(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-538920(P2017-538920A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】血漿免疫標識物−VEGFR1自己抗体の検出に用いる抗原ポリペプチド及び応用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20171201BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20171201BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/543 545A
C07K14/475ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-522419(P2017-522419)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月19日
(86)【国際出願番号】CN2015086348
(87)【国際公開番号】WO2016070662
(87)【国際公開日】20160512
(31)【優先権主張番号】201410615968.5
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517140446
【氏名又は名称】青島海▲蘭▼深生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】尉 ▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲偉▼力
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
本出願はVEGFR1抗原ポリペプチドを提供し、それはH−DEGVYHCKATNQKGSVESSAYLTVQGTSDKSNLE−OH、H−DLKLSCTVNKFLYRDVTWILLRTVNNRTMHYSI−OH及びH−ESGLSDVSRPSFCHSSCGHVSEGKRRFTYDHAEL−OHの3つの抗原ポリペプチド、並びに血漿免疫標識物−VEGFR1自己抗体の検出に用いる応用を含む。さらに、本出願に記載のVEGFR1抗原ポリペプチドを用いて血漿免疫標識物−VEGFR1自己抗体を検出する方法、及び前記VEGFR1抗原ポリペプチドを含んだ検出キットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFR1自己抗体の検出に用いる組成物であって、それは次の3つの抗原ポリペプチドを含む:
H−DEGVYHCKATNQKGSVESSAYLTVQGTSDKSNLE−OH;
H−DLKLSCTVNKFLYRDVTWILLRTVNNRTMHYSI−OH;
H−ESGLSDVSRPSFCHSSCGHVSEGKRRFTYDHAEL−OH。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、その特徴は、組成物における各抗原ポリペプチドの比率は1:1:1であることにある。
【請求項3】
個体におけるVEGFR1自己抗体を検出する方法であって、それは以下のことを含む:請求項1に記載の3つの抗原ポリペプチドを等比率で混合し、次いでマレイミド(Maleimide)で活性化される96ウエルプレートをコーティングし、4℃で一晩インビトロ培養し、プレートを洗浄し、次いで複数回に分けてサンプルを添加して分析を行う。
【請求項4】
請求項4に記載の方法であって、それにおいて、複数回に分けてサンプルを添加して分析するプロセスは以下のことを含む:検出される血漿サンプルをダブルウェル設置し、また2つの陰性対照ウェルと2つの陽性対照ウェルを設置し、分析液を用いて血漿を希釈し、またペルオキシダーゼ標識のヒツジ抗ヒトIgGを希釈し、プレートを洗浄し、ウェルごとに100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及びペルオキシダーゼからなる混合液を添加し、室温避光20〜30分とし、ウェルごとに反応停止液の10%硫酸溶液(10%H2SO4)を50μl添加し、次いでマイクロプレートリーダーを用いて光学濃度値(OD値)を検出し、検出波長は450nmであり、参照波長は630nmである。
【請求項5】
