特表2017-538069(P2017-538069A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538069(P2017-538069A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】蠕動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 5/00 20060101AFI20171124BHJP
【FI】
   F04C5/00 341J
   F04C5/00 341Z
   F04C5/00 341D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-549853(P2017-549853)
(86)(22)【出願日】2015年12月10日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】GB2015053777
(87)【国際公開番号】WO2016092307
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】1421964.6
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517203589
【氏名又は名称】ホッジズ アンド ドレイク デザイン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HODGES & DRAKE DESIGN LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ホッジズ
(57)【要約】
蠕動ポンプ10は、少なくとも1つの押圧部材15を有する駆動可能なロータ14と、内部にロータ14が回転可能に配設された円筒状のステータ12と、入口側24と出口側26を有し、内壁12aに対向してステータ12周りの円周方向に延びる可撓性チューブ22を備えている。蠕動ポンプ10は、ロータ14と円周方向に延びる可撓性チューブ22の間に位置する径方向に変形可能なリング28を備えている。リング28は、ロータ14の回転時に押圧部材15により変形可能であり、これにより可撓性チューブ22を円筒状のステータ12の内壁12aに対して圧縮して、可撓性チューブ22に沿って液体を搬送するようになっている。径方向に変形可能なリング28は、ロータ14の回転中に径方向に変形可能なリング28の回転を防止するリングアンカー30を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの押圧部材を有する駆動可能なロータと、
内部に前記ロータが回転可能に配設された円筒状のステータと、
入口側と出口側を有し、内壁に対向して前記ステータ周りの円周方向に延びる可撓性チューブと、
前記ロータと前記円周方向に延びる前記可撓性チューブの間に位置する径方向に変形可能なリングを備え、前記リングは、前記ロータの回転時に前記少なくとも1つの押圧部材により変形可能であり、これにより前記可撓性チューブを前記円筒状のステータの前記内壁に対して圧縮して、前記可撓性チューブに沿って液体を搬送するようになっている一方、
前記径方向に変形可能なリングは、前記ロータの回転中に前記径方向に変形可能なリングの回転を防止するリングアンカーを含んでいる
ことを特徴とする蠕動ポンプ。
【請求項2】
前記可撓性チューブの前記入口側と前記出口側は、前記可撓性チューブが前記円筒状のステータから離れる方向の外方に向かって略径方向に延びるように並んで配列されていると共に、前記リングアンカーは、前記変形可能なリングから径方向外方に向かって突出しかつ前記可撓性チューブの前記入口側と前記出口側の間に配置されている請求項1に記載の蠕動ポンプ。
【請求項3】
前記リングアンカーは、前記可撓性チューブの前記入口側と前記出口側の間に把持されている請求項2に記載の蠕動ポンプ。
【請求項4】
前記リングアンカーは、前記径方向に変形可能なリングから径方向外方に向かって突出するフィンガを含んでいる請求項1〜3の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項5】
前記径方向に変形可能なリングは、前記可撓性チューブの外径よりも大きい軸方向深さを有している請求項1〜4の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項6】
