(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-537995(P2017-537995A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】添加剤組成物、該添加剤組成物をブレンドする方法、並びに低ヘイズのポリオレフィン材料及びその作製
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20171124BHJP
C08K 5/1575 20060101ALI20171124BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20171124BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20171124BHJP
B29C 47/00 20060101ALI20171124BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20171124BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/1575
C08J3/20 A
B29C45/00
B29C47/00
B29K23:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-519932(P2017-519932)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月19日
(86)【国際出願番号】GB2015053070
(87)【国際公開番号】WO2016059421
(87)【国際公開日】20160421
(31)【優先権主張番号】1418291.9
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517126864
【氏名又は名称】エヌジェイシー ヨーロッパ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンタマリア エスティバリス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヒエウ−ディン
(72)【発明者】
【氏名】仁賀 助宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 陽平
【テーマコード(参考)】
4F070
4F206
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA15
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4J002EL106
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4J002GG00
(57)【要約】
本発明は添加剤組成物、及び該添加剤組成物を使用して作製することができる低ヘイズのポリオレフィン材料に関する。特にこのポリオレフィン材料はビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを或る特定重量比にて含むポリオレフィン樹脂組成物から作製される。一態様では、本発明はポリオレフィン材料を形成する方法であって、
(i)ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを含むポリオレフィン樹脂組成物を、45:55〜25:75という該ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比にて調製することと、
(ii)上記ポリオレフィン樹脂組成物を加工して、上記ポリオレフィン材料を形成することと、
を含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン材料を形成する方法であって、
(i)ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを含むポリオレフィン樹脂組成物を、45:55〜25:75という該ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比にて調製することと、
(ii)前記ポリオレフィン樹脂組成物を加工して、前記ポリオレフィン材料を形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
ポリオレフィン材料においてヘイズを低減させる方法であって、該ポリオレフィン材料はポリオレフィン樹脂組成物を加工して、ポリオレフィン材料を形成することにより作製され、
該方法は、ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール及びビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを組み合わせて、前記ポリオレフィン樹脂組成物の前記ポリオレフィン材料への加工前の前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75となるように前記ポリオレフィン樹脂組成物を形成することを含む、方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィン材料を形成するための前記ポリオレフィン樹脂組成物の加工を180℃〜245℃、好ましくは185℃〜230℃の温度にて行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリオレフィン材料を形成する方法であって、該方法が、
(i)ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを含むポリオレフィン樹脂組成物を、45:55〜15:85という該ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比にて調製することと、
(ii)前記ポリオレフィン樹脂組成物を加工して、前記ポリオレフィン材料を形成することと、
を含み、前記ポリオレフィン材料を形成するための前記ポリオレフィン樹脂組成物の加工を200℃以下の温度にて行う、方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン材料を形成するための前記ポリオレフィン樹脂組成物の加工を180℃〜200℃、好ましくは185℃〜198℃の温度、更に好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度にて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂組成物の加工が該ポリオレフィン樹脂組成物の射出成形及び/又は押出成形を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練及び押出した後に加工して、前記ポリオレフィン材料を形成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が40:60〜25:75である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が35:65〜25:75である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が32:68〜28:72、例えば30:70である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを合わせた量が該ポリオレフィン樹脂組成物の1000重量ppm〜5000重量ppmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを合わせた量が該ポリオレフィン樹脂組成物の1500重量ppm〜4000重量ppm、好ましくは該ポリオレフィン樹脂組成物の2250重量ppm〜3250重量ppm、より好ましくは該ポリオレフィン樹脂組成物の2500重量ppm〜3000重量ppmである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを合わせた量が該ポリオレフィン樹脂組成物の1500重量ppm〜2500重量ppm、好ましくは該ポリオレフィン樹脂組成物の1750重量ppm〜2250重量ppm、より好ましくは該ポリオレフィン樹脂組成物の1900重量ppm〜2100重量ppmである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリオレフィン樹脂のポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーからなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリオレフィンがポリプロピレン又はそのコポリマーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートがASTM法D1238−04に従って測定した場合に5g/10分以上である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートがASTM法D1238−04に従って測定した場合に20g/10分以上である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートがASTM法D1238−04に従って測定した場合に40g/10分以上である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートがASTM法D1238−04に従って測定した場合に70g/10分以上である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリオレフィン材料のヘイズ値が、ASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満、より好ましくは15%未満、更に好ましくは13%未満、最も好ましくは12%未満である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール及びビス−p−エチルベンジリデンソルビトールを含むか又はそれらから本質的になる造核及び清澄添加剤組成物であって、該添加剤組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75である、造核及び清澄添加剤組成物。
【請求項22】
前記添加剤組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が40:60〜25:75である、請求項21に記載の造核及び清澄添加剤組成物。
