特表2017-538755(P2017-538755A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-538755次亜塩素酸配合物及び皮膚の症状の治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538755(P2017-538755A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】次亜塩素酸配合物及び皮膚の症状の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/20 20060101AFI20171201BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 17/12 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   A61K33/20
   A61P17/02
   A61P17/00
   A61P37/02
   A61P37/06
   A61P17/12
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P17/18
   A61P17/06
   A61P37/08
   A61P17/04
   A61K9/06
   A61K47/02
   A61K47/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-533035(P2017-533035)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月24日
(86)【国際出願番号】US2015066147
(87)【国際公開番号】WO2016100543
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】14/572,378
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/670,641
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513233780
【氏名又は名称】レルム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンプソン マーク
(72)【発明者】
【氏名】パンチェワ スヴェトラーナ
(72)【発明者】
【氏名】ショッケミューレ ケーリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC27
4C076DD22
4C076DD25
4C076DD27
4C076FF12
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA22
4C086HA24
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、様々な態様及び実施形態において、皮膚の炎症症状及び/または皮膚バリア機能低下が関与する症状の治療方法を提供する。そのような疾患として、とりわけ、皮膚の水疱形成疾患、皮膚バリア機能の遺伝性欠損、皮膚が関与する過剰増殖性症状、皮膚の加齢または損傷に関連した症状、皮膚が関与する免疫学的障害が挙げられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水疱形成皮膚疾患の治療方法であって、該皮膚の該患部に、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を有する次亜塩素酸配合物を使用すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記配合物は、少なくとも約300ppmのAFCを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配合物は、少なくとも約500ppmのAFCを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記配合物は、少なくとも約700ppmのAFCを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記配合物は、少なくとも約1000ppmのAFCを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配合物は、約500〜約1500ppmの範囲のAFCを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水疱形成疾患は、水疱性類天疱瘡である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記配合物は、外用または経口コルチコステロイドの代替または補助治療として使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水疱形成疾患は、表皮水疱症である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記配合物は、外用もしくは経口コルチコステロイド及び/または外用もしくは経口抗生物質の代替または補助治療として使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水疱形成疾患は、自己免疫症状に関連している、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水疱形成疾患は、疱疹状皮膚炎である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記配合物は、外用もしくは経口コルチコステロイド及び/または免疫抑制剤もしくは免疫調節剤の代替または補助治療として使用される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記水疱形成疾患は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記配合物は、外用または経口コルチコステロイドの代替または補助治療として使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約10回、患部に使用される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約5回、患部に使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜3回、患部に使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記次亜塩素酸配合物は、症候または悪化を制御するために周期的に使用される、請求項19から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記次亜塩素酸配合物は、1〜約12週間続くレジメンで使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
次亜塩素酸配合物は、1〜約8週間続くレジメンで使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
次亜塩素酸配合物は、1〜約4週間続くレジメンで使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
皮膚バリア機能の遺伝性欠損の治療方法であって、該皮膚の該患部に、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を有する次亜塩素酸配合物を使用すること、を含む、前記方法。
【請求項27】
前記配合物は、少なくとも約300ppmのAFCを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記配合物は、少なくとも約500ppmのAFCを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記配合物は、少なくとも約700ppmのAFCを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記配合物は、少なくとも約1000ppmのAFCを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記配合物は、約500〜約1500ppmの範囲のAFCを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項26から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
皮膚バリア機能の前記遺伝性欠損は、ネザートン症候群である、請求項26から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
皮膚バリア機能の前記遺伝性欠損は、魚鱗癬である、請求項26から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
皮膚バリア機能の前記遺伝性欠損は、掌蹠角化症である、請求項26から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約10回、患部に使用される、請求項26から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約5回、患部に使用される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約3回、患部に使用される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記次亜塩素酸配合物は、症候または悪化を制御するために周期的に使用される、請求項38から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
次亜塩素酸配合物は、1〜約12週間続くレジメンで使用される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
次亜塩素酸配合物は、1〜約8週間続くレジメンで使用される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
次亜塩素酸配合物は、1〜約4週間続くレジメンで使用される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
皮膚が関与する過剰増殖性症状の治療方法であって、該皮膚の該患部に、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を有する次亜塩素酸配合物を使用すること、を含む、前記方法。
【請求項46】
