(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538070(P2017-538070A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】冷却装置用往復圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20171124BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20171124BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
F04B39/12 101B
F04B39/00 B
F04B39/10 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-549863(P2017-549863)
(86)(22)【出願日】2015年12月11日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月9日
(86)【国際出願番号】IB2015059534
(87)【国際公開番号】WO2016092514
(87)【国際公開日】20160616
(31)【優先権主張番号】PG2014000062
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517203615
【氏名又は名称】アンジェラントーニ テスト テクノロジーズ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ イン ショート エイティーティー ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マウリツィオ アスカニ
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC03
3H003CC05
3H003CC06
3H003CC11
3H003CD03
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部が設けられた冷却装置に用いることができる、すなわち、性能は同じであるが、このような冷却装置に現在用いられている往復圧縮機の変位量よりも小さい変位量を有する往復圧縮機を実現すること。
【解決手段】第1の流量(X)の冷媒が循環して前記圧縮機に流入する主分岐部(M)と、第2の流量(X
1)の冷媒が前記第1の流量(X)の冷媒の圧力とは異なる圧力で循環する少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部(E)と、追加の流量(X
2)の冷媒が循環する少なくとも1つの追加の二次エコノマイザ分岐部(E’)と、を有する閉回路(C)が設けられる冷却装置(200)用の往復圧縮機(100)であって、前記圧縮機は、少なくとも1つのシリンダ(110)と、上死点(S)と下死点(I)との間で前記少なくとも1つのシリンダ内で往復運動する少なくとも1つのピストン(111)と、が設けられ、前記圧縮機は、前記第1の流量の冷媒の流入のために少なくとも1つの吸引ダクトと、前記第2の流量の冷媒の流入のために前記シリンダの壁に設けられる少なくとも1つの第1の吸入孔(107)と、を備え、前記第1の吸入孔(107)を少なくとも前記ピストンの吸入行程中に少なくとも部分的に露出させ、少なくともその圧縮行程中に前記第1の吸入孔を覆い、前記第1の吸入孔(107)は、前記シリンダの軸(A)を実質的に横切る主寸法(L)のスリット形状を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉回路(C)が設けられる冷却装置(200)用の往復圧縮機(100)であって、前記閉回路は、第1の流量(X)の冷媒が循環して前記圧縮機に流入する主分岐部(M)と、第2の流量(X1)の流体が前記第1の流量(X)の冷媒の圧力と異なる圧力で循環する少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部(E)と、追加の流量(X2)の冷媒が循環する少なくとも1つの追加の二次エコノマイザ分岐部(E’)とを有し、
前記圧縮機は、少なくとも1つのシリンダ(110)と、上死点(S)と下死点(I)との間で前記少なくとも1つのシリンダ内で往復運動する少なくとも1つのピストン(111)とが設けられ、