前記径方向に変形可能なリングは、前記円筒状のステータの前記内壁に向かって径方向外方に突出する第一軸方向リム上において複数の円周方向に間隔を置いて配置された放射状突起を含んでいる請求項1〜5の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項7】
前記ロータは、前記円筒状のステータ内の前記可撓性チューブと前記径方向に変形可能なリングを軸方向に保持する円形のフランジを含む一方、前記径方向に変形可能なリングは、前記円形のフランジに接触する前記放射状突起を有して前記ステータ内に配置されている請求項6に記載の蠕動ポンプ。
【請求項8】
前記径方向に変形可能なリングは、第二軸方向リム上に、前記リングアンカーから前記可撓性チューブの前記入口側および前記出口側に亘って延びる位置決め配列を含んでいる請求項1〜7の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項9】
前記位置決め配列は、位置決めフランジを含んでいる請求項8に記載の蠕動ポンプ。
【請求項10】
前記位置決め配列は、対向する一対の位置決め突起を含んでいる請求項8に記載の蠕動ポンプ。
【請求項11】
前記ロータは、前記ロータの前記円周周りに等間隔に配置された複数の前記押圧部材を備えている請求項1〜10の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項12】
前記ロータはスピンドルを有しており、前記押圧部材は前記スピンドルと一体的に形成されている請求項1〜11の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項13】
前記押圧部材がローブである請求項1〜12の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項14】
前記ローブは、前記ロータの回転中に前記可撓性チューブを前記円筒状のステータの前記内壁に対して次第に圧縮するように構成された、円弧状の押圧面を有している請求項13に記載の蠕動ポンプ。
【請求項15】
前記ローブは、前記円弧状の押圧面が終端する頂点を有し、前記頂点が、前記可撓性チューブを前記円筒状のステータの前記内壁に対して十分に圧縮するように構成されている請求項14に記載の蠕動ポンプ。
【請求項16】
前記ロータは、直径方向に対向する位置にある、前記ローブの2つを含んでいる請求項14または15に記載の蠕動ポンプ。
【請求項17】
前記ロータは、外部回転駆動装置に接続可能である請求項1〜16の何れか1項に記載の蠕動ポンプ。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載の蠕動ポンプを組み立てる方法であって、前記方法は、
前記可撓性チューブを、前記径方向に変形可能なリングの周りの円周方向に接触するようにかつ前記リングアンカーの両側に並んで配列された前記可撓性チューブの前記入口側と前記出口側を備えるように配置するステップと、
前記可撓性チューブと前記径方向に変形可能なリングを、前記可撓性チューブが前記円筒状のステータの前記内壁に対向して配列されるように前記円筒状のステータ内に配置するステップと、
前記ロータを回転させると同時に前記ロータを前記径方向に変形可能なリングの中心に押し込むことにより、前記ロータを前記円筒状のステータ内に取り付けるステップを備えている
ことを特徴とする蠕動ポンプを組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蠕動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蠕動ポンプは、多種多様な用途で液体をポンプで吸い出すために使われており、特に液体の流れを慎重に計量する必要がある場合や液体の汚染を回避する必要がある場合に用いられている。これらは、例えば静脈内輸液を患者に投与するといった医療用途や、例えば所定量の飲料または液体香味料などの飲料の成分を調合するといった食品および飲料の用途において広く用いられている。
【0003】