前記配合物は、少なくとも約300ppmのAFCを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記配合物は、少なくとも約500ppmのAFCを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記配合物は、少なくとも約700ppmのAFCを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記配合物は、少なくとも約1000ppmのAFCを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記配合物は、約500〜約1500ppmの範囲のAFCを有する、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項45から50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記症状は、扁平上皮癌(SCC)である、請求項45から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記症状は、基底細胞癌(BCC)である、請求項45から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記症状は、皮膚T細胞リンパ腫である、請求項45から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約10回、患部に使用される、請求項45から56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約5回、患部に使用される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約3回、患部に使用される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記次亜塩素酸配合物は、1〜約12週間続くレジメンで使用される、請求項57から59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
次亜塩素酸配合物は、1〜約8週間続くレジメンで使用される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
次亜塩素酸配合物は、1〜約4週間続くレジメンで使用される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
皮膚の加齢または損傷に関連した炎症の治療方法であって、該皮膚の該患部に、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を有する次亜塩素酸配合物を使用すること、を含む、前記方法。
【請求項64】
前記配合物は、少なくとも約300ppmのAFCを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記配合物は、少なくとも約500ppmのAFCを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記配合物は、少なくとも約700ppmのAFCを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記配合物は、少なくとも約1000ppmのAFCを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記配合物は、約500〜約1500ppmの範囲のAFCを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項63から68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記症状は、光線角化症、UV損傷、または日焼けである、請求項63から71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約10回、患部に使用される、請求項63から72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約5回、患部に使用される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約3回、患部に使用される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
次亜塩素酸配合物は、1〜約12週間続くレジメンで使用される、請求項73から75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
次亜塩素酸配合物は、1〜約8週間続くレジメンで使用される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
次亜塩素酸配合物は、1〜約4週間続くレジメンで使用される、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
皮膚が関与する免疫学的障害の治療方法であって、該皮膚の該患部に、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を有する次亜塩素酸配合物を使用すること、を含む、前記方法。
【請求項80】
前記配合物は、少なくとも約300ppmのAFCを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記配合物は、少なくとも約500ppmのAFCを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記配合物は、少なくとも約700ppmのAFCを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記配合物は、少なくとも約1000ppmのAFCを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記AFCは、約500〜約1500ppmの範囲にある、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項79から84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記症状は、アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎、乾癬、疱疹状皮膚炎、類肉腫症、SLE、シェーグレン症候群、あるいはアレルギー反応である、請求項79から87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約10回、患部に使用される、請求項79から87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約5回、患部に使用される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約3回、患部に使用される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記次亜塩素酸配合物は、症候または悪化を制御するために周期的に使用される、請求項89から91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
次亜塩素酸配合物は、1〜約12週間続くレジメンで使用される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
次亜塩素酸配合物は、1〜約8週間続くレジメンで使用される、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
次亜塩素酸配合物は、1〜約4週間続くレジメンで使用される、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
そう痒症の治療方法であって、該皮膚の該患部に、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を有する次亜塩素酸配合物を使用すること、を含む、前記方法。
【請求項97】
前記配合物は、少なくとも約300ppmのAFCを有する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記配合物は、少なくとも約500ppmのAFCを有する、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記配合物は、少なくとも約700ppmのAFCを有する、請求項96に記載の方法。
【請求項100】
前記配合物は、少なくとも約1000ppmのAFCを有する、請求項96に記載の方法。
【請求項101】
前記配合物は、約500〜約1500ppmの範囲のAFCを有する、請求項96に記載の方法。
【請求項102】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項96から101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記そう痒症は、心因性そう痒または神経因性そう痒である、請求項96から104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約10回、患部に使用される、請求項96から105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約5回、患部に使用される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記次亜塩素酸配合物は、1日1回〜約3回、患部に使用される、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記次亜塩素酸配合物は、症候または悪化を制御するために周期的に使用される、請求項106から108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
次亜塩素酸配合物は、1〜約12週間続くレジメンで使用される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
次亜塩素酸配合物は、1〜約8週間続くレジメンで使用される、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
次亜塩素酸配合物は、1〜約4週間続くレジメンで使用される、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
次亜塩素酸ヒドロゲル配合物であって、以下:利用可能な遊離塩素(AFC)を少なくとも500ppm、かつこれは次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、及びClの合計に対して、少なくとも80%が次亜塩素酸であり;外用で使用するための薬学上許容されるケイ酸塩キャリア;及び500〜約2000mg/Lの重炭酸ナトリウム、を含む、前記配合物。
【請求項114】
前記AFCは、少なくとも約700ppmである、請求項113に記載の配合物。
【請求項115】
前記AFCは、少なくとも約1000ppmである、請求項113に記載の配合物。
【請求項116】
前記配合物は、約500〜約1500ppmの範囲のAFCを有する、請求項113に記載の配合物。
【請求項117】
前記配合物は、約5〜約7のpHを有する、請求項113から116のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項118】
前記配合物は、約5.4〜約6.4のpHを有する、請求項117に記載の配合物。
【請求項119】
前記配合物は、約5.0〜約6.4のpHを有する、請求項117に記載の配合物。
