特表2017-538833(P2017-538833A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-538833ポリ(オキシアルキレン)ポリマー加工用添加剤、組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538833(P2017-538833A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】ポリ(オキシアルキレン)ポリマー加工用添加剤、組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20171201BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20171201BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20171201BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20171201BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C08L23/02
   C08L71/02
   C08K5/098
   C08K5/41
   C08K3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-532830(P2017-532830)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】US2015066423
(87)【国際公開番号】WO2016100691
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】62/094,633
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】クロード ラバレ
(72)【発明者】
【氏名】シュリーン エー.ママン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB021
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB081
4J002BB111
4J002BB151
4J002BB171
4J002CH021
4J002CH022
4J002CH023
4J002DE076
4J002DE106
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EJ067
4J002EU086
4J002EV186
4J002EV256
4J002FD010
4J002FD045
4J002FD077
4J002FD090
(57)【要約】
モルあたり少なくとも50,000グラムの重量平均分子量を有するポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を組み合わせると、ポリマー加工用添加剤として有用である。一部の実施形態では、本ポリマー加工用添加剤は、モルあたり最大で20,000グラムの重量平均分子量を有するポリ(オキシアルキレン)ポリマーを更に含む。ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、ポリマー加工用添加剤組成物、及び熱可塑性、例えばポリオレフィン組成物が開示される。熱可塑性ポリマーの押出成形中の溶融欠陥を低減する方法も開示され、この熱可塑性ポリマーは均一触媒によるポリオレフィンであってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、
ポリマー加工用添加剤組成物であって、
モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及び
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、ポリマー加工用添加剤組成物と、
を含む、熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量が、モルあたり最大で約500,000グラムである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記ポリマー加工用添加剤組成物が、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーを更に含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量が、モルあたり最大で約1,000,000グラムである、請求項3に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない、請求項1又は4に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記金属塩がカルボン酸の金属塩である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸がステアリン酸以外である、請求項6に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
酸化防止剤、金属酸化物又はヒンダードアミン光安定化剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
前記第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
前記ポリオレフィンが直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィンが均一触媒によるポリオレフィンである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性組成物を押出成形することを含む、前記ポリオレフィンの押出成形中の溶融欠陥を低減する方法。
【請求項13】
前記熱可塑性組成物を押出成形する前に、前記ポリマー加工用添加剤組成物と前記ポリオレフィンとを混合して、前記熱可塑性組成物を得ること、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩と、
を含む、ポリマー加工用添加剤組成物。
【請求項15】
前記第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーがポリエチレンオキシドであり、前記第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項14に記載のポリマー加工用添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2014年12月19日出願の米国仮特許出願第62/094,633号への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
物品の形成及び成形におけるポリマー物質の押出成形は、プラスチック又はポリマー物品産業の主要部門である。押出成形された物品の質及び押出成形工程の総合的な成功は、通常、流体材料と押出成形用ダイとの相互作用によって影響を受ける。溶融加工可能な任意の熱可塑性ポリマー組成物の場合、臨界せん断速度が存在し、これより速いと押出物の表面が粗くなるか又は屈曲し、それより遅いと、押出物が滑らかになる。例えば、R.F.Westover,Melt Extrusion,Encyclopedia of Polymer Science and Technology,vol.8,pp.573〜81(John Wiley & Sons 1968)を参照されたい。滑らかな押出物の表面にする望みは競合し、ポリマー組成物を押出成形する経済的利点の視点から、可能な最も速い速度(例えば、高せん断速度)で最適化されなければならない。
【0003】
低いせん断速度では、押出成形された熱可塑性物における欠損が、「シャークスキン」の形態をとる恐れがあり、これは、より深刻な現れでは、多少なりとも押出成形の横方向に動かすと、突起部に見える表面光沢の喪失である。より速い速度では、押出物は、「連続的な溶融損傷」を受けて、かなり屈曲するようになる恐れがある。連続的な溶融損傷が第1に観察されるよりも遅い速度では、ある種の熱可塑性物は、押出物の表面が滑らかなものから粗いものまで様々になる、「循環溶融損傷(cyclic melt fracture)」も受け得る恐れがある。
【0004】
熱可塑性ポリマーの押出成形中に遭遇することが多い他の問題もある。それらの問題としては、ダイのオリフィスにおけるポリマーのビルドアップ(ダイビルドアップ又はダイドルールとして知られている)、押出成形運転中の背圧が高いこと、及び高い押出成形温度によるポリマーの過剰分解又は溶融強度の低さが挙げられる。これらの問題により、装置をきれいにするためにこの工程を停止しなければならないか、又はこの工程がより遅い速度で行われなければならないかのどちらかのために、押出成形工程が遅くなる。
【0005】
熱可塑性物の押出成形加工中に、ポリエチレングリコールを使用することが記載されている。例えば、米国特許第4,540,538号(Corwinら)及び米国特許出願公開第2005/0070644号(Tikuisisら)を参照されたい。米国特許第5,015,693号(Duchesneら)は、ある種の条件下では、溶融欠陥を低減するのに、フルオロポリマーとポリ(オキシアルキレン)ポリマーとを組み合わせると、フルオロポリマー単独よりも効果的であることを開示している。しかし、フルオロポリマーの非存在下で使用される400Da及び3350Daの分子量を有するポリエチレングリコールは、同一条件下では有効ではなかった。米国特許第6,294,604号(Focquetら)は、押出成形添加剤として、フルオロポリマー、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び酸化マグネシウムの組合せを記載している。
【発明の概要】
【0006】
比較的高い分子量を有するポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、例えば、熱安定性の欠如のために、ポリマー加工用添加剤として一般に使用されない。本発明者らは、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)とカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩との組合せは、通常、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー単独よりもかなり高い熱安定性を有することを発見した。本開示は、比較的高い分子量のポリ(オキシアルキレン)ポリマーとカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩とを組み合わせることにより、例えば、有効なポリマー加工用添加剤が実現し得ることを記載している。同様に、本開示は、異なる分子量を有する第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーとカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩とを組み合わせることにより、例えば、有効なポリマー加工用添加剤が実現し得ることも記載している。
【0007】
