(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538051(P2017-538051A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】少なくとも三重撚りを有するセルロース・テキスタイルコード
(51)【国際特許分類】
D02G 3/28 20060101AFI20171124BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20171124BHJP
D02G 3/48 20060101ALI20171124BHJP
D07B 1/02 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
D02G3/28
B60C9/00 A
D02G3/48
D07B1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-530124(P2017-530124)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2015078836
(87)【国際公開番号】WO2016091810
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】1462102
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(71)【出願人】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】コルニレ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーマン ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】フーク グレゴル
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
4L036
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153BB01
3B153CC28
3B153FF16
3B153GG01
3B153GG05
3D131AA36
3D131AA47
3D131AA48
3D131BA02
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
3D131BB06
3D131BC31
3D131DA01
3D131DA52
3D131HA13
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA21
4L036PA47
4L036UA07
4L036UA08
(57)【要約】
少なくとも三重撚り(T1、T2、T3)を有するセルロース・テキスタイルコード(50)は、最終撚りT3及び最終方向D2で一緒に撚り合わされた少なくともN本のストランド(20a、20b、20c、20d)を含み、Nは1より大きく、各ストランドは、それ自体が中間撚りT2(T2a、T2b、T2c、T2d)及びD2とは反対の中間方向D1で一緒に撚り合わされた、M本の予備ストランド(10a、10b、10c)で構成され、Mは1より大きく、各予備ストランド自体は、事前にそれ自体が初期撚りT1(T1a、T1b、T1c)及び方向D1で加撚されたヤーン(5)から成り、N×M本のヤーンの少なくとも半分は、セルロースヤーンである。このテキスタイルコードは、有利には、車両用タイヤ、特にこれらのタイヤのベルト又はカーカス補強体において、補強材として用いることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも三重撚り(T1、T2、T3)を有するセルロース・テキスタイルコード(30、50)であって、撚りT3及び方向D2で一緒に撚り合わされた少なくともN本のストランド(20、20a、20b、20c、20d)を含み、Nは1より大きく、各ストランドは、それ自体が撚りT2(T2a、T2b、T2c、T2d)及びD2とは反対の方向D1で一緒に撚り合わされた、M本の予備ストランド(10、10a、10b、10c)で構成され、Mは1より大きく、各予備ストランド自体は、事前にそれ自体が撚りT1(T1a、T1b、T1c)及び方向D1で加撚されたヤーン(5)から成り、N×M本のヤーンの少なくとも半分が、セルロースヤーンであることを特徴とする、コード。
【請求項2】
Nが、2から6まで、好ましくは2から4までの範囲で変化することを特徴とする、請求項1に記載のコード。
【請求項3】
Mが、2から6まで、好ましくは2から4までの範囲で変化することを特徴とする、請求項1〜請求項2のいずれかに記載のコード。
【請求項4】
N×M本のヤーンの総数が、4から25まで、好ましくは4から16までの範囲に含まれることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコード。
【請求項5】
回転毎メートルで表した前記撚りT1が、10と350との間、好ましくは20と200との間に含まれることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコード。
【請求項6】
各予備ストランドが、2と80との間、好ましくは6と70との間に含まれる撚り係数K1を有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のコード。
