(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538022(P2017-538022A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】アルコキシアミンの低温ラジカル重合
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20171124BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20171124BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F2/38
C08F2/44 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-532037(P2017-532037)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月15日
(86)【国際出願番号】FR2015053616
(87)【国際公開番号】WO2016097646
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】1462720
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブーリゴー, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】カゾマユ, シルヴィー
(72)【発明者】
【氏名】エスカール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】イヌブリ, ラベール
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011NA02
4J011NA17
4J011NA27
4J011NB04
4J011NB08
4J011PA02
4J011PA03
4J011PA86
4J011PA88
4J011PA95
4J011PB04
4J011PB07
4J011PB22
4J011PB25
4J011QA02
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA08
4J011QA09
4J011QA18
4J011SA61
4J011SA78
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA02
(57)【要約】
本発明は、光開始剤の存在下、低温において、典型的には−50℃の低温においてアルコキシアミンをラジカル重合させる方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
− 少なくとも1種の光開始剤及び少なくとも1種のアルコキシアミンの存在下で、少なくとも1種のモノマーを含む混合物を調製する工程と、
− モノマーが完全に転化されるまで−50℃〜80℃の温度で混合物を重合させる工程と
を含む、ラジカル重合方法。
【請求項2】
少なくとも1種のアルコキシアミンが一官能性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種のアルコキシアミンが多官能性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のアルコキシアミンが高分子アルコキシアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の光開始剤が、熱によりフリーラジカルを生成する少なくとも1種の開始剤と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の光開始剤が、酸化還元反応によりフリーラジカルを生成する少なくとも1種の開始剤と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
重合がホスト材料の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ホスト材料が織物繊維又は不織繊維、ポリエステル、ポリウレタン、及びエポキシ樹脂から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
結合剤、複合材料部品、ニスの製造のため、コーティングのため、及び3D印刷技術を使用して製造される物品のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法の使用
【請求項10】
請求項9に記載の使用によって得られる物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光開始剤の存在下、低温において、典型的には−50℃の低温においてアルコキシアミンをラジカル重合させる方法に関する。本発明はまた、物体を得るための本発明の方法の使用にも関し、得られる物体にも関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合は良く知られた重合技術である。アルコキシアミンの使用はブロックコポリマーの調製を可能にする。
【0003】