したがって、一態様では、本開示は、ポリオレフィンと、ポリマー加工用添加剤組成物であって、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、ポリマー加工用添加剤組成物と、を含む、熱可塑性組成物を提供する。第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する。一部の実施形態では、ポリマー加工用添加剤組成物は、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーを更に含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、ポリオレフィンの押出成形中の溶融欠陥を低減する方法を提供する。本方法は、上記の熱可塑性組成物を準備すること、又はポリオレフィンと、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸若しくはアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤とを組み合わせて、押出成形可能組成物を提供することを含む。本方法は、押出成形可能組成物を押出成形することを更に含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、ポリオレフィンの押出成形中の溶融欠陥を低減する方法を提供する。本方法は、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤組成物を準備することと、押出成形可能ポリマーを準備することと、ポリマー加工用添加剤組成物と押出成形可能ポリマーとを混合して押出成形可能組成物を準備することと、この組成物を押出成形することと、を含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩と、を含むポリマー加工用添加剤組成物を提供する。したがって、本開示は、ポリマー加工用添加剤組成物として、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩と、を含む組成物の使用を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤を提供する。本ポリマー加工用添加剤は、フルオロポリマー、シリコーン及びポリオレフィンを本質的に含まない。したがって、本開示は、ポリマー1モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有するポリ(オキシアルキレン)及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩の、ポリマー加工用添加剤としての使用を提供する。
【0012】
以下に記載されている通り、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)とカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩との組合せは、通常、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーと酸化マグネシウムとの組合せよりも高い熱安定性を有する。更に、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)とカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩との組合せは、通常、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーとある種の慣用的な酸化防止剤との組合せよりも高い熱安定性を有する。
【0013】
同様に、以下に記載されている通り、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤は、例えば、慣用的なフルオロポリマーポリマー加工用添加剤の非存在下で、ポリマー加工用添加剤として有用である。
【0014】
本出願では、
「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数の実体だけを指すことを意図しているわけではなく、例示するためにその具体的な例を使用することができる、一般分類を含む。用語「a」、「an」及び「the」は、用語「少なくとも1つの」と互換的に使用される。
【0015】
列挙したものの後に続く句「のうちの少なくとも1つを含む」とは、その列挙したものの中の項目のいずれか1つ、及びその列挙したものの中の2つ以上の項目の任意の組合せを含むことを指す。列挙したものの後に続く句「のうちの少なくとも1つ」とは、その列挙したものの中の項目のいずれか1つ、又はその列挙したものの中の2つ以上の項目の任意の組合せを指す。
【0016】
「アルキル(alkyl)基」及びその接頭語「alk」は、別段の指定がない限り、最大30個の炭素(一部の実施形態では、最大20個、15個、12個、10個、8個、7個、6個又は5個の炭素)を有する、直鎖基及び分岐鎖基及び環式基を含む。環式基は、単環式又は多環式とすることができ、一部の実施形態では、3〜10個の環炭素原子を有することができる。
【0017】
例えば、アルキル、アルキレン又はアリールアルキレンに関して、句「1つ以上のエーテル連結によって割り込まれている」とは、官能基の両側に、アルキル、アルキレン又はアリールアルキレンの一部を有することを指す。−O−で割り込まれているアルキレンの例は、−CH−CH−O−CH−CH−である。
【0018】
用語「アリール」としては、本明細書で使用する場合、例えば、1つ、2つ又は3つの環を有する、炭素環式芳香族環又は環系であって、場合により、この環中に少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、S又はN)を含有しており、場合により、最大4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基(例えば、メチル又はエチル)、最大4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード)、ヒドロキシ又はニトロ基を含めた、最大で5つの置換基により置換されている、炭素環式芳香族環又は環系が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル及びフリル、チエニル、オキサゾリル、並びにチアゾリルが挙げられる。「アリールアルキレン」とは、アリール基が結合している「アルキレン」部分を指す。「アルキルアリーレン」とは、アルキル基が結合している「アリーレン」部分を指す。
【0019】
数値範囲はすべて、特に明記しない限り、その終点、及び両終点間の非整数値を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0020】
本開示の実施形態の様々な態様及び利点を要約した。上記の発明の概要は、例示されている実施形態の各々、又は本開示の各実施を記載することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
その熱安定性がカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により増強され得る、第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、式A[(ORORにより表すことができ、式中、Aは、通常、1つ以上のエーテル連結によって割り込まれているアルキレンであり、yは、2又は3であり、(ORは、オキシアルキレン基であるORを複数(x)有するポリ(オキシアルキレン)鎖であり、Rはそれぞれ、独立してC〜Cアルキレンであり、一部の実施形態では、C〜Cアルキレンであり、Rは、水素、アルキル、アリール、アリールアルケニル、アルキルアリーレニル、−C(O)−アルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−アリールアルケニル又は−C(O)−アルキルアリーレニルであり、−C(O)−は、ORのOに結合している。第1及び/又は第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、Rがそれぞれ、−CHCH−又はポリ(オキシプロピレン)であり、Rがそれぞれ、−C−である、ポリ(オキシエチレン)などのホモポリマーとすることができる。又は、第1及び/又は第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、ランダム分布しているオキシアルキレン基(例えば、コポリマーである−OC−及び−OC−単位)の鎖、又はオキシアルキレン基の繰り返しからなる交互ブロック(例えば、(−OC−)及び(−OC−)ブロックを含むポリマーであり、a+bは、xの実施形態のいずれかにおいて以下に記載されている通りのxである)を有する鎖とすることができる。一部の実施形態では、Aは、エチレン、−CH−CH(−)−CH−(グリセロールに由来)、CHCHC(CH−)(1,1,1−トリメチロールプロパンに由来)、ポリ(オキシプロピレン)、−CHCH−O−CHCH−又は−CHCH−O−CHCH−O−CHCH−である。一部の実施形態では、Rは、水素、メチル、ブチル、フェニル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル又はステアリルである。他の有用なポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、例えば、ジカルボン酸、及び式A[(ORORによって表されるポリ(オキシアルキレン)ポリマーから調製されるポリエステルであり、A、R及びxは、上で定義されている通りであり、Rは水素であり、yは2である。通常、第1及び/又は第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量基準での大部分は、繰り返しオキシアルキレン基(OR)であろう。
【0022】
一部の実施形態では、その熱安定性がカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により増強され得る、第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体である。ポリエチレングリコール(PEG)は、式H(OCx’OHによって表すことができる。これらのポリエチレングリコール、それらのエーテル及びそれらのエステルの多くは、様々な供給業者から市販されている。
【0023】
上記のポリ(オキシアルキレン)及びポリエチレングリコールポリマーの一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量がモルあたり少なくとも約50,000グラムであるよう変数「x」及び「x’」が選択される。一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量は、モルあたり少なくとも約60,000グラム、モルあたり70,000グラム、モルあたり75,000グラム、モルあたり80,000グラム、又はモルあたり85,000グラムである。一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量は、モルあたり最大で約500,000グラム、モルあたり約450,000グラム、モルあたり約400,000グラム、モルあたり約350,000グラム、モルあたり約300,000グラム又はモルあたり約250,000グラムである。したがって、これらの実施形態の一部では、式A[(OROR中、x及び「a+b」は、約500〜約6,000又は約500〜約5,000の範囲にあってもよい。式H(OCx’OHの一部の実施形態では、x’は、約1000〜約12,000又は約1000〜約10,000の範囲にあってもよい。
【0024】
重量平均分子量は、例えば、当分野で公知の技法による、ポリエチレンオキシド標準品を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(すなわち、サイズ排除クロマトグラフィ)によって測定することができる。本開示の目的には、以下の本実施例において記載されている試験方法が使用される。
【0025】
