(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538746(P2017-538746A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】皮膚の外観を改善するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20171201BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20171201BHJP
A61K 8/90 20060101ALI20171201BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20171201BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/898
A61K8/90
A61K8/25
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-532876(P2017-532876)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月31日
(86)【国際出願番号】US2015066420
(87)【国際公開番号】WO2016100690
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】1462725
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1462731
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1462829
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】62/093,946
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1462721
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ−ロール・シュザンヌ・ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・デン
(72)【発明者】
【氏名】ハイ・シ・ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ロール・ドーベルシース
(72)【発明者】
【氏名】ロシャナク・デュボー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC012
4C083AC122
4C083AD021
4C083AD022
4C083CC02
4C083DD30
4C083EE12
(57)【要約】
本開示は、皮膚の外観を改善するための組成物及び方法に関する。組成物は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーを含む。方法は、組成物を皮膚に適用して、皮膚上に膜を形成することによって皮膚を引き締める又は皮膚欠陥を隠すことを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、
b.少なくとも1種の接着性ポリマー、及び
c.少なくとも1種のフィラー
を含む皮膚引き締め組成物であって、
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、少なくとも2つのガラス転移温度(Tg)を有する、皮膚引き締め組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、約0℃未満の第1のTg及び約25℃超の第2のTgを有する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、ジブロック、トリブロック、マルチブロック、放射状及び星形コポリマーから選択される、請求項2に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、約40℃超の第1のTg及び約-50℃未満の第2のTgを有する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、半結晶質ブロックコポリマーから選択される、請求項4に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項6】
前記半結晶質ブロックコポリマーが、少なくとも1つの式(I)に対応する部分及び/又は少なくとも1つの式(II)に対応する部分を含む、請求項5に記載の皮膚引き締め組成物:
【化1】
[式中、
1)R
1、R
2、R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよく、(a)場合によりその鎖内に1つ又は複数の酸素、硫黄及び/又は窒素原子を含有し、かつ場合により部分的に又は全体的にフッ素原子で置換されている、直鎖状、分枝状又は環状の飽和又は不飽和C
1〜C
40炭化水素系基、(b)任意選択により1つ又は複数のC
1〜C
4アルキル基で置換されている、C
6〜C
10アリール基、(c)場合により1つ又は複数の酸素、硫黄及び/又は窒素原子を含有する、ポリオルガノシロキサン鎖から選択される基を表し、
2)Xは、同一でも異なっていてもよく、場合によりその鎖内に1つ又は複数の酸素及び/又は窒素原子を含有する、直鎖状又は分枝状のC
1〜C
30アルキレンジイル基を表し、
3)Yは、任意選択により1つ又は複数の酸素、硫黄及び/若しくは窒素原子を含み、かつ/又はフッ素、ヒドロキシル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
1〜C
40アルキル、C
5〜C
10アリール、任意選択により1〜3つのC
1〜C
3アルキル、C
1〜C
3ヒドロキシアルキル、及びC
1〜C
6アミノアルキル基で置換されているフェニル、の原子若しくは原子群のうちの1つで任意選択により置換されている、飽和又は不飽和C
1〜C
50の直鎖状又は分枝状二価アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、アルキルアリーレン又はアリールアルキレン基であり、
4)Gは、同一でも異なっていてもよく、エステル、アミド、スルホンアミド、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素基、及びこれらの組合せから選択される基を表し、
5)mは、1〜1,000、好ましくは1〜700、より好ましくは6〜200の範囲の整数であり、
6)nは、2〜500、好ましくは2〜200の範囲の整数である]
【化2】
[式中、
R
1及びRは、同一でも異なっていてもよく、上で式(I)について定義した通りであり、
R
7は、上でR
1及びR
3について定義した基を表し、又は式-X-G-R
9(式中、X及びGは、上で式(I)について定義した通りである)の基を表し、R
9は、水素原子、又はその鎖内にO、S及びNから選択される1つ又は複数の原子を任意選択により含み、1つ又は複数のフッ素原子及び/若しくは1つ又は複数のヒドロキシル基、若しくは1つ又は複数のC
1〜C
4アルキル基で任意選択により置換されているフェニル基で任意選択により置換されている、直鎖状、分枝状若しくは環状の、飽和若しくは不飽和のC
1〜C
50炭化水素系基を表し、
R
8は、式-X-G-R
9(式中、X、G及びR
9は、上で定義した通りである)の基を表し、
m
1は、1〜998の範囲の整数であり、
m
2は、2〜500の範囲の整数である]。
【請求項7】
前記半結晶質ブロックコポリマーが、少なくとも1つの式(III)に対応する部分及び/又は少なくとも1つの式(IV)に対応する部分を含む、請求項5に記載の皮膚引き締め組成物:
【化3】
[式中、
(a)R
1、R
2、R
3及びR
4は、同一であるか又は異なっており、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シロキサン鎖、及びフェニルからなる群から選択されてよく、
(b)Xは、1〜30個の炭素を有する直鎖状又は分枝状アルキレン鎖であり、
(c)Yは、1〜40個の炭素を有する直鎖状又は分枝状アルキレン鎖からなる群から選択され、
(d)mは、1から700の間の数字であり、
(e)nは、1から500の間の数字である]。
【請求項8】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、組成物の総質量に対して、約5質量%から約25質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、約25℃超のTgを有する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂から選択される脂肪族又は脂環式炭化水素ポリマーから選択される、請求項9に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂、水添ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ゴム樹脂、ゴム樹脂エステル、ウッド樹脂、ウッド樹脂エステル、トール油樹脂、トール油樹脂エステル、ポリテルペン、芳香族変性ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、水添芳香族変性ポリシクロペンタジエン樹脂、水添脂肪族樹脂、水添脂肪族芳香族樹脂、水添テルペン及び変性テルペン、水添ロジン酸、水添ロジンエステル、ポリイソプレン、部分又は完全水素化ポリイソプレン、ポリブテンジエン、部分又は完全水素化ポリブテンジエン、及び水添スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーから選択される、請求項10に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項12】
前記接着性ポリマーが、約25℃未満のTgを有する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、超分枝ポリ酸から選択される、請求項12に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項14】
前記超分枝ポリ酸が、少なくとも2つのカルボキシル基を含む、請求項13に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項15】
前記超分枝ポリ酸が、50〜250個のカルボキシル基を含む、請求項13に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項16】
前記超分枝ポリ酸が、約500〜約25,000の範囲の分子量(Mw)を有する、請求項13に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項17】
前記超分枝ポリ酸が、210°Fで、0.01Pas〜10Pasの範囲の粘度を有する、請求項13に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項18】
前記超分枝ポリ酸が、約20〜約400mg/KOHの範囲の酸価を有する、請求項13に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項19】
前記超分枝ポリ酸が、C30+オレフィン/ウンデシレン酸コポリマーから選択される、請求項13に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、アクリル系膜形成剤から選択される、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、少なくとも1種の無極性モノマー、少なくとも1種のオレフィン性不飽和モノマー、及び少なくとも1種のビニル系官能化モノマーを含有するコポリマーから選択される、請求項20に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種の接着性ポリマーが、組成物の総質量に対して、約5質量%から約25質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種のフィラーが、約100nm超の粒径及び/又は約200m2/g超の比表面積を有するフィラーから選択される、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1種のフィラーが、シリカ粒子から選択される、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種のフィラーが、疎水性シリカエアロゲル粒子から選択される、請求項24に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1種のフィラーが、トリメチルシリル基で表面修飾された疎水性シリカのエアロゲル粒子から選択される、請求項25に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1種のフィラーが、組成物の質量に対して、約0.1質量%から約20質量%の範囲の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項28】
