【実施例】
【0046】
UV可視分光器を使用して、8つの異なる濃度でのマレイン酸チモロール標準溶液の295λでのUV吸光度の量を測定した。次に、マレイン酸チモロールの295λでの吸光度と濃度との間に、較正曲線を生成した(
図1)。方程式は、y切片を無理にゼロに合わせてはおらず、r2値が0.9999であった。実験サンプル中のチモロールの濃度を、標準曲線を用いて求めた。
【0047】
実施例1:リン酸カルシウムナノ粒子を含有するカーボポールハイドロゲル中のチモロール製剤
【0048】
開放隅角緑内障は、視神経乳頭の萎縮をもたらし、視力喪失と関連する視神経症として定義されている眼疾患である。増加した眼内圧(IOP)は、緑内障の患者に存在し得る。緑内障を治療するための薬理学的療法は、IOPを低下させることに焦点を当てている。眼房水と呼ばれる透明な流体は、IOPを維持する。ヒトの眼の前面は、眼房水で満たされており、眼房水は、毛様体によって絶えず生成されている。IOPを維持することに加えて、眼房水は、眼のための栄養を保護し、供給する。眼房水は、眼から排出され、鼻涙管を通って患者の体循環へと入る。緑内障は、しばしば、眼房水の排出が阻害され、それによりIOPが増加することに起因する。IOPの低下は、眼房水の流出が増加すること、または眼房水の生成が減少することによって達成され得る。米国眼科緑内障学会(American Academy of Ophthalmology Glaucoma)のガイドラインによれば、眼用プロスタグランジン類似体および眼用ベータ遮断薬は、両方とも、開放隅角緑内障の初期治療における一次療法と考えられている。
3プロスタグランジン類似体は、眼房水の流出を増加させ、ベータ遮断薬と比較してIOPの減少が優っていることが示されている。プロスタグランジン類似体の使用は、虹彩の褐変ならびに睫毛の伸びおよび暗色化という有害作用により、本来制限されている。これらの有害作用は、1つの眼に緑内障がある患者でとくに問題である。眼用ベータ遮断薬は、眼房水の生成を抑制し、プロスタグランジン類似体が引き起こす美容への有害作用を回避する。眼用ベータ遮断薬の主要な制限事項は、鼻涙管を通ってベータ遮断薬が全身に吸収されることにより生じ得る全身性有害作用の可能性である。これらの有害作用のいくつかとして、徐脈、心ブロック、心不全、および喘息が挙げられる。これらの有害作用は、特に、未知の潜在的な心臓または肺の異常がある患者に関連がある。
【0049】
この研究において、ベータ遮断薬マレイン酸チモロールを、長年にわたり使用されてきたことと、美容への有害作用を回避することとから、開放隅角緑内障の患者の治療のために選択した。眼用マレイン酸チモロールを投与するために使用し得る、様々な薬剤送達システムがある。マレイン酸チモロール溶液は、粘性が低く、そのため、溶液からの薬剤放出速度が速くなるということに起因する多くの欠点を有する。眼用溶液により示される流動のしやすさは、活性なマレイン酸チモロールが、眼内の作用部位を離れ、体循環へと流出することを可能にする。
4眼用マレイン酸チモロールの商業生産から最初の7年間に、製品によって引き起こされた推定死亡者数は37であった。これらの死亡は、マレイン酸チモロールが全身に吸収されたときに引き起こし得る有害な循環器、肺、CNS、および内分泌の作用に起因すると理論づけられた。
5診断未確定の循環器、肺、CNS、および内分泌の障害を有する無数の患者がいるため、マレイン酸チモロールの有害作用のリスク
が増加している患者を適切に特定することは、難題である。
【0050】
眼用ゲルは、眼用溶液の使用に伴い経験される問題の一部を解決するために使用されてきた。眼用ゲルは、予め形成されたゲル、または生体内で形成するゲルであり得る。理想的な生体内で形成するゲルは、非生理的条件(pH4.0かつ25℃)で自由流動性液体であるが、生理的条件(pH7.4かつ37℃)に晒されると、粘性が増して強固なゲルに転移する。この転移は、点眼による薬剤の一貫した、再現性のある投与を可能にする。対照的に、予め形成されたゲルは、一貫した、再現性のある投与量で投与することが難しい。予め形成された眼用ゲルは、従来チューブで供給され、患者は、リボン状のゲルを下眼瞼のポケットに押し入れるように指示されるが、投薬過誤が容易に起こり得る。眼用ゲルは、薬剤の放出速度を低下させ、作用部位での滞留時間を延ばし、鼻涙管を通じた排出を減少させることができる。投与頻度の減少、使用する薬剤濃度の低下、および全身性吸収の減少は、全て、溶液と比較して、ゲルの使用に起因し得る。ゲルの主要な制限事項は、ゲルの高い粘性による不快感およびかすみ目の可能性である。
【0051】
ポリマーを眼用ゲルの製造に使用する。カルボマーは、高分子量非直線状ポリアクリル酸であり、多くの有益な特性を有する架橋ポリマーである。カルボマーは、擬塑性を呈する非ニュートン性ポリマーである。擬塑性は、ずり速度の増加が粘性を減少させるので、眼用ゲルに好ましい。まばたきの間のずり速度は、約10000s
−1であり、このずり速度での粘性の減少は、抵抗を減らし、まばたきの間の患者の快適性を向上し得る。カルボマーは、pHが4.0より高くなると、溶液からゲルへ転移する。生理的pHは、カルボマーが眼の生理的条件でゲルになることを示す7.4である。投与前ではポリマーが溶液の形態であることは、点眼による一貫した投与を可能にし得る。この研究において、我々は、予め形成されたゲルを製造することとし、従って、生体内のゲル化特性の利点を利用しないこととする。眼用ゲルの一貫した投与における難しさは、本実験に使用する製品の使用に対する障壁となり得る。また、カルボマーは、懸濁能力を高める5,500dyn/cm
2という高い降伏値を有する。眼用送達システムに特に関係があるカルボマーの透明性は、0.5%未満の濃度で高い。
8カルボマーポリマーは、内在性の緩衝能を促進する、その化学構造に組み込まれたカルボキシル官能基を有する。ヒトの涙は、それ自体で緩衝能を有するが、眼用製品の投与の際の不快感を避けるために、薬剤は、涙のpHである7.4にできるだけ近いべきである。カルボマーの緩衝能は、このことに役立ち得る。カルボマーゲルおよび眼用溶液を比較するこれまでの研究において、カルボマーゲルは、全身性吸収の減少、薬剤濃度対時間特性の均一化、薬剤の有効濃度の低下を示した。また、カルボマーは、様々な剤形、例えば、眼用、局所用、経口用、直腸内用、膣用、および口腔用製品で使用されてきたので、カルボマーの使用の良好な安全性は確立されている。
【0052】
カルボマーポリマーは、様々なグレードで手に入る。この研究において、カルボマー980を使用することにする。カルボマーの粘性は、ポリマーの濃度に依存する。カルボマー940および980は、その他のカルボマーのグレードと比較して、より低い濃度で最高の粘性を有する。粘性は眼用薬剤の眼内の滞留を増加させることが示されているので、高い粘性が望ましいであろう。カルボマー940は、カルボマー980に対して、粘性をわずかに増加させた。カルボマー940および980は、その他の類似の特性、例えば、高い透明性、低い相対的イオン耐性、および高い相対的せん断応力を有する。これらは、低いイオン耐性を除いて、全て、眼用ゲルの望ましい特性であり、低いイオン耐性は後の考察で扱うこととする。高い透明性は、これらの製品を眼に投与するため、望ましい特性である。高い相対的せん断応力は、ポリマーが処理される間、原形を保つことを可能にし得る。全体として、カルボマー940および980は、眼用ゲルを製造するときに有益であり得る特性を有する。0.5%のカルボマー980を本実験においてゲルに使用することにする。ポリマー濃度が0.2%より低いと、強固なゲルは生理的条件で形成できない
が、濃度が0.5%より高い場合、ゲルは硬くなり、患者に不快感を与えるリスクが高まり、酸性は、ゲルが中和しにくくなるので、このポリマー濃度を選んだ。0.5%より高い濃度では、透明性も減少する。
8
【0053】
また、固体リン酸カルシウムナノ粒子をカルボマーゲルに添加することにする。リン酸カルシウムナノ粒子の目的は、マレイン酸チモロールの放出速度をさらに下げることである。上述したように、ゲルの粘性の増加は、ゲル内および作用部位での薬剤の滞留時間を増加させ、全身性吸収を減少させるが、代償として、かすみ目の悪化、および快適性の低下がある。リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、ゲルの粘性をさらに増加させることなく、薬剤の滞留時間を増加する効果を潜在的に有し得る。リン酸カルシウムナノ粒子は、追加的な障壁として作用するようになり、薬剤は、カルボマーゲルから放出されるために動き回らなければならないので、滞留時間が増加し得る。
【0054】
リン酸カルシウムナノ粒子の取り込みに関して、カルボマーは、カルボキシル官能基の存在および高い降伏値などの望ましい特性も有する。カルボキシル官能基は、分散に役立つリン酸カルシウムナノ粒子との強固な結合を形成でき、高い降伏値は、マレイン酸チモロールおよびリン酸カルシウムナノ粒子の良好な懸濁を可能にし得る。リン酸カルシウムナノ粒子を使用するときのカルボマーの潜在的な不都合として、その低いイオン耐性が挙げられるが、これは、リン酸カルシウムナノ粒子の不溶性に起因する問題であるとは考えられていない。
【0055】
目的
この研究の目的は、ゲルに取り込ませたリン酸カルシウムナノ粒子の濃度を変化させながら、カルボマーゲルからのマレイン酸チモロールの放出速度を測定することである。マレイン酸チモロールの放出速度の低下がリン酸カルシウムナノ粒子により生じた障壁によるものである場合、眼内の滞留時間の増加、およびマレイン酸チモロールの全身性吸収の減少という結果が観察され得る。これらの特性を有する眼用薬剤送達システムの発見は、薬剤有害事象の減少、投与頻度の減少、必要な薬剤濃度の低下、忍容性の向上、および眼用医薬品の患者の服用順守の改善をもたらし得る。
【0056】
方法