従来の蠕動ポンプでは、可撓性チューブが、ロータとステータの押圧部材(例えば、ピンまたはローラ)の間で圧縮されて、ロータが回転するにつれて可撓性チューブを介して液体が搬送されている。しかしながら、押圧部材とチューブとの間の摩擦は、多くの問題、特に可撓性チューブの早期摩耗の原因となり得る。本発明は、これに対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様によれば、蠕動ポンプは、少なくとも1つの押圧部材を有する駆動可能なロータと、内部に前記ロータが回転可能に配設された円筒状のステータと、入口側と出口側を有し、内壁に対向して前記ステータ周りの円周方向に延びる可撓性チューブと、前記ロータと前記円周方向に延びる前記可撓性チューブの間に位置する径方向に変形可能なリングを備え、前記リングは、前記ロータの回転時に前記少なくとも1つの押圧部材により変形可能であり、これにより前記可撓性チューブを前記円筒状のステータの前記内壁に対して圧縮して、前記可撓性チューブに沿って液体を搬送するようになっている一方、前記径方向に変形可能なリングは、前記ロータの回転中に前記径方向に変形可能なリングの回転を防止するリングアンカーを含んでいることを特徴とする。
【0005】
本発明の第二の態様によれば、前記第一の態様に記載の蠕動ポンプを組み立てる方法であって、前記方法は、前記可撓性チューブを、前記径方向に変形可能なリングの周りの円周方向に接触するようにかつ前記リングアンカーの両側に並んで配列された前記可撓性チューブの前記入口側と前記出口側を備えるように配置するステップと、前記可撓性チューブと前記径方向に変形可能なリングを、前記可撓性チューブが前記円筒状のステータの前記内壁に対向して配列されるように前記円筒状のステータ内に配置するステップと、前記ロータを回転させると同時に前記ロータを前記径方向に変形可能なリングの中心に押し込むことにより、前記ロータを前記円筒状のステータ内に取り付けるステップを備えていることを特徴とする。
【0006】
本明細書で使用される液体という用語は、液体および半液体生成物を含むものである。
【0007】
前記ロータは、複数の前記押圧部材を有し、前記押圧部材は、前記ロータの周囲に等間隔に配置されていてもよい。前記ロータは、スピンドルを含んでいてもよい。前記スピンドルと前記押圧部材とは一体的に形成されていてもよい。また、前記押圧部材は、ローブであってもよい。
【0008】
一実施形態では、前記ローブは、前記ロータの回転中に前記可撓性チューブを前記円筒状のステータの前記内壁に対して次第に圧縮するように構成された、円弧状の押圧面を有していてもよい。前記ローブは、前記円弧状の押圧面が終端する頂点を有してもよく、前記頂点が、前記可撓性チューブを前記円筒状のステータの前記内壁に対して十分に圧縮するように構成されていてもよい。前記ロータは、直径方向に対向する位置にある、前記ローブの2つを含んでいてもよい。
【0009】
従来の蠕動ポンプでは、可撓性チューブは、ロータの回転中に押圧部材によって付与される摩擦力のために、高い磨耗率にさらされる。したがって、可撓性チューブの早期摩耗を回避するために、高摩擦力に耐えることができる高価で高級な可撓性チューブを使用することが一般に必要である。本発明の蠕動ポンプにおいて、径方向に変形可能なリングは、押圧部材と可撓性チューブ間の直接的な接触を防止しており、その代わりとして、径方向に変形可能なリングによって可撓性チューブに径方向の圧縮力が加えられる。その結果、可撓性チューブは、ポンプの作動中に摩耗することはない。加えて、径方向に変形可能なリングがリングアンカーによって静止状態に保持されていることから、可撓性チューブが引き伸ばされたり、挟まれたりすることはない。このことは、より低い等級(したがってより安価な)の可撓性チューブを一般的に使用することができることを意味している。
【0010】
前記ロータは、外部回転駆動装置に接続可能であってもよい。この構成により、蠕動ポンプは製造が容易かつ安価に製造でき、使い捨てシステムとして容易に提供できる。特に、回転駆動装置は、蠕動ポンプのロータに接続する別体の構成要素であることから、蠕動ポンプは簡単で安価な構成を有しており、例えば、蠕動ポンプは液体容器に一体的に形成されていてもよいし取り付けられていてもよい、また例えば液体容器が空である場合には、蠕動ポンプは液体容器と一緒に配置可能である。
【0011】
可撓性チューブの入口側と出口側は、円筒状のステータの円周方向に隣接する位置に並んで配列されていてもよく、これにより可撓性チューブが円筒状のステータから離れる方向の外方に向かって略径方向に延びるようにしてもよい。リングアンカーは、変形可能なリングから径方向外方に向かって突出していてもよいし、可撓性チューブの入口側と出口側の間に配置されていてもよい。リングアンカーは、可撓性チューブの入口側と出口側の間に把持されていてもよい。リングアンカーは、径方向に変形可能なリングから径方向外方に向かって突出するフィンガを含んでいてもよい。この構成は、径方向に変形可能なリングの回転を防止する便利な手段を提供している。