【請求項23】
前記添加剤組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が35:65〜25:75である、請求項21又は22に記載の造核及び清澄添加剤組成物。
【請求項24】
前記添加剤組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が32:68〜28:72、例えば30:70である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の造核及び清澄添加剤組成物。
【請求項25】
請求項1若しくは2、又は請求項1若しくは2に従属している先の請求項のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項26】
下記:(a)ポリオレフィンと、(b)ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールと、(c)ビス−p−エチルベンジリデンソルビトールと、を含むポリオレフィン材料であって、該ポリオレフィン材料におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75である、ポリオレフィン材料。
【請求項27】
前記ポリオレフィン材料におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が40:60〜25:75である、請求項26に記載のポリオレフィン材料。
【請求項28】
前記ポリオレフィン材料におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が35:65〜25:75である、請求項26又は27に記載のポリオレフィン材料。
【請求項29】
前記ポリオレフィン材料におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が32:68〜28:72、例えば30:70である、請求項26〜28のいずれか一項に記載のポリオレフィン材料。
【請求項30】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーからなる群から選択される、請求項26〜29のいずれか一項に記載のポリオレフィン材料。
【請求項31】
前記ポリオレフィンがポリプロピレン又はそのコポリマーである、請求項30に記載のポリオレフィン材料。
【請求項32】
前記ポリオレフィン材料のヘイズ値が、ASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満、より好ましくは15%未満、更に好ましくは13%未満、最も好ましくは12%未満である、請求項26〜31のいずれか一項に記載のポリオレフィン材料。
【請求項33】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法によって作製されたポリオレフィン材料。
【請求項34】
メルトフローレートがASTM法D1238−04に従って測定した場合に少なくとも40g/10分であり、180℃で成形した際のヘイズ値がASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満であるポリオレフィン樹脂から作製されたポリオレフィン材料。
【請求項35】
前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートがASTM法D1238−04に従って測定した場合に500g/10分未満、好ましくは200g/10分未満、より好ましくは150g/10分未満である、請求項34に記載のポリオレフィン材料。
【請求項36】
180℃での成形が射出成形を含む、請求項34又は35に記載のポリオレフィン材料。
【請求項37】
ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール又はビス−p−エチルベンジリデンソルビトールを唯一の清澄及び/又は造核剤として使用した造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製と比較して造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料を作製することができる加工温度を広げるための造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75であるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用であって、該造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料のヘイズ値がASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満である、ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用。
【請求項38】
ポリオレフィン樹脂組成物の加工が該ポリオレフィン樹脂組成物の射出成形及び/又は押出成形を含む、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記ポリオレフィン材料の作製の一環としてポリオレフィン樹脂組成物に使用されるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール清澄及び造核剤とビス−p−エチルベンジリデンソルビトール清澄及び造核剤との総加工濃度が請求項11〜13のいずれか一項に記載のようなものである、請求項37又は38に記載の使用。
【請求項40】
溶融樹脂におけるビス−p−エチルベンジリデンソルビトールの溶解点を下げるためのビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールの使用。
【請求項41】
溶融樹脂におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールの溶解点を下げるためのビス−p−エチルベンジリデンソルビトールの使用。
【請求項42】
200℃以下の加工温度での造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用。
【請求項43】
200℃以下の加工温度での、ヘイズ値がASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満である造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は添加剤組成物、及び該添加剤組成物を使用して作製することができる低ヘイズ(haze:曇り度)ポリオレフィン材料に関する。特にこのポリオレフィン材料は、低ヘイズのポリオレフィン材料を従来よりも低い加工温度にて作製することができるような比率にてビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを含むポリオレフィン樹脂組成物から作製される。
【背景技術】
【0002】
ジベンジリデンソルビトール(DBS)誘導体はポリオレフィン樹脂の結晶化プロセスを改質させる既知の造核剤(nucleating agent:核形成剤)/清澄剤(clarifying agents:透明化剤)群である。このような化合物は、より迅速な固化の結果としてサイクル時間(すなわち単一のプラスチック部品を成形するのに要する時間)を短縮し、剛性及び耐熱性等の機械的特性を改善させるとともに、光を散乱させる大型のスフェルライトを取り除くことによるヘイズレベル等のプラスチックの光学特性を改善する(そのため、清澄剤とも呼ばれる)ことが知られている。これらの効果が、特に良好な光学的透明度が要求される容器及び包装製品に対して高価なポリエチレンテレフタレート又はポリスチレンの代わりにDBS誘導体によって調製されたポリプロピレン及び低密度線状ポリエチレンプラスチックを使用することを可能にした。
【0003】
金属塩、シリカ等の代替造核剤とは異なり、DBS誘導体は通例、溶融させて、溶融樹脂に一様に分散/溶解させなければならない。続くDBS誘導体の再結晶化により造核部位をもたらす微結晶性ネットワークが形成され、該微結晶性ネットワークは冷却されるにしたがって樹脂に形成されるスフェルライトのサイズを低減し、それにより光散乱が抑えられ、透明度が改善される。DBS誘導体を含有するポリオレフィン樹脂を射出する又は押し出す工程を含む従来の成形法では、溶融樹脂の温度は加熱サイクル中に融液のゾルゲル転移温度よりも明らかに高くなる。さらに、融点の高い造核剤の使用には、該造核剤を含有する樹脂組成物は造核剤を可溶化するために相応に高い温度にて成形しなければならないという不利点があり、このことがかなりのエネルギー消費を引き起こす。
【0004】
例えば、造核剤として1,3:2,4−ビス(ポリアルキルベンゼン)ソルビトール又は非対称DBS誘導体(この2つの芳香族環は異なる置換基を有する)を含有する結晶性樹脂組成物は所望の光学特性を呈する成形品を提供することができる。しかしながら、このような造核剤の融点は260℃と高く、そのため樹脂組成物は通例、樹脂組成物への造核剤の適切な溶解が得られるようにそれに応じた高い温度にて加工しなければならない。加工温度が低すぎると、造核剤の不十分な溶解が起こり、得られるポリオレフィン材料におけるヘイズレベルに不満が残ることになる。
【0005】
このような高融点造核剤に合わせて加工温度を上げると、望ましくないことにエネルギー消費も増大する。さらに冷却期間が長くなる結果、プラスチック品の加工についてのサイクル時間が延びることもある。これは、溶融温度を低下させ、結晶化温度に近付けることにより、冷却期間、ひいてはサイクル時間を短縮することができるようなポリオレフィン樹脂、特にポリプロピレンの温度プロファイルの低下の連続した進展を打ち消すものである。エネルギー価格が増え続ける状況下にあって、実際、高い加工温度がプラスチック調製の経済的実行可能性を妨げていることがある。加えて、高い加工温度により生じ得る別な問題は、DBS誘導体が融点近くの温度まで加熱すると、例えば高温成形操作中に昇華して、成形機器上に不要な再析(すなわち「沈着(plate-out)」)が起こることである。
【0006】
