(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538699(P2017-538699A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】パーキンリガーゼ活性化の方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20171201BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20171201BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20171201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20171201BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20171201BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20171201BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20171201BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20171201BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20171201BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20171201BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20171201BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20171201BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20171201BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20171201BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20171201BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20171201BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20171201BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20171201BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20171201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20171201BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4196
A61K31/519
A61P35/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/02
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A61P27/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P25/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P43/00 111
C12N9/99ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2017-530205(P2017-530205)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月19日
(86)【国際出願番号】US2015064305
(87)【国際公開番号】WO2016090371
(87)【国際公開日】20160609
(31)【優先権主張番号】62/087,972
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/222,008
(32)【優先日】2015年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/237,400
(32)【優先日】2015年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517193578
【氏名又は名称】エーエヌ2エイチ ディスカバリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ジェニファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C086AA01
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4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC19
4C086ZC35
4C086ZC52
(57)【要約】
【課題】本発明は、腫瘍学的及び神経学的障害を含めた、種々の疾患及び障害に対して治療有益性を提供する、ジンクフィンガードメインを破壊することに関する新規のアプローチを対象とする。
【解決手段】
本発明は、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する工程によってパーキンリガーゼを活性化する方法及び組成物を対象とする。本発明はまた、パーキンリガーゼの活性化に関連した疾患又は状態の発症を処置する及び/又は低減させる方法も対象とする。
【選択図】
図1【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、前記化合物が亜鉛イオンと配位結合することができ、及び/又はシステインと結合又は反応することができる、パーキンリガーゼを活性化する方法。
【請求項2】
前記活性化されたパーキンリガーゼが1つ又は複数の腫瘍の増殖を抑制する及び/又は1つ又は複数の腫瘍の転移を予防する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化されたパーキンリガーゼがドーパミンニューロンの保護をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、損傷したミトコンドリアを排除すること、細胞ストレス時に細胞生存率を高めること、腫瘍の形質転換を低下させること、及び細胞のアルファ−シヌクレインを軽減することからなる群からから選択される1つ又は複数の機能を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象ががんであると診断されている、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、膠芽腫、小細胞肺癌、乳がん又は前立腺がんである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が神経変性疾患であると診断されている、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記神経変性疾患がパーキンソン病、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及びハンチントン舞踏病である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記認知症が、レビー小体(DLB)、多系統萎縮症(MSA)又は進行性核上性麻痺(PSP)を伴う認知症である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記亜鉛イオンに配位結合し得る化合物が、一座配位子、二座配位子、又は三座配位子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記亜鉛イオンに配位結合し得る化合物が、パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基が、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のドメインに対応するか又はこれらの中でアライメントをとる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのジンクフィンガーが4つのシステイン残基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
パーキンリガーゼの活性化がユビキチン化を変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、アルキル化剤、酸化剤、ミカエル受容体、別の不飽和構造物である、及び/又はジスルフィドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、前記パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基が、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のドメインに対応するか又はこれらの中でアライメントをとる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ジンクフィンガーが4つのシステイン残基を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パーキンリガーゼを活性化させる工程が、アルツハイマー認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、PSP、タウオパチー、びまん性レビー小体病、レビィ小体痴呆、α−シヌクレインの異常蓄積を特徴とする任意の障害、老化プロセスの障害、脳卒中、細菌感染症、ウイルス感染症、ミトコンドリア関連疾患、精神遅滞、難聴、盲目、糖尿病、肥満、心血管疾患、多発性硬化症、シェーグレン症候群、ループス、偽落屑緑内障を含めた緑内障、レーバー遺伝性視神経萎縮症、及びリューマチ性関節炎からなる群から選択される1つ又は複数の疾患又は病気の発症を処置するか又は低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記細菌感染症がマイコバクテリウム感染症である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス感染症がC型肝炎感染症である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ミトコンドリア関連疾患が、アルパース病、バース症候群/LIC(致命的な乳児性心筋症)、β酸化欠陥、カルニチン−アシル−カルニチン欠損症、カルニチン欠損症、クレアチン欠損症症候群、コエンザイムQ10欠損症、複合体I欠損症、複合体II欠損症、複合体III欠損症、複合体IV欠損症/COX欠損症、複合体V欠損症、CPEO、CPT I欠損症、CPT II欠損症、KSS、乳酸アシドーシス、LBSL−白質ジストロフィー、LCAD、LCHAD、リー病又は症候群、ルフト病、MAD/グルタル酸尿症II型、MCAD、MELAS、MERRF、MIRAS、ミトコンドリア細胞症、ミトコンドリアDNA欠失、ミトコンドリア脳症、ミトコンドリアミオパシー、MNGIE、NARP、ピアソン症候群、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、POLG突然変異体、呼吸鎖関連疾患、SCAD、SCHAD及びVLCADからなる群の1つ又は複数から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する化合物又はその塩の有効量及び薬学的に許容される担体を含み、前記化合物又はその塩が亜鉛イオンと配位結合することができ、及び/又はシステインと結合又は反応することができる、対象においてパーキンリガーゼを活性化する医薬組成物。
【請求項24】
固体、粉末、液体及びゲルからなる群から選択される製剤中に存する、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記化合物が表1、表2の化合物、AH001及び/又はAH007からなる群から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記化合物がシステインのチオール基と結合するか又は反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記システインがヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群の1つ又は複数から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記システインがヒトパーキンリガーゼのC377である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基が、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸に対応するか又はこれらの中でアライメントをとる、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基が、ヒトパーキンリガーゼのC377に対応するか又はこれとアライメントをとる、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、IBRドメイン(アミノ酸328〜377)中に存在する少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する、請求項17に記載の方法。
【請求項33】
パーキンリガーゼを活性化する上で、リン酸化ユビキチン(pUB)と相乗的に作用する化合物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、パーキンリガーゼを活性化する方法。
【請求項34】
前記化合物の治療有効量が少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し、前記化合物が亜鉛イオンと配位結合することができ、及び/又はシステインと結合又は反応することができる、請求項33の方法。
【請求項35】
前記化合物が、前記パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基が、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のドメインに対応するか又はこれらの中でアライメントをとる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が、IBRドメイン(アミノ酸328〜377)中に存在する少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[1] 本出願は、それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年10月5日に出願された米国仮出願第62/237,400号、2015年9月22日に出願された米国仮出願第02/222,008号、及び2014年12月5日に出願された米国仮出願第62/087,972号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
