(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538549(P2017-538549A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】取り外し可能なキャップを有する注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-533430(P2017-533430)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2015080216
(87)【国際公開番号】WO2016102299
(87)【国際公開日】20160630
(31)【優先権主張番号】14199611.6
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】15169864.4
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラルヴィグ, シモン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン, ニコライ オイゼービウス
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン, ステフェン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066LL23
4C066NN03
4C066NN04
4C066NN20
(57)【要約】
本発明は、液剤の複数回分の用量を送達する注射装置に関する。注射装置は、ハウジングアセンブリ(10、110、210)と、針カニューレ(32、132、232)を固定する針マウント(11、111、211)とを備える。ハウジングアセンブリの遠位端は、使用しないときは取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)によってカバーされる。保護キャップアセンブリは、針カニューレの遠位先端部も取り囲み、注射と注射の合間に気密チャンバ(60、160、260)が針カニューレの遠位先端部の周りに確立されるように、気密シールによってハウジングアセンブリに対して動作可能にシールされる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤の複数回分の用量をある回数の注射によって注射する注射装置であって、前記注射装置は、
− カートリッジ(20、120、220)を少なくとも使用時に支持する、ハウジングアセンブリ(10、110、210)であって、前記カートリッジ(20、120、220)が、穿孔可能な隔壁(21、121、221)によってシールされる遠位端、および前記液剤を収容する内部(23、123、223)を画定する移動可能なプランジャ(22、222)によってシールされる近位端を有する、ハウジングアセンブリ(10、110、210)と、
− 前記カートリッジ(20、120、220)の内側で前記移動可能なプランジャ(22、222)を移動させる、ピストンロッド(280)と、
− 前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)に取り外し可能に連結され、注射と注射の合間に少なくとも前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)の遠位端を取り囲む、取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)と、
− カニューレ(32、132、232)を少なくとも使用時に固定する、針マウント(11、111、211)であって、前記カートリッジ(20、120、220)の前記内部(23、123、223)と液体連通状態にある近位端(33、233)、およびユーザの皮膚を穿刺するための遠位先端部(35、135、235)を有する遠位端(34、234)を有する、針マウント(11、111、211)と
を備え、
前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)が、注射と注射の合間に前記針カニューレ(32、132、232)の少なくとも前記遠位先端部(35、235)を取り囲み、前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)が前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)の前記遠位端に嵌合されるときに、気密チャンバ(60、160、260)が少なくとも前記針カニューレ(32、132、232)の前記遠位先端部(35、135、235)を取り囲むよう確立されるように、気密シール(57、117、217)が、前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)と前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)との間に動作可能に設けられる、注射装置。
【請求項2】
前記針カニューレ(32、132、232)は、前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)において遠位に設けられる前記針マウント(11、111、211)に取り付け可能な針ハブ(31、131、231)に装着される、請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)は、遠位に、径方向のフランジ(12、112、212)を装備し、前記フランジ(12、112、212)には、前記針ハブ(31、131、231)および前記カートリッジ(20、120、220)の両方が当接する、請求項2に記載の注射装置。
【請求項4】
前記気密シール(57)は、前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50)の内側表面(52)上に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項5】
前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50)は内側シーリング要素(55)および外側キャップ要素(51)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項6】
前記内側シーリング要素(55)は前記気密シール(57)を担持する、請求項5に記載の注射装置。
【請求項7】
前記内側シーリング要素(55)は、前記外側キャップ要素(51)に対する軸方向の力を前記シーリング要素(55)に与える弾性要素(56)などの弾性部品を介して前記外側キャップ要素(51)に連結される、請求項5または6に記載の注射装置。
【請求項8】
前記気密シール(117、217)は、前記ハウジングアセンブリ(110、210)の外部表面(113、213)上に、好ましくは、前記針マウント(111、211)の近傍に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項9】
前記気密シール(117、217)は、前記針ハブ(131、231)が前記針マウント(111、211)に取り付けられるときにより大きい外径をカバーするように、径方向に拡張可能である、請求項8に記載の注射装置。
【請求項10】
前記注射装置はさらに、前記ピストンロッド(280)の軸方向の移動を前記遠位方向に限定するラチェット要素(290)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項11】
前記ピストンロッド(280)と前記移動可能なプランジャ(22、122、222)とは軸方向において共に連結される、請求項1から10のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項12】
前記ピストンロッド(280)と前記移動可能なプランジャ(22、122、222)とは、前記移動可能なプランジャ(22、122、222)に固定され前記ピストンロッド(280)に回転可能なように接続される、中間のピストンロッドフット(275)を介して軸方向に連結される、請求項11に記載の注射装置。
【請求項13】
前記注射装置はさらに、前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)の内部表面と、前記カートリッジ(20、120、220)の外側表面との間に位置する追加の気密シール(216)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項14】
前記保護キャップアセンブリ(50、150、250)は一方向弁(270)を装備する、請求項1から13のいずれか一項に記載の注射装置。
【請求項15】
液剤の複数回分の用量を送達する注射装置であって、前記注射装置は、
− カートリッジ(20、120、220)を支持する、ハウジングアセンブリ(10、110、210)であって、穿孔可能な隔壁(21、121、221)によってシールされる遠位端、および前記液剤を収容する内部(23、123、223)を画定する移動可能なプランジャ(22、222)によってシールされる近位端を有する、ハウジングアセンブリ(10、110、210)と、