第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの分子量)は、ポリマー加工用添加剤として、その性能のために選択することができる。第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、溶融加工可能となるよう、例えば、所望の押出成形温度において液体状態(又は、溶融)にあるよう、選択することができる。溶融加工は、通常、180℃〜280℃の温度で行われるが、最適操作温度は、組成物の融点、溶融粘度、熱安定性、及び使用される溶融加工用機器のタイプに応じて選択することができる。第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、それがホストポリマーと適合可能な溶融粘度を有するよう、選択することもできる。例えば、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、粘度を以下の実施例中の試験方法に準拠して、平行平板型レオメータを使用して測定した場合、ホストポリマーの溶融粘度の桁数内の溶融粘度を有することができる。一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、ホストポリマーよりも低い溶融粘度を有する。一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、1rad/sの周波数及び190℃の温度において、1000Pa.s〜100,000Pa.sの範囲にある溶融粘度(イータ’)を有する。
【0026】
本開示による組成物及び方法の一部の実施形態には、第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーが含まれる。上記のポリ(オキシアルキレン)及びポリエチレングリコールポリマーの一部の実施形態では、第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量がモルあたり約200〜約20,000グラム(g/mol)、一部の実施形態では、約400〜約15,000g/molであるよう変数「x」及び「x’」が選択される。したがって、これらの実施形態の一部では、式A[(OROR中、x及び「a+b」は、約3〜250又は約10〜225の範囲にあってもよい。これらの実施形態の一部では、式H(OCx’OH中、x’は、約3〜500又は約10〜450の範囲にあってもよい。以下の実施例において示される通り、第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと金属塩とのブレンドは、フィルムの押出成形中の溶融損傷がなくなる時間が、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び金属塩が、第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの非存在下で使用される場合よりも、驚くほど効果的に低下している。
【0027】
第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーが異なる重量平均分子量であるために、第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの溶融粘度は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの溶融粘度よりも低い。2種のポリマー加工用添加剤間の重量平均分子量間の差異は、2:1〜10:1、一部の実施形態では、5:1〜10:1、2:1〜10:1、5:1〜10:1、2:1〜500:1又は5:1〜500:1の範囲とすることができる。理論によって拘束されることを望むものではないが、一部の実施形態では、第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、押出成形可能組成物中の第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの表面を湿潤させることができるか、又はそうでない場合、その表面と結合し得る。
【0028】
第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーのブレンドを含む実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量は、モルあたり最大で約1,500,000グラム、モルあたり1,200,000グラム、モルあたり1,000,000グラム、モルあたり900,000グラム、モルあたり800,000グラム又はモルあたり750,000グラムとすることができる。したがって、これらの実施形態では、式A[(OROR及びH(OCx’OH、x、x’及び「a+b」は、約1000〜約25000の範囲にあってもよい。
【0029】
第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、様々な有用な比で存在することができる。有用なポリマー加工用添加剤組成物は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーとの比が、5:95〜95:5の範囲で含むことができる。一部の実施形態では、ポリマー加工用添加剤組成物中の、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーとの比は、1/2〜2/1である。その比は、1:1であってもよい。第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量が、モルあたり500,000グラムより大きい場合(例えば、最大でモルあたり約1,500,000グラム、モルあたり1,200,000グラム、モルあたり1,000,000グラム、モルあたり900,000グラム、モルあたり800,000グラム又はモルあたり750,000グラム)、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーとの比はより低い方が有用となり得る。一部の実施形態では、ポリマー加工用添加剤組成物は、ポリマー加工用添加剤組成物の総重量に対して、少なくとも約25、40又は50重量%の第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含む。
【0030】
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩は、本開示による組成物及び方法において、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー(一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー)を熱的に安定化させるのに有用となり得る。一部の実施形態では、金属塩は、カルボン酸又はスルホン酸の金属塩である。カルボン酸及びスルホン酸は、一官能性又は多官能性(例えば、二官能性)であってもよく、脂肪族又は芳香族であってもよい。言いかえると、カルボニル炭素又はスルホニル硫黄は、芳香族基又は芳香族環に結合していてもよい。脂肪族カルボン酸及びスルホン酸は、飽和又は不飽和であってよい。1つ以上の−C(O)O又は−S(O)陰イオン(すなわち、それぞれ、カルボン酸イオン基又はスルホン酸イオン基)に加え、脂肪族基又は芳香族基はまた、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、ヒドロキシル及びアルコキシ基を含む他の官能基により置換されていてもよく、芳香族環も、アルキル基により置換されていてもよい。一部の実施形態では、カルボン酸又はスルホン酸は、一官能性又は二官能性であり、脂肪族鎖上に更なる置換基をなんら有していない脂肪族である。
【0031】
一部の実施形態では、金属塩は、カルボン酸の金属塩である。一部の実施形態では、金属塩をもたらすのに有用なカルボン酸は、式RCOOHによって表され、Rはアルキル又はアルケニルである。一部の実施形態では、カルボン酸は酢酸である。一部の実施形態では、カルボン酸は、例えば、約8〜30個(一部の実施形態では、8〜26個又は8〜22個)の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸である。8〜26個の炭素原子を有する脂肪酸の一般名は、カプリル酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)及びセロチン酸(C26)である。一部の実施形態では、これらの酸の脂肪酸金属塩は、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アラキジン酸塩、ベヘニル酸塩、リグノセリン酸塩及びセロチン酸塩とすることができる。一部の実施形態では、カルボン酸はステアリン酸以外である。
【0032】
一部の実施形態では、金属塩は、スルホン酸の金属塩である。一部の実施形態では、金属塩をもたらすのに有用なスルホン酸は、式RS(O)OHによって表され、Rはアルキル又はアルケニルである。アルキル基又はアルケニル基は、約8〜30個(一部の実施形態では、8〜26個又は8〜22個)の炭素原子を有する。
【0033】
一部の実施形態では、金属塩は、アルキル硫酸エステルの金属塩である。1つ以上の−OS(O)O−陰イオン(すなわち、硫酸塩基)に加え、アルキル基も、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、ヒドロキシル及びアルコキシ基を含めた他の官能基により置換されていてもよい。一部の実施形態では、アルキル基は、更なる置換を含まない。金属塩をもたらすのに有用な酸は、通常、式R’OS(O)OHによって表され、R’は約8〜30個(一部の実施形態では、8〜26又は8〜22個)の炭素原子を有するアルキルである。
【0034】
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩中の有用な金属陽イオンの例としては、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)が挙げられる。一部の実施形態では、金属塩はナトリウム塩又はカリウム塩である。一部の実施形態では、金属塩は亜鉛塩又はカルシウム塩である。
【0035】
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩の多くは、様々な市販の供給源から入手可能であり、他のものは、従来の方法により作製することができる。一部の実施形態では、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩は、インシチュで形成することができる。これらの実施形態では、通常、金属陽イオンを含有する第1の構成成分、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルを含有する第2の構成成分のどちらも、ポリマー加工用添加剤組成物又は押出成形可能ポリマーを含めた熱可塑性組成物(一部の実施形態では、ポリオレフィン)に加えることができる。例えば、酸化亜鉛及びステアリン酸を組成物に加え、ステアリン酸亜鉛を形成することができる。
【0036】
本開示による組成物及び方法においてポリ(オキシアルキレン)ポリマーを熱的に安定化するのに有用な、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びフタル酸亜鉛が挙げられる。一部の実施形態では、金属塩は、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛以外である。一部の実施形態では、金属塩は、ステアリン酸カルシウム以外である。
【0037】
第1及び場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、並びにカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、本開示を実施するのに有用なポリマー加工用添加剤組成物では、第1及び場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び金属塩の総重量に対して、少なくとも85重量%の量で存在することができる。一部の実施形態では、第1及び場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び金属塩の総重量に対して、少なくとも、85重量%、90重量%、95重量%又は97.5重量%の量で存在する。一部の実施形態では、金属塩は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び金属塩の総重量に対して、最大15重量%、10重量%、5重量%又は2.5重量%の量で存在する。一部の実施形態では、金属塩は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び金属塩の総重量に対して、最大1重量%又は0.5重量%の量で存在する場合でさえも、第1及び場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの熱安定性を改善することができる。
