特表2017-537983(P2017-537983A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エレべイト オーラル ケア、エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537983(P2017-537983A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】口渇の軽減のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/047 20060101AFI20171124BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20171124BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20171124BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   A61K31/047
   A61K47/10
   A61K47/32
   A61K9/08
   A61K9/06
   A61P1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-550461(P2017-550461)
(86)(22)【出願日】2015年11月20日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月4日
(86)【国際出願番号】US2015061743
(87)【国際公開番号】WO2016094054
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】62/089,942
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517205882
【氏名又は名称】エレべイト オーラル ケア、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン、ジェロム、イー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA94
4C076BB22
4C076CC16
4C076DD38
4C076DD38M
4C076EE09
4C076EE09M
4C076FF11
4C076FF31
4C076FF57
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA05
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA77
4C206NA12
4C206ZA67
(57)【要約】
【解決手段】 水分子を封入するクラスレートホストを含有する粘膜付着性製剤は、粘膜表面への水分の提供し、かつ粘膜表面上で水分を維持するためにだけでなく、長期間にわたり粘膜表面上においてin situで高濃度の糖アルコールを維持するにあたり効果的な手段を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜付着性製剤であって、
粘膜付着性ポリマーと、
水を封入可能なクラスレートホストと、
75%より低い濃度の遊離水と、
前記製剤中の遊離水の濃度の少なくとも25%かつ前記製剤の少なくとも10%の濃度の糖アルコールと、
を有し、前記製剤中における前記粘膜付着性ポリマー及びクラスレートの量は、前記製剤が口腔粘膜に適用される場合にin situで前記糖アルコールを保持するのに十分な量である、製剤。
【請求項2】
請求項1記載の粘膜付着性製剤において、前記糖アルコールはキシリトールである、粘膜付着性製剤。
【請求項3】
請求項2記載の粘膜付着性製剤において、前記粘膜付着性ポリマー及び前記クラスレートホストは同じであり、または、前記粘膜付着性ポリマーは前記クラスレートホストの成分である、粘膜付着性製剤。
【請求項4】
請求項3記載の粘膜付着性製剤において、前記クラスレートホストはグリセリンとポリアクリレートとのクラスレートである、粘膜付着性製剤。
【請求項5】
請求項2記載の粘膜付着性製剤において、前記キシリトールの濃度は前記製剤中の遊離水の濃度の少なくとも50%である、粘膜付着性製剤。
【請求項6】
請求項2記載の粘膜付着性製剤において、前記キシリトールの濃度は前記製剤中の遊離水の濃度と少なくとも等しい、粘膜付着性製剤。
