(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538642(P2017-538642A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】エレベータかご用ローラガイド
(51)【国際特許分類】
B66B 7/04 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
B66B7/04 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-532813(P2017-532813)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月14日
(86)【国際出願番号】EP2015079545
(87)【国際公開番号】WO2016096692
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】14198492.2
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビッラ,バレリオ
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BD22
3F305CA11
(57)【要約】
本発明は、エレベータかご用のローラガイド(1)に関する。ローラガイドは、少なくとも1つの回転可能に実装されたローラ(2)を備える。ローラ(2)は軸(5)上に配置される。ローラガイドは、軸(5)を支持するための支持要素(3)と、エレベータかごの垂直振動を減衰するためのローラ(2)用の少なくとも1つの制動要素(6)と、を備える。制動要素(6)は磁気粘性流体(10)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(5)上に配置された少なくとも1つの回転可能に実装されたローラ(2)と、軸(5)を支持するための支持要素(3)と、特にエレベータかごの停止中にエレベータかごの垂直振動を好ましく減衰するためのローラ(2)用の少なくとも1つの制動要素(6)と、を備える、エレベータかご用のローラガイド(1)であって、制動要素(6)は磁気粘性流体(10)を備え、この磁気粘性流体はローラ(2)の回転運動の制動を可能にすることを特徴とする、ローラガイド(1)。
【請求項2】
軸(5)上に実装されたローラ(2)の回転運動は、磁気粘性流体(10)を活性化させることによって影響を受け、好ましくは制動されることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のローラガイド(1)。
【請求項3】
磁気粘性流体(10)は、電気的に制御可能な磁場によって、好ましくはコイルによって活性化されることを特徴とする、請求項2に記載のローラガイド(1)。
【請求項4】
制動要素(6)は少なくとも2つの部品からなり、一次部品(7)はローラ(2)と動作連絡しており、二次部品(8)は支持要素(3)と動作連絡していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のローラガイド(1)。
【請求項5】
制動要素(6)の一次部品(7)および二次部品(8)は、磁気粘性流体(10)で満たされた閉鎖空洞(9)を形成することを特徴とする、請求項4に記載のローラガイド(1)。
【請求項6】
非活性化状態の、具体的にはエレベータかごの移動中の磁気粘性流体(10)は、活性化状態、具体的にはエレベータかごの停止中よりも低い粘性を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のローラガイド(1)。
【請求項7】
磁気粘性流体(10)の状態はエレベータ制御装置の状態制御要素によって制御可能であり、具体的にはこの状態制御要素はエレベータかごドアの状態信号(11)に結合されることが可能であることを特徴とする、請求項6に記載のローラガイド(1)。
【請求項8】
ローラ(2)は軸(5)上に回転可能に実装されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のローラガイド(1)。
【請求項9】
制動要素(6)は軸(5)上のローラ(2)の内部に配置されることを特徴とする、請求項8に記載のローラガイド(1)。
【請求項10】
軸(5)は支持要素(3)内に回転可能に実装されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のローラガイド(1)。
【請求項11】
磁気粘性流体(10)を備える制動要素(6)を備えるローラガイド(1)、好ましくは請求項1から9のいずれか一項に記載のローラガイド(1)を有するエレベータかご。
【請求項12】