[2] 本発明は、治療上の有益性のために、ジンクフィンガードメインを破壊することによりパーキンリガーゼを活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[3] ユビキチン−プロテアソーム経路系(UPS)は、重要な調節タンパク質を調節し、ミスフォールドしたタンパク質又は異常なタンパク質を分解する、極めて重要な経路である。UPSは、複数の細胞プロセスにとって中心的なものであり、欠陥又は不均衡があると、種々の疾患の病因を招く。ユビキチンによるタンパク質の翻訳後修飾は、生物学のほとんどあらゆる面から、タンパク質安定性及び活性を調節し、多くの機能の基盤となる基本的な細胞機構である。特定のタンパク質基質へのユビキチンの共有結合はE3ユビキチンリガーゼの作用により実現される。これらのリガーゼは、500を超える様々なタンパク質を含み、それらのE3機能活性の構造的要素が規定する複数のクラスに分類される。具体的には、HECTリガーゼ及びRINGリガーゼの双方が、活性化ユビキチンをチオエステルから基質上のリジン残基のe−アミノ基に転移させるが、HECTリガーゼはユビキチンと中間体チオエステル結合を形成する活性部位システインを有し、一方、RINGリガーゼはE2から基質へのユビキチンの直接転移を可能にする足場として機能する。近年の証拠は、RINGリガーゼのサブファミリー、RING−between−RING(RBR)ファミリーが、標準RINGドメインに加えて触媒システイン残基1、2を含有することができることを示唆している。(Rileyら 2013. Nat Commun. 4:1982、「Rileyら」、全体が参照により本明細書に組み込まれている。)
【0004】
[4] 脱ユビキチン化タンパク質及びユビキチン特異的プロテアーゼ(DUB及びUSP)及びE3リガーゼはUPSにおいて決定的な役割を果たす。これらのタンパク質は、特殊化した官能基に対するユビキチン(Ub)の結合を安定化させる融通性のあるジンクフィンガー(Znf)によってサポートされる。
【0005】
[5] パーキンは、特定の基質へのユビキチンの共有結合の際に機能するRING−between−RING E3リガーゼであり、パーキンにおける変異は、パーキンソン病、がん及びマイコバクテリウム感染症に関係する。パーキンについての個々のRINGドメインは、Znイオンを配位結合させる特定の残基並びに古典的なE2結合ドメインを規定する標準的なRINGクロスブレース構造に対するそれらの関係性について、多くの議論の対象とされてきた。R0は、新規ドメイン構造であるが、E3RINGドメインよりもジンクフィンガードメインにより類似している(Rileyら 2013. Nat Commun. 4:1982)。
【0006】
[6] 多くの薬物発見プログラムがUPSに集中しているが、一方、酵素的タンパク質の活性部位に対する選択性及びその部位への直接的なアクセスを欠いていたので、ほとんど成功しなかった。本発明は、腫瘍学的及び神経学的障害を含めた、種々の疾患及び障害に対して治療有益性を提供する、ジンクフィンガードメインを破壊することに関する新規のアプローチを対象とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[7] 本発明は、治療有益性のために、リガーゼのZnFドメイン中の亜鉛イオン及び/又はシステイン残基に結合することによって、UPSにおけるリガーゼの構造及び/又は機能を調整することに関する。この機構は、Ubの尾部を受ける、リガーゼの活性部位への結合とは、はっきりと異なる。本発明は、低分子をパーキンZnFドメイン中の亜鉛イオンに配位結合させることによって、又は低分子をパーキンZnFドメイン中のシステイン残基と化学的に反応させることによって、パーキンリガーゼを活性化する方法を対象とする。亜鉛イオンへの低分子の配位結合はZnFドメインから亜鉛イオンを脱離させても脱離させなくてもよい。低分子とシステイン残基との化学反応は可逆的であってもまた非可逆的であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[8] 本発明の特定の実施形態にはパーキンリガーゼを活性化する方法が含まれる。特定の一実施形態では、パーキンリガーゼは、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する化合物の治療有効量を対象に投与する工程によって活性化され得る。別の実施形態では、化合物はZnイオンと配位結合することができ、及び/又はシステインと結合又は反応することができる。ある特定の一実施形態では、化合物はシステインのチオール基と反応することができる。
【0009】
[9] 別の実施形態では、活性化されたパーキンリガーゼは1つ又は複数の腫瘍を抑制する。別の特定の実施形態では、活性化されたパーキンリガーゼはドーパミンニューロンの保護をもたらす。
【0010】
[10] Znイオンに配位結合することができる化合物としては、それらに限定されないが、一座配位子、二座配位子、又は三座配位子がある。システイン残基中のチオール基と反応することができる化合物としては、それらに限定されないが、アルキル化剤、酸化剤、ミカエル受容体、別の不飽和構造物、又はジスルフィドがある。
【0011】
[11] 特定の実施形態では、化合物は、損傷したミトコンドリアを排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め、腫瘍の形質転換を低下させ及び/又は細胞のアルファ−シヌクレインを軽減する。ある特定の実施形態では、対象はがんであると診断されている。ある特定の実施形態では、がんは、膠芽腫、小細胞肺癌、乳がん又は前立腺がんである。
【0012】
[12] 一部の実施形態では、患者は神経変性疾患であると診断されている。
【0013】
[13] 特定の実施形態では、神経変性疾患はパーキンソン病、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はハンチントン舞踏病である。さらなる実施形態では、認知症は、レビー小体(DLB)、多系統萎縮症(MSA)又は進行性核上性麻痺(PSP)を伴う認知症である。
【0014】
[14] 本発明の他の実施形態では、化合物は、パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーは、R0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465が規定するドメインからなる群の1つ又は複数から選択される。ある特定の一実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基は、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のドメインに対応するか又はこれらの中でアライメントをとる。さらなる実施形態では、ジンクフィンガーは4つのシステイン残基を含む。特定の一実施形態では、化合物は亜鉛キレート剤であってもよい。
【0015】
[15] 別の特定の実施形態では、化合物は1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができる。別の特定の実施形態では、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群から選択される1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができる。
【0016】
[16] 一実施形態では、化合物はパーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。別の実施形態では、パーキンリガーゼ中のジンクフィンガーは、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のドメイン内に存在することができる。別の特定の実施形態では、実質的に破壊されているジンクフィンガーはパーキンリガーゼのIBRのアミノ酸328〜377中に存在する。
【0017】
[17] 別の実施形態では、化合物は、パーキンリガーゼを活性化する上で、リン酸化ユビキチン(pUB)と相乗的に作用することができる。
【0018】
[18] ある特定の実施形態では、パーキンリガーゼの活性化がユビキチン化を変化させる。
【0019】
[19] 別の実施形態では、パーキンリガーゼを活性化させる工程が、アルツハイマー認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、PSP、タウオパチー、びまん性レビー小体病、レビィ小体痴呆、α−シヌクレインの異常蓄積を特徴とする任意の障害、老化プロセスの障害、脳卒中、細菌感染症、ウイルス感染症、ミトコンドリア関連疾患、精神遅滞、難聴、盲目、糖尿病、肥満、心血管疾患、多発性硬化症、シェーグレン症候群、ループス、偽落屑緑内障を含めた緑内障、レーバー遺伝性視神経萎縮症、及びリューマチ性関節炎からなる群から選択される1つ又は複数の疾患又は病気の発症を処置するか又は低減させる。
【0020】
[20] 特定の一実施形態では、細菌感染症はマイコバクテリウム感染症である。別の特定の実施形態では、ウイルス感染症はC型肝炎感染症である。別の特定の実施形態では、ミトコンドリア関連疾患は、アルパース病、バース症候群/LIC(致命的な乳児性心筋症)、β酸化欠陥、カルニチン−アシル−カルニチン欠損症、カルニチン欠損症、クレアチン欠損症症候群、コエンザイムQ10欠損症、複合体I欠損症、複合体II欠損症、複合体III欠損症、複合体IV欠損症/COX欠損症、複合体V欠損症、CPEO、CPT I欠損症、CPT II欠損症、KSS、乳酸アシドーシス、LBSL−白質ジストロフィー、LCAD、LCHAD、リー病又は症候群、ルフト病、MAD/グルタル酸尿症II型、MCAD、MELAS、MERRF、MIRAS、ミトコンドリア細胞症、ミトコンドリアDNA欠失、ミトコンドリア脳症、ミトコンドリアミオパシー、MNGIE、NARP、ピアソン症候群、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、POLG突然変異体、呼吸鎖関連疾患、SCAD、SCHAD及びVLCADからなる群の1つ又は複数から選択される
【0021】
[21] 本発明の別の実施形態には、がんの発症を処置する及び/又は低減させる方法が含まれる。特定の一実施形態には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し且つパーキンリガーゼの活性を誘導する化合物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程が含まれ、ここで、化合物はZnイオンと配位結合することができ、及び/又はシステイン中のチオール基と反応することができる。別の特定の実施形態では、パーキンリガーゼを活性化する工程が1つ又は複数の腫瘍を抑制する。別の実施形態では、化合物は損傷したミトコンドリアを排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め、腫瘍の形質転換を低下させ及び/又は細胞のα−シヌクレインを軽減する。別の実施形態では、がんは、膠芽腫、小細胞肺癌、乳がん又は前立腺がんである。
【0022】
[22] 本発明の別の実施形態には、パーキンソン病の発症を処置する及び/又は低減させる方法が含まれる。パーキンソン病の発症を処置する及び/又は低減させるための特定の一実施形態には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し且つパーキンリガーゼの活性を誘導する化合物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程が含まれ、ここで、化合物はZnイオンと配位結合することができ、及び/又はシステイン中のチオール基と反応することができる。
【0023】
[23] 一部の実施形態では、パーキンリガーゼ活性化は、ユビキチンの共有結合により基質タンパク質を修飾するパーキンの能力によって規定されるような、ユビキチン化を変化させ、基質タンパク質は、パーキンそれ自身、又はミトフュージョン1若しくは2などの別のタンパク質、FBW7又はパーキンリガーゼの他の公開されている基質である。
【0024】
[24] 本発明の別の実施形態には、医薬製剤が含まれる。特定の一実施形態では、医薬製剤はパーキンリガーゼを活性化する。別の特定の実施形態では、医薬製剤は、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する化合物若しくはその塩の有効量及び薬学的に許容される担体を含むことができ、ここで、化合物又はその塩はZnイオンと配位結合することができ、及び/又はシステイン中のチオール基と反応することができる。別の特定の実施形態では、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群から選択される1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか、又は反応することができる。特定の一実施形態では、医薬組成物は固体、粉末、液体及びゲルからなる群から選択される製剤中に存する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】[25]N,N‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド、キレート剤化合物(AH001と特定又は表2の化合物76)が、活性部位反応型ユビキチンビニルスルフォンプローブでのパーキンリガーゼ反応を高めることを示す図である。
【
図2】[26]6−ベンジル−2,5−ジメチル−3−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−チオール、求電子剤及びキレート剤化合物(AH007と特定又は表2の化合物77)が、活性部位反応型ユビキチンビニルスルフォンプローブでのパーキンリガーゼ反応を高めることを示す図である。
【
図3】[27]化合物N,N‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド、キレート剤化合物(AH001)が、自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性を高めることを示す図である。
【
図4A】[28]pUBを伴うN‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド(AH001)が、自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性を相乗的に高め、低濃度のpUBによるパーキンの活性化を可能とすることを示す図である。
【
図4B】[28]pUBを伴うN‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド(AH001)が、自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性を相乗的に高め、低濃度のpUBによるパーキンの活性化を可能とすることを示す図である。
【
図5】[29]6−ベンジル−2,5−ジメチル−3−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−チオール、求電子剤化合物(AH007)が、自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性を高めることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[30] 刊行物、特許及び特許出願すべては、その中の図面及び付属書を含めた、各個々の刊行物、特許若しくは特許出願、図面又は付属書が具体的に且つ個々にあらゆる目的で全体として参照によって本明細書に組み入れられることが指示された場合と同じ程度に、あらゆる目的で全体として参照によって本明細書に組み入れられる。
【0027】
定義
[31] 薬学上許容される塩には、塩基として機能する活性化合物を無機酸又は有機酸と反応させて塩を、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、臭化水素酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、サリチル酸塩、マンデル酸塩、炭酸塩等を形成することによって得られるものが挙げられる。当業者であればさらに、酸付加塩を、いくつかの公知の方法のいずれかにより当該化合物を適当な無機酸又は有機酸と反応させることよって調製してもよいことを認識するであろう。