− 前記カートリッジの内側で前記移動可能なプランジャ(22、222)を遠位に移動させるためのピストンロッド(280)と、
− 前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)に取り外し可能に連結され、注射と注射の合間に少なくとも前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)の遠位端を取り囲む、取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)と、
− 針ハブ(31、131、231)に固定される針カニューレを備える針アセンブリを担持する、針マウント(11、111、211)であって、前記針カニューレ(32、132、232)が、前記カートリッジ(20、120、220)の前記内部(23、123、223)と液体連通状態にある近位端(33、233)、およびユーザの皮膚を穿刺する遠位先端部(35、135、235)を有する遠位端(34、234)を有する、針マウント(11、111、211)とを備え、
前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)が、注射と注射の合間に少なくとも前記針カニューレ(32、132、232)の前記遠位先端部(35、135、235)を取り囲み、前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)が前記ハウジングアセンブリ(10、110、210)の前記遠位端に嵌合されるときに、気密チャンバ(60、160、260)が少なくとも前記針カニューレ(32、132、232)の前記遠位先端部(35、135、235)を取り囲むよう確立されるように、気密シール(57、117、217)が、前記取り外し可能な保護キャップアセンブリ(50、150、250)と、前記針マウント(11、111、211)に装着される前記針ハブ(31、131、231)との間に設けられる、注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液剤の複数回分の用量をある回数の注射によって送達する注射装置に関し、具体的には、注射装置のハウジングの遠位端が注射と注射の合間に取り外し可能な保護キャップによって保護される注射装置に関する。注射装置は、用量の排出中にドライブ部材がねじりばねによって回転して、カートリッジの内側でピストンロッドを前方に移動させる、自動タイプのものでよいが、ばねを全く利用しないかまたは何らかの他のタイプのばねを異なる手法で使用する、他のタイプのものでもよい。
【背景技術】
【0002】
関連出願の説明
米国特許出願公開第2003/0144633号が、針カニューレの遠位端が気密チャンバの内側に位置する針アセンブリを開示する。気密チャンバが針カバーと針ハブとの間に設けられ、シーリング要素も設けられる。シーリング要素は、初回の使用まで針カニューレの遠位端を殺菌状態に維持する殺菌バリアを形成する。ユーザが注射を行いたいときに、針ハブを注射装置に装着し、針カバーを切り離す。図示の注射装置は、いわゆる、ワンショット装置、すなわち、1回の注射で空にされその後廃棄される注射装置である。注射装置が1回使用しただけで廃棄されるので、殺菌バリアは、一旦壊されると、針カバーを再度装着して気密チャンバを再確立することができないように設計される。
【0003】
異なる種類の注射装置には、所定の量の液剤を収容するハウジング構造にカートリッジが恒久的に組み込まれる、いわゆる、充填済みの注射装置がある。この液剤は、ある回数の注射によって注射され、所定の量が使用されたときにユーザは注射装置全体を廃棄する。こうした充填済みの注射装置を使用するときは、ほとんどの製造者が、新たに注射するたびに、真新しい針アセンブリ、好ましくは、殺菌針アセンブリを使用することを推奨する。しかし、ユーザが格納中に針アセンブリを注射装置に取り付けられた状態に維持すると決める場合は、針カニューレのルーメンの内側の液剤が注射と注射の合間に乾き切り、そうなると、ルーメンを通る空いた通路が目詰まりするというリスクがある。
【0004】
ユーザがカートリッジを交換できる、いわゆる、耐久性のある注射装置を用いるときにも同じ問題が起こる。充填済みのまたは耐久性のある注射装置の遠位端が注射と注射の合間に一般の取り外し可能な保護キャップによってカバーされても、針カニューレのルーメンの液剤が乾き切ることによる目詰まりが依然として問題である。
【0005】
針カニューレのルーメンの目詰まりを防止する単純な手法は、注射の直後に針アセンブリを単純に取り外し、続いて、次の注射が行われる直前に新しい針アセンブリ、好ましくは、殺菌針アセンブリを装着することである。しかし、注射が行われた後および格納中に多くの人が使用済みの針アセンブリを注射装置に取り付けたままにすることを選択するので、針カニューレの目詰まりが多くの人にとって問題となる。
【0006】
針カニューレのルーメンが空いた通路を有するかどうかを見るために、ユーザは通常、使用前に薬剤送達装置にプライミングを行う。こうしたプライミングは注射装置が適切に動作しているかどうかもチェックし、「エアショット(air shot)」または「フローチェック(flow check)」を行うと称される。このように、注射装置のプライミングは、通常、針カニューレが確実に目詰まりしなかったことを含め、注射装置が液剤の送達に関して適切に機能することと、さらに、液剤に存在する可能性のある空気を追い出すことを検証するために行われる。
【0007】
以下に説明するように、様々な状況によって空気がカートリッジに存在するようになる場合があり、1つまたは複数の空隙が、プランジャおよびピストンロッドなど、注射装置の特定の要素間に存在するようになる場合もある。
【0008】
カートリッジの空気によって、排出される液剤体積の一部が捕捉空気から構成されるので、送達される液剤の用量が少な過ぎることになる場合がある。したがって、カートリッジの内側に捕捉された空気は、常に、液剤の用量の設定および注射の前に除去すべきである。
【0009】
液剤のうちの針カニューレのルーメンに位置する部分が蒸発して、針カニューレのルーメンを部分的にまたは完全に目詰まりさせる可能性のある残渣要素が残るので、針カニューレが取り付けられた注射装置が熱(特に乾いた熱)を受ける場合に、針カニューレの目詰まりが起こることがある。「熱を受ける「subjected to heat)」には一般の室温も含まれる。
【0010】
プライミングは、通常、空気が排出され液剤が針カニューレの遠位先端部から噴き出すまで、注射装置を直立姿勢に保持し、液剤の少量の用量を吐出させることによって、すなわち、いわゆる、エアショットを行うことによって行われる。
【0011】
注射装置の組み立て中およびカートリッジの充填中の公差によって、ユーザに初期段階で送達される注射装置はピストンロッドとカートリッジの内側のプランジャとの間に隙間を有する場合があるので、プライミングは初期段階で、例えば、所与の注射装置が使用される全く初めてのときに行うことが推奨されることが多い。プランジャと当接するようにピストンロッドを移動させるために、通常は、正常なエアショットを行う、すなわち、少量の排出をある回数だけ行うときと同じ手順に従って初期段階のプライミングが実行される。
【0012】
ピストンロッドからの力をプランジャのより大きい面積に分散させるために、通常、ピストンロッドとカートリッジのプランジャとの間にピストンロッドフットまたはピストンワッシャが設けられる。こうしたピストンロッドフットまたはワッシャは、通常、ピストンロッドとプランジャとの間に緩んだ状態で設けられる別個の要素であるか、またはピストンロッドに連結され、例えば、ピストンロッドと一体形成される。このピストンロッドフットまたはワッシャは、プライミングがある回数のエアショットによってプランジャともピストンロッドとも係合状態になるときである。
【0013】
ユーザが注射を行おうとする前に毎回プライミングを行うことも推奨されることが多い。しかし、全てのユーザが注射装置のプライミングを行うべきときに毎回適切に行うとは限らず、したがって、使用説明書に完全に従うとは限らないことが懸念され、全てのユーザが注射装置のプライミングの理由および重要性を十分に承知しているとは限らないこともわかっている。
【0014】
さらに、一部の注射装置は、注射装置から取り外し可能な針アセンブリなどを備える。少なくともこうした注射装置の一部に関して、ユーザは、使用後に針アセンブリを取り外し、次回の使用の前に新しい針アセンブリを取り付けるべきである。しかし、全てのユーザが使用後に針アセンブリを取り外すとは限らず、むしろ注射装置に装着された状態を維持する。さらに、一部の注射装置では、針カニューレは、注射装置のハウジングアセンブリに恒久的に接続され、ユーザは、恒久的に装着された同じ針カニューレによって複数回注射を行う。
【0015】
言及したように、空気は、注射と注射の合間に針カニューレがカートリッジに挿入された状態で維持されるときに、様々な状況でカートリッジの内側に存在するようになる場合がある。注射装置が、例えば温度変化を受ける場合は、空気は、取り付けられた針カニューレのルーメンを通してカートリッジに吸い込まれる恐れがある。
【0016】
