体分子-薬剤-抱合体のすすぎ洗いは、EDTAのようなキレート剤の存在下で行う。
【0121】
実施形態において、前記固定化済み抱合体は、捕捉樹脂から精製した抱合体を剥離させるステップの前に緩衝剤で洗浄し、随意的に、前記緩衝剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は製剤に適した他の緩衝剤とする。洗浄は、DMSO、DMA又はDMFのような有機溶剤のいかなる残留又は過剰分をも除去する。
【0122】
ステップ(i)
実施形態において、前記生体分子-薬剤-抱合体を前記捕捉樹脂から剥離させるステップは、
a) 支持体-生体分子化合物を剥離剤に曝すステップ、及び/又は
b) pHを変化させて支持体-生体分子結合を破壊するステップ
を含む。
【0123】
実施形態において、剥離剤は、水素結合分裂剤、例えばヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール又はジメチルスルホキシド(DMSO)の共溶媒とする。
【0124】
実施形態において、剥離剤は、支持体-生体分子でインキュベーションする。
【0125】
インキュベーションは、約0℃〜約100℃の範囲における温度、好適には、約5℃〜約50℃の範囲における温度、随意的に約10℃〜約40℃の範囲における温度、で実施することができる。理想的には、インキュベーションは約15℃〜約37℃の範囲における温度で行い、例えば、インキュベーションは、約21℃のような室温で行う。代案として、インキュベーションは約37℃の温度で行う。
【0126】
インキュベーションは、約1分〜約3日間の期間にわたり行うことができる。好適には、インキュベーションは、約30分〜約2時間の期間にわたり行うことができる。
【0127】
インキュベーションは、水性媒剤内で行うことができる。他の実施形態において、インキュベーションは、DMF、DMA、DMSO、MeOH、又はMeCNのような溶剤内で行うことができる。代案として、溶剤が80体積%にも達するまでの、好適には0.5体積%〜50体積%、及び最も好適には0.5体積%〜10体積%の、水-溶剤混合物内で行うことができる。若干のケースでは、水を含んで上述の溶剤のうち1つ以上の混合物が適切であり得る。必要な場合、安定剤も含ませて抱合体が未変化状態を確実に維持できるようにする。
【0128】
実施形態において、前記生体分子-薬剤-抱合体を前記捕捉樹脂から剥離させるステップは、pHを変化させるステップを含む。pHは、支持体-生体分子結合を破壊するが、分子の活量、完全性又3D構造には影響しない任意な量だけ変化させることができる。
【0129】
例えば、pHは、酸性であるように調整することができる。実施形態において、pHは、約pH2〜pH6の間で減少する。随意的に、pHは約pH5未満に調整する。例えば、約pH3〜約5、例えば、約pH4未満に調整する。実施形態において、pHは約pH3まで減少させる。
【0130】
代案として、pHは塩基性であるように調整することができる。実施形態において、pHは、約pH8〜約pH10の間で増加する。随意的に、pHは、pH8より高いものに調整する。例えば、pHは約pH9まで増加することができる。pHは、pH9よりも高い値に増加することができる。pHは、約pH10まで増加することができる。pHは、pH10よりも高い値に増加することができるが、通常pH14未満となるようにする。
【0131】
生体分子-薬剤-抱合体は、剥離剤による処理を1回以上受けることができる。有利には、新鮮な剥離剤により2回又はそれ以降の処理を用いることにより、捕捉樹脂から剥離した生体分子-薬剤-抱合体の量を増大する結果を生ずる。新鮮な剥離剤は、それまでに固定化済み生体分子-薬剤-抱合体でインキュベーションされていなかった剥離剤である。
【0132】
実施形態において、前記生体分子-薬剤-抱合体を前記捕捉樹脂から剥離させるステップは、生体分子-薬剤-抱合体を塩に接触させるステップを含む。例えば、生体分子-薬剤-抱合体をNaClに接触させることができる。塩の濃度は、約0.1〜約10Mの範囲、好適には、約0.1〜約1Mにわたるものとすることができる。
【0133】
実施形態において、溶離した生体分子-薬剤-抱合体は、抱合体を捕捉樹脂から剥離するステップ後に中和する。例えば、抱合体は、1Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(TRIS)の2体積%内に捕捉することができる。
【0134】
洗浄ステップ
実施形態において、本発明の中間生成物を洗浄するステップは、捕捉樹脂に結合されていない物質、例えば汚染物を除去するステップを含む。代表的な汚染物としては、固定化済み生体分子を活性化するのに使用された過剰試薬、捕捉樹脂に固定化されなかった生体分子、及び活性化した固定化済み生体分子と反応しなかった薬剤成分、又は余分に残留した溶剤若しくは共溶媒がある。生体分子の活量、完全性若しくは3D構造、又は固定化済み生体分子と捕捉樹脂との間における結合の完全性に影響を与えない任意の媒剤を、中間生成物の洗浄に使用することができる。
【0135】
好適には、緩衝剤は、等張性のあるものとし、また生理学的pH及びイオン強度を模倣することによって、抗体のような生体分子に安定的な環境を誘導するものとする。実施形態において、活性化した固定化済み生体分子は、濾過によって線上する。随意的に、結果として生じた濾液は、例えば、薄膜カートリッジを使用する遠心分離によって、緩衝液交換する。
【0136】
代表的には、添加剤を緩衝剤媒体に導入する。これら添加剤は、緩衝剤系及びこれに含まれる生体分子を制御するレベルに誘導する。トリス又はヒスチジンのような添加剤を緩衝プロセス流内に導入し、pHを維持しかつ不慮の酸性化を最小限にする。代表的には、生体分子プロセス流のpHは、pH5〜pH9.5の間に維持し、長い期間にわたるpH限界範囲の極限を回避すべきである。0.1MのNaClのような無機塩類を添加して、プロセス流のイオン強度を維持することができる。ツイーン(ポリソルベート)のようなイオン系及び非イオン系の界面活性剤を緩衝剤に添加して、有利にも溶解性が乏しい生体分子の緩衝剤媒体における溶解性を高め、また凝集を最小限にすることができる。
【0137】
捕捉樹脂及び活性剤を含む混合物
本発明によれば、
(i) 抗体、修飾抗体、又は抗体断片の捕捉部分であって、非ペプチドベースのプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤からなるグループから選択した捕捉部分を含む捕捉樹脂と、及び
(ii) 化学修飾剤若しくは活性剤と
を備える混合物を提供する。
【0138】
実施形態において、捕捉樹脂は、捕捉樹脂の表面上に、固定化抗体、修飾抗体、又は抗体断片を有する。