【0012】
径方向に変形可能なリングは、可撓性チューブの外径よりも大きい軸方向深さを有していてもよい。
【0013】
径方向に変形可能なリングは、円筒状のステータの内壁に向かって径方向外方に突出する第一軸方向リム上において複数の円周方向に間隔を置いて配置された放射状突起を含んでいてもよい。かかる放射状突起は、可撓性チューブを径方向に変形可能なリング上において軸方向に保持する手助けとなっていてもよい、特に、可撓性チューブおよび径方向に変形可能なリングが、蠕動ポンプの組み立て中に円筒状のステータ内に配置されている間は。
【0014】
ロータは、円筒状のステータ内の可撓性チューブと径方向に変形可能なリングを軸方向に保持する円形のフランジを含んでいてもよい。一実施形態では、径方向に変形可能なリングは、円形のフランジに接触する放射状突起を有してステータ内に配置されていてもよい。本実施形態では、放射状突起が簡単な軸受部材として作用し、回転する円形のフランジの軸方向内側の表面から可撓性チューブを一定間隔空ける。これによって、ロータの回転時に回転する円形のフランジと静止する可撓性チューブ間の摩擦力を低減することから、ロータの回転中に円形のフランジによって可撓性チューブが挟まれたり引き伸ばされたりすることを防止している。
【0015】
径方向に変形可能なリングは、位置決め配列を含んでいてもよい。かかる位置決め配列は、第二軸方向リム上に設けられてもよい。位置決め配列は、リングアンカーから可撓性チューブの入口側および出口側に亘って延びていてもよい。位置決め配列は、位置決めフランジを含んでいてもよいし、あるいは、対向する一対の位置決め突起を含んでいてもよい。
【0016】
径方向に変形可能なリングは、径方向に変形可能なリング上の可撓性チューブの軸方向位置を提供できる位置決め部材を含んでいてもよい。位置決め部材は、径方向に変形可能なリングの軸方向の反対側の端部において第一リムと第二リムに設けられてもよい。位置決め部材は、可撓性チューブが径方向に変形可能なリング上に軸方向に保持されることを確実にする、特に、可撓性チューブおよび径方向に変形可能なリングが、蠕動ポンプの組み立て中に円筒状のステータ内に配置されている間は。
【0017】
位置決め部材は、円周方向に間隔を置いて配置された複数の位置決め突起を含んでいてもよく、かかる位置決め突起は、第一リム上において径方向外方に突出していてもよい。位置決め突起は、第一リムの周りに等間隔に配置されていてもよい。位置決め部材は、第二リム上に位置決めフランジを含んでいてもよく、かかる位置決めフランジは、リングアンカーから可撓性チューブの入口側および出口側に亘って延びるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】ロータがある回転位置にある本発明の第一の実施形態としての蠕動ポンプを示す断面図。
図1b】ロータが図1aとは異なる回転位置にある本発明の第一の実施形態としての蠕動ポンプを示す断面図。
図2a図1a,1bに示す径方向に変形可能なリングの詳細を示す斜視図。
図2b図1a,1bに示す径方向に変形可能なリングの詳細を示す斜視図であって、図2aとは異なる方向から見た図。
図3】円筒状のステータ内に配置される前の、径方向に変形可能なリングの周りに配置された可撓性チューブを示す斜視図。
図4】ロータが円筒状のステータに嵌め込まれる前の、円筒状のステータ内に配置された可撓性チューブおよび径方向に変形可能なリングを示す斜視図。
図5】ロータの詳細図。
図6a】ロータがある回転位置にある本発明の第二の実施形態としての蠕動ポンプを示す断面図。
図6b】ロータが図6aとは異なる回転位置にある本発明の第二の実施形態としての蠕動ポンプを示す断面図。
図7a図6a,6bに示す径方向に変形可能なリングの詳細を示す斜視図。
図7b図6a,6bに示す径方向に変形可能なリングの詳細を示す斜視図であって、図7aとは異なる方向から見た図。
図8】径方向に変形可能なリングの周囲に配置された可撓性チューブを有する図7に示す径方向に変形可能なリングの軸方向図。
図9】円筒状のステータ内に配置される前の、径方向に変形可能なリングの周りに配置された可撓性チューブを示す斜視図。