本実験の全体設計は、マレイン酸チモロールからなる眼用カルボマーゲルからのマレイン酸チモロールの放出速度を測定すること、およびリン酸カルシウムナノ粒子の濃度を変えることである。これを、溶液、ゲル、およびリン酸カルシウムナノ粒子からなるゲルを含む数種類のマレイン酸チモロール製剤を製造することによって達成した。製剤を透析管に入れ、管をリン酸緩衝食塩水のビーカーに置いた。吸い込み条件の存在により、マレイン酸チモロールは、透析管の内側からビーカーに流れた。サンプルをビーカーから取り出し、マレイン酸チモロールの濃度を吸光度測定値により求めた。製剤の放出速度を比較して、カルボマーゲルへのリン酸カルシウムナノ粒子の添加がマレイン酸チモロールの放出速度を減少させたかどうかについて判定した。リン酸カルシウムナノ粒子の濃度がマレイン酸チモロールの放出速度に与える影響も調べた。
【0057】
この研究の第1ステップは、標準較正曲線を作成して、マレイン酸チモロールの吸光度と濃度の間の関係を求めることであった。ベアーの法則を利用して、キュベットの大きさのより通過する放射の経路の長さが10cmと等しいことを用い、この関係を求めた。マレイン酸チモロール塩およびリン酸緩衝食塩水を混合して、放出速度研究の間100mLビーカーのリン酸緩衝食塩水中に存在し得るマレイン酸チモロールの可能総濃度が10%、20%、40%、60%、80%、および100%の濃度であるマレイン酸チモロール溶液を製造した。1mLの0.68%マレイン酸チモロールを、100mLビーカーのリン酸緩衝食塩水中に置かれた透析管に入れたことに着目して、マレイン酸チモロールの可
能総濃度を計算した。マレイン酸チモロールが透析管に残り、100mLのリン酸緩衝食塩水で希釈した。従って、101mLの溶液中の1mLの0.68%マレイン酸チモロールにより、可能な総濃度が0.06733mg/mLとなった。0.0067g/100mlの貯蔵溶液をリン酸緩衝食塩水を用いて製造した。この貯蔵溶液のうち1mL、2mL、4mL、6mL、8mL、および10mLを、リン酸緩衝食塩水と混合して、それぞれ、マレイン酸チモロールの総濃度が10%、20%、40%、60%、80%、および100%の合計10mLの溶液を製造した。UV可視分光器を使用して、各溶液の吸光度を測定した。様々な濃度のマレイン酸チモロールは、様々な量の吸収放射をもたらした。吸光度対濃度のプロットを作り上げ、線形回帰を使用して、直線の方程式を作った。直線の方程式は、ベアーの法則に対応し、溶液またはゲルの吸光度を与えれば、マレイン酸チモロール濃度の特定が可能となった。マレイン酸チモロール溶液またはゲルの吸光度が、吸光度対濃度のプロットの直線領域に留まっている場合、吸光度および濃度は、その直接的関係により互換的に使用し得る。この関係により、マレイン酸チモロールの吸光度対時間をプロットして、様々な製剤からのマレイン酸チモロールの放出速度を明らかにした。
【0058】
次に、透析管、セルロースエステル透析膜を、冷却装置から取り出した。分画分子量(MWCO)が3,500〜5,000Dの透析管を使用した。透析管を3回蒸留水ですすいで保存剤を除去し、次に、リン酸緩衝食塩水に一夜浸した。この時点で、透析管をマレイン酸チモロール溶液およびゲルで充填する準備ができた。
【0059】
0.068gのマレイン酸チモロール塩と10mLのリン酸緩衝食塩水を混合して、0.68%のマレイン酸チモロールである溶液を製造することによって、マレイン酸チモロール溶液を製造した。均一性を確保するために、溶液を5回反転し、撹拌子を溶液に入れ、マグネチックスターラー上に置いた。リン酸緩衝食塩水は等張性でありpHが7であるので、溶液のpHおよび張度を調節しなかった。
【0060】
カルボマー980ゲルの固体製剤に蒸留水を加えることによって、最初にカルボマー980ゲルの濃縮製剤を製造することによって、マレイン酸チモロールゲルを作り上げた。カルボマーゲルは、0.5%カルボマー980からなっていたが、2%カルボマー製剤を使用して様々なゲルを製造した。125mLの蒸留水および2.5gのカルボマー980を撹拌子およびマグネチックスターラーにより一夜混合して、2%カルボマー貯蔵ゲルを製造した。ゲルを手でも混合した。最終ゲルのpHを7.0〜8.0のpHに調整したが、0.05%のカルボマーゲルを最初に、0.5%カルボマーゲルを適切に調整するために必要となり得る水酸化ナトリウムの量に近づくように製造した。これを達成するために、2.5gの2%カルボマーゲルを秤量し、蒸留水で100mLにした。0.1Nおよび1Nの水酸化ナトリウムを少量単位で、電極により検出されるpHが7.0〜8.0になるまで0.05%カルボマーゲルに加えた。次に、25mLの2%カルボマーゲルを250mLビーカーに入れることによって、0.5%カルボマーゲルを製造した。約80mLの水をゲルに加え、次に0.68gのマレイン酸チモロールをゲルに配合した。全ての塊が消えるまで、ゲルを手で混合した。0.68%のマレイン酸チモロールを含有する0.5%カルボマーゲルのpHは、0.05%カルボマーゲルをpH調整するために必要であった水酸化ナトリウムの量の10倍弱を加えることにより調節したpHであった。電極をゲルから取り出し、蒸留水ですすいで、全成分が確実にゲル中に留まるようにした。ゲルを蒸留水で100gにした。
【0061】
正確なオスモル濃度が0.5%であるカルボマー980ゲルは知られていなかったが、0.3%カルボマー934のオスモル濃度を使用して計算した。
190.68%マレイン酸チモロールは、31.4mOsmに寄与し、カルボマーは、約42mOsmに寄与する。ゲルを等張にするために、4.1gの5%デキストロースを加えて、張度が300mOsmの等張性ゲルを得る必要があり得る。しかしながら、本実験の結果を、カルボキシメ
チルセルロース、CMCを使用する類似の実験の結果と比較することにする。CMCは、浸透圧調節が必要なく、従って、ゲル間のより直接的な比較を可能にするために、デキストロースをカルボマーゲルに加えなかった。ゲルを手で完全に混合し、次に、撹拌子およびマグネチックスターラーで混合して、均一性を確保した。
【0062】
マレイン酸チモロールおよびリン酸カルシウムナノ粒子を含有するカルボマー980ゲルを、カルボマーゲルに関する前述のステップと同じステップを使用して製造したが、100gの2%カルボマーおよび2.72gのマレイン酸チモロールを使用して、350gのゲルを製造した。このゲルを、前述の方法を使用してpH調整した。87.5gのこのゲルを秤量し、リン酸カルシウムナノ粒子をゲルに加えた。0.5%、1%、2%、および5%のリン酸カルシウムナノ粒子を含有するゲルを得るために、0.5g、1g、2g、および5gの固体のリン酸カルシウムナノ粒子をそれぞれ加えた。ゲルを100gにし、撹拌子およびマグネチックスターラーで混合した。次に、ゲルを、さらに15分間、Breville overheadという電動ミキサーに入れて、均一性を確保した。5つのゲルを製造した後、0.68%マレイン酸チモロールを含有する73.8gの0.5%カルボマーゲルが残った。残ったゲルを使用して、1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%カルボマーゲルを製造した。0.4215gのカルボマー980を残ったゲルに加えた。ゲルを手で混合し、pHが7.0〜8.0になるまで、pHを水酸化ナトリウムで調整した。ゲルを84.3gにした。ゲルを次にBrevilleミキサーに入れた。ゲルの粘性をHaake 550 viscotesterを使用して測定した。カーブフィット分析を、粘性データでOstwald de WaeleおよびBinghamのモデルを用いて実施した。Ostwald de Waeleモデルは、流動コンシステンシー指数Kおよび流動性指数nの計算を可能にした。Binghamモデルは、降伏値を計算した。Haake 550 viscotesterも使用して、ゲルのチキソトロピーを調べた。
【0063】
次に、溶液およびゲルからのマレイン酸チモロールの放出速度を測定した。リン酸カルシウムナノ粒子を含有するゲルを、2分間ホモジナイザーに入れて、確実に、粒子をゲル中に均一に懸濁させた。透析管を10cmのセグメントに切り出した。透析管の底部をクリップで留めた。1mLのマレイン酸チモロール溶液または1グラムのマレイン酸チモロールゲルを透析管に入れた。メスピペットを使用して、1mLの溶液を透析管に移した。このように移すためにメスピペットを使用するには、ゲルはどろどろしすぎているので、24mLシリンジをゲルで満たした。24mLシリンジを使用して、3mLシリンジをゲルで満たした。プラスチックカテーテル先端を3mLシリンジの上に置き、1mLのゲルを透析管に移すことが可能になった。ゲル中に気泡があり、それにより、1gのゲルを正確に移すことが困難になっていたことが明らかであった。ゲルを移す前および後に3mLシリンジを秤量して、透析管に入れられたゲルの正確な重量を計算することによって、この障害を解消した。透析管の上部もクリップで留め、100mLビーカーのリン酸緩衝食塩水中に入れた。撹拌子をビーカーの底部に置いて、確実に、マレイン酸チモロールの濃度がビーカー中で均一になるようにした。上部クリップをビーカーの縁に置き、パラフィルムでビーカーの上部を覆って、クリップをその場所に保持し、蒸発を制限した。次にビーカーを秤量して、確実に、実験中に蒸発が起こった場合に蒸発が検出されるようにした。ビーカーの吸い込み条件により、マレイン酸チモロールは、透析管から放出され、ビーカーのリン酸緩衝食塩水に流れた。放出されたマレイン酸チモロールの吸光度をUV可視分光器を使用して測定した。ピペットを使用して、ビーカーから溶液を収集し、吸光度分析のためにキュベットに入れた。吸光度の読み取りを実施した後、サンプルをビーカーに戻し入れた。第1の吸光度の読み取りを、5分と10分との間に溶液およびゲルについて実施して、マレイン酸チモロールが透析管からどれだけ速く放出されているかを最初に評価した。マレイン酸チモロールの吸光度がどれだけ速く変化しているかに応じて、読み取りは、5分、10分、20分、または30分おきに実施した。マレイン酸チモロールの放
出速度を各製剤の6つのサンプルについて測定した。実験が進行するにつれて、0.5%ゲルサンプルのうち1つのマレイン酸チモロールの放出速度が、残りのサンプルとは異なることが明らかになった。このため、1つのサンプルを加えて、0.5%ゲル製剤について、全部で7つのサンプルを得た。
【0064】