特にエレベータかごの停止中および/または乗客の乗り降りの間、少なくとも1つの回転可能に実装されたローラ(2)を備えるローラガイド(1)を用いてエレベータかごの動作中の垂直振動を好ましく減衰する方法であって、ローラ(2)の回転運動は、磁気粘性流体(10)を備える制動要素(6)を用いて制動されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
ローラ(2)の回転運動は、磁気粘性流体(10)を活性化させることによって影響を受け、好ましくは制動されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ローラ(2)とローラ(2)用の支持要素(3)との間の相対運動が制動されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
磁気粘性流体(10)の状態はエレベータ制御装置の状態制御要素によって活性化され、好ましくは制動要素の磁気粘性流体(10)は、エレベータかごの移動中よりもエレベータかごの停止中の方が粘性の高い状態になることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータかご用ローラガイド、エレベータかご、エレベータシステム、およびエレベータかごの動作中の垂直振動を減衰する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータかごは、エレベータシャフト内で1つ以上のいわゆるローラガイドシューを有するガイドレールに沿って案内されることが多い。かごは通常、支持手段、具体的には1つ以上のベルトまたはケーブルで懸架されている。支持手段はこの場合、通常はエレベータシャフトの上端に設けられた、駆動装置に結合されている。支持手段の弾性の結果、およびこの場合は駆動装置とエレベータかごとの高さの差が大きいことから、エレベータかごは、特に乗客の乗り降りの間、望ましくない垂直振動を生じる。しかしながらこれらの振動は、困難を伴わなければ解消され得ない。
【0003】
これらの振動を低減する可能性の1つは、JP01299181Aに見いだされる。この文献は、これらの垂直振動を減衰するブロック要素を記載している。この目的のため、ブロック要素はエレベータかごのローラガイド上に配置され、ピエゾ電子材料からなる。移動中、このブロック要素は、妨害が発生しないようにエレベータかごから一定距離を有する。かごが停止すると、ブロック要素がローラガイドのローラ上に押圧されてこれを妨害するように、電気信号が圧電材料の体積膨張を引き起こす。こうしてローラとガイドレールとの間の摩擦が、エレベータかごの上向きおよび下向き振動を妨げる。
【0004】
しかしながら、このようなブロック要素は、妨害プロセスが非常に大きな雑音をともなうという不都合を有する。多くの個別構成要素が必要とされ、製造は多大なコストと結びついている。加えて、摩耗効果が直ちに現れる可能性があるが、これは高額な保守費用を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−299181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、著しい補助雑音を伴わずに垂直振動を減衰するエレベータかご用のローラガイドを提供することであり、これは製造しやすい上に、長寿命を有する。エレベータかごの動作中の垂直振動を減衰する方法もまた、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、独立特許請求項において定義される装置および方法によって、解決される。さらなる実施形態は、従属特許請求項から得られる。
【0008】
本発明は、エレベータかご用のローラガイドに関する。ローラガイドは、軸上に配置された少なくとも1つの回転可能に実装されたローラ、ならびに軸を支持するための支持要素を備える。ローラガイドは、特に乗客の乗り降りの間、エレベータかごの垂直振動を好ましく減衰するためのローラ用の少なくとも1つの制動要素を、さらに備える。制動要素は磁気粘性流体を備え、この磁気粘性流体は、ローラの回転運動の制動を可能にする。
【0009】
磁気粘性流体は、例えばキャリア液中に細かく分散した鉄粒子など、磁気的に分極可能な粒子の懸濁液である。磁場が印加されると、粒子は分極され、磁場の力線に沿って配向され、鎖を形成する。これにより、磁気粘性流体の粘性が変化する。この変化は、数ミリ秒の間に行われることが可能であり、可逆性である。磁場の強度によって流体の粘性を固体の状態にまで変化させることが可能である。ローラの回転運動は監視されて、制動要素の磁気粘性流体の粘性の度合によって制御されることが可能である。
【0010】
このような装置は、エレベータかごがフロアで止まるときにローラの回転運動がより効率的に制動され、垂直振動が制動要素によってより効率的に減衰される、という利点を有する。同時に、垂直振動の制動および減衰は非常に低雑音でもある。乗客の乗り降りはより快適に感じられる。磁気粘性構成要素は保守の必要が少なく、これによりローラガイドの寿命をさらに延長させる。