VEGFR1自己抗体の検出における請求項1又は2に記載の組成物の応用。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の組成物で生産される検出キットのセットであって、その特徴は、3つの抗原ポリペプチドを医療用非金属包装材で真空個別包装した後に、1例ずつ取って検出キットのセットに組み合わせて使用に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫学の技術分野に属し、VEGFR1抗原ポリペプチドに関する。該抗原ポリペプチドを用いてヒト血漿中のVEGFR1抗体レベルの検出に用いる特異試薬を調製することができる。
【背景技術】
【0002】
近年の研究では、健康者集団の血液中の腫瘍関連抗体の発見と測定は標的療法を指導する価値があることが分かる。例えば、臨床にて広く応用されているトラスツズマブ(Trastuzumab)及びベバシズマブ(Bevacizumab)は上皮成長因子受容体2型(HER2)と血管内皮細胞増殖因子A(VEGF−A)を標的とするものであり、臨床では末期腫瘍の治療における重要な手段となっている。しかし、副作用が大きすぎるため、この2つのモノクローナル抗体は第三選択薬としてしか用いることができない。したがって、腫瘍に対する局所治療後の移転と再発の防止に用いることができ、且つ副作用が小さい新規な手段の開発は現在、早急に解決しなければならない問題である。免疫治療の分野においてこの難題の解決方法を探す際に、新規な腫瘍の免疫治療方法を得るには、新規性のある、標的技術に関する実用的な解決手段を見つけなければならないという技術的問題に直面している。
【0003】
VEGFR1は血管内皮細胞増殖因子受容体1型とも呼ばれ、がん細胞の発現における特異的タンパク質の一つとして知られている。研究を重ねたところ、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、腸がん及び乳がんなど多くのヒト固形腫瘍では、VEGFR1を大量発現できることが判明した。VEGFR1エピトープのポリペプチドは主に腫瘍細胞の表面にあり、直接、対応する抗体による腫瘍の殺傷における標的とすることができるため、学界では、臨床におけるVEGFR1関連抗体の応用は、最も早く実現化できる、副作用が小さい新規な抗がん治療手段となる可能性が極めて高いとしている。現在、バイオ技術分野における方法は、組換タンパク質を抗原とするVEGFR1関連抗体の検出とスクリーニングのみであり、それにおいてキャリアの構築、トランスフェクション、発現、スクリーニング、精製など複雑なプロセスを経なければならない。しかし、タンパク質立体構造は複雑であり、線形エピトープを露出させにくく、そのため組換タンパク質で検出される抗体は特異性に劣り、腫瘍細胞膜の表面における抗原標的と結合できないものは非常に多くあり、したがって、低レベルの定性的検出しか行うことができない。これに基づき腫瘍を予防治療するための実用的手段を得ることができない。また、ELISA法における高感度によりタンパク質精製技術の安定性が強く求められており、そのため検出要件に適合する組換タンパク質はコストが高くなる。国内外では、VEGFR1関連抗体の検出とスクリーニングの効果的な手段に関する報告はまだなかった。
【0004】
本発明は線形VEGFR1エピトープのポリペプチドを的確に設計し、上記技術的難題を効果的に解決し、特異性に優れる検出試薬を調製することができる。設定したプロセス基準に基づいて健康献血者の血漿における免疫標識物−VEGFR1抗体の濃度指標値を検出することにより、正確で、操作しやすく、コストが適切なVEGFR1抗体の検出、選別、定性的・定量的応用に対する一括解決手段を得ることができる。したがって、本発明の技術は健康な人体における天然VEGFR1抗体を利用して新規で、副作用が小さい腫瘍の免疫的治療方法を開発するために、確固たる基礎を作ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はVEGFR1自己抗体の検出に用いる線形抗原ポリペプチドを提供し、それによりVEGFR自己抗体の検出に用いる特異試薬を調製することを目的とし、また、対応する好ましい操作プロセスを設計する。本発明は3つのVEGFR1線形抗原ポリペプチドを設計し、それらのアミノ酸配列は表1に示されるとおりである。
【0006】
【表1】
【0007】
周知のように、抗原と抗体の結合はエピトープと抗体結合部位との間にのみ発生し、両者は立体構造と立体配置において完全な相補的関係にあるほど、抗原と抗体の結合が安定的になり、特異性と結合の効率が高くなる。ターゲットの抗体及びその結合部位の構造は最も重要な要素であるため、エピトープのみによってタンパク質抗原全体と抗体との結合状態及び親和性を決めることができる。