【請求項7】
回転毎メートルで表した前記撚りT2が、25と470、好ましくは35と400との間に含まれることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のコード。
【請求項8】
各ストランドが、10と150との間、好ましくは20と130との間に含まれる撚り係数K2を有することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のコード。
【請求項9】
回転毎メートルで表した前記撚りT3が、30と600、好ましくは80と500との間に含まれることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のコード。
【請求項10】
50と500との間、好ましくは80と230との間に含まれる撚り係数K3を有することを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のコード。
【請求項11】
T2が、T1より大きいことを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のコード。
【請求項12】
T3が、T2より大きいことを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれかに記載のコード。
【請求項13】
T2が、T3の0.2倍と0.95倍との間、好ましくはT3の0.4倍と0.8倍との間に含まれることを特徴とする、請求項12に記載のコード。
【請求項14】
和T1+T2が、T3の0.8倍と1.2倍との間、好ましくはT3の0.9倍と1.1倍との間に含まれることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載のコード。
【請求項15】
前記和T1+T2が、T3に等しいことを特徴とする、請求項14に記載のコード。
【請求項16】
前記N×M本のヤーンの全部が、セルロースヤーンであることを特徴とする、請求項1〜請求項15のいずれかに記載のコード。
【請求項17】
前記セルロースヤーンが、800cN/texより高い、好ましくは900cN/texより高い、Miで表される初期弾性率を有することを特徴とする、請求項1〜請求項16のいずれかに記載のコード。
【請求項18】
前記セルロースヤーンが、1000cN/texより高い、好ましくは1200cN/texより高い、Miで表される初期弾性率を有することを特徴とする、請求項17に記載のコード。
【請求項19】
プラスチック製又はゴム製の物品又は半完成品を補強するための、請求項1〜請求項18のいずれかに記載のコードの使用。
【請求項20】
請求項1〜請求項18のいずれかに記載のコードで補強された、プラスチック製又はゴム製の物品又は半完成品。
【請求項21】
タイヤを補強するための、請求項1〜請求項18のいずれかに記載のコードの使用。
【請求項22】
請求項1〜請求項18のいずれかに記載のコードで補強された、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製物品又は車両タイヤのようなゴム製物品を補強するために用いることができるテキスタイル補強要素又は「補強材」に関する。
【0002】
これは、より具体的には、特にこのようなタイヤを補強するために用いることができる、テキスタイルコード又は諸撚ヤーンに関する。
【背景技術】
【0003】
テキスタイルは、タイヤが最初に出現して以来ずっと補強材として用いられてきた。
【0004】
ポリエステル、ナイロン、セルロース又はアラミド繊維などの連続テキスタイル繊維から製造されたテキスタイルコードは、タイヤにおいて、さらには超高速走行用に認証された高性能タイヤにおいて、重要な役割を果たすことが知られている。タイヤの要件に合致するために、これらは、高い破壊強度と、高い弾性率と、優れた疲労耐久性と、最後に、これらの補強対象となりそうなゴム又は他のポリマーマトリックスに対する優れた接着性とを有することが必要とする。
【0005】
これらのテキスタイル諸撚ヤーン又はコードは、伝統的には二重撚り(T1、T2)タイプであり、加撚法として知られる方法によって作製されることを、ここで簡単に想起しておくと、該方法において、
−第1のステップ中、最終的なコードを構成する各マルチフィラメント繊維またはヤーンは、最初に、個別にそれ自体が(初期撚りT1で)所与の方向D1(それぞれS方向又はZ方向)に加撚されてストランドを形成し、該ストランド内で、要素フィラメントは、繊維の軸線(又はストランドの軸線)のまわりでらせん状に変形している。
−次いで、第2のステップ中、性質が同一の、又はハイブリッド若しくは複合と呼ばれるコードの場合には性質が異なる、幾つかのストランド、一般に2、3又は4本のストランドが、次に、最終撚りT2(これはT1と同じ場合もあり又は異なる場合もある)で、反対方向D2(S又はZの斜め線に従った回転の向きを表す承認された命名規則に従って、それぞれZ方向又はS方向)に一緒に撚り合わされて、幾つかのストランドを含むコード又は最終組立体を得る。
【0006】
加撚の目的は、補強材の横断方向の凝集力を生じさせ、その疲労耐久性を高め、被補強マトリックスとの接着性をも向上させるために、材料の性質を適合させることである。
【0007】
このようなテキスタイルコード、その構造及び製造方法は、当業者に周知である。これらは、多数の文献、例えば、数例を挙げただけでも、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、又は特許文献11、又はより最近では特許文献12、特許文献13、特許文献14で詳細に説明されている。