【0139】
生体分子-薬剤-抱合体の合成における捕捉樹脂の使用
本発明によれば、抗体、修飾抗体、又は抗体断片の捕捉部分であって、非ペプチドベースのプロテインA、プロテインG、若しくはプロテインLの模倣剤からなるグループから選択した、該捕捉部分を含む捕捉樹脂を、生体分子-薬剤-抱合体の合成に使用する方法を提供する。
【0140】
捕捉樹脂
長年にわたって、研究者は、従来型プロテインA、G又はLに親和性を有する精製支持体に対する代替物として、多様な完全長抗体、断片又は融合体に対して親和性を有するリガンドを開発しようと試みてきた。上出来なリガンド発見/開発の主な基準としては、
1. 高い初期精製をもたらす抗体に対する高い選択性
2. 有用な動的結合能力
3. 抗体完全性の保持に適合する溶離条件
4. 多重溶離/清浄化サイクル中における支持体の安定性
5. プロテインA、G又はLの支持体よりも低いコスト
であった。
【0141】
これらリガンドを固相抗体抱合に用いる状況において、上述の基準1は、抱合プロセスを精製した抗体で開始するときには、重要ではない。しかし、リガンドは、残り4つの基準を完全に満たすものでなければならない。加えて、リガンドは、理想的には、抱合のための安定した親和性結合強度をもたらすよう、規定された抗体との相互作用部位を有していなければならない。この属性は、抗体が支持体に結合し、また緩衝剤補充中に時間とともに不慮に溶離しないようにする点で必要である。さらに、相互作用の規定部位は、結合した抗体の錯体における周囲の溶液相に対して一貫性のある立体配座供覧を推測し、一貫性及び再現性のある抱合化学物質を得るための手段を提供する効果を有することが望ましい。抗体は、親和性精製に活用される多数の明確に規定された結合ドメイン(領域)を有する、明確に特徴付けされた生体分子である。
【0142】
第1規定領域はプロテインA及びプロテインGの結合ポケットであって、この結合ポケットは、プロテインA/G及びプロテインA/G支持体の模倣剤を用いる親和性クロマトグラフィに活用される。プロテインAは、アミノ酸残基、すなわち、Thr 250、Leu 251、Met 252、IIe 253、His 310、Gln 311、Leu 314、Asn 315、Lsn 338、Glu 345、Ala 431、Leu 432、His 433、Asn 434、及びHis 435との多数の非共有相互作用を介して、Fc領域におけるCH2 CH3の鎖間ドメインと相互作用する。プロテインA模倣剤支持体は、上述のように規定したアミノ酸のうち1つ以上を介してこのドメインと相互作用するよう合理的に設計されている。これら模倣剤支持体は、IgG結合及び抱合のための適正な親和性リガンドをもたらす。プロテインA模倣剤支持体は、サブクラスにおいて、非ペプチド、ペプチド又はアミノ酸をベースとしたリガンドを取り込むものとして定義することができる。同様に、プロテインGは、アミノ酸残基、すなわち、Ile 253、Ser 254、Gln 311、Glu 380、Glu 382、His 433、Asn 434、及びHis 435との多数の非共有相互作用を介して、Fc領域におけるCH2 CH3の鎖間ドメインと相互作用する。プロテインG模倣剤支持体は、上述のように規定したアミノ酸のうち1つ以上を介してこのドメインと相互作用するよう合理的に設計されている。やはり、これら模倣剤支持体は、IgG結合及び抱合のための適正な親和性リガンドをもたらす。プロテインG模倣剤支持体は、サブクラスにおいて、非ペプチド、ペプチド又はアミノ酸をベースとしたリガンドを取り込むものとして定義することができる。実施形態において、捕捉樹脂は、生体分子におけるプロテインA又はプロテインGの結合ポケットに結合することができる。プロテインA模倣剤の市販の実施形態は、Mabsorbent(登録商標)A1P、A2P及びA3P(プロメティック・バイオサイエンシズ(ProMetic Biosciences)社製)である。これら親和性支持体は、プロテインA模倣剤の基準を満たし、なぜならこれら非ペプチド支持体は、プロテインAの疎水性コア構造におけるPhe-132、Tyr-133のジペプチド結合部位を模倣するからである。
【0143】
第2規定領域は、プロテインL親和性マトリクスが標的とする抗体軽鎖である。プロテインLは特異的にΚ(カッパ)I、II及びIVの軽鎖と結合するが、Κ(カッパ)III又はγ(ガンマ)の軽鎖には結合しない。プロテインLドメインの合計11個の親水性アミノ酸残基、すなわち、Ala、Asp、Gln、Glu、Gly、Ile、Leu、Lys、Phe、Thr、Tyrは、これら結合を形成するのに重要である。プロテインL模倣剤親和性支持体は、構造的に上述した11個のアミノ酸に類似する化合物を用いて、トリアジン骨格組合せライブラリを作成することによって開発された(国際公開第2004/035199号参照)。特許文献である国際公開第2004/035199号には、プロテインL模倣剤は、抗体又は断片のためのプロテインL親和性及びFab断片の結合によって証明される軽鎖特異性の50%を有するリガンドとして定義されている。この特許文献に記載された又は当業者に既知である任意の適当な骨格は、軽鎖の親和性及び特異性の特徴が保持される限り、トリアジン骨格に置換することができる。このような樹脂は、κI、II及びIVの軽鎖を含む抗体及び断片の固定化に有用である。プロテインL模倣剤の市販されている1つの実施形態はFabsorbent(登録商標) F1P Hp(プロメティック・バイオサイエシズ社製)である。この親和性支持体は、プロテインL模倣剤の基準を満たすだけでなく、抗体及び断片を含むγ軽鎖をも結合する。したがって、この親和性支持体は、抗体親和性結合及び抱合に汎用的に適用可能である。実施形態において、捕捉樹脂は、プロテインL親和性マトリクスが標的とする抗体軽鎖に結合することができる。
【0144】
第3規定領域は、広範囲の種にわたるすべての抗体アイソタイプのFabアームにおける保存ヌクレオチド・ドメインである。結合部位は4つのアミノ酸残基を有し、1つはTyr又はPheのいずれかであり、残りの3つはTyr、Tyr、及びTrpである。結合ポケット場所及びアミノ酸側鎖配向が結晶構造に保存されるとともに、抗体毎の全体的主鎖配列変異及び番号付けスキームには僅かな差異がある。このことを、以下の表で市販抗体であるハーセプチン(Herceptin)及びリツキシマブ(Rituximab)の保存ヌクレオチド結合部位を比較することによって示す。上述のアミノ酸のうち1つ以上を介してこのドメインと相互作用するよう合理的に設計されたヌクレオチド模倣剤(非ペプチド、ペプチド、ヌクレオチド類似体及びアミノ酸)は、IgG結合及び抱合のための適正な親和性リガンドに適している。
【表3】
【0145】