次に、ゲルの吸光度を1gに正規化して、全てのサンプル間の一様な比較を可能にした。このことは、サンプル中のゲルの重量で1を割ることにより行った。得られた数に、サンプルについての吸光度の読み取りを掛けた。次に、正規化吸光度を、その最大の正規化吸光度のパーセンテージに変換した。正規化吸光度のパーセントを、時間に対してプロットして、マレイン酸チモロールの放出速度を表した。各プロットの直線部分を分離し、線形回帰を使用して、傾きを求めた。傾きは、マレイン酸チモロールが溶液およびゲルからどれだけ速く放出されたかを表す。各製剤の6つのサンプルの平均の傾きを計算して、異なる製剤からのマレイン酸チモロールの放出速度を比較した。
【0065】
データをKaleidaGraphというカーブフィッティングプログラムを使用して分析した。非線形回帰を様々な製剤からのマレイン酸チモロールの放出速度について求めた。シグモイドカーブフィットモデルを用いてデータをフィットさせ、シグモイドパラメーターをm値として表した。m3パラメーターは、マレイン酸チモロールの放出速度と最良に相関した。比較する2つ以上の群があったので、分散の分析であるANOVAという統計検定を本実験で利用した。異なるマレイン酸チモロール製剤間に統計的差異があるのかどうかを判定することができた。<0.05のp値は、統計的有意性を示した。次に、事後のテューキーの検定を用いて、どの製剤に統計的差異があるのかを判定した。ANOVAおよび事後のテューキーの検定を、傾きおよびm3値について行った。
【0066】
結果
溶液およびゲルからのマレイン酸チモロールの放出速度をさらに評価するために、正規化した吸光度のパーセント対時間のグラフの傾きを計算し、表1に示す。各製剤のサンプルの平均の傾きは、マレイン酸チモロールが最も緩徐に放出されたのは、1%リン酸カルシウムナノ粒子(CaP NP)を含有する1%ゲルであり、そのすぐあとに1%CaP
NPを含有する0.5%ゲルが続くことを結論付けた。0.5%ゲルおよび0.5%CaP NPを含有する0.5%ゲルが次に最も緩徐であり、その次に緩徐なのは溶液である。逆に、マレイン酸チモロールが最も速く放出されたのは、5%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、その後に2%CaP NPを含有する0.5%ゲルが続く。1%CaP NPを含有する製剤が示したマレイン酸チモロールの放出速度が遅くなることは、予想していたが、2%および5%CaP NPを含有する製剤からのマレイン酸チモロールの放出速度が速くなることは、予想していなかった。CaP NPの添加が、マレイン酸チモロールの放出速度の低下をもたらし、特に高濃度のCaP NPで低下し得ることを理論づけたが、これらの結果は、マレイン酸チモロールの放出速度の低下がCaP NPの濃度に依存することを示した。
【0067】
【表1】
【0068】
正規化吸光度パーセント対時間のグラフの傾きのANOVA統計検定の結果を、表2に示す。この検定は、マレイン酸チモロール製剤の一部の間に統計的有意差があることを示す。F値は、群内の変動と比較した群間の変動の比である。大きなF値は、比が大きく、統計的有意性を示す小さなp値があるはずであることを示す。ANOVA検定は、13.084832という大きなF値、および<0.0001という小さく、統計的有意なp値を明らかにした。次に、事後のテューキーの検定を実施して、どの製剤が統計的に有意に異なるのかを判定した。この検定の結果は、表3にある。差異があるいくつかの製剤があった。概して、5%CaP NPを含有する0.5%ゲルは、その速いマレイン酸チモロールの放出速度により、1%CaP NPを含有する1%ゲル、1%CaP NPを含有する0.5%ゲル、0.5%ゲル、および0.5%CaP NPを含有する0.5%ゲルと有意差があった。2%CaP NPを含有する0.5%ゲルは、1%CaP NPを含有するゲルと有意差があり、これは、溶液と比較して、2%CaP NPを含有する0.5%ゲルのマレイン酸チモロールの放出速度が上昇しており、1%CaP NPを含有するゲルのマレイン酸チモロールの放出速度が低下していることに起因するようであった。また、このマレイン酸チモロールの放出速度の低下に起因して、1%CaP NPを含有するゲルは、溶液と有意差があった。最後に、1%CaP NPを含有する1%ゲルは、全製剤のうち、放出速度が最も遅く、0.5%ゲルと有意差があった。
【表2】
【表3】
【0069】
溶液およびゲルについてマレイン酸チモロールの放出速度を表す正規化した吸光度のパーセント対時間のグラフを、KaleidaGraphプログラムを用いて分析した。カーブフィット分析を実施し、シグモイドモデルがデータを最良にフィットすると判断した。シグモイド曲線は、値m1、m2、m3、およびm4により表される。各製剤についてm値の平均を計算し、表4に示す。m3値は、マレイン酸チモロールの放出速度と最も密
接に関連する。高いm3値は、遅い放出速度を示す。最も高いm3値を有したのは、1%CaP NPを含有する1%ゲルであり、次いで1%CaP NPを含有する0.5%ゲルであった。最も低いm3値であったのは、5%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、次いで2%CaP NPを含有する0.5%ゲルであった。平均m値を使用して、異なる製剤間でマレイン酸チモロールの放出速度を比較することを可能にするシグモイド曲線を作成した。
【表4】
ANOVA統計検定は、m3値の間にいくつかの統計的有意差があることを明らかにし、事後のテューキーの検定は、どの製剤が互いに統計的に異なるのかを明らかにした。ANOVAから、および事後のテューキーの検定からの結果は、それぞれ、表5および表6にある。傾きおよびm3値の結果は、両方とも、チモロールの放出速度を反映する。傾きおよびm3値の傾向は、近く、厳密ではないが、相関している。直線傾向線は、r
2値が0.8119であり、統計的に有意である。放出速度の表現としての傾きおよびm3値は、両方とも、有用なデータを生成し、それらの強い相関は、放出速度の結果全体を強化する。
【表5】
【表6】
【0070】
粘性を各ゲルについて測定した。最も高い粘性を有したのは、1%CaP NPを含有する1%ゲルであり、次いで5%CaP NPを含有する0.5%ゲル、2%CaP NPを含有する0.5%ゲル、0.5%CaP NPを含有する0.5%ゲル、0.5%ゲルであり、最後が1%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、最低の粘性を有した。粘性の結果は、マレイン酸チモロールの放出速度と相関しなかった。
【0071】
粘性曲線をOstwald de WaeleおよびBinghamのモデルによってフィットさせた。結果を表7に示す。チキソトロピーも各ゲルについて評価した。結果を表7にある。様々な濃度のCaP NPを含有する0.5%ゲルは、Kおよび降伏値について直線関係を示した。0.5%ゲルと比較して1%ゲルの粘性に有意差があるため、1%ゲルを、レオロジー特性の比較に含めなかった。最小のK値が生成されたのは、1%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、次いで、0.5%ゲル、0.5%CaP NPを含有する0.5%ゲル、5%CaP NPを含有する0.5%ゲル、最後に2%CaP NPを含有する0.5%ゲルであった。これらのゲル間の直線関係は、r
2値が0.87246であった。これは、統計的に有意なp値が<0.01であることに対応する。降伏値の結果は同様の傾向を有し、最小の降伏値が生成されたのは、1%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、次いで、0.5%ゲル、0.5%CaP NPを含有する0.5%ゲル、2%CaP NPを含有する0.5%ゲル、次に5%CaP NPを含有する0.5%ゲルであった。降伏値の関係のr
2値は、0.92558であった。これは、統計的に有意なp値が<0.001であることを示す。これらの値の間の傾向は、2%と5%のCaP NPを含有する0.5%ゲルの順序に関して、わずかな違いがあるが、Kおよび降伏値は、これらのゲルについて非常に類似していた。前述の放出速度の結果は、0.5%ゲルについて同様の傾向を示し、最も遅い放出速度が生成されたのは、1%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、最も速い放出速度が生成されたのは、5%CaP NPを含有する0.5%ゲルであり、そのすぐあとに2%CaP NPを含有する0.5%ゲルが続く。従って、放出速度とゲルとそれらの対応するK値および降伏値との間に相関があった。m3値は、同様の傾向を生成したが、最小のm3値は、K値および降伏値について最大値と相関した。最小のm3値が最速の放出速度を示したので、この関係は、平均の傾きと同じ関係を表す。nとチキソトロピーとの間の関係は、0.5%ゲル間に直線関係を生成しなかった。n値は、全て1未満であった。1未満であるn値は、ゲルが、擬塑性を呈することを示し、これは予想していた発見であった。チキソトロピーの結果は、負の値を生成した。負のチキソトロピーの結果は、ずり速度が1000 1/秒から0 1/秒に減少した場合と比較して、ずり速度が0 1/秒から1000 1/秒に増加した場合に、ゲルがより低い粘性を有したことを示す。5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する0.5%ゲルは、他のゲルよりもはるかに負であるチキソトロピーの結果を有した。
【表7】
【0072】
考察
表1の正規化した吸光度のパーセント対時間の傾きにより明らかにされた溶液およびゲルについてのマレイン酸チモロールの放出速度は、予想していなかった結果を表した。リン酸カルシウムナノ粒子のカルボマーへの添加は、マレイン酸チモロールの放出速度を下げ得ることを理論づけたが、この種類のゲルは、研究されていなかった。カルボマーゲルに加えるリン酸カルシウムナノ粒子が多くなるにつれて、マレイン酸チモロールの放出が徐々に遅くなることが予想されていたが、このことは見られなかった。予想していたよう
