特表2017-538018(P2017-538018A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-538018負の光弾性定数を有するポリマー材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538018(P2017-538018A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】負の光弾性定数を有するポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 39/08 20060101AFI20171124BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20171124BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20171124BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20171124BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   C08L39/08
   C08L33/12
   C08K5/00
   C08K5/101
   C08J3/20 ACER
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-531721(P2017-531721)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月13日
(86)【国際出願番号】US2015064204
(87)【国際公開番号】WO2016099972
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】62/093,527
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラヴィーン・アガルワル
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティス・アラボソン
(72)【発明者】
【氏名】シー−ウェイ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ダブリュ・リオンズ
(72)【発明者】
【氏名】キャサリーン・エム・オコンネル
(72)【発明者】
【氏名】カロライン・ウォルフル−グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイジュン・チョウ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA17
4F070AA32
4F070AC36
4F070AC40
4F070AE02
4F070FA04
4F070FB06
4F070FC03
4J002BG00W
4J002BG05X
4J002BG06X
4J002EB106
4J002EC037
4J002EE037
4J002EF086
4J002EH027
4J002EH037
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
負の光弾性定数を有するポリマー材料。ポリマー材料は、(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)C−C25脂肪族多環式化合物と、(c)少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)C−C25脂肪族多環式化合物と、(c)100℃で液体である、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物と、を含む、ポリマー材料。
【請求項2】
が、架橋多環式置換基である、請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項3】
(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)式(II);
【化1】
(式中、Gは、フルオロ及びクロロからなる群から選択される1〜5個の置換基を表す)の化合物と、(c)式(II)の化合物ではなく、100℃で液体である、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物と、を含む、ポリマー材料。
【請求項4】
Gが、フルオロを表す、請求項3に記載のポリマー材料。
【請求項5】
(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)4〜11個の芳香族エステル置換基を有する、単糖、二糖、または三糖と、(c)100℃で液体である、少なくとも200℃の沸点を有する有機溶媒と、を含む、ポリマー材料。