前記圧縮機は、前記第1の流量の冷媒の流入のために少なくとも1つの吸引ダクトと、前記第2の流量の冷媒の流入のために前記シリンダの壁に設けられる少なくとも1つの第1の吸入孔(107)とを備え、
前記ピストンは、前記第1の吸入孔(107)を少なくともその吸入行程中に少なくとも部分的に露出させ、少なくともその圧縮行程中に前記第1の吸入孔を覆い、
ここで、前記第1の吸入孔(107)は、前記シリンダの軸(A)を実質的に横切る寸法(L)のスリット形状を有し、前記ピストンの下死点に配置され、
前記圧縮機は、前記圧縮機内の前記追加の流量(X2)の冷媒の流入のために前記シリンダの壁に設けられる少なくとも1つの第2の吸入孔(112)をさらに備え、
ここで、前記第2の吸入孔(112)は、前記シリンダの軸(A)を実質的に横切る寸法(L)のスリット形状を有し、前記下死点から前記第1の吸入孔(107)が位置する距離(d)よりもさらに離れた距離(D)に配置され、
前記ピストンは、前記第2の吸入孔(112)を少なくともその吸入行程中に露出させ、少なくともその圧縮行程中に前記第2の吸入孔を覆うようになっていることを特徴とする冷却装置(200)用の往復圧縮機(100)。
【請求項2】
前記第1の吸入孔は、前記ピストンの下死点と実質的に同一面上にある下側(107a)を有することを特徴とする請求項1に記載の往復圧縮機(100)。
【請求項3】
前記第1の吸入孔および/または前記第2の吸入孔は、前記シリンダ(110)の円筒内面(110c)に位置する実質的に長方形の形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の往復圧縮機(100)
【請求項4】
前記第1の吸入孔および/または前記第2の吸入孔の高さ(H)と長さ(L)との比は0.5より小さく、好ましくは0.2より小さいことを特徴とする請求項3に記載の往復圧縮機(100)。
【請求項5】
前記第2の吸入孔の下側(112a)は、前記第1の吸入孔(107)の上側(107b)と同一面上にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の往復圧縮機(100)。
【請求項6】
前記第1の吸入孔(107)および/または前記第2の吸入孔(112)は、少なくとも1つの機能的に結合された逆止弁(180)を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の往復圧縮機(100)。
【請求項7】
前記逆止弁は、変形可能なリードタイプであることを特徴とする請求項6に記載の往復圧縮機(100)。
【請求項8】
前記逆止弁は、前記シリンダ(110)の壁(110a)に収容されていることを特徴とする請求項7に記載の往復圧縮機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置用の往復圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の往復圧縮機は、主分岐部と少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部とを有する閉回路を備え、所定の流量の冷媒が循環する冷却装置で用いられるものである。この閉回路の前記分岐部では、全冷媒が所定の2つの分配流量で循環し、圧縮機から排出される。このような二次エコノマイザ分岐部は、一方では、凝縮器と膨張弁との間に含まれる閉回路のセクションに流体的に接続され、他方では、二次分岐部を流れる分配流量を圧縮機へ再注入するために、往復圧縮機のシリンダに流体的に接続されている。公知のように、閉回路に沿って、凝縮器、膨張弁、蒸発器、および往復圧縮機が、互いに流体的に接続されている。さらに公知のように、追加の膨張弁、および熱交換器、または追加の蒸発器を含むことがある二次エコノマイザ分岐部を循環する冷媒の分配流は、冷却装置の回路の最高圧力と最低圧力との中間の圧力、すなわち凝縮器への流体の圧力と、主分岐部に沿った蒸発器への流体の圧力との中間の圧力を有する。
【0003】
一般に、冷凍装置において通常用いられる圧縮機では、二次エコノマイザ分岐部から来る前述の分配流量が注入される圧縮機の正確な位置が、常に判断される。例えば、公知の法則により、圧縮機軸の方向に圧力が増加することが知られているスクリュー圧縮機では、二次エコノマイザ分岐部から来る分配流量の正確な注入点を見つけることができる。スクリュー圧縮機やスクロール圧縮機のような他のタイプの圧縮機についても、同じことが言える。圧縮室内の作動原理および圧力分布が、スクリュー圧縮機の場合とは異なるけれども、スクロール圧縮機では、圧縮室の任意の点での圧力を常に知ることができる。