特許文献1には、ソルビトール造核剤及びキシリトール造核剤を超微細粒度へと粉砕して、特定の造核剤の融点未満の温度にて樹脂に「溶解させる」プロセスが記載されている。しかしながら、特許文献1(実施例3)において清澄剤は必ずしも樹脂全体に均一に分散される訳ではないことが言及されていた。このため、得られるプラスチックに亘って一様ではないヘイズの低減が起こり得る。実際、得られるプラスチック品に亘って不透明なパッチが形成される(opaque patching)可能性があり、このプラスチック品は消費者製品として審美的に許容される見込みがない。造核剤の分布不均一性の結果として起こる別の問題は不規則なスフェルライトの構成であり、これはポリマー微小構造が意図される造核剤の添加により一様には改質されないことを意味する。このことが得られるプラスチック品の巨視的特性に悪影響を及ぼし、プラスチック品を目的に対して不適合にさせ得る。その上、このプロセスは、少なくとも短期間でのより低い温度での加工に関連する任意のコストの削減を上回る更なる機器及び加工工程を必要とする粉砕を伴うものである。
【0007】
高い造核効率を有し、良好な官能特性をもたらす、特に好ましいが高コストのDBS誘導体はビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール(3,4−DMDBS)である。しかしながら、3,4−DMDBSの使用には高い加工温度が必要であり、そうでなければ加工温度が230℃未満である場合にこの作用物質によって調製されたポリオレフィン品におけるヘイズのレベルが許容不能なものになるという問題がある。特許文献2、及びその対応する継続出願である特許文献3には、この課題に取り組み、対処するために3,4−DMDBS造核剤とDBS(非置換)造核剤とのブレンドを使用することが記載されている。しかしながら、より低い加工温度、例えば210℃未満での改善は少なくとも20、好ましくは少なくとも50という高いメルトフロー値を呈するポリプロピレン樹脂でのみ観察され、これにはポリオレフィン樹脂の粘度を低減させるとともにメルトフローインデックスを増大させるのに「ビスブレーキング剤(vis-breaking agent)」の使用が必要となることがある。
【0008】
特許文献4には、清澄剤として3,4−DMDBSを単独で使用するよりも低コストの代替物である3,4−DMDBSとp−メチルジベンジリデンソルビトール(MDBS)とのブレンドが開示されている。このブレンドは該ブレンドを使用して作製されたポリオレフィン品におけるヘイズレベルについて良好な程度の清澄化を与えることが報告されている。しかしながら、特許文献4では、3,4−DMDBSとMDBSとのブレンドは従来の高い加工温度にて加工した樹脂組成物において使用しなければならないことが教示されている。実際、特許文献4の実験部に記載される実施例によると、押出機ダイからの排出時の樹脂及び添加剤組成物の融液温度は246℃と高く、報告では成形装置のバレルは220℃に設定されていた。特許文献4に記載の清澄ポリオレフィン材料を作製する際のエネルギー消費は依然非常に高いことは明らかである。
【0009】
特許文献4には3,4−DMDBS/DBS、3,4−DMDBS/EDBS、又は3,4−DMDBS/TDBS(1,3;2,4−ビス(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフチリデン)ソルビトール)を含む代替ブレンドも記載されている。しかしながら、これらのブレンドは特許文献4の表2における比較例の結果で説明されているように、3,4−DMDBS/MDBSブレンドの利益を何ら呈さないことが報告されており、これらは同様に高い加工温度にて加工されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,198,484号
【特許文献2】米国特許第7,351,758号
【特許文献3】米国特許第7,501,462号
【特許文献4】米国特許第6,989,154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ヘイズ値又は官能特性を損なわずに最小有効加工温度を低下させることにより、造核及び清澄ポリオレフィン材料を好適に作製することができる温度範囲を広げ、これまでに言及された従来技術に関連する問題又は制限を回避する手段が依然必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール(3,4−DMDBS)及びビス−p−エチルベンジリデンソルビトール(EDBS)(下記に示す)は併用すると驚くべき相乗効果を呈するという予期せぬ発見に基づくものである。
【化1】
【0013】
特に、これらの作用物質は45:55〜25:75という3,4−DMDBSとEDBSとの重量比にてポリオレフィン樹脂に添加する場合、このブレンドが溶融ポリオレフィン樹脂に可溶性である最小温度(「溶解点(solubility point)」)はブレンドの個々の作用物質いずれか単独のものよりも一貫して低い。さらに、溶融ポリオレフィン樹脂における溶解度についてブレンド成分間に相乗効果があるだけでなく、このブレンドはこれらの成分から作製された得られる造核及び清澄ポリオレフィン材料における透明度についても相乗効果を呈する。3,4−DMDBSとEDBSとを上記の重量比にてポリオレフィン樹脂に添加し、従来よりも低い(例えば200℃未満の)加工温度にてそれらからポリオレフィン材料を作製する場合、ポリオレフィン材料が呈するヘイズ値はブレンドの作用物質いずれか単独のものよりも低い。また相乗効果は本発明による重量比での3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドが共晶系を形成するという本発明者らの発見により説明されると考えられ、このことは特定のブレンドの融点は3,4−DMDBS又はEDBSのいずれか単独のものよりも低いことを意味している。
【0014】
したがって、本発明のブレンドは、従来よりも低い加工温度にてポリオレフィン樹脂を効果的に造核及び清澄することにより、エネルギー消費を低減し、所望の光学特性を有するポリオレフィン材料を与える手段をもたらす。さらに、本発明は所望の低ヘイズのポリオレフィン材料を作製することができる有効加工温度範囲を広げるのに用いることができる。
【0015】
したがって第1の態様では、本発明は、ポリオレフィン材料を形成する方法であって、(i)ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを含むポリオレフィン樹脂組成物を、45:55〜25:75という該ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比にて調製することと、(ii)上記ポリオレフィン樹脂組成物を加工して、上記ポリオレフィン材料を形成することと、を含む、方法を提供する。
【0016】
上記ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工を180℃〜245℃、好ましくは185℃〜230℃の温度にて行うのが好ましい。ポリオレフィン材料の作製に用いられる他の好ましい加工温度範囲には、200℃以下、例えば180℃〜200℃、より好ましくは185℃〜198℃、更に好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度が含まれる。
【0017】
別の態様では、本発明はポリオレフィン樹脂組成物を加工することにより作製されるポリオレフィン材料においてヘイズを低減させる方法であって、ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール及びビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを組み合わせて、ポリオレフィン樹脂組成物のポリオレフィン材料への加工前のポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75となるようにポリオレフィン樹脂組成物を形成することを含む、方法も提供する。
【0018】
上記ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工を180℃〜245℃、好ましくは185℃〜230℃の温度にて行うのが好ましい。ポリオレフィン材料の作製に用いられる他の好ましい加工温度範囲には、200℃以下、例えば180℃〜200℃、より好ましくは185℃〜198℃、更に好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度が含まれる。
【0019】
代替的な態様では、本発明は、ポリオレフィン材料を形成する方法であって、該方法が、(i)ポリオレフィン樹脂とビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを含むポリオレフィン樹脂組成物を、45:55〜15:85という該ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比にて調製することと、(ii)上記ポリオレフィン樹脂組成物を加工して、上記ポリオレフィン材料を形成することと、を含み、上記ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工を200℃以下の温度にて行う、方法も提供する。
【0020】
本発明のこの代替的な態様では、ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとのより広い重量比(第1の態様と比較した)を利用することができ、また上記ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工を200℃以下の温度にて行う場合にビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール又はビス−p−エチルベンジリデンソルビトールのいずれか単独の使用を上回る利点がある。
【0021】
上記ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工を180℃〜200℃、より好ましくは185℃〜198℃の温度、更に好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度にて行うのが好ましい。
【0022】
「ポリオレフィン樹脂組成物」に対する本明細書での言及は3,4−DMDBSとEDBSとの組合せが溶解されているポリオレフィン樹脂を指すものであると意図される。そのため、本発明によるポリオレフィン樹脂組成物の調製は例えば、本明細書に記載の3,4−DMDBSとEDBSとの特定の重量比にて3,4−DMDBS及びEDBSを溶融ポリオレフィン樹脂に溶解することを含み得る。分かるように、組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が本明細書に規定のように維持されていれば、更なる清澄剤及び造核剤がポリオレフィン樹脂組成物に存在していてもよい。
【0023】
「ポリオレフィン材料」に対する本明細書での言及は本明細書に記載のように、例えば上記の加工温度での押出成形又は射出成形により溶融ポリオレフィン樹脂組成物を加工することにより好適に作製することができる任意の熱可塑性品又は物体を指すものであると意図される。