【請求項6】
成分(b)が、二糖である、請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項7】
前記コポリマーが、75〜85wt%の2−ビニルピリジンと15〜25wt%の前記式(I)の化合物との重合単位を含む、請求項2に記載のポリマー材料。
【請求項8】
前記有機溶媒が、5〜15個の炭素原子及び2〜5個の酸素原子を有する脂肪族エーテルである、請求項7に記載のポリマー材料。
【請求項9】
負の光弾性定数を有するポリマー材料を製造するための方法であって、前記ポリマー材料が、(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)C−C25脂肪族多環式化合物と、(c)100℃で液体であり、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物と、を含み、前記方法が、(i)前記ポリマー及び前記C−C25脂肪族多環式化合物を、35〜140℃の沸点を有する第1の溶媒及び少なくとも200℃の沸点を有する上述の有機溶媒とブレンドして、湿潤ポリマー材料を生成するステップと、(b)ガラス基材上に前記湿潤ポリマー材料をコーティングするステップと、(c)50〜120℃の温度に加熱し、前記第1の溶媒の少なくとも90%を除去するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負の光弾性定数を有するポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDデバイスは、透明電極が互いに面するように備えた一対の透明基材を配置した後、一対の基材の間の液晶を囲むことによって、形成されるLC(液晶)セルからなる。LCDデバイスは、輝度の向上及び画像表示品質の改善が所望されるとともにLCDデバイスの軽量化かつ薄化が所望される、携帯電話、携帯情報端末等において広く使用されてきた。スマートフォン及びタブレットコンピュータなどのLCDデバイスは、角部及び縁部周辺で光漏れをする傾向が、そのデバイスが完全な暗状態で使用されるときは特に見られる。重要な一因は、LCセルの薄いガラス中の応力誘起複屈折であると推測される。液晶ディスプレイの一部は、ディスプレイに取り付けられた載置構造に起因する、または内部のディスプレイ構造に起因する応力を受ける場合がある。一般に、ガラスは、正の光弾性定数またはCpを有する。このため、ガラス基材の応力誘起複屈折を補償するために、補償フィルムとして負のCp値を有する材料が必要である。しかしながら、ほとんどの材料が負のCp値を有さないことは既知であり、負の光弾性特性を有する材料を設計するための原理は既知ではない。可塑剤がCpへ及ぼす効果を検討するために、文献、例えば、J.H.LambleらのBrit.J.Appl.Phys.、vol.9、388において、いくつかのの研究が行われている。しかしながら、この参照文献は、可塑剤を組み込むことによるCpにおける正の変化のみを教示している。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)C−C25脂肪族多環式化合物と、(c)100℃で液体である、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物であって、C−C25脂肪族多環式化合物ではない、前記有機化合物と、を含む、ポリマー材料を提供する。
【0004】
本発明は、(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)式(II);
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、Gは、フルオロ及びクロロからなる群から選択される1−5個の置換基を表す)の化合物と、(c)100℃で液体である、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物であって、式(II)の化合物ではない、前記有機化合物と、を含む、ポリマー材料をさらに提供する。
【0007】
本発明は、(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)4〜11個の芳香族エステル置換基を有する、単糖、二糖、または三糖と、(c)100℃で液体であり、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物と、を含む、ポリマー材料をさらに提供する。
【0008】
本発明は、(a)2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせの重合単位を含むポリマーと、(b)式(III);
