(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538791(P2017-538791A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】複数の原材料から形成された合成ブレンドF−POSS組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/24 20060101AFI20171201BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20171201BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20171201BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20171201BHJP
C07F 7/21 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
C08G77/24
C09D7/12
C09K3/18 104
C09D201/00
C07F7/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-512899(P2017-512899)
(86)(22)【出願日】2015年10月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月8日
(86)【国際出願番号】US2015054367
(87)【国際公開番号】WO2016057599
(87)【国際公開日】20160414
(31)【優先権主張番号】62/060,622
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516344753
【氏名又は名称】エヌビーディー ナノテクノロジーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NBD NANOTECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(74)【代理人】
【識別番号】100179202
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100188411
【弁理士】
【氏名又は名称】阪下 典子
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー, ジョン チャールズ
【テーマコード(参考)】
4H020
4H049
4J038
4J246
【Fターム(参考)】
4H020BA36
4H049VN01
4H049VP08
4H049VQ88
4H049VR21
4H049VR43
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4J038BA021
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4J246GA20
4J246GB32
4J246GC49
4J246HA32
4J246HA56
(57)【要約】
本開示は、例示的な実施形態において、フッ素化かご型シルセスキオキサン分子構造の分布を生じる少なくとも2つの原料の合成ブレンドを含む物質の組成物に関する。本開示はまた、例示的な実施形態において、このような合成ブレンドの製造方法に関する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
a.C1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
b.C2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項2】
前記第一の原料は1H,1H,2H,2Hノナフルオロヘキシルトリエトキシシランである、請求項1に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項3】
前記第二の原料は1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシランである、請求項1または2に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項4】
前記第一の原料および前記第二の原料は1:3〜3:1の範囲のモル比で存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項5】
前記ポリマー合成ブレンド組成物の融点は、前記第一の原料または前記第二の原料単独のいずれかの融点よりも約30℃以上低い、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項6】
xが1〜16の範囲内にあり、yが1〜16の範囲内にある、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項7】
xが4〜10の範囲内にあり、yが4〜10の範囲内にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
ポリマー合成ブレンド組成物であって、
a.C1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
b.C2y(ここで、yは炭素数であり、xはyとは異なる)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む少なくとも2つの原材料の混合物、を含み、
前記少なくとも2つの原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項8】
xが1〜16の範囲内にあり、yが1〜16の範囲内にある、請求項7に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項9】
xが4〜10の範囲内にあり、yが4〜10の範囲内にある、請求項7または8に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項10】
ポリマー合成ブレンド組成物であって、C1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、C2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料の重合単位、を含むポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項11】
頂点置換基の分布を有するF−POSSポリマー合成ブレンド材料の形成方法であって、
a.C1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料を準備し、
b.C2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料を準備し、そして
c.前記第一の原料を前記第二の原料と分子の分布を形成する条件下で反応させること
を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、形成方法。
【請求項12】
フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
a.C1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
b.C2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項13】
フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
a.C1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
b.C2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、形成された前記分子の分布の第一の部分ではC1x:C2y比が1:0である置換基Rを有し、形成された前記分子の分布の第二の部分ではC1x:C2y比が0:1である置換基Rを有し、形成された前記分子の分布の第三の部分ではC1x:C2y比が1:7〜7:1の範囲内にある置換基Rを有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【請求項14】
a.少なくとも1つのポリマーベース塗料材料と、
b.フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物を含むポリマー合成ブレンド組成物であって、
i.C1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
ii.C2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、
ポリマー合成ブレンド組成物と
を含む、塗料組成物。
【請求項15】