これらの重合はほとんどの場合に少なくとも100℃を超える温度で行われる。例外は、SG1としても知られるN−tert−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドの使用に関するが、なぜならこれは50℃での重合の開始を可能にするからである。このニトロキシドは、その式が以下:
で想起され、より詳細には欧州特許第0760824号に記載される。
【0004】
このニトロキシドは、適度な重合温度及び多くのモノマーの良好な制御などの多くの利点を有するが、これがアルコキシアミンから生じる場合は工業的サイクルと適合する時間内に室温(例えば20℃)又はさらには室温未満などの低温で重合を行うことができず、なぜならアルコキシアミンは50℃を超える温度でのみ難分解性ラジカルを生成し得るからである。
【0005】
国際公開第03/074572号は、ニトロキシド経路を介する、50℃〜160℃であるが好ましくは80℃〜100℃の温度における、制御された方法での重合の可能性を記載している。したがって反応は例えば室温では不可能である。
【0006】
そこで、例えば非常に大型の部材(例えば風力タービン翼又は艇体)の重合の場合は、そのためのオーブンタイプの加熱設備が非常に高価であり、そのような低温で、又は負温度であっても重合を行うことを可能にすることが真に必要とされる。室温又はさらには負温度で行われる重合は、したがって大きな経済的な進歩となり、又は例えばマルチパック接着剤の場合には、それらを厳しい負温度条件下で使用可能にすることが可能である。
【0007】
さらに、ブロックコポリマーを含む配合物において、予備工程で合成されたブロックコポリマーを導入すると、通常は混合物の粘度の非常に大幅な増加を生じさせ、このことは低粘度を必要とするプロセスに対して、例えば複合材料の製造における注入プロセス、又は調製のレオロジー的挙動が重要である高速の製造プロセスなどに対して、大きな障害となる。したがってin situで、すなわち材料を形成させる間にブロックコポリマーを調製すること、及び低温(>0℃)で、典型的には室温で、すなわち約25℃でそれを行うことが賢明であると思われる。
【0008】
他の状況において、低温重合は利点を有するが(副反応が制限される、特定の感熱性分子が分解しない)、エネルギー消費を少なくすること又は合成反応器中の圧力を最小にすることも可能にする。
【0009】
標準的なラジカル重合において、使用される開始剤が過酸化物である場合、ジメチル−パラ−トルイジンなどのアミンの添加(Qiu K.ら、Polymer Communications、No. 1、76〜81、1985)が低温での開始を可能にすることが良く知られている。このレドックス系は例えば室温で使用できる2液型接着剤を調製するのに有用である。
【発明の概要】
【0010】
本出願人は今回、あらゆる予想に反して、光開始剤の存在下のアルコキシアミンが、電磁波の照射下でモノマーの重合を再開すること、並びに負温度において、迅速な反応速度で、すなわち工業用途に適合する時間、典型的には数分から数時間でそれを行うことを見出した。
本発明は、以下の工程:
− 少なくとも1種の光開始剤及び少なくとも1種のアルコキシアミンの存在下で、少なくとも1種のモノマーを含む混合物を調製する工程と、
− モノマーが完全に転化されるまで−50℃〜80℃の温度で混合物を重合させる工程と
を含むラジカル重合方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例6cと6eの間の機械的挙動の差を示す動的機械分析(DMA)である。
【
図3】2つの明確に異なる相に対応する2つのガラス転移温度を示す引張り動的機械分析を示す。
【
図4】構造化が非常に微細である(サブミクロンスケール)光透過性を示す。
【
図5】ポリアクリル酸(2−(2−エトキシエトキシ)エチル)について−40℃のガラス転移温度を示す圧縮動的機械分析を示す。
【
図6】構造化のスケールが非常に微細でサブミクロンレベルであることを裏付ける試料の光透過性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法は任意の種類のアルコキシアミンによって行ってもよい。これは、いくつかのニトロキシドラジカルを生成することが可能であるポリアルコキシアミン、或いは高分子アルコキシアミン若しくは少なくとも1種のモノマーとアルコキシアミンの間の重合の工程から得られる高分子ポリアルコキシアミンであってもよい。
【0013】
したがって、本発明の第1の実施態様によれば、アルコキシアミンの少なくとも1つが一官能性である。
【0014】
本発明の第2の形態によれば、アルコキシアミンの少なくとも1つが多官能性である。
【0015】
アルコキシアミン又はポリアルコキシアミンは一般式Z(−T)
n(式中、Zは多価基を表し、Tはニトロキシド、nは1以上の整数、両端を含めて好ましくは2〜10、有利には2〜8、さらに好ましくは2〜4を表す)によって表される。
nはアルコキシアミンの官能価、すなわち、メカニズム:
にしたがってアルコキシアミンにより放出され得るニトロキシドラジカルTの数を表す。
【0016】
この反応は、電磁波にさらされるとフリーラジカルを生じる光開始剤の存在によって活性化される。モノマー(複数可)の存在下で、活性化アルコキシアミンが重合を開始させる。以下のスキームは、n=2であるアルコキシアミンに基づく、コポリマーであるポリM2−ポリM1−ポリM2の調製を説明している。アルコキシアミンの活性化後にモノマーM1を最初に重合させ、ポリM1のブロックが完了するとすぐに、次いでモノマーM2を重合させる:
