(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538594(P2017-538594A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】燃焼室における貫通導入部を有する打込み装置
(51)【国際特許分類】
B25C 1/08 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
B25C1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-532927(P2017-532927)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】EP2015079945
(87)【国際公開番号】WO2016096953
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】14199199.2
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ヘープ, ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ディトリヒ, ティロ
(72)【発明者】
【氏名】シュタウス−ライナー, ペーター
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC03
(57)【要約】
本発明は1つの打込みに関し、当該打込装置は、1つのシリンダ(2)にガイドされている、釘部材を加工対象物(5)に打込むための1つの打込みピストン(3)と、当該打込みピストン(3)の上に配設されている、燃焼ガスで充填可能な1つの燃焼室(1)と、を備え、1つの可動な移動棒(8)が、当該燃焼室(1)のハウジング内で1つのフィードスルー(9)を1つの軸方向長(L)に渡って通りぬけており、当該移動棒(8)と当該フィードスルー(9)との間には1つのガイドギャップ(10)が形成されており、当該移動棒(8)またはフィードスルー(9)の両方の内少なくとも1つに、1つの凹部(11,12)が形成されており、当該移動棒(8)と当該フィードスルー(9)との間の間隔は、当該凹部(11,12)の領域においては、前記ガイドギャップ(10)の径方向の高さよりも大きくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打込装置であって、
1つのシリンダ(2)にガイドされている、釘部材を加工対象物(5)に打込むための1つの打込みピストン(3)と、
前記打込みピストン(3)の上に配設されている、燃焼ガスで充填可能な1つの燃焼室(1)と、
を備え、
1つの可動な移動棒(8)が、前記燃焼室(1)のハウジング内で1つのフィードスルー(9)を1つの軸方向長(L)に渡って通りぬけており、
前記移動棒(8)と前記フィードスルー(9)との間には1つのガイドギャップ(10)が形成されており、
前記移動棒(8)またはフィードスルー(9)の両方の内少なくとも1つに、1つの凹部(11,12)が形成されており、前記移動棒(8)と前記フィードスルー(9)との間の間隔は、当該凹部(11,12)の領域においては、前記ガイドギャップ(10)の径方向の高さよりも大きい、
ことを特徴とする打込装置。
【請求項2】
前記移動棒と(8)前記フィードスルー(9)との間の間隔は、前記凹部(11,12)の領域において、前記ガイドギャップ(10)の高さの少なくとも2倍、具体的には少なくとも4倍となっていることを特徴とする、請求項1に記載の打込装置。
【請求項3】
前記フィードスルーの前記軸方向長(L)に渡って、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの凹部(11)が前後に続いて設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の打込装置。
【請求項4】
前記移動棒(8)およびフィードスルー(9)の両方に1つの凹部(11,12)が形成されており、当該凹部はそれぞれ、径方向に前記ガイドギャップ(10)に対応する半径の後ろに後退することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項5】
前記凹部(11,12)の1つ、具体的には前記凹部(12)が前記移動棒(8)に、当該凹部の軸方向長(La)に渡って連続した薄肉部として形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の打込装置。
【請求項6】
前記凹部(12)の1つの端部に1つの傾斜部(13)が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項7】
前記燃焼室(1)内に、1つの撹拌プレート(7)が前記移動棒(8)に固定されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項8】
前記燃焼室の1つの移動可能な底部が前記移動棒(8)に固定されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項9】
1つの移動可能な燃焼室壁が前記移動棒に固定されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項10】