液剤を低温に維持するために、そのことが実際には必要ない場合であっても、ユーザが針アセンブリの取り付けられた注射装置を、例えば冷蔵室に格納することは一般的でないとは言えない。こうした事例では、カートリッジの液剤は、例えば、冷蔵室のより低い温度によって収縮し、そのことが陰圧を生み出し、その陰圧が外部空気を能動的にカートリッジに吸い込んでカートリッジの液剤に気泡が生じる。通常の保護キャップは完全には気密でないため、このことは、保護キャップがハウジングアセンブリ上に装着されていてもやはり起こる。
【0017】
例えば、冷蔵室から取り出すことによって、注射装置がより高い温度を受けるときは、カートリッジの液剤は膨張し、針カニューレから漏出する可能性がある。そのときに、その後、引き続き冷却される場合は、カートリッジにはさらに空気が吸い込まれて、液剤にはさらに多くの気泡が生じる。
【0018】
こうした悪影響は、ユーザが繰り返し1つの注射装置を使用し、注射と注射の合間に針カニューレの取り付けられた状態で例えば冷蔵室に格納するときに起こるような温度の上昇および低下の繰り返しによって増大される。
【0019】
さらに、温度変化によって液剤が膨張または収縮するときは、それに従って注射装置のプランジャも近位方向または遠位方向に移動する。そうなると、カートリッジの内側のプランジャがピストンロッドとの当接から外れるように移動し、したがって、プランジャとピストンロッド(または使用される場合はピストンロッドフット)との間に空隙を生み出す。
【0020】
プライミングを必要としないかまたはプライミングを少なくともより少ない程度にしか必要としない注射装置を有することが利益になる。
【0021】
注射装置をプライミングしなければならない必要性に対処することを目的とするいくつかの注射装置が提案されてきた。しかし、それら解決策の多くは、注射装置をより複雑にし、コストを増大させ、一部は注射装置の長さをさらに大きくさせる場合もある。
【0022】
さらに、注射装置に収容される液剤の廃棄を減らし、注射装置の使用を単純にするために、注射と注射の合間の初期段階のプライミングもエアショットも低減するかまたは避けることが好ましいはずである。
【0023】
注射装置に取り付けられる針カニューレのルーメンの目詰まりの可能性を避けるかまたは少なくとも減らす注射装置を有することも利益になる。
【発明の概要】
【0024】
上記の欠点のうちの少なくとも1つまたは複数を少なくともある程度軽減することが一目的である。
【0025】
さらに、初期段階のプライミングおよび/または一般のプライミング、すなわち、注射と注射の合間のエアショットを少なくとも部分的に、好ましくは完全に避けることができる機構を提供することが一目的である。
【0026】
格納中にカートリッジに空気が入るのを避けるのに加えて、ユーザ(または製造者)が注射と注射の合間に針カニューレを注射装置上に維持する場合に針カニューレのルーメンの目詰まりを防止することも本発明の一目的である。
【0027】
本発明は請求項1に定義される。したがって、一態様では、本発明は、液剤の複数回分の用量をある回数の注射によって注射する注射装置に関する。注射装置は以下の構成要素を備える。
カートリッジを支持するかまたは保持するハウジング構造またはハウジングアセンブリ。カートリッジは、ハウジングに恒久的に組み込まれるか、またはハウジングに交換可能に設けられる。しかし、ハウジングアセンブリは、使用時に、すなわち、注射を行うときに、カートリッジを支持するために必要なだけである。カートリッジを支持するとき、カートリッジは、穿孔可能な隔壁によってシールされる遠位端、および移動可能なプランジャによってシールされる近位端を有する。隔壁およびプランジャは、カートリッジの壁と一緒になって、液剤を収容する内部を画定する。
カートリッジの内側で、移動可能なプランジャを、好ましくは遠位方向に移動させる、ピストンロッド。
ハウジングアセンブリに取り外し可能に連結され、注射と注射の合間に少なくともハウジングアセンブリの遠位端を取り囲む、保護キャップアセンブリ。取り外し可能な保護キャップアセンブリは、装着されるときは、好ましくは、ハウジングにプレス嵌めされるが、任意の種類の既知の取り付け手段、例えば、バヨネット連結などを使用して、ハウジング構造に取り外し可能に取り付けることもできる。
針カニューレを少なくとも使用時に固定する針マウント、またはその代わりに、針カニューレをその上に装着する針マウント。針カニューレの存在は注射中にのみ必要とされることを理解されたい。針カニューレは、例えば、接着剤などによって針マウントに固定される。さらに、針マウントは、ハウジングアセンブリの恒久的な部品とすることができるか、またはハウジングアセンブリから取り外し可能であり、したがって、交換できるようにすることができる。針カニューレは、液剤がカートリッジの内部から針カニューレのルーメンを通って流れ、ユーザの身体の皮下層に至ることができるように、カートリッジの内部と液体連絡状態にある近位端、およびユーザの皮膚を通して穿刺するための遠位先端部を有する遠位端を有する。
【0028】
ユーザが取り外し可能な保護キャップアセンブリを装着するときは、その保護キャップアセンブリは注射と注射の合間に少なくとも針カニューレの遠位先端部を取り囲む。さらに、取り外し可能な保護キャップアセンブリがハウジングアセンブリの遠位端に嵌合されるときに、気密チャンバが少なくとも針カニューレの遠位先端部を取り囲むよう確立されるように、気密シールが取り外し可能な保護キャップアセンブリとハウジングアセンブリとの間に設けられる。
【0029】
気密シールは、通常の室温、すなわち、摂氏20〜25度で、連続する2回の注射の合間に経過する通常の期間に針カニューレのルーメンの液剤が蒸発するのが防止される程度に、空気が通ることを防止する任意の種類のシールである。一例では、液剤は、通常24時間おきに注射される任意の種類の基礎インスリンとすることもできる。この例では、気密シールは少なくとも24時間、チャンバを気密に維持しなければならず、したがって、2回の注射の合間に経過する期間では目詰まりが防止される。現在市場で注射装置のために通常使用されるような一般に知られた保護キャップは、この定義には含まれず、一般に、気密であるとは認識されていない。ユーザが、針カニューレがその上に装着され標準的な保護キャップによってのみ隠されるよく知られている注射装置を格納する場合は、そのときに液剤が蒸発し、針カニューレのルーメンが目詰まりする。
【0030】
注射と注射の合間に針カニューレの遠位先端部が気密チャンバ内に維持されるので、カートリッジのルーメンの液剤は蒸発が防止される。チャンバの空気は、カートリッジからの蒸気を蒸発させることによって迅速に加湿され、針カニューレの遠位先端部の周りの比較的高い湿度が、さらなる蒸発を防止することによって目詰まりを能動的に防止することが示されている。
【0031】
さらに、カートリッジの液剤が温度低下を受ける場合も液剤は収縮する。しかし、空気またはガスの方が通常液体よりも収縮するので、気密チャンバの内側に収容される空気は液体よりも収縮する。このことは、液剤がカートリッジから気密チャンバに向かって引かれるという状況を作り出す。このことは、カートリッジの液剤に気泡が入り込むことを効率的に避けるか、または少なくともその可能性が低下する。カートリッジの内側の液体が収縮すると、同時に、カートリッジの内側でプランジャを遠位に移動させるが、気密チャンバの内側の空気が収縮すると、やはり、針カニューレのルーメンを通して液体を移動させることができる。
【0032】
液剤の蒸発が防止され、温度変化に応じて液剤はカートリッジから気密チャンバに向かってまたはそれどころか気密チャンバ内に移動するので、注射と注射の合間のプライミングを事実上防止することができる。
【0033】
針カニューレは、一例では、ハウジングアセンブリに設けられる針マウントに取り付け可能な針ハブ内に装着される。針マウントは、好ましくはバヨネットマウントもしくはねじ式マウント、またはそれらの組み合わせの形態の接続手段を担持する。しかし、針カニューレは、好ましくは、針カニューレを担持する針マウントをハウジングアセンブリの一部分とすることによって、ハウジングアセンブリに恒久的に装着することもできる。
【0034】
ハウジングアセンブリは、好ましくは、径方向を向くフランジを装備し、その径方向を向くフランジは、ハウジングアセンブリの遠位端に位置し、好ましくは、注射装置の中心線を向く。この径方向のフランジは、その近位表面でカートリッジの遠位端に当接し、その遠位表面で針アセンブリのハブに当接する。
【0035】
径方向のフランジは、比較的薄くなるように作製され、好ましくは、フランジが数度だけ近位方向を向く、すなわち、カートリッジの方を向くように、モールド成型される。さらに、カートリッジは、カートリッジの遠位端が、その傾きの方向によってカートリッジに対する事実上のシールを形成する径方向のフランジと強制的に当接するように、組み立て中にハウジングアセンブリ内で遠位に押し込まれる。反対に、径方向のフランジは針ハブをシールする。
【0036】
