特表2017-538844(P2017-538844A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特表2017-538844繊維基材に(メタ)アクリル混合物を含浸させるための方法、前記(メタ)アクリル混合物の成分、及び前記(メタ)アクリル混合物の重合後に生成される複合材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538844(P2017-538844A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】繊維基材に(メタ)アクリル混合物を含浸させるための方法、前記(メタ)アクリル混合物の成分、及び前記(メタ)アクリル混合物の重合後に生成される複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20171201BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C08J5/04CEY
   C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-533432(P2017-533432)
(86)(22)【出願日】2015年12月22日
(85)【翻訳文提出日】2017年8月16日
(86)【国際出願番号】FR2015053711
(87)【国際公開番号】WO2016102884
(87)【国際公開日】20160630
(31)【優先権主張番号】1463058
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ, ジル
(72)【発明者】
【氏名】タイユミット, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ラファージュ, メラニー
【テーマコード(参考)】
4F072
4J011
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB02
4F072AB08
4F072AD09
4F072AE02
4F072AK15
4F072AL02
4F072AL11
4J011AA01
4J011PA69
4J011PB04
4J011PB22
4J011PC02
(57)【要約】
繊維基材に(メタ)アクリル混合物を含浸させるための方法、前記(メタ)アクリル混合物の成分、及び前記(メタ)アクリル混合物の重合後に生成される複合材料本発明は、主にメタクリル成分及び/又はアクリル成分を含む液体(メタ)アクリル混合物による長繊維から成る繊維基材に含浸させるための方法に関する。本発明はまた、(メタ)アクリルシロップ及びラジカル開始剤の水性分散体を含む、そのような(メタ)アクリル混合物及びその成分に関する。本発明はまた、繊維基材に(メタ)アクリル混合物を含浸させ、次いで前記(メタ)アクリル混合物を重合させることにより、複合材料から作られた機械部品又は構造化要素若しくは物品を製造するための方法、及びまた前記製造方法により得られ、自動車産業、航空宇宙産業、又は他の建造物などの種々の分野で使用されるそのような部品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材に含浸させるための方法であって、
少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルシロップと、
(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための、有機過酸化物から成る少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体であって、前記少なくとも1つのラジカル開始剤は、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまで、より有利には3.5μmから13μmまで、及び更により有利には3.5μmから12μmまでであるような粒径を有している、水性分散体と
を含む液体(メタ)アクリル混合物を前記繊維性基材に含浸させる工程を含むこと特徴とする方法。
【請求項2】
繊維基材に含浸させる工程が密閉型の中で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の含浸方法。
【請求項3】
ラジカル開始剤が、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール及びアゾ化合物から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の含浸方法。
【請求項4】
ラジカル開始剤が過酸化ベンゾイル(BPO)から成ることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項5】
(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物に対するラジカル開始剤の含有量が、100重量ppmから50000重量ppmまで、好ましくは200重量ppmから40000重量ppmまで、及び有利には300重量ppmから30000重量ppmまでであることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項6】
水性分散体の中のラジカル開始剤の重量パーセントが、30%から80%まで、好ましくは35%から70%まで、及び更により好ましくは35%から60%までであることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項7】
(メタ)アクリル混合物の中のラジカル開始剤の重量パーセントが、5%未満、好ましくは3%未満、及び更により好ましくは2.5%未満であることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項8】
ラジカル開始剤の水性分散体が、50mPasから1000mPasまで、好ましくは100mPasから750mPasまで、及び更により好ましくは200mPasから500mPasまでの20℃における粘度を有していることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項9】
(メタ)アクリルポリマーが、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー若しくはメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー又はこれらの混合物のうちの1つであることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項10】
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーが、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、有利には少なくとも重量90%、及びより有利には少なくとも95重量%のメチルメタクリレート(MMA)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の含浸方法。
【請求項11】
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーが、80重量%から99.7重量%まで、有利には90重量%から99.7重量%まで、及びより有利には90重量%から99.5重量%までのメチルメタクリレートと、0.3重量%から20重量%まで、有利には0.3重量%から10重量%まで、及びより有利には0.5重量%から10重量%までの、メチルメタクリレートと共重合可能である少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーとを含むことを特徴とする、請求項9に記載の含浸方法。