前記燃焼室壁は、スリーブとして形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の打込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つの打込装置に関し、具体的には請求項1の上位概念部に記載の1つの携帯型打込装置である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、加工対象物への釘の打込み用の打込装置を記載しており、この打込み装置では、燃焼室に燃焼ガスが供給され、ここで点火工程の後、打込みピストンがこの釘に向かって加速される。この燃焼室は、1つの移動可能な燃焼室底部を有し、ここで1つの移動棒がこの燃焼室のハウジングを貫通するフィードスルーを用いてガイドされており、上記の移動可能な燃焼室底部と結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10226878A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、低い環境温度でも、とりわけ信頼性の高い動作を可能とする打込み装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、最初に述べた請求項1に示す特徴を有する本発明による打込装置により解決される。凹部によりダクトの領域において、水、具体的には燃焼で生じる水に対する毛細管力が低下する。同時に実効的なガイドギャップの軸方向の長さは低減される。全体としてこうしてこのガイドギャップの領域に水が集められることが低減されるかあるいは全く避けられる。以上により氷点下の温度で、上記の移動棒は可動に保持することができ、あるいは少なくとも始動トルクを低減することができる。
【0006】
ガイドギャップとは、本発明においては、通常の環境温度での、上記のフィードスルーと上記の移動棒との間の最も小さい距離のことである。このフィードスルーおよび移動棒を、固い材質、たとえば金属から形成する場合、その一部が固着されることを避けるために、所定のギャップが設けられる。このガイドギャップの形成とは別に、このフィードスルーに、追加的に、柔らかく弾力性のあるシーリング、たとえばゴムまたは他の材料からなるシーリングが設けられてよく、しかしながらこのシーリングによってはこのガイドギャップは規定されない。このガイドギャップの径方向の大きさは、本発明においては、上記の移動棒が上記のフィードスルーにおいて中心の位置にあるとして規定され、こうしてこのギャップはこの移動棒を周回して存在する。
【0007】
上記の移動棒の良好かつ遊びの少ないガイドを可能とするため、上記のガイドギャップは実際には大抵は、水が毛細管的にこのギャップに引き込まれ、そして保持されることができるように、小さくなっている。実際にはこのフィードスルーの典型的な大きさは、0.1mmよりも小さい。
【0008】
本発明の1つの好ましい実施形態では、上記の移動棒と上記のフィードスルーとの間の間隔は、上記の凹部の領域において、上記のガイドギャップの高さの少なくとも2倍、具体的には少なくとも4倍となっている。これは好ましくは上記の移動棒からの上記の凹部の最大の距離であり、これに対応する移動棒の軸方向位置でのものである。具体的には、好ましくはこの移動棒の軸方向の位置は、静止位置すなわち打込工程が始まる前の初期位置である。この間隔の絶対値は、好ましくは0.1mmより大きく、好ましくは0.3mmより大きい。
【0009】
本発明の1つの好ましい変形実施例では、上記のフィードスルーの軸方向の長さに渡って、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの凹部が前後に続いて設けられている。以上により1つの短い軸方向の長さに渡って小さなガイドギャップを有する1つのガイド部が実現される、複数の部分が形成され、ここでこれらの部分の間には水のない凹部が存在する。
【0010】
原則として、移動棒およびフィードスルーの両方に1つの凹部が形成されることが有利であり、上記のガイドギャップに対応する半径の後ろにこれらの凹部はそれぞれ径方向において後退し、すなわちこの移動棒では内側に向かい、そしてこのフィードスルーでは外側に向かう。ここでとりわけ好ましくは、これらの凹部の1つ、好ましくは移動棒での凹部が、その軸方向の長さに渡って一続きの薄肉部を形成することである。以上により、全体として、水の集積は少なくとも上記の移動棒の初期位置を含めて避けることができ、とにかく充分なガイドが確実となる。ここでこの凹部の軸方向の長さは、上記のフィードスルーの軸方向の長さより短いことが好ましく、概ね同じ長さであるかまたは僅かに短いことが好ましく、特に2倍を越えない長さであることが好ましい。
【0011】
良好なガイドの観点から、上記の凹部の1つの端部には傾斜部が形成されていてよい。このような傾斜部あるいは面取り部によって、対向している凹部(複数)がこれらのエッジで引っ掛かることが避けられる。
【0012】
本発明の1つのとりわけ好ましい実施形態では、上記の燃焼室内で1つの撹拌プレートが上記の移動棒に固定されている。このような撹拌プレートは、この燃焼室の点火の直前に、燃焼ガスと空気との良好な混合をもたらすように、この移動棒を用いてこの燃焼室を通って移動される。
【0013】
1つの代替のまたは補充的な実施形態では、1つの移動可能な上記の燃焼室の底部が、上記の移動棒に固定される。本装置が適切に加工対象物の上に着地されていない場合には、このような底部によって、この燃焼室は、たとえば1つの安全装置の一部として潰れることができる。
【0014】