【0038】
以下の実施例に含まれているデータは、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩をPEGに添加することで、熱重量分析器(TGA)により決定すると、分解の開始温度を上昇させることを明確に示している。一部の実施形態では、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩をポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、PEG)に添加することで、TGAにより決定すると、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの分解の開始温度は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90又は100度、上昇する。これらのデータは、酸化マグネシウムが、評価したカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩の大部分ほど安定化をもたらさないことも示している。しかし、金属酸化物と、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩との組合せは有用となり得る。
【0039】
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により安定化されているポリ(オキシアルキレン)ポリマーは、例えば、ポリマー加工用添加剤として有用である。以下の実施例において示される通り、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により安定化されているポリ(オキシアルキレン)ポリマーのブレンドは、フィルムの押出成形中に、溶融損傷をなくす時間を低下させるのに有効である。したがって、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により安定化されているポリ(オキシアルキレン)ポリマーのブレンドは、フルオロポリマー又はシリコーン含有ポリマーの非存在下でさえも、有効となり得る。一部の実施形態では、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により安定化されているポリ(オキシアルキレン)ポリマーのブレンドは、フィルムの押出成形中に、溶融損傷をなくす時間を低下させる点で、フルオロポリマーに匹敵する。したがって、一部の実施形態では、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩により安定化されているポリ(オキシアルキレン)ポリマーを含むポリマー加工用添加剤組成物は、フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない。「フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない」とは、フルオロポリマー及びシリコーンを含むが、ポリマー加工用添加剤組成物がホスト樹脂に含まれている場合に、押出成形中に溶融損傷性能を改善するには有効となり得ない量で含む、組成物を指すことができる。一部の実施形態では、ポリマー加工用添加剤組成物は、フルオロポリマー及び/又はシリコーンの、最大1、0.5、0.25若しくは0.1重量%又はそれら未満で含むことができる。「フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない」には、フルオロポリマー及びシリコーン含まないことを含むことができる。
【0040】
他の実施形態では、安定化されている第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー又は第1及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーのブレンドは、シリコーン含有ポリマー又はフルオロポリマーであるポリマー加工用添加剤と組み合わせて使用することができる。押出成形可能な熱可塑性ポリマーにおいて、溶融欠陥を少なくとも一部、緩和するのに有用で、安定化ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又はポリ(オキシアルキレン)ポリマーブレンドと組み合わせて使用することができる、フルオロポリマーとしては、例えば、米国特許第5,015,693号及び同第4,855,360号(Duchesneら)、同第5,710,217号(Blongら)、同第6,277,919号(Dillonら)、米国特許第7,375,157号(Amosら)、及び米国特許出願公開第2010/0311906号(Lavalleeら)に記載されているものが挙げられる。安定化ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又はポリ(オキシアルキレン)ポリマーブレンドと組み合わせて有用となり得る、ポリマー加工用添加剤として有用な一部のフルオロポリマーが市販されている。例えば、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンからなるコポリマーは、3M Company(St.Paul,Minn.)から、「DYNAMAR FX9613」及び「DYNAMAR FX9614」としての商標名で市販されており、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンからなるコポリマーは、3M Companyから、商標名「DYNAMAR FX5911」及び「DYNAMAR FX5912」という商標名で市販されている。他の有用なフルオロポリマーは、E.I.duPont de Nemours及びCo.,Wilmington,Del.から、商標名「VITON A」及び「VITON FREEFLOW」が様々なグレードで、ダイキン工業株式会社(大阪、日本)から商標名「DAI−EL」が様々なグレードで、及びArkema,Colombes,Franceから、商標名「KYNAR」が様々なグレードで市販されている。押出成形可能な熱可塑性ポリマーにおいて、溶融欠陥を少なくとも一部、緩和するのに有用で、安定化ポリ(オキシアルキレン)ポリマー又はポリ(オキシアルキレン)ポリマーブレンドと組み合わせて使用することができる、シリコーンとしては、例えば、米国特許第4,535,113号(Fosterら)に記載されているポリシロキサン、例えば、米国特許出願公開第2011−0244159号(Pappら)に記載されているポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマー及びポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー、並びに例えば、国際公開第2015/042415号(Lavalleeら)に記載されているシリコーン−ポリウレタンコポリマーが挙げられる。一部のシリコーンポリマー加工用添加剤は、例えば、Dow Corning(Midland,Mich.)から、商標名「DOW CORNING MB50−002」で、及びWacker Chemie AG(Munich,Germany)から、商標名「GENIOPLAST」で市販されている。
【0041】
その実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されている、第1及び場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、並びに金属塩を含む組成物は、シリコーン−ポリエーテルコポリマー、ポリ(アジピン酸ブチレン)、ポリ(乳酸)及びポリカプロラクトンポリエステルなどの脂肪族ポリエステル、及びフタル酸ジイソブチルエステルなどの芳香族性ポリエステルなどの、他のタイプのポリマー加工用添加剤又は相乗剤と組み合わせて使用することができる。これらのクラスの相乗剤のいずれかのブレンドが有用なことがある。同様に、こうしたクラスの相乗剤の2つ以上のブロックを含めた、ブロックコポリマーも有用となり得る。例えば、シリコーン−ポリカプロラクトンブロックコポリマー又はポリ(オキシアルキレン)−ポリカプロラクトンブロックコポリマーが、本明細書において開示される組成物と組み合わせると有用となり得る。
【0042】
第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、本開示によるポリマー加工用添加剤組成物は、粉末、ペレット、所望の微粒子サイズ若しくはサイズ分布の顆粒の形態、又は他の任意の押出成形可能な形態で使用することができる。これらのポリマー加工用添加剤組成物は、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、UV安定化剤、金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛)、粘着防止剤(例えば、コーティング又は非コーティング)、顔料及び充填剤(例えば、二酸化チタン、カーボンブラック及びシリカ)などの従来の補助剤を含有することができる。
【0043】
HALSは、通常、酸化分解に起因し得る、遊離ラジカルを捕捉することができる化合物である。一部の適切なHALSとしては、ピペリジン上の窒素原子が無置換であってもよく、又はアルキル若しくはアシルによって置換されていてもよい、テトラメチルピペリジン基が挙げられる。適切なHALSの例としては、デカン二酸、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ(4,5)−デカン−2,5−ジオン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンスクシネート)及びセバシン酸ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)が挙げられる。適切なHALSとしては、例えば、BASF(Florham Park、NJ)から、商標名「CHIMASSORB」で入手可能なものが更に挙げられる。酸化防止剤の例としては、やはりBASFから入出可能な、商標名「IRGAFOS 168」、「IRGANOX 1010」及び「ULTRANOX 626」で得られるものが挙げられる。これらの安定化剤は、存在する場合、本開示による組成物中に、任意の有効量で、ポリマー加工用添加剤組成物の総重量に対して、通常、最大5、2〜1重量%、及び通常、少なくとも0.1、0.2又は0.3重量%で含まれ得る。
【0044】
しかし、一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む組成物は、従来の酸化防止剤の非存在下でさえも、熱的に驚くほど安定である。カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩が、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの熱安定性を高める能力を、以下の実施例における表7及び8に記載されている様々な酸化防止剤と比較した。これらのデータは、酸化防止剤及びステアリン酸塩の組合せは、個々の構成成分より優れ得ることを示しているが、単独で使用したステアリン酸塩は、従来の酸化防止剤より優れ得る。したがって、一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤組成物は、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を本質的に含まない。酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を本質的に含まないとは、組成物が酸化防止剤を含まないか、又は組成物の総重量に対して、最大でも0.1、0.05又は0.01重量%の量しか酸化防止剤を含まないことを意味することができる。
【0045】