【0004】
シリンダと、シリンダ内で往復運動するピストンとを備える往復圧縮機を用いる場合、圧力は、時間の経過とともに変化し、吸入および圧縮行程において、シリンダ内のピストンの位置に拘わらず、シリンダ全体として、常に実質的に同じである。
【0005】
しかし、往復圧縮機を有する冷却装置において、二次エコノマイザ分岐部を用いることを可能にするために、エマーソン・クライメイト・テクノロジ社(Emerson Climate Technologies Inc.)による特許文献1には、ヘッダー上に配置された一般的な吸引ダクトを備えることに加えて、規定された中間圧力で前述のエコノマイザ分岐部から来る分配流量の流入のための円形断面を有する側方吸入孔が設けられたシリンダを用いることが記載されている。圧縮機のシリンダにおける吸入孔には、少なくとも1つのカムと少なくとも1つのそれぞれの従動子とからなる複雑な機構を介して、その開閉が圧縮機の駆動軸と同期させられているバルブが配置されている。これにより、二次エコノマイザ分岐部からの前述の冷媒の分配流量は、ピストンの圧力が、前述の二次の分配流量の圧力よりも僅かに小さい圧力に達する直前にのみ注入することができる。
【0006】
特許文献1に記載されているような複雑な同期システムを用いなくてもよいようにするために、別の解決策が研究されている。特に、キャリア社(Carrier Corporation)による特許文献2には、吸入行程においてピストンによって露出され、ピストンの圧縮行程中にピストンによって覆われる円形の吸入孔を、圧縮機シリンダにどのように設けるかについて述べられている。同じ変位量を有する往復圧縮機に関しては、ピストン行程の一部が、二次エコノマイザ分岐部からの冷媒の分配流量の流入を可能にするために用いられるため、側方孔がない場合、圧縮機の成し得る仕事は、残念ながら、顕著に減少する。特に、分配流量が全体流量の50%になるほどに相当大きい場合、二次エコノマイザ分岐部を備えていない冷却装置で用いられるものと同じ変位量を有する圧縮機を用いることは、非常に困難である。実際、このような場合、冷媒液のための吸入孔は、シリンダの軸線方向に著しく長寸のものとなり、そのため、通常使用されるものよりも大きな変位量を有し、したがって全体的なコストが大きい圧縮機を用いなければならなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0170003号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/064321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部が設けられている冷却装置に用いることができ、性能は同じであり、従来の冷却装置に用いられている往復圧縮機よりも、変位量が小さい往復圧縮機を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、前述の目的を達成することに加えて、側方孔のない公知の圧縮機から始める場合でも、実施が非常に簡単な往復圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的およびそれ以外の目的が、本発明による閉回路が設けられている冷却装置用の往復圧縮機によって達成され、前記閉回路は、第1の流量の循環冷媒が前記圧縮機に流入する主分岐部と、第2の流量の冷媒が前記第1の流量の冷媒の圧力と異なる圧力で循環する少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部とを有し、前記圧縮機は、少なくとも1つのシリンダと、上死点と下死点との間で前記少なくとも1つのシリンダ内で往復運動する少なくとも1つのピストンとが設けられ、前記圧縮機は、前記第1の流量の冷媒の流入のために少なくとも1つの吸引ダクトと、前記第2の流量の冷媒の流入のために前記シリンダの壁に設けられる少なくとも1つの第1の吸入孔とを備え、前記ピストンは、前記第1の吸入孔を少なくともその吸入行程中に少なくとも部分的に露出させ、少なくともその圧縮行程中に前記第1の吸入孔を覆い、前記第1の吸入孔は、前記シリンダの軸を実質的に横切る主寸法のスリット形状を有することを特徴とする。
【0011】