【0008】
タイヤなどのゴム物品を補強することを可能にするためには、これらのテキスタイルコードの疲労耐久性(引張り、曲げ、圧縮耐久性)が重要な鍵となる。一般に、所与の材料に対して、かけた撚りが大きいほど、この疲労耐久性は高くなるが、これに対応して、そのテキスタイルコードの引張破断荷重(単位重量当たりで表す場合にはテナシティと呼ばれる)は、撚りが大きくなるにつれて否応なく低下することが知られており、それは当然、補強の観点から不利である。
【0009】
そのため、タイヤ製造者のようなテキスタイルコード設計者は、所与の材料及び所与の撚りに対して、力学的性質、特に破断荷重及びテナシティを向上させることが可能なテキスタイルコードを常に探求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第021485号明細書
【特許文献2】欧州特許第220642号明細書
【特許文献3】欧州特許225391号明細書
【特許文献4】欧州特許第335588号明細書
【特許文献5】欧州特許467585号明細書
【特許文献6】米国特許第3419060号明細書
【特許文献7】米国特許第3977172号明細書
【特許文献8】米国特許第4155394号明細書
【特許文献9】米国特許第5558144号明細書
【特許文献10】国際公開第97/06294号
【特許文献11】欧州特許第848767号明細書
【特許文献12】国際公開第2012/104279号
【特許文献13】国際公開第2012/146612号
【特許文献14】国際公開第2014/057082号
【特許文献15】国際公開第85/05115号
【特許文献16】国際公開第97/06294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
タイヤなどのゴム物品を補強することを可能にするためには、これらのテキスタイルコードの疲労耐久性(引張り、曲げ、圧縮耐久性)が重要な鍵となる。一般に、所与の材料に対して、かけた撚りが大きいほど、この疲労耐久性は高くなるが、これに対応して、そのテキスタイルコードの引張破断荷重(単位重量当たりで表す場合にはテナシティと呼ばれる)は、撚りが大きくなるにつれて否応なく低下することが知られており、それは当然、補強の観点から不利である。
【0012】
そのため、タイヤ製造者のようなテキスタイルコード設計者は、所与の材料及び所与の撚りに対して、力学的性質、特に破断荷重及びテナシティを向上させることが可能なテキスタイルコードを常に探求している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
現在、研究の過程で、本出願人は、その特異的な構成及び構造が、予期せぬことに、所与の最終撚りに対して破断力及びテナシティ特性を向上させることを可能にする、セルロースタイプの新規なテキスタイルコードを具体的に見いだした。
【0014】
したがって、第1の主題によれば、本発明は、少なくとも三重撚り(T1、T2、T3)のセルロース・テキスタイルコードに関し、テキスタイルコードは、撚りT3及び方向D2で一緒に撚り合わされた少なくともN本のストランドを含み、Nは1より大きく、各ストランドは、それ自体が撚りT2及びD2とは反対の方向D1で一緒に撚り合わされたM本の予備ストランド(pre−strand)で構成され、Mは1より大きく、各予備ストランド自体は、事前にそれ自体が撚りT1及び方向D1で加撚されたヤーンから成り、N×M本のヤーンの少なくとも半分は、セルロースヤーンである。
【0015】
本発明はまた、このようなテキスタイルコードの、パイプ、ベルト、コンベヤベルト、車両タイヤなどのプラスチック製又はゴム製の物品又は半完成品のための補強要素としての使用に関し、並びに、未加工状態(すなわち硬化又は加硫前)及び硬化状態(硬化後)両方の、これらのゴム製物品及び半完成品並びにタイヤ自体に関する。
【0016】
本発明のタイヤは、特に、乗用車、4×4又はSUB(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)タイプの自動車用として企図することができるが、モータバイクなどの二輪車用、又は、バン、ヘビーデューティ車両、すなわち地下鉄車両、バス、道路輸送車両(トラック、トラクタ、トレーラ)及びオフロード車両、農業用若しくは土木用装置、航空機、他の輸送用若しくは作業用車両から選択される産業用車両用として企図することもできる。
【0017】
本発明のテキスタイルコードは、より具体的には、上記車両用のタイヤのクラウン補強体(若しくはベルト)又はカーカス補強体における使用が企図される。
【0018】
本発明及びその利点は、詳細な説明及びそれに続く例示的な実施形態、並びに、これらの実施形態に関連した(別段の指示のない限り特定の縮尺に従って描かれているわけではない)
図1から
図7までに鑑みて、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】最初に、従来のマルチフィラメント・テキスタイル繊維(又はヤーン)の初期状態(5)、すなわち加撚されていない状態を示し、次いで、それ自体が加撚されたヤーン、すなわち「予備ストランド」(10)を形成するための方向D1の第1の撚り操作T1後を示す、断面図である。
【