室温(25℃)で約1000Pa超の蒸気圧を有する溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒を更に含む、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1種の溶媒が、揮発性有機溶媒から選択される、請求項28に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1種の溶媒が、揮発性炭化水素系油及び揮発性シリコーン油から選択される、請求項29に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項31】
前記少なくとも1種の溶媒が、分枝状C8〜C16アルカン、C8〜C16イソアルカン、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物から選択される、請求項30に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項32】
シリコーンエラストマー、湿潤剤、水、及び着色料から選択される少なくとも1種の追加の成分を更に含む、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項33】
少なくとも1種の油中に分散されたシリコーンクロスポリマーから選択される少なくとも1種のシリコーンエラストマーを含む、請求項32に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項34】
前記シリコーンクロスポリマーが、ジメチコンクロスポリマーから選択される、請求項33に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項35】
前記シリコーンポリマーが、ポリエチレングリコール基若しくはポリプロピレン基、又は親水性部分を含まない、請求項33に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項36】
前記少なくとも1種のシリコーンエラストマーが、組成物の総質量に対して、約10質量%以下の量で組成物中に存在する、請求項33に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項37】
グリセリンから選択される少なくとも1種の湿潤剤を含む、請求項32に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項38】
水を更に含む、請求項37に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項39】
前記水が、組成物の質量に対して、約10質量%以下の量で組成物中に存在する、請求項38に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項40】
有機及び無機顔料から選択される少なくとも1種の着色料を含む、請求項32に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1種の顔料が、組成物の質量に対して、約1質量%以下の範囲の量で組成物中に存在する、請求項40に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項42】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーが、組成物の質量に対して、合わせて約10質量%超の量で存在する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項43】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーが、組成物の質量に対して、合わせて約15質量%超の量で存在する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項44】
前記少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーが、組成物の質量に対して、合わせて約20質量%超の量で存在する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項45】
熱可塑性エラストマー:接着性ポリマーの比が、約1:10〜10:1の範囲である、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項46】
熱可塑性エラストマー:接着性ポリマーの比が、約1:5〜5:1の範囲である、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項47】
熱可塑性エラストマー:接着性ポリマーの比が、約1:1〜8:1の範囲である、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項48】
前記組成物が、約100Pa超(10%歪みで)の粘稠度G*及び約45°未満の位相角を有する、請求項1に記載の皮膚引き締め組成物。
【請求項49】
約500kPa超のヤング率を有する、請求項1から48のいずれか一項に記載の組成物から形成される皮膚引き締め膜。
【請求項50】
ヤング率が約1000kPa超である、請求項49に記載の皮膚引き締め膜。
【請求項51】
ヤング率が約5000kPa超である、請求項49に記載の皮膚引き締め膜。
【請求項52】
皮膚の外観を改善するための方法であって、請求項1から48のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に適用することによって、前記皮膚上に膜を形成する工程を含み、
前記皮膚上に形成された前記膜のヤング率が、約500kPa超である、方法。
【請求項53】
前記膜のヤング率が約1000kPa超である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記膜のヤング率が約5000kPa超である、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮膚の外観を改善するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、主に2つの層から構成される。外層又は表皮は、約100μmの深さを有する。内層又は真皮は、皮膚の外面から約3000μmの深さを有し、皮膚に堅さをもたらす、コラーゲンとして知られる繊維状タンパク質網、及び皮膚の弾力及びから跳ね返りを与えるエラスチンから構成される。ヒトは加齢するにつれ、皮膚が生み出すコラーゲン及びエラスチンは年々減少する。結果、皮膚は年と共に痩せ、脆弱になり、加齢の結果として皺の形成は避けられない。
【0003】
それに加え、ヒトが加齢するにつれ、他の皮膚の欠陥も出現し得る、又はより目立つようになり得る。例えば、ヒトが加齢するにつれ、太陽により誘導された茶色又は灰色の皮膚損傷であるしみが、日光に晒された皮膚上に出現し得る。消費者が、このような加齢に関連した皮膚の欠陥、例えば皺、目尻の皺、しみ、目の下のたるみ等の外観を改善することを望むのは一般的なことである。加えて、多くの消費者は、ニキビ、傷あと、毛穴の開き等、加齢に関連しない他の皮膚の欠陥の外観を改善するか、又は隠すことを望む。
【0004】
ファンデーション又はコンシーラータイプのメーキャップ等の局所的化粧品配合物は、多少の皮膚欠陥の外観を改善し得るが、このような配合物は持続せず、深い皺又は傷あと等のより顕著な皮膚欠陥の外観を低減することはできない。更に、一部の化粧品配合物、例えば皺取りクリームは、経時的な欠陥の外観を低減する構成成分を含み得るが、このような配合物は、結果が目立つようになるまで長期間かかることがあり、また、より顕著な皮膚欠陥の外観を低減するにも効果的でない。
【0005】
局所的化粧品配合物の代わりに、皮膚の手術、フィラー、又はレーザー治療(laser resurfacing)等のより侵襲的な技術は、より長持ちする効果を与えることができ、目立った欠陥の治療が可能である。しかし、多くの消費者は、このような思い切った美容処置法に踏み込めない又は希望しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2015/091513
【特許文献2】米国特許第7,582,719号
【特許文献3】US2013/0236409
【特許文献4】米国特許第7,470,725号
【特許文献5】FR 2 679 771
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Skin Aging Atlas、vol 1、Caucasian type、Roland Bazin、Eric Doublet、Editions Med'Com、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、皮膚欠陥の外観を低減する上で効果的な局所的化粧品配合物が消費者に要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、皮膚の外観を改善するための組成物及び方法に関する。
【0010】
一実施形態において、本開示は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーを含む皮膚引き締め組成物であって、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、少なくとも2つのガラス転移温度(T
g)を有する、組成物に関する。
【0011】
更なる実施形態において、本開示は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーを含む皮膚引き締め膜であって、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、少なくとも2つのガラス転移温度(T
g)を有し、膜が、約500kPaより高いヤング率を有する、皮膚引き締め膜に関する。
【0012】
更なる別の実施形態において、本開示は、皮膚の外観を改善するための方法であって、組成物を皮膚に適用することによって、皮膚上に膜を形成する工程を含み、前記組成物は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーを含み、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーは、少なくとも2つのガラス転移温度(T
g)を有し、膜は、約500kPaより高いヤング率を有する、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
様々な実施形態において、本開示は、皮膚の外観を改善するための組成物に関する。様々な実施形態によれば、本開示は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーを含む組成物に関する。
【0014】
組成物は、皮膚欠陥の外観を低減する上で効果的であり得る。様々な実施形態において、組成物は、皮膚上に膜を形成することによって皮膚の外観を改善することができ、皮膚のそれより高いヤング率を有し、したがって皮膚を引き締める特性を有する。加えて、幾つかの実施形態において、膜は、皮膚欠陥を不鮮明にする又は隠すことができる。したがって、本開示は、更に、本明細書に記載の組成物を用いて皮膚上に膜を形成することによって皮膚の外観を改善するための方法に関する。
【0015】
本明細書で用いる場合、用語「長持ちする」とは、膜が皮膚上に形成された後、膜が、少なくとも約6時間、例えば少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間持続することを意味する。
【0016】
本明細書で用いる場合、用語「持続する」は、膜が皮膚上の位置で実質的にそのままの状態であることを表すことを意味する。
【0017】
本明細書で用いる場合、用語「迅速に形成する」とは、組成物を皮膚に適用した後、膜が約20分未満、例えば約15分未満、又は約10分未満の範囲内で形成することを意味する。
【0018】
本明細書で用いる場合、皮膚欠陥に関する用語「不鮮明な」は、欠陥の視覚的外観が目立たないことを意味する。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「引き締める」とは、使用者にとって皮膚がより引き締まった感触を有する仕方で膜が収縮し、皮膚中の皺の視覚的外観を低減することを意味する。
【0020】
本明細書で用いる場合、用語「ソフトフォーカス」は、皮膚の視覚的外観が、より均一かつマットであり、皮膚欠陥を不鮮明にする又は隠すことにつながることを意味する。
【0021】
本明細書で用いる場合、「耐久性のある」とは、膜が、容易にこすり取られず、又は汗、水、メーキャップ、ローション等によって除去されず、使用者の手で除去されるまで膜が実質的にそのまま残ることを意味する。
【0022】
組成物
様々な実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーを含み、これらは一緒に会合を形成する。溶媒、シリコーンエラストマー、湿潤剤、水、及び顔料等の追加の任意選択の成分も、組成物中に含んでよい。
【0023】
熱可塑性エラストマー
様々な例示的かつ非限定的実施形態によれば、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが、少なくとも2つのガラス転移温度(「T
