(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-501166(P2018-501166A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(54)【発明の名称】乗客輸送装置または輸送ユニットの輸送を監視するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20171215BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20171215BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
B66B7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-525568(P2017-525568)
(86)(22)【出願日】2015年11月3日
(85)【翻訳文提出日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2015075622
(87)【国際公開番号】WO2016074997
(87)【国際公開日】20160519
(31)【優先権主張番号】14192843.2
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マタイスル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス,エステバン
(72)【発明者】
【氏名】ノバツェク,トーマス
【テーマコード(参考)】
3F305
3F321
【Fターム(参考)】
3F305DA14
3F321HA00
(57)【要約】
乗客輸送装置(4)の輸送ユニット(3、3’、3’’)の輸送を監視するために、輸送監視モジュール(2)が輸送ユニット(3、3’、3’’)上に配置される。輸送監視モジュール(2)は、センサ(5)および位置特定装置(6、7)を有する。輸送中に、インターフェースユニット(9)を介して、装置(4)のデータメモリ(17)との接続が形成される。インターフェースユニット(9)は、センサ(5)のセンサデータおよび位置特定装置(6、7)の位置特定データに基づく記憶すべき輸送監視データが装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶可能であるように具現化される。このことにより、輸送監視モジュール(2)の実施形態は単純化され、盗難に値するアイテムではなくなる。さらに、輸送終了後に、記憶されている輸送監視データへの確実なアクセスが保証される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ、動く歩道、またはエレベータとして具現化される乗客輸送装置(4)を有し、乗客輸送装置(4)の発送地から目的地までの輸送中に乗客輸送装置(4)または乗客輸送装置(4)の一部としての輸送ユニット(3、3’、3’’)上に配置可能であり、輸送後に取り外し可能であり、少なくとも1つのセンサ(5)を有する少なくとも1つの輸送監視モジュール(2)をさらに有するシステム(1)であって、輸送監視モジュール(2)は、少なくとも乗客輸送装置(4)および/または輸送ユニット(3、3’、3’’)の輸送中に、輸送監視モジュール(2)と乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)との接続を確立することができるインターフェースユニット(9)を有し、インターフェースユニット(9)は、少なくとも部分的に少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータに基づく記憶すべき輸送監視データが乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶することができるように具現化され、データメモリ(17)が、乗客輸送装置(4)内に恒久的に配置されたまま残ることを特徴とする、システム(1)。
【請求項2】
インターフェースユニット(9)は、解除可能な接続部(19、20)を介して、インターフェースユニット(9)を少なくとも間接的に乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)と接続可能にする接続要素(19)を有する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
インターフェースユニット(9)は、プラグ着脱可能な接続(19、20)を使用して、乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)と物理的に接続可能である、請求項1または2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサ(5)および/またはインターフェースユニット(9)および/または少なくとも1つのさらなる装置(6、7、16)に電気エネルギーを供給するエネルギー蓄積器(8)が配設される、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
空間的位置特定に関する位置特定データを生成する空間的位置特定装置(6)、および/または相対的および/または絶対的な時間的位置特定に関する位置特定データを生成する時間的位置特定装置(7)が配設され、記憶すべき輸送監視データは、少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータ、およびセンサデータに割り当てられる空間的位置特定装置(6)の空間的位置特定データおよび/または時間的位置特定装置(7)の時間的位置特定データに基づいている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサ(5)は、3軸加速度センサ(5)として具現化される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
乗客輸送装置(4)は、データメモリ(17)を含む制御装置(16)を有し、少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータの記録、輸送監視モジュール(2)のインターフェースユニット(9)を介したセンサデータの制御装置(16)への伝送、センサデータの輸送監視データへの変換、および輸送監視データのデータメモリ(17)への記憶は、制御装置(16)によって制御可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの位置特定装置(5、6)の存在下で、その位置特定データは、輸送監視モジュール(2)のインターフェースユニット(9)を介して制御装置(16)によって呼び出し可能であり、位置特定データは、制御装置(16)によってセンサデータに割り当て可能である、請求項7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
