特表2017-538041(P2017-538041A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-538041炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで製造された酸化グラフェン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538041(P2017-538041A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで製造された酸化グラフェン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/00 20060101AFI20171124BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20171124BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20171124BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20171124BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20171124BHJP
【FI】
   C25B1/00 Z
   C01B32/198
   B82Y20/00
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-538283(P2017-538283)
(86)(22)【出願日】2015年9月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】CN2015089495
(87)【国際公開番号】WO2016058466
(87)【国際公開日】20160421
(31)【優先権主張番号】201410538019.1
(32)【優先日】2014年10月13日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201510364297.4
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517128983
【氏名又は名称】シィー,ハイブォ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(72)【発明者】
【氏名】シィー,ハイブォ
【テーマコード(参考)】
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB07
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC16B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146BA01
4G146BA42
4G146BC01
4G146BC18
4G146BC19
4G146BC50
4G146CA03
4G146CA11
4G146CA15
4G146CB12
4G146CB13
4G146CB32
4K021AA09
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB03
4K021DA13
(57)【要約】
本発明は、炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで製造された酸化グラフェン及びその製造方法を提供する。当該方法において、一方の炭素系三次元材料を一極として、他方の炭素系三次元材料又は不活性材料を他極として、それぞれ直流電源の両極と接続し、少なくとも一極の炭素系三次元材料の一方の端面が、作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する。通電電解して、作業面としての端面の作業区間は、前記電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある。前記端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、端面におけるグラファイトシート層は、酸化グラフェンに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、酸化グラフェンを含有する電解質溶液が得られる。当該方法はより高い酸化膨張解離及び切断能力を有し、低エネルギー消費と汚染のない前提の下で、層数がより低く、粒子径分布がより均一で高品質の酸化グラフェンを得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の炭素系三次元材料を一極として、他方の炭素系三次元材料又は不活性材料を他極として、それぞれ直流電源の両極と接続し、そのうち、少なくとも一極の炭素系三次元材料の一方の端面が、作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する工程、
その後通電を始め、通電電解する間に、前記作業面としての端面の作業区間が、前記電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある工程、
前記端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、少なくとも一極の炭素系三次元材料の端面におけるグラファイトシート層が、酸化グラフェンに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散され、酸化グラフェンを含有する電解質溶液が得られる工程、
を含む、炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することにより酸化グラフェンを製造する方法。
【請求項2】
ただ一極の炭素系三次元材料の一方の端面のみが作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する時に、他極の炭素系三次元材料又は不活性材料の全体又は一部が前記電解質溶液に浸漬する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面はいずれも作業面として、いずれも前記電解質溶液の液面と平行して接触し、両極の炭素系三次元材料は、同じ種類又は異なる種類の材料である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素系三次元材料は、天然グラファイト又は人工グラファイトより製造されたグラファイトシート、紙、板、糸、管、棒;炭素繊維トウおよびそれで編んだ構造物であるフェルト、布、紙、縄、板、管のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の電解質溶液の液面と平行して接触する炭素系三次元材料の端面は、前記炭素系三次元材料の微視的グラファイトシート層二次元配向のうち一つとの夾角が60−90°である巨視的表面である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気化学的酸化方式は、ただ一極の炭素系三次元材料の一方の端面のみをずっと陽極作業面として、或いは交互に循環して陽極、陰極作業面として、電解過程において、直流電源の動作電圧が80Vを超えず、前記端面に対する動作電流密度が+又は±1〜300A/cm(但し、符号+は、陽極電流密度を表し、符号±が交互循環過程における陽極と陰極電流密度を表す)であり、そして、交互循環電解過程において、交互して陽極又は陰極とする動作電流密度が同じであり又は異なる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電気化学的酸化方式は、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面がいずれも作業面として、両端面が交互に循環して、それぞれ陽極又は陰極作業面として、電解過程において、直流電源の動作電圧が100Vを超えず、各端面に対する動作電流密度が±1〜300A/cm(但し、符号±は、交互循環過程における陽極と陰極電流密度を表す)であり、そして、交互循環電解過程において、交互して陽極又は陰極とする動作電流密度が同じであり又は異なる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
トウ状炭素繊維を陽極として、不活性電極を陰極として、それぞれ直流電源の正極、負極と接続する工程、
前記不活性電極を電解質溶液に浸漬する工程、
炭素繊維陽極の作業面は揃ったトウ先端面からなり、通電する前に炭素繊維先端面を前記電解質溶液の液面と平行して接触させる工程、
その後通電を始め、通電する間に、炭素繊維先端面の作業区間が電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある工程、
炭素繊維先端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素繊維先端面における微結晶グラファイトシート層が、グラフェン量子ドットに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散され、グラフェン量子ドット溶液が得られる工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維及びグラファイト繊維のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素繊維は微結晶グラファイトシート層からなり、前記微結晶グラファイトシート層の三次元サイズが10−100nmであり、前記微結晶グラファイトシート層配向が炭素繊維軸配向に対して60%以上であり、そして、前記炭素繊維は高温炭化によって得られた導電性炭素繊維であり、トウのモノフィラメント直径が1−15μmである請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記直流電源の動作電圧が80V以下であり、炭素繊維先端面に対する動作電流密度が1−30A/cmであり、前記直流電源は定電圧又は定電流出力制御方式である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記電解質溶液がイオン導電能力を有する溶液であり、且つ当該電解質溶液の導電率が10mS/cm以上である請求項1又は8に記載の方法。
【請求項13】
物理及び/又は化学方法によって前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液及び/又は前記グラフェン量子ドット溶液を分離することにより、その中の電解質及び不純物を除去し、酸化グラフェンを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態の酸化グラフェン、及び/又はグラフェン量子ドットを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態のグラフェン量子ドットを得る工程も含む請求項1又は8に記載の方法。