に、溶液と比較して0.5%カルボマーゲルでは、放出速度が遅かった。1%リン酸カルシウムナノ粒子を0.5%カルボマーゲルに加えた場合にも、放出速度は低下した。しかしながら、5%リン酸カルシウムナノ粒子を0.5%カルボマーゲルに加えた場合に、マレイン酸チモロールの放出速度は上昇したが、これは予想していなかった。0.5%および2%のリン酸カルシウムナノ粒子を含有する0.5%ゲルのマレイン酸チモロールの放出速度を測定することによって、この現象をさらに調べた。0.5%リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、0.5%と比較してマレイン酸チモロールの放出速度をわずかに上昇させたが、放出速度は、0.5%ゲルと非常に類似していた。このことは、0.5%リン酸カルシウムナノ粒子は、マレイン酸チモロールの放出速度に有意な差異を生成するのに十分に高い濃度ではないことを示し得る。2%リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、溶液よりも速いマレイン酸チモロールの放出速度をもたらした。従って、2%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する0.5%カルボマーゲルは、5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する0.5%カルボマーゲルと同様に、マレイン酸チモロールの放出速度を低下させることに有効ではなかった。0.5%カルボマーゲルへの1%リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、マレイン酸チモロールの放出速度を低下させることに最も有効であったので、リン酸カルシウムナノ粒子が放出速度を低下させることになおも有効であるかを判断するために、1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%カルボマーゲルを調べた。1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%カルボマーゲルからのマレイン酸チモロールの放出速度は、1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する0.5%カルボマーゲルと同様の放出速度を有したが、マレイン酸チモロールの放出速度は、わずかに遅かった。ANOVA統計検定および事後のテューキーの検定からの結果は、マレイン酸チモロール製剤の間にある程度の統計有意差があったことを明らかにしたが、いくつかの製剤は、類似しすぎており、統計的な差異がある傾きは生成できなかった。全体として、特定の濃度のリン酸カルシウムナノ粒子のみ、低下したマレイン酸チモロールの放出速度を生成したことが明らかになった。ポリマーの濃度が増加するにつれて、低下したマレイン酸チモロールの放出速度は、さらに低下するように見えたが、カルボマーゲル中のリン酸カルシウムナノ粒子は、これまで研究されていなかったので、この効果を確かめるために、さらなる研究が必要である。マレイン酸チモロールの放出速度の結果に寄与する、カルボマーゲルとリン酸カルシウムナノ粒子との間の相互作用があり得ると考えられる。
【0073】
マレイン酸チモロールの放出速度のm値およびシグモイド曲線は、異なる製剤が、マレイン酸チモロールの放出速度の速さと相関する異なる曲線を生成することも示す。シグモイド方程式のm3パラメーターが、マレイン酸チモロールの放出速度を表すという解釈により、m3の客観的計測値は、平均の傾きの値により求められた放出速度を強化することができた。m3値は、平均の傾きと厳密に相関してはいるわけではなかったが、m3値は、1%CaP NPを含有する0.5%ゲルおよび1%CaP NPを含有する1%ゲルが最も遅い放出速度を有することを明らかにしたデータを支持した。m3値は、5%CaP NPを含有する0.5%ゲルおよび2%CaP NPを含有する0.5%ゲルが最も速い放出速度を有することも強く支持した。このデータは、CaP NPの添加は、マレイン酸チモロールの放出速度を低下させることが可能であるが、特定の濃度でのみ可能であることを示唆する。シグモイドカーブフィットモデルのm1、m2、およびm4パラメーターも調べた。m1パラメーターは、放出速度曲線の高さと関連しており、グラフの後部曲線部分の形状と関連している可能性があると考えられる。m2パラメーターは、遅延時間と関連していると考えられ、m4パラメーターは、曲線の全体形状に関連しているように見える。この実験では、マレイン酸チモロールの放出速度に最も焦点が置かれていたので、m3値を最もよく調べた。
【0074】
粘性の結果は、マレイン酸チモロールの放出速度の順序と相関しなかった。これまでの研究において、ゲルの放出速度は、粘性が増加するにつれて減少する。従って、最速の放出速度を有するゲルは、最低の粘性を有することが想定され、最低の放出速度を有するゲ
ルは、最高の粘性を有することが想定されたが、このことは、この研究では見られなかった。最低の放出速度を有した1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%ゲルは、最高の粘性を有したが、このゲルは、0.5%ゲルと比較できない。0.5%ゲルの予想外の粘性の結果は、粘性の上昇に寄与しないが、より遅い放出速度を生成するカルボマーゲルとリン酸カルシウムナノ粒子との間の相互作用があり得るという理論を強化する。粘性の増加が、眼用ゲルを使用する患者の不快感を引き起こすことがよくあり、ゲルの粘性を増加させることなく、薬剤の放出速度を減少させることが望ましいとされ得るので、このことが将来の研究で再現される場合、このことは、有益な発見であり得る。
【0075】
0.5%ゲルに関するKおよび降伏値の傾向は、概して、放出速度の増加と共にKおよび降伏値が増加するという傾向に従う。現段階では、これらの結果の有意性は、分からない。全てのゲルに関する1未満のn値の結果は、CaP NPの添加が、カルボマーゲルの擬塑性を妨げないことを示唆する。従来発表されていたように、1未満のn値は、ゲルが擬塑性を呈することを示すので、このことは、有望な発見である。擬塑性は、ずり速度が増加するにつれて、ゲルが低粘稠性になることを可能にする。ずり速度がまばたきにより増加するときに患者の快適性が維持され得るので、このことは、眼用製品にとって望ましい性質である。ずり速度が増加するときの粘性値とずり速度が減少するときの粘性との間の差異を明らかにするチキソトロピーの結果は、明瞭な傾向を示さなかった。チキソトロピーの結果は、全て負であり、これは、多くのポリマーで共通ではないが、負のチキソトロピーは、Malahによる研究において、カルボマーゲルでも見られた。また、チキソトロピー研究は、負の結果を確認するために2回実施した。ゲルのうち有意差があったただ1つのチキソトロピーの値は、5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する0.5%ゲルであった。これは、最高の濃度のリン酸カルシウムを含有し、最速のマレイン酸チモロールの放出速度を有するゲルであったので、チキソトロピー値の増加とリン酸カルシウムナノ粒子の増加との間に潜在的な相関がある。この相関は、1つのデータ点で見られただけであるので、まだ確証されておらず、この結果の存在を確証するために、より多くのデータが必要である。
【0076】
結論
1%リン酸カルシウムナノ粒子のカルボマーゲルへの添加は、マレイン酸チモロールの放出速度を低下することに成功した。マレイン酸チモロールの放出速度の低下は、2%および5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有するカルボマーゲルでは見られなかった。現段階では、特定の濃度のリン酸カルシウムナノ粒子で、マレイン酸チモロールの放出速度の低下に寄与する、カルボマーゲルとリン酸カルシウムナノ粒子との間の相互作用があり得ることが考えられる。ゲルの粘性をさらに増加させることなく、薬剤の放出速度を低下させるために、眼用ゲルは、リン酸カルシウムナノ粒子を利用することが可能であり得る。カルボマーゲルに対するリン酸カルシウムナノ粒子の効果を確証するために、さらなる研究が必要である。
【0077】
実施例2
眼用ゲルは、眼用ゲルを構成するポリマーなどの、眼用ゲルの性質を決める複数の成分を示す。カルボキシメチルセルロース(CMC)は、水溶性であり、粘膜付着性を示す生体接着ポリマーであり、生物分解性である。生体接着性は、薬剤のポリマーへの付着を可能にし、薬剤の眼組織との接触時間を延ばし、眼のバイオアベイラビリティを向上することができる。製造業者によるCMCに関する安全性データは、動物およびヒトの研究から毒性がないことを示す。この毒性がないということは、製造業者が、このポリマーを多くの製品で頻繁に使用および配合することに供することである。Na CMCを潤いを与えるための目薬で使用した場合に、ゴロゴロ/ザラザラする眼、かすみ目、ドライアイ、視力の低下、および眼瞼辺縁痂皮形成というよく見られる有害作用がNa CMCで報告されている。CMCは、CMCが涙液膜と相互作用するようにする膜形成特性を有し、この
ことにより、ポリマーの安定性が増加する。
5
【0078】
セルロースポリマーおよび低分子量CMCは、ずり速度とは無関係に粘性を示し、まばたきのときに痛みを引き起こす粘性の増加を示すニュートン性を呈する。しかしながら、この研究で使用するNa CMCは分子量がより大きいので、非ニュートン性擬塑性が見られ、ずり速度の増加に伴い粘性が減少する。これらの特性により、まばたきの時に抵抗がより少なくなり、患者の忍容性の向上が可能となる。アルミニウムなどの三価の金属を添加すると、カルボキシメチル基間のポリマー分子の架橋の機構を介して、CMCでゲル化が起こる。一塩基性酢酸アルミニウム、可溶性塩、または不溶性塩、例えば、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウムからのアルミニウムの徐放は、CMCの生体内での形成を引き起こす。
9しかしながら、上記のゲル化の組み込みを必要としない予め形成されたゲルを、この研究で採用することにする。低粘稠性CMCに関する降伏値は、36dyn/cm
2であり、これは、応力を受けた初期流れ抵抗を示す値であり、懸濁能力を判定するために使用される。
【0079】