輸送監視データは、制御装置(16)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶される、請求項8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
乗客輸送装置(4)または乗客輸送装置(4)の一部としての少なくとも1つの輸送ユニット(3、3’、3’’)の発送地から目的地までの輸送を監視する方法であって、乗客輸送装置(4)は、エスカレータ、動く歩道、またはエレベータとして具現化され、輸送ユニット(3、3’、3’’)および/または乗客輸送装置(4)上に少なくとも1つの輸送監視モジュール(2)を配置することによって、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム(1)が形成され、少なくとも輸送中に、輸送監視モジュール(2)のインターフェースユニット(9)を介して輸送監視モジュール(2)と乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)との接続が形成され、輸送監視モジュール(2)の少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータに少なくとも部分的に基づく記憶すべき輸送監視データは、乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶され、データメモリ(17)が乗客輸送装置(4)内に恒久的に配置されたまま残って以降、センサデータは、乗客輸送装置(4)に恒久的にリンクされる、方法。
【請求項11】
輸送後に、乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)内に記憶されている輸送監視データが読み出され、読み出された輸送監視データに依存して、乗客輸送装置(4)またはその輸送ユニットの返送、または修理資材の要求、または乗客輸送装置(4)の設置が推奨可能であるかどうかが決定され、出力される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
輸送後に、輸送監視モジュール(2)が取り外され、輸送監視モジュール(2)が取り外された後、輸送監視データが乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶された状態で残り、少なくとも乗客輸送装置(4)の故障および/または乗客輸送装置(4)の保守サービスの場合には、少なくとも要求に応じて行われるデータメモリ(17)からの輸送監視データの出力が行われる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
取り外された輸送監視モジュール(2)は、さらなる乗客輸送装置(4)、または乗客輸送装置(4)の一部としてのさらなる輸送ユニットに輸送され、その後、さらなる乗客輸送装置(4)および/または輸送ユニット(3、3’、3’’)の輸送を監視するために、さらなる乗客輸送装置(4)および/または輸送ユニット(3、3’、3’’)上に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
乗客輸送装置(4)の輸送および設置の後に、輸送監視モジュール(2)は乗客輸送装置(4)内に残り、その後、乗客輸送装置(4)に作用する危険振動の記録を行う、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客輸送装置または乗客輸送装置の一部としての輸送ユニットの輸送を監視する働きをする輸送監視モジュールを有するシステム、および乗客輸送装置または輸送ユニットの輸送を監視する方法に関する。特に、本発明は、一体となって輸送される、もしくは、1つまたは複数の輸送ユニットに分解される乗客輸送装置の輸送監視の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
DE19832341A1から、輸送物品の加速度値を記録するための方法および装置が周知である。上記特許明細書から、比較的長い輸送ルートを複数のセクション、例えば、道路、空、海、および鉄道のセクションに分割することにより、後で、輸送物品の想定される損傷が発生した時点またはセクションの識別が困難になり、不十分になることが分かっている。また、慎重を要する輸送物品の場合、場合によっては、後で、すぐに外部から検出することができない大きな損傷が生じる可能性がある。動的影響によって生じる欠陥の影響は、配達されてから数カ月後になってようやく検出される場合がある。周知の解決策は、3つの空間軸上の加速度値を記録し、センサによって測定された値は、電子的に処理され、記録された加速度値の総計が所定の限界値を超えた場合に格納される。時間的に後で再構成するために、リアルタイムクロックからの時間情報の項目が、格納されている各々の値と共に、または規則的な間隔で格納される。
【0003】
DE19832341A1から周知である装置および周知の方法は、監視のための装置が精巧に具現化され、それに応じてコスト高になってしまうという欠点を有する。特に、データ処理および格納のために、マイクロコントローラが配設される。さらに、操作要素および表示要素がマイクロコントローラに接続される。装置の価値は、輸送中にその装置を盗むインセンティブがあることを示している。さらに、例えば、複数の輸送セクションにわたって、一般に、複数の当事者が関与する輸送中に、輸送上の損傷をもたらす可能性のある外的影響がある場合に、その装置を盗む、さらには格納データを操作するインセンティブがある。さらなる問題は、通常は、さらなる輸送に使用するために輸送後に取り除かれている衝撃を記録するための装置に起因する。例えば、配達してから数カ月後にようやく欠陥が発生した場合に、それでもそのことを証明するために、それに対応した精巧でシームレスな輸送データのセキュリティが必要であり、データは読み出されて、例えば、輸送物品の製造業者または所有者のデータベースで集中的に格納されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第19,832,341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改善された構造および/または改善された機能方法を有する輸送監視モジュールを含むシステムおよび輸送を監視するための方法を作成することである。特に、本発明の目的は、輸送監視モジュールの安価な実施形態、および/またはデータ取り込みならびに/もしくはデータ記憶の信頼性の向上、および/またはデータ取り込みならびに/もしくはデータ記憶の簡略化を可能にする輸送監視モジュールを含むシステム、および輸送を監視する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、乗客輸送装置と少なくとも1つの輸送監視モジュールとを有するシステムによって実現され、輸送監視モジュールは、少なくとも乗客輸送装置の発送地から目的地までの輸送中に、乗客輸送装置上に配置可能である。発送地は、例えば、乗客輸送装置が製造された製造場所または製造施設とすることができる。さらに、発送地は、乗客輸送装置が一時的に保管される保管場所とすることもできる。製造施設へ返送される場合、発送地は、論理的に、乗客輸送装置が組み立てられた場所となる。目的地は、一時的な店舗、乗客輸送装置の今後のオペレータの建造物、または、上述したように、返品される場合は、製造施設とすることができる。乗客輸送装置は、エスカレータ、動く歩道、またはエレベータとして具現化される。より簡単な輸送にするために、大型または長い乗客輸送装置が、2つ以上の部品、いわゆる輸送ユニットに分割される場合もある。その結果、輸送監視モジュールを、乗客輸送装置の一部である輸送ユニットに割り当てることもできる。