実際、シリンダの軸を実質的に横切る長い主寸法のスリット状の第1の吸入孔が、圧縮機自体の変位量の寸法に具体的に影響を及ぼすことなく、二次エコノマイザ分岐部からの多量の冷媒が流れることを可能にする。実際、スリットの寸法は、シリンダの軸方向に沿って、即ち高さにおいて非常に制限されるが、シリンダの軸を横切る、即ち長さにおいて著しく大きい。このように、側方孔を開閉するピストン行程と同じ非常に短い時間に、多量の冷媒がシリンダ内に流れることが可能になる。
【0012】
スリットという用語は、シリンダの壁に形成され、他の寸法に対して支配的寸法(主寸法とも呼ばれる)を有する任意の形状のノッチを指すものである。特に、本例では、主要な又は支配的な又はより関連する寸法は、圧縮機のシリンダ軸を横切る平面上に位置する寸法であり、圧縮機のシリンダ軸と平行な寸法、即ち、スリットの高さ方向の寸法ではない。
【0013】
本明細書に開示の実施形態によれば、前記第1の吸入孔は、前記ピストンの下死点の隣に配置され、好ましくは、前記第1の吸入孔は、前記ピストンの下死点と実質的に同一平面上にある下側を有する。このような解決策は、側方孔における吸入および圧縮行程における圧縮機の変位量および圧縮作業の過度の損失を同時に回避することを可能にする。
【0014】
本発明によれば、前記冷却装置の少なくとも1つの閉回路は、追加の流量の冷媒が循環する少なくとも1つの追加の二次エコノマイザ分岐部をさらに備え、前記圧縮機は、前記圧縮機内の前記追加の流量の冷媒の流入のために前記シリンダの壁に設けられる少なくとも1つの第2の吸入孔をさらに備え、ここで、前記第2の吸入孔は、前記シリンダの軸を実質的に横切る主寸法のスリット形状を有し、前記下死点から前記第1の吸入孔が位置する距離よりもさらに離れた距離に配置され、前記ピストンは、前記第2の吸入孔を少なくともその吸入行程中に露出させ、少なくともその圧縮行程中に前記第2の吸入孔を覆う。追加の二次エコノマイザ分岐部から来る追加の流量が、二次エコノマイザ分岐部から来る前記第2の流量の圧力よりも低い圧力で、前記第2の吸入孔を通って圧縮機のシリンダに流入する場合、このような構成は、特に適している。
【0015】
本明細書に開示の実施形態によれば、共にスリット形状を有する前記第1の吸入孔および前記第2の吸入孔は、実質的にまたは概ね長方形であり、すなわち圧縮機のシリンダの内面を向くスリット面は、実質的に圧縮機シリンダの円筒内側表面にある長方形をなしている。頂部側または底部側の寸法が、2つの側部の高さ、すなわち圧縮機シリンダの軸方向に沿った寸法よりも大幅に大きい実質的に長方形の形状は、互いに融合された側部、すなわち鋭い縁部を有さないがシリンダの内面において実質的に長方形の表面形状を有することもできる。
【0016】
さらに、前記第1の吸入孔および/または前記第2の吸入孔の高さ方向の寸法と長さ、すなわち主方向に沿った寸法との比率は、0.5より小さく、好ましくは0.2より小さい。実際、本出願人は、試験を行い、このような寸法は最良の性能を得ることができるものであった。スリットの長さは、シリンダの軸を横切る平面上でスリットの高さの中央を通過するように、スリットが延びるシリンダの円弧に沿って計算することに留意しなければならない。
【0017】
加えて、前記第2の吸入孔の下縁は、前記第1の吸入孔の上縁と同一面上にある。
【0018】
さらなる実施形態によれば、前記第1の吸入孔および/または前記第2の吸入孔は、機能的に結合された少なくとも1つの逆止弁を備えている。この逆止弁は、ピストンの上昇ステップ、すなわち冷媒の圧縮ステップの間、第1および第2の吸入孔を通って圧縮機に流入した冷媒が逆流することを防止する。
【0019】
より具体的には、前記逆止弁は、変形可能なリードタイプであり、かつ前記シリンダの壁に収容されている。これにより、コンプレッサは一層コンパクトになり、側方孔の開閉を同期させるための複雑な要素を設ける必要はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による往復圧縮機を備える冷却装置の模式図である。
【
図2】
図1の冷凍装置に関する冷凍サイクルのP−H線図である。
【
図3a】吸入および圧縮ステップにおける圧縮機のシリンダ内部の模式的縦断面図である。
【
図3b】吸入および圧縮ステップにおける圧縮機のシリンダ内部の模式的縦断面図である。
【
図3c】吸入および圧縮ステップにおける圧縮機のシリンダ内部の模式的縦断面図である。
【
図3d】吸入および圧縮ステップにおける圧縮機のシリンダ内部の模式的縦断面図である。
【
図4a】圧縮機のシリンダの壁に設けられた第1および第2の吸入孔を示す本発明による往復圧縮機のシリンダの縦断面図である。