【0028】
[32] 「処置する」という用語は、対象における状態の少なくとも1つの症状を緩和すること、和らげること、遅延させること、低減させること、反転すること、改善すること又は管理することの1つ又は複数を意味する。「処置する」という用語はまた、発病(すなわち、状態の臨床症状に先立つ期間)を停止すること、遅延させること、又は状態を進行させる又は悪化させるリスクを低減させることの1つ又は複数も意味し得る。
【0029】
[33] 「有効量」は、ある状況、障害又は状態を処置するために患者に投与した際、そのような処置を達成するのに十分である、本発明に記載の製剤の量を意味する。「有効量」は、活性成分、状況、障害又は処置される状態及びその重症度、及び処置される哺乳類の年齢、体重、身体状態及び応答性によって異なるであろう。
【0030】
[34] 用量又は量に対して適用される「治療上有効な」という用語は、それを必要とする患者に投与した後、所望の臨床的利益を生じるのに十分な、化合物又は医薬製剤のその量を指す。
【0031】
[35] 本明細書で参照される重量パーセント(すなわち、「重量%」及び「wt.%」及びw/w)はすべて、特に指示されない限り、医薬組成物の総重量に対して測定されている。
【0032】
[36] 本明細書で使用されるとき、「実質的に」又は「実質的な」は、作用、特徴、特性、状況、構造、品目(item)又は結果の完全な又はほぼ完全な程度又は度合いを指す。例えば、「実質的に」内包されている物体は、物体が完全に内包されている又はほぼ完全に内包されていることのいずれかを意味する。絶対的な完全性からの偏差の正確な許容される度合いは、場合によっては、特定の状況に左右され得る。しかし、一般的にいえば、達成の近似とは、絶対的で且つ全体的な達成が得られた場合と同じ全体的な結果が得られるようにすることである。「実質的に」の使用は、作用、特徴、特性、状況、構造、品目又は結果の完全な又はほぼ完全な欠損を指す否定的な意味合いに使用される場合も同等に適用可能である。例えば、他の活性剤を「実質的に含まない」組成物は、他の活性剤を完全に欠いているか又は、他の活性剤を完全に欠いている場合と効果が同一であるように他の活性剤をほぼ完全に欠いている。言い換えれば、ある成分又は要素又は別の活性剤を「実質的に含まない」組成物は、測定可能なその効果がない限り、そのような品目をなお含有してもよい。
【0033】
[37] 本明細書で使用するとき、2つ以上のタンパク質/アミノ酸配列の「アライメント」は、www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/で入手可能である、アライメントプログラムClustalW2を使用して行われ得る。ペアワイズアライメントに対して次のデフォルトパラメータを使用することができる:タンパク質重み行列=Gonnet;ギャップ開始=10;ギャップ伸長=0.1。
【0034】
[38] 本明細書で使用する「ユビキチン−プロテアソーム経路系(UPS)」は、ユビキチン−プロテアソーム経路に関連し、酵母から哺乳動物までに保存され、真核細胞においてほとんどの短寿命のタンパク質を標的とした分解に必要である。標的としては、制御された細胞分裂のためにタイムリーな破壊が極めて重要な細胞周期調節タンパク質、並びに小胞体内で適切に折りたたむことができないタンパク質が挙げられる。ユビキチン修飾は、3種の酵素によって行われるATP依存性プロセスである。「ユビキチン活性化酵素」(E1)は、高度に保存された76個のアミノ酸のタンパク質であるユビキチンとチオエステル結合を形成する。この反応により、ユビキチンの「ユビキチン結合酵素」(E2)へのその後の結合が可能となり、続いてユビキチンのカルボキシ末端と基質タンパク質上のリジン残基の間のイソペプチド結合を形成する。後者の反応は、「ユビキチンリガーゼ」(E3)を必要とする。E3リガーゼは、単一サブユニット酵素又は多サブユニット酵素であることができる。場合によっては、ユビキチン結合ドメイン及び基質結合ドメインは、アダプタータンパク質又は淘汰によって結合させられる別々のポリペプチド上に存在する。多数のE3リガーゼは、それぞれが基質タンパク質のサブセットのみを修飾することができるという点において特異性をもたらす。さらなる特異性が、それに限定されないが、リン酸化を含めた基質タンパク質の翻訳後修飾によって実現される。モノユビキチン化の影響には、細胞内局在化における変化がある。しかし、ポリユビキチン鎖を生じる複数回のユビキチン化サイクルが、分解のためにタンパク質をプロテアソームに標的化するのに必要である。多サブユニット26Sプロテアソームは、ポリユビキチン化された基質を認識し、折りたたみを解いて、小ペプチドへと分解する。反応はプロテアソーム複合体の円筒状コア内で起こり、ペプチド結合加水分解において触媒求核剤としてコアトレオニン残基が用いられる。多ユビキチン鎖受容体の形態で、複合体のさらなる層が、ポリユビキチン化ステップと分解ステップとの間に介在する可能性があることが示された。これらの受容体は、ポリユビキチン化基質のサブセットと反応し、26Sプロテアソームによる基質の認識を助け、それによって基質の分解を促進する。この経路は、細胞恒常性においてのみならず、ヒト疾患においても重要である。ユビキチン/プロテアソーム依存性の分解が細胞分裂周期及び細胞増殖の制御において用いられることが多いことから、プロテアソーム阻害剤が潜在的ながん治療薬に発展することが期待されていることを、研究者らは見出していた。
【0035】
[39] ユビキチン−プロテアソーム系によるタンパク質分解は、細胞内タンパク質の非リソソームタンパク質分解の主要経路である。この系は、細胞周期の進行、分裂、発生及び分化、アポトーシス、細胞輸送の調節、並びに免疫応答及び炎症応答の調整などの、種々の基本的な細胞プロセスにおいて重要な役割を演じている。この系の中心的要素は標的タンパク質に対するユビキチンの共有結合による連結(covalent linkage)であり、次いで、このタンパク質は26Sプロテアソーム、すなわちアデノシン三リン酸依存性、多触媒性プロテアーゼによって認識される。この分解プロセスの標的の内に、損傷した、酸化した、又はミスフォールドしたタンパク質並びに多数の極めて重要な細胞機能を制御する調節タンパク質がある。このシステムの異常が、細胞恒常性の調節障害及び複数の疾患の発症を招く(Wangら, Cell Mol Immunol. 2006 Aug; 3(4):255-61)。
【0036】
[40] 本明細書で使用される「パーキンリガーゼ」又は「パーキン」は、ヒトにおいてPARK2遺伝子によってコードされるタンパク質に関連する(Kitada T, Asakawa S, Hattori N, Matsumine H, Yamamura Y, Minoshima S, Yokochi M, Mizuno Y, Shimizu N (1998年4月). 「Mutations in the parkin gene cause autosomal recessive juvenile parkinsonism」. Nature 392 (6676): 605-608. doi:10.1038/33416. PMID 9560156. Matsumine H, Yamamura Y, Hattori N, Kobayashi T, Kitada T, Yoritaka A, Mizuno Y (1998年4月). 「A microdeletion of D6S305 in a family of autosomal recessive juvenile parkinsonism (PARK2)」. Genomics 49 (1): 143-146. doi:10.1006/geno.1997.5196. PMID 9570960)。このタンパク質は、多重タンパク質のE3ユビキチンリガーゼ複合体の構成成分であり、この複合体は、分解のためのタンパク質標的化を媒介するユビキチン−プロテアソーム系の一部である。PARK2遺伝子における突然変異は、常染色体劣性若年性パーキンソン病(AR-JP)として公知の家族型のパーキンソン病を引き起こすことが知られている。
【0037】
[41] 本明細書で使用する「リガーゼ」は、2つ以上の化合物又は生体分子を、新しい化学結合でこれらを一緒に結合させることによって合体させることを触媒することができる酵素である。その2つのものの「ライゲーション」とは、より大きな化合物又は生体分子の1つに従属している小さな化学基の加水分解を通常伴っている反応であり、又はこの酵素は2つの化合物を一緒に連結させることを触媒し、例えば、C−O、C−S、C−N基などの合体を触媒する酵素である。ユビキチン−タンパク質(E3)リガーゼは、ユビキチン化に向けたタンパク質を選択する高度に多様な酵素の大きなファミリーである。
【0038】
[42] 「Ubリガーゼ」は、腫瘍学、炎症及び感染性疾患に関する病因に関与している。E3リガーゼに関してRING−between−RING(RBR)ファミリーに属するE3リガーゼは、標準的なRINGドメインと通常HECT E3リガーゼに限定されている触媒的システイン残基との双方を含み、「RING/HECTハイブリッド型」酵素と名付けられた。パーキンにおける変異は、パーキンソン病、がん及びマイコバクテリウム感染症に関係している。パーキンは、ミトコンドリアの完全性においてある役割を有する神経保護タンパク質と理解されている。ヒトの遺伝的データから、パーキンソン病(PD)の発病の機構としてパーキン活性の喪失の関与が示されている。
【0039】
[43] 本明細書で使用する「ジンクフィンガー(ZnF)ドメイン」は、機能活性を安定化させるために亜鉛イオンを配位結合させることを特徴とするタンパク質構造に関連する。ZnFは、UPSにおいてUbの結合、脱ユビキチン化酵素(DUB)、及びリガーゼ(E3)を安定化させる。
【0040】
[44] 本明細書で使用する「配位子」は、配位子の1つ又は複数の原子によって金属に結合し、キレート配位子と称されることが多い。2つの部位を介して結合する配位子は、2座として分類され、3つの部位を介して結合するリガンドは、3座として分類される。「かみ合い角度」とは、二座配位キレートの2つの結合の間の角度を指す。キレート配位子は、有機リンカーによってドナー基を連結することで通常は形成される。古典的な二座配位子はエチレンジアミンであるが、このエチレンジアミンは2つのアンモニア基とエチレン(−CH2CH2−)リンカーとの連結によってもたらされる。多座配位子の古典的な例は六座キレート化剤EDTAであるが、これは6つの部位を介して結合することができ、いくつかの金属を完全に包囲する。キレート系の結合親和性は、キレート角度又はかみ合い角度によって左右される。通常、多くの配位子は2個以上の原子上に孤立電子対を有するので、複数の部位を介して金属イオンと結合することが可能である。一部の配位子が、同一原子を介するが異なる数の孤立電子対で金属中心に結合することができる。金属配位子結合の結合順序は、金属配位子結合角度(M-X-R)によって部分的に識別することができる。この結合角度は、その角度が曲がっている程度に関してさらに論議もあるが、線形である又は曲がっていると称されることが多い。例えば、イオン形態にあるイミド配位子は、3つの孤立電子対を有する。1つの孤立電子対はシグマXドナーとして使用され、他の2つの孤立電子対はLタイプのパイドナーとして利用可能である。双方の孤立電子対がπ結合において使用されている場合、M−N−Rの形状は線形である。しかし、これらの孤立電子対の一方又は双方が非結合性である場合、M−N−R結合は曲がっており、そしてこの曲がりの程度は、π結合がいくつそこに存在し得るかを語っている。窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子などのいくつかのヘテロ原子が亜鉛と相互作用することがわかり、亜鉛とこれらのヘテロ原子との間の理想的な距離が決定された。カルボン酸塩は、一座配位相互作用及び二座配位相互作用の双方を介して亜鉛に結合したが、ヒドロキサメートは、主に二座配位様式で結合した。これらの結果は、標的タンパク質中の亜鉛と相互作用する可能性を有する新たな阻害剤の設計において助けとなる。事実上、あらゆる分子及びあらゆるイオンは、金属に対して配位子として働くことができる(又は金属「に配位結合」することができる)。一座配位子には、事実上すべての陰イオン及びすべての単純なルイス塩基が含まれる。したがって、ハロゲン化物及び擬ハロゲン化物は重要な陰イオン性配位子であり、一方、アンモニア、一酸化炭素、及び水は特に一般的な電荷中性配位子である。単純な有機化学種もまた、極めて一般的であり、それらはアニオン性で(RO
−及びRCO
2−)又は中性(R
2O、R
2S、R
3−xNH
x、及びR
3P)であり得る。多座配位子の錯体は、キレート錯体と呼ばれる。これらは一座配位子に由来する錯体よりも安定である傾向にある。この高められた安定性、キレート効果は通常エントロピーの影響が原因とされ、このことは、多数の配位子を単一の多座配位子によって置換するのに好都合である。キレート配位子は、中心的原子を少なくとも部分的に包囲し且つこれに結合している大きな環を形成するとき、中心的原子を大きな環の中心に残す。その多座性がリジッドであればあるほど、高ければ高いほど、この大環状錯体はより不活性となる。
【0041】
[45] 本明細書で使用する「キレート剤」は、キレート(金属原子又はイオンが、例えば、金属原子を含有するヘテロ環を形成するように、配位子上の2以上の点で配位子に結合している、配位結合化合物)を形成することによって化学活性を抑制する結合剤に関連する。
【0042】
[46] 本明細書で使用する「キレート化」は、イオン及び分子が金属イオンと結合する特定の方法に関連する。国際純正応用化学連合(IUPAC)に準拠すると、キレート化には、多座(多重結合)配位子と単一の中心的原子との間の2つ以上の別個の配位結合の形成又は存在が関与する。通常、これらの配位子は有機化合物であり、キーラント(chelant)、キレート剤(chelator)、キレート化剤(chelating agent)、又は封鎖剤と呼ばれる。
【0043】
[47] 本明細書で使用する「求電子剤」とは、電子が豊富な中心に引きつけられる種に関連する。化学において、求電子剤は電子に引きつけられる試薬である。求電子剤は、求核剤に結合するために電子対を受け入れることによって化学反応に参加する。求電子剤は電子を受容するので、ルイス酸である。ほとんどの求電子剤は、正に荷電しているか、部分的に正の電荷を保有する原子を有するか、又は電子の八重項を有さない原子を有する。
【0044】
[48] 以下の説明には、本発明を理解する上で有用であり得る情報が含まれている。本明細書で提供されている情報のいずれもが先行技術であること又は現在請求されている発明に関連していること、あるいは具体的又は暗示的に参照されている出版物いずれもが先行技術であることを認めるものではない。
【0045】
[49] ユビキチン−タンパク質(E3)リガーゼは、ユビキチン化に向けて種々のタンパク質を選択する酵素の大きなファミリーである。「Ubリガーゼ」と呼ばれる、これらのユビキチンリガーゼは、それらに限定されないが、がん、炎症及び感染性疾患を含めた、種々の疾患及び状態においてある役割を有することが知られている。
【0046】
[50] 1つの特定のUbリガーゼはパーキンリガーゼである。パーキンリガーゼは、多重タンパク質の「E3」ユビキチンリガーゼ複合体の構成成分であり、この複合体は、分解のためタンパク質の標的化を媒介するユビキチン−プロテアソーム系の一部である。パーキンリガーゼの特定の機能は不明であるが、パーキンリガーゼにおける変異は、パーキンソン病、がん及びマイコバクテリウム感染症などの種々の疾患に関係している。したがって、パーキンリガーゼは治療介入向けの魅力的な目標である。
【0047】
[51] さらに、当分野で公知のリガーゼを調節するための種々の公知の方法が存在する。多くのリガーゼ、特にユビキチン−プロテアソーム経路系(UPS)に関与するリガーゼは、そのリガーゼ中の重要なタンパク質結合領域を安定化させるジンクフィンガー(ZnF)ドメインを有することが知られている。
【0048】