一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤組成物は、ポリマー加工用添加剤として有用であるが、ホスト樹脂から個別に提供され得る。したがって、一部の実施形態では、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩と、を含むポリマー加工用添加剤組成物は、ポリオレフィンを本質的に含まない。同様に、一部の実施形態では、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤は、ポリオレフィンを本質的に含まない。ポリオレフィンを本質的に含まないとは、組成物がポリオレフィンを含まないか、又はポリマー加工用添加剤組成物の総重量に対して、最大でも1、0.5、0.1又は0.05重量%の量しかポリオレフィンを含まないことを意味することができる。他の実施形態では、本ポリマー加工用添加剤は、以下に更に記載されている通り、ホスト樹脂中のマスターバッチ中で提供することができる。
【0046】
一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤組成物は、溶融加工可能な熱可塑性ポリマーを含めた、熱可塑性組成物中で、(例えば、ポリマー加工用添加剤として)有用である。幅広い熱可塑性ポリマーが、溶融加工可能である。有用な熱可塑性ポリマーの例としては、炭化水素樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/10、ナイロン11及びナイロン12)、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート))、塩素化ポリエチレン、ポリビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート及びポリメチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリウレア、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン及びポリスチレンが挙げられる。
【0047】
有用な溶融加工可能なポリマーは、10分以下あたり5.0グラム、又は10分以下あたり2.0グラムのメルトフローインデックス(2160グラム重量を使用して、190℃でASTM D1238に準拠して測定)を有する。一般に、溶融加工可能なポリマーのメルトフローインデックスは、10分あたり少なくとも0.1又は0.2グラムである。
【0048】
本開示による組成物及び方法の一部の実施形態では、有用な溶解加工可能なポリマーは、炭化水素ポリマー、例えばポリオレフィンである。有用なポリオレフィンの例としては、一般構造CH=CHRを有するものが挙げられ、Rは水素又はアルキルである。一部の実施形態では、アルキルラジカルは、最大10個の炭素原子、又は1〜6個の炭素原子を含む。溶融加工可能なポリオレフィン(poleolefin)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(3−メチルブテン)、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクタデセンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド、直鎖状又は分岐状低密度ポリエチレン(例えば、密度0.89〜0.94g/cmを有するもの)、高密度ポリエチレン(例えば、密度が例えば0.94〜約0.98g/cmを有するもの)、及びポリエチレン、及び共重合可能なモノマーを含有するオレフィンコポリマー(例えば、エチレンとアクリル酸のコポリマー、エチレンとアクリル酸メチルのコポリマー、エチレンとアクリル酸エチルのコポリマー、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、エチレン、アクリル酸及びアクリル酸エチルのコポリマー、及びエチレン、アクリル酸及び酢酸ビニルのコポリマー)が挙げられる。溶解加工可能なポリマーとしては、遊離カルボン酸基を含有する、オレフィンコポリマーの金属塩、又はそのブレンド(例えば、共重合したアクリル酸を含むポリマー)が挙げられる。このカルボン酸ポリマーの塩を提供するために使用することができる金属の例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、ベリリウム、鉄、ニッケル及びコバルトなどの一価、二価及び三価の金属である。
【0049】
本開示の実施に有用なポリオレフィンは、オレフィンのホモ重合又は共重合によって得ることができる。有用なポリオレフィンは、1種以上のオレフィンと、最大約30重量%以上、一部の実施形態では、20重量%以下の1種以上の、こうしたオレフィンと共重合可能なモノマーからなるコポリマーとすることができる。オレフィンと共重合可能な代表的なモノマーとしては、ビニルエステルモノマー(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、クロロ酢酸ビニル及びクロロプロピオン酸ビニルなど)、アクリル酸及びアルファ−アルキルアクリル酸モノマー並びにそれらのアルキルエステル、アミド及びニトリル(アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド及びアクリロニトリルなど)、ビニルアリールモノマー(スチレン、o−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン及びビニルナフタレンなど)、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデンのモノマー(塩化ビニル、塩化ビニリデン及び臭化ビニリデンなど)、マレイン酸及びフマル酸及びそれらの無水物(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル及び無水マレイン酸など)のアルキルエステルモノマー、ビニルアルキルエーテルモノマー(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル及び2−クロロエチルビニルエーテルなど)、ビニルピリジンモノマー、N−ビニルカルバゾールモノマー、及びN−ビニルピロリジンモノマーが挙げられる。
【0050】
一部の実施形態では、本明細書において開示される熱可塑性組成物及び方法において有用なポリオレフィンは、チーグラー−ナッタ触媒作用によって調製される。一部の実施形態では、本明細書において開示される熱可塑性組成物及び方法において有用なポリオレフィンは、均一触媒作用によって調製される。一部の実施形態では、均一触媒作用とは、触媒及び基質が、同一相にある(例えば、溶液中)、触媒作用を指す。一部の実施形態では、均一触媒作用とは、単一活性部位を有する触媒により行われる触媒作用を指す。シングルサイト触媒は、通常、単一金属中心を含有する。
【0051】
一部の実施形態では、均一触媒によるポリオレフィンは、メタロセン触媒によるポリオレフィンである。メタロセン触媒は、通常、ジルコニウム、チタン又はハフニウムなどの正に帯電している金属に錯体形成している、1つ又は2つのシクロペンタジエニル陰イオンを有する。シクロペンタジエニル基は、置換(例えば、アルキル、フェニル又はシリル基により)されていてもよいか、又はベンゼンなどの芳香族環に縮合していてもよく、2つのシクロペンタジエニル基又は1つのシクロペンタジエニル基と別の配位性基(例えば、N−アルキル、p−アルキル、O又はS)とが、架橋基(例えば、(CHSi、(CHC又はCHCH)を介して一緒に結合していてもよいことが理解される。金属としては、ハロゲン、水素、アルキル、フェニル又は追加のシクロペンタジエニル基などの他の配位子を挙げることができる。メタロセン触媒は、通常、均一反応条件下、メチルアルモキサン又はボレートと組み合わせて使用される。
【0052】
市販のメタロセン触媒によるポリオレフィンは、商標名「EXXPOL」、「EXACT」、「EXCEED」及び「VISTAMAXX」で、Exxon Chemical Company(Baytown,Tex.)から、及び商標名「AFFINITY」及び「ENGAGE」でDow Chemical Company(Midland,Mich.)からのものが挙げられる。
【0053】
メタロセン触媒以外の均一触媒又はシングルサイト触媒も、均一触媒によるポリオレフィンを得るのに有用である。こうした触媒は、通常、金属(例えば、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、パラジウム又はニッケル)に強く結合している少なくとも1つの第1の配位子、及び化学変化を起こすことが可能な少なくとも1つの他の配位子を含む。第1の配位子は、通常、活性化(例えば、メチルアルモキサン又はボレートにより)された後に金属に結合したままで存在し、触媒の単一形態を安定化し、重合を妨げず、活性部位に形状をもたらし、電子的にその金属を修飾する。一部の有用な第1の配位子としては、嵩高い、二座ジイミン配位子、サリチルイミン配位子、三座のピリジンジイミン配位子、ヘキサメチルジシラザン、嵩高いフェノール化合物及びアセチルアセトネートが挙げられる。これらの配位子の多くは、例えば、Ittelら、Chem.Rev.,2000,100,1169〜1203に記載されている。商標名「ADVANCED SCLAIRTECH TECHNOLOGY」で、Nova Chemicals Corporation(Calgary,Canada)により記載されているものなどの他のシングルサイト触媒。
【0054】
均一触媒によるポリオレフィンは、チーグラー−ナッタ触媒作用などの他の方法によって作製されるポリオレフィンよりも、高い分子量、低い多分散性、より少ない抽出可能物及び異なる立体化学を有することができる。均一触媒作用はまた、チーグラー−ナッタ触媒作用よりも重合可能なモノマーを幅広く選択することが可能である。有機金属化合物と混合したハロゲン化遷移金属錯体を使用する、チーグラー−ナッタ触媒作用は、得られたポリオレフィン樹脂中に酸性残基を残すことができる。こうした樹脂には、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛などの酸を中和する添加剤が加えられてきた。均一触媒によるポリオレフィンの場合、こうした酸性残基は、一般に存在しない。したがって、酸を中和する添加剤は通常、必要ではない。
【0055】
有用な均一触媒によるポリオレフィンの例としては、一般構造CH=CHR10を有するものが挙げられ、R10は水素又はアルキルである。一部の実施形態では、アルキルは、最大10個の炭素原子、又は1〜6個の炭素原子を含む。均一触媒によるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(3−メチルブテン)、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクタデセンとのコポリマー、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド、直鎖状又は分岐状低密度ポリエチレン(例えば、密度が0.89〜0.94g/cmを有するもの)、及び高密度ポリエチレン(例えば、密度が例えば0.94〜約0.98g/cmを有するもの)を挙げることができる。一部の実施形態では、均一触媒によるポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらの実施形態のいずれも、均一触媒によるポリオレフィンは、メタロセン触媒によるポリオレフィンであってもよい。
【0056】
本開示の実施形態のいずれかを実施するのに有用な熱可塑性組成物は、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、UV安定化剤、金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛)、粘着防止剤(例えば、コーティング又は非コーティング)、顔料及び充填剤(例えば、二酸化チタン、カーボンブラック及びシリカ)などの、それらの実施形態のいずれかにおける、上記の従来的な補助剤のいずれかを含むことができる。
【0057】