【0008】
そのため、本発明はVEGFR1タンパク質の生物学的特性に基づき、複数のエピトープについて免疫情報学的予測とシミュレーションを行い、抗原性に関連する各パラメータを分析することで、立体構造と立体配置においてターゲットの抗体と完全な相補的関係にある上記3つの線形ポリペプチド抗原のアミノ酸配列を設計する。
【0009】
大量の研究資料により、VEFGR1は腫瘍関連抗原であり、多くの固形腫瘍において発現されることを証明できる。したがって、VEFGR1抗体は天然の抗腫瘍抗体とすることができる。人体にて免疫的モニタリングの機能を果たして腫瘍の形成と進行を防止する。本発明の技術はこの天然の抗腫瘍抗体に対する定量的検出という空白を埋め、血漿・バイオ製品会社による新製品の開発及び臨床における腫瘍の予防・治療のための新しい手段の開発のために、重要な道具を提供する。例えば、血漿・バイオ製品会社は本発明の技術を利用して血漿をスクリーニングし、それによりVEFGR1抗体を多く含んでいるガンマグロブリンを調製し、臨床における腫瘍の予防と治療に用いることができる;臨床では早期腫瘍患者に対する局所治療の後に(手術又は放射線治療の後など)、本発明の技術でのスクリーニングにより得られるVEFGR1抗体を多く含んでいる血漿を直接注入ことで、免疫的モニタリング機能を高め、腫瘍の再発と移転を予防することもできる。これは本発明の技術の応用上の価値である。
【0010】
表1に示される3つの抗原ポリペプチドはELISA法による血漿VEFGR1自己抗体の検出において高濃度の製品を使用しなければならず、純度95%以上の製品が好ましい。次に、本分野にて通用する「サンドイッチ法比較検証モード」を用いて技術的検証を行って本発明での実現可能な技術的効果を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は表1に示される3つの抗原ポリペプチドで血漿免疫標識物−VEFGR1自己抗体を検出する方法を提供し、それは次のステップを含む:
1、操作する前に、各抗原ポリペプチドを65%〜70%の酢酸で5mg/mlの貯蔵液に溶解し、次いで等体積で混合して−20℃(誤差は2℃以内)の冷蔵庫に入れて保存する;
2、操作する際に、まず表1に示される3つの抗原ポリペプチドの等比混合液を被覆液で10〜50マイクログラム/mlに希釈し、該被覆液は塩化ナトリウム0.15MとEDTA10Mを含んだリン酸塩緩衝液0.1Mであり、pHは7.0〜7.4である;
3、次いでマレイミド(Maleimide)で活性化される96ウエルプレート(Thermo Scientific、アメリカ)をコーティングし、4℃で一晩インビトロ培養した後に、洗浄液でプレートを3回洗浄し、前記洗浄液は0.15Mの塩化ナトリウムと0.1%TWEEN−20を含んだリン酸塩緩衝液0.1Mであり、pHは7.0〜7.4である;
4、次いで複数回に分けてサンプルを添加し、次のとおり分析を行う:
a、検出される血漿サンプルをダブルウェル設置し、他に2つの陰性対照ウェル(NC、参照物は血漿VEFGR1抗体を含まない陰性対照液であり、それによりVEFGR1自己抗体を含まない陰性環境における表1に記載の本発明の3つの抗原ポリペプチドの指標値を得ることができ、目的は、本発明の組成物はVEFGR1自己抗体を含まない場合に、陽性結果を示さないことを証明することである)及び2つの陽性対照ウェル(PC、参照物はVEFGR1抗体標準品を含んだ陽性対照液であり、それによりVEFGR1抗体標準品の基準含有量レベルの場合の、表1に記載の本発明の3つの抗原ポリペプチドの指標値を得ることができ、目的は本発明の組成物はVEFGR1自己抗体を含んだ環境において陽性結果を示せることを証明し、さらに基準値として検出される血漿サンプルの指標値の比較に用いることである)を設置する;
b、分析液を用いて検出対象の血漿サンプルを1:200で希釈し、前記分析液は抗原コーティング液と同じであり、即ち塩化ナトリウム0.15MとEDTA10mMを含んだリン酸塩緩衝液0.1Mであり、pHは7.0〜7.4であり、ウェルごとに100μl添加し、25℃で1−2時間インビトロ培養し、次いでプレートを3回洗浄する;