[52] ZnFドメインは亜鉛イオンを配位結合させ、この配位結合はタンパク質の機能的活性を安定化させる。ZnFドメインを備えるタンパク質によってもたらされる機能的活性として、ユビキチンの認識、DNAの調節、例えば転写及び修復、及び細胞レドックスセンサーとしての作用などの重要な細胞シグナル伝達経路の調節を挙げることができる。ZnFドメインへ亜鉛が結合することは、又はただ単に亜鉛がZnFドメインといかに相互作用するかを調節することは、UPSに関与しているリガーゼにとって必須である。
【0049】
[53] パーキンリガーゼは1つ又は複数のZnFドメインを有することが知られている。本発明はパーキンリガーゼ中のZnFドメインを調整するための2つの異なる方法に焦点を当てている。本発明の一つの戦略は、ZnFドメインに結合し、したがって亜鉛の結合を許さない、又はZnFドメインからZn又はZn
2+などの亜鉛の解離を引き起こすキレート化化合物を使用することを含む。
【0050】
[54] 本発明の別の戦略は、ZnFドメイン中のシステインアミノ酸残基と結合するか又はそれと反応する化合物を使用することを含む。1つ又は複数のシステイン残基(ヒスチジン残基の支援を伴う場合もある)が、亜鉛イオンへの結合のために及び/又はそれに配位結合するために、ZnFドメイン中に必須である。亜鉛イオン(通常はZn
2+)は複数のシステイン残基又はヒスチジン残基と配位結合することができる。ドメイン中に存在するシステイン残基が多ければ多いほど、ZnFドメインにはより融通性がある。パーキンリガーゼなどのリガーゼは、そのZnFドメイン中に亜鉛と配位結合している複数のシステイン残基を有すると考えられている。パーキンリガーゼのZnFドメインにおけるこの融通性は、ドメインが可逆的であることを可能にすると考えられ、したがってパーキンリガーゼを調節するための考えられる1つの機構である。
【0051】
[55] したがって、本発明は、求電子性の特性、キレート化特性又は求電子性特性とキレート化特性との双方を持つ1つ又は複数の薬剤又は1つ又は複数の化合物の使用に関し、このような薬剤又は化合物は、亜鉛イオン及び/又はパーキンリガーゼ中のシステイン残基と相互作用することができ、したがってパーキンリガーゼの活性を調節する。具体的には、パーキンリガーゼのZnFドメインの少なくとも1つにおいて亜鉛イオンが配位結合するのを許さないことで、その活性が誘導されると考えられる。したがって、本発明は、Znのキレート化に続いてZnFドメインからのZnを除去することによって、又はZnを所定の位置に保持しているシステインアミノ酸での求電子攻撃を介してパーキンリガーゼを活性化する方法を対象とする。
【0052】
[56] したがって、本発明の一実施形態では、パーキンリガーゼを活性化する方法には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する1つ又は複数の化合物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程が含まれる。別の実施形態において、パーキンリガーゼを活性化する方法には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する2種以上の化合物を対象に投与する工程が含まれる。
【0053】
[57] 特定の一実施形態では、本発明の化合物は、求電子剤又はキレート剤とすることができる。別の実施形態では、本発明の化合物は、求電子剤及びキレート剤の双方として機能することができる。例えば、本発明の化合物は、ある官能基がキレート化特性を有する複数の官能基、及び求電子特性を有するある官能基を含むことができる。
【0054】
[58] 別の特定の実施形態では、化合物は表1及び表2の化合物又はそれらの塩若しくはエステルからなる群の1つ又は複数から選択される。特定の理論に制限されないが、表1又は表2の化合物の少なくとも一部はキレート剤、求電子剤又は双方であり得ると考えられる。例えば、表2からの化合物76及び化合物97はキレート剤として働くが、表2の化合物113はチオール反応性求電子剤として働くと考えられる。別の例では、表1及び表2からの化合物は求電子剤及び求核剤として双方として働くことができる。例えば、表2の化合物91及び化合物107は、双方ともキレート剤であるが、チオール反応性求電子剤としてもおそらく働くことができる。したがって、別の特定の実施形態では、本発明の化合物は、表1及び表2の化合物又はそれらの塩若しくはエステルからなる群の1つ又は複数から選択される、求電子剤、キレート剤又は求電子剤及びキレート剤の双方である。
【0055】
[59] 別の実施形態では、表1及び表2の化合物又はそれらの塩若しくはエステルは、パーキンリガーゼと結合し且つこれを活性化する。例えば、化合物N,N‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド(AH001)、キレート剤化合物及び6−ベンジル−2,5−ジメチル−3−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−チオール(AH007)、求核剤及びキレート剤化合物の双方が独立して、活性部位反応型ユビキチンビニルスルフォンプローブでのパーキンリガーゼ反応を増加させる。実施例2〜3を参照されたい。したがって、キレート剤及び/又は求電子剤の双方が、パーキンリガーゼと結合し且つこれを活性化することができる。
【0056】
[60] 別の実施形態では、化合物は、2−(4−ベンジルピペラジン−1−イル)−N−[(2−ヒドロキシ−3−プロプ−2−エニル−フェニル)メチリデンアミノ]アセトアミド(又はPac-1と呼ぶ)又はその塩若しくはエステルとすることができる。特定の理論に制限されないが、Pac−1の構造は、下の表2で化合物114として提供されているが、キレート剤であると考えられ、パーキンリガーゼの反応を高める能力も有し得る。別の実施形態では、Pac−1、又はその塩は、また、求電子剤であり得るし、及び/又はキレート剤及び求核剤の双方であり得る。
【0057】
[61] 別の実施形態では、化合物はPac−1の誘導体又は類似体とすることができる。特定の一実施形態では、化合物は、それら開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT出願公開第WO2010/091382号、WO2013/131089号、WO2013/124407号、WO2014/022858号、米国出願公開第US2015/0210659号、US2015/0231132号、US2014/0073609号、US20150017264号、US2015/0099759号、米国特許第8,916,705号、米国特許第9,102,661号、米国特許第8,592,584号、及び米国特許第8,778,945号、に記載の化合物とすることができる。
【0058】
[62] 特定の一例では、活性部位反応型プローブアッセイ及び質量分光分析によって、表1及び/又は表2の一部の候補化合物がヒトパーキンリガーゼ中の複数のシステイン残基と結合又は反応することができることが示されている。例えば、質量分光分析によって、AH007は、パーキンリガーゼの少なくともシステイン残基59(C59)及びシステイン残基377(C377)に結合することが示されている。
【0059】
[63] したがって、特定の一実施形態では、パーキンリガーゼを活性化する方法には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する1つ又は複数の化合物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程が含まれる。特定の一実施形態では、1つ又は複数の化合物は、表1及び/又は表2から選択され、又はそれらの塩若しくはエステルである。別の実施形態では、化合物は、キレート剤であっても、求電子剤であっても、キレート剤及び求電子剤の双方であってもよい。
【0060】
[64] 別の実施形態では、1つ又は複数の化合物は、Znイオンと配位結合することができ、及び/又は1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができる。特定の一実施形態では、Znイオンは、Zn
+イオンでもZn
2+イオンでもいずれでもよい。別の実施形態では、Znイオンに配位結合することができる化合物は、一座配位子、二座配位子、又は三座配位子である。
【0061】
[65] 別の実施形態では、化合物は、2つ以上のシステイン残基におけるチオール基と結合することができ、及び/又は反応することができる。別の実施形態では、化合物は、2つのシステイン残基におけるチオール基と結合することができ、及び/又は反応することができる。別の実施形態では、化合物は、3つのシステイン残基におけるチオール基と結合することができ、及び/又は反応することができる。別の実施形態では、化合物は、4つのシステイン残基におけるチオール基と結合することができ、及び/又は反応することができる。別の実施形態では、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのアミノ酸141〜225、アミノ酸238〜293、アミノ酸313〜377、及びアミノ酸418〜449からなる群から選択される1つ又は複数のドメイン中の1つ又は複数のシステイン残基と結合することができ、及び/又は反応することができる。http://www.uniprot.org/uniprot/O60260を参照されたい。
【0062】
[66] 別の特定の実施形態では、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのC182、C258及びC377からなる群から選択される1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができる。別の特定の実施形態では、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群から選択される1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができる。特定の一実施形態では、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのC377と反応することができる。別の特定の実施形態では、化合物はAH007である。
【0063】
[67] 別の実施形態では、化合物は、パーキンリガーゼ、パーキンリガーゼ誘導体、又はパーキンリガーゼ相同体の1つ又は複数の残基から選択される1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができ、このようなシステイン残基はヒトパーキンリガーゼのC182、C258及び/又はC377に対応する又はそれらとアライメントをとる。別の実施形態では、化合物は、パーキンリガーゼ、パーキンリガーゼ誘導体、又はパーキンリガーゼ相同体の1つ又は複数の残基から選択される1つ又は複数のシステイン残基と結合することができるか又は反応することができ、このようなシステイン残基はヒトパーキンリガーゼのC59及び/又はC377に対応する又はそれらとアライメントをとる。別の特定の実施形態では、化合物はAH007である。
【0064】
[68] IBRドメインは、パーキン活性の調節において重要な役割を演じることができるとも考えられている。R0ドメインは、上記のように、パーキンリガーゼを調節するための1つの考えられる機構に関与する可能性のある少なくとも1つのZnFドメインを含むと考えられている。したがって、特定の一実施形態では、IBRドメイン中に存在する少なくとも1つのZnFドメイン(アミノ酸328〜377)の構造は、それを必要とする対象に化合物を投与することによって実質的に破壊することができる。別の実施形態では、表1及び/又は表2から選択される1つ又は複数の化合物、又はそれらの塩若しくはエステルは、IBRドメイン(アミノ酸328〜377)中に存在する少なくとも1つのZnFドメインの構造を実質的に破壊することができる。
【0065】
[69] 別の実施形態では、化合物は、ZnFドメイン中又は近傍の任意のヒスチジン残基を含めたシステイン残基と結合することができ、及び/又は反応することができる。
【0066】
[70] 別の実施形態において、化合物は、パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガー(又はZnFドメイン)の構造を実質的に破壊することができる。別の実施形態において、本発明の化合物は、パーキンリガーゼ中の1つ又は複数のZnFドメインを破壊することができる。
【0067】
[71] Rileyらは、Zn配位結合残基(表3(配列番号1)に提供され、且つhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/ nuccore/NM_004562.2において特定されるアミノ酸配列)を持つ複数の機能領域を含む、465個のアミノ酸のヒトパーキンリガーゼについて記載している。Rileyらは、R0、R1、IBR及びR2と命名された4つのドメインについて論じている。以前、R0、R1及びR2は、RINGドメインと命名されていた。しかし、Rileyらは、R0、IBR及びR2ドメインが実際の又は従前のRINGドメインであるかどうか問題にしている:すなわち、「R0は新規ドメイン構造であるが、E3 RINGドメインに比べZnフィンガードメインにより類似している」。Rileyらはまた、IBRドメインもR2ドメインもどちらも、RINGドメインに通常伴うクロスブレース構造を有さないので、標準的なRINGドメインモチーフに似ていないことも記述している。さらに、R0、IBR及びR2のドメインの分析からは、これらの亜鉛中心に脆弱性がある可能性が示されている。したがって、R0、IBR及びR2ドメインは、パーキンリガーゼの活性を調節するための理想的なドメイン候補となりそうである。R0、IBR及びR2ドメインとは、それぞれヒトパーキンリガーゼのアミノ酸141〜216、アミノ酸328〜377及びアミノ酸415〜465をいう。
【0068】
[72] したがって、特定の一実施形態では、実質的に破壊され得る少なくとも1つのジンクフィンガーは、ヒトパーキンリガーゼのアミノ酸141〜216、アミノ酸328〜377、及びアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のドメインに対応するか又はそれらとアライメントをとる。別の特定の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガー由来のアミノ酸は、ヒトパーキンリガーゼ由来のR0、IBR及びR2ドメインの1つ又は複数とのアライメントにおいて重複することができる。
【0069】
[73] 別の特定の実施形態では、実質的に破壊され得る少なくとも1つのジンクフィンガーは、ヒトパーキンリガーゼのアミノ酸141〜225、アミノ酸238〜293、アミノ酸313〜377、及びアミノ酸418〜449からなる群から選択される1つ又は複数のドメインに対応するか、又はそれとアライメントをとる。http://www.uniprot.org/uniprot/O60260を参照されたい。
【0070】
[74] 特定の一実施形態では、パーキンリガーゼ中のジンクフィンガーの少なくとも1つは、1、2、3又は4個のシステイン残基を含む。別の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーの破壊は、パーキンリガーゼの活性を誘導する。別の実施形態では、パーキンリガーゼ中のジンクフィンガーの少なくとも1つは、ヒトパーキンリガーゼのアミノ酸141〜225、アミノ酸238〜293、アミノ酸313〜377、及びアミノ酸418〜449由来の1、2、3又は4個のシステイン残基を含む。例えば、特定の一実施形態において、化合物は、ヒトパーキンリガーゼのC182、C258及びC377からなる群から選択される1つ又は複数のシステイン残基に結合すること又は反応することによって、1つ又は複数のジンクフィンガーと反応し、したがって破壊することができる。
【0071】