【請求項7】
請求項2記載の粘膜付着性製剤において、前記キシリトールの濃度は前記製剤の35%より高い、粘膜付着性製剤。
【請求項8】
請求項2記載の粘膜付着性製剤において、前記クラスレートと前記キシリトールとの相対濃度w/w%は1:1〜1:10である、粘膜付着性製剤。
【請求項9】
請求項1記載の粘膜付着製剤であって、糖アルコール以外にはアルコールを含まない、粘膜付着性製剤。
【請求項10】
請求項2記載の粘膜付着性製剤において、前記キシリトールは前記粘膜付着性製剤中の全成分のうち、最も高い濃度の成分である、粘膜付着性製剤。
【請求項11】
請求項2記載の粘膜付着性製剤であって、グリセリンを有する、粘膜付着性製剤。
【請求項12】
請求項11記載の粘膜付着性製剤において、前記グリセリンの濃度は前記製剤中のキシリトールの濃度の半分より低い、粘膜付着性製剤。
【請求項13】
請求項1記載の粘膜付着性製剤であって、液体、または半固体である、粘膜付着性製剤。
【請求項14】
請求項1記載の粘膜付着性製剤において、前記液体はマウスリンスまたはマウススプレーであり、前記半固体はゲルまたはペーストである、粘膜付着性製剤。
【請求項15】
請求項2記載の粘膜付着性製剤であって、キシリトール、水、グリセリン、並びに、グリセリンとポリアクリレートとのクラスレートを有する、粘膜付着性製剤。
【請求項16】
請求項15記載の粘膜付着性製剤において、前記製剤中のキシリトールの濃度は前記製剤中の水の濃度の少なくとも80%である、粘膜付着性製剤。
【請求項17】
請求項16記載の粘膜付着性製剤において、前記キシリトールの濃度は前記製剤の35%より高い、粘膜付着性製剤。
【請求項18】
口腔粘膜を湿潤させる方法であって、請求項1〜17のいずれか記載の粘膜付着性製剤を口腔粘膜に適用する工程を有する、方法。
【請求項19】
口腔粘膜に糖アルコールを提供する方法であって、請求項1〜17のいずれか記載の粘膜付着性製剤を口腔粘膜に適用する工程を有する、方法。
【請求項20】
口腔粘膜にキシリトールを提供する方法であって、請求項2〜17のいずれか記載の粘膜付着性製剤を口腔粘膜に適用する工程を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、口腔乾燥症に関する不快感を軽減するための、経口使用のための組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
口渇とも呼ばれる口腔乾燥症は、口腔内における唾液流の不十分による、慢性状態である。それ自体は疾患ではないが、幅広い様々な原因及び状態に関連する、症状である。
【0003】
口腔乾燥症の原因には、抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、抗コリン薬、食欲抑制剤、抗高血圧剤、抗精神病薬、抗パーキンソン剤、利尿剤、鎮静剤、鎮吐剤、抗不安薬、充血緩和剤、鎮痛剤、止瀉剤、気管支拡張剤、及び骨格筋弛緩訳などの医薬品の使用を含む、多くの原因がある。
【0004】
口腔乾燥症の別の一原因は、疾患の二次的影響としてである。口腔乾燥症を引き起こす最も一般的な疾患は、慢性炎症性自己免疫疾患である、シェーグレン症候群である。サルコイドーシス、及びアミロイドーシスなどの慢性炎症性疾患もまた、口腔乾燥症の原因である。
【0005】
口腔乾燥症を引き起こしうる全身性疾患は、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、糖尿病、高血圧、嚢胞性線維症、骨髄移植、内分泌障害、栄養欠乏、腎炎、甲状腺機能障害、並びに、ベル麻痺及び脳性麻痺などの神経性疾患を含む。原発性胆汁性肝硬変、萎縮性胃炎、及び膵不全などの分泌不全状態もまた、口腔乾燥症を引き起こしうる。
【0006】
水摂取不全、嘔吐、下痢、または多尿により起こる脱水は、口腔乾燥症をもたらしうる。うつ、不安、ストレス、または恐怖などの心因性誘因もまた、口腔乾燥症をもたらしうる。アルツハイマー病または発作は、口腔感覚を知覚する能力を変化させうる。口渇は、呼吸亢進、口を介する呼吸、喫煙、または飲酒などの活動により、しばしば悪化する。頭頸部への外傷は、口に感覚を供給している神経を傷め、唾液腺の正常機能を損なわせうる。さらに、口腔乾燥症は、頭頸部への放射線治療と関連付けられる、最も一般的な毒性である。
【0007】
口腔乾燥症は、全年齢の人において起こるが、高齢者において特にありふれた病訴であり、高齢者のおよそ20パーセントに影響を与えると推定される。口腔乾燥症に苦しむ人において、口腔乾燥症に次ぐ病訴は、摂食時の口腔乾燥、乾いた食品を飲み込むために液体を一口飲む必要性、飲み込み困難、及び唾液不足による口渇の知覚を含む。