【0017】
ブロックコポリマーの調製の原理は、nが1以上の場合、有効であり続ける。
【0018】
Zは多価基、すなわち活性化後にいくつかのラジカル部位を放出することができる基を表す。議論されている活性化は共有結合Z−Tの開裂によって行われる。
【0019】
例として、Zは以下の基(I)〜(VIII)から選択してもよい:
(式中、R
3及びR
4は、同一又は異なっていてもよく、1〜10個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキル基、F、Cl、若しくはBrなどのハロゲン原子によって、或いは1〜4個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基によって、或いはニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、若しくはカルボキシル基によって置換されていてもよいフェニル又はチエニル基;ベンジル基、3〜12個の範囲のいくつかの炭素原子を含有するシクロアルキル基、1つ又は複数の不飽和部分を含む基を表し;Bは1〜20個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖又は分岐アルキレン基を表し;mは1〜10の範囲の整数である);
(式中、R
5及びR
6は、同一又は異なっていてもよく、F、Cl、若しくはBrなどのハロゲン原子によって、或いは1〜4個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基によって、或いはニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、若しくはカルボキシル基によって置換されていてもよい、アリール、ピリジル、フリル、又はチエニル基を表し;Dは1〜6個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキレン基、フェニレン基、又はシクロアルキレン基を表し;pは1〜10の範囲の整数である);
(式中、R
7、R
8、及びR
9は、同一又は異なっていてもよく、式(I)のR
3及びR
4と同じ意味を有し、q、r、及びsは1〜10の範囲の整数である);
(式中、R
10は式(II)のR
5及びR
6と同じ意味を有し、tは1〜4の範囲の整数であり、uは2〜6の整数である(芳香族基は置換されている));
(式中、R
11は式(IV)の基R
10と同じ意味を有し、vは2〜6の整数である);
式中、R
12、R
13、及びR
14は、同一又は異なっていてもよく、Cl又はBrなどのハロゲン原子によって、或いは1〜10個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基を表し;Wは酸素、硫黄、又はセレン原子を表し、wは0又は1に等しい。
(式中、R
15は式(I)のR
3と同じ意味を有し、R
16は式(II)のR
5又はR
6と同じ意味を有する);
(式中、R
17及びR
18は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、又は1〜10個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基、ハロゲン原子又はヘテロ原子で置換されていてもよいアリール基を表す)。
【0020】
Tは、基=N−O
・、すなわち不対電子が存在する基を有する、安定フリーラジカルである、ニトロキシドを表す。用語「安定フリーラジカル」は、非常に難分解性であり大気及び大気中水分に対して非反応性であるため、大多数のフリーラジカルよりもはるかに長時間にわたって取り扱い及び保存することができるラジカルを表す(これに関してはAccounts of Chemical Research 1976、9、13〜19を参照)。したがって安定フリーラジカルは、通常の重合開始剤、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、又はアゾ開始剤から生じるフリーラジカルなどの、寿命が一瞬である(数ミリ秒〜数秒)フリーラジカルとは異なる。フリーラジカルは、それが重合開始剤ではない場合、及びラジカルの平均の寿命が少なくとも1分である場合に安定であると言うことができる。
【0021】
Tは構造:
[式中、
R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、及びR
24は
− 直鎖又は分岐C
1−C
20、好ましくはC
1−C
10アルキル、例えば置換又は非置換のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、又はネオペンチルなど、
− 置換又は非置換のC
6−C
30アリール、例えばベンジル又はアリール(フェニル)など、
− 飽和C
1−C
30環状基
の中からの基を表し、
基R
19及びR
22は、
(式中、xは1〜12の整数を表す)
から選択してもよい、置換されていてもよい環状構造R
19−CNC−R
22の一部を形成していてもよい]
により表される。
【0022】
例として、以下のニトロキシド:
を使用してもよい。
【0023】
特に好ましくは式(X):
のニトロキシドが使用され、