【請求項14】
前記物理及び/又は化学方法は、ろ過、真空乾燥、凍結乾燥、遠心分離、透析、蒸留、抽出、及び化学沈殿のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液及び/又は前記グラフェン量子ドット溶液を、真空ろ過及び/又は透析処理することにより、生成物の粒子径分布をさらに狭くする工程を更に含む請求項1又は8に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化グラフェン及び/又は前記グラフェン量子ドットに対して、液相化学的還元、電気化学的還元、熱還元、紫外線照射還元、マイクロ波還元、活性金属還元及び気相還元のうちの一種又は複数種の処理をすることにより、炭素/酸素原子比をさらに向上させる工程を更に含む請求項1又は8に記載の方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法により製造されて得られた酸化グラフェン。
【請求項18】
酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板を含み、そのうち酸化グラフェン量子ドットは厚さが1−10個の1原子層であり、粒子径が1−100nmである酸化グラフェン量子ドットであり、酸化グラフェン微小板は厚さが1−30個の1原子層であり、粒子径が101nm−10μmの酸化グラフェン微小板であり、前記酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板における炭素と酸素及び/又は窒素との原子比が1:1−25:1である請求項17に記載の酸化グラフェン。
【請求項19】
請求項8乃至16のいずれかに記載の炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法により製造されて得られたグラフェン量子ドットであって、1−10層であり、粒子径が1−100nmであるグラフェン量子ドットであり、その炭素/酸素原子比が2:1−20:1であるグラフェン量子ドット。
【請求項20】
窒素ドープを含有し、窒素原子比含有量が1−6%である請求項19に記載のグラフェン量子ドット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ材料技術分野に属し、具体的に炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することにより酸化グラフェンを製造する方法、並びに当該方法により製造されて得られた酸化グラフェンに関するものである。また、より具体的に炭素繊維先端面を電気化学的酸化切断することにより(酸化)グラフェン量子ドットを製造する方法に関し、さらに、異なるナノサイズ、異なる炭素/酸素比、及び異なる特性を有する一連の(酸化)グラフェン量子ドットを得るものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子からspハイブリッド軌道により構成され、二次元(2D)六角形で、蜂の巣のような格子構造をとっている平面単層であり、また、他の次元の全てのグラファイト材料の基本構築モジュールである。グラフェンは、0次元(0D)のフラーレンに包装されることができるし、一次元(1D)のナノチューブに巻かれ、或いは三次元(3D)のグラファイトに積み重ねられることもできる。グラフェンは、現在、世界中で最も薄いが最も硬いナノ材料であり、ほとんど完全に透明であり、2.3%の光しか吸収しない。熱伝導率が5300 W/m・Kと高く、カーボンナノチューブと金剛石より高く、常温下の電子移動度が15000 cm/V・sを超え、カーボンナノチューブ又はシリコン結晶よりはるかに高い。それに、その抵抗率がただ10−6 Ω・cmのみであり、銅又は銀よりさらに低く、現在世界中で抵抗率が最も低い材料である。極めて低い抵抗率、及び極めて速い電子輸送速度により、導電速度がより速い新世代の電子部品やトランジスタの開発が期待されている。グラフェンは、実質的に透明で良好な導体でもあり、透明タッチパネル、光パネル、さらには太陽電池を製造するのに非常に適切である。もう一つの重要な特性として、グラフェンは常温下において量子ホール効果が観察されることができるので、将来の電子デバイスの発展のために特別な役割を果たし、そして低エネルギー消費の高速電子デバイスの製造に用いられることについて、その分野における鋭意検討がされている。
【0003】
酸化グラフェンはグラフェンの酸化物であり、グラフェンと同様のように1原子層の厚さを持つ、但し、炭素基面及び/又は縁に大量の他のヘテロ原子官能基が含まれる。炭素基面の二次元サイズに応じて、1−100nmの酸化グラフェンが酸化グラフェン量子ドットであり、100nmより大きい酸化グラフェンが酸化グラフェン微小板であるのように分けられる。厚さが2−10個の1原子層の厚さである場合、少層酸化グラフェン量子ドット又は微小板と称される。厚さが11−100個の1原子層の厚さである場合、多層酸化グラフェン量子ドット又は微小板とも称される。記載を容易にするために、特に断りのない限り、これらを酸化グラフェンと総称する。
【0004】
酸化グラフェンは、性能に優れた新型炭素材料であり、比較的高い比表面積および豊富な表面官能基をもつ。酸化グラフェン微小板は、非伝統形態の軟性材料と見なされ、重合体、コロイド、薄膜、および両性分子の特性を備える。酸化グラフェン微小板は、従来から親水性物質と見なされ、それが水において優れた分散性を有するからである。しかしながら、関連実験結果から分かるように、酸化グラフェン微小板は、実際に両親性を有し、酸化グラフェン微小板の縁から中央まで親水から疎水への性質分布を呈する。従って、重合体系複合材料及び無機物系複合材料を含む酸化グラフェン微小板複合材料の製造に広く使用され、エネルギー、電子、バイオ医薬、触媒などの分野でいずれも潜在的な応用価値を持っている。
【0005】
酸化グラフェン量子ドットを含むグラフェン量子ドット(Graphene quantum dot,GQD)は、準ゼロ次元のナノ材料であり、その内部電子の各方向における運動も制限されているので、量子局在効果が特に顕著であり、多くの特有の性質をもつ。伝統の半導体量子ドットに比べて、新型のグラフェン量子ドットは、以下のような特有の性質をもつ。1)カドミウム、鉛などの高毒性の金属元素を含まず、環境にやさしい量子ドット材料である。2)構造が非常に安定であり、強酸、強アルカリに耐えられ、光腐食に耐えられる(伝統の半導体量子ドットが光電気化学デバイスに応用される時、光酸化しやすく、これにより、性能低下および低いデバイス寿命となる)。3)厚さは1原子層のように薄くなることが可能であり、横向きのサイズは一つのベンゼン環のサイズに減少されることが可能であるが、高度の化学安定性を維持することができる。4)バンドギャップ幅範囲は調整可能であり、原則的に量子局在効果および境界効果により0−5eV 範囲内で調節することができ、これによって、波長範囲を赤外領域から可視光及び深紫外領域に広げ、各技術における材料エネルギーギャップ及び固有波長に対する特別な要求を満たすようにする。5)表面機能化の実現が容易となり、通常の溶媒に安定に分散することができ、材料の低コストの加工処理の需要を満たす。これは、電子工学、光電学、及び電磁学の分野に革命的な変化をもたらす可能性がある。それを、太陽電池、電子設備、光学染料、バイオマーカー及び複合微粒子システムなどに応用できる。グラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)は、生物、医学、材料、新型半導体デバイスなどの分野において重要な潜在的な応用を有する。それは、単一分子センサーを実現できるし、超小型トランジスタ或いは半導体レーザーによるオンチップ通信を促進することもでき、化学センサ、太陽電池、医療イメージングデバイス又はナノスケール回路などの製造に用いられる。
【0006】
酸化グラフェンにとって、現在、工業生産できる方法は化学酸化法である。当該方法では、主にグラファイト自身に存在する構造欠陥を利用し、グラファイトを原料として、強酸(例えば、濃硫酸、濃硝酸など)、強酸化剤、加熱の条件下で、層間隔がグラファイトより顕著に大きくなる酸化グラファイトが得られた後、有効な剥離手段によって1原子層の酸化グラフェンが得られる。酸化グラファイトの製造について、1860年に既に報告された。その後、研究者達は、強酸化条件を探索することで、いくつかの異なる方法を開発した。主にBrodie法、Staudenmaier法及びHummers法などがある。現在、最も一般的に使用される方法は、改良されたHummers法であり、即ち、予備酸化、酸化の2ステップで酸化グラファイトを得る。酸化グラファイトを製造した後、酸素含有官能基の導入によりグラファイトシート層間の距離が顕著に大きくなるが、一部のファンデルワールス力でいくつかのシート層を接続することもある。そのため、単層の酸化グラフェン生成物を得るために、所定の外力を加える必要もあり、即ち、所定の剥離手段によってこのような層間の作用力を解消しなければならない。現在報道された酸化グラファイトを剥離するための方法は、主に熱膨張法、低温剥離法、超音波分散法などがあり、その中、超音波分散法は、操作が簡単であり、剥離過程において化学変化が生じることがなく、剥離程度が相対的に高く、そして、超音波時間や超音波パワーを簡単に制御することで生成物シート層のサイズを大体制御できるなどのメリットがあるので、最も広く応用されている。
【0007】
サイズの観点から、グラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)と、グラフェン及び酸化グラフェン微小板との一致点は、厚さの点ではいずれも単層又は少層(10層を超えず、各層の厚さが0.34−0.40nm程度である)である。相違点は、平面配向におけるサイズが異なることにあり、前者が100nm未満であり、後者がミクロンスケールサイズ以上である。前者の製造難点は、如何により小さいナノスケール量子ドットを得るかにあり、後者の製造難点は、層数の制御にある。それにより、両者は、原料の選択及び製造方法において大いに異なっている。例えば上から下への製造方法に対して、原料の点において、前者に微結晶の炭素材料が用いられるとより有利である。例えば、炭素繊維の微結晶サイズはただ数十ナノメートルのみであり(非特許文献1)そのため、解離方法が適切であれば、容易にグラフェン量子ドットが得られる。製造方法の難点は、如何に出来るだけ各微結晶も体相から独立的に切り出すかにあり、単層サイズを得ることについては、相対的に容易である(微結晶フレーク径及び厚さがただ数十ナノメートルだけであることに基づき、層間ファンデルワールス力が比較的に小さい)。後者に、高度グラファイト化された大きいシート層結晶構造を有する炭素材料が用いられるとより有利である。例えば、鱗片状グラファイトにとって、製造方法の難点は、如何に出来るだけ各シート層も結晶相から独立的に切り出すかにあり(大きいサイズのグラファイト結晶の層間ファンデルワールス力が比較的に大きいことに基づき)、平面配向の大きいサイズを得ることについては、相対的に容易である。