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R及びRは、独立して水素またはC−Cアルキルを表し、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、独立して水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロ、C(O)R13、またはC(O)OR13を表し、R13は、C−Cアルキルであるが、但しR、R、R、R、R、R10、R11、及びR12のうちの少なくとも1つが水素ではないことを条件とする)の化合物と、(c)100℃で液体であり、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物と、を含む、ポリマー材料をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に明記しない限り、百分率は、重量百分率(wt%)であり、温度は、℃である。特に明記しない限り、操作は、室温(20−25℃)で実行された。沸点は、気圧(101kPa)で測定される。有機化合物は、炭素及び水素原子を含む化合物である。好ましくは、有機化合物は、炭素、水素、及び酸素原子を含む。有機溶媒は、炭素及び水素原子を含む化合物であり、20℃で液体である。
【0012】
光弾性効果誘起複屈折は、材料の光弾性定数(Cp)及び材料に印加された応力の量(σ)によって判定される。光弾性定数は、印加された応力が、材料内でわずかな弾性変形しか誘起しない条件下で、応力誘起複屈折とガラス質の材料に印加された応力の大きさとの比を算出することによって判定される。材料の光弾性複屈折は、その材料の固有の複屈折(Δn)とは異なる。固有の複屈折は、例えば、一方向に材料を一軸延伸することによって、それが一方向に完全に配向されるときに、材料が呈する複屈折の量を指す。正の固有の複屈折の材料は、材料が完全に配向されるx方向(n)において、その他の2つの方向であるy及びzにおける屈折率n及びnよりも大きい屈折率を有し、x、y、zは、互いに相互に直交する3つの異なった方向を表す。反対に、負の固有の複屈折の材料は、材料が完全に配向されるx方向において、その他の2つの方向であるy及びzにおける屈折率よりも小さい屈折率を有する。正の固有の複屈折型の材料は、常に正の光弾性型になる傾向があるが、これに対して負の複屈折型の材料の場合、それらは、負の光弾性型または正の光弾性型のいずれかになり得る。
【0013】
光弾性定数は、各材料の固有の特性であり、正または負の値を有し得る。このため、材料は、正の光弾性定数を有する群、及び負の光弾性定数を有する群の2つの群に分割される。正の光弾性定数を有する材料は、材料をx方向に沿ってわずかな一軸引張応力に供するとき、正の複屈折(すなわち、nx>ny)を呈する傾向がある。反対に、負の光弾性定数を有する材料は、材料をx方向に沿ったわずかな一軸引張応力に供するとき、負の複屈折(すなわち、nx<ny)を呈する。
【0014】
遅延は、材料のシートにおける複屈折の尺度である。これは、Δnとシートの厚さとの積として定義され、Δnは、nとnとの差の絶対値である。
【0015】
好ましくは、C−C25脂肪族多環式化合物は、炭素、水素、及び酸素原子のみ、好ましくは6個以下の酸素原子、好ましくは4個以下の酸素原子を含有する。好ましくは、C−C25脂肪族多環式化合物は、架橋多環式化合物、好ましくは二環式、三環式、もしくは四環式化合物であり、これらの化合物は、アルキル、アルコキシ、もしくはヒドロキシ基、好ましくは、メチル及び/もしくはヒドロキシ基で置換されてもよく、またはそれらは、非置換であってもよい。好ましくは、脂肪族多環式化合物は、10〜20個の炭素原子を有する。好ましくは、C−C25脂肪族多環式化合物は、C−C非環式脂肪族置換基に結合されたC−C20脂肪族多環式置換基を含む。好ましくは、C−C非環式脂肪族置換基は、1〜4個、好ましくは少なくとも2個、好ましくは3個以下の酸素原子を含む。好ましくは、非環式脂肪族置換基は、3〜6個の炭素原子を有する。好ましくは、非環式脂肪族置換基は、少なくとも1つのエステル基を有する。好ましくは、脂肪族多環式置換基は、エステル酸素によって非環式脂肪族置換基に結合される。好ましくは、脂肪族多環式置換基は、8〜12個の炭素原子を有する。好ましくは、脂肪族多環式置換基は、架橋多環式置換基、好ましくは二環式、三環式、または四環式置換基である。好ましくは、C−C25脂肪族多環式化合物は、式(I)
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、Rは、水素またはメチルであり、Rは、置換されていないか、またはアクリレートもしくはメタクリレートエステル置換基を有するC−C20脂肪族多環式置換基である)の化合物である。好ましくは、Rは、C−C15脂肪族多環式置換基であり、好ましくは、Rは、C−C12脂肪族多環式置換基である。好ましくは、Rは、架橋多環式置換基、好ましくは二環式、三環式、または四環式置換基である。Rのための好ましい構造は、例えば、アダマンタン、ビシクロ[2,2,1]アルカン、ビシクロ[2,2,2]アルカン、ビシクロ[2,1,1]アルカンを含み、これらの構造は、アルキル、アルコキシ、またはヒドロキシ基、好ましくは、メチル及び/またはヒドロキシ基で置換されてもよい。アダマンタン及びビシクロ[2,2,1]アルカンが特に好ましい。好ましくは、Rは、メチルである。好ましくは、Rは、非置換である。