R
a及びR
bは1〜40個の炭素原子を有する同一又は異なるアルキル基を表し、任意選択的に環を形成するように互いに結合しており、ヒドロキシル、アルコキシ、又はアミノ基で置換されていてもよく、
R
Lはモル質量が15.42g/molを超え、好ましくは30g/molを超える一価基を表す。基R
Lは、例えば40〜450g/molのモル質量を有していてもよい。これは好ましくは一般式(XI):
(式中、X及びYは、同一又は異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキルオキシル、ペルフルオロアルキル、及びアラルキル基から選択されてもよく、1〜20個の炭素原子を含んでいてもよい。X及び/又はYはまた、塩素、臭素、又はフッ素原子などのハロゲン原子であってもよい)
のリン含有基である。
【0024】
有利には、R
Lは式:
(式中、R
c及びR
dは2つの同一又は異なるアルキル基であり、任意選択的に環を形成するように結合しており、1〜40個の置換されていてもよい又は非置換の炭素原子を含む)
のホスホナート基である。
【0025】
基R
Lは、例えば1〜10個の炭素原子を含む1つ又は複数のアルキル基によって置換されている、フェニル基又はナフチル基などの少なくとも1つの芳香族環も含んでいてもよい。
【0026】
式(X)のニトロキシドは、国際公開第03/062293号において教示されるように、(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合を良好に制御することを可能にするので好ましい。したがって、式(X)のニトロキシドを有する式(XIII):
(式中、
Zは多価基を表し;
R
a及びR
bは、1〜40個の炭素原子を有する同一又は異なるアルキル基を表し、任意選択的に環を形成するように互いに結合しており、ヒドロキシル、アルコキシ、又はアミノ基で置換されていてもよく;
R
Lはモル質量が15.042g/molを超え、好ましくは30g/molを超える一価基を表す)
のアルコキシアミンが好ましい。基R
Lは、例えば40〜450g/molのモル質量を有していてもよい。これは好ましくは一般式(XI):
(式中、X及びYは、同一又は異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、アリールオキシル、アリール、アラルキルオキシル、ペルフルオロアルキル、及びアラルキル基から選択されてもよく、1〜20個の炭素原子を含んでいてもよい;X及び/又はYはまた、塩素、臭素、又はフッ素原子などのハロゲン原子であってもよい)
のリン含有基である。
【0027】
有利には、R
Lは式:
(式中、R
c及びR
dは2つの同一又は異なるアルキル基であり、任意選択的に環を形成するように結合しており、1〜40個の置換されていてもよい又は非置換の炭素原子を含む)
のホスホナート基である。
【0028】
基R
Lは、例えば1〜10個の炭素原子を含む1つ又は複数のアルキル基で置換されている、フェニル基又はナフチル基などの少なくとも1つの芳香族環も含んでいてもよい。
【0029】
アルコキシアミン(XIII)が有していてもよい、式(X)のニトロキシドの例として、
− N−tert−ブチル−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、
− N−(2−ヒドロキシメチルプロピル)−1−フェニル−2−メチルプロピルニトロキシド、
− N−tert−ブチル−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
− N−tert−ブチル−1−ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
− N−tert−ブチル[(1−ジエチルホスホノ)−2−メチルプロピル]ニトロキシド、
− N−(1−メチルエチル)−1−シクロヘキシル−1−(ジエチルホスホノ)ニトロキシド、
− N−(1−フェニルベンジル)−[(1−ジエチルホスホノ)−1−メチルエチル]ニトロキシド、
− N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシド、
− N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチルニトロキシド、
− N−(1−フェニル−2−メチルプロピル)−1−ジエチルホスホノメチルエチルニトロキシド、
− 或いは式
のニトロキシド
を挙げることができる。
【0030】
式(XIV):
のニトロキシドが特に好ましい。これはN−tert−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピルニトロキシドであり、簡便性のためにSG1として一般的に知られている。
【0031】
アルコキシアミン(I)、特にアルコキシアミン(XIII)は、例えば仏国特許第2791979号に記載の方法によって調製してもよい。使用することができる1つの方法は炭素系ラジカルをニトロキシドとカップリングさせることに基づく。D. GresztaらによりMacromolecules 1996、29、7661-7670に記載されるようなATRA(原子移動ラジカル付加)型の反応にしたがって、CuX/配位子(X=Cl又はBr)などの有機金属系の存在下でハロゲン化誘導体から出発してカップリングを行うことができる。
