特表2017-538695(P2017-538695A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538695(P2017-538695A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】アホエンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/65 20060101AFI20171201BHJP
   C08F 236/10 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C07C323/65
   C08F236/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-528853(P2017-528853)
(86)(22)【出願日】2015年11月18日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月24日
(86)【国際出願番号】GB2015053494
(87)【国際公開番号】WO2016083781
(87)【国際公開日】20160602
(31)【優先権主張番号】1420902.7
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517183328
【氏名又は名称】ニーム バイオテク リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アラン サンダーズ
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC62
4H006AC63
4H006AD17
4H006BB14
4H006BB15
4H006BB16
4H006BC10
4H006BC51
4H006BC52
4J100AB02P
4J100AB16Q
4J100AQ12R
4J100CA05
4J100EA05
4J100FA19
4J100GC25
4J100GC35
4J100JA17
(57)【要約】
本発明は、ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法であって、少なくともアリシンの一部をアホエンに変換してアホエン溶液を形成するように、所定の温度範囲でアリシン又はアリシン溶液を加熱する工程;および、該アホエン溶液からアホエンを分離する工程;を含み、ここで、前記加熱又は分離工程の少なくともいずれかは、ポリマー基質を用いて実施される方法に関する。ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法は、前記加熱工程を実施する前に、前記アリシン又はアリシン溶液をポリマー基質の内部または外部で前記ポリマー基質に保持する工程を更に含む。また本発明は、上記方法により得られるアホエン又はアホエンを含む組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法であって、
該方法は、
少なくともアリシンの一部をアホエンに変換してアホエン溶液を形成するように、アリシン又はアリシン溶液を加熱する工程;および、
該アホエン溶液からアホエンを分離する工程;を含み、
ここで、前記加熱又は分離工程の少なくともいずれかは、固相ポリマー基質を用いて実施される前記方法。
【請求項2】
前記加熱工程を実施する前に、前記アリシン又はアリシン溶液を前記ポリマー基質に保持する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に純粋なアリシンが前記ポリマー基質に保持されるように、前記アリシン溶液から水溶性成分及び非極性成分を除去する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
極性水性溶媒を前記ポリマー基質に通過させることにより前記水溶性成分を除去する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非極性溶媒を前記ポリマー基質に通過させることにより前記非極性成分を除去する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アリシン又はアリシン溶液は、天然、合成または半合成の供給源から得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アリシン溶液は、0.1%w/w〜10%w/wのアリシンを含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アリシンをアホエンに変換するための前記加熱工程は、サーモスタット制御された気体または液体環境下、または断熱チャンバにおいて、固体支持体を有するまたは有しないポリマー基質の内部で実施される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
使用される気体または液体は、炭化水素溶媒、水またはそれらの組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アリシンをアホエンに変換するための前記加熱工程は、溶媒においてポリマー基質の外部で実施される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒は、アルコール、エーテル、ケトンまたはそれらの2つ以上の組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱工程は、30℃〜90℃の所定の温度範囲において実施される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくともアリシンの50%w/wがアホエンに変換される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記分離工程は、非水性極性溶媒、液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を用いて所定の圧力下で実施される、請求項l〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記分離工程の後に、アホエンを濃縮してアホエンリッチオイルを形成する工程を更に含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アホエンリッチオイルは、10%w/w〜30%w/wのアホエンを含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー基質は、クロマトグラフィーカラムの固定相であるか、または自由流動形態である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー基質は、微細孔性樹脂である、請求項l〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記微細孔性樹脂は、ポリスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー樹脂である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、炭化水素溶媒の使用を含まない、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法により得られるアホエン又はアホエンを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アホエンを製造するための方法及びアホエンを含む組成物に関する。具体的には、本発明は、固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法、かかる方法により得られるアホエンを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アリウム・サティバム(Allium sativum)としても知られているニンニクは、タマネギ属の種であり、世界中で一般的に料理用ハーブまたは栄養補助食品として使用されている。ニンニクは、様々な代謝障害または感染症の治療または予防に関する多くの医薬的特性に寄与するとされている。また、ニンニクは、何千年もの間、民間療法に使用されてきた。