[75] 本発明の方法にはまた、1つ又は複数の化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与することによってパーキンリガーゼの自己ユビキチン化を活性化させる工程が含まれる。特定の一実施形態では、1つ又は複数の化合物は、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する。別の例では、表1及び/又は表2の化合物を使用して、パーキンリガーゼの自己ユビキチン化を活性化することができる。別の実施形態では、表1及び/又は表2の化合物を他の化合物に加えて使用して、パーキンリガーゼの自己ユビキチン化を活性化してもよい。例えば、パーキンの内因性細胞レギュレーターであるリン酸化ユビキチン(pUB)をパーキンリガーゼに添加してもよく、これによってパーキンリガーゼ及びその自己ユビキチン化を活性化することができる。一実施形態では、パーキンリガーゼを活性化する上でホスホユビキチン(pUB)と相乗的に作用する、表1及び/又は表2の1つ又は複数の化合物又はそれらの塩及びエステルを、それを必要とする対象に投与することができる。実施例5を参照されたい。別の実施形態では、1つ又は複数の化合物をpUBとともに投与して、パーキンリガーゼの活性化及び/又はその自己ユビキチン化を相乗的に高めることができる。別の実施形態では、化合物は、キレート剤及び/又は求電子剤であってもよい。特定の一実施形態では、1つ又は複数の化合物は、表1及び/又は表2から選択され、又はそれらの塩若しくはエステルである。
【0072】
[76] 別の特定の実施形態では、パーキンリガーゼを活性化させることによって、アルツハイマー認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、PSP、タウオパチー、びまん性レビー小体病、レビィ小体痴呆、α−シヌクレインの異常蓄積を特徴とする任意の障害、老化プロセスの障害、脳卒中、細菌感染症、ウイルス感染症、ミトコンドリア関連疾患、精神遅滞、難聴、盲目、糖尿病、肥満、心血管疾患、多発性硬化症、シェーグレン症候群、ループス、偽落屑緑内障を含めた緑内障、レーバー遺伝性視神経萎縮症、及びリューマチ性関節炎からなる群から選択される1つ又は複数の疾患又は病気の発症を処置するか又は低減させる。
【0073】
[77] 特定の一実施形態では、細菌感染症はマイコバクテリウム感染症である。別の特定の実施形態では、ウイルス感染症は、HIV、B型肝炎感染症又はC型肝炎感染症である。本発明の別の実施形態には、がんの発症を処置する及び/又は低減させる方法が含まれ、具体的には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し且つパーキンリガーゼの活性を誘導する1つ又は複数の化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する工程が含まれる。特定の一実施形態では、活性化されたパーキンリガーゼは、1つ又は複数の腫瘍の増殖を抑制し、及び/又は1つ又は複数の腫瘍の転移を防止する。
【0074】
[78] 別の実施形態では、がんは、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連がん、カポジ肉腫、リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、小児非定型奇形腫/骨芽細胞腫瘍、基底細胞癌、皮膚がん(非メラノーマ)、小児胆汁管がん、肝外膀胱がん、骨がん、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、カルチノイド腫瘍、未知の原発性胃腸癌、心臓の(心臓)腫瘍、リンパ腫、原発性の子宮頸がん、小児がん、脊索腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性新生物結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌、子宮内膜がん、上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽腫、骨の繊維性組織球腫、悪性、及び骨肉腫、胆嚢がん、胃の(胃)がん、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、性腺外がん、卵巣がん、精巣がん、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、脳幹がん、毛状細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん、腎細胞がん、ウィルムス腫瘍及び他の小児腎腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭がん、白血病、慢性リンパ球性がん、慢性骨髄性がん、毛状細胞がん、口唇がん及び口腔がん、肝がん(原発性)、非浸潤性小葉癌(LCIS)、肺がん、非小細胞性がん、小細胞性がん、リンパ腫、皮膚T細胞(菌状息肉腫及びセザリー症候群)、ホジキンがん、非ホジキンがん、マクログロブリン血症、ワルデンストローム、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、黒色腫、眼球内(眼)がん、メルケル細胞癌、中皮腫、悪性、原発不明の転移性扁平頸部がん、NUT遺伝子関連正中管癌、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、骨髄性白血病、慢性、骨髄球性白血病、急性、骨髄腫多発性、慢性骨髄増殖性腫瘍、鼻腔及び副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞性肺がん、口腔がん、口腔内がん、唇及び中咽頭がん、骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫、上皮がん、低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、ユーイングがん、カポジがん、骨肉腫(骨がん)、軟組織がん、子宮がん、セザリー症候群、皮膚がん、小児期黒色腫、メルケル細胞癌、非黒色腫、小細胞性肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞癌、皮膚がん(非黒色腫)、原発不明の小児期扁平上皮頸部がん、転移性がん、胃(胃の)がん、T細胞リンパ腫、皮膚がん、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行上皮がん、原発不明の小児期の癌、小児期の珍しいがん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、及び婦人科のがんからなる群の1つ又は複数から選択することができる。
【0075】
[79] 特定の一実施形態では、がんは、膠芽腫、小細胞肺癌、乳がん又は前立腺がんである。別の実施形態では、パーキンリガーゼの投与が対象における1つ又は複数の腫瘍を抑制する。
【0076】
[80] 別の実施形態では、化合物は損傷したミトコンドリアを排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め、腫瘍の形質転換を低下させ及び/又は細胞のアルファ−シヌクレインを軽減する。
【0077】
[81] 別の実施形態では、本発明の方法には、具体的には、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し且つパーキンリガーゼの活性を誘導する1つ又は複数の化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する工程によって、パーキンソン病の発症を処置する及び/又は低減させる工程が含まれ、ここで、化合物はZnイオンと配位結合することができ、及び/又はシステイン中のチオール基と反応することができる。別の実施形態では、1つ又は複数の化合物は、損傷したミトコンドリアを排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め及び/又は細胞のアルファ−シヌクレインを軽減する。「Somatic Mutations of the Parkinson‘s disease−associated gene PARK2 in glioblastoma and other human malignancies」(Nature Genetics Jan 2010 42(1)77-82)。
【0078】
[82] 別の実施形態では、パーキンリガーゼ活性化はユビキチン化を変化させる。具体的には、ユビキチン化の改変は、ユビキチンの共有結合により基質タンパク質を修飾するパーキンの能力によって引き起こされるが、基質タンパク質はパーキンそれ自身であり、又はミトフュージョン1若しくは2などの別のタンパク質、FBW7又はパーキンリガーゼの他の公開されている基質である。
【0079】
[83] 特定の一実施形態では、本発明の方法には、がんの発症を処置する及び/又は低減させる工程が含まれ、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し且つパーキンリガーゼの活性を誘導する化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、ここで、化合物は亜鉛イオンと配位結合することができ、及び/又はシステインと結合又は反応することができる。特定の一実施形態では、化合物は表1若しくは表2由来であり又はその塩若しくはエステルである。特定の一実施形態では、パーキンリガーゼは、1つ又は複数の腫瘍の増殖を抑制し、及び/又は1つ又は複数の腫瘍の転移を防止する。別の実施形態では、化合物は、損傷したミトコンドリアを排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め、腫瘍の形質転換を低下させ及び細胞のアルファ−シヌクレインを軽減する。別の実施形態では、がんは、膠芽腫、小細胞肺癌、乳がん又は前立腺がんである。
【0080】
[84] 別の実施形態では、がんの発症を処置する及び/又は低減させるための化合物は、一座配位子、二座配位子、又は三座配位子としてZnイオンに配位結合することができる。別の実施形態では、がんの発症を処置する及び/又は低減させるための化合物は、パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を破壊する実質的にZnイオンに配位結合することができる。別の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基は、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸ドメインに対応するか又はこれらとアライメントをとる。別の実施形態では、化合物は、IBRドメイン(アミノ酸328〜377)中に存在する少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。別の実施形態では、ジンクフィンガーは4つのシステイン残基を含む。別の実施形態では、パーキンリガーゼ活性化はユビキチン化を変化させる。別の実施形態では、化合物はシステインのチオール基と結合するか又は反応する。別の実施形態では、システインは、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群の1つ又は複数から選択される。別の実施形態では、システインはヒトパーキンリガーゼのC377である。別の実施形態では、化合物はAH001及び/又はAH007である。
【0081】
[85] 別の実施形態では、がんの発症を処置する及び/又は低減させるための化合物は、アルキル化剤、酸化剤、ミカエル受容体、別の不飽和構造物である、及び/又はジスルフィドを有する。特定の一実施形態では、この化合物はまた、パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。別の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基は、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸ドメインに対応するか又はこれらとアライメントをとる。別の実施形態では、ジンクフィンガーは4つのシステイン残基を含む。
【0082】
[86] 特定の一実施形態では、本発明の方法には、パーキンソン病の発症を処置する及び/又は低減させる工程が含まれ、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊し且つパーキンリガーゼの活性を誘導する化合物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、ここで、化合物は亜鉛イオンと配位結合することができ、及び/又はシステインと結合又は反応することができる。特定の一実施形態では、化合物は表1若しくは表2由来であり又はその塩若しくはエステルである。特定の一実施形態では、化合物は、損傷したミトコンドリアを排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め及び/又は細胞のアルファ−シヌクレインを軽減する。別の実施形態では、亜鉛イオンに配位結合することができる化合物は、一座配位子、二座配位子、又は三座配位子である。別の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基は、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸ドメインに対応するか又はこれらとアライメントをとる。別の実施形態では、化合物は、IBRドメイン(アミノ酸328〜377)中に存在する少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。別の実施形態では、ジンクフィンガーは4つシステイン残基を含む。別の実施形態では、パーキンリガーゼ活性化はユビキチン化を変化させる。別の実施形態では、化合物はシステインのチオール基と結合するか又は反応する。別の実施形態では、システインは、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群の1つ又は複数から選択される。別の実施形態では、システインはヒトパーキンリガーゼのC377である。別の実施形態では、化合物はAH001及び/又はAH007である。
【0083】
[87] 別の実施形態では、パーキンリガーゼ活性化はユビキチン化を変化させ、ここで、ユビキチン化の改変は、ユビキチンの共有結合により基質タンパク質を修飾するパーキンの能力によって引き起こされるが、基質タンパク質はパーキンそれ自身であり、又はミトフュージョン1若しくは2などの別のタンパク質、FBW7又はパーキンリガーゼの他の公開されている基質である。特定の一実施形態では、化合物がパーキンリガーゼの活性化を誘導する。別の実施形態では、化合物は表1若しくは表2由来であり又はその塩若しくはエステルである。別の実施形態では、化合物は、アルキル化剤、酸化剤、ミカエル受容体、別の不飽和構造物である、及び/又はジスルフィドを有する。別の実施形態では、化合物は、パーキンリガーゼ中の少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。別の実施形態では、少なくとも1つのジンクフィンガーのアミノ酸残基は、ヒトパーキンリガーゼのR0のアミノ酸141〜216、IBRのアミノ酸328〜377、及びR2のアミノ酸415〜465からなる群から選択される1つ又は複数のアミノ酸ドメインに対応するか又はこれらとアライメントをとる。別の実施形態では、化合物は、IBRドメイン(アミノ酸328〜377)中に存在する少なくとも1つのジンクフィンガーの構造を実質的に破壊する。別の実施形態では、ジンクフィンガーは4つのシステイン残基を含む。別の実施形態では、パーキンリガーゼ活性化はユビキチン化を変化させる。別の実施形態では、化合物はシステインのチオール基と結合するか又は反応する。別の実施形態では、システインは、ヒトパーキンリガーゼのC59及びC377からなる群の1つ又は複数から選択される。別の実施形態では、システインはヒトパーキンリガーゼのC377である。別の実施形態では、化合物はAH001及び/又はAH007である。
【0084】