【0008】
現在、多くの中国国内および外国企業も、キログラムレベル、及びトンレベルでの酸化グラフェン製品が量産できることを発表した。これらの量産技術に関して、通常強酸、強酸化剤の化学法によって膨張グラファイトを処理し、その目的はグラファイトの酸化膨張を実現するためであり、相違点は、この過程の実施形態及び段階において他の技術と複合する可能性があることにあり、Brodie、Staudenmaier及びHummersなどの化学法の改良技術である。強酸、強酸化剤などの化学品を大量使用すると、汚染が高く、品質が悪くなる。層数及びフレーク径サイズの分布範囲が広すぎて、大きすぎて、分散及び安定性が劣り、適用時の制御可能性が悪いことを直接的に招く。また、非特許文献2及び非特許文献3、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5を含む一般的な電気化学的剥離方法も採用される。一般的な電気化学的製造方法には、小さい動作電流密度、及び不均一な電流分布との問題があるため、加工処理時間がかかり、生成物の純度と品質が低く、層数及び粒子径分布範囲が広く、後期に繁雑な純化工程が必要であり、製品生産率が高くないようになる。
【0009】
さらに、現在既存の上から下への製造方法により得られた製品は、通常、主に大きいサイズの少層又は多層グラフェンである(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8における製造方法)。また、下から上への製造方法により、大きいサイズの単層グラフェンが比較的容易に得られ、例えばCVD化学蒸着方法(例えば、特許文献9における製造方法)のようであり、ただし、大量製造が難点である。
【0010】
以下、主に材料学の点から、上から下へ及び下から上への構想に従い、既存のグラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)の製造方法を重点的に紹介する。
【0011】
上から下への方法とは、物理的または化学的方法によって大きいサイズのグラフェン薄片を小さいサイズのグラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)に切断するものである。特許文献10は、ソルボサーマル法により蛍光グラフェン量子ドットを製造する方法を開示しており、当該方法では、まず酸化グラフェンを製造し、その後ソルボサーマルで酸化グラフェンを量子ドットに切断する。特許文献11はグラフェン量子ドットを製造する方法を開示しており、当該方法では、水熱切断過程においてアミン類不活性化剤を加える。これらの二種類の方法は、高熱、高エネルギー、低生産量の短所を有する。特許文献12は、光触媒酸化による酸化グラフェン量子ドットの製造方法を開示しており、当該方法では、超音波、オキシドールおよび触媒の作用により、紫外線照射を組み合わせて、酸化グラフェン量子ドットを製造する。この方法により製造された量子ドットは分布が高められたが、高い生産量で製造することが困難であり、それに量子ドット形状とエッジ形状を制御することが困難である。非特許文献2及び非特許文献3の研究において、電気化学的剥離により水溶性が良いグラフェン量子ドットが製造されており、原材料であるグラファイトの前期処理作業は時間がかかり、後期純化工程も時間がかかり、製品の生産率が高くない。特許文献13では、紫外線エッチングによりドライ法でグラフェン量子ドットを製造する方法を開示しており、紫外線でマイカシート上のグラフェンをエッチングすることでグラフェン量子ドットが得られるが、放射線が使用され、エネルギー消費量が大きく、製造量が小さいという短所を有する。非特許文献4において、電子ビームにより得られたグラフェンをエッチングすることでグラフェン量子ドットを製造する。それらの方法は、いずれも酸化還元を経て、さらに切断し、多数のステップで行われるものであるため、製造過程が繁雑で、周期が長く、生産量が低く、そして条件が過酷であるため、普及することが困難である。特許文献14は、グラフェン量子ドット粉体を大量製造する方法を開示しており、天然鱗片状グラファイトから出発し、第一ステップでは、天然鱗片状グラファイトをグラファイトナノ粒子に変換し、第二ステップでは、グラファイトナノ粒子を一次インターカレーションナノ酸化グラファイトに変換し、第三ステップでは、一次インターカレーションナノ酸化グラファイトを非密封された蓋ありるつぼに置き、空気中で熱処理することでグラフェン量子ドット粉体が得られる。第二ステップでは、大量の強酸と強酸化剤が使用され、製造過程が全体として複雑であり、時間がかかり、汚染が深刻であり、粒子径と層数分布の制御が悪い。そして、第三ステップにおける熱処理により、生成物の親水性が悪くなる。さらに、微結晶炭素材料を炭素源とする製造方法も采用されている。非特許文献5において、炭素繊維を炭素源として使用し、酸処理によって繊維中で積み重ねるグラファイトを剥離し、1ステップだけで、粒子径分布が異なる大量のグラフェン量子ドットが製造できる。当該方法は、工程が簡単であり、そして原料が安価である長所を有するが、以下の短所もある。即ち、製造過程では大量の硫酸と硝酸が使用され、時間が掛かり、汚染が深刻であり、そして粒子径分布範囲がとても広く、続く透析分離処理によってより小さい粒子径を得る必要があり、有效な製造生産率が低くなる。非特許文献6において、原料として30nmのカーボンブラック粒子を使用し、HNOにおいて長時間高温還流した後、遠心分離により二種類のサイズのグラフェン量子ドットが得られる。しかしながら、カーボンブラック原料の構造が複雑であり、非sp構造が多いため、得られた量子ドットの欠陥が多くなり、製品の品質が悪くなる。
【0012】
下から上への方法とは、小分子を前駆体として一連の化学反応によりグラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)を製造するものである。特許文献15は、多色蛍光グラフェン量子ドット材料の製造方法を開示しており、前駆体としてピレンを選択し、低温下でピレン結晶粒の表面を酸素機能化した後、触媒としてのヒドラジン水和物及びアンモニア水の作用の下で、低温の水熱脱水素、成長及びin−situ表面機能化を行う。要するに、下から上への方法は、ほとんど制御可能性が比較的強いが、工程が繁雑で操作が面倒であり、生産率が比較的に低く、現在では、工業的な大量生産に適する合成法はまだ存在しない。
【0013】
以上を纏めると、高品質の酸化グラフェン(高品質の酸化グラフェン量子ドットを含む)の製造方法を開発することは、相変わらずナノ材料技術分野における解決すべき肝心な問題である。
【0014】
上記した技術問題を解決するために、本発明の目的は、炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで製造された酸化グラフェン及びその方法を提供することにある。本発明の酸化グラフェン製造方法は、従来の化学酸化法及び電気化学的製造方法に比べて、より高い酸化膨張解離及び切断能力を有し、低エネルギー消費と汚染のない前提の下で、層数がより低く、粒子径分布がより均一で高品質の酸化グラフェンを得ることができる。発明を実施するための形態において、層数がより低く、粒子径分布がより均一で、サイズがより小さい酸化グラフェン量子ドット、並びに還元状態のグラフェン(グラフェン量子ドット及び/又はグラフェン微小板)も製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】中国特許出願公開第102534642号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第102963887号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第103451670号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第102807213号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第103991862号明細書
【特許文献6】米国特許第7,658,901号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第103935999号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第101634032号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/0110627号明細書
【特許文献10】中国特許出願公開第102660270号明細書
【特許文献11】中国特許出願公開第102616774号明細書
【特許文献12】中国特許出願公開第102336404号明細書
【特許文献13】中国特許出願公開第102208755号明細書
【特許文献14】中国特許出願公開第103265020号明細書
【特許文献15】中国特許出願公開第103320125号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】賀福編、「炭素繊維及石墨繊維」、化学工業出版社、北京、2010年
【非特許文献2】Chem. Eur. J. “Electrochemical preparation of luminescent graphene quantum dots from multiwalled carbon nanotubes”(2012)
【非特許文献3】J. Mater. Chem. “Facile synthesis of water-soluble, highly fluorescent graphene quantum dots as a robust biological label for stem cells”
【非特許文献4】Nano Letterにて発表“Graphene quantum dots at room temperature carved out from few-layer graphene”(2012)
【非特許文献5】Nano Letterにて発表“Graphene quantum dots derived from carbon fibers”(2012)
【非特許文献6】J. Mater. Chem.にて発表“One-step and high yield simultaneous preparation of single-and multi-layer graphene quantum dots from CX-72 carbon black”(2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的を達成するために、本発明は、
