特表2017-538106(P2017-538106A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特表2017538106-フィルターろ過残渣の分析及び診断 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538106(P2017-538106A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】フィルターろ過残渣の分析及び診断
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/30 20060101AFI20171124BHJP
   G01N 1/02 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   G01N33/30
   G01N1/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-519674(P2017-519674)
(86)(22)【出願日】2015年10月20日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月12日
(86)【国際出願番号】US2015056387
(87)【国際公開番号】WO2016064821
(87)【国際公開日】20160428
(31)【優先権主張番号】62/065,761
(32)【優先日】2014年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512315670
【氏名又は名称】フィルター・センシング・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FILTER SENSING TECHNOLOGIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】サポック,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ブルームバーグ,レスリー
(72)【発明者】
【氏名】ラガール,ポール
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA04
2G052AA05
2G052AA40
2G052AB01
2G052AB22
2G052AB27
2G052AC20
2G052AD02
2G052AD06
2G052AD15
2G052AD17
2G052AD22
2G052AD26
2G052AD35
2G052AD37
2G052AD46
2G052AD55
2G052AD57
2G052BA02
2G052BA03
2G052BA22
2G052EA03
2G052EB11
2G052ED03
2G052ED06
2G052GA09
2G052GA11
2G052GA15
2G052GA17
2G052GA18
2G052GA19
2G052GA28
2G052HB09
2G052JA18
2G052JA20
(57)【要約】
ろ過残渣を生成しろ過残渣が内部を通過したシステムの現在状態及び履歴状態を診断するための情報を提供する、フィルターろ過残渣分析システム及び方法が開示されている。本開示はシステムまたはサブシステムの状態、健全性または運転履歴を監視または診断するのに有用な、ろ過残渣の組成、量、分布及び物理的または化学的特性を含み得るろ過残渣特性の分析について説明する。該分析は、エンジン及び排気システムから生産工場及び設備に至るまで、広範囲のシステム及びプロセスに広く適用可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターと連通状態にあるシステムを診断する方法であって、
前記フィルター内のろ過残渣を収集することと;
前記フィルター内の前記ろ過残渣を分析して、ろ過残渣量、前記ろ過残渣中の材料のタイプ、前記ろ過残渣の空間分布及び前記ろ過残渣の物理的または化学的特性のうちの少なくとも1つを決定することと;
前記分析に基づいて前記システムについての診断を下すことと;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記システム内の構成要素の物理的または化学的特性を分析すること、及び前記構成要素の前記物理的または化学的特性を前記ろ過残渣の前記物理的または化学的特性と比較して前記システムを診断することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構成要素がエンジン潤滑油を含み、前記ろ過残渣内の前記エンジン潤滑油の物理的または化学的特性の検出が、前記潤滑油の異常な消費または漏洩を標示する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑油の前記化学的特性が添加剤の存在を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