図2】本発明によるコードのために企図されたストランド(20)の形成のために、さらに同じ方向D1の第2の撚り操作T2によって組み立てられた、予備ストランド(事前にT1a、T1b、T1cで同じ方向D1に加撚された)として機能する上記のような3本のヤーン(10a、10b、10c)の組立体を示す断面図である。
【
図3】本発明による三重撚り(T1、T2、T3)を有する最終テキスタイルコード(30)の形成のために、今回は方向D1とは反対の方向D2の第3の撚り操作T3によって組み立てられた、上記のような(事前にT2a、T2b、T2cで同じ方向D1に加撚された)3本のストランド(20a、20b、20c)の組立体を示す断面図である。
【
図4】二重撚り(T1、T2)を有する従来技術によるテキスタイルコード(40)の形成のために、方向D1とは反対の方向D2の第2の撚り操作T2によって組み立てられた、今回は直接的にストランド(全てが事前にT1a、T1b、T1cで方向D1に加撚された)として機能する上記のような3本のヤーン(10a、10b、10c)の従来の組立体を示す断面図である。
【
図5】本発明による三重撚り(T1、T2、T3)を有する最終テキスタイルコード(50)の形成のために、方向D1とは反対の方向D2の第3の撚り操作T3によって組み立てられた、(事前にT2a、T2b、T2c、T2dで同じ方向D1に加撚された)4本のストランド(20a、20b、20c、20d)の組立体を示す断面図である。
【
図6】一旦形成された、最小限の張力下にあるテキスタイルコード(ちなみにそれが本発明によるものであってもなくても)の最終断面は、開始材料のマルチフィラメント的性質によってもたらされる高度の横方向可塑性ゆえに、実際には円形輪郭の断面により相似したものであるという事実を示す、上記コード(50)の先に示した図よりも模式的ではない断面図である。
【
図7】最後に、本発明によるテキスタイルコードを組み込んだ本発明によるタイヤの例を示す、半径方向断面図(これはタイヤの回転軸線を含む平面を意味する)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願において、特段の明示の指示がない限り、全ての百分率(%)は、質量百分率である。
【0021】
「aとbとの間」という表現で表される値の間隔は、aより大きい値からbより小さい値まで(すなわち端点a及びbは除外される)にわたる値の範囲を表し、一方、「aからbまで」という表現で表される値の間隔は、a以上bまで(すなわち厳密に端点a及びbを含む)にわたる値の範囲を意味する。
【0022】
したがって、本発明のセルロース・テキスタイルコード又は諸撚ヤーンは、(添付図面1から
図3まで及び
図5を参照して)高度に特異的な構造のテキスタイルコード(30、50)であり、これは、以下を含む本質的な特徴を有する。
−少なくとも三重(これは3又は3より多くを意味する)撚り(T1、T2、T3)。
−最終撚りT3及び最終方向D2で一緒に撚り合わされた少なくともN本のストランド(20、20a、20b、20c、20d)であって、Nが1より大きいこと。
−各ストランドは、それ自体が中間撚りT2(T2a、T2b、T2c、T2d)及びD2とは反対の方向D1で一緒に撚り合わされた、M本の予備ストランド(10、10a、10b、10c)で構成され、Mが1より大きいこと。
−各予備ストランドは、事前にそれ自体が初期撚りT1(T1a、T1b、T1c)及び初期方向D1で加撚されたヤーン(5)から成ること。
【0023】
当業者は、少なくとも三重撚り(これは3以上の撚りを有することを意味する)を有するコードという表現から、本発明のコードを「分解」してそれを構成する初期ヤーンに「戻す」には、すなわち初期状態の、すなわち撚りがかかっていない開始ヤーン(マルチフィラメント繊維)を再度見いだすためには、少なくとも3回の連続した解撚(又は反対方向の加撚)操作が必要であることを即座に理解するであろう。別の言い方をすれば、本発明のコードを形成するには、通常の場合のように2回ではなく、少なくとも3回(3回以上)の逐次的な加撚操作がある。
【0024】
別の必須の特徴は、コードを構成するヤーンの少なくとも半分がセルロースヤーンであることである。
【0025】
本発明のテキスタイルコードの構造及びその製造に関与するステップをここで詳細に説明する。
【0026】
最初に、
図1は、「ヤーン」としても知られる従来のマルチフィラメント・テキスタイル繊維(5)の初期状態、すなわち撚りがかかっていない状態の断面を模式的に示す。周知のように、このようなヤーンは、一般に25μm未満の非常に微細な直径の、複数の、典型的には数十から数百までの要素フィラメント(50)から形成される。
【0027】
方向D1(S又はZ)の加撚操作T1(第1の撚り)後、初期ヤーン(5)は、それ自体に撚りがかけられた、「予備ストランド」(10)として知られるヤーンに転換される。したがって、この予備ストランド内で、要素フィラメントは、繊維の軸線(又は予備ストランドの軸線)のまわりでらせん状に変形した状態にある。
【0028】
次いで、
図2に例として示すように、M本の予備ストランド(例えば、ここではその3本である10a、10b、10c)が、次に前と同じ方向D1に、中間撚りT2(第2の撚り)でそれ自体が一緒に撚り合わされて、「ストランド」(20)を形成する。各予備ストランドは、特定の第1の撚りT1(例えばここでは、T1a、T1b、T1c)によって特徴付けられ、これは等しい場合(一般的な場合、すなわち、ここでは例えばT1a=T1b=T1c)もあり、又は予備ストランド毎に互いに異なる場合もある。
【0029】
最後に、