【0008】
口腔乾燥症はまた、齲蝕及び歯質脱灰の発生率の上昇、並びにカンジダ症などの二次的感染のリスク上昇を含む、二次的影響の原因ともなる。従って、口腔乾燥症に対する補助的治療は、齲蝕制御のためのフッ素療法、及びナイスタチンなどの抗真菌薬の使用をしばしば含む。
【0009】
口腔乾燥症自体の治療に対しては、水分を補充し、口腔を潤滑化させるために、人工唾液、または代用唾液が使用されうる。これらの代用物は、溶剤、スプレー剤、ゲル剤、及びトローチ剤を含む、様々な製剤で入手可能である。これらの人工的な代用唾液は、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースなどの粘性を増大させるための作用剤、カルシウム及びリン酸イオン及びフッ素などの無機質、保存料、並びに風味剤を含有しうる。
【0010】
口腔乾燥症に対して最も一般的に利用されている経口治療は、BIOTENE(登録商標)(GlaxoSmithKline plc、United Kingdom)である。BIOTENE(登録商標)は、経口リンス及びスプレー製剤、並びに経口ゲル製剤で入手可能である。BIOTENE(登録商標)の全ての製剤が、水グリセリン、キシリトール、及び粘膜付着性ポリマーを含有する。BIOTENE(登録商標)ゲル製剤は、その粘膜付着特性に加え、追加で、増粘剤としてカルボマーを含有する。糖アルコールであるキシリトール及びソルビトールは、甘味を提供するため、BIOTENE(登録商標)中に少量で存在する。
【0011】
カワ、米国特許出願第2008/0317703号は、アニオン性粘膜付着性ポリマーとの組合せでの、ポリビニルピロリドン(PVP)またはビニルピロリドン/ビニルアセテートもしくはビニルアルコールコポリマーの組合せを含有する、口腔乾燥症のための経口ケア製品を開示する。カワは、アニオン性ポリマーが、口腔の粘膜に対する親和性を有し、優れた口腔コーティングを提供することを開示する。しかしながら、そのようなポリマーは、しばしば過剰にべとつき、従って、負の感覚的性質を有する。PVPまたはコポリマーと粘膜付着性ポリマーとの組合せは、粘膜付着性ポリマーの存在により、組成物の悪い食感を克服する。
【0012】
カワは、その組成物が追加の賦形剤を含有してもよく、賦形剤の1つは湿潤剤でありうることを、さらに開示する。湿潤剤が存在する場合は、その湿潤剤は、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、または組合せでありうる。
【0013】
Soderling et al,Curr.Microbial.,56:382−385(2008)は、キシリトールが、口腔中で一般に見られる生物であり、かつ齲蝕の発達への重要な寄与因子である、Streptococcus mutansの増殖を阻害することを開示する。
【0014】
2012年に、Ashland Inc.(Covington、KY)は、口渇の治療のためのLUBRAJEL(登録商標)BAの発売を発表した。LUBRAJEL(登録商標)BAは、水素結合及びファンデルワールス力により水分子を封入する、グリセリン及びポリアクリレートのクラスレートである。LUBRAJEL(登録商標)BAは、水に結合し、かつ粘性の高いゲルであるため、口腔に水分を提供する成分として販売された。Ashlandは、LUBRAJEL(登録商標)BAを含有する製剤が、様々な口腔状態下で唾液と同様に機能することをさらに開示した。さらに、これらの製剤は、唾液より優れた粘膜付着性を有したため、LUBRAJEL(登録商標)BAを含有する製剤で、口腔が、より長い水分補給状態、及び口渇(口腔乾燥症)の軽減を維持することが期待される。
【0015】
S.mutansの増殖を阻害するのに十分高い濃度でキシリトールを含有する口腔ケア製品であって、キシリトールが口腔中でS.mutansの増殖を阻害するのに十分な時間にわたり、口腔中また特に口腔粘膜上でキシリトールの濃度を維持する製品への顕著な需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
水分子を封入し、かつ粘膜表面上で適所に水分子を保持するのに効果的である、クラスレートホストを含有する粘膜付着性製剤が、高い水濃度の存在下でも、粘膜表面で適所に糖アルコールを保持するのにも効果的であること、及び、高濃度の水の存在下でも、糖アルコールを保持する能力が維持されることが、予想外に発見された。