前記ポリマーベース塗料材料はポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ(L−乳酸)、ポリセルロース系、ポリヒドロキシアルカネート、リグノース・セルロース、ポリエチレン・オキシド、エポキシ、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル、および前記の少なくとも2つの混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの材料を含む、請求項14に記載の塗料組成物。
【請求項16】
前記塗料組成物は110°以上の水接触角および70°以上のヘキサデカン接触角を有する、請求項14または15に記載の塗料組成物。
【請求項17】
前記ポリマー合成ブレンド組成物はトルエン、メチルエチルケトン、IPAおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1つの材料中に希釈されたポリウレタンから構成される70%固形分の前記少なくとも1つのポリマーベース塗料材料中に溶解する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項18】
頂点置換基の分布を有するF−POSSポリマー合成ブレンド材料の形成方法であって、
a.C1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料を準備し、
b.C2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料を準備し、そして
c.前記第一の原料を前記第二の原料と分子の分布を形成する条件下で反応させること
を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、形成方法。
【請求項19】
以下の式
【化9】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、nは0〜8の整数であるが、R
1とR
2は異なる)のF−POSS化合物またはそれらの混合物。
【請求項20】
各長鎖フッ素化アルキルでは独立して炭素原子の最長連続鎖中における炭素原子が5〜12個である、請求項19に記載のF−POSS化合物。
【請求項21】
各長鎖フッ素化アルキルは4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキルおよび6/4フッ素化アルキルからなる群より独立して選択される、請求項19または20に記載のF−POSS化合物。
【請求項22】
R1は4/2フッ素化アルキルであり、R2は6/2フッ素化アルキルである、請求項19〜21のいずれか一項に記載のF−POSS化合物。
【請求項23】
以下の式
【化10】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、nは0〜8の整数であるが、R
1とR
2は異なる)の化合物の混合物を含むF−POSS組成物。
【請求項24】
各長鎖フッ素化アルキルでは独立して炭素原子の最長連続鎖中における炭素原子が5〜12個である、請求項23に記載のF−POSS組成物。
【請求項25】
各長鎖フッ素化アルキルは4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキルおよび6/4フッ素化アルキルからなる群より独立して選択される、請求項23または24に記載のF−POSS組成物。
【請求項26】
R1は4/2フッ素化アルキルであり、R2は6/2フッ素化アルキルである、請求項23〜25のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【請求項27】
前記化合物の混合物は0:8〜8:0のR1対R2比を有する化合物の分布を含む、請求項23〜26のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【請求項28】
前記分布はガウス分布である、請求項27に記載のF−POSS組成物。
【請求項29】
第一のフッ素化トリアルコキシシランを含む第一の原料を、第二のフッ素化トリアルコキシシランを含む第二の原料と接触させることを含む(前記第一のフッ素化トリアルコキシシランと前記第二のフッ素化トリアルコキシシランは異なる)方法によって製造されるF−POSS組成物。
【請求項30】
前記第一のフッ素化トリアルコキシシランは式R1Si(ORA)3で示され、前記第二のフッ素化トリアルコキシシランは式R2Si(ORB)3で示され、R1およびR2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、各RAおよびRBは独立してC1〜C6アルキルであるが、R1とR2は異なる、請求項29に記載のF−POSS組成物。
【請求項31】
各長鎖フッ素化アルキルでは独立して炭素原子の最長連続鎖中における炭素原子が5〜12個である、請求項30に記載のF−POSS組成物。
【請求項32】
各長鎖フッ素化アルキルは4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキルおよび6/4フッ素化アルキルからなる群より独立して選択される、請求項30に記載のF−POSS組成物。
【請求項33】
R1は4/2フッ素化アルキルであり、R2は6/2フッ素化アルキルである、請求項29〜32のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【請求項34】
前記組成物は0:8〜8:0のR1対R2比を有する分布の化合物の混合物を含む、請求項29〜33のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【請求項35】
前記分布はガウス分布である、請求項34に記載のF−POSS組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2014年10月7日に出願された、米国仮特許出願第62/060,622号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、例示的な実施形態において、フッ素化かご型シルセスキオキサン分子構造の分布を生じる少なくとも2つの原料の合成ブレンドを含む物質の組成物に関する。本開示はまた、例示的な実施形態において、このような合成ブレンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化かご型シルセスキオキサン(Fluorinated polyhedral oligomeric silsesquioxane)(「F−POSS」)分子は、周囲に長鎖フッ素化アルキル基を有する酸化ケイ素コア〔SiO
1.5〕からなるかご型シルセスキオキサン(「POSS」)のサブクラスである。そのようなアルキル基には、フッ素化トリエトキシシランが含まれる。F−POSS分子は超疎水性表面および疎油性表面の生成をもたらすいくつかの最も低い既知の表面エネルギーを有する。F−POSS材料の特徴は、通常、無機ガラス様材料のように作用するシロキシ・ケージを形成するが、マトリックスの頂点に有機R基置換基を有するため、通常とは異なる性質と用途がもたらされることである。以下の式[1]を参照されたい。各R置換基は、例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7またはR8と表示することができる。以下の式[2]を参照されたい。
【化1】
【0004】
これまでF−POSS材料は全ての頂点のR置換基として1分子のみを有するように形成されてきたと考えられる。例えば、以下の米国特許および公開された出願を参照されたい:6,716,919(Lichtenhanらに発行)、7,193,015(Mabryらに発行)、2008/0221262(Mabryらによる出願)、および2013/0072609(Haddadらによる出願)。隣接するF−POSS分子のフッ素原子は互いに引き合う傾向があり、その結果F−POSS分子は通常他の材料中で容易に分散できないかまたは解離できない。F−POSS分子は通常非フッ素化溶媒への溶解度が低い。他の材料中に、より容易に分散されるかまたは解離されるF−POSS材料の提供が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様では、本開示は、以下の式
【化2】
【0006】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、nは0〜8の整数であるが、R
1とR
2は異なる)のF−POSS化合物またはそれらの混合物を提供する。
【0007】
別の態様において、本開示は、以下の式
【化3】
【0008】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、nは0〜8の整数であるが、R
1とR
2は異なる)の化合物の混合物を含むF−POSS組成物を提供する。
【0010】
第一のフッ素化トリアルコキシシランを含む第一の原料を、第二のフッ素化トリアルコキシシランを含む第二の原料と接触させることを含む(前記第一のフッ素化トリアルコキシシランと前記第二のフッ素化トリアルコキシシランは異なる)方法によって製造されるF−POSS組成物を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0012】
a.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0013】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