c、前記分析液を用いて上記bステップ(塩化ナトリウム0.15MとEDTA10mMを含んだリン酸塩緩衝液0.1M、pHは7.0〜7.4)に従って操作した後に、ペルオキシダーゼ標識のヒツジ抗ヒトIgG(血漿中の検出対象物質は特異性抗体であるか否かを検出するために使用する)を希釈し、抗体の機能保証範囲は1:10000〜1:50000であり、ウェルごとに100μl添加し、25℃で1−2時間インビトロ培養する;
d、前記洗浄液(0.15Mの塩化ナトリウムと0.1%のTWEEN−20を含んだリン酸塩緩衝液0.1M、pHは7.0〜7.4)を用いてプレートを3回洗浄した後に、ウェルごとに100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及びペルオキシダーゼからなる混合液を添加し、室温避光20〜30分とする;
e、ウェルごとに反応停止液の10%硫酸溶液(10%H
2SO
4 )を50μl添加し、次いでマイクロプレートリーダーを用いて光学濃度値(OD値)を検出し、検出波長は450nmであり、参照波長は630nmである。検出プロセスは反応停止液添加後の10分以内に終了させなければならない。これに基づき個体の血漿VEGFR1自己抗体レベルを定量的に分析することができる。
5、母集団からの無作為抽出を行う際に、各個体の検出データについて分析して、サンプル陽性率(Positive sample ratio、PSR)で血漿中のVEGFR1自己抗体の相対的レベルを確定することができる。PSRの算出方法は次のとおりである:PSR=[VEGFR1 OD値−NC OD値]/[PC OD値−NC OD値]。次いで正規化四分法(Q−Q)を用いてグラフを作成する。
【0012】
表1に記載の3つ抗原ポリペプチドは実際に応用する際に、便利な検出キットのセットに生産することができる。非金属材料で真空密封包装することが可能であり、4℃の環境において6か月以上保存することができる。そのため、本出願は表1に記載の3つの抗原ポリペプチドを含んだ検出キットをさらに提供する。要するに、3つの抗原ポリペプチドからなる混合液でコーティングする、マレイミド(Maleimide)で活性化される96ウエルプレートを45℃のオーブンにて乾燥させた後、非金属の包装材で真空密封包装し、各試薬を1例ずつ取って便利な検出キットのセットに組み合わせる。好ましくは、3つの抗原ポリペプチドはいずれも純度95%以上の製品である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】血漿VEGFR1抗体濃度の四分位数の分布図である。図中において、横軸はPSR値で示される血漿VEGFR1抗体濃度であり、縦軸は血漿VEGFR1抗体濃度の四分位数の分布範囲であり、零点に対応するPSR値は中位数である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施例
1.サンプルの収集:健常成人121例(男性65例、女性56例)の血漿サンプルを収集する。前記血漿サンプルの提供者はいずれも臨床健診にていかなる腫瘍もかからないと確定した個体である。操作する前にすべての血漿サンプルをともに−80℃の条件下で保存し、確認したところ、保存期間は2年を超えておらず、繰り返し凍結融解された血漿サンプルがなかった(凍結融解回数は3回以下)ことが判明した。
【0015】
2.サンプルの検出:4℃の環境下で血漿サンプルを解凍し、本実験にて使用する表1に記載の3つの抗原ポリペプチドはイギリスのSEVERN BIOTECH,Limitedにより合成され、純度は95%である。具体的には次のステップを行う:
(1)操作する前に、各抗原ポリペプチドを67%の酢酸で5.7mg/mlの貯蔵液に溶解し、次いで等体積で混合して−20℃の冷蔵庫に入れて保存する;
(2)操作する際に、まず3つの抗原ポリペプチドの混合液を被覆液で28.5マイクログラム/mlに希釈し、該被覆液は塩化ナトリウム0.15MとEDTA10Mを含んだリン酸塩緩衝液0.1Mであり、測定したところ、pHは7.2である;
(3)次いでマレイミド(Maleimide)で活性化される96ウエルプレート(Thermo Scientific、アメリカ)をコーティングし、4℃で一晩16.5時間インビトロ培養した後に、洗浄液でプレートを3回洗浄し、前記洗浄液は0.15Mの塩化ナトリウムと0.1%TWEEN−20を含んだリン酸塩緩衝液0.1Mであり、測定したところ、pHは7.3である;
(4)次いで複数回に分けてサンプルを添加し、次のとおり分析を行う:
a、検出される血漿サンプルをダブルウェル設置し、他に2つの陰性対照ウェル(NC、参照物はSigma−Aldrich社の提供するVEFGR1抗体を含まないヒト血漿陰性対照液)及び2つの陽性対照ウェル(PC、参照物は同じく、Sigma−Aldrich社の提供するヒト血漿VEFGR1抗体標準品の陽性対照液)を設置する;