【
図4b】圧縮機のシリンダの壁に設けられた第1および第2の吸入孔を示す本発明による往復圧縮機のシリンダの横断面図である。
【
図5】本発明による往復圧縮機を備える別の冷却装置の模式図である。
【
図6】
図5の冷却装置に関する冷凍サイクルのP−H線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示のみを目的として、限定することなく、本発明のいくつかの特定の実施形態を、添付の図面を参照して、以下に説明する。
【0022】
各図において、符号100は、本発明による往復圧縮機を示す。
【0023】
図1は、シリンダ110と、上死点S(
図3d参照)と下死点I(
図3c参照)との間でシリンダ110内を往復運動するピストン111とを備える本発明による往復圧縮機100が設けられた冷却装置200の模式図である。特に、冷却装置200は、一定量の冷媒が循環している閉回路Cを備える。この閉回路Cは、その順番で、第1の流量Xの冷媒が循環し吸引ダクト109を通して往復圧縮機100に流入する主分岐部Mと、第1の二次分岐部Eと、第2の二次分岐部E’とを備えている。第1の二次分岐部Eでは、第2の流量X1の冷媒が循環し、追加の二次分岐部E’では、追加の流量X2の冷媒が循環する。主分岐部Mおよび2つの二次分岐部EおよびE’を循環する流量の合計は、閉回路Cを循環して往復圧縮機100から流出する流量である。
【0024】
図1に示すように、冷却装置200は、さらに凝縮器101と、第1の膨張弁102と、第1の蒸発器103とを備えている。第1の膨張弁102及び第1の蒸発器103は、共に、流量Xが循環する閉回路Cの主分岐部Mに沿って配置されている。流量Xは、閉回路Cを循環する総流量と、2つの二次分岐部EおよびE’を循環する流量X1およびX2との差によって与えられ、往復圧縮機100のシリンダ110の上面にある吸引ダクト109(
図3a参照)を通って、往復圧縮機100に直接入る。
【0025】
2つの二次分岐部EおよびE’は、それぞれ、第2の膨張弁130、130’および第2の蒸発器140、140’を備えている。各二次分岐部EおよびE’において、循環流量、圧力および温度のすべての値が異なる。このタイプの構成により、冷却装置200は、各蒸発器103、140、140’に接続された3つの異なる室を冷却することができる。特に、二次分岐部Eおよび追加の二次分岐部E’に沿ってそれぞれ循環する第2の流量X1および追加の流量X2は、異なる温度および圧力である。二次分岐部Eに沿って循環する流量X1の圧力は、凝縮器101での流体の圧力と第1の蒸発器103での圧力との中間であり、追加の二次分岐部E’を循環する追加の流量X2の冷媒の圧力は、第1の流量Xの流体の圧力と第2の流量X1の流体の圧力の中間である。
【0026】
図1では、冷却装置200の閉回路Cを循環する冷媒の熱力学的状態は、1〜8の数で括弧内に示されていることに留意されたい。次に、
図2では、閉回路Cの対応する点における流体の熱力学的状態の情報と共に、冷却装置200内の冷媒によって行われる熱力学的サイクルが示されている。
図2のグラフに示す数字9、10は、後述するように、往復圧縮機100のシリンダ110の壁110aに設けられている第2の吸入孔112、および第1の吸入孔107の開口部における吸入ステップ(
図3bおよび
図3c)における圧縮機100内の冷媒の熱力学的状態に対応している。
【0027】
図5は、
図1に示す実施形態の1つと同様の往復圧縮機100を備える追加の冷却装置200’を示している。
【0028】
冷却装置200’は、第1の流量Xの冷媒が所定の圧力で循環する主分岐部Mと、第1の凝縮器101と、第1の蒸発器103と、第1の凝縮器101および第1の蒸発器103の間に配置されている第1の膨張弁102とを有する閉回路Cを備えている。閉回路Cは、第2の流量X1の冷媒が循環する第1のエコノマイザ分岐部Eも備えている。第1のエコノマイザ分岐部Eは、往復圧縮機100と、第1の凝縮器101および第1の膨張弁102の間に含まれる閉回路Cのセクション106に流体的に接続されている。
【0029】
本明細書で開示する実施形態では、閉回路Cは、冷媒の追加の流量X2のための追加のエコノマイザ分岐部E’を、さらに備えている。
【0030】
本明細書で開示する実施形態によれば、エコノマイザ分岐部E、および追加の二次エコノマイザ分岐部E’は、第2の膨張弁150、150’と、第1の凝縮器101および第1の膨張弁102の間に含まれる閉回路Cのセクション106と共に、少なくとも1つの熱交換器160、160’とを備えている。