CMCポリマーを、分子量に基づく粘性の度合い、および温度を変えながら、製造し得る。この研究における因子ではないが、CMCポリマー粘性は、温度により影響を受けるが、高温(>48時間の間82℃)での長期間の加熱の場合だけであり、60%粘性を下げ得る。製造される様々な種類は、低粘性、中等度の粘性、および高粘性である。より高い粘性のCMCポリマーは、分子量が90,000で重合度が400である最低の粘性のCMCポリマーと比較して、700,000という最高分子量、および3200という重合度を有する。重合度は、鎖の平均長を表し、鎖が長いほど、ポリマーはより粘稠性となるという概念に一致する。置換度(DS)は、各CMCポリマーで異なり、CMCを様々な種類にさらに分類するものであり、DS0.7は、最も頻繁に利用され、眼用薬剤送達に十分である。7として書かれるDS0.7は、12として書かれるDS1.2と比較してポリマーの置換度がより低いことに起因して、高い粘性を可能にする。
【0080】
様々なCMCポリマーの最高の粘性は、Hにより示され、この研究において、Na CMCでは、7HF PHを利用することにする。上記のように、CMCには多くの異なる用途がある。様々な種類は、文字で区別され、例えば食品または化粧品ではF、医薬品ではP、化粧品または医薬品ではPH、工業目的では無しである。この研究において、F PHは、食品、化粧品、または医薬品の用途について使用されるグレードである。この研究において使用されるNa CMCの濃度は、高い粘性の種類であり、最も眼の滞留を長くさせる1%および3%であった。ポリマーが潤いを与えるための目薬としてこれまでの臨床試験で研究されている場合に、Na CMC1%は、頻繁に使用される。Na CMC3%は、ゲル形成能力を示すことが臨床的に分かっている、より粘性が高い濃度である。Na CMC1%および3%は、両方とも、ヒトの眼に許容できるものとして確認されており、このポリマーから得ることができる最も高い粘性を可能にする。粘性の増加は、薬剤放出を遅延させることに理想的であるが、高すぎる粘性は、眼の不快感を引き起こし得、透明性を損ない得る。この研究は、2つのポリマー濃度間の変動の大きさを異ならせるのに役立ち得る。Na CMCは、必要に応じてpH調整を制御する緩衝能力を有するので、ポリマーとして有利でもある。
【0081】
Kyyronenらは、Na CMCを添加したときのマレイン酸チモロール、および全身性吸収に関するその結果を研究した。結果は、マレイン酸チモロールを含有するNa
CMCは、非粘稠性目薬と比較して、3〜9倍眼内濃度を向上させたことを結論づけた。また、この研究は、マレイン酸チモロールの全身性吸収率の33%の低減があり、ポリマーを含有しない他の研究群で見られるCV副作用を緩和したことを示した。これらの利点は、角膜の接触を長くすること、および溶液の鼻涙腺への拡散を遅くすることを可能にするNa CMCの粘膜付着効果に起因していた。Jarvinenらは、ウサギにおけ
る眼用マレイン酸チモロールの全身性吸収について、CMCをカーボポールと比較した。2つの生体接着ポリマーは、等粘性溶液において、全身性吸収の類似の減少があり、血漿におけるマレイン酸チモロールのAUCに50%の減少があったことを示した。これらの研究は、全身性CV合併症の発症を減ずる、ベータ遮断薬の全身性吸収の防止におけるNa CMCの効果を明らかにしている。
【0082】
上述したように、粘性の増加は、眼の不快感およびかすみ目というマイナス要素を有する。不快感を増すことなく粘性の増加の利点を得、全身性吸収を防止するために、リン酸カルシウムナノ粒子の添加をこの研究において採用し、検討することにする。この添加は、薬剤送達の速度をさらに低下させることによって、ポリマーを増強する新しいアプローチである。リン酸カルシウムナノ粒子のナノ粒子は、薬剤送達の経路を阻害するために、ポリマーで表面領域の増加を可能にし得る。眼用薬剤送達にナノ粒子を配合することは、必要となるポリマーの使用量を減らし、同時に、薬剤放出速度を低下させ、眼内に留まっている活性成分をなおも維持することが可能であり得る。
【0083】
方法論
この実験のための研究デザインは、リン酸カルシウムナノ粒子のマレイン酸チモロールおよびNa CMCポリマーへの添加、ならびに薬剤の放出速度へのその効果である。様々な濃度のリン酸カルシウムナノ粒子(CaP NP)を使用して、ナノ粒子の量が薬剤送達のさらなる遅延と相関するかどうかを判定した。また、2つの異なる濃度のNa CMCポリマーを研究して、粘性の程度が放出速度に影響を与えるかどうかを評価した。この研究は、眼用溶液、眼用ゲル、および様々な濃度のリン酸カルシウムナノ粒子を含有する眼用ゲルなどの異なるマレイン酸チモロールの製剤を取り入れた。マレイン酸チモロールの標準較正曲線を、研究において後に参照するために、最初に開発して、吸光度値に基づいてマレイン酸チモロールの濃度を求めた。様々な製剤を透析管に入れ、次に、透析管を100mlビーカーのリン酸緩衝食塩水中に入れた。マレイン酸チモロールは、製剤に応じて様々な濃度で、透析管からビーカーに流れた。これらの値をプロットして、マレイン酸チモロールの放出速度が、リン酸カルシウムナノ粒子およびNa CMCポリマーの添加で遅くなったかどうかを判定した。
【0084】
実施例1で説明したように、標準較正曲線を、マレイン酸チモロール塩とリン酸緩衝食塩水を使用して開発した。
【0085】
この研究のために6つのゲルを製造し、表8に要約した。
【表8】
【0086】
所望の濃度のNa CMCポリマーは1%および3%であり、マレイン酸チモロールは0.68%であった。これらの目標濃度に達するために、より高濃度のポリマーを使用し
てゲルを製造し、5%および9%のNa CMCポリマーを得た。第1に、1%Na CMCを含有するマレイン酸チモロールおよび3%Na CMCを含有するマレイン酸チモロールを製造した。5%の濃厚ポリマーを製造するために、貯蔵溶液を製造して、3つの異なるゲルのNa CMCに十分な量を製造した。5gのポリマーを蒸留水に浸し、これを一夜置いて、水和および均一化させた。次に、33.3mlのNa CMCおよび0.68gのマレイン酸チモロール塩を共に加えて、1%Na CMCを製造した。次に、このゲルを蒸留水で100mlにした。
【0087】
また、3つのゲルに十分な量を製造するために濃厚な9%のポリマーを製造するため、9gのポリマーを250mlビーカーに加えた。ポリマーを蒸留水で水和させて180mlにし、1時間かけて、マグネチックスターラーの使用により、および手で撹拌することにより、溶解させた。次に、0.68gのマレイン酸チモロール塩を、60mlのNa CMCが入ったビーカーに加えた。次に、内容物を最終濃度の100mlにした。ビーカーをスパチュラで混合して、薬剤とポリマーの均一な分散物を製造した。生成物を確実に300mOsmと等張にし、それにより、眼の刺激を引き起こすことなく緑内障のために臨床で使用することが想定される結果を出すことを可能にすることが重要であった。マレイン酸チモロールは、オスモル濃度が31mOsmであり、Na CMCは、理論的オスモル濃度が470mOsmであり、これは、浸透圧に達するためにデキストロースを加える必要性を緩和した。
18pHを、電極を使用して測った。pHは7〜8であり、そのため、生理的pHに達するために水酸化ナトリウムを加える必要性が生じないようになった。さらに10分間、混合物をBreville Scraper Mixerに入れて、混合物をさらに均一にした。
【0088】
様々な濃度のリン酸カルシウムナノ粒子を添加して形成された残りのゲルについて、同じアプローチを実施した。1%および5%強度のリン酸カルシウムナノ粒子を製造するために、それぞれ、1gおよび5gのナノ粒子を配合することが必要であった。1%のNa
CMCでは、33.3mlのポリマーを0.68gのマレイン酸チモロールに加え、3%のNa CMCでは、60mlのポリマーを0.68gのマレイン酸チモロールに加えた。次に、1gまたは5gのリン酸カルシウムナノ粒子を加えて、各製剤について、それぞれ、1%および5%に達しさせた。内容物を最終濃度の100mlにし、スパチュラで混合して、薬剤とポリマーの均一な分散物を製造した。最後に、さらに15分間、内容物をBreville Scraper Mixerに入れて、混合物をさらに均一にした。全てのゲル製剤を、放出速度研究を始める前に、24のスピードで、2分間、ホモジナイザーの使用により、均質かつ均一にした。さらに、ゲルの粘性を、Haake viscotester 550を使用して測った。様々な粘性の度合いが、再現性があり、正確であることを確証するために、粘性研究を2回行った。カーブフィット分析を、BinghamおよびOstwald De Waeleのモデルを使用して実施した。Binghamモデルは、各ゲル製剤について、降伏値の計算を可能にした。Ostwald De Waeleモデルは、流動コンシステンシー指数(k)および流動性指数(n)を求めることを可能にした。また、Haake viscotester 550の使用により、チキソトロピー分析を評価して、各製剤のずれ揺変性を求めた。
【0089】
前述の10cmに事前に切った透析管を、1gのゲル、または1mlの溶液で満たした。ゲルおよび溶液の各製剤は、誤差および再現性を説明するために、6つ以上の透析管を有した。溶液またはゲルを透析管に入れたら、管の上部をクリップで留め、タイマーをスタートさせた。マレイン酸チモロール溶液について、第1の放出速度研究を実施した。1mlメスピペットの使用により、溶液を透析管に入れた。次に、内部に溶液が入った透析管を、100mlのリン酸緩衝食塩水が入ったビーカーに入れた。撹拌子をビーカーに入れ、ビーカーをマグネチックスターラー上に置いて、製剤を均一に保った。蒸発および溶液の損失を防ぐために、ビーカーをパラフィルムカバーで覆った。蒸発が起こったかどう