【請求項120】
前記ケイ酸塩キャリアは、フルオロケイ酸マグネシウムナトリウムまたはフルオロケイ酸マグネシウムリチウムナトリウムである、請求項113から119のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項121】
前記配合物は、約0.5mS/cm〜約12mS/cmの導電率を有する、請求項113から119のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項122】
前記配合物は、約1mS/cm〜約10mS/cmの導電率を有する、請求項121に記載の配合物。
【請求項123】
前記配合物は、0.5%〜約5%のフルオロケイ酸マグネシウムナトリウムを含む、請求項120に記載の配合物。
【請求項124】
さらに、リン酸を含む、請求項113から123のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項125】
約500〜約50000cPの粘度を有する、請求項113から124のいずれか1項に記載の配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年12月16日出願の米国出願第14/572,378号及び2015年3月27日出願の米国出願第14/670,641号の優先権を主張する。これらはそれぞれ、そのまま全体が、参照として本明細書により援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、様々な実施形態において、皮膚を治療するための、例えば、炎症症状もしくは免疫症状の、予防、治療、または維持のための、及び/または皮膚バリア機能の改善のための、次亜塩素酸(HOCl)の配合物及び方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、脊椎動物において、物理的、化学的、及び生物学的侵襲から防御するためのバリア構造体の役割を務める。例えば、表皮が破壊されると、皮膚に常在する抗原提示細胞(例えば、ランゲルハンス細胞及び樹状細胞)が環境抗原に曝され、さらにケラチン生成細胞が(バリア侵襲の最初の反応体として)刺激されて、常在免疫細胞の活性化及び成熟の両方を招く生物学的シグナルを放出する。ケラチン生成細胞が放出する特定の免疫アジュバントは、結果の免疫応答の特性を方向付けることができ、そのような方向付けとして、Th2型反応、Th17型反応、またはTh1型反応の誘導が挙げられる。例えば、De Bennedetto, et al., Skin Barrier Disruption − A Requirement for Allergen Sensitization, J. Invest. Dermatol. 132(3):949−963 (2012)を参照。
【0004】
皮膚バリア機能の改善及び根底にある免疫の調節は、皮膚症状の予防、治療、及び管理に重要であり、そのような症状として、とりわけ、以下が挙げられる:急性または慢性の化学的、環境的、及び/または生物学的侵襲から生じる炎症症状;皮膚バリア機能の遺伝性欠損;皮膚の加齢または損傷に関連した症状;皮膚が関与する増殖性障害;ならびに皮膚の免疫学的障害または皮膚に影響を及ぼす症状として現れる免疫学的障害。
【0005】
本発明は、これら及び他の目的を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、様々な態様及び実施形態において、皮膚の炎症症状及び/または皮膚バリア機能低下が関与する症状の治療方法を提供する。そのような疾患として、とりわけ、皮膚の水疱形成疾患、皮膚バリア機能の遺伝性欠損、皮膚が関与する増殖性症状、皮膚の加齢または損傷に関連した症状、皮膚が関与する免疫学的障害が挙げられる。例えば、本発明は、様々な実施形態において、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、ネザートン症候群、魚鱗癬、光線角化症、そう痒症、及び皮膚癌などの症状を治療または管理する方法を提供する。他の実施形態において、症状として、免疫学的障害または過敏症が根底にあるもの、例えば、とりわけ、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎)、乾癬、疱疹状皮膚炎、及び全身性紅斑性狼瘡が挙げられる。本発明は、様々な実施形態において、患部に次亜塩素酸配合物を使用し、それにより疾患症候を寛解させる、及び/または炎症反応(全身性免疫メディエーターを含む)を弱めるもしくは改変することを含む。実施形態によっては、HOCl配合物は、免疫応答を阻害または調節し、全身性免疫メディエーターのバランスを含めて皮膚がより健康的な免疫状態になることを可能にする。本明細書中示されるとおり、次亜塩素酸は、古典的用量反応に従って炎症プロセスを阻害することができる。
【0007】
本発明の実施形態に従って、炎症症状は、ヒト患者に存在する場合も、動物患者に存在する場合もある。実施形態によっては、患者は、小児または老人患者であるか、あるいは免疫低下患者である。実施形態によっては、患者は、コルチコステロイド治療あるいは他の従来の作用剤、例えば、とりわけ抗ヒスタミン、免疫抑制剤及び免疫調節剤、レチノイド、抗生物質(例えば、シクロスポリン)などを用いた治療に抵抗性である。
【0008】
実施形態によっては、患者は、水疱形成疾患、例えば水疱性類天疱瘡、天疱瘡、及び表皮水疱症などがあるがこれらに限定されない、ならびに自己免疫症状の結果である水疱形成疾患、例えば疱疹状皮膚炎、または全身性紅斑性狼瘡(SLE)を患っている。これらの症状は、皮膚バリア機能の損傷ならびに症状をさらに悪化させる炎症及び免疫プロセスの持続的活性化が関与する。
【0009】
実施形態によっては、症状は、皮膚バリア機能の遺伝性欠損、例えば、ネザートン症候群、魚鱗癬、及び掌蹠角化症などである。これらの症状は、相当な苦痛及び病的状態をもたらす皮膚の炎症及び免疫プロセスの持続的活性化をもたらす可能性がある。
【0010】
実施形態によっては、症状は、皮膚が関与する増殖性症状、例えば扁平上皮癌、基底細胞癌、または皮膚T細胞リンパ腫などである。皮膚での腫瘍形成は、炎症細胞による腫瘍浸潤、及びその結果としてサイトカイン、ケモカイン、及び他のメディエーターの局所及び全身での産生を招く免疫応答を伴う。これらの炎症メディエーターは、癌形成と関連する。
【0011】
実施形態によっては、症状は、皮膚の加齢または損傷の結果であるか、それに関連したもの、例えば光線角化症、またはUV損傷、あるいは過敏反応をもたらす皮膚バリアへの他の物理的損傷などである。
【0012】
実施形態によっては、症状は、免疫学的性質のもの、例えば、アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎、乾癬、疱疹状皮膚炎、類肉腫症、SLE、シェーグレン症候群、あるいはアレルギー反応などである。こうした実施形態において、次亜塩素酸配合物は、根底にある皮膚及び/または全身性免疫を弱めるまたは改変しつつ、病変を治癒及び防ぐ助けとなる。
【0013】
様々な実施形態において、次亜塩素酸は、例えば、コルチコステロイド、ビタミンD軟膏(またはビタミンD類似体)、レチノイド、鎮痛剤、免疫抑制剤、光線療法、抗ヒスタミン、及び抗感染剤(例えば、抗生物質または抗真菌剤)を用いた従来治療の代替または補助療法として使用される。
【0014】
他の態様において、本発明は、皮膚が関与する炎症性障害を治療するための次亜塩素酸配合物を提供する。次亜塩素酸配合物は、利用可能な遊離塩素(AFC)を約100ppm〜約3000ppmの範囲で有する。実施形態によっては、配合物は、AFCを、約500〜約2000ppmの範囲で、または約500〜約1500ppmの範囲で、または約500ppm〜約1000ppmの範囲で有する。配合物は、約4.0〜約7.5のpHを有する場合があるが、ある特定の実施形態では、約4.4〜約7.0のpH、または約5〜約7のpH、または約5.4〜約6.4のpH、または約5.0〜約6.4のpHを有する。このpHは、次亜塩素酸が優勢な酸化体種であること、及び配合物が、治癒プロセス及び/または健康な皮膚マイクロバイオームにつながる「皮膚にやさしい」pHを維持する助けとなることを保証する。
【0015】
配合物はさらに、配合物を常温保存可能にする成分、及び皮膚の外用治療に望まれる物理特性を提供する成分を含む。例えば、次亜塩素酸溶液は、分散媒体として、ケイ酸塩キャリアとともに使用して、HOClヒドロゲルを調製することができる。例えば、配合物は、実施形態によっては、約0.5mS/cm〜約12mS/cm、例えば約1mS/cm〜約10mS/cmなどの導電率を有するヒドロゲルの場合がある。HOClヒドロゲルは、ケイ酸塩系キャリア、例えば約0.5%〜約5%のフルオロケイ酸塩系キャリアから調製される場合があり、pHをある値にして維持するための追加作用剤、例えばリン酸及び重炭酸ナトリウムなどを使用する場合がある。
【0016】
実施形態によっては、配合物は、フルオロケイ酸塩系キャリアを使用したヒドロゲルであり、HOClを安定させるために重炭酸ナトリウム(例えば、500〜2000mg/L)を含み、かつ酸性pH(例えば、5〜6.5)にするためのリン酸を含む。配合物は、約500〜約150,000cP、例えば約1000〜約80,000cP、または約1000〜約40,000cPなどの粘度を有する場合がある。配合物は、実施形態によっては、10mS/cm未満、例えば、実施形態によっては、約0.5〜約5mS/cm、または約0.5〜約3mS/cm、または約1もしくは約2mS/cmなどの導電率を有する。
【0017】
本発明の他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明に基づき、当業者に明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】動物モデルにおいて、古典的用量反応に従って充血を減少させる、HOCl配合物の能力を示す。ステロイド(プレドニゾロン)及び抗ヒスタミン(オロパタジン)を用いた治療も対照薬として示す。(A)投薬1時間後の充血;(B)CAC(結膜アレルゲン曝露)の18分後の充血。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、様々な態様及び実施形態において、皮膚の炎症症状及び/または皮膚バリア機能低下が関与する症状の治療方法を提供する。そのような疾患として、とりわけ、皮膚の水疱形成疾患、皮膚バリア機能の遺伝性欠損、皮膚が関与する過剰増殖性症状、皮膚の加齢または損傷に関連した症状、皮膚が関与する免疫学的障害が挙げられる。例えば、以下でより詳細に説明されるとおり、本発明は、様々な実施形態において、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、ネザートン症候群、魚鱗癬、光線角化症、そう痒症、及び皮膚癌などの症状を治療または管理する方法を提供する。他の実施形態において、症状として、免疫学的障害または過敏症が根底にあるもの、例えば、とりわけ、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎)、乾癬、疱疹状皮膚炎、及び全身性紅斑性狼瘡が挙げられる。
【0020】