実施形態において、捕捉樹脂は、抗体のFabアームにおける保存ヌクレオチド・ドメインに結合することができる。
【0146】
第4規定領域は、無欠(インタクト)抗体のFc領域のCH2ドメインにおけるAsn297に存在するグリカン構造である。親和性リガンドとして作用するm-アミノフェニルボロン酸は、糖タンパク質分子のサッカリド(単糖類)部分に存在するマンノース、ガラクトース又はグルコースのような糖類残基におけるシスジオール基に結合する。可逆的五員環錯体がこの相互作用により得られる。代表的な抗体グリカン構造を、以下に抗体グリカンにおけるマンノース及びガラクトースの存在を強調して示す(Adapted from Arnold et al, Advances in Experimental Medicine and Biology, 2005, 564, 27-43参照)。実施形態において、捕捉樹脂は、無欠抗体のFc領域のCH2ドメインにおけるAsn297に存在するグリカン構造に結合することができる。
【表4】
【0147】
リガンドは、親和性クロマトグラフィの分野でよく知られている様々な固体支持マトリクスに付着することができる。これら固体支持マトリクスとしては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール若しくはポリスチレンのような合成ポリマー、とくに架橋合成ポリマー、シリカをベースとする支持体のような無機支持体、及びとくにスターチ、セルロース及びアガロースのような多糖類支持体がある。
【0148】
抗体結合に適する特異的リガンド支持体を以下に示す。
【0149】
「非ペプチド」プロテインA、G及びLの模倣剤親和性支持体
【0150】
合成化学ライブラリのスクリーニングと併用されるプロテインA、G又はLの相互作用の分子モデリングは、これらタンパク質の小分子模倣剤における半合理的設計を可能にした(Li et al, Nature Biotechnology, 1998, 16, 190-195参照)。このような樹脂の例としては、市販の支持体であるmAbsorbent A1P及びFAbsorbent F1P HF(プロメティック・バイオサイエシズ社製)がある。
【0151】
mAbsorbent A1P、mAbsorbent A2PHF及びFAbsorbent F1P HFの支持体は、合成芳香族トリアジン骨格である(www.prometicbioscience.com参照)。
【0152】
米国特許出願公開第2001/0045384号は、イミノ二酢酸塩(IDA)型骨格に集合したプロテインA模倣剤リガンド錯体を開示している。IDA骨格は、トリアジルリガンドで誘導体化し、多価トリアジルリガンド錯体をもたらす。
【0153】
国際公開第9808603号は、親和性樹脂を用いる細胞培養上澄み、血清、血漿又は初乳からの免疫グロブリン単離を記載している。これら親和性樹脂は、単環式若しくは二環式芳香族又は複素環式芳香族のリガンドを有し、免疫グロブリン精製を容易にする。
【0154】
抗体親和性樹脂として見込みがある他のリガンドは、スルファメタジンである。スルファメタジンと結合したデキストラン微粒子は特異的に抗体を結合する(Yi et al, Prep. Biochem. Biotechnol., 2012, 42, 6, 598-610参照)。
【0155】
上述した主要候補リガンドの選択において、多くのリガンドは抗体特異性欠如に基づいて除外された。本明細書において、特異性は、固相抗体抱合体樹脂に対する結合の効率、能力及び安定性よりも重要ではないことを開示し、またしたがって、これらのことを無視するものではない。
【0156】
「ペプチド」プロテインA、G又はLの模倣剤親和性支持体
【0157】
多数のプロテインA模倣剤ペプチドが開示されている。メネガッティ氏は、抗体Fc領域に結合する配列HWRGWVを有するヘキサペプチドを同定した(Menegatti et al, Journal of Separation Science, 2012, 35, 22, 3139-3148参照)。ファッシーナ氏らは、四座リジンコアを有する無作為化された合成分子からなる合成多量体ペプチドライブラリの合成及びスクリーニングによりプロテインA模倣剤ペプチドTG191318を同定した(Fassina et al, J. Mol. Recognit., 1996, 9, 564参照)。欧州特許第1997826号は、X1-Arg-Thr-Tyrを有するペプチドを開示している。ルンド氏らは、抗体親和性クロマトグラフィに適した2つのペプチドリガンドを開示している(Lund et al, J Chromatogr. A, 2012, 1225, 158-167参照)。DAAG及びD
2AAGは、L-アルギニン、L-グリシン及び合成芳香族酸の2, 6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル・アクリル酸塩(DBHBA)を含む。
【0158】
アミノ酸プロテインA、G又はLの模倣剤親和性支持体
【0159】
上述の錯体微粒子リガンドの他に、簡単なアミノ酸が、同一方法で抗体に結合するプロテインA模倣剤として提案された(Naik et al, J. Chromatogr. A, 2011, 1218, 1756-1766参照)。この例は、AbSep、すなわち抗体のFc領域におけるプロテインA結合部位に高い親和性を有するポリメタクリレート樹脂を含むトリプトファンである。アミノ酸のチロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンを含む樹脂も、抗体の固定化及び抱合に適している(Bueno et al, J. Chromatogr. B, Biomed. Appl., 1995; 667, 1, 57-67参照)。
【0160】
ヌクレオチド結合部位親和性支持体
【0161】
抗体精製リガンドを開発する他の戦略は、抗体のFab可変領域におけるよく知られていない保存ヌクレオチド結合部位(NBS)を利用した(Alves et al, Anal. Chem., 2012, 84, 7721-7728参照)。ヌクレオチド類似体であるインドール酪酸を東洋パールAF-650-アミノM樹脂に結合して、上述の基準1〜5を満たす支持体を調合した。抗体親和性クロマトグラフィに有用な極めて多様な他のヌクレオチド類似体は国際公開第2012/099949号に記載されている。
【0162】
炭水化物結合樹脂
【0163】
様々な支持体に固定化されるリガンドであるm-アミノフェニルボロン酸を用いて、糖タンパク質を精製した。このリガンドは、可逆的五員環錯体を形成する抗体を含む糖タンパク質分子のサッカリド(単糖類)部分内に存在するマンノース、ガラクトース又はグルコースのような糖類残基におけるシスジオール基に結合する。この錯体は、pHを低下させることによって、又はトリス若しくはソルビトールを含む溶離緩衝剤を使用することによって、解離することができる。