【0014】
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、ポリマー合成ブレンド組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0016】
a.C
1x(ここで、xは炭素原子数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および
【0017】
b.C
2y(ここで、yは炭素原子数であり、xはyとは異なる)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
【0018】
前記第一の原料および前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、ポリマー合成ブレンド組成物を提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、ポリマー合成ブレンド組成物であって、C
1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、C
2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料の重合単位、を含むポリマー合成ブレンド組成物を提供する。
【0020】
別の態様では、本開示は、頂点置換基の分布を有するF−POSSポリマー合成ブレンド材料の形成方法であって、
【0021】
a.C
1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料を準備し、
【0022】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料を準備し、そして
【0023】
c.前記第一の原料を前記第二の原料と分子の分布を形成する条件下で反応させること
を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、形成方法を提供する。
【0025】
a.少なくとも1つのポリマーベース塗料材料と、
【0026】
b.フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物を含むポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0027】
i.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0028】
ii.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
【0029】
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、
ポリマー合成ブレンド組成物と
を含む、塗料組成物を提供する。
【0030】
本開示の化合物は、以下の列挙した条項のいずれかの実施形態として記載することができる。本明細書に記載した実施形態のいずれも、実施形態が互いに矛盾しない限り、本明細書に記載した任意の他の実施形態と関連して使用できることが理解される。
【0031】
1. フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0032】
a.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0033】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
【0034】
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【0035】
2. 前記第一の原料は1H,1H,2H,2Hノナフルオロヘキシルトリエトキシシランである、条項1に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0036】
3. 前記第二の原料は1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシランである、条項1または2に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0037】
4. 前記第一の原料および前記第二の原料は1:3〜3:1の範囲のモル比で存在する、条項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0038】
5. 前記ポリマー合成ブレンド組成物の融点は、前記第一の原料または前記第二の原料単独のいずれかの融点よりも約30℃以上低い、条項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0039】
6. xが1〜16の範囲内にあり、yが1〜16の範囲内にある、条項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0040】
7. xが4〜10の範囲内にあり、yが4〜10の範囲内にある、条項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0041】
ポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0042】
a.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0043】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyとは異なる)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む少なくとも2つの原材料の混合物、を含み、
【0044】
前記少なくとも2つの原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cnを有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【0045】
8. xが1〜16の範囲内にあり、yが1〜16の範囲内にある、条項7に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0046】
9. xが4〜10の範囲内にあり、yが4〜10の範囲内にある、条項7または8に記載のポリマー合成ブレンド組成物。
【0047】
10. ポリマー合成ブレンド組成物であって、C
1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、C
2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料の重合単位、を含むポリマー合成ブレンド組成物。
【0048】
11. 頂点置換基の分布を有するF−POSSポリマー合成ブレンド材料の形成方法であって、
【0049】
a.C
1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料を準備し、
【0050】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料を準備し、そして
【0051】
c.前記第一の原料を前記第二の原料と分子の分布を形成する条件下で反応させること
を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、形成方法。
【0052】
12. フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0053】
a.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0054】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
【0055】
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【0056】
13. フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0057】
a.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0058】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物を、含み、
【0059】
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、形成された前記分子の分布の第一の部分ではC1x:C2y比が1:0である置換基Rを有し、形成された前記分子の分布の第二の部分ではC1x:C2y比が0:1である置換基Rを有し、形成された前記分子の分布の第三の部分ではC1x:C2y比が1:7〜7:1の範囲内にある置換基Rを有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、ポリマー合成ブレンド組成物。
【0061】
a.少なくとも1つのポリマーベース塗料材料と、
【0062】
b.フッ素化かご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)のポリマー合成ブレンド組成物を含むポリマー合成ブレンド組成物であって、
【0063】
i.C