【請求項12】
液体(メタ)アクリル混合物の中の(メタ)アクリルポリマーが、全液体(メタ)アクリル混合物の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、有利には少なくとも18重量%、及びより有利には少なくとも20重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1から11の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項13】
液体(メタ)アクリル混合物の中の(メタ)アクリルポリマーが、全液体(メタ)アクリル混合物の最大で60重量%、好ましくは最大で50重量%、有利には最大で40重量%、及びより有利には最大で35重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1から12の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項14】
(メタ)アクリル混合物が活性剤も含むことを特徴とする、請求項1から13の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項15】
活性剤が、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン(DHEPT)などの第3級アミン、有機化合物に可溶な遷移金属触媒、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の含浸方法。
【請求項16】
液体(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマーに対する活性剤の含有量が、100(重量)ppmから10000(重量)ppm、好ましくは200重量ppmから7000重量ppm、及び有利には300重量ppmから4000重量ppmであることを特徴とする、請求項14又は15に記載の含浸方法。
【請求項17】
(メタ)アクリル混合物が、95重量%から99重量%まで、好ましくは96重量%から98.5重量%まで、及び更により好ましくは97重量%から98重量%までの(メタ)アクリルシロップと、1重量%から5重量%まで、好ましくは1.5重量%から4重量%まで、及び更により好ましくは2重量%から3重量%までの水性分散体とを含むことを特徴とする、請求項1から16の何れか一項に記載の含浸方法。
【請求項18】
請求項1から17の何れか一項に記載の繊維基材に含浸させるための方法を実施するための液体(メタ)アクリル混合物であって、
少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルシロップと、
(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための、有機過酸化物から成る少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体であって、前記少なくとも1つのラジカル開始剤が、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまで、より有利には3.5μmから13μmまで、及び更により有利には3.5μmから12μmまでとなるような粒径を有している、水性分散体と
を含むことを特徴とする液体(メタ)アクリル混合物。
【請求項19】
機械部品又は構造化された要素若しくは物品を製造するための方法であって、以下の工程
a)請求項1から17の何れか一項に記載の繊維基材に請求項18に記載の液体(メタ)アクリル混合物を含浸させる工程と、
b)前記繊維基材に含浸させる液体(メタ)アクリル混合物を重合させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
工程a)の前に、(メタ)アクリルモノマーの重合を開始するために、少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルシロップを有機過酸化物から成る少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体と混合することによって、液体(メタ)アクリル混合物を形成する工程であって、前記少なくとも1つのラジカル開始剤は、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまでであるような粒径を有している、形成する工程もまた含むことを特徴とする、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
工程a)の繊維基材への含浸が、密閉型で実施されることを特徴とする、請求項19又は20に記載の製造方法。
【請求項22】
工程a)及び工程b)が同一の密閉型の中で実施されることを特徴とする、請求項19から21の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
方法が樹脂トランスファー成形及び注入から選択されることを特徴とする、請求項19から22の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項19から23の何れか一項に記載の製造方法を介して得られた複合材料から作られた機械部品又は構造部品。
【請求項25】
自動車の部品、船舶の部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機又はヘリコプターの部品、宇宙船又はロケットの部品、太陽電池モジュールの部品、風力タービンの部品、家具用の部品、建設又は建築用の部品、電話又は携帯電話の部品、コンピュータ又はテレビの部品、プリンター又はコピー機の部品である、請求項24に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維基材に含浸させるための方法、前記含浸方法を実行するためのポリマー系液体樹脂組成物、及び前記含浸方法を実行することによって得られる含浸基材に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、メタクリル成分又はアクリル成分に基づく粘性液体混合物による繊維基材含浸のための工業的方法に関する。このような方法によって、特に、航空宇宙産業、自動車産業、又は鉄道輸送又は建設などの様々な分野で使用される3次元部品、例えば、機械部品又は機械部品の集合体が取得可能になる。
【背景技術】
【0003】
上記のような幾つかの部品、又は部品の幾つかの集合体は、高い機械的負荷又は機械力の影響にさらされることがある。したがって、このような部品は、複合材料から非常に幅広く製造される。
【0004】
複合材料は、少なくとも2つの非混和性成分の集合体である。このような集合体によって、相乗効果が得られ、得られた複合材料は、特に、最初の成分の各々が複合材料を有していないか、又は有してはいるが少ない程度である、機械特性的及び/又は熱的特性を有している。
【0005】
更に、複合材料は、前記複合材料に良好な機械的特性、特に複合材料が経験する機械的な力に対する良好な耐性、を付与する、少なくとも1つの強化材料と、連続相を形成し、前記複合材料の凝集を確実にするマトリックス材料から成る。業界で使用されている様々なタイプの複合材料の中で、有機マトリックスを含む複合材料が、最も代表的である。有機マトリックスを含む複合材料の場合、マトリックス材料は、一般にポリマーである。このポリマーは、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのいずれかであってもよい。