記添加剤が、カルシウム、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、硫黄、リン、モリブデンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記構成要素がエンジン構成要素を含み、前記ろ過残渣内の前記エンジン構成要素の物理的または化学的特性の検出が前記エンジン構成要素の不具合または腐食を標示する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記エンジン構成要素が、軸受、シリンダ壁、ライナー、バルブ、及びピストンの少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記物理的または化学的特性が金属元素の存在を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属元素が、鉄、アルミニウム、スズ、鉛、クロム、チタン及び銅の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エンジン構成要素が、触媒または排出制御構成要素を含み、前記物理的または化学的特性が白金、パラジウム、ロジウム、バナジウム、銅、鉄、セリア及びアルミナの存在を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
分析する前に前記フィルターからろ過残渣を取出すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記構成要素の前記物理的または化学的特性を、環境要因に対する前記ろ過残渣の前記物理的または化学的特性と比較して、吸気ろ過システムを診断することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分析には、ろ過残渣構成要素の分離;ろ過残渣構成要素の取出し;酸化;酸、マイクロ波または熱の適用及び熱分析の少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分析が、経時的に行なわれ、履歴トレンドが作り出される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記診断に基づいて是正処置を行なうことさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ろ過残渣を捕捉するためのフィルターと;
ろ過残渣の取出し及び収集用システムと;
ろ過残渣分析用のシステムと;
を含む、診断システム
【請求項17】
前記ろ過残渣分析が、誘導結合プラズマ(ICP)、エネルギー分散型X線分析(EDX)、X線蛍光(XRF)、フーリエ変換赤外線(FTIR)分析、ラマン分光法、質量分光法、スパーク発光分光分析(OES)、LIBS(レーザー励起破壊分光分析)、中性子放射化分析(NAA)、またはろ過残渣中に存在する元素または化合物についての情報を提供する他の任意の技術を用いて行なわれる、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ろ過残渣の取出し及び収集用システムのための収集手段が、試料袋、フィルター、バイアル、ジャー、綿棒、アプリケータ、管状抽出、キャッチパン、灰ビンまたは試料採取装置からなる群から選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記ろ過残渣取出し及び収集システム用の取出し手段が、振動清浄システム、抽出ツール及び空気圧清浄システムからなる群から選択される、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、開示全体が参照により本明細書に援用されている、2014年10月20日出願の米国仮特許出願第62/065,761号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルター内で収集された材料の取出し及び分析は、フィルターが使用されるシステムの履歴または運転状態を確認または診断するのに有用な重要な情報を提供する。
【0003】
フィルターろ過残渣分析の広範な応用可能性を例示するための実施例には、商業的及び工業的プロセス及び利用分野において使用されるフィルターが含まれる。フィルター上に収集された材料の分析及び公知の規格または基準材料との比較は、ろ過残渣を生成するシステムの状態についての情報を提供する。このようにして、フィルターが使用されている期間中にろ過残渣を生成するシステムの運転履歴または運転の変化を見定めるための情報を得ることが可能である。
【0004】
1つの特定例としては、粒子フィルター、例えばディーゼル粒子フィルターまたはガソリン粒子フィルターが含まれるが、任意のフィルターまたはろ過残渣収集媒体またはシステムを使用することができる。ろ過残渣を生成するエンジンまたは他のシステム(プラントまたはプロセス)の排気孔に設置される粒子フィルターの場合、フィルターは、システムが生成したろ過残渣を捕捉し、収集する。ろ過残渣の捕捉に対しては有効であるものの、フィルターの使用には、いくつかの欠点もある。