1x(ここで、xは炭素数である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料、および、
【0064】
ii.C
2y(ここで、yは炭素数であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料
を含む原材料の混合物、を含み、
【0065】
前記第一の原料と前記第二の原料を混合することによって得られる前記ポリマー合成ブレンド組成物は分子の分布を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、
ポリマー合成ブレンド組成物と
を含む、塗料組成物。
【0066】
15. 前記ポリマーベース塗料材料はポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ(L−乳酸)、ポリセルロース系、ポリヒドロキシアルカネート、リグノース・セルロース、ポリエチレン・オキシド、エポキシ、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル、および前記の少なくとも2つの混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの材料を含む、条項14に記載の塗料組成物。
【0067】
16. 前記塗料組成物は110°以上の水接触角および70°以上のヘキサデカン接触角を有する、条項14または15に記載の塗料組成物。
【0068】
17. 前記ポリマー合成ブレンド組成物はトルエン、メチルエチルケトン、IPAおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1つの材料中に希釈されたポリウレタンから構成される70%固形分の前記少なくとも1つのポリマーベース塗料材料中に溶解する、条項14〜16のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【0069】
18. 頂点置換基の分布を有するF−POSSポリマー合成ブレンド材料の形成方法であって、
【0070】
a.C
1x(ここで、xは炭素数であり、xは4〜10の範囲である)の炭素鎖長を有する第一のフッ素化トリエトキシシランを含む第一の原料を準備し、
【0071】
b.C
2y(ここで、yは炭素数であり、yは4〜10の範囲であり、xはyより大きい)の炭素鎖長を有する第二のフッ素化トリエトキシシランを含む第二の原料を準備し、そして
【0072】
c.前記第一の原料を前記第二の原料と分子の分布を形成する条件下で反応させること
を含み、各分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を含み、各頂点は置換基Rを有し、前記分子の分布の一部分では全ての置換基Rが同一の炭素鎖長Cnを有し、前記分子の分布の一部分では炭素鎖長C
1xを有する少なくとも1つの置換基R1および炭素鎖長C
2yを有する少なくとも1つの置換基R2(ここで、C1はC2より大きい)を有するように、各置換基Rが炭素鎖長Cn(ここで、nは4〜10の範囲である)を有する、形成方法。
【0074】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、nは0〜8の整数であるが、R
1とR
2は異なる)のF−POSS化合物またはそれらの混合物。
【0075】
20. 各長鎖フッ素化アルキルでは独立して炭素原子の最長連続鎖中における炭素原子が5〜12個である、条項19に記載のF−POSS化合物。
【0076】
21. 各長鎖フッ素化アルキルは4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキルおよび6/4フッ素化アルキルからなる群より独立して選択される、条項19または20に記載のF−POSS化合物。
【0077】
22. R
1は4/2フッ素化アルキルであり、R
2は6/2フッ素化アルキルである、条項19〜21のいずれか一項に記載のF−POSS化合物。
【0079】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、nは0〜8の整数であるが、R
1とR
2は異なる)の化合物の混合物を含むF−POSS組成物。
【0080】
24. 各長鎖フッ素化アルキルでは独立して炭素原子の最長連続鎖中における炭素原子が5〜12個である、条項23に記載のF−POSS組成物。
【0081】
25. 各長鎖フッ素化アルキルは4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキルおよび6/4フッ素化アルキルからなる群より独立して選択される、条項23または24に記載のF−POSS組成物。
【0082】
26. R
1は4/2フッ素化アルキルであり、R
2は6/2フッ素化アルキルである、条項23〜25のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【0083】
27. 前記化合物の混合物は0:8〜8:0のR
1対R
2比を有する化合物の分布を含む、条項23〜26のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【0084】
28. 前記分布はガウス分布である、条項27に記載のF−POSS組成物。
【0086】
第一のフッ素化トリアルコキシシランを含む第一の原料を、第二のフッ素化トリアルコキシシランを含む第二の原料と接触させることを含む(前記第一のフッ素化トリアルコキシシランと前記第二のフッ素化トリアルコキシシランは異なる)方法によって製造されるF−POSS組成物。
【0087】
30. 前記第一のフッ素化トリアルコキシシランは式R
1Si(OR
A)
3で示され、前記第二のフッ素化トリアルコキシシランは式R
2Si(OR
B)
3で示され、R
1およびR
2はそれぞれ独立して長鎖フッ素化アルキルであり、各R
AおよびR
Bは独立してC
1〜C
6アルキルであるが、R
1とR
2は異なる、条項29に記載のF−POSS組成物。
【0088】
31. 各長鎖フッ素化アルキルでは独立して炭素原子の最長連続鎖中における炭素原子が5〜12個である、条項30に記載のF−POSS組成物。
【0089】
32. 各長鎖フッ素化アルキルは4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキルおよび6/4フッ素化アルキルからなる群より独立して選択される、条項30に記載のF−POSS組成物。
【0090】
33. R
1は4/2フッ素化アルキルであり、R
2は6/2フッ素化アルキルである、条項29〜32のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【0091】
34. 前記組成物は0:8〜8:0のR
1対R
2比を有する分布の化合物の混合物を含む、条項29〜33のいずれか一項に記載のF−POSS組成物。
【0092】
35. 前記分布はガウス分布である、条項34に記載のF−POSS組成物。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図面は、図面を通して同様の参照符号が同一または類似の部分を示す例示的な実施形態を開示する。
【0094】
【
図1】
図1は実施例1A(i)による合成ブレンドSB1に関する
1H NMR分析の分析プロットである。
【0095】
【
図2】
図2は実施例1A(i)による合成ブレンドSB1に関する
19F NMR分析の分析プロットである。
【0096】
【
図3】
図3は実施例1A(i)によるSB1の示差走査熱量測定のグラフである。
【0097】
【
図4】
図4は実施例1A(ii)による合成ブレンドSB2に関する
1H NMR分析の分析プロットである。
【0098】
【
図5】
図5は実施例1A(ii)による合成ブレンドSB2に関する
19F NMR分析である。
【0099】
【
図6】
図6は実施例1A(ii)によるSB2の示差走査熱量測定のグラフである。
【0100】
【
図7】
図7は実施例1A(iii)による合成ブレンドSB3に関する
1H NMR分析の分析プロットである。
【0101】
【
図8】
図8は実施例1A(iii)による合成ブレンドSB3に関する
19F NMR分析の分析プロットである。
【0102】
【
図9A】
図9Aは実施例1B(iii)に従って調製したSB3の第一の示差走査熱量測定分析のグラフである。
【0103】
【
図9B】
図9Bは実施例1B(iii)に従って調製したSB3の第二の示差走査熱量測定分析のグラフである。
【0104】
【
図10】
図10は実施例1A(i)、1A(ii)および1A(iii)の合成ブレンドSB1、SB2およびSB3を比較する分析プロット
19F NMR分析である。
【0105】
【
図11】
図11は合成ブレンドの融点(℃)を示すグラフである。
【0106】
【
図12】
図12は原料に基づいて調製されたSB1、SB2およびSB3のおおよその%組成のチャートである。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【
図14】
図14はWindmaster 7035塗料上の合成ブレンドSB1、SB2およびSB3の水の接触角のグラフである。
【0112】
【
図15】
図15はWindmaster 7035塗料上の合成ブレンドSB1、SB2およびSB3のヘキサデカンの接触角のグラフである。