一方の炭素系三次元材料を一極として、他方の炭素系三次元材料又は不活性材料を他極として、それぞれ直流電源の両極(即ち、正極と負極)と接続し、そのうち、少なくとも一極の炭素系三次元材料の一方の端面が、作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する工程、
その後通電を始め、通電電解する間に、前記作業面としての端面の作業区間が、前記電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mm(負値は、液面の下方にあることを表し、正値は、液面の上方にあることを表し、作業の時溶液液面の上昇現象が生じるため、正値が現れる)の範囲内にある工程、
前記端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、少なくとも一極の炭素系三次元材料の端面におけるグラファイトシート層が、酸化グラフェンに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散され、酸化グラフェンを含有する電解質溶液が得られる工程、
を含む、炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することにより酸化グラフェンを製造する方法を提供する。
【0018】
上記した方法において、好ましくは、前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液において、酸化グラフェンの濃度が0.01−100mg/mLである。
【0019】
上記した方法において、ただ一極の炭素系三次元材料の一方の端面のみが作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する時に、他極の炭素系三次元材料又は不活性材料の全体又は一部が前記電解質溶液に浸漬する。両極の炭素系三次元材料は、同じ種類又は異なる種類の材料である。
【0020】
上記した方法において、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面はいずれも作業面として、いずれも前記電解質溶液の液面と平行して接触してもよく、両極の炭素系三次元材料は、同じ種類又は異なる種類の材料でもよい。
【0021】
上記した方法において、選択された炭素系三次元材料は、グラファイト層状構造を含有し、規則形状を有する構造物であり、好ましくは、前記炭素系三次元材料は、天然グラファイト又は人工グラファイトより製造されたグラファイトシート、紙、板、糸、管、棒;炭素繊維トウおよびそれで編んだ構造物であるフェルト、布、紙、縄、板、管などの中の一種または複数種の組み合わせを含む。
【0022】
上記した方法において、好ましくは、前記の作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する炭素系三次元材料の端面は、前記炭素系三次元材料の微視的グラファイトシート層二次元配向のうち一つとの夾角が60°以上(より好ましくは60−90°である)である巨視的表面である。
【0023】
上記した方法において、好ましくは、前記電気化学的酸化方式は、ただ一極の炭素系三次元材料の一方の端面のみをずっと陽極作業面として、或いは交互に循環して陽極、陰極作業面とする(同時に、一方の炭素系三次元材料又は不活性材料を他極として、他極の全体又は半分を電解質溶液に浸漬又は浸漬する)。電解過程において、直流電源の動作電圧が80Vを超えず、前記端面に対する動作電流密度が+又は±1〜300A/cm(但し、符号+は、陽極電流密度を表し、符号±は、交互循環過程における陽極と陰極電流密度を表す)である。交互循環電解過程において、交互して陽極又は陰極とする動作電流密度が同じでも異なっていてもよい。
【0024】
上記した方法において、好ましくは、前記電気化学的酸化方式は、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面がいずれも作業面として、両端面が交互に循環して、それぞれ陽極又は陰極作業面とする。電解過程において、直流電源の動作電圧が100Vを超えず、各端面に対する動作電流密度が±1〜300A/cm(但し、符号±は、交互循環過程における陽極と陰極電流密度を表す)である。交互循環電解過程において、交互して陽極又は陰極とする動作電流密度が同じでも異なっていてもよい。
【0025】
上記した製造過程において、一方の炭素系三次元材料を陽極として、他方の炭素系三次元材料又は不活性電極を陰極として、それぞれ直流電源の正極、負極と接続する。通電する前に、少なくとも陽極としての炭素系三次元材料の一方の端面を電解質溶液の液面と平行して接触させる(端面が溶液に入る許容誤差を液面に対して5mm未満とする)。通電した後、表面張力と電極表面で生じる泡の機械的作用の下で、液面上昇が生じることにより、炭素系三次元材料端面が通電前の電解液液面の上方にあるように作業してもよい。通電する間に、炭素系三次元材料端面の作業区間は、電解液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある。炭素系三次元材料端面が上記した通電液面移動作業区間にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素系三次元材料端面における微視的グラファイトシート層は、酸化グラフェンに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散される。又、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面を全て作業面として、いずれも前記電解質溶液の液面と平行して接触した後、通電反応してもよい。両極の極性を交換した後、通電反応することにより、一極の炭素系三次元材料の一方の端面、或いは両極の炭素系三次元材料の両端面を、交互に循環して陽極、陰極作業面としてもよい。
【0026】
上記した製造過程において、一方の炭素系三次元材料の端面を、交互に循環して陽極作業面、陰極作業面とする効果は以下のとおりである。即ち、炭素系三次元材料の酸化、還元、再酸化という循環処理を実現でき、上記した単独の酸化過程に比べて、酸化切断深さに対する制御を達成できるという長所を有するが、生産効率がやや低いという短所を有する。この短所を補うために、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面を全て作業面として、いずれも前記電解質溶液の液面と平行して接触させ、両端面を交互に循環してそれぞれ陽極又は陰極作業面とする。その効果は以下のとおりである。即ち、両極炭素系三次元材料の同時の酸化、還元、再酸化という循環処理を実現でき、上記した一極の交替酸化還元処理過程に比べて、生産効率が高いという長所を有するが、両極の作業面積がいずれも小さいので、生産のエネルギー消費量が高いという短所を有する。より具体的に、炭素系三次元材料の端面を陰極作業面とする時、それが還元反応を生じることにより、酸化されたグラファイトシート層を還元することができ、その後交互して陽極作業面として、さらに酸化過程により解離及び切断することで、酸化切断深さに対する制御を達成できる。
【0027】
上記した方法において、前記酸化グラフェンは酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板を含み、好ましくは、そのうち酸化グラフェン量子ドットは、厚さが1−10個の1原子層であり、粒子径が1−100nmである酸化グラフェン量子ドットであり、酸化グラフェン微小板は厚さが1−30個の1原子層であり、粒子径が101nm−10μmの酸化グラフェン微小板である。
【0028】
上記した方法において、好ましくは、前記酸化グラフェン(即ち、酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板)は、炭素と酸素及び/又は窒素との原子比が1:1−25:1(即ち、炭素原子数:酸素及び/又は窒素原子数)である。
【0029】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、上記した方法は、具体的に、炭素繊維先端面を電気化学的酸化切断することにより(酸化)グラフェン量子ドットを製造する方法を含むことができ、当該方法は以下の工程を含む。
トウ状炭素繊維(モノフィラメント又はマルチフィラメント)を陽極として、不活性電極を陰極として、それぞれ直流電源の正極、負極と接続する;
前記不活性電極を電解質溶液に浸漬する(全体浸漬又は一部浸漬してもよい);
炭素繊維陽極の作業面は揃ったトウ先端面からなり、通電する前に炭素繊維先端面を前記電解質溶液の液面と平行して接触させる;
その後通電を始め、通電する間に、炭素繊維先端面の作業区間が電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mm(好ましくは−3mm〜5mm)の範囲内にある;
炭素繊維先端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素繊維先端面における微結晶グラファイトシート層は、グラフェン量子ドット(即ち、酸化グラフェン量子ドット)に電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散され、グラフェン量子ドット溶液(即ち、酸化グラフェン量子ドット溶液)が得られる。
【0030】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造方法において、好ましくは、採用された原料炭素繊維は微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが10−100nmであり、微結晶グラファイトシート層配向が繊維軸配向に対して60%以上であり、高温炭化によって得られた種々の形状の導電性炭素材料であり、トウのモノフィラメント直径が1−15μmである。微結晶グラファイトシート層のサイズが小さく、続く電気化学的酸化切断作用に有利であり、1−10層、粒子径1−100nmの(酸化)グラフェン量子ドットに解離されることができる。高配向は、電気化学的切断過程による酸化グラフェン量子ドットのサイズ及び形状に対する制御に有利である。高温炭化によって得られた炭素繊維は、導電性が良く、電気化学的酸化切断過程に必要な電子輸送に有利であり、製造過程における発熱現象を減少することにも有利である。トウ状形態は、より均一な電流分布に有利であり、電流を各微結晶構造に直接に作用させることで快速の酸化切断過程を完成することにも有利である。そして、規則形態は繊維の制御不能な断線を防止することができ、生成物の有効生産率を向上させることにも有利である。