【0003】
ニンニクは、新鮮な状態または粉砕された形態で、独特の臭いおよび味の要因となる硫黄含有化合物および非硫黄含有化合物を含む様々な種類の誘導体を含む。アリシンは、ニンニクの主要な化合物の1つであると考えられており、ニンニクの臭いや生物活性の大きな原因である。アリシンは、化学的に不安定で、無色から淡色のオイルであり、その前駆体であるアリイン[(+)(S-アリル-L-シクテインスルホキシド)]から酔素アリイナーゼによって変換される。ニンニク片そのものにアリシンは含まれないものの、無臭の前駆体であるアリインが含まれている。アリインとアリイナーゼはニンニク片の異なる区画内に存在するため、ニンニク片を切り刻んだり潰しアリイナーゼを放出しアリインと接触すると、アリインがアリシンに変換される。アリシンは不安定で揮発性であり、変換媒体により自然と約l5種類の代識物に変換される。これらの代識産物には、ジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド、ビニルジチイン、アホエンなどが含まれる。アリシンを大量に高収率で製造する方法がEP14O4853A1に記載されており、その内容の一部は、参照により本朋細書に組み込まれる。
【0004】
アホエンは、ヒトおよび動物両方の医薬品を含む多くの分野で現在とりわけ注目されているニンニク代識物の一つである。アホエンは、抗酸化、抗血栓、広範囲の抗菌、酵母感染の防止、および遺伝子制御クオラムセンシング活性の阻害を含む広範囲の薬学的性質を有することが、当該技術分野で実証されている。しかしながら、アホエンを製造するのに利用可能な既存の方法だとアホエンの選択性が低いので、上記目的用のアホエンの研究及び使用は限定される。その結果、アホエンは高価であり、比較的低い収率でしか得られない。
【0005】
アホエンの製造方法に関し先行文献に記載のいくつかの既存の技術が存在する。例えば、米国特許第5612077号(A)は、主にZ-アホエンを含有するマセレートを製造する方法を記載しており、食用油を使用するが量が少なく濃度も低い。米国特許第5741932号(A)には、シクロデキス卜リンを用いてアホエンを製造する方法が記載されているが、これは複雑な多段階法であり、アホエンを少量かつ低濃度でしか生成しない。WO2010/100486号公報およびBlock et al. Am Chem. Soc., 1986, 108 (22)に記載されるような、アリシンからのアホエンを製造するための他のアプローチは、食品または薬草抽出物の製造で使用するには不適当な揮発性炭化水素溶媒を大量に使用することが必要である。また、アホエンを溶媒で抽出するアプローチは、多くの労働力を必要とし費用がかかる。
【0006】
アホエンおよびアホエン含有組成物の様々な薬学的または治療上の利点を考慮すると、これら既存の技術の欠点を克服しアホエンを製造するための改良された革新的な方法を提供することが産業界にとって望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つの目的は、高収率で大量かつ妥当なコストで達成することが可能な、アホエンを前駆体アリシンから製造する費用効果の高い方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、従来技術を溶媒抽出から固相抽出へ移行させることを含め、アホエンまたはアホエン含有組成物を製造するための革新的な方法を開発することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、理想的には溶媒を含まない、または必要な揮発性炭化水素溶媒の量が少ない、したがって労働力が少なくて済み、製造コストを低減させる、アホエンまたはアホエン含有組成物を製造するための方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、アホエン含有製品の大規模または工業規模の製造に更に用いるためのアホエンの大量製造に適した、アホエンまたはアホエン含有組成物を製造するための方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、溶媒を含まない、または必要な揮発性炭化水素溶媒の量が少ない方法による食品グレードのアホエンまたはアホエン含有組成物、つまり、食品的に安全および/または様々な消耗品や医療品に加工するのに適しているアホエンまたはアホエン含有組成物を提供することである。
【0012】
前述の目的の少なくとも一つは、全体的または部分的に、本発明の一つまたは複数の実施形態によって充足する。
【0013】
第1の態様において、本発明は、固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法であって、少なくともアリシンの一部をアホエンに変換してアホエン溶液を形成するように、アリシン又はアリシン溶液を加熱する工程;および、該アホエン溶液からアホエンを分離する工程;を含み、ここで、前記加熱又は分離工程の少なくともいずれかは、固相ポリマー基質を用いて実施される方法を提供する。
【0014】
固相ポリマー基質は、固相抽出(SPE)クロマトグラフィーカラムといつたクロマトグラフィーカラムの固定相であってもよく、又は自由流動形態で液体中に直接分散されてもよい。ポリマー基質は、好ましくは微細孔性樹脂であり、より好ましくは、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(DVB)コポリマー樹脂である。
【0015】
固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法は、前記加熱工程を実施する前に、前記アリシン又はアリシン溶液を前記ポリマー基質に保持する工程を更に含み得る。好ましくは、この方法は、実質的に純粋なアリシンが前記ポリマー基質に保持されるように、前記アリシン溶液から水溶性成分及び非極性成分を除去する工程を更に含む。極性水性溶媒を前記ポリマー基質に通過させることにより前記水溶性成分を除去し得て、非極性溶媒を前記ポリマー基質に通過させることにより前記非極性成分を除去し得る。水溶性及び非極性成分の除去により、好ましくは、実質的に純粋なアリシンがポリマー基質に保持される結果となる。ポリマー基質に保持されるアリシンは、少なくとも50%純粋、又は少なくとも60%以上純粋でありうる。