【0011】
好ましくは、ローラと支持要素との間の相対運動は磁気粘性流体を活性化させることによって制動可能であり、ローラは通常、支持要素に対して回転軸の周りで回転する。軸上に実装されたローラの回転運動は、磁気粘性流体を活性化させることによって影響を受け、好ましくは制動されることが可能である。この相対運動は完全にまたは部分的に制動されてもよいが、ここで「完全に」とは相対運動の停止を意味し、「部分的に」とは相対運動の減速を意味する。
【0012】
「活性化」は、磁場の発生による磁気粘性流体の粘性の変化として理解される。磁場は例えば、ワイヤなどの導電体を流れる電流信号によって発生することが可能である。このような導電体は、制動要素に容易に組み込まれることが可能である。磁気粘性流体は、特にエレベータかごの移動中のみならずフロアでの停止中にも周知の粘性を有するので、ローラガイドは垂直加速度を検出するのにも使用可能である。
【0013】
この磁場を生成する磁石または対応するコイルの形状およびアライメント、ならびに磁場強度の調整は、磁気粘性流体の特殊な影響を可能にする。電気的に制御可能な磁場は、例えばこのコイルによって実現されてもよい。
【0014】
これは、制動要素には付加的なホルダが必要とされないという利点を有する。単純な力の流れが可能となる。磁気粘性流体の状態の可逆性のため、制動は正確に制御されることが可能であり、摩擦は最小化される。
【0015】
ローラガイドのさらなる開発において、エレベータかごの加速度、好ましくはエレベータかごの垂直加速度に影響を及ぼすため、磁気粘性流体の粘性はエレベータかごの移動中に変動可能である。
【0016】
制動要素は少なくとも2つの部品からなり、一次部品はローラと動作連絡しており、二次部品は支持要素と動作連絡している。一次部品は、ローラ上に固定的に実装されるように構成されることが可能である。二次部品は、支持要素上に固定的に実装されることが可能である。しかしながら、一次部品が支持要素上に実装され、二次部品がローラ上に実装されることもまた、実現可能である。この場合、「固定的」とは、圧力ばめまたは締まりばめによって部品が相互接続されることを意味してもよく、ここで例えばネジ留め、接着接合、溶接、またはクランピングによって固定されて取り外しも可能な接続も、考えられる。
【0017】
このような制動要素は、ローラと支持要素との間の相対運動への力伝達の正確な制御が行われ、こうして迅速な制動および減衰効果が達成されることを、特徴とする。
【0018】
好ましくは制動要素の一次部品および二次部品は、磁気粘性流体で満たされた閉鎖空洞を形成する。一次および二次部品は、磁気粘性流体と直接接触してもよい。一次および二次部品は、例えば接触してその中で移動可能な薄板など、表面が拡大する輪郭を有することができる。薄板は、一次および/または二次部品上全体にわたって、または途切れ途切れの部分のみに配置されることが、実現可能である。
【0019】
利点は、制動要素が完全な構成要素として事前に作成されることである。個別の追加部品は必要とされない。
【0020】
非活性化状態の、具体的にはエレベータかごの移動中の磁気粘性流体は、活性化状態、具体的にはエレベータかごの停止中よりも低い粘性を有することができる。流体の粘性が低いということは相応に、流体が希薄であることを意味する。この場合の「非活性化状態」は磁場の不存在による低粘性を意味し、その一方で「活性化状態」は磁場の結果として生じる高粘性として理解される。磁場は例えば、電気信号が流れる導電体によって、生成されることが可能である。
【0021】
これにより、エレベータかごの移動中のローラガイドのローラの、スムーズで摩耗のない運動を可能にする。他方でかごが停止すると、ローラは回転しにくくなって高い摩擦抵抗が生じ、これにより垂直振動の減衰をもたらす。ローラに対する制動効果は、磁気粘性流体の粘性によって付加的に正確に調整されることが可能である。
【0022】
磁気粘性流体の状態はエレベータ制御装置の状態制御要素によって制御可能であり、具体的にはこの状態制御要素はエレベータかごドアの状態信号に結合されることが可能である。状態制御要素は例えば、ソフトウェアプログラムまたは物理スイッチであってもよく、エレベータかごドア上に配置されてもよい。状態制御要素は、エレベータかごドアの開閉を状態信号として制動要素に伝送する導電体に結合されることが可能である。導電体は、制動要素の周りまたは中に、コイルの形態で配置されることが可能である。結果的な電流の結果、制動要素内に磁場が発生する。そして磁場の強度は、磁気粘性流体の粘性の度合を制御することができる。
【0023】
エレベータ制御装置による磁気粘性流体の状態の制御は、ローラガイドのローラの回転可能性が、磁気粘性流体の状態によって調整されることが可能であり、エレベータの動作に適応可能である、という利点を有する。
【0024】