g」)を有するブロックコポリマーから選択され得る。ブロックコポリマーは、炭化水素に可溶性であっても、油性相中に分散性であってもよい。様々な実施形態において、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーは、非晶質、結晶質、又は半結晶質でよい。
【0024】
ブロックコポリマーは、1つ又は複数の軟質セグメントに結合している1つ又は複数の硬質セグメントを含む。熱可塑性エラストマーの硬質セグメントは、ビニルモノマーを種々の量で含み得る。適切なビニルモノマーの例には、限定はされないが、スチレン、メタクリレート、アクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、酢酸ビニル等が含まれる。軟質セグメントは、飽和、不飽和、又はこれらの組合せでよい、オレフィンポリマー及び/又はコポリマーを含み得る。例示的なオレフィンコポリマーとしては、限定はされないが、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ブチレンコポリマー、プロピレン/ブチレンコポリマー、ポリブチレン、ポリイソプレン、水素化ブタンとイソプレンとのポリマー、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0025】
例として、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーは、2〜5個の炭素原子及び1つ又は2つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種の不飽和炭化水素モノマーを重合することによって得られる、ジブロック、トリブロック、マルチブロック、放射状、及び星形コポリマーから選択してよい。2〜5個の不飽和炭素原子を有する不飽和炭化水素モノマーの非限定的な例として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン又はペンタジエンが挙げられる。様々な例示的かつ非限定的な実施形態において、ブロックコポリマーは、少なくとも1つのスチレンブロック、並びにブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、又はこれらの混合物から選択される単位を含む少なくとも1つのブロックを含むものから選択してよい。
【0026】
任意選択により、モノマーの重合後に、ブロックコポリマーを水素化して、残留エチレン性不飽和基を還元してもよい。例えば、炭化水素系ブロックコポリマーは、任意選択により、スチレンブロック及びエチレンブロック/C
3〜C
4アルキレン又はイソプレンブロックを含む水素化コポリマーでよい。一例示的実施形態において、ブロックコポリマーは、非晶質炭化水素ブロックコポリマー、例えばスチレンと、2〜5個の炭素原子を含有し、1つ又は2つのエチレン性不飽和基を含む炭化水素のモノマーとの非晶質炭化水素ブロックコポリマーである。
【0027】
非晶質熱可塑性エラストマーは、T
gが約20℃未満、例えば約0℃未満、約-20℃未満、又は約-40℃未満の少なくとも1つの第1のブロックを含む。第1のブロックのT
gは、例えば、約-150℃〜約20℃、例えば約-100℃〜約0℃の範囲であってよい。ブロックコポリマーは、T
gが約25℃超、例えば約50℃超、約75℃超、約100℃超、又は約150℃超の少なくとも1つの第2のブロックも含む。第2のブロックのT
gは、例えば、約25℃〜約150℃、例えば約50℃〜約125℃、約60℃〜約120℃、又は約70℃〜約100℃の範囲であってよい。
【0028】
例示的かつ非限定的な非晶質ジブロックコポリマーは、スチレン-エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン、又はスチレン-イソプレンコポリマーから選択することができる。ジブロックコポリマーは、例えば、Kraton Polymers社によりKraton(登録商標)G1701Eの名称で販売されている。
【0029】
例示的トリブロック非晶質コポリマーは、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン/ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンのコポリマー、及びスチレン-ブタジエン-スチレンのコポリマー、例えばKraton Polymers社によりKraton(登録商標)G1650、Kraton(登録商標)D1101、Kraton(登録商標)D1102、Kraton(登録商標)D1160の各名称で販売されているものから選択することができる。一例示的実施形態において、熱可塑性エラストマーは、トリブロックコポリマースチレン-ブチレン/エチレン-スチレンジブロックコポリマー及びスチレン-エチレン/ブチレンの混合物、例えばKraton Polymers社によりKraton(登録商標)G1657Mの名称で販売されているものでよい。更なる例において、熱可塑性エラストマーは、水素化トリブロックコポリマースチレン-ブチレン/エチレン-スチレン水素化星形ポリマー及びエチレン-プロピレン-スチレンの混合物でよく、該混合は、具体的には別の油中のイソドデカン中でよい。このような混合物は、例えば、Penreco社によって商標名VERSAGEL(登録商標)M5960及びVERSAGEL(登録商標)M5670で販売されている。
【0030】
更なる例示的実施形態において、少なくとも1種の熱可塑性エラストマーは、少なくとも2つのガラス転移温度を有する半結晶質ブロックコポリマーから選択される。半結晶質ブロックコポリマーは、T
gが約40℃超、例えば約75℃超、又は100℃超の少なくとも1つの第1のブロックを含むことができる。第1のブロックのT
gは、例えば、約40℃〜約150℃、例えば約50℃〜約100℃の範囲であってよい。半結晶質ブロックコポリマーは、T
gが約-50℃未満、例えば約-75℃未満、約-100℃未満、又は約-150℃未満の少なくとも1つの第2のブロックも含む。第2のブロックのT
gは、例えば、約-150℃〜約-50℃、例えば約-100℃〜約-50℃の範囲であってよい。
【0031】
非限定的な例として、半結晶質熱可塑性エラストマーは、ポリアミド及び/又はポリシリコーン及び/又はポリウレタン、例えばポリシリコーン-ポリアミド又はポリシリコーン-ポリウレタンを含有するコポリマーから選択してよい。例えば、半結晶質熱可塑性エラストマーは、式Iに対応する少なくとも1つの部分を含むポリオルガノシロキサン含有ポリマーから選択してよい:
【0033】
[式中、
1)R
1、R
2、R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよく、(a)場合によりその鎖内に1つ又は複数の酸素、硫黄及び/又は窒素原子を含有し、かつ場合により部分的に又は全体的にフッ素原子で置換されている、直鎖状、分枝状又は環状の飽和又は不飽和C
1〜C
40炭化水素系基、(b)任意選択により1つ又は複数のC
1〜C
4アルキル基で置換されている、C
6〜C
10アリール基、(c)場合により1つ又は複数の酸素、硫黄及び/又は窒素原子を含有する、ポリオルガノシロキサン鎖から選択される基を表し、
2)Xは、同一でも異なっていてもよく、場合によりその鎖内に1つ又は複数の酸素及び/又は窒素原子を含有する、直鎖状又は分枝状のC
1〜C
30アルキレンジイル基を表し、
3)Yは、任意選択により1つ又は複数の酸素、硫黄及び/若しくは窒素原子を含み、かつ/又はフッ素、ヒドロキシル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
1〜C
40アルキル、C
5〜C
10アリール、任意選択により1〜3つのC
1〜C
3アルキル、C
1〜C
3ヒドロキシアルキル、及びC
1〜C
6アミノアルキル基で置換されているフェニル、の原子若しくは原子群のうちの1つで任意選択により置換されている、飽和又は不飽和C
1〜C
50の直鎖状又は分枝状二価アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、アルキルアリーレン又はアリールアルキレン基であり、
4)Gは、同一でも異なっていてもよく、エステル、アミド、スルホンアミド、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素基、及びこれらの組合せから選択される基を表し、
5)mは、1〜1,000、好ましくは1〜700、より好ましくは6〜200の範囲の整数であり、
6)nは、2〜500、好ましくは2〜200の範囲の整数である]。
【0034】
更なる実施形態において、半結晶質熱可塑性エラストマーは、式IIに対応する少なくとも1つの部分を含むコポリマーから選択してよい:
【0036】
[式中、
R
1及びRは、同一でも異なっていてもよく、上で式(I)について定義した通りであり、
R
7は、上でR
1及びR
3について定義した基を表し、又は式-X-G-R
9(式中、X及びGは、上で式(I)について定義した通りである)の基を表し、R
9は、水素原子、又はその鎖内にO、S及びNから選択される1つ又は複数の原子を任意選択により含み、1つ又は複数のフッ素原子及び/若しくは1つ又は複数のヒドロキシル基、若しくは1つ又は複数のC
1〜C
4アルキル基で任意選択により置換されているフェニル基で任意選択により置換されている、直鎖状、分枝状若しくは環状の、飽和若しくは不飽和のC
1〜C
50炭化水素系基を表し、
R
8は、式-X-G-R
9(式中、X、G及びR
9は、上で定義した通りである)の基を表し、
m
1は、1〜998の範囲の整数であり、
m
2は、2〜500の範囲の整数である]。
【0037】
更なる別の実施形態において、式(I)の幾つかの異なる部分及び/又は式(II)の幾つかの異なる部分を含むブロックコポリマー、例えば基R
1、R
2、R
3、R
4、X、G、Y、m及びnのうちの少なくとも1つが、部分のうちの1つと異なっているポリマーを使用することも可能である。式(I)の少なくとも1つの部分、及び式(II)の少なくとも1つの部分を含むブロックコポリマーを使用することもまた可能であり、式(I)の部分及び式(II)の部分は、場合により互いに同一であるか又は互いに異なる。
【0038】
例えば、少なくとも1つの実施形態において、半結晶質熱可塑性エラストマーは、式IIIに対応する少なくとも1つの部分及び式IVに対応する少なくとも1つの部分を含有するポリアミドコポリマーから選択してもよい:
【0040】
[式中、
(a)R
1、R
2、R
3及びR
4は、同一であるか又は異なっており、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シロキサン鎖、及びフェニルからなる群から選択されてよく、
(b)Xは、1〜30個の炭素を有する直鎖状又は分枝状アルキレン鎖であり、
(c)Yは、1〜40個の炭素を有する直鎖状又は分枝状アルキレン鎖からなる群から選択され、
(d)mは、1から700の間の数字であり、
(e)nは、1から500の間の数字である]。
【0041】
例として、半結晶質熱可塑性エラストマーのみ、Nylon 6、Nylon 66及びNylon-611/ジメチコンコポリマーから選択してよい。
【0042】
熱可塑性エラストマーは、組成物の質量に対して、約25%以下、例えば約5%〜約20%、約6%〜約18%、約7%〜約16%、約8%〜約15%、約9%〜約14%の範囲の量で組成物中に存在し得る。
【0043】
接着性ポリマー
本開示による組成物は、少なくとも1種の接着性膜形成ポリマーを更に含む。様々な実施形態において、少なくとも1種の接着性ポリマーは、非晶質、結晶質、又は半結晶質でよい。
【0044】
様々な実施形態において、接着性ポリマーは、様々な実施形態に従い、約25℃超、例えば約50℃超、約75℃超、又は約100℃超のT
gを有し得る。更なる実施形態において、接着性ポリマーは、約25℃未満、例えば約0℃未満、約-25℃未満、又は約-50℃未満のT
gを有し得る。
【0045】
少なくとも1種の接着性ポリマーは、組成物の質量に対して、約25%以下、例えば約5%〜約20%、約6%〜約18%、約7%〜約16%、約8%〜約15%、約9%〜約14%の範囲の量で組成物中に存在し得る。
【0046】
約25℃超のT
gを有する接着性ポリマーの非限定的な例として、本明細書中に参照により組み込まれたWO2015/091513に記載のもの等の、参照しやすいように本明細書において「油分散体」と称する非水性分散体中で安定化された、C
1〜C
4アルキル(メタクリレート)ポリマーのポリマー粒子を挙げることができる。
【0047】
例として、C
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート及びtert-ブチル(メタ)アクリレートから選択され得る。例えば、ポリマーは、メチルアクリレート及び/又はエチルアクリレートポリマーでもよい。
【0048】
ポリマーはまた、とりわけ少なくとも1個のカルボン酸、リン酸又はスルホン酸官能基を含むエチレン性不飽和酸モノマー、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸又はアクリルアミドグリコール酸、及びこれらの塩から選択される、エチレン性不飽和酸モノマー又はその無水物も含み得る。例えば、エチレン性不飽和酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及び無水マレイン酸から選択することができる。