本発明は、様々な実施形態において、本明細書中より詳細に説明されるとおり、患部に次亜塩素酸配合物を使用し、それにより疾患症候を寛解させる、及び/または炎症反応を弱めるもしくは改変することを含む。免疫応答を指示する細胞として、皮膚バリア侵襲部位のケラチン生成細胞があげられるが、この細胞は、サイトカイン及び他の可溶性因子を分泌し、そのような因子として、例えば、とりわけ、TNF、IFNγ、IL−1β、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−18、の1種または複数を挙げることができる。サイトカイン放出パターンは、サイトカイン間でもならびに細胞型間でも異なる。例えば、多くの免疫メディエーターは、制御されたもしくは構成的開口分泌を含む古典的分泌経路を通じてまたは脱顆粒により分泌される。古典的分泌経路では、サイトカインは、小胞体(ER)においてシグナルペプチドとともに翻訳され、小胞に入ってゴルジ複合体に輸送され、その後細胞表面に輸送され放出される。脱顆粒の場合、サイトカイン及び/または他のカーゴは、その後の放出用に顆粒に貯蔵されている。他方で、ある特定のサイトカイン、例えばIL−1β及びIL−18などは、インフラマソームにより活性化され、炎症反応の開始に基本的役割を果たすが、これらは、非古典的分泌経路を介して分泌される。具体的には、これらの分子は、不活性前駆体として合成され、そしていったんカスパーゼ−1切断により活性化されると、エキソソームまたは微小胞中、膜輸送体によるか、あるいはおそらくさらに細胞溶解によるかのいずれかで分泌される可能性がある。例えば、Lacy and Stow, Cytokine release from innate immune cells: association with diverse membrane trafficking pathways, Blood 118(1) (July, 2011)を参照。
【0021】
炎症プロセスにおける内因性活性酸素種(ROS)の役割は、矛盾するデータにより幾分不明であるもの、ROSは、一般に、インフラマソームの活性化因子と考えられている。Harijith A, et al., Reactive oxygen species at the crossroads of inflammasome and inflammation, Front. Physiol. 5:352 (2014)を参照。例えば、内因で生成した次亜塩素酸は、一般に、炎症促進性分子と見なされている。Schieven GL et al., Hypochlorous acid activates tyrosine phosphorylation signal pathways leading to calcium signaling and TNFalpha production, Antioxid. Redox Signal 4(3):501−7(2002); Pullar JL, et al., Living with a killer: the effects of hypochlorous acid on mammalian cells, IUBMB Life, 50(4−5):259−66(2000)を参照。in vivoでのHOCl生成は、慢性炎症性疾患の炎症に関係すると仮定されてきた。Halliwell et al., Oxidants, inflammation, and anti−inflammatory drugs, FASEB 2:2867−2873 (1988)。対照的に、本開示は、HOClが、古典的用量反応に従って炎症プロセスを阻害できることを示す。さらに、HOClは、全身性免疫応答の減少または改変を含めて、根底にある免疫応答を減少または改変することができる。
【0022】
本発明に従って、次亜塩素酸(強い酸化体)は、急性及び慢性の炎症症状及び疾患の治療用に皮膚に使用するために配合される。外用及び全身性ステロイド剤は、炎症性皮膚疾患の治療用に最も一般的に処方される薬物療法であるものの、長期間のステロイド使用から生じる可能性がある副作用及び損傷に対する認識が高まりつつある。そのような副作用として、とりわけ、食欲増進、体重増加、突然の気分動揺、筋肉脱力、霧視、体毛成長の促進、易内出血、感染抵抗力の低下、腫脹、顔面の腫れ、挫瘡、骨粗鬆症、糖尿病の悪化、高血圧、胃への刺激、神経過敏、不穏状態、睡眠困難、白内障または緑内障、及び水貯留または浮腫が挙げられる。外用レチノイド、外用ビタミンD(及びその類似体)、抗ヒスタミン、及び免疫抑制剤は、皮膚科学的症状によっては使用されるが、これらの作用剤は、かなりの毒性を伴う可能性がある。さらに、患者及び症状によっては、利用可能な治療に対して抵抗性である。すなわち、より有効及び/または安全な代替物が望ましい。本明細書中記載される次亜塩素酸配合物は、これらの作用剤の代替または補助療法として使用可能である。
【0023】
次亜塩素酸配合物は、本発明の様々な実施形態において、炎症プロセス及び/または免疫プロセスを縮小または阻害するのに有効な量の次亜塩素酸を含む。実施形態によっては、配合物は、利用可能な遊離塩素(AFC)を約100ppm〜約3000ppmの範囲で有する。例えば、配合物のAFCは、少なくとも約150ppm、少なくとも約200ppm、少なくとも約250ppm、少なくとも約300ppm、少なくとも約400ppm、少なくとも約500ppm、少なくとも約700ppm、少なくとも約800ppm、少なくとも約900ppm、または少なくとも約1000ppm、または少なくとも約1200ppm、または少なくとも約1500ppmの場合がある。実施形態によっては、配合物は、AFCを約500〜約2000ppmの範囲で、または約500〜1200ppmの範囲で、または約500〜約1500ppmの範囲で、または約500ppm〜約1000ppmの範囲で有する。他の実施形態において、配合物は、約100〜1000ppm、または約100〜500ppmのAFCを有する場合がある。本明細書中記載される実施形態によっては、HOCl配合物は、AFCを400〜1000ppmの範囲で有する。
【0024】
配合物は、酸化種混合物、例えば大部分を占める次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムなどを含む場合がある。次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩は、平衡状態にあり、平衡位置は、主にpHにより決まる(すなわち、pHが、各成分の濃度に影響する)。pHが5.1〜6.0の配合物は、約≧95%の次亜塩素酸純度を有する。すなわち、配合物は、約4.0〜約7.5のpHを有する場合があるが、ある特定の実施形態では、約4.4〜約7.0のpH、または約5〜約7のpH、または約5.4〜約6.4のpH、または約5.0〜約6.4のpHを有する。約5.4のpHでは、配合物は、次亜塩素酸塩に対してほとんど(100%に近い)次亜塩素酸を含有することになる。
【0025】
ある特定の実施形態において、配合物は、次亜塩素酸、次亜ハロゲン酸塩、及び塩素分子(Cl)の合計濃度(100%として)に対して少なくとも80%の次亜塩素酸を含有する。しかしながら、次亜塩素酸は、次亜塩素酸、次亜ハロゲン酸塩、及び塩素分子(Cl)の合計濃度(100%として)に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の次亜塩素酸を有する場合がある。そのような実施形態は、配合の結果としてのどのような刺激も回避しながらもより高いレベルの活性塩素の投与を可能にする場合がある。次亜塩素酸塩は、かなり以前から、塩素が利用可能であるために必要な濃度の他に高pHによる毒性が哺乳類細胞に対してあることが知られており、したがって、長期使用には望ましくない可能性がある、または多くの抗炎症適用に対して十分な治療範囲を有さない可能性がある。すなわち、実施形態によっては、組成物中の次亜塩素酸塩のレベルは、制限される(例えば、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、及び塩素分子(Cl)の合計濃度(100%として)に対して、約10%以下、約5%以下、または約3%以下)。配合物は、活性作用剤として次亜塩素酸を含むかまたは本質的に次亜塩素酸からなる場合があるものの、実施形態によっては、配合物は、少量の他の酸化種またはラジカル生成種、例えば、とりわけ、次亜塩素酸塩、水酸化物、H、及びOを含有する。
【0026】
本発明に従って、次亜塩素酸配合物は、様々な炎症症状を治療するために患者に投与することができる。本明細書中使用される場合、「治療する」という用語は、疾患症候(例えば、炎症症候)を、防ぐ(予防的治療により)、減少させる、阻害する、寛解させる、もしくは管理するため、または疾患の進行を遅くするもしくは止めるため、ならびに実施形態によっては、症状もしくは症候の発生もしくは再発を防ぐため、患者に治療を提供することを示す。例えば、様々な実施形態において、本発明は、急性、慢性、及び遅発性反応を含む炎症プロセスを阻止、縮小、予防、または改変し、それにより組織を再生及び/または治癒させる、及び/または組織損傷もしくは組織完全性の損失を防ぐために皮膚を治療する方法を提供する。
【0027】
実施形態によっては、本発明は、慢性炎を治療する方法を提供する。慢性炎は、数週間から数ヶ月、さらに数年続く可能性があり、その間、組織破壊と損傷を修復するための生物学的プロセスが同時に進行する。慢性炎は、リンパ球、マクロファージ、及びケラチン生成細胞が関与する可能性があり、血管増殖、線維症、及び/または壊死も含む場合がある。慢性炎は、複数の要因から生じる可能性があり、そのような要因として、持続感染、毒性剤への長期曝露、遺伝疾患、及び自己免疫反応が挙げられる。慢性炎は、持続侵襲部位でのサイトカインの産生により維持されることが多い。
【0028】
実施形態によっては、患者は、水疱形成疾患、例えば水疱性類天疱瘡、天疱瘡、及び表皮水疱症などであるがこれらに限定されない、ならびに自己免疫症状の結果である水疱形成疾患、例えば、疱疹状皮膚炎など、または全身性紅斑性狼瘡(SLE)を患っている。これらの症状は、皮膚バリア機能障害、ならびに症状をさらに悪化させる炎症プロセス及び免疫プロセスの持続的活性化が関与する。
【0029】
水疱性類天疱瘡は、急性または慢性の自己免疫皮膚疾患であり、表皮と真皮の間の空間における水疱(または水疱)形成が関与する。この疾患は、II型過敏症状と分類される。初期の病変は、蕁麻疹様に出現する場合があるが、最終的に緊満性水疱が噴出する。水疱は、免疫反応により形成され、ジストニン(水疱性類天疱瘡抗原)及び/またはヘミデスモソームの成分であるXVII型コラーゲン(水疱性類天疱瘡抗原2)を標的とするIgG自己抗体の形成により開始される。抗体による標的化に続いて、免疫調節物質のカスケードにより、好中球、リンパ球、及び好酸球を含む免疫細胞の波が患部へと押し寄せ、最終的に真皮表皮接合部に沿った分離をもたらし、ついには水疱を広げる。水疱性類天疱瘡の従来治療は、外用または全身性ステロイド剤、あるいはより困難な症例には免疫抑制剤を含む。
【0030】
表皮水疱症(EB)は、皮膚及び粘膜に水疱を起こす遺伝性結合組織疾患の一群を示す。EBは、表皮と真皮の間の固着が欠損した結果であり、摩擦及び皮膚脆弱性をもたらす。単純型表皮水疱症は、摩擦部位に水疱が現れるEBの1つの型であり、典型的には、手足で発症する。接合部型表皮水疱症は、ラミニン及びコラーゲンに影響する遺伝性疾患であり、基底膜域の透明帯内での水疱形成を特徴とする。この疾患は、摩擦部位、特に手足の摩擦部位でも、水疱を示す。栄養障害型表皮水疱症は、皮膚及び他の器官で発症する遺伝性異型であり、VII型コラーゲンをコードするヒトCOL7A1遺伝子内の突然変異により引き起こされる。慢性皮膚損傷及び根底にある免疫異常の合併症として、EB患者は、皮膚の悪性腫瘍及び持続感染の危険性が高くなる。治療は、糖質コルチコイド及び外用抗生物質を含むことが多く、その目的は、創傷及び病変の治癒を助けることである。これらの患者での治癒プロセスは、遺伝学的に損傷している場合がある。