【0006】
複合材料は、マトリックス材料と強化材料とを混合することによって、又は強化材料にマトリックス材料を湿潤又は含浸させ、次いで得られた系を重合することによって調製される。マトリックスと強化材とを混合する場合、前記強化材は、砂利、砂又はガラスビーズのような強化充填材から成り得る。強化材にマトリックスを湿潤又は含浸させる場合、前記強化材は、様々な寸法の繊維から成り得る。
【0007】
ポリマーマトリックスは、一般に、強化材料を含浸させるポリマーマトリックスを重合させるために重合開始剤を含む。この重合開始剤は、しばしば固体形態であり、したがって、沈降することによってポリマーマトリックス中に固体の堆積物を形成するという欠点を有する。よって、マトリックスは不均一性が高く、ゆえに、不均一な媒体中で生じると、良好な機械的性質を有する複合材料を得ることができなくなる。更に、固体形態の開始剤は、複合材料を合成するために使用される射出成形機の供給ラインの障害を引き起こし、それによって射出成形機の閉塞、又は破損につながることさえある。
【0008】
第1の解決策は、アセトン、エタノール又はその他フタル酸のような溶媒に開始剤を溶解させることにあるが、これによりコストが上昇し、有機触媒の存在は、そのような複合材料製造のための方法には望ましくない。さらに、開始剤を溶解させるのに必要な溶媒の量は、一般に非常に高く、機械の(メタ)アクリルシロップ/開始剤系の比と不適合である。これは、特に(メタ)アクリルシロップ/(メタ)アクリルシロップと開始剤系の比の合計が5%以下でなければならない過酸化ベンゾイル(BPO)の場合である。
【0009】
別の解決策は、液体開始剤を使用することである。しかしながら、そのような複合材料を製造するための方法で使用される反応の反応速度は、重合促進剤の存在にもかかわらず、固体開始剤を使用する場合より著しく遅い。液体開始剤の中では、液体過酸物が一般的に使用される。液体過酸物などの液体開始剤の使用に固有のもう1つの欠点は、促進剤が2つの成分のいずれにおいても安定しないので、液体開始剤は、第1の成分が(メタ)アクリルシロップであり、第2の成分が開始剤系である2成分系では使用できないことである。
【0010】
文献US 5,162,280には、芳香族ジアシルペルオキシドの水性分散体の製造が記載されており、前記芳香族ジアシルペルオキシドは重合開始剤である。この水性分散体は、芳香族ジアシルペルオキシドに加えて、アルキレングリコールと、それぞれケイ酸アルミニウムマグネシウムと水溶性セルロースエーテルとから成る2つの懸濁剤からなる希釈剤を含む。したがって、この文献は、液状の芳香族ジアシルペルオキシド型の開始剤を含む分散体を提案している。しかしながら、この文献は、ポリマーベースの複合材料を製造するためのそのような懸濁液の使用を記載していない。
【0011】
文献WO2010/112534は、粒子が1μmから10μmまでのメジアン径D50を有する、35重量%から45重量%の固体ジアシルペルオキシドを含む水性分散体を記載している。水性分散体はまた、0.05%から1%の分散体、及び1%未満の量の有機溶剤を含む。
【0012】
文献WO2014/135816は、繊維基材に、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルモノマー、及び(メタ)アクリルモノマー中の膨潤度が200%未満であり、平均直径D50が50μm未満である粒子から選択された充填剤を含浸する方法を記載している。シロップは、開始剤の添加によって重合されるが、そのわずかに湿った粉末形態の過酸化ベンゾイルのみが記載されている。この開始剤は、固体であり、BPO粉末の形態であり、有機過酸化物、特にBPOの水性分散体ではない。
【0013】
文献US 5,300,600は、通常20℃に近い温度では固体である、芳香族過酸化物の水性分散体の製造を記載しており、前記芳香族過酸化物は、重合開始剤である。この水性分散体はまた、芳香族過酸化物に加えて、ポリエーテルアルコール及び酸化フェノール樹脂からなる分散体も含む。しかしながら、この文献は、ポリマーベースの複合材料を製造するためのそのような懸濁液の使用を記載していない。更に、水性分散体中に通常固体の開始剤が存在する中で分散体を使用することにより、液体組成物を得ることができるようになるが、組成物中の開始剤粒子のサイズは、一般に、これらの粒子が、複合材料の製造にしばしば必要とされる射出成形機の供給ラインをなおも遮断する可能性があるようなものである。更に、このタイプの液体組成物は、一般に非常に安定しておらず、特に、前記液体組成物を用いる方法の再現性の欠如を招く可能性がある。文献WO2014013028を参照することもでき、その含浸方法は上記のものと同様の欠点を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、ポリマー複合材料をベースとする部品又は部品の集合体を製造する方法を提案することにより、従来技術の欠点を克服することであり、これは、そのような機械のいかなる詰まり又は誤動作も引き起こさずに、ポリマー複合材料に基づく前記部品又は前記部品の集合体の成形のために一般的に使用される機械で実行され得る。本発明の別の目的は、(メタ)アクリルシロップと、有機過酸化物からなるラジカル開始剤の水性分散体とを含む(メタ)アクリル混合物を繊維基材に含浸させるための方法であって、前記混合物は、このような機械のいかなる詰まり又は誤動作を引き起こさずに、ポリマー複合材料に基づく前記部品及び/又は前記部品の集合体の成形に一般的に使用され得る。本発明の別の目的は、良好な機械的性質も有する、この方法によって得られた部品を提案することである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
そのため、本発明の1つの主題は、優先的に長繊維から成る繊維基材に含浸させるための方法であって、主に、少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルシロップと、(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための、有機過酸化物から成る少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体であって、前記少なくとも1つのラジカル開始剤が、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、更により好ましくは3.5μmから20μmまで、有利には3.5μmから15μmまで、より有利には3.5μmから13μmまで、及び更により有利には3.5μmから12μmまでとなるような粒径を有している、水性分散体とを含む液体(メタ)アクリル混合物を繊維基材に含浸させる工程を含ことを特徴とする方法である。
【0016】
含浸方法の他のオプションの特徴によれば、繊維基材に含浸させる工程が密閉型の中で実行され、ラジカル開始剤が、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール及びアゾ化合物から選択され、ラジカル開始剤が過酸化ベンゾイル(BPO)から成り、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物に対するラジカル開始剤の含有量が、100重量ppmから50000重量ppmまで、好ましくは200重量ppmから40000重量ppmまで、及び有利には300重量ppmから30000重量ppmまでであり、水性分散体の中のラジカル開始剤の重量パーセントが、30%から80%まで、好ましくは35%から70%まで、及び更により好ましくは35%から60%までであり、