【0024】
本発明により使用されるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せが、溶融ポリオレフィン樹脂への溶解度、並びにそれらから得られる造核及び清澄ポリオレフィン材料に与えられる透明度について相乗効果を呈することが見出されたことは驚くべきことである。結果として、低ヘイズを呈する造核及び清澄ポリオレフィン材料を効果的に作製することができる加工温度が大幅に広がり、清澄剤の単独使用、又は既知のブレンドでの組合せに基づいた従来のソルビトールにより実現可能なものよりも遥かに低い温度にまで及ぶ。
【0025】
特に、本発明によるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとのブレンドは常に、総ブレンド濃度と同じ濃度の個々の2つのソルビトール成分のものよりも低い溶融ポリオレフィン樹脂への溶解点を呈する。代替的には又は付加的には、本発明によるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとのブレンドは、総ブレンド濃度と同じ濃度の個々の2つのソルビトール成分のものよりも低いそれらから作製される造核及び清澄ポリオレフィン材料におけるヘイズ値をもたらすことができる。
【0026】
「溶解点」に対する本明細書での言及は組成物に対して剪断を何ら適用せずに清澄剤/造核剤及びそれらのブレンドが溶融ポリオレフィン樹脂組成物に完全に溶解する最小温度を指すものであると意図される。溶解点(℃)は温度に対する相対輝度変動のプロットにおける最大ピークと規定される。ホットステージ(例えばFP90、Mettler)を備えた顕微鏡(例えばBX41、Olympus)を用いて温度を徐々に増大させると、樹脂及び清澄剤/造核剤の混練混合物における光透過率の変化を観察することができる。分かるように、溶解点は清澄剤/造核剤及びそれらのブレンドの全てが樹脂組成物に完全に溶解する最小温度を表すが、溶解点未満の温度でも、特に剪断の存在下であればかなりの程度の溶解を観察することができる。
【0027】
「ヘイズ値」に対する本明細書での言及は材料のフィルム又はシートを通る際に散乱する透過光の量を指すものであると意図される。本明細書で報告されるヘイズ値はASTM法D1003−61(「透明プラスチックのヘイズ及び視感透過率の標準的試験法(Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」)に従って求められ、試験材料の特定のプラーク(plaque)厚(例えば0.5mm又は1mm)、ポリオレフィン樹脂を射出成形する温度(例えば180℃、190℃又は200℃)、及び樹脂における清澄剤の総含量とともに引用される。ヘイズは例えばBYK Gardner Haze Guard Plus等のヘイズメータを使用して測定することができる。
【0028】
「樹脂組成物の加工を行う温度」又は「加工温度」に対する本明細書での言及はポリオレフィン材料を作製するために溶融ポリオレフィン組成物を加工する温度を指すものであると意図される。そのため、加工温度には溶融ポリオレフィン組成物の成形温度(例えば射出成形又は押出成形)が含まれる。分かるように、加工温度が3,4−DMDBSとEDBSとの組合せの有益な効果を妨げない限りは、後に得られるポリオレフィン組成物を加工する(すなわち成形する)のに用いられるよりも高い温度を用いることで、ポリオレフィン樹脂への3,4−DMDBSとEDBSとの組合せの分散及び溶解を確実なものとすることができる。例えば、溶融ポリオレフィン樹脂への3,4−DMDBS及びEDBSの完全な溶解を樹脂における3,4−DMDBSとEDBSとの特定の組合せの溶解点以上にて達成することができる。しかしながら、少なくともいくつかの実施の形態では、ポリオレフィン組成物を成形するのに用いられる加工温度は、ヘイズ特性に対するプラスの効果を妨げないよう3,4−DMDBS及びEDBSを沈着又は析出せずに、樹脂における3,4−DMDBSとEDBSとの組合せの溶解点未満とすることができる。3,4−DMDBSとEDBSとの組合せの満足のいく分散及び溶解は特定の樹脂におけるブレンドの溶解点(上記のようにせん断せずに測定される)未満の温度でも樹脂において達成することができることも理解される。これは例えば、樹脂組成物への清澄/造核剤の顕著な溶解を測定される溶解点未満の温度にて達成することができることを示す
図1(下記)において説明される。
【0029】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂組成物は上記の3,4−DMDBSとEDBSとの特定の重量比にて3,4−DMDBSとEDBSとを溶融ポリオレフィン樹脂に溶解させることにより調製することができる。そのため、得られるポリオレフィン樹脂組成物は、従来よりも低い(例えば200℃未満の)加工温度にてポリオレフィン材料を作製する場合であってもヘイズが所望のように低いポリオレフィン材料の作製の原料として特に有用である。
【0030】
したがって更なる態様では、本発明は添加剤組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が45:55〜25:75である、3,4−DMDBS及びEDBSを含むか、又はそれらから本質的になる造核及び清澄添加剤組成物も提供する。添加剤組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が40:60〜25:75であるのが好ましく、3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が35:65〜25:75であるのがより好ましく、3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が32:68〜28:72、例えば30:70であるのが最も好ましい。
【0031】
3,4−DMDBSとEDBSとの比率が上に規定のように維持されており、また任意の更なる造核剤及び/又は清澄剤が3,4−DMDBSとEDBSとの組合せの有益な効果に干渉しなければ、本発明の造核及び清澄添加剤組成物は3,4−DMDBS及びEDBSの他に一般的な市販の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0032】
また更なる態様では、本発明は(a)ポリオレフィン樹脂と、(b)ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールと、(c)ビス−p−エチルベンジリデンソルビトールと、を含むポリオレフィン樹脂組成物であって、ポリオレフィン樹脂組成物におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75である、ポリオレフィン樹脂組成物も提供する。ポリオレフィン樹脂組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が40:60〜25:75であるのが好ましく、3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が35:65〜25:75であるのがより好ましく、3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が32:68〜28:72、例えば30:70であるのが最も好ましい。
【0033】
更なる態様では、本発明は(a)ポリオレフィンと、(b)ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールと、(c)ビス−p−エチルベンジリデンソルビトールと、を含むポリオレフィン材料であって、ポリオレフィン材料におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75である、ポリオレフィン材料を提供する。ポリオレフィン材料における3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が40:60〜25:75であるのが好ましく、3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が35:65〜25:75であるのがより好ましく、3,4−DMDBSとEDBSとの重量比が32:68〜28:72、例えば30:70であるのが最も好ましい。ポリオレフィン(a)はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーからなる群から選択されるのが好ましい。ポリオレフィン(a)はポリプロピレン又はそのコポリマーであるのが最も好ましい。
【0034】
別の態様では、本発明は本明細書に記載の方法により作製されるポリオレフィン材料も提供する。
【0035】
本発明に従って使用されるポリオレフィン樹脂はヘイズが低いポリオレフィン材料を作製するのに好適に使用することができる任意の立体規則性の結晶性樹脂を指す。好適なポリオレフィン樹脂の例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、又はそれらのブレンド若しくはコポリマーが挙げられる。ポリオレフィン樹脂はポリプロピレン樹脂から選択されるのが好ましい。
【0036】
作製法、立体規則性のタイプ、ブレンドの結晶化度、タイプ、成分、又はポリオレフィン樹脂の分子量分布には特別な制限はない。ポリエチレン樹脂の例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、及びエチレン含量が50重量%以上のエチレンコポリマーが挙げられる。ポリプロピレン樹脂の例としては、プロピレン含量が50重量%以上のアイソタクチック又はシンジオタクチックプロピレンホモポリマー及びプロピレンコポリマーが挙げられる。ポリブテン樹脂の例としては、ブテン含量が50重量%以上のアイソタクチック又はシンジオタクチックブテンホモポリマー及びブテンコポリマーが挙げられる。
【0037】
上記コポリマーはランダムコポリマー(「RACO」)、ホモコポリマー又はブロックコポリマーとすることができる。例えばポリオレフィン樹脂はポリプロピレンランダムコポリマー(正:copolymer)(RACO)とすることができる。上記コポリマーを形成することができるコモノマーは例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン及びドデセン等のC
2〜C
16α−オレフィン;アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等のC
1〜C
18アルキルエステル;酢酸ビニル;1,4−エンドメチレンシクロヘキセン;並びに同様のビシクロモノマーである。