【0017】
この当初の発見に基づき、水分子を封入するクラスレートホストを含有する粘膜付着性製剤が、粘膜表面に水分を提供し粘膜表面上で水分を維持するためだけでなく、長期間にわたり粘膜表面上においてin situで高濃度の糖アルコールを維持するにあたり効果的な手段を提供することが、さらに発見された。糖分子は好ましくはキシリトールであり、in situに留まるキシリトール濃度は、齲蝕の発達を阻害するために十分に高くてもよい。
【0018】
従って、本出願は、第一実施形態において、口腔粘膜などの粘膜表面への、水分、及びキシリトールなどの糖アルコールの付着を提供するための製剤を開示する。
【0019】
粘膜付着性製剤は、粘膜付着性ポリマーを含有する。適切な粘膜付着性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースなどのセルロースポリマー、キサンタンガム、グアガム、アラビアゴム、及びトラガカントなどのサッカライドガム、カルボマーもしくはアクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマーなどのポリアクリル酸ポリマー、またはポリビニルピロリドンもしくはキトサンなどの他のポリマーを含む。
【0020】
粘膜付着性ポリマーは、製剤の口腔粘膜への付着を提供するのに十分な濃度で、粘膜付着性製剤中に存在する。例えば、製剤中の粘膜付着性ポリマーの濃度は、0.1%から25%w/wであってもよく、好ましい範囲は、0.5%から10%、より好ましい範囲は1.0%から7%である。
【0021】
粘膜付着性製剤は、水を封入可能であるクラスレートホストを含有する。クラスレートホストは、粘膜付着性ポリマー以外であってもよい。本発明に適し、かつそれ自身は粘膜付着性ポリマーではないクラスレートホストの例は、シクロデキストリンである。適切なシクロデキストリンの例は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキストリン、並びに、メチル化シクロデキストリン、エチル化シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、及びヒドロキシエチルシクロデキストリンなどの、シクロデキストリンの誘導体を含む。
【0022】
好ましい実施形態においては、粘膜付着性ポリマーとクラスレートホストとは同じであり、あるいは、粘膜付着性ポリマーはクラスレートホストの成分である。最も好ましいある実施形態においては、水を水素結合及びファンデルワールス力により封入する、グリセリン、並びに、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸としてのポリアクリルレートの、クラスレートである。この粘膜付着性ポリマー/クラスレートホストは、Ashland Inc.(Covington、KY)により、LUBRAJEL(登録商標)BAとして販売されている。LUBRAJEL(登録商標)BAの追加の副成分は、ブチレングリコール、安息香酸、及びEDTAである。
【0023】
粘膜付着性製剤は、水を含有する。製造者によりヒドロゲルの形態で提供されるように、LUBRAJEL(登録商標)BAは、水を約50%w/w、及び非水成分を約50%含有する。本出願の粘膜付着性製剤は、LUBRAJEL(登録商標)BAにより提供される水に加え、製剤中でLUBRAJEL(登録商標)BAにおいて内在的である水濃度と比較して、少なくとも同じ、また好ましくは数倍高い、水の濃度を含有する。本出願においては、製剤においてLUBRAJEL(登録商標)BAの成分でない製剤中の水は、「遊離水」と呼ばれる。製剤においてLUBRAJEL(登録商標)BAがクラスレートホストである場合、製剤中の遊離水は、製剤中の合計水濃度から、製剤中のLUBRAJEL(登録商標)BAの濃度の50%を引いたものである。
【0024】
実例として、粘膜付着性製剤は、LUBRAJEL(登録商標)BAを10%の濃度で含有しうる。このうち、50%が水であるゆえ、LUBRAJEL(登録商標)BAの50%が水以外である。従って、10%のLUBRAJEL(登録商標)BAを含有する製剤に内在する水の濃度は、5%である。従って、この製剤例における遊離水の濃度が、LUBRAJEL(登録商標)BAの一部である水の濃度と比べ、少なくとも同じだけ高い場合、その粘膜付着性製剤は、少なくとも5%、また好ましくは5%より高い、遊離水の濃度を含有する。
【0025】