【0005】
第1に、フィルターは、エンジン、プラントまたはプロセスの機能不良または不具合の兆候を覆い隠す可能性がある。例えば、隠されていなければオペレータが直接見ることのできるものであり得るエンジン、プラントまたはプロセスからの流体、気体の漏洩、または他の排気または廃液の生成も同様に、フィルター上に収集される可能性がある。排気粒子フィルターの場合、排気管から出る青色、黒色または白色の煙などのエンジン機能不良の兆候は、煙または蒸気がフィルター上に捕捉されることから、もはや目に見えなくなる場合がある。
【0006】
第2に、フィルターが対象とされていなかった粒子、液体または他の構成要素などのシステム機能不良の結果として生成されるろ過残渣の蓄積も同様に、フィルターに損傷をひき起こす場合がある。一例において、エンジンオイルの漏洩、冷却液の漏洩または不適切な燃焼が、排気粒子フィルター上の冷却液、オイル、燃料または高レベルの煤の蓄積を導く可能性があり、これは、エンジン、プロセスまたはプラントの性能及び耐用年数に加えて、フィルターの性能及び耐用年数にも不利な影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
多くの場合において、フィルターは、交換されるのではなくむしろ再使用可能となるように、清浄または修復を目的として定期的に取外される。多くの場合において、フィルターの清浄または修復には、フィルターからのろ過残渣の取出しが関与している。一般的なフィルターの清浄方法には、フィルターからろ過残渣を吹き飛ばすための強制空気の使用、液体式清浄または清浄方法、熱式清浄、振動の使用、及び他の関連する手段が関与する。大部分のフィルター清浄システム及びプロセスはさらに、バルク収集システム、例えば液体貯蔵タンク、集塵システムなどのバルク収集システム内に、フィルターから取出したろ過残渣を凝集させ収集する。これらの従来のバルク清浄プロセスの使用には、いくつかの欠点もある。
【0008】
第1に、集塵システムまたは液体貯蔵タンクなどの凝集体収集システム内でフィルターから取出されたまたは清浄されたバルクろ過残渣の収集によっては、ろ過残渣を一意的に識別するかまたはろ過残渣が取出されたフィルターに関連付けすることができない。したがって、さまざまな供給源からの全てのろ過残渣がバルク収集システム内で一緒に混合されることから、ろ過残渣のいかなる後続する分析も、そのろ過残渣を生成したエンジン/設備またはフィルター状態の有用な診断を一切可能にしない。
【0009】
第2に、ろ過残渣の特性、例えばその特徴、または物理的または化学的特性などを破壊する、改変するまたは他の何らかの形でそれに影響を及ぼすかまたは変更する清浄方法は、さらに、そのろ過残渣が由来したエンジン、設備、プラント、プロセスまたはフィルターの状態の有意義な分析及び診断をことごとく不可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、粒子フィルターから取出されたろ過残渣を、それが取出されたフィルターによって一意的に関連付けまたは識別できるようにするろ過残渣取出しまたは収集システムが所望される。一部のケースにおいては、フィルターからろ過残渣を取出す必要がなく、むしろ分析用のろ過残渣を含むフィルターの小さい部分を取出すこと、または、ろ過残渣を取出すかまたはフィルターを改変させることなくフィルター上で直接ろ過残渣の分析を行なうことしか必要でない、という点に留意されたい。さらに、分析の前のろ過残渣に対する何らかの変化を回避するかまたは最小限に抑えることが極めて望ましい。
【0011】
したがって、広範囲の応用分野及び使用分野にとって著しく有用である、改良型のろ過残渣収集・分析方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ろ過残渣を生成しろ過残渣が内部を通過したシステムの現在状態及び履歴状態を診断するための情報を提供する、フィルターろ過残渣分析システム及び方法が開示されている。本開示はシステムまたはサブシステムの状態、健全性または運転履歴を監視または診断するのに有用な、ろ過残渣の組成、量、分布及び物理的または化学的特性を含み得るろ過残渣特性の分析について説明する。該分析は、エンジン及び排気システムから生産工場及び設備に至るまで、広範囲のシステム及びプロセスに広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ろ過残渣を含む粒子フィルター内のチャネルを表わす。図1は、一実施形態に係るろ過残渣を含む多孔性セラミック粒子フィルターの2つのチャネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、フィルター内に収集された材料(ろ過残渣)を取出し分析するためのシステム、ならびに、材料の取出し、分析及び結果の解釈の方法に関する。本開示中で説明されるろ過残渣分析システム及び方法は、個別のフィルターからのろ過残渣の直接的収集、及びろ過残渣を生成するエンジン、プラント、プロセスまたはシステムの現在の状態または過去の履歴を診断するのに有用な情報を提供するためのろ過残渣の分析を可能にする。