かを評価するために、各サンプルについて、ビーカーの重量を記録した。透析管からのサンプル濃縮物をピペットにより得、キュベットに入れて、透析管からビーカーに放出されたマレイン酸チモロールを測った。次に、これらのサンプルを、UV可視分光器に入れて、吸光度測定値を識別した。放出速度研究の間中、各サンプルを評価したときに、時間を記録した。これらの吸光度測定を使用して、上述したようにマレイン酸チモロールの濃度を求めた。ゲル製剤の放出速度研究では、製剤の粘性が高いため、異なる方法を使用して、ゲルを吸い上げて、透析管に入れた。ゲルの様々な製剤を、24mlシリンジに入れ、次に、3mlシリンジを使用して、24mlシリンジから、1mlのゲルを吸い上げた。管にゲルを入れる前に、3mlシリンジを秤量し、1mlを透析管に入れた後に、再度秤量した。2つの重量の差が、管内のゲルの量を決めた。この方法は、透析管内に入れられたゲルの量の正確な記述を可能にし、シリンジ内に存在する気泡を考慮に入れるデータの正規化を可能にした。ゲル放出速度研究に関する残りの手順は、上述した溶液と同じであった。
【0090】
サンプルがチェックされる頻度は、製剤が溶液であるか、またはゲルであるか、およびリン酸カルシウムナノ粒子を加えたかどうかに基づいて導かれる。例えば、眼用溶液をチェックする間隔は、より短く、最初に、5分、10分、15分にチェックした。(リン酸カルシウムナノ粒子を含有しない)ゲル製剤は、5分、その後10分おきにチェックした。吸光度値が下がり始めたら、時間間隔を、20分おき、その後30分おきに延ばした。これらの初期の眼用ゲル中の放出されたマレイン酸チモロールの量は、残りの期間をチェックする頻度を決定するのに役立った。例えば、マレイン酸チモロールの放出が10分で最小であった場合、次の間隔は、10分ではなく、25分というより長い期間に延ばした。リン酸カルシウムナノ粒子を含有するゲル製剤では、マレイン酸チモロールの放出の最も長い遅延があり得ることが予想された。しかしながら、第1の初期サンプルを、5分にさらに得、次にレベルに基づいて、その時点で、その後の間隔を決めた。ビーカーを24時間後に秤量して、製剤の損失がないことを確認した。ビーカーの重量を、放出速度研究の開始時に記録した重量と比較した。重量の差は、蒸発に起因するが、研究の開始時の重量に達するように、蒸留水を加え、最後の吸光度の読み取りを1回行った。
【0091】
上述したように、異なる製剤のそれぞれは、試験される6つの異なるサンプルを準備するために、6つ以上の異なる管を有した。このことにより、データがさらに正確になり、再現性が得られ、偶然による誤差がより少なくなった。1%CMCゲルおよび1%リン酸カルシウムナノ粒子(CaP NP)を含有する1%CMCのゲルに関して放出速度研究が進んだときに、2つのサンプルは、残りのサンプルとある程度の差異があった。このことにより、製剤当りさらに2つのサンプルを加えることになり、従って、8つのサンプルを試験した。5%CaP NPを含有する3%CMCのゲルには、適切にクリップで止められてリン酸緩衝食塩水に入れられてはいなかった1つのサンプルがあった。このサンプルは、他の5つのサンプルと一致しない吸光度を示し、外れ値とみなした。次に、これらの結果を、吸光度対時間のグラフにプロットした。放出速度の結果の直線部分は、マレイン酸チモロールの濃度対時間のグラフの推定を可能にした。ゲル製剤に関するデータを、透析管に含まれるゲルの量に基づいて正規化した。データを管当りの所期のゲルの量(1g)を実際に存在する量で割ることにより正規化した。これは、そのサンプルについて各吸光度に掛けるために使用する因数であった。これにより、その製剤において、全てのサンプルを、互いに直接比較することが可能になった。また、ゲルの正規化吸光度、および溶液の吸光度を、吸光度のパーセントに基づいて評価した。吸光度のパーセントを得るために、それぞれの正規化吸光度(ゲル)または吸光度(溶液)を、マレイン酸チモロールの最大放出であると求められたそのサンプルの最高の吸光度で割った。サンプルの最高の吸光度を100で割り、吸光度のパーセントを得た。このことにより、その製剤においてだけでなく、全てのその他の製剤において、各サンプルを互いに評価することが可能になった。
【0092】
統計解析を、KaleidaGraph Version 4プログラムを使用して実施し、放出速度データに最良にフィットするカーブフィッティングプログラムを使用して、非線形回帰データを求めた。ANOVA検定を使用して、製剤群間の差異を分析した。ANOVAは、全ての異なる製剤の分散を求め、異なる分散間の相関がどれだけ強いかを判定した。<0.05のp値を、統計的に有意とみなした。事後検定であるテューキーの検定を実施して、放出速度研究の多重比較を可能にして、様々な製剤と統計的に差異があるデータはどれかを判定した。
【0093】
結果
各サンプルの吸光度のパーセント対時間をプロットし、異なる製剤が、異なる放出速度をもたらすことが示された。各サンプルの直線部分を取り出して、各直線の傾きを求めて、互いに直接比較することにより、このグラフをさらに調べた。各製剤の平均の傾きは、溶液が予想されていた最高の放出速度を有したことを明らかにした(表9)。1%CMCゲルは、溶液と比較して、マレイン酸チモロールの放出速度を有意には遅延させなかった。しかしながら、1%リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、1%CMCゲルと比較して、活性薬剤の放出速度を大幅に遅延させた。5%リン酸カルシウムナノ粒子は、さらに放出を遅延させたであろうと予想されたが、反対のことが見られ、1%リン酸カルシウムナノ粒子よりも高い放出速度が見られた。3%CMCゲルは、全ての1%CMC製剤と比較して粘性が高いことに起因して、放出速度を遅延させることが分かった。1%CaP NPを含有する1%CMCゲルと一致して、1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する3%CMCも、ゲル自体よりも遅かった。しかしながら、5%リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、再度、1%リン酸カルシウムナノ粒子と比較して放出速度を増加させた。このことは、リン酸カルシウムナノ粒子は、薬剤だけを含有するただのポリマーと比較して、マレイン酸チモロールの放出を遅延させるが、使用するべき特定の濃度のナノ粒子があることを示す。リン酸カルシウムナノ粒子の濃度が高いほど、放出速度の遅延がより長くなるという濃度依存性相関はない。また、3%CMCゲルと比較した1%CMCゲルは、ずっと速かったが、このことは、ポリマーの粘性が放出速度との相関関係を有したことを示す。1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する3%のNa CMCの粘稠性ポリマーの添加は、全7研究群の中で最低の放出速度を与えることが分かった。1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する3%のNa CMCゲルは、特定の濃度のナノ粒子と粘稠性ポリマーが、薬剤放出速度に顕著な障害を引き起こし得ることを示した。平均の傾きは、最高の放出速度溶液を有するのは、溶液であり、次に1%CMC製剤であり、最後に3%CMC製剤であることを明らかにする。
【表9】
【0094】
ANOVAを、様々な製剤からの各サンプルの傾きについて実施した(表10)。結果は、p値<0.001により示される、異なる研究群間の統計的有意差があったことを示す。また、F統計比は、群内の変動と比較した異なる治療群間の変動を示す。高いF比は、様々な製剤を比較する統計有意差を示す。次に、事後分析を、テューキーの検定を使用して、製剤のサンプルからの全ての傾きを調べることにより実施した(表11)。0.68%マレイン酸チモロールの溶液製剤は、<0.05のp値により示される、より遅い放出速度の製剤、例えば3%CMCポリマーを含有する製剤、および1%CaP NPを含有する1%Na CMCを含有する製剤からの統計的有意性があった。さらに、溶液と放出速度が類似していると記録された1%CMCゲルも、<0.001のp値により示される、3%CMCポリマー製剤および1%CaP NPを含有する1%Na CMCとの統計的な差異があった。溶液および1%CMCゲルは、2つの最速の放出速度データを有し、1%CMC5%CaP NP以外の他の製剤とは、非常に差異があるとみなされた。1%CMC5%CaP NPゲルは、三番目に速い製剤であり、全ての3%CMCゲル製剤と比較して、<0.05のp値により示される統計的差異があった。
【表10】
【表11】
【0095】
時間および吸光度のパーセントを使用する各製剤に関する放出速度データを使用して、各サンプルについてカーブフィットを行った。シグモイドカーブフィットは、散布グラフを最良にフィットするモデルであった。この曲線の方程式は、4つの変数、m1、m2、m3、およびm4を有する。製剤からの各サンプルについて平均をとり、表12にリストする。
【表12】
【0096】
各製剤の粘性を求めた。最も粘性が高いのは、1%CaP NPを含有する3%CMCゲルであり、次いで3%CMCゲル、5%CaP NPを含有する3%CMCゲル、1%CaP NPを含有する1%CMCゲル、1%CaP NPを含有する1%CMCゲル、1%CMCゲルであった。これらの結果は、様々なゲルの粘性として予想したことと相関しなかった。粘性データは、ゲル製剤に関する放出速度研究と一致する。
【0097】
各ゲルについて得られた粘性データを、BinghamおよびOstwald De Waeleのモデルを使用するカーブフィット分析を開発することに使用した(表13)。流動コンシステンシー指数(k)および流動性指数(n)を、Ostwald De Waeleのモデルを使用する様々なグラフについて評価した。全てのゲルのn値は、<1であり、これは、ゲルが擬塑性を示すことを示した。この特性は、予想したように、より高いずり速度では、ゲルがより低い粘性を示すことを明らかにした。上述したように、より大きい分子量を有するNa CMCポリマーは、より小さい分子量のCMCポリマーと比較して、より大きいずれ揺変性を示す。
9このことは、CaP NPを添加したときでも、1%CMCゲルと3%CMCゲルとの間のn値で見られたことと相関する。Ostwald De Waeleのモデルからのk値も、放出速度研究と一致した。最も遅いゲル放出速度は、最高のk値を有する1%CaP NPを含有する3%CMCであり、次いで3%CMCゲル、その次に5%CaP NPを含有する3%CMCであった。1%CMCゲル製剤は、より低いk値を示した。