好ましくは、粘膜付着性製剤中の遊離水の濃度は、LUBRAJEL(登録商標)BAの一部である水の濃度の2倍またはそれより高い。ある好ましい実施形態においては、粘膜付着性製剤中の遊離水の濃度は、LUBRAJEL(登録商標)BAの一部である水の濃度の3倍またはそれより高い。より好ましい実施形態においては、遊離水の濃度は、製剤のLUBRAJEL(登録商標)BA中にある水の濃度の少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、少なくとも15倍、または15倍より高くさえもある。
【0026】
製剤において、遊離水の濃度は、5%と75%との間である。好ましくは、製剤中の遊離水の濃度は、50%より低く、10%と42%との間などである。下に開示されるように、糖アルコールなどの他の成分の濃度は、遊離水の濃度より高いことが好ましく、遊離水とLUBRAJEL(登録商標)BA中に存在する水とを合わせた濃度より高くても良い。つまり、好ましくは、製剤中の全供給源由来の遊離水の合計量が、また最も好ましくは、遊離水とLUBRAJEL(登録商標)BAの一部である水とを含む水の合計量が、50%より低い。
【0027】
粘膜付着性製剤は、4から6炭素の糖アルコールを1つまたはそれより多く含有する。粘膜付着性製剤に適切である4から6炭素の糖アルコールの例は、エリトリトール及びトレイトールなどの4炭素(C4)糖アルコール、アラビトール、キシリトール、及びリビトールなどの5炭素(C5)糖アルコール、並びに、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、及びイノシトールなどの6炭素(C6)糖アルコールを含む。ある好ましい実施形態においては、糖アルコールは、キシリトールまたはソルビトールである。
【0028】
最も好ましいある実施形態においては、糖アルコールはキシリトールである。キシリトールは、その甘味料としての使用に加え、齲蝕の発達に寄与する生物の増殖を阻害するため、キシリトールが好ましい。
【0029】
製剤中の糖アルコールの濃度は、意図される機能を提供するのに十分である。従って、湿潤剤としてまたは甘味料として使用される場合、糖アルコールの濃度は、これらの機能を提供するのに十分である。湿潤剤として、または製剤に甘味を提供するために十分である糖アルコールの濃度は、一般に、1.0%と10%との間である。
【0030】
キシリトールの場合、甘味の提供に加えてその抗齲蝕効果ゆえ、抗齲蝕効果を提供できるためには、粘膜付着性製剤中で少なくとも10%の濃度を有することが好ましい。より好ましくは、粘膜付着性製剤中のキシリトールの濃度は、少なくとも15%であり、少なくとも20%または少なくとも25%などである。ある好ましい実施形態においては、粘膜付着性製剤中のキシリトールの濃度は、少なくとも30%であり、少なくとも35%または少なくとも40%などである。望まれれば、42%、45%、またはより高いなどの、40%より高いキシリトール濃度が使用されうる。
【0031】
製剤が糖アルコールとしてキシリトールを含有する場合、製剤中のキシリトールの濃度は、製剤中の遊離水の濃度の少なくとも25%であることが望ましい。例えば、製剤中のキシリトールの濃度は、製剤中の、遊離水の濃度の少なくとも33%、または遊離水の濃度の少なくとも50%でありうる。より好ましくは、製剤中のキシリトールの濃度は、遊離水の濃度の少なくとも75%である。最も好ましくは、製剤中のキシリトールの濃度は、遊離水の濃度と比べて等しいからより高い。特に好ましいある実施形態においては、キシリトールは、粘膜付着性製剤中の全成分のうち最も高濃度にある。従って、製剤の遊離水濃度は、50%w/wより低いことが特に好ましい。
【0032】
粘膜付着性製剤の任意の追加の成分は、グリセリン(グリセロール)である。グリセリンは、経口調剤において、湿潤剤として一般的に使用される糖アルコールである。グリセリンは糖アルコールであるが、他の糖アルコールに加えて経口調剤においてしばしば使用され、またグリセンリンはキリトールとは異なり抗齲蝕効果を有することは知られていないため、本出願においては別個に議論される。
【0033】
グリセリンは、製剤中に存在する場合、キシリトールなどのC4からC6糖アルコールの濃度より低い濃度である。好ましくは、グリセリンの濃度は、キシリトールなどの糖アルコールの濃度の半分より低い。より好ましくは、グリセロールの濃度は、キシリトールなどの糖アルコールの濃度の35%より低く、また最も好ましくは、キシリトールなどの糖アルコールの濃度の25%より低い。
【0034】