1つの代替のまたは補充的な実施形態では、1つの移動可能な燃焼室壁が、上記の移動棒に固定されている。好ましくは、この燃焼室壁は、スリーブとして形成されている。このような燃焼室壁を用いて、この燃焼室は、たとえばこの燃焼室を新鮮な空気でパージするために、開放されそして再度封鎖することができる。
【0015】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下に記載する実施形態例ならびにこれらに関連する請求項で明らかになる。
【0016】
以下に、本発明の複数の実施形態例が記載され、これに付随する図を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による1つの打込み装置の概略図を3つの異なる動作状態で示す。
【
図2】本発明の1つの第1の実施形態例による、1つのフィードスルーの断面図を示す。
【
図3】本発明の1つの第2の実施形態例による、1つのフィードスルーの断面図を示す。
【0018】
図1に示す打込装置は、1つの手持装置であり、1つのハウジング、1つの燃焼室1、およびこの燃焼室1に接する、その中にガイドされている打込ピストン3を有するシリンダ2を備える。この装置の安全機構は、加工対象物5に着地され、ばねの圧力に対抗して押し付けられる1つの着地スリーブ(Aufsetzhuelse)4を備える。この状態においてのみ、上記の燃焼室における燃焼ガスの点火によって打込工程を開始することができる。
【0019】
さらに燃焼室1には1つの撹拌プレート7が配設されており、この撹拌プレートは、1つの移動棒8と堅く結合されている。この移動棒8は、燃焼室ハウジング1の壁を、この壁に配設されているフィードスルー9を介して通り抜けている。このようにして撹拌プレート7は、移動棒8を介してこの燃焼室内で移動することができる。ここではこの移動棒8が、ばね6と結合されていることが概略的に示されている。着地スリーブ4の押圧は、まずこのばね6を圧縮し、ここで移動棒8は、不図示の機構によって固定されている。
【0020】
打込工程が開始されると、この移動棒8は、解放され、こうしてこのばね6の伸長が、撹拌プレート7を燃焼室1を通って移動させる。以上により燃焼ガスと空気とが良好に混合される。点火(
図1の右図)は、この撹拌プレートの移動の直後またはまだ移動している間に行われる。
【0021】
氷点下の温度では、この移動棒8は、フィードスルー9のガイドギャップ10における氷の形成によって、固着され、大きな始動トルクとなる可能性がある。
図1には、フィードスルー9および移動棒8が、概略的に、そして従来の形態で示されている。
【0022】
図2に示す本発明の実施形態では、フィードスルー9は、軸方向の長さLを備える。ガイドギャップ10は、実質的により小さな軸方向の長さLfを備え、このフィードスルーの長さLの残りの部分は、外側に向かって出ている凹部11を備える。この凹部11は、軸方向長Laを有する。この例ではL=Lf+Laとなっている。さらにこの移動棒8は、径方向内側に向かって薄肉となった凹部12を有し、その軸方向の長さは、同様にほぼLaに相当している。
図2における移動棒8の位置は、
図1の左側の図のように初期位置または静止位置に相当している(初期状態、撹拌プレートは前側の突当部にある。)。
【0023】
この位置において、凹部11,12は、上記のフィードスルーの領域を覆っており、こうしてここで移動棒8とフィードスルー9の表面との大きな径方向の間隔となっている。この間隔は、上記のガイドギャップより大幅に大きく、この凹部の長さLaに渡って毛細管力で水が分布しないように作用する。水滴がこれらの凹部11,12の表面の領域に存在しないかぎり、その氷結はこの移動棒8の障害とはならない。
【0024】
図3に示す第2の実施形態例においては、上記の移動棒8のガイド部は、フィードスルー9で複数の凹部、このためにより短い凹部(複数)11が、軸方向に前後に続いて配設されていることによって改善されている。全体として、径方向外側に向かって突出する4つの凹部11が存在しており、これらの凹部の間にはそれぞれ1つのウェブ状の突出部が、このガイドギャップの半径まで内向きに突出している。こうして断面で見ると、フィードスルー9の1つの櫛状の構造となっている。フィードスルー9の全体の軸方向長さは、上記の第1の実施形態に対して変更されていない。
【0025】
径方向で内側に出ている凹部12は、この移動棒8の側で、上記の第1の実施形態と異なり、その端部(複数)にそれぞれ面取り部すなわち傾斜部13を有する。以上により、この凹部12がフィードスルー9の端部に引っ掛かる、あるいは噛み込むことが避けられる。
【0026】
図3の上側の図は、移動棒の初期位置を示し、この初期位置においては、付着した水による凍結は効果的に避けられ、すなわちこの表面では低減される。
【0027】
図3に示す初期位置においては、この第2の実施形態の移動棒は、このフィードスルーにおける多少大きな遊びを備える。これは上記の撹拌プレートの加速時の移動の初期では重要ではない。
【0028】
この下側の図においては、移動棒は少し右側へ移動しており、こうして凹部11,12は移動棒8およびフィードスルー9によってもはや覆われていない。この際最適なガイド部の状態が達成され、そして径方向の遊びは上記のガイドギャップにより制限される。このような位置において、燃焼ガスの点火が行われてもよく、こうしてガス圧に対する良好なシーリングが確実とされる。
【0029】
上記の2つの実施形態例の個々の特徴は、様々な要求仕様により、有意義なように互いに組み合わせることができる。
【国際調査報告】