ローラは軸上に回転可能に実装されてもよい。ローラは例えば、玉軸受けによって軸上に回転可能に実装されてもよい。軸は耐トルク方式で支持要素に接続されてもよい。しかしながら、軸上に耐トルク方式でローラを配置し、軸を回転可能に支持要素内に実装することもまた、可能である。「耐トルク方式で」とは、耐トルク構成要素が共通の回転軸に関して互いに対して回転可能ではないことを意味すると理解される。
【0025】
このようなローラガイドは、具体的にはローラの、単純な組み立てを特徴とする。個別の追加部品は必要とされない。
【0026】
制動要素は軸上のローラの内部に配置されてもよい。ローラは、制動要素が組み込まれる陥凹を有することができる。制動要素はこの場合、一次部品を介して軸に接続されることが可能であり、二次部品はローラに接続されることが可能である。逆の変形例もまた実現可能であり、制動要素がクリップの形態で軸の周りに配置されることも可能である。あるいは、軸は断面において制動要素によって完全に包囲されることが可能である。制動要素がローラと支持要素との間に、または支持要素上にのみ配置されることが、さらに考えられる。
【0027】
このような装置は、材料費および空間要件が低いことを特徴とする。製造費が削減される。
【0028】
あるいは、軸は支持要素内に回転可能に実装されてもよい。回転可能に実装することは、例えば、玉軸受けによって達成可能である。軸は、例えば圧力ばめによって、耐トルク方式でローラに接続されてもよい。しかしながら、軸および支持要素は耐トルク方式で互いに接続され、ローラは軸上に回転可能に実装されることもまた、実現可能である。ローラと軸または軸と支持要素の耐トルク接続は、例えば圧力ばめによって達成可能である。
【0029】
この装置の利点は、付加的な個別の部品を伴わないローラガイドの簡単な組み立てにある。
【0030】
本発明のさらなる態様は、ローラガイドを有するエレベータかごに関する。本明細書に記載されるようなローラガイドは、好ましくは、磁気粘性流体を備える制動要素を備える。制動要素は、状態制御要素を介してエレベータ制御装置に接続されることが可能である。具体的には、状態制御要素はエレベータかごドアの状態信号と結合されることが可能である。このため、例えばエレベータかごドアが開閉するやいなや、制動要素への信号伝送が行われてもよい。この信号伝送は、例えば制動要素への導電体を介して行われることが可能である。この電気信号は、制動要素内の磁気粘性流体を活性化および調整することができる。例えば、エレベータかごが停止する直前に、電気信号は状態制御要素内でトリガされて制動要素に供給される。磁場が発生し、磁気粘性流体の粘性が上昇する。ローラガイドのローラは制動され、したがってエレベータかごも同様である。同時に、垂直振動が減衰される。
【0031】
ローラガイドを有するこのようなエレベータかごは、具体的には垂直振動がより効率的に減衰され、さらに、低雑音減衰が可能であるという事実を特徴とする。特に乗客の乗り降りの間、垂直振動の減衰は、乗客の間により良い満足感を提供する。制動要素の二重機能、すなわち制動および減衰の結果として、エレベータかごの製造中に必要とされる構成要素は少なく、費用も削減される。加えて、製造がより簡単で高速なので、このようなエレベータかごの納期が短縮される。このようなエレベータかごは、単純な結合によって対応するエレベータシャフト内に容易に設置可能である。
【0032】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されるエレベータかごを有するエレベータシステムに関する。
【0033】
このようなエレベータシステムは、低雑音であり、摩耗効果が最小化されるという利点を有する。保守費用および維持費も低い。加えて、個別の構成要素が互いにより良く適合できる。
【0034】
本発明のさらなる態様は、エレベータかごの動作中に垂直振動を好ましく減衰する方法に関する。この場合のエレベータかごは、少なくとも1つの回転可能に実装されたローラを備えるローラガイドを有する。垂直振動の減衰は、具体的にはエレベータかごの停止中および/または乗客の乗り降りの間に生じるが、ローラの回転運動は、磁気粘性流体を備える制動要素を用いて制動される。
【0035】
方法は、垂直振動の低雑音減衰および低雑音制動を特徴とする。加えて、エレベータかごの低摩耗動作も可能とされ、維持費が最小化される。
【0036】
好ましくはローラの回転運動は、磁気粘性流体を活性化させることによって影響を受け、好ましくは制動される。活性化は、例えば導電体に電流信号を印加することによって、磁場を生成することによって達成可能である。この磁場は、数ミリ秒以内に磁気粘性流体の粘性を低い方から高い方へ変化させる。ローラは完全にまたは部分的にのみ制動されることが可能であり、完全な制動はローラおよびひいてはエレベータかごの停止を伴い、部分的制動はローラおよびひいてはエレベータかごの減速を可能にする。
【0037】
磁気粘性流体の活性化によるローラの制動は、ローラの回転運動が調整可能であるという利点を有する。摩耗効果が最小化される。