【0098】
さらに、チキソトロピーを求め、特にCaP NPを加えたときに各ゲル製剤で変わる、ヒステリシスループおよびずれ揺変性を示した。流動曲線は、応力に関する2つの値を決め、一方の値は、ずれの速度の増加に関し、もう一方の値は、ずれの速度の低下に関するものであり、これらの2つの値の差を表13に記載した。1%CMCの粘稠性がより低いポリマーゲルは、ナノ粒子を全く加えていない1%CMCゲルでは見られなかった負の値を示した。ナノ粒子が加えられた3%CMCのより粘稠性のポリマーは、3%CMCゲル自体と比較して、より小さい値を示した。また、降伏値も、放出速度研究の結果と一致した。全ゲルの中で最も遅い放出速度は、1%CaP NPを含有する3%CMCであり、これは、最高の降伏値を示したゲルでもあった。3%CMCゲル製剤は、1%CMCゲル製剤と比較して、より高い降伏値を示し、応力下で流動する3%CMCゲル製剤でより高い抵抗があることを示した。降伏値の他に、評価した異なるレオロジーパラメーターの値間の直線関係はなかった。3%CMCゲル製剤の降伏値は、直線関係を示し、R
2値が0.996であり、p値が<0.001であった。
【表13】
【0099】
考察
各製剤に関するマレイン酸チモロールの放出速度は、ポリマーの粘性に基づいて変わった。1%CMCゲルを最初に研究し、結果は、溶液と比較した放出速度に最小の差異があることを示した。3%CMCポリマーゲルは、1%CMCポリマーゲルよりも長い放出速度を示し、粘性が活性薬剤の放出における大きな成分であることを明らかにした。粘性は、薬剤放出の遅延に相関があることがこれまでに分かっていたが、リン酸カルシウムナノ粒子の配合という新しいアプローチも、マレイン酸チモロールの放出速度を下げる特性を示した。この放出速度の遅延は、ナノ粒子の濃度に依存した。5%リン酸カルシウムナノ粒子は、1%リン酸カルシウムナノ粒子と比較して、さらに放出を遅延させたであろうと予想されたが、5%リン酸カルシウムナノ粒子は、活性薬剤のより速い放出を引き起こした。この現象は、1%および3%のNa CMCポリマーの両方の濃度で見られた。この濃度依存性活性がその他のポリマーまたは製剤で見られるかどうかを評価するために実施されたリン酸カルシウムナノ粒子を用いた研究はこれまでに存在しないが、Na CMCポリマーとナノ粒子との相互作用があることは明らかである。この相互作用は、残りの製剤の成分にかかわらず、より高い濃度のリン酸カルシウムナノ粒子で見られる。1%リン酸カルシウムナノ粒子は、最も遅い放出速度をもたらし、ナノ粒子が、粘稠性ポリマー単独と比較して、放出速度を遅延させるのに役立つことも明らかにする。
【0100】
分散の分析を実施し、いくつかの製剤の平均の傾きが統計的に有意であることが示された。事後のテューキーの検定は、製剤が放出速度の変動を有することを示した。結果は、溶液が、全てのゲルと比較して最速の放出を有したことを明らかにする放出速度のデータと一致した。さらに、1%CMCゲルおよび5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%CMCゲルは、溶液の次に最速であり、その他のゲル製剤と統計的な差異があった。これらの結果は、リン酸カルシウムナノ粒子が、放出速度を遅くする能力に関して濃度依存性であるという傾向を支持する。このことは、より高い濃度のナノ粒子がポリマーと相互作用し得ることに起因し得た。また、3%CMCポリマーは、ナノ粒子を含有する1%CMCポリマー製剤と統計的に差異があった。溶液対1%CMCゲルは、統計的に有意ではなかったが、1%CaP NPの1%ポリマーへの添加は、放出速度に有意な差異を示した。さらに、3%CMCポリマー対溶液は、放出速度を低下させ、1%CaP NPの3%CMCポリマーへの添加は、放出をさらに遅延させた。このことは、CaP NPが、ポリマーの粘性にかかわらず、放出速度をさらに遅延させるという見解を明らかにする。
【0101】
シグモイドカーブフィットモデルは、プロットされた様々なm値を示した。結果は、時間に対して直接比較した場合の様々な製剤が、各ゲルおよび溶液の全てのサンプルの放出速度との整合性を有することを示した。m3およびm4値は、放出速度および曲線の形状を決める。しかしながら、m3値は、この研究で分かったデータと一貫して相関するわけではなく、このことは、曲線の形状におけるm4の変化に起因し得る。それでもなお、平均のm1〜m4値をグラフ化したとき、結果は、放出速度研究と同じ傾向を示した。
【0102】
粘性データは、予想していたように、3%CMCゲルが、1%CMCゲルと比較して最高の粘性を示すことを示した。しかしながら、濃度を変えたときのリン酸カルシウムポリマーは、異なる粘性を示し、Na CMCポリマーの濃度も因子であった。例えば、1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する3%ポリマーゲル製剤は、全ての他の3%CMCゲル製剤と比較して最高の粘性を有したが、逆に、5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%ポリマーゲル製剤は、全ての1%CMCゲル製剤と比較して最高の粘性であった。このことは、ナノ粒子とポリマーとの相互作用が両方の成分に関して濃度依存性であることも示す。ゲル製剤のチキソトロピーは、直接比較をしたときに、変わった。全くナノ粒子を添加していないゲルは、Na CMCポリマーのこれまでの研究から予想されていた結果を示した。しかしながら、リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%CMCゲルは、ゲルの粘性がずれ応力と共に増加したことを示す負の値を示し、これは、CMCポリマー単独では通常見られない。リン酸カルシウムナノ粒子を含有する3%CMCゲルは、粘性が時間依存性のずれ応力と共に減少したことを示す、より小さい正の値を示したが、ポリマー単独よりも低い値であった。ポリマーおよびナノ粒子に基づくチキソトロピーの有意差があるように見える。より高い濃度のポリマーを使用するとき、より高い濃度のポリマーは、正のチキソトロピーの値が見られることにより明らかであるポリマーの効果を失わせる。しかしながら、より低い濃度のポリマーを使用するとき、ナノ粒子は、通常見られることを圧倒する効果を引き起こし、ゲルの粘性は、時間依存的様式で増加する。
【0103】
Ostwald−De Waeleのモデルは、全てのゲルが、高分子量のNa CMCポリマーの特性に基づいて予想されていた擬塑性を維持したことを示した。リン酸カルシウムナノ粒子は、眼用薬剤送達および患者の快適性にとって有益なゲルの擬塑性を変えなかった。Binghamモデルから得られた流動コンシステンシー指数および降伏値は、全体的に同じ一般的な傾向で、互いに相関するように見えた。降伏値は、1%CMCゲル製剤よりも、より粘稠性の3%CMCゲル製剤でより高いことが分かった。最高の降伏値を有するのは、1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する3%CMCであり、次いで3%CMCゲルである。しかしながら、1%CMCゲル製剤では、最高の降伏値を有したのは、5%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%CMCであり、次いで1%リン酸カルシウムナノ粒子を含有する1%CMCであった。このことは、リン酸カルシウムナノ粒子が、流れるゲルの初期抵抗に影響を与えることを示すが、この特性の程度は不明である。この同じ特性は、流動コンシステンシー指数で見られ、ポリマーおよびナノ粒子が、濃度に依存する相互作用を有し、前記相互作用がゲル全体のレオロジー特性を決定することを再び顕著にする。また、ゲルについて示された特性は、どの剤が優位であるかを決定するポリマーとナノ粒子の両方の濃度に依存し、優位な剤がゲルの特性を決定する。
【0104】
結論
この研究は、マレイン酸チモロールの薬剤送達速度と共に、粘性およびリン酸カルシウムナノ粒子の添加の効果を例証した。これまでの研究は、眼用ゲルが、溶液に対して、活性薬剤の放出を遅延させることを示していた。しかしながら、リン酸カルシウムナノ粒子の添加は、これまで研究されていなかったが、薬剤放出速度の濃度依存性遅延を示した。1%リン酸カルシウムナノ粒子は、最も遅い放出速度を示した。このことは、眼の快適性を損なうことのない眼用製剤中のナノ粒子に関するさらなる研究を正当化する。上述したように、眼の不快感は、粘性が増加すると起こり得、より粘性のポリマーが理想的ではあるが、実用的でないということを結論付ける。リン酸カルシウムナノ粒子の使用は、薬剤遅延において、ポリマーと同様の薬剤的特性を示し得る。また、ゲルの擬塑性特性は、ナノ粒子で損なわれず、このことは、ずれ揺変性を可能にし、眼の不快感を防止する。この研究は、リン酸カルシウムナノ粒子をポリマーと共に眼用ゲルに使用する場合に、リン酸カルシウムナノ粒子の濃度を評価する、さらなる研究が示唆されることを結論づける。この研究の結果は、ポリマーとリン酸カルシウムナノ粒子との間には、両方の濃度を変えた
ときに、確かな相関があることを意味する。2つの成分間の適当な比を見つけることは、最適な薬剤送達および患者の不快感の緩和を可能にし得る。
【0105】
実施例1および2 結果およびデータの要約
セルロースエステル透析膜の10センチメートルのセグメント(3,500〜5,000DのMWCO)を脱イオン水で洗浄して、保存剤を除去した。次に、透析膜セグメントを、24時間以上、周囲温度で、DPBSで平衡化した。透析管を一端で閉じ、約1gの製剤で満たし、次に、上端を留めた。それぞれの充填した透析膜「バッグ」を、100mLのDPBSで満たしたビーカーに入れて、吸い込み条件を誘発した。撹拌子をビーカーに入れ、次にビーカーをパラフィルムで覆った。次に、各サンプル「セットアップ」を周囲温度でマルチステーション撹拌プレートに置き、同じ速度で撹拌した。各セットアップについて重量を記録し、必要に応じて、脱イオン水を加えて、水の損失を補った。持効性チモロール/DPBSサンプルを、測定後、専用使い捨てUVキュベットおよびホールピペットを用いてセットアップに戻した。従って、各セットアップ中のDPBS受容流体を、取り出した測定済みのサンプルを補うためにDPBSを加えることによって希釈することはしなかった。