一般に、グリセリンが存在する場合、製剤中のグリセリンの濃度は25%より低く、好ましくは20%より低く、また最も好ましくは15%より低い。最も好ましいある実施形態においては、グリセリンは、10%またはそれより低いなどの、12%より低い濃度で存在する。
【0035】
粘膜付着性製剤は、任意で、風味剤、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、またフッ化ナトリウム、フッ化スズ、及びモノフルオロリン酸ナトリウムのようなフッ化物などの腐食防止化合物、並びに、プロピレングリコールなどの非水性媒体などの他の成分を任意で含有しうる。好ましくは、粘膜付着性製剤は、糖アルコールの他にはアルコールを含有しない。
【0036】
粘膜付着性製剤は、リンスまたはマウススプレーのような液体、またはゲルまたはペーストのような半固体などの、経口粘膜表面への送達に有用であるあらゆる形態をとりうる。一般に、類似の製剤が、リンスまたはマウススプレーのいずれかとして使用されうる。ゲル及びペースト製剤は、製剤を半固体の形態にするのに十分な量で増粘剤を含有する。
【0037】
ある別の実施形態においては、本発明は、キシリトールなどの糖アルコールを口腔粘膜表面上でin situで提供しかつ好ましくは維持し、また口腔粘膜表面に水分を追加で提供するための方法である。本実施形態に従えば、リンスもしくはマウススプレーにおけるような液体の形態の、またはゲルもしくはペーストにおけるような半固体としての、上で開示の粘膜付着性製剤は、固体の口腔中へと投与される。製剤は、リンス、スプレー、または口腔内への適用によるなどのあらゆる実用的な手段により投与されうる。
【0038】
好ましくは、固体は、製剤が口腔粘膜に付着するのを可能にするのに十分な時間にわたり、製剤を口腔中に維持する。これは、うがいなどの手段により、または口腔中に製剤を単に保持することにより、達成されうる。製剤が口腔に付着するのに要する時間は、場合によっては、一瞬でありうる。そのような状況においては、単に製剤を口腔中へと投与するだけで、そのような付着には十分であろう。
【0039】
本発明のこの実施形態について好まれる糖アルコールは、その抗齲蝕効果ゆえ、キシリトールである。従って上で開示の通り、キシリトールが、水を潜在的な例外として、粘膜付着性剤において最も高い濃度にある成分であることが好ましい。
【0040】
上で開示のキシリトールを含有する粘膜付着性製剤の口腔粘膜への投与に関する予期しない発見は、その製剤の、キシリトールを、高濃度でかつ長期間にわたり、口腔粘膜上でin situで「保持する」能力である。例えば、水、キシリトール、並びにグリセリン及びポリアクリレートのクラスレートを有する製剤は、口腔粘膜上で、何分かにわたり、製剤自体における濃度比とほぼ同一の濃度比で保持されることが分かった。実施例において下で開示されるように、この能力は、遊離水とクラスレート中の水との濃度の製剤中比が10倍より大きく、かつキシリトールの製剤中濃度がクラスレートの製剤中濃度の6倍である製剤中におおいて、存在することが分かった。このことは、製剤中のクラスレートが、水を劇的に高濃度で保持するだけでなく、そのような高濃度の水と共に、キシリトールを高濃度で同時に保持することを確立する。
【0041】
ある別の実施形態においては、本発明は、口腔粘膜表面上でin situで水分を提供しかつ保持するための方法である。この実施形態に従えば、リンスもしくはマウススプレーにおけるような液体の形態での、またはゲルもしくはペーストにおけるような半固体としての、上で開示の粘膜付着性製剤は、固体の口腔中へと投与される。製剤は、リンス、スプレー、または口腔中への適用によるなどのあらゆる実用的な手段により投与されうる。
【0042】
本発明のこの実施形態に従えば、水を含有する製剤において、キシリトールと、水分子を封入しかつ粘膜表面上において水分子を適所に保持するクラスレートホストとを組み合わせることは、キシリトールなしでのクラスレートホストの使用により得られるよりも顕著に多い水の保持を提供することが、予期せずに発見された。
【0043】
上で議論されたように、クラスレートホストは、上記シクロデキストリンなど、粘膜付着性ポリマー以外でありうる。あるいは、クラスレートホストは、粘膜付着性ポリマーであってもよく、あるいは粘膜付着性ポリマーをクラスレートホストの成分として有してもよい。粘膜付着性ポリマーがクラスレートホストまたはクラスレートホストの成分である場合のクラスレートホストの好ましい例は、水素結合及びファンデルワールス力により水を封入する、グリセリンと、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸としてのポリアクリルレートとのクラスレートであり、LUBRAJEL(登録商標)BAなどである。