【0049】
塩は、アルカリ金属、例えば、ナトリウム又はカリウムの塩;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム、マグネシウム又はストロンチウムの塩;金属塩、例えば、亜鉛、アルミニウム、マンガン又は銅;式NH
+のアンモニウム塩;第四級アンモニウム塩;有機アミンの塩、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン又はトリス(2-ヒドロキシエチル)アミンの塩;リシン又はアルギニン塩から選択され得る。
【0050】
したがって、油分散体の粒子のポリマーは、ポリマーの総質量に対して、約80質量%から約100質量%のC
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレートと、約0質量%から約20質量%のエチレン性不飽和酸モノマーとを含むか、又はそれらから本質的になることができる。一例示的実施形態によれば、ポリマーは、1種以上のC
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーから本質的になる。別の例示的実施形態によれば、ポリマーは、C
1〜C
4(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸又は無水マレイン酸とのコポリマーから本質的になる。
【0051】
非限定的な例のみとして、任意選択により架橋されていても、或いは架橋されていなくてもよい油分散体中の粒子のポリマーは、メチルアクリレートホモポリマー、エチルアクリレートホモポリマー、メチルアクリレート/エチルアクリレートコポリマー、メチルアクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸コポリマー、メチルアクリレート/エチルアクリレート/無水マレイン酸コポリマー、メチルアクリレート/アクリル酸コポリマー、エチルアクリレート/アクリル酸コポリマー、メチルアクリレート/無水マレイン酸コポリマー、及びエチルアクリレート/無水マレイン酸コポリマーから選択してよい。
【0052】
分散体中の粒子のポリマーは、約2000から約10000000の範囲、例えば約150000から約500000の範囲の数平均分子量を有してよい。ポリマー粒子は、油分散体の総質量に対して、約20質量%から約60質量%、例えば約21質量%から約58.5質量%、約30質量%から約50質量%、約35質量%から約45質量%、又は約36質量%から約42質量%の範囲の含有率で、油分散体中に存在し得る。
【0053】
油分散体中の安定剤は、イソボルニル(メタ)アクリレートホモポリマー及び約4超、例えば約4.5超、又は約5超のイソボルニル(メタ)アクリレート/C
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレートの質量比で存在する、イソボルニル(メタ)アクリレートとC
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレートとの統計コポリマーから選択されるイソボルニル(メタ)アクリレートポリマーであってよい。例えば、質量比は、約4.5〜約19、例えば約5〜約19、又は約5〜約12の範囲であってよい。
【0054】
例のみとして、安定剤は、イソボルニルアクリレートホモポリマー、イソボルニルアクリレート/メチルアクリレートの統計コポリマー、イソボルニルアクリレート/メチルアクリレート/エチルアクリレートの統計コポリマー、及びイソボルニルメタクリレート/メチルアクリレートの統計コポリマーから選択してよい。
【0055】
様々な実施形態において、安定剤は、約10,000から約400,000の範囲、例えば約20,000から約200,000の範囲の数平均分子量を有してよい。
【0056】
様々な実施形態において、油分散体中に存在する安定剤+粒子のポリマーの組合せは、安定剤+粒子のポリマーの組合せの総質量に対して、約10質量%から約50質量%、例えば約15質量%から約30質量%の重合イソボルニル(メタ)アクリレートと、約50質量%から約90質量%、例えば約70質量%から約85質量%の重合C
1〜C
4アルキル(メタ)アクリレートとを含む。
【0057】
油分散体の油性媒体は、炭化水素系油を含む。炭化水素系油は、室温(25℃)で液体である油である。「炭化水素系油」という用語は、炭素及び水素原子、並びに任意選択により酸素及び窒素原子から本質的に形成され、又は更にそれらからなり、ケイ素又はフッ素原子を一切含有しない油を意味する。それは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含有していてもよい。
【0058】
油分散体の炭化水素系油性媒体の例示的かつ非限定的な実施形態は、約40個以下、例えば8〜16個又は8〜14個の炭素原子を含有する炭化水素系油を含む。任意選択により、炭化水素系油は、無極性である。例えば、炭化水素系油は、イソドデカンから選択することができる。
【0059】
油分散体は、例えば、WO2015/091513に記載されている通りに調製してよい。
【0060】
或いは、接着性ポリマーは、約25℃超のT
gを有する脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂から選択される脂肪族又は脂環式炭化水素ポリマーから選択してよい。「脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂」とは、オレフィンのポリマー若しくはコポリマー又は部分的に若しくは全体的に水素化されている芳香族炭化水素モノマーのポリマー若しくはコポリマーを意味する。例えば、接着性ポリマーは、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂、水添ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ゴムロジン、ゴムロジンエステル、ウッドロジン、ウッドロジンエステル、トール油ロジン、トール油ロジンエステル、ポリテルペン、芳香族変性ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、水添芳香族変性ポリシクロペンタジエン樹脂、水添脂肪族樹脂、水添脂肪族芳香族樹脂、水添テルペン及び変性テルペン、水添ロジン酸、水添ロジンエステル、ポリイソプレン、部分又は完全水素化ポリイソプレン、ポリブテンジエン、部分又は完全水素化ポリブテンジエン、及び水添スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマーから選択してよい。様々な実施形態において、Eastman Chemical社によりREGALITE(登録商標)の名称で市販されている水添インデン/メチルスチレン/スチレンコポリマーを選択してもよい。例えば、REGALITE(登録商標)R1090、REGALITE(登録商標)R1100、REGALITE(登録商標)S1100、REGALITE(登録商標)R7100、REGALITE(登録商標)R1010、REGALITE(登録商標)R112、又はREGALITE(登録商標)S5100を選択してよい。更なる例として、Arakawa社によりARKON(登録商標)P-90、ARKON(登録商標)P-100、及びARKON(登録商標)P-115の名称で販売されているものを選択してよい。
【0061】
更なる実施形態において、接着性ポリマーは、約25℃未満のT
gを有してよい。例えば、少なくとも1種の接着性ポリマーは、超分枝ポリ酸等のポリ酸から選択してよい。本開示の様々な実施形態に従って有用なポリ酸は、米国特許第7,582,719号及びUS2013/0236409に見出すことができ、これらは両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
用語「超分枝ポリ酸」は、超分枝官能性ポリマーの官能基が、カルボン酸基で置換されるという事実を意味する。有用な不飽和官能化化合物として、これらに限定されないが、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミド、エーテル、アミン、リン酸エステル、シラン及びアルコールが挙げられる。このようなカルボン酸の例として、これらに限定されないが、5-ヘキセン酸、6-ヘプタン酸、10-ウンデシレン酸、9-デセン酸、オレイン酸、及びエルカ酸が挙げられる。また、約1〜約10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖アルコールを有するこれらの酸のエステル、並びに脂肪酸部分中にオレフィン不飽和を含有するトリグリセリド、例えばトール油、魚油、大豆油、アマニ油、綿実油及び該油の部分的に水素化された製品も有用である。その他の有用な材料には、オレフィンアルコール、例えばアリルアルコール、9-デセン-1-オール、10-ウンデシレニルアルコール、オレイルアルコール、エルシルアルコール、これらのアルコールの酢酸又はギ酸エステル、これらのアルコールのC1〜C4アルキルエーテル誘導体、並びにオレイルアミン、エルシルアミン、10-ウンデシレニルアミン及びアリルアミン等の不飽和アミンのホルムアミド又はアセトアミドが挙げられる。
【0063】
様々な実施形態において、本開示に従って有用な超分枝ポリ酸化合物は、少なくとも2つのカルボキシル基を有してよい。様々な実施形態において、超分枝ポリ酸のカルボキシル数は、少なくとも3個、例えば少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、又は少なくとも約150個である。様々な実施形態によれば、超分枝ポリ酸のカルボキシル数は、約50〜約250個の範囲、例えば約75〜約225個、約100〜約200個、又は約125〜175個の範囲である。一実施形態において、超分枝ポリ酸のカルボキシル数は、90〜150個の範囲である。
【0064】
様々な実施形態において、少なくとも1種の超分枝酸性化合物の分子量(Mw)は、約500〜約25,000の範囲、例えば約800〜約10,000、又は約1000〜約8000の範囲である。一実施形態において、超分枝ポリ酸のMwは、約1000〜約6000の範囲である。
【0065】
様々な実施形態において、少なくとも1種の超分枝ポリ酸化合物の210°Fでの粘度は、0.01Pas〜10Pas、例えば0.02〜7Pas、又は0.03〜6Pasの範囲であり、これらの間に存在する全ての範囲及び部分的範囲を含む。粘度は、ASTMD-3236MOD法により、210°FでBrookfield粘度計を使用して決定する。様々な実施形態において、少なくとも1種の超分枝酸性化合物は、約20〜約400mg/KOHの範囲、例えば約30〜約300mg/KOH、又は約50〜約100mg/KOHの範囲の酸価を有する。
【0066】
例示的な一実施形態において、少なくとも1種の接着性ポリマーは、C
30+オレフィン/ウンデシレン酸コポリマー、例えばC
28〜C
52オレフィン/ウンデシル酸コポリマー、例えばNew Phase Technologies社からPerforma V6112
TMの商標名で入手可能なものから選択されるポリ酸である。
【0067】
選択可能な接着性ポリマーの更なる別の例として、アクリル系膜形成剤がある。本明細書で用いる場合、「アクリル系膜形成剤」は、1種以上の(メタ)アクリル酸(及び対応する(メタ)アクリレート)モノマー又は類似のモノマーをベースとした膜形成剤であるポリマーを含む。
【0068】
このような膜形成剤の非限定的な例として、少なくとも1種の無極性モノマー、少なくとも1種のオレフィン性不飽和モノマー、及び少なくとも1種のビニル系官能化モノマーを含有するコポリマーが挙げられる。
【0069】
無極性モノマーの場合、4〜14個のC原子、好ましくは4〜9個のC原子からなるアルキル基を有するアクリル及びメタクリルエステルを含むアクリルモノマーを選択してよい。この種のモノマーの例として、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-アミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、及びこれらの分枝状異性体、例えば2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0070】
オレフィン性不飽和モノマーの場合、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸基、リン酸基、酸無水物、エポキシド、及びアミンから選択される官能基を有するモノマーを使用することが可能である。オレフィン性不飽和モノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、β-アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、ビニル酢酸、ビニルホスホン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アリルアルコール、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0071】