【0031】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造過程において、トウ状炭素繊維を陽極として、不活性電極を陰極として、それぞれ直流電源の正極、負極と接続する。その中、不活性電極を電解槽の電解質溶液に全体浸漬する。炭素繊維陽極作業面は揃ったトウ先端面からなり、通電する前に炭素繊維先端面を電解質溶液の液面と平行して接触させる(先端面が溶液に入る許容誤差は、液面に対して3mm未満である)。通電した後、表面張力と陽極酸化によって生じる泡の機械的作用の下で、液面上昇が生じることにより、炭素繊維先端面も通電前の電解質溶液の液面の上方にあるように作業してもよい。通電する間に、炭素繊維先端面の作業区間は、電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mm(好ましくは−3mm〜5mm)の範囲内にある。炭素繊維先端面が上記した通電液面移動作業区間にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素繊維先端面における微結晶グラファイトシート層は、1−10層であり、粒子径1−100nmである酸化グラフェン量子ドットに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、そして電解質溶液に分散される。さらに酸化グラフェン量子ドットと溶液を分離し、コロイド状態又は固体状態の酸化グラフェン量子ドットを得ることもできる。
【0032】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造方法において、好ましくは、前記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維及びグラファイト繊維などのうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。
【0033】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造方法において、好ましくは、前記電気化学的酸化切断過程における電気化学の制御パラメータは以下のとおりである。直流電源の動作電圧は80V以下であり、炭素繊維先端面に対する動作電流密度は1−30A/cmであり、動作電流密度の要求を満たす条件下で、直流電源は定電圧又は定電流出力制御方式でもよい。直流動作電圧は十分な動作電流を出力する要求を満たすためのものである。炭素繊維先端面における動作電流密度が低いと、酸化切断能力が低減し、効率が低いだけではなく、製品の品質にも影響を及ぼす。動作電流密度が高いと、酸化切断能力を向上させることができるが、高すぎると炭素繊維のアブレーションになり、溶液温度が大いに上昇し、ひいては大量分解して、生産率が下がり、エネルギー消費量が増加し、さらに製品の品質に影響を及ぼす。
【0034】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造方法において、好ましくは、前記の1−10層で、粒子径1−100nmの(酸化)グラフェン量子ドットの生産率は90%以上である。(ここでは、生産率とは、反応物としての炭素系三次元材料のうち有効に目的生成物としての酸化グラフェンに転換されることができる部分の質量と炭素系三次元材料の初期質量との比である。)
【0035】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造方法において、好ましくは、製造された(酸化)グラフェン量子ドットの炭素/酸素原子比が2:1−20:1である。
【0036】
上記した酸化グラフェン量子ドットの製造方法において、好ましくは、原料としてポリアクリロニトリル系炭素繊維を用いる時、得られた(酸化)グラフェン量子ドットに窒素ドープが含有され、窒素原子比含有量(原子個数含有量)が1−6%である。
【0037】
上記した酸化グラフェン製造方法及びそれに具体的に含まれる酸化グラフェン量子ドットの好ましい製造方法において、好ましくは、前記電解質溶液がイオン導電能力を有する溶液であり、且つ当該電解質溶液の導電率が10mS/cm以上である。溶液の導電率が低すぎると、電気化学的加工効率が下がり、溶液温度の上昇が速すぎるようになり、エネルギー消費量が増加し、製品の品質が落ちる。
【0038】
上記した酸化グラフェン製造方法及びそれに具体的に含まれる酸化グラフェン量子ドットの好ましい製造方法において、前記不活性材料は電解質溶液による腐食に耐える導電性材料であり、好ましくは、前記不活性材料はステンレス、チタン、白金、ニッケル基合金、銅、鉛、グラファイト及びチタン基酸化物などのうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。
【0039】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、上記した酸化グラフェン製造方法及びそれに具体的に含まれる酸化グラフェン量子ドットの好ましい製造方法は、さらに以下の工程を含む。物理及び/又は化学方法によって前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液及び/又は前記(酸化)グラフェン量子ドット溶液を分離することにより、その中の電解質及び不純物などを除去し、酸化グラフェンを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態の酸化グラフェン、及び/又は(酸化)グラフェン量子ドットを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態の(酸化)グラフェン量子ドットを得る。その中、有機溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、N−2−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドのうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。より好ましくは、前記物理及び/又は化学方法は、ろ過、真空乾燥、凍結乾燥、遠心分離、透析、蒸留、抽出、及び化学沈殿などのうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。
【0040】
より具体的に、上記した酸化グラフェン製造方法は、さらに以下の工程を含む。物理及び/又は化学方法によって前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液を分離することで、その中の電解質及び不純物などを除去し、酸化グラフェンを含有する水又は有機溶液或いは固体状態の酸化グラフェンを得る。その中、有機溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、N−2−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドのうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。より好ましくは、前記物理及び/又は化学方法は、ろ過、遠心分離、透析、蒸留、抽出、及び化学沈殿などのうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。上記した酸化グラフェン量子ドットの好ましい製造方法は、さらに以下の工程を含む。前記(酸化)グラフェン量子ドット溶液における(酸化)グラフェン量子ドットと液体を分離し、コロイド状態又は固体状態の(酸化)グラフェン量子ドットを得る。より好ましくは、前記(酸化)グラフェン量子ドット溶液のおける(酸化)グラフェン量子ドットと液体を分離する方法は、遠心分離、真空乾燥および凍結乾燥のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む。
【0041】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、上記した酸化グラフェン製造方法及びそれに具体的に含まれる酸化グラフェン量子ドットの好ましい製造方法は、さらに以下の工程を含む。前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液及び/又は前記(酸化)グラフェン量子ドット溶液は、真空ろ過及び/又は透析処理することにより、生成物の粒子径分布をさらに狭くする。
【0042】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、上記した方法はさらに以下の工程を含む。前記酸化グラフェン(溶液或いはコロイド状態又は固体状態)及び/又は前記(酸化)グラフェン量子ドット(溶液或いはコロイド状態又は固体状態)に対して、液相化学的還元、電気化学的還元、熱還元、紫外線照射還元、マイクロ波還元、活性金属還元及び気相還元のうちの一種又は複数種の処理をすることにより、炭素/酸素原子比をさらに向上させる。この際、還元状態のグラフェン量子ドット及び/又はグラフェン微小板が得られる。
【0043】
本発明で提供する酸化グラフェンの製造方法は、従来の電気化学的製造過程に比べて、電流をとても小さい範囲に集中作用させることができ、電流密度の均一な分布を実現し、従来の電気化学的製造方法において作用電極の異なる部分(端面、側面、溶液中、液面の所)が電流密度の不均一な分布により生じた断片、生成物形態及びサイズの違いという問題を回避できるだけではなく、極めて高いエネルギー密度を得る。従来の電気化学的製造方法に比べて、より高い酸化膨張解離及び切断能力を有するので、層数がより低く、粒子径サイズ及び分布を制御することが可能であり、快速で生産量が高い酸化グラフェン製造を実現した。
【0044】
本発明は、上記した炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法により製造されて得られた酸化グラフェンも提供する。なお、上記した方法における還元処理により炭素/酸素原子比を上げた後、還元状態のグラフェン(グラフェン量子ドット及び/又はグラフェン微小板を含む)を得る。
【0045】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、前記酸化グラフェンは酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板を含み、そのうち酸化グラフェン量子ドットは厚さが1−10個の1原子層であり、粒子径が1−100nmである酸化グラフェン量子ドットであり、酸化グラフェン微小板は厚さが1−30個の1原子層であり、粒子径が101nm−10μmの酸化グラフェン微小板である。なお、上記した方法における還元処理により炭素/酸素原子比を上げた後、得られた還元状態のグラフェン量子ドット及び/又はグラフェン微小板のサイズは、相変わらず上記した範囲内にある。