【0016】
アリシン又はアリシン溶液は、天然、合成または半合成の供給源(source)から得てもよい。好ましくは、アリシン溶液は、0.1%w/w〜10%w/wのアリシンを含有する。
【0017】
アリシンをアホエンに変換するための加熱工程は、サーモスタット制御された気体または液体環境下、または断熱チャンバにおいて、固体支持体を有するまたは有しないポリマー基質の内部で実施され得る。好ましくは、使用される気体または液体は、炭化水素溶媒、水またはそれらの組み合わせである。あるいは、アリシンをアホエンに変換するための加熱工程は、溶媒においてポリマー基質の外部で実施される。好ましくは、溶媒は、アルコール、エーテル、ケトンまたはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0018】
加熱工程は、15℃〜90℃の所定の温度範囲において実施され得る。好ましくは、所定の温度範囲は、30℃〜80℃である。加熱工程により、少なくともアリシンの一部をアホエンに変換してアホエン溶液を形成する。上記少なくともアリシンの一部は、少なくとも10%w/wであってもよい。好ましくは少なくとも20%w/w、又は少なくとも30%w/w、より好ましくは少なくとも40%w/wであってもよい。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも50%w/wのアリシンがアホエンに変換される。
【0019】
変換後のアホエンの分離工程は、非水性極性溶媒、液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素(CO2)を用いて所定の圧力下で実施され得る。好ましくは、ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法は、分離工程の後に、アホエンを濃縮してアホエンリッチオイルを形成する工程を更に含む。アホエンリッチオイルは色が茶色い。好ましくはアホエンリッチオイルは、10%w/w〜30%w/wのアホエンを含有する。
【0020】
第2の態様において、本発明は、本発明の方法により得られるアホエン又はアホエンを含む組成物を提供する。当業者であれば、本発明が、上述の目的、目標および利点を達成するのに適していることを容易に理解するであろう。本明細書に記載の実施形態は、本発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について図面を参照しながら説朋する。しかしながら、本発明の好ましい実施形態に限定して説朋するのは、単に本発明の理解を容易にするために過ぎず、当業者は添付の特許請求の範囲から逸脱することなど様々な改変が可能であることが理解されるべきである。
【0022】
本発明は、固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法であって、少なくともアリシンの一部をアホエンに変換してアホエン溶液を形成するように、アリシン又はアリシン溶液を加熱する工程;および、該アホエン溶液からアホエンを分離する工程;を含み、ここで、前記加熱又は分離工程の少なくともいずれかは、固相ポリマー基質を用いて実施される方法を開示する。
【0023】
本方法の反応混合物中のアリシンおよび/またはアホエンの存在、ならびに本方法におけるアリシンからアホエンへの変換は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって検出またはモニターすることができる。HPLC分析の一般的手順は当該技術分野に見ることができるが、本発明の方法で使用することができる詳細なHPLCパラメータを実施例1〜3に列挙した。実施例1は、標準的なアリシン溶液によるアリシンの較正および測定をするための逆相HPLC法で使用されるパラメータを詳述する。実施例2は、標準的なアホエン溶液によるアホエンの較正および測定するための逆相HPLC法で使用されるパラメータを詳述する。標準的なアホエン溶液で較正したアホエンのE/Z異性体を測定するための順相HPLC法を実施例3に詳述する。
【0024】
本発明は、溶媒、特に炭化水素溶媒の代わりに固相ポリマー基質を用いてアホエン又はアホエンを含む組成物を製造する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法は、炭化水素溶媒の使用を最小限で含むか、又は炭化水素溶媒の使用を含まない。
【0026】
固相ポリマー基質は好ましくは微細孔性樹脂である。樹脂とは、有機ポリマーからなり、ミクロおよびメソ細孔構造および特定の化合物の吸着に適した特定の官能基を有する、微粉末または球状ビーズを意昧する。より好ましくは、微細孔性樹脂はポリスチレン-DVBコポリマー樹脂である。より好ましくは、ポリマー基質は、超架橋ヒドロキシル化ポリスチレン-DVB樹脂である。しかし、類似する化学的性質や物埋的性質、例えば疎水性、を有する他の種類の樹脂を本発明のポリマー基質として用いてもよい。使用する樹脂は、微粉末または球状ビーズの形態であり得る。好ましくは、樹脂は、ミクロおよびメソ細孔構造を有し、アリシンの吸着およびその後のアホエンへの変換または可溶性有機相への抽出のいずれかを行うことができる。好ましくは、樹脂は、恒久的に展開した硬質孔構造を有する。
【0027】
選択された微多孔性樹脂は、そのモノマーから合成され得るか、または商業的に得られる。表面積が大きい複雑な細孔構造と高い機械的強度を有する樹脂を得て、スケールアップを容易にするために選択される方法として懸濁重合が使用できる。これらのタイプのポリマー樹脂を合成するために用いられるー般原則は、コモノマー混合物と適切な有機溶媒(希釈剤またはポロゲン)を用いるスチレン-DVB混合物の重合を含むものであり得る。特に、重合の最後に溶媒またはポロゲンを除去すると、樹脂は硬くて不透明なビーズを形成する。このようにして形成されたポリマーマトリックスは、均一ではないかまたは不均一である。最も重要なことに、かかる材料は、Brunauer-Emmett-Teller (BET)検査の測定によると、ゲル状樹脂よりも乾燥状態だとはるかに大きい表面積を有し得て、典型的には約1000 m2/gである。これらの種類の樹脂の剛性の観点から、それらは、恒久的な多孔質構造および孔のネットワークを有するため、溶媒を用いて内部に浸透させるために膨潤させる必要がなく、重合プロセスにおいて、使用する条件に正確に応じて寸法を調製できる。
【0028】
類似の分子構造および特性を有する種類のポリマー樹脂である、BiotageのISOLUTE ENV+のような超架橋ヒドロキシル化ポリスチレン-DVB樹脂は市販されており、本発明で使用することができる。ポリスチレン-DVBは、実施例4に詳述したような一般的手順を用いて合成することもできる。好ましくは、この手順は、窒素条件下での、フランジフラスコ、還流冷却器および水浴の使用を含む。スチレン、p-ジビニルベンゼンおよびビニルピリジンのようなポリスチレン-DVB樹脂用のモノマー材料は、様々な段階で混合物に添加される一つ以上の界面活性剤と混合することができる。使用される界面活性剤は、Span80、硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはそれらの2つ以上の組み合わせであり得る。それらは、溶液中ヘの液滴の分散を維持し、樹脂の粒径を確保するために使用される。フリーラジカルをクエンチするために、ヒドロキノンなどの酸化防止剤を添加することができる。樹脂の重合反応は、過酸化ベンゾイルであることが好ましい開始剤を用いて開始することができる。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ブチルまたは過硫酸ナトリウムのような他の開始剤も使用することができるが、使用する開始剤の種類に応じて適切な界面活性剤を使用しなければならない。重合混合物に使用する反応溶媒は、トルエン、シクロヘキサノール、キシレンその他であり得る。