しかし、上記の一部の実施形態では、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤組成物は、従来の酸化防止剤の非存在下でさえも、驚くほど熱的に安定である。したがって、一部の実施形態では、ポリオレフィン、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む熱可塑性組成物は、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を本質的に含まない。酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を本質的に含まないとは、組成物が酸化防止剤を含まないこと、又はポリオレフィンの重量に対して、最大でも0.1、0.05、0.01、0.005又は0.002重量%の量しか酸化防止剤を含まないことを意味することができる。更に、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤組成物は、無機粘着防止剤(例えば、珪藻土、炭酸カルシウム、シリカ及びタルク)の非存在下でさえも、フィルムの押出成形中に、溶融損傷がなくなる時間を低下させるのに有効である。したがって、一部の実施形態では、ポリオレフィン、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む組成物は、無機粘着防止剤を本質的に含まない。無機粘着防止剤(例えば、珪藻土、炭酸カルシウム、シリカ及びタルク)を本質的に含まないとは、組成物が無機粘着防止剤を含まないこと、又は組成物の総重量に対して、最大でも1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005又は0.002重量%の量しか無機粘着防止剤を含んでいないことを意味することができる。したがって、本明細書において開示される組成物は、特に、チーグラー−ナッタを触媒とするオレフィンポリマーの押出成形中に、ゲルストリーキング及びピンストリッピングを防止するために、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び無機粘着防止剤の使用を必要とする、米国特許第4,540,538号(Corwinら)を鑑みると、押出成形時に驚くほど欠損がないと考えることができる。
【0058】
一部の実施形態では、熱可塑性ポリマー(一部の実施形態では、ポリオレフィン)は、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤組成物と混合される前に、ステアリン酸金属塩を含まない。一部の実施形態では、熱可塑性ポリマー(一部の実施形態では、ポリオレフィン)は、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤組成物と混合される前に、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩をなんら含まない。上記の通り、酸中和剤は通常、均一触媒によるポリオレフィンには必要でない添加剤である。
【0059】
熱可塑性ポリマーは、粉末、ペレット、顆粒の形態、又は他の任意の押出成形可能な形態で使用することができる。本開示による組成物は、様々な方法のうちのいずれかによって調製することができる。例えば、ポリマー加工用添加剤組成物は、ポリマー物品に押出成形する間に、熱可塑性ポリマーと混合することができる。ポリマー加工用添加剤組成物はまた、更なる構成成分及び/又は1つ以上のホスト熱可塑性ポリマーを含有していてもよい、ポリマー組成物、いわゆるマスターバッチとして提供され得る。マスターバッチは、ポリマー加工用添加剤の有用な希釈形態とすることができる。マスターバッチは、ホストポリマー中に分散されているか、又はそれとブレンドされている、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含有することができ、このホストポリマーは、ポリオレフィン、均一触媒によるポリオレフィン、メタロセン触媒によるポリオレフィン、又は上記の熱可塑性物のいずれかであってもよい。マスターバッチの調製により、例えば、ポリマー加工用添加剤を一層正確な量で押出成形可能組成物に添加することが可能となり得る。マスターバッチは、ポリマー物品に押出成形するための熱可塑性ポリマーに添加する準備が整っている、組成物とすることができる下記のポリマー加工用添加剤の濃縮物を含むマスターバッチは、好気条件下、比較的高温で調製されることが多い。したがって、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤組成物中の、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩の存在下での、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの熱安定性は、ポリマー加工用添加剤を含有するマスターバッチの作製に有用である。
【0060】
押出成形される熱可塑性ポリマー(一部の実施形態では、ポリオレフィン)、及びポリマー加工用添加剤組成物は、コンパウンディングミル、バンバリーミキサ又は混合式押出成形機などの、プラスチック産業において、通常、使用されるブレンド手段のいずれかによって一緒にすることができ、この場合、ポリマー加工用添加剤組成物は、ホスト熱可塑性ポリマー全体に均一に分布される。混合操作は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの融点又は軟化点より高い温度で、最も都合良く実施されるが、微粒子として固体状態にある構成成分を乾式ブレンドして、次に、この乾燥ブレンドを二軸溶融押出成形機に供給することにより、構成成分の均一な分布を引き起こすことも可能である。
【0061】
得られた溶解ブレンド混合物は、ペレット化され得るか、又は他には、所望の粒子サイズ若しくはサイズ分布に粉砕されて、押出成形機に供給され、この押出成形機は、通常、ブレンドされた混合物を溶融加工する、単軸押出成形機であろう。溶融加工は、通常、180℃〜280℃の温度で行われるが、最適操作温度は、ブレンドの融点、溶融粘度及び熱安定性に応じて選択される。本開示の組成物を押出成形するために使用することができる様々なタイプの押出成形機は、例えば、Rauwendaal,C.,「Polymer Extrusion」,Hansen Publishers,p.23〜48,1986により記載されている。押出成形機のダイ設計は、作製される所望の押出物に応じて、様々であり得る。例えば、環状ダイは、米国特許第5,284,184号(Nooneら)に記載されているものなどの、フューエルラインホースの作製に有用なチューブを押出成形するのに使用することができる。
【0062】
こうした組成物は、更なる熱可塑性ポリマー及び/又は更なる構成成分を混合して、ポリマー物品に加工する準備が整っている組成物を得ることができる。本組成物はまた、必要なすべての成分を含有することもでき、ポリマー物品に押出成形する準備が整っている。これらの組成物中のポリマー加工用添加剤の量は、通常、比較的少ない。したがって、熱可塑性ポリマー(一部の実施形態では、ポリオレフィン)は、本開示による組成物の一部の実施形態中では、主要量で存在する。主要量とは、組成物の50重量%を超えると理解される。一部の実施形態では、主要量は、組成物の少なくとも60、70、75、80又は85重量%である。使用される正確な量は、押出成形可能組成物が、その最終形態(例えば、フィルム)に押出成形されるか、又はその最終形態に押出成形される前に、追加のホストポリマーにより(更に)希釈されることになるマスターバッチ又は加工用添加剤として使用されるかに応じて、様々であり得る。
【0063】
一般に、一部の実施形態では、均一触媒による又はメタロセン触媒によるポリオレフィン組成物である熱可塑性組成物は、本明細書において開示されるポリマー加工用添加剤を、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を合わせた重量中に、熱可塑性組成物の総重量に対して、約0.002〜50重量%(一部の実施形態では、0.002〜10重量%)の範囲で含む。一部の実施形態では、ポリマー加工用添加剤組成物の構成成分を合わせた重量は、熱可塑性組成物の総重量に対して、0.01%〜50%(一部の実施形態では、0.01〜10重量%)の範囲にある。マスターバッチ組成物では、ポリマー加工用添加剤組成物の構成成分を合わせた重量は、組成物の総重量に対して、1%〜50%、一部の実施形態では、1%〜10%、1%〜5%、2%〜10%又は2%〜5%の範囲にある。熱可塑性組成物が最終形態に押出成形されることになる場合、及びホストポリマーの添加により更に希釈されない場合、熱可塑性組成物は、より低い濃度のポリマー加工用添加剤組成物を通常、含有している。これらの実施形態の一部では、ポリマー加工用添加剤組成物の構成成分を合わせた重量は、押出成形可能組成物の総重量に対して、約0.002〜2重量%、一部の実施形態では、約0.01〜1重量%、又は0.01〜0.2重量%の範囲にある。使用されるポリマー加工用添加剤の上限濃度は、ポリマー加工用添加剤の濃度の物理的な悪影響によるものよりもむしろ、経済的制限によって、一般に決まる。
【0064】
一部の実施形態では、熱可塑性ポリマー(一部の実施形態では、ポリオレフィン)、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、場合により第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む組成物は、フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない。「フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない」とはフルオロポリマー及びシリコーンを含むが、ポリマー加工用添加剤組成物がホスト樹脂に含まれている場合に、押出成形中に溶融損傷性能を改善するには有効になり得ない量で含む、組成物を指すことができる。一部の実施形態では、本組成物は、フルオロポリマー及び/又はシリコーンを、100、90、80、70、60、50、40、30、20又は10ppmを最大で、又はそれら未満で含むことができる。「フルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない」には、フルオロポリマー及びシリコーンを含まないことを含むことができる。
【0065】
本開示によるポリマー加工用添加剤組成物は、熱可塑性ポリマー(例えば、ポリオレフィン)の押出成形において有用であり、これには、例えば、フィルムの押出成形、押出吹込成形、射出成形、パイプ、ワイヤ及びケーブル押出成形、並びに繊維生成が挙げられる。
【0066】
本明細書に記載されている通り、及び以下の実施例において実証されている通り、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)とカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩との組合せは、通常、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー単独よりもかなり高い熱安定性を有する。ポリ(オキシアルキレン)ポリマーの熱安定性の改善により、より高温での、マスターバッチ加工及び押出成形を含めた、ポリマー加工が可能になり得る。通常、及び有利には、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)とカルボン酸、スルホン酸の金属塩との組合せを含むポリマー組成物は、少なくとも220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃又は300℃又はそれより高い温度で加工することができる。
【0067】
本開示の一部の実施形態
第1の実施形態では、本開示は、
ポリオレフィンと、
ポリマー加工用添加剤組成物であって、
モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー、及び
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含む、ポリマー加工用添加剤組成物と、