【0164】
捕捉樹脂のリガンドは、リガンドと、生体分子、例えばタンパク質、抗体、修飾抗体又は抗体断片との間の特異性がある可逆的及び非共有結合の相互作用によって生体分子と相互作用することができる。非共有結合相互作用は、イオン、ファン・デル・ワールス、水素結合又は疎水性によるものとして分類することができる。これら相互作用は3次元的に機能して、捕捉樹脂におけるリガンドに対する標的生体分子の順応性及び立体配座を支援する。リガンドに密に接近するとき、生体分子は、リガンド-生体分子錯体を生ずるこれらの相互作用のうち1つ又は幾つか又はすべてを察知する。リガンドと生体分子との間の距離、並びにリガンドの極性及び電子陰性度がこれら相互作用の強度を決定する。さらに、これら相互作用の強度は親和力として定義することができる。リガンドと生体分子との間の高親和力は安定性が向上したリガンド-生体分子錯体を構成する(米国特許出願公開第2009/0240033号参照)。
【0165】
実施形態において、捕捉樹脂は、非ペプチドをベースとするプロテインA、プロテインG又はプロテインLの模倣剤を有する。捕捉樹脂は抗体、修飾抗体又は抗体断片に結合することができる。
【0166】
非ペプチドベースのプロテインA、プロテインG又はプロテインLの模倣剤を色素リガンドクロマトグラフィ内で使用したが、この色素リガンドクロマトグラフィは、タンパク質を精製するため、アガロースのような固体支持体に固定化される共有結合テキスタイル用色素(染料)を利用する親和性クロマトグラフィの様式である。これら色素は、タンパク質が親和性を有する天然物質/タンパク質リガンドと似ている。精製及び分離のこの様式は、疑似親和性クロマトグラフィと称されることがよくある。色素リガンドクロマトグラフィは非特異性ではあるが、この技術は種々のタンパク質に対して幅の広い結合範囲を有する点で有利である。精製技術における進歩は、タンパク質通常物質/リガンド用の競合的阻害剤として作用する修飾色素を採用した(P. Dean et al, J. Chromatography, 1979, 165, 3, 301-319参照)。Cibacron Blue 3GA、Procion Red H-3B、Procion Blue MX 3G、Procion Yellow H-A等のような、トリアジニルをベースとしたリガンドは、一般的に使用され、またブルーデキストランのような元々の市販色素の純度、漏れ及び毒性に対する心配に対処する(Lowe et al, Trends Biotechnology, 1992, 10, 442-448参照)。トリアジニル・リガンドは、アルブミン、オキシドレダクターゼ(酸化還元酵素)、デカルボキシラーゼ(脱炭酸酵素)、糖分解酵素、ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)、ヒドロラーゼ(加水分解酵素)、リアーゼ、シンテターゼ(合成酵素)、及びトランスフェラーゼ(転移酵素)の精製に成功裏に使用されてきた(N. Labrou, Methods Mol. Biol. 2002, 147, 129-139)。生体分子色素リガンド親和性クロマトグラフィの限界は、生体分子毎に親和性強度が相当変動し、また多くの場合、タンパク質の強い親和性強度をもたらすリガンドは、他のタンパク質に適用できないことがあり得る。したがって、徹底的及び経験的なスクリーニングプロセスに取り組み、関心対象生体分子のための所望親和性を有する適正な合成リガンドを同定する必要がよくある。
【0167】
したがって、生体分子に対する親和性結合をもたらす適正なリガンドの構造解明を支援するために、多価の骨格モチーフをリガンド構造に取り込んで構成体を得るようにしてきたが、この構成体に対してリガンドライブラリがリガンドの支持体からの厳格な空間的隔離との組合せで導入及びスクリーニングされる。
【0168】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは、国際公開第98/08603号の開示に記載された構造による構造を有する。国際公開第98/08603号記載の捕捉樹脂は、免疫グロブリン精製を容易にする合成単環式若しくは二環式芳香族又は複素環式芳香族のリガンドを有する。捕捉樹脂の構造に関連する国際公開第98/08603号の内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。国際公開第98/08603号は、親和性樹脂を用いる細胞培養上澄み、血清、血漿又は初乳からの免疫グロブリン単離を記載している。
【0169】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは国際公開第2009/141384号の開示に記載の構造による構造を有する。国際公開第2009/141384号の捕捉樹脂は以下の一般化学式、すなわち、
【化2】
を有し、ここで、R
1、R
2及びR
3は、15〜1000g/molの分子量である有機部分を表し、全体で200〜2000g/molの分子量であり、これらに対してリガンドがR
1、R
2及びR
3のうち1つによるアミド結合を介して固相支持体に固定化される。捕捉樹脂の構造に関連する国際公開第2009/141384号の内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。国際公開第2009/141384号は、リガンドがタンパク質因子VIIポリペプチドに結合することを記載している。
【0170】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは米国特許出願公開第2001/0045384号に開示に記載された構造による構造を有する。米国特許出願公開第2001/0045384号の捕捉樹脂は、イミノ二酢酸塩(IDA)型骨格に集合したプロテインA模倣剤リガンド錯体である。捕捉樹脂構造に関連する米国特許出願公開第2001/0045384号の内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。IDA骨格はトリアジルリガンドで誘導体化し、多価トリアジルリガンド錯体をもたらす。米国特許出願公開第2001/0045384号で定義された事例的トリアジルリガンド錯体を以下に示す。
【化3】
【0171】
このプロテインA模倣剤は、IgGのような免疫グロブリンのための親和性精製媒体として有用性があることが実証されている。リガンド-錯体における隣接のトリアジンリガンドの分子ジオメトリがIDA骨格を使用する上で好都合であることを前提とする。
【0172】