図3に模式的に示すように、N本のストランド(例えば、ここでは20a、20b、20cの3本のストランド)が、次にD1とは反対の方向D2に、最終撚りT3(第3の撚り)でそれ自体が一緒に撚り合わされて、本発明による最終テキスタイルコード(30)を形成する。各ストランドは、特定の第2の撚りT2(例えば、ここではT2a、T2b、T2c)によって特徴付けられ、これらは同じ場合(一般的な場合、すなわち、ここでは例えばT2a=T2b=T2c)もあり、又はストランド毎に異なる場合もある。
【0030】
このようにして得られた、N×M(ここでは例えば9)本の予備ストランドを含む最終テキスタイルコード(30)は、したがって(少なくとも)三重撚り(T1、T2、T3)によって特徴付けられる。
【0031】
本発明は、もちろん、3回より多くの逐次的な撚り、例えば4回(T1、T2、T3、T4)又は5回(T1、T2、T3、T4、T5)が開始ヤーン(5)に与えられる場合にも適用される。しかしながら、本発明は、特に費用的理由で、ちょうど3回の逐次的な加撚操作(T1、T2、T3)で実施されることが好ましい。
【0032】
図4は、
図3との比較で、二重撚りテキスタイルコードを作製する従来方法を示す。M本の予備ストランド(例えば、ここでは10a、10b、10cの3本のストランド)は、実際には直接的にストランドとして機能し、これらが(第1の)撚り方向D1とは反対の(第2の)方向D2で一緒に撚り合わされて、従来技術による二重撚り(T1、T2)テキスタイルコード(40)を直接形成する。
【0033】
図5は、4本のストランド(20a、20b、20c、20d)(事前に同じ方向D1にT2a、T2b、T2c、T2dで撚られた)の組立体の断面を模式的に示し、これらは、方向D1とは逆の方向D2の第3の加撚操作T3によって組み立てられ、本発明による三重撚り(T1、T2、T3)を有する最終コード(50)の別の例を形成する。各ストランドは、特定の第2の撚りT2(例えば、ここではT2a、T2b、T2c、T2d)によって特徴付けられ、これらは同じ場合もあり、又はストランド毎に異なる場合もある。
【0034】
念のため、
図6は、先に示した図よりは模式的ではない上記コード(50)の別の図をやはり断面で示し、一旦形成された、最小限の張力下にあるテキスタイルコードの断面は、ちなみにそれが本発明によるものであってもなくても、ストランド繊維(ヤーン)のマルチフィラメント的性質によってもたされるストランド(20a、20b、20c、20d)及び予備ストランド(10a、10b、10c)の横方向半径方向の高度の可塑性ゆえに、実際には本質的に円形の輪郭を有する円筒形構造に近づくという周知の事実を想起する。
【0035】
本出願において、「テキスタイル」又は「テキスタイル材料」が一般的に意味するのは、いずれかの適切な転換方法によってスレッド、繊維又はフィルムに転換することができる、天然物質又は合成物質であることを問わず、金属以外の物質で作られたあらゆる材料である。非限定的な例として、ポリマー紡糸法、例えば、溶融紡糸、湿式紡糸又はゲル紡糸を挙げることができる。
【0036】
周知のように、「セルロース」ヤーン又はコードは、セルロース材料から作られるあらゆるヤーン又はコードを意味し、これは、セルロースに基づくもの、セルロース誘導体に基づくもの、又はセルロース誘導体から再生されたセルロースに基づくものであることを意味し、もちろん紡糸方法は何であってもよい。
【0037】
「セルロース誘導体」は、化学反応に従って、セルロースのヒドロキシル基の置換によって形成されるあらゆる化合物として理解すべきものであり、この誘導体は、置換誘導体とも呼ばれる。周知のように、「再生セルロース」は、セルロース誘導体に対して行われる再生処理によって得られるセルロースを意味する。
【0038】
セルロース繊維の例は、例えば、Cordenka社によって市販されているレーヨン又はビスコース繊維、又はHyosung社によって市販されている「リヨセル(Lyocell)」繊維を含む。特許文献15又は特許文献16に記載されているようなギ酸セルロース製又は再生セルロース製の高弾性率繊維もまた挙げることができる。
【0039】
もちろん、本発明は、本発明のセルロース・テキスタイルコードが、少なくとも1つ(これは1つ又は幾つかを意味する)がセルロース材料以外の材料で作られた幾つかのヤーンで形成されて、ハイブリッド又は複合コードを構築し、N×M本のヤーンの少なくとも半分がセルロースヤーンである場合に適用される。このようなハイブリッドセルロースコードの例として、特に、少なくともセルロースとナイロン、又はセルロースとポリエステル、又はセルロースとポリケトン、又はセルロースとアラミドのヤーンに基づくものが挙げられる。
【0040】
本発明のコードにおいて、Nは、好ましくは2から6まで、より好ましくは2から4までの範囲で変化する。別の好ましい実施形態によれば、Mは、2から6まで、より好ましくは2から4までの範囲で変化する。別の好ましい実施形態によれば、ヤーンの総数(N×Mに等しい)は、4から25まで、より好ましくは4から16までの範囲に含まれる。
【0041】
当業者に周知の方式で、撚りは、2つの異なる方法で測定及び表現することができ、すなわち、簡易法ではメートル当たりの回転数(t/m)で表され、又は、異なる性質(立方密度)及び/又は異なるヤーン番手の材料の比較を望む場合には、より厳密に、フィラメントの撚り角度によって、又はこれと等価の、撚り係数Kの形で表される。撚り係数Kは、以下の既知の関係によって、撚りT(ここでは、例えばそれぞれT1、T2及びT3)と関係づけられる。
K=(撚りT)×[(ヤーン番手/(1000・ρ)]
1/2