ビニル系官能化化合物の場合、例示的なモノマーには、前述のモノマーのうちの片方又は両方と共重合性のモノマーを含み、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、tert-ブチルフェニルアクリレート、tert-ブチルフェニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-ウンデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,5-ジメチルアダマンチルアクリレート、4-クミルフェニルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、4-ビフェニルアクリレート、4-ビフェニルメタクリレート、2-ナフチルアクリレート、2-ナフチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、メチル3-メトキシアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、ブチルジグリコールメタクリレート、エチレングリコールアクリレート、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシ-ポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,2-トリフ
ルオロエチルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N-(1-メチルウンデシル)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(n-オクタデシル)アクリルアミド、並びに更にN,N-ジアルキル置換アミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、ハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルピロリドン、スチレン、a-及びp-メチルスチレン、a-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、マクロモノマー、例えば2-ポリスチレン-エチルメタクリレート(分子量、4000〜13000g/molのMw)、ポリ(メチルメタクリレート)エチルメタクリレート(2000〜8000g/molのMw)が挙げられる。
【0072】
例示的なアクリル系膜形成剤として、アクリル酸、イソブチルアクリレート及び酢酸イソボルニルのコポリマー、例えばPseudoblock(Chimex社)及びSynamer-3の名称で販売されているものを挙げることができる。これら両方の市販製品中に、コポリマーが、溶媒と1:1の比(50%固体)で存在する。別の例示的な膜形成剤は、50%のオクチルドデシルネオペンタノエート中、50%の活性材料での、ポリ(イソボルニルメタクリレート-8コ-イソボルニルアクリレート-コ-イソブチルアクリレート-コ-アクリル酸)(Chimex社製のMexomere PAZ)である。
【0073】
フィラー
組成物は、少なくとも1種のフィラーを含む。フィラーは、本質的に無機又は有機であってよく、いかなる形状であってもよい。様々な実施形態において、フィラーは、約100nm超の粒径、及び/又は約200m
2/g超の比表面積を有し得る。
【0074】
非限定的な例として、フィラーは、タルク、マイカ、シリカ、疎水性物質で表面処理したシリカ、ヒュームドシリカ、カオリン、ポリアミド[Nylon(登録商標)]粉末[例えばAtochem社からのOrgasol(登録商標)]、ポリウレタン粉末、ポリ-β-アラニン粉末及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー[Teflon(登録商標)]粉末、ラウロイルリジン、デンプン、窒化ホウ素、中空ポリマー微小球、例えばポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリル微小球、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie社)、又はアクリル酸コポリマー微小球[Dow Corning社からのPolytrap(登録商標)]及びシリコーン樹脂ミクロビーズ[例えばToshiba社からのTospearls(登録商標)]、エラストマー性ポリオルガノシロキサン粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球[Maprecos社からのSilica Beads(登録商標)]、ガラス若しくはセラミックのマイクロカプセル、並びに8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を含有する有機カルボン酸に由来する金属石けん、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛又はミリスチン酸マグネシウムから選択することができる。
【0075】
少なくとも特定の実施形態において、少なくとも1種のフィラーは、疎水性シリカエアロゲル粒子から選択してよい。シリカエアロゲルは、シリカゲルの液体成分を空気で置き換えることによって(乾燥することによって)得られる多孔質材料である。本開示の実施形態に従って有用な疎水性シリカエアロゲル粒子は、シリル化されたシリカ(INCI名: シリル化シリカ)エアロゲル粒子を含む。シリル化により表面修飾された疎水性シリカのエアロゲル粒子の調製は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,470,725号で、一層完全に説明されている。
【0076】
様々な実施形態において、トリメチルシリル基により表面修飾された疎水性シリカのエアロゲル粒子が選択され得る。例えば、Dow Corning社によりVM-2260(登録商標)の名称で販売されている、約1000ミクロンの平均粒径及び600〜800m
2/gの範囲の単位質量当たりの比表面積を有するエアロゲル粒子、又は同様にDow Corning社によりVM-2270(登録商標)の名称で販売されている、5〜15ミクロンの範囲の平均粒径及び600〜800m
2/gの範囲の単位質量当たりの比表面積を有するエアロゲル粒子を選択することができる。その他の実施形態において、Cabot社によりAerogel TLD 201(登録商標)、Aerogel OGD 201(登録商標)、及びAerogel TLD 203(登録商標)、CAB-O-SIL TS-530、CAB-O-SIL TS-610、CAB-O-SIL TS-720、Enova Aerogel MT 1100(登録商標)、並びにEnova Aerogel MT 1200(登録商標)の各名称で販売されているエアロゲルを選択することができる。
【0077】
任意選択により、フィラーの混合物は、本開示による組成物中に存在し得る。例えば、異なるエアロゲル粒子の混合物、又はエアロゲルと異なるタイプのフィラーとの混合物を使用することができる。
【0078】
少なくとも1種のフィラーは、組成物の総質量に対して、約0.1質量%〜約20質量%、例えば約0.2質量%〜約15質量%、約0.5質量%〜約10質量%、又は約1質量%〜約6質量%の範囲の総量で存在し得る。少なくとも特定の例示的実施形態において、フィラーは、組成物の総質量に対して、約5質量%未満、例えば約4質量%未満の量で存在する。一実施形態において、フィラーは、組成物の総質量に対して、約3質量%以下の量で存在する。
【0079】
追加の成分
本開示による組成物は、任意選択により、溶媒、シリコーンエラストマー、湿潤剤、水、及び顔料等の追加の成分を更に含んでよい。
【0080】
溶媒
組成物は、少なくとも1種の溶媒を含んでもよい。任意選択により、組成物は、室温(25℃)で約100Pa超、例えば約500Pa超、又は約1000Pa超の蒸気圧を有する溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒を含んでよい。様々な実施形態において、組成物は、室温(25℃)で約25Pa未満の蒸気圧を有する溶媒を含まない又は実質的に含まない。更なる実施形態において、組成物は、室温(25℃)で約100Pa超、例えば500Pa超、又は1000Pa超の蒸気圧を有する少なくとも1種の溶媒、及び室温(25℃)で約100Pa未満、例えば約50Pa未満、又は約25Pa未満の蒸気圧を有する少なくとも1種の溶媒を含んでよい。
【0081】
様々な実施形態において、組成物は、少なくとも1種の揮発性有機溶媒を含む。揮発性有機溶媒は、例えば、揮発性炭化水素系油及び揮発性シリコーン油から選択することができる。
【0082】
例えば、揮発性炭化水素油には、これらに限定されないが、8〜16個の炭素原子を有するもの及びそれらの混合物、例えば分枝状C
8〜C
16アルカン及びC
8〜C
16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカンが挙げられる。例えば、少なくとも1種の溶媒は、Isopar(登録商標)又はPermethyl(登録商標)の商標名で販売されている油、C
8〜C
16分枝状エステル、例えばイソヘキシル又はイソデシルネオペンタノエート及びこれらの混合物から選択することができる。少なくとも特定の実施形態において、揮発性炭化水素油は、少なくとも40℃の引火点を有する。また、イソパラフィン及びその他の揮発性炭化水素系油、例えば石油蒸留物の混合物を使用することも可能である。
【0083】
更に、揮発性シリコーン油は、室温(25℃)で6cSt以下の粘度を有し、かつ2〜7個のケイ素原子を有する直鎖状又は環状シリコーン油から選択することができ、これらのシリコーンは、1〜10個の炭素原子のアルキル基又はアルコキシ基で任意選択により置換される。使用可能な揮発性シリコーン油の例として、これらに限定されないが、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。少なくとも特定の実施形態において、揮発性シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0084】
加えて、少なくとも1種の揮発性溶媒は、これらに限定されないが、アルコール、揮発性エステル及び揮発性エーテルを含めた極性揮発性溶媒から選択することができる。
【0085】
少なくとも1種の溶媒は、組成物の約95質量%以下、例えば約90質量%以下、約85質量%以下、約80質量%以下、約75質量%以下、約70質量%以下、約65質量%以下、約60質量%以下、約55質量%以下、又は約50質量%以下の量で組成物中に存在し得る。例えば、少なくとも1種の溶媒は、組成物中に、約40%から約95%、例えば約50%から約90%、又は約60%から約85%、又は約65%から約80%の範囲の量で存在し得る。
【0086】
シリコーンエラストマー
組成物は、少なくとも1種のシリコーンエラストマーを任意選択により更に含んでもよい。驚くべきことに、特定の実施形態において、少なくとも1種のシリコーンエラストマーは、膜の機械的又は光学的特性に著しく影響を与えることなく、膜の厚さ及び耐水性等の特性を改善することができる。その他の実施形態において、少なくとも1種のシリコーンエラストマーの添加は、皮脂による湿潤性を減らすことができ、膜の引き締め特性の損失の防止に役立つ。少なくとも特定の実施形態において、1%超の活性材料(AM)、例えば2%超のAMを有するシリコーンエラストマーを選択することが有利であり得る。
【0087】
少なくとも1種のシリコーンエラストマーは、例えば、少なくとも1種の油中に分散する少なくとも1種のシリコーンクロスポリマーから選択することができる。少なくとも1種のシリコーンクロスポリマーは、特定の実施形態において、ジメチコンクロスポリマー、例えばジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー及びジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマーから選択してよい。その他の実施形態において、シリコーンクロスポリマーは、アルキル基、ポリエーテル基、ポリグリセリン基から選択される1つ又は複数の基により修飾されてよい。例えば、アルキル修飾シリコーンクロスポリマーは、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマー、及びC
30〜C
45アルキルセテアリルジメチコンクロスポリマーから選択してよい。ポリエーテル修飾シリコーンクロスポリマーの非限定的な例として、ジメチコン/PEG-10/15クロスポリマーが挙げられる。例示的なアルキル及びポリエーテル修飾シリコーンクロスポリマーは、例えば、PEG-10/ラウリルジメチコンクロスポリマー及びPEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマーから選択してよい。例示的なポリグリセリン修飾シリコーンクロスポリマーには、ジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマー及びラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマーが挙げられる。
【0088】