【0031】
本明細書で開示する実施形態によれば、第2の流量X1は、往復圧縮機100のシリンダ110において、凝縮器の圧力P
2と、シリンダ110の吸入圧力、すなわち往復圧縮機100の吸入ステップにおいて、吸引ダクト109からコンプレッサのシリンダ110に流入する流量Xの流体の圧力P
1との中間の吸入圧力P
8を有している。
【0032】
図5では、冷却装置200’の閉回路Cを循環する冷媒の熱力学的状態は、1〜10の数で括弧内に示されていることに留意されたい。次に、
図6では、冷媒のそれぞれの熱力学的条件の情報と共に、閉回路C内の冷媒によって行われる熱力学的サイクルが示されている。
図6のグラフに示された参照番号11および12は、後述するように、往復圧縮機100のシリンダ110の壁110aにある第2の吸入孔112および第1の吸入孔107の開口部における吸入ステップ(
図3bおよび3c)において、圧縮機100内の冷媒の熱力学的状態に対応している。
【0033】
本発明によれば、冷却装置200、200’の両方において、往復圧縮機100は、前述の第2の流量X1の冷媒の流入のために、シリンダ110の壁110aに得られる第1の吸入孔107を備えている。
【0034】
往復圧縮機100は、追加の流量X2の冷媒の流入のための第2の吸入孔112をさらに備えている。より具体的には、第2の吸入孔112は、ピストン111の下死点Iから第1の吸入孔107が位置する距離dよりも大きい距離Dだけ離して配置されている。この距離は、シリンダ110の軸Aを横切り、吸入孔107、112の高さHの中央を通過する2つの平面PおよびP1に対して割り振られている。
【0035】
本明細書で開示された実施形態によれば、冷媒(本例ではR404a)の第2の流量X1のための第1の吸入孔107は、スリットであり、ピストン111の下死点Iに配置され、ピストンは、その吸入行程中に第1の吸入孔107を露出させ、その圧縮行程中に第1の吸入孔107を覆う。さらに、前述のように、第1の吸入孔107が位置する距離dよりも離れたピストン111の下死点Iから距離Dに配置された追加の流量X2の冷媒の流入のための第2の吸入孔112も、スリットである。また、第2のスリット112は、シリンダの壁110aに配置され、ピストンは、その吸入行程中に、第1の吸入孔107を露出する前に、第2の吸入孔112を露出させ、第1の吸入孔107を覆った後の圧縮行程中に第2の吸入孔112を覆う。
【0036】
特に、第1の吸入孔107および第2の吸入孔112の両方は、主寸法Lがシリンダ110の軸Aを実質的に横切るスリットを備えている。特に、スリットは、シリンダ110の内面110c上にあり、シリンダ110の円弧に沿って実質的に長方形の表面を有する。より具体的には、例えば、このような表面は、フライス盤の回転軸がシリンダ110の軸Aと平行で、フライス盤の正面方向が、シリンダ110の軸に直交する状態で、シリンダ110の壁110aをフライス盤により切断することによって得られる。したがって、このようにして得られた表面は、長方形の側部が鋭い縁部によって相互に接続されていないにもかかわらず、互いに融合されており、実質的に長方形である。好ましくは、高さHと長さL(主寸法でもある)との比は、0.2である。ここで、長さは、シリンダ110cの内面に沿ったスリットによって描かれた円弧に沿って測定される(特に
図4bに示されている点線を参照)。特に、長さLは、シリンダの軸Aを横切り、それぞれのスリットの高さHの中間を通る平面PまたはP1上で測定されなければならない。
【0037】
何れにしても、高さHと長さLとの寸法比が、0.5より小さい如何なるスリットも、依然として本発明の保護範囲内にあることに留意されたい。さらに、スリット、すなわちシリンダ110の内面110cに延びる面は、シリンダ110自体の壁110aの形状に従うので、それぞれの接続側に下側および上側が融合していることに留意しなければならない。
【0038】
特に、
図3aから
図3dに示すように、第1の吸入孔107は、ピストン111の下死点Iと実質的に同一平面上にある下側107aを有している。より具体的には、第2の吸入孔112の下側112aは、第1の吸入孔107の上側107bと同一面上にある。
【0039】
図3aから
図3dに示す実施形態によれば、第2の吸入孔112のみが、機能的に結合された逆止弁180を備えている。ここで、
図4aおよび
図4bに示す実施形態では、第1の吸入孔107および第2の吸入孔112の両方が、変形可能なリードタイプの逆止弁180を備えている。