ここで、要素フィラメント(予備ストランド、ストランド又は諸撚ヤーンを構成する)の撚りTは、回転毎メートルで表され、ヤーン番手は、tex(予備ストランド、ストランド又は諸撚ヤーン1000メートルの重量のグラム)で表され、最後に、ρは、予備ストランド、ストランド又は諸撚ヤーンを構成する材料の密度又は立方密度(g/cm
3)(例えば、セルロースの場合、およそ1.50g/cm
3、アラミドの場合、1.44g/cm
3、PETなどのポリエステルの場合、1.38g/cm
3、ナイロンの場合1.14g/cm
3)であり、ハイブリッドコードの場合、ρは、もちろん、予備ストランド、ストランド又は諸撚ヤーンを構成する材料のそれぞれのヤーン番手によって重み付けされた密度の平均である。
【0042】
本発明のコードにおいて、好ましくは、回転毎メートル(t/m)で表された撚りT1は、10と350との間、より好ましくは20と200との間に含まれる。別の好ましい実施形態によれば、各予備ストランドは、2と80との間、より好ましくは6と70との間に含まれる撚り係数K1を有する。
【0043】
別の好ましい実施形態によれば、回転毎メートルで表された撚りT2は、好ましくは25と470との間、より好ましくは35と400との間に含まれる。別の好ましい実施形態によれば、各ストランドは、10と150との間、より好ましくは20と130との間に含まれる撚り係数K2を有する。
【0044】
別の好ましい実施形態によれば、回転毎メートルで表された撚りT3は、好ましくは30と600との間、より好ましくは80と500との間に含まれる。別の好ましい実施形態によれば、本発明のコードは、50と500との間、より好ましくは80と230との間に含まれる撚り係数K3を有する。
【0045】
好ましくは、T2は、T1より大きい(T1及びT2は、特にt/mで表す)。前記実施形態と組み合わされる場合も組み合わされない場合もある、別の好ましい実施形態によれば、T2は、T3より小さく(T2及びT3は、特にt/mで表す)、T2は、より好ましくはT3の0.2倍と0.95倍との間、特にT3の0.4倍と0.8倍との間に含まれる。
【0046】
別の実施形態によれば、和T1+T2は、T3の0.8倍と1.2倍との間、より好ましくはT3の0.9倍と1.1倍との間に含まれ(T1、T2及びT3は、特にt/mで表す)、T1+T2は、具体的にはT3に等しい。
【0047】
本発明のコードにおいて、好ましくは、N×M本のヤーンの大部分(数基準)、より好ましくは全部がセルロースヤーンであり、初期状態において、すなわち撚りT1をかけていない状態で、これらのセルロースヤーンは、好ましくは800cN/texより高い、より好ましくは900cN/texより高い、弾性率Miを有する。初期弾性率Mi又はヤング率は、もちろん長手方向の弾性率であり、すなわちヤーンの軸線に沿った弾性率である。
【0048】
さらにより好ましくは、これらのセルロースヤーンは、11000cN/texより高い、特に1200cN/texより高い、より具体的には1400cN/texより高い弾性率Miを有する。
【0049】
上で示した全ての性質(ヤーン番手、ヤーンの初期弾性率、破壊強度及びテナシティ)は、事前コンディショニングを受けた、裸の(これは未被覆を意味する)コード又は被覆コード(これは、使用する準備ができたコード、又はその被補強物品から取り出されたコードを意味する)に対して、20℃にて決定したものである。「事前コンディショニング」は、コード(乾燥後)を、測定前に、欧州規格DIN EN20139に準拠した標準雰囲気(温度20±2℃、相対湿度65±2%)中で少なくとも24時貯蔵することを意味する。
【0050】
予備ストランド、ストランド又はコードのヤーン番手(又は線密度)は、各々が少なくとも5mの長さに対応する少なくとも3つの試料に対して、この長さを秤量することによって決定され、ヤーン番手は、tex(製品1000mのグラム重量(0.111texが1デニールに等しいことに留意))で与えられる。
【0051】
引張りの力学的性質(テナシティ、初期弾性率、破壊時伸び)は、特段の指示のない限り標準ASTM D885(2010年)に従って、「4D」型(100daN未満の破壊強度用)又は「4E」型(少なくとも100daNに等しい破壊強度用)のキャプスタングリップを装着したINSTRON引張試験機を用いて、既知の方法で測定される。試験片は、4Dグリップの場合は初期長さ400mm、4Eグリップの場合は800mmにわたって、標準予備張力0.5cN/texの下で公称速度200mm/分で牽引力を受ける。得られた結果は全て、10測定の平均である。ヤーンの性質を測定する場合、ヤーンは、グリップ内に配置されて張力をかけられる前に、周知の方法で、「保護撚り」と呼ばれる、撚り角度約6度に対応する非常に軽い事前撚りを受ける。
【0052】
テナシティ(破壊強度をヤーン番手で除したもの)及び初期弾性率(又はヤング率)は、cN/tex、すなわちセンチニュートン毎texで与えられる(1cN/texは0.111g/den(グラム毎デニール)に等しいことに留意)。初期弾性率は、力−伸び曲線の原点における接線によって表され、標準予備張力0.5cN/texの直後に生じる力−伸び曲線の直線部分の傾きとして説明される。破壊時伸びは、百分率で示される。
【実施例】
【0053】
本発明のセルロース・テキスタイルコードは、有利には、全てのタイプの車両、特にモータバイク、乗用車、又は、ヘビーデューティ車両、建設プラント車両、航空機、他の輸送用若しくは作業用車両などの産業用車両のタイヤを補強するために使用することができる。