(メタ)アクリル混合物の中のラジカル開始剤の重量パーセントが、5%未満、好ましくは3%未満、及び更により好ましくは2.5%未満であり、(メタ)アクリル混合物の中のラジカル開始剤の重量パーセントが、0.2%より大きく、好ましくは0.4%より大きく、及び更により好ましくは0.5%より大きく、ラジカル開始剤の水性分散体が、20℃で、50mPasから1000mPasまで、好ましくは100mPasから750mPasまで、及び更により好ましくは200mPasから500mPasまでの粘度を有しており、
ラジカル開始剤は、体積による粒子の直径D10が、20μm未満、好ましくは15μm未満、更により好ましくは10μm未満となるような粒径を有しており、
ラジカル開始剤の水性分散体が、好ましくは乳化剤を含み、
ラジカル開始剤の水性分散体が、好ましくは安定剤を含み、
液体(メタ)アクリルシロップが、10mPasから10000mPasまで、好ましくは50mPasから5000mPasまで、及び有利には100mPasから1000mPasまでの25℃で測定される動的粘度を有しており、
(メタ)アクリルポリマーが、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー若しくはメチルメタクリレート(MMA)のコポリマー又はこれらの混合物のうちの1つであり、
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーが、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、有利には少なくとも90重量%、及びより有利には少なくとも95重量%のメチルメタクリレート(MMA)を含み、
メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーが、80重量%から99.7重量%まで、有利には90重量%から99.7重量%まで、及びより有利には90重量%から99.5重量%までのメチルメタクリレートと、0.3重量%から20重量%まで、有利には0.3重量%から10重量%まで、及びより有利には0.5重量%から10重量%までの、メチルメタクリレートと共重合可能である少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーとを含み、
液体(メタ)アクリル混合物の中の(メタ)アクリルポリマーが、全液体(メタ)アクリル混合物の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、有利には少なくとも18重量%、及びより有利には少なくとも20重量%の量で存在し、
液体(メタ)アクリル混合物の中の(メタ)アクリルポリマーが、全液体(メタ)アクリル混合物の最大で60重量%、好ましくは最大で50重量%、有利には最大で40重量%、及びより有利には最大で35重量%の量で存在し、
(メタ)アクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレートモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びこれらの混合物から選択され、アルキル基が、直鎖状、分岐状又は環状であり、1から22の炭素原子、好ましくは1から12の炭素原子を含有し、
(メタ)アクリルモノマーが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n‐ブチル、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びイソボロニルメタクリレート、並びにこれらの混合物から選択され、
(メタ)アクリルモノマーが、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びアクリル酸、並びにこれらの混合物から選択され、
50重量%の一又は複数の(メタ)アクリルモノマーがメチルメタクリレートであり、
(メタ)アクリルシロップはまた、耐衝撃性改良剤若しくはブロックコポリマー、熱安定性、UV安定剤、難燃剤、潤滑剤、離型剤、染料、又はこれらの混合物などの、少なくとも1つの充填剤及び/又は少なくとも1つの添加剤を含み、
添加剤が、耐衝撃性改良剤若しくはブロックコポリマー、熱安定性、UV安定剤、難燃剤、潤滑剤、離型剤、染料、又はこれらの混合物から選択され、含有量が0.01重量%から50重量%までの液体(メタ)アクリル混合物の中に存在し、(メタ)アクリルシロップの動的粘度が10mPasから1000mPasまでであり、
充填剤が、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、及びシリカ(SiO)から選択され、含有量が0.01重量%から40重量%までの水性分散体の中に存在し、液体(メタ)アクリルシロップの動的粘度が10mPasから1000mPasまでであり、
(メタ)アクリル混合物はまた、(メタ)アクリルシロップの中に活性剤を含み、
活性剤が、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン(DHEPT)などの第3級アミン、有機化合物に可溶な遷移金属触媒、又はこれらの混合物から選択され、
液体(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマーに対する活性剤の含有量が、重量で100ppmから10000ppm、好ましくは重量で200ppmから7000ppm、及び有利には重量で300ppmから4000ppmであり、
(メタ)アクリル混合物が、95重量%から99重量%まで、好ましくは96重量%から98.5重量%まで、及び更により好ましくは97重量%から98重量%までの(メタ)アクリルシロップと、1重量%から5重量%まで、好ましくは1.5重量%から4重量%まで、及び更により好ましくは2重量%から3重量%までの水性分散体とを含む。
【0017】
本発明はまた、繊維基材に含浸させるための方法を実行するための液体(メタ)アクリル混合物であって、
少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルシロップと、
(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための、有機過酸化物から成る少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体であって、前記少なくとも1つのラジカル開始剤は、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまでとなるような粒径を有している、水性分散体と
を含むことを特徴とする液体(メタ)アクリル混合物に関する。
【0018】
本発明はまた、機械部品又は構造化された要素若しくは物品を製造するための方法であって、主に、以下の工程、
a)繊維基材に液体(メタ)アクリル混合物を含浸させる工程と、
b)前記繊維基材に含浸させる液体(メタ)アクリル混合物を重合させる工程と
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0019】
製造方法の他のオプションの特徴によれば、