【0018】
好ましくは、式(II)におけるGは、2〜4個、好ましくは2または3個、好ましくは3個の置換基を表す。好ましくは、Gは、フルオロまたはクロロ、好ましくはフルオロを表す。
【0019】
好ましくは、4〜11個の芳香族エステル置換基を有する、単糖、二糖、または三糖は、単糖または二糖、好ましくは二糖である。好ましくは、単糖または二糖は、3〜8個、好ましくは5〜8個、好ましくは6〜8個の芳香族エステル置換基を有する。好ましくは、単糖は、3または4個、好ましくは4個の芳香族エステル置換基を有する。好ましくは、芳香族エステル置換基は、7〜20個、好ましくは7〜15個、好ましくは7〜10個の炭素原子を有する。好ましくは、芳香族エステル置換基は、ベンゾエートエステル置換基であり、それは置換または非置換であってもよく、置換ベンゾエートは、C−Cアルキル基、ヒドロキシル基、またはC−Cアルコキシ基によって置換されてもよい。
【0020】
好ましくは、R及びRは、独立して水素またはC−Cアルキル、好ましくは水素、メチル、またはエチル、好ましくは水素またはメチルを表す。好ましくは、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、独立して水素、ヒドロキシル、またはシアノを表す。
【0021】
好ましくは、コポリマーは、フリーラジカル溶液重合によって調製される。コポリマーの重量平均分子量(Mw)は、すべて、ポリスチレン当量分子量に対して、50,000g/モル超、好ましくは75,000g/モル超、さらにより好ましくは100,000g/モル超である。50,000g/モル未満のMwを有するコポリマーは、光学用途の多くに対して実用上有用となるには、脆性過ぎる。
【0022】
好ましくは、少なくとも200℃の沸点を有する有機化合物は、炭素、水素、及び酸素原子のみを含有する。好ましくは、有機化合物は、脂肪族エーテルまたはエステルである。好ましくは、脂肪族エーテルは、少なくとも1個、好ましくは1または2個のヒドロキシル基を有する。好ましくは、有機化合物は、4〜40個、好ましくは少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個、好ましくは35個以下、好ましくは30個以下、好ましくは25個以下、好ましくは20個以下、好ましくは15個以下の炭素原子を有する。好ましくは、有機化合物が20個超の炭素原子を有するとき、それは、10個超の酸素原子も有し、好ましくは、少なくとも8個の酸素原子がエーテル結合に存在し、好ましくは、有機化合物が、エチレングリコールのオリゴマーである。脂肪族エーテルが、例えば、エチレングリコールのオリゴマーであるとき、炭素原子数はオリゴマーにおける数平均である。好ましくは、脂肪族エーテルは、2〜12個、好ましくは2〜10個、好ましくは3〜6個の酸素原子を有し、それは、エーテル酸素、エステル酸素、またはヒドロキシル基として存在してもよい。特に好ましい有機化合物は、クエン酸トリ−n−ブチルであるTnBC、ヘキシルカルビトール、ヘキシルセロソルブ、トリエチレングリコール(TEG)、テトラエチレングリコール、及び200〜800の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(例えば、CARBOWAXポリエチレングリコール)を含む。好ましくは、有機化合物は、少なくとも200℃、好ましくは350℃以下、好ましくは320℃以下の沸点を有する。好ましくは、有機化合物は、80℃、好ましくは60℃、好ましくは40℃、好ましくは30℃で液体である。好ましくは、ポリマー材料における有機化合物の量は、少なくとも3wt%、好ましくは少なくとも4wt%、好ましくは少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも6wt%、好ましくは少なくとも7wt%であり、好ましくは12wt%以下、好ましくは11wt%以下、好ましくは10wt%以下、好ましくは9wt%以下である。好ましくは、ポリマー材料におけるコポリマーの量は、少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも75wt%、好ましくは少なくとも80wt%であり、好ましくは、97wt%以下、好ましくは96wt%以下、好ましくは95wt%以下、好ましくは94wt%以下、好ましくは93wt%以下である。本発明の好ましい一実施形態において、有機化合物は、有機溶媒である。
【0023】