【0007】
輸送監視モジュールは、少なくとも1つのセンサを有する。さらに、輸送監視モジュールは、少なくとも乗客輸送装置または輸送ユニットの輸送中に、輸送監視モジュールと乗客輸送装置のデータメモリとの接続を形成することができるインターフェースユニットを有する。インターフェースユニットは、少なくとも1つのセンサのセンサデータに少なくとも部分的に基づいた記憶すべき輸送監視データが乗客輸送装置のデータメモリに恒久的に記憶されるように具現化される。データメモリは、乗客輸送装置内に恒久的に残るように配置される。センサデータは、特に、加速度データ、温度データ、空気湿度データなどとすることができる。
【0008】
輸送ユニットおよび/または乗客輸送装置は本発明の輸送監視モジュールの構成要素ではないが、輸送段階で少なくとも一時的に、輸送監視モジュールと一緒になってシステムを形成する。複数の輸送ユニットに分割された乗客輸送装置の輸送を監視するために、1つまたは複数の輸送監視モジュールがその機能を果たすことができる。必要に応じて、輸送監視モジュールは、乗客輸送装置の1つの輸送ユニットのみに配置されてもよい。例えば、データメモリを含む乗客輸送装置の制御装置は1つの輸送ユニットに含まれてよいが、乗客輸送システムの他の輸送ユニットはそのようなデータメモリを含まない。最も慎重を要する輸送ユニットは、通常、制御装置を有するものであるので、輸送監視モジュールをこの輸送ユニット内に配置して、輸送監視モジュールを制御装置のデータメモリと接続することにより、最も慎重を要する輸送ユニットを特に有利な形で監視することができる。他の輸送ユニットは、通常、最も慎重を要する輸送ユニットと同じ輸送手段を使用して、例えば、容器内で輸送され、それに応じて、同じ輸送ストレスを受ける。
【0009】
したがって、輸送監視モジュールは、有利には、輸送される乗客輸送装置とは別に準備されてよい。輸送後、輸送監視モジュールは、取り外されて、さらなる輸送に使用されてよい。その際、輸送監視モジュールによって記録されたセンサデータは、輸送中にすでに乗客輸送装置のデータメモリに輸送監視データとして書き込まれるので、データバックアップは不要である。この方法により、エラーの原因も除外される。特に、輸送監視データをデータメモリに恒久的に書き込むことができるので、輸送後の迅速なデータバックアップの必要性がなくなる。
【0010】
さらなる利点は、乗客輸送装置の故障、検査、または保守サービスの場合に、恒久的に記憶された輸送監視データを保守サービス技術者に表示できるということである。したがって、輸送監視データは、さらに費用をかけずに、乗客輸送装置のある場所で保守サービス技術者が直接利用することができる。この方法により、保守サービス技術者は、容易に、故障などの評価のために輸送監視データを参照することができるようになる。したがって、例えば、輸送中の過去のある時点における外見上即座に識別できない影響によって生じる欠陥の識別は、実質的に簡単になり、おそらくは、その時に初めて実用的に可能になる。
【0011】
さらなる利点は、乗客輸送装置のデータメモリにおいて、恒久的に記憶されている元の輸送監視データが利用可能であるということである。このことにより、伝送エラー、コピーエラー、それぞれの乗客輸送装置へのデータ割り当てのエラー、および同様のエラー、またはエラーの原因が回避される。特に、記憶されている輸送監視データの操作が妨げられる、または完全に防止される。例えば、輸送中に、必要に応じて、輸送監視モジュールの設置が可能であり、その後、アクセス可能になる。しかしながら、乗客輸送装置のデータメモリを、実質的にアクセス不可能な形で乗客輸送装置に組み込むことができる。したがって、少なくとも輸送中に、データメモリの不正な物理的または電気的アクセスを実質的に排除することができる。
【0012】
システムの乗客輸送装置は、エスカレータ、動く歩道、またはエレベータシステムである。エスカレータまたは動く歩道は、通常は製造施設内で完全に組み立てられ、その後、その長さに応じて、一体として、または複数のエスカレータモジュールまたは動く歩道モジュールに分割された状態で、梱包され、世界中に発送される。本明細書では、発送できる状態のエスカレータモジュールまたは動く歩道モジュール、およびエレベータシステムのエレベータ構成要素を含むクレートを「輸送ユニット」と呼ぶ。輸送ルートに沿って、例えば、吹き飛ばし、落下、または転倒により、梱包された輸送ユニットまたは一体として梱包された乗客輸送システムに輸送中の損傷が発生する可能性がある。
【0013】
輸送中の損傷が発生した場合、記録された輸送監視データの分析によって、例えば、損傷の発生時点を決定することができる。したがって、損傷を引き起こした荷送人および/またはその賠償責任保険は、責任を問われる可能性がある。損傷に関して特に重要なのは、駆動部、エスカレータ制御装置、または動く歩道制御装置のような構成要素と、通常は全てが同じエスカレータセクションまたは動く歩道セクションに配置されるスイッチング要素である。エレベータシステムの場合、例えば、それは、関連するかご制御装置およびモータ制御装置を含む輸送ユニットである。このように、特に、エスカレータ、動く歩道、およびエレベータ構成要素の輸送の有利な監視が可能になる。
【0014】
輸送監視モジュールは、記憶ユニットまたはコンピュータユニットを含む必要がないので、輸送監視モジュールは安価で具現化することができ、したがって、泥棒にとって魅力的でなくなる。したがって、センサデータまたは輸送監視データの取り込みおよび記憶のためのコンピュータプログラムは、乗客輸送装置の制御装置内に記憶され、制御装置によって実行可能である。したがって、有利には、乗客輸送装置は、データメモリを含む制御装置を有し、制御装置は、少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサによるセンサデータのデータ取り込みが実行されるように具現化される。
【0015】
少なくとも位置特定装置が輸送監視モジュール内に存在する場合、位置特定データの取り込みもまた、上述のコンピュータプログラムによって初期化され、制御装置によって制御されてよい。さらに、コンピュータプログラムは、センサデータ、場合によっては、さらに位置特定データを輸送監視モジュールのインターフェースユニットを介して乗客輸送装置の制御装置に対して伝送するプログラムステップと、その後に、輸送監視データを制御装置のデータメモリに記憶するプログラムステップとを含むことができる。