【0031】
疱疹状皮膚炎(DH)は、水性液体で満たされた水疱を特徴とする慢性水疱形成皮膚症状である。DHは、セリアック病の特異的症状である。疱疹状皮膚炎は、強烈に痒い、慢性丘疹小水疱性皮疹を特徴とし、通常は伸筋表面、例えば臀部、首後方、頭皮、肘、膝、背中、生え際、鼠蹊部、または顔面などに、対称的に分布する。この症状は、特別に痒い。疱疹状皮膚炎の最初の徴候及び症候は激烈なそう痒感及び灼熱感であるものの、最初の視認できる徴候は、小丘疹または小水疱である。疱疹状皮膚炎症候は、慢性であり、それらは、出たり消えたりする傾向にある。症候は、セリアック病の症候と関連する場合があり、共通する症候として、腹痛、腹部膨満または軟便、及び疲労が挙げられる。病態に関しては、この症状の最初の徴候は、真皮内で観察される場合がある。疱疹状皮膚炎の主な自己抗原は、ケラチン生成細胞分化中の細胞表層形成に関与する細胞質酵素である表皮トランスグルタミナーゼ(eTG)である。症状を制御する助けとなるように免疫抑制療法が投与される場合があるものの(かつそれほど効果的ではない)、DHは、最終的には、グルテンフリー食(GFD)を厳密に順守することにより制御される。GFDの厳密な順守は困難であり、しかも患者によっては、根底にある免疫活性化でGFDに抵抗性が出たままである。
【0032】
全身性紅斑性狼瘡(SLEまたはループス)は、全身性自己免疫疾患である。SLEは、心臓、関節、皮膚、肺、血管、肝臓、腎臓、及び神経系に害を及ぼすことが最も多い。疾患の経過は、予測不能であり、疾病(悪化)期間は、寛解とともに変化する。皮膚症候は、ループスがある人の70%にも上る多さで観察される。病変は主に3つに分類され、慢性皮膚(円盤状)ループス、亜急性皮膚ループス、及び急性皮膚ループスである。円盤状ループスがある人は、皮膚に厚く赤い鱗状の斑が出る場合がある。同様に、亜急性皮膚ループスは、皮膚の赤い鱗状の斑を発症するが、その輪郭は明確である。急性皮膚ループスは、発疹として発症する。この疾患に関連して古典的頬発疹(または蝶型紅斑)が出る場合もある。皮膚ルーパス症候の治療または管理は、皮膚発疹用のコルチコステロイドクリームを含むことができる。
【0033】
実施形態によっては、症状は、皮膚バリア機能の遺伝性欠損であり、そのような症状として(上記のものの他に)、ネザートン症候群、魚鱗癬、及び掌蹠角化症が挙げられる。これらの症状は、相当な苦痛及び病的状態をもたらす皮膚の炎症プロセス及び免疫プロセスの持続的活性化をもたらす可能性がある。
【0034】
ネザートン症候群は、SPINK5遺伝子の突然変異と関連した重篤な常染色体劣性遺伝型魚鱗癬である。ネザートン症候群は、慢性皮膚炎、偏在そう痒(痒み)、重篤な脱水、及び発育阻止を特徴とする。この障害の患者は、「竹状髪」としても知られる毛幹欠損(重積性裂毛症)を有する傾向にある。患者の破壊された皮膚バリア機能は、感染及びアレルギーに対する高い感受性ももたらし、アトピー性皮膚炎と同様な鱗状の赤色皮膚の発生を招く。重篤な場合、これらのアトピー性症状は、個体の生涯を通じて持続し、出生後死亡率は高い。それほど重篤ではない場合、ネザートン症候群は、より軽度の曲折線状魚鱗癬を発症する。患者は健常者と比べて、あらゆる種類の感染にかかりやすく、特にブドウ球菌による再発性皮膚感染にかかりやすい。現在の治療は、鱗屑形成/ひびを最小限にするための加湿製品、及び持続感染を管理するための抗感染治療を含む。ステロイド及びレチノイド製品は、一般に、ネザートン症候群に対して有効ではなく、症状を悪化させる場合さえある。
【0035】
魚鱗癬は、ほとんどが遺伝的な皮膚疾患からなるファミリーである。全ての型の魚鱗癬が、乾燥して肥厚した、鱗状または片状の皮膚を有する。多くの型で、皮膚がひび割れており、それが魚の鱗のようだと言われる。症候の重篤度は、尋常性魚鱗癬(正常な乾燥した皮膚に間違われる場合がある)などの最も軽度な、最も一般的な型から、ハーレクイン型魚鱗癬などの生命に関わる症状まで、非常に大きく変わり得る。尋常性魚鱗癬は、症例の95%超を占める。魚鱗癬の型は、それらの外観及びそれらの遺伝的原因により分類される。同じ遺伝子により引き起こされる魚鱗癬でも重篤度及び症候は大きく変わる可能性があり、異なる遺伝子でも同様な症候の魚鱗癬をもたらす可能性がある。魚鱗癬の治療は、皮膚に水分を補給する目的で、クリーム及び皮膚軟化油の外用塗布の形を取ることが多い。レチノイドも、場合によっては使用される。
【0036】
掌蹠角皮症(例えば、掌蹠角化症)は、手掌及び足底の異常な肥厚を特徴とする疾患の混成群である。臨床的には、掌蹠角皮症の3種の特徴的なパターンは、びまん性、限局性、及び点状である。びまん性掌蹠角皮症は、手掌及び足底の全体にわたる均一に厚く対称な角質増殖を特徴とし、通常は、誕生時または生後数ヶ月のうちに明らかとなる。限局性掌蹠角皮症は、ケラチンの大きく緻密な腫瘤が、繰り返し摩擦部位で発達する掌蹠角皮症の1種であり、主に足に起こるが、もっとも手掌及び他の部位でも起こり、胼胝のパターンは、円盤状の場合も線状の場合もある。点状掌蹠角皮症は、小さな角化上皮症が多数、手掌足底表面にできる掌蹠角皮症の1形態であり、皮膚病変は、手掌足底表面全体が関与する場合もあるし、それらの分布がより限定される場合もある。治療は、皮膚軟化薬、外用レチノイド、角質溶解剤、及び外用ビタミンD軟膏(例えば、カルシポトリオール)を含むことが多い。
【0037】
実施形態によっては、症状は、皮膚が関与する過剰増殖性症状、例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、または皮膚T細胞リンパ腫などである。皮膚での腫瘍形成は、炎症細胞による腫瘍浸潤、及びその結果としてサイトカイン、ケモカイン、及び他のメディエーターの局所及び全身での産生を招く免疫応答を伴う。これらの炎症メディエーターは、癌形成と関連する。
【0038】
扁平上皮癌(SCC)は、皮膚の表皮の主要部分である扁平細胞の癌である。SCCは、皮膚癌の主要な形態のうちの1種である。しかしながら、扁平細胞は、消化管、肺、及び身体の他の領域の裏層にも生じるので、SCCは、癌の1形態として、多種多様な組織で発生し、そのような組織として、とりわけ、唇、口、食道、膀胱、前立腺、肺、膣、及び子宮頸部が挙げられる。身体の異なる部位でのSCCは、それらが表す症候、自然経過、予後、及び治療に対する反応に、非常に大きな差異を示す可能性がある。SCCは、組織学的に独特な形態の癌である。これは、上皮の細胞、あるいは特定の細胞学的または組織構築的特徴の扁平細胞分化、例えばケラチン、トノフィラメント束、または細胞対細胞接着に関与する構造であるデスモソームの存在などを示す細胞の制御不能な増殖から生じる。皮膚のSCCは、小結節として始まり、それが拡大するにつれて、中心が壊死及び脱落組織になっていき、そして小結節は潰瘍になる。SCCが引き起こす病変は、無症候性であることが多い。臨床的初見は非常に様々である。腫瘍は、周囲の皮膚のレベルより下に存在する可能性があり、最終的に、下層組織を潰瘍化し、下層組織に浸潤する。腫瘍は、一般的に、日光に曝露する領域に存在する。唇では、腫瘍は、小潰瘍を形成し、これは治癒できず間欠的に出血する。基底細胞癌(BCC)とは異なり、SCCは、転移の実質的な危険性がある。転移の危険性は、瘢痕、下唇あるいは粘膜で生じたSCC、及び免疫抑制患者に発生したSCCで高くなる。SCCは、一般に、外科切除、モース術、または電気凝固・掻爬術により治療される。皮膚SCC治療の非外科的選択肢として、外用化学療法、外用免疫応答修飾剤、光線力学療法(PDT)、放射線治療、及び全身性化学療法が挙げられる。イミキモドクリーム及びPDTなどの外用治療の使用は、一般に、前悪性及びin situ病変に限定される。放射線療法は、手術が実行可能ではない患者にとって治療の第一選択肢であり、転移性または高危険性の皮膚SCCの患者にとって補助療法である。全身性化学療法は、転移性疾患の患者に対してのみ使用される。
【0039】
基底細胞癌(BCC)は、皮膚癌の別の形態である。これは、転移も死滅もめったにない。しかしながら、BCCは、周囲組織に浸潤することにより、構造及び見た目を大幅に破壊する可能性がある。治療として、手術、放射線、光線力学療法(PDT)、ならびに外用化学療法が挙げられる。
【0040】
皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)は、難治性そう痒、及び赤い鱗状皮膚を呈する場合がある非ホジキンリンパ腫である。安定化次亜塩素酸配合物は、CTCLに関連した皮膚の刺激作用の不快感からの解放をもたらすことができる。
【0041】
実施形態によっては、症状は、皮膚の加齢または損傷の結果であるか、それに関連したもの、例えば光線角化症、またはUV損傷、あるいは過敏反応をもたらす皮膚バリアへの他の物理的損傷などである。
【0042】
光線角化症(AK)は、厚く鱗状のまたは外皮様の皮膚の前癌性斑である。これらの発達は、肌の白い人及び頻繁に日光を浴びる人でより一般的である。これらは、通常、皮膚が、太陽からの紫外線(UV)照射または室内日焼けベッドにより損傷した場合に形成される。AKは、潜在的に前癌性であると考えられている;未処置のままだと、それらはある種の癌(例えば、扁平上皮癌)になる場合がある。これらの増殖の進行は、皮膚が経時的に太陽に常に晒される場合に起こる。AKは、通常、厚く、鱗状の、または外皮様の領域として現れ、そこは乾燥または肌荒れしていると感じることが多い。AKは、暗色、明色、黒化、ピンク、赤色、これら全部の組み合わせ、または周囲の皮膚と同じ色をしている場合がある。光線角化症病変は、通常、大きさが2〜6ミリメートルの範囲であるが、直径が数センチメートルまで成長する可能性がある。AKは、皮膚の日光に曝露する領域に出現することが多い。なぜなら、AKは、皮膚の日光損傷に関連するからであり、AKがある人のほとんどは、複数のAKを有する。従来治療は、5−フルオロウラシルクリームを含む。いくつかの実施形態に従って、HOCl配合物は、外用抗炎症剤としてAKに対し有効である。
【0043】
UV損傷、例えば、日光を大量に浴びすぎた結果によるものなどは、皮膚の乾燥(皮膚が水分及び必須油分を失うとして)から日焼けまでの範囲にわたる可能性がある。軽度の日焼けは、皮膚の痛みを伴う発赤を引き起こすにすぎないが、より重篤な場合は、液体が充満した小さな隆起またはより大きな水疱を生成する可能性がある。長期の日光曝露は、光線角化症をもたらす可能性がある。UV損傷を受けた皮膚の治療は、従来の保湿剤が不十分な場合、抗炎症薬物療法、例えばイブプロフェンまたはアスピリンを含むことができる。
【0044】
実施形態によっては、症状は、免疫学的性質のもの、例えば、アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎、乾癬、疱疹状皮膚炎、類肉腫症、SLE、シェーグレン症候群、あるいはアレルギー反応などである。こうした実施形態において、次亜塩素酸配合物は、根底にある皮膚免疫を弱めるまたは改変しつつ、病変を治癒及び防ぐ助けとなる。
【0045】