好ましくは、ポリマー材料は、コポリマー及び添加剤分子(すなわち、成分(b))を、極性の、低沸点溶媒及び少なくとも200℃の沸点を有する上述の有機化合物とブレンドすることにより調製される。好ましくは、低沸点溶媒は、35〜140℃、好ましくは45〜120℃、好ましくは50〜110℃の沸点を有する。好ましくは、低沸点溶媒は、アルコール、エステル、またはケトンである 好ましい低沸点溶媒としては、エタノール、1−ブタノール、シクロペンタノン、及び乳酸エチルが挙げられる。好ましくは、コポリマー、添加剤分子、ならびに溶媒(低沸点溶媒、及びbp>200℃を有する有機化合物)の混合物は、少なくとも200℃の沸点を有する2〜20wt%の有機化合物及び30〜75wt%の低沸点溶媒。好ましくは、少なくとも200℃の沸点を有する3〜10wt%の有機溶媒及び35〜70wt%の低沸点溶媒を含む。 好ましくは、キャスト後、湿潤フィルムは、好ましくは50〜120℃の温度で乾燥させる。
【0024】
好ましくは、乾燥時間の少なくとも一部の間、湿潤フィルムは、真空下で、低沸点溶媒の除去を促進させる。好ましくは、低沸点溶媒の初期量の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%が除去される。
【0025】
コポリマー及び溶媒の混合物は、ガラス基材(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)セルの表面)上へ被覆され、当技術分野において周知の任意の好適なコーティングプロセスを使用することによって、光漏れを抑制し得る。例えば、ポリマー材料は、ディップコーティング、スピンコーティング、またはスロットダイコーティングによってガラス上へ被覆されてもよい。コーティング面積、コーティング厚、及び均一性の制御が比較的容易であるスロットダイコーティングプロセスがより好ましい。ポリマー材料層の厚さの好ましい範囲は、100μm未満、好ましくは50μm未満、好ましくは25μm未満であり、好ましくは1μm超、好ましくは5μm超、さらにより好ましくは10μm超である。このようなポリマー材料の厚さが100μm超であるとき、それは、消費者がより薄い電子デバイスを好む場合に望ましくない。反対に、コーティングの厚さが1μm未満であるとき、応力下でガラス複屈折を光学的に補償するその効果が非常に制限される。
【0026】
ガラスシートの厚さの好ましい範囲は、0.1mm〜0.7mm、好ましくは0.2mm〜0.5mmである。ガラス基材の厚さが0.7mm超であるとき、光学コーティングの効果が十分に強くない場合があり、また、これはデバイスの厚さも増加させる。ガラス基材が0.1mm未満であるとき、その物理的剛性は、デバイス製作にとって問題となる。
【実施例】
【0027】
ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、クエン酸トリ−n−ブチル(TnBC)、リン酸トリフェニル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アゼライン酸ジメチル、アジピン酸ジイソデシル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)は、Scientific Polymer Productsから得た。3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート(HAMA)は、Idemitsuから得た。イソボルニルメタクリレート(IBOMA)、1−ブタノール、乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メタノール、エタノール(EtOH)、酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)は、Sigma−Aldrichから購入した。1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)、ヘキシルセロソルブ、ヘキシルカルビトール、トリエチレングリコールは、The Dow Chemical Companyから得た。
【0028】
ビコ−ドライブ自動フィルムアプリケーターを使用して、10mm/秒の典型的なドローダウン速度を有するドローダウンバーを用いて、ガラス基材上の剥離紙上に溶液キャスティングすることによって、フィルムを調製した。バークリアランスは、そのwt%固体及び目標の乾操膜厚に基づいて、様々な製剤に対して調整した。自立形のフィルム試料を調製するために、液体製剤コーティングをWarren Universal Patentの剥離紙上にドローダウンし、コーティングを完全に乾燥させた後、フィルムを剥離した。
【0029】
80wt%のポリ(2−ビニルピリジン)(P2VP)及び20wt%のHAMA(1−ヒドロキシ−3−アダマンチルメタクリレート)を含む2組の複合フィルムをキャスティング溶媒としてシクロペンタノン及び1−ブタノールから調製した。PDMSブラシポリマー(材料源)で前処理された2×6インチ(5.1×15.2cm)及び0.5mm厚のガラス板上に24ミル厚の溶液を塗布することによって、フィルムを調製した。一方の組の材料を75℃で19時間真空下でベークし、他方の組をフィルム試料中の残留溶媒をさらに除去するために95℃で72時間さらなるベークに供した。