言及したように、気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリとハウジングアセンブリとの間に動作可能に設けられる。しかし、その代わりに、取り外し可能な針ハブが針マウントに装着されるときは、気密シールは、以下で説明するように、取り外し可能な保護キャップアセンブリと針マウントに装着された針ハブとの間に設けることができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリの内側表面上に設けられる。気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリに接着されるかまたはその他の手段で固定される、別個の要素、例えば、Oリングなどとして設けることができる。あるいは、気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリの一体部品として設けることができる。気密シールは、例えば、2Kモールド成型で取り外し可能な保護キャップアセンブリと一緒にモールド成型することもできる。
【0038】
気密シールが保護キャップアセンブリの内側表面上に設けられるときは、好ましくは、キャップアセンブリの一部分である内側シーリング要素上で担持される。一例では、内側シーリング要素は、外側キャップ要素と内側シーリング要素との間で動作する圧縮ばねなど、任意の種類の弾性要素とすることもできる弾性部品を介して外側キャップ要素に接続される。この弾性部品は、取り外し可能な保護キャップがハウジングアセンブリの遠位端に装着されるときに、弾性部品が気密シールを含む内側シーリング要素をハウジングアセンブリに押し付け、そうすることで、シール作用が強化されるように、内側シーリング要素を近位方向に付勢する。
【0039】
あるいは、弾性要素の形態の弾性部品は、内側シーリング要素または外側キャップ要素の一体部品としてモールド成型することもできるが、任意の知られている金属の圧縮ばねを使用することもできる。
【0040】
本発明の第2の実施形態では、気密シールは、ハウジングアセンブリの外部表面上に、好ましくは、針マウントの近傍に、動作可能に設けられる。取り外し可能な保護キャップアセンブリ上に気密シールを物理的に設けることの代替形態として、気密シールはハウジングアセンブリ上に物理的に設けることができる。気密シールは、ハウジングアセンブリに取り付けられる別個の要素として、または例えば、2Kモールド成型によって一体に作製される、ハウジングアセンブリの一体部品として、具現化することができる。
【0041】
第1の実施形態でも第2の実施形態でも、気密シールは、好ましくは、よく知られているTPE(熱可塑性エラストマー)などの熱可塑性ゴム材料から作製される。
【0042】
気密シールは、好ましくは、針ハブが針マウントに取り付けられるときにより大きい外径をカバーするように、径方向に拡張可能である。一例では、気密シールは、気密チャンバが確立されない第1の位置と、気密チャンバが確立される第2の位置とを有し、気密シールは、針アセンブリが注射装置に取り付けられるのに応答して、第1の位置から第2の位置に動かされる。
【0043】
これは、製造者またはユーザが格納する間に気密シールがその第1の休止位置または弛緩位置にあることが可能であるという利点を有する。このようにして、比較的長期間にわたって格納されるときにも、例えばゴム材料などである気密シールの緩みが防止される。さらに、気密シールの使用または機能は、ユーザが定期的な使用の前にいずれにしても行う、ハウジングアセンブリの針マウントへの針アセンブリの単純な取り付けによって、ユーザにとって非常に好都合かつ便利な状態で必要とされる特定の時期にアクティブにされる。
【0044】
さらなる例では、注射装置はさらに、ピストンロッドの移動を遠位方向に限定するラチェット要素を備える。このことは、カートリッジの内側の液剤が温度上昇に曝されると、カートリッジの内側の液剤が膨張するという作用を有する。こうした膨張は、場合によっては、カートリッジの内側でプランジャを近位に移動させることもあり、そうなると、カートリッジの内部に空気を引く恐れもある。しかし、このことは、ピストンロッドが、したがって、プランジャが近位方向に移動するのを防止することによって事実上防止される。
【0045】
したがって、プランジャが遠位方向にのみ移動可能であることによって、注射装置が上記で説明したように温度低下を受ける場合は、液剤がカートリッジから遠位に針カニューレのルーメンを通して引かれ、同時に、注射装置が温度上昇を受ける場合はカートリッジに空気が浸入することが防止されるという状況を生み出す。
【0046】
したがって、近位方向ではプランジャの軸方向の移動を防止するが遠位方向の移動は可能にすることを、上記の気密チャンバと組み合わせることで、注射と注射の合間の注射装置のプライミングの必要をさらに限定する。
【0047】
近位方向でピストンロッドの軸方向の移動を防止することは多くの手法で行うことができる。一例では、ピストンロッドに係合する一方向クラッチを設けることができる。こうした一方向クラッチは、ピストンロッドを遠位方向に移動させる方向である一回転方向にのみピストンロッドが回転可能になるように、例えば、ピストンロッドにキー止めし、ハウジング構造との歯による一方向の係合を有することもできる。ただし、ピストンロッドは、クラッチが一方向に回転することでピストンロッドを回転させずに前方に移動させることになるように、一方向クラッチが例えばピストンロッドにねじ留めできる場合は全く回転する必要はない。反対の回転方向では、クラッチは、例えば、一方向ラチェットを介してハウジングアセンブリに連結されて、ピストンロッドを近位方向に移動させる方向への回転を防止することもできる。クラッチはさらに、ピストンロッドを駆動させるドライブ要素と組み合わせることもできるか、または実際にクラッチをそのドライブ要素とすることもできる。
【0048】
一例では、ピストンロッドとカートリッジの移動可能なプランジャとは、ピストンロッドとカートリッジの移動可能なプランジャとが一緒に、少なくとも軸方向に移動するように、軸方向に互いに連結される。ピストンロッドとプランジャとの連結は、一例では、移動可能なプランジャにもピストンロッドにも固定される中間のピストンロッドフットを介することもできる。ピストンロッドが用量の吐出中に回転可能である場合は、ピストンロッドと中間のピストンロッドフットとの間の連結は、好ましくは、こうした回転を可能にする連結である。この例では、それらがここでは軸方向に接続され互いに厳格に追従し、そうすることで、空隙がそれ以上起こることができないので、プランジャとピストンロッドフットとの間、および/またはピストンロッドフットとピストンロッドとの間の空隙の問題は対処される。
【0049】
さらなる例では、注射装置はさらに、ハウジングアセンブリの内部表面とカートリッジの外側表面との間に位置する追加の気密シールを備える。この追加の気密シールは、その他の場合にハウジングの内側表面とカートリッジの外側表面との間の空気の流れを可能にするような注射装置の設計にも気密チャンバを設ける。
【0050】
取り外し可能な保護キャップアセンブリはさらに、一方向にのみ空気が流れることを可能にする一方向弁を装備することもできる。ユーザが保護キャップアセンブリをハウジングアセンブリに再装着するときに、保護キャップアセンブリは、気密シールがハウジング構造上に設けられる場合は、ハウジングに対して、したがって、気密シーリングに対してある距離だけ摺動し、この摺動によって、取り外し可能な保護キャップの内部で空気を捕捉して圧縮することになる。このような圧縮のせいで、捕捉された空気が長手方向の針カニューレのルーメンを通ってカートリッジの内部に押し込まれるというリスクがあり、その空気が液剤に気泡を生み出すため、このことは非常に望ましくない。
【0051】
これを防止するために、さらに捕捉された空気がキャップアセンブリの再装着中に逃げることを可能にするために、保護キャップアセンブリの内部は、好ましくは、いくつかの異なる手法で具現化できる一方向弁を装備する。一方向弁は、一例では、外側キャップ要素の内側にモールド成型されるゴム製インサートとして形成することもでき、そのゴム製インサートは、遠位において、捕捉された空気がそれを通って逃げることができる長手方向のスリットを装備する、閉止された先端部で終端する。したがって、保護キャップアセンブリがハウジングアセンブリ上および気密シール上で近位に摺動するときは、捕捉された空気はこの長手方向のスリットを通って逃げることができる。
【0052】
こうした一方向弁の使用は主に、気密シールが別個のシールまたは一体型のシールとしてハウジング上に設けられる実施形態で使用されることが意図されるが、これはこうした一方向弁を本発明の他の実施形態で使用できることを除外するものではない。
【0053】
上記で言及したように、気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリとハウジングアセンブリとの間に確立され、好ましくは、キャップアセンブリまたはハウジングアセンブリ上のいずれかに設けられる。しかし、針アセンブリがハウジングアセンブリの針マウントに取り付けられる場合は、その代わりに気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリと、ハウジングアセンブリの遠位に設けられる針マウントに取り付けられる針ハブとの間に設けることができる。本発明のこれらさらなる例を以下の通りに表すことができる。
【0054】
例A)液剤の複数回分の用量をある回数の注射によって注射する注射装置であって、注射装置は、
カートリッジを少なくとも使用時に支持する、ハウジングアセンブリであって、カートリッジが、穿孔可能な隔壁によってシールされる遠位端、および液剤を収容する内部を画定する移動可能なプランジャによってシールされる近位端を有する、ハウジングアセンブリと、