【0029】
樹脂の合成の反応温度は、約70℃〜90℃、好ましくは約80℃であり得る。重合プロセスは、約12〜48時間、好ましくは約24時間進行させてよい。樹脂を回収し、洗浄した後、約70℃〜約90℃、好ましくは約80℃で約5時間乾燥し得る。次いで、樹脂をサイジングし、所望の粒子サイズ、例えば約1mmのビーズを回収し得る。回収された樹脂は、好ましくは、BET検査および電子顕微鏡による物理的パラメータ決定に供される。
【0030】
実施例5および6に詳述されるように、実施例4の一般的な手順を繰り返して、より大量の樹脂や異なる粒径を有する樹脂を得ることができる。樹脂の適切な粒子サイズは、直径約75μm〜約1200μmの範囲であり得る。粒子サイズは、多数の従来の方法、例えば粒子分析装置によって決定することができる。樹脂合成方法および分析の変形例を実施例4〜15にさらに詳述する。
【0031】
上述のように、アリシンは、本発明のアホエンを製造するための方法における前駆体として使用される。アホエン製造のための様々な供給源のアリシンの使用について、実施例16〜24においてさらに詳述する。したがって、アリシンまたはアリシン溶液は、天然、合成または半合成の供給源から得られうる。より好ましくは、アリシンは、実施例16に記載の半合成源を用いる高収率製造方法から得られる。アリシンの高収率製造方法により、天然のニンニク源に由来する前駆体アリインは、アリイナーゼの酵素反応によって変換されてアリシンを形成する。
【0032】
実施例21および22は、合成経路から得られたアリシンの使用を詳述する。実施例21に詳述するように、合成アリシンは、工業グレードのジアリルジスルフィドを過酢酸で酸化することによって製造することができる。このアリシンの製造方法は当該技術分野において周知である。しかし、過酢酸の使用により、反応溶液中に多量の酢酸が残ることがあるので、除去するための追加の工程およびコストが必要である。従って、アリシンの合成製造のためのより現実的な方法は、実施例22に詳述されているように、工業グレードのジアリルスルフィドのエタノール溶液のペルオキシモノサルフェートカリウム水溶液による酸化によるものであってもよい。
【0033】
他方、実施例23に詳述するように、新鮮なニンニクを粉砕または細かく砕いて、アリシン含有ニンニクジュースを得ることによって、天然経路によりアリシンを直接製造することもできる。この方法だと、高い収量のアリシンを得ることができない可能性がある。当業者であれば、アリシン溶液中のアリシンの濃度が高いほど、アホエンの製造方法におけるアホエンの収率が高<なることを理解するだろう。好ましくは、アリシン溶液は、約0.1%w/w〜10%w/wのアリシンを含有する。典型的には、アリシン濃度は約0.5%w/w〜2.5%w/wの範囲にある。
【0034】
出発アリシン溶液は、少なくとも1,000 ppmのアリシンを含み得る。好ましくは、アリシン溶液は、少なくとも10,000 ppmのアリシンを含む。天然または半天然経路を介して得られるアリシン溶液は、典型的には、約25,000 ppm未満のアリシンを含む。しかしながら、合成経路から得られるアリシシは約100,000 ppmを超える高濃度を達成することがある。あるいは、このような高濃度のアリシン溶液を得るために、天然または半天然経路によって得られたアリシンを濃縮するための前処理工程を行うこともできる。
【0035】
高純度のアリシンを得るために、アリシン含量をHPLCで測定した後に、実施例18でさらに詳述するようなアリシンのさらなる精製工程を行うこともできる。HPLCによって同定されるアリシンに富む画分を、蒸発器を用いて還元剤により還元する前に、乾燥剤、例えば硫酸マグネシウムによって乾燥および濃縮し、濾過することができる。標準化されたアリシン溶液を用いたアリシンの較正は実施例1に詳述するHPLC法に従って行うことができる。
【0036】
固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法は、アリシン又はアリシン溶液をポリマー基質に保持する工程により開始してもよい。この工程は、アリシンが固相ポリマー基質に付着するように、アリシンまたはアリシン溶液を、樹脂であり得るポリマー基質に通過させることによって実施できる。この工程は、アリシン溶液から90%超える水分を除去することが可能である。樹脂は、SPEクロマトグラフィーカラムといつたクロマトグラフィーカラムの固定相であり得る。実施例16に、アリシンをカラムに充填するための例示的な方法の1つを詳述する。実施例19に記載するように、樹脂をカラムに充填し、水で洗浄することができる。次いで、好ましくは蠕動ポンプのようなポンプ手段によって所望の流速で促進することにより、樹脂床に通過させてアリシンを流すことができる。好ましくは、カラムの流速は、約20 ml/min〜約50 ml/min、好ましくは約30 ml/minであり、アリシン溶液の流れは重力に対して設定できる。アリシンの極性は低いので、樹脂に保持可能である。アリシンの大部分をカラムの樹脂に確実に付着させるために、カラムの溶出液をモニターするためのHPLC法を用いることができる。適切なカラム、アリシンの充填量および関連する条件は、実施例16の例示的な方法にてさらに詳述する。
【0037】
好ましくは、樹脂が実質的に純粋なアリシンを保持するように、アリシン溶液から他の水溶性成分を除去する工程を行うことができる。この工程の必要性は、その後のアリシンのアホエンヘの変換に影響を及ぼしうる他の水溶性成分および非極性成分からアリシンを高収率で単離することである。水溶性成分には、アリイン、デオキシアリイン、ピルビン酸塩、糖頬、水溶性アミノ酸およびタンパク質が含まれるが、これらに限定されるものではなく、これらの水溶性成分は、極性水性溶媒、例えば極性の高い水性溶媒をカラムに通過させることによって除去することができる。一方、ジアリルポリスルフィドおよび植物油などの非極性成分は、非常に非極性の溶媒を樹脂に通過させることによって除去することができる。実施例16で詳述するように、残留する水溶性成分を除去するための極性水性溶媒として脱イオン水を使用することができる。それは、アリシン充填と同じ流速および方向に設定されたポンプ手段を使用してポンピングすることができる。水溶性成分を除去する工程の効果は、HPLC、並びにアリイン、デオキシアリイン、ピルビン酸、アリシンおよびアホエンのUV吸収スペクトルによってモニターすることができる。水溶性および非極性成分の除去は、好ましくは実質的に純粋なアリシンがポリマー基質に保持されるようにするものである。ポリマー基質に保持されるアリシンは少なくとも50%純粋、又は少なくとも60%以上純粋であってもよい。
【0038】