【0113】
【
図16】
図16はガラス基材上のAK−225中1重量%添加量のPEMAの50/50%ブレンドにおける合成ブレンドSB3の水とヘキサデカンとの接触角のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0114】
シルセスキオキサンは、最も一般的には立方体、六角形プリズム、八角形プリズム、十角形プリズムまたは十二角形プリズムである、ケージ様構造を有する。例示的な実施形態では、様々な可能性のあるF−POSSケージ分子構造のうち、立方体様(「T8」)ケージ構造が形成される。例示的な実施形態では、本開示は原材料のブレンドから製造されたF−POSS組成物を提供する。1つの例示的な実施形態では、第一の原料は第一のフッ素化トリエトキシシランを含み、第二の原料は第二のフッ素化トリエトキシシランを含む。各フッ素化トリエトキシシランは、別個の炭素鎖長Cを有する。例示的な実施形態では、Cは4〜10の範囲内にある。例示的な実施形態では、Cは4〜10の範囲内にある。例示的な実施形態において、Cは4、6、8または10である。例示的な実施形態では、第一の原料はC6フルオロアルキル分子であってもよく、第二の原料はC8フルオロアルキル分子であってもよい。例示的な実施形態では、第一の原料は1H,1H,2H,2Hノナフルオロヘキシルトリエトキシシランであってもよい。例示的な実施形態では、第二の原料は1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン(別名1H,1H,2H,2Hデカトリアフルオロオクチルトリエトキシシラン)であってもよい。
【0115】
本明細書中で使用される場合、「長鎖フッ素化アルキル」という用語は、炭素原子の鎖の結合点から酸化ケイ素コアの任意の頂点のケイ素原子までを数えて炭素原子の最長連続鎖中に5〜12個の炭素原子を有する任意の直鎖または分岐鎖アルキル基であって、その中の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されている前記直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。前記直鎖または分枝鎖アルキル基中の任意の数の水素原子は、本明細書で使用する「長鎖フッ素化アルキル」の意味においてフッ素原子で置換することができる。例えば、鎖中に6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基(例えば、ヘキシル基)の末端メチル基は、ペンダント水素原子の各々がフッ素原子で置換され(例えば、トリフルオロメチルとなり)、式−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CF
3を有する長鎖フッ素化アルキル基となりうる。別の例では、鎖中に6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基の最後の2個の炭素原子は、ペンダント水素原子の各々がフッ素原子で置換され(例えば、トリフルオロエチルとなり)、式−CH
2CH
2CH
2CH
2CF
2CF
3を有する長鎖フッ素化アルキル基となりうる。この例示的なパターンは、式−CH
2CH
2CH
2CF
2CF
2CF
3、−CH
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
3、−CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3、および−CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3の「長鎖フッ素化アルキル」基の定義内に続いて含まれ得る。当該技術分野で一般的に知られているように、鎖中の全ての水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基は、「パーフルオロ化」アルキル基として知られている。特定の実施形態ではパーフルオロ化という用語は、いくつかの炭素原子ではそれに結合する原子は水素原子であるが、他の炭素原子ではそれに結合する全ての原子がフッ素原子である基と関連して使用される。例えば、1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシランという名称は、鎖のF−POSSへの共有結合点における2つの末端炭素原子は前記炭素原子に結合する水素原子を有するが、鎖中の残りの炭素原子はそれに結合するフッ素原子を有するため、パーフルオロ化されている化合物を表す。
【0116】
炭素原子の最長連続鎖中の炭素原子の全てよりも少ない炭素原子が有する水素原子がフッ素原子で置換されている場合、「長鎖フッ素化アルキル」基は省略形X/Yで特定することができ、Xは炭素原子の鎖の結合点から酸化ケイ素コアの任意の頂点におけるケイ素原子までを数えて炭素原子の最長連続鎖中の末端炭素原子数であり、Yは水素原子がフッ素原子で置換されていない炭素原子の最長連続鎖中の炭素原子の残りの数である。例えば、式−CH
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
3の長鎖フッ素化アルキル基は省略形4/2で示すことができる。他の例示的な長鎖フッ素化アルキル基としては、これらに限定されないが、3/3、6/2、4/4、8/2、6/4などが挙げられる。そのような長鎖フッ素化アルキル基は、4/2フッ素化アルキル、3/3フッ素化アルキル、6/2フッ素化アルキル、4/4フッ素化アルキル、8/2フッ素化アルキル、6/4フッ素化アルキルなどとも呼ぶことができる。
【0117】
F−POSSに関連して省略形X/Yが本明細書で使用される場合、付けられた名称は、酸化ケイ素コアの頂点に結合した基の各々がX/Yで定義された長鎖フッ素化アルキル基タイプであるF−POSS分子を指す。例えば、6/2 F−POSSは、酸化ケイ素コアの頂点におけるR基の各々が本明細書で定義される6/2長鎖フッ素化アルキル基である式[1]のF−POSS分子を指す。
【0118】
例として、6/2 F−POSS[3]および4/2 F−POSS[4]分子の式を以下に示す。
【化6】
【0119】
通常のF−POSS合成では、F−POSS分子は8つの頂点を有するマトリックス構造を有し、各頂点はケイ素を含む。各頂点は置換基部分Rを有し、前記Rは炭素鎖長Cnを有するC−F鎖を含み、ここでnは鎖中の炭素数である。6/2 F−POSSはR置換基が8個の炭素を有するため、C8分子である。このF−POSSは6個のC−F基および2個のC−H基を有するため、6/2と表される。4/2 F−POSSは、R置換基が4個のC−F基および2個のC−H基を含む6個の炭素を有するため、C6分子である。
【0120】
本発明の組成物の例示的な実施形態では、いくつかの別個のF−POSS分子のブレンドが、第一の原料のフッ素化トリエトキシシランおよび第二の原料のフッ素化トリエトキシシランから合成され、各原料は異なるフッ素化トリエトキシシランである。合成された最終生成物は、いくつかのR置換基(例えば、R
1、R
2、R
3など)の1つを伴う別個のF−POSS分子から構成される複数の部分を有するF−POSS分子が分布している。F−POSS分子の一部分では、8つの頂点全てに置換基R
1があり、同一の炭素鎖長Cを有するマトリックス構造を有する。前記分子の一部分では、8つの頂点全てに置換基R
2がある。以下の式[5]は、(n)R
1単位および(8−n)R
2単位を有する分子式を示し、式中、nは単位数であり、各R
1および/またはR
2単位は立方体様構造のケイ素原子頂点に共有結合している。式[5]中のnは0〜8の整数であることが理解される。
【化7】
【0121】
前記分子の一部分は、1つまたは複数の頂点が置換基R
1を有し、残りが置換基R
2を有するマトリックス構造を有し、ここでR
1とR
2は異なる炭素鎖長(例えば、C1およびC2)を有する。本発明の組成物において、分子のブレンドは、例示的な実施形態では、R
1とR
2の異なる比を有する分子のガウス分布を形成してもよい。例えば、1つの例示的な実施形態では、前記ブレンドの1つの部分は、R
1:R
2=0:8のモル比を有する、すなわち、8つの頂点全てにR
2があるF−POSS分子で構成されていてもよい。別の部分は、R
1:R
2=1:7のモル比を有する、すなわち、頂点のうち7つにはR
2があり、1つの頂点にR
1があってもよい。別の部分の比は2:6である。そして、他の部分は、3:5、4:4、5:3、6:2、7:1および8:0の比を有する。例示的な実施形態では、R
1:R
2比の分布は、概して、ガウス分布を含む。例示的な実施形態において、比の分布は、各置換基の使用される反応条件および量に基づいて、ある程度まで予め決定されていてもよく、または調整されていてもよい。
【0122】
1つの例示的な実施形態では、合成ブレンドF−POSSを50%のC4鎖長および50%のC6鎖長のR置換基分子から形成した。
【0123】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を、以下の一般的スキームによって表すことができる。
【化8】
【0124】
前記スキームにおいて、R
1およびR
2は上記で定義した通りであり、nは0〜8の整数であり、各R
AおよびR
Bは独立して、C
1〜C
6アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチルなどである。特定の実施形態では、各R