米国特許出願公開第2001/0045384号で定義された他の事例的錯体を以下に示す。
【化4】
【0173】
この分岐多価フタル酸-リガンド骨格のプロテインA模倣剤リガンド-錯体は免疫グロブリンに対する親和性を有することが実証された。
【0174】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは、国際公開第97/10887号及び米国特許第6117996号の開示に記載された構造による構造を有する。捕捉樹脂の構造に関連する国際公開第97/10887号及び米国特許第6117996号の内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。国際公開第97/10887号及び米国特許第6117996号は、以下のタイプのトリアジル-リガンド親和性構成体を開示している。
【化5】
ここで、(A) は、随意的に、リガンドと固体支持体との間に介在するスペーサアームを介しての多糖類固体支持体に対するトリアジン骨格の共有結合ポイントを表し、またR
1及びQは、随意的に、タンパク質材料の代わりに親和性を有する置換リガンドである。有機部分はプロテインA模倣剤として表され、またタンパク質材料を精製するためのプロテインAの代替的精製媒体として提案されまれ例示される。
【0175】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは国際公開第2004/035199号の開示に記載の構造による構造を有する。国際公開第2004/035199号の内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。国際公開第2004/035199号は、以下の一般化学式、すなわち、
【化6】
の分岐リガンド骨格を有するプロテインL模倣剤の使用を開示しており、ここでR
1及びR
2は、互いに同一又は異なり、かつそれぞれ随意的に、置換したアルキルリガンド又はアリールリガンドであり、またR
3は、スペーサモチーフが随意的に、付着する固体支持体である。トリアジル-リガンド骨格は、免疫グロブリン又は免疫グロブリンの断片抗体(fAb)における親和性結合のために適したプロテインL模倣剤リガンドとして開示されている。さらに、これらトリアジル-リガンド骨格は、免疫グロブリンΚ及びλ軽鎖に対する選択的結合親和性を有すると開示されている。
【0176】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは米国特許出願公開第2011/0046353号の開示に記載の構造による構造を有する。捕捉樹脂の構造に関連する米国特許出願公開第2011/0046353号の内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする。米国特許出願公開第2011/0046353号は、産生媒剤からの断片抗体(fAb)の精製を開示している。断片抗体はプロテインA媒剤において精製できない。fAbは、抗体に結合できる結合ドメインを有するものとして特徴付けされ、多くの実施形態において、1つの重鎖(Vh)又はその重鎖の機能性断片、及び1つの軽鎖(Vl)又はその軽鎖の機能性断片、とともに少なくとも1つの他の鎖から構成されると記載されている。fAbのための親和性リガンドは以下の化学式、すなわち、
【化7】
の分岐トリアジル骨格からなるものと定義されており、ここでQは、随意的にスペーサモチーフを有する固体支持体マトリクスに対する付着ポイントを表し、基A及びBは、水素結合できる1つ以上の置換基、好適には−OH、−SH、又は−CO
2Hのうち1つ以上で置換したフェニル基又はナフチル基である。プロメティック・バイオサイエンシズ社からMAbsorbent A1P及びMAbsorbent A2P及びFAbsorbent F1Pの商品名の下で市販入手可能な支持親和性リガンドを用いて優れた結果が報告されている。
【0177】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは次式の構造を有する、すなわち、
【化8】
【0178】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは次式の構造を有する、すなわち、
【化9】
【0179】
実施形態において、捕捉樹脂のリガンドは次式の構造を有する、すなわち、
【化10】
【0180】
実施形態において、捕捉樹脂はビーズの形式である。実施形態において、ビーズ直径で見たビーズサイズは、約10μm〜約2000μm、好適には約50μm〜約1000μm、最も好適には約75μm〜約500μmである。
【0181】
実施形態において、捕捉樹脂としては、ポリスチレン、ジビニルベンゼン(マクロ多孔性であると言われる、0.1〜5.0%DVB)で軽度架橋したポリスチレン(PS-DVB)、ジビニルベンゼン(マクロ多孔性であると言われる、5〜60%DVB)で高度架橋したポリスチレン(PS-DVB)、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールでグラフト化したポリスチレン(PS-PEGコポリマー)、ポリアクリルアミド、制御孔ガラス(CPG)ビーズ、シリカ、珪藻土、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、セルロース、ポリメタクリレート、機能化モノリス、機能化繊維、一体型カラム(Nikzad et al, OPRD, 2007, 11, 458-462に記載のような)、機能化薄膜、アガロース、セファロース及び磁気回収可能なポリマービーズがある。
【0182】
好適な実施形態において、捕捉樹脂は、アガロース、セファロース及びセルロースよりなるグループから選択した材料で形成した可動支持体とする。
【0183】
実施形態において、捕捉樹脂は、Fabsorbent(登録商標) F1P HF樹脂のような市販の捕捉樹脂とする。実施形態において、捕捉樹脂は、Mabsorbent(登録商標) A1P又はA2P樹脂のような市販の捕捉樹脂とする。
【0184】
生体分子
実施形態において、生体分子は生命有機体内で自然に生ずるものである。代案として、生体分子は、生命有機体内で自然に生ずる化合物の誘導体とすることができる。例えば、生体分子は、生理学的活量に影響を与えないよう化学的又は遺伝的に改変した生体分子であり得る。したがって、実施形態において、生体分子は、組み換え型生体分子、例えば、組み換え技術操作した又は組み換え式に修飾した生体分子である。
【0185】
実施形態において、生体分子は抗体である。
【0186】
実施形態において、生体分子は、修飾抗体、例えば非天然アミノ酸を含む抗体である。
【0187】
実施形態において、生体分子は抗体断片である。