図10】ロータが円筒状のステータに嵌め込まれる前の、円筒状のステータ内に配置された可撓性チューブおよび径方向に変形可能なリングを示す斜視図。
図11】ロータの詳細図。
図12a】ロータがある回転位置にある本発明の第二の実施形態を示す断面図。
図12b】ロータが図12aとは異なる回転位置にある本発明の第二の実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
蠕動ポンプ10,50は、円筒状のステータ12を含んでいる。図示はしていないが、円筒状のステータ12は、例えば一体成形により一体的に形成されて投与される液体を有する液体容器を備えていてもよいし、液体容器に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0021】
図1〜5には、本発明の第一の実施形態としての、ロータ14(図5参照)を含む蠕動ポンプ10が示されている。ロータ14は、一般的には、成形された十分に硬質のプラスチック材料で形成されている。ロータ14は、スピンドル18と一体的に形成されると共にスピンドル18から径方向外方に向かって突出し、かつスピンドル18の周囲に等間隔に配置されている、ローブ16のような形の複数の押圧部材15を含んでいる。例示された実施形態では、ロータ14は3つのローブ16を含んでいるが、ロータ14が任意の数のローブ16を含み得ることは理解されるであろう。スピンドル18は、電動モータの駆動軸のような外部回転駆動装置(図示せず)と接続可能とされた中央駆動開口部20を含んでいる。
【0022】
蠕動ポンプ10は、ポリ塩化ビニルのような任意の好適な弾性プラスチック材料で形成できる可撓性チューブ22を含んでいる。可撓性チューブ22は、液体が蠕動ポンプ10に供給される入口側24と、液体が蠕動ポンプ10から送出される出口側26とを有している。入口側24と出口側26は、ロータ14の標準の回転方向(添付の図面で時計回り)に対して指定されている。入口側24は、一般的には、液体容器(図示せず)の液体出口ポートに接続される一方、出口側26は、液体を所望の位置に送達するように構成されている。可撓性チューブ22は、内壁12aに対向して円筒状のステータ12の周方向に延びており、入口側24および出口側26は、円筒状のステータ12の周方向に隣接する位置に並んで配列されている。入口側24および出口側26は、略径方向に向かって円筒状のステータ12から離隔方向の外方に向かって延び出している。
【0023】
径方向に変形可能なリング28は、弾性的に変形可能な好適な材料(一般的には、プラスチック材料)を含んでおり、ロータ14と周方向に延びる可撓性チューブ22の間に配置されている。変形可能なリング28は、図1aおよび図1bに示すように、ロータ14のローブ16に接触されてローブ16により径方向外側に変形されている。変形可能なリング28の径方向外方への変形は、可撓性チューブ22を円筒状のステータ12の内壁12aに対して圧縮し、これにより、外部回転駆動装置によってロータ14が回転されている時に、変形可能なリング28と内壁12a間における可撓性チューブ22の圧縮が、蠕動動作により入口側24と出口側26との間で可撓性チューブ22に沿って液体を搬送する。(図1aおよび図1bに示すように、ロータ14を時計回りに回転させることにより、)通常、液体は可撓性チューブの入口側24から出口側26へと搬送されるが、流れる方向は容易に反転させることができ、当然のことながら外部回転駆動装置の回転の方向を時計回りまたは反時計回りに単に選択することにより、所望の流れる方向が選択され得る。
【0024】
変形可能なリング28は、変形可能なリング22から径方向に突出するフィンガ32のような形のリングアンカー30を含んでいる。リングアンカー30は、可撓性チューブ22の入口側24と出口側26の間に位置し、かつ、(径方向外向きに)十分な長さと、可撓性チューブ22の入口側24と出口側26との間の位置から外れることができないような(周方向の)十分な幅を有している。それゆえ、当然のことながら、リングアンカー30は、ロータ14が円筒状のステータ12内で回転する際に、変形可能なリング28がロータ14によって回転されることを防止している。リングアンカー30が設けられていない場合には、変形可能なリング28がロータ14によって回転させられ、これにより変形可能なリング28と円筒状のステータ12の内壁12aとの間で可撓性チューブ22の望ましくない伸張および磨耗が生じてしまう。
【0025】