また、樹脂は、固体支持体なしで、または自由流動形態で、例えば分散法で使用することもできる。分散法で使用するためには、アリシンを遠心分離処理して固形粒子を除去した後、アリシン液を樹脂ビーズ中に自由流動させて分散させることが好ましい。アリシンと樹脂との反応混合物は、分散工程を通して10℃未満の所定の温度範囲の冷温で保持すべきである。アリシン含量は、好ましくは、実施例1のHPLC法を用いて決定される。分散法は、実施例19でさらに詳述する。この方法は、アリシンの大規模製造に特に有用である。
【0039】
本発明についての上記の説明で述べたように、アリシンからアホエンへの変換は、加熱工程により行うことができる。アリシンをアホエンに変換するための加熱工程は、サーモスタット制御された気体または液体環境下、または断熱チャンバにおいて、ポリスチレン-DVB樹脂などの固相ポリマー基質内で実施できる。好ましくは、使用する気体または液体は、炭化水素溶媒、水またはそれらの組み合わせである。サーモスタット制御された液体のpHは、反応または選択性を改善するために、任意の適切な酸または塩基の添加によって調節することができる。より好ましくは、サーモスタット制御された水槽が、より良い熱分布をもたらし、大規模生産への使用に適しているので、加熱工程に使用される。樹脂カラムは、ポンプ手段を介してサーモスタット制御された水槽に接続され、閉ループシステムを形成することができる。サーモスタット制御された水槽を加熱工程に使用する例示的な方法を、実施例16にさらに詳述する。
【0040】
迫加的にまたは代替的に、樹脂カラムを還流法によって加熱することができる。上記の説明で述べたように、炭化水素溶媒、水またはそれらの組み合わせを還流に使用することができる。使用される好ましい炭化水素はアセトンである。実施例18は、カラム内におけるアリシン含有樹脂の還流加熱を詳述する。実施例24は、溶媒リサイクルシステム、好ましくはソックスレー抽出器に固有の還流加熱法をさらに詳述する。このソックスレー抽出器は、使用する溶媒を低減するとともに後の段階で樹脂からアリシンを除去することができる。
【0041】
アリシンをアホエンに変換するための加熱工程は、固体支持体を用いてまたは用いずに実施できる。サーモスタット制御された水槽または還流法のいずれも、SPEカラムのような固体支持体内におけるアリシン含有樹脂に対して行うのが好ましい。あるいは、オーブンインキュベータのような断熱チャンバ内で、固体支持体を用いずにアリシン含有樹脂に対して直接加熱工程を行うことができる。この方法は、好ましくは、分散法により得られる自由流動性のアリシン含有樹脂に用いられる。オーブン加熱についての例示的な方法は、実施例19に詳述する。実施例19に記載するように、樹脂を金属トレイ上に置き、オーブンインキュベータで加熱することができる。アリシンからアホエンへの変換は、加熱後に樹脂のサンプルを用いる実施例2の方法などにより、HPLCによってモニターすることができる。樹脂は、メタノールなどの溶媒を用いて抽出することができる。
【0042】
オーブン加熱法を適用する場合、加熱工程、例えばSPEカラムの前に、固体支持体内においてアリシンが樹脂内に保持されている状態で、迫加の工程を行ってアリシン含有樹脂をカラムから分離することができる。それとは別に、アリシン含有生成物のさらなる処理に使用するために、アリシンをいかなる変換工程も行わずに樹脂から除去することができる。このような状態で、実質的に純粋なアリシンが得られるように、アリシン含有樹脂の精製装置としてカラムを使用する。カラム内の樹脂からアリシンを分離するための例示的な方法を、実施例18に詳述する。アリシン含有溶液を収集するために、カラムの基部で陰圧にて低沸点の非極性溶媒を容易に使用することができる。好ましい溶媒はジエチルエーテルである。
【0043】
加熱工程は、30℃〜90℃の所定の温度範囲において実施できる。好ましくは、所定の温度範囲は約30℃〜80℃である。より好ましくは、所定の温度範囲は約40℃〜60℃である。固体支持体の有無にかかわらずいずれの加熱方法に採用する加熱温度も同等であることに留意されたい。しかし、固体支持体を用いずに断熱チャンバを介して加熱する場合に必要な時間は、より長くなり得る。一般に、温度が高いほど、アリシンからアホエンへの変換に要する時間はより短くなる。加熱工程は、アリシンの少なくとも一部をアホエンに変換するのに十分な時間、例えば約1〜15時間行うことができる。好ましくは、変換のための十分な時間は、約4時間である。
【0044】
アリシンからアホエンへの変換の程度は、例えば実施例2に記載のHPLCにより、アリシンおよび/またはアホエンのUV吸収スペクトルによってモニターできる。好ましくは、アホエンに変換する少なくともアリシンの一部は、少なくとも10%w/w、好ましくは少なくとも20%w/w、又は少なくとも30%w/w、より好ましくは少なくとも40%w/wである。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも50%w/wのアリシンがアホエンに変換される。加熱工程は、出発溶液内の少なくとも60%w/w、又は少なくとも70%w/w、又は少なくとも80%w/w、又は少なくとも90%w/wのアリシンがアホエンに変換するまで実施してもよい。より好ましくは、実質的にすべてのアリシンがアホエンに変換される。実質的に全てとは、実施例2の方法に記載されているようなHPLCを用いてそれ以上のアリシンが検出されなくなるまで加熱工程を続けることである。
【0045】
上述したように、アリシンをアホエンに変換するための加熱工程は、代わりに、溶媒内におけるポリマー基質より行うことができる。好ましくは、アホエンへ直接変換するために、樹脂であり得る固相ポリマー基質からアリシンを抽出するのに適した溶媒は、好ましくはアリシンを溶媒和するのに適しており、アホエンへの変換に正確な条件を提供することができる溶媒である。溶媒は、アルコール、エーテル、ケトン又はそれらの2種以上の組み合わせであってもよい。上述したように、溶媒のpHを詞整して、アリシンからアホエンへの変換を改善し、最終生成物中のアホエンのE/Z比を調節することもできる。当該技術分野において一般的に知られているように、pHは、有機酸または無機酸、または塩基で調節することができる。典型的に用いられるpH調整酸は酢酸である。
【0046】
アホエン、未反応のアリシンおよび他の代謝産物を含有する固相ポリマー基質から本発明の方法によって製造されるアホエンを分離しなくてはならない。アリシン含有樹脂の加熱工程が固体支持体を含まない自由流動形態で行われる条件下では、その後の分離工程に使用するために、加熱された樹脂をSPEカラムのような固体支持体に充填して追加の樹脂充填工程を実施してもよい。実施例19は、抽出器カラムへ樹脂を充填するこのような工程を詳述する。オーブン加熱された樹脂は、より高い水分量を有することもあるので、樹脂がカラムに充填される前に凍結乾燥することが好ましい。
【0047】
アホエンの分離工程は、非水性極性溶媒、例えば液体CO2又は超臨界CO2を用いて所定の圧力下で実施され得る。好ましくは、非水性極性溶媒は、アセトン又はメタノールなどの他の非水性極性溶媒であり、また、酢酸エチルを使用することもできる。しかし、水などの極性の高い溶媒、またはペンタンおよびへキサンなどの非極性溶媒は、この分離工程で使用するのに適さない。分離工程は、重力によりカラムの上部から溶媒を流してカラムを洗浄し、その後に溶離液を回収することによって達成することができる。各画分のアホエン含有量は、例えば実施例2の方法に記載されているように、HPLCによって測定できる。
【0048】