【0038】
好ましくは、ローラとローラの支持要素との間の相対運動が制動される。
【0039】
これは、制動要素の取付のために付加的な実装要素が取り付けられる必要がなく、したがって付加的な構成要素がローラおよび/または支持要素に取り付けられる必要もないという利点を有する。
【0040】
磁気粘性流体の状態は、エレベータ制御装置の状態制御要素によって活性化されることが可能である。好ましくは、制動要素の磁気粘性流体は、エレベータかごの移動中よりもエレベータかごの停止中の方が、粘性の高い状態になる。
【0041】
エレベータ制御装置を介した磁気粘性流体の状態の活性化は、制動および減衰特性がエレベータの動作に適応可能であり、ローラガイドのローラの回転運動が磁気粘性流体の状態を介して調整可能であるという利点を有する。
【0042】
鉱物油および/または合成油および/またはエチレングリコールおよび/または水が、磁気粘性流体のキャリア流体として使用可能である。加えて、1つまたはいくつかのアジュバントが、磁気粘性流体の一部であってもよい。このようなアジュバントは、懸濁液中の磁気的に分極可能な粒子の沈殿または凝集を防止する。アジュバントは例えば、安定剤および/または増粘剤である。
【0043】
本発明は、単に例示的実施形態を示す図面を参照して、以下に詳細に説明される。図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】従来技術によるローラガイドを示す図である。
【
図3】本発明によるローラガイドの別の例示的実施形態の断面図である。
【
図4】本発明によるローラガイドの別の例示的実施形態の断面図である。
【
図5】本発明によるローラガイドの別の例示的実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、従来技術のエレベータかご上に見られるようなローラガイド1を示す。ローラガイド1は、ローラ2と、軸5の支持要素3と、軸5と、を備える。これらのローラガイド1は、通常エレベータかご上に実装されており、エレベータシャフト内のガイドレールに沿ったエレベータの案内を可能にする。
【0046】
図2は、ローラ2の回転軸12に沿った断面図において、本発明によるローラガイド1の例示的実施形態を示す。断面図は、耐トルク方式で軸5に接続されたローラ2を示す。軸5は、2つの支持要素3内で2つの軸受4を用いて回転可能に実装されている。このため、ローラ2および軸5は、支持要素3に対して回転可能である。制動要素6は軸5上に配置されており、これによりローラ2と支持要素3との間の相対運動が制動可能である。制動要素6の一次部品7は、軸5と固定的に接続されている。制動要素6の二次部品8は、支持要素3のうちの1つと固定的に接続されている。一次部品7および二次部品8は、磁気粘性流体10で満たされた閉鎖空洞9を形成する。磁気粘性流体10の状態は、電気信号11によって制御される。エレベータかごの移動中、磁気粘性流体10の粘性が低いので、ローラ2を有する軸5は回転軸12の周りで支持要素3に対して運動する。エレベータかごドアの状態信号11が制動要素6に到達して電流により磁場が発生した場合、磁気粘性流体10の粘性が高くなり、回転軸12の周りでのローラ2を有する軸5の回転運動が制動される。
【0047】
図3は、ローラガイド1の別の例示的実施形態を示す。
図2と同じ部品には同じ参照番号が付される。この実施形態において、制動要素6はその一次部品7を回転可能に実装された軸5上に置いて配置され、二次部品8は支持要素3と固定的に接続されている。しかしながら、制動要素は、
図2のようにローラ2と支持要素3との間に配置されるのではなく、支持要素3の外側14に配置されている。これにより、ローラ1の小型設計を可能にする。機能および効果は、
図2の例示的実施形態にさらに対応している。
【0048】
図4は、ローラガイド1の別の例示的実施形態を示す。この実施形態において、ローラ2は、軸受4を用いて軸5の周りで回転可能に実装されている。軸5は、耐トルク方式で支持要素3に接続されている。制動要素6は、ローラ2の陥凹13の内部に配置されている。制動要素の一次部品7は軸5と固定的に接続されており、その一方で二次部品8はローラ2と固定的に接続されている。一次部品7および二次部品8は、磁気粘性流体10が配置された閉鎖空洞9を形成する。磁気粘性流体の粘性は、
図2についてすでに記載されたように、状態信号11によって変動可能である。
【0049】
図5は、ローラガイド1の別の例示的実施形態を示す。
図4と同じ構成要素には同じ参照番号が付される。この例示的実施形態において、制動要素6は
図2のようにローラ2と支持要素3の間に配置されており、その一方で
図2の例示的実施形態とは反対に、ローラ2と軸5との間の相対運動が制動可能である。一次部品7は軸に接続されており、二次部品8はローラに接続されている。機能および効果は、
図2の例示的実施形態について記載されている。
【国際調査報告】