【0188】
実施形態において、生体分子はモノクローナル抗体である。
【0189】
実施形態において、生体分子はトラスツズマブである。
【0190】
実施形態において、抗体、修飾抗体又は抗体断片は、免疫グロブリン(Ig)、例えば5つのヒト免疫グロブリンクラス、すなわち、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEのうち1つである。用語「抗体」はモノクローナル抗体を包含する。用語「抗体」はポリクローナル抗体を包含する。用語「抗体」は、所望の生理学的活量を示す限り抗体断片を包含する。抗体は、ヒト抗体、動物抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、又はヒト配列及び動物配列を有するキメラ抗体であり得る。
【0191】
抗体構造の基本単位は、少なくとも20,000ダルトン、例えば、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質複合体である。抗体は、長さが少なくとも900個のアミノ酸、例えば1400個のアミノ酸である。抗体は、非共有結合性会合及びジスルフィド結合の双方によって架橋した2個の同一軽鎖及び2個の同一重鎖を有する。重鎖及び軽鎖それぞれは、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有する。各重鎖は約50,000ダルトンである。各重鎖は、長さが少なくとも300個のアミノ酸、例えば、長さが約450個のアミノ酸である。抗体は、重鎖のみを有する抗体であり得る。各軽鎖は約20,000ダルトンである。各軽鎖は、長さが少なくとも100個のアミノ酸、例えば、長さが約250個のアミノ酸である。
【0192】
抗体生体分子は、2対の同一ポリペプチド鎖を含むことができ、各対は、1個の軽鎖及び1個の重鎖を有する。軽鎖及び重鎖それぞれは、2つの領域、すなわち、標的抗原を結合することに関与する可変(「V」)領域、及び免疫系の他の成分と相互作用する定常(「C」)領域からなる。軽鎖及び重鎖における可変領域は、一緒に3次元的空間内で抗原を結合する可変領域(例えば、細胞表面の受容体)を形成する。
【0193】
実施形態において、生体分子は抗体断片である。抗体断片は、完全長抗体の一部、概して、完全長抗体の抗原結合領域又は可変領域を有する。
【0194】
抗体断片の例としては、Fab、pFc’、F(ab’)2、及びscFvの断片;二重特異性抗体;dsFvリニア抗体;アフィボディ;ミニボディ、一本鎖抗体の生体分子があり、ナノボディ及び可変新規抗原受容体(VNARs)並びに抗体断片から形成される多特異性抗体を含む。抗体断片は、長さが少なくとも10個のアミノ酸である場合があり、例えば、抗体断片は、長さが少なくとも20個、40個、60個、80個、100個、120個、140個、160個、180個、200個、220個、240個、260個、280個、300個のアミノ酸であり得る。
【0195】
実施形態において、生体分子は修飾抗体又は修飾抗体断片である。「修飾抗体」又は「修飾抗体断片」は、少なくとも1個のアミノ酸修飾の理由から親抗体とは異なる抗体を意味する。修飾抗体又は修飾抗体断片は、本発明方法を受けさせる前に、(例えば、非天然アミノ酸等に対して)予め化学修飾した又は酵素修飾した又は遺伝子操作した抗体又は抗体断片である。
【0196】
修飾抗体又は修飾抗体断片は、野生型抗体との比較でサイズの異なる抗体、又は糖鎖付加の点で異なるが、野生型抗体と同様の親和性を有する抗体に言及する。
【0197】
薬剤
【0198】
用語「薬剤」は、生命有機体内に投与されるとき、通常の生体機能を変化させるいかなる物質をも含む。概して、薬剤は、疾患の処置、治癒、予防、若しくは診断に使用される、又はその他に身体的若しくは精神的な健全性を向上するのに使用される物質である。実施形態において、薬剤は細胞毒性薬物である。
【0199】
今日までに至る先進的な「特効」(薬)候補は、2つのカテゴリー、すなわち、(i) チューブリン阻害剤、及び(ii) DNA相互作用剤のうち1つで定義されている。チューブリン阻害剤はチューブリン重合を調整する。DNA相互作用剤は細胞DNAを標的にする。
【0200】
実施形態において、薬剤はチューブリン阻害剤である。
【0201】
実施形態において、チューブリン阻害剤は、(a) オーリスタチン、及び(b) メイタンシン誘導体よりなるグループから選択される。
【0202】
実施形態において、薬剤はオーリスタチンである。
【0203】
オーリスタチンは、天然由来化合物であるドラスタチン−10の合成誘導体を含む。オーリスタチンは、抗腫瘍性/細胞毒性擬ペプチド群である。ドラスタチンは、天然生合成生成物において同定されている4個の異常アミノ酸(Dolavaine, Dolaisoleuine, Dolaproine 及び Dolaphenine)を取り込むことにより構造的に独特である。さらに、天然生成物のこのクラスは、ペティット氏らによる全体的合成研究によって定義された多くの非対称中心を有する(米国特許第4,978,744号参照)。構造活性の関係性から、Dolaisoleuine及びDolaproine残基は抗腫瘍性活量に必要であることが分かっている(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号参照)。
【0204】
実施形態において、オーリスタチンは、オーリスタチンE(AE)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、オーリスタチンF(MMAF)、vcMMAE、及びvcMMAFよりなるグループから選択される。
【0205】
実施形態において、薬剤はメイタンシン又はメイタンシンの構造的類似体である。
【0206】
実施形態において、薬剤はメイタンシンである。
【0207】
メイタンシンは複雑構造の抗有糸分裂性ポリケチドを含む。メイタンシンは、腫瘍細胞のアポトーシスに導く微小チューブリン集合体に対する効能がある阻害剤である。
【0208】
実施形態において、メイタンシンは、メルタンシン(DM1)、及びDM3又はDM4のようなメイタンシンの構造的類似体よりなるグループから選択される。好適には、薬剤はメルタンシン(DM1)である。
【0209】
実施形態において、薬剤はDNA相互作用剤である。DNA相互作用剤は「特効」(ultra-potent)(薬)候補として知られている。
【0210】
実施形態において、DNA相互作用剤は、(a) カリケアマイシン、(b) デュオカルマイシン、及び(c) ピロロベンゾジアゼピン(PBDs)よりなるグループから選択される。
【0211】
実施形態において、薬剤はカリケアマイシンである。
【0212】