【0032】
本発明において使用することができるアルコキシアミンを以下に示す:
最後の2つのアルコキシアミンはそれぞれDIAMINS及びTRIAMINSと呼ばれ、好ましいアルコキシアミンである。
【0033】
式(I)に相当するいくつかのアルコキシアミン、特に式(XIII)のいくつかのアルコキシアミンを混合することは本発明の範囲からの逸脱とならない。したがってこれらの混合物は、例えばn1に結合したニトロキシドを含有するアルコキシアミン、及びn2に結合したニトロキシドを含有するアルコキシアミンを含んでいてもよく、n1はn2とは異なる。それらはまた、異なるニトロキシドを有するアルコキシアミンの組み合わせであってもよい。
【0034】
光開始剤は、これらの化合物を電磁波にさらした場合にフリーラジカルを生成することが可能である化合物である。好ましくは、電磁波は紫外又は可視範囲の波長を有するが、より短い波長範囲(X線又はガンマ線)又はより長い波長範囲(赤外又はさらにそれを超える)の波長を使用することは、本発明の範囲からの逸脱とならない。
【0035】
これは、少なくとも2つの光子を吸収することによってフリーラジカルを生成することが可能である光開始剤であってもよい。
【0036】
後者の例は、特に光開始剤の存在下での重合を伴う3D印刷の分野において、すなわちレーザービームを使用した連続層の重合による3次元物体及びプロトタイプの作成において、反応混合物の塊の領域を選択的に重合させることに関する場合に、特に有用である。
【0037】
光開始剤は任意の種類であってもよい。それらは好ましくは、カルボニル基に対するα位でのホモリシス開裂反応によってフリーラジカルを生成するもの、例えばベンゾインエーテル誘導体、ヒドロキシアルキルフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、及びまたアシルホスフィン酸化物誘導体など、並びにβ位におけるもの、例えばケトンスルフィド及びスルホニルケトン誘導体など、ベンゾフェノン又はチオキサントンなどの水素供与体から水素を奪うことによりフリーラジカルを生成するものから選択される。このプロセスはアミンとの電荷移動錯体を含み、開始アルキルラジカル及び不活性ケチルラジカルを形成させる電子移動及びプロトン移動が後に続く。ベンジルジアセタール、ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノケトン、アシルホスフィン酸化物、ベンゾフェノン、及びチオキサントンを挙げることができる。いくつかの光開始剤の組み合わせ、又はさらには光開始剤及びラジカルが熱により又は酸化還元反応により生成されるラジカル開始剤(複数可)の組み合わせ、例えばメチレンビス(マロン酸ジエチル)−セリウムIV対、或いはH
2O
2/Fe
2+対を使用することは、本発明の範囲からの逸脱とならない。
【0038】
開始剤としては、過酸化ジアシル、ペルオキシエステル、過酸化ジアルキル、ペルオキシアセタール、及びアゾ化合物を挙げることができる。使用に適している可能性があるラジカル開始剤は、例えば、炭酸イソプロピル、ベンゾイル、ラウロイル、カプロイル、又はジクミル過酸化物、過安息香酸tert−ブチル、2−エチル過ヘキサン酸tert−ブチル、クミルヒドロペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ペルオキシイソ酪酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過ピバリン酸tert−ブチル、過ピバリン酸アミル、及び過オクタン酸tert−ブチルである。
【0039】
本発明の方法は、本発明の方法の使用によって得られる物体の最終用途に応じて、可塑剤、熱若しくはUV安定化剤、又は着色剤などの様々な添加剤も含んでいてもよい。
【0040】
本発明の方法による重合は、バルク、溶液、懸濁液、又はエマルションにおいて行ってもよい。
【0041】
本発明の1つの変形によれば、使用するアルコキシアミンは同様のニトロキシド制御ラジカル重合法によって調製してもよいが、光開始剤の非存在下で、50℃を超える温度である。これは例えば、少なくとも1種のモノマーを含む第1のブロックを作ることを含み、これはその後本発明の条件下、すなわち低温、典型的には他のブロックの重合を生じさせるために室温に置かれることになる。いくつかのブロックを含むコポリマーがこうして得られることになる。
【0042】
ブロックコポリマーの合成は長年の間いくつかの技術を使用してきた。これらの技術の各々において、合成に使用される温度は常に室温とは非常にかけ離れており、そのため特別な調製条件を必要とし、これは多くの場合に実用において使用される製造プロセスには適さない。本発明の方法において、重合温度は−50℃〜+80℃、有利には−20℃〜+80℃、好ましくは0℃〜80℃、より好ましくは0℃〜50℃、理想的には10〜35℃である。
【0043】