【0046】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、前記酸化グラフェン(即ち、化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板)の炭素と酸素及び/又は窒素の原子比は1:1−25:1(即ち、炭素原子数:酸素及び/又は窒素原子数)である。なお、上記した方法における還元処理により炭素/酸素原子比を上げた後、得られた還元状態のグラフェン量子ドット及び/又はグラフェン微小板の炭素と酸素及び/又は窒素の原子比は、相変わらず上記した範囲内にある。
【0047】
本発明は、上記した酸化グラフェン量子ドットの好ましい製造方法により得られたグラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)であって、1−10層であり、粒子径が1−100nmあるグラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)である、グラフェン量子ドットも提供する。
【0048】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、前記グラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)は、炭素/酸素原子比が2:1−20:1である。
【0049】
本発明を実施するための形態によれば、好ましくは、前記グラフェン量子ドット(酸化グラフェン量子ドットを含む)は、窒素ドープを含有し、窒素原子比含有量が1−6%である。
【0050】
なお、本発明に記載された「(酸化)グラフェン量子ドット」は、「酸化グラフェン量子ドット」を指す。
【0051】
以上を纏めると、本発明の酸化グラフェンの製造方法は、化学酸化法及び従来の電気化学的製造方法に比べて、より高い酸化膨張解離及び切断能力を有し、生成物の小さい粒子径、低い層数、制御可能な粒子径サイズ分布及び酸化強さを実現することができるし、原料由来が広くて安価であり、生産設備が簡単であり、製造過程が容易であり、エネルギー消費量が低く、生産効率が高く、生産率が高く、及び、汚染せず工業化量産できる、などの長所を有している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明で提供された炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法の原理模式図である。
図2】本発明で使用された炭素系三次元材料の一つの巨視的端面と微視的グラファイトシート層との間の構造関係の模式図である。
図3】本発明を実施するための形態の一つで提供された炭素繊維先端面を電気化学的酸化切断することでグラフェン量子ドットを製造する方法の原理の模式図である。
図4】本発明を実施するための形態の一つで使用された炭素繊維トウ及びそのモノフィラメント上の微結晶構造を示す模式図である。
図5図5aおよび図5bは、それぞれ実施例1で提供された酸化グラフェン量子ドットの原子間力顕微鏡画像および高さ解析曲線である。
図6】実施例1で提供された酸化グラフェン量子ドットの粒子径分布曲線である。
図7】実施例1で提供された酸化グラフェン量子ドットの蛍光スペクトルである。
図8】実施例1で提供された酸化グラフェン量子ドットの透過型電子顕微鏡図である。
図9】実施例1で提供された酸化グラフェン量子ドットの光電子スペクトルである。
図10図10aおよび図10bは、それぞれ実施例2で提供された酸化グラフェン微小板の原子間力顕微鏡画像および高さ解析曲線である。
図11】実施例2で提供された酸化グラフェン微小板の透過型電子顕微鏡図である。
図12】実施例2で提供された酸化グラフェン量子ドットの透過型電子顕微鏡図である。
図13図13aおよび図13bは、それぞれ実施例6で提供する(酸化)グラフェン量子ドットの原子間力顕微鏡画像および高さ解析曲線である。
図14】実施例6で提供された(酸化)グラフェン量子ドットの粒子径分布曲線である。
図15】実施例6で提供された(酸化)グラフェン量子ドットの紫外吸収スペクトルである。
図16】実施例6で提供された(酸化)グラフェン量子ドットの蛍光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の構成要件、目的及び有益な効果をより明瞭に理解させるために、以下に本発明の技術内容を詳しく説明し、しかしながら、本発明の実施できる範囲はここに限定されない。
【0054】
本発明で提供する炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法の原理の模式図を図1示す。好ましくは、一方の炭素系三次元材料を陽極1として、他方の炭素系三次元材料又は不活性電極を陰極2として、それぞれ直流電源3の正極、負極と接続する。その中、他極の炭素系三次元材料又は不活性材料の全部又は一部を電解槽4の電解質溶液5に浸漬又は浸漬(例えば半分浸漬)する。炭素系三次元材料陽極作業面に関して、微視的平行グラファイトシート層構造で巨視的端面6を構成する。通電する前に、当該端面6を電解質溶液の液面と平行して接触させるべきである。通電した後、表面張力と陽極で生じる泡7の機械的作用の下で、上昇液面8が現れることにより、炭素系三次元材料端面6が電解質溶液の液面の上方にあるように作業してもよい。通電する間に、炭素系三次元材料端面6の作業区間は、電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある。炭素系三次元材料端面6が上記した通電液面移動作業区間にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素系三次元材料端面6上のグラファイトシート層は、酸化グラフェン9に電気化学的酸化膨張解離及び切断され、そして電解質溶液に分散されることにより、酸化グラフェンを含有する電解質溶液が得られる。さらに、物理及び/又は化学方法によって、その中の電解質及び不純物などを除去し、酸化グラフェンを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態の酸化グラフェンを得る。その中、前記の作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する端面6は、前記炭素系三次元材料の微視的グラファイトシート層二次元配向のうち一つとの夾角が60−90°である巨視的表面である。それらの構造関係の模式図を図2を示す。さらに、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面を全て作業面として、いずれも前記電解質溶液の液面と平行して接触させた後、通電反応してもよい。両極の極性を交換した後、通電反応することにより、一極の炭素系三次元材料の一方の端面、或いは両極の炭素系三次元材料の両端面を、交互に循環して陽極、陰極作業面としてもよい。
【0055】
本発明を実施するための形態の一つにおいて、炭素繊維先端面を電気化学的酸化切断することにより(酸化)グラフェン量子ドットを製造することができる。該方法の原理の模式図を図3に示す。トウ状炭素繊維を陽極1として、不活性電極を陰極2として、それぞれ直流電源3の正極、負極と接続する。その中、不活性電極を電解槽4の電解質溶液5に全体浸漬する。炭素繊維陽極作業面は揃ったトウ先端面10からなり、通電する前に炭素繊維先端面10を電解質溶液の液面と平行して接触させる。通電した後、表面張力と陽極で生じる泡7の機械的作用の下で、上昇液面8が現れることにより、炭素繊維先端面10は電解質溶液の液面の上方にあるように作業してもよい。通電する間に、炭素繊維先端面10の作業区間は、電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mm(好ましくは−3mm〜5mm)の範囲内にある。炭素繊維先端面10が上記した通電液面移動作業区間にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素繊維先端面10上の微結晶グラファイトシート層は、1−10層で、粒子径1−100nmの(酸化)グラフェン量子ドット11に電気化学的酸化膨張解離及び切断され、そして電解質溶液に溶解されることにより、(酸化)グラフェン量子ドット溶液が得られる。その中、前記の炭素繊維トウ及びそのモノフィラメント上の微結晶構造の模式図を図4に示す。採用された原料炭素繊維は微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが10−100nmであり、微結晶グラファイトシート層配向が繊維軸配向に対して60%以上であり、高温炭化によって得られた種々の形状の導電性炭素材料であり、トウ状形態が好ましく、モノフィラメント直径が1−15μmである。
【0056】
以下、具体的な実施例によって本発明の技術内容をさらに説明する。
【実施例1】
【0057】
T300 12K(12000本のモノフィラメント)ポリアクリロニトリル系炭素繊維トウを原料として、当該炭素繊維のモノフィラメント直径が7μmであり、それは微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが10−40nmであり、微結晶グラファイトシート層の繊維軸に沿う配向と炭素繊維先端面との夾角が約80°である。上記した78束の炭素繊維トウを先端面が揃ったようにカットし、濃度0.5Mの炭酸アンモニウム水溶液を入れた電解槽の上方に垂直に置き、陽極として直流電源の正極と接続する。そして、面積100cmのSS 304ステンレスネットを溶液に全体浸漬し、陰極として直流電源の負極に接続する。通電する前に、炭素繊維トウの揃った先端面と溶液液面との平行距離を慎重に調節し、ちょうど液面に接触させるようにして、先端面が溶液に入る許容誤差を液面に対して5mm未満とする。その後、直流電源を入れて、定電圧32Vに制御し、動作を始める。陽極では大量の泡が生じて、表面張力と陽極酸化によって生じる泡の作用の下で、溶液が上昇する。この際、炭素繊維先端面が液面の上方の5mm以下の範囲内にあるように調節して、作業してもよい。この時、端面面積に対する動作電流密度の変動範囲が+1〜20A/cmである。電解過程が進むにつれて、電流密度が1A/cmより低くなると(現象は、先端面と電解質溶液の液面との距離が大きくなることである)、先端面と液面との距離が近くなるように調節して、電解過程を連続して行わせてもよい。また、まず先端面と液面との距離を大きくすることで、反応を中断させた後、再び先端面と液面との距離を小さくして、−5mm〜5mmの範囲内で作業することで、電解過程の断続的な運行を実現してもよい。電解過程が進むにつれて、炭素繊維トウの先端面における微結晶グラファイトシート層は、電気化学的酸化膨張解離及び切断されて、溶液中に溶解し続ける。溶液の色は経時変化し、淡黄、ブライトイエロー、ダークイエロー、黄褐から段々と濃褐色になり、相応に生じた酸化グラフェン量子ドットの濃度が段々と増加し、濃度が10mg/mL以下である酸化グラフェン量子ドットを含有する電解質溶液が得られる。最後に、吸引ろ過によって溶液中の大粒子炭素繊維断片を除去した後、濾液を加熱することで炭酸アンモニウムを熱分解し、酸化グラフェン量子ドットのみを含有する水溶液を得る。
【0058】