を含む、熱可塑性組成物を提供する。ポリオレフィンは、熱可塑性組成物の主要構成成分として通常は存在する。
【0068】
第2の実施形態では、本開示は、ポリオレフィンの押出成形中の溶融欠陥を低減する方法であって、
ポリオレフィン、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤を一緒にして、押出成形可能組成物を準備することと、
この押出成形可能組成物を押出成形することと、を含む、方法を提供する。
【0069】
第3の実施形態では、本開示は、熱可塑性ポリマーの押出成形中の溶融欠陥を低減する方法であって、
モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤組成物を準備することと、
押出成形可能な熱可塑性ポリマーを準備することと、
ポリマー加工用添加剤組成物と押出成形可能ポリマーとを混合して、押出成形可能組成物を準備することと、
この押出成形可能組成物を押出成形することと、を含む、方法を提供する。
【0070】
第4の実施形態では、本開示は、押出成形可能ポリマーを準備する場合、この押出成形可能ポリマーはステアリン酸金属塩を含まない、第2又は3の実施形態に記載の方法を提供する。
【0071】
第5の実施形態では、本開示は、押出成形可能ポリマー又はポリオレフィンが、均一触媒によるポリオレフィン又はメタロセン触媒によるポリオレフィンである、第1〜4の実施形態のうちのいずれか1つに記載の熱可塑性組成物又は方法を提供する。
【0072】
第6の実施形態では、本開示は、押出成形可能ポリマー又は均一触媒によるポリオレフィンが、直鎖状低密度ポリエチレンである、第1〜5の実施形態のうちのいずれか1つに記載の熱可塑性組成物又は方法を提供する。
【0073】
第7の実施形態では、本開示は、ポリマー加工用添加剤組成物が、組成物又は押出成形可能組成物の総重量に対して、0.002%〜10%の範囲で存在する、第1〜6の実施形態のうちのいずれか1つに記載の熱可塑性組成物又は方法を提供する。
【0074】
第8の実施形態では、本開示は、金属塩が、ポリマー加工用添加剤組成物(すなわち、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩)の総重量に対して、最大15重量%で存在する、第1〜7の実施形態のうちのいずれか1つに記載の熱可塑性組成物又は方法を提供する。
【0075】
第9の実施形態では、本開示は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量が、モルあたり最大で約500,000グラム、モルあたり450,000グラム、モルあたり400,000グラム、モルあたり350,000グラム、モルあたり300,000グラム又はモルあたり250,000グラムである、第1〜8の実施形態のうちのいずれか1つに記載の熱可塑性組成物又は方法を提供する。
【0076】
第10の実施形態では、本開示は、ポリマー加工用添加剤が、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーを更に含む、第1〜9の実施形態のうちのいずれか1つに記載の熱可塑性組成物又は方法を提供する。
【0077】
第11の実施形態では、本開示は、
モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、
カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩と、を含む、ポリマー加工用添加剤組成物を提供する。
【0078】
第12の実施形態では、本開示は、ポリマー加工用添加剤組成物として、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、モルあたり最大で約20,000グラムの重量平均分子量を有する第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーと、カルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩と、を含む組成物の使用を提供する。
【0079】
第13の実施形態では、本開示は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量が、最大で約1,500,000、モルあたり1,000,000グラム、モルあたり900,000グラム、モルあたり800,000グラム、又はモルあたり750,000グラムである、第10〜12の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0080】
第14の実施形態では、本開示は、第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーが、ポリエチレングリコールである、第10〜13の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0081】
第15の実施形態では、本開示は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及び第2のポリ(オキシアルキレン)ポリマーが、5:95〜95:5の範囲の重量比で存在する、第10〜14の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0082】
第16の実施形態では、本開示は、組成物がポリカプロラクトンを更に含む、第1〜15の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0083】
第17の実施形態では、本開示は、組成物がフルオロポリマー及びシリコーンを本質的に含まない、第1〜16の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0084】
第18の実施形態では、本開示は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーの重量平均分子量が、モルあたり少なくとも約60,000グラム、モルあたり70,000グラム、モルあたり75,000グラム、モルあたり80,000グラム又はモルあたり85,000グラムである、第1〜17の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0085】
第19の実施形態では、本開示は、金属塩がカルボン酸又はスルホン酸の金属塩である、第1〜18の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0086】
第20の実施形態では、本開示は、金属塩がカルボン酸の金属塩である、第19の実施形態に記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0087】
第21の実施形態では、本開示は、金属塩が脂肪族カルボン酸の金属塩である、第20の実施形態に記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0088】
第22の実施形態では、本開示は、カルボン酸がステアリン酸以外である、第20又は21の実施形態に記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0089】
第23の実施形態では、本開示は、金属塩がナトリウム塩又はカリウム塩である、第1〜22の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0090】
第24の実施形態では、本開示は、金属塩が亜鉛塩又はカルシウム塩である、第1〜22の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0091】
第25の実施形態では、本開示は、組成物、ポリマー加工用添加剤組成物又は押出成形可能組成物が、酸化防止剤又はヒンダードアミン光安定化剤のうちの少なくとも1つを更に含む、第1〜24の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0092】
第26の実施形態では、本開示は、組成物、ポリマー加工用添加剤組成物又は押出成形可能組成物が、酸化防止剤を本質的に含まない、第1〜24の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0093】
第27の実施形態では、本開示は、組成物、ポリマー加工用添加剤組成物又は押出成形可能組成物が、金属酸化物を更に含む、第1〜26の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0094】
第28の実施形態では、本開示は、第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマーがポリエチレングリコールである、第1〜27の実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物、方法又は使用を提供する。
【0095】
第29の実施形態では、本開示は、モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有する第1のポリ(オキシアルキレン)ポリマー及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩を含むポリマー加工用添加剤であって、フルオロポリマー、シリコーン、及びポリオレフィンを本質的に含まない、ポリマー加工用添加剤を提供する。
【0096】
第30の実施形態では、本開示は、ポリマー1モルあたり少なくとも約50,000グラムの重量平均分子量を有するポリ(オキシアルキレン)及びカルボン酸、スルホン酸又はアルキル硫酸エステルの金属塩の、ポリマー加工用添加剤としての使用を提供する。
【0097】
第31の実施形態では、本開示は、金属塩が、ポリマー加工用添加剤の総重量に対して、最大15重量%で存在する、第29又は30の実施形態に記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0098】
第32の実施形態では、本開示は、金属塩がカルボン酸又はスルホン酸の金属塩である、第29〜31の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0099】
第33の実施形態では、本開示は、金属塩がカルボン酸の金属塩である、第32の実施形態に記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0100】
第34の実施形態では、本開示は、金属塩が脂肪族カルボン酸の金属塩である、第33の実施形態に記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0101】
第35の実施形態では、本開示は、カルボン酸がステアリン酸以外である、第32又は33の実施形態に記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0102】
第36の実施形態では、本開示は、金属塩がナトリウム塩又はカリウム塩である、第29〜35の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0103】
第37の実施形態では、本開示は、金属塩が亜鉛塩又はカルシウム塩である、第29〜35の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0104】
第38の実施形態では、本開示は、酸化防止剤又はヒンダードアミン光安定化剤のうちの少なくとも1つを更に含む、第29〜37の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0105】
第39の実施形態では、本開示は、ポリマー加工用添加剤が酸化防止剤を本質的に含まない、第29〜37の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0106】
第40の実施形態では、本開示は、金属酸化物を更に含む、第29〜39の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0107】