【0016】
また、輸送監視モジュールのインターフェースユニットが、解除可能なコネクタを介してインターフェースユニットを乗客輸送装置のデータメモリと少なくとも間接的に接続できるようにする接続要素を有する点も有利である。接続は、直接的または間接的に行うことができる。間接的な接続は、例えば、適切なケーブルを介して、または、例えば、Bluetooth(登録商標)のような無線接続を介しても可能である。このことにより、データメモリ、またはデータメモリを有する制御装置に対する輸送監視モジュールの柔軟な配置が可能になる。場合によっては、直接接続も有利である場合がある。そのためには、例えば、制御装置上に、輸送監視モジュールを直接接続するために、適切な接続要素および/または適切なソケットを設けることができる。この方法により、プラグ着脱可能な接続部を使用して、インターフェースユニットを乗客輸送装置のデータメモリと有利に物理的に接続することができる。
【0017】
少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサ、および/またはインターフェースユニット、および/または輸送監視モジュールの少なくとも1つのさらなる装置に電気エネルギーを供給するエネルギー蓄積器を輸送監視モジュール内に配設することも有利である。この方法により、必要ならば、輸送監視モジュールのエネルギー蓄積器は、輸送を監視するための上記コンピュータプログラムのプログラム実行を可能にするために、乗客輸送装置の制御装置にもエネルギーを供給することができる。この場合、インターフェースユニットは、データ伝送に加えて、エネルギー伝達も可能となるように具現化される。エネルギー蓄積器は、蓄電池、バッテリ、大容量のキャパシタなどとすることができる。
【0018】
さらに、空間的位置特定に関する位置特定データを生成する空間的位置特定装置を輸送監視モジュール内に配設することも有利である。このような空間的位置特定装置は、例えば、GPSのような民生用および軍事用の衛星航法システムを基盤とすることができる。追加的に、または代替案として、相対的および/または絶対的な時間的位置特定に関する位置特定データを生成する時間的位置特定装置を配設することが有利である。そのような時間的位置特定装置は、例えば、グローバル時間の受信に基づくことができる。しかしながら、相対的時間的位置特定は、グローバル時間の受信とは独立して実現可能である。記憶すべき輸送監視データを生成するために、前記可能性の適切な組み合わせも考えられる。
【0019】
このようにして、有利には、記憶すべき輸送監視データは、少なくとも1つのセンサのセンサデータおよび空間的位置特定装置の空間的位置特定データおよび/または時間的位置特定装置の時間的位置特定データに基づくことができる。前記センサは、3軸加速度センサとして具現化されてよい。例えば、2つの2軸加速度センサを使用してもよいことは自明である。
【0020】
このようにして、少なくとも1つのセンサとインターフェースユニットとを有する輸送監視モジュールを作成することができる。この輸送監視モジュールは、さらにエネルギー蓄積器を有するのが好ましい。エネルギー蓄積器がなければ、エネルギー供給は乗客輸送装置から、特に、エスカレータ制御装置、動く歩道制御装置、またはエレベータ制御装置から行われることになるからである。しかしながら、このような制御装置は、一般に、エネルギー蓄積器を全く有していないか、または適切なエネルギー蓄積器を有していない。
【0021】
輸送後に、輸送監視モジュールは、好ましくは、乗客輸送装置から、特に、乗客輸送装置の制御装置から分離される。取り外された輸送監視モジュールは、その後、さらなる使用のために製造施設に返送されてよい。データ取り込みに必要なコンピュータプログラムは、乗客輸送装置の制御装置に記憶されてよい。このようなコンピュータプログラムは、適切な方法で進行してよい。特に、利用可能なエネルギーおよびデータメモリの記憶容量が最適に利用されるプログラムプロセスを予め定義することができる。例えば、プロセスを最適化するために、休止モード(スリープモード、待機モード)および定義された閾値を超える事象発生の取り込みを実現することができる。
【0022】
したがって、輸送監視モジュール自体は、泥棒にとって非常に魅力的ではないものとして具現化することができる。なぜなら、輸送監視モジュール内に収容される部品、例えば、エネルギー蓄積器およびセンサのような部品は、盗難に値するアイテムではないからである。また、記憶されている輸送監視データも、輸送監視モジュールの取り外しによって輸送アイテム自体から容易に分離されることはない。乗客輸送システムのデータメモリ内に恒久的に記憶されているデータは、むしろ乗客輸送装置と寿命全体にわたって接続可能であり、いつでもサービス技術者によって呼び出すことができる。したがって、発送地と目的地との間の輸送中に発生した事象のかなり後になって現れる影響も正確に解釈することができる。
【0023】
乗客輸送装置または輸送ユニットの発送地から目的地または設置場所までの輸送を監視するためのシステムは、少なくとも輸送監視モジュールおよび乗客輸送装置または乗客輸送装置の輸送ユニットを常に備える。
【0024】
乗客輸送装置は、制御装置およびデータメモリを有する。乗客輸送装置が目的地に設置されると、この制御装置は、乗客輸送装置、またはエスカレータ、動く歩道、またはエレベータシステムの関連する移動プロセスを制御する機能を果たす。しかしながら、本発明によれば、この制御装置およびデータメモリは、乗客輸送装置を操作するためだけでなく、輸送データを恒久的に保管するのにも使用される。
【0025】
少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサのセンサデータの取り込み、輸送監視モジュールのインターフェースユニットを介したセンサデータの制御装置への伝送、センサデータの輸送監視データへの変換、およびデータメモリへの輸送監視データの記憶は、制御装置によって制御される。そのためには、すでに製造施設において、コンピュータプログラムを制御装置に記憶することができる。しかし、さらに、輸送監視モジュールは、安価な不揮発性メモリ、例えば、ROM、EPROM、EEPROMなどを有することも可能である。不揮発性メモリには、コンピュータプログラムが記憶され、不揮発性メモリは、輸送監視モジュールがインターフェースユニットを介して制御装置に接続されるとすぐに制御装置によって読み出しおよびロードが可能となる。エネルギー蓄積器が輸送監視モジュール内に存在する場合、ランダムアクセスメモリのような不揮発性メモリを使用してコンピュータプログラムを記憶することも可能であることは自明である。
【0026】
少なくとも1つの位置特定装置が存在する場合、その位置特定データは輸送監視モジュールのインターフェースユニットを介して制御装置によって呼び出されてもよい。その後、位置特定データは制御装置によってセンサデータに割り当てられて処理されてよい。
【0027】