アトピー性皮膚炎(AD)は、アトピー性湿疹としても知られているが、痒く、赤く、腫れて、ひび割れた皮膚をもたらす。透明な液体が患部から出てくる場合があり、その部分は時間とともに肥厚する。アトピー性皮膚炎は、典型的には、小児期に始まり、年々重篤度が変化していく。1歳未満の小児では、身体の多くで発症する場合がある。成長するにつれて、膝窩部及び肘の前面が発疹の最も一般的な領域になる。成人では、手足で最も発症する。引っ掻き行動は症候を悪化させ、患者は皮膚感染の危険性が上昇する。アトピー性皮膚炎の人の多くは、季節性鼻アレルギーまたは喘息を発症する。原因は不明であるが、遺伝、免疫系機能不全、環境曝露、及び皮膚の透過性にまつわる困難が関与すると考えられる。診断は、典型的には、徴候及び症候に基づく。従来の治療は、アトピー性皮膚炎を悪化させるものの回避、毎日の入浴とその後の保湿クリーム塗布、紅斑が出た場合のステロイドクリーム塗布、及びそう痒に役立つ薬物療法を含む。光線療法は、人によっては有用な場合がある。経口ステロイド剤は、他の手段が有効ではない場合に使用される場合もある。抗生物質(経口か外用かのいずれか)は、細菌感染が起こった場合に投与される場合がある。
【0046】
乾癬は、異常皮膚斑を特徴とする長期にわたる自己免疫疾患である。これらの皮膚斑は、典型的には、赤く、痒く、鱗状である。乾癬は、小さく局所的なものから全身を覆うものまで重篤度が様々であり得る。皮膚への損傷が、その場所での乾癬性皮膚変化の引き金となる可能性がある。乾癬には5つの主要な型がある:プラーク状、滴状、逆性、膿疱性、及び紅皮症である。プラーク状乾癬は、尋常性乾癬としても知られるが、症例の約90%を占める。典型的には、軽度の疾患には外用剤、中度の疾患には光線療法、及び重度の疾患には全身性作用剤が使用される。強力コルチコステロイドで薬効が観察されてきている。ビタミンD類似体は、場合によっては有効であり、これはコルチコステロイド療法と併用することができる。保湿剤及び皮膚軟化剤は、透明乾癬プラークを助けるために、時に光線療法と併用して、使用される。
【0047】
乾癬患者の大部分は、全身性治療を中止した後、乾癬が再発する。乾癬に使用されることが多い非生物学的全身性治療として、メトトレキセート、シクロスポリン、ヒドロキシカルバミド、フマル酸ジメチルなどのフマル酸エステル、及びレチノイドが挙げられる。メトトレキセート及びシクロスポリンは、免疫系を抑制する薬物である;レチノイドは、合成型ビタミンAである。これらの作用剤は、乾癬性紅皮症の第一選択治療とも見なされている。乾癬の治療のためにTNF−αを標的とするモノクローナル抗体が複数開発されており(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、及びセルトリズマブペゴル)、1種類の組換えTNF−αデコイ受容体、エタネルセプトが開発されている。炎症促進性サイトカインであるインターロイキン−12、インターロイキン−23、及びインターロイキン−17に対してさらなるモノクローナル抗体が開発されており、それらは、抗TNF−α作用剤とは異なる点で炎症経路を阻害する。T細胞を標的とする2種の薬物が開発されている(エファリズマブ及びアレファセプト)。乾癬の個体は、これらの生物学的作用剤に対して中和抗体を発生させる場合がある。さらに、これらの作用剤を用いた治療は高額である。
【0048】
実施形態によっては、患者は、そう痒症を有しており、これは、実施形態によっては、上記に記載したものを含めて根底にある皮膚または免疫学的症状と関連している。次亜塩素酸配合物は、識別可能な(例えば、客観的)炎症反応または刺激物がない場合も含めてそう痒と戦うために投与することができる。例えば、そのような症状は、敏感な皮膚が、物理的要因(紫外線照射、熱、低温、風など)、全般的な化学ストレス(例えば、化粧品、石鹸、水、汚染)、生理学的ストレスまたは障害、物質乱用、ホルモン状態(例えば、月経周期)、または他の全身性病弊と組み合わさってもたらされる場合がある。皮膚炎症の客観的認知がない場合であっても、次亜塩素酸は、痒み(例えば、そう痒)と関連した主観的刺痛、灼熱感、温感、及び強張りを減少させるのに有用である。例えば、実施形態によっては、対象は、心因性そう痒を有している、または有していると診断されており、心因性そう痒は、例えば、物質乱用または退薬、精神病、狂躁、抑鬱、ストレス、不安、または強迫性障害と関連するものであり得る。他の実施形態において、そう痒は、例えば、皮膚以外の場所で発生した疾患、例えば血液疾患(真性赤血球増加症)、リンパ増殖性疾患(例えば、白血病、ホジキンリンパ腫、セザリー症候群)、胆汁うっ滞、肝疾患、内分泌疾患、または慢性腎疾患などに続発した神経因性そう痒である。実施形態によっては、患者は、結節性痒疹であり、これは、そう痒性(痒い)小結節を特徴とする皮膚疾患である。患者は、引っ掻き行動により引き起こされた複数の剥離病変を呈することが多い。他の実施形態において、次亜塩素酸配合物は、魚鱗癬と関連したそう痒と戦うために投与される。
【0049】
次亜塩素酸配合物は、例えば、侵害性物質との接触、皮膚に影響を及ぼす遺伝的病弊、損傷(例えば、持続的引っ掻き行動から生じるものも含めて皮膚の不良または障害)、感染、自己免疫反応、そう痒及び/または蕁麻疹として現れる全身性自己免疫反応、免疫不全、過敏症(I、II、III、またはIV型のもの)、細胞ヒスタミン及び炎症促進性サイトカインに関連したアレルギー反応も含めてアレルギー反応のうち1つまたはそれらの組み合わせから生じる炎症を治療するのに有用である。次亜塩素酸配合物が有益となり得るさらなる症状として、皮膚が関与する類肉腫症、天疱瘡(例えば、尋常性または落葉状)、多形性紅斑、蕁麻疹(慢性蕁麻疹を含む)、選択的免疫グロブリンM欠損、発汗性外胚葉形成異常症(HED)、シェーグレン症候群、接触皮膚炎、酒さ(酒さに関連した炎症性病変の治療を含む)、挫瘡(炎症性挫瘡を含む)、及び皮膚アレルギーが挙げられる。実施形態によっては、次亜塩素酸配合物は、疾患からくるそう痒及び不快感を軽減し、症候の全般的な軽減及び疾患重篤度の低減を提供する場合がある。実施形態によっては、次亜塩素酸は、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、または足白癬などの皮膚真菌を含む真菌をはじめとする皮膚病原体殺菌のため、ヒトまたは動物に投与される。実施形態によっては、次亜塩素酸配合物は、健康な皮膚マイクロバイオームを得る及び/または維持するために、ブドウ球菌などの共生微生物のコロニー形成過剰を治療または予防する。これらの実施形態は、ある症状、例えばアトピー性皮膚炎または乾癬など、とりわけ、皮膚マイクロバイオームが共生生物の過剰増殖を特徴とする場合の維持または治療に重要となる可能性がある。
【0050】
様々な実施形態において、次亜塩素酸は、例えば、コルチコステロイド、ビタミンD軟膏(ビタミンD類似体)、レチノイド、鎮痛剤、免疫抑制剤、光線療法、抗ヒスタミン、抗感染薬(例えば、抗生物質または抗真菌剤)、または乾癬の場合の生物製剤を用いた従来治療に対する代替または補助療法として使用される。特に制限なく、適応症に対する様々な従来治療が本明細書中開示される。実施形態によっては、HOCl配合物は、コルチコステロイドの代わりに使用される。
【0051】
炎症症状は、あらゆる年齢のヒトまたは動物患者(小児及び老年患者を含む)及び/または免疫低下患者に存在する場合がある。動物患者の例として、哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、子ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、及びモルモットなどが挙げられる。様々な実施形態において、患者は、ヒト患者である。本発明は、さらに、そのような炎症症状の予防的手当(予防的使用を含む)、または患者が遺伝的または環境的になりやすい症状、ならびに抗菌剤もしくはステロイド治療、またはレチノイド、ビタミンD軟膏、免疫抑制剤、もしくは生物学的抗炎症剤での治療では、完全には解消されない症状の予防を企図する。小児患者として、乳児、小児、及び青年が挙げられ、年齢制限は、通常、誕生から18歳(米国では21歳)までの範囲である。実施形態によっては、患者は、12歳未満であるか、乳児である。老年患者は、本開示によれば、60歳超の個人である。免疫低下患者として、免疫抑制薬の投与により、化学療法、放射線照射により、栄養障害により、遺伝的病弊、または後天性免疫不全症候群(AIDS)などのある特定の疾患プロセスにより免疫応答が減弱した患者が挙げられる。
【0052】
実施形態によっては、皮膚の患部は、正常で健康な皮膚と比べてアルカリ性のpHを特徴とする場合がある。そのような実施形態では、次亜塩素酸の弱酸性pHが、皮膚を、治癒及び健康な再生により貢献するpHにする助けとなる。実施形態によっては、よりアルカリ性の皮膚は、ある特定の微生物(例えば、ブドウ球菌種)のコロニー形成過剰と関連し、一方、やや酸性のpHは、健康な皮膚マイクロバイオームにより貢献する。さらに、実施形態によっては、無傷だが炎症の皮膚への使用が、組織を損傷する炎症反応を阻止または減少させ、それにより細胞(例えば、真皮線維芽細胞及び/またはケラチン生成細胞)を治癒プロセスと調和する様式で増殖させることにより、健康な皮膚再生及びバリア完全性を促進する。さらになお、HOClは、使用されるレベルではこれらの細胞に対して細胞障害性ではない。治癒環境は、バリアの完全性が失われることによりなんにせよ感染が生じる可能性がある場合に、炎症組織の微生物負荷を減少させることにより、さらに援助される。すなわち、様々な実施形態において、次亜塩素酸配合物は、微生物負荷の減少、炎症の減少、皮膚及び/または全身性免疫の改変もしくは平衡回復、そう痒症の減少、皮膚細胞再生の向上、及び皮膚pHの正常化の1つまたは複数をもたらす。
【0053】
次亜塩素酸配合物は、疾患症候(そう痒を含む)と戦う及び/またはこれを制御するために必要に応じて患部に使用される場合もあるし、より厳密なレジメン、例えばおよそ毎日、または1日1回〜約10回、または1日1回〜約5回、または1日1回〜約3回(例えば、1日約2回)を用いて使用される場合もある。
【0054】
実施形態によっては、次亜塩素酸配合物は、症候または悪化を制御するために周期的に、例えば、1〜約12週間、または1〜約10週間、または1〜約8週間、または1〜約6週間、または1〜約4週間続く配合物レジメンなどで使用される。実施形態によっては、レジメンは、約1または2週間続く。実施形態によっては、次亜塩素酸配合物は、症候悪化(例えば、水疱、隆起、病変の形成、またはそう痒)を防ぐあるいはその重篤度及び/または頻度を低下させるために、悪化間で使用される。これらまたは他の実施形態において、次亜塩素酸配合物は、従来治療、例えばコルチコステロイド、免疫抑制剤、外用ビタミンD、レチノイド、及び/または抗生物質などの間に(しかし同時ではない)使用される。実施形態によっては、HOCl配合物は、外用または経口コルチコステロイドと併用され、実施形態によっては、ステロイド使用の用量または頻度を低下させることができる。実施形態によっては、HOClは、コルチコステロイドの代わりに使用され、それによりコルチコステロイド使用に関連した副作用を伴わずに長期間使用することを可能にする。
【0055】