図3に示すように、変形可能なリング28は、可撓性チューブ22の外径よりも大きい軸方向深さを有している。蠕動ポンプ10の組み立てを手助けするために、変形可能なリング28は、可撓性チューブ22を変形可能なリング28の周りに配置する手助けをすると共に可撓性チューブ22が変形可能なリング28から軸方向に外れるのを防止する、複数の位置決め部材34を備えている。
【0026】
例示の実施形態では、位置決め部材34は、変形可能なリング28の第一リム28a上の複数の位置決め突起36を含んでいる。位置決め突起36は、円筒状のステータ12の内壁12aに向けて用いられるように、変形可能なリング28からわずかな距離だけ径方向外側に向かって突出していると共に、第一リム28aの周囲に等間隔に設けられている。位置決め部材34は、第二リム28b上に位置決めフランジ38をさらに備えており、位置決めフランジ38は、可撓性チューブ22の入口側24と出口側26を越えてリングアンカー30から側方に延び出すように構成されている。それゆえ、当然のことながら、位置決め突起36は、可撓性チューブ22が変形可能なリング22の第一リム28aの軸方向に外れるのを防止すると共に、位置決めフランジ38は、可撓性チューブ22が第二リム28bの軸方向に対して反対方向にずれるのを防止する手助けをしている。
【0027】
ここでは、蠕動ポンプ10の組み立て方法を、図3および図4を参考にして説明する。はじめに、可撓性チューブ22は、可撓性チューブ22が変形可能なリング28の径方向外表面に接触するように、また可撓性チューブ22の入口側24および出口側26がリングアンカー30の両側に並んで配置されるように、変形可能なリング28の周囲に配置される。当然のことながら、位置決め突起36と位置決めフランジ38は、ユーザが可撓性チューブ22を変形可能なリング28の周囲に配置する手助けをすると共に、組立中に可撓性チューブ22が変形可能なリング28から軸方向に外れるのを防止している。組み立てられた可撓性チューブ22と変形可能なリング28は、図面上で矢印Aで示されているように例えば圧搾によって圧縮される一方、矢印B方向で円筒状のステータ12の中に押し込むことができるような十分な大きさとされている。
【0028】
可撓性チューブ22と変形可能なリング28が一旦図4に示すように円筒状のステータ12内に配置されると、ロータ14が取り付け可能となり、このことは、図面上で矢印Cで示されているようにロータ14を変形可能なリング28の中心に押し込み、同時に図面上で矢印Dで示されているようにロータ14を少しずつ回転させることによって達成される。ロータ14が一旦変形可能なリング28の中心に嵌め込まれると、円形のフランジ14aもまた、可撓性チューブ22を円筒状のステータ12内の正しい位置に保持する手助けとなっていてもよい。一旦組み立てられると、中央駆動開口部20は、ロータ14を回転させるように操作可能な外部回転駆動装置に接続可能とされている。
【0029】
図6〜12に、本発明の第二の実施形態としての蠕動ポンプ50が示されている。かかる蠕動ポンプ50は、図1〜5に示す蠕動ポンプ10と共通する多くの特徴を共有しており、同一の符号を用いることにより共通する特徴を有する部位が示されている。次に、蠕動ポンプ10,50間の相違について説明する。
【0030】
蠕動ポンプ50は、ロータ52(図11参照)を備えており、かかるロータ52は、スピンドル18と一体的に形成されかつスピンドル18から径方向外方に向かって突出する2つの直径方向に対向するローブ54を含んでいる。図6aおよび図6bに示すように、各ローブ54は、スピンドル軸に対する半径が徐々にかつ滑らかに増加する曲線状あるいは円弧状の押圧面54aを有している。押圧面54aは、ロータ52が円筒状のステータ12内で時計回りに回転するにつれて、可撓性チューブ22を円筒状のステータ12の内壁12aに対して徐々に圧縮する。各ローブ54はまた、押圧面54aが終端する頂点54bを有している。図6aおよび図6bから明らかなように、各頂点54bは、必要とされる蠕動ポンプの動作を達成するために、可撓性チューブ22を円筒状のステータ12の内壁12aに対して十分に圧縮するように配列されている。
【0031】