少なくとも特定の実施形態において、シリコーンポリマーは、ポリエチレングリコール基若しくはポリプロピレン基、又は親水性部分を含まない。任意選択により、シリコーンエラストマーは、Dow Corning社よりEL-8040 IDの名称で販売されているシリコーン有機ブレンドイソドデカン(及び)ジメチコンクロスポリマー(18% AM)若しくはEL-8050の名称で販売されているジメチコン/ビス-イソブチルPPG-20クロスポリマー(イソドデカン中17% AM)、又はWacker社よりGEL BELSIL RG90の名称で販売されているイソドデカン(及び)ビニルジメチル/トリメチルシロキシシリケートステアリルジメチコンクロスポリマー(イソドデカン中20% AM)から選択してよい。
【0089】
シリコーンクロスポリマーは、少なくとも1種の油中に分散していてよい。特定の実施形態において、油は、環状及び直鎖状オルガノポリシロキサン等のシリコーン油から選択することができる。環状オルガノポリシロキサンは、例えば、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、及びメチル化環状オルガノポリシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンを含んでよい。直鎖状オルガノポリシロキサンの非限定的な例として、低分子量ジメチコン、高分子量ジメチコン、直鎖状オルガノポリシロキサンのアルキル誘導体、例えばセチルジメチコン及びラウリルトリメチコーン、直鎖状オルガノポリシロキサンのアリール誘導体、例えば、フェニルトリメチコーン、並びに直鎖状オルガノポリシロキサンのヒドロキシル化誘導体、例えばジメチコノールが挙げられる。その他の実施形態において、油は、鉱油等の有機油;直鎖状及び分枝状アルカン、例えば、イソドデカン;トリエチルヘキサノイン;並びにスクアランから選択してよい。
【0090】
少なくとも1種のシリコーンクロスポリマーは、幾つかの実施形態において、シリコーンエラストマーブレンドの総質量に対して、約5質量%から約35質量%、例えば、約10質量%から約20質量%、又は約25質量%から約35質量%、又は約20質量%から約30質量%を占めてよい。少なくとも1種の油は、シリコーンエラストマーブレンドの総質量に対して、約65質量%から約95質量%、例えば、約80質量%から約90質量%、又は約65質量%から約75質量%、又は約70質量%から約80質量%を占めてよい。
【0091】
様々な例示的実施形態において、シリコーンエラストマーブレンドは、約20%から約30%のジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを含む。更なる例示的実施形態において、シリコーンエラストマーブレンドは、約70質量%から約80質量%のジメチコンを含む。更なる別の例示的実施形態において、シリコーンエラストマーブレンドは、約20質量%から約30質量%のジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー及び約70質量%から約80質量%のジメチコンを含む。
【0092】
例えば、以下全てShin Etsu社により、名称KSG-16ジメチコン(及び)ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、KSG-21(活性材料中27%)INCI名:ジメチコン/PEG-10ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー)、KSG-20(活性材料中95%)INCI名:PEG-10ジメチコンクロスポリマー)、KSG-30(活性材料中100%)INCI名:ラウリルPEG-15ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー)、KSG-31(活性材料中25%)INCI名:ラウリルPEG-15ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー)、KSG-32若しくはKSG-42若しくはKSG-320若しくはKSG-30(活性材料中25%)INCI名:ラウリルPEG-15ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー)、KSG-33(活性材料中20%)ラウリルPEG-15ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー)、KSG-210(活性材料中25%)INCI名:ジメチコン/PEG-10/15クロスポリマー)、KSG-310:鉱油中のポリオキシエチレン化されたラウリル修飾ポリジメチルシロキサン、KSG-330及びKSG-340:PEG-15/ラウリルジメチコンクロスポリマー、及びX-226146(活性材料中32%)INCI名:ジメチコン/PEG-10ジメチコンビニルジメチコンクロスポリマー)で販売されているシリコーンエラストマー;以下全てDow Corning社により、DC9010(活性材料中9%)及びDC9011(活性材料中11%)INCI名:PEG-12ジメチコンクロスポリマー)、DC9040シクロペンタシロキサン(及び)ジメチコンクロスポリマー、並びにDC9041ジメチコン(及び)ジメチコンクロスポリマーで販売されているシリコーンエラストマー;又はMomentive社によりVELVESIL製品、例えばVELVESIL 125及びVELVESIL DMで販売されている製品を選択してよい。
【0093】
シリコーンエラストマーのその他の例として、KSG-710(活性材料中25%、INCI名:(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー);並びにKSG-820、KSG-830及びKSG-840(全てINCI名が(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマーであるが、希釈剤が異なり、820はイソドデカン中、830はトリエチルヘキサノイン中、840はスクワレン中であり、全てShin Etsu社製である)が挙げられる。
【0094】
少なくとも1種のシリコーンエラストマーは、任意選択により、組成物の質量に対して、約10質量%以下、例えば約8質量%以下、約5質量%以下、約4.5質量%以下、約3.5質量%以下、約3質量%以下、約2.5質量%以下、約2質量%以下、約1.5質量%以下、約1質量%以下、約0.75質量%以下、約0.5質量%以下、約0.25質量%以下、約0.2質量%以下、又は約0.1質量%以下の量で組成物中に含まれ得る。特定の実施形態において、少なくとも1種のシリコーンエラストマーは、組成物の質量に対して、約1質量%〜約10質量%、例えば約2質量%〜約8質量%、約3質量%〜約6質量%、又は約4質量%〜約5質量%の範囲の量で存在し得る。
【0095】
湿潤剤
任意選択により、本開示による組成物は、少なくとも1種の湿潤剤又は保湿剤を含んでもよい。驚くべきことに、少なくとも特定の実施形態において、少なくとも1種の湿潤剤は、膜の機械的特性に悪影響を与えることなく、組成物により皮膚上に形成される膜の光学的特性及び感触を改善することができる。
【0096】
例のみとして、湿潤剤又は保湿剤は、グリセリン及びグリコール、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びジエチレングリコール等、グリコールエーテル、例えばモノプロピレン、ジプロピレン及びトリプロピレングリコールアルキル(C
1〜C
4)エーテル、モノエチレン、ジエチレン及びトリエチレングリコールを含めるが、これらに限定されないポリヒドロキシ化合物から選択してよい。
【0097】
少なくとも1種の湿潤剤は、組成物の約20質量%以下、例えば約15質量%以下、約14質量%以下、約13質量%以下、約12質量%以下、約11質量%以下、約10質量%以下、約9質量%以下、約8質量%以下、約7質量%以下、約6質量%以下、約5質量%以下、約4質量%以下、約3質量%以下、約2質量%以下、約1質量%以下、又は約0.5質量%以下の量で組成物中に存在し得る。
【0098】
水
任意選択により、少なくとも特定の実施形態において、本開示による組成物に水を添加してもよい。驚くべきことに、特定の非限定的な実施形態において、水は、組成物により皮膚上に形成された膜の特性、例えばヤング率、透明性、凝集力、及び厚さを改善することができる。
【0099】
水は、組成物の約15質量%以下、約12質量%以下、約10質量%以下、約9質量%以下、約8質量%以下、約7質量%以下、約6質量%以下、約5質量%以下、約4質量%以下、約3質量%以下、約2質量%以下、約1質量%以下、又は約0.5質量%以下の量で組成物中に含まれ得る。少なくとも特定の実施形態において、組成物は、無水又は実質的に無水である。その他の実施形態において、組成物は、油中水型(W/O)エマルションの形態でよい。
【0100】
少なくとも特定の実施形態において、水及び少なくとも1種の湿潤剤、例えば水及びグリセリンを一緒に組成物中に含むことが有利であり得る。
【0101】
着色料
組成物は、例えば特定の皮膚欠陥を隠すのに有用であり得る着色膜を皮膚上に作るために、少なくとも1種の着色料を更に含んでよい。様々な実施形態において、少なくとも1種の着色料は、染料、顔料、及び真珠光沢剤から選択してよい。
【0102】
少なくとも1種の着色料は、例えば、染料から選択されてよい。染料の非限定的な例として、Sudan Red、D & C Red 17、D & C Green 6、β-カロテン、大豆油、Sudan Brown、D & C Yellow 11、D & C Violet 2、D & C Orange 5、キノリンイエロー及びアナトーが挙げられる。
【0103】
様々な実施形態において、少なくとも1種の着色料は、顔料から選択されてよい。本明細書で用いる場合、用語「顔料」は、それが存在する組成物に不溶性であり、かつ結果として得られた膜を着色及び/又は不透明化するように意図されている、白色又は有色の、無機又は有機の粒子を意味すると理解されるものとする。
【0104】
例として、使用可能な無機顔料には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、鉄ブルー、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、及びクロム水和物が挙げられる。例えば、顔料は、二酸化チタン並びに赤色、黒色及び/又は黄色酸化鉄、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0105】
更なる実施形態において、例えば、酸化鉄タイプを含有するシリカ微小球であり得る構造を有する顔料を使用してよい。この構造を有する顔料の例は、Miyoshi社によって参照名PC Ball PC-LL-100 Pで販売されている製品であり、これは、黄色酸化鉄を含有するシリカ微小球からなる。
【0106】
更なる例として、使用可能な有機顔料には、ニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、ピレン、キノリン、アントラキノン、トリフェニルメタン、フルオラン、フタロシアニン、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、インジゴ、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン及びキノフタロン化合物が挙げられる。例えば、有機顔料は、カーマインレーキ、カーボンブラック、アニリンブラック、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、カラーインデックス(Color Index)においてCI 42090、69800、69825、73000、74100及び74160の参照名で分類される青色顔料、カラーインデックスにおいてCI 11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000及び47005の参照名で分類される黄色顔料、カラーインデックスにおいてCI 61565、61570及び74260の参照名で分類される緑色顔料、カラーインデックスにおいてCI 11725、15510、45370及び71105の参照名で分類されるオレンジ色顔料、カラーインデックスにおいてCI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915及び75470の参照名で分類される赤色顔料、並びに特許FR 2 679 771に記載されるようなインドール又はフェノール誘導体の酸化重合により得られる顔料から選択され得る。
【0107】
真珠光沢剤は、チタンで又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ等の白色真珠光沢顔料、酸化鉄で被覆されたチタンマイカ等の有色真珠光沢顔料、特にフェリックブルー又は酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、上に挙げたタイプの有機顔料で被覆されたチタンマイカ、並びにオキシ塩化ビスマス系の真珠光沢顔料から選択されてよい。
【0108】
1種以上の着色料を、任意選択により、組成物の質量に対して、約5質量%以下、例えば約4.5質量%以下、約4質量%以下、約3.5質量%以下、約3質量%以下、約2.5質量%以下、約2質量%以下、約1.5質量%以下、約1質量%以下、約0.75質量%以下、約0.5質量%以下、約0.25質量%以下、約0.2質量%以下、又は約0.1質量%以下の量で組成物中に含んでよい。
【0109】