実施形態によっては、次亜塩素酸配合物は、特に慢性症状の場合に長期間使用されるが、もっともその場合に限定されない。一般に、慢性症状とは、治療したとしても除去されることはなく、したがって治療の目的は、炎症性症候を減少、阻止、または予防(予防的治療により)し、それにより症状を管理することである症状である。長期使用として、一般に、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、またはそれより長期間の治療が挙げられる。次亜塩素酸配合物は、実施形態によっては、継続的に使用される場合がある。
【0056】
本発明のある特定の実施形態において、次亜塩素酸は、別の治療薬とともに配合されるか投与され、そのような治療薬として、コルチコステロイド、ビタミンD軟膏(またはビタミンD類似体)、レチノイド、鎮痛剤、免疫抑制剤、外用化学療法、及び抗感染薬(例えば、抗生物質または抗真菌剤)のうち1種または複数が挙げられる。治療薬の制限ではなく例として、抗菌剤、例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、及び駆虫剤など、免疫調節/抑制剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗酸化剤、例えばビタミンなど、及び保湿剤が挙げられる。例えば、次亜塩素酸は、抗生物質、例えば、バシトラシン、ネオマイシン、ネオスポリン、フラマイセチン、フシジン酸、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、トブラマイシン、セフトリアキソン、スルファセタミド、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、セフォキシチン、セフォタキシム、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、及びアジスロマイシンなど;抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、及びオセルタミビルなど;抗真菌剤、例えば、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン、及びナイスタチン;駆虫剤、例えば、メトロニダゾール、イベルメクチン、パモ酸ピランテル、アルベンダゾール、及びアトバコン・プログアニルなど;免疫調節/抑制剤、例えば、サリドマイド、レナリドミド、アプレミラスト、シクロスポリン、プレドニゾン、プレドニゾロン、及びタクロリムスなど;コルチコステロイド、及びNSAID、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、セレコキシブなど;抗ヒスタミン剤、例えば、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、フェキソフェナジン、シメチジン、ラニチジン、オロパタジン、シプロキシファン、及びクロモグリケートなど;鎮痛剤、アセトアミノフェン/パラセタモール、ブプレノルフィン、コデイン、メペリジン、及びトラマドールなど;局所麻酔剤、例えば、エピネフリン、リドカイン、ブピバカイン、及びベンゾカインなど;抗酸化剤、例えば、ビタミンA及びEなど;外用ビタミンD軟膏、保湿剤、例えばシリコーンなど、皮膚軟化薬、ラノリン、鉱物油、尿素、アルファ−ヒドロキシ酸、グリセリン、脂肪酸、セラミド、コラーゲン、またはケラチンとともに配合されるか投与される場合がある。
【0057】
次亜塩素酸配合物は、次亜塩素酸及び他の酸化種をすでに記載したとおりの量(例えば、利用可能な遊離塩素すなわちAFC)で含有し、かつ活性酸素種としてHOClを優勢に提供する肌に優しいpH(例えば、約5〜約7)で維持される。配合物はさらに、配合物を常温保存可能にする成分及び皮膚の外用治療に望ましい物理的特性を提供するための成分を含む。
【0058】
組成物は、薬学上許容されるキャリアを含む場合がある。適切なキャリアの制限ではなく例として、ヘクトライト、ケイ酸塩、フルオロケイ酸塩、ベントナイト、油乳剤、シクロメチコン、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び精製水が挙げられる。組成物は、他にも様々な成分、例えば等張化剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、増粘剤、保存料、及び他の治療薬などを含む場合がある。
【0059】
増粘剤の例として、以下が挙げられるが、それらに限定されない:薬学上許容される外用塗布用ケイ酸塩、多糖類、例えばヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々な重合体;ビニル重合体;及びアクリル酸重合体など。例えば、組成物は、1〜400,000センチポアズ(「cps」)の粘度を示す場合がある。実施形態によっては、組成物は、ケイ酸塩系キャリア(例えば、フルオロケイ酸塩キャリア)を含むヒドロゲルである。例えば、ケイ酸塩は、フルオロケイ酸塩、例えば、フルオロケイ酸マグネシウムナトリウムまたはフルオロケイ酸マグネシウムリチウムナトリウムなどを含むことができる。次亜塩素酸溶液は、分散媒体として、ケイ酸塩キャリアとともに使用してヒドロゲルを調製することができる。配合物は、約0.5mS/cm〜約12mS/cm、実施形態によっては例えば約1mS/cm〜約10mS/cmなどの導電率を有するヒドロゲルの場合がある。ヒドロゲルは、ケイ酸塩系キャリア、例えば、0.5%〜約5%のフルオロケイ酸マグネシウムナトリウムなどから調製される場合があり、pHをある値にするための追加の緩衝剤を使用する場合がある。緩衝剤の例として、リン酸、またはリン酸モノナトリウムとリン酸の併用がある。
【0060】
等張化剤に関しては、組成物の浸透圧を調整するためにそのような作用剤を使用する場合がある。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、ブドウ糖及び/またはマンニトールを組成物に加えて、生理的浸透圧を近似する場合がある。等張化剤のそのような量は、添加される特定作用剤及び組成物の種類に応じて変わることになる。次亜塩素酸配合物は、生理的流体に対して高張性、低張性、または等張性の場合があるが、実施形態によっては、低張性である。配合物は、塩分を様々なレベルで、例えば0.01〜約2.0%で含有する場合がある。実施形態によっては、配合物は、約0.02%〜約0.9%w/vのNaClを含有する。実施形態によっては、配合物は、約0.01〜2.0%w/vの1種または複数の塩、例えば、ハロゲン化物塩、例えばNaCl、KClなど、または塩もしくはハロゲン化物塩の混合物を含有する。塩またはハロゲン化物塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウムの塩の場合がある。
【0061】
緩衝剤及びpH調整剤に関しては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムもしくはホウ酸、リン酸、または他の適切な酸を組成物に加えて、標的とするpHを達成する及び/または貯蔵条件下でのpH浮動を防ぐ場合がある。具体的な濃度は、使用する作用剤に応じて変わることになる。しかしながら、好ましくは、緩衝剤またはpH調整剤は、標的pHをpH4〜7の範囲または本明細書中記載されるとおりの範囲内に維持するように選択されることになる。実施形態によっては、配合物は、ケイ酸塩系キャリアを使用したヒドロゲルであり、以下でより詳細に説明されるとおりHOClを安定化するために重炭酸ナトリウム(例えば、500〜2000mg/L)を含み、かつやや酸性のpH(例えば、5〜6.5)にするためにリン酸を含む。配合物は、約500〜約50,000cP、例えば、約1000〜約40,000cP、または1000〜約30,000cPなどの粘度を有する場合がある。配合物は、実施形態によっては、10mS/cm未満、例えば約0.5〜約5mS/cm、例えば0.5〜約3mS/cm、または実施形態によっては約1または約2mS/cmなどの導電率を有する。
【0062】
界面活性剤に関しては、従来の配合物で有用な様々な界面活性剤を使用することができる。界面活性剤の例として、CREMOPHOR EL、ラウラミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル23ラウリルエーテル、及びポロキサマー407が挙げられる。
【0063】
保存料に関しては、HOClが保存料として機能するので、追加の抗菌剤は必要ない。
【0064】
次亜塩素酸は、非常に不安定であり、使用する溶液の強度が高くなるほど(例えば、数百ppmを超えるAFC)、ならびに不安定化を招くことが多い他の配合物成分を使用する場合に、問題がより困難になった。すなわち、実施形態によっては、配合物は、米国特許第8,871,278号に開示されるとおり、安定化量の溶存無機炭素(DIC)を含み、この特許は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。例えば、配合物は、安定化量のDICを使用し、これは、アルカリまたはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウムなどの重炭酸塩または炭酸塩として組み込まれる場合がある。実施形態によっては、重炭酸塩または炭酸塩は、次亜塩素酸の形成(例えば、電気化学的処理による)の前に加えられ、他の実施形態では、重炭酸塩または炭酸塩は、電気化学的処理の後に加えられる。例えば、重炭酸塩(複数可)または炭酸塩(複数可)は、前駆体水溶液(例えば、水)または無水電解質に含有されている場合もあるし、及び/または電気分解された溶液中にまたは配合中に組み込まれる場合もある。
【0065】
DICは、「安定化量」で組み込まれ、この量は、経時的に配合物のpHまたはAFC含有量の変化を基準にして決定することができる。一般に、配合物は、AFCの量が、約6ヶ月の期間にわたり初期値の約75%未満に低下しなければ、安定しているとみなされる。ある特定の実施形態では、AFC含有量は、配合物の製造日から少なくとも1年間安定している。さらに、配合物の安定性は、pHを基準にして決定する場合もある。一般に、配合物は、pHが、約6ヶ月の期間にわたり1単位変化することがなければ、安定しているとみなされる。ある特定の実施形態では、pHは、配合物の製造日から少なくとも1年間安定している。配合物は、安定性を高めるために、25℃、または20℃以下で貯蔵しなければならない。25℃、及び20℃というのは、安定性を決定する参照温度である。安定性を試験するため、溶液または配合物を、HDPEボトルに詰め、暗中に置き、未開封を維持する。配合物は、実施形態によっては、使用するまで4℃で貯蔵される場合がある。
【0066】
安定化量のDIC(例えば、炭酸塩または重炭酸塩)は、AFC含有量を基準にして決定することができる。例えば、ある特定の実施形態において、安定化量の炭酸塩または重炭酸塩は、AFCレベルに対して約5:1〜1:5、またはAFCレベルに対して約2:1〜約1:2のモル比にある。実施形態によっては、重炭酸塩または炭酸塩は、AFC含有量(例えば、次亜塩素酸含有量)に対して少なくとも等モル量で存在する。さらに他の実施形態において、DIC(例えば、重炭酸塩または炭酸塩)は、AFC含有量に対して約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、または約1:5で存在する。様々な実施形態において、他の緩衝成分、例えばリン酸緩衝剤も使用される。例えば、AFC含有量が約200ppm〜約500ppmの配合物について、炭酸塩または重炭酸塩は、配合物を安定化するために、約300mg/L〜約1500mg/Lの量で存在する場合がある。ある特定の実施形態において、そのような配合物は、炭酸塩または重炭酸塩を約400〜約1000mg/L組み込むことにより安定化される。ある特定の実施形態において、配合物は、AFCを500〜1000ppmの範囲で有し、重炭酸ナトリウムを約500〜約2000mg/Lの範囲で含み、pHを5〜7の範囲で有し、かつフルオロケイ酸マグネシウムナトリウムを2〜5%(例えば、約3%または約4%)含む。