[88] タンパク質は、細胞の構造的及び生化学的要件を満たすように構築され、一方、単に破壊及び空間的な管理だけではなく、より多くの目的に作用する高度に調節されたプロセスにおいても分解される。タンパク質は、そのN末端に存在するアミノ酸の性質によって決定される、様々な半減期を有する。一部は長寿命となり、一方、他方は速やかに分解されてしまう。タンパク質分解は、細胞がミスフォールドした又は損傷したタンパク質を廃棄することを可能とするとともに、細胞周期に関与するタンパク質などの、細胞内の必須タンパク質の濃度を微調整することも可能とする。このような迅速で、高度に特異的な分解は、標的タンパク質に1つ又は複数のユビキチン分子を付加することによって実現されることができる。このプロセスはユビキチン化と呼ばれている。
【0085】
[89] ユビキチン化は、細胞の生存及び分化並びに自然免疫及び適応免疫を含めた、多血症の生理学的プロセスにとって極めて重要である。近年、シグナル伝達経路におけるユビキチンの分子作用、及びユビキチン系が改変すると異なるヒト疾患がどのように発症するのかを理解するのに、かなりの進歩が成し遂げられた。ユビキチン化が、がん、メタボリックシンドローム、神経変性疾患、自己免疫、炎症性障害、感染症及び筋ジストロフィーの発病及び進行においてある役割を演じていることがわかってきた(Popovicら Nature Medicine 20, 1242-1253 (2014))。
【0086】
[90] 本発明の一部の実施形態は、それらに限定されないが、神経膠腫(オリゴデンログリオーマ(oligodenrogliomas))、混合神経膠腫及び神経膠芽細胞腫)、肺がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がんなどの固形癌、及び腫瘍におけるウォーバーグ効果(ウォーバーグ効果を防ぐパーキン活性の回復)に伴う疾患又は障害の1つ又は複数の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法に関する。ヒトの遺伝的及び病理学データは、価値の高い目標としてパーキンタンパク質を支持している。十分な活性化パーキンがない場合、次いでドーパミンニューロンの細胞死と損失とが起こる(「Familial Parkinson Disease Gene Product, Parkin, Is a Ubiquitin-Protein Ligase」 Nature Genetics 25, 302-305、2000年7月1日)。
【0087】
[91] 本発明のさらなる実施形態は、それらに限定されないが、アルツハイマー認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、PSP、タウオパチー、びまん性レビー小体病、レビィ小体痴呆、α−シヌクレインの異常蓄積を特徴とする任意の障害、老化プロセスの障害、脳卒中を含む神経疾患又は神経障害に伴う1つ又は複数の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法に関する。
【0088】
[92] 本発明の他の実施形態は、それらに限定されないが、精神遅滞、難聴、盲目、糖尿病、肥満、心血管疾患、並びに多発性硬化症、シェーグレン症候群、ループス、偽落屑緑内障を含めた緑内障、レーバー遺伝性視神経萎縮症、リューマチ性関節炎などの自己免疫疾患に伴う1つ又は複数の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法に関する。
【0089】
[93] 本発明による本発明のさらなる実施形態は、それらに限定されないが、以下のミトコンドリア関連疾患又はカプセルに伴う1つ又は複数の症状を処置する、予防する、又は寛解させる方法に関する:
・ アルパース病
・ バース症候群/LIC(致命的な乳児性心筋症)
・ β酸化欠陥
・ カルニチン−アシル−カルニチン欠損症
・ カルニチン欠損症
・ クレアチン欠損症症候群
・ コエンザイムQ10欠損症
・ 複合体I欠損症
・ 複合体II欠損症
・ 複合体III欠損症
・ 複合体IV欠損症/COX欠損症
・ 複合体V欠損症
・ CPEO
・ CPT I欠損症
・ CPT II欠損症
・ KSS
・ 乳酸アシドーシス
・ LBSL−白質ジストロフィー
・ LCAD
・ LCHAD
・ リー病又は症候群
・ ルフト病
・ MAD/グルタル酸尿症II型
・ MCAD
・ MELAS
・ MERRF
・ MIRAS
・ ミトコンドリア細胞症
・ ミトコンドリアDNA欠失
・ ミトコンドリア脳症
・ ミトコンドリアミオパシー
・ MNGIE
・ NARP
・ ピアソン症候群
・ ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症
・ ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症
・ POLG突然変異体
・ 呼吸鎖
・ SCAD
・ SCHAD
・ VLCAD。
【0090】
[94] パーキン活性の上昇は、損傷したミトコンドリア(赤色)を排除し、細胞ストレス時に細胞生存率を高め、腫瘍の形質転換を低下させ及び細胞のα−シヌクレインを軽減する。パーキンから亜鉛を脱離させる、多重で多様なパーキン活性化化合物が同定された。ZnFのたたみこみがほどかれた後に活性化することは他の公知のZnFタンパク質に類似している。
【0091】
[95] 本発明にはまた、対象においてパーキンリガーゼを活性化する医薬組成物も含まれる。特定の一実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する1つ又は複数の化合物又はそれらの塩を含む。特定の一実施形態では、1つ又は複数の化合物又はそれらの塩は、Znイオンと配位結合することができ、及び/又はシステイン中の少なくとも1つのチオール基と反応することができる。特定の一実施形態では、医薬組成物は表1及び表2の化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物を含み得る。
【0092】
[96] 別の実施形態では、本発明における化合物、方法及び医薬組成物は次の薬物種の1つ又は複数に由来し得る:8−ヒドロキシキノリン;アルファ−ヒドロキシケトン;アミノメチルベンゾイミダゾール;アミノメチルインドール;バルビツレート;ベンゾイソチアゾロン、カルボキシレート、ジチオビスベンズアミド、ジチオカルバメート、ホルムアミド、ヒドラジド、ヒドロキサメート、ヒドロキシピリジノン/ヒドロキシピラノン、ヒドロキシスルホンアミド、イミダゾール、ケトン水和物、N−アシルオルト−フェニレンジアミン、N−ヒドロキシ尿素、O−置換ホスファメート、ホスファメート、ホスホン、スルファメート、スルファミド、スルホジイミン、スルホンアミド、チアジアジン、チアジアゾロチオネン、及びチオール。例えば、表1の以下のリストは代表的であるが、本発明において使用し得る可能な化合物の網羅的リストではない。
【0131】
[97] 本発明はまた、少なくとも1つのパーキンリガーゼジンクフィンガーを破壊する薬剤の有効用量を含む、対象においてパーキンリガーゼを活性化するための医薬製剤にも関し、ここで、薬剤若しくは化合物は亜鉛イオンを配位結合することができ、又は薬剤若しくは化合物はシステイン中のチオール基と反応することができる。
【0132】
[98] 本発明のさらなる実施形態は、薬学的に許容される賦形剤又はアジュバントをさらに含む医薬製剤を対象とする。
【0133】
[99] 本発明の方法には、対象への組成物の投与に関して臨床的に許容される任意の経路が含まれる。種々の様態では、投与の経路は全身性であり、例えば経口又は注射による。薬剤若しくは化合物、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは誘導体は、経口的に、鼻腔内に、経皮的に、肺に、吸入的に、頬粘膜に、舌下に、腹腔内に、皮下に、筋内に、静脈内に、直腸に、胸膜内に、髄腔内に、門脈内に、及び非経口的に投与される。代替的に又は加えて、投与の経路は局所的であり、例えば、局部的、腫瘍内及び腫瘍周辺である。一部の実施形態では、化合物は経口投与される。
【0134】
[100] 他の実施形態では、本明細書に開示の薬剤は静脈内経路で投与される。さらなる実施形態では、非経口投与はボーラスで又は注入によって供給されてもよい。
【0135】
[101] 組成物を投与する方法は、一部では、原因及び/又は部位に依存する。当業者であれば投与についてある特定の経路の利点を理解するであろう。
【0136】
[102] 方法には、薬剤又は化合物(又は薬剤又は化合物を含む組成物)の有効量、例えば、処置すべき状態、例えば腫瘍学的障害及び神経学的障害の症状を、全体的に又は一部、緩和する、寛解する、又は予防するのに有効な量を投与して、所望の生物学的応答を達成する工程が含まれる。
【0137】
[103] 種々の態様では、投与された、表1及び/又は表2に示されている構造式のいずれか1つの化合物、又はその塩若しくはエステルの量は、約0.001mg/kg〜約100mg/kg体重である(例えば、約0.01mg/kg〜約10mg/kg又は約0.1mg/kg〜約5mg/kg)。
【0138】
[104] 薬学的に許容される混合物中の開示された化合物の濃度は、投与すべき化合物の用量、用いる化合物の薬力学特性、及び投与の経路を含めて、複数の因子に依存して変動するであろう。薬剤は、単一用量又は繰返し用量で投与することができる。本発明の化合物を活用する投与計画は患者のタイプ、人種、年齢、体重、性別及び医療状態;処置される状態の重篤度;投与経路;患者の腎臓及び肝臓の機能;及び使用される特定の化合物又はその塩を含む種々の因子に従い選択される。処置薬は、患者の総合的な健康状態、並びに選択された化合物の剤形及び投与経路を含めた、いくつかの因子に応じて1日1回又はより頻繁に投与することができる。専門の医師又は獣医師は状態の進行を防止、対抗又は停止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定し且つ処方することができる。
【0139】
[105] 本発明の化合物又は組成物は、単回又は多回単位剤形で製造することができ及び/又は投与することができる。
【0140】
[106] 本発明のさらなる実施形態は、表1及び/又は表2に示されている構造式のいずれか1つの化合物、及び薬学的に許容される担体、例えば、薬学的に許容される賦形剤、担体、結合剤、及び/又は希釈剤を含む組成物に関する。
【0141】
[107] 本発明の開示された化合物の製剤及び投与技法については、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1995)に見出すことができる。
【0142】
[108] 他の実施形態では、本明細書に記載の化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、及びプロドラッグは、薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせて医薬製剤中で使用される。適切な薬学的に許容される担体としては、不活性な固体充填剤又は希釈剤及び滅菌水溶液又は滅菌有機溶液が挙げられる。任意選択により、組成物は1つ又は複数のさらなる治療剤を含む。化合物は、本明細書に記載の範囲で所望の投与量を提供するのに十分な量でこのような医薬組成物中に存在することになる。
【0143】
[109] ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、医薬組成物中に従来見出される他の補助的な構成成分を、それらの業界確立使用量レベルで、さらに含有することができる。したがって、例えば、組成物は、例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬、又は抗炎症剤のような、適合性のある、薬学的に活性なさらなる材料を含有してもよく、あるいは、本発明の組成物を種々の剤形に物理的に製剤化するのに有用な、染料、香味剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤及び安定剤などの、さらなる材料を含有してもよい。しかし、このような材料は、添加されたときに、本発明の組成物の構成成分の生物活性を過度に妨げるべきではない。製剤を滅菌してもよく、所望される場合、補助的な薬剤、例えば、製剤のオリゴヌクレオチドと有害に相互作用しない、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色物質、香味物質及び/又は芳香物質等と混合してもよい。
【0144】
[110] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物には1つ又は複数の賦形剤が含まれる。ある特定のこのような実施形態では、賦形剤は、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選択される。
【0145】
[111] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、それらに限定されないが、混合、溶解、造粒、糖衣形成、微粒子化、乳化、カプセル化、封入、又は錠剤化プロセスを含めた、公知の技法を使用して調製される。
【0146】
[112] さらなる実施形態は、製剤が固体、粉末、液体及びゲルからなる群から選択される、医薬製剤に関する。
【0147】
[113] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、液体(例えば、懸濁液、エリキシル剤及び/又は溶液)である。このような実施形態のいくつかでは、液体医薬組成物は、それらに限定されないが、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、及び着色剤を含めた、当分野で公知の成分を使用して調製される。
【0148】
[114] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、固体(例えば、粉末、錠剤及び/又はカプセル)である。このような実施形態のいくつかでは、固体医薬組成物は、それらに限定されないが、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、及び崩壊剤を含めた、当業界で公知の1つ又は複数の成分を含む医薬組成物。
【0149】
[115] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、デポ製剤として製剤される。ある特定のこのようなデポ製剤は、非デポ製剤よりも一般には長時間作用型である。ある特定の実施形態では、このような製剤は移植によって(例えば、皮下に又は筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与される。ある特定の実施形態では、デポ製剤は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(例えば許容される油中の乳濁液)又はイオン交換樹脂を使用して、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として調製される。
【0150】
[116] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、送達システムを含む。送達システムの例としては、それらに限定されないが、リポソーム及び乳濁液が挙げられる。ある特定の送達システムは、疎水性化合物を含むものを含めたある特定の医薬組成物を調製するのに有用である。ある特定の実施形態では、ジメチルスルホキシドなどのある特定の有機溶媒が使用される。
【0151】
[117] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、共溶媒系を含む。このような共溶媒系のいくつかには、例えば、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水相が含まれる。ある特定の実施形態では、このような共溶媒系は疎水性化合物に使用される。このような共溶媒系の非限定的例はVPD共溶媒系であるが、これは、ベンジルアルコール3%w/v、非極性界面活性剤ポリソルベート80の8%w/v、及びポリエチレングリコール300 65%w/vを含む無水アルコール溶液である。共溶媒系の溶解度及び毒性特性を大幅に改変することなく、このような共溶媒系の割合をかなり変えることができる。さらに、共溶媒成分の同一性が変更されてもよい:例えば、ポリソルベート80の代わりに、他の界面活性剤を使用してもよく;ポリエチレングリコールのフラクションサイズを変更してもよく;他の生体適合性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンがポリエチレングリコールに置き代わってもよく;他の糖類又は多糖類をデキストロースと交換してもよい。