したがって多くの研究は、第1の工程でブロックコポリマーを合成すること、及び次いで意図する用途にしたがって選択された材料中にこれを添加剤の形態で導入することに基づいてきた。これらの添加剤の使用が、通常使用される先行技術と比較した場合に特性間の改善された妥協点を得ることを可能にすることが実証されてきた。しかし、ブロックコポリマーをホスト材料中に導入することは、これらの添加剤が非常に高粘度であることに起因して、特殊な混合手段及び技術(高温において、溶媒経路を介する)を必要とする。同じ効果が、最終材料中に導入することができるブロックコポリマーの含量も制限する。これらの用途において、添加剤として使用してもよいポリマーの含量は、生じた粘度によって制限される。本発明の場合のように、コポリマーの合成がホスト樹脂又は樹脂/硬化剤混合物中で直接行われる場合、粘度はもはや問題ではなく、なぜならそれはプロセスの最後においてのみ生じるからである。これは、粘度が制限要因である分野、例えばコーティング、レジンインジェクション又は注入法、接着剤などの分野において、新しい機会を切り開く。
【0044】
本発明は、実用的特性に向けたより好ましい特定のモルフォロジーを得るためにホスト材料中におけるin situでのブロックコポリマーの合成を可能にし、一方で混合材料の導入に向けて特に好ましい低い初期粘度を維持するという、二重の利点を有する。
【0045】
ホスト材料は、溶媒、ポリマー、オリゴマー、任意のサイズ及び短形又は長形の任意のタイプのアスペクト比である多孔性若しくは非多孔性顔料フィラー又は非顔料フィラー、織物繊維若しくは不織繊維、ナノチューブ、又はこれらのホスト材料の組み合わせであってもよい。ホスト材料はまた、ポリマー前駆体であってもよく、例えばアルコキシアミンを非制限的な方法で含む重合とは独立にポリエステル、ポリウレタン、又はエポキシ樹脂を重合させることが可能である、任意の2液系又は非2液系であってもよい。例えば、ホスト材料及びアルコキシアミンの重合により生じる材料を同時に又は順次に重合させることが可能である。
【0046】
この意味において、本発明は国際公開第03/062293号又は国際公開第06/06152号に記載される方法と同様であるが、第2のブロックを合成させる温度が先行技術で記載されるものよりも非常に大幅に低く、典型的には室温であるという事実において後者とは異なっており、これは、従来の先行技術で従来通りに記載される第1の工程の間に光開始剤及び第2のブロックの構成モノマーの存在下であらかじめ調製される高分子アルコキシアミン開始剤の併用によって可能となる。
【0047】
本発明の方法において使用することができるモノマーの中で、いかなる制限も示唆することなく、1つ又は複数の二重結合を有するモノマー、例えばビニル芳香族モノマーなど、例えばスチレン又は置換スチレン、特にα−メチルスチレン、アクリルモノマー、例えばアクリル酸又はその塩、アクリル酸アルキル(任意選択的にいくつかのアクリル官能基を含有する)、アクリル酸シクロアルキル又はアクリル酸アリールなど、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、又はアクリル酸フェニルなど、アクリル酸ヒドロキシアルキル例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸エーテルアルキルなど、例えばアクリル酸2−メトキシエチルなど、アクリル酸アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリアルキレングリコール、例えばアクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール、又はそれらの混合物など、アクリル酸アミノアルキル、例えばアクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEA)など、フルオロアクリレート、シリルアクリレート、リンアクリレート、例えばアルキレングリコールホスフェートアクリレートなど、メタクリル酸モノマー、例えばメタクリル酸又はその塩、メタクリル酸アルキル(任意選択的にいくつかのメタクリル酸官能基を含有する)、メタクリル酸シクロアルキル、メタクリル酸アルケニル、メタクリル酸又はアリールなど、例えばメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸フェニル、又はメタクリル酸ナフチルなど、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、例えばメタクリル酸2−ヒドロキシエチル又はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなど、メタクリル酸エーテルアルキル、例えばメタクリル酸2−エトキシエチルなど、メタクリル酸アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリアルキレングリコール、例えばメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸エトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシ−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール、又はそれらの混合物など、メタクリル酸アミノアルキル、例えばメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)など、フルオロメタクリレート、例えばメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルなど、シリルメタクリラレート、例えば3−メタクリロイルプロピルトイメチルシランなど、リンメタクリラート