【0038】
ポリマーの作製に有用な触媒としては、当該技術分野において一般的に用いられるラジカル重合触媒及びチーグラ−ナッタ触媒だけでなく、アルキルアルミニウム化合物(塩化トリエチルアルミニウム又は塩化ジエチルアルミニウム等)と組み合わせて塩化マグネシウム又は同様のマグネシウムハロゲン化物で主に構成された支持体上に遷移金属化合物(例えば三塩化チタン又は四塩化チタン等のチタンハロゲン化物)を堆積させることにより調製される触媒を含む触媒系(該触媒系は特定のエステル化合物及び有機エーテル化合物を更に含む);シクロペンタジエン又はその誘導体とチタン又はジルコニウム等の第四族金属とを含むメタロセン触媒;並びにメチルアルモキサンを更に含む該「メタロセン触媒」が挙げられる。
【0039】
ASTM法D1238−04に従って測定される本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、用いる成形法及び成形品に要求される物理的特性に従って好適に選択することができる。通例、ポリオレフィン樹脂のMFRは好適には0.01g/10分〜200g/10分、好ましくは0.05g/10分〜100g/10分で変わる。他の好ましい実施の形態では、本発明に従って使用されるポリオレフィン樹脂のMFR値は5g/10分以上である。MFRがより高いポリオレフィン樹脂はより低い加工温度により適合する。そのため他の好ましい実施の形態では、ポリオレフィン樹脂のMFRは20g/10分以上とすることができる。他の好ましい実施の形態では、ポリオレフィン樹脂のMFRは40g/10分以上、例えば50g/10分とすることができる。他の好ましい実施の形態では、ポリオレフィン樹脂のMFRは70g/10分以上、例えば80g/10分とすることができる。樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は限定されないが、通常1〜10である。
【0040】
MFR値がより高い、すなわち粘度がより低いポリオレフィン樹脂は通例、より低い温度にて加工することができることが知られている。そのため本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの組合せを、MFR値がより高い、例えば20g/10分以上のポリオレフィン樹脂と共に使用することは、従来よりも低い(例えば200℃未満の)加工温度にてヘイズが所望のように低いポリオレフィン材料を作製するのに特に有益であり得る。
【0041】
ポリオレフィン樹脂は多峰性又は二峰性又は単峰性組成物とすることができ、ここでポリマーのモダリティはその分子量分布曲線(すなわちその分子量の関数としての分子量画分)の形態を表す。例えば、ポリマー成分は異なる反応条件下にて働く直列に配置された反応器を使用して連続した工程プロセスにて調製することができる。その結果、特定の反応器にて調製される各画分は独自の分子量分布を有する。このような画分を組み合わせることで、最終ポリマーの分子量分布曲線が複数の最大値を示すことが可能であるか、又は個々の画分についての分子量分布曲線と比較して該分子量分布曲線を大幅に広げることができる。
【0042】
本発明に使用されるポリオレフィン樹脂は必要に応じて、樹脂の低温特性及び耐衝撃性を改善するためにゴムを含有していてもよい。例えば、ポリオレフィン樹脂はエチレン−プロピレンゴム、SBR、水素化SBR、SBSブロックコポリマー、水素化SBSブロックコポリマー、水素化スチレン−イソプレン(S−I)ブロックコポリマー又は水素化S−I−Sブロックコポリマーを含有していてもよい。
【0043】
さらに必要に応じて、剛性付与造核剤又はフィラーを本発明の効果を損なわない量(例えばポリオレフィン樹脂100重量部当たり最大約50重量部、特に約0.01重量部〜20重量部)、ポリオレフィン樹脂に添加してもよい。例えばタルク、ハイドロタルサイト、雲母、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム及びアルミニウムヒドロキシ−ビス−tert−ブチルベンゾエートをポリオレフィン樹脂に添加することができる。
【0044】
必要に応じて、本明細書で使用されるポリオレフィン樹脂は顔料を含有していてもよい。白色顔料を含む様々な顔料が有用であるが、有色顔料が好ましい。有用な顔料の例としては、酸化チタン顔料(例えば二酸化チタン、チタンイエロー及びチタンブラック)、酸化亜鉛、酸化クロム、硫化亜鉛、カーボンブラック、酸化鉄顔料(例えば酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄)、硫化カドミウム顔料(例えばカドミウムイエロー及びカドミウムマーキュリーレッド)、硫酸バリウム、ウルトラマリン、コバルトブルー、フタロシアニン顔料(例えばフタロシアニングリーン及びフタロシアニンブルー)、イソインドリノン顔料(例えばイソインドリノンイエロー及びイソインドリノンレッド)、アゾ顔料(例えばパーマネントレッドF5R及びピグメントスカーレット3B)、キナクリドン顔料、アントラピリミジン顔料(例えばアントラピリミジンイエロー)、ベンジジン顔料(例えばベンジジンオレンジGR)、インダンスレン顔料(例えばインダンスレンブリリアントオレンジ)、及びマンガンバイオレットが挙げられる。顔料は本発明の効果を損なわない量で使用することができる。通例、顔料はポリオレフィン樹脂組成物の1ppm〜500ppmの量で使用される。
【0045】
本発明に使用されるポリオレフィン樹脂は安定剤、中和剤、帯電防止剤及び滑沢剤等の他の添加剤を含有していてもよい。これらの既知の添加剤は本発明の効果を損なわなければ組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明に従って使用される3,4−DMDBS及びEDBSは、商業的供給源から粉末として容易に入手可能であるか、又は当業者に精通した方法により作製することができる。例えば3,4−DMDBS及びEDBSは、ソルビトールと置換ベンズアルデヒド又はそのアルキルアセタール誘導体との反応を伴う米国特許第4,429,140号又は米国特許第4,902,807号(New Japan Chemical Co., Ltdに譲渡されている)に記載の方法により調製することができる。好適な市販の3,4−DMDBS製品には、New Japan Chemical Co., Ltd製のGeniset(商標) DXR及びMiliken Chemical製のMillad(商標) 3988が含まれる。
【0047】
当業者が認識している、3,4−DMDBSとEDBSとポリオレフィン樹脂とを混ぜ合わせる任意の好適な手段をポリオレフィン(正:polyolefin)組成物を形成するのに使用することができる。そのため、本発明によるポリオレフィン樹脂組成物を形成するために3,4−DMDBS及びEDBSをポリオレフィン樹脂に添加する方法は特に限定されないが、造核剤及び清澄剤を要求される比率にて樹脂に直接添加する単一段階の添加法を用いることが好ましい。しかしながら、バッチが要求される比率にて作用物質を含有していれば、作用物質を約2重量%〜約15重量%の濃度のマスターバッチの形態で添加する二段階の添加法を使用してもよい。ポリオレフィン樹脂組成物への3,4−DMDBS、EDBSの溶解は樹脂加工中に剪断レベルを増大させることにより高めることができる。例えば、混練の際に単軸押出機よりも(in favour of)二軸押出機を使用することが溶解を促すことが一般的に知られている。
【0048】
本明細書に記載の本発明の多くの態様では、用いられる3,4−DMDBSとEDBSとの重量比は45:55〜25:75である。3,4−DMDBSとEDBSとの重量比は40:60〜25:75であるのが好ましく、35:65〜25:75であるのがより好ましく、32:68〜28:72、例えば30:70であるのが最も好ましい。このブレンドの相乗効果は3,4−DMDBSとEDBSとのこれらの重量比にて達成可能である。相乗効果はより広範の重量比でも顕著であり、特に上記ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工を200℃以下の温度にて行う場合に用いられる3,4−DMDBSとEDBSとの重量比は45:55〜15:85である。
【0049】
特にこれらのブレンドは特に低い溶解点をもたらす驚くべき相乗効果を呈し、このことは、ポリオレフィン樹脂組成物を形成するために造核剤及び清澄剤を溶融ポリオレフィン樹脂に溶解するのにより低い温度を用いることができることを意味する。その上、ポリオレフィン樹脂組成物を加工(例えば成形)して、本発明による造核及び清澄ポリオレフィン材料を形成するのにより低い加工温度を用いることができる。従来よりも低い(例えば200℃未満の)加工温度にて作製したポリオレフィン材料はブレンドの3,4−DMDBS及びEDBSのいずれか単独を使用した場合よりも低いヘイズ値を呈することも見出されている。これらの効果は低ヘイズのポリオレフィン材料を好適に作製することができる温度範囲を広げ、エネルギー消費が低減した所望のポリオレフィン材料を作製するのに特に有益であることが明らかである。さらに、3,4−DMDBSとEDBSとポリオレフィン樹脂とを混ぜ合わせる際に生じる高レベルの剪断と、続く組成物の加工とにより、3,4−DMDBS及びEDBSの溶解が高まる。そのため結果として、本発明に従って使用される3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドの溶解点よりも更に低い加工温度にて樹脂組成物において適切なレベルの溶解を達成することができる。
【0050】
より低い成形温度を用いることで、ポリオレフィン材料を金型から取り出すまでのタイムラグ(すなわちポリオレフィン樹脂組成物の関連する結晶点に達するまでの冷却期間)を低減することができる。これによりサイクル時間を短縮するとともに、プロセス効率を増大させることができる。
【0051】
低い加工温度(例えば200℃未満)にて、EDBSは単独で清澄及び造核剤として溶融ポリオレフィン樹脂への良好な溶解性を呈し、更にはEDBSから作製されたポリオレフィン材料に対する満足のいく透明度をもたらすこともできる。その上、例えば50重量%未満のEDBSを含む3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドはポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂への溶解に不満が残ることが見出されている。しかしながら、EDBSは、単独で又は80重量%を超えるEDBSを含んで3,4−DMDBSとのブレンドにて使用する場合には造核及び清澄ポリオレフィン材料に対して不満の残る官能特性をもたらすことが見出されている。特にこのような量でのEDBSの使用により、EDBSから作製されたポリオレフィン材料に関連する甘い匂いが生じる。これは加工中のEDBSの分解による甘い匂いのするエチル置換ベンズアルデヒド成分の生成に関連するものであると考えられる。