【0015】
図1は、ろ過残渣104を含む粒子フィルター内の2チャネル式チャネル102の破断図を描いている。ろ過残渣104は、フィルター内において、またはフィルター102に連結されたまたはフィルター102と連通状態にある任意のシステムまたは設備のあるいはフィルター102そのものの運転条件または履歴を診断するのに有用な情報を得るためにフィルターから取出された後に、分析され得る。
【0016】
フィルターから取出されたまたはフィルター102内に含まれるろ過残渣材料の分析には、以下のパラメータのうちの1つ以上が含まれていてよい:
1.ろ過残渣の量:例えば、ろ材またはろ過残渣収集システム内またはその上で収集された固体、液体、または気相の構成要素の量。一実施例では、フィルター上で収集された煤または灰構成成分の量、またはフィルターにより吸収された液相構成要素、さらにはフィルター上に吸着された気相構成要素、または固体ろ過残渣内に吸着/吸収された気相構成要素の量が定量化され得る。一実施例において、或る閾値よりも上または下のフィルター上で収集された材料の量は、故障またはエラー条件の兆候であってよい。
2.材料タイプ:例えば、1つ以上のタイプの材料または種の組成。
3.空間分布:例えば、フィルター上のろ過残渣の場所または構成要素。
4.ろ過残渣の物理的または化学的特性:例えばその化学的組成(或る種の化合物または元素の識別)、または化学的状態、例えば酸化または還元状態、極性、pHまたは他の化学的特性、結晶構造、位相、粒径、多孔率、密度、色または他のいずれかの関連する物理的または化学的特性。
【0017】
上述のリストは、監視または分析可能であるパラメータの主要なカテゴリを例示しているが、決して網羅的なものではない。他の多くのパラメータも同様に監視及び分析されてよい。
【0018】
分析を行ない、分析を解釈するまたは分析から結論を引き出す上で関与する一般的ステップを以下で説明する:
1.第1の任意のステップは、フィルターから1つ以上のろ過残渣試料を取出すことであり、ここでこのろ過残渣はフィルターの1つ以上の場所から取出される。
2.第2のステップは、フィルターから取出された、またはなおも直接フィルター上に含まれているろ過残渣の分析からなる。
3.後続するステップには、ろ過残渣分析結果と基準との比較、及びこの比較に基づいた1つ以上の結論または診断の策定が関与する。
【0019】
以上で列挙したステップは、全てが求められる訳ではない場合があり、当業者であれば、本発明の意図及び範囲から逸脱することなく別の順序でこれらのステップを実施してよいということを確実に理解するものである。
【0020】
一部の実施形態において、追加されたステップの後には、是正処置の実施が続く。
【0021】
本発明についてここで、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、天然ガスエンジンまたは任意の他のエンジン、例えばタービンエンジンまたは往復ピストンエンジンなどであってよい内燃機関の排気孔内に設置される粒子フィルターである、特定の利用分野及び実施形態に関連して説明する。
【0022】
粒子フィルターの場合、フィルターは、燃料、潤滑剤、冷却液または吸気流中の材料などのエンジンへの投入物の結果であり得るろ過残渣、ならびに摩耗デブリなどのエンジンの構成要素自体に由来するろ過残渣及び排気導管及びフィルターの上流側の排気システム内の任意の構成要素、例えば他の触媒またはフィルターなどの排気システムに由来するろ過残渣を蓄積させる。
【0023】
フィルター内に収集されるろ過残渣は、例えば概して、煤及び灰として分類され得るが、固体、液体または気体を含むあらゆる材料であってよい。一実施形態において、フィルターは、排気システムから取外され、ろ過残渣の一部または全てを取出すためのプロセスに付され得る。このプロセスには、ろ過残渣を除去し取出すための1回以上の振動または衝撃の適用、フィルターからろ過残渣を吹き飛ばすための強制空気または他の何らかの気体の適用、または液体清浄または洗浄手段、加熱または再生、またはろ過残渣を取出すための任意の他の手段が関与し得る。別の実施形態において、ろ過残渣は、例えば、物理的抽出、削り取り、綿棒採取、拭い取り、または真空または吸引の適用、あるいはフィルターからろ過残渣の試料を得るための他のあらゆる手段によって、フィルターの特定の領域から取出すことができる。取出し手段の如何に関わらず、取出されたろ過残渣は、それが由来したフィルターを一意的に識別する目的で収集されなければならない。
【0024】
一部の状況下では、ろ過残渣は、特にろ過残渣の蓄積時間がフィルター内でのその場所に関係付けされる場合、トラップまたはフィルター内のその軸方向の場所が記録され分別されるような形で取出される。このアプローチは、一例において、ろ過残渣がフィルターの後部に運ばれて蓄積するかまたは溜まる場合、プラントまたはエンジンの履歴についての有用な情報を提供する。