位置特定装置が配設されていない場合、ストレスの大きい事象の少なくとも正確な順序を保存するために、制御装置によって受信されたセンサデータは少なくとも連続番号が付与されてよい。
【0028】
輸送監視モジュールの少なくとも1つのセンサのセンサデータに少なくとも部分的に基づく、制御装置によって処理されるデータは、輸送監視データとしてデータメモリに恒久的に記憶されてよい。
【0029】
乗客輸送装置または乗客輸送装置の一部としての輸送ユニットの発送地から目的地までの輸送を監視する方法は、以下のステップを含むことができる。
・製造施設において、本発明の輸送監視モジュールを乗客輸送装置またはその輸送ユニットに配置するステップ。
・少なくとも輸送中に、輸送監視モジュールのインターフェースユニットを介して、輸送監視モジュールと乗客輸送装置のデータメモリとの接続を確立するステップ。
・輸送監視モジュールの少なくとも1つのセンサのセンサデータに少なくとも部分的に基づく輸送監視データを、乗客輸送装置のデータメモリに恒久的に記憶し、その後、データメモリが乗客輸送装置に恒久的に配置されたまま残って以降、データメモリをいつでも利用可能にするステップ。
【0030】
この方法は、例えば、輸送後に、乗客輸送装置のデータメモリに記憶されている輸送監視データが読み出して、読み出された輸送監視データに依存して、
乗客輸送装置またはその輸送ユニットの製造施設への返送、
修理資材の要求、または
乗客輸送装置の設置
が推奨可能であるかを決定して出力する、
というさらなるステップ含むことができることは自明である。
【0031】
この方法はさらに、
輸送後に輸送監視モジュールを取り外して、輸送監視モジュールを取り外した後に、輸送監視データを乗客輸送装置のデータメモリに恒久的に記憶された状態で残すステップ、および
少なくとも乗客輸送装置の故障および/または乗客輸送装置の検査もしくは保守サービスの場合に、少なくとも要求に応じて行われるデータメモリからの輸送監視データの出力を行うステップ
を含むことができる。
【0032】
取り外された輸送監視モジュールは、その後、さらなる乗客輸送装置、または乗客輸送装置の一部としてさらなる輸送装置に輸送され、その後、そのさらなる乗客輸送装置および/または輸送ユニット上に配置されて、さらなる乗客輸送装置および/または輸送ユニットの輸送を監視することができる。
【0033】
しかし、輸送監視モジュールは、乗客輸送装置の輸送後および設置後に乗客輸送装置に残り、その後、乗客輸送装置に作用する危険振動を記録する役割を果たす可能性もある。問題のない運転を損なう危険振動は、乗客輸送装置が地震地域に設置され運転される場合、例えば、地震振動である可能性がある。しかし、危険振動は、乗客輸送装置の設置および/または保守サービスの間でも起こり得る。さらに、危険振動は、例えば、乗客輸送装置のエレベータかご内の破壊者が飛び跳ねた場合および/または揺らした場合に、乗客輸送装置の使用者によって引き起こされてもよい。
【0034】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、添付の図面でより詳細に説明されており、同一の要素は同一の番号で参照される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の可能な実施形態に係る、輸送監視モジュールと乗客輸送装置の輸送ユニットとを含むシステムを示した図である。
【
図2】本発明の第1の例示的な実施形態に係る、輸送監視モジュールと、エスカレータとして具現化された乗客輸送装置の輸送ユニットとを含むシステムの部分図である。
【
図3】本発明の第2の例示的な実施形態に係る、輸送監視モジュールと、動く歩道として具現化された乗客輸送装置の輸送ユニットとを含むシステムの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の可能な実施形態に係る、輸送監視モジュール2と、乗客輸送装置4の輸送ユニット3(
図2および
図3)とを含むシステム1を示した図である。乗客輸送装置4は、エスカレータ4、動く歩道4、またはエレベータ4として具現化されてよい。
【0037】
輸送監視モジュール2は、少なくとも1つのセンサ5を有する。この例示的な実施形態では、センサ5は、3軸加速度センサ5として具現化される。代替的または追加的に、例えば、温度センサおよび/または湿度センサのような他のセンサタイプも、輸送監視モジュール2の一部を形成することができる。さらに、輸送監視モジュール2は、空間的位置特定装置6および時間的位置特定装置7を含む。さらに、電気エネルギーを蓄積し、例えば、バッテリ8、蓄電池8、またはキャパシタ8として具現化することができるエネルギー蓄積器8が配設される。さらに、センサ5、位置特定装置6、7、およびエネルギー蓄積器8と電気的に接続される輸送監視モジュール2のインターフェースユニット9が配設される。センサ5、位置特定装置6、7、エネルギー蓄積器8、およびインターフェースユニット9は、輸送監視モジュール2の共通のハウジング10内に配置されてよい。
【0038】
この例示的な実施形態では、複数の独立した導体および/またはストランドを有することができるコネクタケーブル15が配設される。輸送ユニット3は、データメモリ17を有する制御装置16を有する。データメモリ17はさらに、輸送ユニット3内の制御装置16から離間して配置可能であることは自明である。輸送ユニット3および/または乗客輸送装置4における配置に関係なく、データメモリ17は制御装置によって書込み可能である。この例示的な本実施形態では、インターフェースユニット9は、コネクタケーブル15を介してデータメモリ17に接続される。この方法により、輸送監視モジュール2はさらに、データメモリ17および/またはコネクタケーブル15を接続する働きをする制御装置16上のそれぞれの接続点18から離間して配置可能である。
【0039】
変更された実施形態では、制御装置16および輸送監視モジュール2が、例えば、Bluetooth接続などのような無線接続を有する場合、コネクタケーブル15を省略することもできる。しかしながら、接続ケーブル15を使用する物理的接続と比較すると、現在では、無線接続はいくらか高価である。
【0040】
さらに、乗客輸送装置4の制御装置16上でインターフェースユニット9と接続点18との直接接触部を形成することもできる。この場合、輸送監視モジュール2は、データメモリ17および/または接続点18の近くにある。
【0041】
インターフェースユニット9は、接続要素19を有する。接続要素19は、例えば、接続ソケット19として具現化されてよい。さらに、コネクタケーブル15上には、例えば、接続プラグ20として具現化することができる接続要素20が配設される。
【0042】
コネクタケーブル15の接続プラグ20は、インターフェースユニット9の接続ソケット19に挿入される。この方法により、接続要素19、20は互いに解除可能に接続される。したがって、接続要素19において、インターフェースユニット9は、コネクタケーブル15を使用して、解除可能で差込み可能な接続部19、20を介して、乗客輸送装置4のデータメモリ17と間接的に接続される。この方法により、インターフェースユニット9とデータメモリ17との物理的な接続が実現される。このことにより、無線接続が不十分な場合に起こり得る伝送の干渉が防止される。