【0052】
3,4−DMDBSとEDBSとの上記ブレンドを使用することの更なる有利点は、本発明による重量比にてこれらの作用物質を用いて清澄及び造核されたポリオレフィン材料が、EDBSの使用に通常関連する臭いなく所望の官能特性を有することである。
【0053】
それにもかかわらず、ブレンドにおけるEDBSの濃度が85重量%と高いEDBSと3,4−DMDBSとのブレンドは、樹脂組成物が200℃以下の温度にて加工されている限りは依然として利益をもたらすことができる。特に、200℃以下の温度を用いてビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとを45:55〜15:85の重量比(本発明の代替態様と同様のものである)にて含むポリオレフィン樹脂組成物から造核及び清澄ポリオレフィン材料を、該ポリオレフィン材料がブレンドを使用せずに(otherwise)EDBSを単独で使用した場合に生じる不満の残る官能特性を抱えることなく、作製することが可能であることが見出されている。
【0054】
ポリオレフィン樹脂組成物に使用される3,4−DMDBS及びEDBSの濃度は特に限定されず、企図される効果が達成可能である限りは広範に亘って好適に決定することができる。ポリオレフィン樹脂組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの総濃度はポリオレフィン樹脂組成物の1000重量ppm〜5000重量ppmであるのが好適である。いくつかの実施の形態では、ポリオレフィン樹脂組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの総濃度はポリオレフィン樹脂組成物の1500重量ppm〜4000重量ppmである。いくつかの実施の形態では、ポリオレフィン樹脂組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの総濃度はポリオレフィン樹脂組成物の2250重量ppm〜3250重量ppm、例えば2500ppm又は3000ppmである。いくつかの実施の形態では、ポリオレフィン樹脂組成物における3,4−DMDBSとEDBSとの総濃度はポリオレフィン樹脂組成物の1500重量ppm〜2500重量ppm、好ましくはポリオレフィン樹脂組成物の1750重量ppm〜2250重量ppm、より好ましくはポリオレフィン樹脂組成物の1900重量ppm〜2100重量ppm、例えば2000ppmである。
【0055】
本明細書において清澄及び造核ポリオレフィン材料を形成するためのポリオレフィン樹脂組成物の加工に対して言及する場合、これは当業者が認識している任意の好適な手段によるものとすることができる。従来の成形法を用いて本発明の樹脂組成物を成形することができることは好適なことである。このような成形法の例は、射出成形、射出ストレッチ成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、回転成形及びフィルム成形である。これには例えば、初めに結晶性樹脂と本発明の造核剤及び清澄剤とを特定の比率にて直接ブレンドすることによりポリオレフィン樹脂組成物を調製することができ、その後得られた混合物を所望の生成物へと成形する。代替的には、混合物をペレット化する前に造核剤及び清澄剤を樹脂に組み込み、その後それをポリオレフィン材料へと成形してもよい。
【0056】
ポリオレフィン樹脂組成物を加工することで形成された得られるポリオレフィン材料における3,4−DMDBSとEDBSとの重量比は
1H NMR分析により好適に検証することができる。
【0057】
3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドをポリオレフィン樹脂と溶融混練及び押出した後、得られるポリオレフィン樹脂組成物を加工して、ポリオレフィン材料を形成することで本発明の効果を高めることができることが見出されている。特に、樹脂組成物の成分を単純に混合して成形するだけのものと比較して、成形してポリオレフィン材料を作製する前に樹脂組成物を溶融混練及び押出することによりヘイズ値がより大きい低減を呈することが見出されたことは驚くべきことである。これらの効果は下記に提示される実施例により説明される。
【0058】
そのため好ましい実施の形態では、本発明の方法は、加工してポリオレフィン材料を形成する前にポリオレフィン樹脂組成物の成分を溶融混練及び押出する工程を含む。特に好ましい実施の形態では、本発明の方法は、得られるポリオレフィン樹脂組成物を射出成形してポリオレフィン材料を形成する前にポリオレフィン樹脂組成物の成分を溶融混練及び押出する工程を含む。
【0059】
本発明に従って作製することができるポリオレフィン材料のヘイズ値は、ASTM D1003−61に従って測定した場合に2mm厚のプラークに対して45%未満、より好ましくは42%未満、更に好ましくは40%未満、最も好ましくは38%未満、例えば37%又は36%であるのが好ましい。これらのヘイズレベルは200℃未満、例えば185℃〜198℃の温度、より好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度にてポリオレフィン樹脂組成物を加工することにより得られるのが好ましい。
【0060】
本発明に従って作製することができるポリオレフィン材料のヘイズ値は、ASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満、より好ましくは15%未満、更に好ましくは13%未満、最も好ましくは12%未満、例えば11%又は10%であるのが好ましい。これらのヘイズレベルは200℃未満、例えば180℃〜200℃の温度、好ましくは185℃〜198℃の温度、更に好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度にてポリオレフィン樹脂組成物を加工することにより得られるのが好ましい。
【0061】
本発明に従って作製することができるポリオレフィン材料のヘイズ値は、ASTM D1003−61に従って測定した場合に0.5mm厚のプラークに対して15%未満、より好ましくは10%未満、更に好ましくは8%未満、最も好ましくは6%未満、例えば5%又は4%であるのが好ましい。これらのヘイズレベルは200℃未満、例えば180℃〜200℃の温度、好ましくは185℃〜198℃の温度、更に好ましくは190℃〜197℃、最も好ましくは190℃〜195℃の温度にてポリオレフィン樹脂組成物を加工することにより得られるのが好ましい。
【0062】
また更なる態様では、本発明は、ASTM法D1238−04に従って測定した場合にメルトフローレートが少なくとも40g/10分であるポリオレフィン樹脂から作製されるポリオレフィン材料であって、180℃にて成形、好ましくは射出成形した場合にASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対するヘイズ値が20%未満である、ポリオレフィン材料を提供する。本発明の方法以前は、180℃の成形温度にて比較的高いメルトフローレート(すなわち少なくとも40g/10分)のポリオレフィン樹脂組成物からこのような低ヘイズのポリオレフィン材料を作製することは不可能であると考えられてきた。
【0063】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートは、ASTM法D1238−04に従って測定した場合に500g/10分未満、好ましくは200g/10分未満、より好ましくは150g/10分未満であるのが好ましい。
【0064】
また更なる態様では、本発明は、ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール又はビス−p−エチルベンジリデンソルビトールを唯一の清澄及び/又は造核剤として使用した造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製と比較して造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料を作製することができる加工温度を広げるための造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が45:55〜25:75であるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用であって、該造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料のヘイズ値がASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満である、ビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用も提供する。
【0065】
別の態様では、本発明は溶融樹脂におけるビス−p−エチルベンジリデンソルビトールの溶解点を下げるためのビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールの使用を提供する。
【0066】
更に別の態様では、本発明は溶融樹脂におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールの溶解点を下げるためのビス−p−エチルベンジリデンソルビトールの使用を提供する。
【0067】
更に別の態様では、本発明は200℃以下の加工温度での造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用を提供する。
【0068】
更に別の態様では、本発明は、200℃以下の加工温度での、ヘイズ値がASTM D1003−61に従って測定した場合に1mm厚のプラークに対して20%未満である造核及び/又は清澄ポリオレフィン材料の作製におけるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの組合せの使用を提供する。
【0069】
これより本発明を下記の実施例を用いて、また添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 7g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBSについての相対輝度変動の最大値による溶解点(℃)の決定のためのグラフを表す図である。
【