【0025】
ろ過残渣収集手段には、試料袋、フィルター、バイアル、ジャー、綿棒、アプリケータ、管状抽出または試料採取装置、またはろ過残渣を収集するための他のあらゆる手段の使用が含まれる。
【0026】
別の実施形態においては、ろ過残渣はフィルターから取出される必要はなく、ろ材上で直接分析されてよい。
【0027】
ろ過残渣分析は、粒子フィルターの場合、エンジン、車両、フィルターまたは設備の状態または条件を診断するのに有用であるろ過残渣の量、組成、特徴及び特性の分析を含み得る。一実例において、ろ過残渣の元素または組成分析は、誘導結合プラズマ(ICP)、エネルギー分散型X線分析(EDX)、X線蛍光(XRF)、フーリエ変換赤外線(FTIR)分析、ラマン分光法、質量分光法、スパーク発光分光分析(OES)、またはLIBS(レーザー励起破壊分光分析)、中性子放射化分析(NAA)、またはろ過残渣中に存在する元素または化合物についての情報を提供する他の任意の技術を用いて行なうことができる。分析結果は、ろ過残渣内に見出される材料または構成物質の公知の供給源の基準と比較され得る。別の実施形態では、いかなる基準も使用されなくてよい。結果の解釈は、経験または既存のノウハウから、または、公知の材料、規格または別の例における基準データとの比較からのものであってよい。
【0028】
ろ過残渣と基準または他のデータとの比較は、コントローラ、例えば記憶要素と組合わされた処理ユニットによって行なうことができる。処理ユニットは、上述のシステムのいずれかから分析を受信し、比較を行なうことができる。一部の実施形態において、基準値は、記憶要素内に記憶される。
【0029】
粒子フィルターの場合、基準には、燃料、潤滑油または冷却液中に存在する化学的化合物または元素、ならびにエンジンまたは排気システム自体の中に存在する元素及び化合物に加えて、エンジンまたは設備の運転環境内に存在する化合物または元素についての知識が含まれ得る。
【0030】
一実施例において、エンジン潤滑剤は、カルシウム、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、硫黄、リン、モリブデン及び他の任意のタイプの添加元素などの添加剤を含み得る。フィルター内でのこれらの材料の検出は、異常なオイル消費、例えばフィルター内のこれらの元素の高いレベル、さらには、別の例においては例えばターボチャージャまたはバルブシールからの液体オイルの漏洩などを診断するため、エンジンオイル消費に戻って関係付けされ得る。
【0031】
さらに、エンジン構成要素、例えば軸受、ピストン、シリンダ壁、ライナー、バルブ及び他の構成要素中に見出されることの多い鉄、アルミニウム、スズ、鉛、クロム、チタン、銅他を含めた金属元素も同様に、フィルター内に発見され得る。フィルター内におけるこれらの材料または関係する材料の検出は、一例においては軸受の摩耗、また別の例では過度の錆または腐食などの構成要素の不具合の早期兆候を診断するために使用され得る。
【0032】
触媒元素、例えば白金、パラジウム、ロジウム、バナジウム、銅、鉄他を含む貴金属、ならびにセリア、アルミナさらには基板構成要素を含むウォッシュコート構成要素も同様に、フィルター内で収集されるろ過残渣の中に検出され得る。これらの元素の検出を用いて、フィルターの上流側の触媒または他の排出制御構成要素の状態を診断し、不具合の兆候を検出することができる。
【0033】
代替燃料またはバイオ燃料の場合のような硫黄、またはナトリウムまたはカリウムを含む燃料由来の元素または、白金及び鉄を含めた燃料添加構成要素も同様に、フィルター内で検出され得、エンジンと共に使用される燃料または燃料添加物の品質及び/または組成を診断するために使用可能である。同様にして、ケイ素を含めた冷却液由来の元素も、冷却液の漏洩の兆候を診断するために、フィルター内で検出され得る。
【0034】
周囲の塵埃、汚れ、塩水噴霧(塩化ナトリウム)、無機物及び、エンジンまたは設備が運転している環境から結果としてもたらされる他の材料などの環境源も同様に、フィルター内で検出され得、エンジンまたは設備の吸気ろ過システムの状態を診断するために使用可能である。
【0035】
分析は、化学または組成分析だけに限定される必要はなく、ろ過残渣の目視分析または検査ならびにろ過残渣特性の特徴付け、つまり固体、液体または気体のいずれの形態であるかにも限定される必要はない。例えば、フィルター上の液体オイル、燃料または冷却液または湿潤スポットは、容易に観察でき、エンジンまたは設備の機能不良の標示を提供し得る。煤または灰のレベルが高いことを用いて、エンジンの運転または燃焼異常または、エンジンまたは関連するサブシステムの不具合または不具合の兆候を標示することも可能である。別の実施例において、結晶構造など、ろ過残渣の化学的または物理的特性、組成または構造は、ろ過残渣またはフィルターの先行する温度履歴の標示であり得る。
【0036】