【0044】
本発明のこの実施形態に従えば、LUBRAJEL(登録商標)BAなどのクラスレートホストとキシリトールとの相対濃度w/w%は、好ましくは1:1と1:10との間で、より好ましい範囲は、1:2と1:8との間で、最も好ましい範囲は1:4と1:6との間である。
【0045】
好ましくは、製剤中のキシリトールの濃度は、製剤中の遊離水の濃度の少なくとも25%である。より好ましくは、キシリトールの濃度は、製剤中の遊離水の濃度の少なくとも50%である。さらにより好ましくは、キシリトールの濃度は、製剤中の遊離水の濃度の少なくとも75%である。最も好ましいある実施形態においては、製剤中のキシリトールの濃度は、製剤中の水の濃度と比べ、等しい、またはより高い。
【0046】
本発明は、以下の非限定的な実施例において、さらに例証される。
【0047】
実施例1−先行技術液体製剤による、キシリトールの粘膜保持
カワ、米国特許出願第2008/0317703号において開示される先行技術液体製剤が、粘膜表面上でキシリトールを保持する能力について評価された。その先行技術製剤は、表1に示される以下の成分を含有した。
【表1】
【0048】
プラスチック製の顕微鏡観察用スライドが、口腔粘膜表面を模倣する人工ポリウレタン膜であるAVALURE(商標)UR 450ポリマー(Lubrizol Corp.,Wickliffe,OH)でコーティングされた。コーティングは、室温にて一晩乾燥させられた。乾燥後、スライドは、脱イオン水中に25分間浸された。25分後には、コーティングは透明からやや不透明に変化したことが見いだされ、これは水分が吸収されたことを示す。
【0049】
先行技術製剤中の固体の率を測定するため、未処理のスライドの重量が測定され、ワニスブラシを使用して、表1の先行技術製剤でコーティングされた。スライド上にコーティングされた溶液の量は、当初の容器からの重量損失を測定することにより決定された。コーティングの後、スライドの重量が測定され、それから乾燥させるために37℃の温度で放置され、再び重量測定された。コーティングの後、スライドの重量が測定され、それから乾燥させるために37℃の温度で放置され、再び重量測定された。コーティングの後、スライドの重量が測定され、それから乾燥させるために37℃の温度で放置され、再び重量測定された。揮発性成分が蒸発した後に残る、先行技術製剤の一定残留重量は、52.9%であったことが測定された。
【0050】
プラスチック製の顕微鏡観察用スライドが、重量測定され、UR 450ポリマーでコーティングされ、乾燥させられた。スライドは、0.001gの位までの概数として重量測定された。スライドは、表1の製剤でコーティングされ、湿潤中に重量測定された。スライドは、それからDrip Flow Biofilm Reactor Model DFR 110(BioSurface Technologies Corporation,Bozeman MT)中に10度の傾斜で1時間配置され、唾液の流れを模倣するため、0.35ml/分の速度での水滴流にさらされた。スライドはReactorから取り出され、乾燥させられ、それから0.001gの位までの概数として重量測定された。湿潤コーティングの残量が、上で開示のように固体の計算を用いて測定された。
【0051】
1時間の水滴流処理の後、スライド上には先行技術コーティングは残留していないことが分かった。このことは、キシリトールを含む固体はいずれも、in vitro口腔粘膜代替表面上に全く残らなかったことを示す。
【0052】
対照として、UR 450ポリマーのみでコーティングされたスライドが滴流リアクター中に配置され、先行技術製剤でコーティングされたスライドと同じように処理された。スライドの重量は、滴流リアクター中に配置する前と、1時間の処理及びそれに続く乾燥の後とでは、同じであることが分かった。
【0053】
実施例2−本発明の液体製剤による、キシリトールの粘膜保持
表1の先行技術製剤の代わりに下の表2に示される液体製剤が使用されたことを除き、実施例1の研究が繰り返された。
【表2】
【0054】
液体製剤の乾燥重量は45.8%であることが測定され、これは主としてキシリトール及びヒドロゲルで構成される。乾燥前かつ滴流処理前のスライド上のコーティングの当初重量は0.097g及び0.113gであり、また処理及びそれに続く乾燥の後の残留重量はそれぞれ0.020g及び0.031gであった。