方法はまた、工程a)の前に、(メタ)アクリルモノマーの重合を開始するために、少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルシロップを有機過酸化物から成る少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体と混合することによって、液体(メタ)アクリル混合物を調製する工程であって、前記少なくとも1つのラジカル開始剤が、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまで、より有利には3.5μmから13μmまで、及び更に有利には3.5μmから12μmまでとなるような粒径を有している、調製する工程を含み、
工程a)の繊維基材への含浸は、密閉型の中で実施され、
工程a)及び工程b)は、同一の密閉型の中で実施され、
方法が、樹脂トランスファー成形法及び注入法から選択される。
【0020】
本発明はまた、製造方法を介して得られた複合材料から作られた機械部品又は構造部品に関する。前記部品は、特に、自動車の部品、船舶の部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機又はヘリコプターの部品、宇宙船又はロケットの部品、太陽電池モジュールの部品、風力タービンの部品、家具用の部品、建設又は建築用の部品、電話又は携帯電話の部品、コンピュータ又はテレビの部品、プリンター又はコピー機の部品であり得る。
【0021】
繊維基材に含浸させるための方法
繊維基材に含浸させるための方法は、前記繊維基材に(メタ)アクリル混合物を含浸させる工程であって、混合物が、
少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマー及び少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含む液体(メタ)アクリルシロップと、
少なくとも1つのラジカル開始剤を含む水性分散体と
を含む、工程を含む。有利には、ラジカル開始剤は、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまで、より有利には3.5μmから13μmまで、及び更により有利には3.5μmから12μmまでとなるような粒径の有機過酸化物から成る。
【0022】
「(メタ)アクリル混合物」という用語は、上記のようなポリマーマトリックスに対応する。この混合物が含む「(メタ)アクリルシロップ」は、その液体及び粘性の外観により、このように称されており、また(メタ)アクリルポリマーを形成するために重合可能な少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーを含むことからプレポリマーとも呼ばれる。
【0023】
使用される「繊維基材」という用語は、細長いきれ、ラップ、組紐、房(locks)、若しくは小片の形態であり得る、織物、フェルト、又は不織布を指す。
【0024】
使用される「(メタ)アクリル」という用語は、任意の種類のアクリルモノマー及びメタクリルモノマーを指す。
【0025】
使用される「モノマー」という用語は、重合可能な分子に関する。
【0026】
使用される「重合」という用語は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーへ変換する方法に関する。
【0027】
使用される「複合材料」という用語は、少なくとも1種類の相領域が連続相であり、かつ少なくとも1つの成分がポリマーである、幾つかの種々の相領域を含む多成分の材料を指す。
【0028】
使用される「開始剤」という用語は、モノマーと反応して、高分子化合物を形成するために多数の他のモノマーとうまく結合することができる中間化合物を形成する化学種を指す。
【0029】
「D50」又は「メジアン径」は、物質の粒子の分布を等しい面積の2つの部分に分割する粒子直径を意味するとされる。体積によるメジアン径D50の場合、粒子の全体積の50%は、D50未満の直径を有する粒子の体積に対応し、粒子の総体積の50%は、D50より大きい直径を有する粒子の体積に対応する。
【0030】
「D10」は、物質の粒子の分布を10%/90%の割合で2つの部分に分割する粒径を意味するものとする。体積によるD10の場合、粒子の全体積の10%は、D10未満の直径を有する粒子の体積に対応し、粒子の総体積の90%は、D10より大きい直径を有する粒子の体積に対応する。
【0031】
(メタ)アクリルポリマー
(メタ)アクリルポリマーは、ポリメタクリル酸アルキル又はポリアクリル酸アルキルから選択され得る。好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。結果として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)が、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー若しくはMMAのコポリマー又はこれらの混合物を示すと理解すべきである。
【0032】
特に、それは、異なる分子量を有するMMAの少なくとも2つのホモポリマーの混合物、又は同一のモノマー組成及び異なる分子量を有するMMAの少なくとも2つのコポリマーの混合物、又は異なるモノマー組成を有するMMAの少なくとも2つのコポリマーの混合物であり得る。それはまた、MMAの少なくとも1つのホモポリマーとMMAの少なくとも1つのコポリマーとの混合物であってもよい。
【0033】
1つの実施態様によれば、MMAのコポリマーは、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、有利には少なくとも90重量%、及びより有利には少なくとも95重量%のメチルメタクリレートを含む。MMAのコポリマーはまた、メチルメタクリレートと共重合可能な、少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する、少なくとも1つのモノマーを0.3重量%から30重量%まで含み得る。これらのモノマーの中で、特に、アクリル酸及びメタクリル酸、並びに内部でアルキル基が1から12の炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレートが列挙され得る。例として、アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸エチル、ブチル、又は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1から4の炭素原子を有するアクリル酸アルキルである。
【0034】
好ましい実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーが、80重量%から99.7重量%まで、有利には90重量%から99.7重量%まで、及びより有利には90重量%から99.5重量%までのメチルメタクリレートと、0.3重量%から20重量%まで、有利には0.3重量%から10重量%まで、及びより有利には0.5重量%から10重量%までのメチルメタクリレートと共重合可能である少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーとを含む。好ましくは、コモノマーは、メチルアクリレート若しくはエチルアクリレート又はこれらの混合物から選択される。
【0035】
液体(メタ)アクリルシロップの中の(メタ)アクリルポリマーが、全液体(メタ)アクリルシロップの少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、有利には少なくとも18重量%、及びより有利には少なくとも20重量%の量で存在する。
【0036】