【0054】
例として、
図7は、例えば乗用車タイプの車両用の、本発明によるタイヤの半径方向断面をかなり模式的に(縮尺によらずに)示す。
【0055】
このタイヤ100は、クラウン補強体又はベルト106によって補強されたクラウン102と、サイドウォール103と、2つのビード104とを備え、これらのビードの各々は、ビードワイヤ105によって補強されている。クラウン102には、この模式図には描かれていないトレッドが載置されている。カーカス補強体107が各ビード内で2つのビードワイヤのまわりに巻き付けられ、この補強体107の折返し部108は、例えば、ここではそのリム109に取り付けられた状態で描かれているタイヤ100の外方に向かって位置決めされている。
【0056】
それ自体が公知の方式で、カーカス補強体107は、「ラジアル」テキスタイルコードとして知られるもので補強された少なくとも1つのゴムプライで構成され、「ラジアル」は、これらのコードが、事実上互いに平行に配置されるとともに、周方向中心面(2つのビード104の中間に配置され、クラウン補強体106の中央を通る、タイヤの回転軸線に対して垂直な平面)に対して80°と90°との間に含まれる角度を形成するように一方のビードから他方のビードへ延びていることを意味する。
【0057】
ベルト106は、例えば、それ自体が公知の方式で、「ワーキングプライ」又は「三角形分割(triangulation)プライ」と呼ばれる少なくとも2つのゴムプライで構成され、これらは、重ね合わされて交差しており、実質的に互いに平行に配置されるとともに周方向中心面に対して傾斜した金属コードで補強され、これらのワーキングプライは、他のゴムプライ及び/又はファブリックと結びつけられているか又は結びつけられていない。これらのワーキングプライは、タイヤ・ケーシングに高いコーナリング剛性を与えるという主たる機能を有する。ベルト106は、この例では、「フーピングプライ」と呼ばれるゴムプライをさらに含み、これは「周方向」と呼ばれる補強スレッドで補強されており、「周方向」は、それらの補強スレッドが、事実上互いに平行に配置されるとともに、周方向中心面に対して好ましくは0°から10°までの範囲に含まれる角度を形成するように、実質的にタイヤ・ケーシングのまわりに周方向に延びていることを意味する。これらの周方向補強スレッドは、高速時のクラウンのスピンアウトに抵抗するという主たる機能を有することが想起される。
【0058】
本発明のこのタイヤ100は、例えば、少なくともそのベルト(106)のフーピングプライ及び/又はそのカーカス補強体(107)が本発明によるセルロース・テキスタイルコードを含むという、本質的な特徴を有する。本発明の別の可能な例示的な実施形態によれば、本発明によるセルロース・テキスタイルコードで全部又は一部が構成されるのは、例えばビードワイヤ(105)である。
【0059】
これらのプライに用いられるゴム組成物は、テキスタイル補強材の上塗り(skimming)用の従来のものであり、典型的には、天然ゴム又は幾つかの他のジエンエラストマーと、カーボンブラックなどの補強充填材と、加硫系及び通常の添加剤とに基づく。本発明の複合テキスタイルコードと、それを被覆するゴム層との間の接着は、例えば通常の接着剤組成物、例えばRFLタイプ又はそれと等価な接着剤によってもたらされる。
【0060】
その特定の構造ゆえに、本発明のセルロース・テキスタイルコードは、以下の例示的な実施形態によって立証されるように、特に改善された引張試験特性を有する。
【0061】
これらの例示的な実施形態において、4つの異なる試験を、本発明による又はよらない、ナイロン又はセルロース(レーヨン)に基づく合計で8種の異なるテキスタイルコードを製造して行った。
【0062】
コードの各実施例の種類(「T」は対照、「C]は比較例、及び「I」は本発明によるもの)、使用した材料(「N」はナイロン、「R」はレーヨン)、その構造及び最終的な性質を添付の表1にまとめた。
【0063】
開始ヤーンは、もちろん市販されており、例えば、ナイロン(およそ440cN/texに等しいMi)の場合、Kordsa社から「T728」の名称で、又はPHP社から「Enka 140HRT」若しくは「Enka 444HRST」の名称で販売されており、レーヨン(およそ1000cN/texに等しいMi)の場合、Cordenka社から「C610−F Super2」の名称で販売されている。
【0064】
既に示したように、テナシティは、ヤーン番手に対する破壊時力であり、cN/texで表される。見かけテナシティ(daN/mm
2)もまた示されており、この場合の破壊時力は、以下の方法に従って測定される、Φで表される見かけ直径に対するものである。
【0065】
集光系と、光ダイオードと、増幅器とから構成されたレシーバを用いた装置を使用すると、平行光のレーザビームで照らされたスレッドの影を精度0.1マイクロメートルで測定することが可能になる。このような装置は、例えばZ−Mike社によって品番「1210」で市販されている。この方法は、事前にコンディショニングを受けた被測定スレッドの試験片を、電動式可動テーブルに標準予備荷重0.5cN/tex下で固定することを含む。可動テーブルに固定されると、スレッドは、影投影(cast−shadow)測定システムに対して垂直に速度25mm/秒で動かされて、レーザビームと直交交差する。長さ420mmのスレッド上で、少なくとも200の影投影測定値が取得され、これらの影投影測定値の平均が見かけ直径Φを表す。
【0066】
各試験について、破断荷重、テナシティ及び見かけテナシティは、各試験における対照コードを100として相対値に換算したものも示した。