カートリッジの内側で移動可能なプランジャを遠位に移動させる、ピストンロッドと、
ハウジングアセンブリに取り外し可能に連結され、注射と注射の合間に少なくともハウジングアセンブリの遠位端を取り囲む、取り外し可能な保護キャップアセンブリと、
針ハブに固定される針カニューレを備える針アセンブリを少なくとも使用時に担持する、針マウントであって、針カニューレが、カートリッジの内部と液体連絡状態にある近位端、およびユーザの皮膚を穿刺するための遠位先端部を有する遠位端を有する、針マウントと
を備える。
【0055】
注射装置はさらに、取り外し可能な保護キャップアセンブリが注射と注射の合間に少なくとも針カニューレの遠位先端部を取り囲み、取り外し可能な保護キャップアセンブリがハウジングアセンブリの遠位端に嵌合されるときに、気密チャンバが少なくとも針カニューレの遠位先端部を取り囲むよう確立されるように、気密シールが、取り外し可能な保護キャップアセンブリと針マウントに装着される針ハブとの間に設けられることを特徴とする。
【0056】
気密シールは、上記の例では、取り外し可能な保護キャップアセンブリ上に設けられることが意図されるが、その代わりに針ハブの外側表面上に設けることもできる。このさらなる実施形態はさらに、以下の例のいずれとも組み合わせることもできる。
【0057】
例B)ハウジングアセンブリは、遠位に、径方向のフランジを装備し、そのフランジには針ハブおよびカートリッジの両方が当接する、例A)に記載の注射装置。
【0058】
例C)気密シールは、取り外し可能な保護キャップアセンブリの内側表面上に設けられる、例A)またはB)のいずれかに記載の注射装置。
【0059】
例D)取り外し可能な保護キャップアセンブリは、内側シーリング要素および外側キャップ要素を備える、例A)、B)、またはC)に記載の注射装置。
【0060】
例E)内側シーリング要素は、気密シールを担持する、例D)に記載の注射装置。
【0061】
例F)内側シーリング要素は、外側キャップ要素に対する軸方向の力をシーリング要素に与える弾性要素などの弾性部品を介して外側キャップ要素に連結される、例D)またはE)のいずれかに記載の注射装置。
【0062】
例G)注射装置はさらに、ピストンロッド(280)の軸方向の移動を遠位方向に限定するラチェット要素を備える、例A)からF)のいずれかに記載の注射装置。
【0063】
例H)ピストンロッドと移動可能なプランジャとは、軸方向において共に連結される、例A)からG)のいずれかに記載の注射装置。
【0064】
例I)ピストンロッドと移動可能なプランジャとは、移動可能なプランジャに固定されピストンロッドに回転可能なように接続される、中間のピストンロッドフットを介して軸方向に連結される、例H)に記載の注射装置。
【0065】
例J)、注射装置はさらに、ハウジングアセンブリの内部表面とカートリッジの外側表面との間に位置する追加の気密シールを備える、例A)からI)のいずれかに記載の注射装置。
【0066】
例K)保護キャップアセンブリは一方向弁を装備する、例A)からJ)のいずれかに記載の注射装置。
【0067】
定義
「注射ペン(injection pen)」とは、典型的には、やや筆記ペンに似た長い形または細長い形状を有する注射器具である。こうしたペンは通常、管状の断面を有するが、もちろん三角形、矩形、もしくは正方形、またはこれらの形に似た任意の変形物など、異なる断面を有することもできる。
【0068】
用語「針カニューレ(needle cannula)」とは、注射中に皮膚の穿刺を行う実際のコンジットを描写するために用いられる。針カニューレは通常、例えばステンレス鋼などの金属材料から作製され、ハブに接続されて、「針アセンブリ(neelde assembly)」とも称されることが多い完全な注射針を形成する。しかし、針カニューレはポリマー材料またはガラス材料から作製することもできる。ハブは、針アセンブリを注射器具に接続する接続手段も担持し、通常、適切な熱可塑性の材料からモールド成型される。「接続手段(connection means)」は、例として、ルアー連結、バヨネット連結、ねじ式接続、またはそれらの任意の組み合わせ、例えばEP1,536,854に記載されるような組み合わせとすることもできる。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「薬剤(drug)」とは、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液など、制御された手法で中空針などの送達手段を通り抜けることができる任意の薬剤を含有する流動可能な薬物を含むものを意味する。代表的な薬剤には、固体(投与の)形態でも液体形態でも、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類似体、およびC−ペプチド)、およびホルモン、生物由来の物質または活性物質、ホルモンベースおよび遺伝子ベースの作用物質、栄養フォーミュラ、ならびに他の物質などの医薬品が含まれる。
【0070】
「カートリッジ(cartridge)」とは、実際に薬剤を収容する容器を描写するために用いられる用語である。カートリッジは、通常、ガラスから作製されるが、任意の適切なポリマーからモールド成型することもできる。カートリッジまたはアンプルは、好ましくは、例えば針カニューレの患者側でない方の端部によって穿孔できる「隔壁(septum)」と称される穿孔可能なメンブレンによって一端がシールされる。こうした隔壁は、通常、自己シール式であり、つまり、針カニューレが隔壁から取り外されると穿刺中に作られた開口が固有の弾性によって自動的にシールすることを意味する。反対側の端部は、典型的には、ゴムまたは適切なポリマーによって作製されるプランジャまたはピストンによって閉止されている。プランジャまたはピストンは、カートリッジの内側で摺動可能とすることができる。穿孔可能なメンブレンと移動可能なプランジャとの間の空間は薬剤を保持し、薬剤は、プランジャによって薬剤を保持する空間の体積を減少させると押し出される。しかし、剛体または可撓性の任意の種類の容器を使用して薬剤を収容することができる。
【0071】
カートリッジは通常、プランジャが移動できないより細い遠位のネック部分を有するので、カートリッジの内側に収容される液剤の全てを実際に吐出することはできない。したがって、用語「初期段階の分量(initial quantum)」または「実質的に使用される(substantially used)」とは、カートリッジに収容される注射可能な内容物を指し、したがって、必ずしも内容物全体を指すわけではない。
【0072】
用語「充填済み(pre−filled)」の注射装置とは、注射装置の恒久的な破壊なしには取り外すことができないように、液剤を収容するカートリッジが注射装置に恒久的に組み込まれる注射装置を意味する。カートリッジ内の充填済みの量の液剤が使用されると、ユーザは通常注射装置全体を廃棄する。これは、液剤を収容するカートリッジが空になるたびにユーザ自身がカートリッジを交換できる「耐久性のある(durable)」注射装置とは対立するものである。充填済みの注射装置は通常、2つ以上の注射装置を収容するパッケージで販売されるが、耐久性のある注射装置は通常1度に1つずつ販売される。充填済みの注射装置を使用するとき、平均的なユーザは50から100個程度の注射装置を必要とする場合がある。耐久性のある注射装置を使用するときは、1つの単一の注射装置が何年も持ちこたえることもできるが、平均的なユーザは1年に50から100個の新しいカートリッジを必要とすることになる。
【0073】
注射装置と併せて用語「自動的(automatic)」を用いることは、投薬中に薬剤を吐出するために必要な力を注射装置のユーザが送達することなく、注射装置が注射を行うことができることを意味する。この力は、典型的には、電気モータまたはばねドライブによって自動的に送達される。ばねドライブ用のばねは通常、用量設定中にユーザによって引っ張られるが、こうしたばねは通常、非常に少ない用量しか送達しないという問題を避けるために予め引っ張られている。あるいは、ばねには、ある回数の用量によって薬剤カートリッジ全体を空にするのに十分な予荷重を、製造者によって完全にかけることができる。典型的には、ユーザは、例えば注射装置の近位端にある、例えばボタンの形態のラッチ機構を作動させて、注射を実行するときにばねに蓄積された力を完全にまたは部分的に解放する。
【0074】
用語「恒久的に接続される(permanently connected)」とは、本明細書で用いられる場合、本願においてカートリッジおよび針アセンブリとして具現化される部品が、切り離すために工具の使用を必要とし、それら部品が切り離された場合は、それら部品のうちの少なくとも1つが恒久的に損傷を受けることになることを意味するものである。
【0075】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、および特許を含む参考文献は全て、あたかもそれぞれの参考文献が個別に具体的に援用されることが示され、その全体が本明細書に記載されるかのように、それら全体が同じ程度に援用される。
【0076】
見出しおよび小見出しは全て、本明細書では便宜的に使用されるに過ぎず、決して本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0077】