AおよびR
Bはエチルである。
【0125】
例示的な実施形態では、3つ以上の原料を使用することができ、各原料は異なる炭素鎖長を有するフルオロアルキル分子を含み、すなわち、第一の原料は炭素鎖長C4を有するフルオロアルキル分子であってもよく、第二の原料は炭素鎖長C6を有していてもよく、第三の原料は炭素鎖長C8を有していてもよい。それらから形成されるF−POSS分子の分布は、8つの頂点全てにおいてC4置換基を有するいくつかのF−POSS分子を有することになり、前記分布中の他の分子は8つの頂点全てにおいてC6置換基を有する全8つの頂点を有することになり、さらに他の分子はC8置換基を有する全8つの頂点を有することになり、前記分布ブレンド中のさらに他の分子は、C4を有する1つの頂点、C6を有する第二の頂点、およびC8を有する第三の頂点を有し、他の頂点はそれぞれC4、C6、またはC8置換基を有し、前記分布ブレンド中の様々な他の分子は、頂点においてC4、C6およびC8の異なる比を有する。鎖長C4、C6およびC8の3つの原料から調製されたF−POSS分子のブレンドにおける例示的な比には、これらに限定されないが、0:0:8、0:1:7、1:0:7、1:1:6、0:2:6、2:0:6、1:2:5、2:1:5、0:3:5、3:0:5、0:4:4、4:0:4、1:3:4、3:1:4、2:2:4、0:4:4、4:0:4、2:4:2、4:2:2、1:4:3、3:4:1、5:0:3、5:3:0、5:1:2、5:2:1、6:0:2、6:2:0、6:1:1、7:0:1、7:1:0、0:8:0、8:0:0などが含まれる。本明細書に記載された方法によって製造されたブレンドは、上記の比のいずれかを有することができ、そして前記方法によってもたらされる分布内で可能な他の任意の比を有することができることが理解される。さらに、原料の量、反応条件および他のパラメータに基づいて、R置換基の分布比を「調整する」ことが可能であることが理解される。
【0126】
特性
本発明で開示される合成ブレンド材料の例示的な実施形態の特徴は、ブレンド分布における異なるF−POSS分子のばらつきのために、F−POSS分子の互いへの引力が減少することである。2つの異なるR置換基原料から合成されたいくつかのF−POSS分子は、同一のR置換基を有する全8つの頂点を有するようになるが、いくつかの分子は異なるR置換基を有する少なくとも2つの頂点を有するようになる。隣接するF−POSS分子に潜在的に異なるR置換基を持たせ、互いに「外観」を違えることにより、隣接するF−POSS分子同士のフッ素の引力が弱められる。このように引力を弱めることにより、F−POSS分子が他の材料中で解離するかまたは分散する能力の改善をもたらすことができる。
【0127】
F−POSSのそれ自体への強い引力が塗料基材中での解離を減じ、しばしば凝集または相分離をもたらし、そのため、美的に満足のいかないコーティングがもたらされ、また所望の塗料特性、例えば、これらに限定されないが、表面の質感、平滑性、反射性、耐久性、耐磨耗性などを低下させるため、フッ素化材料と塗料材料を配合することは今まで困難であった。例示的な実施形態では、前記F−POSS分子は互いに引き付けにくく、より効果的に分散するようになるため、F−POSS分子の合成ブレンドを塗料材料中に効果的に分散させることが可能になる。これにより、より均一な被覆が得られ、物理的特性および美的特性が改善され得る。例示的な実施形態では、本開示の合成ブレンドF−POSS材料は、ポリマー系塗料に配合することができる。例示的な実施形態では、前記塗料はポリウレタン系塗料である。例示的な実施形態では、前記塗料はポリエチレンまたはポリスチレン系塗料である。例示的な実施形態では、前記塗料はポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ(L−乳酸)、ポリセルロース系、ポリヒドロキシアルカネート、リグノース・セルロース、ポリエチレン・オキシド、エポキシ、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル、ならびに上記の少なくとも2つの混合物および組合せ、の少なくとも1つを含んでいてもよいし、または前記の少なくとも1つに基づいていてもよい。
【0128】
例示的な実施形態では、前記ポリマー合成ブレンド組成物は、トルエン、メチルエチルケトン、IPA、キシレンなどの少なくとも1つで希釈されたポリウレタンからなる約70%固形分のポリマーベース塗料材料に溶解することができる。
【0129】
本発明で開示される合成ブレンド材料の例示的な実施形態の別の特徴は、それから形成されるフィルムおよび他の構造が分子レベルである程度の「ナノスケール粗さ」を有することである。このナノスケール粗さは、材料の疎水性を高め、水接触角および炭化水素接触角を増大させて性能を高めることができる。
【0130】
従来の単一R置換基のF−POSS分子では、従来の見解により、C4 F−POSS材料は、性能の顕著な妥協なしに、C6またはC8 F−POSSよりも製造するのが安価であることが示唆されている。一般的に言えば、炭素鎖の長さが短いほど、材料の反発は少ない。しかしながら、通常、C4 F−POSSは、いくつかの応用において有効であるためには、必要な望ましい特性を有していない可能性がある。例示的な実施形態では、C4置換基を含む合成ブレンドF−POSS材料が合成されている。このような材料は、C8 F−POSS材料と同等のヘキサデカン接触角性能を示している。特定の理論に拘束されることを望まないが、このような性能向上はおそらく、結果として生じるマトリックスのナノ構造に起因する可能性がある。以下に記載する
図16および
図17を参照されたい。
【0131】
実施例で以下にさらに記載する、SB3ブレンドとして配合される場合の本発明で開示する合成ブレンド組成物の例示的な実施形態の別の特徴は、前記組成物が配合物中の氷の付着を減少させることができることである。
【0132】
合成ブレンド分子の1つの態様において、例示的な実施形態で本発明が開示するのは、前記ブレンドにより各原材料単独をそれぞれ考慮することでは予測できない物理的特性が立証されたことである。例えば、4/2原料および6/2原料を用いて合成ブレンドF−POSS組成物を製造する実施例1B(i〜iii)で論じた、溶解性に関して、得られる分子分布はグラフの片側で0%の6/2と100%の4/2であり、グラフの反対側では100%の6/2と0%の4/2である。6/2と4/2のブレンド比が変化すると、直線は達成されない。前記ブレンド比の変化は線形関係ではない。比6/2:4/2が1:1に近づくにつれて、溶解度は増加するが、予想されるようにブレンド比の終点によって決定される。作用機序の特定の理論に拘束されるつもりはないが、特定の挙動は、非共有伸長マトリックスにおける特定のレベルのオーダーで起こる活動に起因し得る。
【0133】
種々の例示的な実施形態における合成ブレンド材料の独特の特徴は、原料分子の炭素鎖長比を調節することによって特性をカスタマイズできることである。
【0134】
応用
本明細書に開示される組成物の例示的な実施形態は、保護コーティング、例えば、これらに限定されないが、油、水などを撥くコーティングの配合物において有用であり得る。本明細書に開示される組成物の例示的な実施形態は、通常、十分に安定なまたは持続的な均質性を有さないフッ素化、ハロゲン化または他の添加材料を含む配合物の安定性および寿命を改善するのに有用であり得る。
【0135】
他の例示的な実施形態では、F−POSS構造ではなく、フッ素化されていないPOSS構造を、前記原材料の少なくとも1つにおけるフッ素成分を別の成分で置換するか、フッ素を全く使用しないように適合された本明細書に開示された方法に従って形成することができる。例えば、フッ素で置換されるアルキル基により、形成される組成物の炭化水素系との相溶性を高めることができる。
【0136】
T8形態以外のPOSSケージ構造は、本明細書中に開示される方法を改変することによって形成され得る。
【0137】
例示的な実施形態では、原料分子は形成される組成物に含まれる所望の特性に基づいて選択することができる。原料分子は、これらに限定されないが、相溶化の最適化、発色団または他の色付与置換基の包含、臭い、検出可能なマーカー、抗菌剤などを含む多くの特性または特徴のいずれかについて選択することができる。例えば、第一の原料は相溶化を付与するもの(例えば、上記の第一の原料)であってもよく、第二の原料は色または臭いを付与する置換基を含有してもよい。結果として生じるF−POSS(または他の)分子分布は原材料の特性を含むことになる。
【0138】
以下の実施例は、例示のみを目的として記載される。このような実施例に出てくる部およびパーセンテージは、別段の定めがない限り、重量部または重量%である。
【実施例】
【0139】
実施例1−6/2:4/2フッ素化かご型シルセスキオキサン(F−POSS)合成ブレンド
実施例1A−材料の合成
本質的に6/2:4/2ハイブリッドである、様々な長さのフッ素化炭化水素を有する側基を含む新規な独自のシロキサン・ケージ化合物を合成した。参照を容易にするために、以下の名称を用いて新規な合成ブレンド(SB)化合物を特定した。
【0140】
SB1: 3:1比の1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン(「6/2」):1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(「4/2」)