【0043】
エネルギー蓄積器8は、センサ5、位置特定装置6、7、およびインターフェースユニット9に電気エネルギーを供給する。このようにして、コネクタケーブル15を介して、必要に応じて両方向へのエネルギー輸送も可能になる。エネルギー蓄積器8はさらに、少なくとも部分的に制御装置16にエネルギーを供給し、輸送監視データをデータメモリ17に記憶するのに必要なエネルギーを提供することができる。この方法により、エネルギー蓄積器8からのエネルギーによって、コンピュータプログラム、特に、制御装置16内の制御および/または輸送監視プログラムの実行も保証することができる。乗客輸送装置4が設置され、その制御装置16が建物の電源網と接続されるとすぐに、エネルギー蓄積器8は、例えば、インターフェースユニット9を介して、輸送監視モジュール2が取り外される前に、電気エネルギーを充電することもできる。
【0044】
したがって、位置特定装置6、7および制御装置16は、少なくとも輸送中には、エネルギー蓄積器8から電気エネルギーが供給されるさらなる装置を表す。
【0045】
輸送中に、センサ5はセンサデータ、特に、加速度データおよび/または加速度値を生成する。さらに、空間的位置特定装置6は、輸送監視モジュール2の空間的位置特定に関する位置特定データを生成する。時間的位置特定装置7は、相対的および/または絶対的な時間的位置特定に関する位置特定データを生成する。したがって、適切な時間信号を受信することにより、絶対的な時間的位置特定が可能である。相対的な時間的位置特定は、日付機能を持つ水晶時計によって、または単純なパルス発生器によって実現可能である。このようなパルス発生器は、例えば、輸送中に、秒単位にまたは分単位まで正確な順方向にカウントすることができる。さらに、前記可能性の組み合わせも考えられる。このことにより、例えば、受信障害のある場合には、相対的時間的位置特定によって、時間を継続させることができる。
【0046】
インターフェースユニット9は、センサ5のセンサデータと位置特定装置6、7の位置特定データとに基づく記憶すべき輸送監視データを乗客輸送装置4のデータメモリ17に恒久的に記憶することができるように具現化される。さらに、どの輸送監視データを蓄積すべきかを決定するための選択を行うことができる。例えば、適切な方法で、センサ5のセンサデータの限界値を定義することができる。使用されるセンサ5に応じて、このようなセンサデータは、例えば、加速度データ、湿度データ、温度データなどとすることができる。例えば、特定の限界値を超えるセンサデータのみが記憶される場合、これは実質的なデータ削減を表す。さらに、位置特定データは、センサデータと基本的に同時に書き込まれてよい。その場合、センサデータと位置特定データの対応するデータ対がデータメモリ17に書き込まれる。しかし、データ記憶をずらすことも可能である。例えば、特定の時間または特定の場所で、位置特定データをデータメモリ17に書き込むことができ、位置特定データとは別に、その間に、例えば、所定の限界値を超えた時にセンサデータを書き込むことができる。データメモリ17内に輸送監視データとしてセンサデータおよび位置特定データをこのように順序付けしてリストアップすることにより、輸送プロセスの以降の再構成をかなり正確に行うことができる。
【0047】
この方法により、記憶すべき輸送監視データは、少なくとも1つのセンサ5のセンサデータならびに空間的位置特定装置6の空間的位置特定データおよび時間的位置特定装置7の時間的位置特定データに基づくことができる。特に、この方法により、衝撃、振動、衝突のような外部の影響を、物品の輸送に関与する対応する責任当事者に確実に割り当てることが可能になる。さらに、データメモリ17内の輸送監視データの恒久的な記憶に基づいて、後の時点で、これらの輸送監視データへアクセスが可能になる。
【0048】
必要に応じて、乗客輸送装置4の到着および必要な設置の後に、制御装置16を利用して、データメモリ17に記憶されている輸送監視データを読み出すことができる。読み取られた輸送監視データに基づいて、出力を行うことができる。この出力は、乗客輸送装置4または輸送ユニット3の返送が必要であるか否かを示すことができる。これは、例えば、センサデータに基づいて、それに対応して強い影響、特に、高い加速度が記録された場合に当てはまると言える。この場合、製造施設における機能の検証が必要となる場合があるためである。修理資材を要求しなければならないかどうかを示すことも可能である。影響の重大性に応じて、乗客輸送装置4の測定や、例えば、設置場所および/または現場のトラス、トラック、またはガイドレールなどをまっすぐに整備することも必要な場合もある。
【0049】
さらに、やや強い環境の影響がある場合、乗客輸送装置4の部品、特に、制御装置16自体の部品の交換で十分である場合がある。理想的な場合には、乗客輸送装置4の設置が推奨可能であることを示すことができる。したがって、この方法を実行することは、どの手段を講じるべきかに関する決定に関して実質的な利点を有する。したがって、辛うじてまたは不十分に外面的にのみ検出可能であり、後になってようやく欠陥となって現れる場合がある起こりうる損傷を考慮に入れることができる。
【0050】
また、少なくともサービス技術者の要求に応じて、乗客輸送装置4の故障の場合、または乗客輸送装置4の保守サービスの場合には、データメモリから輸送監視データを呼び出して出力することができる。サービス技術者は、例えば、保守サービス機器、携帯電話、またはラップトップを使用してこれを行うことができる。したがって、サービス技術者は、現場で、不便な照会を伴わずに、輸送監視データにアクセスすることができる。したがって、この方法により、輸送中に発生した事象および/または影響による乗客輸送装置4の故障の間の接続を確立することができる。したがって、おそらく配達してから長時間経過してようやく発生する可能性のある動的影響による欠陥も、同様に検出し、証明することができる。このことにより、必要に応じて、障害の検索が簡略化される。さらに、輸送データは、データメモリ17から読み出され、第2のバックアップとして、例えば、外部データベースまたはUSBスティックに書き込まれてもよいことは自明である。しかしながら、輸送データがデータメモリ17に記憶されたまま残り、好ましくは、削除保護機能を持つならば有利である。
【0051】
輸送監視モジュール2は、乗客輸送装置4および輸送ユニット3から独立しているので、輸送監視モジュール2を大幅な遅延なく再使用することができる。したがって、乗客輸送装置4から取り外された輸送監視モジュール2を、さらなる輸送ユニット3に輸送して、その後、その輸送を監視するためにそのさらなる輸送ユニット3に輸送監視モジュール2を割り当てることが可能である。
【0052】