以上により得られた酸化グラフェン量子ドット水溶液を平らなウエハ上に移動し、自然乾燥した後、原子間力顕微鏡で観察する。図5a及び図5bに示されているように、量子ドットの最大高さは0.706nmであり、両層のグラフェンの厚さに相当し、その粒子径分布平均高さが0.339nmであり、単層のグラフェンの高さに相当し、そして分布が比較的均一である。以上により得られた酸化グラフェン量子ドット水溶液に対して、直接に動的光散乱(DLS)粒子径分布解析を行い、図6に示されているように、その粒子径分布範囲が3−25nmであり、分布区間が比較的に狭い。さらに蛍光スペクトル解析を行い、図7に示されているように、励起波長480nmにおいて、その発射波長が540nmである。以上により得られた酸化グラフェン量子ドット水溶液を2000D膜で透析処理することで、図8に示されているように、粒子径分布が3−10nmである酸化グラフェン量子ドット(溶液)が得られる。以上により得られた酸化グラフェン量子ドット溶液を真空干燥又は凍結乾燥した後、固体状態の酸化グラフェン量子ドットを得て、光電子スペクトル(XPS)解析により、図9に示されているように、炭素/(酸素+窒素)原子比が1:1である。ここで得られた酸化グラフェン量子ドットは窒素ドープを含有し、これはポリアクリロニトリル系炭素繊維原料そのものが窒素元素を含有するからである。製造された酸化グラフェン量子ドット質量と炭素繊維トウの重量減少質量との比較により、酸化グラフェン量子ドットの製造生産率が93%である。
【実施例2】
【0059】
実施例1と比べて、相違点は主に以下のとおりである。厚み0.1mmのグラファイト紙を原料として、グラファイト紙の長手方向の一方の端面を作業面として、0.1M硫酸ナトリウムを電解液として使用する。陰極が100cmのニッケルシートである。定電圧40Vに制御し、動作電流密度の変動範囲が+1〜300A/cmであり、濃度が100mg/mL以下である酸化グラフェン量子ドット及び酸化グラフェン微小板を含有する電解液が得られる。複数回の遠心分離及び水洗浄により、それぞれ、酸化グラフェン微小板スラリー、および、酸化グラフェン量子ドットと硫酸ナトリウムを含有する混合液が得られる。さらに、酸化グラフェン微小板スラリーを乾燥した後、超音波分散を行い、酸化グラフェン微小板のエチレングリコール分散液を得る。酸化グラフェン量子ドットと硫酸ナトリウムの混合液を低温処理して、ほとんどの硫酸ナトリウム結晶を析出させた後、上澄み液を取り透析を行って、酸化グラフェン量子ドットのみを含有する水溶液を得る。図10a及び図10bは、それぞれ得られた酸化グラフェン微小板の原子間力顕微鏡画像及び高さ解析曲線であり、その中、微小板の高さ分布範囲が0.7−10nmであり、2−30個の1原子層厚さに相当する。図11に示されているように、微小板フレーク径サイズは1−10μmである。図12に示されているように、得られた酸化グラフェン量子ドットの厚さは1−2層であり、粒子径分布範囲が7−15nmである。
【実施例3】
【0060】
実施例1と比べて、相違点は主に以下のとおりである。T700 12K(12000本のモノフィラメント)ポリアクリロニトリル系炭素繊維トウの先端面を、交互に循環して陽極作業面、陰極作業面とする(ポリアクリロニトリル系炭素繊維トウの先端面を陽極作業面とする時、100cmのチタン基体酸化イリジウム電極を陰極として使用する。ポリアクリロニトリル系炭素繊維トウの先端面を陰極作業面とする時、100cmのチタン基体酸化イリジウム電極を陽極として使用する。)。具体的に、それをまず陽極として1min酸化して、さらに陰極として30s還元する。その中、端面に対する陽極動作電流密度が+1〜50A/cmであり、陰極動作電流密度が−1〜−10A/cmであり、上記した電解過程を循環する時、直流電源の動作電圧が80V以下である。最後に得られた酸化グラフェン量子ドットは単層であり、粒子径分布範囲が1−5nmであり、炭素/(酸素+窒素)原子比が9:1であり、製造生産率が98%である。
【実施例4】
【0061】
実施例2と比べて、相違点は主に以下のとおりである。両枚の厚み1mmのフレキシブルグラファイトシートを原料として、1M硫酸を電解液として使用し、それらの長手方向の一方の端面をそれぞれ一極及び他極の作業面として、いずれも電解液の液面と平行して接触させ、両端面を交互に循環してそれぞれ陽極又は陰極作業面とする。具体的に、その内の一極を陽極として、他極を陰極として3min電解した後、さらに両極の極性を交換して3min電解する。その中、端面に対する陽極、陰極動作電流密度は±1〜300A/cmであり、上記した電解過程を循環する時、直流電源の動作電圧が100V以下である。得られた酸化グラフェン微小板の厚さが1−10層であり、微小板フレーク径サイズが0.2−1μmであり、炭素/酸素原子比が22:1である。得られた酸化グラフェン量子ドットは1−3層であり、透析する前の粒子径分布範囲が2−100nmであり、透析した後の粒子径分布範囲が2−7nmであり、炭素/酸素原子比が10:1である。
【実施例5】
【0062】
実施例4と比べて、相違点は主に以下のとおりである。220束のHM110 4Kピッチ系炭素繊維トウ及び厚み0.05mmのフレキシブルグラファイトシートを共に原料として、2M硫酸アンモニウムを電解液として使用する。得られた酸化グラフェン微小板の厚さが1−5層であり、微小板フレーク径サイズが0.11−0.45μmである。得られた酸化グラフェン量子ドットが1−5層であり、粒子径分布範囲が1−100nmである。
【実施例6】
【0063】
T300 12K(12000本のモノフィラメント)ポリアクリロニトリル系炭素繊維トウを原料として、当該炭素繊維のモノフィラメント直径が7μmであり、微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが10−40nmであり、微結晶グラファイトシート層配向が繊維軸配向に対して80%である。上記した78束の炭素繊維トウを先端面が揃ったようにカットし、濃度0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を入れた電解槽の上方に垂直に置き、陽極として直流電源の正極と接続する。そして、面積100cmのSS 304ステンレスネットを溶液に全体浸漬し、陰極として直流電源の負極に接続する。通電する前に、炭素繊維トウの揃った先端面と溶液液面との平行距離を慎重に調節し、ちょうど液面に接触させるようにして、先端面が溶液に入る許容誤差を液面に対して3mm未満とする。その後、直流電源を入れて、定電圧32Vに制御し、動作を始める。陽極では大量の泡が生じて、表面張力と陽極酸化によって生じる泡の作用の下で、溶液が上昇する。この際、炭素繊維先端面が液面の上方の5mm以下の範囲内にあるように調節して、作業してもよい。この時、先端面面積に対する動作電流密度の変動範囲が1〜10A/cmである。電解過程が進むにつれて、電流密度が1A/cmより低くなると(現象は、先端面と液面との距離が大きくなることである)、先端面と液面との距離が近くなるように調節することで、電解過程を連続して行わせてもよい。また、まず先端面と液面との距離を大きくすることで、反応を中断させた後、再び先端面と液面との距離を小さくして、−3mm〜5mmの範囲内で作業することで、電解過程の断続的な運行を実現してもよい。電解過程が進むにつれて、炭素繊維トウの先端面における微結晶グラファイトシート層は、電気化学的酸化膨張解離及び切断されて、溶液中に溶解し続ける。溶液の色は経時変化し、淡黄、ブライトイエロー、ダークイエロー、黄褐から段々と濃褐色になり、相応に生じた(酸化)グラフェン量子ドットの濃度が段々と増加し、最後に濃度が10mg/mL以下である(酸化)グラフェン量子ドット溶液が得られる。
【0064】
以上により得られた(酸化)グラフェン量子ドット溶液を平らなウエハ上に移動し、自然乾燥した後、原子間力顕微鏡で観察する。図13a及び図13bに示されているように、量子ドットの最大高さは0.706nmであり、両層のグラフェンの厚さに相当し、その粒子径分布平均高さが0.339nmであり、単層のグラフェンの高さに相当し、そして分布が比較的均一である。以上により得られた(酸化)グラフェン量子ドット溶液に対して、直接に動的光散乱(DLS)粒子径分布解析を行い、図14に示されているように、その粒子径分布範囲が10−20nmであり、分布区間が比較的に狭い。さらに紫外吸収スペクトル解析を行い、図15に示されているように、顕著な光吸収特性の存在が見られた。さらに蛍光スペクトル解析を行い、図16に示されているように、励起波長480nmにおいて、その発射波長が540nmである。以上により得られた(酸化)グラフェン量子ドット溶液を2000D膜で透析処理することで、粒子径分布が5−10nmである(酸化)グラフェン量子ドット溶液が得られる。以上により得られた粒子径分布が5−10nmである(酸化)グラフェン量子ドット溶液を真空干燥した後、コロイド状態の(酸化)グラフェン量子ドットが得られる。さらに、窒素ガスに保護された状態で、500℃で加熱還元することで固体状態の還元状態グラフェン量子ドット粉体が得られる。光電子スペクトル(XPS)解析により、その炭素/酸素比が11:1である。XPSより分かるように、窒素元素も含まれており、窒素原子比含有量が2.6%であり、これはポリアクリロニトリル系炭素繊維原料そのものが窒素元素を含有するからである。よって、ここで得られたグラフェン量子ドットは窒素ドープを含有するものである。製造されたグラフェン量子ドット質量と炭素繊維トウの重量減少質量との比較により、(酸化)グラフェン量子ドットの製造生産率が93%である。
【実施例7】
【0065】
実施例6と比べて、相違点は主に以下のとおりである。T700 12Kポリアクリロニトリル系炭素繊維トウを原料として、当該炭素繊維のモノフィラメント直径が7μmであり、微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが15−50nmであり、微結晶グラファイトシート層配向が繊維軸配向に対して90%である。使用される電解質溶液は0.5M炭酸アンモニウムである。陰極は100cmのニッケルシートである。定電圧40Vに制御し、動作電流密度の変動範囲が1−20A/cmである。得られた(酸化)グラフェン量子ドットは1−2層であり、粒子径分布範囲が7−15nmである。以上により得られた(酸化)グラフェン量子ドット溶液を凍結乾燥した後、スポンジ状の固体状態(酸化)グラフェン量子ドットを得る。以上により得られた(酸化)グラフェン量子ドット溶液にヒドラジン水和物を加え、還元して、還元状態グラフェン量子ドットが得られる。その炭素/酸素比は還元前の3:1から20:1に上げられる。(酸化)グラフェン量子ドットの製造生産率が95%である。
【実施例8】
【0066】
実施例7と比べて、相違点は主に以下のとおりである。定電流制御方式を使用し、動作電流密度が15A/cmであり、電圧変動範囲が30−50Vである。得られた(酸化)グラフェン量子ドットは1−2層であり、粒子径分布範囲が5−10nmであり、還元する前の炭素/酸素比が9:1であり、製造生産率が98%である。