図2】溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 7g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドについての溶解点(℃)のグラフを表す図である。
【
図3】樹脂組成物の総重量ベースで3000ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 7g/10分)における3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び180℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−180℃」)のグラフを表す図である。
【
図4】樹脂組成物の総重量ベースで3000ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 7g/10分)における3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び190℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−190℃」)のグラフを表す図である。
【
図5】樹脂組成物の総重量ベースで2500ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 7g/10分)における3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び180℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−180℃」)のグラフを表す図である。
【
図6】樹脂組成物の総重量ベースで2500ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 7g/10分)における3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び190℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−190℃」)のグラフを表す図である。
【
図7】樹脂組成物の総重量ベースで2500ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 80g/10分)における3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び180℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−180℃」)のグラフを表す図である。
【
図8】樹脂組成物の総重量ベースで2500ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 50g/10分)における3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び180℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−180℃」)のグラフを表す図である。
【
図9】樹脂組成物の総重量ベースで3000ppmの合わせた濃度での溶融プロピレンランダムコポリマー樹脂(MFR 50g/10分)に含まれる3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドについての溶解点(℃)、及び180℃にて対応する樹脂組成物を射出成形することにより作製されたポリオレフィン材料についてのヘイズ値(「IM−180℃」)のグラフを表す図である。
【
図10】3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドについての融点のグラフを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0071】
溶解点
溶解点(℃)はベース樹脂の混練されたペレット化サンプルを使用して測定した(下記で更に詳細に記載する)。特定の混練ペレットを190℃にて溶融混練することにより、清澄剤/造核剤の完全な溶解を回避した。清澄剤/造核剤を含有するペレットをポリオレフィンの軟化点を超えて(160℃超)、10℃/分の速度にて最大230℃まで溶解させた。温度が上昇するにつれて、最終的には基となる清澄剤/造核剤分散液が溶融樹脂に完全に溶解し、位相変化の完了後に温度を記録した。溶融ペレットを、ホットステージ(例えばFP90、Mettler)を備えた顕微鏡(例えばBX41、Olympus)を用いて観察した。光透過率の値の変化を観察し、「温度」に対する「相対輝度変動」のプロットに記録した。清澄剤の溶解点はこのプロットにおいて最大の相対輝度変動値が観察される温度と定義され、測定温度が低ければ溶融樹脂への清澄剤の溶解度が高くなる。
【0072】
図1は溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 7g/10分)における様々な濃度(1000ppm、2000ppm、3000ppm及び4000ppm)の3,4−DMDBSの溶解点を求める際に観察されるプロットに相当するものである。相対輝度変動の最大値及び対応する温度(溶解点)は溶融樹脂組成物における3,4−DMDBSの濃度が増大するにつれて上昇することが分かっている。
図1は相対輝度変動の変化によって、樹脂組成物への清澄剤/造核剤の顕著な溶解が測定溶解点未満の温度にて観察されることを示している。
【0073】
ヘイズ値
形成されたポリオレフィン材料のヘイズ値はGardner Hazegard Plusを用いてASTM標準試験法D1003−61「透明プラスチックのヘイズ及び視感透過率の標準的試験法」に従って測定した。
【0074】
ポリオレフィン材料の作製に関する一般手法
ベース樹脂(ランダムコポリマー、以下「RACO」)及び全ての添加剤を秤量した後、スーパーミキサにて1500rpmで2分間ブレンドした。次いで全てのサンプルを約170℃から185℃へと漸増した温度にて二軸押出機にて溶融混練した。押出機ダイからの排出時の融液温度は約190℃であった。次いでペレット化したサンプルを溶解点の測定に使用した。それから標的ポリオレフィン材料のプラークを、ペレット化サンプルを使用して25トンの射出成形装置にて作製した。成形装置のバレルは下記の特定温度に設定した。鏡面研磨した金型を使用して75mm×75mm×Zmm(ここで厚さZは0.5mm、1mm又は2mmである)の寸法のプラークを作製した。金型における循環冷却水を25℃の温度に制御した。作製後、プラークを室温にて24時間置いた後、分析してそれぞれのヘイズ値を求めた。
【0075】
本実施例に使用されるポリオレフィン系樹脂は下記の組成のポリプロピレンとした:
ポリプロピレンランダムコポリマー粉末 1000g
Irganox(商標) 1010、一次酸化防止剤(BASF製) 500ppm
Irgafos(商標) 168、二次酸化防止剤(BASF製) 500ppm
ステアリン酸カルシウム、酸掃去剤 500ppm
清澄化合物又は組成物 (下記のとおり)
【0076】
3,4−DMDBSとEDBSとの混合物は、2つの成分を粉末形態にて所望の比率で混ぜ合わせた後、上記のベース樹脂とブレンドすることにより調製した。
【0077】
3,4−DMDBSはNew Japan Chemicalから入手した(Geniset(商標) DXR)。EDBSは下記方法に従って調製した。撹拌機及び窒素注入口を備えた5L容の反応ケトルに400gのソルビトールを含む2400gのメタノールを入れた。416gのエチルベンズアルデヒド及びメタノール溶液触媒(6gのp−トルエンスルホン酸を含む100gのメタノール)を反応容器に添加した。溶液を50℃で24時間撹拌し、その間に白色の沈殿物が形成され、それを濾過により単離し、メタノールにて洗浄して、白色の粉末を得た。この粉末をpH 8にて少量のKOHに懸濁し、懸濁液を沸点まで加熱した後、濾過した。得られた白色粉末を沸騰水にて洗浄し、更にpH 7まで中和した。懸濁液を沸点まで加熱した後、濾過した。得られた沈殿白色粉末をメタノールにて洗い流した後、更に濾過して、白色の固体を得た。単離した白色粉末を80℃の真空オーブンにて乾燥させ、99%を超える純度の370gのEDBS生成物を得た(収率58%)。
【0078】
実施例1
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 7g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS及びEDBSの溶解点を求め、結果を下記の表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から、EDBSは高濃度(例えば4000ppm)であっても溶融ポリプロピレンへの溶解度が高く、溶解点は同濃度の3,4−DMDBSのものよりも顕著に低いことが分かる。しかしながら、EDBSは単独では上記のように官能特性があまり有益ではない。さらに本発明による重量比での3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドの溶解点は、同じポリオレフィン樹脂において総ブレンド濃度と同じ濃度にて単独で使用する場合の3,4−DMDBS及び更にはEDBSよりも低い。
【0081】
例えば3000ppmの濃度にてポリプロピレンランダムコポリマー樹脂における3,4−DMDBSの溶解点は219℃であることが観察され、3000ppmの濃度にて同じポリプロピレンランダムコポリマー樹脂におけるEDBSの溶解点は197℃であることが観察された。これに対して、同じポリプロピレンランダムコポリマー樹脂における3000ppmの合わせた濃度(900ppm+2100ppm)での本発明による比率(30:70)の3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドの溶解点は191℃であることが観察された。特に同じポリプロピレンランダムコポリマー樹脂における3000ppmの合わせた濃度(1500ppm+1500ppm)での本発明によらない比率(50:50)の3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドの溶解点は、同じポリプロピレンランダムコポリマー樹脂における3000ppmの濃度でのEDBSの溶解点よりも顕著に高い202℃であることが観察された。
【0082】
上記の選択結果を
図2にも図示しており、そこから本発明による重量比での3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドの相乗効果を見ることができる。
【0083】
実施例2