【0055】
当初重量に乾燥重量パーセントを掛けたもので残留重量を割ることにより、スライド上に保持された乾燥重量残留パーセントが決定された。これは、各試料について、それぞれ製剤の45.0%及び59.9%が保持されているという結果を与えた。
【0056】
この研究は、本発明の液体製剤は、口渇状態で苦しむ固体において一般的に見られる液流速度の存在下で、1時間にわたり、キシリトールを口腔粘膜に接触した状態で維持することを確立させた。
【0057】
実施例3−先行技術ゲル製剤による、キシリトールの粘膜保持
表1の先行技術液体製剤の代わりに、先行技術のゲル製剤(BIOTENE(登録商標) ORAL BALANCE(登録商標) Dry Mouth Moisturing Gel,GlaxoSmithKline, Philadelphia,PA)が使用されたことを除き、実施例1の研究が繰り返された。先行技術ゲル製剤は、以下の成分を含有した。成分の濃度は、測定されなかった。BIOTENE(登録商標) ORAL BALANCE(登録商標)Dry Mouth Moisturing Gelは、グリセリン、水、ソルビトール、キシリトール、カルボマー、ヒドロキシエチルセルロース、水酸化ナトリウム、及びプロピルパラベンを含有する。
【0058】
先行技術ゲル製剤の乾燥重量は70.1%であることが測定された。乾燥前かつ滴流処理前のスライド上のコーティングの当初重量は0.526g及び0.248gであり、また処理及びそれに続く乾燥の後の残留重量はそれぞれ0.219g及び0.077gであった。
【0059】
当初重量に乾燥重量パーセントを掛けたもので残留重量を割ることにより、スライド上に保持された乾燥重量残留パーセントが決定された。これは、各試料について、それぞれ製剤の49%及び37%が保持されているという結果を与える。
【0060】
実施例4−本発明のゲル製剤による、キシリトールの粘膜保持
実施例3の先行技術製剤の代わりに下の表3に示されるゲル製剤が使用されたことを除き、実施例3の研究が繰り返された。
【表3】
【0061】
ゲル製剤の乾燥重量は55.9%固体であることが測定され、これは主としてキシリトール及びヒドロゲルで構成される。乾燥前かつ滴流処理前のスライド上のコーティングの当初重量は0.150g及び0.129gであり、また処理及びそれに続く乾燥の後の残留重量はそれぞれ0.033g及び0.037gであった。
【0062】
当初重量に乾燥重量パーセントを掛けたもので残留重量を割ることにより、スライド上に保持された乾燥重量残留パーセントが決定された。これは、各試料について、それぞれ製剤の39%及び51%が保持されているという結果を与える。
【0063】
実施例5−水分保持
水分保持が、各製品0.4gを、37℃の重力流インキュベーター中に2時間にわたり適用し、それからその後に残る製品量を再び重量測定することにより決定された。この試験は、第一回の試行では、BIOTENE(登録商標)Dry Mouth Spray(表1に示される成分を含有する)、SPRY RAIN with Xylitol(水、キシリトール、濃縮アロエベラ、グリセリン、風味、グリセロリン酸カルシウム、セルロースガム、及び保存料としてグレープフルーツシード抽出物を含む)、及び実施例2の液体製剤を比較して行われた。この試験は、第二回の試行では、BIOTENE(登録商標)Dry Mouth Spray、実施例2の液体製剤、及び実施例2の製剤に類似するがキシリトールを有さない製剤(水58%、グリセリン35%、及びLUBRAJEL(登録商標)BA ヒドロゲル7%)を比較して行われた。結果は、下の表4及び5に示される。
【表4】
【表5】
【0064】
表4及び5の結果は、LUBRAJEL(登録商標)BAなどの、水を封入するクラスレートホストを含有する製剤中にキシリトールを含めることが、クラスレートホストを含有する製剤の水分保持能力の劇的な上昇を、予期せずに提供することを確立する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態が詳細に開示されてきたが、当業者にとっては、開示の実施形態は修正されうることが明らかだろう。本発明には、そのような修正が包含されることが意図される。従って、前述の開示は、限定的ではなく模範例であるとみなされるべきであり、また本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義されるものである。
【国際調査報告】