【0030】
およそ1”×3”(2.54×7.62cm)サイズの乾燥フィルムの試験片で光弾性特性の測定を実施した。EXICOR 150 AT複屈折測定システム(Hinds Instruments)に取り付けられたカスタム製の一軸引張延伸ステージ上にフィルムの試験片を載置した。一軸延伸力の関数としてのフィルムの光学遅延は、フィルムを同時に延伸しながら、546ナノメートル(nm)の波長で、フィルムの中間区分付近で測定した。試料載置グリップのうちの1つに接続された力変換器(OMEGA DFG41−RS)によって、力を手動で制御し記録した。試験片に印加された最大の力は、およそ10〜15のニュートンであった。測定された遅延をフィルム厚で割ることによって、フィルム複屈折を得た。光弾性定数または応力光学係数であるCpは、直線フィッティングである、一軸引張応力の関数としての測定された複屈折から判定された傾斜に等しく、Pa−1の単位で報告した。結果を以下に示す(ブルースター単位は、実施例全体を通して使用される。1Br=10−12 Pa−1)。フィルム内の残留溶媒が除去されると、このP2VP−HAMAフィルムのCp値が、約8.4のブルースター単位でニートP2VPのものに近似することが見出された。
【0031】
[表]
【0032】
熱による加熱エージング後の光弾性特性の負から正への観察された変化は望ましくない。しかしながら、より高い沸点を有する有機化合物の組み込みは、高温でのベーク後、材料の大きな負のCp特性を維持するために驚くほど効果的であることが見出された。溶媒系は、低沸点、溶媒除去をより容易にするための高い相対蒸発速度(RER)主要溶媒、及び最終フィルム内に大部分が残存する、高沸点の、低RER少数溶媒を含む。78℃の沸点及び150のRER(酢酸n−ブチルに対して)を有する、エタノールを主要溶媒として使用した。少数溶媒としては、ヘキシルセロソルブ(エチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル)、ヘキシルカルビトール(ジエチレングリコールモノn−ヘキシルエーテル)、及びトリエチレングリコールという3つの高沸騰点溶媒を使用した。
【0033】
24ミルバー(106μmの理論的なFT)を使用するドローダウンバーコータを使用して、自立形フィルムを調製した。フィルムは、75℃で一晩ベークし、その後エタノール共溶媒を除去するために真空下でさらに3時間95℃でベークした。高沸点溶媒を含む溶媒系において調製されたP2VP−20wt%HAMAフィルムに関する、光弾性定数またはCpを測定した。基準点として、純粋なエタノールからキャストされたP2VP−20wt%HAMAは、+8.42Br、ニートP2VPのものに非常に近似した値のCpを有する。3成分系のCpは、複合フィルムTgの関数として、及びフィルム内の残留溶媒の量(熱重量分析によって判定される)の関数として、両方を以下に一覧にする。トリエチレングリコール(TEG)の組み込みは、−597.57BrでCpにおける最大の減少をもたらした。
【0034】
実施例1〜5及び比較例C1
(注:表1のデータは、P2VPポリマーの光弾性特性及びTgに対するポリマー改質剤としての高沸点TEGの組み込みの効果を示す)
【0035】
【表1】
【0036】
実施例6〜9及び比較例C2
異なるベースポリマー(P4VP)を用いること以外、実施例1〜5及び比較例C1に示すように行った。結果を表2に要約するが、これは、ポリマー改質剤TEGの組み込みが負の光弾性特性を有するフィルムをもたらすことを示している。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例10〜11及び比較例C3−C8
異なるベースポリマー(P4VP)及びポリマー改質剤を用いること以外、実施例1〜5及び比較例C1に示すように行った。結果を表3に要約するが、これは、ポリマー改質剤及び光弾性(PE)添加剤の組み込みが、PMMAホモポリマーにおいてではなく、S−r−2VPコポリマー、S−r−MMAコポリマーにおいて負の光弾性性能をもたらすことができることを示しており、好ましくは、ベースポリマーは、大きな発色団、例えばポリマー鎖の側鎖に吊り下がるベンゼンまたはピリジン環を有する必要があることを示唆している。
【0039】
【表3】
【0040】
この結果は、構成成分比を適切に選ぶことによって、複合系の、Cp及びTg性能を調整することができることを示している。3成分系により提供される製剤における柔軟性により、大きな設計空間が、負の大きいCpと高温で良好な熱安定性との間の適切なバランスを見出すことが可能になる。
【0041】
他の化合物及び溶媒は、下表に示すようにフィルムに組み込まれた。
【0042】
[表]
【0043】
この表のすべての試料について、ポリマー+添加剤=35部及び総溶媒=65部
【0044】
[表]
【0045】
[表]

【国際調査報告】