【0067】
理論に固執するつもりはないが、溶存無機炭素(DIC)は、一般に、炭酸塩、重炭酸塩、炭酸、及び溶存COを含むものであるが、これは、本明細書中記載される溶液及び配合物が標的とするpH範囲において少しのまたは最低限の緩衝能しか提供しない。それにもかかわらず、こうした溶液は、溶液または組成物が「オンデマンド」製造に依存しないように、有効に安定化される。安定化効果は、部分的には、DICのフリーラジカル捕捉能力によるものである可能性があり、それによりHOClの分解を遅くする。
【0068】
次亜塩素酸は、いくつかの実施形態により、化学的に(例えば、次亜塩素酸塩の酸性化により)製造される場合もあるが、次亜塩素酸は、電気化学的に製造される場合もある。次亜塩素酸の電気化学的製造は、ハロゲン化物系電解質を、ダイヤフラム型電解槽で処理することによる。生理食塩水の電気化学的処理が、例えば、米国特許第7,303,660号、同第7,828,942号、及び同第7,897,023号に記載されており、これらの特許は、そのまま全体が本明細書により参照として援用される。
【0069】
安定化された配合物は、任意の適切な容器、例えば、任意の適切なプラスチックもしくはガラス瓶、または袋(例えば、ビニール袋)、試験管、または缶(例えば、スプレーもしくはエーロゾル)を用いて、販売用に梱包される場合がある。ある特定の容器材料は、貯蔵寿命に利点をもたらす場合がある。ある特定の実施形態において、梱包材料は、CO及びOなどの種による透過を含めて最低限の気体透過性しか有さない(例えば、不透過性である)。すなわち、こうした容器は、COの形の安定剤を失うことがなく、安定化量の溶存無機炭素を維持する。容器は透明な場合もあるし、光が透過できないように不透明な場合もある。容器の容積は、安定性及び貯蔵寿命に影響を与えるとみなされてきたものの、本明細書中記載される配合物は、約50ml〜約2リットル、または約100ml〜約1リットルの範囲にある場合がある。容器の例として、単位容積が、約50ml、約100ml、約125ml、約250ml、約0.5リットル、約1リットル、約2リットル、約3リットル、約4リットル、約5リットル、または約10リットルのものがある。
【実施例】
【0070】
実施例1:ヒドロゲル配合物
安定化次亜塩素酸溶液を含有するヒドロゲル配合物を開発した。重炭酸塩または溶存無機炭素は、この溶液のイオン強度または電気伝導度に最低限の影響しか及ぼさない。すなわち、重炭酸塩または炭酸塩は、HOCl溶液を約4〜約7.5(例えば約6)の範囲のpHで安定化させる他には、標的とするpHでのイオン強度に影響せず、利用可能な遊離塩素を200ppm含む次亜塩素酸をゲル配合物中の分散媒体として使用することを、特に低イオン強度が重要な場合でそのように使用することを可能にする。
【0071】
3%フルオロケイ酸マグネシウムナトリウム含有ヒドロゲル配合物用に、低イオン強度の次亜塩素酸溶液(導電率≦1mS/cm(すなわち、ミリシーメンス毎センチメートル))、AFC=300ppm、pH5.3を用いた。等しいpH及びAFC含有量で8mS/cmのHOClから、等粘度のヒドロゲルを製造するには、4%超のフルオロケイ酸マグネシウムナトリウムが必要であった。分散媒体としてのHOCl溶液のイオン強度が低くなると、物理的外観及び生成物安定性に悪影響することなく最終生成物のpH最適化用の他の緩衝剤を加えることが可能になる。ゲル化剤がそれ自身、無水緩衝剤であるという事実ゆえに、最終生成物のpH最適化用に他の緩衝剤を加えることができることは、有益となる可能性がある。
【0072】
別の例では、4%F12MgNaSi(フルオロケイ酸マグネシウムナトリウム)含有ヒドロゲルの生成に、次亜塩素酸溶液、AFC350ppm、pH5.3、塩分4g/l(導電率8mS/cm)を用いた。生成したヒドロゲルは、粘度33,000センチポアズ(cP)及びpH8.2を有した。pHを「皮膚にやさしい」範囲にするために、リン酸を緩衝剤として加えた。最終ヒドロゲルは、経時的に、pH6から6.8へとpHが移動した。緩衝剤の追加は、ゲル粘度が220cPに移動するとともに導電率が10mS/cmへと上昇するため、制限される。
【0073】
低イオン強度の次亜塩素酸、AFC=370ppmは、実質的に米国特許第7,897,023号(これはそのまま全体が本明細書により参照として援用される)に記載されるとおりに、塩化ナトリウムを電気化学的に処理して生成させ、溶存無機炭素(DIC)の初期形態としてのNaHCOが500ppmあるのと等しい乾燥重炭酸ナトリウムの入った容器に収集した。このプロセスにより生成したpH5.2及び導電率0.8mS/cmのHOClを、ゲル調製の分散媒体として使用した。ゲル化剤として3%フルオロケイ酸マグネシウムナトリウムを使用した。25分たたないうちに、初期pH8.4及び導電率約1mS/cmであり粘度が約10,000cPのヒドロゲルが、形成された。リン酸を0.25%未満の量で加えて、ヒドロゲルのpHを皮膚に優しい範囲(約pH5.5〜5.8)に下げた。粘度約2,000cPのヒドロゲルが、形成された。
【0074】
別の例では、低イオン強度の次亜塩素酸(AFC=1,500ppm)を、米国特許第7,897,023号に記載されるとおりに生成させ、このときHOCl溶液流に重炭酸ナトリウム溶液(70g/L)を注入した。このプロセスにより生成したpH5.2及び導電率2.0mS/cmのHOCl溶液を、ゲル調製の分散媒体として使用した。ゲル化剤として4%フルオロケイ酸マグネシウムナトリウムを使用した。ゲル化剤が全て分散した後に、皮膚軟化剤として2%シクロメチコンを加えた。25分たたないうちに、初期pH8.4であり粘度が約100,000cPのヒドロゲルが、形成された。リン酸、2%を、0.5%未満の量で加えて、ヒドロゲルのpHを皮膚に優しい範囲(約pH5.5〜5.8)に下げた。粘度20,000cP超のヒドロゲルが、形成された。
【0075】
低イオン強度の次亜塩素酸(AFC=1,500ppm)を、米国特許第7,897,023号に記載されるとおりに生成させ、このときHOCl溶液流への重炭酸ナトリウム溶液(70g/L)の注入も行った。このプロセスにより生成したpH5.0及び導電率2.0mS/cmのHOCl溶液を分散媒体として使用し、ゲル化剤組成物としてフルオロケイ酸マグネシウムナトリウムとケイ酸マグネシウムアルミニウム、3:1の組み合わせを用いてゲルを調製した。
【0076】
実施例2:そう痒減少の評価
治験−盲検無作為試験において、ゲル状の次亜塩素酸組成物を、炎症の減少について、そう痒減少により評価した。軽度から中度のアトピー性皮膚炎がある年齢12歳〜75歳の対象30人が、3日間の期間にわたり参加した。患者、すなわち対象者20人を、AFCが≦450ppmの次亜塩素酸組成物で治療して、対照となる未処置の対象者10人と比較した。評価には、治験責任医師及び参加者による耐容性の査定が含まれた。
【0077】
全体的な刺激、刺痛、灼熱感、及びそう痒を、5段階順位尺度で、1日目(来診時ベースライン)、2日目、及び3日目に評価した。治験責任医師の査定を、紅斑、落屑、苔癬化、全体的な刺激、及び表皮剥離について5段階尺度の平均として計算した。対象者への質問は、1日目、2日目、及び3日目での刺痛、灼熱感、及びそう痒に基づくものであった。重篤な有害事象、局所的皮膚反応、及び中止につながる有害事象を含む全ての有害事象の発生頻度を記録した。
【0078】
HOCl組成物を用いた治療は、軽度から中度のアトピー性皮膚炎がある対象で、早くも1日目からそう痒を効果的に減少させた。
【0079】
HOCl治療群は、未治療群と比較して、3日目において有意にそう痒を減少させた(p=0.007)。
【0080】
HOCl組成物を少なくともBIDで用いた治療は、非常に良い耐容性があり、かつ深刻な有害事象もなく、治療に関連した中止もなかった。
【0081】
実施例3:炎症減少の症例研究評価
そう痒減少及び皮膚の品質改善による炎症減少の評価を、HOClゲルで治療した4歳の男性で行った。患者は、患者の手の手掌側及び足の足底側に湿疹があった。患者は、2ヶ月の間に、重篤なそう痒、重篤な紅斑(ビート様発赤)からくる焼痂形成、ひび、黄色プラーク/皮膚の硬化、及び皮膚の剥離が出ていた。治療の第一選択肢として、患者は、外用コルチコステロイドである吉草酸ヒドロコルチゾン軟膏USP、0.2%を、患部に1日2回使用するように処方された。コルチコステロイドを1日2回使用する治療を4週間行ったが、患者の症候は解消されなかった。
【0082】
患者は、外用コルチコステロイドをやめて、その代わりにAFCが≦450ppmの次亜塩素酸組成物を、患部に1日2回使用して治療された。
【0083】
HOCl組成物を用いた治療は、中度の湿疹がある対象で、早くも1日目から症候を効果的に減少させた。
【0084】
1日目及び3日目の両方で、患者は、以下を含む顕著な症候の減少を示した:そう痒の減少、紅斑の減少(発赤の減少)、皮膚の創傷治癒(ひびの減少)、プラークの軟化及び正常な皮膚色に向かう動き、ならびに剥離の減少。
【0085】
HOCl組成物を少なくともBIDで用いた治療は、非常に良い耐容性があった。
【0086】
患者は、2週間のBID治療の間に全症候の完全な解消に向かった。
【0087】
深刻な有害事象もなく、治療に関連した中止もなかった。
【0088】
患者及び保護者は、コルチコステロイドでの治療に対してゲル状HOCl組成物の「使いやすさ」が高かったと報告した、というのも、この製品を手及び指で塗布しなければならない場合にそうすることが難しい、目、鼻、または口の中/または近くに製品を付けることに関して注意がいらなかったからである。
【0089】
実施例4:動物モデルでの充血の減少
HOCl溶液を、全身性感作モデルのアレルギー性結膜炎に関連した発赤及びそう痒の局所的治療について試験した。このモデルでは、アレルゲン(ブタクサ、SRW)を用いた全身性感作に続いて、同一アレルゲンで局所的負荷を与えた。この試験の目的は、眼アレルギー性結膜炎に関連した徴候及び症候の減少について3種の次亜塩素酸配合物の有効性を評価することであった。
【0090】
この試験の結果は、次亜塩素酸が、このアレルギー性結膜炎モデルにおいて、用量依存の様式で、充血を減少させることができたことを示す。500ppm及び1000ppmの次亜塩素酸は、ステロイド(プレドニゾロン、1%)の場合と同様に、balb/cマウスの眼の発赤を著しく減少させた。この試験の対照は、それらがすべき働きを行い、ビヒクル対照では、負荷後に大量の充血を生じ、プレドニゾロン群では、全ての負荷を通じて、低い発赤スコアを維持した。予想どおり、肥満細胞安定剤群(オロパタジン)は、最初の負荷後の充血を著しく減少させることができたが、時間とともに有効性を失う。高濃度次亜塩素酸群は、全負荷過程を通じて充血を著しく減少させることができ、一方、最低濃度の100ppmでは、発赤を減少させることができなかった。
【0091】
本明細書中引用される参照は全て、そのまま全体が、参照として援用される。
図1A
図1B
【国際調査報告】