【実施例9】
【0067】
実施例6と比べて、相違点は主に以下のとおりである。100束のM55J 3Kグラファイト炭素繊維トウを原料として、当該炭素繊維のモノフィラメント直径は5μmであり、微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが30−80nmであり、微結晶グラファイトシート層配向が繊維軸配向に対して99%である。使用される電解質溶液は0.2M 硫酸である。陰極は200cmのTA2チタンネットである。定電流制御方式を使用し、動作電流密度が25A/cmであり、電圧変動範囲が50−80Vである。得られた(酸化)グラフェン量子ドットは1−2層であり、粒子径分布範囲が15−25nmであり、還元する前の炭素/酸素比が15:1であり、製造生産率が96%である。
【実施例10】
【0068】
実施例6と比べて、相違点は主に以下のとおりである。220束のHM110 4Kピッチ系炭素繊維トウを原料として、当該炭素繊維のモノフィラメント直径は10μmであり、微結晶グラファイトシート層構造からなり、微結晶三次元サイズが50−100nmであり、微結晶グラファイトシート層配向が繊維軸配向に対して98%である。使用される電解質溶液は1.0M 硫酸ナトリウムである。陰極は50cm2のネット状チタン基酸化イリジウムコーティング電極である。定電流制御方式を使用し、動作電流密度が10A/cmであり、電圧変動範囲が20−50Vである。得られた(酸化)グラフェン量子ドットは1−2層であり、粒子径分布範囲が3−7nmであり、還元する前の炭素/酸素比が5:1であり、製造生産率が93%である。
【実施例11】
【0069】
実施例10と比べて、相違点は主に以下のとおりである。使用される電解質溶液は1.0M 硫酸ナトリウムと0.1M硫酸の混合液である。定電流制御方式を使用し、動作電流密度が3A/cmであり、電圧変動範囲が10−20Vである。得られた(酸化)グラフェン量子ドットは2−4層であり、粒子径分布範囲が30−50nmであり、還元する前の炭素/酸素比が2:1であり、製造生産率が90%である。
【実施例12】
【0070】
水溶液中において、実施例6、実施例8及び実施例10で得られた(酸化)グラフェン量子ドットに、それぞれ紫外励起光波長365nmを照射し、それぞれ青色、緑色および黄色の蛍光が現れる(これは(酸化)グラフェン量子ドットの粒子径分布と関係があると推測される)。
【符号の説明】
【0071】
1 陽極
2 陰極
3 直流電源
4 電解槽
5 電解質溶液
6 端面
7 泡
8 上昇液面
9 酸化グラフェン
10 先端面
11 グラフェン量子ドット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2017年6月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の炭素系三次元材料を一極として、他方の炭素系三次元材料又は不活性材料を他極として、それぞれ直流電源の両極と接続し、そのうち、少なくとも一極の炭素系三次元材料の一方の端面が、作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する工程、
その後通電を始め、通電電解する間に、前記作業面としての端面の作業区間が、前記電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある工程、
前記端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、少なくとも一極の炭素系三次元材料の端面におけるグラファイトシート層が、酸化グラフェンに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散され、酸化グラフェンを含有する電解質溶液が得られる工程、
を含む、炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することにより酸化グラフェンを製造する方法。
【請求項2】
ただ一極の炭素系三次元材料の一方の端面のみが作業面として電解質溶液の液面と平行して接触する時に、他極の炭素系三次元材料又は不活性材料の全体又は一部が前記電解質溶液に浸漬する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面はいずれも作業面として、いずれも前記電解質溶液の液面と平行して接触し、両極の炭素系三次元材料は、同じ種類又は異なる種類の材料である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭素系三次元材料は、天然グラファイト又は人工グラファイトより製造されたグラファイトシート、紙、板、糸、管、棒;炭素繊維トウおよびそれで編んだ構造物であるフェルト、布、紙、縄、板、管のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の電解質溶液の液面と平行して接触する炭素系三次元材料の端面は、前記炭素系三次元材料の微視的グラファイトシート層二次元配向のうち一つとの夾角が60−90°である巨視的表面である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気化学的酸化方式は、ただ一極の炭素系三次元材料の一方の端面のみをずっと陽極作業面として、或いは交互に循環して陽極、陰極作業面として、電解過程において、直流電源の動作電圧が80Vを超えず、前記端面に対する動作電流密度が+又は±1〜300A/cm(但し、符号+は、陽極電流密度を表し、符号±が交互循環過程における陽極と陰極電流密度を表す)であり、そして、交互循環電解過程において、交互して陽極又は陰極とする動作電流密度が同じであり又は異なる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電気化学的酸化方式は、一極及び他極の炭素系三次元材料の一方及び他方の端面がいずれも作業面として、両端面が交互に循環して、それぞれ陽極又は陰極作業面として、電解過程において、直流電源の動作電圧が100Vを超えず、各端面に対する動作電流密度が±1〜300A/cm(但し、符号±は、交互循環過程における陽極と陰極電流密度を表す)であり、そして、交互循環電解過程において、交互して陽極又は陰極とする動作電流密度が同じであり又は異なる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
トウ状炭素繊維を陽極として、不活性電極を陰極として、それぞれ直流電源の正極、負極と接続する工程、
前記不活性電極を電解質溶液に浸漬する工程、
炭素繊維陽極の作業面は揃ったトウ先端面からなり、通電する前に炭素繊維先端面を前記電解質溶液の液面と平行して接触させる工程、
その後通電を始め、通電する間に、炭素繊維先端面の作業区間が電解質溶液の液面の下方から上方までの−5mm〜5mmの範囲内にある工程、
炭素繊維先端面が前記作業区間内にあるように断続又は連続して制御することにより、炭素繊維先端面における微結晶グラファイトシート層が、グラフェン量子ドットに電気化学的酸化膨張解離及び切断され、前記電解質溶液に分散され、グラフェン量子ドット溶液が得られる工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維及びグラファイト繊維のうちの一種又は複数種の組み合わせを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素繊維は微結晶グラファイトシート層からなり、前記微結晶グラファイトシート層の三次元サイズが10−100nmであり、前記微結晶グラファイトシート層配向が炭素繊維軸配向に対して60%以上であり、そして、前記炭素繊維は高温炭化によって得られた導電性炭素繊維であり、トウのモノフィラメント直径が1−15μmである請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記直流電源の動作電圧が80V以下であり、炭素繊維先端面に対する動作電流密度が1−30A/cmであり、前記直流電源は定電圧又は定電流出力制御方式である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記電解質溶液がイオン導電能力を有する溶液であり、且つ当該電解質溶液の導電率が10mS/cm以上である請求項1又は8に記載の方法。
【請求項13】
物理及び/又は化学方法によって前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液又は前記グラフェン量子ドット溶液を分離することにより、その中の電解質及び不純物を除去し、酸化グラフェンを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態の酸化グラフェン、又はグラフェン量子ドットを含有する水又は有機溶液或いはコロイド状態又は固体状態のグラフェン量子ドットを得る工程、
及び/又は、
前記酸化グラフェンを含有する電解質溶液又は前記グラフェン量子ドット溶液を、真空ろ過及び/又は透析処理することにより、生成物の粒子径分布をさらに狭くする工程、
及び/又は、
前記酸化グラフェン又は前記グラフェン量子ドットに対して、液相化学的還元、電気化学的還元、熱還元、紫外線照射還元、マイクロ波還元、活性金属還元及び気相還元のうちの一種又は複数種の処理をすることにより、炭素/酸素原子比をさらに向上させる工程、
も含む請求項1又は8に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法により製造されて得られた酸化グラフェンであって、
前記酸化グラフェンは、酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板を含み、そのうち酸化グラフェン量子ドットは厚さが1−10個の1原子層であり、粒子径が1−100nmである酸化グラフェン量子ドットであり、酸化グラフェン微小板は厚さが1−30個の1原子層であり、粒子径が101nm−10μmの酸化グラフェン微小板であり、前記酸化グラフェン量子ドット及び/又は酸化グラフェン微小板における炭素と酸素及び/又は窒素との原子比が1:1−25:1である、
酸化グラフェン。
【請求項15】
請求項8乃至13のいずれかに記載の炭素系三次元材料端面を電気化学的酸化切断することで酸化グラフェンを製造する方法により製造されて得られたグラフェン量子ドットであって、1−10層であり、粒子径が1−100nmであるグラフェン量子ドットであり、その炭素/酸素原子比が2:1−20:1であり、
好ましくは、前記グラフェン量子ドットは窒素ドープを含有し、窒素原子比含有量が1−6%である、
グラフェン量子ドット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
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【国際調査報告】