好ましくは、固相ポリマー基質を介してアリシンからアホエンを製造するための方法は、分離工程の後に、アホエンを濃縮してアホエンリッチオイルを形成する工程を更に含む。例えば実施例2の方法に記載されているようなHPLCにより決定されるアホエンに富む画分を、無水硫化マグネシウムのような乾燥剤を用いて混合し、乾燥させることができる。溶媒内の乾燥アホエンを重力により濾過して固体不純物を除去することができる。好ましくは、アホエンを含有する溶液は、Whatman濾紙通して濾過することができる。次いで、約400 torr (53.4 kPa)〜約150 torr (19.9 kPa)の所定の圧力の減圧下、かつ約56℃〜約40℃の温度範囲にて、溶媒を還元することができる。温度は、使用する溶媒の種類によって調製し得る。好ましくは、溶媒の抽出を容易にするためにロータリーエバポレーターを用いる。この工程は実施例16でさらに詳述する。
【0049】
極性溶媒の他に、液体または超臨界CO2も樹脂からアホエンを抽出するのに使用するのに適している。なぜならこれらの物質はすべて食品的に安全であるからである。抽出は約400 bar (40,000 kPa)〜約500 bar (50,000 kPa)の所定の圧力、かつ約40℃〜約55℃の所定の温度範囲にて、超臨界CO2を用いて実施できる。同じ圧力および温度を使用して、10%および20%エタノールのような異なる濃度の共溶媒を用いた連続抽出を適用することもでき、得られた抽出物を分析して、超臨界CO2による抽出が完全に達成されたことを確認してもよい。得られた超臨界CO2及び樹脂の抽出物のいずれも、例えば実施例2の方法に記載したようなHPLCを用いて分析することができる。
【0050】
超臨界CO2によって得られるアホエン溶液に、例えば実施例20に詳述したような異なる温度でさらに抽出処理する工程を行いエマルジョンを形成し、次いでこのエマルジョンを、水層と油性層に分離することができる。これらの層は、例えば実施例2の方法に記載されるようなHPLCによって分析することができ、油層中に存在するアリシンは、さらに、本発明に記載の方法のいずれかを用いてアリシンに富む生成物に加工するか、又はアホエンに変換することができる。
【0051】
高純度のアホエンを得るために、最終的なアホエン溶液中に存在する変換の際に形成される他のアリシン代謝産物、あるいは脂肪酸および炭化水素といった天然のニンニク化合物も適切な溶媒を用いて除去できる。最終的に得られるアホエンリッチオイルは、好ましくは油性画分の総量に対し10%w/w〜30%w/wのアホエンを含有する。より好ましくは、本発明の工程は、油性画分における液体の少なくとも15%w/w〜30%w/wである高度に濃縮かつ精製されたアホエンリッチオイルを提供可能である。
【0052】
アホエンは、シス(Z)およびトランス(E)の2つの異性体形態で存在する。本発明により製造されるアホエンは、典型的には両方の異性体の混合物として単離される。例えば、実施例3に詳述するようなHPLCを使用して、アホエンのE/Z比を決定することができる。水性アセトン抽出によって本発明により得られるアホエンは、一般に、HPLC分析による測定だと、E:Z比がl〜2:3である。アホエンの収率およびE/Z比は、変換媒体の温度、持続時間、極性およびpHによって影響され得る。本発明のアホエンリッチオイルは、直接アホエン生成物の製剤に使用するのに適しており、あるいはヘキサン-プロパノール移動相を用いたシリカクロマトグラフィーまたは当業者に公知の任意の他の適切な方法を使用して純粋なE-もしくはZ-アホエンヘと更に精製するのに適している。
【0053】
本発明は、本発明の方法により得られるアホエン又はアホエンを含む組成物も提供する。アホエンは、治療効果または健康上の利益を有する様々な種類の製品に製剤化することができる。多結晶セルロース、マルトデキストリンおよびシクロデキストリンなどの化合物を用いて製剤化することにより、臭気、安定性および溶解性といったアホエンおよび他のニンニク油化合物が有する物理化学的特性を有益に改変することができる。
【0054】
本開示は、添付の特許請求の範囲に記載のもの、ならびに上記の記載のものを含む。本発明は、ある程度の詳細をもって好ましい形態で記述されるものの、開示の好ましい形態は例示目的であり、本発明の範囲から逸脱することなく、その形態の一部の詳細な構成やそれらの組み合わせを使用してもよいことが理解される。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の様々な態様および実施形態を例示するための実施例を示す。これらの実施例は、本開示の発明を限定するものではなく、本開示の発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0056】
実施例1
標準化アリシン溶液を用いたアリシン較正用の逆相HPLC条件
ピーク識別:アリシン@9.5分
カラム:Ace 5 C18
寸法:250 x 4.6mm
ガードカラム:Ace 5 C18
移動相:50% メタノール - 50%水
温度:30℃
検出波長:210nm (UV)
サンプル量:20μl
サンプル溶媒:水
流速:1.0ml/min
【0057】
実施例2
標準化アホエン溶液を用いたアホエン較正用の逆相HPLC条件
ピーク識別:アホエン(E/Zが共に溶出される) @6.5分
使用カラム:ACE 5 C18
寸法:250 x 4.6mm
ガードカラム:Ace 5 C18
移動相: (溶媒A)水-(溶媒B)アセトニトリル
流速:1.5ml/min
勾配:
【0058】
【表1】
【0059】
温度:30℃
検出波長:254nm (UV)
サンプル量:20μl
サンプル溶媒:メタノール
【0060】
実施例3
標準化アホエン溶液を用いて較正したアホエンEおよびZ異性体の測定用の順相HPLC条件
ピーク識別:Zアホエン@14分;Eアホエン@17分
使用カラム:シリカ
寸法:250 x 4.6mm、NN Scientific Ltd.社製
移動相:92%へキサン-8% プロパノール
温度:30℃
検出波長:240nm (UV)
サンプル量:20μl
サンプル溶媒:2-プロパノール
流速:1.0ml/min
【0061】
実施例4
ポリマー基質(ポリスチレン-ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂)の調整
オーバーヘッドスターラー、アンカーシャフト、窒素用入口、還流コンデンサー及び水浴層を備えたフランジフラスコに、脱イオン水(100g)を導入した。乾燥窒素を水層に通してバブリングさせた。この撹拌溶液にヒドロキノン(0.01g)、続いて硫酸ナトリウム(0.02g)および界面活性剤(SDS、0.015g)を添加した。スチレン(4g)、p-ジビニルベンゼン(2g)、 ビニルピリジン(O.5g)、Span 8O (1g)、および過酸化ベンゾイル(O.5g) を予め混合したトルエン溶液(20ml)を30分かけて滴下した。混合物を200rpmで撹拌し、反応混合物の温度を80℃に上昇させた。窒素の入口を反応混合物の表面より上にして、重合を24時間進行させた。24時間の重合の終了時に、樹脂を濾過によって回収し、水、続けてエタノールで連続的に洗浄した。樹脂を80℃で5時間乾燥させた。樹脂をサイジングし、粒径l mmのビーズを回収した(収量2.5g)。ビーズの物理的パラメータは、BETおよび電子顕微鏡によって決定した。
【0062】
実施例5