添加する着色料の量が多いほど、毛穴、ニキビ、しみ等の皮膚欠陥を隠す皮膚上の膜の効果が高くなることを理解すべきである。したがって、当業者は、最終配合物の目的の用途を考慮して、組成物に適した着色料の量を選択することができる。
【0110】
膜
本開示による組成物を皮膚に適用するとき、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の接着性ポリマー、及び少なくとも1種のフィラーが一緒に、皮膚上に膜を作るマトリックスを形成する。本明細書に記載の組成物によって形成される膜は、迅速に形成し、長持ちで耐久性があり、皮膚を引き締める膜に有利な光学的特性、例えば透明性、マット効果、及びソフトフォーカス効果を有し、これは皮膚欠陥を不鮮明にするのに役立ち、したがって皮膚欠陥が目立たなくなる。
【0111】
加えて、上記の通り、本開示による組成物は、ヒト皮膚より堅い膜を形成し、したがってヒト皮膚を引き締めることができる。ヒト皮膚は、10kPa〜100kPaの範囲のヤング率を有し、したがって皮膚を引き締める膜は、100kPa超のヤング率を有するべきである。組成物によって形成される膜は、幾つかの実施形態において500kPa(0.5MPa)超、幾つかの実施形態において1000kPa(1MPa)超、幾つかの実施形態において5000kPa(5MPa)超、更には幾つかの実施形態において10,000kPa(10MPa)超のヤング率を有する。加えて、本開示による組成物は、皮膚上に効果的かつ長持ちする膜を形成するために、十分な粘稠度G*及び45°未満の位相角を有する。
【0112】
したがって、組成物の量及び成分は、皮膚を引き締めることができると同時に、皮膚欠陥を不鮮明にすることもできる膜を皮膚上にもたらすように選択すべきである。
【0113】
様々な例示的実施形態において、最高の膜特性のために、熱可塑性エラストマー及び接着性ポリマー及びフィラーの総量を、組成物の総質量の、約10質量%超、例えば約15質量%超又は約20質量%超にすると有利であり得る。
【0114】
更なる別の例示的実施形態において、最高の膜特性のために、熱可塑性エラストマー及び接着性ポリマーの量を、熱可塑性エラストマー:接着性ポリマーの比が約1:10〜10:1の範囲、約1:5〜5:1の範囲、又は約1:1〜8:1の範囲になるように選択することが有利であり得る。
【0115】
膜は、組成物を皮膚に適用した後、迅速に、例えば約30分未満、約20分未満、約10分未満、又は約5分未満の範囲内で形成され得る。
【0116】
本開示による膜は、長持ちすることができる。例えば、組成物を皮膚に適用し、膜が形成されたら、膜は、少なくとも約12時間、例えば少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間の間、皮膚上で実質的にそのままの状態で残存し得る。
【0117】
膜はまた、耐久性であり得る。例えば、膜は、こすっても剥がれにくく、発汗によって、又は膜が水、メーキャップ、ローション、若しくは使用者が皮膚に付けたい他の製品と接触したときに落ちにくい。
【0118】
方法
皮膚の外観を改善するための方法であって、本開示による組成物を皮膚に適用して、皮膚上に膜を形成する工程を含む方法も開示する。方法は、皮膚を引き締め、例えば皺、目の下のたるみ等を無くし、かつ/又は皮膚欠陥を不鮮明にし、若しくは隠し、ニキビ、毛穴、しみ等をカモフラージュすることを含む。
【0119】
様々な実施形態によれば、異なる組成物を皮膚に適用して、異なる特性を有する膜を形成することができ、例えば皮膚欠陥が多めのカモフラージュを必要とするか又は少なめのカモフラージュを必要とするか等に応じて、組成物が含む顔料の量を多め又は少なめにすることができる。
【0120】
本明細書で用いる場合、「その(the)」、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、明らかに矛盾しない限り、「1つのみ」に限定されるべきではないことを理解されたい。したがって、例えば、「一部分(a portion)」の言及には、別段内容が明らかにそうでないことを示さない限り、該部分を2つ以上有する実施例を含む。
【0121】
別段指定されない限り、本明細書に記載の何れの方法も、その工程を特定の順序で実施する必要があると解釈することは決して意図しない。したがって、方法のクレームは、実際には、その工程に従うように順序を列挙することはなく、又はそうでなくてもクレーム若しくは本明細書中で、工程が特定の順序に限定されるとは特に規定することもないことから、任意の特定の順序が推定されることは決して意図しない。
【0122】
特定の実施形態の様々な特徴、要素又は工程は、移行句「〜を含む」を用いて開示され得るが、移行句「〜からなる」又は「〜から本質的になる」を用いて説明することができるものを含めた代替の実施形態を含意することを理解されたい。したがって、例えば、A+B+Cを含む方法に含意される代替の実施形態は、方法がA+B+Cからなる実施形態及び方法がA+B+Cから本質的になる実施形態を含む。説明したように、語句「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」は、「少なくとも1つのA又は少なくとも1つのB又は少なくとも1つのC」を含むことが意図され、「少なくとも1つのA及び少なくとも1つのB及び少なくとも1つのC」を含むことも意図される。
【0123】
本明細書に記載する全ての範囲及び量は、開示される何れの点も端点として使用する部分的範囲及び量を含むと理解される。したがって、「1%〜10%、例えば2%〜8%、例えば3%〜5%」の範囲は、「1%〜8%」、「1%〜5%」、「2%〜10%」等の範囲を包含すると理解される。全ての数、量、範囲等は、明白に指定していようとなかろうと、用語「約」によって修正されると理解される。同様に、「約1%〜10%」の所定の範囲は、1%及び10%両方の端点を修正する用語「約」を有することが意図される。
【0124】
成分の量を挙げるとき、活性材料の量を示すことが意図されると理解されたい。
【0125】
特段の指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される、構成成分、反応条件等の量を表現する全ての数は、全ての事例において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、特に矛盾しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値的パラメーターは、本開示により得ようとする所望の特性に応じて変動する可能性がある近似値である。
【0126】
本開示の広範な範囲を記載する数値的な範囲及びパラメーターは近似値であるとはいえ、特段の指定がない限り、具体的な実施例中に記載の数値は、可能な限り正確に報告してある。ただし、一切の数値は、本来、そのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差により必然的に生じる一定の誤差を含有する。以下の実施例は、本開示の実施形態を例示する役目をするが、限定する性質のものではない。
【0127】
本開示による組成物及び方法は、本明細書に記載の要素及び限定を、本明細書に記載の、さもなければ当技術分野において知られているあらゆる追加又は任意選択の構成成分、成分、又は限定とともに含み、それらからなり、又はそれらから本質的になってよい。
【0128】
様々な修正及び変更が、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の送達系、組成物及び方法において行うことが可能であることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にあることを条件として、本発明の修正及び変更を対象として含むことが意図される。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は、例示目的のみに記載するものであり、限定することを意図しない。
【0130】
以下のそれぞれの実施例において、所定の成分の量は、活性材料(AM)に換算する。
【0131】
動的機械分析(DMA)
全ての実施例の膜のヤング率の決定は、以下の通りだった。膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、テフロン(登録商標)板上で溶液をキャストし、終夜、オーブン中、40℃で乾燥することによって作製した。TA instruments社製のDMA Q800FRを使用して、乾燥膜の応力-歪み応答を測定した。速度100%歪み/分、32℃で0%歪みから200%歪みの変形を与えた。次いで、膜のヤング率を、線形粘弾性レジームにおける応力-歪み曲線の勾配から決定した。
【0132】
走査型電子顕微鏡(SEM)測定
SEM用の膜試料を、DMA測定用のものと同じ方法で作製した。後続して、膜を5×5mmの断片に切り分け、両面カーボンテープを有するステージ上に乗せた。試料をHitachi TM-1000卓上SEMで走査した。
【0133】
レオロジー測定
試料溶液のレオロジーを、TA instruments社製のRheometer AR-G2を使用して測定した。空隙200μmで直径20mmの平行板を用いた動的振動モードを利用した。
【0134】
振動数1rad/sで0.001%〜1000%の歪み掃引(strain sweep)を、32℃で試料に加えた。10%歪みでの弾性係数G'及び粘性係数G"の値を、各測定試料ごとに記録した。(線形年弾性レジームにおける)10%歪みでの複素弾性係数G*(粘稠度)及び位相角δは、次式による弾性係数G'及び粘性係数G"から計算した。
【0135】
【数1】
【0136】
ヘイズ及び透明性-BYK Haze-Guard
膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、透明のプラスチック膜上で溶液をキャストし、実験台の上で3時間乾燥することによって作製した。BYK Haze-Guard機器を使用して、膜の透明性及びヘイズを測定した。
【0137】
光沢-BYK光沢計
膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、透明のプラスチック膜上で溶液をキャストし、実験台の上で3時間乾燥することによって作製した。BYK光沢計を使用して、膜の光沢及びマット感を測定した。
【0138】
膜の透過性
膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、テフロン(登録商標)板上で溶液をキャストし、終夜、オーブン中、40℃で膜を乾燥することによって作製した。膜を剥がし取り、5×5cmの断片に切断した。各断片を使用して、2mLの水で充填したシンチレーションバイアルの上部を覆い、一切れのパラフィルムを使用して側面から膜の断片を包んだ。各バイアルの質量並びに種々の時点をすぐに測定した。種々の膜の水分減量を、種々の時点に対してグラフ化し、蒸発曲線と線形関数をすり合わせて蒸発を計算した。膜の水蒸気透過性(P)を次式から計算するが、式中、(J)は水蒸気透過流束であり、(I)は膜の厚さであり、(Δp)は、バイアル中膜によって密封されている空間と膜の外側、すなわち周囲との間の水蒸気圧差である。
P=J/(Δp/l)
【0139】
接触角の測定
膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、スライドガラス上で溶液をキャストし、実験台の上で終夜乾燥することによって作製した。スライドガラス上の膜の接触角は、Biolin Scientific Attension Tensiometerによって測定した。
【0140】
乾燥速度
膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、透明のプラスチック膜上で溶液をキャストし、1時間の間、定期的に計量することによって作製した。
【0141】
内部拘束
膜は、8インチのドローダウンバーを使用して、ニトリルバンド上で溶液をキャストし、1時間の間、乾燥させることによって作製した。乾燥に伴い膜が縮んだら、ニトリルバンドの表面を画像分析によって測定する。
【0142】
透明性、均質化機能、及びホワイトニング機能 - 比色計MINOLTA
膜は、ドローダウンバー(2ミル)を使用して透明なプラスチック膜上で溶液をキャストし、実験台上で1時間乾燥させることによって作製した。Minolta比色計を使用して、膜の並びに皮膚の色合いシートリファレンス及び白黒リファレンスのL、a*、b*及びYを測定し、膜の透明性、均質化機能、及びホワイトニング機能を計算した。
【0143】
摩耗及び被覆率
鼻/頬の領域に沿ってニキビ及び毛穴を有する3名のパネリストの頬上に膜を適用し、6時間置いた。前/後の写真を通して継続性を評価した。輝き、毛穴の隠蔽、欠陥被覆率を、前と後の両方の時間について評価した。
【0144】
(実施例1)
熱可塑性エラストマー、接着性ポリマー、及びフィラーの会合
熱可塑性エラストマーKraton(25%)を、機械的スターラーと一緒にイソパラフィン油中に分散させ、90℃に加熱した。全てのKratonポリマーが溶解し、ポリマー溶液が透明になるまで1〜2時間、90℃で攪拌を続けた。所望の量の油分散体(イソドデカン中49%)及びシリル化シリカを、プラスチック容器中のKraton/イソパラフィン油溶液に特定の比で添加し、溶液を2500rpm/分の高速ミキサーで5分間混合した。最終溶液を室温で維持し、溶媒の蒸発を回避するために密封した。
【0145】