特に図7a,図7bおよび図8に示すように、蠕動ポンプ50は、第一軸方向リム56a上に円周方向に離間した複数の放射状突起58を有する、径方向に変形可能なリング56を備えている。かかる放射状突起58は、円筒状のステータ12の内壁12aに向かって径方向外方に突出されている。ロータ52は、円筒状のステータ12内に可撓性チューブ22および径方向に変形可能なリング56を軸方向に保持する円形のフランジ52aを含んでいる。図12aおよび図12bに示すように、径方向に変形可能なリング56は、放射状突起58が円形のフランジ52aに接触するように、蠕動ポンプ50の円筒状のステータ12内に配列されている。放射状突起58は、簡単な軸受部材または軸受フランジとして作用し、可撓性チューブ22を円形のフランジ52aの軸方向内面から一定の距離を置く。上述したように、このことは、ロータ52が回転している際に回転する円形のフランジ52aと可撓性チューブ22間の摩擦力を低減あるいは除去すると共に、可撓性チューブ22が円形のフランジ52aによって把持されて引き伸ばされることを防止している。
【0032】
第二の実施形態では、放射状突起58の主要な機能は、軸受部材または軸受フランジとして作用することであるが、また当然のことながら、放射状突起58は第一の実施形態の位置決め突起36と同様に、径方向に変形可能なリング56上の可撓性チューブ22の軸方向の位置決めおよび保持の手助けをする。
【0033】
可撓性チューブ22の軸方向の位置決めおよび保持をさらに手助けするために、径方向に変形可能なリング56は、任意で、第二軸方向リム56b上に位置決め配列60を含むことができる(図7a,図7bおよび図8参照)。位置決め配列60は、可撓性チューブ22の入口側24および出口側26に亘ってリングアンカー30から延びる対向する一対の位置決め突起62を備えている。
【0034】
蠕動ポンプ50の組み立て方法は、図3および図4を用いて説明した組立方法と本質的に同じである。すなわち、可撓性チューブ22は、図9に示すように最初は、可撓性チューブ22が変形可能なリング56の径方向外側表面に接触するように、また可撓性チューブ22の入口側24と出口側26がリングアンカー30の両側に並んで配列されるように、変形可能なリング56の周囲に配置されている。今回の実施形態では、放射状突起58および位置決め突起62が、ユーザが変形可能なリング56の周囲に可撓性チューブ22を位置決めする手助けとなってもよいし、組立時に可撓性チューブ22が変形可能なリング56から軸方向に外れるのを防止する手助けとなってもよい。次いで、組み立てられた可撓性チューブ22および変形可能なリング56が、図面上で矢印Aで示されているように例えば圧搾によって圧縮されると共に、放射状突起58の最上部を矢印Bの方向で円筒状のステータ12内に押し込むことが可能な十分な大きさとされている。
【0035】
図10に示すように、一旦可撓性チューブ22および変形可能なリング56が円筒状のステータ12内に配置されると、ロータ52が取り付け可能となる。このことは、図面上で矢印Cで示されているように、ロータ14を変形可能なリング56の中心に押し込むと同時に、図面上で矢印Dで示されているように、ロータ52を少しだけ回転させることによって達成される。一旦ロータ52が変形可能なリング56の中心に嵌め込まれると、円形のフランジ52aは、放射状突起58に接触する。かかる放射状突起58は、上述のように、円形のフランジ52aから可撓性チューブ22を一定間隔空ける軸受フランジとして作用する。一旦組み立てられると、中央駆動開口部20は、ロータ52を回転させるように操作可能な外部回転駆動装置と接続可能となる。
【0036】
代表的な実施形態が前述の段落で説明されてきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な修正を行うことができることを理解すべきである。したがって、特許請求の範囲の広さおよび範囲は、上記の代表的な実施形態に限定されるべきではない。請求項および図面を含む明細書に開示された各特徴は、特に断らない限り、同じ,等価または類似の目的に合う代替の特徴に置き換えてもよい。
【0037】
例えば、ロータ14,52は、外部回転駆動装置の駆動シャフトの開口部に接続可能な中央駆動開口部20の代わりに突起を含んでいてもよい。
【0038】
文脈から明らかにそうでないことを要求していない限り、明細書および特許請求の範囲全体を通して、「備える又は含む」,「備えている又は含んでいる」等の単語は、排他的または網羅的な意味とは対照的に包括的に解釈されるべきである。すなわち、「含むが、これらに限定されない」という意味で。
【0039】
上記特徴の全ての考え得る変形における任意の組み合わせは、特に断りのない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
【国際調査報告】