液体(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマーが、全液体(メタ)アクリルシロップの最大で60重量%、好ましくは最大で50重量%、有利には最大で40重量%、及びより有利には最大で35重量%の量で存在する。
【0037】
(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、一般に高く、その結果50000g/molを上回り、好ましくは100000g/molを上回り得る。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定され得る。
【0038】
(メタ)アクリルモノマー
(メタ)アクリルポリマーに加え、(メタ)アクリルシロップに含まれる(メタ)アクリルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びこれらの混合物から選択され得る。
【0039】
(メタ)アクリルモノマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリレートモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びこれらの混合物から選択され、アルキル基が、直鎖状、分岐状又は環状であり、1から22の炭素原子、好ましくは1から12の炭素原子を含有している。
【0040】
有利には、(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレート、並びにこれらの混合物から選択される。
【0041】
より有利には、(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びアクリル酸、並びにこれらの混合物から選択される。
【0042】
好ましい実施形態によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%の一又は複数の(メタ)アクリルモノマーは、メチルメタクリレートである。
【0043】
より好ましい実施態様によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、及び更に有利には90重量%の(メタ)アクリルモノマーが、メチルメタクリレートとイソボルニルアクリレート及び/又はアクリル酸との混合物である。
【0044】
液体(メタ)アクリルシロップ中の一又は複数の(メタ)アクリルモノマーが、全液体(メタ)アクリルシロップの少なくとも40重量%、好ましくは50重量%、有利には60重量%、及びより有利には65重量%の量で存在する。
【0045】
繊維基材
繊維基材に関しては、細長いきれ、ラップ、組紐、房(locks)、若しくは小片の形態であり得る、織物、ウェブ、フェルト、又は不織布が列挙され得る。繊維材料は、1次元、2次元、又は3次元のいずれかの種々の形態及び寸法を有し得る。繊維基材は、一又は複数の繊維の集まりを含む。繊維が連続的である場合、これらの集まりは織物を生成する。
【0046】
1次元の形態は、直鎖状繊維に対応する。繊維は、不連続であっても連続であってもよい。繊維は、ランダムに配置されても、互いに平行である連続する単繊維の形態であってもよい。繊維は、繊維の長さと直径の比である、そのアスペクト比により定義される。本発明で用いられる繊維は、長繊維又は連続する繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000及び最も有利には少なくとも5000のアスペクト比を有している。
【0047】
2次元形状は、不織補強材又は繊維マット又は繊維のロービング織物若しくは繊維束に対応し、これらは組紐で編まれてもよい。
【0048】
3次元の形態は、例えば、不織布強化材若しくは繊維マット若しくは積み重ねられるか又は折り畳まれた繊維の束、又はこれらの混合物に対応し、2次元形態の集まりが3次元内に存在する。
【0049】
繊維状材料の起源は、天然であっても合成であってもよい。列挙され得る天然材料には、植物繊維、木繊維、動物繊維又は鉱物繊維が含まれる。
【0050】
天然繊維は、例えば、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、木綿、ココナッツ繊維、及びバナナ繊維である。動物繊維は、例えば、羊毛又は毛髪である。
【0051】
列挙され得る合成の材料は、熱硬化性ポリマーの繊維、熱可塑性ポリマーの繊維、又はこれらの混合物から選択されたポリマーの繊維を含む。
【0052】
ポリマーの繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、及びビニルエステルから成り得る。
【0053】
鉱物繊維はまた、特にタイプE、R、又はS2であるガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、又はケイ素繊維から選択され得る。
【0054】
本発明の繊維基材は、植物繊維、木繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、及びこれらの混合物から選択される。好ましくは、繊維基材は、鉱物繊維から選ばれる。
【0055】
水性分散体
(メタ)アクリル混合物は、(メタ)アクリルポリマーに加え、(メタ)アクリルシロップに含まれる(メタ)アクリルモノマーの重合を開始するための少なくとも1つの開始剤を含む水性分散体を含む。
【0056】
開始剤が反応して重合を開始するので、重合を開始するための少なくとも1つの開始剤を含む水性分散体は、充填剤ではない。
【0057】
例えば、熱活性開始剤又は開始系が列挙され得る。熱活性開始剤は、好ましくはラジカル開始剤である。前記ラジカル開始剤は、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール及びアゾ化合物から選択され得る。
【0058】
開始剤は、好ましくは、炭酸イソプロピル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化カプロイル、過酸化ジクミル、tert−ブチル 過安息香酸塩、tert−ブチル ペル(2−エチルヘキサン酸)、クメンヒドロペルオキシド、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチル ペルオキシイソ酪酸、tert−ブチル ペルアセテート,tert−ブチル ペルピバレート、アミルペルピバレート、tert−ブチル ペルオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)酸から選択される。上記リストから選択されるラジカル開始剤の混合物を使用することは、本発明の範囲から逸脱しないだろう。
【0059】
開始剤は、好ましくは、2から20の炭素原子を含む過酸化水素から選択される。より好ましくは、開始剤は、過酸化ベンゾイル(BPO)である。
【0060】
液体(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物に対するラジカル開始剤の含有量が、100重量ppmから50000重量ppmまで(50000重量ppm=5重量%)、好ましくは200重量ppmから40000重量ppmまで、及び有利には300重量ppmから30000重量ppmまでである。
【0061】
水性分散体は、有利には、30%から80%まで、好ましくは35%から70%まで、及び更により好ましくは35%から60%までのラジカル開始剤を含む。有機過酸化物の含有量が高いこのような水性分散体により、(メタ)アクリル混合物の最適かつ完全な重合が可能になる。
【0062】