分析には、例えば酸化を介したろ過残渣構成要素の分離及び或る種の構成要素の取出しまたは、例えば意図的な化学反応を通した構成要素の好ましい変化の誘発が含まれ得る。一実施例においては、反応は、酸、マイクロ波、加熱などの適用を通したものであり得る。一実施例において、反応はICPのための試料調製または消化を含み得る。別の実施例において、分析は、例えば加熱または化学反応によるろ過残渣の分解、及び一実施例では硫黄含有量などのろ過残渣の組成または特性を決定するための反応産物または廃液の分析を含む場合がある。別の実施例においては、熱重量分析つまりTGAなどの熱分析技術を使用することができる。
【0037】
別の実施例において、分析は、経時的なフィルター内のろ過残渣の数量及び/または特性及び特徴、例えば組成を追跡し評価するための履歴トレンド分析を含み得る。別の実施形態において、分析は、1つの例では基準と、別の例では試料のより大きな集団からの平均値と、個別のデータ点または履歴データ点のコレクションの比較を含み得る。統計的分析またはトレンド分析は適用してもしなくてもよく、基準との比較は必要とされる場合もされない場合もある。
【0038】
別の実施例において、未知のろ過残渣構成成分の供給源は、以下のことにより決定され得る:
1.燃料、オイル、冷却液及び任意の他のシステム投入物など、エンジン、プロセス、プラントまたはシステムに対する投入物から試料を収集すること。
2.エンジンまたは設備が運転している周囲環境から試料を収集すること。
3.エンジン、プラント、プロセス、設備またはシステムを含むさまざまな構成要素及びシステムの試料を収集し、組成を決定すること。
4.フィルターと連通状態にあり得る、任意の追加の構成要素から試料を収集すること。
5.ステップ1〜4由来の試料品目の組成及び化学的または物理的特性などの特徴を分析すること。
6.ステップ5における試料分析とフィルターろ過残渣分析の結果を比較し、この比較を用いて未知のろ過残渣構成成分の供給源を決定すること。
7.ステップ6で識別された未知のろ過残渣構成成分が許容可能であるか否か(追加の是正処置が正当化されるか否か)を決定すること。
【0039】
このようにして、ろ過残渣を含む構成成分の供給源を識別し、こうして、エンジン、設備、フィルター、プロセス、プラントまたはシステムが許容可能な形で運転しているか否か、または未知のろ過残渣構成成分が、対処する必要のあり得る根本的な問題の標示であるか否かを決定することができる。
【0040】
これらの実施形態の各々において、診断には、是正処置が後続し得る。この是正処置には、オイルフィルターガスケットまたはシールの修繕または交換;軸受、ピストン、バルブまたは他の構成要素の修繕または交換;触媒または他の排出制御構成要素の修繕または交換;冷却液の漏洩の修繕;吸気ろ過システムの交換または修繕が含まれ得る。
【0041】
ろ過残渣または試料を汚染したり、混乱させたり、または他のあらゆる形で非意図的に改変させることを避けるため、フィルターのろ過残渣またはフィルターろ過残渣との類似点を示すのに有用な任意の試料を取出すまたは収集する場合には、注意を払わなければならない。このような注意には、入念な試料採取及び取扱い手順、ならびにツールまたは設備の使用が必要となる場合がある。
【0042】
ろ過残渣試料採取及び分析システムは、ろ過残渣を含むフィルター、ろ過残渣取出し及び収集システム、及びろ過残渣分析システム、例えばろ過残渣の物理的または化学的特性を分析するための計器が含まれ得る。一実施例において、フィルターは、多孔性セラミクス粒子フィルターであってよく、ろ過残渣取出しシステムは、振動清浄システムであってよく、ろ過残渣収集システムはキャッチパンまたは灰ビンであってよく、分析計器はICP分析器であってよい。別の実施例では、フィルターからろ過残渣を収集し取出すために、吸引管または中空管などの抽出ツールを使用してよい。別の実施例では、ろ過残渣取出しシステムは、空気圧清浄システムであってよい。さらに別の実施例では、ろ過残渣はフィルターから取出される必要がない。
【0043】
ろ過残渣のその場分析は、フィルターからろ過残渣を取出す必要なく行なうことができる。例えば、(フィルター壁の照射無く)開放チャネルを通してレーザーシステムを使用することによるLIBS分析は、同じ開放チャネルを通した観察と共に、ろ過残渣の元素組成についてのその場情報を提供することができる。同様にして、適切な電極によりチャネルの内部で発生させられた放電(スパーク)を用いて、スパークOESを使用することもできる。NAA及びCTスキャンなどの非光学的技術を使用することもできる。別の例では、XRFが使用される場合もある。
【0044】
当業者であれば、上述のステップを、本発明の意図及び範囲から逸脱することなく別の順序で実施してもよい、ということを確実に理解するものである。
【0045】
本発明の特定の実施形態が図示され説明されてきたが、当業者にとっては、本発明のより広い態様において、本発明から逸脱することなくさまざまな変更及び修正を行なうことができる、ということは明白である。以上の説明に含まれ添付図面に示されている全ての事項は、限定的な意味ではなく例示的なものとして解釈されることが意図されている。
図1
【国際調査報告】