【0152】
[118] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、徐放システムを含む。このような徐放性システムの非限定的例は、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスである。ある特定の実施形態では、徐放性システムは、その化学的性質に応じて、数時間、数日、数週間又は数カ月の期間にわたり医薬品を放出し得る。
【0153】
[119] ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口投与用に調製される。このような実施形態のいくつかでは、医薬組成物は、1つ又は複数の薬剤と薬学的に許容される担体とを組み合わせることにより製剤化される。このような担体のいくつかによって、医薬組成物を、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤など、対象による経口摂取向けに製剤化することができる。適切な賦形剤としては、それらに限定されないが、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含めた糖類などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。ある特定の実施形態では、このような混合物を任意選択により粉砕し、補助的な薬剤を任意選択により添加する。ある特定の実施形態では、医薬組成物を成形して、錠剤又は糖衣錠コアを得る。ある特定の実施形態では、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩)が添加される。
【0154】
[120] ある特定の実施形態では、糖衣錠コアにコーティングが施されている。ある特定のこのような実施形態では、濃縮糖液を使用してもよく、この濃縮糖液は任意選択により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含んでもよい。染料又は色素を、錠剤又は糖衣錠のコーティングに添加してもよい。
【0155】
[121] ある特定の実施形態では、経口投与用医薬組成物はゼラチン製のプッシュフィットカプセルである。このようなプッシュフィットカプセルのいくつかは、1つ又は複数の、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択により安定剤とともに、混合物中に本発明の1つ又は複数の医薬品を含む。ある特定の実施形態では、経口投与用医薬組成物は、ゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤とで作られた密閉ソフトカプセルである。ある特定のソフトカプセルでは、本発明の1つ又は複数の医薬品は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解されていても懸濁されていてもよい。さらに、安定剤が添加されていてもよい。
【0156】
[122] ある特定の実施形態では、医薬組成物は頬粘膜投与用に調製される。このような医薬組成物のいくつかは、慣用の方法で製剤化された錠剤又はロゼンジである。
【0157】
[123] ある特定の実施形態では、医薬組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下、筋肉内など)による投与向けに調製される。このような実施形態のいくつかでは、医薬組成物は担体を含み、且つ水又は、ハンクス液、リンゲル液若しくは生理食塩緩衝液などの生理学的に適合する緩衝剤などの水溶液として製剤化される。ある特定の実施形態では、他の成分(例えば、溶解を補助する成分又は保存剤として機能する成分)が含まれる。ある特定の実施形態では、注射用懸濁剤は、適切な液体担体、懸濁化剤などを使用して調製される。ある特定の注射用医薬組成物は、例えば、アンプル又は分割投与容器に入った単位剤形で提供される。ある特定の注射用医薬組成物は、油性又は水性ビヒクル中の、懸濁液、溶液、又は乳濁液であり、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含んでもよい。注射用医薬組成物での使用に適したある特定の溶媒としては、それらに限定されないが、親油性溶媒及びゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチル又はトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、及びリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁剤の粘性を高める物質を含んでもよい。任意選択により、このような懸濁剤はまた、高濃縮溶液の調製を可能とするために、医薬品の溶解度を高める適切な安定剤又は薬剤を含んでもよい。
【0158】
[124] ある特定の実施形態では、医薬組成物は経粘膜投与用に調製される。このような実施形態のいくつかでは、浸透されるバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は当分野において周知である。
【0159】
[125] ある特定の実施形態では、医薬組成物は吸入投与用に調製される。このような吸入用医薬組成物のいくつかは、加圧パック又はネブライザー中のエアロゾルスプレーの形態で調製される。このような医薬組成物のいくつかは噴射剤を、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを含む。加圧エアロゾルを使用するある特定の実施形態では、投与単位は、ある一定の量を送達するバルブを使用して決定することができる。ある特定の実施形態では、吸入器又は通気器に使用するためのカプセル及びカートリッジを製剤化することができる。このような製剤のいくつかは、本発明の医薬品とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含む。
【0160】
[126] ある特定の実施形態では、医薬組成物は、坐剤や停留浣腸などの直腸投与用に調製される。このような医薬組成物のいくつかは、カカオ脂及び/又は他のグリセリドなどの公知の成分を含む。
【0161】
[127] ある特定の実施形態では、医薬組成物は局部投与用に調製される。このような医薬組成物のいくつかは、軟膏剤又はクリーム剤などの低刺激性保湿基剤を含む。例示的な適切な軟膏基剤としては、それらに限定されないが、ワセリン、揮発性シリコーン添加ワセリン、及びラノリン、並びに油中水型乳剤が挙げられる。例示的な適切なクリーム基剤としては、それらに限定されないが、コールドクリーム及び親水性軟膏が挙げられる。
【0162】
[128] ある特定の実施形態では、治療有効量は、疾患の症状を予防、緩和、若しくは寛解するか、又は処置対象の生存を延長するのに十分である。治療有効量は、当業者の能力内で十分に決定される。
【0163】
[129] ある特定の実施形態では、本発明の1つ又は複数の化合物はプロドラッグとして製剤化される。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、インビボ投与されると、生物学的、薬学的、又は治療学上さらに活性な形態に化学的に変換される。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、対応する活性型のものよりも投与が容易であることから、有用である。例えば、ある特定の例では、プロドラッグは、対応する活性型のものよりも(例えば、経口投与により)生物学的に利用されやすい。ある特定の例では、プロドラッグは、対応する活性型のものと比較して改善された溶解度を有することができる。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、対応する活性型ものよりも水への溶解度が低い。ある特定の例では、このようなプロドラッグは、水への溶解度が移動性に対して不利益である場合、細胞膜を越えて優れた伝達を有する。ある特定の実施形態では、プロドラッグはエステルである。ある特定のこのような実施形態では、エステルは投与されると、カルボン酸に代謝的に加水分解される。ある特定の例では、カルボン酸を含む化合物は、対応する活性型である。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、酸性基に結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)を含む。このような実施形態のいくつかにおいて、ペプチドは投与されると切断されて、対応する活性型を形成する。
【0164】
[130] ある特定の実施形態では、プロドラッグは、活性化合物がインビボ投与で再生成するように、薬学的に活性な化合物を修飾することにより製造される。プロドラッグは、薬物の代謝的安定性若しくは輸送特性を変化させるように、副作用若しくは毒性を覆い隠すように、薬物の香味を改善するように、又は薬物の他の特徴若しくは特性を変化させるように設計されうる。当業者であれば、薬学的に活性な化合物を知れば、インビボにおける薬力学的プロセス及び薬物代謝に関する知識に基づいて、その化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady (1985)Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, New York、388〜392頁を参照されたい)。
【0165】
[131] これまで、概略的に本発明を説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、同様のことがより容易に理解されるであろう。以下の実施例は説明のためであって、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0166】
実施例1:パーキン活性化剤の同定
アッセイ原理:
[132] 活性部位反応型プローブ(ABP)と酵素中の活性部位システインとの非可逆反応に基づいたアッセイ。ABPはN末端にエピトープタグ(例えばHAタグ)、及びC末端に反応基を持つユビキチン部分からなる。パーキン−RBR(w/o R0阻害性ドメイン)の活性は、パーキン−R0RBRの活性又は全長パーキンの活性よりも有意に高い。パーキンへのABPの共有結合は、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)によってモニターすることができる。
− パーキン−R0RBR、全長パーキン→低TR−FRETシグナル(陰性対照)
− パーキンRBR→高TR−FRETシグナル(陽性対照)
パーキン−R0RBRの活性又は全長パーキンの活性を高める化合物は、TR−FRETシグナルの高まりによって同定することができる。
戦略:パーキン−R0RBR、全長パーキン及びパーキン−RBRのN末端His−SUMOタグ付け構築物の使用。(Evotec Slides製;Rileyら 2013. Nat Commun. 4:1982及びE3x Bioにより提供された情報に基づく;交付申請)
【0167】
構築物:
[133]
− Rileyらにより記載のようにE.coliにおけるN末端His
6−SUMO−タグ(SENP1プロテアーゼを使用して精製時に潜在的に除去可能)を持つ全長パーキン(1−465)、R0RBR(141−465)及びRBR(238−465)の発現
− TR−FRETアッセイを可能とするN末端His
6−タグ→N末端His
6−SUMO−タグをその上になお有する精製タンパク質の使用。
− 小規模の試験をすべての構築物に対して実施して、どちらの構築物が、全長パーキン又はR0RBRが良好な収率をもたらしてHTSアッセイを円滑化するかを評価する。
【0168】
フェーズ1:タンパク質の産生
[134]
− E.coliにおける発現に対してコドン最適化された、N末端His
6−SUMOを持つ全長パーキン、His
6−SUMO−R0RBR及びHis
6−SUMO−RBRについてサードパーティーにより遺伝子合成を開始し、適切な発現ベクターにサブクローニングする。
− ウエスタンブロットにて小規模の試験発現を評価して、可溶性タンパク質の収率を推定する。
− RBR構築物並びに全長パーキン構築物又はR0RBR構築物のいずれかをBL21(DE3)に形質転換し、Rileyらにより概略されているように、6〜24Lの規模で発現させる(小規模の試験発現の成果に応じて)
− Rileyら
*により記載されているように、すなわち、IMAC、MonoQ及びサイズ排除であるが、RBR構築物およそ10mg並びに全長パーキン構築物又はR0RBR構築物のいずれかを精製。
【0169】
フェーズ2:アッセイの展開
[135]
− 目標:1,536−ウエルアッセイプレート形式に堅牢な一次スクリーニングアッセイをセットアップする
− 合理的なダイナミックレンジで384−ウエル形式にアッセイを確立する(例えばR0阻害性ドメイン+/−のパーキンを使用して)
− アッセイを最適化する(例えば、アッセイ構成成分の濃度、緩衝剤、添加物、試薬添加の順序、及びインキュベーション温度に関して)
− 時間経過試験を実行して最適インキュベーション時間を決める
− アッセイの堅牢性を実証する(目標:Z’>0.5)
− リードアウトの安定性を実証する
− DMSO耐性を試験する
− Ub力価測定によって(ABPと競合する)、パーキンRBRドメインを使用して(w/o R0阻害性ドメイン)得られたアッセイシグナルの特異性を実証する
− 384−ウエルスクリーニングプレート形式から最終的な1,536−ウエルスクリーニングプレート形式へとアッセイを移す;アッセイをEVOscreen(商標)Mark III HTSプラットフォームに適合させる
− 必要な場合、このような高密度プレート形式におけるアッセイ堅牢性を最適化するために(目標:Z’>0.5)且つハイスループットスクリーニング(HTS)に対するアッセイ適合性を実証するために、アッセイ条件を微調整する
− スクリーニング条件下でのアッセイ試薬の安定性を経時的に確認する
− プレート間の及び日毎のアッセイ堅牢性を実証する
− スクリーニング及びヒットプロファイリング向けに必要とされるすべてのアッセイ試薬の量を推定し且つ調達する。
【0170】
フェーズ3:スクリーニング
[136] マーカーライブラリースクリーニング(MLS)
− 3回反復で2点濃度にて、一次スクリーニングアッセイに対して、およそ2.5kの代表的なリード的化合物(lead-like compound)の多様なマーカーライブラリーのプレスクリーニング
− 3シグマ法を使用するMLS及びヒットデフィニションの統計学的解析(プレートをベースとした、化合物フリーのDMSOウエルの走査に対して)
− 一次スクリーニング向けの最適な化合物濃度の選択
一次スクリーニング(PS):
− 1つの均一な化合物濃度での、一次スクリーニングアッセイ(n=1)に対しておよそ75,000のリード的化合物のスクリーニング;取り決められた再スクリーニング基準に満たない化合物プレートの再スクリーニング(例えばZ’>0.5)
− 3シグマ法を使用する一次スクリーニングに関するヒットデフィニション(プレートをベースとした、化合物フリーのDMSOウエルの走査に対して)
− 一次スクリーニングの統計学的解析→一次ヒット化合物(パーキン活性化剤)
ヒットの確認(HC):
− ヒット確認向けの最大でおよそ750の一次ヒットの1セットの選択
− 選択された化合物のチェリーピッキング及び試験向けのリフォーマッティング
− 化合物スクリーニング濃度での、一次スクリーニングアッセイに対して選択されたcpdの再試験(n=3)
− ヒット確認キャンペーンの統計学的解析→確認された低分子パーキン活性化剤の同定
フェーズ4:ヒットプロファイリング(HP):