水性分散体は、有利には、0.01%から10%まで、好ましくは0.05%から7%まで、及び更により好ましくは0.1%から5%までの界面活性剤を含む。
【0063】
水性分散体は、有利には、0.01%から10%まで、好ましくは0.05%から7%まで、及び更により好ましくは0.1%から5%までの安定剤を含む。
【0064】
本発明の1つの実施形態によれば、(メタ)アクリルシロップ及びラジカル開始剤の分散体を含む(メタ)アクリル混合物の中のラジカル開始剤の重量パーセントは、5%未満、好ましくは3%未満、及び更により好ましくは2.5%未満である。
【0065】
ラジカル開始剤の水性分散体の粘度は、50mPasから1000mPasまで、好ましくは100mPasから750mPasまで、及び更により好ましくは200mPasから500mPasまでであり、前記粘度は、20℃かつ50rpmで測定される。粘度は、レオメーターまた又は粘度計、例えばBrookfield DVIIのようなBrookfield型粘度計で測定され得る。
【0066】
更に、水性分散体の開始剤の粒径は、体積による粒子のメジアン径(D50)が、1μmから30μmまで、好ましくは2μmから25μmまで、及び更により好ましくは3.5μmから20μmまで、並びに有利には3.5μmから15μmまで、より有利には3.5μmから13μmまで、及び更により有利には3.5μmから12μmまでとなるようなものである。
【0067】
このような粒径により、水中の開始剤が均質に分散可能となり、それにより、水性分散体及び(メタ)アクリルシロップを含む混合物による繊維基材への含浸が促進される。分散体の均質性により、(メタ)アクリルシロップによる繊維基材への含浸後の(メタ)アクリルシロップの最適かつ完全な重合が可能になる。
【0068】
本発明によるそのような重合は、一般的に100000g/molより大きい、好ましくは500000g/molより大きい、及び更により好ましくは1000000g/molより大きい高分子量につながる。そのような分子量の値により、非常に良好な機械的特性を有する複合材料を得ることが可能である。
【0069】
このような粒径によりまた、開始剤が、水性分散体中と、(メタ)アクリルシロップと前記水性分散体との混合後に得られる(メタ)アクリル系混合物中とに完全に溶解するように、ラジカル開始剤の安定した水性分散体を得ることが可能になる。
【0070】
本発明による水性分散体は、(メタ)アクリルシロップと混合されて(メタ)アクリル混合物が形成される前に、本発明による繊維基材に含浸させるための方法及び/又は複合材料から作られた機械部品又は構造要素若しくは物品を製造するための方法を実行するために使用される、射出成形機の供給ラインを遮断することはなく、また射出成形機の前記供給ラインを遮断する可能性もない。
【0071】
更に、本発明による水性分散体を(メタ)アクリルシロップと混合して(メタ)アクリル混合物が形成された後に、前記(メタ)アクリル混合物は、本発明による繊維基材に含浸させるための方法及び/又は複合材料から作られた機械部品又は構造要素若しくは物品を製造するための方法を実行するために使用される、射出成形機の射出ラインを遮断することはなく、また射出成形機の前記射出ラインを遮断する可能性もない。
【0072】
本発明によるラジカル開始剤のそのような水性分散体の1つの利点は、均質な(メタ)アクリル混合物を形成するように、(メタ)アクリルシロップ中に良好に溶解することである。従って、ラジカル開始剤の水性分散体を(メタ)アクリルシロップと混合するためにスタティックミキサーを使用することが可能である。もちろん、このような混合物の製造に適した他のタイプのミキサー、例えば機械的ミキサー又は回転容器ミキサーを使用することも可能である。
【0073】
本発明によるラジカル開始剤のそのような水性分散体の別の利点は、(メタ)アクリル混合物の均質な重合を可能にすることである。特に、重合は、繊維基材に含浸させるための方法及び/又は複合材料から作られた機械部品を製造するための方法に使用される型の体積全体にわたって均質であり、したがって、本文献に記載されたものとは異なる製造方法により得られた複合材料から作られた部品と比べて欠陥数が少ない標準部品の形成につながる。
【0074】
(メタ)アクリルモノマー又は前述の(メタ)アクリルモノマーの混合物は、前記(メタ)アクリルモノマーが自発的に重合するのを防止するために、適切な阻害物質によってオプションで実現されてもよい。そのような阻害物質は、(メタ)アクリルシロップに包含されてもよい。適切な阻害物質の中で、特にヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(MEHQ)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Topanol O)及び2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール(Topanol A)が列挙され得る。
【0075】
(メタ)アクリル混合物はまた、重合の活性化剤を含有してもよく、前記活性化剤は、(メタ)アクリルシロップ中に包含可能である。
【0076】
重合活性剤又は促進剤が、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン(DHEPT)などの第3級アミン、有機化合物に可溶な遷移金属触媒、又はこれらの混合物から選択される。
【0077】
有利には、液体(メタ)アクリルシロップは、任意の金属系触媒を含有しない。
【0078】
液体(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマーに対する活性剤の含有量は、重量で100ppmから10000ppm、好ましくは200ppmから7000ppm、及び有利には重量で300ppmから4000ppmである。
【0079】
活性剤又は促進剤の存在は、最終的な用途次第で決まる。低温硬化重合が必要であるか所望される場合、一般に促進剤が必要とされる。低温硬化重合は、重合が室温で、又は一般に40℃未満の温度で行われることを意味する。それにもかかわらず、工業的用途では、40℃を超える温度で熱重合を行うことが可能である。
【0080】
(メタ)アクリル混合物はまた、形成されたポリマーの分子量を調節するために、鎖リミッタを含み得る。これは、例えば、γ−テルピネン又はテルピノレンであり得る。制限剤の含有量は、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマーの混合物に対して、一般に0ppmから500ppmまで、好ましくは0ppmから100ppmまでである。
【0081】
(メタ)アクリル混合物はまた、他の添加剤及び充填剤を含み得る。充填剤は、本発明の文脈において添加剤であるとは考えられていない。そのような充填剤及び添加剤は、(メタ)アクリルシロップに包含され得る。さらに、含浸前に、添加剤及び/又は充填剤を(メタ)アクリル混合物に添加してもよい。
【0082】
添加剤としては、耐衝撃性改良剤又はブロックコポリマーなどの有機添加剤、熱安定剤、UV安定剤、潤滑剤及びこれらの混合物が列挙され得る。
【0083】
耐衝撃性改良剤は、エラストマーコアと少なくとも1つの熱可塑性シェルとを含む微粒子の形態であり、粒径は、一般に1μm未満であり、有利には50μmから300μmまでである。耐衝撃性改良剤は、乳化重合により調製される。液体(メタ)アクリルシロップ中の耐衝撃性改良剤の含有量は、0重量%から50重量%、好ましくは0重量%から25重量%、有利には0重量%から20重量%である。
【0084】
添加剤は、好ましくは、耐衝撃性改良剤又はブロックコポリマー、熱安定剤、UV安定剤、難燃剤、潤滑剤、離型剤、染料、又はこれらの混合物から選択される。