【0067】
対照コード(表1で「T」で表す)は、全て従来の二重撚りT1、T2構造によって特徴付けられ、他のコード(比較例又は本発明によるもの)は、全て従来とは異なる三重撚りT1、T2、T3構造によって特徴付けられる。しかしながら、本発明によるコードC8のみが、三重撚りの特徴と、セルロースヤーンに基づくという事実とを併せ持つ。
【0068】
この表1を読みやすくするために、ここで、例えば対照コードC1について「N47/−/3/4」で表される構造は、このコードが、単に4本の異なるストランドの加撚操作(T2、D2又はS)に由来する二重撚り(T1、T2)コードであり、異なるストランドの各々は、ヤーン番手47texの3本のナイロン(N)ヤーンを個別に逆方向に加撚する操作(T1、D1又はZ)によって事前に作製されたものであることを意味することに留意されたい。
【0069】
比較のために、「N47/1/3/4」(コードC2)で表される構造の場合、当該テキスタイルコードは、4本の異なるストランドの最終加撚操作(T3、D2又はS)に由来する三重撚り(T1、T2、T3)コードであり、異なるストランドの各々は、3本の予備ストランドの逆方向(D1又はZ)の中間加撚操作(T2)によって事前に作製されたものであり、予備ストランドの各々は、ヤーン番手47texの単一のナイロン(N)ヤーンから成り、このヤーンは、事前に、同じ方向D1(Z)の第1の加撚操作T1の間にそれ自体が加撚されたものである。
【0070】
対照コード(「T」で表す)の4つの例C1、C3、C5及びC7は、全て二重撚り構造で特徴付けられ、これらは、2本、3本又は4本のストランドを、約180の撚り係数K2に対応する180t/mから260t/mまでの(第2の)最終撚り(T2で表す)、及び方向D2(S方向)で、組立てることによって製造されたものである。従来の方式では、これらのストランドの各々は、ヤーン自体に対する、場合に応じて180t/mから260t/mまでの、反対方向D1(Z方向)の(第1の)初期撚り(T1で表す)で、事前に製造されている。
【0071】
本発明によるコードの例C8(「I」とも表され、表1中、太字で示される)は、三重撚りT1、T2、T3構造(これらの例ではZ/Z/S)で特徴付けられ、これは、4本のストランドを、同様におよそ180である撚り係数K3に対応する180t/mの最終撚り(T3で表す)、及び方向D2(S方向)で組立てることによって製造された。本発明によれば、これらのストランドの各々は、3本の予備ストランドを撚りT2(140t/m)及び反対方向D1(Z方向)で組立てることによって事前に製造されたものであり、これらの予備ストランドの各々は、ヤーン自体に対する方向D1(Z方向)の撚りT1(40t/m)によって、事前に作製されたものである。
【0072】
本発明によらないコードの3つの比較例(「C」で表す)C2、C4及びC6の場合、これらは、全て三重撚りT1、T2、T3構造によって特徴付けられる。これらは、本発明によるコードと同様に厳密に作製されたものであり、唯一の違いは、これらのコードを構成するヤーンが、セルロースヤーンではなく全てナイロンヤーンであったことである。
【0073】
これらの例における全てのテキスタイルコードは、それらの開始ヤーンの材料(ナイロン又はレーヨン)及びヤーン番手(47、94、140又は122tex)が何であっても、最終撚り係数(コードが二重撚りT1、T2構造又は三重撚りT1、T2、T3構造のどちらを有するかに応じてそれぞれK2又はK3)によって特徴付けられ、これは本質的に同一であり、およそ180に等しい(175から183までの範囲に含まれる)ことに留意することが重要である。
【0074】
この表1の詳細な検討から、まず、全てナイロンヤーンを用いて行われた試験1から3までの場合、二重撚り(C1、C3及びC5)から三重撚り(C2、C4及びC6)に切り換えても、破壊強度又は他の性質(Φ及びヤーン番手)に対する感知し得る変化は何ら伴わないことが注目される。
【0075】
対照的に、セルロースヤーン、より詳細にはレーヨンヤーン(およそ1000cN/texのMi)を用いて行った試験4の場合、二重撚り構造(C7)から三重撚り構造(C8)への切換えは、予期せぬことに、その他の全てのパラメータを変更することなく、以下のことを伴う。
−当業者にとっては非常に著しい、破壊強度及びテナシティの5%の向上。
−併せて、見かけ直径Φ及びヤーン番手の感知し得る低減。これらは、その高度に特異的な構造ゆえの、本発明によるコードのより優れた緻密さ、そして最終的には補強材の品質の明白な指標である。
−この全てが、最終的に見かけテナシティの10%を超える(正確には13%の)向上をもたらす結果となる。
【0076】
結論として、本発明によって、所与の最終撚りに対して、セルロース・テキスタイルコードの緻密さ、破壊強度及びテナシティの特性を改善することが今や可能となり、これは、タイヤを補強するために用いることができ、したがってこれらのタイヤの構造がさらに最適化される。
【表1】
【符号の説明】
【0077】
5:ヤーン
10、10a、10b、10c:予備ストランド
20a、20b、20c、20d:ストランド
30、50:三重撚りを有するテキスタイルコード
40:二重撚りを有するテキスタイルコード
100:タイヤ
102:クラウン
103:サイドウォール
104:ビード
105:ビードワイヤ
106:クラウン補強体又はベルト
107:カーカス補強体
108:折返し部
109:リム
T1、T2、T3:撚り
D1、D2:方向
【国際調査報告】