カリケアマイシンは、二重鎖DNAを破壊して細胞死を生ぜしめる効き目がある細胞毒性薬である。カリケアマイシンは、天然由来のエンジイン抗生物質である(A. L. Smith et al, J. Med. Chem., 1996, 39,11, 2103-2117参照)。カリケアマイシンは、土壌微生物であるミクロモノスポラ・エキノスポラで発見された。
【0213】
実施形態において、カリケアマイシンは、カリケアマイシンγ1である。
【0214】
実施形態において、薬剤はデュオカルマイシンである。
【0215】
デュオカルマイシンは効き目のある抗腫瘍抗生物質であり、DNA二本鎖の副溝に対して配列選択的に結合し、またアデニンのN3をアルキル化することによって生理学的効果を発揮する(D. Boger, Pure & Appl. Chem., 1994, 66, 4, 837-844参照)。
【0216】
実施形態において、デュオカルマイシンは、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンC1、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、シクロプロピルベンゾインドール(CBI)デュオカルマイシン、センタナマイシン、レイチェルマイシン(CC-1065)、アドゼレシン、ビセレシン、及びカルゼレシンよりなるグループから選択される。
【0217】
実施形態において、薬剤はピロロベンゾジアゼピンである。
【0218】
ピロロベンゾジアゼピン(PBDs)は、天然由来の抗腫瘍抗生物質のクラスである。ピロロベンゾジアゼピンはストレプトマイセスで発見されている。PBDsは、プリン・グアニン・プリンの単位に特異的な副溝におけるDNAに共有結合することによって、その抗腫瘍活性を発揮する。動物連携を介してグアニンのN2に挿入し、それらの形状に起因してDNA螺旋に対して最小分裂を引き起こす。DNA−PBD付加物形成は、核酸合成を阻害し、またDNA螺旋に切除による一本鎖及び二本鎖破壊を引き起こす。合成誘導体として、可撓性ポリメチレンのテザーを介する2つのPBD単位の結合によれば、PBD二量体を対向するDNA鎖を架橋して、高度な致死傷害を生ずることができる。
【0219】
実施形態において、薬剤は、可撓性ポリメチレンのテザーを介して結合された2つのピロロベンゾジアゼピン単位の合成誘導体である。
【0220】
実施形態において、ピロロベンゾジアゼピンは、アントラマイシン(及びその二量体)、マゼトラマイシン(及びその二量体)、トメイマイシン(及びその二量体)、プロトラカルシン(及びその二量体)、チカマイシン(及びその二量体)、ネオトラマイシンA(及びその二量体)、ネオトラマイシンB(及びその二量体)、DC−81(及びその二量体)、シビロマイシン(及びその二量体)、ポロトラマイシンA(及びその二量体)、ポロトラマイシンB(及びその二量体)、シバノマイシン(及びその二量体)、アビーマイシン(及びその二量体)、SG2000、及びSG2285よりなるグループから選択される。
【0221】
実施形態において、薬剤は、アルキル化によりDNA鎖間架橋を標的とする薬剤である。アルキル化によりDNA鎖間架橋を標的とする薬剤は、DNA標的マスタード、グアニン特異的アルキル化剤、及びアデニン特異的アルキル化剤から選択される。
【0222】
実施形態において、薬剤はDNA標的マスタードである。例えば、DNA標的マスタードは、オリゴピロール、オリゴイミダゾール、ビス-(ベンズイミダゾール)担体、ポリベンズアミド担体、及び9-アニリノアクリジン-4-カルボキサミド担体よりなるグループから選択することができる。
【0223】
実施形態において、薬剤は、ネトロプシン、ジスタマイシン、レキシトロプシン、タリムスチン、ジブロモタリムスチン、PNU157977、及びMEN10710よりなるグループから選択される。
【0224】
実施形態において、薬剤はビス-(ベンズイミダゾール)担体である。好適には、薬剤はヘキスト33258である。
【0225】
グアニン特異性アルキル化剤は、特異ヌクレオチド位置で反応する高度に部位特異的アルキル化剤である。
【0226】
実施形態において、薬剤は、G−N2アルキル化剤、A−N3アルキル化剤、ミトマイシン、カルメチゾール類似体、エクテイナシジン類似体よりなるグループから選択される部位特異的アルキル化剤である。
【0227】
実施形態において、ミトマイシンは、ミトマイシンA、ミトマイシンC、ポルフィロマイシン、及びKW-2149から選択される。
【0228】
実施形態において、カルメチゾール類似体は、ビス-(ヒドロキシメチル)ピロリジジン、及びNSC602668から選択される。
【0229】
実施形態において、エクテイナシジン類似体はエクテイナシジン743である。
【0230】
アデニン特異的アルキル化剤は、ポリピリミジン配列におけるアデニンのN3に反応する部位特異的かつ配列特異的副溝アルキル化剤である。シクロプロパインドロン(Cyclopropaindolones)及びデュオカルマイシンは、アデニン特異的アルキル化剤として定義することができる。
【0231】
実施形態において、薬剤はシクロプロパインドロン類似体である。好適には、薬剤は、アドゼレシン及びカルゼルシンから選択される。
【0232】
実施形態において、薬剤はベンズインドロン(benz[e]indolone)である。好適には、薬剤はCBI-TMI、及びイソ-CBIから選択される。
【0233】
実施形態において、薬剤はビセレシンである。
【0234】
実施形態において、薬剤は海洋性抗腫瘍薬である。海洋性抗腫瘍薬は、抗腫瘍薬開発活動領域における発展しつつある分野となっている((I. Bhatnagaret al,Mar. Drugs 2010, 8, P2702-2720 and T. L. Simmons et al, Mol. Cancer Ther. 2005, 4(2), P333-342参照)。海綿、海綿微生物共生群集、ヤギ目サンゴ虫、放線菌、及び軟質サンゴを含む海洋生物は、潜在的能力がある抗がん剤として広く調査されてきた。
【0235】
実施形態において、薬剤は、シタラビン、Ara-C、トラベクテジン(ET-734)、及びエリブリンメシル酸塩から選択される。
【0236】