本明細書で行われる任意のおよび全ての例、または例示的な言葉(例えば「〜など」)の使用は、単に本明細書をより良く明らかにするものであり、別段の主張がない限り本発明の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書のいずれの文言も、特許請求されない何らかの要素を本発明の実践に不可欠であると示すものと解釈すべきではない。本明細書の特許文献の引用および援用は、単に便宜的に行われており、こうした特許文献の有効性、特許性および/または権利行使可能性の観点を反映するものではない。
【0078】
本発明は、適用可能な法律によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変形態および等価物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】保護キャップアセンブリが取り外された注射装置の第1の実施形態の断面図を部分的に示す。
【
図2】保護キャップアセンブリが装着された注射装置の第1の実施形態の断面図を部分的に示す。
【
図3】本発明の第1の実施形態による保護キャップアセンブリの断面図を示す。
【
図6】一方向弁が確立される、異なる実施形態を示す。
【
図7】針アセンブリが装着されていない注射装置のさらなる実施形態の断面図を部分的に示す。
【
図8】針アセンブリが装着された、
図7の注射装置の断面図を部分的に示す。
【
図9】針アセンブリと保護キャップアセンブリの両方が装着された、
図7の注射装置の断面図を部分的に示す。
【
図12】
図6から
図9のピストンロッドフットおよびピストンロッドの例示的な実施形態の細部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
ここで、本明細書に開示される液剤の設定用量を送達する注射装置の様々な態様および実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0081】
「上側(upper)」および「下側(lower)」、「右(right)」および「左(left)」、「水平(horizontal)」および「垂直(vertical)」、「時計回り(clockwise)」および「反時計回り(counter clockwise)」などの相対的な表現または同様の表現が以下の記述で用いられるときは、それら表現は、実際の使用状況ではなく、単に添付の図について言及しているだけである。示した図は概略的な表現であり、そのため、異なる構造の構成ならびにそれらの相対的寸法は説明のためにのみ役立つものである。
【0082】
その分脈では、添付の図の用語「遠位端(distal end)」は注射装置のうちの通常は注射針を担持する端部を指すことを意味し、用語「近位端(proximal end)」は注射針から離れる方を向く反対側の端部を指すことを意味すると定義することが好都合な場合がある。
【0083】
遠位および近位とは、長手方向軸「X」に沿って延在する軸方向の配向に沿っていることを意味し、
図1でさらに開示される。
【0084】
様々な構成要素のいくつかは、本発明の単一の実施形態に関してのみ開示されるが、さらに説明することなく他の実施形態に含まれることを意味する。
【0085】
本発明の第1の実施形態による注射装置の部分図が
図1に開示されている。外側シェルは、数個の部分から作製できるハウジングアセンブリ10から形成される。開示される実施形態では、ハウジングアセンブリ10は主ハウジング部分10Aおよび遠位ハウジング部分10Bを備える。遠位ハウジング部分10Bは主ハウジング部分10Aにクリック嵌合されるが、その代わりに1つのユニットとしてモールド成型することもできる。
【0086】
遠位ハウジング部分10Bはさらに針マウント11を担持し、その針マウント11は、
図1および
図2ではバヨネットインターフェースとして示し、
図6ではねじ式インターフェース(111)として示す。バヨネットインターフェースとねじ式インターフェースはどちらも、注射装置のための針のインターフェースの従来技術ではよく知られている。
【0087】
ハウジングアセンブリ10はカートリッジ20を保持し、カートリッジ20は、遠位では穿孔可能な隔壁21によってシールされ、近位では移動可能なプランジャ22によって閉止され、隔壁21およびプランジャ22は、カートリッジ20と一緒になって、注射される液剤を収容する内部空間23を画定する。カートリッジ20は遠位にいわゆるネック部を装備し、そのネック部は、
図1に開示されるように遠位ハウジング部分10Bによって支持されるショルダ23を有する。
【0088】
さらに、遠位ハウジング部分10Bは径方向を向くフランジ12で終端し、フランジ12は開示される実施形態では近位方向に傾斜する。この径方向のフランジ12は、近位においてカートリッジ20の遠位端に対してシールする。径方向のフランジ12とカートリッジ20のショルダ23との比は、カートリッジ20の遠位端がフランジ12に接して付勢されるようになっている。
【0089】
注射装置がいわゆる充填済みの注射装置である場合は、カートリッジ20はハウジングアセンブリ10に恒久的に組み込むこともでき、注射装置がいわゆる耐久性のある注射装置の場合は、カートリッジ20は交換可能にすることができる。しかし、いずれのタイプの注射装置でも、表面構造などは、遠位方向においてカートリッジ20に軸方向の圧力を印加するように設計することができる。この圧力によって、カートリッジ20の遠位端とハウジングアセンブリ10の径方向のフランジ12との間のシールが密であることを確実にする。
【0090】
図1および
図2に開示されるように、針マウント11は針アセンブリ30を担持し、針アセンブリ30は、針カニューレ32が固定される針ハブ31を備える。こうした針アセンブリ30はペン型注射針と称されることが多い。針カニューレ32は近位端33を有し、近位端33は、針アセンブリ30が針マウント11に取り付けられると、液剤が注射中に針カニューレ32の長手方向のルーメンを通って自由に流れるように、穿孔可能な隔壁21を通って穿刺してカートリッジ20の内部23に至る。針カニューレ32はさらに遠位端34を有し、遠位端34は、ハブ31に対して遠位に延び、注射中にユーザの皮膚を穿刺する遠位先端部35で終端する。
【0091】
針ハブ31はさらに、その内側表面上に径方向の壁36を装備し、壁36は、軸方向において、
図1および
図2に示すように、ハウジングアセンブリ10の径方向のフランジ12の遠位表面に当接する。ねじ式またはバヨネットの針マウント11は、針ハブ31が針マウント11に固定されると径方向の壁36が径方向のフランジ12に対して引かれるように形成することができる。
【0092】
針ハブ31のこの径方向の壁のセクション36と径方向のフランジ12の遠位表面との間のシール、およびカートリッジ20の遠位端と、ハウジングアセンブリ10の径方向のフランジ12の近位表面との間のシールは、気密チャンバ60への空気流は全く不可能になるかまたは非常に限られた量だけが可能になることを保証する。カートリッジ20のショルダ23とハウジングアセンブリ10との間で行われる当接もこの空気流を低減する。
【0093】
遠位では、針ハブ31は内側ハット40を担持し、内側ハットはハブ31の外側表面にプレス嵌めされる。内側ハット40は、注射を行う前にユーザによって簡単に取り外すことができ、針カニューレ32の鋭利な遠位先端部35によって不意に負傷することからユーザを保護するように設計される。注射が行われた後には、ユーザはそのように所望する場合は内側ハット40を再装着することができる。
【0094】
注射が行われたら、ユーザは通常、
図2に開示されるように保護キャップアセンブリ50を再装着する。この保護キャップアセンブリ50は、注射と注射の合間に注射装置の遠位端を保護し、ハウジングアセンブリ10の遠位端上にプレス嵌めされ、ユーザによって簡単に取り外し可能である。保護キャップアセンブリ50の内側表面52は、ハウジングアセンブリ10の外側表面13に設けられた同様の受容部品に係合する能動的係合手段を装備することもできる。こうした構成は、例えば、バヨネットインターフェースとすることもできる。保護キャップアセンブリ50は、開示される実施形態では、注射装置のハウジングアセンブリ10の遠位端だけをカバーするように設計されているが、任意の所望の長さを有することができる。保護キャップアセンブリ50はさらに、
図2に開示されるような針アセンブリ30が取り付けられた状態でも、針アセンブリ30が取り外された状態でも、装着することができる。保護キャップアセンブリ50はさらに、注射が行われた後にユーザが内側ハット40も再装着すると決めた場合に内側ハット40のための十分な空間を有するように設計される。保護キャップアセンブリ50は、当然、注射を行う前に取り外される。
【0095】
保護キャップアセンブリ50は
図3の断面図に開示され、2つの部分、つまり、外側キャップ要素51および内側シーリング要素55を備える。
【0096】
内側シーリング要素55はさらに、
図4および
図5に詳細に開示される。遠位では、内側シーリング要素55は弾性要素56を担持し、弾性要素56は、開示される実施形態では、内側シーリング要素55の一体部品としてモールド成型される。しかし、この弾性要素56は、外側キャップ要素51と内側シーリング要素55との間で相互作用する任意の種類の別個の圧縮ばねとすることもできる。
【0097】