【0106】
チモロールは、製剤から放出され、透析膜を通ってDPBSに拡散した。高分子量ポリマーおよびCaP NPは、透析バッグ内に残った。チモロールの吸光度(295λ)を定期的間隔で、UV可視分光器を使用して測定した。放出データを、溶液について7時間以上収集し、ゲルについて18時間以上収集した。15以上のサンプリング回数を各実験について実施し、各製剤について6つ以上の実験を実施した。透析バッグに移ったゲル製剤の実際の量を測定し、吸光度の読み取りを、1gの被試験ゲルに正規化した。放出されたチモロールの測定量を、理論的に放出され得るチモロールの総量のパーセンテージ(%理論)として表した。すなわち、パーセント理論は、0.067mg/ml(101mlに希釈した1gmの0.68%マレイン酸チモロール)で割ったチモロールの測定量の100倍に等しい。
【0107】
%理論として表されるチモロール濃度を、各実験について、サンプルを測定した時間に対してプロットした。データを、シグモイドカーブフィットを使用して、一般形のロジスティック関数(KaleidaGraph)を使用して評価した。KaleidaGraphで定義されているデータのシグモイドカーブフィッティングに使用する4つの変数の方程式は、Y=M1+(M2−M1)/(1+(X/M3)^M4)である。本書において、Yは、X(分で表された時間)での放出されたチモロールの量(%理論)である。ロジスティック関数の1つの変数は、透析実験が始まる前の濃度に対応する(M2)。この変数を0.0%理論に固定して、カーブフィッティングを実施した。第2の変数(M1)は、無限時間での濃度に対応する。この変数を、全てのチモロールが無限に全製剤から放出されるものと過程して、カーブフィッティングの間、100%理論と定めた。また、変数M1およびM2を(100および0.0)と定めず、変化させて、データをこの方程式にフィットさせた。M1およびM2に関する変数値の平均は、それぞれ、98.8±5.5および1.0±0.9であった。M1およびM2を値が変わるようにしたときに見られたr2値の非常にわずかな改善は、自由度が失われたことを正当化しなかった。
【0108】
M2およびM1を固定して、M3パラメーターを変化させた。M3パラメーターは、中点(50%理論)または変曲点が、チモロール放出の最低量(0.0%)と最高量(100%)との間に達する時間である。従って、M3の値は、チモロールが製剤からどれだけ速く放出されて、膜を通って受容流体(DPBS)に拡散するのかを示す有効な尺度である。第4の変数(M4)を、変化させ、形状パラメーターとみなす。M3と比較して、どれだけ速くチモロールが放出されているかに関して第4の変数(M4)が与える情報は少ない。
【0109】
通常のチモロール放出特性の代表的なサンプルを、1%C980実験からの個々のデータポイント(85ペア)に沿ったシグモイドフィットと共に
図2に示す。フィットのシグモイド性は、フィットおよびデータを、X軸として時間ではなくlog(時間)で示した場合(
図3)に、より容易に認められる。
【0110】
図2および3を観察;75%理論の近傍で収集したデータは、(初期直線部分から離れた)S字曲線の上部屈曲部にあるが、シグモイドモデルにより、まだ接近して記載されている。従って、75%理論に達する時間(T75)を、方程式75=M3×{(3)}^(1/M4)を用いてそれぞれの個々のフィットについて計算した。ここで、時間0の0%理論および無限での100%理論の仮定を適用する。
【0111】
曲線の直線部分を、放出速度の尺度として調べた。線形回帰を使用して、初期データ対をフィットさせた。データペアの選択を、r2値の増加または減少に関して調べるとともに、視覚的に実施した。より高い傾きの値は、チモロールの放出速度がより速いことを示すと考えられる(
図4)。
【0112】
放出の線形性を調べるための別のアプローチは、2分の遅延時間を割り当てること、およびM3値により決まる時間までに現れる近似放出曲線の初期「直線」部分を定めることである。
図5は、このアプローチの例を示し、シグモイドフィットは、約50%理論まで、形状がほぼ直線状である。
【0113】
各時点で計算した「線形」値からフィットさせたシグモイド値を引くことは、シグモイドフィットの「線形性」の指標を与える。すなわち、差がゼロに近くなるほど、シグモイドフィットの部分はより線形となる。以下の図を見ると、1%CMCプラス1%CaP NPゲルは、0.5%カーボポール980プラス5%CaPゲルよりも長期間、幾分線形(±5%以下の差)であることが明らかである。「線形性の終わり」(EOL)を、線形性からの差が0に近くなる最後の時点(分)として定義する。
【0114】
M3、M4、およびT75値は、各実験についてシグモイドフィットを使用して求めた。統計解析の前に、様々な製剤のM3値について外れ値を、ディクソン型検定を使用して検出した。次に、外れた実験を、さらなる統計解析で切り捨てた。生成したM3、M4、およびT75値を、独立したデータ点とみなし、一元配置ANOVAおよびテューキーの事後検定(p<0.05)を使用して、様々な製剤のM3、M4、およびT75値の統計的有意性を判定した。各製剤に関する個々のM3、M4、およびT75値の平均値を、その製剤の代表値とみなす。
【0115】
ゲルの粘性を、Haake viscotester 550を使用して測った。カーブフィット分析を、Ostwald−De WaeleおよびBinghamのモデルを使用して実施した。Ostwald−De Waeleモデルにより、粘性関連定数(k)および流動性指数(n)を、τがずれ応力である方程式τ=kγ
・^nに従って求めることが可能となった。k値が高くなるほど、ゲル製剤の粘性はより粘稠性となる。nが1に等しい場合、流体は、ニュートン性とみなされる。nが1未満の場合、流体は、擬塑性(ずれ揺変性)とみなされ、nの値が減少するほど、よりずれ揺変性であるとみなされる。Binghamモデルは、各ゲル製剤について、降伏値の計算を可能にした。
【0116】
非線形カーブフィット(シグモイドモデル−KaleidaGraph)を使用して、各実験を%理論対サンプリング時間について評価した。全ての個々のカーブフィットについて得られたR2値は、0.96〜0.99に及び、平均値は0.99であった。各実験に関するM3、M4、およびT75値を平均化した。表14および15にリストする。よ
り大きいM3中点値は、チモロール放出速度がより遅いことを示す。M4変数は、形状パラメーターであるが、通常、この研究で見られる範囲内のM4の増加により、90%理論が達成される速度が速くなる。より大きいT75値は、放出がより遅くなる指標である。
【表14】
【表15】
【0117】
ANOVAの結果は、チモロール放出速度の指標とみなされた全ての製剤の値(M3、M4、およびT75)の間に、p値<0.0001で統計的有意差があったことを示した。M3、M4、およびT75値のテューキーの事後分析を使用して、互いと統計的に有意であるチモロール放出速度を生成した製剤はどれであるかを判定した。全体として、比較されている製剤のペア間で平均M3値に66分の差があったこと(1つのペアは、58分の差で統計的差異があった)は、統計的有意性を示す。製剤間のチモロール放出速度における多くの有意差の中で、最も関連性のある差異を表16に示す。
【0118】
【表16】
【表17】
【表18】
【0119】
直線の傾き(放出の初期部分)の値が平均M3値に対して回帰した場合に、良好な相関(r
2=0.8526)が、予想していた順序で達成された。M3値は、データの初期部分について放出速度を適切に記述すると考えられる。良好な正の相関が、製剤に関するM3値とEOLとの間に得られた。従って、50%理論的放出までの時間が最も遅い製剤は、最長の時間、「線形」性も示した。
【0120】
直線の値からの差の一次導関数対時間をプロットすることにより、シグモイドフィットが線形特性と異なる速度を観察することが可能である。
図7を見ると、100%理論がシグモイドモデルでほぼ達成される時間で、ほぼ一定のレベルの変化が、達成されている。ほぼ一定のレベルの変化は、M3値と強い(負の)相関関係にあり、直線部分の傾きが、放出の遅延を示す製剤では、より小さくなることを示す。
【0121】
図8および9は、それぞれ、放出時間およびlog時間の分に対するいくつかの製剤に関する近似曲線の比較を表す。
【0122】
平均T75値は、平均M3値との強い対応関係を示す。0.947の相関係数(r)は、T75およびM3が互いに対して回帰する場合に達成された。T75に関する統計的結果は表17に要約されており、通常、188分の差が、統計的有意性を得るために必要である。T75に関する要約された結果は、M3をチモロール放出速度の指標として使用した場合に見られる結果と基本的に同一である。
【0123】
放出されたチモロールの量を決める代替的なアプローチは、%理論ではなく測定された最後の値のパーセンテージによりデータをフィットすることである。最後の値は、通常、14時間を超える期間の放出後に得られ、%一夜として表された。%一夜として表されたデータについてのM3値のフィットが、%理論を用いて得られたM3値に対して回帰した場合(R
2=0.98,1.02の傾き)に、良好な相関が達成された。M3値は、フィットパラメーターをどのようにして決めるかに関してかなりロバストである形で、放出速度を示すように見える。
【0124】
M3(曲線の中点)は放出速度の最良の指標であると考えられるが、M4変数(形状)パラメーターは、シグモイド曲線の直線部分の傾きに関してある程度の目安を与える。M4値が大きくなると、90%理論が達成される時間が、より早くなる。平均のM3値およびM4値が互いに対して回帰した場合、統計的に有意である0.6の相関係数で、中程度の相関が達成される。回帰分析は、概して、より高いM4値がより低いM3値(より速い放出)と相関することを示す。0.5%C980ゲルのM4値対2%CaPを含有する0.5%C980のM4値では、M3値では見られない統計的有意差がある。しかしながら、これらの製剤のM3値は、放出速度に関する順番が、M4値で見られる順番と同じである。