【0040】
逆止弁180は、所定の圧力を超えたときにのみ変形するように寸法決めされている。かつ、逆止弁180は、第1の凝縮器101のシリンダ110の壁110aに収容されている。変形していない状態では、逆止弁180は、シリンダ110の外面110bと接触する1対の突起190、191に当接する。
【0041】
第1の吸入孔107および第2の吸入孔112が設けられている往復圧縮機100、従って、二次エコノマイザ分岐部Eおよび追加の二次エコノマイザ分岐部E’が設けられた冷却装置200または200’については既に説明したが、往復圧縮機100が、少なくとも1つの第1の吸入孔107が設けられているが、少なくとも1つの第2の吸入孔112は設けられていないときの解決策、従って、二次エコノマイザ分岐部Eのみが設けられた冷却装置200または200’は、依然として本発明の保護範囲内にあることは、言及しておく必要がある。この場合、吸引ダクト109を通って往復圧縮機100に入る第1の流量は、閉回路Cを循環する全体の流量と唯一の第2の流量X1との差によって与えられる。
【0042】
図1および
図5にそれぞれ記載されている2つの冷却装置200、200’にある往復圧縮機100の作動は、
図3aから
図3dに説明されている。実際、コンプレッサの吸入ステップの間、すなわち圧縮機100のピストン111が上死点Sから下死点Iまで降下するとき、圧縮機100の吸入弁113は、主回路Mから吸引ダクト109を通って来る流体の流量Xを受け入れるために開いている(
図3a参照)。続いて、ピストン111は、第2の吸入孔112を露出させ、そこから追加の二次エコノマイザ分岐部E’から来る追加の流量X2の冷媒が流入する。そして、圧力上昇により、吸引弁は閉じる。このような冷媒の追加の流量X2の圧力は、シリンダ110内の圧力よりも高く、その結果、シリンダ110の内部で圧力は上昇する(冷却装置200または200’に応じて熱力学的状態9または11)。もちろん、そのようなステップの間、逆止弁180は開いたままである(
図3b参照)。
【0043】
次に、ピストンは第1の吸入孔107を露出させ、二次エコノマイザ分岐部Eから来る第2の流量X1の冷媒がシリンダ110に流入することを可能にする。勿論、二次エコノマイザ分岐部Eから来る冷媒の第2の流量X1の圧力は、冷媒の追加の流量X2の圧力及び吸引圧力よりも高い。何れにしても、第2の流量X1との混合により、圧縮機100が圧縮行程を開始する前に、圧縮機100のシリンダ110内の圧力は上昇する(冷却装置200において熱力学的状態10、冷却装置200’において熱力学的状態12)。続いて、ピストン111は再び上昇し、上死点Sに達するまでシリンダ110内の流体を圧縮する。シリンダ内の圧力が凝縮圧力を超えると、排気弁114が開き始める。ピストン111の上昇中、シリンダ110の壁110aに配置された逆止弁180は、シリンダ110内の圧力が追加の二次エコノマイザ分岐部E’から来る追加の流量X2の圧力を超えると閉じたままであることに留意しなければならない。
【0044】
最後に、第1の吸入孔107および/または第2の吸入孔112の実装は、シリンダ110自体の軸Aを横切る平面に沿ったシリンダ110の容易なフライス加工または同様の技術的加工によって行われることが好ましい。これにより、シリンダ110の容易なフライス加工により、貫通側方孔を有しない既存の往復圧縮機のシリンダを転換することができる。このようにして、技術的観点からまたは経済的に魅力のない複雑な加工をシリンダに行う必要なしに、少なくとも1つの二次エコノマイザ分岐部を有する冷却装置を操作できるように、シリンダを転換することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 往復圧縮機
101 第1の凝縮器
102 第1の膨張弁
103 第1の蒸発器
106 セクション
107 第1の吸入孔
107a 下側
107b 上側
109 吸引ダクト
110 シリンダ
110a 壁
110b 外面
110c 内面
111 ピストン
112 第2の吸入孔
112a 下側
113 吸入弁
114 排気弁
130,130’ 第2の膨張弁
140,140’ 第2の蒸発器
150,150’ 第2の膨張弁
160,160’ 熱交換器
180 逆止弁
190,191 突起
200 冷却装置
A シリンダの軸
C 閉回路
E,E’ 二次エコノマイザ分岐部
I 下死点
M 主回路
S 上死点
X1 第1の流量
X2 第2の流量
【国際調査報告】