内側シーリング要素55は、近位に、熱可塑性エラストマーなどのゴム材料からモールド成型される気密シール57を装備する。内側シーリング要素55および気密シール57は、好ましくは、よく知られている2Kモールド成型技法を用いて形成されるが、気密シール57は、例えば内側シーリング要素55に接着または溶接される別個のシール57とすることもできる。
【0098】
内側シーリング要素55は、弾性要素56が
図3に示すように外側キャップ要素51に対して近位方向に内側シーリング要素55を付勢するように、外側キャップ要素51の内側に装着される。
【0099】
注射後にユーザがハウジングアセンブリ10の遠位端に保護キャップアセンブリ50を再装着するときは、気密シール57は、
図2に開示されるようにハウジングアセンブリ10に当接し、したがって、注射と注射の合間に針カニューレ32の遠位先端部35が延びる気密チャンバ60を形成する。さらに、弾性要素56は、気密シール57が加圧されるように、ハウジングアセンブリ10に対して気密シール57を付勢する。
【0100】
加圧されることによってとは、気密シール57が能動的な力でハウジングアセンブリ10に押し付けられるという意味である。
図1から
図5に開示される実施形態では、気密シール57はさらに、遠位ハウジング部分10B上の傾斜した表面に当接して、当接をさらに強化する。
【0101】
注射と注射の合間に針アセンブリ30が遠位ハウジング部分10Bに取り付けられた状態で維持される場合は、シーリング要素55とハウジングアセンブリ10との間に気密チャンバ60が確立され、連続する注射と注射の合間に針カニューレ32の遠位先端部35がこの気密チャンバ60の内側に維持されるので、針カニューレ32の長手方向のルーメンに存在する液剤が乾き切ることが防止される。
【0102】
このことが実現される理由は、気密チャンバ60は、加熱されるときまたは加温されるだけでも、針カニューレ32の遠位先端部35の周りでカートリッジ20から液体がすぐに蒸発することによって加湿され、そうすることで、針カニューレ32の遠位先端部35の周りの比較的高い湿度が目詰まりを能動的に防止するためである。
【0103】
図6は、同じ要素には第1の実施形態と同じ番号を用いるが先頭に「1」を加えて番号を付けた、異なる実施形態を開示する。
図6にねじ式インターフェースとして開示される針マウントはしたがって番号111が付され、針ハブは131が付される。
【0104】
図6からわかるように、この第2の実施形態では、気密シール117が遠位ハウジング部分110Bと保護キャップアセンブリ150との間に設けられる。第1の実施形態では、気密シール57は保護キャップアセンブリ50と一体にモールド成型されたが、この第2の実施形態では、気密シール117は、好ましくは、2Kモールド成型技法を用いて遠位ハウジング部分110Bの一体部品としてモールド成型される。
【0105】
この実施形態では、カートリッジ120の遠位端および針ハブ131は、やはりハウジングアセンブリ110の径方向のフランジ112の表面に当接し、さらにフランジ112の表面をシールする。径方向のフランジ112はこの特定の実施形態では傾斜しないものとして開示される。
【0106】
ユーザがハウジングアセンブリ110に保護キャップアセンブリ150を再装着するときは、保護キャップアセンブリ150は
図6に「Y」として示される距離だけ摺動する。保護キャップアセンブリ150が気密シーリング117に対して摺動するので、保護キャップアセンブリ150の内側に捕捉された空気は圧縮されることになる。この圧縮のせいで、この捕捉された空気が針カニューレ132の長手方向のルーメンを通ってカートリッジ120の内部123に押し込まれるというリスクがあり、これは、空気が液剤に気泡を生み出すので望ましくない。
【0107】
このことを防止するために、また捕捉された空気が逃げることを可能にするために、保護キャップアセンブリ150の内部は、いくつかの異なる手法で具現化できる一方向弁170を装備する。この一方向弁170は、開示される実施形態では、外側キャップ要素151の内側にモールド成型されるゴム製インサート171によって形成される。そのゴム製インサート171は、遠位で、長手方向のスリット173を装備する閉止された先端部172で終端する。したがって、保護キャップアセンブリ150がハウジングアセンブリ110上で近位に距離「Y」だけ摺動するとき、捕捉された空気はこの長手方向のスリット173を通して逃げることができる。
【0108】
図7から
図12は、同じ要素には上記の2つの実施形態と同じ番号を用いるが、番号の先頭に「2」を付けた、第3の実施形態を開示する。したがって、ハウジングアセンブリは番号210が付され、保護キャップアセンブリは番号250が付される。
【0109】
上記に説明した一方向弁170は、さらなる説明なしにこの第3の実施形態の一部として用いることもできる。
【0110】
図7から
図9では、ハウジングアセンブリ210の遠位端は、遠位ハウジング部分として1つの構造ユニットとして形成され、主ハウジング部分は1つのユニット式ハウジングとしてモールド成型される。ハウジングアセンブリ210の遠位端は、この実施形態でも、ねじ式インターフェースとして示される針マウント211を装備する。
【0111】
ハウジングアセンブリ210はカートリッジ220を格納する。そのカートリッジ220は、様々なタイプの注射装置から一般に知られるように、ピストンロッド280に対して遠位に、主ハウジングに、または主ハウジングに接続されたカートリッジホルダに装着される。
【0112】
ハウジングアセンブリ210は、
図8の矢印213によって示される外側表面を有し、上記の実施形態と同様に、遠位でハウジングアセンブリ210を終端させ、針ハブ231もカートリッジ220もシールする、径方向のフランジ212を装備する。
【0113】
ハウジング210はさらに、ピストンロッド280と係合するナット要素218または同様の物を備える。開示される同様の実施形態では、ナット要素218は、ハウジングアセンブリ210に回転不能に接続されるか、または例えば、ハウジングアセンブリ210の一部分としてモールド成型される。ナット要素218は雌ねじ219を有し、雌ねじ219は、ピストンロッド280が、ハウジングアセンブリ210に対して、したがって、ナット要素218に対して回転するときに、らせん状に移動するように、ピストンロッド280の外部に設けられた雄ねじ281とねじ係合する。開示される実施形態では、ナット要素218は、外部に、複数の外部の歯を装備し、それらの歯は、ハウジングアセンブリ210に係合し、ハウジングアセンブリ210に関して回転不能なようにナット要素218を維持する。
【0114】
カートリッジ220は、上記の実施形態のように、穿孔可能な隔壁221などによって閉止される遠位端と、使用中に吐出される液剤を収容する内部223を画定する、移動可能なプランジャ222によって閉止された近位端とを有する。図示のように、穿孔可能な隔壁221は、2重のメンブレンを備えるが、それとは異なる、例えば単一のメンブレンだけを備えることもできる。
【0115】
図8に開示されるように、針マウント211上に針アセンブリ230を装着することができる。この針アセンブリ230は、上記の実施形態と同様に針ハブ231に接続される針カニューレ232を備える。針カニューレ232は、遠位先端部235を有する遠位端234と、針アセンブリ230が注射装置に適切に取り付けられると、カートリッジ220の内部223と液体連通状態になる近位端233とを有する。
【0116】
注射装置は保護キャップアセンブリ250も備え、保護キャップアセンブリ250は、
図7および
図9に示すようにハウジングアセンブリ210に嵌合されるときに少なくともハウジングアセンブリ210の遠位端を取り囲む。例えば
図7でわかるように、ハウジングアセンブリ210は長手方向の窓215を装備し、ユーザは、その窓215を通して、カートリッジ220の内部223に収容された液剤を検査することができる。この長手方向の窓215は、特に紫外線から液剤をシールドするように、注射と注射の合間には保護キャップアセンブリ250によってカバーされる。
【0117】
カートリッジ220の移動可能なプランジャ222と、ピストンロッド280との間には、移動可能なプランジャ222のより大きい表面にわたって注射の圧力を分散させるために、
図12に細部が開示されるピストンロッドフット275が設けられる。上記のいくつかの注射装置では、ピストンロッドフットまたはワッシャは、移動可能なプランジャとピストンロッドとの間に緩んだ状態で配設される。しかし、本実施形態では、移動可能なプランジャ222もピストンロッド280も、ピストンロッドフット275に固定される。この恒久的な接続の結果として、ピストンロッド280は、温度変化による液剤の膨張または収縮によって起こる移動可能なプランジャ222の軸方向の移動に追従する。しかし、格納中に起こる温度変化によってピストンロッド280が自由に移動するためには、ピストンロッド280は、格納中にドライブシステムから連結解除されている必要がある。
【0118】
ピストンロッドフット275は、ピストンロッド280に回転可能にヒンジ接続してもよく、剛性の高い1つの構造を形成するようにピストンロッド280と一体になるようにモールド成型してもよい。
【0119】
図7から
図9に示す実施形態では、ピストンロッドフット275は、移動可能なプランジャ222に、軸方向にだけでなく完全に固定され、すなわち、ピストンロッドフット275および移動可能なプランジャ222は、軸方向に移動することも、互いに関して回転することもできない。これは、一例(例えば