【0085】
添加剤は、含有量が0.01重量%から50重量%までの(メタ)アクリル混合物中に存在し、(メタ)アクリルシロップの動的粘度が、20℃で10mPasから1000mPasまでである。
【0086】
充填剤として、カーボンナノチューブ、又は鉱物ナノフィラー(TiO、シリカ)を含む鉱物充填剤が列挙され得る。
【0087】
充填剤は、好ましくは、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、及びシリカ(SiO)から選択され得る。
【0088】
充填剤は、含有量が0.01重量%から40重量%までの水性分散体の中に存在し、液体(メタ)アクリル混合物の動的粘度が、20℃で10mPasから1000mPasまでである。
【0089】
更に、有利には、(メタ)アクリル混合物は、95重量%から99重量%まで、好ましくは96重量%から98.5重量%まで、及び更により好ましくは97重量%から98重量%までの(メタ)アクリルシロップと、1重量%から5重量%まで、好ましくは1.5重量%から4重量%まで、及び更により好ましくは2重量%から3重量%までの水性分散体とを含む。
【0090】
機械部品又は構造化された要素若しくは物品を製造するための方法
方法は、以下の工程、
a)繊維基材に液体(メタ)アクリル混合物を含浸させる工程と、
b)前記繊維基材に含浸させる液体(メタ)アクリル混合物を重合させる工程と
を含む。
【0091】
工程a)の繊維基材への含浸は、好ましくは、密閉型の中で実施される。有利には、工程a)及び工程b)は、同一の密閉型の中で実施される。
【0092】
複合材料に基づく機械部品又は構造化要素若しくは物品は、異なる方法に従って得られ得る。注入、真空バッグ成形、加圧バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R−RIM)及びその変形、プレス成形又は圧縮成形が列挙され得る。
【0093】
複合材料に基づき機械部品又は構造要素若しくは物品を製造するための好ましい製造方法は、型の中で、好ましくは密閉型の中で、繊維基材に含浸させることにより、液体(メタ)アクリル混合物が前記繊維基材に移される方法である。
【0094】
有利には、製造方法は、樹脂トランスファー成形及び注入から選択される。
【0095】
すべての方法は、型内での重合工程の前に、繊維基材に液体(メタ)アクリル混合物を含浸させる工程を含む。前記繊維基材に含浸させる液体(メタ)アクリル混合物の重合工程は、同じ型内での含浸工程の後に行われる。
【0096】
樹脂トランスファー成形は、複合材料の2つの表面を形成する両面型セットを使用する方法である。下側は、硬質型である。上側は、硬質又はフレキシブルな型である。フレキシブルな型は、複合材料、シリコーン、又はナイロンなどのような押出成形されたポリマーフィルムから製造することができる。2つの面は、型の空洞を形成するために組み合わせる。樹脂トランスファー成形の際立った特徴は、繊維基体がこの空洞の中に入れられること、及び液体(メタ)アクリルシロップの導入前に、型のセットが密閉されることである。樹脂トランスファー成形法は、液体状(メタ)アクリルシロップが型の空洞中で繊維基材に導入される機構に違いがある多数の変形例を含む。これらの変形例は、真空注入法から真空補助樹脂トランスファー成形法(VARTM)までの全てを含む。この方法は、室温又は高温で実施され得る。
【0097】
注入方法により、液体(メタ)アクリルシロップは、ポリマー複合材料を調製するためのこの方法について適切な粘度を有していなければならない。わずかな真空の適用によって、特別な型の中に存在する繊維基材の中に、液体(メタ)アクリルシロップが注入される。繊維基材が注入され、液体(メタ)アクリルシロップが完全に含浸される。
【0098】
本方法の1つの利点は、複合材料中の多量の繊維材料である。
【0099】
繊維基材への含浸方法及び/又は複合材料から作られる部品の製造方法を実施するために、射出成形機、(メタ)アクリルシロップが供給される第1の入口、及びラジカル開始剤の分散体が供給される第2の入口が使用可能となる。次いで、シロップ及び分散体がミキサーに運ばれ、それらがミキサーで混合されて実質的に均質な(メタ)アクリル混合物が得られ、次いで繊維基材が予め堆積した型に注入される。前記繊維基材に(メタ)アクリル混合物が含浸され、次いで得られた系の重合により、複合材料からなる部品を形成することができる。
【0100】
出口流速、すなわち、(メタ)アクリル混合物の型への注入の流速は、好ましくは4kg/分未満、好ましくは3.4kg/分未満である。
【0101】
製造される機械部品又は構造要素若しくは物品の使用に関して、自動車の用途、船の用途、鉄道の用途、スポーツ、航空宇宙産業の用途、光起電の用途、コンピュータに関連する用途、電気通信の用途、並びに風力発電の用途が列挙され得る。
【0102】
機械部品は、殊に自動車の部品、船舶の部品、列車の部品、スポーツ用品、飛行機若しくはヘリコプターの部品、宇宙船又はロケットの部品、太陽電池モジュールの部品、風力タービンの部品、家具用の部品、建設若しくは建築用の部品、電話若しくは携帯電話の部品、コンピュータ又はテレビの部品、又はプリンター若しくはコピー機の部品である。
【実施例】
【0103】
BS520型のコポリマー(PMMA−ポリエチルアクリレート)25重量部を、HQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化したメチルメタクリレート75重量部、及びN,N−ヒドロキシエチル−p−トルイジン(DHEPT)0.5重量部中で溶解させることによって、(メタ)アクリルシロップが調製される。このように得られた(メタ)アクリルシロップは、成分Aと称される。
【0104】
過酸化ベンゾイル(BPO)の3つの異なる配合物が調製され、BPOは、成分Bと称される。BPO1、BPO2及びBPO3により示される異なる配合物が、以下の表Iに示されている。これらの配合物の粘度は、50rpm及び20℃でブルックフィールド型粘度計によって測定される。BPOの分散体又は懸濁液の粒径および直径D50は、Sympatec GmbHのHELOS SUCELL装置を用いたレーザー回折によって測定される。BPOの異なる配合物は、Arkemaにより、商品名Luperox(登録商標)ANS50G、Luperox(登録商標)A40FP−EZ9、及びPerkadox(登録商標)L−40RPSとして販売されている。
【0105】
上記のメタクリルシロップ(成分A)及びBPOの異なる配合物(成分B)は、Magnum Venus Products、Kent(WA)によって製造されたPatriot(登録商標)プロ熱可塑性樹脂射出システム射出成形機を用いて、RTM法による成形に使用され得る。これは、7barの最大圧縮空気圧で作動する空気圧式機械で、成分毎の再循環ループと洗浄システムを備えている。出口流速は、3.4kg毎分に及ぶ可能性があり、成分Aに対する成分Bの体積比率は、1.0%から4.5%までである。
【0106】
(メタ)アクリルシロップ及び上記配合物の1つを含む液体(メタ)アクリル混合物を、繊維基材としてガラス布を含む密閉型に注入し、25℃で40分から50分間重合させる。
配合物BPO1では、2部だけしか製造することができなかった。その後、機械が詰まった。メインフィルターと注入ラインが詰まっていた。
配合物BPO2では、数日間にわたって30部の範囲が生産され、機械に介入する必要はなかった。
配合物BPO3では、数分の動作の後に機械のフィルタが詰まってしまい、再び始動する前に機械を停止し、完全に清掃しなければならなかった。
【国際調査報告】