センサ5のセンサデータおよび位置特定装置6、7の位置特定データのデータ取り込みは、輸送中に、制御装置16によって有利な方法で行うことができる。データ取り込みのために、制御装置16は、制御装置16のデータメモリ17に記憶することができるのが好ましいコンピュータプログラム40を使用することが好ましい。そのために、任意選択的に、破線で示されるように、コンピュータプログラム40は、輸送監視モジュール2内に配置された小型の、好ましくは不揮発性のメモリ41に記憶されてよい。制御装置16は、同様にインターフェースユニット9を介して、不揮発性メモリ41と通信する。コンピュータプログラム40が実行可能ファイルの形式をとる場合、例えば、データ取り込みを自動的に開始することができる。
【0053】
また、この方法により、制御装置16は、輸送監視モジュールのインターフェースユニット9を介したセンサデータおよび位置特定データの伝送、およびセンサデータおよび位置特定データに基づく輸送監視データのデータメモリ17への記憶を制御することも可能である。このことにより、輸送監視モジュール2の単純な構成が可能となる。したがって、制御装置16は、輸送監視データをデータメモリ17に恒久的に記憶することができる。
【0054】
図2は、第1の例示的な実施形態に係る、輸送監視モジュール2および乗客輸送装置4を含むシステム1の部分図である。この例示的な実施形態では、乗客輸送装置4は、エスカレータ4の形態で具現化されている。エスカレータ4のサイズに応じて、前記エスカレータ4は、一体的に、または複数の部品の形で、つまり、いくつかの輸送ユニット3、3’、3’’の形で梱包され、輸送されてよい。より明確にするために、輸送ユニット3は、エスカレータ4の残りの部分および/または第2の輸送ユニット3’および第3の輸送ユニット3’’から分離され、包装されていない状態で示されている。さらに、
図2は、例えば、建物内に存在するような凹部の両端で支持される乗客輸送装置4を示している。しかしながら、凹部は、例えば、輸送中にエスカレータ4を支持するために、容器内に配置される輸送取付台とすることもできる。
【0055】
制御装置16が配置される輸送ユニット3は、衝撃や落下のような起こり得る影響に対して特に敏感である。このため、少なくとも制御装置16を含む輸送ユニット3上に、輸送監視モジュール2が配置される。この例示的な実施形態では、輸送監視モジュール2は、制御装置16上に直接配置される。この方法により、輸送監視モジュール2のインターフェースユニット9の接続要素19を、接続点18における制御装置16との直接接続が可能となるように具現化することができる。このことにより、コネクタケーブル15が不要となる。
【0056】
この例示的な実施形態では、制御装置16が配置される輸送ユニット3は、制御装置16の近傍で、伝達駆動装置26を有する駆動ユニット25が配置されるように具現化される。駆動ユニット25は、例えば、電気モータおよび駆動装置を有することができる。伝達駆動装置26は、例えば、チェーン駆動装置26、ベルト駆動装置26、伝達ギア装置26または減速ギア装置26として具現化されてよい。このことにより、同様に慎重を要する駆動ユニット25も、輸送監視モジュール2によって監視される。したがって、乗客輸送装置4の構造的な実施形態により、特に、制御装置16および駆動ユニット25の慎重を要する構成要素の監視を行うことができる。
【0057】
好ましくは、
図2に示すように、建物内の設置が完了するまで、輸送監視モジュール2はシステム1内に残り、設置が完了し、エスカレータの委託が行われた時にようやく取り外される。したがって、エスカレータ4を建物または建造物内に設置する間に発生する事象も記録することができる。
【0058】
図3は、第1の例示的な実施形態に係る、輸送監視モジュール2および乗客輸送装置4を含むシステム1の部分図である。図示されている乗客輸送装置は、動く歩道4である。この例示的な実施形態では、乗客輸送装置4は一体としての輸送が可能となるように短い形で具現化されている。したがって、輸送ユニットへの分割は必要ではない。輸送監視モジュール2は、乗客輸送装置4の適切な点27で固定される。点27は、制御装置16および駆動ユニット25が配置されている一方の端部28における影響を確実に検出することができ、その一方では、制御装置16および駆動ユニット25から遠くに離間された他方の端部29における影響も十分に検出して記録することができるように選択される。
【0059】
図2を参照して説明されている第1の例示的な実施形態および
図3を参照して説明される第2の実施形態の両方において、輸送監視モジュール2の取り外しは輸送後に行うことができる。輸送監視モジュール2の前記取り外しは、輸送監視データがデータメモリ17に書き込まれているので、輸送完了直後に行うことができる。したがって、輸送監視データを特別にバックアップする必要はない。このことはさらに、取り扱いを簡単にし、それ以外の場合に起こり得る不適切な取り扱いに起因するエラーの原因を排除することになる。
【0060】
インターフェースユニット9は、特に、RSインターフェース、バスノードなどを介して制御装置16と通信することができる。
【0061】
さらに、輸送監視モジュール2は、さらなる感覚機能またはセンサ機能を有することもできる。特に、気候条件、特に、温度、気圧、空気湿度なども記録することができる。
【0062】
本発明は、特定の例示的な実施形態を提示して説明されているが、本発明を理解することによって多数のさらなる実施形態の変形形態を作成することができることは自明である。例えば、輸送監視モジュールをデータメモリと接続する複数のインターフェースが存在してよい。さらに、複数の輸送監視モジュールを乗客輸送装置および/または乗客輸送装置の一部としての輸送ユニットに配置することができ、輸送中に、それら全てを乗客輸送装置のデータメモリと接続することも可能である。さらに、制御装置は2つ以上のデータメモリを有することができる。冗長性の理由から、EP1777192B1に開示されている乗客輸送装置は、2つ以上の制御装置を有することも可能である。本発明によれば、これらの制御装置および/またはそれらのデータメモリのそれぞれは、少なくとも1つの輸送監視モジュールと接続されてよい。さらに、防犯性をさらに高めるために、信号およびデータを特定のフォーマットで伝送する、または暗号化することができるので、輸送監視モジュールは、制御装置にロードされたコンピュータプログラムと併用される場合にのみ使用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2017年7月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ、動く歩道、またはエレベータとして具現化される乗客輸送装置(4)を備え、乗客輸送装置(4)の発送地から目的地までの輸送中に乗客輸送装置(4)または乗客輸送装置(4)の一部としての輸送ユニット(3、3’、3’’)上に配置可能であり、輸送後に取り外し可能であり、少なくとも1つのセンサ(5)を有する少なくとも1つの輸送監視モジュール(2)をさらに備えるシステム(1)であって、乗客輸送装置(4)の輸送は、発送請負業者によって行われ、輸送監視モジュール(2)は、少なくとも乗客輸送装置(4)および/または輸送ユニット(3、3’、3’’)の輸送中に、輸送監視モジュール(2)と乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)との接続を確立することができるインターフェースユニット(9)を有し、インターフェースユニット(9)は、少なくとも部分的に少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータに基づく記憶すべき輸送監視データが乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶することができるように具現化され、データメモリ(17)が、乗客輸送装置(4)内に恒久的に配置されたまま残る、システム(1)。