− ヒットプロファイリング向けの最大でおよそ250の確認されたヒット化合物の1セットの選択
− 選択された化合物のチェリーピッキング及び濃度−反応試験向けのリフォーマッティング
− 一次スクリーニングアッセイに対して11点化合物希釈系列の濃度−反応試験(n=2)
− 濃度反応曲線の自動データフィッティング及びその結果得られるIC50値の算出
− 化合物の同一性及び純度を確認するためのヒット化合物のLC/MS検査
− 活性なヒット化合物の構造活性相関分析(SAR)
− 確認され且つプロファイリングされた低分子パーキン活性化剤。
【0171】
実施例2:ユビキチンビニルスルフォンプローブを使用する活性部位反応型プローブアッセイ
[137] パーキンリガーゼの活性部位システインに非可逆的に結合するユビキチンビニルスルフォンプローブを使用することができる。パーキンへのプローブの共有結合は、TR−FRETによってモニターすることができる。候補活性化化合物は、TR−FRETシグナルが増加するので、パーキンリガーゼの活性を高めることによって同定することができる。活性化化合物のスクリーニングは、以下のように対照と区別することができる:
100%活性化シグナル=DMSO中の熱活性化パーキン+100nMの対照活性化剤。0%活性化シグナル=熱活性化パーキン+DMSO単独。パーキン活性化剤は0%活性化シグナルのTR−FRETシグナルの増加によって同定することができる。
【0172】
[138] アッセイ条件:
材料:
アッセイプレート:白色384ウエルプレート(Corning 3572)
酵素:パーキン−Hisタグ付き203μM(10.5mg/ml)
プローブ:ユビキチンビニルスルフォン(HA-Ub-VS Boston Biochem U-212)
DMSO:DMSO(Sigma cat # D4540 -100ML)
反応緩衝液:50mM HEPES(pH8.5)、150mM NaCl、0.01%Tween20、0.1%BSA
検出緩衝液:50mM HEPES(pH8.5)、150mM NaCl、0.01%Tween20、0.1%BSA、800mM KF
検出試薬A:検出バッファー中に2.6nMの抗6HIS−Euクリプテート及び40nMの抗HA−XL665
Euクリプテート:抗6HIS−Euクリプテート(CisBio 61HISKLA)
XL665:抗HA−XL665(CisBio 610HAXLA)
酵素反応(活性化剤単独とともに、15分プレインキュベーションのパーキン)
パーキン:40nM
HA−Ub−VSプローブ:70nM
活性化剤/DMSO:2× 活性化剤候補物/2%DMSO
反応時間:60分
温度:22℃
総容量:10μlの反応
検出反応
上の酵素反応10μlを取り、以下の条件下での検出試薬A10μlを添加する:
反応時間:60分
温度:22℃
総容量:20μl
【0173】
[139] アッセイ手順:
1) 酵素反応緩衝液(500μl/1.5mlチューブ:Eppendorf Thermomixerで5分間、58℃で400rpm、必要となるまで氷上に放置)中でパーキンを熱活性化する。
2) アッセイプレートウエルに、Bravoの使用による84.5nMパーキンの反応緩衝液4.8μlをロードする。
3) HP D−300コンパウンドディスペンサーを使用して、DMSO中の200×の活性化剤候補物0.2μlを供給する。最高200× 濃度=20μm、次いで2倍希釈。
4) スピン1000rpm、室温にて、2分。
5) プレートを室温にて15分間インキュベートする。
6) Bravoの使用により、140nM HA−Ub−VSプローブの反応緩衝液5μlを添加する。
7) スピン1000rpm、室温にて、2分。
8) プレートを室温にて60分間インキュベートする。
9) 2.6nM抗6HIS−Euクリプテート及び40nM抗HA−XL665の検出緩衝液10μlを添加する。
10) スピン1000rpm、室温にて、2分。
11) プレートを室温にて60分間インキュベートする。
12) Perkin Elmer Envision装置でプレートを読み取る。
【0174】
[140] データ解析:データはCSVファイルで読み取ることができる。これらのCSVファイルには2つの表があり、それぞれ、655nm(チャネル1)波長の値及び615nm(チャネル2)の波長の値である。データはHTRF比=(チャネル1/チャネル2)
*10,000に変換されている。
【0175】
[141] すべての0μM対照(DMSO単独)の平均=BKGD(バックグラウンド−0%活性化)。各HTRF比値からBKGDを差し引く=HTRF−BKGD。DMSO対照におけるすべての100μM100nM対照活性化剤の平均値=Max(100%活性化)。次いで次の式を使用して、次のように各ウエル/候補物についての%活性化を算出する:%活性化=(HTRF-BKGD/Max)
*100。
【0176】
[142] 次いで、候補化合物について75%未満の活性化が見られる場合、化合物力価測定の%活性化を用いて、活性化EC50又は最高の%活性化を見出すことができる。
【0177】
実施例3:候補求電子剤及びキレート剤化合物による活性部位反応型プローブアッセイ
[143] 活性部位反応型プローブアッセイを表1及び/又は表2の種々の化合物を用いて上の実施例2のように行った。少なくとも2つの化合物が、活性部位反応型プローブであるユビキチン−ビニルスルホンによるパーキン活性の増加を示した。
図1に示すように、N,N‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド、キレート剤化合物(AH001)は活性部位反応型ユビキチン−ビニルスルホンプローブでのパーキンリガーゼ反応を高める。
【0178】
[144] 同様に、
図2に示すように、6−ベンジル−2,5−ジメチル−3−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−チオール、求電子剤及びキレート剤化合物(AH007)は活性部位反応型ユビキチン−ビニルスルホンプローブでのパーキンリガーゼ反応を高める。この例は、キレート剤も求電子剤もパーキンリガーゼ活性を調節する及び/又は高めることができることを、実証している。
【0179】
実施例4:パーキンpUBの自己ユビキチン化アッセイ
[145] パーキンpUBの自己ユビキチン化アッセイを使用して、それ自身を自己ユビキチン化するパーキンの能力を活性化する候補化合物の効能を評価する。
【0180】
[146] このアッセイの原理は、E3リガーゼパーキンは標的タンパク質へのユビキチンの転移を触媒するが、それ自身を自己ユビキチン化する能力も有することである。アッセイに添加されたリン酸化ユビキチン(pUb)は、低分子活性剤によってパーキンがE1−E2カスケード反応を介して自己ユビキチン化することを可能とする状態にパーキンを変化させる。Euクリプテートユビキチン及びHisタグ付きパーキンに結合している抗6His−d2を使用すると、Euクリプテートユビキチンがパーキン上に自己ユビキチン化されるとき、TR−FRETによってモニタリングすることができるシグナルが得られる。
【0181】
[147] 実施例2及び実施例3における活性部位反応型プローブアッセイと同様に、活性化化合物を対照と区別することができるスクリーニングは次のとおりである:
100%活性化シグナル=pUb活性化パーキン+DMSO中の40nM対照活性化剤。
0%活性化シグナル=pUb活性化パーキン+DMSO単独。
パーキン活性剤は0%活性化シグナルのTR−FRETシグナルの増加により同定することができる。
材料:
アッセイプレート:白色384ウエルプレート(Corning 3572)
酵素1:5μM E1(ユビキチン活性化酵素/UBE1 Boston Biochem E-305)
酵素2:25μM E2(UBcH7/Ube2L3 Boston Biochem E2-640)
酵素3:パーキン−Hisタグ付き203μM(10.5mg/ml)An2Hによって供給される。
pUB:230μM(2mg/ml)リン酸化ユビキチン(S65)(Boston Biochem U-102)An2Hによって供給される。
Euクリプテート試薬:1.77μMユビキチンEu(CisBio 61UBIKLA)250μlの蒸留水で再構成する。
DMSO:DMSO(Sigma cat # D4540 -100ML)
PF−127:Pluronic F−127(Fisher Scientific 50-310-494)
反応緩衝液:50mM HEPES、50mM Nacl、1mM MgCl2、0.005%Tween20、0.1% PF−127、pH8.5
検出緩衝液:50mM HEPES、50mM Nacl、800mM KF、5mM EDTA、0.005%Tween20、0.1% PF−127、pH8.5
検出試薬Z:検出緩衝液中の13.4nM抗6His−d2
d2試薬:2.67μM抗6His−d2(CisBio 61HISDLA)250μlの蒸留水で再構成する。
【0182】
[148] アッセイ条件:
10μl酵素反応(pUB及び活性化剤単独とともに、15分プレインキュベーションのパーキン)
パーキン:196nM
pUb:392nM
活性化剤/DMSO:1× 活性化剤/1%DMSO
E1:5nM
E2:50nM
ユビキチンEu:8.8nM
反応時間:120分
温度:22℃
総容量:10μl反応
【0183】
[149] 検出反応
上の酵素反応の10μlを取り、以下の条件下で検出試薬Z10μlを添加する:
反応時間:60分
温度:22℃
総容量:20μl
【0184】
[150] アッセイ手順:
1) Bravoの使用によって、アッセイプレートウエルに400.0nMパーキン、800nM pUbの反応緩衝液4.9μlをロードする。
2) HP D−300コンパウンドディスペンサーの使用によって、DMSO中の100×の活性化剤候補物0.1μlを供給する。最高100× 濃度=100μm、次いで2倍希釈。各化合物及び対照を二連ウエルで添加する。
3) スピン1000rpm、室温にて、2分。
4) プレートを室温にて15分間インキュベートする。
5) Bravoの使用によって、10nM E1、100nM E2、17.6nMユビキチンEu及び2mM ATPの反応緩衝液5μlを添加する。
6) スピン1000rpm、室温にて、2分。
7) プレートを室温にて120分間インキュベートする。
8) Bravoの使用によって、13,4nM抗his d2の検出緩衝液10μlを添加する。
9) スピン1000rpm、室温にて、2分。
10) プレートを室温にて60分間インキュベートする。
11) Perkin Elmer Envision装置でプレートを読み取る。
【0185】
[151] データ解析:データはCSVファイルで読み取ることができる。これらのCSVファイルには2つの表があり、それぞれ、655nm(チャネル1)波長の値及び615nm(チャネル2)の波長の値である。データはHTRF比=(チャネル1/チャネル2)
*10,000に変換されている。
【0186】
[152] すべての0μM対照(DMSO単独)の平均=BKGD(バックグラウンド−0%活性化)。各HTRF比値からBKGDを差し引く=HTRF−BKGD。DMSO対照におけるすべての100μM対照活性化剤の平均値=Max(100%活性化)。次いで次の式を使用して、次のように各ウエル/候補物についての%活性化を算出する:%活性化=(HTRF-BKGD/Max)
*100。
【0187】
[153] 次いで、候補化合物について75%未満の活性化が見られる場合、化合物力価測定の%活性化を用いて、活性化EC50又は最高の%活性化を見出すことができる。
【0188】
実施例5:候補電子求核剤及びキレート剤化合物によるパーキンpUB自己ユビキチン化アッセイ
[154] パーキンpUB自己ユビキチン化アッセイを、表1及び/又は表2の種々の化合物を使用して上の実施例4のように行った。少なくとも2つの化合物が、活性部位反応型プローブであるユビキチン−ビニルスルホンによるパーキン活性の増加を示した。
図3に示すように、N,N‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド、キレート剤化合物(AH001)は自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性を高める。さらに、
図4に示すように、pUBを伴うN,N‘−(1−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジイル)ジベンズアミド(AH001)は自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性化を相乗的に高める。
【0189】
[155] 同様に、
図5に示すように、6−ベンジル−2,5−ジメチル−3−フェニルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−チオール、求電子剤(AH007)は自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキン活性を高める。この例は、キレート剤も求電子剤も自己ユビキチン化アッセイにおいてパーキンリガーゼ活性を調節する及び/又は高めることができることを、実証している。
【0190】
実施例6:残基C59及びC377はパーキンへのモジュレーター結合にとって極めて重要である
[156] パーキンリガーゼをAH007化合物とともにインキュベートし、次いで、タンパク質分解消化を行ってパーキンリガーゼの断片を作製した後に、混合物をタンデム質量分光分析に付した。AH007を結合した化合物を含む、パーキンの特定の断片を同定し、化合物に対するパーキンの特異的結合残基を明らかにすることを目標とした。化合物An2H07はまた、質量分析によって分析すると断片化される。したがって、パーキンの特定の残基に結合している、化合物AH007の特徴的な断片も同定することができる。
【0191】
[157] これらのフラグメントは、AH007の予想される分子量のうち結合している低分子を示すフラグメントサイズにおける変化に対して特徴づけられた。質量分析データによって、パーキンリガーゼの2つの特定残基においてAH007の3つの特定フラグメントが同定された。データによって、パーキンリガーゼのシステイン残基377(C377)に結び付いたAH007化合物の253.08〜256.09の断片及びC377に結び付いたAH007化合物の343.14〜346.14の断片が同定された。データによってまた、パーキンリガーゼのシステイン残基59(C59)に結び付いたAH007化合物の253.08〜256.09の断片も同定された。したがって、AH007化合物とともにインキュベートしたパーキンリガーゼの質量分析のデータによって、化合物はパーキンリガーゼの2つの特定の部位C59及びC377に結合する及び/又は結び付くことが示されている。AH007化合物の濃度がパーキンリガーゼを有する混合物中で劇的に高められた場合でも、残基C59及びC377がこの2つのみが観察された一貫した部位であり、したがって可能な結合の他の多数の部位にまさる両部位の特異性が示唆された。また、少なくともC377はヒトパーキンリガーゼのZnFドメインに組み込まれていると考えられ、したがってこのことは、融通性のあるパーキンリガーゼZnFドメイン中のシステイン残基が低分子候補物による結合及び/又は干渉に対して脆弱であるという理論と一致する。C59及び/又はC377を含むパーキンのペプチド断片は、さらなる調整剤の結合アッセイ及び選択をさらに設計するために有用であろう。
【0192】
[158] 本明細書で論じる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示について示すにすぎない。本発明に先行発明によるこのような刊行物に先行する権利がないことを承認するとして解釈されるものは本明細書には存在しない。
【0193】
[159] 本発明は、これの提案された特定の実施形態に関連して説明されてきたが、さらなる変形が可能であることが理解されるであろう。本出願は、本発明の原理に一般に従い、並びに、本発明が関与する技術内の公知の又は通例の実施に付属し、且つ上に示した及び次の添付の請求の範囲に示す本質的な特色に適用されるであろう本開示からのそのような逸脱を含む、本発明の変形、使用又は適用を包含することを意図している。
【国際調査報告】