【0141】
SB2: 1:1比の1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン:1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン
【0142】
SB3: 1:3比の1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン:1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン
【0143】
実施例1A(i)−SB1([75%の6/2]:[25%の4/2]の比)
3.83gの1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン(Sigma Aldrich、667420−25g)および1.03gの1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(TCI America、T2860)(3:1モル比)をエタノール10mLに加え、これに0.3mLのKOH溶液(7.4mg/mL)を添加した。混合物を室温で24時間撹拌し、白色の半固体生成物を沈殿させた。反応混合物中の溶媒をデカントし、沈殿物をエタノールで繰り返し洗浄し、次いで真空オーブン下45〜50℃で一晩乾燥させた。次いで、粗生成物をAK−225G溶媒に溶解し、次いで有機層をddH
2Oで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、減圧下80℃で一晩乾燥させた。得られた精製生成物は依然として半固体物質であった。
【0144】
実施例1A(ii)−SB2([50%の6/2]:[50%の4/2]の比)
2.55gの1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン(Sigma Aldrich、667420−25g)および2.05gの1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(TCI America、T2860)(1:1モル比)をエタノール10mLに加え、これに0.3mLのKOH溶液(7.4mg/mL)を添加した。混合物を室温で24時間撹拌し、白色の半固体生成物を沈殿させた。反応混合物中の溶媒をデカントし、沈殿物をエタノールで繰り返し洗浄し、次いで真空下45〜50℃で一晩乾燥させた。次いで、粗生成物をAK−225G溶媒に溶解し、次いで有機層をddH
2Oで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、減圧下80℃で一晩乾燥させた。得られた精製生成物は依然として半固体物質であった。
【0145】
実施例1A(iii)−SB3([25%の6/2]:[75%の4/2]の比)
1.28gの1H,1H,2H,2Hパーフルオロオクチルトリエトキシシラン(Sigma Aldrich、667420−25g)および3.1gの1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン(TCI America、T2860)(1:3モル比)をエタノール10mLに加え、0.3mLのKOH溶液(7.4mg/mL)を添加した。混合物を室温で24時間撹拌し、白色の半固体生成物を沈殿させた。反応混合物中の溶媒をデカントし、沈殿物をエタノールで繰り返し洗浄し、次いで真空下45〜50℃で一晩乾燥させた。次いで、粗生成物をAK−225G溶媒に溶解し、次いで有機層をddH
2Oで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、減圧下80℃で一晩乾燥させた。得られた精製生成物は依然として半固体物質であった。
【0146】
実施例1B−材料の特徴付け
実施例1B(i)−SB1([75%の6/2]:[25%の4/2]の比)
合成ブレンドSB1 F−POSSの
1H NMR分析を
図1に示す。アセトン−d6(数滴のAK−225Gを伴う)中の
1H NMRは2.44〜2.33ppm(m、16H)および0.91〜0.83(m、16H)でシフトを示し、4.5〜3.5ppmの間に若干のマイナーな不純物/前駆体ピークを示した。この生成物は4/2 F−POSSと同様にアセトン+AK−225G(NMR溶媒混合物)に易溶性ではなく、溶解度は6/2 F−POSSの溶解度により類似していた。
【0147】
合成ブレンドSB1に関する
19F NMR分析を
図2に示す。SB1の
19F NMRスペクトルは以下の化学シフトを示した:−77.37、−77.73、−120.80、−121.10、−128.29、−129.49、−130.01、−131.26および−133.71。基準として50/50合成ブレンドに関するスペクトルを使用して、SB1ブレンドの2つの異なる側鎖について−CF
2−および−CF
3基のピーク割り当てを行うことができる:
【0148】
4/2側鎖由来のピーク:δ −77.73(−CF
3に関する)、−121.10(−CF
2−に関する)、−131.26(−CF
2−に関する)および−133.71(−CF
2−に関する)。6/2側鎖由来のピーク:δ −77.37(−CF
3に関する)、−120.80(−CF
2−に関する)、−128.29(−CF
2−に関する)、−129.49(−CF
2−に関する)、−130.01(−CF
2−に関する)および−133.71(−CF
2−に関する、4/2側鎖との重複)。興味深いことに、
図2の四角いボックスによって強調されるように、−77.37ppm(6/2側鎖由来の−CF
3)のピーク高さは、−77.73ppm(4/2側鎖由来の−CF
3)におけるピーク高さよりも高い。尚、これらの2つのピークの高さおよび積分は50/50ブレンドにおいてほぼ1:1であった。同様の傾向は、−120.80ppm(6/2側鎖由来)および−121.10(4/2側鎖由来)のピーク高さで観察される。
【0149】
SB1のDSCを
図3に示す。純粋な4/2および6/2 F−POSSの融点はSB1の融点よりも約30℃高い。合成ブレンドF−POSSの融点が異なるという事実により、異なる特性を有する異なる化合物が前駆体のモル比を変えることによって化学的に形成されたことが示唆される。
【0150】
実施例1B(ii)−SB2([50%の6/2]:[50%の4/2]の比)
合成ブレンドSB2 F−POSSの
1H NMR分析を
図4に示す。アセトン−d6(数滴のAK−225Gを伴う)中の
1H NMRは2.39〜2.34ppm(m、16H)および0.89〜0.82(m、16H)でシフトを示し、4.5〜3.5ppmの間に若干のマイナーな不純物/前駆体ピークを示した。この生成物は75%〜25%の6/2〜4/2ブレンド(203−64−1)よりもアセトン+AK−225G(NMR溶媒混合物)中でより易溶性であった。
【0151】
合成ブレンドSB2 F−POSSの
19F NMR分析を
図5に示す。SB2に関する
19F NMRスペクトルは以下の化学シフトを示した:−77.55、−77.88、−120.96、−121.27、−128.35、−129.56、−130.09、−131.35および−133.79。非常に類似したピーク高さを示した−77.55および−77.88ppm(上の図の青色の矩形で強調されている)のピークの積分は、約1:1の比で得られた。これは、これらの2つのピークがそれぞれ6/2および4/2側鎖上の−CF
3基を表し、ピーク割り当ては純粋な6/2および4/2 F−POSS材料およびそれらの前駆体中の−CF
3ピークの位置に基づく。同様に、−120.96および−121.27ppm(さらに
図5において矩形で強調されている)の2つのピークは、非常に類似のピーク高さを有し、6/2および4/2 F−POSSのそれぞれに割り当てることができる。
【0152】
SB2のDSCを
図6に示す。純粋な4/2および6/2 F−POSSの融点は合成ブレンドSB2の融点より約30℃高い。前記合成ブレンドF−POSSの融点が異なるという事実により、異なる特性を有する異なる化合物が前駆体のモル比を変えることによって化学的に形成されたことが示唆される。
【0153】
実施例1B(iii)−SB3([25%の6/2]:[75%の4/2]の比)
合成ブレンドSB3 F−POSSの
1H NMR分析を
図7に示す。アセトン−d6(数滴のAK−225Gを伴う)中の
1H NMRは、2.45〜2.34ppm(m、16H)および0.91〜0.80(m、16H)でシフトを示し、4.5〜3.5ppmの間にわずかな不純物/前駆体ピークを示した。この生成物はアセトン+AK−225G(NMR溶媒混合物)に易溶性であり、溶解度は4/2 F−POSSの溶解度に非常に類似していた。
【0154】
合成ブレンドSB3 F−POSSの
19F NMR分析を
図8に示す。合成ブレンドSB3に関する
19F NMRスペクトルは以下の化学シフトを示した:−77.51、−77.86、−120.94、−121.24、−128.34、−129.55、−130.10、−131.35および−133.74。基準として50/50合成ブレンドに関するスペクトルを使用して、75/25ブレンドの2つの異なる側鎖について−CF
2−および−CF
3基のピーク割り当てを行うことができる:
【0155】