図12参照)では、ピストンロッドフット275にその遠位を向く側においてスパイク276を設けることによって行われ、スパイク276は移動可能なプランジャ222に打ち込まれる。近位では、ピストンロッドフット275はいくつかの可撓性アーム277を装備する。それら可撓性アーム277は、ピストンロッド280およびピストンロッドフット275が軸方向にロックされるが、互いに関して回転できるように、ピストンロッド280の遠位に設けられたトラック282と一緒にスナップ嵌めする。トラック282に対して遠位では、ピストンロッド280は傾斜した遠位端283を装備することができ、その傾斜した遠位端283は、ピストンロッド280とピストンロッドフット275とが接続されるときにピストンロッドフット275を前方に押圧し、そうすることで、ピストンロッド280とピストンロッドフット275との間にある遊びを減らすか、または好ましくはなくす。
【0120】
この構成のさらなる詳細が、例えば、特許公開WO2014/060369に開示され、この文献は、初期状態のピストンロッド280が格納中にドライブ機構から解放されており、用量の吐出中にだけドライブ機構に連結されるようにドライブ機構を設計できる方法についても開示する。これは、ピストンロッド280はユーザが実際に用量を吐出しない限り初期段階では自由に回転することを意味する。
【0121】
本発明のある態様によれば、ハウジングアセンブリ210は、
図6に示す第2の実施形態と同様に、例えば、針ハブ231が取り付けられる針マウント211の近傍のハウジングアセンブリ210の遠位端に向かって、ハウジングアセンブリ210の外部表面213の周囲全体にわたってその上に位置する気密シール217を備える。
【0122】
この実施形態では、気密シール217は、気密チャンバ260が少なくとも針カニューレ232の遠位端の遠位先端部235を取り囲むよう確立されるように、ハウジングアセンブリ210に嵌合されるときのキャップアセンブリ250の内側表面252と、ハウジングアセンブリ210の外部表面213との間に設けられる。
【0123】
必要な場合は、追加の気密シール216(
図9の破線の四角形の拡大図である
図11参照)が。ハウジングアセンブリ210の内部表面と、カートリッジ220のショルダ223との間に位置することができる。この追加の気密シール216は、好ましくは、ハウジングアセンブリ210の一部分としてモールド成型される。しかし、径方向のフランジ212と、カートリッジ220の遠位端および針ハブ231との間のシールだけで、通常、気密チャンバ260を実際に気密になるように維持するのに十分である。
【0124】
第3の実施形態による注射装置が(追加の気密シール216があってもなくても)保護キャップアセンブリ250と嵌合されるときは、気密チャンバ260は、
図9に開示されるように、針カニューレ232の遠位先端部235の周りに確立される。
【0125】
保護キャップアセンブリ250が温度低下を受ける状態で針アセンブリ230を有する注射装置が装着される場合は、シールされた気密チャンバ260の内側の空気が収縮し、より重要なことには、気体である空気の方が、当然液体である液剤がカートリッジ220の内部223で収縮するよりも収縮する。このことから気密チャンバ260が圧力不足になり、したがって、その圧力不足が針カニューレ232のルーメンを通してカートリッジ220の外に液剤のごく一部を引き出す。さらに、カートリッジ220の内側で液剤が収縮する体積よりも針カニューレ232からの流出が大きくなり、このことから、空気と液体の両方が収縮する限り、確実に液体の流出が続き、そうなると、カートリッジ220の内部223に収容される液剤に空気が浸入しないことを効率的に保証する。
【0126】
このように、カートリッジ220の内側の液剤に気泡が入り込むことが効率的に避けられ、または少なくともその可能性が低下する。
【0127】
移動可能なプランジャ222、ピストンロッドフット275、およびピストンロッド280が上述のように軸方向に接続される場合は、気密チャンバ260内が圧力不足であること、および液剤の方が、収縮が小さいことによって、移動可能なプランジャ222を、さらにそれと共にピストンロッドフット275およびピストンロッド280も、カートリッジ220の遠位端に向かって移動させる。しかし、これら要素が軸方向に接続されなくても、やはり気泡が避けられるかまたは低減されることに留意されたい。
【0128】
移動可能なプランジャ222、ピストンロッドフット275、およびピストンロッド280が軸方向に接続される注射装置のさらなる例によれば、ピストンロッド280は、以下に説明するような一方向機構の存在によって遠位方向にしか移動することができない。
【0129】
温度が上昇すると、気密チャンバ260の空気もカートリッジ220の内側の液剤も膨張するが、空気が最も膨張し、圧力超過になり、圧力超過は移動可能なプランジャ222を近位方向に押すことになり、カートリッジ220の内部223に空気をポンプ輸送するかまたは押し込む可能性があり、そうなると、液剤に気泡が入り込む。
【0130】
しかし、このことは、移動可能なプランジャ222、ピストンロッドフット275、およびピストンロッド280が軸方向に接続され、軸方向において遠位方向にしか移動しないように構成されることによって、かなりの程度避けられるかまたは少なくとも軽減される。そうすることで、より高い温度に曝されているので気泡が液剤に入り込まない。
【0131】
この例によれば、一方向機構は、ピストンロッド280の移動が単純に遠位方向にのみ可能になるように限定するラチェット要素290を備える。ラチェット要素290は、ラチェット要素290およびピストンロッド280が一斉に回転するように、ピストンロッド280に設けられた長手方向のトラック284に嵌合する鍵の形状291を内部に有する。そうすることで、ラチェット要素290は、回転によってピストンロッド280を駆動させるドライブ要素としても働くこともできる。ラチェット要素290はさらに、弾性アーム292を1つまたは複数備え、弾性アーム292は、ラチェット要素290が一回転方向にのみ回転できるように、ハウジングアセンブリ210の内部に設けられた歯付きリング214に係合する。可能にされた回転方向は、ピストンロッド280を前方に遠位方向に移動させる方向である。そうすることで、移動可能なプランジャ222は、近位に移動することが防止される。
【0132】
ラチェット要素290がドライブ要素としても働く例では、ラチェット要素290の任意の回転がピストンロッド280も回転させて、ナット要素218のねじ山219をらせん状に回転する。しかし、格納中は、ラチェット要素290は、ラチェット要素290、したがって、ピストンロッド280が自由に回転できるように、ドライブ機構から連結解除されることになる。しかし、ラチェット要素290の回転は、一回転方向に、好ましくは、ピストンロッド280を遠位方向に移動させる方向に限定される。
【0133】
他の例では、気密シール217は第1の位置および第2の位置を有する。
図7に開示される第1の位置では、気密チャンバ260は確立されず、気密シール217は、キャップアセンブリ250の内側表面252と接触状態にない。
図9に開示される第2の位置では、気密チャンバ260が確立され、気密シール217は、キャップアセンブリ250の内側表面252と接触状態にある。
【0134】
このことは、例えば製造者またはユーザが使用まで格納している間は、気密シール217がその第1の位置、例えば、休止位置、弛緩位置、または非アクティブ位置にあることが可能であるという利点を有する。このように、例えばゴム製シールなどであるときに、比較的長期間にわたって格納されるときにも、気密シール217の緩みが防止される。
【0135】
少なくとも一部の実施形態では、気密シール217は、針アセンブリ230が注射装置100に取り付けられることに応答して、第1の位置から第2の位置に動かされる。
図8は、針ハブ231が気密シール217に係合し、近位方向に圧力を加え、このことが、気密シール217を径方向に膨張させて、
図9に示すように保護キャップアセンブリ250の内側表面252と係合することを開示する。
【0136】
これは、ユーザが定期的な使用の前にいずれにしても行う、ハウジングアセンブリ210の針マウント211への針アセンブリ230の単純な取り付けによって、ユーザにとって非常に好都合かつ便利な状態で必要とされる特定の時期に、気密シール217の使用または機能をアクティブにする。あるいは、第1の位置と第2の位置との間を切り替える他の手法またはそれら位置を設ける他の手法を用いることができる。
【0137】
いくつかの好ましい実施形態を上記に示してきたが、本発明はそれらに限定されず、以下の特許請求の範囲に定義される主題の範囲に包含される他の手法で具現化できることを強調すべきである。
【0138】
いくつもの特性を列挙する特許請求の範囲では、それら特性の一部または全てを1つのおよび同じ要素、構成要素、または項目によって具現化することができる。一定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されるかまたは異なる実施形態に記述されるという単なる事実は、それら方策の組み合わせを有利に使用できないことを示唆しない。
【国際調査報告】