b、分析液を用いて血漿を1:200で希釈し、前記分析液は抗原コーティング液と同じであり、塩化ナトリウム0.15MとEDTA10mMを含んだリン酸塩緩衝液0.1Mであり、測定したところ、pHは7.2である。ウェルごとに100μl添加し、25℃で1.5時間インビトロ培養する;
c、前記洗浄液(0.15Mの塩化ナトリウムと0.1%TWEEN−20を含んだリン酸塩緩衝液0.1M、測定したところ、pHは7.2)を用いてプレートを3回洗浄した後に、分析液を用いてペルオキシダーゼ標識のヒツジ抗ヒトIgG(Sigma−Aldrich社提供)を希釈し、抗体の機能保証範囲は1:285000であり、ウェルごとに100μl添加し、25℃で1.5時間インビトロ培養する;
d、前記洗浄液(0.15Mの塩化ナトリウムと0.1%のTWEEN−20を含んだリン酸塩緩衝液0.1M、測定したところ、pHは7.2程度)を用いてプレートを3回洗浄した後に、ウェルごとに100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)及びペルオキシダーゼからなる混合液(Life Technologies社提供)を添加し、室温避光25分とする;
e、ウェルごとに反応停止液の10%硫酸溶液(10%H
2SO
4 )を50μl添加し、次いでマイクロプレートリーダーを用いて光学濃度値(OD値)を検出し、検出波長は450nmであり、参照波長は630nmである。反応停止液添加後の10分以内に検出を終了させる。
【0016】
3.結果の分析:次に実験結果に基づき、実験対象の集団にについてVEGFR1自己抗体の分布をさらに比較分析する。前記検出にて得られるデータに基づいて分析を行う際、サンプル陽性率(Positive sample ratio、PSR)で血漿中のVEGFR1自己抗体レベルを確定する。PSRの算出式は次のとおりである:PSR=[VEGFR1 OD値−NC OD値]/[PC OD値−NC OD値]。さらに正規化四分法(Q−Q)を用いて下図を作成する。図中において、横軸はPSR値で示される血漿VEGFR1抗体濃度であり、縦軸は血漿VEGFR1抗体濃度の四分位数の分布範囲であり、零点に対応するPSR値は中位数である。
【0017】
図1に示されるように、血漿VEGFR1抗体濃度の中位数はPSR=1.53、変動係数S=1.65、尖度係数K=4.63であり、統計学的に顕著な有意である(w=0.89、p<0.0001)。正規分布近似曲線における右向きの反曲点の最大値を閾値(cut−off=3.8)とし、即ち健常成人121例の血漿サンプルのうち、VEGFR1を多く含んでいるのは8例であり、本実施例では該閾値以上と検出される人数の割合は6.6%である。本実施例から、無作為抽出する健常成人集団の血漿VEGFR1抗体の含有量は歪んだ分布を示し、そのうち、8例の血漿サンプルは臨床的応用価値が大きな、天然VEGFR1自己抗体を多く含んだ貴重な血液源である。
【0018】
本実施例において、並行陰性対比試験により本発明にて結果の誤報告がなかったことを証明でき、上図の横軸はSigma−Aldrich社の提供するヒト血漿VEGFR1抗体標準品の陽性対照液を参照物とする個体ごとの血漿サンプルPSRの算出値を示し、またこれに基づいてマークして上図を得る。分かりやすさのために、VEGFR1自己抗体濃度(PSR値)を4つの区間に分布させることもでき、下表においては、本実施例における各抗体濃度区間に入っている人数の割合を示している。
【0020】
上記具体的な実施例において、国際的な大手生化学試薬会社Sigma−Aldrichの提供するヒト血漿VEFGR1抗体陰性対照液と陽性標準品対照液を使用し、サンドイッチ法比較試験の結果により、本発明にて設計する3つ線形抗原ポリペプチドは血漿中のVEFGR1自己抗体と特異的結合することができ、即ち3つの線形抗原ポリペプチドのアミノ酸配列は立体構造と立体配置においてVEFGR1抗体タンパク質と有効な相補的関係にあり、それにより異なる個体の血漿VEFGR1自己抗体レベルを定量的に測定することができる。それにより、実用的な血漿VEFGR1自己抗体の検出手段を得ることができる。また、本発明にて3つの線形抗原ポリペプチドを設計する際に使用する合成手段はシンプルでかつコストが適切であるため、臨床における天然VEFGR1自己抗体大量含有の血漿による腫瘍治療の応用を実現化するために理論的・実践的基礎を作る。
【国際調査報告】