4/2側鎖由来のピーク:δ −77.86(−CF
3に関する)、−121.24(−CF
2−に関する)、−131.35(−CF
2−に関する)および−133.74(−CF
2−に関する)。6/2側鎖由来のピーク:δ −77.51(−CF
3に関する)、−120.94(−CF
2−に関する)、−128.34(−CF
2−に関する)、−129.55(−CF
2−に関する)、−130.10(−CF
2−に関する)および−133.74(−CF
2−に関する、4/2側鎖との重複)。興味深いことに、上の図の四角いボックスで強調されるように、−77.51ppm(6/2側鎖由来の−CF
3)でのピークのピーク高さは、−77.86ppm(4/2側鎖由来の−CF
3)でのピークのピーク高さより低い。尚、これらの2つのピークの高さおよび積分は50/50ブレンドにおいてほぼ1:1であった。同様の傾向が−120.94ppm(6/2側鎖由来)および−121.24(4/2側鎖由来)のピーク高さで観察される。
【0156】
SB3のDSCを
図9Aおよび
図9Bに示す。純粋な4/2および6/2 F−POSSの融点は合成ブレンドSB3の融点よりも約30℃高い。前記合成ブレンドF−POSSの融点が異なるという事実により、異なる特性を有する異なる化合物が前駆体のモル比を変えることによって化学的に形成されたことが示唆される。
【0157】
実施例1C−6/2:4/2合成ブレンドの比較
実施例1C(i)−
19F NMR
合成ブレンドSB1、SB2およびSB3 F−POSSを比較する
19F NMR分析を
図10に示す。3つの前記合成ブレンドにおける2組のピーク(上に強調されている)のピーク高さの変化を
図10に示す。SB1およびSB3合成ブレンドのピークは、ベースラインが偏っているために統合できなかったが、以下の図から明らかなように、6/2側鎖のパーセンテージが減少し、4/2側鎖のパーセンテージが増加することが示唆される。
【0158】
実施例1C(ii)−融点
以下の表1および
図11は、様々な合成ブレンド材料の融点の差を示す。
【表1】
【0159】
実施例1D−原料に基づくパーセント組成
原料に基づいた、上記で調製したSB1、SB2およびSB3の概算のパーセント組成を、以下の表2および
図12に示す。
【表2】
【0160】
実施例2−塗料中の合成ブレンドの配合
製造元の指示に従い、Windmasticトップコート・リペアーキット7035グレー・パートAベース塗料(Carboline、UN1293)をWindmasticトップコート・リペアーキット・パートB樹脂(Carboline、UN1866)6:1(v/v)と混合することによって2成分塗料を調製した。塗料の正確な測定を確実にするために、パートAの6容量(mL)を数回計量し、重量は平均8.6gであり、パートBの1容量(mL)を数回計量し、平均0.97gであった。次いで、対照塗料の配合について各実験を通して重量対重量比を使用した。2成分塗料(8.6gのパートAおよび0.97gのパートB)をFlacktekスピードミキサー10mL容ポリプロピレン半透明容器に加えた。次に、前記塗料をFlacktek DAC400 FVZスピードミキサー中で2700rpmで10分間混合した。
【0161】
約0.1gのSB1、SB2およびSB3を10mL容のスピードミキサーのポリプロピレン容器に秤量した。合成ブレンドF−POSSの最終濃度(重量%)が前記塗料中で1%、5%、10%または25%となるように塗料を容器に添加した。次に、前記塗料のみの対照を含む容器を27000rpmで10分間Flacktekスピードミキサーに入れた。
【0162】
次いで、各配合物を、4ミルのコーティング・バーを用いて、4インチ×4インチのQPanel 0.32インチのダルマット仕上げ鋼板(Guardco)上にコーティングした。前記鋼板を室温で一晩乾燥させた。塗料中に合成ブレンド配合物のいずれかで異常なコーティング特性は観察されず、おそらくより良好なフィルム形成特性が提供された。
【0163】
塗料中各重量%添加量で合成ブレンドSB3を含有する被覆鋼の代表的な画像を
図13A〜Dに示す(
図13A−1重量%、
図13B−5重量%、
図13C−10重量%、および
図13D−25重量%)。
【0164】
実施例3−塗料中の合成ブレンドの性能
水の接触角は、5μL容量の自動シリンジ・ディスペンサーを備えたKrauss DSA100S液滴形状分析器を用いて測定した。
図14は、塗料のみの水接触角、およびSB1、SB2、SB3の水接触角のプロットを示す。
図15に示す、ヘキサデカンの接触角は同様の容量を分配する手動シリンジを取り付けた同一機器を用いて測定した。
【0165】
SB1、SB2およびSB3は塗料単独の対照よりも著しく良好に機能した。前記合成ブレンド間に有意差は認められなかった。前記合成ブレンドは、塗料中1%(重量)の添加量でも、個別の6/2 F−POSSまたは4/2 F−POSSと同様に、うまく機能した。前記合成ブレンドの結果は、6/2 F−POSSまたは4/2 F−POSS単独と比較して、ヘキサデカン接触角の有意な増加を示す。
【0166】
図16は、AK−225中に1重量%で添加されたガラス基板上のPEMAの50/50%ブレンドにおける合成ブレンドSB3の水の接触角(110°)とヘキサデカンの接触角(80°)のグラフである。
【0167】
いくつかの例示的な実施形態のみを上記で詳細に説明したが、当業者は、新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、前記例示的な実施形態において多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような変更の全ては、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0168】
特定の実施形態に関連して方法、装置およびシステムを説明してきたが、本明細書の実施形態は全ての点で限定的ではなく例示的であることが意図されているため、前記範囲は記載された特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0169】
特に明記しない限り、本明細書に記載された方法は、そのステップが特定の順序で実行されることを必要とするものと解釈されることを決して意図していない。したがって、方法の請求項が実際にそのステップの後に続くべき順序を列記していない場合、またはそのステップは特定の順序に限定されることが前記請求項または詳細な記載に特に明記されていない場合、いかなる点でも順序が推論されることは決して意図されるものではない。
【0170】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0171】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までを表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、前記のある特定の値から、および/または前記の別の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。さらに、前記範囲のそれぞれの終点は、他方の終点に関連してと、他方の終点とは独立しての両方を意味することが理解されるであろう。
【0172】
「任意の」または「任意に」は後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、その記載は前記事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含む。
【0173】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という用語ならびに「含み(comprising)」および「含む(comprises)」などの前記用語の変形は、「含むがこれに限定されないこと」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数またはステップを排除することを意図しない。「例示的」または「説明的」という用語は、「の例」を意味し、好ましいまたは理想的な実施形態の表示を伝えることを意図したものではない。「などの〜、または例えば、〜」は限定的な意味ではなく、説明のために使用される。
【0174】
開示された方法、装置およびシステムを実行するために使用され得る構成要素が開示される。これらおよびその他の構成要素は本明細書に開示され、これらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されているが、これらの様々な個別および集合的な組合せおよび置換のそれぞれの特定の参照は明示的に開示されていない可能性がある場合、全ての方法、装置およびシステムについて、それぞれ具体的に考慮され、本明細書に記載されていると理解される。 これは、開示された方法のステップを含むが、これに限定されない、本出願の全ての局面に当てはまる。したがって、実行可能な追加のステップが様々である場合、これらの追加のステップのそれぞれは、開示された方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせを用いて実行され得ることが理解される。
【0175】
本明細書で言及されたいずれの特許、出願および刊行物も、その全体が参考として援用されることにさらに留意すべきである。
【国際調査報告】