ポリマー基質(ポリスチレン-ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂)の調整
一連の実験操作の後に約5OOgの樹脂が得られるように実施例4に詳述した実験を繰り返した。樹脂の公称粒径は800-1200μmの間で変動し、1200m2/gの表面積を有していた。
【0063】
実施例6
ポリマー基質(ポリスチレン-ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂)の調製
スターラーの乳化遠度を1000rpmに上げた以外は、実施例4に詳述した実験を繰り返して、75-190μmの粒子分布を有する樹脂を得た。この樹脂のサンプルを初期収着試験で評価した。
【0064】
実施例7
ポリマー基質(ポリスチレン-ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂)の調製
開始剤をAIBNのトルエン溶液(40ml)に置き換えた以外は実施例4に詳述した樹脂の製造方法を繰り返した。形成されたビーズを溶出して(elutropically)サイジングした後、暗色の樹脂(450g)を得た。乾燥した物質を水およびアセトンで連続的に洗浄して残留可溶性物質をすべて除去した。この樹脂は、分析物に対して優れた収着および脱着特性を示した。
【0065】
実施例8〜15
ポリマー基質(ポリスチレン-ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂)の調製
表2に示すような異なる基質またはパラメータを用いて、実施例4に詳述した実験を繰り返した。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例16
アリシンからアホエンへの調製
90gの樹脂を寸法3 x 38cmのガラスカラムに充填した。樹脂を200mlの脱イオン水で洗浄した。特許EP1404853A1に記載されている方法を用いて調製した15,000ppmのアリシン溶夜1500mlを、Cole Palmer Master Flex蠕動ポンプを用いて樹脂床に流した。ポンプを30ml /minの流速に設定した。アリシン溶液の流れを重力に対して設定した。溶離液のアリコートを実施例1に詳述した方法を用いてHPLCによりモニターした。HPLCの結果により、アリシンの大部分がカラムに付着していたことを明らかになった。次いで、アリシンを充填した樹脂を500mlの脱イオン水で洗浄して残留水溶性成分を除去した。アリシン充填と同じ流速および方向で蠕動ポンプセットを使用して水を注入した。次いで蠕動ポンプを介して樹脂カラムをサーモスタット制御された水槽に接続して閉ループシステムを形成した。タンク水温は57oC±2に設定した。加熱した水をアリシン充填と同じ流速および方向で3時間循環させた。次いで、カラムを600mlのアセトンで洗浄した。アセトンを重力によりカラム上部から供給し、100mlのアリコートに回収した。実施例2に詳述したHPLC法により各画分のアホエン含量を測定した。アホエンに富む画分(画分2〜5)を合わせ、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。次いで乾燥したアホエン含有アセ卜ンを重力により濾紙に通過させて濾過し固形分を除去した。Buchii RE300ロータリーエバポレーターを用いて50oCで減圧下にてアセトンを還元した。16gの淡橙色油が得られた。実施例2のHPLC法を用いて油を測定したところ、18%のアホエン含量を有すると測定された。実施例3で詳述したHPLC法を用いたところ、アホエンのZ/E比は2.3であると測定された。
【0068】
実施例17
アリシンからアホエンへの調製
実施例16で詳述した方法を用いて、90gの樹脂に15,000ppmアリシンを1500ml吸着させ、温水循環流を用いてアリシンをアホエンに変換した。次いで吸着したアホエンを、900 mlのエタノール用いてカラムから洗い流した。エタノールをl00mlアリコートに集めた。実施例2に詳述したようなHPLCを介して各画分のアホエン含量を測定した。アホエンに富む画分(3〜6)を合わせた。合わせた画分をBuchiiロータリーエバポレーターを用いて60℃で減圧下にて還元した。油性残渣を有する40mlの水溶液を回収し、次いで2000rpmに設定したBeckman遠心機を用いで20分間で二重の層に分離した。次いで、200mlの分液漏斗を用いて油層および水層を分離した。実施例2のHPLC法を用いた測定によると17.5%のアホエン含量を有するl5mlの油が得られた。
【0069】
実施例18
アリシンからアホエンへの調製
1600mlの15,000ppmアリシンを実施例16に記載したように樹脂カラムに充填した。アリシン溶液を10℃未満に冷却してアリシンを保存した。次いで、カラムを10℃未満に冷却した1000mlの脱イオン水で洗浄した。500mlのジエチルエーテルをカラムの上部に充填し、陰圧を基部にかけて液体を集めた。ジエチルエーテルを100mlのアリコートに回収した。各画分を回収し、実施例1のHPLC法を用いてアリシン含量を測定した。アリシンに富む画分(1〜6)を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、ジエチルエーテルを重力によりFluted Whatman 113 Grade濾紙に通過させて濾過した。Buchii RE300ロータリーエバポレーターを用いて20℃でエーテルを淡黄色の油状物に還元した。10.5mlの淡黄色の油状物が得られ、HPLCによる分析により純度が90%であると決定した。純粋なアリシンを200ml容量の60%アセトンで希釈し、56℃で3.5時間還流した。還流後、Buchii RE300ロータリーエバポレーターを用いて真空下にてアセトンを還元した。淡橙色の油状物を含む水溶液が得られた。淡橙色の油状物を分液漏斗を用いて取り出した。この油(9g)をHPLC法2および3を用いて分析したところ、アホエン含量が2l%であり、Z/E比がl.3であると測定された。
【0070】
実施例19
アリシンからアホエンへの調製
1500mlの15000ppmアリシンを、特許EP1404853A1に詳述されている方法を用いて調製した。アリシン液をBeckman J6Bを用いて200O rpmで20分間遠心分離して固体微粒子を除去した。次いで、液体を4000mlのビーカー中で110gの樹脂と共に穏やかに撹拌した。液体中に樹脂を分散させるのに十分なゆっくりとした撹拌遠度は、マグネチックスターラーを用いて達成した。液体を4時間撹拌し、反応混合物に砕いた氷を定期的に添加することによって温度を10℃未満に保った。5時間後、液体のアリシン含量は、実施例lのHPLC法を用いてl000 ppm未満であると測定された。次いで、Whatmann 113 Grade濾紙を使用して液体と樹脂を真空濾過によって分離した。樹脂を濾紙に残したまま冷脱イオン水1000mlで真空下にて洗浄した。次いで、樹脂を密閉された金属トレイ上に置き、オーブンインキュベータ内で50℃にてl0時間加熱した。アリシンからアホエンへの変換は、樹脂のサンプル10mgを採取し、1mlのメタノールで抽出し、実施例2のHPLC法を用いてモニターした。変換が完了した後、樹脂をEdwards Super Modulyo凍結乾燥機に移し一定の重量に乾燥させた。凍結乾燥前の樹脂の含水率は40%であると測定された。凍結乾燥した樹脂40gを、15barおよび35℃に維持した25mlのセパレータを有するThar SFC-1000実験装置に取り付けた100mlの抽出器に充填した。抽出は、400barおよび40℃で3時間超臨界CO2抽出を行い、続いて1O%および2O%エタノールを共溶媒として使用して同じ圧力および温度にて順次抽出した。セパレータをエタノールで洗浄し、溶液を保持した。次いで、抽出器を空にし、抽出した樹脂を保持した。抽出物および樹脂を実施例2のHPLC法を用いて分析した。共溶媒としての10%エタノールを用いた抽出物の分析によると、ビニルジスチレンおよびスルフィドの大部分は超臨界CO2単体により抽出され、共溶媒抽出物は主にアホエンであった。20%エタノールを共溶媒による抽出物にはアホエンがほとんど残らないので、10%の添加で十分であることが示された。抽出後の残留樹脂の分析により、アホエンの完全な抽出が達成されたことが示された。