第41の実施形態では、本開示は、ポリ(オキシアルキレン)ポリマーがポリエチレングリコールである、第29〜40の実施形態のうちのいずれか1つに記載のポリマー加工用添加剤又は使用を提供する。
【0108】
この開示を一層完全に理解することができるよう、以下の実施例を説明する。これらの実施例は例示的目的に過ぎず、本開示を決して限定するものとして解釈されるものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0109】
これらの実施例において、量はすべて重量部で表される。略語は、g=グラム、min=分、hrs=時間、rpm=1分間あたりの回転数、wt=重量、EX=実施例、CE=比較例、HALS=ヒンダードアミン光安定化剤、TGA=熱重量分析を含む。PEG=ポリエチレングリコール、Me=メチル、MW=分子量、PPA=ポリマー加工用添加剤、MF=溶融損傷、MB=マスターバッチ、MI=10分あたりのメルトインデックス(グラム)、LLDPE=直鎖状低密度ポリエチレン、AO=酸化防止剤。
【0110】
【表1-1】
【0111】
【表1-2】
【0112】
重量平均分子量の決定
PEG8K、20K、100K、200K、300K及び600Kの試料の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用する、狭分子量分布ポリ(エチレンオキシド)標準品との比較により決定した。GPC測定は、8K、20K、100K、200K及び300Kの試料に関しては、Agilent Plgel Mixed−C 5μ 30cm×7.5mmカラム(Agilent Technologiesから入手)、及び600Kの試料に関しては、Agilent Plgel Mixed−A 20μ 30cm×7.5mmカラム(Agilent Technologiesから入手)を使用して、Agilent 1100機器(Agilent Technologies,Santa Clara,Cal.から入手)で実施した。屈折率検出器は、40℃で使用した。溶液は、1:1の安定化テトラヒドロフラン/クロロホルム20mLあたり25mgのPEG試料から作製した。試料は、一晩、撹拌し、確実に完全な溶液になるようにした。それらをろ過せずに、分析し、フィルタからの考えられるいかなる汚染物混入も回避した。8K、20K、100K、200K及び300Kの試料に関して、50マイクロリットルの試料容積をカラムに注入し、カラム温度を40℃にした。600Kの試料に関しては、25マイクロリットル及び50マイクロリットルの試料容積をカラムに注入した。0.6mL/分の流速を使用し、移動相は、1:1安定化テトラヒドロフラン/クロロホルムであった。分子量の較正は、Agilent Technologiesからの狭分布ポリ(エチレンオキシド)標準品を使用して行い、この標準品は、20mLの溶媒あたり約5〜10mgで1:1の安定化THF/クロロホルムに溶解した。これらは、1.7MDa〜600Daの分子量範囲に及んだ。較正及び分子量分布の計算は、分子量較正曲線に関する三次多項式あてはめを使用した適切なGPCソフトウェアを使用して行った。各報告されている結果は、600Kの試料を除いて、2回の注入の平均であり、600Kの試料は、25マイクロリットルで2回、及び50マイクロリットルで2回の注入の平均である。結果は、以下の表1に示されており、表中、Mp=シグナルピークにおける分子量、Mn=数平均分子量、Mw=重量平均分子量、及び
【0113】
【数1】
である。
【0114】
【表2】
【0115】
溶融粘度の決定
溶融粘度は、Mw、MWD及び構造の変化における差異の指標にもなり得るので、PEG試料の溶融粘度は、レオロジーを特徴とした。この試験プロトコルにより、基準温度における粘度マスター曲線の構築が可能になり、Carreau−Yassuda−Arrhenius式に対する適合パラメータが得られる。
【0116】
溶融粘度は、TA Instruments製のAR2000ex平行平板型レオメータを使用して測定した。このレオメータは、電気加熱されたプレートシステム(EHP)にマウントしたNiメッキされている25mmの使い捨てプレートを装備していた。物質を130℃で気泡のない1.25mmのシートに押圧した。各物質について、30mmのディスクに裁断し、150℃でレオメータのプレート間に置いた。ギャップを1.1mmに設定し、垂直抗力を安定化させた後、試料を切りそろえた。次に、ギャップを1.0mmに設定し、垂直抗力を安定化させた後、測定を開始した。この手順は、0.1〜398.1rad/sの範囲の周波数、及び150℃〜250℃の範囲の6つの温度、及び10%歪みで、10組あたり5点での時間及び周波数掃引とした。Cole−Coleプロット及びVan Gurp−Palmenプロットを使用して、データの一貫性を確認した。それらのプロット上のデータセットにおけるばらつきは、不適切な試験条件、多相/応答、又は試験中の構造変化(長鎖の分岐、結晶性、分解、発泡など)の指標である。一貫しないデータはいずれも、分析から排除した。ExcelにおいてSolverアドインを使用して、Carreau−YasudaモデルとArrhenius式(米国特許第5710217号において、ηを単独であてはめるために使用された式)の組み合わせたものに、η’及びηデータを同時にあてはめた。変更したパラメータは、PEG20Kの場合の試験温度のみであり、なぜならその粘度は標準条件下では、あまりにも低く、試験できなかったからである。この場合、温度は、20℃刻みで、90〜190℃であった。結果を以下の表2に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
熱安定性
熱安定性は、20cc/分のガス流を用い、空気下、10℃/分の加熱速度で、Perkin Elmer Pyris 1熱重量分析器(TGA)を使用して測定した。温度は、約30℃〜750℃まで傾斜を設けた。試料サイズは、約5mg〜20mgで様々であった。分解開始は、50℃及び90%の重量損失時における2つの点を使用し、Perkin Elmerソフトウェア(V.10.1.0.0412)から得て、2本の接線を引いた。これらの線の間の切片を分解の開始として報告する。
【0119】
熱安定性評価用の粉末ブレンドは、乳鉢と乳棒を使用し、各構成成分の相対量を混合して、2〜10gのバッチを得ることにより調製した。一部のブレンドは、連続希釈によって調製した。割合はすべて、重量%(wt%)として示す。
【0120】
分解開始温度は、試料重量によって影響を受けるので、開始は、4〜26mg(以下の表1)の重量を使用し、無溶媒の6種のPEG試料について測定した。二次式を、R0.995でデータにあてはめた。この回帰を使用して、本実施例の各試料について予期される開始をそれらの重量に基づいて得た。次に、測定された開始と予期される開始との差異を計算し、結果を表5、7及び8に示す。
【0121】
様々なステアリン酸塩及び酸化物との混合物に関する、実施例のPEG分解開始温度を表4に報告する。100%のカラムは、純粋なステアリン酸塩の場合の開始を報告している。表3は、純粋なPEG8000(添加剤0%)の場合の、189℃〜264℃の温度を示している。表5は、同一ブレンドの場合の、測定される分解開始と予期される分解開始との差異を示す。ブレンドを使用した場合、その濃度はPEG中の添加剤の合計レベルを指す。
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
ステアリン酸塩も、様々な酸化防止剤及びステアリン酸塩を含むそのブレンドと比較した(表7及び8)。濃度は、添加剤の総量を指す。
【0127】
【表8】
【0128】
【表9】
【0129】
様々なカルボン酸、スルホン酸及びアルキル硫酸エステルの金属塩も、TGAにより評価した。上記の「熱安定性」法は、試料サイズを16mg〜20mgと様々にした修正をして使用した。塩はそれぞれ、PEG中、5重量%でブレンドした。データは、以下の表9に報告する。
【0130】
【表10】
【0131】
比較のため、ステアリン酸亜鉛を含む又はそれを含まない、末端をキャップしたPEGもTGAにより評価した。ステアリン酸亜鉛は、2.5重量%及び5重量%のPEGで評価した。上記の「熱安定性」法は、試料サイズを4mg〜26mgと様々にした修正をして使用した。データは、以下の表10に報告する。表10に示す通り、PEGにエーテル又はエステル連結した末端キャップにより熱安定性が改善したが、ステアリン酸塩を添加した場合ほどの程度ではなく、この改善は、ステアリン酸塩の末端鎖のエステル化に単に関連するものではないことを示唆している。
【0132】
【表11】
【0133】
実施例1〜6及び実例A〜D
実施例1〜6及び実例A及びBの場合、マスターバッチ(MB)を、LLDPE2.0のバッグ1940g、「B900」酸化防止剤2.0g、ステアリン酸Zn3.0g、及び以下の表11に示示すPEG試料57g中で激しく振盪することにより、2kgのバッチで調製した。実施例5及び6の場合、第1のポリ(オキシアルキレン)及び第2のポリ(オキシアルキレン)をそれぞれ、28.5g使用した。実施例4の場合、PEG54.3g、ステアリン酸Zn3g、MgO1.2g及び「B225」1.5gを使用した。実例Aの場合、PEG60gを使用し、ステアリン酸Znを使用しなかった。これらの混合物を、実験室規模の、相互係合して反対に回転する、排気しないで空冷する、前部の内径20mmを有する円錐二軸(HaakeBuchler Rheomix TW−100)に供した。この混合物を押出成形機のスロートに重力によって供給し、35〜40g/分の速度で空気に曝露した。3つのバレルゾーン(フィード、定量、混合)及びダイゾーンの押出成形機の指定温度プロファイルはそれぞれ、170℃/190℃/200℃/200℃とした。押出成形機は、第1の「コンパウンディング」パスについて、150RPMで運転した。第2のパスは、同じ温度プロファイルであったが、原料をフラッド供給しながら、90RPMで運転した。原料を4分間、「パージ」したものを、各パスの最初に廃棄した。
【0134】
ホスト樹脂としてLLDPE0.9を使用し、溶融損傷性能を評価した。実施例8〜11は、Reifenhauser Kiefel(Sankt Augustin,Germany)製のインフレーションフィルムラインを使用して、40mm、24/1の溝付フィード押出成形機により作製した。ダイは、直径40mm及びダイギャップ0.9mm(36ミル)のらせん状設計であった。
【0135】
「溶融損傷がなくなる時間」評価は、210℃(410°F)、0.9mm(36ミル)のギャップ、14L/D、10.5kg/h(23lb/h)及び220/sで、ホスト樹脂中、300ppmの目標レベルまでMBを希釈することにより行った。300ppmで運転して1時間後、このレベルを次の時間毎に300ppmずつ、1200ppmまで上昇させた。圧力を10分毎に記録し、フィルムの試料を収集した。これらのフィルムは、溶融損傷があるかについて検査し、溶融損傷の最後のバンドの消失に相当する時間、又は溶融損傷がなくなる時間を記録した(TTC)。一部の場合、溶融損傷がなくなるのに必要な時間は、試験の時間枠を超えて延びた。したがって、比較できるよう、これらのデータを累積Gaussianを使用してあてはめ、50%の溶融損傷(半減時間T1/2)に到達する時間を報告した。T1/2値は、MFがなくなる速度の指標である。これらの結果を以下の表11に示す。
【0136】
実例C及びDの場合、それぞれ、「3M DYNAMAR POLYMER PROCESSING ADDITIVE FX−9613」60g及び「3M DYNAMAR POLYMER PROCESSING ADDITIVE FX−5911」60gをPEG及びステアリン酸Znの代わりに使用した。実例Cの場合の溶融損傷がなくなる時間は100分であり、T1/2値は、42分であった。実例Dの場合の溶融損傷がなくなる時間は140分であり、T1/2値は、64分であった。
【0137】
【表12】
【0138】
本開示の様々な修正及び変更が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者により行うことができ、特許請求されている本発明は、本明細書において説明されている例示的な実施形態に過度に限定されるものではないことを理解すべきである。
【国際調査報告】