以下のTable 1(表1)は、本開示に従って調製された組成物から形成された膜(Ex.1)と、3種の比較用組成物(Ex.1C-1、1C-2、1C-3)との比較を示す。
【0146】
【表1】
【0147】
配合物及び膜を上記の通りに評価した。結果から、配合物が良好な膜特性を作るゲルである必要があることから、最良の結果を得るには、試料の粘稠度G*は約100Pa超(10%歪みで)であり、位相角は約45°未満であるべきである。配合物が過度に流動性である場合、膜は薄すぎであり、性能は良好ではない。したがって、実施例1及び1C-1は、G*>100Pa及び位相角<45°のこれらの条件を満たす。
【0148】
実施例1は、最良のヤング率及び最良の粘稠度を有し、最良の皮膚引き締め特性を有する膜を生成し、熱可塑性エラストマー、接着性ポリマー、及びフィラーの会合の優れた性能を実証する。
【0149】
(実施例2)
熱可塑性エラストマー:接着性ポリマーの比
実施例2の組成物を調製するための手順は、実施例1で上述したものと同じである。以下のTable 2(表2)は、それらから形成された膜を有する本開示による配合物(Ex.2a、2b、2c)と、2種の比較用組成物(Ex.2C-1、2C-2)との比較を示す。
【0150】
【表2】
【0151】
配合物及び膜を上記の通りに評価した。結果から、Ex.2a、2b及び2cは全て、G*>100Paの良好な粘稠度及び45°未満の位相角並びにヤング率>100kPaを有する。低ヤング率のEx.2C-1(油分散体を含まない)は柔らかすぎであり、高ヤング率のEx.2C-2(Kratonポリマーを含まない)は薄すぎだった。したがって、結果は、エラストマー(Kraton)の含有率が高ければ、柔らかすぎる膜が作製されてしまい、一方で接着性ポリマー(油分散体)の含有率が高ければ、配合物は過度に流動性である。結果として、膜は、薄くなり過ぎてしまい、皮膚上での性能は良好ではない。これは、熱可塑性エラストマーの接着性ポリマーに対する比が、最適には、1:5から5:1の範囲であることを示す。
【0152】
(実施例3)
種々の接着性ポリマーの評価
実施例3A:T
g>25℃の種々の接着性ポリマーの評価
熱可塑性エラストマーKraton(25%)を、機械的スターラーと一緒にイソパラフィン油中に分散させ、90℃に加熱した。全てのKratonポリマーが溶解し、ポリマー溶液が透明になるまで1〜2時間、90℃で攪拌を続けた。所望の量の接着性ポリマー及びシリル化シリカを、プラスチック容器中のKraton/イソパラフィン油溶液に特定の比で添加し、溶液を2500rpm/分の高速ミキサーで5分間混合した。最終溶液を室温で維持し、溶媒の蒸発を回避するために密封した。
【0153】
以下のTable 3A(表3)は、本開示による組成物から形成された膜(Ex.3a、3b、3c)の比較を示す。
【0154】
【表3】
【0155】
膜を上記の通りに評価した。Table 3A(表3)の結果は、T
gが25℃超の種々の接着性ポリマーを有する本開示に従って調製された実施例3a〜3cが、それぞれ、良好な機械的特性を有する膜をもたらすことを示す。
【0156】
実施例3B:接着性ポリマーとしてのポリ酸ポリマーの評価
実施例3Bの組成物を調製するための手順は、実施例1で上述したものと同じである。以下のTable 3B(表4)は、ポリ酸及びそれらから形成された膜を有する本開示による配合物(Ex.3d、3e、3f)と、ポリ酸を含まない比較用組成物(Ex.3C-1)との比較を示す。
【0157】
【表4】
【0158】
膜を上記の通りに評価した。Table 3B(表4)の結果は、接着性ポリマーとしての超分枝ポリ酸の比の変化による効果を実証している。
【0159】
(実施例4)
皮膚欠陥を隠す膜の効力
実施例4A:組成
実施例4Aの組成物を調製するための手順は、実施例1で上述したものと同じである。以下のTable 4A(表5)は、皮膚上に膜を形成する本開示に従って調製された組成物(Ex.4a)を示す。
【0160】
【表5】
【0161】
膜を上記の通りに評価した。本開示に従って調製された膜によって実現された高透明性及びヘイズは、皮膚欠陥を不鮮明にする又は隠す膜の効果を実証する。
【0162】
実施例4B:形成した膜の効力
実施例4Aに従って調製された膜を、等級4の目元の皺及び目の下のたるみを有する6名の試験対象並びに等級4の目尻の皺を有する6名の試験対象の眼域の皮膚に適用した。膜を10分間乾燥させ、その後、目元の皺及び目尻の皺の外観上の改善を定期的に評価した。結果をTable 4B(表6)に示す。
【0163】
【表6】
【0164】
臨床評価は、目元の皺及び目の下のたるみの格付けアトラス(Skin Aging Atlas、vol 1、Caucasian type、Roland Bazin、Eric Doublet、Editions Med'Com、2007)を基準とした。Table 4B(表6)の結果は、本開示に従って調製された膜が、目の下のたるみ、目元の皺、及び目尻の皺の外観を著しく改善することを実証している。結果はまた、経時的に、改善がほぼ一定を保つことも実証しており、膜が長持ちする結果をもたらすことを示す。
【0165】
(実施例5)
保湿性を改善する湿潤剤の添加
熱可塑性エラストマーKraton(25%)を、機械的スターラーと一緒にイソパラフィン油中に分散させ、90℃に加熱した。全てのKratonポリマーが溶解し、ポリマー溶液が透明になるまで1〜2時間、90℃で攪拌を続けた。所望の量の接着性ポリマー及びシリル化シリカを、プラスチック容器中のKraton/イソパラフィン油溶液に特定の比で添加し、溶液を2500rpm/分の高速ミキサーで5分間混合し、次いでグリセリンを添加し、混合し続けた。最終溶液を室温で維持し、溶媒の蒸発を回避するために密封した。
【0166】
以下のTable 5(表7)は、グリセリンを含有しない本開示による組成物から形成された比較用の膜(Ex.5C-1)と比べた、グリセリンを有する本開示による組成物から形成された膜(Ex.5)の評価を示す。
【0167】
【表7】
【0168】
膜を上記の通りに評価した。Table 5(表7)の結果は、本開示による組成物から形成された、湿潤剤(グリセリン)を含有する膜が、驚くべきことに、膜の機械的又は光学的特性に悪影響を及ぼさず、更には湿潤剤を含有しない膜と比べて皮膚上の膜に保湿感覚を与えたことを実証している。
【0169】
(実施例6)
水の添加
熱可塑性エラストマーKraton(25%)を、機械的スターラーと一緒にイソパラフィン油中に分散させ、90℃に加熱した。全てのKratonポリマーが溶解し、ポリマー溶液が透明になるまで1〜2時間、90℃で攪拌を続けた。所望の量の接着性ポリマー及びシリル化シリカを、プラスチック容器中のKraton/イソパラフィン油溶液に特定の比で添加し、溶液を2500rpm/分の高速ミキサーで5分間混合し、次いでグリセリン及び/又は水を添加し、混合し続けた。最終溶液を室温で維持し、溶媒の蒸発を回避するために密封した。
【0170】
以下のTable 6(表8)は、グリセリンを有する(Ex.6a)又はグリセリン及び水を有する(Ex.6b〜6e)、本開示による組成物から形成された膜の評価を示す。
【0171】
【表8】
【0172】
膜を上記の通りに評価した。Table 6(表8)の結果は、驚くべきことに、組成物への水の添加が、機械的特性を改善し、SEM結果から見られるように凝集力を強化することを実証している。加えて、透明性及びソフトフォーカス等の光学的特性は、影響を受けなかった。
【0173】
(実施例7)
シリコーンエラストマーの添加
熱可塑性エラストマーKraton(25%)を、機械的スターラーと一緒にイソパラフィン油中に分散させ、90℃に加熱した。全てのKratonポリマーが溶解し、ポリマー溶液が透明になるまで1〜2時間、90℃で攪拌を続けた。所望の量の油分散体(イソドデカン中49%)、シリル化シリカ、及びシリコーンエラストマー(18%イソドデカンにおけるDC EL-8040 IDシリコーン有機ブレンド)を、プラスチック容器中のKraton/イソパラフィン油溶液に特定の比で添加し、溶液を2500rpm/分の高速ミキサーで5分間混合した。最終溶液を室温で維持し、溶媒の蒸発を回避するために密封した。
【0174】
膜を8mLのドローダウンバーでコントラストカード上にめっきした。終夜乾燥した後、DMA測定のために膜を剥がし取った、又は光学的効果のために基材上にただ維持した。
【0175】
以下のTable 7(表9)は、シリコーンエラストマーを含有しない本開示による組成物から形成された比較用膜(Ex.7C-1)と比べた、シリコーンエラストマーを有する本開示による組成物から形成された膜(Ex.7)の評価を示す。
【0176】
【表9】
【0177】
膜を上記の通りに評価した。Table 7(表9)の結果は、シリコーンエラストマーの添加が、膜の光学的効果を改善し、透明性に悪影響を与えずにソフトフォーカス効果を改善することを実証している。加えて、膜の透水性が改善し、汗が膜を通過することができるため有利であり、引き締め特性を長時間保つことを可能にする。
【0178】
(実施例8)
種々のシリコーンエラストマーの評価
実施例8の組成物を調製するための手順は、実施例7で上述したものと同じである。以下のTable 8(表10)は、種々のシリコーンエラストマー(Ex.8a、8b、8c、8d)で形成された膜の評価を示す。
【0179】
【表10】
【0180】
膜を上記の通りに評価した。水と高接触角を示すTable 8(表10)の結果は、種々のシリコーンエラストマーを含有する膜が、良好な耐水性を示すことを実証している。
【0181】
(実施例9)
種々のフィラーの評価
実施例9の組成物を調製するための手順は、実施例7で上述したものと同じである。以下のTable 9(表11)は、比較用膜(Ex.9C-1、9C-2、9C-3)と比べた、種々のシリカ粒子を有する本開示に従って形成された膜(Ex.9a、9b)の評価を示す。
【0182】
【表11】
【0183】
膜を上記の通りに評価した。Table 9(表11)の結果は、種々のシリカ粒子の添加が、ヤング率の測定によって示されるように、膜の機械的特性の改善をもたらすことを実証している。改善は、100nm超の粒径及び高比表面積を有するシリカで更に顕著になる。ソフトフォーカスを含めた光学的特性及び皮脂の吸収も改善する。
【0184】
(実施例10)
種々のフィラー比の比較
実施例10の組成物を調製するための手順は、実施例7で上述したものと同じである。以下のTable 10(表12)は、種々の量のシリカ粒子で形成された膜(Ex.10a、10b、10c、10d)の評価を示す。
【0185】
【表12】
【0186】
膜を上記の通りに評価した。Table 10(表12)の結果は、種々の量のエアロゲル粒子が、満足な結果を出すことを実証している。
【0187】
(実施例11)
溶媒の評価
実施例11の組成物を調製するための手順は、実施例7で上述したものと同じである。以下のTable 11(表13)は、室温で1000Pa超の蒸気圧を有する溶媒を含まない比較用膜(Ex.11C-1)と比べた、室温で1000Pa超の蒸気圧を有する溶媒を有する本開示に従って形成された膜(Ex.11)の評価を示す。
【0188】
【表13】
【0189】
膜を上記の通りに評価した。5名のパネリストの眼域の皮膚に適用し、引き締め感覚を強い、平均、又は弱いで格付けした後、膜の引き締め効果を評価した。
【0190】
Table 11(表13)の結果は、室温で1000Pa超の蒸気圧を有する溶媒の使用が、良好な結果を示すことを実証している。また見てわかるように、室温で蒸気圧が25Pa未満の溶媒は、いくらかの引き締めは見られるものの結果は思わしくない。
【0191】
(実施例12)
顔料の添加
熱可塑性エラストマーKraton(25%)を、機械的スターラーと一緒にイソパラフィン油中に分散させ、90℃に加熱した。全てのKratonポリマーが溶解し、ポリマー溶液が透明になるまで1〜2時間、90℃で攪拌を続けた。所望の量の油分散体(イソドデカン中49%)、シリル化シリカ、及びシリコーンエラストマー(18%イソドデカンにおけるDC EL-8040 IDシリコーン有機ブレンド)、及び顔料を、プラスチック容器中のKraton/イソパラフィン油溶液に特定の比で添加し、溶液を2500rpm/分の高速ミキサーで5分間混合した。最終溶液を室温で維持し、溶媒の蒸発を回避するために密封した。
【0192】
以下のTable 12(表14)は、顔料及びそれらから形成された膜を有する本開示による配合物(Ex.12a、12b、12c)と、2種の比較用市販配合物との比較を示す。
【0193】
【表14】
【0194】
膜を上記の通りに評価した。顔料を含まないEx.12aは、毛穴を不鮮明にする高ソフトフォーカス効果及び高マット効果を示す。膜は長持ちする。顔料を有するEx.12Bは、ヘイズ及びホワイトニング機能が増強していることを示し、10倍多く顔料を含むEx.12cは、更に強力なヘイズ及びホワイトニングにより更に高いソフトフォーカス効果を示し、ニキビ等のより目立つ皮膚欠陥を隠すための強力な能力を実証している。Ex.12b及びEx.12cの膜は両方とも長持ちする。Ex.12a、12b、及び12cは全て、皮膚欠陥を隠す又は不鮮明にする上で良好な結果を示すと同時に、比較用の市販配合物のいずれよりも長持ちする。
【0195】
Table 12(表14)の結果は、顔料を含まない状態で、膜はソフトフォーカス効果を有し、長持ちすると共に、皮膚欠陥を不鮮明にする能力を有し、顔料を含む状態では、膜は皮膚欠陥を隠す能力が強力であり、同時に長持ちするままである。
【国際調査報告】