【請求項2】
インターフェースユニット(9)は、解除可能な接続部(19、20)を介して、インターフェースユニット(9)を少なくとも間接的に乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)と接続可能にする接続要素(19)を有する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
インターフェースユニット(9)は、プラグ着脱可能な接続(19、20)を使用して、乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)と物理的に接続可能である、請求項1または2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサ(5)および/またはインターフェースユニット(9)および/または少なくとも1つのさらなる装置(6、7、16)に電気エネルギーを供給するエネルギー蓄積器(8)が配設される、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
空間的位置特定に関する位置特定データを生成する空間的位置特定装置(6)、および/または相対的および/または絶対的な時間的位置特定に関する位置特定データを生成する時間的位置特定装置(7)が配設され、記憶すべき輸送監視データは、少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータ、およびセンサデータに割り当てられる空間的位置特定装置(6)の空間的位置特定データおよび/または時間的位置特定装置(7)の時間的位置特定データに基づいている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサ(5)は、3軸加速度センサ(5)として具現化される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
乗客輸送装置(4)は、データメモリ(17)を含む制御装置(16)を備え、少なくとも輸送中に、少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータの記録、輸送監視モジュール(2)のインターフェースユニット(9)を介したセンサデータの制御装置(16)への伝送、センサデータの輸送監視データへの変換、および輸送監視データのデータメモリ(17)への記憶は、制御装置(16)によって制御可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの位置特定装置(5、6)の存在下で、その位置特定データは、輸送監視モジュール(2)のインターフェースユニット(9)を介して制御装置(16)によって呼び出し可能であり、位置特定データは、制御装置(16)によってセンサデータに割り当て可能である、請求項7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
輸送監視データは、制御装置(16)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶される、請求項8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
発送請負業者による乗客輸送装置(4)または乗客輸送装置(4)の一部としての少なくとも1つの輸送ユニット(3、3’、3’’)の発送地から目的地までの輸送を監視する方法であって、乗客輸送装置(4)は、エスカレータ、動く歩道、またはエレベータとして具現化され、輸送ユニット(3、3’、3’’)および/または乗客輸送装置(4)上に少なくとも1つの輸送監視モジュール(2)を配置することによって、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム(1)が形成され、少なくとも輸送中に、輸送監視モジュール(2)のインターフェースユニット(9)を介して輸送監視モジュール(2)と乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)との接続が確立され、輸送監視モジュール(2)の少なくとも1つのセンサ(5)のセンサデータに少なくとも部分的に基づく記憶すべき輸送監視データは、乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶され、データメモリ(17)が乗客輸送装置(4)内に恒久的に配置されたまま残って以降、センサデータは、乗客輸送装置(4)に恒久的にリンクされる、方法。
【請求項11】
輸送後に、乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)内に記憶されている輸送監視データが読み出され、読み出された輸送監視データに依存して、乗客輸送装置(4)またはその輸送ユニットの返送、または修理資材の要求、または乗客輸送装置(4)の設置が推奨可能であるかどうかが決定され、出力される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
輸送後に、輸送監視モジュール(2)が取り外され、輸送監視モジュール(2)が取り外された後、輸送監視データが乗客輸送装置(4)のデータメモリ(17)に恒久的に記憶された状態で残り、少なくとも乗客輸送装置(4)の故障および/または乗客輸送装置(4)の保守サービスの場合には、少なくとも要求に応じて行われるデータメモリ(17)からの輸送監視データの出力が行われる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
取り外された輸送監視モジュール(2)は、さらなる乗客輸送装置(4)、または乗客輸送装置(4)の一部としてのさらなる輸送ユニットに輸送され、その後、さらなる乗客輸送装置(4)および/または輸送ユニット(3、3’、3’’)の輸送を監視するために、さらなる乗客輸送装置(4)および/または輸送ユニット(3、3’、3’’)上に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
乗客輸送装置(4)の輸送および設置の後に、輸送監視モジュール(2)は乗客輸送装置(4)内に残り、その後、乗客輸送装置(4)に作用する危険振動の記録を行う、請求項10または11に記載の方法。
【国際調査報告】