、例えばアルキレングリコールホスフェートメタクリレートなど、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレート、メタクリル酸2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、又は置換アクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミド又は置換メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、イタコン酸、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、マレイン酸アルキル又はマレイン酸アルコキシ−若しくはアリールオキシ−ポリアルキレングリコール、又はヘミマレイン酸アルキル又はヘミマレイン酸アルコキシ−若しくはアリールオキシ−ポリアルキレングリコール、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテル又はジビニルエーテル、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテルなど、オレフィンモノマー(中でもエチレン、ブテン、ヘキセン、及び1−オクテンを挙げることができる)、並びにまたフルオロオレフィンモノマー、及びビニリレンモノマー(中でもフッ化ビニリデンを挙げることができる)を、単独で又は少なくとも2つの上記のモノマーの混合物として挙げることができる。
【0048】
本発明は、ホスト材料の存在下又は非存在下で本発明の方法にしたがって得られる方法により得られる、ブロック又は非ブロックのポリマー又はコポリマーにも関する。
【0049】
本発明は、この低温度合成法の使用の用途にも関する。この方法は、使用温度が低い又は中程度のままである多数かつ様々用途に適合し得る。
【0050】
特に、本発明は、重合温度が使用温度と一致するので、ニス、3D印刷、コーティング、結合剤、及び接着剤、プラスチック及び複合材料の機械的補強などの用途に有利に適している。
【0051】
本発明は、本発明の方法の使用によって生じる独特の特性の結果として本発明の方法により得られるポリマー又はコポリマーを含むホスト材料にも関し、本発明の方法を使用して、特に本発明の主題である多量のコポリマーをホスト材料中に取り込むことを可能にする。
【実施例】
【0052】
実施例1:
アルコキシアミンDIAMINSの合成:
1.25リットルのエタノール、300gのBlocbuilder(登録商標)(Arkema)、及び100gのジアクリル酸ブタンジオールを2.5リットルの反応器中に入れる。混合物を撹拌しながら80℃で4時間加熱する。次いで反応混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターを使用してエタノールを蒸発させて除く。480gのDIAMINSが定量的に得られる。
【0053】
実施例2:
ポリアルコキシアミンの合成
羽根車撹拌機、油の循環によって加熱するためのジャケット、及び真空/窒素入口を備えた2リットルの金属反応器中に、以下を入れる:
・ 301gのアクリル酸ブチル
・ 49gのスチレン
・ 7.7gのDIAMINS。
【0054】
試薬を導入した後、反応混合物を真空/窒素下で3回脱気する。次いで反応器を閉め、撹拌(50rpm)及び加熱(公称温度:125℃)を開始する。反応混合物の温度は約30分で113℃に到達する。圧力は約1.5barで安定する。反応器温度を115℃のステージで522分維持する。冷却後、固体含量が67%である340gの混合物を回収する。次いで過剰のアクリル酸ブチルを70℃において減圧下で3時間蒸発させることにより除去する。得られるアクリル酸ブチル/スチレンのマクロラジカル重量比は83/17である。ブロックBのGPC分析により以下の結果を得る:Mn:35000g/mol;M
w:65000g/mol;多分散性:1.86。
【0055】
実施例3:
アルコキシアミンTRIAMINSの合成
206gのエタノール、100gのBlocBuilder(登録商標)(Arkema)、及び26.5gのトリアクリル酸ペンタエリトリトール(Sartomer SR 444D)を500mLの反応器中に入れる。混合物を撹拌しながら80℃で4時間加熱する。次いで反応混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターを使用してエタノールを蒸発させて除く。126gのTRIAMINSが定量的に得られる。
【0056】
実施例4:
マクロ開始剤CS1の合成
マクロ開始剤ポリアルコキシアミンDS1の合成
羽根車撹拌機、油の循環によって加熱するためのジャケット、及び真空/窒素入口を備えた2リットルの金属反応器中に、以下を入れる:
・ 643gのアクリル酸ブチル
・ 96gのスチレン
・ 6gのTRIAMINS。
【0057】
試薬を導入した後、反応混合物を真空/窒素フラッシュにより3回脱気する。次いで反応器を閉め、撹拌(50rpm)及び加熱(公称温度:125℃)を開始する。反応混合物の温度は約30分で113℃に到達する。圧力は約1.5barで安定する。反応器温度を115℃のステージで522分維持する。冷却後、固体含量が70%である740gの混合物を回収する。次いで過剰のアクリル酸ブチルを70℃において減圧下で3時間にわたり蒸発させることにより除去する。得られるマクロラジカルのアクリル酸ブチル/スチレン重量比は83/17である。ポリスチレン試料を使用してキャリブレーションしたGPCによるマクロ開始剤の分析により、以下の結果を得る:Mn:129000g/mol;M