実施形態において、エリブリンメシル酸塩は、(E7389)、ソブリドチン(TZT 1027)、乳酸スクアラミン、セマドチン・プリナブリン(NPI-2358)、プリチデプシン、エリシデプシン、ザリプシス(Zalypsis)、トラシドチン、シンサドチン、(ILX-651)、ディスコデルモリド、HT1286、LAF389、カハラリドF、KRN7000、ブリオスタチン1、ヘミアステルリン(E7974)、マリゾミブ、サリノスポラミドA、NPI-0052、LY355703、CRYPTO52、デプシペプチド(NSC630176)、エクテイナシジン743、シンサドチン、カハラリドF、スクアラミン、デヒドロジデムニンB、ジデムニンB、セマドチン、ソブリドチン、E7389、NVP-LAQ824、ディスコデルモリド、HTI-286、LAF-389、KRN-7000(アジェラスフィン誘導体)、クラシンA、DMMC、サリノスポラミドA、ラウリマライド、ビチレブアミド、ジアゾナミド、エリュテロビン、サルコジクチン、ペロルシドA、サリチルハラミドA及びB、チオコラリン、アシジデミン、ヴァリオリン(Variolin)、ラメラリンD、ジクチオデンドリン、ES-285(スピスロシン)及びハリコンドリンBから選択される。
【0237】
以下の薬剤、すなわち、テングタケ属の担子菌、例えばグリーン・デスキャップ・マッシュルームによって産生されるアマトキシン(α-アマニチン)-二環式オクタペプチド、ツブリシン、サイトリシン、ドラベラニン、エポチロンA、B、C、D、E、Fも本発明に包含される。
【0238】
エポチロンは、非タキサンチューブリン重合剤のクラスを構成し、粘液細菌ソランギウム・セルロサムの自然発酵によって得られる。これら部分は、微小管の安定化に関連し、また結果としてG2/M遷移部における有糸分裂停止を生ずる強力な細胞毒性活量を有する。エポチロンは、がん細胞株団にわたる強力な細胞毒性が実証され、またしばしばパクリタキセルよりも強い効力を示していた(X. :Pivot et al, European Oncology,2008;4(2), P42-45参照)。
【0239】
実施形態において、薬剤はアマトキシンである。
【0240】
実施形態において、薬剤はチューブリシン(tubulysin)である。
【0241】
実施形態において、薬剤は細胞溶解素である。
【0242】
実施形態において、薬剤はドラベラニン(dolabellanin)である。
【0243】
実施形態において、薬剤はエポチロンである。
【0244】
以下の薬剤も本発明によって包含される。実施形態において、薬剤は、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、デトルビシン、モルホリノ-ドキソルビシン、メトトレキサート、メトプテリン、ブレオマイシン、ジクロロメトトレキサート、5-フルオロウラシル、シトシン-β-D-アラビノフラノシド、タキソール、アングイジン、メルファラン、ビンブラスチン、ホモプシンA、リボソーム-不活化タンパク質(RIPs)、ダウノルビシン、ビンカ・アルカロイド、イダルビシン、メルファラン、シス-プラチン、リシン、サポリン、アントラサイクリン、インドリノ-ベンゾジアゼピン、6-メルカプトプリン、アクチノマイシン、ロイロシン、ロイロシデイン(Leurosidein)、カルミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン、エトポシド、ヘアピンポリアミド、リン酸エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、レチノイン酸タキソテール、N8-アセチルスペルミジン、カンプトテシン、エスペラミシン、及びエン-ジインから選択される。
【0245】
実施形態において、薬剤はドキソルビシンである。
【0246】
実施形態において、薬剤はエピルビシンである。
【0247】
実施形態において、薬剤はエソルビシンである。
【0248】
実施形態において、薬剤はデトルビシンである。
【0249】
実施形態において、薬剤はモルホリノ-ドキソルビシンである。
【0250】
実施形態において、薬剤はメトトレキサートである。
【0251】
実施形態において、薬剤はメトプテリンである。
【0252】
実施形態において、薬剤はブレオマイシンである。
【0253】
実施形態において、薬剤はジクロロメトトレキサートである。
【0254】
実施形態において、薬剤は5-フルオロウラシルである。
【0255】
実施形態において、薬剤はシトシン-β-D-アラビノフラノシドである。
【0256】
実施形態において、薬剤はタキソールである。
【0257】
実施形態において、薬剤はアングイジンである。
【0258】
実施形態において、薬剤はメルファランである。
【0259】
実施形態において、薬剤はビンブラスチンである。
【0260】
実施形態において、薬剤はホモプシンAである。
【0261】
実施形態において、薬剤はリボソーム-不活化タンパク質(RIPs)である。
【0262】
実施形態において、薬剤はダウノルビシンである。
【0263】
実施形態において、薬剤はビンカ・アルカロイドである。
【0264】
実施形態において、薬剤はイダルビシンである。
【0265】
実施形態において、薬剤はメルファランである。
【0266】
実施形態において、薬剤はシス-プラチンである。
【0267】
実施形態において、薬剤はリシンである。
【0268】
実施形態において、薬剤はサポリンである。
【0269】
実施形態において、薬剤はアントラサイクリンである。
【0270】
実施形態において、薬剤はインドリノ-ベンゾジアゼピンである。
【0271】
実施形態において、薬剤は6-メルカプトプリンである。
【0272】
実施形態において、薬剤はアクチノマイシンである。
【0273】
実施形態において、薬剤はロイロシンである。
【0274】
実施形態において、薬剤はロイロシデイン(Leurosidein)である。
【0275】
実施形態において、薬剤はカルミノマイシンである。
【0276】
実施形態において、薬剤はアミノプテリンである。
【0277】
実施形態において、薬剤はタリソマイシンである。
【0278】
実施形態において、薬剤はポドフィロトキシンである。
【0279】
実施形態において、薬剤はエトポシドである。
【0280】
実施形態において、薬剤はヘアピンポリアミドである。
【0281】
実施形態において、薬剤はリン酸エトポシドである。
【0282】
実施形態において、薬剤はビンブラスチンである。
【0283】
実施形態において、薬剤はビンクリスチンである。
【0284】
実施形態において、薬剤はビンデシンである。
【0285】
実施形態において、薬剤はレチノイン酸タキソテールである。
【0286】
実施形態において、薬剤はN8-アセチルスペルミジンである。
【0287】
実施形態において、薬剤はカンプトテシンである。
【0288】
実施形態において、薬剤はエスペラミシンである。
【0289】
実施形態において、薬剤はエン-ジインである。
【0290】
生体分子-薬剤-抱合体
本発明によれば、本発明プロセスによって得られる生体分子-薬剤-抱合体を提供する。
【0291】
本発明の実施形態をさらに添付図面につき以下に説明する。