【0071】
実施例20
アリシンからアホエンへの調製
アリシンを充填した樹脂62gを、実施例19に詳述した分散法を用いて調製した。アリシンを冷脱イオン水で洗浄したが、変換を開始させるための加熱は行わなかった。樹脂(62g)を100mlの抽出器に充填した。実施例19のものと比較して余分な重量は、含水量に起因するものである。初期抽出は、65barでl0℃の液体CO2を用いて10g/minの流速で2時間行った。これにより0.111g(0.184%)のアリシンが得られた。次いで、温度を40℃に上げ、圧力を400barに上げ、超臨界条件下でさらに3時間抽出した。2.93gのエマルシジョンを得た。室温で静置すると、エマルシジョンは水層とその下の油層に分離した。抽出された樹脂のHPLC分析により、抽出が成功し、樹脂にアリシンが実質的に残っていないことが示された。油層を実施例2のHPLC法で分析した。アリシンリッチオイルは、アリシンに富む生成物への更なる加工、または実施例のいずれかに詳述される任意の適切な方法によるアホエンへの変換に適していた。
【0072】
実施例21
アリシンからアホエンへの調製
Iberlらにより詳述された方法(Plant Med 56 (1990))を用いて、工業用ジアリルジスルフィルドを過酢酸で酸化することにより、25mlの合成アリシンを生成した。次いで、アリシンを2000 mlの水と激しく混合して、放置すると分離し始める不安定なエマルシジョンを生成した。90gの樹脂を3 x 38 cmの寸法のカラムに充填した。次いで、合成アリシン溶液を、Cole palmer master flex L/5蠕動ポンプを用いて樹脂床に流した。ポンプを40ml/minの流速に設定した。アリシン溶液の流れを重力に対して設定した。溶出液のアリコートを実施例1のHPLC法によりモニターした。HPLCにより、アリシンの大部分がカラムに付着していることが明らかになった。次いで、カラムを底部の出口を介してサイドアーム収集フラスコに接続した。陰圧をフラスコにかけ、200mlの脱イオン水を用いてカラムを洗浄した。陰圧を継続して加え、空気をカラムに通して樹脂から過剰の水分を除去した。次いで、樹脂を開いた金属トレイ上に置き、Ravenオーブンインキュベータ内で50℃にて10時間加熱した。アリシンからアホエンへの変換は、樹脂のサンプル10mgを採取し、1mlのメタノールで抽出し、実施例2のHPLC法を用いてモニターした。加熱後、樹指は乾燥した自由流動性の固体であつた。樹脂を3 x 40 cmのカラムに充填し、500 mlのペンタンでカラムを洗浄した。ペンタン溶離液の分析により、主としてビニルジジンおよびポリスルフィドが検出された。その後、溶媒の残渣を、陽圧をカラムにかけて、排出物を放出することによって樹脂から除去した。次にカラムを40℃に加熱した600mlのアセトンで洗浄した。アセトンを重力によりカラム上部から供給し、100mlのアリコートに回収した。実施例2のHPLC法により各画分のアホエン含量を測定した。アホエンに富む画分を合わせ、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。次いで乾燥したアセトンを重力により濾紙に通過させて濾過し固形分を除去した。Buchiiロータリーエバポレーターを用いて50℃で減圧下にてアホエンアセトンを還元した。10gの淡橙色油が得られた。実施例2のHPLC法を用いて油を測定したところ、34%のアホエン含量を有すると決定された。
【0073】
実施例22
アリシンからアホエンへの調製
工業用ジアリルジスルフィドのエタノール溶液をペルオキシモノ硫酸カリウムの水溶液で酸化することにより、合成アリシン(25ml)を製造した。水性塩溶液を2時間かけて滴下し、温度を30℃未満に保ち、溶液を常時撹拌した。ジアリルジスルフィドからアホエンヘの変換は、実施例2のHPLC法を用いてモニターした。完了後、反応液を濾紙に通過させて濾過し塩を除去した。濾過した溶液を脱イオン水で希釈して、1000mlの25,000ppmのアリシン溶液を生成した。次いで、アリシン溶液を、4 x 38cmのカラムに充填した90gの樹脂に充填し、実施例21に詳述した手順に従ってアホエンに変換した。オキソン由来のアリシンについては、3000mlの脱イオン水を用いてカラムに吸着したアリシンを洗浄し、確実に全ての塩を除去した。
【0074】
実施例23
アリシンからアホエンへの調製
地元の市場から購入した15kgの新鮮な皮をむいたニンニクを、Silvercrest遠心ジューサーを用いてジュースにした。10Lのジュースを得、これを10Lの飲料水と一緒に撹拌した。次いでニンニク溶液を遠心分離器で清澄化した。この液体を実施例1のHPLC法で分析し、1000ppmのアリシン含量を有すると決定した。以下の変更を加えたこと以外は、実施例16に詳述した方法を用いてニンニク液を変換した。アリシン液を150ml/minの速度で樹脂に通過させた。カラムからの溶出液は廃棄せず、代わりにアリシン供給用に供され、閉ループシステムを形成した。アリシン供給タンクを氷浴に浸して温度を10℃未満に保った。タンクのアリシン含量を実施例1のHPLC法を用いて1時間間隔で確認した。6時間後、これ以上のアリシンがカラムに吸収されなくなり、流れを停止し、カラムを排水した。この工程に続く洗浄および変換の処理は実施例16と同一であつた。このブ口セスにより、15%のアホエン含量を有する20gの淡橙色油が得られた。
【0075】
実施例24
アリシンからアホエンへの調製
アリシンを充填した樹脂40gを実施例19に詳述したように調製した。樹脂を4.5 x 10cmのセルロース抽出シンブルに移しElectromantle電気加熱マントル内に水冷凝縮器と2Lの丸底フラスコを取り付けた適切なサイズのソックスレー抽出器の内部に設置した。40%水性アセトン500mlを丸底フラスコに入れた。アセトンを穏やかに加熱して還流させ、ソックスレー抽出で典型的に使用される方法で樹脂に通して蒸留した。1時間後、サイフォン内の樹脂から戻る循環溶媒が透明であることが分かった。この時点で、加熱を停止し、丸底フラスコを取り外した。次に、丸底フラスコを凝縮器に接続し、溶液を56℃で1.5時間還流した。還流後、Buchiiロータリーエバポレーターを用いてアセトンを真空下で除去した。淡橙色の油状物を含む水溶液が得られた。淡橙色の油状物を分液漏斗を用いて取り出した。この淡橙色の油状物(10g)を実施例2および3に記載のHPLC法を用いて分析したところ、アホエン含量がl4%であり、Z/E比が3.lであると測定された。
【国際調査報告】