w:510000g/mol;多分散性:3.9。
【0058】
実施例5:
非開始剤コポリマー(ポリアルコキシアミン)の合成
500gのアクリル酸ブチル、70gのスチレン、966gのトルエン、0.1854gのAIBN(Vazo64、DuPont社)、及び0.6gのn−ドデシルメルカプタンで構成される混合物を、当業者が一般的に使用する撹拌されたステンレス鋼反応器中に入れる。2barの窒素の圧力下に反応器を置き、85℃の温度で3時間加熱する。次いで混合物を室温(20℃)まで冷却し、次いで125℃及び100mbarの絶対圧力においてオーブンで16時間真空乾燥させる。ポリアクリル酸ブチル−co−スチレンの乾燥非開始剤コポリマーが得られる。
【0059】
実施例6:
UV下、25℃でのメタクリル酸メチルの重合。
マクロ開始剤又は非開始剤コポリマー、Lamberti社のUV開始剤Esacure TPO、及びメタクリル酸メチルモノマーを含有する混合物をガラスフラスコ中で調製する。照射時間は90分である。照射源はDr.Honle AG UV Technology社(Lochhamer Schlag1、82166 Grafelfing/Munich、ドイツ)のUVAHAND250ランプである。混合物の初期温度は室温(20℃)である。
【0060】
結果を表1に示す。百分率は質量百分率である。
【0061】
図1は、試料6b、6e、及び6cの写真を示す。
【0062】
図2の動的機械分析(DMA)は、実施例6cと6eの間の機械的挙動の差を明らかに示す。材料6cは機械的強度がなく、室温(20℃)で流動し、これは18℃におけるモジュラス値G’及びG’’の増加が反映されている。このことから、これは構造化されていないと結論づけることができる。他方で、材料6eは良好な機械的強度を維持し、これは温度範囲全体にわたってモジュラス値G’’よりも高いモジュラス値G’が反映されている。このことからこれは構造化されていると結論づけられる。
【0063】
実施例7:
UV下、0℃でのメタクリル酸メチルの重合
実施例6eが再現されるが、今度はガラスフラスコが−15℃のグリコール−水の床上に置かれる。実施例6eと同じ結果が見られ、混合物の重合及び透明ポリマーが得られる。
【0064】
実施例8
マクロ開始剤の存在下、UV下でのアクリル酸イソボルニルの重合
使用されるマクロ開始剤は実施例2により得られるものである。iBoAはアクリル酸イソボルニルである(ホモポリマーPiBoAのTgは100℃の領域内にある)。Speedcure TPO−Lは、Lambson社により流通している液体光開始剤のフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルである。
【0065】
以下の表2に示す質量組成を、室温(20℃)での磁気撹拌により均質化し、次いでシリコーン型(長さ40mm、幅30mm、及び厚さ1mmの寸法)へ注ぐ。次いで充填された型をUV−LED照射線(Phoseon Technology社により流通しているFireflyモデル、波長395nm、出力4W/cm
2)下に40秒置く。
【0066】
引張り動的機械分析は
図3において、2つの明確に異なる相に対応する2つのガラス転移温度を示しており、1つはマクロ開始剤ポリマー(Tg −11℃)と関連しており、他方はポリアクリル酸イソボルニルマトリックス(Tg 101℃)と関連している。80℃まではモジュラス値E’がモジュラス値E’’よりも高いままであるので、このことから材料が構造化されていると推測される。光透過性は、この構造化が非常に微細である(サブミクロンスケール)ことを
図4で示している。
【0067】
実施例9
マクロ開始剤の存在下、UV下でのアクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチルの重合。
使用されるマクロ開始剤は実施例2により得られるものである。SR256はSartomer社により流通しているアクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチルである(ホモポリマーのTgは−55℃の領域内にある)。Speedcure TPO−Lは、Lambson社により流通している液体光開始剤のフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルである。
【0068】
以下の表3に示す質量組成を室温(20℃)で均質化し、次いでガラススライド上へのせる。次いでこのスライドをUV−LED照射線(Phoseon Technology社により流通しているFireflyモデル、波長395nm、出力4W/cm
2)下に40秒置く。
【0069】
圧縮動的機械分析は
図5において、ポリアクリル酸(2−(2−エトキシエトキシ)エチル)について−40℃のガラス転移温度を示す。−40℃におけるこのガラス転移後に弾性率E’はモジュラス値E’’よりも高いままであり、これは構造化の存在を反映している。やはりまた、試料の光透過性は、構造化のスケールが非常に微細でサブミクロンレベルであることを裏付ける(
図6)。
【国際調査報告】