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 7g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求め、続いて上記の一般手法に従ってそれらから作製されたポリプロピレン材料についてのヘイズ値を求めた。結果を下記表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2の結果を用いて、樹脂における総濃度(2500ppm又は3000ppm)及び様々な射出成形温度(180℃及び190℃)についての3,4−DMDBS:EDBS比に対するヘイズ値/溶解点プロット図を作成した。これらのプロット図は
図3〜
図6に対応するものである。表2及び
図3〜
図6の結果から、造核剤及び清澄剤の溶解度、並びに作製されたポリオレフィン材料の透明度についての相乗効果が実証され、この相乗効果は本発明による3,4−DMDBS:EDBS比にて同時に観察される。特に、これらの相乗効果は180℃及び190℃という従来よりも低い射出成形温度にて観察される。さらに表2の結果から、より高い射出成形温度(200℃)でも好適なヘイズ値が得られることが実証され、このことにより本発明が従来の加工温度でも適用することができることが実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。一方、加工温度が200℃を超えなければポリオレフィン樹脂組成物に使用されるビス−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールとビス−p−エチルベンジリデンソルビトールとの重量比が15:85と高くても(本発明の代替態様と同様のものである)、造核及び清澄ポリオレフィン材料において適切なヘイズ及び官能特性が可能であることが分かっている。
【0086】
実施例3
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 80g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求め、続いて上記の一般手法に従ってそれらから作製されたポリプロピレン材料についてのヘイズ値を求めた。結果を下記表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
表3の結果を用いて、樹脂における2500ppmの総濃度及び180℃の射出成形温度についての
図7に対応する3,4−DMDBS:EDBS比に対するヘイズ値/溶解点のプロット図を作成した。
図7及び表3の結果から、高いMFR値(80g/10分)のポリプロピレン樹脂を用いても本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの比率について上記の相乗効果が実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。
【0089】
実施例4
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 80g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求め、続いて上記の一般手法に従ってそれらから作製されたポリプロピレン材料についてのヘイズ値(0.5mmのプラーク厚)を求めた。結果を下記表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
表4の結果から、高いMFR値(80g/10分)のポリプロピレン樹脂を用いても本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの比率について上記の相乗効果が実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。
【0092】
実施例5
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 80g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求め、続いて上記の一般手法に従ってそれらから作製されたポリプロピレン材料についてのヘイズ値(2.00mmのプラーク厚)を求めた。結果を下記表5に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
表5の結果から、高いMFR値(80g/10分)のポリプロピレン樹脂を用いても本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの比率について上記の相乗効果が実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。
【0095】
実施例6
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 50g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求めた。続いてポリオレフィン材料を、樹脂組成物を様々な温度にて射出成形することにより作製し、上記の一般手法に記載のようにヘイズ値を求めた。結果を下記表6に示す。
【0096】
【表6】
【0097】
表6の結果を用いて、
図8及び
図9にそれぞれ対応する樹脂における2500ppm及び3000ppmの総濃度、180℃の射出成形温度についての3,4−DMDBS:EDBS比に対するヘイズ値/溶解点のプロット図を作成した。
図7及び
図8、並びに表6の結果から、MFR値が50g/10分のポリプロピレン樹脂を用いても本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの比率について上記の相乗効果が実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。
【0098】
実施例7
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 48g/10分)における様々な濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求めた。続いてポリオレフィン材料を、樹脂組成物を様々な温度にて射出成形することにより作製し、上記の一般手法に記載のようにヘイズ値を求めた。結果を下記表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
表7の結果から、MFR値が48g/10分のポリプロピレン樹脂を用いても本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの比率について上記の相乗効果が実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。
【0101】
実施例8
溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 40g/10分)における2000ppmの濃度の3,4−DMDBS、EDBS及びそれらのブレンドの溶解点を求めた。続いてポリオレフィン材料を、樹脂組成物を様々な温度にて射出成形することにより作製し、上記の一般手法に記載のようにヘイズ値を求めた。結果を下記表8に示す。
【0102】
【表8】
【0103】
表8の結果から、MFR値が40g/10分のポリプロピレン樹脂を用いても本発明による3,4−DMDBSとEDBSとの比率について上記の相乗効果が実証される。3,4−DMDBSとEDBSとを本発明による重量比で含んで作製されたポリオレフィン材料の官能特性は良好であった。これは顕著な甘い匂いのしたEDBS単独にて作製されたポリオレフィン材料とは対照的である。
【0104】
実施例9
ヘイズ値を、溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 40g/10分)における2000ppmの濃度の3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドから作製された一連のポリオレフィン材料について求めた。樹脂組成物を様々な温度にて射出成形する前に3,4−DMDBSとEDBSとRACOとのブレンドを溶融混練し、190℃にて押出することにより一組のポリオレフィン材料を作製した。様々な温度にて射出成形する前に3,4−DMDBSとEDBSと粉末化したRACOとのブレンドを混合することにより別の組のポリオレフィン材料を作製した。結果を下記表9a及び下記表9bに示す。
【0105】
【表9a】
【0106】
【表9b】
【0107】
表9aのヘイズ値と表9bのヘイズ値との比較により、ポリオレフィン材料の作製における樹脂組成物の成形前の溶融混練及び押出工程を含むことの更なる有利点が説明される。特に樹脂組成物の成分の単なる混合及び成形のみと比較して成形してポリオレフィン材料を作製する前に樹脂組成物を溶融混練及び押出することにより、ヘイズ値の低減が呈される。そのため本発明の効果を高めるために、ポリオレフィン材料を、射出成形してポリオレフィン材料を形成する前に樹脂組成物を溶融混練及び押出することにより作製することができる。
【0108】
実施例10
3,4−DMDBSとEDBSとの様々なブレンドの融点を求めて、ブレンドの融点に対する相対的比率の成分の効果を評価した。結果は2000ppmの濃度にて溶融ポリプロピレン「RACO」(MFR 40g/10分)における大部分のブレンドについての溶解点とともに下記表10に示す。さらに様々なブレンドについての融点の傾向も
図10にてグラフで表す。
【0109】
【表10】
【0110】
表10(及び
図10)の結果から、ブレンドの融点はブレンドの2つの成分の各融点及びブレンドのそれぞれにおける相対的比率を単に反映するものではないことが説明される。驚くべきことにこの結果から、ブレンドが共晶点を有する共晶系を形成し、そこではおよそ30:70の3,4−DMDBSとEDBSとの比率についてのブレンドの融点が最小であり、個々の成分単独の各融点よりも低いことが分かる。また3,4−DMDBSとEDBSとのこの共晶ブレンドは、溶融樹脂における最小の溶解点の1つを呈する3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドとも一致することが理解される。
【0111】
3,4−DMDBSとEDBSとのブレンドによって示された驚くべき共晶系は本発明の効果を更に説明するものであるとされる。何ら特定の理論によって束縛されるものではないが、溶融樹脂におけるブレンドの融点とブレンドの溶解点との間に観察される相関関係は、ブレンドの共晶特性が樹脂組成物を従来よりも低い温度にて加工し、ヘイズ特性の優れた清澄及び/又は造核ポリオレフィン材料を形成する能力に寄与していると考えられる。
【国際調査報告】